説明

携帯端末

【課題】 空間的に離間した複数の撮影点で同じ対象物を被写体として撮影して撮影点間の相対位置を判定することができる携帯端末を提供する。
【解決手段】 被写体を撮影して静止画像を生成するカメラ16と、カメラ16の光軸の向き及び光軸を中心とする傾きを検出する姿勢検出部32と、静止画像から特徴点を抽出する特徴点抽出部24aと、静止画像内の特徴点に対応する被写体上の点及び当該静止画像の撮影が行われた撮影点間の距離を測定する距離測定部25と、第1撮影点で撮影された第1画像内の特徴点について測定された距離、第2撮影点で撮影された第2画像内の上記特徴点について測定された距離、並びに、第1撮影点及び第2撮影点でのカメラ16の向き及び傾きの各検出結果に基づいて、第1撮影点に対する第2撮影点の相対位置を判定する位置判定部26により構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末に係り、さらに詳しくは、空間的に離間した複数の撮影点で同じ対象物を被写体として撮影して撮影点間の相対位置を判定する携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の3次元形状を光学的に計測する方法として、空間的に離間した複数の撮影点で同じ対象物を被写体としてそれぞれ撮影し、各撮影点で撮影された静止画像を用いて被写体の表面形状を算出する技術が従来から知られている(例えば、特許文献1)。この方法では、静止画像上の各点について、異なる撮影点で撮影された画像間のマッチングを調べ、各撮影点の位置と、各撮影点でのカメラの向き及び傾きとからマッチングした各点の位置を特定することにより、対象物の表面形状が求められる。従って、この方法により対象物の表面形状を算出するためには、少なくとも撮影点間の位置の変化量が予め識別できなければならない。
【0003】
そこで、特許文献1では、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)衛星からの信号を受信し、その受信結果に基づいて、INS(Inertial Navigation System:慣性航法システム)による変位量の算出結果を補正している。しかしながら、GPS衛星を利用した位置検出では、GPS衛星からの信号の受信時刻を高い精度で特定することにより、電波の送受信に要する時間を求めてGPS衛星との距離が計算される。このため、数メートル程度の範囲の移動では誤差が大きすぎて位置の変化量が正確に識別できないという問題があった。また、GPS及びINSを利用して位置検出する検出装置は、高価であり、サイズも大きいので、端末の小型化が困難であるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−234703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、空間的に離間した複数の撮影点で同じ対象物を被写体として撮影して撮影点間の相対位置を判定することができる携帯端末を安価に提供することを目的としている。特に、第1撮影点に対する第2撮影点の相対位置を精度良く判定することができる携帯端末を提供することを目的としている。また、製造コストの増大を抑制しつつ、対象物の3次元形状を計測することができる携帯端末を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の本発明による携帯端末は、被写体を撮影して静止画像を生成する撮像手段と、上記撮像手段の光軸の向き及び上記光軸を中心とする傾きを検出する姿勢検出手段と、上記静止画像から特徴点を抽出する特徴点抽出手段と、上記静止画像内の上記特徴点に対応する被写体上の点及び当該静止画像の撮影が行われた撮影点間の距離を測定する距離測定手段と、第1撮影点で撮影された第1画像内の上記特徴点について測定された距離、第2撮影点で撮影された第2画像内の上記特徴点について測定された距離、並びに、第1撮影点及び第2撮影点での上記撮像手段の向き及び傾きの各検出結果に基づいて、第1撮影点に対する第2撮影点の相対位置を判定する位置判定手段とを備えて構成される。
【0007】
この携帯端末では、静止画像内の特徴点に対応する被写体上の点と当該静止画像の撮影点との間の距離を測定し、第1画像内の特徴点について測定された距離と、第2画像内で対応する特徴点について測定された距離と、第1撮影点及び第2撮影点での撮像手段の向き及び傾きとに基づいて、第1撮影点に対する第2撮影点の相対位置が判定される。この様な構成によれば、静止画像内の特徴点に対応する被写体上の点までの距離を測定して撮影点間の相対位置を判定するので、GPS衛星を利用する位置検出に比べて、製造コストの増大を抑制しつつ、相対位置を精度良く判定することができる。
【0008】
第2の本発明による携帯端末は、上記構成に加え、加速度を検出する加速度センサーと、上記加速度センサーの出力に基づいて、第1撮影点に対する第2撮影点の相対位置を算出する変位量算出手段と、上記位置判定手段による判定結果に基づいて、上記変位量算出手段による算出結果を補正する位置補正手段とを備えて構成される。
【0009】
この様な構成によれば、撮影点間の相対位置の判定結果を利用して、加速度センサーの出力に基づく相対位置の算出結果を補正するので、相対位置の判定精度を向上させることができる。
【0010】
第3の本発明による携帯端末は、上記構成に加え、上記撮像手段が、レンズを介して被写体から入射される光を受光する撮像素子と、上記レンズ及び上記撮像素子間の距離を変化させて上記静止画像のピント調整を行うフォーカシング機構とを有し、上記距離測定手段が、上記レンズの光軸方向の位置に基づいて、静止画像内の特徴点に対応する被写体上の点と当該静止画像の撮影点との間の距離を判定するように構成される。
【0011】
この様な構成によれば、特徴点周辺の領域についてピント調整時におけるレンズの位置に基づいて、静止画像内の特徴点に対応する被写体上の点までの距離を判定するので、GPS衛星を利用する位置検出に比べて、端末を小型化することができる。
【0012】
第4の本発明による携帯端末は、上記構成に加え、第1画像、第2画像、第1撮影点及び第2撮影点での上記撮像手段の向き及び傾きの各検出結果、並びに、上記相対位置の判定結果に基づいて、被写体の表面形状を算出する表面形状算出手段を備えて構成される。
【0013】
この様な構成によれば、第1画像及び第2画像と、第1撮影点及び第2撮影点での撮像手段の向き及び傾きと、相対位置の判定結果とに基づいて、被写体の表面形状を算出するので、GPS衛星を利用して位置検出するものに比べて、製造コストの増大を抑制しつつ、対象物の3次元形状を計測することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明による携帯端末によれば、静止画像内の特徴点に対応する被写体上の点までの距離を測定して撮影点間の相対位置を判定するので、GPS衛星を利用する位置検出に比べて、製造コストの増大を抑制しつつ、第1撮影点に対する第2撮影点の相対位置を精度良く判定することができる。従って、空間的に離間した複数の撮影点で同じ対象物を被写体として撮影して撮影点間の相対位置を判定することができる携帯端末を安価に実現することができる。また、製造コストの増大を抑制しつつ、対象物の3次元形状を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態による携帯端末の概略構成の一例を示した図であり、携帯端末の一例としてカメラ付きの携帯電話機100が示されている。
【図2】図1の携帯電話機100の要部における構成例を示したブロック図である。
【図3】図1の携帯電話機100の動作の一例を模式的に示した説明図であり、空間的に離間した撮影点C1,C2におけるカメラ座標の一例が示されている。
【図4】図1の携帯電話機100の動作の一例を模式的に示した説明図であり、対象物上の点Mと撮像面上の点mと光学中心Cとの関係が示されている。
【図5】図1の携帯電話機100の形状計測時の動作の一例を示したフローチャートである。
【図6】図1の携帯電話機100の形状計測時の動作の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1(a)及び(b)は、本発明の実施の形態による携帯端末の概略構成の一例を示した図であり、携帯端末の一例としてカメラ16付きの携帯電話機100が示されている。図1(a)には、携帯電話機100を正面から見た様子が示され、図1(b)には、背面から見た様子が示されている。
【0017】
携帯電話機100は、上下方向に長い薄型筐体10からなる携帯可能な小型の電子機器であり、位置を異ならせながら対象物を撮影することによって対象物の3次元形状を計測することができる3次元形状の計測装置となっている。
【0018】
薄型筐体10の前面には、受話用レシーバ11、ディスプレイ12、操作キー13及び送話用マイクロホン14が設けられている。一方、薄型筐体10の背面、すなわち、薄型筐体10のディスプレイ12が設けられている面とは反対側の面には、カメラ16が配設されている。また、薄型筐体10の上側面には、移動体通信用のアンテナ15が配設されている。
【0019】
ディスプレイ12は、表示画面を有する表示装置であり、例えば、カメラ16によって撮影された静止画像がファインダー画像として表示画面内に表示される。受話用レシーバ11は、通話時に受信した音声信号を再生するための音声出力装置である。送話用マイクロホン14は、通話時に音声を入力するための音声入力装置である。
【0020】
カメラ16は、被写体を撮影して静止画像を生成する撮像手段であり、レンズを介して被写体から入射される光を受光する撮像素子、レンズ及び撮像素子間の距離を変化させて静止画像のピント調整を行うフォーカシング機構などによって構成される。
【0021】
撮像素子としては、例えば、CCD(Charge Coupled Devices:電荷結合素子)イメージセンサーが用いられる。また、フォーカシング機構としては、例えば、レンズを光軸方向に移動させることによって、光軸方向の焦点位置を異ならせながら撮影された複数の静止画像を比較し、その比較結果に基づいてピント調整することにより、ピント合わせを自動化したパッシブ方式のAF(オートフォーカス)機構が用いられる。
【0022】
カメラ16によって撮影された静止画像は、所定の操作キー13、例えば、シャッター機能が割り当てられた操作キーを操作することによって、メモリ内に保存用の撮影画像として取り込まれる。
【0023】
図2は、図1の携帯電話機100の要部における構成例を示したブロック図である。この携帯電話機100は、カメラ16を構成するCCDイメージセンサー16a及びフォーカシング機構16bの他に、キー入力部21、撮像制御部22、撮影画像記憶部23、画像処理部24、距離測定部25、位置判定部26、位置補正部27、表面形状算出部28、3軸地磁気センサー31、姿勢検出部32、3軸加速度センサー33及び変位量算出部34を備えて構成される。
【0024】
キー入力部21は、シャッター操作、すなわち、所定の操作キー13の操作に基づいてキー入力信号を生成し、撮像制御部22へ出力する。撮像制御部22は、シャッター操作に基づいてフォーカシング機構16bを制御し、CCDイメージセンサー16aによって生成された静止画像を撮影画像記憶部23内に取り込む画像取得手段である。
【0025】
画像処理部24は、特徴点抽出部24a、マッチング処理部24b及び24cからなり、撮影画像記憶部23内に保存用の撮影画像として取り込まれた静止画像について、所定の画像処理を行っている。
【0026】
特徴点抽出部24aは、静止画像についてエッジ検出を行い、エッジが交差する頂角などを特徴点として当該静止画像から抽出する。撮影画像から特徴点を抽出する具体的な方法としては、ハリスコーナーディテクター(Harris corner detector)法などの公知の技術を利用すれば良い。
【0027】
マッチング処理部24b,24cは、空間的に離間した2つの撮影点でそれぞれ撮影された静止画像を比較し、第1の静止画像内の点に対応する第2の静止画像上の点を抽出する照合処理を行っている。ここでは、第1撮影点で撮影されて撮影画像記憶部23内に取り込まれた静止画像を第1画像とし、第2撮影点で撮影されて撮影画像記憶部23内に取り込まれた静止画像を第2画像とする。
【0028】
マッチング処理部24bでは、第1画像から抽出された1又は2以上の特徴点について、対応する特徴点が第2画像から抽出される。第1画像内の特徴点に対応する特徴点を第2画像から抽出する具体的な方法としては、例えば、第1撮影点及び第2撮影点の位置情報と、各撮影点におけるカメラ16の姿勢情報とから第2画像上のエピポーラ拘束線を求め、第1画像上の特徴点を含む所定領域とエピポーラ拘束線上の画像領域とを比較してマッチング領域を判定する方法が用いられる。
【0029】
距離測定部25は、静止画像内の特徴点に対応する被写体上の点と、当該静止画像の撮影点との間の距離を測定し、その測定結果を位置判定部26へ出力する。具体的には、フォーカシング機構16bによるピント調整時のレンズの光軸方向の位置に基づいて、静止画像内の特徴点に対応する被写体上の点と撮影点との間の距離が判定される。
【0030】
3軸加速度センサー33は、端末に生じる加速度を検出するためのセンサーであり、互いに直交する3つの方向、例えば、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向について加速度をそれぞれ検出し、その検出結果を変位量算出部34へ出力する。3軸加速度センサー33としては、例えば、ピエゾ抵抗素子からなるピエゾ抵抗型、或いは、容量素子からなる静電容量型の半導体センサーが用いられる。
【0031】
変位量算出部34は、3軸加速度センサー33の出力に基づいて第1撮影点に対する第2撮影点の相対位置を算出し、その算出結果を位置補正部27へ出力する。この相対位置、すなわち、第1撮影点から第2撮影点までの位置の変化量は、加速度のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の各成分をそれぞれ時間について2回積分し、或いは、時間で2重積分することによって求められる。
【0032】
3軸地磁気センサー31は、カメラ16の光軸の向きと当該光軸を中心とする傾きとを検出するために、互いに直交する3つの方向について地磁気に対する傾斜角を検知する磁気センサーであり、例えば、磁気抵抗素子からなる。姿勢検出部32は、3軸地磁気センサー31の出力に基づいて、カメラ16の光軸の向き及び光軸を中心とする傾きを検出し、その検出結果を位置判定部26及び表面形状算出部28へ出力する。
【0033】
この姿勢検出部32では、例えば、カメラ16の光軸の向きとして、X軸を中心とする回転角(ピッチ角ξ)及びY軸を中心とする回転角(ヨー角φ)が検出され、カメラ16の光軸を中心とする傾きとして、Z軸を中心とする回転角(ロール角ζ)が検出される。
【0034】
位置判定部26は、第1画像内の特徴点について測定された距離と、第2画像内で対応する特徴点について測定された距離と、第1撮影点及び第2撮影点でのカメラ16の向き及び傾きの各検出結果とに基づいて、第1撮影点に対する第2撮影点の相対位置を判定し、その判定結果を位置補正部27へ出力する。この様な特徴点のマッチングによる相対位置の判定を第1画像から抽出した2以上の特徴点について行うことにより、相対位置の判定精度を向上させることができる。
【0035】
位置補正部27は、位置判定部26による判定結果に基づいて、変位量算出部34による算出結果を補正し、補正後の相対位置データを表面形状算出部28へ出力する。例えば、変位量算出部34によって算出された変位量が、被写体上の点と各撮影点との距離と、各撮影点でのカメラ16の向き及び傾きとから推定される変位量に基づいて補正される。
【0036】
表面形状算出部28は、第1画像及び第2画像と、第1撮影点及び第2撮影点でのカメラ16の向き及び傾きの各検出結果と、位置補正部27からの相対位置データとに基づいて、被写体の表面形状を算出し、3次元位置データを出力する。被写体の表面形状を算出する方法としては、ステレオ法などの公知の技術を利用すれば良い。
【0037】
例えば、マッチング処理部24cにより、第1画像及び第2画像間で対象物上の同一箇所に対応する点がそれぞれ抽出される。表面形状算出部28では、これらの点について、3点測量の原理を利用して対象物上の点の3次元位置を算出することを繰り返すことにより、対象物の表面形状が求められる。
【0038】
或いは、対象物が含まれる空間をボクセルと呼ばれる小さな立方体に分割し、各ボクセルを各画像に投影した際の画素の一致度に基づいて当該ボクセルが対象物の表面に相当するか否かを判断することによって、対象物の表面形状を算出する方法も考えられる。
【0039】
図3は、図1の携帯電話機100の動作の一例を模式的に示した説明図であり、空間的に離間した撮影点C1,C2におけるカメラ座標の一例が示されている。カメラ座標とは、カメラ16の位置を原点(光学中心)とし、カメラ16の光軸方向をZ軸方向とする直交座標系のことである。
【0040】
対象物の3次元形状を計測する場合には、空間的に離間した撮影点C1,C2で同一の対象物を被写体としてそれぞれ撮影された静止画像が用いられる。その際、各撮影点C1,C2をカメラ16の光学中心とするカメラ座標が用いられる。
【0041】
図4は、図1の携帯電話機100の動作の一例を模式的に示した説明図であり、対象物上の点Mと撮像面上の点mと光学中心Cとの関係が示されている。対象物上の任意の点を対象点Mと呼ぶと、この対象点Mについて、光学中心Cを原点とするカメラ座標における座標を(Xc,Yc,Zc)と表すと、カメラ16の焦点距離fだけ離れた撮像面への投影点mの当該撮像面上の座標(x,y)は、カメラ16の光軸の位置を原点とし、λを媒介変数として、次式(1)によって表される。
【数1】

【0042】
さらに、最終的な画像データ上の座標(u,v)は、CCDイメージセンサー16aのスケール因子をk,k、歪みをθとし、カメラ16の光軸の位置を(u,v)として、次式(2)によって表される。
【数2】

【0043】
上式(2)において、投影点mが撮影画像から抽出される特徴点である場合、u,v,u,vは、特徴点の撮影画像内における位置と、当該静止画像の撮影時におけるカメラ16の向き及び傾きとに基づいて、算出することができる。
【0044】
対象点Mの空間内における一般座標(X,Y,Z)は、光学中心Cを原点に移すようにカメラ座標を回転移動及び平行移動させることによって求められる。すなわち、座標(X,Y,Z)は、回転移動を表す3行3列の行列をRとし、平行移動を表す3行1列の行列をベクトルtとして、次式(3)によって求められる。
【数3】

【0045】
上式(3)において、行列Rは、撮影点におけるカメラ16の向き及び傾きから定められる。また、ベクトルtは、第1撮影点を始点とし、第2撮影点を終点として、第1撮影点に対する第2撮影点の相対位置を示す変位ベクトルである。
【0046】
上式(2)及び(3)から、次式(4)〜(7)が得られる。
【数4】

【0047】
上式(4)を見れば、撮像面上の投影点mに対応する対称点Mは、カメラ16の光学中心Cと投影点mを結ぶ半直線上に位置することがわかる。また、上式(4)を第1撮影点及び第2撮影点について考える場合、第1撮影点におけるカメラ座標を一般座標とみなせば、第1撮影点について上式(3)の変換を省略することができ、第2撮影点については行列Rに対して、姿勢検出部32による検出結果を用いることができる。
【0048】
具体的には、第1画像上の投影点をm、第2画像上の投影点をmとし、各撮影点での媒介変数をλ,λとして、次式(8)が成り立つ。
【数5】

【0049】
上式(8)をベクトルtについて解くと、次式(9)が得られる。
【数6】

【0050】
また、媒介変数λについては、次式(10)が成り立つ。
【数7】

【0051】
従って、光学中心Cから対象点Mまでの距離が距離測定部25によって求められれば、上式(10)から、λ,λがそれぞれ求められるので、上式(9)を用いてベクトルtを算出することができる。
【0052】
すなわち、第1画像から抽出された特徴点と、第2画像から抽出された特徴点のうち、マッチングした各特徴点について、距離測定部25によってそれぞれ対象点Mまでの距離を求めれば、上式(10)からλ,λを算出することができる。
【0053】
ここでは、空間的に離間した2つの撮影点でそれぞれ撮影された静止画像に基づいて、これらの撮影点間の相対位置を判定する場合の例について説明したが、3以上の撮影点でそれぞれ撮影された静止画像を用いて相対位置を判定することもできる。例えば、第3撮影点以降の撮影点について、直前の撮影点に対する相対位置を上述した方法で求め、その前の移動に対して、回転行列Rは積算し、ベクトルtは加算して累積させることにより、第1撮影点からの変位量を算出することができる。
【0054】
図5及び図6のステップS101〜S114は、図1の携帯電話機100の形状計測時の動作の一例を示したフローチャートである。まず、撮像制御部22は、シャッター操作が有れば、当該シャッター操作に基づいてフォーカシング機構16bを制御し、CCDイメージセンサー16aによって生成された静止画像を第1画像として撮影画像記憶部23内に取り込む(ステップS101,S102)。
【0055】
特徴点抽出部24aは、撮影画像記憶部23内に取り込まれた第1画像から特徴点を抽出する(ステップS103)。距離判定部25は、第1画像から抽出された特徴点について、対応する被写体上の点までの距離、すなわち、光学中心Cと対象点Mとの間の距離を測定する(ステップS104)。
【0056】
次に、撮像制御部22は、シャッター操作が有れば、当該シャッター操作に基づいてフォーカシング機構16bを制御し、CCDイメージセンサー16aによって生成された静止画像を第2画像として撮影画像記憶部23内に取り込む(ステップS105,S106)。
【0057】
このとき、変位量算出部34は、3軸加速度センサー33の出力に基づいて、第1撮影点に対する第2撮影点の相対位置、すなわち、第1撮影点から第2撮影点までの変位量を算出する(ステップS107)。
【0058】
特徴点抽出部24aは、撮影画像記憶部23内に取り込まれた第2画像から特徴点を抽出し(ステップS108)、マッチング処理部24bは、第1画像から抽出された特徴点との関連付けを行う(ステップS109)。そして、距離判定部25は、第2画像から抽出された特徴点のうち、第1画像から抽出された特徴点とマッチングする特徴点について、被写体上の点までの距離を測定する(ステップS110)。
【0059】
位置判定部26は、第1画像内の特徴点について測定された距離と、第2画像内で当該特徴点に対応する特徴点について測定された距離と、第1撮影点及び第2撮影点でのカメラ16の向き及び傾きの各検出結果とに基づいて、第1撮影点に対する第2撮影点の相対位置を判定し、ベクトルtを算出する(ステップS111)。位置補正部27は、このベクトルtに基づいて、変位量算出部34によって算出された変位量を補正する(ステップS112)。
【0060】
表面形状算出部28は、第1画像及び第2画像と、第1撮影点及び第2撮影点でのカメラ16の向き及び傾きの各検出結果と、位置補正部27からの相対位置データとに基づいて、被写体の表面形状を算出し、3次元位置データを出力する(ステップS113,S114)。
【0061】
本実施の形態によれば、静止画像内の特徴点に対応する被写体上の点までの距離を測定して撮影点間の相対位置を判定するので、GPS衛星を利用する位置検出に比べて、製造コストの増大を抑制しつつ、相対位置を精度良く判定することができる。また、特徴点周辺の領域についてピント調整時におけるレンズの位置に基づいて、静止画像内の特徴点に対応する被写体上の点までの距離を判定するので、GPS衛星を利用する位置検出に比べて、端末を小型化することができる。
【0062】
なお、本実施の形態では、地磁気に対する傾斜角を検知することによってカメラ16の向き及び傾きが検出される場合の例について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、重力加速度を検知することによってカメラ16の向き及び傾きを検出するものであっても良い。
【符号の説明】
【0063】
10 薄型筐体
11 受話用レシーバ
12 ディスプレイ
13 操作キー
14 送話用マイクロホン
15 アンテナ
16 カメラ
16a CCDイメージセンサー
16b フォーカシング機構
21 キー入力部
22 撮像制御部
23 撮影画像記憶部
24 画像処理部
24a 特徴点抽出部
24b,24c マッチング処理部
25 距離測定部
26 位置判定部
27 位置補正部
28 表面形状算出部
31 3軸地磁気センサー
32 姿勢検出部
33 3軸加速度センサー
34 変位量算出部
100 携帯電話機
C 光学中心
C1,C2 撮影点
M 対象点
m 投影点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮影して静止画像を生成する撮像手段と、
上記撮像手段の光軸の向き及び上記光軸を中心とする傾きを検出する姿勢検出手段と、
上記静止画像から特徴点を抽出する特徴点抽出手段と、
上記静止画像内の上記特徴点に対応する被写体上の点及び当該静止画像の撮影が行われた撮影点間の距離を測定する距離測定手段と、
第1撮影点で撮影された第1画像内の上記特徴点について測定された距離、第2撮影点で撮影された第2画像内の上記特徴点について測定された距離、並びに、第1撮影点及び第2撮影点での上記撮像手段の向き及び傾きの各検出結果に基づいて、第1撮影点に対する第2撮影点の相対位置を判定する位置判定手段とを備えたことを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
加速度を検出する加速度センサーと、
上記加速度センサーの出力に基づいて、第1撮影点に対する第2撮影点の相対位置を算出する変位量算出手段と、
上記位置判定手段による判定結果に基づいて、上記変位量算出手段による算出結果を補正する位置補正手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
上記撮像手段が、レンズを介して被写体から入射される光を受光する撮像素子と、上記レンズ及び上記撮像素子間の距離を変化させて上記静止画像のピント調整を行うフォーカシング機構とを有し、
上記距離測定手段が、上記レンズの光軸方向の位置に基づいて、静止画像内の特徴点に対応する被写体上の点と当該静止画像の撮影点との間の距離を判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯端末。
【請求項4】
第1画像、第2画像、第1撮影点及び第2撮影点での上記撮像手段の向き及び傾きの各検出結果、並びに、上記相対位置の判定結果に基づいて、被写体の表面形状を算出する表面形状算出手段を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−58854(P2011−58854A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206440(P2009−206440)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】