把持装置
【課題】クランプ部により薄板状物をクランプする際の衝撃を緩和しながら、位置検出器を用いることに起因する電磁アクチュエータの構成の複雑化を抑制することが可能な把持装置を提供する。
【解決手段】この電磁グリッパ(把持装置)100は、ウエハ9をクランプする方向に移動する可動部25を含むクランプ部24と、クランプ部24の可動部25をクランプする方向に常時付勢するばね部材30と、少なくともクランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に推力を発生させる電磁アクチュエータ22とを備える。また、電磁アクチュエータ22は、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に、ばね部材30のクランプ方向への付勢力による可動部25の移動速度を低減する方向に推力を発生させる励磁コイル27a〜27cを有する励磁回路28を含む。
【解決手段】この電磁グリッパ(把持装置)100は、ウエハ9をクランプする方向に移動する可動部25を含むクランプ部24と、クランプ部24の可動部25をクランプする方向に常時付勢するばね部材30と、少なくともクランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に推力を発生させる電磁アクチュエータ22とを備える。また、電磁アクチュエータ22は、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に、ばね部材30のクランプ方向への付勢力による可動部25の移動速度を低減する方向に推力を発生させる励磁コイル27a〜27cを有する励磁回路28を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持装置に関し、特に、薄板状物をクランプするためのクランプ部を備える把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウエハなどの薄板状物をクランプするためのクランプ部を備える把持装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、駆動軸を有する電磁アクチュエータ(ソレノイドアクチュエータ)と、電磁アクチュエータの駆動軸に取り付けられ、電磁アクチュエータの駆動軸の移動に伴って薄板状物(ウエハ)をクランプする方向およびアンクランプする方向に回動するクランプ部と、クランプ部をウエハをクランプする方向に付勢するためのばね部材とを備えたウエハハンドリングロボット用ハンド(把持装置)が開示されている。このウエハハンドリングロボット用ハンドでは、ウエハのクランプ時には、電磁アクチュエータの励磁を切ることにより、電磁アクチュエータのばね部材の付勢力に抗する方向の推力が発生しないので、ばね部材の付勢力により、クランプ部がウエハをクランプする方向へ回動されてウエハがクランプされる。一方、クランプ部によりウエハがクランプされていないアンクランプ時には、電磁アクチュエータを励磁させることにより、電磁アクチュエータにばね部材の付勢力に抗する方向の推力が発生されることによって、クランプ部がアンクランプする方向に回動される。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のウエハハンドリングロボット用ハンドでは、ウエハのクランプ時に、電磁アクチュエータの励磁を切ることにより、ばね部材の付勢力によりクランプ部がウエハをクランプするように回動されるので、電磁アクチュエータの励磁を切った瞬間にばね部材の付勢力により、クランプ部が大きい速度で一気にクランプ方向に回動される。このため、ウエハをクランプする際の衝撃が大きくなるという不都合がある。
【0005】
そこで、従来、上記した不都合を解消するための技術が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。上記特許文献2には、電磁アクチュエータと、電磁アクチュエータに取り付けられ、薄板状物を把持するためのクランプ部と、クランプ部に取り付けられ、クランプ部を薄板状物をクランプする方向に付勢するためのばね部材とを備えた薄板状物の把持装置が開示されている。また、電磁アクチュエータには、薄板状物の位置を検出する位置検出器が設けられている。この把持装置では、薄板状物のクランプ時には、ばね部材の付勢力により、クランプ部が薄板状物をクランプする方向へ移動する際に、位置検出器により薄板状物の位置を検出して、位置検出器による検出結果に基づいて、電磁アクチュエータの動作を制御することにより、クランプ部が薄板状物に接触する前にクランプ部の移動速度を減速させるように制御する。これにより、クランプ部により薄板状物をクランプする際の衝撃を緩和することが可能である。一方、クランプ部により薄板状物をクランプしていないアンクランプ時には、電磁アクチュエータにより、ばね部材の付勢力に抗する方向に推力を発生させることにより、クランプ部がアンクランプする方向に移動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−37960号公報
【特許文献2】特開2004−119554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2では、クランプ部により薄板状物をクランプする際の衝撃を緩和することが可能である一方、薄板状物の位置を検出する位置検出器を電磁アクチュエータに追加的に設けているため、電磁アクチュエータの構成が複雑化するという問題点がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、クランプ部により薄板状物をクランプする際の衝撃を緩和しながら、位置検出器を用いることに起因する電磁アクチュエータの構成の複雑化を抑制することが可能な把持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における把持装置は、薄板状物をクランプする方向に移動する可動部を含むクランプ部と、クランプ部の可動部をクランプする方向に常時付勢するばね部材と、少なくともクランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に推力を発生させる電磁アクチュエータとを備え、電磁アクチュエータは、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に、ばね部材のクランプ方向への付勢力による可動部の移動速度を低減する方向に推力を発生させる励磁コイルを有する励磁回路を含む。
【0010】
この一の局面による把持装置では、上記のように、クランプ部の可動部をクランプする方向に常時付勢するばね部材と、少なくともクランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に、ばね部材のクランプ方向への付勢力による可動部の移動速度を低減する方向に推力を発生させる励磁コイルを有する電磁アクチュエータとを設けることによって、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に、励磁コイルにより発生される推力によって可動部の移動速度が低減されるので、クランプ部が薄板状物に対して大きい速度で接触するのが抑制される。これにより、薄板状物をクランプする際の衝撃を緩和することができるので、薄板状物の破損やパーティクル(ゴミ)の発生を抑制することができる。また、通常電磁アクチュエータが備えている励磁回路を用いてクランプ部の速度制御を行うことによって、薄板状物をクランプする際に、薄板状物の位置を検出する位置検出器を電磁アクチュエータに追加的に設けることなく、可動部の移動速度を低減させることができるので、位置検出器を用いることに起因する電磁アクチュエータの構成の複雑化を抑制することができる。
【0011】
上記一の局面による把持装置において、好ましくは、電磁アクチュエータは、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に励磁回路をオン状態からオフ状態にする時に、励磁回路を流れる電流が徐々に減少されることにより、ばね部材の付勢力による可動部の移動速度を低減する方向に推力を発生させるように構成されている。このように構成すれば、励磁回路に流れる電流が徐々に減少するのに伴って、可動部の移動速度を低減しながら可動部を薄板状物に対して徐々に接近させることができるので、薄板状物をクランプする際の衝撃を緩和することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、励磁回路は、励磁回路の電流を蓄電するコンデンサを含み、励磁回路をオン状態からオフ状態にする時に、コンデンサに蓄電された電流を流すことにより、励磁回路を流れる電流が徐々に減少するように構成されている。このように構成すれば、コンデンサに蓄電された電流が放電に伴って自動的に徐々に減少するので、励磁回路にコンデンサを設けるだけで、可動部の移動速度を低減しながら可動部を薄板状物に対して徐々に接近させることができる。
【0013】
上記励磁回路を流れる電流が徐々に減少される把持装置において、好ましくは、励磁回路は、オン時には電流が流れずにオフ時の逆起電力発生時に電流を流すためのダイオードを含むバイパス回路を含み、励磁回路をオン状態からオフ状態にする時に、励磁コイルに過渡的に発生する逆起電力による電流を、バイパス回路を介して流すことにより、励磁回路を流れる電流が徐々に減少するように構成されている。このように構成すれば、励磁回路をオン状態からオフ状態にした際に、過渡的に発生する逆起電力による電流により、励磁コイルが可動部の移動速度を低減する方向に推力を発生するので、可動部の移動速度を低減しながら可動部を薄板状物に対して徐々に接近させることができる。
【0014】
上記励磁回路を流れる電流が徐々に減少される把持装置において、好ましくは、励磁回路は、複数の励磁コイルと、複数の励磁コイルのそれぞれに対応するように設けられ、複数の励磁コイルのオンオフ動作を制御する複数のスイッチ部とを含み、励磁回路をオン状態からオフ状態にする時に、複数の励磁コイルが順次オフするように複数のスイッチ部を制御することにより、励磁回路を流れる電流が徐々に減少するように構成されている。このように構成すれば、複数のスイッチ部を順次オフすることにより、段階的に電流が流れる励磁コイルの数を減少させることができるので、段階的に可動部を薄板状物に対して接近させることができる。また、複数の励磁コイルを順次オフして電流が流れる励磁コイルの数を減少させていく際の各段階の励磁コイルへの通電時間を制御することによって、より適切に可動部の移動速度の低減度合いを制御することができる。
【0015】
上記一の局面による把持装置において、好ましくは、クランプ部および電磁アクチュエータは、真空中において使用され、電磁アクチュエータは、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に加えて、クランプ解除状態でも推力を発生するように構成されており、クランプ解除状態では、励磁回路がオン状態にされて電流が流されることによりばね部材の付勢力に抗する方向の推力が電磁アクチュエータに発生されて可動部がクランプ方向とは逆方向に移動されるとともに、クランプ状態では、励磁回路がオフ状態にされて電流が流れないことにより電磁アクチュエータに推力が発生されないとともにばね部材の付勢力により可動部がクランプする方向に付勢されることによりクランプが行われるように構成されている。このように構成すれば、励磁回路をオン状態にした場合には、ばね部材の付勢力に抗した推力が電磁アクチュエータに発生されて可動部が薄板状物から遠ざかるので、容易に、薄板状物をクランプ解除状態(アンクランプ状態)にすることができる。また、励磁回路をオフ状態にした場合には、たとえば電源から励磁回路に電流が流れないので、励磁回路の発熱を抑制することができる。これにより、電磁アクチュエータが高温になるのが抑制されるので、電磁アクチュエータの熱が放熱されにくい真空中においても電磁アクチュエータを使用することができる。
【0016】
上記一の局面による把持装置において、好ましくは、電磁アクチュエータの励磁回路は、流れる電流の方向を変更可能なように構成されており、クランプ状態で、励磁回路のオン時とは逆方向に電流を流すことによって、ばね部材の付勢力による可動部のクランプ力をアシストする方向の推力を電磁アクチュエータに発生させるように構成されている。このように構成すれば、ばね部材の付勢力が弱く、薄板状物を十分にクランプできない場合に、ばね部材の付勢力に電磁アクチュエータの推力をクランプ力として補うことができるので、薄板状物を確実にクランプすることができる。
【0017】
上記一の局面による把持装置において、好ましくは、電磁アクチュエータは、扁平型のリニアモータを含む。このように構成すれば、扁平型のリニアモータにより、薄型化を図ることができるので、真空中において使用される際に、真空装置内へアクセスするための高さの小さい通路(ゲートバルブの開口部)を通過させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態による電磁グリッパを備えるマルチチャンバタイプの真空処理装置を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態による電磁グリッパを示す平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による電磁グリッパの電磁アクチュエータの詳細を示す図である。
【図4】図3の300−300線に沿った断面図である。
【図5】図3の400−400線に沿った断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態による励磁回路がオン状態の場合の等価回路図である。
【図7】本発明の第1実施形態による励磁回路がオフ状態の場合の等価回路図である。
【図8】本発明の第1実施形態によるウエハクランプ状態を説明するための平面図である。
【図9】本発明の第1実施形態によるウエハクランプ状態を説明するための断面図である。
【図10】本発明の第1実施形態による電磁グリッパが真空処理装置のゲートバルブの開口部を通過している状態を示す図である。
【図11】本発明の第1実施形態の変形例を説明するための励磁回路の等価回路図である。
【図12】本発明の第2実施形態による励磁回路がオン状態の場合の等価回路図である。
【図13】本発明の第2実施形態による励磁回路がオフ状態の場合の等価回路図である。
【図14】本発明の第3実施形態による励磁回路の3つのスイッチがオン状態の場合の等価回路図である。
【図15】本発明の第3実施形態による励磁回路の2つのスイッチがオン状態の場合の等価回路図である。
【図16】本発明の第3実施形態による励磁回路の1つのスイッチがオン状態の場合の等価回路図である。
【図17】本発明の第3実施形態による励磁回路のスイッチがオフ状態の場合の等価回路図である。
【図18】本発明の第4実施形態による電流制御回路を含む励磁回路の等価回路図である。
【図19】本発明の第4実施形態による励磁回路をオフ状態にする際の励磁電流と時間との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1〜図5を参照して、本発明の第1実施形態による電磁グリッパ100を備える真空処理装置200について説明する。なお、電磁グリッパ100は、本発明の「把持装置」の一例である。
【0021】
本発明の第1実施形態による電磁グリッパ100を備えるマルチチャンバタイプの真空処理装置200は、図1に示すように、4つの真空処理ユニット1、2、3および4を備えている。この真空処理ユニット1〜4は、搬送室5の外周に設けられている。なお、搬送室5内は、所定の真空度に保たれている。また、搬送室5の外周には、搬送室5以外にロードロック室6および7が設けられている。このロードロック室6および7の搬送室5とは反対側には、搬入出室8が設けられている。搬入出室8のロードロック室6および7とは反対側には、被処理基板としての半導体用のウエハ9を収容可能なキャリア10をそれぞれ取り付けるための3つのポート11が設けられている。なお、ウエハ9は、本発明の「薄板状物」の一例である。
【0022】
また、真空処理ユニット1〜4は、搬送室5の周辺にゲートバルブ12を介して接続されている。また、ゲートバルブ12を開放することにより搬送室5と真空処理ユニット1〜4とが繋がり、ゲートバルブ12を閉じることにより搬送室5と真空処理ユニット1〜4とが遮断される。また、ロードロック室6および7は、それぞれ、ゲートバルブ12aを介して搬送室5に接続されている。また、ロードロック室6および7は、それぞれ、ゲートバルブ12aを介して、搬入出室8に接続されている。そして、ロードロック室6および7は、ゲートバルブ12aを開放することにより搬送室5と繋がり、ゲートバルブ12aを閉じることにより搬送室5から遮断される。また、ロードロック室6および7は、ゲートバルブ12aを開放することにより搬入出室8に繋がり、ゲートバルブ12aを閉じることにより搬入出室8から遮断される。
【0023】
搬送室5内には、真空処理ユニット1〜4、ロードロック室6および7に対して、ウエハ9の搬入出を行う水平多関節型のウエハ搬送ロボット5aが設けられている。このウエハ搬送ロボット5aは、搬送室5の略中央に配置されており、複数の関節の駆動により旋回および伸縮可能に構成されるとともに、アーム部の先端に設けられた電磁グリッパ100を有している。
【0024】
電磁グリッパ100は、図2に示すように、根元部100bから延びるように設けられるとともに、略U字形状を有し、ウエハ9を支持するための支持アーム100aを有している。電磁グリッパ100の支持アーム100aの表面上には、ウエハ9をクランプ(把持)するための先端の2つの固定爪20と、ウエハ9を摺動させるための2つのウエハ摺動部材21とが設けられている。
【0025】
また、電磁グリッパ100の矢印X2方向側の根元部100bの表面上には、電磁アクチュエータ22が設けられている。この電磁アクチュエータ22は、後述する平坦面状の励磁コイル27a〜27cと、永久磁石29a〜29f(図3参照)とを含む扁平型のリニアモータを含む。また、電磁アクチュエータ22は、固定部23と、固定部23に対してX方向に移動(摺動)可能なクランプ部24とを含んでいる。また、クランプ部24は、ウエハ9をクランプする方向(矢印X1方向)に移動可能な可動部25と、ウエハ9をクランプするための可動爪26とを含んでいる。
【0026】
また、第1実施形態では、図3に示すように、固定部23は、3つの渦巻き状の励磁コイル27a、27bおよび27cを有する励磁回路28を含んでいる。3つの励磁コイル27a〜27cは、X方向に沿って隣接するように配置されるとともに、直列接続されている。また、可動部25は、固定部23の励磁コイル27a〜27cに対向するように配置された6つの永久磁石29a、29b、29c、29d、29eおよび29fを含んでいる。6つの永久磁石29a〜29fは、それぞれY方向に延びるように形成されるとともに、X方向に沿って隣接するように配置されている。また、永久磁石29a、29b、29c、29d、29eおよび29fは、図4に示すように、上面側(矢印Z1方向側)から見て、S極、N極、S極、N極、S極、N極の順に配置されているとともに、下面側(矢印Z2方向側)から見て、N極、S極、N極、S極、N極、S極の順に配置されている。また、励磁コイル27a〜27cは、永久磁石29a〜29fに発生するZ方向の磁界と交差するように配置されている。
【0027】
また、図3に示すように、直列接続された3つの励磁コイル27a〜27cには、後述する直流電源40が接続されている。3つの励磁コイル27a〜27cには、直流電源40から直流電流が供給されるように構成されており、3つの励磁コイル27a〜27cに電流が供給される場合には、図4に示すように、3つの励磁コイル27a〜27cに流れる電流と、6つの永久磁石29a〜29fから発生する磁界との間に矢印X2方向に推力(電磁力)が発生するように構成されている。また、励磁コイル27a〜27cに電流が供給されない場合には、励磁コイル27a〜27cと永久磁石29a〜29fとの間には、推力は発生せず、可動部25は、後述するばね部材30の付勢力により、矢印X1方向に移動するように構成されている。そして、可動部25は、可動爪26がウエハ9に接触することにより、ウエハ9を矢印X1方向側の2つの固定爪20に押し付けるように移動(摺動)させるように構成されている。これにより、可動爪26と2つの固定爪20とによって、ウエハ9がクランプされるように構成されている。なお、励磁コイル27a〜27cと永久磁石29a〜29fとの間に発生する推力は、ばね部材30の付勢力よりも大きくなるように構成されている。
【0028】
また、図3に示すように、固定部23と可動部25との間には、ばね部材30が配置されている。このばね部材30は、圧縮ばねからなり、可動部25の矢印Y1方向側と、矢印Y2方向側とにそれぞれ1つずつ設けられている。また、ばね部材30は、可動部25をクランプする方向(矢印X1方向)に常時付勢するように構成されている。
【0029】
また、可動部25の矢印Y1方向側と、矢印Y2方向側とには、それぞれ、可動部25をX方向に移動させるのをガイドするためのリニアガイド31が1つずつ設けられている。このリニアガイド31は、図5に示すように、可動部25側に設けられたスライダ32と、固定部23側に設けられたレール33とを含んでおり、可動部25側のスライダ32が固定部23側のレール33上をX方向に沿って摺動(スライド)するように構成されている。また、図3に示すように、固定部23の矢印X1方向側と、矢印X2方向側とには、それぞれ、可動部25がX方向に移動するのを規制するためのストッパ34aおよび34bが1つずつ設けられている。
【0030】
次に、図6を参照して、励磁回路28の詳細な構成について説明する。
【0031】
第1実施形態では、励磁回路28は、上記した直列接続された3つの励磁コイル27a〜27cと、励磁コイル27a〜27cに直流電流を供給するための直流電源40と、電流を蓄電するためのコンデンサ35と、スイッチ部41とを含んでいる。直流電源40の+端子は、励磁コイル27aの一方端およびコンデンサ35の一方電極に接続されている。また、励磁コイル27aの他方端は、励磁コイル27bの一方端に接続されるとともに、励磁コイル27bの他方端は、励磁コイル27cの一方端に接続されている。また、励磁コイル27cの他方端およびコンデンサ35の他方電極は、スイッチ部41の一方端に接続されている。また、スイッチ部41の他方端は、直流電源40の−端子に接続されている。
【0032】
次に、図4および図6〜図10を参照して、電磁グリッパ100の動作について説明する。
【0033】
まず、ウエハ9のクランプ状態(ウエハ9をクランプする状態)を解除する場合には、図6に示すように、スイッチ部41がオン状態(励磁回路28がオン状態)となり、直流電源40から励磁コイル27a〜27cおよびコンデンサ35に電流が供給される。このとき、コンデンサ35には、電流が蓄電(充電)される。また、励磁コイル27a〜27cに流れる電流と、永久磁石29a〜29f(図4参照)から発生する磁界との間に発生する推力(電磁力)により、可動部25は、ばね部材30の矢印X1方向の付勢力に打ち勝つようにして、矢印X2方向に移動する。そして、可動部25が矢印X2方向側のストッパ34bに当接することにより、可動部25の移動が停止するとともに、クランプ解除状態(ウエハ9をクランプしない状態)となる。
【0034】
次に、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する場合には、スイッチ部41がオフ状態(励磁回路28がオフ状態)となり、直流電源40から励磁コイル27a〜27cへの電流供給が停止される。ここで、第1実施形態では、図7に示すように、電磁アクチュエータ22の励磁回路28は、クランプ解除状態(ウエハ9をクランプしない状態)からクランプ状態(ウエハ9をクランプする状態)に移行する際に励磁回路28をオン状態からオフ状態にする時に、コンデンサ35に蓄電された電流を流すことにより、励磁回路28を流れる電流が徐々に減少されることにより、ばね部材30のクランプ方向(矢印X1方向)への付勢力による可動部25の移動速度を低減する方向(矢印X2方向)に推力を発生させる。
【0035】
つまり、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する場合には、コンデンサ35は、クランプ状態の解除時に充電されているので、コンデンサ35から励磁コイル27a〜27cに電流が供給される。これにより、励磁コイル27a〜27cに流れる電流と、永久磁石29a〜29f(図4参照)から発生する磁界との間には、ばね部材30の付勢力よりも小さく、かつ、付勢力と反対方向(矢印X2方向)の推力(電磁力)が発生する。この矢印X2方向の推力(電磁力)によって、可動部25に作用するばね部材30による矢印X1方向への付勢力の一部が相殺されて小さくなるので、可動部25は、移動速度が低減された状態でゆっくりと矢印X1方向に移動するとともに、可動爪26がウエハ9に小さい速度でゆっくりと接触する。これにより、図8および図9に示した状態になる。なお、矢印X2方向に発生する推力は、コンデンサ35に蓄電された電流の放電に伴って徐々に小さくなるので、可動爪26を介してウエハ9に作用するばね部材30の矢印X1方向の付勢力(押圧力)は、徐々に大きくなる。このウエハ9に作用する矢印X1方向のばね部材30の付勢力の増大に伴ってウエハ9が矢印X1方向に移動を開始し、固定爪20と当接する。その後、コンデンサ35に蓄電された電流が完全に放電されると推力は発生しなくなり、ばね部材30の付勢力のみがウエハ9に作用して、クランプ状態となる。その後、クランプされたウエハ9は、図10に示すように、真空処理装置200の高さの小さいゲートバルブ12(12a)を通過して真空処理ユニット1〜4、または、ロードロック室6および7に搬送される。
【0036】
第1実施形態では、上記のように、クランプ部24の可動部25をクランプする方向(矢印X1方向)に常時付勢するばね部材30と、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に、ばね部材30のクランプ方向への付勢力による可動部25の移動速度を低減する方向(矢印X2方向)に推力を発生させる励磁コイル27a〜27cを有する電磁アクチュエータ22とを設けることによって、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に、励磁コイル27a〜27cにより発生される推力によって可動部25の移動速度が低減されるので、クランプ部24がウエハ9に対して大きい速度で接触するのが抑制される。これにより、ウエハ9をクランプする際の衝撃を緩和することができるので、ウエハ9の破損やパーティクル(ゴミ)の発生を抑制することができる。また、通常電磁アクチュエータ22が備えている励磁回路28を用いてクランプ部24の速度制御を行うことによって、ウエハ9をクランプする際に、ウエハ9の位置を検出する位置検出器を電磁アクチュエータ22に追加的に設けることなく、可動部25の移動速度を低減させることができるので、位置検出器を用いることに起因する電磁アクチュエータ22の構成の複雑化を抑制することができる。
【0037】
また、第1実施形態では、上記のように、電磁アクチュエータ22が、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に励磁回路28をオン状態からオフ状態にする時に、励磁回路28を流れる電流が徐々に減少されることにより、ばね部材30の付勢力による可動部25の移動速度を低減する方向に推力を発生させる。これにより、励磁回路28に流れる電流が徐々に減少するのに伴って、可動部25の移動速度を低減しながら可動部25をウエハ9に対して徐々に接近させることができるので、ウエハ9をクランプする際の衝撃を緩和することができる。
【0038】
また、第1実施形態では、上記のように、励磁回路28をオン状態からオフ状態にする時に、コンデンサ35に蓄電された電流を流すことにより、励磁回路28を流れる電流を徐々に減少させることによって、コンデンサ35に蓄電された電流が放電に伴って自動的に徐々に減少するので、励磁回路28にコンデンサ35を設けるだけで、可動部25の移動速度を低減しながら可動部25をウエハ9に対して徐々に接近させることができる。
【0039】
また、第1実施形態では、上記のように、クランプ解除状態では、励磁回路28がオン状態にされて電流が流されることによりばね部材30の付勢力に抗する方向の推力が電磁アクチュエータ22に発生されて可動部25をクランプ方向とは逆方向に移動させるとともに、クランプ状態では、励磁回路28がオフ状態にされて電流が流れないことにより電磁アクチュエータ22に推力が発生されないとともにばね部材30の付勢力により可動部25をクランプする方向に付勢させることによりクランプを行う。これにより、励磁回路28をオン状態にした場合には、ばね部材30の付勢力に抗した推力が電磁アクチュエータ22に発生されて可動部25がウエハ9から遠ざかるので、容易に、ウエハ9をクランプ解除状態(アンクランプ状態)にすることができる。また、励磁回路28をオフ状態にした場合には、直流電源40から励磁回路28に電流が流れないので、励磁回路28の発熱を抑制することができる。これにより、電磁アクチュエータ22が高温になるのが抑制されるので、電磁アクチュエータ22の熱が放熱されにくい真空中においても電磁アクチュエータ22を使用することができる。
【0040】
また、第1実施形態では、上記のように、電磁アクチュエータ22を、平坦面状の励磁コイル27a〜27cと永久磁石29a〜29fとを含む扁平型のリニアモータにすることによって、薄型化を図ることができるので、真空中において使用される際に、真空処理装置200内へアクセスするための高さの小さい通路(ゲートバルブ12(12a)の開口部)を通過させることができる。
【0041】
(第1実施形態の変形例)
次に、図11を参照して、本発明の第1実施形態の変形例について説明する。この第1実施形態の変形例では、電磁アクチュエータ22の推力により、クランプ状態に移行する際の移動速度を低減するように構成した上記第1実施形態において、さらに、電磁アクチュエータの推力によりウエハのクランプ力をアシストする例について説明する。
【0042】
本発明の第1実施形態の変形例による電磁グリッパ101の励磁回路128は、図11に示すように、励磁コイル27a〜27cに順方向(矢印A方向)と、逆方向(矢印B方向)とに供給する電流の方向を切り替えることが可能な可変電源40aを含んでいる。なお、第1実施形態の変形例のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0043】
次に、この第1実施形態の変形例による電磁グリッパ101の励磁回路128の動作について説明する。
【0044】
まず、上記した第1実施形態と同様、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に、励磁回路128がオン状態からオフ状態になった場合に、コンデンサ35に蓄電されていた電流を流すことにより、ばね部材30の矢印X1方向の付勢力を減少させる矢印X2方向の推力をアクチュエータ22に発生させることによって、可動部25が矢印X1方向に速度を減少された状態で移動する。そして、可動部25の可動爪26がウエハ9に小さい速度でゆっくりと接触するとともに、ウエハ9を固定爪20に対して押圧することにより、クランプ状態となる。ここで、第1実施形態の変形例では、図11に示すように、電磁アクチュエータ22は、クランプ状態で、励磁回路128に通常のオン状態とは逆方向(矢印B方向)に電流を流すことによって、ばね部材30の付勢力による可動部25のクランプ力をアシストする方向(矢印X1方向)の推力を発生させる。つまり、ウエハ9のクランプ状態で、励磁回路128に供給されている電流の方向を順方向(矢印A方向)から逆方向(矢印B方向)に切り替えることによって、電磁アクチュエータ22から矢印X1方向の推力が発生する。これにより、ばね部材30の矢印X1方向に向かって働く付勢力(クランプ力)を電磁アクチュエータ22から矢印X1方向に向かって働く推力によりアシストする(補う)ことが可能である。なお、第1実施形態の変形例のその他の動作は、上記第1実施形態と同様である。
【0045】
第1実施形態の変形例では、上記のように、クランプ状態で、励磁回路28に逆方向の電流を流すことによって、ばね部材30の付勢力による可動部25のクランプ力をアシストする方向の推力を電磁アクチュエータ22が発生することによって、ばね部材30の付勢力が弱く、ウエハ9を十分にクランプできない場合に、ばね部材30の付勢力に電磁アクチュエータ22の推力をクランプ力として補うことができるので、ウエハ9を確実にクランプすることができる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、図12を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、コンデンサを含む励磁回路を電磁アクチュエータに適用した上記第1実施形態とは異なり、ダイオードを含む励磁回路を電磁アクチュエータに適用した例について説明する。
【0047】
この第2実施形態による電磁グリッパ102の励磁回路28aは、励磁コイル27a〜27cと、直流電源40と、バイパス回路281aと、スイッチ部41とを含んでいる。なお、バイパス回路281aは、1つのダイオード281bを含む。バイパス回路281aは、励磁回路28aのオン状態では、電流が流れずに、励磁回路28aをオフ状態にした際に発生する逆起電力による電流を流すために設けられている。また、直流電源40の+端子は、励磁コイル27aの一方端およびバイパス回路281aの一方端に接続されている。また、励磁コイル27aの他方端は、励磁コイル27bの一方端に接続されるとともに、励磁コイル27bの他方端は、励磁コイル27cの一方端に接続されている。また、励磁コイル27cの他方端およびバイパス回路281aの他方端は、スイッチ部41の一方端に接続されている。また、スイッチ部41の他方端は、直流電源40の−端子に接続されている。なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0048】
次に、図4、図10、図12および図13を参照して、電磁グリッパ102の動作について説明する。
【0049】
まず、ウエハ9のクランプ状態を解除する場合では、図12に示すように、スイッチ部41がオン状態(励磁回路28aがオン状態)となり、直流電源40の+端子側から励磁コイル27a〜27cに電流が供給される。このとき、ダイオード281bの整流作用によって、バイパス回路281aには、電流は流れない。また、励磁コイル27a〜27cに流れる電流と、永久磁石29a〜29fから発生する磁界との間に発生する推力(電磁力)により、可動部25は、ばね部材30の矢印X1方向の付勢力に打ち勝つようにして、矢印X2方向に移動する。そして、可動部25が矢印X2方向側のストッパ34bに当接することにより、可動部25の移動が停止するとともに、クランプ解除状態(図4参照)となる。
【0050】
次に、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する場合には、スイッチ部41がオフ状態(励磁回路28aがオフ状態)となり、直流電源40から励磁コイル27a〜27cへの電流供給が停止される。ここで、第2実施形態では、図13に示すように、電磁アクチュエータ22の励磁回路28aは、クランプ解除状態(ウエハ9をクランプしない状態)からクランプ状態(ウエハ9をクランプする状態)に移行する際に励磁回路28aをオン状態からオフ状態にする時に、励磁コイル27a〜27cに過渡的に発生する逆起電力による電流を、バイパス回路281aを介して流すことにより、励磁回路28aを流れる電流が徐々に減少する。
【0051】
つまり、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する場合には、スイッチ部41がオフ状態(励磁回路28aがオフ状態)となり、直流電源40から励磁コイル27a〜27cへの電流供給が停止される。この際、固定部23の励磁コイル27a〜27cには、逆起電力が発生し、バイパス回路281aのダイオード281bを介して励磁コイル27a〜27cに電流が流れる。これにより、励磁コイル27a〜27cに流れる電流と、永久磁石29a〜29f(図4参照)から発生する磁界との間には、ばね部材30の付勢力よりも小さな付勢力とは反対方向(矢印X2方向)の推力(電磁力)が発生する。この矢印X2方向の推力(電磁力)によって、可動部25に作用するばね部材30による矢印X1方向への付勢力の一部が相殺されて小さくなるので、可動部25は、移動速度が低減された状態でゆっくりと矢印X1方向に移動するとともに、可動爪26がウエハ9に小さい速度でゆっくりと接触する。なお、矢印X2方向に発生する推力は、励磁コイル27a〜27cに流れる電流の減少に伴って徐々に小さくなるので、可動爪26を介してウエハ9に作用するばね部材30の矢印X1方向の付勢力(押圧力)は、徐々に大きくなる。このウエハ9に作用する矢印X1方向のばね部材30の付勢力の増大に伴ってウエハ9が矢印X1方向に移動を開始し、固定爪20と当接する。その後、逆起電力が発生しなくなると推力は発生しなくなり、ばね部材30の付勢力のみがウエハ9に作用して、クランプ状態となる。その後、クランプされたウエハ9は、図10に示すように、真空処理装置200の高さの小さいゲートバルブ12(12a)を通過して真空処理ユニット1〜4、または、ロードロック室6および7に搬送される。
【0052】
第2実施形態では、上記のように、励磁回路28aをオン状態からオフ状態にする時に、励磁コイル27a〜27cに過渡的に発生する逆起電力による電流を、バイパス回路281aを介して流すことにより、励磁回路28aを流れる電流を徐々に減少させることによって、励磁回路28aをオン状態からオフ状態にした際に、過渡的に発生する逆起電力による電流により、励磁コイル27a〜27cが可動部25の移動速度を低減する方向に推力を発生するので、可動部25の移動速度を低減しながら可動部25をウエハ9に対して徐々に接近させることができる。
【0053】
(第3実施形態)
次に、図14を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、励磁回路の3つの励磁コイル27a〜27cを直列接続した上記第1実施形態とは異なり、励磁回路の3つの励磁コイル27a〜27cを並列接続した例について説明する。
【0054】
本発明の第3実施形態による電磁グリッパ103の励磁回路28bは、並列接続された3つの励磁コイル27a、27bおよび27cと、3つの励磁コイル27a、27bおよび27cに直流電流を供給するための直流電源40と、3つのスイッチ部41a、41bおよび41cとを含んでいる。
【0055】
また、励磁コイル27a〜27cのそれぞれの一方端は、直流電源40の+端子に接続されている。また、スイッチ部41a〜41cの一方端は、それぞれ、励磁コイル27a〜27cの他方端に接続されている。また、スイッチ部41a〜41cの他方端は、直流電源40の他方端に接続されている。また、スイッチ部41a〜41cは、それぞれ、励磁コイル27a〜27cのオンオフ動作を制御するように構成されている。また、励磁コイル27a〜27cには、それぞれ別個に電流を供給可能に構成されているので、励磁コイル27a〜27cに別個に推力を発生させることが可能である。
【0056】
次に、図4、図14〜図17を参照して、電磁グリッパ103の動作について説明する。
【0057】
まず、ウエハ9のクランプ状態を解除する場合には、図14に示すように、3つのスイッチ部41a〜41cがオン状態(励磁回路28bがオン状態)となり、直流電源40から3つの励磁コイル27a〜27cにそれぞれ電流が供給される。このとき、励磁コイル27a〜27cに流れる電流と、永久磁石29a〜29fから発生する磁界との間に発生する推力(電磁力)により、可動部25は、ばね部材30の矢印X1方向の付勢力に打ち勝つようにして、矢印X2方向に移動する。そして、可動部25が矢印X2方向側のストッパ34bに当接することにより、可動部25の移動が停止するとともに、クランプ解除状態(図4参照)となる。
【0058】
次に、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する場合には、第3実施形態では、図15〜図17に示すように、励磁コイル27a〜27cが順次オフするようにスイッチ部41a〜41cを制御することにより、励磁回路28bを流れる電流を徐々に減少させる。この際、スイッチ部41a〜41cを1個ずつ所定の時間差でオフ状態にする。このオフ状態にする時間差(電流が流れる励磁コイル27a〜27cの数を減少させていく際の各段階の励磁コイル27a〜27cへの通電時間)は、任意に調整(制御)可能である。
【0059】
つまり、ウエハ9をクランプ解除状態からクランプ状態に移行する場合では、図15に示すように、最初に、スイッチ部41aがオフ状態となり、直流電源40から励磁コイル27aへの電流供給が停止する。このとき、励磁コイル27aと、励磁コイル27aに対応する永久磁石29aおよび29bから発生する磁界との間の推力(電磁力)が発生しなくなる。これにより、可動部25は、ばね部材30の矢印X1方向の付勢力により、ばね部材30の付勢力と、推力とがつりあう位置まで矢印X1方向に移動する。なお、1個の励磁コイルをオフ状態にした場合に、ばね部材30の付勢力が大きい際には、可動部25は、矢印X1方向に移動し始めるが、ばね部材30の伸びに合わせて付勢力も弱くなるため、可動部25の移動動作が止まるか、または、速度が遅くなる。
【0060】
次に、図16に示すように、スイッチ部41bもオフ状態となり、直流電源40から励磁コイル27bへの電流供給が停止する。このとき、励磁コイル27bと、励磁コイル27bに対応する永久磁石29cおよび29dから発生する磁界との間の推力(電磁力)が発生しなくなる。これにより、可動部25は、ばね部材30の矢印X1方向の付勢力により、矢印X1方向にさらに移動するとともに、可動部25の可動爪26がウエハ9に接触する。このとき、ばね部材30の付勢力と、矢印X2方向の推力との差分が、ウエハ9を矢印X2方向へ押圧する力(押圧力)となる。
【0061】
最後に、図17に示すように、スイッチ部41cがオフ状態となり、直流電源40から励磁コイル27cへの電流供給が停止する。つまり、3つのスイッチ部41a〜41cの全てがオフ状態となる。このとき、励磁コイル27cと、励磁コイル27cに対応する永久磁石29eおよび29fから発生する磁界との間の推力(電磁力)が発生しなくなる。これにより、ウエハ9に作用する矢印X1方向のばね部材30の付勢力の増大に伴ってウエハ9が矢印X1方向に移動を開始し、固定爪20と当接する。その後、ばね部材30の付勢力のみがウエハ9に作用して、クランプ状態となる。なお、1つのスイッチ部41a、または、2つのスイッチ部41aおよび41bがオフ状態になった際に、可動部25の可動爪26がウエハ9に接触していてもよい。このように、スイッチ部41a〜41cを順次(段階的に)オフすることにより、可動部25を矢印X1方向に徐々に段階的に移動させることが可能である。なお、上記第1実施形態の変形例に示したように、直流電源40を可変電源40aに置き換えて、ウエハ9のクランプ時に逆方向の電流を励磁コイル27a〜27cに供給することにより、ウエハ9のクランプ時のクランプ力をアシストすることも可能である。
【0062】
第3実施形態では、上記のように、励磁回路28bをオン状態からオフ状態にする時に、励磁コイル27a〜27cが順次オフするように3つのスイッチ部41a〜41cを制御することにより、励磁回路28bを流れる電流を徐々に減少させることによって、3つのスイッチ部41a〜41cを順次オフすることにより、段階的に電流が流れる励磁コイル27a〜27cの数を減少させることができるので、段階的に可動部25をウエハ9に対して接近させることができる。また、励磁コイル27a〜27cを順次オフして電流が流れる励磁コイル27a〜27cの数を減少させていく際の各段階の励磁コイル27a〜27cへの通電時間を制御することによって、より適切に可動部25の移動速度の低減度合いを制御することができる。
【0063】
(第4実施形態)
次に、図18を参照して、本発明の第4実施形態について説明する。この第4実施形態では、電磁アクチュエータを励磁するために直流電源およびスイッチ部により構成した上記第1実施形態とは異なり、電磁アクチュエータを励磁するために電流制御回路50により励磁オフ時に電流のコントロールを行い、徐々に励磁コイルに流れる電流をオフする例について説明する。
【0064】
この第4実施形態による電磁グリッパ104の励磁回路28cは、励磁コイル27a〜27cと、電流制御回路50とを含んでいる。励磁コイル27aの他方端は、励磁コイル27bの一方端に接続されるとともに、励磁コイル27bの他方端は、励磁コイル27cの一方端に接続されている。また、励磁コイル27aの一方端と、励磁コイル27cの他方端との間には、電流制御回路50が設けられ、電流制御回路50は、励磁コイル27a〜27cの励磁電流量をコントロールしている。この電流制御回路50は、マイコン制御で動作するものであり、内臓されているプログラムにより励磁回路オン/オフ信号を受信することによって、所望の電流パターンを出力する回路である。なお、第4実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0065】
次に、図4、図10、図18および図19を参照して、電磁グリッパ104の動作について説明する。
【0066】
まず、ウエハ9のクランプ状態を解除する場合では、図18において励磁オン信号を受信することにより電流制御回路50から矢印方向(時計回り方向)に所定の電流が流れ、励磁コイル27a〜27cに電流が供給される。励磁コイル27a〜27cに流れる電流と、永久磁石29a〜29f(図4参照)から発生する磁界との間に発生する推力(電磁力)により、可動部25は、ばね部材30の矢印X1方向の付勢力に打ち勝つようにして、矢印X2方向に移動する。そして、可動部25が矢印X2方向側のストッパ34bに当接することにより、可動部25の移動が停止するとともに、クランプ解除状態(図4参照)となる。
【0067】
次に、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する場合には、電流制御回路50は、励磁オフ信号を受信することにより励磁コイル27a〜27cへの電流供給を停止する。ここで、第4実施形態では、電流制御回路50からの電流供給を即座(瞬時)に停止するのではなく、図19に示すように、励磁電流を時間が経過するのに伴って徐々に減少させるように、電流制御回路50を予め構成する。
【0068】
つまり、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する場合には、励磁コイル27a〜27cに流れる電流が徐々に減少するので、永久磁石29a〜29f(図4参照)により発生するばね部材30の付勢力に対抗する矢印X2方向の力は徐々に弱くなる。そのため可動部25は、移動速度が低減された状態でゆっくりと矢印X1方向に移動するとともに、可動爪26がウエハ9に小さい速度でゆっくりと接触する。励磁電流がなくなると推力は発生しなくなり、ばね部材30の付勢力のみがウエハ9に作用して、クランプ状態となる。その後、クランプされたウエハ9は、図10に示すように、真空処理装置200の高さの小さいゲートバルブ12(12a)を通過して真空処理ユニット1〜4、または、ロードロック室6および7に搬送される。
【0069】
第4実施形態では、上記のように、励磁電流のオフ時に電流制御回路50を用いることにより励磁電流を徐々に低減させることによって、ばね部材30の付勢力に対抗する力を徐々に低減させることができる。これにより、可動部25の移動速度を低減させることができるので、可動部25をウエハ9に対して徐々に接近させることができる。
【0070】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0071】
たとえば、上記第1〜第4実施形態では、本発明の薄板状物の一例として、半導体用のウエハを示したが、本発明はこれに限らない。たとえば、薄板状物であれば半導体用のウエハ以外のガラス基板などの他の薄板状物でも適用可能である。
【0072】
また、上記第1〜第4実施形態では、電磁グリッパをマルチチャンバタイプの真空処理装置内において使用する例を示したが、本発明はこれに限らない。たとえば、電磁グリッパを大気圧下において使用する処理装置において使用してもよい。
【0073】
また、上記第1〜第4実施形態では、励磁回路にコンデンサ、ダイオードまたはスイッチ部を設ける例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、電磁アクチュエータがクランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に、ばね部材のクランプ方向への付勢力による可動部の移動速度を低減する方向に推力を発生させるものであれば、励磁回路にコンデンサ、ダイオードまたはスイッチ部以外の素子や回路を設けてもよい。
【0074】
また、上記第1〜第4実施形態では、2つのばね部材を用いて付勢力が発生するように構成する例を示したが、本発明はこれに限らない。たとえば、ばね部材を1つまたは3つ以上用いて付勢力が発生するように構成してもよい。
【0075】
また、上記第1〜第4実施形態では、固定部を3つの励磁コイルにより構成する例を示したが本発明はこれに限らない。たとえば、固定部を2つ以下または4つ以上の励磁コイルにより構成してもよい。
【符号の説明】
【0076】
9 ウエハ(薄板状物)
22 電磁アクチュエータ
24 クランプ部
25 可動部
27a、27b、27c 励磁コイル
28、28a、28b、28c、128 励磁回路
30 ばね部材
35 コンデンサ
41a、41b、41c スイッチ部
100、101、102、103、104 電磁グリッパ(把持装置)
281a バイパス回路
281b ダイオード
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持装置に関し、特に、薄板状物をクランプするためのクランプ部を備える把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウエハなどの薄板状物をクランプするためのクランプ部を備える把持装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、駆動軸を有する電磁アクチュエータ(ソレノイドアクチュエータ)と、電磁アクチュエータの駆動軸に取り付けられ、電磁アクチュエータの駆動軸の移動に伴って薄板状物(ウエハ)をクランプする方向およびアンクランプする方向に回動するクランプ部と、クランプ部をウエハをクランプする方向に付勢するためのばね部材とを備えたウエハハンドリングロボット用ハンド(把持装置)が開示されている。このウエハハンドリングロボット用ハンドでは、ウエハのクランプ時には、電磁アクチュエータの励磁を切ることにより、電磁アクチュエータのばね部材の付勢力に抗する方向の推力が発生しないので、ばね部材の付勢力により、クランプ部がウエハをクランプする方向へ回動されてウエハがクランプされる。一方、クランプ部によりウエハがクランプされていないアンクランプ時には、電磁アクチュエータを励磁させることにより、電磁アクチュエータにばね部材の付勢力に抗する方向の推力が発生されることによって、クランプ部がアンクランプする方向に回動される。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のウエハハンドリングロボット用ハンドでは、ウエハのクランプ時に、電磁アクチュエータの励磁を切ることにより、ばね部材の付勢力によりクランプ部がウエハをクランプするように回動されるので、電磁アクチュエータの励磁を切った瞬間にばね部材の付勢力により、クランプ部が大きい速度で一気にクランプ方向に回動される。このため、ウエハをクランプする際の衝撃が大きくなるという不都合がある。
【0005】
そこで、従来、上記した不都合を解消するための技術が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。上記特許文献2には、電磁アクチュエータと、電磁アクチュエータに取り付けられ、薄板状物を把持するためのクランプ部と、クランプ部に取り付けられ、クランプ部を薄板状物をクランプする方向に付勢するためのばね部材とを備えた薄板状物の把持装置が開示されている。また、電磁アクチュエータには、薄板状物の位置を検出する位置検出器が設けられている。この把持装置では、薄板状物のクランプ時には、ばね部材の付勢力により、クランプ部が薄板状物をクランプする方向へ移動する際に、位置検出器により薄板状物の位置を検出して、位置検出器による検出結果に基づいて、電磁アクチュエータの動作を制御することにより、クランプ部が薄板状物に接触する前にクランプ部の移動速度を減速させるように制御する。これにより、クランプ部により薄板状物をクランプする際の衝撃を緩和することが可能である。一方、クランプ部により薄板状物をクランプしていないアンクランプ時には、電磁アクチュエータにより、ばね部材の付勢力に抗する方向に推力を発生させることにより、クランプ部がアンクランプする方向に移動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−37960号公報
【特許文献2】特開2004−119554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2では、クランプ部により薄板状物をクランプする際の衝撃を緩和することが可能である一方、薄板状物の位置を検出する位置検出器を電磁アクチュエータに追加的に設けているため、電磁アクチュエータの構成が複雑化するという問題点がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、クランプ部により薄板状物をクランプする際の衝撃を緩和しながら、位置検出器を用いることに起因する電磁アクチュエータの構成の複雑化を抑制することが可能な把持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における把持装置は、薄板状物をクランプする方向に移動する可動部を含むクランプ部と、クランプ部の可動部をクランプする方向に常時付勢するばね部材と、少なくともクランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に推力を発生させる電磁アクチュエータとを備え、電磁アクチュエータは、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に、ばね部材のクランプ方向への付勢力による可動部の移動速度を低減する方向に推力を発生させる励磁コイルを有する励磁回路を含む。
【0010】
この一の局面による把持装置では、上記のように、クランプ部の可動部をクランプする方向に常時付勢するばね部材と、少なくともクランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に、ばね部材のクランプ方向への付勢力による可動部の移動速度を低減する方向に推力を発生させる励磁コイルを有する電磁アクチュエータとを設けることによって、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に、励磁コイルにより発生される推力によって可動部の移動速度が低減されるので、クランプ部が薄板状物に対して大きい速度で接触するのが抑制される。これにより、薄板状物をクランプする際の衝撃を緩和することができるので、薄板状物の破損やパーティクル(ゴミ)の発生を抑制することができる。また、通常電磁アクチュエータが備えている励磁回路を用いてクランプ部の速度制御を行うことによって、薄板状物をクランプする際に、薄板状物の位置を検出する位置検出器を電磁アクチュエータに追加的に設けることなく、可動部の移動速度を低減させることができるので、位置検出器を用いることに起因する電磁アクチュエータの構成の複雑化を抑制することができる。
【0011】
上記一の局面による把持装置において、好ましくは、電磁アクチュエータは、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に励磁回路をオン状態からオフ状態にする時に、励磁回路を流れる電流が徐々に減少されることにより、ばね部材の付勢力による可動部の移動速度を低減する方向に推力を発生させるように構成されている。このように構成すれば、励磁回路に流れる電流が徐々に減少するのに伴って、可動部の移動速度を低減しながら可動部を薄板状物に対して徐々に接近させることができるので、薄板状物をクランプする際の衝撃を緩和することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、励磁回路は、励磁回路の電流を蓄電するコンデンサを含み、励磁回路をオン状態からオフ状態にする時に、コンデンサに蓄電された電流を流すことにより、励磁回路を流れる電流が徐々に減少するように構成されている。このように構成すれば、コンデンサに蓄電された電流が放電に伴って自動的に徐々に減少するので、励磁回路にコンデンサを設けるだけで、可動部の移動速度を低減しながら可動部を薄板状物に対して徐々に接近させることができる。
【0013】
上記励磁回路を流れる電流が徐々に減少される把持装置において、好ましくは、励磁回路は、オン時には電流が流れずにオフ時の逆起電力発生時に電流を流すためのダイオードを含むバイパス回路を含み、励磁回路をオン状態からオフ状態にする時に、励磁コイルに過渡的に発生する逆起電力による電流を、バイパス回路を介して流すことにより、励磁回路を流れる電流が徐々に減少するように構成されている。このように構成すれば、励磁回路をオン状態からオフ状態にした際に、過渡的に発生する逆起電力による電流により、励磁コイルが可動部の移動速度を低減する方向に推力を発生するので、可動部の移動速度を低減しながら可動部を薄板状物に対して徐々に接近させることができる。
【0014】
上記励磁回路を流れる電流が徐々に減少される把持装置において、好ましくは、励磁回路は、複数の励磁コイルと、複数の励磁コイルのそれぞれに対応するように設けられ、複数の励磁コイルのオンオフ動作を制御する複数のスイッチ部とを含み、励磁回路をオン状態からオフ状態にする時に、複数の励磁コイルが順次オフするように複数のスイッチ部を制御することにより、励磁回路を流れる電流が徐々に減少するように構成されている。このように構成すれば、複数のスイッチ部を順次オフすることにより、段階的に電流が流れる励磁コイルの数を減少させることができるので、段階的に可動部を薄板状物に対して接近させることができる。また、複数の励磁コイルを順次オフして電流が流れる励磁コイルの数を減少させていく際の各段階の励磁コイルへの通電時間を制御することによって、より適切に可動部の移動速度の低減度合いを制御することができる。
【0015】
上記一の局面による把持装置において、好ましくは、クランプ部および電磁アクチュエータは、真空中において使用され、電磁アクチュエータは、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に加えて、クランプ解除状態でも推力を発生するように構成されており、クランプ解除状態では、励磁回路がオン状態にされて電流が流されることによりばね部材の付勢力に抗する方向の推力が電磁アクチュエータに発生されて可動部がクランプ方向とは逆方向に移動されるとともに、クランプ状態では、励磁回路がオフ状態にされて電流が流れないことにより電磁アクチュエータに推力が発生されないとともにばね部材の付勢力により可動部がクランプする方向に付勢されることによりクランプが行われるように構成されている。このように構成すれば、励磁回路をオン状態にした場合には、ばね部材の付勢力に抗した推力が電磁アクチュエータに発生されて可動部が薄板状物から遠ざかるので、容易に、薄板状物をクランプ解除状態(アンクランプ状態)にすることができる。また、励磁回路をオフ状態にした場合には、たとえば電源から励磁回路に電流が流れないので、励磁回路の発熱を抑制することができる。これにより、電磁アクチュエータが高温になるのが抑制されるので、電磁アクチュエータの熱が放熱されにくい真空中においても電磁アクチュエータを使用することができる。
【0016】
上記一の局面による把持装置において、好ましくは、電磁アクチュエータの励磁回路は、流れる電流の方向を変更可能なように構成されており、クランプ状態で、励磁回路のオン時とは逆方向に電流を流すことによって、ばね部材の付勢力による可動部のクランプ力をアシストする方向の推力を電磁アクチュエータに発生させるように構成されている。このように構成すれば、ばね部材の付勢力が弱く、薄板状物を十分にクランプできない場合に、ばね部材の付勢力に電磁アクチュエータの推力をクランプ力として補うことができるので、薄板状物を確実にクランプすることができる。
【0017】
上記一の局面による把持装置において、好ましくは、電磁アクチュエータは、扁平型のリニアモータを含む。このように構成すれば、扁平型のリニアモータにより、薄型化を図ることができるので、真空中において使用される際に、真空装置内へアクセスするための高さの小さい通路(ゲートバルブの開口部)を通過させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態による電磁グリッパを備えるマルチチャンバタイプの真空処理装置を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態による電磁グリッパを示す平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による電磁グリッパの電磁アクチュエータの詳細を示す図である。
【図4】図3の300−300線に沿った断面図である。
【図5】図3の400−400線に沿った断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態による励磁回路がオン状態の場合の等価回路図である。
【図7】本発明の第1実施形態による励磁回路がオフ状態の場合の等価回路図である。
【図8】本発明の第1実施形態によるウエハクランプ状態を説明するための平面図である。
【図9】本発明の第1実施形態によるウエハクランプ状態を説明するための断面図である。
【図10】本発明の第1実施形態による電磁グリッパが真空処理装置のゲートバルブの開口部を通過している状態を示す図である。
【図11】本発明の第1実施形態の変形例を説明するための励磁回路の等価回路図である。
【図12】本発明の第2実施形態による励磁回路がオン状態の場合の等価回路図である。
【図13】本発明の第2実施形態による励磁回路がオフ状態の場合の等価回路図である。
【図14】本発明の第3実施形態による励磁回路の3つのスイッチがオン状態の場合の等価回路図である。
【図15】本発明の第3実施形態による励磁回路の2つのスイッチがオン状態の場合の等価回路図である。
【図16】本発明の第3実施形態による励磁回路の1つのスイッチがオン状態の場合の等価回路図である。
【図17】本発明の第3実施形態による励磁回路のスイッチがオフ状態の場合の等価回路図である。
【図18】本発明の第4実施形態による電流制御回路を含む励磁回路の等価回路図である。
【図19】本発明の第4実施形態による励磁回路をオフ状態にする際の励磁電流と時間との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1〜図5を参照して、本発明の第1実施形態による電磁グリッパ100を備える真空処理装置200について説明する。なお、電磁グリッパ100は、本発明の「把持装置」の一例である。
【0021】
本発明の第1実施形態による電磁グリッパ100を備えるマルチチャンバタイプの真空処理装置200は、図1に示すように、4つの真空処理ユニット1、2、3および4を備えている。この真空処理ユニット1〜4は、搬送室5の外周に設けられている。なお、搬送室5内は、所定の真空度に保たれている。また、搬送室5の外周には、搬送室5以外にロードロック室6および7が設けられている。このロードロック室6および7の搬送室5とは反対側には、搬入出室8が設けられている。搬入出室8のロードロック室6および7とは反対側には、被処理基板としての半導体用のウエハ9を収容可能なキャリア10をそれぞれ取り付けるための3つのポート11が設けられている。なお、ウエハ9は、本発明の「薄板状物」の一例である。
【0022】
また、真空処理ユニット1〜4は、搬送室5の周辺にゲートバルブ12を介して接続されている。また、ゲートバルブ12を開放することにより搬送室5と真空処理ユニット1〜4とが繋がり、ゲートバルブ12を閉じることにより搬送室5と真空処理ユニット1〜4とが遮断される。また、ロードロック室6および7は、それぞれ、ゲートバルブ12aを介して搬送室5に接続されている。また、ロードロック室6および7は、それぞれ、ゲートバルブ12aを介して、搬入出室8に接続されている。そして、ロードロック室6および7は、ゲートバルブ12aを開放することにより搬送室5と繋がり、ゲートバルブ12aを閉じることにより搬送室5から遮断される。また、ロードロック室6および7は、ゲートバルブ12aを開放することにより搬入出室8に繋がり、ゲートバルブ12aを閉じることにより搬入出室8から遮断される。
【0023】
搬送室5内には、真空処理ユニット1〜4、ロードロック室6および7に対して、ウエハ9の搬入出を行う水平多関節型のウエハ搬送ロボット5aが設けられている。このウエハ搬送ロボット5aは、搬送室5の略中央に配置されており、複数の関節の駆動により旋回および伸縮可能に構成されるとともに、アーム部の先端に設けられた電磁グリッパ100を有している。
【0024】
電磁グリッパ100は、図2に示すように、根元部100bから延びるように設けられるとともに、略U字形状を有し、ウエハ9を支持するための支持アーム100aを有している。電磁グリッパ100の支持アーム100aの表面上には、ウエハ9をクランプ(把持)するための先端の2つの固定爪20と、ウエハ9を摺動させるための2つのウエハ摺動部材21とが設けられている。
【0025】
また、電磁グリッパ100の矢印X2方向側の根元部100bの表面上には、電磁アクチュエータ22が設けられている。この電磁アクチュエータ22は、後述する平坦面状の励磁コイル27a〜27cと、永久磁石29a〜29f(図3参照)とを含む扁平型のリニアモータを含む。また、電磁アクチュエータ22は、固定部23と、固定部23に対してX方向に移動(摺動)可能なクランプ部24とを含んでいる。また、クランプ部24は、ウエハ9をクランプする方向(矢印X1方向)に移動可能な可動部25と、ウエハ9をクランプするための可動爪26とを含んでいる。
【0026】
また、第1実施形態では、図3に示すように、固定部23は、3つの渦巻き状の励磁コイル27a、27bおよび27cを有する励磁回路28を含んでいる。3つの励磁コイル27a〜27cは、X方向に沿って隣接するように配置されるとともに、直列接続されている。また、可動部25は、固定部23の励磁コイル27a〜27cに対向するように配置された6つの永久磁石29a、29b、29c、29d、29eおよび29fを含んでいる。6つの永久磁石29a〜29fは、それぞれY方向に延びるように形成されるとともに、X方向に沿って隣接するように配置されている。また、永久磁石29a、29b、29c、29d、29eおよび29fは、図4に示すように、上面側(矢印Z1方向側)から見て、S極、N極、S極、N極、S極、N極の順に配置されているとともに、下面側(矢印Z2方向側)から見て、N極、S極、N極、S極、N極、S極の順に配置されている。また、励磁コイル27a〜27cは、永久磁石29a〜29fに発生するZ方向の磁界と交差するように配置されている。
【0027】
また、図3に示すように、直列接続された3つの励磁コイル27a〜27cには、後述する直流電源40が接続されている。3つの励磁コイル27a〜27cには、直流電源40から直流電流が供給されるように構成されており、3つの励磁コイル27a〜27cに電流が供給される場合には、図4に示すように、3つの励磁コイル27a〜27cに流れる電流と、6つの永久磁石29a〜29fから発生する磁界との間に矢印X2方向に推力(電磁力)が発生するように構成されている。また、励磁コイル27a〜27cに電流が供給されない場合には、励磁コイル27a〜27cと永久磁石29a〜29fとの間には、推力は発生せず、可動部25は、後述するばね部材30の付勢力により、矢印X1方向に移動するように構成されている。そして、可動部25は、可動爪26がウエハ9に接触することにより、ウエハ9を矢印X1方向側の2つの固定爪20に押し付けるように移動(摺動)させるように構成されている。これにより、可動爪26と2つの固定爪20とによって、ウエハ9がクランプされるように構成されている。なお、励磁コイル27a〜27cと永久磁石29a〜29fとの間に発生する推力は、ばね部材30の付勢力よりも大きくなるように構成されている。
【0028】
また、図3に示すように、固定部23と可動部25との間には、ばね部材30が配置されている。このばね部材30は、圧縮ばねからなり、可動部25の矢印Y1方向側と、矢印Y2方向側とにそれぞれ1つずつ設けられている。また、ばね部材30は、可動部25をクランプする方向(矢印X1方向)に常時付勢するように構成されている。
【0029】
また、可動部25の矢印Y1方向側と、矢印Y2方向側とには、それぞれ、可動部25をX方向に移動させるのをガイドするためのリニアガイド31が1つずつ設けられている。このリニアガイド31は、図5に示すように、可動部25側に設けられたスライダ32と、固定部23側に設けられたレール33とを含んでおり、可動部25側のスライダ32が固定部23側のレール33上をX方向に沿って摺動(スライド)するように構成されている。また、図3に示すように、固定部23の矢印X1方向側と、矢印X2方向側とには、それぞれ、可動部25がX方向に移動するのを規制するためのストッパ34aおよび34bが1つずつ設けられている。
【0030】
次に、図6を参照して、励磁回路28の詳細な構成について説明する。
【0031】
第1実施形態では、励磁回路28は、上記した直列接続された3つの励磁コイル27a〜27cと、励磁コイル27a〜27cに直流電流を供給するための直流電源40と、電流を蓄電するためのコンデンサ35と、スイッチ部41とを含んでいる。直流電源40の+端子は、励磁コイル27aの一方端およびコンデンサ35の一方電極に接続されている。また、励磁コイル27aの他方端は、励磁コイル27bの一方端に接続されるとともに、励磁コイル27bの他方端は、励磁コイル27cの一方端に接続されている。また、励磁コイル27cの他方端およびコンデンサ35の他方電極は、スイッチ部41の一方端に接続されている。また、スイッチ部41の他方端は、直流電源40の−端子に接続されている。
【0032】
次に、図4および図6〜図10を参照して、電磁グリッパ100の動作について説明する。
【0033】
まず、ウエハ9のクランプ状態(ウエハ9をクランプする状態)を解除する場合には、図6に示すように、スイッチ部41がオン状態(励磁回路28がオン状態)となり、直流電源40から励磁コイル27a〜27cおよびコンデンサ35に電流が供給される。このとき、コンデンサ35には、電流が蓄電(充電)される。また、励磁コイル27a〜27cに流れる電流と、永久磁石29a〜29f(図4参照)から発生する磁界との間に発生する推力(電磁力)により、可動部25は、ばね部材30の矢印X1方向の付勢力に打ち勝つようにして、矢印X2方向に移動する。そして、可動部25が矢印X2方向側のストッパ34bに当接することにより、可動部25の移動が停止するとともに、クランプ解除状態(ウエハ9をクランプしない状態)となる。
【0034】
次に、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する場合には、スイッチ部41がオフ状態(励磁回路28がオフ状態)となり、直流電源40から励磁コイル27a〜27cへの電流供給が停止される。ここで、第1実施形態では、図7に示すように、電磁アクチュエータ22の励磁回路28は、クランプ解除状態(ウエハ9をクランプしない状態)からクランプ状態(ウエハ9をクランプする状態)に移行する際に励磁回路28をオン状態からオフ状態にする時に、コンデンサ35に蓄電された電流を流すことにより、励磁回路28を流れる電流が徐々に減少されることにより、ばね部材30のクランプ方向(矢印X1方向)への付勢力による可動部25の移動速度を低減する方向(矢印X2方向)に推力を発生させる。
【0035】
つまり、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する場合には、コンデンサ35は、クランプ状態の解除時に充電されているので、コンデンサ35から励磁コイル27a〜27cに電流が供給される。これにより、励磁コイル27a〜27cに流れる電流と、永久磁石29a〜29f(図4参照)から発生する磁界との間には、ばね部材30の付勢力よりも小さく、かつ、付勢力と反対方向(矢印X2方向)の推力(電磁力)が発生する。この矢印X2方向の推力(電磁力)によって、可動部25に作用するばね部材30による矢印X1方向への付勢力の一部が相殺されて小さくなるので、可動部25は、移動速度が低減された状態でゆっくりと矢印X1方向に移動するとともに、可動爪26がウエハ9に小さい速度でゆっくりと接触する。これにより、図8および図9に示した状態になる。なお、矢印X2方向に発生する推力は、コンデンサ35に蓄電された電流の放電に伴って徐々に小さくなるので、可動爪26を介してウエハ9に作用するばね部材30の矢印X1方向の付勢力(押圧力)は、徐々に大きくなる。このウエハ9に作用する矢印X1方向のばね部材30の付勢力の増大に伴ってウエハ9が矢印X1方向に移動を開始し、固定爪20と当接する。その後、コンデンサ35に蓄電された電流が完全に放電されると推力は発生しなくなり、ばね部材30の付勢力のみがウエハ9に作用して、クランプ状態となる。その後、クランプされたウエハ9は、図10に示すように、真空処理装置200の高さの小さいゲートバルブ12(12a)を通過して真空処理ユニット1〜4、または、ロードロック室6および7に搬送される。
【0036】
第1実施形態では、上記のように、クランプ部24の可動部25をクランプする方向(矢印X1方向)に常時付勢するばね部材30と、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に、ばね部材30のクランプ方向への付勢力による可動部25の移動速度を低減する方向(矢印X2方向)に推力を発生させる励磁コイル27a〜27cを有する電磁アクチュエータ22とを設けることによって、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に、励磁コイル27a〜27cにより発生される推力によって可動部25の移動速度が低減されるので、クランプ部24がウエハ9に対して大きい速度で接触するのが抑制される。これにより、ウエハ9をクランプする際の衝撃を緩和することができるので、ウエハ9の破損やパーティクル(ゴミ)の発生を抑制することができる。また、通常電磁アクチュエータ22が備えている励磁回路28を用いてクランプ部24の速度制御を行うことによって、ウエハ9をクランプする際に、ウエハ9の位置を検出する位置検出器を電磁アクチュエータ22に追加的に設けることなく、可動部25の移動速度を低減させることができるので、位置検出器を用いることに起因する電磁アクチュエータ22の構成の複雑化を抑制することができる。
【0037】
また、第1実施形態では、上記のように、電磁アクチュエータ22が、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に励磁回路28をオン状態からオフ状態にする時に、励磁回路28を流れる電流が徐々に減少されることにより、ばね部材30の付勢力による可動部25の移動速度を低減する方向に推力を発生させる。これにより、励磁回路28に流れる電流が徐々に減少するのに伴って、可動部25の移動速度を低減しながら可動部25をウエハ9に対して徐々に接近させることができるので、ウエハ9をクランプする際の衝撃を緩和することができる。
【0038】
また、第1実施形態では、上記のように、励磁回路28をオン状態からオフ状態にする時に、コンデンサ35に蓄電された電流を流すことにより、励磁回路28を流れる電流を徐々に減少させることによって、コンデンサ35に蓄電された電流が放電に伴って自動的に徐々に減少するので、励磁回路28にコンデンサ35を設けるだけで、可動部25の移動速度を低減しながら可動部25をウエハ9に対して徐々に接近させることができる。
【0039】
また、第1実施形態では、上記のように、クランプ解除状態では、励磁回路28がオン状態にされて電流が流されることによりばね部材30の付勢力に抗する方向の推力が電磁アクチュエータ22に発生されて可動部25をクランプ方向とは逆方向に移動させるとともに、クランプ状態では、励磁回路28がオフ状態にされて電流が流れないことにより電磁アクチュエータ22に推力が発生されないとともにばね部材30の付勢力により可動部25をクランプする方向に付勢させることによりクランプを行う。これにより、励磁回路28をオン状態にした場合には、ばね部材30の付勢力に抗した推力が電磁アクチュエータ22に発生されて可動部25がウエハ9から遠ざかるので、容易に、ウエハ9をクランプ解除状態(アンクランプ状態)にすることができる。また、励磁回路28をオフ状態にした場合には、直流電源40から励磁回路28に電流が流れないので、励磁回路28の発熱を抑制することができる。これにより、電磁アクチュエータ22が高温になるのが抑制されるので、電磁アクチュエータ22の熱が放熱されにくい真空中においても電磁アクチュエータ22を使用することができる。
【0040】
また、第1実施形態では、上記のように、電磁アクチュエータ22を、平坦面状の励磁コイル27a〜27cと永久磁石29a〜29fとを含む扁平型のリニアモータにすることによって、薄型化を図ることができるので、真空中において使用される際に、真空処理装置200内へアクセスするための高さの小さい通路(ゲートバルブ12(12a)の開口部)を通過させることができる。
【0041】
(第1実施形態の変形例)
次に、図11を参照して、本発明の第1実施形態の変形例について説明する。この第1実施形態の変形例では、電磁アクチュエータ22の推力により、クランプ状態に移行する際の移動速度を低減するように構成した上記第1実施形態において、さらに、電磁アクチュエータの推力によりウエハのクランプ力をアシストする例について説明する。
【0042】
本発明の第1実施形態の変形例による電磁グリッパ101の励磁回路128は、図11に示すように、励磁コイル27a〜27cに順方向(矢印A方向)と、逆方向(矢印B方向)とに供給する電流の方向を切り替えることが可能な可変電源40aを含んでいる。なお、第1実施形態の変形例のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0043】
次に、この第1実施形態の変形例による電磁グリッパ101の励磁回路128の動作について説明する。
【0044】
まず、上記した第1実施形態と同様、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に、励磁回路128がオン状態からオフ状態になった場合に、コンデンサ35に蓄電されていた電流を流すことにより、ばね部材30の矢印X1方向の付勢力を減少させる矢印X2方向の推力をアクチュエータ22に発生させることによって、可動部25が矢印X1方向に速度を減少された状態で移動する。そして、可動部25の可動爪26がウエハ9に小さい速度でゆっくりと接触するとともに、ウエハ9を固定爪20に対して押圧することにより、クランプ状態となる。ここで、第1実施形態の変形例では、図11に示すように、電磁アクチュエータ22は、クランプ状態で、励磁回路128に通常のオン状態とは逆方向(矢印B方向)に電流を流すことによって、ばね部材30の付勢力による可動部25のクランプ力をアシストする方向(矢印X1方向)の推力を発生させる。つまり、ウエハ9のクランプ状態で、励磁回路128に供給されている電流の方向を順方向(矢印A方向)から逆方向(矢印B方向)に切り替えることによって、電磁アクチュエータ22から矢印X1方向の推力が発生する。これにより、ばね部材30の矢印X1方向に向かって働く付勢力(クランプ力)を電磁アクチュエータ22から矢印X1方向に向かって働く推力によりアシストする(補う)ことが可能である。なお、第1実施形態の変形例のその他の動作は、上記第1実施形態と同様である。
【0045】
第1実施形態の変形例では、上記のように、クランプ状態で、励磁回路28に逆方向の電流を流すことによって、ばね部材30の付勢力による可動部25のクランプ力をアシストする方向の推力を電磁アクチュエータ22が発生することによって、ばね部材30の付勢力が弱く、ウエハ9を十分にクランプできない場合に、ばね部材30の付勢力に電磁アクチュエータ22の推力をクランプ力として補うことができるので、ウエハ9を確実にクランプすることができる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、図12を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、コンデンサを含む励磁回路を電磁アクチュエータに適用した上記第1実施形態とは異なり、ダイオードを含む励磁回路を電磁アクチュエータに適用した例について説明する。
【0047】
この第2実施形態による電磁グリッパ102の励磁回路28aは、励磁コイル27a〜27cと、直流電源40と、バイパス回路281aと、スイッチ部41とを含んでいる。なお、バイパス回路281aは、1つのダイオード281bを含む。バイパス回路281aは、励磁回路28aのオン状態では、電流が流れずに、励磁回路28aをオフ状態にした際に発生する逆起電力による電流を流すために設けられている。また、直流電源40の+端子は、励磁コイル27aの一方端およびバイパス回路281aの一方端に接続されている。また、励磁コイル27aの他方端は、励磁コイル27bの一方端に接続されるとともに、励磁コイル27bの他方端は、励磁コイル27cの一方端に接続されている。また、励磁コイル27cの他方端およびバイパス回路281aの他方端は、スイッチ部41の一方端に接続されている。また、スイッチ部41の他方端は、直流電源40の−端子に接続されている。なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0048】
次に、図4、図10、図12および図13を参照して、電磁グリッパ102の動作について説明する。
【0049】
まず、ウエハ9のクランプ状態を解除する場合では、図12に示すように、スイッチ部41がオン状態(励磁回路28aがオン状態)となり、直流電源40の+端子側から励磁コイル27a〜27cに電流が供給される。このとき、ダイオード281bの整流作用によって、バイパス回路281aには、電流は流れない。また、励磁コイル27a〜27cに流れる電流と、永久磁石29a〜29fから発生する磁界との間に発生する推力(電磁力)により、可動部25は、ばね部材30の矢印X1方向の付勢力に打ち勝つようにして、矢印X2方向に移動する。そして、可動部25が矢印X2方向側のストッパ34bに当接することにより、可動部25の移動が停止するとともに、クランプ解除状態(図4参照)となる。
【0050】
次に、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する場合には、スイッチ部41がオフ状態(励磁回路28aがオフ状態)となり、直流電源40から励磁コイル27a〜27cへの電流供給が停止される。ここで、第2実施形態では、図13に示すように、電磁アクチュエータ22の励磁回路28aは、クランプ解除状態(ウエハ9をクランプしない状態)からクランプ状態(ウエハ9をクランプする状態)に移行する際に励磁回路28aをオン状態からオフ状態にする時に、励磁コイル27a〜27cに過渡的に発生する逆起電力による電流を、バイパス回路281aを介して流すことにより、励磁回路28aを流れる電流が徐々に減少する。
【0051】
つまり、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する場合には、スイッチ部41がオフ状態(励磁回路28aがオフ状態)となり、直流電源40から励磁コイル27a〜27cへの電流供給が停止される。この際、固定部23の励磁コイル27a〜27cには、逆起電力が発生し、バイパス回路281aのダイオード281bを介して励磁コイル27a〜27cに電流が流れる。これにより、励磁コイル27a〜27cに流れる電流と、永久磁石29a〜29f(図4参照)から発生する磁界との間には、ばね部材30の付勢力よりも小さな付勢力とは反対方向(矢印X2方向)の推力(電磁力)が発生する。この矢印X2方向の推力(電磁力)によって、可動部25に作用するばね部材30による矢印X1方向への付勢力の一部が相殺されて小さくなるので、可動部25は、移動速度が低減された状態でゆっくりと矢印X1方向に移動するとともに、可動爪26がウエハ9に小さい速度でゆっくりと接触する。なお、矢印X2方向に発生する推力は、励磁コイル27a〜27cに流れる電流の減少に伴って徐々に小さくなるので、可動爪26を介してウエハ9に作用するばね部材30の矢印X1方向の付勢力(押圧力)は、徐々に大きくなる。このウエハ9に作用する矢印X1方向のばね部材30の付勢力の増大に伴ってウエハ9が矢印X1方向に移動を開始し、固定爪20と当接する。その後、逆起電力が発生しなくなると推力は発生しなくなり、ばね部材30の付勢力のみがウエハ9に作用して、クランプ状態となる。その後、クランプされたウエハ9は、図10に示すように、真空処理装置200の高さの小さいゲートバルブ12(12a)を通過して真空処理ユニット1〜4、または、ロードロック室6および7に搬送される。
【0052】
第2実施形態では、上記のように、励磁回路28aをオン状態からオフ状態にする時に、励磁コイル27a〜27cに過渡的に発生する逆起電力による電流を、バイパス回路281aを介して流すことにより、励磁回路28aを流れる電流を徐々に減少させることによって、励磁回路28aをオン状態からオフ状態にした際に、過渡的に発生する逆起電力による電流により、励磁コイル27a〜27cが可動部25の移動速度を低減する方向に推力を発生するので、可動部25の移動速度を低減しながら可動部25をウエハ9に対して徐々に接近させることができる。
【0053】
(第3実施形態)
次に、図14を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、励磁回路の3つの励磁コイル27a〜27cを直列接続した上記第1実施形態とは異なり、励磁回路の3つの励磁コイル27a〜27cを並列接続した例について説明する。
【0054】
本発明の第3実施形態による電磁グリッパ103の励磁回路28bは、並列接続された3つの励磁コイル27a、27bおよび27cと、3つの励磁コイル27a、27bおよび27cに直流電流を供給するための直流電源40と、3つのスイッチ部41a、41bおよび41cとを含んでいる。
【0055】
また、励磁コイル27a〜27cのそれぞれの一方端は、直流電源40の+端子に接続されている。また、スイッチ部41a〜41cの一方端は、それぞれ、励磁コイル27a〜27cの他方端に接続されている。また、スイッチ部41a〜41cの他方端は、直流電源40の他方端に接続されている。また、スイッチ部41a〜41cは、それぞれ、励磁コイル27a〜27cのオンオフ動作を制御するように構成されている。また、励磁コイル27a〜27cには、それぞれ別個に電流を供給可能に構成されているので、励磁コイル27a〜27cに別個に推力を発生させることが可能である。
【0056】
次に、図4、図14〜図17を参照して、電磁グリッパ103の動作について説明する。
【0057】
まず、ウエハ9のクランプ状態を解除する場合には、図14に示すように、3つのスイッチ部41a〜41cがオン状態(励磁回路28bがオン状態)となり、直流電源40から3つの励磁コイル27a〜27cにそれぞれ電流が供給される。このとき、励磁コイル27a〜27cに流れる電流と、永久磁石29a〜29fから発生する磁界との間に発生する推力(電磁力)により、可動部25は、ばね部材30の矢印X1方向の付勢力に打ち勝つようにして、矢印X2方向に移動する。そして、可動部25が矢印X2方向側のストッパ34bに当接することにより、可動部25の移動が停止するとともに、クランプ解除状態(図4参照)となる。
【0058】
次に、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する場合には、第3実施形態では、図15〜図17に示すように、励磁コイル27a〜27cが順次オフするようにスイッチ部41a〜41cを制御することにより、励磁回路28bを流れる電流を徐々に減少させる。この際、スイッチ部41a〜41cを1個ずつ所定の時間差でオフ状態にする。このオフ状態にする時間差(電流が流れる励磁コイル27a〜27cの数を減少させていく際の各段階の励磁コイル27a〜27cへの通電時間)は、任意に調整(制御)可能である。
【0059】
つまり、ウエハ9をクランプ解除状態からクランプ状態に移行する場合では、図15に示すように、最初に、スイッチ部41aがオフ状態となり、直流電源40から励磁コイル27aへの電流供給が停止する。このとき、励磁コイル27aと、励磁コイル27aに対応する永久磁石29aおよび29bから発生する磁界との間の推力(電磁力)が発生しなくなる。これにより、可動部25は、ばね部材30の矢印X1方向の付勢力により、ばね部材30の付勢力と、推力とがつりあう位置まで矢印X1方向に移動する。なお、1個の励磁コイルをオフ状態にした場合に、ばね部材30の付勢力が大きい際には、可動部25は、矢印X1方向に移動し始めるが、ばね部材30の伸びに合わせて付勢力も弱くなるため、可動部25の移動動作が止まるか、または、速度が遅くなる。
【0060】
次に、図16に示すように、スイッチ部41bもオフ状態となり、直流電源40から励磁コイル27bへの電流供給が停止する。このとき、励磁コイル27bと、励磁コイル27bに対応する永久磁石29cおよび29dから発生する磁界との間の推力(電磁力)が発生しなくなる。これにより、可動部25は、ばね部材30の矢印X1方向の付勢力により、矢印X1方向にさらに移動するとともに、可動部25の可動爪26がウエハ9に接触する。このとき、ばね部材30の付勢力と、矢印X2方向の推力との差分が、ウエハ9を矢印X2方向へ押圧する力(押圧力)となる。
【0061】
最後に、図17に示すように、スイッチ部41cがオフ状態となり、直流電源40から励磁コイル27cへの電流供給が停止する。つまり、3つのスイッチ部41a〜41cの全てがオフ状態となる。このとき、励磁コイル27cと、励磁コイル27cに対応する永久磁石29eおよび29fから発生する磁界との間の推力(電磁力)が発生しなくなる。これにより、ウエハ9に作用する矢印X1方向のばね部材30の付勢力の増大に伴ってウエハ9が矢印X1方向に移動を開始し、固定爪20と当接する。その後、ばね部材30の付勢力のみがウエハ9に作用して、クランプ状態となる。なお、1つのスイッチ部41a、または、2つのスイッチ部41aおよび41bがオフ状態になった際に、可動部25の可動爪26がウエハ9に接触していてもよい。このように、スイッチ部41a〜41cを順次(段階的に)オフすることにより、可動部25を矢印X1方向に徐々に段階的に移動させることが可能である。なお、上記第1実施形態の変形例に示したように、直流電源40を可変電源40aに置き換えて、ウエハ9のクランプ時に逆方向の電流を励磁コイル27a〜27cに供給することにより、ウエハ9のクランプ時のクランプ力をアシストすることも可能である。
【0062】
第3実施形態では、上記のように、励磁回路28bをオン状態からオフ状態にする時に、励磁コイル27a〜27cが順次オフするように3つのスイッチ部41a〜41cを制御することにより、励磁回路28bを流れる電流を徐々に減少させることによって、3つのスイッチ部41a〜41cを順次オフすることにより、段階的に電流が流れる励磁コイル27a〜27cの数を減少させることができるので、段階的に可動部25をウエハ9に対して接近させることができる。また、励磁コイル27a〜27cを順次オフして電流が流れる励磁コイル27a〜27cの数を減少させていく際の各段階の励磁コイル27a〜27cへの通電時間を制御することによって、より適切に可動部25の移動速度の低減度合いを制御することができる。
【0063】
(第4実施形態)
次に、図18を参照して、本発明の第4実施形態について説明する。この第4実施形態では、電磁アクチュエータを励磁するために直流電源およびスイッチ部により構成した上記第1実施形態とは異なり、電磁アクチュエータを励磁するために電流制御回路50により励磁オフ時に電流のコントロールを行い、徐々に励磁コイルに流れる電流をオフする例について説明する。
【0064】
この第4実施形態による電磁グリッパ104の励磁回路28cは、励磁コイル27a〜27cと、電流制御回路50とを含んでいる。励磁コイル27aの他方端は、励磁コイル27bの一方端に接続されるとともに、励磁コイル27bの他方端は、励磁コイル27cの一方端に接続されている。また、励磁コイル27aの一方端と、励磁コイル27cの他方端との間には、電流制御回路50が設けられ、電流制御回路50は、励磁コイル27a〜27cの励磁電流量をコントロールしている。この電流制御回路50は、マイコン制御で動作するものであり、内臓されているプログラムにより励磁回路オン/オフ信号を受信することによって、所望の電流パターンを出力する回路である。なお、第4実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0065】
次に、図4、図10、図18および図19を参照して、電磁グリッパ104の動作について説明する。
【0066】
まず、ウエハ9のクランプ状態を解除する場合では、図18において励磁オン信号を受信することにより電流制御回路50から矢印方向(時計回り方向)に所定の電流が流れ、励磁コイル27a〜27cに電流が供給される。励磁コイル27a〜27cに流れる電流と、永久磁石29a〜29f(図4参照)から発生する磁界との間に発生する推力(電磁力)により、可動部25は、ばね部材30の矢印X1方向の付勢力に打ち勝つようにして、矢印X2方向に移動する。そして、可動部25が矢印X2方向側のストッパ34bに当接することにより、可動部25の移動が停止するとともに、クランプ解除状態(図4参照)となる。
【0067】
次に、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する場合には、電流制御回路50は、励磁オフ信号を受信することにより励磁コイル27a〜27cへの電流供給を停止する。ここで、第4実施形態では、電流制御回路50からの電流供給を即座(瞬時)に停止するのではなく、図19に示すように、励磁電流を時間が経過するのに伴って徐々に減少させるように、電流制御回路50を予め構成する。
【0068】
つまり、クランプ解除状態からクランプ状態に移行する場合には、励磁コイル27a〜27cに流れる電流が徐々に減少するので、永久磁石29a〜29f(図4参照)により発生するばね部材30の付勢力に対抗する矢印X2方向の力は徐々に弱くなる。そのため可動部25は、移動速度が低減された状態でゆっくりと矢印X1方向に移動するとともに、可動爪26がウエハ9に小さい速度でゆっくりと接触する。励磁電流がなくなると推力は発生しなくなり、ばね部材30の付勢力のみがウエハ9に作用して、クランプ状態となる。その後、クランプされたウエハ9は、図10に示すように、真空処理装置200の高さの小さいゲートバルブ12(12a)を通過して真空処理ユニット1〜4、または、ロードロック室6および7に搬送される。
【0069】
第4実施形態では、上記のように、励磁電流のオフ時に電流制御回路50を用いることにより励磁電流を徐々に低減させることによって、ばね部材30の付勢力に対抗する力を徐々に低減させることができる。これにより、可動部25の移動速度を低減させることができるので、可動部25をウエハ9に対して徐々に接近させることができる。
【0070】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0071】
たとえば、上記第1〜第4実施形態では、本発明の薄板状物の一例として、半導体用のウエハを示したが、本発明はこれに限らない。たとえば、薄板状物であれば半導体用のウエハ以外のガラス基板などの他の薄板状物でも適用可能である。
【0072】
また、上記第1〜第4実施形態では、電磁グリッパをマルチチャンバタイプの真空処理装置内において使用する例を示したが、本発明はこれに限らない。たとえば、電磁グリッパを大気圧下において使用する処理装置において使用してもよい。
【0073】
また、上記第1〜第4実施形態では、励磁回路にコンデンサ、ダイオードまたはスイッチ部を設ける例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、電磁アクチュエータがクランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に、ばね部材のクランプ方向への付勢力による可動部の移動速度を低減する方向に推力を発生させるものであれば、励磁回路にコンデンサ、ダイオードまたはスイッチ部以外の素子や回路を設けてもよい。
【0074】
また、上記第1〜第4実施形態では、2つのばね部材を用いて付勢力が発生するように構成する例を示したが、本発明はこれに限らない。たとえば、ばね部材を1つまたは3つ以上用いて付勢力が発生するように構成してもよい。
【0075】
また、上記第1〜第4実施形態では、固定部を3つの励磁コイルにより構成する例を示したが本発明はこれに限らない。たとえば、固定部を2つ以下または4つ以上の励磁コイルにより構成してもよい。
【符号の説明】
【0076】
9 ウエハ(薄板状物)
22 電磁アクチュエータ
24 クランプ部
25 可動部
27a、27b、27c 励磁コイル
28、28a、28b、28c、128 励磁回路
30 ばね部材
35 コンデンサ
41a、41b、41c スイッチ部
100、101、102、103、104 電磁グリッパ(把持装置)
281a バイパス回路
281b ダイオード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状物をクランプする方向に移動する可動部を含むクランプ部と、
前記クランプ部の可動部をクランプする方向に常時付勢するばね部材と、
少なくともクランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に推力を発生させる電磁アクチュエータとを備え、
前記電磁アクチュエータは、前記クランプ解除状態から前記クランプ状態に移行する際に、前記ばね部材のクランプ方向への付勢力による前記可動部の移動速度を低減する方向に推力を発生させる励磁コイルを有する励磁回路を含む、把持装置。
【請求項2】
前記電磁アクチュエータは、前記クランプ解除状態から前記クランプ状態に移行する際に前記励磁回路をオン状態からオフ状態にする時に、前記励磁回路を流れる電流が徐々に減少されることにより、前記ばね部材の付勢力による可動部の移動速度を低減する方向に推力を発生させるように構成されている、請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記励磁回路は、前記励磁回路の電流を蓄電するコンデンサを含み、
前記励磁回路をオン状態からオフ状態にする時に、前記コンデンサに蓄電された電流を流すことにより、前記励磁回路を流れる電流が徐々に減少するように構成されている、請求項2に記載の把持装置。
【請求項4】
前記励磁回路は、オン時には電流が流れずにオフ時の逆起電力発生時に電流を流すためのダイオードを含むバイパス回路を含み、
前記励磁回路をオン状態からオフ状態にする時に、前記励磁コイルに過渡的に発生する逆起電力による電流を、前記バイパス回路を介して流すことにより、前記励磁回路を流れる電流が徐々に減少するように構成されている、請求項2に記載の把持装置。
【請求項5】
前記励磁回路は、複数の前記励磁コイルと、前記複数の励磁コイルのそれぞれに対応するように設けられ、前記複数の励磁コイルのオンオフ動作を制御する複数のスイッチ部とを含み、
前記励磁回路をオン状態からオフ状態にする時に、前記複数の励磁コイルが順次オフするように前記複数のスイッチ部を制御することにより、前記励磁回路を流れる電流が徐々に減少するように構成されている、請求項2に記載の把持装置。
【請求項6】
前記クランプ部および前記電磁アクチュエータは、真空中において使用され、
前記電磁アクチュエータは、前記クランプ解除状態から前記クランプ状態に移行する際に加えて、前記クランプ解除状態でも推力を発生するように構成されており、
前記クランプ解除状態では、前記励磁回路がオン状態にされて電流が流されることにより前記ばね部材の付勢力に抗する方向の推力が前記電磁アクチュエータに発生されて前記可動部がクランプ方向とは逆方向に移動されるとともに、前記クランプ状態では、前記励磁回路がオフ状態にされて電流が流れないことにより前記電磁アクチュエータに推力が発生されないとともに前記ばね部材の付勢力により前記可動部がクランプする方向に付勢されることによりクランプが行われるように構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の把持装置。
【請求項7】
前記電磁アクチュエータの励磁回路は、流れる電流の方向を変更可能なように構成されており、
前記クランプ状態で、前記励磁回路のオン時とは逆方向に電流を流すことによって、前記ばね部材の付勢力による前記可動部のクランプ力をアシストする方向の推力を前記電磁アクチュエータに発生させるように構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の把持装置。
【請求項8】
前記電磁アクチュエータは、扁平型のリニアモータを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の把持装置。
【請求項1】
薄板状物をクランプする方向に移動する可動部を含むクランプ部と、
前記クランプ部の可動部をクランプする方向に常時付勢するばね部材と、
少なくともクランプ解除状態からクランプ状態に移行する際に推力を発生させる電磁アクチュエータとを備え、
前記電磁アクチュエータは、前記クランプ解除状態から前記クランプ状態に移行する際に、前記ばね部材のクランプ方向への付勢力による前記可動部の移動速度を低減する方向に推力を発生させる励磁コイルを有する励磁回路を含む、把持装置。
【請求項2】
前記電磁アクチュエータは、前記クランプ解除状態から前記クランプ状態に移行する際に前記励磁回路をオン状態からオフ状態にする時に、前記励磁回路を流れる電流が徐々に減少されることにより、前記ばね部材の付勢力による可動部の移動速度を低減する方向に推力を発生させるように構成されている、請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記励磁回路は、前記励磁回路の電流を蓄電するコンデンサを含み、
前記励磁回路をオン状態からオフ状態にする時に、前記コンデンサに蓄電された電流を流すことにより、前記励磁回路を流れる電流が徐々に減少するように構成されている、請求項2に記載の把持装置。
【請求項4】
前記励磁回路は、オン時には電流が流れずにオフ時の逆起電力発生時に電流を流すためのダイオードを含むバイパス回路を含み、
前記励磁回路をオン状態からオフ状態にする時に、前記励磁コイルに過渡的に発生する逆起電力による電流を、前記バイパス回路を介して流すことにより、前記励磁回路を流れる電流が徐々に減少するように構成されている、請求項2に記載の把持装置。
【請求項5】
前記励磁回路は、複数の前記励磁コイルと、前記複数の励磁コイルのそれぞれに対応するように設けられ、前記複数の励磁コイルのオンオフ動作を制御する複数のスイッチ部とを含み、
前記励磁回路をオン状態からオフ状態にする時に、前記複数の励磁コイルが順次オフするように前記複数のスイッチ部を制御することにより、前記励磁回路を流れる電流が徐々に減少するように構成されている、請求項2に記載の把持装置。
【請求項6】
前記クランプ部および前記電磁アクチュエータは、真空中において使用され、
前記電磁アクチュエータは、前記クランプ解除状態から前記クランプ状態に移行する際に加えて、前記クランプ解除状態でも推力を発生するように構成されており、
前記クランプ解除状態では、前記励磁回路がオン状態にされて電流が流されることにより前記ばね部材の付勢力に抗する方向の推力が前記電磁アクチュエータに発生されて前記可動部がクランプ方向とは逆方向に移動されるとともに、前記クランプ状態では、前記励磁回路がオフ状態にされて電流が流れないことにより前記電磁アクチュエータに推力が発生されないとともに前記ばね部材の付勢力により前記可動部がクランプする方向に付勢されることによりクランプが行われるように構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の把持装置。
【請求項7】
前記電磁アクチュエータの励磁回路は、流れる電流の方向を変更可能なように構成されており、
前記クランプ状態で、前記励磁回路のオン時とは逆方向に電流を流すことによって、前記ばね部材の付勢力による前記可動部のクランプ力をアシストする方向の推力を前記電磁アクチュエータに発生させるように構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の把持装置。
【請求項8】
前記電磁アクチュエータは、扁平型のリニアモータを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の把持装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−222683(P2011−222683A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89164(P2010−89164)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】
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