説明

新規道路検出装置、方法およびプログラム

【課題】地図情報に登録された既存道路の付近に新規道路が整備された場合に、新規道路が存在することを検出することができなかった。
【解決手段】地図情報と自車両の位置を示す情報とを取得し、前記地図情報と前記自車両の位置とに基づいて、前記自車両の位置を前記地図情報に登録された既存道路上の位置に適合させるマッチング処理を行い、前記マッチング処理によって前記適合がなされている間における前記自車両の車速を取得し、前記既存道路に対して対応づけられた基準車速を取得し、前記自車両の車速と前記基準車速との差分が所定の閾値以上であるときに、前記自車両の位置に対応した新規道路が存在すると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図情報に登録されていない新規道路を検出する新規道路検出装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置においては地図情報を利用して経路案内等を行うが、新規道路が整備されるなど道路等の様子は時間の経過に伴って変動するため、当該変動に合わせて地図情報を更新する各種の技術が開発されている。例えば、特許文献1に開示された技術においては、車両が地図情報に登録されていない道路を走行していると判断された場合に当該車両の走行軌跡から新規道路情報を生成する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−251790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術においては、地図情報に登録された既存道路の付近に新規道路が整備された場合に、新規道路が存在することを検出することができなかった。すなわち、一般的なナビゲーション装置においては、自車両の位置を既存道路上の位置に適合させるマッチング処理を行う。このため、既存道路の付近に新規道路が整備された場合、自車両が新規道路を走行しているとしてもマッチング処理によって自車両の位置が既存道路上の位置に補正される。従って、このような状況においては、地図情報に登録されていない道路を走行していると判断することができず、新規道路の存在を検出することができない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、地図情報に登録された既存道路の付近に新規道路が整備された場合であっても当該新規道路を検出することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するため、本発明においては、マッチング処理によって自車両の位置が既存道路上の位置に適合されている間における自車両の車速を取得し、当該自車両の車速と既存道路に対して対応づけられた基準車速との差分が所定の閾値以上であるか否かを判別する。そして、当該差分が所定の閾値以上であるときに、自車両の位置に対応した新規道路が存在すると判定する。
【0005】
すなわち、既存道路以外の新規道路を走行しているにもかかわらずマッチング処理によって自車両の位置が既存道路上に適合されている場合、地図情報に登録されていない道路を走行していると判断することができない。そこで、マッチング処理によって適合がなされている間の自車両の車速が既存道路に対応づけられた基準車速から所定の閾値以上乖離しているときに新規道路が存在するとみなすこととした。従って、地図情報に登録された既存道路の付近に新規道路が整備された場合であっても当該新規道路を検出することが可能である。
【0006】
ここで、地図情報取得手段においては、ある時点において整備済の道路を示す地図情報を取得することができればよく、当該ある時点における道路の状態を反映して地図情報に登録された道路が既存道路となる。地図情報は、車両に搭載された記憶媒体から取得してもよいし、無線通信によって取得してもよい。なお、地図情報の道路を示す情報には、位置情報以外の情報、例えば、基準車速を示す情報等が含まれる。
【0007】
自車両位置情報取得手段は、自車両の位置を示す自車位置情報を取得することができればよく、自車両の位置を示す情報を取得するための種々の構成を採用可能である。例えば、車両の位置をセンサやカメラによって特定する構成や、GPSからの信号や地図上での自車両の軌跡,車車間通信,路車間通信等によって位置を取得する構成等を採用可能である。
【0008】
マッチング処理手段は、自車両の位置を既存道路上の位置に適合させることができれば良い。例えば、自車両の位置から特定される自車両の軌跡と自車両の位置から所定距離以内にある既存道路の形状とを比較して自車両が走行している既存道路を推定し、自車両の位置を既存道路上の位置に補正することによって適合を行う構成等を採用可能である。
【0009】
車速取得手段は、マッチング処理によって自車両の位置が既存道路上の位置に適合されている間における自車両の車速を取得すればよい。すなわち、マッチング処理による適合がなされている状態において自車両が実際に既存道路を走行したか否かは不明であるが、いずれにしてもこの適合がなされている間における自車両の実車速を取得することができればよい。例えば、各種のセンサによって自車両の車速を取得しても良いし、既存道路の長さを当該既存道路上の位置に自車両の位置が適合している時間で除して自車両の車速を取得しても良く、種々の構成を採用可能である。
【0010】
基準車速取得手段は、既存道路に対して対応づけられた基準車速を取得することができれば良い。すなわち、既存道路を走行する車両の車速を統計的に解析すると特定の分布となるため、既存道路を走行する車両は特定の分布に対応した車速で当該既存道路を走行するとみなす。さらに、新規道路が整備された場合、当該新規道路は既存道路と異なる道路であるため、当該新規道路を走行する車両の統計的な車速分布は既存道路を走行する車両の統計的な車速分布と異なると考える。本発明はこのような車速分布の違いに基づいて既存道路あるいは新規道路のいずれであるのかを判定することとしている。
【0011】
従って、基準車速は、既存道路の車速分布に対応した車速であって、新規道路の車速分布との差異を顕在化させるための値として定義されればよく、例えば、既存道路における車両の平均車速や車速分布の中央値、既存道路の法定速度等を基準車速とすることが可能である。また、車速分布を変動させる要因が存在するのであれば、その要因毎に基準車速を規定することが可能である。例えば、時刻や曜日、季節等によって既存道路の車速分布が異なる場合には、これらの時刻や曜日、季節等に対応づけて基準車速を規定する構成等を採用可能である。
【0012】
新規道路検出手段は、自車両の車速と基準車速との差分が所定の閾値以上であるときに自車両の位置に対応した新規道路が存在すると判定することができればよい。すなわち、自車両の車速と基準車速とに閾値以上の乖離があるときに、自車両が走行した道路が新規道路であると判定することができればよい。むろん、このとき、自車両の位置の推移(走行履歴)に基づいて新規道路の存在位置(例えば、新規道路上のノードや形状補間点の位置)を特定しても良い。
【0013】
さらに、基準車速は既存道路を走行する時刻に対応づけて規定されていても良い。すなわち、時刻に応じて既存道路を走行する際の車速分布が異なるため、自車両によって道路を走行したときの時刻毎に、基準車速と自車両の車速とを比較する構成とする。このため、基準車速を取得するにあたって、まず、マッチング処理によって適合がなされている間の時刻を特定する。そして、当該特定された時刻に対して対応づけられた既存道路についての基準車速を取得して自車両の車速と比較する。この構成によれば、時刻に応じて異なる既存道路の基準車速を加味して、自車両が走行した道路が新規道路であるか否かを判定することが可能である。
【0014】
本発明においては、新規道路を走行しているにもかかわらず自車両の位置を既存道路上の位置へ適合させるマッチング処理を行っている状態において、正確に新規道路を検出することを想定している。このようなマッチング処理の状態はマッチング処理による誤適合であり、当該誤適合は新規道路と既存道路とが区別しづらい状況、例えば、新規道路と既存道路とが並走している状況で生じやすい。このように、新規道路と既存道路が並走している状況は、両者が水平方向に並んで(高度の差が所定値以下の状態で)並走する場合と両者が垂直方向に並んで(高度の差が所定値よりも大きい状態で)並走する場合との双方が発生し得る。
【0015】
そこで、双方を区別するための構成を採用しても良い。このために、マッチング処理によって適合がなされている間において前記自車両が走行した道路の高度を示す自車両高度を取得し、既存道路の高度を示す既存道路高度と比較する。そして、自車両高度と既存道路高度とが一致している場合には、既存道路に対して水平な方向に並走する新規道路が存在すると判別する。また、自車両高度と既存道路高度とが一致していない場合には、既存道路に対して垂直な方向に並走する新規道路が存在すると判別する。この構成によれば、新規道路の情報をより正確に特定することが可能である。
【0016】
なお、本発明のように、自車両の車速と既存道路に対応づけられた基準車速とが乖離しているときに新規道路が存在すると判定する手法は、この処理を行う方法やプログラムとしても適用可能である。また、以上のような新規道路検出装置、方法、プログラムは、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあれば、車両に搭載されない各部と連携して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、新規道路検出装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)新規道路検出装置の構成:
(2)新規道路検出処理:
(3)他の実施形態:
【0018】
(1)新規道路検出装置の構成:
図1は、自車両に搭載された新規道路検出装置の構成を示すブロック図である。本実施形態において新規道路検出装置は、ナビゲーション装置10によって実現される。ナビゲーション装置10は、CPU、RAM、ROM等を備える制御部20と記憶媒体30とを備えており、記憶媒体30やROMに記憶されたプログラムを制御部20で実行することができる。本実施形態においては、このプログラムの一つとして新規道路検出プログラム21を実行可能である。
【0019】
自車両には、新規道路検出プログラム21によって、新規道路が存在することを判定し、地図情報を更新するために、GPS受信部40と車速センサ41とジャイロセンサ42と表示部43とスピーカー44と通信部45とが備えられている。GPS受信部40は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して自車両の現在位置を算出するための信号や現在時刻を示す信号を出力する。制御部20は、この信号を取得して自車両の現在位置および現在時刻を取得する。車速センサ41は、自車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、自車両の速度を取得する。ジャイロセンサ42は、自車両の水平面内の旋回についての角加速度を検出し、自車両の向きに対応した信号を出力する。制御部20は図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、自車両の走行方向を取得する。車速センサ41およびジャイロセンサ42は、GPS受信部40の出力信号から特定される自車両の現在位置を補正するためなどに利用される。
【0020】
また、制御部20は、所定の出力を表示部43およびスピーカー44に対して出力して当該表示部43にて任意の画像を表示させ、スピーカー44にて任意の音声を出力させる。本実施形態において制御部20は、後述する地図情報30aに登録された既存道路によって地図を構成して表示部43上に地図を表示させる。
【0021】
通信部45は、図示しない外部の地図情報管理センターと無線通信を行う回路を備えており、制御部20は、通信部45を制御し、後述する処理によって検出された新規道路を示す情報を地図情報管理センターに送信する。また、制御部20は、通信部45を制御して地図情報管理センターから送信される新規道路を示す情報を取得して後述する地図情報30aを更新する。さらに、制御部20は、通信部45を制御して地図情報管理センターから送信される基準車速情報30bを取得して記憶媒体30に記録する。
【0022】
制御部20は、新規道路検出プログラム21を実行することにより、新規道路を検出する処理を行う。このため、新規道路検出プログラム21は、地図情報取得部21aと自車両位置情報取得部21bとマッチング処理部21cと車速取得部21dと基準車速取得部21eと新規道路検出部21fとを備えており、記憶媒体30には予め地図情報30aおよび基準車速情報30bが記憶されている。
【0023】
地図情報30aは、自車両が走行する道路上に設定されたノードを示すノードデータ、ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点データ、ノード同士の連結を示すリンクデータ、道路やその周辺に存在する地物を示すデータ等を含み、自車両の現在位置から目的地までの経路の探索や経路案内等に利用される。なお、道路はノードデータおよびリンクデータによって特定することができる。すなわち、本実施形態においては、道路の交差点の中央に相当する位置にノードが設定され、ノードデータにその位置が対応づけられている。また、リンクデータによって連結されているノード間には道路が存在することを示している。従って、地図情報30aとして記録されているノードデータとリンクデータとによって再現することが可能な道路はある時点までに整備済の道路についてのデータでありこれらの道路が既存道路となる。また、既に整備済の道路であるが地図情報30aに当該整備済の道路についてのノードデータとリンクデータとが登録されていない場合には、当該整備済の道路は新規道路である。
【0024】
基準車速情報30bは、既存道路のそれぞれに対応づけられた基準車速を示す情報であり、初期値は各既存道路の法定速度を示す情報である。一方、制御部20は、通信部45によって適宜通信を行い、既存道路の平均速度を取得することができた場合には当該平均速度を示す情報によって基準車速情報30bを更新する。すなわち、地図情報管理センターにおいては既存道路の車速を取得して平均車速を特定する処理を行っており、既存道路の平均車速が生成されると当該既存道路の平均車速を示す情報が無線送信される。制御部20は通信部45を制御して所定のタイミングで地図情報管理センターと通信を行っており、既存道路の平均車速を示す情報が送信されている場合には当該情報を取得し、既存道路と平均車速とを対応づけて基準車速情報30bとして記憶媒体30に記録する。
【0025】
なお、既存道路の平均車速は当該既存道路を走行する時刻毎に規定される。すなわち、本実施形態においては、時刻毎に車両の量が異なることに起因して各時刻における平均車速は異なってくる。そこで、本実施形態においては、地図情報管理センターにおいて時刻毎に平均車速を示す情報を作成して送信する。このため、地図情報管理センターから送信された情報に基づいて基準車速情報30bが更新されると、当該基準車速情報30bは、既存道路における平均車速を時刻毎に示す情報となる。
【0026】
地図情報取得部21aは、記憶媒体30から地図情報30aとして登録された各種情報を適宜取得する機能を制御部20に実現させるモジュールであり、制御部20は当該地図情報取得部21aの処理によって自車両の位置付近の既存道路を示す情報を取得する。当該自車両の位置付近の既存道路はマッチング処理による適合の候補となる。自車両位置情報取得部21bは、自車両の位置を示す情報を取得する機能を制御部20に実現させるモジュールであり、制御部20は、GPS受信部40,車速センサ41,ジャイロセンサ42の出力信号を取得し、自車両の現在位置の緯度および経度を検出して自車両の位置とする。
【0027】
マッチング処理部21cは、地図情報30aと自車両の位置とに基づいて、自車両の位置を既存道路上の位置に適合させるマッチング処理を制御部20に行わせるモジュールである。すなわち、制御部20は、地図情報30aに登録されたノードデータとリンクデータとに基づいて既存道路の位置を特定し、当該自車両の位置を既存道路上の位置に補正するマッチング処理を行う。なお、当該マッチング処理においては、自車両の位置の履歴(走行軌跡)に最も近い形状の既存道路を自車両の位置の適合対象とするなど、各種のアルゴリズムを採用可能である。
【0028】
車速取得部21dは、上述のマッチング処理によって上述の適合がなされている間に自車両の車速を取得する機能を制御部20に実現させるモジュールである。本実施形態において、制御部20は、車速取得部21dの処理により、車速センサ41の出力信号を取得して自車両の車速を特定する。なお、自車両の車速は、マッチング処理によって上述の適合がなされている間における自車両の車速を評価するための指標となれば良く、例えば、適合がなされている間に所定区間を走行した場合の平均車速や車速の最高値等を自車両の車速として取得することが可能である。
【0029】
基準車速取得部21eは、既存道路に対して対応づけられた基準車速を取得する機能を制御部20に実現させるモジュールである。基準車速情報30bは、上述のように、既存道路を走行する時刻に対応づけて基準車速である平均車速が規定されているため、本実施形態においては、まず制御部20が、上述のマッチング処理によって上述の適合がなされている間の時刻を特定する。そして、基準車速情報30bを参照し、当該特定した時刻に対応づけられた平均車速を基準車速として取得する。なお、当該時刻に対応した平均車速を示す情報が基準車速情報30bとして記録されていない場合には、既存道路の法定速度を基準車速として取得する。
【0030】
なお、マッチング処理によって適合がなされている状態においては、自車両の位置が適合された既存道路を実際に自車両が走行している場合と実際には当該既存道路を走行していない(新規道路を走行している)場合とがあり得る。一方、本実施形態において制御部20は、車速センサ41の出力信号に基づいて実車速を取得する。従って、実際に既存道路を走行している場合に取得される自車両の車速は当該既存道路走行中の自車両の車速であるが、実際に既存道路を走行していない場合に取得される自車両の車速は新規道路を走行しているときの自車両の車速となる。
【0031】
既存道路と新規道路とは異なる道路であるため、本実施形態においては、各道路を走行する車両の速度分布が異なるとみなし、各道路を走行する車両の車速の差分に基づいて実際に自車両が走行した道路が既存道路、新規道路のいずれであるのかを判別する。すなわち、既存道路を走行する車両の車速を統計的に解析すると特定の分布となるため、本実施形態においては既存道路の平均車速(あるいは法定速度)が当該既存道路を走行する車両の車速を代表的に示すとみなす(実際に自車両が既存道路を走行している場合の車速は当該平均車速に近いとみなす)。一方、実際に自車両が既存道路を走行していない場合の車速は当該平均車速と乖離しているとみなす。従って、自車両の車速と基準車速とを比較して両者の差分が所定の閾値以上であるときには、自車両が既存道路を走行しておらず、新規道路を走行したと考えられる。
【0032】
図3Aは、新規道路検出プログラム21による処理を行っているときに表示部43に表示される地図の表示例を示す図である。同図において、実線は既存道路R1〜R3、破線は新規道路R4を示している。すなわち、実際には破線で示す新規道路R4が整備済であるが、地図情報30aには未登録であるため、表示部43においては既存道路R1〜R3が表示され、新規道路R4が表示されない状態である。
【0033】
図3Aに示す表示部43の表示例では、円内に三角形を示す画像によって自車両の位置P1を示す構成となっている。図3Aに示す例において、新規道路R4は既存道路R1と近い位置で当該既存道路R1と並走しているため、自車両が実際には新規道路R4上の位置P2を走行しているとしても、マッチング処理によって自車両の位置を既存道路R1上の位置に適合させる場合が多い。この状態において制御部20は、自車両の位置から、自車両が実際に走行する道路が既存道路R1であるのか、新規道路R4であるのかを区別できないが、自車両の速度を参照すれば上述のように既存道路R1と新規道路R4とを区別することができる。
【0034】
そこで、新規道路検出部21fは、自車両の車速と基準車速とを比較して両者の差分が所定の閾値以上であるか否かを判定する。そして、差分が所定の閾値以上である場合には自車両の位置に対応する新規道路が存在すると判定し、自車両の位置の履歴に基づいて新規道路の位置を特定して当該新規道路を示す情報を地図情報30aに追加する。また、通信部45を制御して地図情報管理センターに対して当該新規道路を示す情報を送信する。
【0035】
なお、既存道路に並走する新規道路が整備される場合には既存道路と新規道路との道路種別(例えば、高速道路、一般道路、細街路など)が異なる場合が多い。この場合、既存道路の基準車速と新規道路を走行する際の自車両の車速とが大きく異なるため、車速の比較によって極めて容易に新規道路を検出することが可能である。
【0036】
以上の構成は、自車両の位置を既存道路上の位置にマッチング処理を行う構成において、自車両の車速に基づいて新規道路を検出している。従って、地図情報に登録された既存道路の付近に新規道路が整備されることによって、新規道路を走行しているにもかかわらずマッチング処理によって自車両の位置が既存道路上に適合されている場合であっても新規道路を検出することが可能である。
【0037】
(2)新規道路検出処理:
次に、以上の構成においてナビゲーション装置10が実施する新規道路検出処理について説明する。図2は、新規道路検出処理を示すフローチャートである。当該新規道路検出処理は、ナビゲーション装置10において経路案内等のナビゲーション処理を実行している過程で実行される。なお、本実施形態において制御部20は、当該ナビゲーション処理を実行している過程において、マッチング処理を継続的に実行する。すなわち、制御部20は、地図情報取得部21aの処理によって地図情報30aを取得し、自車両位置情報取得部21bの処理によって自車両の位置を取得する。さらに、制御部20は、マッチング処理部21cの処理によって自車両の位置を補正して既存道路上の位置に適合させる処理を継続的に行う。
【0038】
当該マッチング処理が行われている状態で新規道路検出処理が実行されると、まず、制御部20は、当該マッチング処理によって自車両の位置が既存道路上の位置に適合されているか否かを判別する(ステップS100)。すなわち、上述のマッチング処理によって自車両の位置を適合させる既存道路が特定され、適合が行われているか否かを判別する。
【0039】
ステップS100において、マッチング処理によって自車両の位置が既存道路上の位置に適合されていると判別されたとき、制御部20は、さらに、所定距離(例えば2km等)以上、当該適合が行われているか否か判別する(ステップS105)。すなわち、自車両の位置が継続的に特定の既存道路に適合している場合に有意な自車両の車速を取得することができるため、所定距離以上適合がなされたか否かを判別する。
【0040】
ステップS105にて、所定距離以上適合が行われていると判別されないときにはステップS100以降の処理を繰り返す。ステップS105にて、所定距離以上適合が行われていると判別されたとき、制御部20は、車速取得部21dおよび基準車速取得部21eの処理により、当該適合がなされている間の時刻を特定する(ステップS110)。なお、ここでは、マッチング処理によって自車両の位置が既存道路上の位置に適合された状態であるため、上述の所定区間は既存道路上の区間である場合と、新規道路上の区間である場合とがあり得る。
【0041】
次に、制御部20は基準車速取得部21eの処理により、基準車速情報30bを参照し、上述の適合がなされている間の時刻に対応した既存道路の平均車速を示す情報が存在するか否かを判別する(ステップS115)。すなわち、所定区間は既存道路である場合と新規道路である場合があるものの、適合によって自車両の位置が既存道路上の位置となるように補正されているため、当該既存道路に対応づけられた平均車速を示す情報であって、ステップS110にて特定された時刻に対応した情報が存在するか否かを判別する。
【0042】
ステップS115にて、既存道路の平均車速を示す情報が存在すると判別されたとき、制御部20は、新規道路検出部21fの処理により、自車両の車速と平均車速との差分を取得し(ステップS120)、当該差分が予め決められた閾値以上であるか否かを判別する(ステップS125)。ステップS125において、差分が閾値以上であると判別されないときには、自車両が走行した所定区間は既存道路上であるとみなしてステップS100以降の処理を繰り返す。
【0043】
一方、ステップS125において、差分が閾値以上であると判別されたとき、自車両が走行した所定区間は新規道路上であるとみなし、制御部20は、新規道路検出部21fの処理により、自車両の位置の推移(走行軌跡)に基づいて新規道路の存在位置(例えば、新規道路上のノードや形状補間点の位置)を特定し、当該新規道路の存在位置を示す新規道路情報を作成して記憶媒体30に記録し、地図情報管理センターに対して送信する(ステップS130)。
【0044】
上述のステップS100において、マッチング処理によって自車両の位置が既存道路上の位置に適合されていると判別されないとき、制御部20は当該適合が行われない状態が所定距離以上続いているか否かを判別する(ステップS135)。ステップS135において、適合が行われない状態が所定距離以上続いていると判別されないときには、再度ステップS100以降の処理を繰り返す。
【0045】
ステップS135において、適合が行われない状態が所定距離以上続いていると判別されたとき、制御部20は、再度適合が行われたと判別されるまで待機し(ステップS140)。再度適合が行われた場合には、適合しなかった区間での自車両の位置に基づいて新規道路を示す新規道路情報を作成して記憶媒体30に記録し、地図情報管理センターに対して送信する(ステップS145)。すなわち、所定距離以上適合が行われない状態が続いた場合には、自車両が走行した道路が新規道路であると見なし、既存道路に再度適合するまで新規道路が続くと見なして新規道路を示す情報を作成する。
【0046】
さらに、上述のステップS115において、所定区間に対応した平均車速を示す情報が存在すると判別されない場合には、法定速度を既存道路上の基準車速として自車両の車速と比較するための処理を行う。このため、まず、制御部20は、基準車速取得部21eの処理により、上述の適合がなされている間の自車両の車速が法定速度以上であったか否かを判別する(ステップS150)。ステップS150にて、適合がなされている間の自車両の車速が法定速度以上であったと判別されないときにはステップS100以降の処理を繰り返す。
【0047】
ステップS150にて、適合がなされている間の自車両の車速が法定速度以上であったと判別されたとき、制御部20は、適合した既存道路の法定速度と自車両の車速との差分を取得し(ステップS155)、当該差分が予め決められた閾値以上であるか否かを判別する(ステップS160)。ステップS160において、差分が閾値以上であると判別されないときには、自車両が走行した所定区間は既存道路上であるとみなしてステップS100以降の処理を繰り返す。
【0048】
一方、ステップS160において、差分が閾値以上であると判別されたとき、自車両が走行した所定区間は新規道路上であるとみなし、制御部20は、新規道路検出部21fの処理により、自車両の位置に基づいて新規道路を示す新規道路情報を作成して記憶媒体30に記録し、地図情報管理センターに対して送信する(ステップS165)。
【0049】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は、本発明を実施するための一例であり、自車両の車速と既存道路に対応づけられた基準車速とが乖離しているときに新規道路が存在すると判定する限りにおいて他にも種々の実施形態を採用可能である。上述の実施形態において、新規道路検出プログラム21は、自車両に備えられた制御部20にて実行されていたが、当該新規道路検出プログラム21の任意の部分を自車両以外の装置にて実行するように構成してもよい。例えば、マッチング処理による適合が行われていた所定区間および所定区間における自車両の車速を示す情報をナビゲーション装置にて取得し、新規道路情報を作成する処理を地図情報管理センターにて実現する構成等を採用可能である。
【0050】
より具体的には、図2に示すステップS100,S105,S135,S140をナビゲーション装置10にて実行する構成とする。また、ステップS105にて所定距離以上適合が行われていると判別されたときに、適合している所定区間を示す情報と、当該所定区間における自車両の車速を示す情報とを地図情報管理センターに送信する。さらに、ステップS140にて再度適合が行われたと判別されたときに、適合しなかった区間を示す情報を地図情報管理センターに送信する。地図情報管理センターにおいてはステップS110以降の処理およびステップS145を行う。地図情報管理センターによって新規道路情報が作成されると、当該新規道路情報はナビゲーション装置10に送信される。この構成によれば、少ないリソースを備えたナビゲーション装置10を利用して新規道路を検出し、新規道路情報を作成することが可能である。
【0051】
さらに、地図情報は、無線通信によって取得してもよく、地図情報に基準車速を示す情報等が含まれていても良い。さらに、マッチング処理がなされている間の自車両の車速は、自車両の位置の適合対象となった既存道路の長さを当該既存道路上の位置に自車両の位置が適合している時間で除して自車両の車速を取得しても良く、種々の構成を採用可能である。
【0052】
基準車速は、既存道路の車速分布に対応した車速であって、新規道路の車速分布との差異を顕在化させるための値として定義されればよく、既存道路における車両の平均車速の他、車速分布の中央値等を基準車速とすることが可能である。また、上記の実施形態においては時刻に対応付けて基準車速を規定する構成としたが、車速分布を変動させる他の要因毎に基準車速を規定する構成も採用することが可能であり、曜日や季節等によって既存道路の車速分布が異なる場合には、これらの曜日や季節等に対応づけて基準車速を規定する構成等を採用可能である。すなわち、自車両の車速を取得した時刻や曜日、季節等に対応した基準車速を取得して自車両の車速と比較することによって、時刻や曜日、季節等によって車速が変動する場合であってもその影響を受けることなく新規道路の検出を行うことができる。
【0053】
さらに、本発明においては、新規道路を走行しているにもかかわらず自車両の位置を既存道路上の位置へ適合させるマッチング処理を行っている状態において、正確に新規道路を検出することを想定している。このようなマッチング処理の状態はマッチング処理による誤適合であり、当該誤適合は新規道路と既存道路とが区別しづらい状況、例えば、新規道路と既存道路とが並走している状況で生じやすい。このように、新規道路と既存道路が並走している状況は、両者が水平方向に並んで(高度の差が所定値以下の状態で)並走する場合と両者が垂直方向に並んで(高度の差が所定値よりも大きい状態で)並走する場合との双方が発生し得る。
【0054】
そこで、双方を区別するための構成を採用しても良い。このためには、例えば、地図情報30aのノードデータに対して各ノードの高度を対応づける構成とし、自車両に3軸ジャイロセンサを搭載するとともに当該3軸ジャイロセンサによって鉛直方向に作用する加速度を取得して積分することによって自車両の高度を取得する構成とする。そして、マッチング処理によって適合がなされている間における自車両の高度の推移に基づいて自車両が走行した道路の高度を示す自車両高度を取得する。また、地図情報30aを参照することによって、既存道路の高度を示す既存道路高度を取得して、自車両高度と既存道路高度とを比較する。
【0055】
そして、自車両高度と既存道路高度とが一致している場合には、既存道路に対して水平な方向に並走する新規道路が存在すると判別する。また、自車両高度と既存道路高度とが一致していない場合には、既存道路に対して垂直な方向に並走する新規道路が存在すると判別する。この構成によれば、新規道路の情報をより正確に特定することが可能である。この構成によれば、新規道路が既存道路に並走する場合において当該新規道路と既存道路との関係を正確に規定することが可能である。
【0056】
むろん、ここで自車両高度と既存道路高度とが一致しているか否か判定する際には、自車両高度と既存道路高度との差分が所定の値以内であるときに一致していると判定する構成等を採用可能である。また、この構成において、新規道路の位置を特定するにあたり、新規道路が既存道路に対して水平な方向に並走する場合には、自車両の位置の推移に基づいて新規道路の位置を特定する構成を採用可能である。また、新規道路が既存道路に対して垂直な方向に並走する場合には、マッチング処理によって適合がなされた後の自車両の位置(既存道路と同じ位置)を新規道路の水平方向の位置とする構成を採用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】新規道路検出装置を示すブロック図である。
【図2】新規道路検出処理を示すフローチャートである。
【図3】(3A)は地図の表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
10…ナビゲーション装置、20…制御部、21…新規道路検出プログラム、21a…地図情報取得部、21b…自車両位置情報取得部、21c…マッチング処理部、21d…車速取得部、21e…基準車速取得部、21f…新規道路検出部、30…記憶媒体、30a…地図情報、30b…基準車速情報、40…受信部、41…車速センサ、42…ジャイロセンサ、43…表示部、44…スピーカー、45…通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図情報を取得する地図情報取得手段と、
自車両の位置を示す情報を取得する自車両位置情報取得手段と、
前記地図情報に基づいて、前記自車両の位置を前記地図情報に登録された既存道路上の位置に適合させるマッチング処理を行うマッチング処理手段と、
前記マッチング処理によって前記適合がなされている間における前記自車両の車速を取得する車速取得手段と、
前記既存道路に対して対応づけられた基準車速を取得する基準車速取得手段と、
前記自車両の車速と前記基準車速との差分が所定の閾値以上であるときに、前記自車両の位置に対応した新規道路が存在すると判定する新規道路検出手段と、
を備える新規道路検出装置。
【請求項2】
前記基準車速は、前記既存道路を走行する時刻に対応づけて予め規定されており、
前記基準車速取得手段は、前記マッチング処理によって前記適合がなされている間の時刻を特定し、当該特定した時刻に対応づけられた前記既存道路についての前記基準車速を取得する、
請求項1に記載の新規道路検出装置。
【請求項3】
前記マッチング処理によって前記適合がなされている間において前記自車両が走行した道路の高度を示す自車両高度を取得する自車両高度取得手段を備え、
前記新規道路検出手段は、前記地図情報に基づいて前記既存道路の高度を示す既存道路高度を取得し、
前記自車両高度と前記既存道路高度とが一致している場合には、前記既存道路に対して水平な方向に並走する前記新規道路が存在すると判別し、
前記自車両高度と前記既存道路高度とが一致していない場合には、前記既存道路に対して垂直な方向に並走する前記新規道路が存在すると判別する、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の新規道路検出装置。
【請求項4】
地図情報を取得する地図情報取得工程と、
自車両の位置を示す情報を取得する自車両位置情報取得工程と、
前記地図情報と前記自車両の位置とに基づいて、前記自車両の位置を前記地図情報に登録された既存道路上の位置に適合させるマッチング処理を行うマッチング処理工程と、
前記マッチング処理によって前記適合がなされている間における前記自車両の車速を取得する車速取得工程と、
前記既存道路に対して対応づけられた基準車速を取得する基準車速取得工程と、
前記自車両の車速と前記基準車速との差分が所定の閾値以上であるときに、前記自車両の位置に対応した新規道路が存在すると判定する新規道路検出工程と、
を含む新規道路検出方法。
【請求項5】
地図情報を取得する地図情報取得機能と、
自車両の位置を示す情報を取得する自車両位置情報取得機能と、
前記地図情報と前記自車両の位置とに基づいて、前記自車両の位置を前記地図情報に登録された既存道路上の位置に適合させるマッチング処理を行うマッチング処理機能と、
前記マッチング処理によって前記適合がなされている間における前記自車両の車速を取得する車速取得機能と、
前記既存道路に対して対応づけられた基準車速を取得する基準車速取得機能と、
前記自車両の車速と前記基準車速との差分が所定の閾値以上であるときに、前記自車両の位置に対応した新規道路が存在すると判定する新規道路検出機能と、
をコンピュータに実現させる新規道路検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−139366(P2010−139366A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315818(P2008−315818)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】