説明

接着剤組成物、回路接続材料及び接続構造、並びに回路部材の接続方法

【課題】微細な接続端子を有する回路部材同士を接続するに際し、隣り合う接続端子間の優れた絶縁性をより確実に達成可能な接着剤組成物及びこれを用いた回路接続材料を提供すること。
【解決手段】本発明に係る接着剤組成物50は、接着剤成分20と、接着剤成分20中に分散している導電粒子10Aとを備えるものであって、導電粒子10Aは、導電性を有する核粒子1と、核粒子の表面上に設けられた、有機高分子化合物を含有する絶縁被覆体とを備え、下記式(1)で定義される被覆率が20〜50%の範囲である。
【数1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、回路接続材料及び接続構造、並びに回路部材の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示ディスプレイ用ガラスパネルに液晶駆動用ICを実装する方法として、CHIP−ON−GLASS実装(以下、「COG実装」という。)やCHIP−ON−FLEX実装(以下、「COF実装」という。)が広く用いられている。COG実装は、液晶駆動用ICを直接ガラスパネル上に接合する方法である。一方、COF実装は、金属配線を有するフレキシブルテープに液晶駆動用ICを接合し、これとガラスパネルとを接合する方法である。
【0003】
上記のCOG実装及びCOF実装においては、回路接続材料として異方導電性を有する接着剤組成物を用いることが一般的である。この接着剤組成物は、接着剤成分中に導電粒子を分散させたものである。
【0004】
近年、液晶表示の高精細化に伴い、液晶駆動用ICの電極であるバンプやフレキシブルテープの金属配線等は、狭ピッチ化及び小面積化の傾向にある。このため、従来の接着剤組成物では、接続すべき接続端子間に捕捉される導電粒子の数が不十分となり、接続部分の抵抗値が高くなるといった問題が生じることがある。
【0005】
一方、このような問題を防ぐために、接着剤組成物の導電粒子の含有量を多くすると、隣り合う接続端子間の絶縁性が不十分となるおそれがある。
【0006】
そこで、接続信頼性を向上させる手段として、特許文献1には、導電粒子を含有する接着層の一方の面に絶縁性を有する接着層が形成された接続部材が記載されている。また、特許文献2及び3には、絶縁性を有する皮膜で表面を被覆した導電粒子を用いる技術が記載されている。
【特許文献1】特開平08−279371号公報
【特許文献2】特許第2794009号公報
【特許文献3】特開2001−195921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の接続部材によれば、接続部分の低い抵抗値及び隣り合う接続端子間の絶縁性の両方が達成されるという効果が得られる。しかしながら、当該接続部材は、バンプ面積が非常に小面積(例えば、3000μm未満)の場合において、上記の効果を十分安定的に達成するためには、未だ改善の余地があった。
【0008】
特許文献2及び3に記載の導電粒子のように、全表面が絶縁性皮膜で被覆された粒子を使用すると、隣り合う接続端子間の絶縁性は確保される場合が多い。しかし、このような導電粒子を用いると接続部分の抵抗値を十分に低くすることができなかったり、この抵抗値が経時的に上昇するといった問題があった。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、微細な接続端子を有する回路部材同士を接続するに際し、隣り合う接続端子間の優れた絶縁性をより確実に達成可能な接着剤組成物及びこれを用いた回路接続材料を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、上記の回路接続材料を用いて回路部材が接続された接続構造、並びにこれを得るための回路部材の接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の接着剤組成物は、接着剤成分と、接着剤成分中に配置されている導電粒子とを備える接着剤組成物であって、導電粒子は、導電性を有する核粒子と、核粒子の表面上に設けられた、有機高分子化合物を含有する絶縁被覆体とを備え、下記式(1)で定義される被覆率が20〜50%の範囲である。
【0012】
【数1】

【0013】
本発明における導電粒子は、被覆率が20〜50%の範囲となるように絶縁被覆体が設けられている。導電粒子の被覆率が20〜50%であると、隣り合う接続端子同士の電気的接続が十分に防止できる。これは、接着剤組成物内において導電粒子の凝集が生じたとしても、それぞれの導電粒子に設けられた絶縁被覆体により、電気的な導通が十分に防止できるためである。したがって、低い初期抵抗値を得るのに十分な量の導電粒子を接着剤組成物に含有させることが可能である。
【0014】
絶縁被覆体を構成する有機高分子化合物の架橋度は、5〜20%であることが好ましい。有機高分子化合物の架橋度が5〜20%であると、隣り合う接続端子間の優れた絶縁性をより確実に確保できるとともに、接続部分の低い抵抗値及びこの抵抗値の経時的な上昇の抑制の両方をより確実に達成することができる。
【0015】
絶縁被覆体は、核粒子の表面上に設けられた、有機高分子化合物を含有する複数の絶縁性粒子で構成することができる。この場合、絶縁性粒子の粒径(D)と核粒子の粒径(D)との比率(D/D)は、1/40〜1/8であることが好ましい。当該比率が上記範囲内であると、接続部分の低い抵抗値及びこの抵抗値の経時的な上昇の抑制の両方をより確実に達成することができる。
【0016】
導電粒子が備える絶縁被覆体が、ラジカル重合性物質の重合物からなると好ましい。この場合、絶縁被覆体が核粒子の表面に付着しやすくなるので、隣り合う接続端子間の優れた絶縁性をより確実に確保できる。
【0017】
また、本発明の接着剤組成物は、上記接着剤成分及び上記導電粒子を備えるフィルム状のものであって、当該接着剤組成物が備える導電粒子の全個数のうち、80%以上が当該接着剤組成物の表面から核粒子の平均粒径の2倍の距離の範囲内に配置されていることが好ましい。なお、「表面から核粒子の平均粒径の2倍の距離の範囲内」にある導電粒子とは、導電粒子全体が当該範囲内にあるものをいい、当該範囲の境界上に位置する導電粒子は当該範囲の外にあるものとする。
【0018】
導電粒子が、フィルム状の接着剤組成物の表面近傍に集中的に存在していると、接着剤組成物全体に平均的に分散している場合と比較し、接続構造を得る際に接着剤成分の流動に伴う導電粒子の移動が抑制される。そのため、対向する接続端子間に捕捉される導電粒子の数を十分に多くすることができ、接続の信頼性が向上する。
【0019】
導電粒子として、全表面が絶縁被覆体で覆われているものを用いた場合、核粒子と接続端子表面との間に絶縁被覆体が存在し、電気的な経路に絶縁被覆体が介在することになる。これに対し、本発明においては、導電粒子の絶縁被覆体が部分的であるため、電気的な経路に介在する絶縁被覆体を十分に低減することができる。このため、経路に存在する絶縁被覆体の影響を十分に抑制することができる。したがって、全表面が絶縁被覆体で覆われている導電粒子と比較し、接続部分の初期抵抗値を低くすることができ且つこの抵抗値の経時的な上昇をより確実に抑制することができる。
【0020】
本発明の接着剤組成物が、フィルム形成材と、エポキシ樹脂と、潜在性硬化剤とを含有すると好ましい。接着剤組成物がこれらの成分を含有すると、接着剤組成物のフィルム状への加工が容易であるとともに、回路部材同士を加熱によって容易に接続できる。
【0021】
また、上記のフィルム形成材が、フェノキシ樹脂であると好ましい。この場合、フィルム状に加工した接着剤組成物が裂ける、割れる、あるいはべたつく等の問題が生じにくく、接着剤組成物の取扱いがより容易となる。
【0022】
また、フェノキシ樹脂が、分子内に多環芳香族基を有すると好ましい。この場合、接着性、相溶性、耐熱性、機械強度等に優れた接着剤組成物が得られる。多環芳香族基は、フルオレン環であることが好ましい。
【0023】
本発明の回路接続材料は、本発明に係る上記接着剤組成物からなり、回路部材同士を接着するとともに、それぞれの回路部材が有する接続端子同士を電気的に接続するために用いられるものである。
【0024】
本発明の接続構造は、対向配置された一対の回路部材と、本発明に係る上記回路接続材料の硬化物からなり、一対の回路部材の間に介在しそれぞれの回路部材が有する接続端子同士が電気的に接続されるように当該回路部材同士を接着する接続部と、を備える。
【0025】
本発明の接続構造においては、一対の回路部材の少なくとも一方がICチップであってもよい。また、当該接続構造では、接続端子は、金、銀、錫、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金及びインジウム錫酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種で構成されている表面を有していてもよい。
【0026】
また、本発明の接続構造においては、一対の回路部材の接続部に対する当接面が、窒化シリコン、シリコーン化合物及びポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の素材によって構成される部分を有していてもよい。
【0027】
本発明の接続構造では、電気的に接続された接続端子間の抵抗値は1Ω以下であることが好ましい。このような接続構造では、対向する接続端子間の接続抵抗が十分に低減される。
【0028】
また、発明の接続構造では、隣り合う接続端子間に50Vの直流電圧を1分間印加した後において、隣り合う接続端子間の抵抗値が10Ω以上であることが好ましい。このような接続構造によれば、その動作時において隣り合う接続端子間の絶縁性が極めて高いため、隣り合う接続端子間のショートを十分に防止することが可能となる。
【0029】
本発明の回路部材の接続方法は、対向配置された一対の回路部材の間に本発明に係る上記回路接続材料を介在させ、全体を加熱及び加圧して、回路接続材料の硬化物からなり、一対の回路部材の間に介在しそれぞれの回路部材が有する接続端子同士が電気的に接続されるように回路部材同士を接着する接続部を形成することにより、一対の回路部材及び接続部を備える接続構造を得るものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、微細な接続端子を有する回路部材同士を接続するに際し、隣り合う接続端子間の優れた絶縁性をより確実に達成可能な接着剤組成物及びこれを用いた回路接続材料を提供することができる。また、上記の回路接続材料を用いて回路部材が接続された接続構造、並びにこれを得るための回路部材の接続方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0032】
なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸」及びそれに対応する「メタクリル酸」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味する。
【0033】
図1は、本発明に係る接着剤組成物が回路接続材料として使用され、接続端子同士が接続された接続構造を示す概略断面図である。図1に示す接続構造100は、相互に対向する第1の回路部材30及び第2の回路部材40を備えており、第1の回路部材30と第2の回路部材40との間には、これらを接続する接続部50aが設けられている。
【0034】
第1の回路部材30は、回路基板(第1の回路基板)31と、回路基板31の主面31a上に形成される接続端子(第1の接続端子)32とを備えている。第2の回路部材40は、回路基板(第2の回路基板)41と、回路基板41の主面41a上に形成される接続端子(第2の接続端子)42とを備えている。
【0035】
回路部材の具体例としては、ICチップ(半導体チップ)、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品などが挙げられる。これらの回路部材は、接続端子を備えており、多数の接続端子を備えているものが一般的である。上記回路部材が接続される、もう一方の回路部材の具体例としては、金属配線を有するフレキシブルテープ、フレキシブルプリント配線板、インジウム錫酸化物(ITO)が蒸着されたガラス基板などの配線基板が挙げられる。本発明によれば、これらの回路部材同士を効率的且つ高い接続信頼性をもって接続することができる。したがって、本発明に係る導電粒子は、微細な接続端子(回路電極)を多数備えるチップ部品の配線基板上へのCOG実装もしくはCOF実装に好適である。
【0036】
主面31a及び/又は主面41aは、窒化シリコン、シリコーン化合物及びシリコーン樹脂、並びに、感光性もしくは非感光性のポリイミド樹脂等の有機絶縁物質でコーティングされていてもよい。また、主面31a及び/又は主面41aが、上記材質からなる領域を部分的に有するものであってもよい。更に、回路基板31及び/又は回路基板41自体が上記材質からなるものであってもよい。主面31a,41aは、上記材質1種で構成されていてもよく、2種以上で構成されていてもよい。接着剤成分を適宜選択することによって、上記の材質からなる部分を有する回路基板同士も好適に接続することができる。
【0037】
各接続端子32,42の表面は、金、銀、錫、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金及びインジウム錫酸化物(ITO)から選ばれる1種で構成されてもよく、2種以上で構成されていてもよい。また、接続端子32,42の表面の材質は、すべての接続端子において同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0038】
接続部50aは回路接続材料に含まれる接着剤成分の硬化物20aと、導電粒子10Aとを備えている。そして、接続構造100においては、対向する接続端子32と接続端子42とが、導電粒子10Aを介して電気的に接続されている。すなわち、導電粒子10Aが、接続端子32,42の双方に直接接触している。
【0039】
このため、接続端子32,42間の接続抵抗が十分に低減され、接続端子32,42間の良好な電気的接続が可能となる。他方、硬化物20aは電気絶縁性を有するものであり、隣り合う接続端子同士は絶縁性が確保される。従って、接続端子32,42間の電流の流れを円滑にすることができ、回路の持つ機能を十分に発揮することができる。
【0040】
次に、接着剤成分が硬化する以前の状態の接着剤組成物について詳細に説明する。図2は、本発明に係る接着剤組成物を回路接続材料として使用する際の好適な実施形態を示す概略断面図である。図2に示す回路接続材料50の形状はフィルム状である。回路接続材料50は、接着剤成分20と、回路接続材料50の厚さ方向の所定の範囲内に配置されている導電粒子10Aとを備える。
【0041】
回路接続材料50が含有する導電粒子10Aの全個数のうち、80%以上が回路接続材料50の一方の表面50Fから所定の距離の範囲内に配置されている。すなわち、80%以上の導電粒子10Aは、表面50Fから導電粒子10Aの核粒子1の平均粒径の2倍の距離の範囲内に配置されている。当該範囲内に配置されている導電粒子の数は、80%以上であればよいが、90%以上であることが好ましい。当該範囲内に配置されている導電粒子の数が80%未満であると、対向する接続端子間に捕捉される導電粒子の数が不十分となり、接続の信頼性が低下する。
【0042】
回路接続材料50は、例えば、フィルム状の支持体上に塗工装置を用いて接着剤成分を塗布し、所定時間熱風乾燥することにより接着剤層を形成した後、接着剤層の一方の面に導電粒子を吹き付け(吹付け工程)、接着剤層の表面に付着した導電粒子をラミネータなどにより埋め込むこと(埋込み工程)によって作製することもできる。
【0043】
表面50Fに吹き付けた導電粒子10Aを埋め込むことによって、表面50Fから核粒子1の平均粒径の2倍(より好ましくは1.8倍、更に好ましくは1.5倍)の距離の範囲内に、より確実に80%以上の導電粒子10Aを配置できる。
【0044】
次に、導電粒子10Aの構成について図3を参照しながら説明する。図3は、導電粒子の好適な一形態を示す断面図である。図3に示す導電粒子10Aは、導電性を有する核粒子1及びこの核粒子1の表面上に設けられた複数の絶縁性粒子2Aによって構成されている。
【0045】
核粒子1は、中心部分を構成する基材粒子1a及びこの基材粒子1aの表面上に設けられた導電層1bによって構成されている。
【0046】
基材粒子1aの材質としては、ガラス、セラミックス、有機高分子化合物などが挙げられる。これらの材質のうち、加熱及び/又は加圧によって変形するもの(例えば、ガラス、有機高分子化合物)が好ましい。基材粒子1aが変形するものであると、導電粒子10Aが接続端子32,42によって押圧された場合、接続端子との接触面積が増加する。また、接続端子32,42の表面の凹凸を吸収することができる。したがって、接続端子間の接続信頼性が向上する。
【0047】
上記のような観点から、基材粒子1aを構成する材質として好適なものは、例えば、ポリスチレン、ポリジビニルベンゼン、ポリアクリル酸エステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のプラスチック類、スチレンブタジエンゴム、シリコーンゴム等の各種ゴム類等である。また、これらを主成分とする材質に対して、架橋剤、硬化剤及び老化防止剤等の各種添加剤を添加したものを用いてもよい。なお、基材粒子1aは粒子間で同一又は異なる種類の材質であってもよく、同一粒子に1種の材質を単独で、又は2種以上の材質を混合して用いてもよい。
【0048】
基材粒子1aの平均粒径は、用途などに応じて適宜設計可能であるが、0.5〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましく、2〜5μmであることが更に好ましい。平均粒径が0.5μm未満の基材粒子を用いて導電粒子を作製すると、粒子の二次凝集が生じ、隣り合う接続端子間の絶縁性が不十分となる傾向があり、20μmを越える基材粒子を用いて導電粒子を作製すると、その大きさに起因して隣り合う接続端子間の絶縁性が不十分となる傾向がある。
【0049】
導電層1bは、基材粒子1aの表面を覆うように設けられた導電性を有する材質からなる層である。導電性を十分確保する観点から、導電層1bは、基材粒子1aの全表面を被覆していることが好ましい。
【0050】
導電層1bの材質としては、例えば、金、銀、白金、ニッケル、銅及びこれらの合金、錫を含有するはんだなどの合金、並びに、カーボンなどの導電性を有する非金属が挙げられる。基材粒子1aに対し、無電解めっきによる被覆が可能であることから、導電層1bの材質は金属であることが好ましい。また、十分なポットライフを得るためには、金、銀、白金又はこれらの合金がより好ましく、金が更に好ましい。なお、これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
導電層1bの厚さは、これに使用する材質や用途などに応じて適宜設計可能であるが、50〜200nmであることが好ましく、80〜150nmであることがより好ましい。厚さが50nm未満であると、接続部分の十分に低い抵抗値が得られなくなる傾向がある。他方、200nmを越える厚さの導電層1bは、製造効率が低下する傾向がある。
【0052】
導電層1bは、一層又は2層以上で構成することができる。いずれの場合においても、これを用いて作製される接着剤組成物の保存性の観点から、核粒子1の表面層は、金、銀、白金又はこれらの合金で構成することが好ましく、金で構成することがより好ましい。導電層1bが、金、銀、白金又はこれらの合金(以下、「金などの金属」という。)からなる一層で構成される場合、接続部分の十分に低い抵抗値を得るためには、その厚さは10〜200nmであることが好ましい。
【0053】
他方、導電層1bが2層以上で構成される場合、導電層1bの最外層は金などの金属で構成することが好ましいが、最外層と基材粒子1aと間の層は、例えば、ニッケル、銅、錫又はこれらの合金を含有する金属層で構成してもよい。この場合、導電層1bの最外層を構成する金などの金属からなる金属層の厚さは、接着剤組成物の保存性の観点から、30〜200nmであることが好ましい。ニッケル、銅、錫又はこれらの合金は、酸化還元作用で遊離ラジカルを発生することがある。このため、金などの金属からなる最外層の厚さが30nm未満であると、ラジカル重合性を有する接着剤成分と併用した場合、遊離ラジカルの影響を十分に防止することが困難となる傾向がある。
【0054】
導電層1bを基材粒子1a表面上に形成する方法としては、無電解めっき処理や物理的なコーティング処理が挙げられる。導電層1bの形成の容易性の観点から、金属からなる導電層1bを無電解めっき処理によって基材粒子1aの表面上に形成することが好ましい。
【0055】
絶縁性粒子2Aは、有機高分子化合物によって構成されている。有機高分子化合物としては、ラジカル重合性物質の重合物からなるものが好ましい。この場合、絶縁性粒子2Aが導電粒子10Aの核粒子1の表面に付着しやすくなるので、このような接続構造100では、隣り合う接続端子間の絶縁性、すなわち回路基板31,41の面方向における絶縁性を更に向上できる。絶縁性粒子2Aの製造方法としては、シード重合法などが挙げられる。
【0056】
ラジカル重合性物質は、ラジカルにより重合する官能基を有する物質であり、このようなラジカル重合性物質としては、(メタ)アクリレート化合物、マレイミド化合物等が挙げられる。ラジカル重合性物質はモノマー又はオリゴマーの状態で用いてもよく、また、モノマーとオリゴマーを併用することも可能である。
【0057】
(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0058】
これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、必要によりハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン類等の重合禁止剤を用いてもよい。また、耐熱性を向上させる点からは、(メタ)アクリレート化合物がジシクロペンテニル基、トリシクロデカニル基及びトリアジン環からなる群より選ばれる少なくとも1つの置換基を有することが好ましい。
【0059】
マレイミド化合物は、分子中にマレイミド基を少なくとも2個以上含有するものであり、このようなマレイミド化合物としては、例えば、1−メチル−2,4−ビスマレイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−m−トルイレンビスマレイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチルビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−3,3’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−4,8−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−マレイミドフェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0060】
絶縁性粒子2Aを構成する有機高分子化合物の軟化点は、回路部材同士の接続時の加熱温度以上であることが好ましい。軟化点が接続時の加熱温度未満であると、接続時に絶縁性粒子2Aが過度に変形することに起因して、良好な電気的接続が得られなくなる傾向がある。
【0061】
絶縁性粒子2Aを構成する有機高分子化合物の架橋度は、5〜20%であることが好ましく、5〜15%であることがより好ましく、8〜13%であることが更に好ましい。架橋度が上記範囲内である有機高分子化合物は、範囲外の有機高分子化合物と比較し、接続信頼性と絶縁性の両方が優れるという特性を有している。したがって、架橋度が5%未満であると、隣り合う電極回路間の絶縁性が不十分となる傾向がある。他方、架橋度が20%を越えると、接続部分の十分に低い初期抵抗値及び抵抗値の経時的な上昇の抑制の両方を達成することが困難となる傾向がある。
【0062】
有機高分子化合物の架橋度は、架橋性モノマーと非架橋性モノマーの組成比によって調整することができる。本発明でいう架橋度は、架橋性モノマーと非架橋性モノマーの組成比(仕込み質量比)による理論計算値を意味する。すなわち、有機高分子化合物を合成するに際して配合する架橋性モノマーの仕込み質量を架橋性及び非架橋性のモノマーの合計仕込み質量比で除して算出される値である。
【0063】
絶縁性粒子2Aを構成する有機高分子化合物のゲル分率は、90%以上であることが好ましく、95%以上がより好ましい。ゲル分率が90%未満であると、導電粒子10Aを接着剤成分中に分散させて接着剤組成物を作製した場合、接着剤成分の絶縁抵抗が経時的に低下する傾向がある。
【0064】
ここでいうゲル分率とは、有機高分子化合物の溶剤に対する耐性を示す指標であり、その測定方法を以下に説明する。ゲル分率を測定すべき有機高分子化合物(被測定試料)の質量(質量A)を測定する。被測定試料を容器内に収容し、これに溶剤を入れる。温度23℃において、被測定試料を溶剤に24時間撹拌浸漬する。その後、溶剤を揮発させるなどして除去し、攪拌浸漬後の被測定試料の質量(質量B)を測定する。ゲル分率(%)は、(質量B/質量A×100)の式によって算出される値である。
【0065】
ゲル分率の測定に使用する溶剤は、トルエンである。なお、接着剤組成物の溶液の調製には、一般に、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフランが使用される。これらの中から1種を単独で、又は2種以上混合して使用することができる。
【0066】
絶縁性粒子2Aの平均粒径は、用途などに応じて適宜設計可能であるが、50〜500nmであることが好ましく、50〜400nmであることがより好ましく、100〜300nmであることが更に好ましい。平均粒径が50nm未満であると、隣り合う回路間の絶縁性が不十分となる傾向があり、他方、500nmを越えると、接続部分の十分に低い初期抵抗値及び抵抗値の経時的な上昇の抑制の両方を達成することが困難となる傾向がある。
【0067】
絶縁性粒子2Aは、上記式(1)で定義される被覆率が20〜50%となるように核粒子1の表面上に形成される。本発明の効果を一層確実に得る観点から、被覆率は、25〜35%であることが好ましく、28〜32%であることがより好ましい。被覆率が20%未満であると、隣り合う接続端子間の絶縁性が不十分となり、他方、50%を越えると、接続部分の十分に低い初期抵抗値及び抵抗値の経時的な上昇の抑制の両方を達成することが困難となる。なお、核粒子1を被覆している複数の絶縁性粒子2Aは、核粒子1の表面上において、十分分散していることが好ましい。
【0068】
本発明でいう被覆率は、示差走査電子顕微鏡(倍率8000倍)による観察によって得られる、下記の測定値に基づくものである。すなわち、被覆率は、核粒子及び絶縁性粒子のそれぞれの粒径、並びに1個の核粒子に付着している絶縁性粒子の個数に基づき、算出される値である。任意に選択した粒子50個について上記のようにして測定し、その平均値を算出する。
【0069】
核粒子1の粒径は、以下のようにして測定される。すなわち、1個の核粒子を任意に選択し、これを示差走査電子顕微鏡で観察してその最大径及び最小径を測定する。この最大径及び最小径の積の平方根をその粒子の粒径とする。任意に選択した核粒子50個について上記のようにして粒径を測定し、その平均値を核粒子1の粒径(D)とする。絶縁性粒子2Aの粒径についても、これと同様にして任意の絶縁性粒子50個についてその粒径を測定し、その平均値を絶縁性粒子2Aの粒径(D)とする。
【0070】
1個の導電粒子が備える絶縁性粒子の個数は、以下のようにして測定される。すなわち、複数の絶縁性粒子2Aで表面の一部が被覆された導電粒子1個を任意に選択する。そして、これを示差走査電子顕微鏡で撮像し、観察し得る核粒子表面上に付着している絶縁性粒子の数をカウントする。これにより得られたカウント数を2倍にすることで1個の核粒子に付着している絶縁性粒子の数を算出する。任意に選択した導電粒子50個について上記のようにして絶縁性粒子の数を測定し、その平均値を1個の導電粒子が備える絶縁性粒子の個数とする。
【0071】
式(1)の核粒子の全表面積は、上記Dを直径とする球の表面積を意味する。一方、核粒子表面の絶縁被覆体で覆われている部分の面積は、上記Dを直径とする円の面積の値に1個の導電粒子が備える絶縁性粒子の個数を乗ずることによって得られる値を意味する。
【0072】
絶縁性粒子2Aの平均粒径Dと核粒子1の平均粒径Dの比率(D/D)は、1/40〜1/8であることが好ましく、1/20〜1/15であることがより好ましい。D/Dが1/40未満であると、隣り合う回路間の絶縁性が不十分となる傾向がある。他方、1/8を越えると、接続部分の十分に低い初期抵抗値及び抵抗値の経時的な上昇の抑制の両方を達成することが困難となる傾向がある。
【0073】
なお、核粒子1の表面上に形成する絶縁被覆体は、絶縁性粒子2Aのように球状のものに限定されない。絶縁被覆体は、絶縁性粒子2Aと同様の材質からなる絶縁性層であってもよい。例えば、図4に示す導電粒子10Bは、核粒子1の表面上に部分的に設けられた絶縁性層2Bを備えている。
【0074】
絶縁性層2Bは、上記式(1)で定義される被覆率が20〜50%となるように核粒子1の表面上に形成される。本発明の効果を一層確実に得る観点から、被覆率は、25〜35%であることが好ましく、28〜32%であることがより好ましい。被覆率が20%未満であると、隣り合う接続端子間の絶縁性が不十分となり、他方、50%を越えると、接続部分の十分に低い初期抵抗値及び抵抗値の経時的な上昇の抑制の両方を達成することが困難となる。なお、核粒子1を被覆している絶縁性層2Bの各被覆領域は、核粒子1の表面上において、十分分散していることが好ましい。各被覆領域は、それぞれ孤立していてもよく、連続していてもよい。
【0075】
絶縁性層2Bの厚さTと核粒子1の平均粒径Dの比率(T/D)は、1/40〜1/8であることが好ましく、1/20〜1/15であることがより好ましい。T/Dが1/40未満であると、隣り合う回路間の絶縁性が不十分となる傾向がある。他方、1/8を越えると、接続部分の十分に低い初期抵抗値及び抵抗値の経時的な上昇の抑制の両方を達成することが困難となる傾向がある。
【0076】
絶縁被覆体が絶縁性層2Bにより構成される場合の被覆率は、以下の手順により算出することができる。すなわち、任意に選択した導電粒子50個を示差走査電子顕微鏡でそれぞれ撮像し、観察し得る核粒子表面上に付着している絶縁性層の面積の測定値を相加平均することにより得ることができる。また、絶縁性層2Bの厚さTについても、任意に選択した導電粒子50個を示差走査電子顕微鏡でそれぞれ撮像し、各導電粒子の表面上の絶縁性層2Bの厚さの測定値を相加平均することにより得ることができる。
【0077】
核粒子1の表面に絶縁被覆体(絶縁性粒子2Aもしくは絶縁性層2B)を形成する方法としては、公知の手法を使用することができ、有機溶媒や分散剤による化学変化を利用した湿式方式及び機械エネルギーによる物理化学的変化を利用した乾式方式が挙げられる。例えば、噴霧法、高速撹拌法、スプレードライヤー法などが挙げられる。
【0078】
本発明の効果を一層確実に得るためには、粒径が十分に均一化されている複数の絶縁性粒子2Aを核粒子1の表面上に設け、これにより絶縁被覆体を構成することが好ましい。また、溶媒や分散剤の完全除去が困難な湿式方式よりも溶媒を使用しない乾式方式を採用することが好ましい。
【0079】
乾式方式で核粒子1の表面上に絶縁被覆体を形成できる装置としては、例えば、メカノミル(商品名、株式会社徳寿工作所製)、ハイブリダイザー(株式会社奈良機械製作所製、商品名:NHSシリーズ)などが挙げられる。このうち、絶縁被覆体を核粒子1の表面上に形成する際に核粒子1の表面を好適な状態に改質することができることから、ハイブリダイザーを用いることが好ましい。この装置によれば粒子レベルでの精密な被覆を行うことができ、粒径が十分に均一化された絶縁性粒子2Aを核粒子1の表面上に形成することができる。
【0080】
絶縁被覆体の形状の制御は、例えば、被覆処理の条件を調整することにより行うことができる。被覆処理の条件は、例えば、温度、回転速度である。また、絶縁性粒子2Aの粒径もしくは絶縁性層2Bの厚さは、被覆処理の条件や当該処理に供する核粒子1と有機高分子化合物(絶縁被覆体の材質)との配合比率を調整することにより行うことができる。
【0081】
被覆処理(乾式方式)の温度は、30〜90℃であることが好ましく、50〜70℃であることがより好ましい。また、被覆処理(乾式方式)の回転速度は、6000〜20000/分であることが好ましく、10000〜17000/分であることがより好ましい。
【0082】
<接着剤成分>
次に、回路接続材料に含まれる接着剤成分について説明する。接着剤成分は、フィルム形成材と、エポキシ樹脂と、潜在性硬化剤とを含有すると好ましい。このような接着剤成分を含む回路接続材料によって、回路部材30,40は加熱時に容易に接続される。
【0083】
(フィルム形成材)
フィルム形成材とは、液状物を固形化し構成組成物をフィルム形状とした場合に、そのフィルムの取扱いを容易とし、容易に裂けたり、割れたり、べたついたりしない機械的特性等を付与するものであり、通常の状態(常温常圧)でフィルムとしての取扱いができるものである。フィルム形成材としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、キシレン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、接着性、相溶性、耐熱性、機械的強度に優れることからフェノキシ樹脂が好ましい。
【0084】
フェノキシ樹脂は、2官能フェノール類とエピハロヒドリンを高分子量まで反応させるか、又は2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール類を重付加させることにより得られる樹脂である。フェノキシ樹脂は、例えば2官能フェノール類1モルとエピハロヒドリン0.985〜1.015モルとをアルカリ金属水酸化物等の触媒の存在下、非反応性溶媒中40〜120℃の温度で反応させることにより得ることができる。
【0085】
また、フェノキシ樹脂としては、樹脂の機械的特性や熱的特性の点からは、特に2官能性エポキシ樹脂と2官能性フェノール類の配合当量比をエポキシ基/フェノール水酸基=1/0.9〜1/1.1とし、アルカリ金属化合物、有機リン系化合物、環状アミン系化合物等の触媒存在下、沸点が120℃以上のアミド系、エーテル系、ケトン系、ラクトン系、アルコール系等の有機溶剤中で、反応固形分が50質量部以下の条件で50〜200℃に加熱して重付加反応させて得たものが好ましい。
【0086】
2官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。2官能フェノール類は、2個のフェノール性水酸基を持つものであり、このような2官能フェノール類としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS等のビスフェノール類等が挙げられる。
【0087】
また、フェノキシ樹脂は、その分子内に多環芳香族基を含有すると好ましい。これにより、接着性、相溶性、耐熱性、機械強度等に優れた回路接続材料が得られる。
【0088】
多環芳香族基としては、例えばナフタレン、ビフェニル、アセナフテン、フルオレン、ジベンゾフラン、アントラセン、フェナンスレン等のジヒドロキシ化合物等に起因するものが挙げられる。ここで、多環芳香族基はフルオレン環であると好ましい。さらに、フェノキシ樹脂は、原材料の一つとして9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを用いて調製されたものが特に好ましい。
【0089】
なお、フェノキシ樹脂は、ラジカル重合性の官能基により変性されていてもよい。また、フェノキシ樹脂は、1種を単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0090】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリンとビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールAD等とから誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラック又はクレゾールノボラックとから誘導されるエポキシノボラック樹脂、ナフタレン環を含む骨格を有するナフタレン系エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエーテル、ビフェニル、脂環式等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0091】
これらのエポキシ樹脂は、不純物イオン(Na、Cl等)や加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることがエレクトロンマイグレーション防止のために好ましい。
【0092】
(潜在性硬化剤)
本発明で使用する潜在性硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホ
ウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド
等が挙げられる。
【0093】
これらの硬化剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができ、分解促進剤、抑制剤等を混合して用いてもよい。また、これらの硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したものは、ポットライフが延長されるために好ましい。
【0094】
(その他の含有成分)
本実施形態の回路接続材料は、更に、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、及び(メタ)アクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種をモノマー成分とした重合体又は共重合体を含んでもよい。ここで、応力緩和に優れることから、グリシジルエーテル基を含有するグリシジル(メタ)アクリレートを含む共重合体系(メタ)アクリルゴムを併用することが好ましい。これら(メタ)アクリルゴムの分子量(重量平均分子量)は、接着剤の凝集力を高める点から20万以上が好ましい。
【0095】
また、本実施形態の回路接続材料には、更に、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、難燃化剤、色素、チキソトロピック剤、カップリング剤、フェノール樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート類等を含有することもできる。
【0096】
回路接続材料に充填剤を含有させる場合、接続信頼性等が向上するので好ましい。充填剤は、その最大径が導電粒子の平均粒径未満であれば使用できる。充填剤の配合量は、接着剤組成物100体積部に対して5〜60体積部であることが好ましい。配合量が60体積部を超えると、接続信頼性向上効果が飽和する傾向があり、他方、5体積部未満では充填剤添加の効果が不十分となる傾向がある。
【0097】
カップリング剤としては、ケチミン、ビニル基、アクリル基、アミノ基、エポキシ基又はイソシアネート基を含有する化合物が、接着性が向上するので好ましい。
【0098】
具体的には、アミノ基を有するシランカップリング剤として、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。ケチミンを有するシランカップリング剤として、上記のアミノ基を有するシランカップリング剤に、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン化合物を反応させて得られたものが挙げられる。
【0099】
図5は本発明に係る回路接続材料50がフィルム状の支持体60上に設けられている状態を示す断面図である。支持体60としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンイソフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリオレフィン系フィルム、ポリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリアミドフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、合成ゴム系フィルム、液晶ポリマーフィルム等の各種フィルムを使用することが可能である。上記のフィルムの表面に対し、必要に応じてコロナ放電処理、アンカーコート処理、帯電防止処理などが施された支持体を使用してもよい。
【0100】
回路接続材料50を使用する際に、回路接続材料50から支持体60を容易に剥離できるように、必要に応じて支持体60の表面には剥離処理剤をコーティングして使用してもよい。剥離処理剤として、シリコーン樹脂、シリコーンと有機系樹脂との共重合体、アルキッド樹脂、アミノアルキッド樹脂、長鎖アルキル基を有する樹脂、フルオロアルキル基を有する樹脂、セラック樹脂などの各種剥離処理剤を用いることができる。
【0101】
支持体60の膜厚は、特に制限されるものではないが、作製された回路接続材料50の保管、使用時の利便性等を考慮して、4〜200μmとすることが好ましく、さらに材料コストや生産性を考慮して、15〜75μmとすることがより好ましい。
【0102】
(接続方法)
図6は、本発明に係る回路部材の接続方法の一実施形態を概略断面図により示す工程図である。本実施形態では、回路接続材料を熱硬化させて接続構造を製造する。
【0103】
先ず、上述した第1の回路部材30と、シート状の回路接続材料50を用意する。回路接続材料50の厚さは、5〜50μmであることが好ましい。回路接続材料50の厚さが5μm未満であると、回路部材30,40間に回路接続材料50が充填不足となる傾向がある。他方、50μmを超えると、接続端子32,42間の導通の確保が困難となる傾向がある。
【0104】
次に、回路接続材料50を第1の回路部材30の接続端子32が形成されている面上に載せる。
【0105】
そして、回路接続材料50を、図6(a)の矢印A及びB方向に加圧し、回路接続材料50を第1の回路部材30に仮接続する(図6(b))。このときの圧力は回路部材に損傷を与えない範囲であれば特に制限されないが、一般的には0.1〜30.0MPaとすることが好ましい。また、加熱しながら加圧してもよく、加熱温度は回路接続材料50が実質的に硬化しない温度とする。加熱温度は一般的には50〜190℃にするのが好ましい。これらの加熱及び加圧は0.5〜120秒間の範囲で行うことが好ましい。
【0106】
次いで、図6(c)に示すように、第2の回路部材40を、接続端子42を第1の回路部材30の側に向けるようにして回路接続材料50上に載せる。そして、シート状の回路接続材料50を加熱しながら、図6(c)の矢印A及びB方向に全体を加圧する。
【0107】
このときの加熱温度は、回路接続材料50が硬化可能な温度とする。加熱温度は、60〜180℃が好ましく、70〜170℃がより好ましく、80〜160℃が更に好ましい。加熱温度が60℃未満であると硬化速度が遅くなる傾向があり、180℃を超えると望まない副反応が進行し易い傾向がある。加熱時間は、0.1〜180秒が好ましく、0.5〜180秒がより好ましく、1〜180秒が更に好ましい。
【0108】
図6(a)に示すように、一方の接続端子42の断面積が他方のそれと比較して小さい場合(例えば、ITO電極に断面積が小さいICチップの金バンプを接続する場合)、接続端子32に表面50Fが当接するように回路接続材料50を配置することが好ましい。このように回路接続材料50を配置すると、第1の回路部材30の接続端子32の近傍に導電粒子10Aが配置される。このため、接続端子42が接着剤成分20内に挿入されるに伴い接着剤成分が流動したとしても、導電粒子10Aは隣接している接続端子32によって移動が制限される。したがって、接続端子32,42間に捕捉される導電粒子の数を十分に多くすることができる。回路接続材料50の硬化により接着部50aが形成されて、図1に示すような接続構造100が得られる。
【0109】
接続の条件は、使用する用途、接着剤組成物、回路部材によって適宜選択される。なお、回路接続材料50の接着剤成分として、光によって硬化するものを使用した場合には、回路接続材料50に対して活性光線やエネルギー線を適宜照射すればよい。活性光線としては、紫外線、可視光、赤外線等が挙げられる。エネルギー線としては、電子線、エックス線、γ線、マイクロ波等が挙げられる。
【0110】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。たとえば、上記実施形態では、基材粒子1a及び導電層1bにより構成される核粒子1を例示したが、核粒子は導電性を有する材質(例えば、導電層1bと同様の材質)により構成されるものであってもよい。また、熱溶融金属からなる粒子を核粒子として使用することもできる。この場合、加熱及び加圧によって核粒子を十分に変形させることができる。
【0111】
また、導電粒子は、絶縁被覆体として絶縁性粒子2A及び絶縁性層2Bの両方が核粒子1の表面上に設けられたものであってもよい。
【0112】
シート状の回路接続材料は、単層構造であってもよく、複数の層が積層された多層構造であってもよい。多層構造の回路接続材料は、接着剤成分及び導電粒子の種類あるいはこれらの含有量が異なる層を複数積層することによって製造することができる。
【0113】
図7は、2層構造の回路接続材料が支持体に支持された状態を示す断面図である。図7に示す回路接続材料70は、導電粒子が表面近傍に埋め込まれている導電粒子埋込み層70aと、導電粒子が分散している導電粒子分散層70bと、を備えている。回路接続材料70は、以下のようにして作製することができる。
【0114】
すなわち、まず、接着剤成分の溶液をフィルム状の支持体上に塗工装置を用いて塗布した後、所定時間熱風乾燥して導電粒子を含有しない導電粒子非含有層を支持体上に形成する。一方、接着剤組成物の溶液をフィルム状の支持体上に塗工装置を用いて塗布した後、所定時間熱風乾燥して導電粒子が分散している導電粒子分散層を支持体上に形成する。次に、導電粒子非含有層と導電粒子分散層とを従来公知のラミネータなどを使用して貼り合わせる。そして、導電粒子非含有層側の支持体を剥離し、露出した面に対して所定量の導電粒子を吹き付け、更に吹き付けた導電粒子を埋め込むことにより、2層構造の回路接続材料70を作製できる。
【0115】
なお、上述の回路接続材料70では、導電粒子非含有層の表面に対して導電粒子の吹き付け及び埋め込みを行っているが、導電粒子分散層の表面に対して導電粒子の吹き付け及び埋め込みを行い、導電粒子非含有層及び導電粒子埋込み層(導電粒子分散層)からなる2層構造としてもよい。
【0116】
図8は、本発明に係る回路接続材料の他の実施形態を示す断面図である。図8に示す回路接続材料80は、回路接続材料80の両表面の近傍に導電粒子10Aが配置されている。そして、それぞれの表面近傍に埋め込まれている導電粒子10Aの個数の和が、全導電粒子10Aの個数の80%以上である。回路接続材料80によれば、回路基板間に配置する際に、当該材料の表裏を注意する必要がないため、作業性が向上する。
【実施例】
【0117】
(実施例1)
導電性を有する核粒子を以下のようにして製造した。すなわち、基材粒子として架橋ポリスチレン粒子(総研化学製、商品名:SXシリーズ、平均粒径:4μm)を準備し、この粒子の表面上に、無電解めっき処理によってNi層(厚さ0.08μm)を設けた。更に、このNi層の外側に無電解めっき処理によってAu層(厚さ0.03μm)を設け、Ni層及びAu層からなる導電層を有する核粒子を得た。
【0118】
核粒子の表面を被覆するための有機高分子化合物(絶縁被覆体)として、架橋アクリル樹脂(総研化学製、商品名:MPシリーズ、架橋度:20%、ゲル分率:18%)を準備した。この架橋アクリル樹脂4gと核粒子20gとをハイブリダイザー(株式会社奈良機械製作所製、商品名:NHSシリーズ)に導入し、導電粒子を作製した。なお、ハイブリダイザーにおける処理条件は、回転速度16000/分、反応槽温度60℃とした。これにより、図3に示すような構成の導電粒子を得た。示差走査電子顕微鏡(倍率8000倍)による観察の結果、この導電粒子の被覆率は、25%であった。
【0119】
次に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と9、9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを用い、ガラス転移温度が80℃のフェノキシ樹脂を合成した。このフェノキシ樹脂50gを溶剤に溶解し、固形分40質量%の溶液を調製した。なお、溶剤としては、トルエンと酢酸エチルの混合溶剤(両者の混合質量比=1:1)を使用した。
【0120】
フェノキシ樹脂40g(固形分)と、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂(エポキシ当量185)60g(固形分)とが配合されるように、上記の溶液とエポキシ樹脂とを混合した。これにより得られた接着剤成分の溶液100体積部に対して、上記導電粒子5体積部を配合し、温度23℃において撹拌分散することにより、接着剤組成物の溶液を調製した。
【0121】
剥離処理剤(シリコーン樹脂)による表面処理が施されたPETフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名:ピューレックス、厚さ:50μm)の面上に、接着剤組成物の溶液を塗工して塗布した。その後、これを熱風乾燥(80℃にて5分間)することにより、PETフィルムに支持された厚さ10μmの導電粒子分散層を得た。
【0122】
更に、接着剤組成物の溶液の代わりに、上記と同様にして調製した接着剤成分の溶液を、PETフィルムに塗工して塗布した。その後、これを熱風乾燥(80℃にて5分間)することにより、PETフィルムに支持された厚さ23μmの導電粒子非含有層を得た。
【0123】
これらの接着フィルム同士を、従来公知のラミネータを用いて貼り合わせた。そして、導電粒子非含有層側のPETフィルムを剥離し、導電粒子非含有層の表面に、導電粒子を平均30000個/mmの密度で吹き付けた。導電粒子を吹き付けた後、ラミネータを用いて導電粒子非含有層の表面から5μmの範囲内に導電粒子を埋め込み、導電粒子非含有層を導電粒子埋込み層とした。このようにして、図7に示す状態の2層構造(導電粒子分散層/導電粒子埋込み層)の回路接続材料を得た。
【0124】
(接続構造の作製)
上記のようにして製造した回路接続材料を用いてITO基板(表面抵抗<20Ω/□)とICチップとを接続し、接続構造を形成した。ICチップは、面積2800μm(28μm×100μm)、ピッチ38μm、高さ15μmの金バンプを備えるものを使用した。ITO基板は、厚さ1.1mmのガラス板の表面上にITOを蒸着により形成したものを使用した。
【0125】
ICチップとITO基板との間に、回路接続材料を介在させ、圧着装置(東レエンジニアリング株式会社製、商品名:FC−1200)を用いて接続を行った。具体的には、まず、導電粒子埋込み層がITO基板と当接するように回路接続材料をITO基板上に配置した。そして、圧着装置を用いて仮圧着(温度70℃、圧力0.5MPaにて5秒間)を行った。そして、導電粒子分散層側のPETフィルムを剥離した後、金バンプが導電粒子分散層と当接するようにICチップを載置した。ICチップの金バンプとITO基板の接続端子との接続面積は1400μm(28μm×50μm)とした。土台に石英ガラスを使用し、温度200℃、圧力100MPaにて10秒間加熱加圧することによって接続部を備える接続構造を得た。
【0126】
(接続端子間における導電粒子の捕捉数の測定)
上記のようにして作製した接続構造の接続端子間に捕捉された導電粒子の個数を以下のようにして測定した。すなわち、接続構造の接続部を顕微鏡で観察し、金バンプとITO基板の接続端子との間に捕捉されている導電粒子の数をカウントした。100対の接続端子について顕微鏡による観察を行い、その平均値を導電粒子の捕捉数とした。
【0127】
(初期接続抵抗の測定)
上記測定後、接続構造の接続部の初期抵抗を抵抗測定機(株式会社アドバンテスト製、商品名:デジタルマルチメータ)を用いて測定した。なお、測定は電極間に1mAの電流を流して行った。
【0128】
(隣接電極間の絶縁性の評価)
隣り合う電極間の絶縁抵抗を抵抗測定機(株式会社アドバンテスト製、商品名:デジタルマルチメータ)を用い、以下の手順で測定した。まず、接続構造の接続部に直流(DC)50Vの電圧を1分間印加した。そして、絶縁抵抗の測定は、電圧印加後の接続部に対し、2端子測定法によって行った。なお、上記の電圧の印加には、電圧計(株式会社アドバンテスト製、商品名:ULTRA HIGH RESISTANCE METER)を用いた。
【0129】
(接続抵抗の経時的変化の評価)
次に、接続部の抵抗値の経時的な上昇について、温度サイクル試験を行うことによって評価した。温度サイクル試験は、接続構造を温度サイクル槽(ETAC製、商品名:NT1020)内に収容し、室温から−40℃への降温、−40℃から100℃への昇温及び100℃から室温への降温の温度サイクルを500回繰り返すことによって行った。−40℃及び100℃における保持時間は、いずれも30分とした。温度サイクル試験後の接続部分の抵抗の測定は、初期抵抗の測定と同様に行った。
【0130】
導電粒子の被覆率、核粒子の導電層の構成とともに、得られた結果をまとめて表1に示した。
【0131】
(実施例2)
核粒子を下記のようにして形成したことの他は、実施例1と同様にして導電粒子を作製した。
【0132】
すなわち、基材粒子として架橋ポリスチレン粒子(総研化学製、商品名:SXシリーズ、平均粒径:4μm)を準備し、この粒子の表面上に、無電解めっき処理によってCu層(厚さ0.08μm)を設けた。更に、このCu層の外側に無電解めっき処理によってAu層(厚さ0.03μm)を設け、Cu層及びAu層からなる導電層を有する核粒子を得た。
【0133】
そして、実施例1と同様にして、図3に示すような構成の導電粒子を得た。示差走査電子顕微鏡(倍率8000倍)による観察の結果、この導電粒子の被覆率は、25%であった。
【0134】
次に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と9、9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを用い、ガラス転移温度が80℃のフェノキシ樹脂を合成した。このフェノキシ樹脂50gを溶剤に溶解し、固形分40質量%の溶液を調製した。なお、溶剤としては、トルエンと酢酸エチルの混合溶剤(両者の混合質量比=1:1)を使用した。
【0135】
フェノキシ樹脂40g(固形分)と、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂(エポキシ当量185)60g(固形分)とが配合されるように、上記の溶液とエポキシ樹脂とを混合し、接着剤成分の溶液を調製した。
【0136】
剥離処理剤(シリコーン樹脂)による表面処理が施されたPETフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名:ピューレックス、厚さ:50μm)の面上に、接着剤成分の溶液を塗工して塗布した。その後、これを熱風乾燥(80℃にて5分間)することにより、PETフィルムに支持された厚さ12μmの接着剤成分からなる層(以下、「導電粒子非含有層」という。)を得た。
【0137】
更に、フェノキシ樹脂40g(固形分)と、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂60g(固形分)とが配合されるように、上記の溶液とエポキシ樹脂とを混合した。これにより得られた接着剤成分の溶液100体積部に対して、上記導電粒子5体積部を配合し、温度23℃において撹拌分散することにより、接着剤組成物の溶液を調製した。
【0138】
調製した接着剤組成物の溶液を、PETフィルムに塗工して塗布した。その後、これを熱風乾燥(80℃にて5分間)することにより、PETフィルムに支持された厚さ12μmの導電粒子分散層を得た。
【0139】
これらの接着フィルム同士を、従来公知のラミネータを用いて貼り合わせた。そして、導電粒子分散層側のPETフィルムを剥離し、導電粒子分散層の表面に、導電粒子を平均24000個/mmの密度で吹き付けた。ラミネータを用いて、吹き付けた導電粒子を導電粒子分散層の表面から5μmの範囲内に埋め込み、導電粒子分散層を導電粒子埋込み層とした。このようにして、図7に示す状態の2層構造(導電粒子非含有層/導電粒子埋込み層)の回路接続材料を得た。
【0140】
(実施例3)
回路接続材料を下記のようにして作製したことの他は、実施例1と同様にして接続構造を作製した。
【0141】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂と9、9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを用い、ガラス転移温度が80℃のフェノキシ樹脂を合成した。このフェノキシ樹脂50gを溶剤に溶解し、固形分40質量%の溶液を調製した。なお、溶剤としては、トルエンと酢酸エチルの混合溶剤(両者の混合質量比=1:1)を使用した。
【0142】
フェノキシ樹脂40g(固形分)と、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂(エポキシ当量185)60g(固形分)とが配合されるように、上記の溶液とエポキシ樹脂とを混合し、接着剤成分の溶液を調製した。
【0143】
剥離処理剤(シリコーン樹脂)による表面処理が施されたPETフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名:ピューレックス、厚さ:50μm)の面上に、接着剤成分の溶液を塗工して塗布した。その後、これを熱風乾燥(80℃にて5分間)することにより、PETフィルムに支持された厚さ12μmの導電粒子非含有層を得た。
【0144】
更に、フェノキシ樹脂40g(固形分)と、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂60g(固形分)とが配合されるように、上記の溶液とエポキシ樹脂とを混合した。これにより得られた接着剤成分の溶液100体積部に対して、上記導電粒子5体積部を配合し、温度23℃において撹拌分散することにより、接着剤組成物の溶液を調製した。
【0145】
調製した接着剤組成物の溶液を、PETフィルムに塗工して塗布した。その後、これを熱風乾燥(80℃にて5分間)することにより、PETフィルムに支持された厚さ12μmの導電粒子分散層を得た。
【0146】
これらの接着フィルム同士を、従来公知のラミネータを用いて貼り合わせ、2層構造(導電粒子非含有層/導電粒子分散層)の回路接続材料を得た。そして、得られた回路接続材料を、導電粒子分散層がITO基板と当接するように配置し、以下、実施例1と同様の条件にて接続構造を作製した。
【0147】
(比較例1)
核粒子の表面上に絶縁被覆体を形成せず、絶縁被覆体を備える導電粒子を使用する代わりにこの核粒子を用いたことの他は、実施例1と同様にして2層構造(核粒子分散層/核粒子埋込み層)の回路接続材料を得た。そして、得られた回路接続材料を、核粒子埋込み層がITO基板と当接するように配置し、以下、実施例1と同様の条件にて接続構造を作製した。
【0148】
実施例2,3及び比較例1で作製した回路接続材料に係るパラメータを表1に示す。また、実施例1と同様にして行った各種測定の結果も併せて表1に示す。
【0149】
【表1】

【0150】
表1に示すように、実施例3においては、初期及び温度サイクル試験後の接続抵抗値が実施例1及び2と比較して高かった。これは、接続端子間に捕捉された導電粒子の数が不十分であったことが主因であると考えられる。また、比較例1においては、初期及び温度サイクル試験後の接続抵抗値は十分に低かった。一方、初期絶縁抵抗が低く、隣り合う接続端子間の絶縁に対する信頼性が不十分であった。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】本発明に係る導電粒子を備える回路接続材料が接続端子間で使用され、接続端子同士が接続された状態を示す断面図である。
【図2】本発明に係る回路接続材料の一実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明に係る導電粒子の一実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明に係る導電粒子の他の実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明に係る回路接続材料が支持体上に設けられている状態を示す断面図である。
【図6】本発明に係る回路部材の接続方法の一実施形態を概略断面図により示す工程図である。
【図7】本発明に係る回路接続材料が支持体に支持されている状態を示す断面図である。
【図8】本発明に係る回路接続材料の他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0152】
1…核粒子、1a…基材粒子、1b…導電層、2A…絶縁性粒子(絶縁被覆体)、2B…絶縁性層(絶縁被覆体)、10A,10B…導電粒子、20…接着剤成分、30…第1の回路部材、40…第2の回路部材、31,41…回路基板板、32,42…接続端子、50,70,80…回路接続材料、100…接続構造。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤成分と、前記接着剤成分中に分散している導電粒子とを備える接着剤組成物であって、
前記導電粒子は、導電性を有する核粒子と、前記核粒子の表面上に設けられた、有機高分子化合物を含有する絶縁被覆体とを備え、下記式(1)で定義される被覆率が20〜50%の範囲である、接着剤組成物。
【数1】

【請求項2】
前記有機高分子化合物は、架橋度が5〜20%の範囲内のものである、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記絶縁被覆体は、前記核粒子の表面上に設けられた、前記有機高分子化合物を含有する複数の絶縁性粒子で構成されるものであり、前記絶縁性粒子の粒径(D)と前記核粒子の粒径(D)との比率(D/D)が、1/40〜1/8である、請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記絶縁被覆体は、ラジカル重合性物質の重合物を含有するものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記接着剤成分及び前記導電粒子を備えるフィルム状の接着剤組成物であって、当該接着剤組成物が備える前記導電粒子のうち、80%以上が当該接着剤組成物の表面から前記核粒子の平均粒径の2倍の距離の範囲内に配置されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記接着剤成分は、フィルム形成材と、エポキシ樹脂と、潜在性硬化剤とを含有するものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記フィルム形成材が、フェノキシ樹脂である、請求項6に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記フェノキシ樹脂は、分子内に多環芳香族基を有するものである、請求項7に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
前記多環芳香族基が、フルオレン環である、請求項8に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の接着剤組成物からなり、回路部材同士を接着するとともにそれぞれの回路部材が有する接続端子同士を電気的に接続するために用いられる、回路接続材料。
【請求項11】
対向配置された一対の回路部材と、
請求項10に記載の回路接続材料の硬化物からなり、前記一対の回路部材の間に介在しそれぞれの回路部材が有する接続端子同士が電気的に接続されるように当該回路部材同士を接着する接続部と、を備える接続構造。
【請求項12】
前記一対の回路部材の少なくとも一方が、ICチップである、請求項11に記載の接続構造。
【請求項13】
前記接続端子は、金、銀、錫、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金及びインジウム錫酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種で構成されている表面を有する、請求項11又は12に記載の接続構造。
【請求項14】
前記一対の回路部材の前記接続部に対する当接面が、窒化シリコン、シリコーン化合物及びポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の素材によって構成される部分を有する、請求項11〜13のいずれか一項に記載の接続構造。
【請求項15】
対向配置された一対の回路部材の間に請求項10に記載の回路接続材料を介在させ、全体を加熱及び加圧して、前記回路接続材料の硬化物からなり、前記一対の回路部材の間に介在しそれぞれの回路部材が有する接続端子同士が電気的に接続されるように前記回路部材同士を接着する接続部を形成することにより、前記一対の回路部材及び前記接続部を備える接続構造を得る、回路部材の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−302869(P2007−302869A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10625(P2007−10625)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】