説明

排ガス浄化装置

【課題】ターボ過給機のタービン回転翼の損傷を防止し、燃料添加手段から改質触媒への比較的少ない量の燃料の添加で、改質触媒にて燃料の一部を水素に効率良く改質する。
【解決手段】排気マニホルド17に設けられた改質触媒24がエンジン11の燃料25を水素に改質し、燃料添加手段27が改質触媒に燃料を供給する。ターボ過給機19のタービンハウジング19bより排ガス下流側の排気管18に設けられた選択還元型触媒39が水素を還元剤として排ガス中のNOxを還元する。タービンハウジングをバイパスするバイパス管51に設けられたウェイストゲートバルブ52がバイパス管の開度を調整してタービンハウジングに流す排ガスの流量を調整する。コントローラ61が、エンジンの運転条件に基づいて燃料添加手段を制御するとともに、タービンハウジングの入口温度を検出する温度センサ53の検出出力に基づいてウェイストゲートバルブを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン等のエンジンの排ガスに含まれる窒素酸化物(以下、NOxという)を低減して排ガスを浄化する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、排気マニホルド内に燃料を噴射する燃料添加弁が設けられ、燃料添加弁より噴射された燃料が過給機の下流側の排気管に設けられたNOx吸蔵型のNOx触媒の還元剤となり、過給機の上流側に燃料添加弁によって噴射された燃料を改質させる燃料改質触媒が設けられた排気浄化装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この排気浄化装置では、燃料改質触媒が排気マニホルドの集合部から過給機までの排気通路内に配置され、その中心軸が排ガスの流れの方向と略平行になるように配置される。また燃料改質触媒は、コア部材が中心となるようにコア部材に基材を巻付けて形成された触媒担体と、触媒担体を収容する外筒とを有する。基材は2枚の金属製板材で金属製波板を挟んだ状態で接合することにより形成され、基材には例えば白金などが担持される。またコア部材は、その先端に、衝突した燃料を周囲に拡散させる衝突部を有する。この衝突部には、その断面がコア部材の長手方向に沿って拡大するようにテーパ面が形成され、このテーパ面は触媒担体から露出するように構成される。また触媒担体の端面は衝突部の近傍を突出させた円錐状の面に形成される。更に燃料改質触媒は噴射された燃料を酸化させる機能を有し、改質された燃料はNOx触媒の還元剤となる。
【0003】
このように構成された排気浄化装置では、燃料改質触媒の衝突部に燃料が吹付けられると、触媒担体の全体が使われるように燃料が霧化し拡散する。また触媒担体の端面が、衝突部の近傍を突出させた円錐状の面に形成されているので、噴射燃料が良好に触媒担体の全体に行き渡る。この結果、燃料改質触媒は、噴射された燃料を霧化する能力に優れ、燃料改質の効率がよい。この改質された燃料はNOx触媒に供給され、NOx触媒の還元剤として機能する。即ち、NOx触媒は、排ガスの空燃比がリーンのときにNOxを吸収し、排ガスの酸素濃度が低下したときに上記吸収したNOxを放出し、改質された燃料を還元剤としてN2に還元するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−76530号公報(段落[0017]、[0018][0022]、[0024]、図1〜図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の特許文献1に示された排気浄化装置では、燃料添加弁より噴射された燃料が燃料改質触媒の衝突部に吹付けられて霧化し拡散した後に、燃料改質触媒は上記噴射された燃料を改質するけれども、このとき熱を発生して燃焼改質触媒とともに排ガスの温度が上昇し、この排ガス温度が上がり過ぎると、この排ガスが過給機のタービンハウジングに流入して、タービン回転翼が高速で回転したときに、タービン回転翼が上記熱と高速で回転することにより損傷するおそれがあった。
【0006】
本発明の目的は、ターボ過給機のタービン回転翼の損傷を防止できるとともに、燃料添加手段から改質触媒への比較的少ない量の燃料の添加で、改質触媒において燃料の一部を水素に効率良く改質できる、排ガス浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点は、図1に示すように、ターボ過給機19付エンジン11の排気ポートに接続された排気マニホルド17に設けられエンジン11の燃料25を水素に改質する改質触媒24と、排気マニホルド17に燃料25を添加することにより改質触媒24に燃料25を供給する燃料添加手段27と、ターボ過給機19のタービンハウジング19bより排ガス下流側の排気管18に設けられ水素を還元剤として排ガス中のNOxを還元する銀−白金系触媒からなる選択還元型触媒39と、タービンハウジング19bをバイパスするバイパス管51に設けられバイパス管51の開度を調整してタービンハウジング19bに流す排ガスの流量を調整するウェイストゲートバルブ52と、タービンハウジング19bの入口温度を検出する温度センサ53と、エンジン11の運転条件に基づいて燃料添加手段27を制御するとともに温度センサ53の検出出力に基づいてウェイストゲートバルブ52を制御するコントローラ61とを備えた排ガス浄化装置である。
【0008】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に図1に示すように、改質触媒24が、排気マニホルド17の複数の枝管部17aの1つ以上かつ枝管部17aの総数未満に設けられたことを特徴とする。
【0009】
本発明の第3の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に図1に示すように、一端が排気マニホルド17に接続され他端がエンジン11の吸気通路12に接続され排ガスの一部を吸気通路12に戻すEGR管22と、このEGR管22に設けられ吸気通路12に戻す排ガスの流量を調整するEGRバルブ23とを更に備え、EGR管22の一端が排気マニホルド17の複数の枝管部17aのいずれかに接続され、改質触媒24がEGR管22の一端の接続された枝管部17aであってEGR管22の一端の接続部より排ガス下流側に設けられたことを特徴とする。
【0010】
本発明の第4の観点は、第2又は第3の観点に基づく発明であって、更に図1に示すように、燃料添加手段27が、改質触媒24より排ガス上流側の枝管部17aに設けられ改質触媒24より排ガス上流側の枝管部17aに燃料25を添加する燃料添加ノズル28と、この燃料添加ノズル28に燃料25を供給する燃料供給手段29とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の第5の観点は、第2又は第3の観点に基づく発明であって、更に燃料添加手段が、エンジンの複数の気筒のうち改質触媒に排ガスが流入する気筒に燃料を噴射する所定の燃料噴射ノズルと、この所定の燃料噴射ノズルに燃料を供給する燃料供給手段とを有し、所定の燃料噴射ノズルからエンジンで燃焼される燃料を越える量の燃料を噴射するように構成されたことを特徴とする。
【0012】
本発明の第6の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に図2及び図3に示すように、排気マニホルド87の集合管部87b内が第1通路87cと第2通路87dとに区画され、改質触媒84が第1通路87cに収容され、エンジン11から排出された排ガスの一部が第1通路87c及び改質触媒84を通ってタービンハウジング19bに流入し、排ガスの残部が改質触媒84をバイパスし第2通路87dを通ってタービンハウジング19bに流入するように構成されたことを特徴とする。
【0013】
本発明の第7の観点は、第6の観点に基づく発明であって、更に図2及び図3に示すように、燃料添加手段27が、改質触媒84より排ガス上流側の第1通路87cに設けられ改質触媒84より排ガス上流側の第1通路87cに燃料25を添加する燃料添加ノズル28と、この燃料添加ノズル28に燃料25を供給する燃料供給手段29とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明の第8の観点は、第1ないし第7の観点のいずれかに基づく発明であって、更に図1に示すように、改質触媒24が、ロジウム、パラジウム及び白金からなる群より選ばれた1種又は2種以上の貴金属を添加したゼオライト又はアルミナをハニカム担体にコーティングして構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の観点の排ガス浄化装置では、燃料添加手段から排気マニホルドに燃料を添加し、この燃料の一部が改質触媒を昇温させ、昇温した改質触媒で燃料の残部が水素に改質される。このとき排ガスがエンジンから排出された直後であり、比較的高温であるため、比較的少ない量の燃料で改質触媒を改質可能な温度に昇温させることができる。この結果、燃料添加手段から改質触媒への比較的少ない量の燃料の添加で、改質触媒において燃料の一部を水素に効率良く改質できる。また改質触媒で改質された水素を含む排ガスが選択還元型触媒に流入すると、この選択還元型触媒上で排ガス中の水素とNOxが反応して、NOxの還元反応と水素の酸化反応とが促進されるので、排ガス中のNOxが低減される。この結果、排ガス中のNOxを効率良く低減できる。更に排ガス温度が所定値以上になったことを温度センサが検出すると、コントローラはウェイストゲートバルブを開いて、排ガスの一部をバイパス管に流す。これにより、ターボ過給機のタービンハウジングに流入する排ガスの流量が少なくなって、タービン回転翼を駆動するためのエネルギが減少し、タービン回転翼の回転速度が過度に上昇することを抑制できるので、上記タービン回転翼の高速回転によるタービン回転翼の損傷を防止できる。
【0016】
本発明の第2の観点の排ガス浄化装置では、改質触媒を排気マニホルドの枝管部に設けたので、改質触媒がエンジンの排気ポートに接近しており、改質触媒に流入する排ガスの温度は高い。この結果、極めて少ない量の燃料で改質触媒を改質可能な温度に昇温させることができるので、改質触媒において燃料の一部を水素に更に効率良く改質できる。また、改質触媒を排気マニホルドの複数の枝管部の一部分に設けているため、燃料添加手段により燃料を改質触媒の設けられた枝管部のみに添加することにより、改質触媒内の排ガスを速やかに燃料リッチ状態にすることができるとともに、改質触媒の設けられていない枝管部に、燃料の添加されない排ガスのみを通過させることにより、選択還元型触媒内の排ガスをリーン状態にすることができる。この結果、改質触媒で燃料を水素に効率良く改質できるとともに、選択還元型触媒で水素を還元剤として排ガス中のNOxを効率良く還元できる。なお、本明細書において、排ガス中の酸素と燃料との混合割合を空燃比とし、エンジンにおいて混合気中の酸素と燃料が過不足なく反応するときの酸素と燃料との混合割合を理論空燃比とするとき、空燃比と理論空燃比との比を空気過剰率λという。そして、上記「燃料リッチ状態」とは排ガスの空気過剰率λがλ<1の状態をいい、上記「リーン状態」は排ガスの空気過剰率λがλ>1の状態をいう。
【0017】
本発明の第3の観点の排ガス浄化装置では、EGRバルブを開いたときに、改質触媒が枝管部を流れる排ガスの流路抵抗となるため、エンジンの排気ポートからその枝管部に流入した排ガスのうちEGR管を通って吸気通路に還流される量が増大する、即ちEGRガス量が増大する。この結果、エンジンにおける燃料の燃焼温度を速やかに下げることができるので、排ガス中に含まれるNOxを低減できる。
【0018】
本発明の第4の観点の排ガス浄化装置では、燃料添加ノズルから改質触媒より排ガス上流側の枝管部に燃料を添加するので、この添加された燃料が他の枝管部に流入することはなく、上記添加された燃料を全て改質触媒に供給できる。この結果、改質触媒で燃料を水素に効率良く改質できる。また燃料添加ノズルから枝管部に燃料を添加するので、燃料添加ノズルを新たに追加する必要があり、部品点数が増大するけれども、エンジンにおける燃料の燃焼に影響を与えずに、枝管部に燃料を添加できる。
【0019】
本発明の第5の観点の排ガス浄化装置では、エンジンの複数の気筒のうち改質触媒に排ガスが流入する気筒に燃料を噴射する燃料噴射ノズルからエンジンで燃焼される燃料を越える量の燃料を噴射するので、この燃焼量を越えた余剰の燃料が他の枝管部に流入することはなく、上記余剰の燃料を全て改質触媒に供給できる。この結果、改質触媒で燃料を水素に効率良く改質できる。またエンジンの複数の気筒のうち改質触媒に排ガスが流入する気筒に燃料を噴射する燃料噴射ノズルからエンジンで燃焼される燃料の量を越える量の燃料を噴射するので、エンジンにおける燃料の燃焼に幾分影響を与えるけれども、燃料添加ノズルを新たに追加する必要がなく、部品点数の増大を回避できる。
【0020】
本発明の第6の観点の排ガス浄化装置では、改質触媒を排気マニホルドの集合管部の第1通路に収容しているため、燃料添加手段により燃料を改質触媒の収容された第1通路のみに添加することにより、改質触媒内の排ガスを速やかに燃料リッチ状態にすることができるとともに、改質触媒の設けられていない第2通路に、燃料の添加されない排ガスのみを通過させることにより、選択還元型触媒内の排ガスをリーン状態にすることができる。この結果、改質触媒で燃料を水素に効率良く改質できるとともに、選択還元型触媒で水素を還元剤として排ガス中のNOxを効率良く還元できる。また改質触媒を排気マニホルドの集合管部に設けたので、改質触媒を枝管部に設けた場合より改質触媒の入口部における排ガス温度が若干低下するけれども、改質触媒を細い枝管部に設けるより改質触媒を太い集合管部に設けた方が、改質触媒の取付作業性が良好であるとともに、改質触媒の容積を容易に変更できる。
【0021】
本発明の第7の観点の排ガス浄化装置では、燃料添加ノズルから集合管部の第1通路に燃料を添加するので、この添加された燃料が第2通路に流入することはなく、上記添加された燃料を全て改質触媒に供給できる。この結果、改質触媒で燃料を水素に効率良く改質できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明第1実施形態の排ガス浄化装置を示す構成図である。
【図2】本発明第2実施形態の排ガス浄化装置を示す構成図である。
【図3】図2のA部拡大斜視図である。
【図4】本発明第3実施形態を示す図3に対応する拡大斜視図である。
【図5】(a)は比較例1の排気管に設けた改質触媒に向けて燃料を添加したときの燃料流量の時間に対する変化を示す図であり、(b)は実施例1の排気マニホルドに設けた改質触媒に向けて燃料を添加したときの燃料流量の時間に対する変化を示す図である。
【図6】実施例1及び比較例2の排ガス浄化装置を同型のディーゼルエンジンの排気管にそれぞれ取付けたときの排ガス温度300℃におけるNOx低減率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
<第1の実施の形態>
図1に示すように、ディーゼルエンジン11の吸気ポートには吸気マニホルド13を介して吸気管14が接続され、排気ポートには排気マニホルド17を介して排気管18が接続される。吸気マニホルド13と吸気管14により吸気通路12が構成され、排気マニホルド17と排気管18により排気通路16が構成される。また吸気通路12には、ターボ過給機19のコンプレッサハウジング19aと、ターボ過給機19により圧縮された吸気を冷却するインタクーラ21とがそれぞれ設けられ、排気通路16にはターボ過給機19のタービンハウジング19bが設けられる。具体的には、コンプレッサハウジング19aは吸気管14の途中に設けられ、インタクーラ21はコンプレッサハウジング19aより吸気下流側の吸気管14の途中に設けられる。タービンハウジング19bは排気マニホルド17と排気管18との間に介装される。またコンプレッサハウジング19aにはコンプレッサ回転翼(図示せず)が回転可能に収容され、タービンハウジング19bにはタービン回転翼(図示せず)が回転可能に収容される。コンプレッサ回転翼とタービン回転翼とはシャフト(図示せず)により連結され、エンジン11から排出される排ガスのエネルギによりタービン回転翼及びシャフトを介してコンプレッサ回転翼が回転し、このコンプレッサ回転翼の回転により吸気管14内の吸入空気が圧縮されるように構成される。
【0025】
一方、排気マニホルド17は、一端が複数の排気ポートにそれぞれ接続された複数の枝管部17aと、これらの枝管部17aの他端が集合して形成された単一の集合管部17bとを有する。また排気マニホルド17と吸気管14とはEGR管22によりエンジン11をバイパスして連通接続される。即ち、このEGR管22は排気マニホルド17の複数の枝管部17aのうちの1本の枝管部17aから分岐し、インタクーラ21より吸気下流側の吸気管14に合流する。上記EGR管22にはこのEGR管22から吸気管14に還流される排ガス(EGRガス)の流量を調整するEGRバルブ23が設けられる。更に排気マニホルド17の複数の枝管部17aのうちEGR管22が分岐する枝管部17aには、燃料リッチ状態の排ガス中で、エンジン11の燃料(軽油)25を水素に改質する改質触媒24がEGR管22の分岐部より排ガス下流側に設けられる。この改質触媒24は、ロジウム、パラジウム及び白金からなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属を添加したゼオライト又はアルミナをハニカム担体にコーティングして構成される。具体的には、ロジウム等の金属を添加したゼオライトからなる改質触媒24は、ロジウム等の金属をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして構成される。またロジウム等の金属を添加したアルミナからなる改質触媒24は、ロジウム等の金属を担持させたγ−アルミナ粉末又はθ−アルミナ粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして構成される。なお、図1の符号26はEGR管22を通る排ガス(EGRガス)を冷却するEGRクーラである。
【0026】
一方、排気マニホルド17には燃料添加手段27が設けられる。この燃料添加手段27は、改質触媒24より排ガス上流側であってEGR管22の分岐部より排ガス下流側の枝管部17aに設けられた燃料添加ノズル28と、この燃料添加ノズル28に燃料25を供給する燃料供給手段29とを有する。燃料添加ノズル28は、改質触媒24より排ガス上流側の枝管部17aに燃料25を添加することにより改質触媒24に燃料25を供給するように構成される。また燃料供給手段29は、燃料添加ノズル28に先端が接続された燃料供給管31と、この燃料供給管31の基端に接続され燃料25が貯留された燃料タンク32と、この燃料タンク32内の燃料25を燃料添加ノズル28に圧送する燃料ポンプ33と、燃料添加ノズル28から噴射される燃料25の供給量(噴射量)を調整する燃料供給量調整弁34とを有する。上記燃料タンク32はエンジン11の燃料タンクと兼用できる。また上記燃料ポンプ33は燃料添加ノズル28と燃料タンク32との間の燃料供給管31に設けられ、燃料供給量調整弁34は燃料添加ノズル28と燃料ポンプ33との間の燃料供給管31に設けられる。更に燃料供給量調整弁34は、燃料供給管31に設けられ燃料添加ノズル28への燃料25の供給圧力を調整する燃料圧力調整弁36と、燃料添加ノズル28の基端に設けられ燃料添加ノズル28の基端を開閉する燃料用開閉弁37とからなる。
【0027】
燃料圧力調整弁36は第1〜第3ポート36a〜36cを有する三方弁であり、第1ポート36aは燃料ポンプ33の吐出口に接続され、第2ポート36bは燃料用開閉弁37に接続され、第3ポート36cは戻り管38を介して燃料タンク32に接続される。燃料圧力調整弁36を駆動すると、燃料ポンプ33により圧送された燃料25が第1ポート36aから燃料圧力調整弁36に流入し、この燃料圧力調整弁36で所定の圧力に調整された後、第2ポート36bから燃料用開閉弁37に圧送される。また燃料圧力調整弁36の駆動を停止すると、燃料ポンプ33により圧送された燃料25が第1ポート36aから燃料圧力調整弁36に流入した後、第3ポート36cから戻り管38を通って燃料タンク32に戻される。
【0028】
排気管18の途中、即ちターボ過給機19のタービンハウジング19bより排ガス下流側の排気管18には、選択還元型触媒39が設けられる。選択還元型触媒39は排気管18より大径のケース40に収容される。選択還元型触媒39は銀−白金系のモノリス触媒であって、銀及び白金からなる金属を添加するか、或いは銀、白金及び銅からなる金属を添加したゼオライト又はアルミナを、コージェライト製のハニカム担体にコーティングして構成される。具体的には、銀及び白金等の金属を添加したゼオライトからなる選択還元型触媒39は、銀及び白金等の金属をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして構成される。また銀及び白金等の金属を添加したアルミナからなる選択還元型触媒39は、銀及び白金等の金属を担持させたγ−アルミナ粉末又はθ−アルミナ粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして構成される。上記選択還元型触媒39は、リーン状態の排ガス中で、水素を還元剤として排ガス中のNOxを還元するように構成される。
【0029】
一方、選択還元型触媒39より排ガス上流側であってタービンハウジング19bより排ガス下流側の排気管18には、補助燃料添加手段41の補助燃料添加ノズル42が設けられる。また補助燃料添加手段41は、補助燃料添加ノズル42に燃料25を供給する補助燃料供給手段43を有する。補助燃料添加ノズル42は、選択還元型触媒39より排ガス上流側であってタービンハウジング19bより排ガス下流側の排気管18に燃料25を添加することにより選択還元型触媒39に燃料を供給するように構成される。また補助燃料供給手段43は、補助燃料添加ノズル42に先端が接続され基端が燃料ポンプ33及び燃料圧力調整弁36間の燃料供給管31に接続された補助燃料供給管44と、補助燃料添加ノズル42から噴射される燃料25の供給量(噴射量)を調整する補助燃料供給量調整弁46とを有する。補助燃料供給量調整弁46は補助燃料供給管44に設けられる。また補助燃料供給量調整弁46は、補助燃料供給管44に設けられ補助燃料添加ノズル42への燃料25の供給圧力を調整する補助燃料圧力調整弁47と、補助燃料添加ノズル42の基端に設けられ補助燃料添加ノズル42の基端を開閉する補助燃料用開閉弁48とからなる。
【0030】
補助燃料圧力調整弁47は第1〜第3ポート47a〜47cを有する三方弁であり、第1ポート47aは燃料ポンプ33の吐出口に接続され、第2ポート47bは補助燃料用開閉弁48に接続され、第3ポート47cは補助戻り管49を介して戻り管38に接続される。補助燃料圧力調整弁47を駆動すると、燃料ポンプ33により圧送された燃料25が第1ポート47aから補助燃料圧力調整弁47に流入し、この補助燃料圧力調整弁47で所定の圧力に調整された後、第2ポート47bから補助燃料用開閉弁48に圧送される。また補助燃料圧力調整弁47の駆動を停止すると、燃料ポンプ33により圧送された燃料25が第1ポート47aから補助燃料圧力調整弁47に流入した後、第3ポート47cから補助戻り管49及び戻り管38を通って燃料タンク32に戻される。
【0031】
一方、排気マニホルド17と排気管18とはバイパス管51によりターボ過給機19のタービンハウジング19bをバイパスして連通接続される。即ち、バイパス管51の一端は改質触媒24より排ガス下流側の排気マニホルド17の集合管部17bに接続され、バイパス管51の他端はタービンハウジング19bより排ガス下流側であって選択還元型触媒39より排ガス上流側の排気管18に接続される。このバイパス管51にはウェイストゲートバルブ52が設けられる。このバルブ52は、バイパス管51の開度を調整することにより、タービンハウジング19bに流す排ガスの流量を調整するように構成される。
【0032】
また、排気マニホルド17の集合管部17bには、タービンハウジング19bの入口温度を検出する温度センサ53が設けられる。またエンジン11にはこのエンジン11に吸入される空気量を検出するマスフローセンサ54が設けられ、排気マニホルド17には排ガス中の酸素濃度を検出するO2センサ56が設けられ、選択還元型触媒39より排ガス下流側の排気管18には排ガス中のNOxの濃度を検出するNOxセンサ57が設けられる。更にエンジン11の回転速度は回転センサ58により検出され、エンジン11の負荷は負荷センサ59により検出される。温度センサ53、マスフローセンサ54、O2センサ56、NOxセンサ57、回転センサ58及び負荷センサ59の各検出出力はコントローラ61の制御入力に接続され、コントローラ61の制御出力は、EGRバルブ23、燃料ポンプ33、燃料圧力調整弁36、燃料用開閉弁37、補助燃料圧力調整部47、補助燃料用開閉弁48及びウェイストゲートバルブ52に接続される。またエンジン11にはメモリ62が接続される。このメモリ62には、タービンハウジング19bの入口温度や排ガス流量に応じたウェイストゲートバルブ52の開度が予め記憶される。またメモリ62には、吸入空気量及び排ガス中の酸素濃度に応じた、燃料ポンプ33のオンオフ、燃料圧力調整弁36の開度及び燃料用開閉弁37の開閉間隔が予め記憶される。またメモリ62には、選択還元型触媒39から排出された排ガス中のNOx濃度に応じた、燃料ポンプ33のオンオフ、補助燃料圧力調整弁47の開度及び補助燃料用開閉弁48の開閉間隔が予め記憶される。更にメモリ62には、エンジン回転速度及びエンジン負荷に応じたEGRバルブ23の開度が予め記憶される。
【0033】
このように構成された排ガス浄化装置の動作を説明する。エンジン11の運転中に、排ガス中のNOx濃度が所定値以上になったことをNOxセンサ57が検出すると、コントローラ61は、NOxセンサ57の検出出力に基づいて燃料ポンプ33をオンし、マスフローセンサ54及びO2センサ56の各検出出力に基づいて燃料圧力調整弁36を所定の開度で開くとともに、燃料用開閉弁37の開閉間隔を所定の間隔に調整し、所定時間が経過した後に燃料圧力調整弁36を閉じ、燃料用開閉弁37の開閉を停止し、燃料ポンプ33をオフにする。これにより必要量の燃料25が燃料添加ノズル28から排気マニホルド17の所定の枝管部17aに添加される。この燃料添加ノズル28から添加された燃料25の一部が改質触媒24を昇温させ、所定温度(例えば、600℃)に昇温した改質触媒24で燃料25の残りの殆ど全てが水素に改質される。このとき改質触媒24がエンジン11の排気ポートに接近しているため、改質触媒24に流入する排ガスの温度は高い。また改質触媒24を排気マニホルド17の複数の枝管部17aのうちの1つに設け、この改質触媒24の設けられた枝管部17aのみに燃料添加ノズル28から燃料25を添加するので、改質触媒24内の排ガスを速やかに燃料リッチ状態にすることができる。この結果、極めて少ない量の燃料25で改質触媒24を改質可能な温度に昇温させることができるとともに、改質触媒24において燃料25の一部を水素に効率良く改質できる。
【0034】
改質触媒24で水素に改質されずに改質触媒24をそのまま通過する燃料は殆どなく、また改質触媒24の設けられていない枝管部17aに、燃料25の添加されない排ガスのみが通過するので、これらの排ガスを混合すると、改質された水素を含むリーン状態(排ガスの空気過剰率λ>1の状態)の排ガスとなる。この水素を含むリーン状態の排ガスが選択還元型触媒39に流入すると、水素が選択還元型触媒39でNOxの還元剤として機能し、選択還元型触媒39上で水素とNOxが所定温度以上(例えば、200℃以上)で反応して、NOxの還元反応と水素の酸化反応とが促進されるので、排ガス中のNOxが低減される。この結果、選択還元型触媒39で排ガス中のNOxを効率良く還元できる。
【0035】
また、燃料添加ノズル28から燃料25を枝管部17aに添加している間に、NOxの排出量が多くなったことをNOxセンサ57が検出すると、コントローラ61は、NOxセンサ57の検出出力に基づいて、補助燃料圧力調整弁47を所定の開度で開くとともに、補助燃料用開閉弁48の開閉間隔を所定の間隔に調整する。これにより燃料25が補助燃料添加ノズル42から排気管18に添加されて選択還元型触媒39に流入する。この結果、補助燃料添加ノズル42から添加された燃料25が選択還元型触媒39でNOxの還元剤として機能し、改質触媒24で改質された水素が選択還元型触媒39で還元できなかった分のNOxが、上記補助燃料添加ノズル42から添加された燃料で還元される。
【0036】
更に、コントローラ61が回転センサ58及び負荷センサ59の各検出出力に基づいてEGRバルブ23を開くと、改質触媒24が枝管部17aを流れる排ガスの流路抵抗となるため、エンジン11の排気ポートからその枝管部17aに流入した排ガスのうちEGR管22を通って吸気管14に還流される量が増大する、即ちEGRガス量が増大する。この結果、エンジン11における燃料25の燃焼温度を速やかに下げることができるので、排ガス中に含まれるNOxを低減できる。なお、コントローラ61は、EGRバルブ23を開いたときには、EGRガスとともに燃料25が吸気管14に還流されるのを防止するため、燃料添加ノズル28から燃料25を添加しない。
【0037】
一方、排ガス温度が所定値以上になったことを温度センサ53が検出すると、コントローラ61は温度センサ53の検出出力に基づいてウェイストゲートバルブ52を開き、排ガスの一部をバイパス管51に流す。これにより、ターボ過給機19のタービンハウジング19bに流入する排ガスの流量が少なくなって、タービン回転翼を駆動するためのエネルギが減少し、タービン回転翼の回転速度が過度に上昇することを抑制できるので、上記タービン回転翼の高速回転によるタービン回転翼の損傷を防止できる。
【0038】
<第2の実施の形態>
図2及び図3は本発明の第2の実施の形態を示す。図2において図1と同一符号は同一部品を示す。この実施の形態では、エンジン11の燃料(軽油)を水素に改質する改質触媒84が排気マニホルド87の集合管部87bの途中に設けられる。具体的には、排気マニホルド87の集合管部87b内が、排ガスの流通方向に延びて設けられた仕切板81により第1通路87cと第2通路87dとに区画される(図3)。第1通路87cと第2通路87dはそれらの横断面形状が略半月状に形成される。そして改質触媒87は第1通路87cに収容される。これによりエンジン11から排出された排ガスの一部が第1通路87c及び改質触媒84を通ってタービンハウジング19bに流入し、排ガスの残部が改質触媒84をバイパスし第2通路87dを通ってタービンハウジング19bに流入するように構成される(図2及び図3)。また燃料添加手段27の燃料添加ノズル28は改質触媒84より排ガス上流側の第1通路87cに設けられる。この燃料添加ノズル28は、改質触媒84より排ガス上流側の第1通路87cに燃料を添加することにより、改質触媒84に燃料25を供給するように構成される。上記以外は第1の実施の形態と同一に構成される。
【0039】
このように構成された排ガス浄化装置の動作を説明する。エンジン11の運転中に、排ガス中のNOx濃度が所定値以上になったことをNOxセンサ57が検出すると、コントローラ61は、NOxセンサ57の検出出力に基づいて燃料ポンプ33をオンし、マスフローセンサ54及びO2センサ56の各検出出力に基づいて燃料圧力調整弁36を所定の開度で開くとともに、燃料用開閉弁37の開閉間隔を所定の間隔に調整し、所定時間が経過した後に燃料圧力調整弁36を閉じ、燃料用開閉弁37の開閉を停止し、燃料ポンプ33をオフにする。これにより必要量の燃料25が燃料添加ノズル28から排気マニホルド87に添加される。この燃料添加ノズル28から添加された燃料25の一部が改質触媒84を昇温させ、所定温度(例えば、600℃)に昇温した改質触媒84で燃料25の別の一部が水素に改質される。このとき改質触媒84がエンジン11の排気ポートから少し離れているため、改質触媒84に流入する排ガスの温度は若干低下するけれども比較的高い。また、改質触媒84を排気マニホルド87の集合管部87bの第1通路87cに設け、この改質触媒84の設けられた第1通路87cのみに燃料添加ノズル28から燃料25を添加するので、改質触媒84内の排ガスを速やかに燃料リッチ状態にすることができる。この結果、比較的少ない量の燃料25で改質触媒84を改質可能な温度に昇温させることができるとともに、改質触媒84において燃料25の一部を水素に効率良く改質できる。
【0040】
改質触媒84で水素に改質されずに改質触媒84をそのまま通過する燃料25は殆どなく、また排気マニホルド87の改質触媒84の設けられていない第2通路87dに、燃料25の添加されない排ガスのみが通過するので、これらの排ガスを混合すると、改質された水素を含むリーン状態(排ガスの空気過剰率λ>1の状態)の排ガスとなる。この水素を含むリーン状態の排ガスが選択還元型触媒39に流入すると、水素が選択還元型触媒39でNOxの還元剤として機能し、選択還元型触媒39上で水素とNOxが所定温度以上(例えば、200℃以上)で反応して、NOxの還元反応と水素の酸化反応とが促進されるので、排ガス中のNOxが低減される。この結果、選択還元型触媒39で排ガス中のNOxを効率良く還元できる。また改質触媒84を排気マニホルド87の比較的太い集合管部87bの第1通路87cに設けたので、改質触媒84を細い枝管部87aに設ける場合より、改質触媒84の取付作業性が良好であるとともに、改質触媒84の容積を容易に変更できる。なお、改質触媒84を排気マニホルド87の比較的太い集合管部87bの第1通路87cに設けたので、改質触媒84がEGRガスの流路抵抗となることは殆どない。上記以外の動作は第1の実施の形態と略同様であるので、繰返しの説明を省略する。
【0041】
<第3の実施の形態>
図4は本発明の第3の実施の形態を示す。この実施の形態では、エンジンの燃料(軽油)を水素に改質する改質触媒104が、第2の実施の形態と同様に、排気マニホルド107の集合管部107bの途中に設けられる。具体的には、排気マニホルド107の集合管部107b内が、排ガスの流通方向に延びて設けられ改質触媒104より長く形成され集合管部107bより小径の内管部101により内側の第1通路107cと外側の第2通路107dとに区画される。この内管部101の両端は開放される。改質触媒104はこの改質触媒104の後端が小径管101の後端に略一致するように第1通路107cに収容される。また内管部101の入口端及び出口端には、内管部101を集合管部107bの内部中央に位置決めする第1及び第2リング板107e,107fがそれぞれ嵌着され、内管部101の長手方向の中央には、改質触媒104の入口端に位置するように第3リング板107gが嵌着される。これらのリング板107e〜107gには円周方向に一列に並んだ複数の通孔107hが形成され、これらの通孔107hにより排ガス上流側の枝管部が第2通路107dを介して排ガス下流側の排気管に連通接続されるように構成される。これによりエンジンから排出された排ガスの一部が内側の第1通路107cと改質触媒104を通ってタービンハウジングに流入し、排ガスの残部が改質触媒104をバイパスし外側の第2通路107dを通ってタービンハウジングに流入するように構成される。更に第1リング板107eと第2リング板107fとの間には、集合管部107bの外方と内管部101の内方を連通接続する小径管102が集合管部107bと内管部101に掛け渡され、この小径管102に燃料添加ノズル28が挿着される。燃料添加ノズル28は、改質触媒104より排ガス上流側の第1通路107cに燃料を添加することにより、改質触媒104に燃料を供給するように構成される。上記以外は第2の実施の形態と同一に構成される。
【0042】
このように構成された排ガス浄化装置では、排ガスが排気マニホルド107の集合管部107bを流れるとき、排ガスの一部が集合管部107bの中心に位置する改質触媒104を通過し、排ガスの残部が改質触媒104の外周面に沿って通過するので、排ガスの流れが集合管部107bの中心線回りに対称になり、排ガスが集合管部107bを速やかに流れるという点で第2の実施の形態より優れた効果を奏する。上記以外の動作は第2の実施の形態の動作と略同様であるので、繰返しの説明を省略する。
【0043】
なお、上記第1〜第3の実施の形態では、本発明の排ガス浄化装置をディーゼルエンジンに適用したが、本発明の排ガス浄化装置をガソリンエンジンに適用してもよい。また、上記第1の実施の形態では、EGR管を接続した枝管部に改質触媒を設けたが、EGRバルブを開放したときに燃料添加ノズルから燃料を添加する状況が発生する場合には、EGR管を接続した枝管部以外の枝管部に改質触媒を設けることが好ましい。また、上記第1の実施の形態では、改質触媒を複数の枝管部のいずれか1つに設けたが、排気マニホルドの複数の枝管部の2つ以上かつ枝管部の総数未満に改質触媒を設けてもよい。具体的には、エンジンが6気筒である場合、改質触媒を複数の枝管部のいずれか2つ、3つ、4つ又は5つに設けてもよく、エンジンが8気筒である場合、改質触媒を複数の枝管部のいずれか2つ、3つ、4つ、5つ、6つ又は7つに設けてもよく、エンジンが4気筒である場合、改質触媒を複数の枝管部のいずれか2つ又は3つに設けてもよい。
【0044】
更に、上記第1の実施の形態では、燃料添加手段が、改質触媒より排ガス上流側の枝管部に設けられ改質触媒より排ガス上流側の枝管部に燃料を添加する燃料添加ノズルと、この燃料添加ノズルに燃料を供給する燃料供給手段とを有するように構成したが、燃料添加手段が、エンジンの複数の気筒のうち改質触媒に排ガスが流入する気筒に燃料を噴射する所定の燃料噴射ノズルと、この所定の燃料噴射ノズルに燃料を供給する燃料供給手段とを有し、所定の燃料噴射ノズルからエンジンで燃焼される燃料の量を越える量の燃料を噴射するように構成してもよい。この場合、所定の燃料噴射ノズルからエンジンで燃焼される燃料の量を越える量の燃料を噴射するので、エンジンにおける燃料の燃焼に幾分影響を与えるけれども、燃料添加ノズルを新たに追加する必要がなく、部品点数の増大を回避できる。
【実施例】
【0045】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0046】
<実施例1>
図1に示すように、排気量が8000ccである直列6気筒のターボ過給機19付ディーゼルエンジン11の排気マニホルド17の複数の枝管部17aの1つに改質触媒24を設けた。またこの枝管部17aにはEGR管22の一端を接続し、EGR管22の他端を吸気管14に接続した。更に改質触媒24より排ガス上流側であってEGR管22の分岐部より排ガス下流側の枝管部17aに、燃料(軽油)25を供給する燃料添加ノズル28を設け、この燃料添加ノズル28に燃料供給手段29が燃料25を供給するように構成した。ここで、改質触媒24は、ロジウムをイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして作製した触媒であった。一方、ターボ過給機19のコンプレッサハウジング19aを吸気管14の途中に設け、インタクーラ21をコンプレッサハウジング19aより吸気下流側の吸気管14の途中に設けた。またタービンハウジング19bを排気マニホルド17と排気管18との間に介装した。更に排気管18に選択還元型触媒39を設けた。ここで、選択還元型触媒39は、銀及び白金をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして作製した触媒であった。この排ガス浄化装置を実施例1とした。
【0047】
<比較例1>
改質触媒を、ターボ過給機のタービンハウジングより排ガス下流側であって選択還元型触媒より排ガス上流側の排気管に設け、燃料添加ノズルを、ターボ過給機のタービンハウジングより排ガス下流側であって改質触媒より排ガス上流側の排気管に設けたこと以外は、実施例1と同一に構成した。この排ガス浄化装置を比較例1とした。
【0048】
<比較試験1及び評価>
実施例1及び比較例1の排ガス浄化装置の燃料添加ノズルから燃料を添加して改質触媒に燃料を供給した。そして改質触媒で燃料が水素に改質された。このとき改質された水素が所定量になるように燃料添加ノズルからの燃料の添加量を制御した。具体的には、図5(a)及び(b)に示すように、改質触媒を昇温するための燃料の流量及び供給時間をそれぞれQ1及びT1とし、改質触媒で水素を生成(改質)するための燃料の流量及び供給時間をそれぞれQ2及びT2とした。そして、実施例1及び比較例1において、Q1、Q2及びT2をそれぞれ同一に保った状態で、T1を変えて、改質触媒で改質された水素が所定量になるように燃料添加ノズルからの燃料の添加量を制御した。その結果、排気マニホルドの集合管部における排ガス温度が550℃であり、白金系触媒より排ガス上流側の排ガス温度が200℃であったとき、比較例1の改質触媒を昇温するための燃料の供給時間T1を100%とすると、実施例1の改質触媒を昇温するための燃料の供給時間T1は15%短くなった。この結果、比較例1の排ガス浄化装置より実施例1の排ガス浄化装置の方が、少ない燃料の添加で改質触媒において水素に改質できることが分かった。
【0049】
<比較例2>
選択還元型触媒が、銀を含まず白金のみをイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして作製した触媒であったこと以外は、排ガス浄化装置を実施例1と同一に構成した。この排ガス浄化装置を比較例2とした。
【0050】
<比較試験2及び評価>
実施例1及び比較例2の排ガス浄化装置において、エンジンの回転速度及び負荷を変化させて、排ガス温度300℃において、実施例1及び実施例2の排ガス浄化装置によるNOx低減率を測定した。その結果を図6に示す。図6から明らかなように、選択還元型触媒が銀を含まない比較例2の排ガス浄化装置ではNOx低減率が0%とNOxが全く還元されなかったのに対し、選択還元型触媒が銀を含む実施例1の排ガス浄化装置ではNOx低減率が約25%とNOxの還元性能が向上したことが分かった。
【符号の説明】
【0051】
11 ディーゼルエンジン(エンジン)
12 吸気通路
17,87,107 排気マニホルド
17a 枝管部
18 排気管
19 ターボ過給機
19b タービンハウジング
22 EGR管
23 EGRバルブ
24,84,104 改質触媒
25 燃料
27 燃料添加手段
28 燃料添加ノズル
29 燃料供給手段
39 選択還元型触媒
51 バイパス管
52 ウェイストゲートバルブ
53 温度センサ
61 コントローラ
87b,107b 集合管部
87c,107c 第1通路
87d,107d 第2通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ過給機(19)付エンジン(11)の排気ポートに接続された排気マニホルド(17)に設けられ前記エンジン(11)の燃料(25)を水素に改質する改質触媒(24)と、
前記排気マニホルド(17)に前記燃料(25)を添加することにより前記改質触媒(24)に前記燃料(25)を供給する燃料添加手段(27)と、
前記ターボ過給機(19)の前記タービンハウジング(19b)より排ガス下流側の排気管(18)に設けられ前記水素を還元剤として排ガス中のNOxを還元する銀−白金系触媒からなる選択還元型触媒(39)と、
前記タービンハウジング(19b)をバイパスするバイパス管(51)に設けられ前記バイパス管(51)の開度を調整して前記タービンハウジング(19b)に流す排ガスの流量を調整するウェイストゲートバルブ(52)と、
前記タービンハウジング(19b)の入口温度を検出する温度センサ(53)と、
前記エンジン(11)の運転条件に基づいて前記燃料添加手段(27)を制御するとともに前記温度センサ(53)の検出出力に基づいて前記ウェイストゲートバルブ(52)を制御するコントローラ(61)と
を備えた排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記改質触媒(24)が、前記排気マニホルド(17)の複数の枝管部(17a)の1つ以上かつ前記枝管部(17a)の総数未満に設けられた請求項1記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
一端が前記排気マニホルド(17)に接続され他端が前記エンジン(11)の吸気通路(12)に接続され前記排ガスの一部を前記吸気通路(12)に戻すEGR管(22)と、このEGR管(22)に設けられ前記吸気通路(12)に戻す排ガスの流量を調整するEGRバルブ(23)とを更に備え、前記EGR管(22)の一端が前記排気マニホルド(17)の複数の枝管部(17a)のいずれかに接続され、前記改質触媒(24)が前記EGR管(22)の一端の接続された枝管部(17a)であって前記EGR管(22)の一端の接続部より排ガス下流側に設けられた請求項1記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
前記燃料添加手段(27)が、前記改質触媒(24)より排ガス上流側の枝管部(17a)に設けられ前記改質触媒(24)より排ガス上流側の枝管部(17a)に前記燃料(25)を添加する燃料添加ノズル(28)と、この燃料添加ノズル(28)に前記燃料(25)を供給する燃料供給手段(29)とを有する請求項2又は3記載の排ガス浄化装置。
【請求項5】
前記燃料添加手段が、前記エンジンの複数の気筒のうち前記改質触媒に排ガスが流入する気筒に燃料を噴射する所定の燃料噴射ノズルと、この所定の燃料噴射ノズルに前記燃料を供給する燃料供給手段とを有し、前記所定の燃料噴射ノズルから前記エンジンで燃焼される燃料を越える量の燃料を噴射するように構成された請求項2又は3記載の排ガス浄化装置。
【請求項6】
前記排気マニホルド(87,107)の集合管部(87b,107b)内が第1通路(87c,107c)と第2通路(87d,107d)とに区画され、前記改質触媒(84,104)が前記第1通路(87c,107c)に収容され、前記エンジン(11)から排出された排ガスの一部が前記第1通路(87c,107c)及び前記改質触媒(84,104)を通って前記タービンハウジング(19b)に流入し、前記排ガスの残部が前記改質触媒(84,104)をバイパスし前記第2通路(87d,107d)を通って前記タービンハウジング(19b)に流入するように構成された請求項1記載の排ガス浄化装置。
【請求項7】
前記燃料添加手段(27)が、前記改質触媒(84,104)より排ガス上流側の前記第1通路(87c,107c)に設けられ前記改質触媒(84,104)より排ガス上流側の前記第1通路(87c,107c)に前記燃料(25)を添加する燃料添加ノズル(28)と、この燃料添加ノズル(28)に前記燃料(25)を供給する燃料供給手段(29)とを有する請求項6記載の排ガス浄化装置。
【請求項8】
前記改質触媒(24,84,104)が、ロジウム、パラジウム及び白金からなる群より選ばれた1種又は2種以上の貴金属を添加したゼオライト又はアルミナをハニカム担体にコーティングして構成された請求項1ないし7いずれか1項に記載の排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−96347(P2013−96347A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241808(P2011−241808)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】