説明

描画装置及び描画方法

【課題】 ワークを液滴吐出ヘッドに対して高精度に位置合わせする。
【解決手段】 帯状のワーク81に対して液滴を吐出する吐出ヘッドと、ワーク81に形成されたマークを撮像して吐出ヘッドとワーク81との相対位置関係を計測する撮像装置32とを有する。撮像装置32に対してワーク81の表面に沿う方向に相対移動自在で、且つワーク81に形成された第2マークを撮像する第2撮像装置33を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画装置及び描画方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶表示装置に用いられるCOF(Chip On Film)には、各種配線が形成されるが、近年では金属配線形成技術として、液体吐出方式の利用が拡大する傾向にある。液体吐出方式による塗布技術は、一般に、基板と液体吐出ヘッドとを相対的に移動させながら、液体吐出ヘッドに設けられた複数のノズルから金属材料を含む液状体を液滴として吐出し、その液滴を基板上に繰り返し付着させて塗布膜を描画形成するものであり、液状体の消費に無駄が少なく、任意のパターンをフォトリソグラフィーなどの手段を用いず直接塗布することが出来るといった利点を有している。
【0003】
この種の配線形成においては、前工程で配線が形成されたフィルム上に液滴吐出方式で金属材料を含む液滴を吐出して金属配線を形成する場合がある。この際、予め形成された配線と位置を合わせるために、フィルム上に形成されたアライメントマークをアライメントカメラで計測し、この計測結果に基づいてフィルムと液滴吐出ヘッドとの相対位置関係が調整される。
【0004】
特許文献1には、アライメントカメラの構成の一例が開示されている。
【特許文献1】特開平5−323249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
【0006】
通常、アライメントマークの計測は2箇所以上で行われるため、1台のアライメントカメラによりアライメントを行う際には、アライメントカメラとフィルムとを相対移動させることになる。
【0007】
この場合、アライメントカメラとフィルムとを相対移動させる際の移動誤差がアライメント精度に悪影響を及ぼすことになってしまい、結果として配線パターン等の描画精度の低下を招くという問題を生じる。
【0008】
また、1軸で移動するアライメントカメラを用いる場合、この移動方向に沿って配置されたアライメントマークしか認識できないため、例えばフィルム上に移動方向と交差する方向に複数のデバイスを設定し、それぞれにアライメントマークが形成されたデバイス毎に配線を形成する場合には、アライメントを実施することが困難である。
【0009】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、ワークを液滴吐出ヘッドに対して高精度に位置合わせできる描画装置及び描画方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用している。
【0011】
本発明の描画装置は、帯状のワークに対して液滴を吐出する吐出ヘッドと、前記ワークに形成されたマークを撮像して前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対位置関係を計測する撮像装置とを有する描画装置であって、前記撮像装置に対して前記ワークの表面に沿う方向に相対移動自在で、且つ前記ワークに形成された第2マークを撮像する第2撮像装置を備えることを特徴とするものである。
【0012】
従って、本発明の描画装置では、予めマークを撮像する位置に撮像装置を位置決めし、第2マークを撮像する位置に第2撮像装置を位置決めしておくことで、ワークが位置決めされた後の撮像時には撮像装置及び第2撮像装置を相対移動させる必要がなくなる。そのため、撮像装置、第2撮像装置を相対移動させる際の移動誤差が生じす、ワークと吐出ヘッドとの相対位置関係を高精度に計測することが可能になり、描画精度を向上させることが可能になる。
【0013】
また、本発明では、第2撮像装置がワークの表面に沿う方向に移動自在であるため、ワークの長さ方向と交差する方向に離間して形成されたマークも第2撮像装置を移動させることで容易に撮像することが可能になり、この交差する方向に複数のデバイスが設定される、いわゆる2条品等にも容易に対応することができる。
【0014】
また、本発明では、前記撮像装置及び第2撮像装置を、前記ワークの長さ方向と交差する方向に一体的に駆動する駆動装置を有する構成も好適に採用できる。
【0015】
前記駆動装置は、前記撮像装置及び第2撮像装置と前記吐出ヘッドとを前記交差する方向に互いに独立して移動させる構成では、前記撮像装置及び第2撮像装置によりワークの位置を計測した後に、前記撮像装置及び第2撮像装置をワークと対向する位置から退避させ、吐出ヘッドをワークと対向する位置に移動させることにより、ワークに対して迅速に液滴を吐出してパターンを形成することが可能になる。
【0016】
また、本発明では、前記ワークに応じた前記マーク及び前記第2マークの位置情報に基づいて、前記第2撮像装置の移動を制御する制御装置を有する構成も好適に採用できる。
【0017】
これにより、本発明では、ワークの種類が変わった場合でも、変更後のワークに応じた第2マークの位置に円滑に第2撮像装置を移動させることが可能になる。
【0018】
また、本発明では、前記ワークの吸着面を形成する多孔質板を有する構成も好適に採用できる。
【0019】
これにより、本発明では、ワークの種類が変わって幅が変動する場合でも、確実に吸着面で吸着することが可能になり、液滴を吐出する面を平滑に維持することができ、描画精度の向上に寄与できる。
【0020】
一方、本発明の描画方法は、帯状のワークに形成されたマークを撮像装置により撮像して前記ワークと吐出ヘッドとの相対位置関係を計測する工程と、前記相対位置関係に基づいて前記吐出ヘッドから前記ワークに液滴を吐出する工程とを有する描画方法であって、前記撮像装置に対して前記ワークの表面に沿う方向に相対移動自在な第2撮像装置を配設し、前記ワークに形成された第2マークを計測する位置に、前記撮像装置に対して前記第2撮像装置を相対移動させる工程を有することを特徴とするものである。
【0021】
従って、本発明では、予めマークを撮像する位置に撮像装置を位置決めし、第2マークを撮像する位置に第2撮像装置を位置決めしておくことで、ワークが位置決めされた後の撮像時には撮像装置及び第2撮像装置を相対移動させる必要がなくなる。そのため、撮像装置、第2撮像装置を相対移動させる際の移動誤差が生じす、ワークと吐出ヘッドとの相対位置関係を高精度に計測することが可能になり、描画精度を向上させることが可能になる。
【0022】
また、本発明では、前記ワークに応じた前記マーク及び前記第2マークの位置情報に基づいて、前記第2撮像装置を相対移動させる手順も好適に採用できる。
【0023】
これにより、本発明では、ワークの種類が変わった場合でも、変更後のワークに応じた第2マークの位置に円滑に第2撮像装置を移動させることが可能になる。
【0024】
また、本発明では、前記撮像装置及び前記第2撮像装置を、前記ワークの長さ方向と交差する方向に一体的に駆動する工程と、前記吐出ヘッドを前記交差する方向に前記撮像装置及び前記第2撮像装置とは独立して移動させる工程とを有する手順も好適である。
【0025】
この場合、前記撮像装置及び前記第2撮像装置と前記吐出ヘッドとを、前記ワークと対向する対向位置と前記対向位置から離間した退避した退避位置との間でそれぞれ独立して移動させる手順が好適である。
【0026】
従って、本発明では、前記撮像装置及び第2撮像装置によりワークの位置を計測した後に、前記撮像装置及び第2撮像装置をワークと対向する位置から退避させ、吐出ヘッドをワークと対向する位置に移動させることにより、ワークに対して迅速に液滴を吐出してパターンを形成することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の描画装置及び描画方法の実施の形態を、図1ないし図7を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0028】
図1は描画装置1の平面図である。
【0029】
描画装置1は、Y方向に沿って送られる帯状のテープ(ワーク)80に対して配線等のパターンを描画形成するものであって、テープ80を吸着保持する吸着装置50、吸着装置の上方にX方向に延びて設けられる一対のフレーム20、フレーム20に架設され、それぞれ図示しないリニアモータ等の駆動装置によりX方向に独立して駆動される描画ユニット22、アライメントユニット24およびUV照射ユニット26、テープ80を繰り出す繰出しローラ84およびテープ80を巻き取る巻取りローラ85を主体に構成されている。
【0030】
テープ80は、繰出しローラ84と巻取りローラ85との間に掛け渡され、両者間において吸着装置50の上面に載置されるようになっている。
【0031】
図2は、吸着装置50及びアライメントユニット24の外観斜視図である。
【0032】
吸着装置50は、定盤60の表面に多孔質板51を配置(埋設)して構成され、その多孔質板51の表面に上述したテープ80を吸着しうるようになっている。なお80テープの吸着位置は、多孔質板51の幅方向中央部であり、テープの中心線が多孔質板51の中心線と一致する位置に設定されている。これにより、テープサイズの変更にともなう描画装置の段取り換えを最小限にとどめることができるようになっている。
【0033】
この多孔質板51は、樹脂材料を焼結成形した樹脂焼結材で構成されている。焼結成形は、原料粉末を金型内に充填して加熱し、原料粉末の表層同士を融着(焼結)させることにより、粉末間の空間を残したまま成形する手法である。その原料粉末として、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、アクリル樹脂(PMMA)、フッ素樹脂(PVDF、PTFE)等の熱可塑性樹脂材料を採用することが可能である。このように多孔質板51を樹脂材料で構成することにより、多孔質板51の表面に吸着されるテープの損傷を防止することができる。
【0034】
多孔質板51には、図示しない負圧吸引装置が接続されており、多孔質板51の表面全体に亘ってほぼ均一に負圧が供給される。従って、幅の異なる複数種のテープに対しても、一様に吸着保持可能な構成となっている。
【0035】
また、吸着装置50は、その下方に配置された中間プレート18に固定されている。この中間プレート18は、モータ16によりθz方向(z軸周りの回転方向)に回動しうるようになっている。そのモータ16はスライダ14に固定されている。このスライダ14は、ベースプレート12の表面をY方向に移動しうるようになっている。これにより吸着装置50は、ベースプレート12に対してθz方向およびY方向に移動しうるようになっている。
【0036】
アライメントユニット24は、上述したフレーム20に沿って移動する移動フレーム31、移動フレーム31に搭載されたカメラ(撮像装置)32、カメラ(第2撮像装置)33及びテープ押さえ装置34から構成されている。カメラ32、33は、CCDカメラ等で構成されるものであり、テープ80に形成されたマーク(後述)を計測し、制御部99に出力する。制御部99は、カメラ32、33の計測結果に基づいて、モータ16、スライダ14、繰出しローラ84及び巻取りローラ85の駆動を制御する。
【0037】
また、カメラ32は、移動フレーム31に一体的に固定されているが、カメラ33は、移動フレーム31に対してY軸方向に移動自在に設けられたスライダ35に搭載されることにより、制御部99の制御下でカメラ32に対してY軸方向に移動する。
【0038】
図3は、主としてテープ押さえ装置34に関する図2における右側面図である。
【0039】
テープ押さえ装置34は、Y軸方向に延在する一対の押さえ部36と、Y軸方向に延び、支持柱37を介して押さえ部36の一方(−Y側)を上方から支持する支持フレーム38、支持柱39を介して押さえ部36の他方(+Y側)を上方から支持するとともに、支持フレーム38をY軸方向に伸縮自在に支持する支持フレーム40とを有している。
【0040】
支持フレーム38は、制御部99の制御により駆動する直動モータ等の駆動装置により支持フレーム40に対してY軸方向に移動する構成となっている。
【0041】
支持フレーム40は、制御部99の制御により駆動する直動モータ等の駆動装置により、移動フレーム31にZ方向に延びて設けられたガイドフレーム41に沿ってZ軸方向に移動する構成となっている。
【0042】
図1に戻り、描画ユニット22には、液滴吐出ヘッド(吐出ヘッド)90が搭載されている。図4は、液滴吐出ヘッドの側面断面図である。吐出ヘッド90は、ヘッド本体90Aと、ヘッド本体90Aの一方面に装着されたノズルプレート92と、ヘッド本体90Aの他方面に装着されたピエゾ素子98とを主として構成されている。
【0043】
インク吐出面を構成するノズルプレート92には、液滴を吐出するための複数のノズル91が整列配置されている。またヘッド本体90Aには、各ノズル91と連通する複数の圧力室93が形成されている。各圧力室93はリザーバ95に接続され、リザーバ95はインク導入口96に接続されている。そしてインク9は、インク導入口96からリザーバ95を通って各圧力室93に供給されるようになっている。一方、ヘッド本体90Aの上端面には、可撓性を有する振動板94が装着されている。その振動板94を挟んで各圧力室93の反対側には、それぞれピエゾ素子98が設けられている。ピエゾ素子98は、PZT等の圧電材料を電極で挟持したものである。その電極は、制御部99に接続されている。
【0044】
そして制御部99からピエゾ素子98に駆動電圧を印加すると、ピエゾ素子98が膨張変形または収縮変形する。ピエゾ素子98が収縮変形すると、圧力室93内の圧力が低下して、リザーバ95から圧力室93にインク9が流入する。またピエゾ素子98が膨張変形すると、圧力室93内の圧力が増加して、ノズル91からインク9の液滴が吐出される。なお、ピエゾ素子98に印加する駆動電圧を制御することにより、液滴の吐出条件を制御しうるようになっている。
【0045】
なお液滴吐出方式として、ピエゾ素子の変形により圧力室内の圧力を変化させる上記ピエゾ方式の他に、インクを加熱して気泡(バブル)を発生させることにより圧力室内の圧力を変化させる方式など、公知の種々の技術を適用することができる。このうちピエゾ方式は、インクを加熱しないので材料の組成に悪影響を与えないなどの点で優れている。
【0046】
UV照射ユニット26には、UVランプ等のUV照射装置27が搭載されている。
【0047】
本実施形態の描画装置1は、以上のように構成されている。
【0048】
次に、上記の描画装置1により液滴が吐出されてパターンが形成されるテープ80について説明する。
【0049】
図5は、様々なテープ(TABテープ;ワーク)81〜83の部分平面図である。テープ81の幅方向両端部には、テープを巻き取るためのスプロケット孔86が連続形成され、テープ81の幅方向中央部には、半導体装置を形成するための作業領域88が連続形成されている。この作業領域88は、例えばデバイス毎に設定されるものである。
【0050】
そして、上記の描画装置1は、この作業領域88に金属配線パターンを描画形成するものであり、本実施形態の吸着装置は、金属配線パターンを描画すべきテープを吸着保持するものである。
【0051】
上述した作業領域88の大きさに対応して、また幅方向における作業領域88の配列数に応じて、幅寸法の異なる複数種類のテープ81,82,83が存在する。
【0052】
各テープ81〜83における各作業領域88には、テープ81〜83を位置決めする際に観察されるアライメントマーク(マーク)AMが、例えばそれぞれ3個ずつ形成されている。なお、アライメントマークAMの形状は、計測方法等によって各種存在するが、ここでは円形のマークとし、矩形の作業領域88の3つのコーナー部に配置されるものとして図示している。
【0053】
次に、上述した描画装置1の使用方法について説明する。
【0054】
ここでは、上述したテープ81を用いるものとして説明する。
【0055】
また、本実施形態では、4つの作業領域88からなる作業領域88’に対して、一括して描画処理を行うものとし、作業領域88’における一端側(+Y側)に位置するアライメントマークAM1と、他端側(−Y側)に位置し、アライメントマークAM1と同列(同じX位置)に位置するアライメントマーク(第2マーク)AM2とを計測することにより、テープ81を位置決めするものとする。
【0056】
まず、図2に示す繰出しローラ84と巻取りローラ85との間にテープ80(ここではテープ81)を掛け渡し、両者間に配置された吸着装置50(多孔質板51)の表面にテープ81を載置する。
【0057】
次に、描画ユニット22またはUV照射ユニット26が吸着装置50と対向する位置にある場合は、当該ユニットを吸着装置50との対向位置から予め退避させておく。
【0058】
続いて、アライメントユニット24をフレーム20に沿って移動させ、図3(a)に示すように、吸着装置50と対向する位置に位置決めする。
【0059】
このとき、カメラ32の計測範囲にアライメントマークAM1が位置するように、移動フレーム31のX方向の位置を調整する。また、アライメントマークAM1、AM2の相対位置関係は既知であるため、この相対位置関係に応じた距離、スライダ35を介してカメラ33をY軸方向に移動させる。
【0060】
次に、支持フレーム40をガイドフレーム41に沿って下降させることにより、図3(b)に示すように、押さえ部36をテープ81に当接させる。このとき、押さえ部36は、予め支持フレーム38を支持フレーム40に対してX軸方向に移動させることにより、テープ81の幅方向の側縁に当接するように調整されている。
【0061】
この後、負圧吸引装置を作動させて、テープ81を多孔質板51の表面に吸着保持させる。テープ81の両側は、押さえ部36によって押さえられているため、テープに反り、撓みが生じていた場合も矯正されて、浮き等が生じることなく多孔質板51の表面に平滑に吸着保持される。
【0062】
テープ81が吸着装置50に吸着保持されると、カメラ32によりアライメントマークAM1を撮影・計測し、カメラ33によりアライメントマークAM2を撮影・計測する。これらの撮影結果から、制御部99はテープ81の作業領域の現在位置を算出し、さらに所定位置からのオフセット量を算出する。その算出結果に基づいて、スライダ14およびモータ16を駆動して吸着装置50をY方向およびθz方向に移動させ、吸着装置50の表面に吸着されたテープ81を(液滴吐出ヘッド90に対して)位置合わせする。なおテープ81のX方向の位置合わせは、描画ユニット22の移動量を調整することによって行われる。
【0063】
テープ81の位置合わせが完了すると、フレーム20に沿ってアライメントユニット24を移動させて、吸着装置50(すなわちテープ81)との対向位置から退避させるとともに、描画ユニット22をX方向に移動させて吸着装置50との対向位置に配置する。そして、液滴吐出ヘッド90からインクを吐出することにより、テープ81の作業領域88に所定パターンの金属配線等が、例えば既に形成されている配線パターンと接続させるように描画される。
【0064】
テープ81に対する液滴吐出処理が完了すると、フレーム20に沿って描画ユニット22を移動させて、吸着装置50(すなわちテープ81)との対向位置から退避させるとともに、UV照射ユニット26をX方向に移動させて吸着装置50との対向位置に配置する。そして、UV照射装置27からUVを照射することにより、テープ81に吐出されたインクを乾燥させる。
【0065】
なお、上述した液滴吐出工程およびUV照射工程を繰り返し行うことにより、同種または異種の被膜を積層形成することが可能である。異種の被膜を積層形成する場合には、1つの描画ユニットに異なるインクを吐出する複数の液滴吐出ヘッドを搭載してもよいし、異なるインクを吐出する液滴吐出ヘッドを備えた複数の描画ユニットを設けてもよい。
【0066】
以上により、作業領域に対する描画処理が終了したら、テープ81を送って未処理の作業領域を吸着装置50の表面に載置し、上述した描画処理を繰り返す。
【0067】
また、テープ81の全ての作業領域に対する描画処理が終了したら、図2に示す繰出しローラ84および巻取りローラ85とともにテープ81を交換する。なおテープサイズ(幅寸法)を変更する場合でも、テープの幅方向の中心線を吸着装置50の中心線と一致させる。これにより、テープサイズの変更にともなう描画装置の段取り換えを最小限にとどめることができる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態の描画装置1では、アライメントマークAM1、AM2を撮像して位置を計測する間にカメラ32、33を移動させないため、位置計測結果に移動誤差が含まれないため、テープ81の位置・姿勢を高精度に計測することが可能になる。そのため、本実施形態では、テープ81と液滴吐出ヘッド90とを高精度に位置合わせすることが可能になり、テープ81に形成されるパターンの描画精度を向上させることができる。
【0069】
また、本実施の形態では、カメラ32、33がX方向については一体的に移動するため、X方向に関する相対位置関係を一定に保持することが可能なり、計測精度向上に寄与できる。また、カメラ33がカメラ32に対してY軸方向に相対移動することにより、マーク位置が異なる種々のテープに容易に対応することができ、汎用性を向上させることができる。
【0070】
さらに、本実施の形態では、テープ81を多孔質板51により吸着するので、幅の異なる種々のテープにも容易に対応することができ、テープの種類変更に伴う作業を効率化することができる。
【0071】
加えて、本実施形態では、テープ押さえ装置34によりテープ81の側縁を押さえる構成としているので、テープ81に反り、撓みが生じていた場合も矯正されて、浮き等が生じることなく多孔質板51の表面に平滑に吸着保持することが可能になり、アライメントマークを精度よく計測でき、所定位置にパターンを高精度に形成することができる。
(液晶表示装置)
続いて、上記描画装置1により配線パターンが形成されたテープを有する液晶表示装置について説明する。
【0072】
図6は、電気光学装置である液晶表示装置の分解斜視図である。
【0073】
この図に示す液晶表示装置(電気光学装置)101は、大別するとカラーの液晶パネル(電気光学パネル)102と、液晶パネル102に接続される回路基板103とを備えている。また、必要に応じて、バックライト等の照明装置、その他の付帯機器が液晶パネル102に付設されている。
【0074】
液晶パネル102は、シール材104によって接着された一対の基板105a及び基板105bを有し、これらの基板105bと基板105bとの間に形成される間隙、いわゆるセルギャップには液晶が封入されている。これらの基板105a及び基板105bは、一般には透光性材料、例えばガラス、合成樹脂等によって形成されている。基板105a及び基板105bの外側表面には偏光板106a及び偏光板106bが貼り付けられている。なお、図6においては、偏光板106bの図示を省略している。
【0075】
また、基板105aの内側表面には電極107aが形成され、基板105bの内側表面には電極107bが形成されている。これらの電極107a、107bはストライプ状または文字、数字、その他の適宜のパターン状に形成されている。また、これらの電極107a、107bは、例えばITO(Indium Tin Oxide:インジウムスズ酸化物)等の透光性材料によって形成されている。
【0076】
基板105aは、基板105bに対して張り出した張り出し部を有し、この張り出し部に複数の端子108が形成されている。これらの端子108は、基板105a上に電極107aを形成するときに電極107aと同時に形成される。従って、これらの端子108は、例えばITOによって形成されている。これらの端子108には、電極107aから一体に延びるもの、及び導電材(不図示)を介して電極107bに接続されるものが含まれる。
【0077】
なお、実際の電極107a,107b及び端子108は、極めて狭い間隔をもって多数本が基板105a及び基板105b上にそれぞれ形成されているが、図6においては、液晶パネル102の構造の理解を容易にするために、それらの間隔を拡大して模式的に示すとともに、それらの内の数本のみを図示することにして他の部分を省略してある。また、端子108と電極107aとの接続状態及び端子108と電極107bとの接続状態も図6においては図示を省略している。
【0078】
また、回路基板103には、配線基板(配線)109上の所定位置に液晶駆動用ICとしての半導体素子(半導体装置)100が実装されている。配線基板109は、例えばポリイミド等の可撓性を有するベース基板(基板)111の上に形成されたCu等の金属膜をパターニングして配線パターン112を形成することによって製造されている。
【0079】
なお、実際の配線パターン112は、極めて狭い間隔をもって多数本がベース基板111上に形成されているが、図6においては、構造の理解を容易にするために、それらの間隔を拡大して模式的に示すとともに、構造を簡略化して図示してある。また、図示は省略しているが、半導体素子100が実装される部位以外の部位の所定位置には抵抗、コンデンサ、その他のチップ部品が実装されていてもよい。
【0080】
本実施形態では、この回路基板103が、上述した描画装置1によりパターンが形成されたテープをデバイス毎に切断することにより製造される。
【0081】
本実施形態に係る液晶表示装置は、上述した描画装置1を用いて回路基板3が製造されているため、高精度に配線パターンが形成された高品質の液晶表示装置を得ることができる。
(電子機器)
図7(a)〜(c)は、前述した液晶表示装置を有する電子機器の実施の形態例を示す図である。
【0082】
図7(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図7(a)において、符号1000は携帯電話本体(電子機器)を示し、符号1001は表示部を示している。
【0083】
図7(b)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図7(b)において、符号1100は時計本体(電子機器)を示し、符号1101は表示部を示している。
【0084】
図7(c)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図7(c)において、符号1200は情報処理装置(電子機器)、符号1202はキーボードなどの入力部、符号1204は情報処理装置本体、符号1206は表示部を示している。
【0085】
図7(a)〜(c)に示すそれぞれの電子機器は、本発明の描画装置及び描画方法を用いて製造された液晶表示装置を備えているので、配線パターンの描画精度が向上した高品質の電子機器となる。
【0086】
また、上記実施形態では、電子機器として、携帯電話機、腕時計、情報処理装置を例に挙げて説明したが、これらに限らず、液晶プロジェクタ、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータ(PC)及びエンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルを備えた装置等の電子機器に適用することが可能である。
【0087】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0088】
例えば、上記実施形態では、テープ押さえ装置34によってテープ81を押さえた後に、負圧吸引装置を作動させて多孔質板51の表面に吸着保持する手順としたが、逆の手順であってもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、カメラ33がカメラ32に対してY軸方向の1軸で相対移動可能な構成としたが、これに限定されるものではなく、Y軸方向及びX軸方向の2軸で相対移動可能な構成であってもよい。
【0090】
また、本発明では、予め、テープの種類と、テープに種類に応じたアライメントマークの位置とを制御部99に対応付けして記憶させておき、テープを交換する際には、制御部99がテープの種類に応じて自動的にカメラ33を移動させる構成としてもよい。
【0091】
この構成を採ることにより、アライメントマークがX軸方向及びY軸方向の双方で離間する対角線上に配置された場合でも、容易に対応することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に係る描画装置の平面図である。
【図2】吸着装置及びアライメントユニットの外観斜視図である。
【図3】テープ押さえ装置の構成及び動作を示す図である。
【図4】液滴吐出ヘッドの側面断面図である。
【図5】様々なTABテープの部分平面図である。
【図6】液晶表示装置の分解斜視図である。
【図7】電子機器の例を示す図である。
【符号の説明】
【0093】
AM、AM1…アライメントマーク(マーク)、 AM2…アライメントマーク(第2マーク)、 CONT…制御装置、 1…描画装置、 32…カメラ(撮像装置)、 33…カメラ(第2撮像装置)、 50…吸着装置、 51…多孔質板、 80〜83…テープ(ワーク)、 90…液滴吐出ヘッド(吐出ヘッド)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のワークに対して液滴を吐出する吐出ヘッドと、前記ワークに形成されたマークを撮像して前記吐出ヘッドと前記ワークとの相対位置関係を計測する撮像装置とを有する描画装置であって、
前記撮像装置に対して前記ワークの表面に沿う方向に相対移動自在で、且つ前記ワークに形成された第2マークを撮像する第2撮像装置を備えることを特徴とする描画装置。
【請求項2】
請求項1記載の描画装置において、
前記撮像装置及び第2撮像装置を、前記ワークの長さ方向と交差する方向に一体的に駆動する駆動装置を有することを特徴とする描画装置。
【請求項3】
請求項2記載の描画装置において、
前記駆動装置は、前記撮像装置及び第2撮像装置と前記吐出ヘッドとを前記交差する方向に互いに独立して移動させることを特徴とする描画装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の描画装置において、
前記ワークに応じた前記マーク及び前記第2マークの位置情報に基づいて、前記第2撮像装置の移動を制御する制御装置を有することを特徴とする描画装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の描画装置において、
前記ワークの吸着面を形成する多孔質板を有することを特徴とする描画装置。
【請求項6】
帯状のワークに形成されたマークを撮像装置により撮像して前記ワークと吐出ヘッドとの相対位置関係を計測する工程と、前記相対位置関係に基づいて前記吐出ヘッドから前記ワークに液滴を吐出する工程とを有する描画方法であって、
前記撮像装置に対して前記ワークの表面に沿う方向に相対移動自在な第2撮像装置を配設し、
前記ワークに形成された第2マークを計測する位置に、前記撮像装置に対して前記第2撮像装置を相対移動させる工程を有することを特徴とする描画方法。
【請求項7】
請求項6記載の描画方法において、
前記ワークに応じた前記マーク及び前記第2マークの位置情報に基づいて、前記第2撮像装置を相対移動させることを特徴とする描画方法。
【請求項8】
請求項6または7記載の描画方法において、
前記撮像装置及び前記第2撮像装置を、前記ワークの長さ方向と交差する方向に一体的に駆動する工程と、
前記吐出ヘッドを前記交差する方向に前記撮像装置及び前記第2撮像装置とは独立して移動させる工程とを有することを特徴とする描画方法。
【請求項9】
請求項8記載の描画方法において、
前記撮像装置及び前記第2撮像装置と前記吐出ヘッドとを、前記ワークと対向する対向位置と前記対向位置から離間した退避した退避位置との間でそれぞれ独立して移動させることを特徴とする描画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−61734(P2007−61734A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−250747(P2005−250747)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】