説明

成膜方法、膜、電子部品および電子機器

【課題】本発明の目的は、炭素同素体を主材料とする膜を効率良く形成し得る成膜方法、かかる成膜方法により形成された膜、この膜を備える電子部品および電子機器を提供すること。
【解決手段】本発明の成膜方法は、基材5上に、炭素を含有し、かつ不飽和結合を有する化合物81を用いて、化学的気相成膜法により炭素同素体82を主材料とする膜8を形成する成膜方法であり、化合物81を含有する液状材料80を収納した収納部7と、基材5とを空間を介して対向させた状態で、液状材料80をミスト状として基材5に向かって供給し、前記空間において、液状材料80を加熱することにより、前記空間および/または基材5上で化合物81を炭素同素体82に変化させて、膜8を形成させるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜方法、膜、電子部品および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カーボンナノチューブやフラーレンが新規素材として着目されている。
例えば、特許文献1には、化学的気相成膜法(CVD法)によりカーボンナノチューブを製造する方法が開示されている。
この特許文献1に記載の方法では、チャンバー内に触媒を担持させた担体を設置し、チャンバー全体を加熱した後に、チャンバー内にカーボンナノチューブを生成するための原料をガス状として供給する。そして、原料を触媒の作用により反応させて、担体上にカーボンナノチューブを生成する。
【0003】
しかしながら、この方法では、チャンバー全体を加熱していることから、原料の反応が、担体以外の箇所でも進行し、不本意(無駄)に原料が消費されることになる。また、原料の反応による生成する反応生成物が、チャンバーの内壁に付着して、このものの除去に時間と手間を要するという問題もある。
特に、原料として不飽和結合を有する化合物を用いる場合には、上述したような問題点がより顕著となる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−313018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、炭素同素体を主材料とする膜を効率良く形成し得る成膜方法、かかる成膜方法により形成された膜、この膜を備える電子部品および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の成膜方法は、基材上に、炭素を含有し、かつ不飽和結合を有する化合物を用いて、化学的気相成膜法により炭素同素体を主材料とする膜を形成する成膜方法であって、
前記化合物を含有する液状材料を収納した収納部と、前記基材とを空間を介して対向させた状態で、前記液状材料をミスト状として前記基材に向かって供給し、
前記空間において、前記液状材料を加熱することにより、前記空間および/または前記基材上で前記化合物を前記炭素同素体に変化させて、前記膜を形成することを特徴とする。
これにより、膜を効率良く形成することができる。
【0007】
本発明の成膜方法では、前記化合物は、その炭素数をAとし、不飽和結合の数をBとしたとき、B/A≧0.1なる関係を満足するものであることが好ましい。
かかる化合物は、より低い温度で炭素同素体に変化させることができる。
本発明の成膜方法では、前記化合物は、炭素数が4〜30のものであることが好ましい。
これにより、化合物を炭素同素体へより迅速かつ確実に変化させることができる。また、形成される膜中へ不純物が混入するのを好適に防止または抑制することができる。
【0008】
本発明の成膜方法では、前記化合物は、芳香族炭化水素を主成分とするものであることが好ましい。
芳香族炭化水素は、炭素数に対して比較的高い割合で不飽和結合を有する化合物であり、かかる化合物は、より低温で炭素同素体に変化させることができる。
本発明の成膜方法では、前記収納部に収納された前記液状材料に超音波を付与することにより、前記液状材料をミスト状にすることが好ましい。
超音波法によれば、液状材料をより微細な粒径の液滴とすることができる。その結果、加熱による化合物への熱の伝達がより確実になされ、炭素同素体へより迅速に変化させることができる。
【0009】
本発明の成膜方法では、前記液状材料を加熱する温度は、200〜2000℃であることが好ましい。
これにより、化合物を確実に炭素同素体に変化させることができる。
本発明の成膜方法では、前記空間において、加熱したガスを供給することにより前記液状材料を加熱することが好ましい。
かかる方法によれば、比較的容易かつ確実に液状材料を加熱することができ、化合物を炭素同素体へより効率よく変化させることができる。
【0010】
本発明の成膜方法では、前記加熱したガスは、前記基材に対してほぼ平行な流れを形成するように供給されることが好ましい。
これにより、熱ガスが基材に直接吹きかかるのを好適に防止することができる。その結果、基材の温度が不本意に上昇するのを防止して、基材の変質・劣化を好適に阻止することができる。
【0011】
本発明の成膜方法では、前記加熱したガスは、窒素ガスおよび不活性ガスのうちの少なくとも1種であることが好ましい。
これにより、熱ガスの有する熱エネルギーが化合物に伝達されて、化合物を確実に加熱することができるとともに、形成される膜中への不純物の混入をより確実に防止または低減することができる。
【0012】
本発明の成膜方法では、前記基材には、前記化合物の前記炭素同素体への変化を促進させるための触媒が担持されていることが好ましい。
これにより、化合物を確実に炭素同素体へと変化させて、膜を形成することができる。
本発明の成膜方法では、前記触媒は、元素周期律表の第Va族、第VIa族、第VIIa族、第VIII族または第Ib族に属する金属およびこれらを含む合金のうちの少なくとも1種を主成分とするものであることが好ましい。
これらのものは、いずれも、高い触媒作用(触媒機能)を有しており、化合物をより効率よく炭素同素体へ変化させることができる。
【0013】
本発明の成膜方法では、前記炭素同素体は、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノコイル、カーボンナノツイスト、フラーレンおよびグラファイトのうちの少なくとも1種を主成分とするものであることが好ましい。
本発明の成膜方法では、前記収納部と前記基材との離間距離は、50〜300mmであることが好ましい。
これにより、前記空間および/または基材上で化合物を確実に炭素同素体に変化させることができる。
【0014】
本発明の膜は、本発明の成膜方法により成膜されたことを特徴とする。
これにより、信頼性の高い膜を効率良く得ることができる。
本発明の電子部品は、本発明の膜を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子部品が得られる。
本発明の電子機器は、本発明の電子部品を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の成膜方法、炭素同素体を主材料とする膜、電子部品および電子機器を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
まず、本発明の成膜方法を、所定パターンの無機物膜を形成するのに適用した場合について説明する。
<成膜方法>
図1および図2は、それぞれ、本発明の成膜方法を説明するための模式的な図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。なお、図2は、図1と上下逆転して示した。
【0016】
図1および図2に示す成膜方法は、基材5上にマスク6を形成するマスク形成工程と、基材5のマスク6の開口部61から露出する部分に触媒4を担持させる触媒担持工程と、開口部61内に、膜8を形成する膜形成工程と、マスク6を除去するマスク除去工程とを有する。以下、各工程について、順次説明する。
【0017】
[1]マスク形成工程
まず、基材5を用意する(図1(a)参照。)。
この基材5は、いかなる材料で構成されたものであってもよいが、例えば、石英ガラス、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、各種低誘電率材料(いわゆる、low−K材)等の各種絶縁材料(誘電体)や、シリコン(例えば、アモルファスシリコン、多結晶シリコン等)、インジウムティンオキサイド(ITO)、インジウムオキサイド(IO)、酸化スズ(SnO)、アンチモンティンオキサイド(ATO)、インジウムジンクオキサイド(IZO)、Al、Al合金、Cr、Mo、Ta等の導電性材料で構成されたものを用いることができる。
また、基材5は、膜8を形成した後、除去(分離)されるものであってもよく、膜8と一体的に使用されるものであってもよい。
【0018】
次に、この基材5上に所定パターンのマスク6、すなわち、形成すべき膜8に対応する形状の開口部61を有するマスク6を形成する。
マスク6は、例えば、フォトリソグラフィー法、電解めっき法、浸漬めっき法、無電解めっき法等の液相成長法(湿式めっき法)、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法、熱CVD法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、MOCVD法等の化学的気相成膜法(CVD法)等により形成することができる。
【0019】
これらの中でも、マスク6の形成には、フォトリソグラフィー法を用いるのが好ましい。フォトリソグラフィー法によれば、大掛かりな設備を必要とせず、微細なパターン(形状)のマスク6を容易かつ確実に形成することができる。
フォトリソグラフィー法によりマスク6を形成する場合には、まず、基材5上に、レジスト材料6’を塗布(供給)する(図1(b)参照。)。
【0020】
レジスト材料6’を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法、マイクロコンタクトプリンティング法等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
次に、膜8の形状に対応するフォトマスクを介して、レジスト材料6’を露光した後、現像液で現像する。これにより、膜8に対応する形状に開口部61を有するマスク6が得られる(図1(c)参照。)。
なお、フォトリソグラフィー法において用いるレジスト材料は、ネガ型のレジスト材料およびポジ型のレジスト材料のいずれであってもよい。
【0022】
マスク6の平均厚さは、特に限定されないが、0.05〜15μmであるのが好ましく、0.2〜10μmであるのがより好ましい。マスク6の平均厚さが前記下限値未満であると、マスク6にピンホールが発生し易くなる傾向を示し、また、マスク6の上に膜8の材料が完全に覆ってしまい、マスクとして機能しなくなる可能性がある。一方、マスク6の平均厚さが前記上限値を超えると、マスク6の各部位における膜厚のバラツキが大きくなる傾向を示す。また、マスク6の内部応力が高くなり、結果として、マスク6と基材5との密着性が低下したり、クラックが発生し易くなる。
また、マスク6は透明であることが好ましい。これにより、基材5との密着状態を外部から視認することが可能となる。
【0023】
[2]触媒担持工程
次に、基材5のマスク6の開口部61から露出する部分(以下、「露出部」と言う。)に触媒4を担持させる(図1(d)参照。)。
触媒4は、例えば、触媒4を含有する溶液(触媒液)を露出部に接触させることにより基材5に担持させることができる。
【0024】
触媒液を露出部に接触させる方法としては、例えば、触媒液中にマスク6を形成した基材5を浸漬する方法(浸漬法)、触媒液を基材5にシャワー(噴霧)する方法、マスク6上に触媒液を塗布する方法(塗布法)等が挙げられるが、特に、浸漬法を用いるのが好ましい、浸漬法によれば、大量の基材5を容易に処理することができる。
このように、触媒液を露出部に接触させる方法には、各種方法があるが、以下の各工程では、触媒液を接触させる方法として、浸漬法を用いる場合を代表に説明する。
【0025】
[2−I] まず、マスク6が形成された基材5を用意し、この基材5を、例えば、水(純水等)、有機溶媒等を単独または適宜組み合わせて洗浄する。これにより、露出部の水に対する濡れ性が向上し、以下に示す各種処理液が接触し易い状態になる。
[2−II] 次に、露出部に触媒4を担持させるための前処理を行う。
この前処理は、例えば、カチオン性界面活性剤を含む溶液(界面活性剤溶液)にマスク6が形成された基材5を浸漬させることにより行うことができる。これにより、露出部にカチオン性界面活性剤を付着させる。
【0026】
露出部は、カチオン性界面活性剤が付着することによりプラスに帯電する。これにより、露出部には、触媒4が吸着し易いようになり、結果として、形成される膜8と基材5との密着性が向上する。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化アルキルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ステアリン酸等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
処理に際する界面活性剤溶液の温度は、0〜70℃程度であるのが好ましく、10〜40℃程度であるのがより好ましい。
【0027】
また、界面活性剤溶液中での基材5の処理時間は、10〜90秒程度であるのが好ましく、30〜60秒程度であるのがより好ましい。
ここで、例えば、基材5がITO等の酸化物により構成されている場合、露出部は、マイナスに帯電する傾向を示すが、マイナスに帯電した部分には、次工程[2−III]における触媒4が付着し難い。このため、酸化物で構成される基材5に対して、前述のような前処理を施すことは特に有効である。
このようにして、前処理が施された露出部を、例えば、純水(超純水)、イオン交換水、蒸留水、RO水等を用いて洗浄する。
【0028】
なお、本実施形態では、露出部に触媒4を担持させるための前処理として、カチオン性界面活性剤を用いるものとして説明を行ったが、例えば、アミノシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、のようなシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネートのようなチタン系カップリング剤、ジルコニウムアセチルアセトネート、アセチルアセトンジルコニウムブチレートのようなジルコニウム系カップリング剤、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネートのようなアルミニウム系カップリング剤等のカップリング剤により処理を行ってもよい。
【0029】
[2−III] 次に、露出部に触媒4を担持させる。この触媒4は、化合物81の炭素同素体82への変化を促進する機能を有するものである。触媒4を露出部に担持させることにより、後述する膜形成工程において、化合物81が確実に炭素同素体82へと変化されて、膜8を形成することができる。
触媒4としては、触媒作用を有するものであればよく、特に限定されないが、例えば、元素周期律表の第Va族、第VIa族、第VIIa族、第VIII族または第Ib族に属する金属およびこれらを含む合金のうちの少なくとも1種を主成分とするものであるのが好ましく、Ni、Co、Mo、Fe、Cu、VまたはPdおよびこれらを含む合金のうちの少なくとも1種を主成分とするものであるのがより好ましい。これらのものは、いずれも、高い触媒作用(触媒機能)を有しており、膜形成工程において、化合物81をより効率よく炭素同素体82へ変化させることができる。
【0030】
具体的には、触媒4としてPdを用いる場合には、例えば、塩化パラジウム等のイオン系Pd触媒の溶液、またはSn−Pd等のPd合金のコロイド液中に、基材5を浸漬することにより、Pd合金、またはイオン系Pd触媒をマスク6の開口部61内に吸着させる。その後、触媒に関与しない元素を除去することにより、Pdを基材5の表面に露出させることができる。
このようにして、露出部に担持された触媒4を、例えば、純水(超純水)、イオン交換水、蒸留水、RO水等を用いて洗浄する。
【0031】
なお、触媒4は、露出部に層状(膜状)となるように担持されていてもよく、散点状に粒状で担持されていてもよい。
また、本実施形態では、上述したような手法を用いて触媒4を露出部に担持させる場合について示したが、これに代わり、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法等のような気相成長法を用いて触媒4を露出部に担持させてもよい。
また、触媒担持工程は、前述したマスク形成工程より前に設けるようにしてもよし、生成させる炭素同素体82の種類等によっては、省略するようにしてもよい。
【0032】
[3]膜形成工程
次に、マスク6の開口部61内に、例えば、カーボンナノチューブやカーボンナノホーンのような炭素同素体82を主材料とする膜8を形成する。
本発明では、炭素を含有し、かつ不飽和結合を有する化合物81を用いて、化学的気相成膜法(CVD法)により炭素同素体82を生成させる。
【0033】
かかる不飽和結合を有する化合物81は、炭素同素体82への変化が極めて迅速に変化する(反応性が極めて高い)ことから、比較的低い温度で化合物81を炭素同素体82に変化させることができる。これにより、化合物81を加熱する温度を比較的低く設定することができる。その結果、この加熱に要するエネルギーの消費量が少なくなり、コストの低減を図ることができる。
【0034】
そして、本発明では、化合物81を含有する液状材料80を収納した収納部7と、基材5とを空間を介して対向させた状態で、液状材料80をミスト状として基材5に向かって供給する。そして、この空間おいて、液状材料80を加熱する。
これにより、空間および/または基材5上で化合物81を炭素同素体82に変化させて、膜8を形成する。
【0035】
前述したように、不飽和結合を有する化合物81は、極めて反応性が高い、このため、化合物81を含有する液状材料80をガス状とすべく加熱すると、収納部7において炭素同素体82等に変化してしまい、化合物81が無駄になるばかりか、最終的には化合物81(液状材料80)の粘度が増大して、このものを基材5に供給できなくなる。
これに対して、本発明では、液状材料80をミスト状として基材5に向かって供給し、前記空間において加熱する。これにより、前記不都合が生じるのを防止しつつ、確実に基材5に向かって液状材料80(化合物81)を供給して炭素同素体82を生成させること、すなわち、膜8を形成することができる。
以下、炭素同素体82を主材料とする膜8を形成する具体的な方法の一例について説明する。
【0036】
[3−A] まず、炭素を含有し、かつ不飽和結合を有する化合物81を含有する液状材料80を収納した収納部7と、マスク6が形成された基材5とを空間を介して対向させた状態で、チャンバー内に設置する。
化合物81としては、加熱されることにより炭素同素体82に変化するものであれば、特に限定されないが、その炭素数をAとし、不飽和結合の数をBとしたとき、B/A≧0.1なる関係を満足するものであるのが好ましく、B/A≧0.3なる関係を満足するものであるのがより好ましい。かかる化合物81は、より低い温度で炭素同素体82に変化させることができる。
【0037】
また、化合物81の炭素数は、特に限定されないが、4〜30であるのが好ましく、4〜10であるのがより好ましい。これにより、化合物81を炭素同素体82へより迅速かつ確実に変化させることができる。また、形成される膜8中へ不純物が混入するのを好適に防止または抑制することができる。
化合物81の具体例としては、例えば、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、ペンタセンのような芳香族炭化水素、エチレン、シクロヘキサジエン、アズレンおよびアセチレン等が挙げられ、これらの中でも、芳香族炭化水素のうちの少なくとも1種を主成分とするものであるのが好ましい。芳香族炭化水素は、炭素数に対して比較的高い割合で不飽和結合を有する化合物であり、かかる化合物81は、より低温で炭素同素体82に変化させることができる。
【0038】
なお、化合物81は、例えば、常温(常圧)で液状である場合は、そのまま、または適当な溶媒に溶解して液状材料80とすればよく、また、常温(常圧)で気体である場合は、適当な溶媒に溶解して液状材料80とするようにすればよい。ここで、溶媒としては、飽和炭化水素系溶媒を用いるのが好適である。
また、チャンバー内(膜8を形成する際)の雰囲気の圧力は、大気圧下であってもよく、特に限定されないが、10Pa以下であるのが好ましく、1〜10Pa程度であるのがより好ましい。
【0039】
[3−B] 次に、収納部7に収納した液状材料80をミスト状として、基材5に向かって供給する(図2(a)参照)。
液状材料80をミスト状とする方法としては、例えば、液状材料80に超音波を付与する方法(超音波法)、液状材料80を噴霧する方法(噴霧法)等が挙げられるが、これらの中でも、超音波法を用いるのが好ましい。超音波法によれば、液状材料80をより微細な粒径の液滴とすることができる。その結果、加熱による化合物81への熱の伝達がより確実になされ、炭素同素体82へより迅速に変化させることができる。
【0040】
超音波法を用いる場合、超音波の周波数は、収納部7に収納された液状材料80の粘度、比重等に応じて適宜設定する。
具体的には、超音波の周波数は、1〜1×10kHz程度であるのが好ましく、10〜1×10kHz程度であるのがより好ましい。これにより、収納部7の液状材料80をより確実にミスト状にして、基材5に供給することができる。
【0041】
[3−C] 次に、収納部7と基材5との間の空間において、液状材料80を加熱して、この空間および/または基材5上で化合物81を炭素同素体82に変化させる(図2(b)参照。)。そして、この炭素同素体82により膜8を形成する(図2(c)参照。)。
ここで、炭素同素体82としては、例えば、化合物81の種類および化合物81を炭素同素体82に変化させる際の条件等を適宜選択することにより、各種のものを生成することができる。
【0042】
具体的には、炭素同素体82としては、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノコイル、カーボンナノツイスト、フラーレンおよびグラファイトのうちの少なくとも1種を主成分とするものを生成させることができる。
例えば、触媒4として、サイズ(粒径)の比較的小さいもの(例えば10nm以下)を用いることにより、炭素同素体82として、主にカーボンナノチューブを生成させることができる。
【0043】
また、例えば、化合物81として、積極的に7員環の構造を含有するものを用いることにより、炭素同素体82として、主にカーボンナノホーンを生成させることができる。
また、触媒4として、比較的融点の低いもの(例えば400〜800℃程度)のものを用い、サイズの比較的大きいもの(例えば50nm以上)を用いることにより、炭素同素体82として、主にカーボンナノコイルおよびカーボンナノツイストを生成させることができる。
また、触媒4の担持を省略することにより、炭素同素体82として、主にフラーレンを生成させることができる。
【0044】
さらに、触媒4の担持を省略し、かつ、化合物81の供給量を減少させることにより、炭素同素体82として、主にグラファイトを生成させることができる。
液状材料80(化合物81)を加熱する温度は、化合物81と目的とする炭素同素体82との関係に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、200〜2000℃程度であるのが好ましく、200〜1000℃程度であるのがより好ましく、200〜500℃程度であるのがさらに好ましい。加熱温度が低すぎると、化合物81を炭素同素体82に変化させるのが困難になるおそれがあり、一方、加熱温度が高すぎると、基材5が不本意に加熱されて、変質・劣化するおそれがある。
【0045】
液状材料80を加熱する方法としては、例えば、収納部7と基材5との間の空間に加熱したガス(以下、「熱ガス」という。)を供給する方法、収納部7と基材5との間の空間に網目状(またはハニカム状)のヒーターを設置することにより加熱する方法、収納部7と基材5との間の空間に赤外線のようなエネルギー線を照射する方法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、熱ガスを供給する方法を用いるのが特に好ましい。かかる方法によれば、比較的容易かつ確実に液状材料80を加熱することができ、化合物81を炭素同素体82へより効率よく変化させることができる。
【0046】
以下では、液状材料80を加熱する方法として、熱ガスを供給する方法を用いる場合を代表に説明する。
熱ガスの流量は、特に限定されないが、10〜1000sccm程度であるのが好ましく、50〜300sccm程度であるのがより好ましい。これにより、収納部7と基材5との空間に供給された液状材料80(化合物81)を目的とする温度により確実に加熱することができる。
【0047】
熱ガスは、収納部7と基材5との間の空間に任意の方向から供給可能であるが、基材5に対してほぼ平行な流れを形成するように供給されるのが好ましい。これにより、熱ガスが基材5に直接吹きかかるのを好適に防止することができる。その結果、基材5の温度が不本意に上昇するのを防止して、基材5の変質・劣化を好適に阻止することができる。
また、供給する熱ガスは、炭素同素体82を生成させる際に不純物となる物質が生成され難いものであるのが好ましく、特に限定されないが、窒素ガスおよび不活性ガスのうちの少なくとも1種を用いるのが好ましい。これにより、熱ガスの有する熱エネルギーが化合物81に伝達されて、化合物81を確実に加熱することができるとともに、形成される膜8中への不純物の混入をより確実に防止または低減することができる。
【0048】
収納部7と基材5との離間距離は、できるだけ離れている方がよく、特に限定されないが、50〜300mm程度であるのが好ましく、100〜200mm程度であるのがより好ましい。離間距離が短すぎると、基材5が加熱され、基材5の構成材料等によっては、基材5が変質・劣化するおそれがある。また、離間距離を長くしすぎると、基材5上で化合物81を炭素同素体82に変化させる場合、化合物81が基材5に到達した時点で、加熱により得られたエネルギーが減少し、炭素同素体82へ効率よく変化しなくなるおそれがある。
【0049】
また、本発明によれば、収納部7と基材5との間の空間で化合物81を加熱して、基材5上に膜8を形成することから、この際、基材5を直接加熱することを必要としない。このため、比較的耐熱性の低い材料で構成された基材5、例えば、樹脂製の基材5を用いる場合でも、この基材5の変質・劣化を好適に防止することができる。したがって、本発明によれば、使用可能な基材5の材料の選択の幅を拡大することができる。
なお、生成させる炭素同素体82の種類や基材5の構成材料等によっては、基材5を加熱するようにしてもよい。これにより、化合物81から炭素同素体82への変化をより確実に行うことができる。
【0050】
[4]マスク除去工程
次に、マスク6を除去する(図2(d)参照。)。これにより、所定パターンの膜(本発明の膜)8が得られる(形成される)。
マスク6の除去は、マスク6の種類に応じて適宜選択すればよく、例えば、酸素プラズマやオゾンによる大気圧下または減圧下でのアッシング、紫外線の照射、Ne−Heレーザー、Arレーザー、COレーザー、ルビーレーザー、半導体レーザー、YAGレーザー、ガラスレーザー、YVOレーザー、エキシマレーザー等の各種レーザーの照射、マスク6を溶解または分解し得る溶剤との接触(例えば浸漬)等により行うことができる。
【0051】
例えば、マスク6がフォトリソグラフィー法により形成されたもの、すなわち、レジスト材料で構成されたものである場合、マスク6の除去は、これを溶解または分解し得る溶剤と接触させることにより行うのが好適である。かかる方法によれば、大掛かりな設備を必要とせず、容易にマスク6を除去することができる。
なお、本実施形態では、所定パターンの膜8を形成する方法として、基材上に予めマスクを形成した後に、無機物膜前駆体を供給する方法について説明したが、所定パターンの膜8は、基材のほぼ全面に無機物膜を形成した後に、マスクを用いて、無機物膜の不要な部分を除去する方法により形成してもよい。
また、本発明の成膜方法は、必要に応じて、1または2以上の任意の目的の工程を追加することもできる。
【0052】
<電子部品>
このような膜8は、例えば、スイッチング素子(薄膜トランジスタ)、配線基板、半導体部品、表示装置、発光素子等の各種電子部品に適用することができる。
以下では、本発明の電子部品を表示装置(特に、電界放出型表示装置)に適用した場合を代表に説明する。
【0053】
図3は、本発明の電子部品を適用した電界放出型表示装置(FED)の実施形態を示す縦断面図である。なお、以下では、図3中の上側を「上」、下側を「下」として説明する。ここでは、表示装置を構成する4画素分についての構造を示している。
図3に示す電界放出型表示装置100は、ガラスを用いた前面板201と、背面板202と、ゲート電極213とを有している。
【0054】
前面板201と背面板202とは、対向するように設置されている。
前面板201の背面板202と対向する面上には、隔壁221が設けられている。また、前面板201の背面板202と対向する面上の隔壁221で区切られた領域には、蛍光面222が設けられ、その上にアルミニウムの薄膜を用いた陽極211が設けられている。
背面板202の前面板201と対向する面上には、陰極母線232が設けられている。
【0055】
さらに、陰極母線232上には、隔壁231が設けられている。また、背面板202の前面板201と対向する面上の隔壁231で区切られた領域の陰極母線232の上に、前述した触媒4が設けられており、さらに、該触媒4上には、冷陰極212(膜8)が設けられている。
また、前面板201と背面板202の間にはメッシュ状のゲート電極213が挟まれている。前面板201と背面板202の間の空間はほぼ真空に保たれている。
【0056】
陽極211と冷陰極212との間には、電源241が接続されている。これにより、陽極211と冷陰極212との間に、蛍光面222を励起するのに適当な加速電圧となるような電位Vaを与えることができる。
また、ゲート電極213と冷陰極212との間には、電源242が接続されている。これにより、ゲート電極213と冷陰極212との間に、冷陰極212から電子放出が起こるのに十分な電界となるような電位Vgを与えることができる。
【0057】
以上のような電界放出型表示装置100は、陽極211と冷陰極212との間に電位Vaを与え、ゲート電極213と冷陰極212との間に電位Vgを与えることにより、冷陰極212から電子が放出され、放出された電子が陽極211の電位Vaで加速され、蛍光面222と衝突し、その結果、蛍光面222が発光するものである。
このような電界放出型表示装置100を用いると、後述するような各種電子機器の小型化、薄型化を容易に図ることができる。また、各種電子機器の省電力化も図ることができる。
【0058】
<電子機器>
本発明の電子部品は、各種電子機器に用いることができる。
図4は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部を備える表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100においては、例えば、表示ユニット1106が前述の電界放出型表示装置(電子部品)100を備えている。
【0059】
図5は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、表示部を備えている。
携帯電話機1200において、例えば、この表示部が前述の電界放出型表示装置(電子部品)100を備えている。
【0060】
図6は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0061】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ディジタルスチルカメラ1300において、例えば、この表示部が前述の電界放出型表示装置(電子部品)100を備えている。
【0062】
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
【0063】
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0064】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0065】
なお、本発明の電子機器は、図4のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図5の携帯電話機、図6のディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
以上、本発明の成膜方法、無機物膜、電子部品および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0066】
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
1.膜の形成
(実施例1)
まず、石英ガラス基板(基材)を用意し、純水を用いて洗浄した。
次に、Pdを含有する溶液に石英ガラス基板を浸漬して、石英ガラス基板の膜形成面にPd(触媒)を散点状に粒状(粒径:約7nm)で担持させた。
次に、チャンバー内に、石英ガラス基板の膜形成面と、ベンゼン[液状材料(化合物)]を収納した収納部とを対向させた状態で設置して、チャンバー内を減圧状態とした。
・石英ガラス基板と収納部との離間距離:125mm
・チャンバー内の圧力 :1Pa
【0067】
次に、収納部の液状材料に周波数が40kHzの超音波を付与することにより、ミスト状として化合物(液状材料)を収納部と石英ガラス基板との間に供給した。
この状態で、加熱したアルゴンガス(熱ガス)を石英ガラス基板に対して平行となるように収納部と石英ガラス基板との間に供給した。
・熱ガスの温度 :250℃
・熱ガスの流量 :200sccm
・石英ガラス基板の温度 :500℃
・化合物の供給(成膜)時間:60分
この処理が施された石英ガラス基板を透過型電位顕微鏡(TEM)で観察し、石英ガラス基板上に主としてカーボンナノチューブが生成していることを確認した。
【0068】
(実施例2)
液状材料と触媒の種類(粒径)とを、それぞれ、表1のように変更した以外は、前記実施例1と同様にした。
この処理が施された石英ガラス基板を透過型電位顕微鏡(TEM)で観察し、石英ガラス基板上に主としてカーボンナノチューブが生成していることを確認した。
【0069】
(実施例3)
液状材料と熱ガスの温度とを、それぞれ、表1のように変更した以外は、前記実施例1と同様にした。
この処理が施された石英ガラス基板を透過型電位顕微鏡(TEM)で観察し、石英ガラス基板上に主としてカーボンナノホーンが生成していることを確認した。
【0070】
(実施例4)
触媒の種類(粒径)と熱ガスの温度とを、それぞれ、表1のように変更した以外は、前記実施例1と同様にした。
この処理が施された石英ガラス基板を透過型電位顕微鏡(TEM)で観察し、石英ガラス基板上に主としてカーボンナノコイルとカーボンナノツイストとが生成していることを確認した。
【0071】
(実施例5)
触媒の担持を省略し、液状材料の加熱方法と加熱温度(ヒーターの温度)とを、それぞれ、表1のように変更した以外は、前記実施例1と同様にした。
この処理が施された石英ガラス基板を透過型電位顕微鏡(TEM)で観察し、石英ガラス基板上に主としてフラーレンが生成していることを確認した。
【0072】
(実施例6)
加熱温度(ヒーターの温度)を、表1のように変更した以外は、前記実施例5と同様にした。
この処理が施された石英ガラス基板を透過型電位顕微鏡(TEM)で観察し、石英ガラス基板上に主としてグラファイトが生成していることを確認した。
【0073】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の成膜方法を説明するための模式的な図(縦断面図)である。
【図2】本発明の成膜方法を説明するための模式的な図(縦断面図)である。
【図3】本発明の電子部品を適用した電界放出型表示装置の実施形態を示す図である。
【図4】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0075】
4……触媒 5……基材 6……マスク 6’……レジスト材料 61……開口部 7……収納部 8……膜 80……液状材料 81……化合物 82……炭素同素体 100……電界放出型表示装置 201……前面板 202……背面板 211……陽極 212……冷陰極(炭素膜) 213……ゲート電極 221、231……隔壁 222……蛍光面 232……陰極母線 241、242……電源 1100……パーソナルコンピュータ 1102……キーボード 1104……本体部 1106……表示ユニット 1200……携帯電話機 1202……操作ボタン 1204……受話口 1206……送話口 1300‥‥ディジタルスチルカメラ 1302‥‥ケース(ボディー) 1304‥‥受光ユニット 1306‥‥シャッタボタン 1308‥‥回路基板 1312‥‥ビデオ信号出力端子 1314‥‥データ通信用の入出力端子 1430‥‥テレビモニタ 1440‥‥パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、炭素を含有し、かつ不飽和結合を有する化合物を用いて、化学的気相成膜法により炭素同素体を主材料とする膜を形成する成膜方法であって、
前記化合物を含有する液状材料を収納した収納部と、前記基材とを空間を介して対向させた状態で、前記液状材料をミスト状として前記基材に向かって供給し、
前記空間において、前記液状材料を加熱することにより、前記空間および/または前記基材上で前記化合物を前記炭素同素体に変化させて、前記膜を形成することを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記化合物は、その炭素数をAとし、不飽和結合の数をBとしたとき、B/A≧0.1なる関係を満足するものである請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記化合物は、炭素数が4〜30のものである請求項1または2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記化合物は、芳香族炭化水素を主成分とするものである請求項1ないし3のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項5】
前記収納部に収納された前記液状材料に超音波を付与することにより、前記液状材料をミスト状にする請求項1ないし4のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項6】
前記液状材料を加熱する温度は、200〜2000℃である請求項1ないし5のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項7】
前記空間において、加熱したガスを供給することにより前記液状材料を加熱する請求項1ないし6のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項8】
前記加熱したガスは、前記基材に対してほぼ平行な流れを形成するように供給される請求項7に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記加熱したガスは、窒素ガスおよび不活性ガスのうちの少なくとも1種である請求項7または8に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記基材には、前記化合物の前記炭素同素体への変化を促進させるための触媒が担持されている請求項1ないし9のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項11】
前記触媒は、元素周期律表の第Va族、第VIa族、第VIIa族、第VIII族または第Ib族に属する金属およびこれらを含む合金のうちの少なくとも1種を主成分とするものである請求項10に記載の成膜方法。
【請求項12】
前記炭素同素体は、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノコイル、カーボンナノツイスト、フラーレンおよびグラファイトのうちの少なくとも1種を主成分とするものである請求項1ないし11のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項13】
前記収納部と前記基材との離間距離は、50〜300mmである請求項1ないし12のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれかに記載の成膜方法により成膜されたことを特徴とする膜。
【請求項15】
請求項14に記載の膜を備えることを特徴とする電子部品。
【請求項16】
請求項15に記載の電子部品を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−28540(P2006−28540A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205111(P2004−205111)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】