説明

曲面状態検査方法および基板外観検査装置

【課題】LEDのような指向性の高い点光源を用いた照明装置を拡散板を導入せずに使用しても、表面の傾斜状態の判別を安定して行って、検査の精度を確保する。
【解決手段】基板Sの上方に、カラーカメラ1を受光面が基板面に対向するように配備するとともに、このカメラ1と基板Sとの間に照明装置2を設け、基板S上のフィレット71に対する検査を実行する。照明装置2は、同心円状に配備されたLED21R,21G,21Bにより、赤、緑、青の各色彩光がカメラ1の視野に対しそれぞれ異なる方向から入射するように構成されるが、光出射面には拡散板が設けられていない。検査の際には、カメラ1により生成された画像から各照明色による高輝度領域を抽出し、これらの領域がLED間の距離に応じた間隔を隔てて分布する範囲全体を、照明色に対応する色領域として特定し、各色領域の構成画素の数を所定の基準値と照合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鏡面反射性の高い曲面体(たとえばはんだ付け後のプリント基板上のはんだフィレット)を対象に、その表面の傾斜状態の適否を画像処理の手法により判別する検査方法、およびこの方法を用いた基板外観検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、従前より、「カラーハイライト方式」と呼ばれる検査方式を採用した基板外観検査装置を多数開発している。このカラーハイライト方式の基板外観検査装置(以下、単に「検査装置」という。)は、2次元のカラーカメラと、赤、緑、青の3種類の色彩光をそれぞれ異なる方向から照射する照明装置とを具備する(特許文献1参照。)。
【0003】
上記の検査装置では、カラーカメラは、基板の上方に、受光面を基板面に対向させて配備され、照明装置は、赤、緑、青の各色彩光を発するリング状光源がそれぞれ中心軸を撮像装置の光軸に合わせて配備される。また基板面から見た仰角が最も大きな方向から赤色光が照射され、次に仰角が大きい方向から緑色光が照射され、仰角が最も小さい方向から青色光が照射されるように、各光源の径や高さが調整されている。
【0004】
上記構成の光学系により、はんだ付け後の基板に形成されたはんだフィレット(以下、単に「フィレット」という。)を照明すると、各光源からの色彩光は、いずれもフィレットの表面で鏡面反射し、フィレットの傾斜角度によって異なる色彩の反射光がカメラに入射する。具体的には、フィレットの下部の傾斜が緩やかな部分では、仰角が最も大きい赤色光源からの光に対する反射光がカメラに入射し、フィレットの上部の傾斜が急な部分では、仰角が最も小さい青色光源からの光に対する反射光がカメラに入射する。また、フィレットの中央部では、緑色光源からの光に対する反射光がカメラに入射するようになる。よって、カラー画像のフィレット中に出現した赤、緑、青の色彩によって、それぞれその色彩に対応する面の傾斜角度を認識することができる。
【0005】
カラーハイライト方式の検査装置では、上記の光学系により生成されたカラー画像を2値化して、赤、緑、青の各色彩が現れている領域(以下、これらの領域を「色領域」という。)を抽出し、各色領域の面積や位置などを計測する。そしてこれらの計測値をあらかじめ登録した基準値と比較することにより、フィレットの大きさや傾斜状態の適否を判別している。
【0006】
さらに、カラーハイライト方式の検査装置には、リング状光源に代えて、多数のLEDを同心円状に配列した構成の照明装置を設けたものもある。この種の装置では、光出射面に拡散板を設けることにより、LEDからの光を拡散させて、はんだ面の各部に均一な強度の光が照射されるようにしている(特許文献2参照。)。
【0007】
【特許文献1】特公平6−1173号公報
【特許文献2】特開平11−295047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載の発明では、拡散板によって検査対象のはんだ面全体に均一な照明を施すが、光を拡散させることによって照明光量が低下するため、はんだの傾斜角度を認識するのに必要な強度の正反射光をカメラに入射させるには露光時間を長めにしなければならない。したがって、検査に要する時間を短縮しようとしても、短縮できる時間には限界がある。
【0009】
一方、上記の照明装置に拡散板を導入せずに、各LEDからの光を直接基板に照射すると、各LEDの光像が点在した画像が生成され、はんだの全面の傾斜状態を認識するのは困難になる。
【0010】
この発明は上記の点に着目し、LEDのような指向性の高い点光源を用いた照明装置を拡散板を導入せずに使用しても、表面の傾斜状態の判別を安定して行うことができるようにして、検査の精度を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決する検査方法では、曲面体を検査対象として、カラー画像を生成する撮像装置をその受光面を曲面体に向けて配備するとともに、複数の点光源が配列された光出射面を具備する複数の照明部をそれぞれ撮像装置の視野に対して異なる方向から光を照射するように配置するとともに、各点光源の照明色を照明部毎に異なるものにして照明を行い、この照明下で撮像装置により生成されたカラー画像を用いて曲面体の表面状態を検査する場合に、各照明部の光出射面の前方に各点光源からの光を拡散するための手段を設けずに、各照明部による照明を実行する。そして、撮像により生成されたカラー画像において、各照明部の照明色毎に、その照明色に対応する色彩が現れている画素が複数連続する領域を個別に抽出するステップAと、ステップAで抽出された領域が点光源間の距離に応じた間隔を隔てて分布する範囲全体を当該照明色に対応する色領域として特定するステップBとを実行し、各照明色に対応する色領域の分布状態に基づき曲面体の表面の傾斜状態を判別する。
【0012】
上記の方法では、各点光源からの光を拡散させずに曲面体に直接照射するので、検査対象の曲面体の鏡面反射性が高い場合には、これらの点光源の正反射光像による小さな色領域が点在したカラー画像が生成される可能性が高い。しかし、この方法では、同じ照明色に対応する色領域が点光源間の距離に応じた間隔を隔てて分布している領域を、当該照明色への対応領域として特定するので、点光源からの光が照射される位置からずれ、傾斜角度を表す色彩が明瞭に現れなかった部位についても、傾斜角度を正しく認識することが可能になる。
【0013】
上記方法の好ましい態様では、ステップBで特定された各色領域の間に所定のしきい値以内の幅の間隙があるとき、この間隙を構成する各画素をそれぞれ当該間隙に隣接する2つの色領域のいずれかに含めることにより間隙を消失させた後に、曲面体の表面の傾斜状態を判別する。
【0014】
この態様によれば、傾斜角度が徐々に変化している面の全体を認識して、その形状の適否を判別することができる。
【0015】
さらに好ましい態様では、撮像により生成されたカラー画像を、各色領域にそれぞれその領域に対応する一様な色彩データが設定されたカラー画像に変換し、この変換後のカラー画像を表示する。
【0016】
上記の態様によれば、各色領域がそれぞれ一様な色彩で表されたパターン画像が表示されるので、ユーザは、この表示をもって曲面体の表面状態を容易に把握することが可能になる。また、この変換後のカラー画像と原画像とを照合可能に表示したり、画像とともに検査結果を表示するようにすれば、ユーザは、色領域の特定処理や検査のための処理が適切に行われたかどうかを、容易に確認することができる。
【0017】
上記の検査方法が適用された基板外観検査装置は、はんだ付け後の基板を検査対象として、この基板の上方に受光面を基板面に向けて配備され、カラー画像を生成する撮像装置と、複数の点光源が配列された光出射面を具備する複数の照明部がそれぞれ前記撮像装置の視野に対して異なる方向から光を照射するように配置されるとともに、各点光源の照明色が照明部によって異なるように構成された照明装置と、照明装置による照明下で撮像装置により生成されたカラー画像を用いて基板上のはんだの表面状態を検査する検査実行手段とを具備する。照明装置は、光出射面の前方に各点光源からの光を拡散するための手段が設けられない構成のものである。また検査実行手段は、撮像装置により生成されたカラー画像において、各照明部の照明色毎に、前出のステップAおよびステップBを実行し、各照明色に対応する領域の分布状態に基づき曲面体の表面の傾斜状態を判別する。
【発明の効果】
【0018】
上記の検査方法および基板外観検査装置によれば、LEDのような指向性の高い点光源からの光を拡散させずに検査対象に照射しても、被検査面の表面状態を安定して判別することが可能になり、検査の精度を確保することができる。また照明光量が低下する虞がないため、撮像時間を短縮することが可能になり、効率の良い検査を実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、この実施例の基板外観検査装置の電気構成例を示すブロック図である。
この検査装置は、部品実装基板の製作に係る一連の工程(はんだ印刷工程、部品実装工程、はんだ付け工程)を経た基板を対象に、基板上のはんだフィレット(以下、単に「フィレット」という。)の表面形状の適否を判別するためのもので、カメラ1、照明装置2、Xステージ部3、Yステージ部4、制御処理部5などが設けられる。このほか図1には示していないが、この検査装置には、検査対象の基板を支持するための基板支持テーブルや、基板を搬出入するための搬出入機構なども設けられる。
【0020】
Xステージ部3は、カメラ1および照明装置2を基板支持テーブルの上方で支持し、Yステージ部4は基板支持テーブルを支持する。いずれのステージ部3,4とも、その支持対象を、一軸に沿って移動させることが可能である。また一方のステージ部による移動の方向は、他方のステージ部による移動の方向に直交する関係にある。
【0021】
制御処理装置5は、コンピュータによる制御部50に、画像入力部51、撮像制御部52、照明制御部53、Xステージ駆動部54、Yステージ駆動部55、入力部56、表示部57、通信用インターフェース58などが接続された構成のものである。
【0022】
画像入力部51には、カメラ1から出力されたR,G,Bの各画像信号を受け付けるインターフェース回路や、これらの画像信号をディジタル変換するA/D変換回路などが含まれる。撮像制御部52は、カメラ1の撮像タイミングを制御する。照明制御部53は、照明装置2の各光源(この実施例では複数のLEDを使用する。)の光量や点灯タイミングを制御する。
【0023】
入力部56は、ティーチングの際の設定操作などを行うためのもので、キーボードやマウスなどを含む。表示部57は、検査用の画像や検査結果などを表示するためのもので、液晶パネルなどにより構成される。通信用インターフェース58は、検査結果を外部の装置に送信する目的で使用される。
【0024】
上記構成において、制御部50内のメモリには、基板に割り付けられた撮像対象領域にカメラ1を位置合わせするのに必要なX,Yステージ部3,4の移動量が登録される。またフィレット検査用の情報として、部品種毎に、検査領域の設定データ、後記する画像変換処理の際に使用されるしきい値や基準値、各色領域の構成画素数と照合するための基準値(各色領域の良好な面積を表すもの)などが登録される。これらメモリに登録される検査用情報は、いずれも、ティーチング時に、良品基板の画像を用いるなどしてユーザにより設定されたものである。
【0025】
制御部50は、上記の検査用情報に基づき、Xステージ駆動部54やYステージ駆動部55を介してXステージ部3およびYステージ部4の移動量を調整し、カメラ1の視野を基板の撮像対象領域に位置合わせする。そして、この位置合わせ状態下で照明装置2に照明を行わせながらカメラ1を駆動し、検査用画像を生成する。生成された検査用画像は、画像入力部51を介して制御部50内の画像メモリ(図示せず。)に入力される。制御部50は、これらの検査用画像を、各種検査用情報に基づき処理することによって、フィレットに対する検査を実行する。
【0026】
図2は、上記検査装置の光学系の構成を示す。
図中、Sは検査対象の基板であり、7は基板S上に実装されたチップ部品を、71はこのチップ部品7と基板Sとの間に形成されたフィレットを、それぞれ示す。
カメラ1および照明装置2は、図示しない支持部材により、常にこの図2に示した位置関係を維持するように支持されている。
【0027】
この実施例のカメラ1は、基板Sの上方に、受光面が基板Sの基板面に対向するように光軸11を鉛直方向に合わせた状態にして配置される。
照明装置2は、ドーム型の筐体20の内面に、赤、緑、青の各色彩光を発するLED21R,21G,21Bがそれぞれ複数個配備された構成のものである。筐体20の天頂部分には、上方に突出する筒状の開口部22が形成され、各LED21R,21G,21Bは、それぞれこの開口部22を取り囲むように同心円状に配列されている。これらのうち、赤色光を発するLED21Rの同心円は開口部22に最も近い位置に配置され、青色光を発するLED21Bの同心円は開口部22から最も遠い位置に配置され、これらの同心円の間に、緑色光を発するLED21Gの同心円が配置される。
【0028】
上記の構成によれば、各LED21R,21G,21Bが点灯したとき、筐体20の内面は、LED21Rの同心円による赤色発光領域、LED21Gの同心円による緑色発光領域、LED21Bの同心円による青色発光領域の3つに区分けされる。各発光領域を個別の照明部としてとらえると、これらの照明部は、それぞれ基板Sに対して入射角度が異なる方向から光を照射するように配備されていることになる。
【0029】
上記の照明によれば、フィレット71から光軸11に沿う方向に正反射してカメラ1に入射する光の色彩は、フィレット71上の各部の傾斜角度によって異なるものになる。具体的には、部品の近傍の傾斜が急な部位では青色光に対する正反射光が、基板面に近い傾斜が緩やかな部位では赤色光に対する正反射光が、それぞれカメラ1に入射する光となる。またフィレット71の中間の傾斜状態にある部位では、緑色光に対する正反射光がカメラ1に入射する。したがって、カメラ1により生成された画像中のフィレットには、各色彩光に対応する赤、緑、青の各色領域がフィレットの勾配の方向に沿って並んだ画像が生成される。
【0030】
ただし、この実施例では、照明装置2として、光出射面の前方に拡散板が配備されていないタイプのものを使用するため、LED21R,21G,21Bからの指向性の高い光が直接フィレット71に照射される。このため、各色彩光によりフィレット71の全面を均一に照射するのは困難になり、各光に対応する色彩が十分な面積をもって現れたカラー画像ではなく、LED21R,21G,21Bの配列を反映した輝度ムラが生じた画像、言い換えれば赤、緑、青の高輝度領域が点在し、これらの領域間が暗くなった画像が生成されてしまう。
【0031】
カラーハイライト照明による従来のフィレット検査では、カラー画像中のランドに対応する場所に検査領域(ランドウィンドウ)を設定し、各照明色に対応する色彩毎に、ランドウィンドウ内の画像を2値化して当該色彩を表す画素を抽出し、抽出された画素の総数を予め登録された基準値と照合する。しかし、上記のように正反射光像による高輝度領域が点在した状態になると、2値化により抽出される画素数が減少するため、実際のフィレットの形状が良好であっても、各照明色に対応する色彩を表す画素の数が基準値を下回り、「不良」と誤判別される可能性がある。
一方で、上記の誤判別を防止するために基準値の値を下げると、本当の不良を見逃すおそれがあるから、基準値を変更するのは望ましいことではない。
【0032】
そこでこの実施例では、図3に示すような方法でランドウィンドウ内のカラー画像を処理することにより、従来と同様の検査基準を使用しても安定した検査を実行できるようにしている。
【0033】
図3の(1)は、図2に示したチップ部品7のフィレット71について、画像中の各色領域の良好な分布パターン(各色領域をそれぞれ一様な色彩で表したもの。以下、「色彩分布パターン」という。)を示す。
なお、図中の矢印Fはフィレットの勾配の方向(この実施例では、高い位置から低い位置に向かう方向をいう。)を示す。またこの図には、チップ部品7の片側のフィレット71の色彩分布パターンしか示していないが、他方のフィレットの色彩分布パターンでは、矢印Fに反転する方向に沿って、青、緑、赤の色領域が順に現れる。
【0034】
図3(2)は、図2に示した光学系によりフィレット71を撮像した場合に得られるカラー画像の一部領域(図3(1)の色彩分布パターン中の領域rに対応する。すなわち青色光に対応する傾斜面と緑色光に対応する傾斜面とが含まれる領域である。)に係る拡大画像である。図3(3)および(4)は、同じ領域rについて、以下に述べる処理により変換されたカラー画像を示す。
【0035】
この実施例では、照明装置2の照明色毎に、その色彩を表している画素を2値化により個別に抽出した後、同じ照明色に対応する画素が所定数以上集まっている箇所をそれぞれ高輝度領域として特定する。
【0036】
図3(2)では、便宜上、青,緑の各輝度領域を(1)の色彩分布パターンと同じ網点パターンで示している。これらの網点パターンが示すように、青色光に対応する傾斜面では青色データ(B)の強度が高い高輝度領域が点在し、緑色光に対応する傾斜面では緑色データ(G)の強度が高い高輝度領域が点在する。また図示していないが、赤色光に対応する傾斜面では赤色データ(R)の強度が高い高輝度領域が点在する。
【0037】
各照明色に対応する高輝度領域が特定されると、図3(2)に示すように、各高輝度領域につき重心などの代表点Oを求める。さらにこの図中に点線で示すように、同じ照明色に対応し、互いに隣り合う関係にある3個の代表点Oを結んだ三角領域を設定し、この三角領域内のすべての画素に照明色に基づく一様な色彩を設定する。この結果、図3(2)に示すように、小さな高輝度領域が点在していた範囲のほぼ全域が一様な色彩により統合された状態になる。この実施例では、この統合された領域を、各照明色に対応する色領域として特定する。
【0038】
ただし、この段階では、まだ隣り合う色領域間に所定の間隙があって両者が分断された状態であり(図示例では青色領域と緑色領域との間が分断されているが、緑色領域と赤色領域との間も同様である。)、フィレット全面の勾配の変化を反映した画像であるとは言えない。
【0039】
この分断状態を解消するために、この実施例では、色領域間の間隙をいずれか一方の色領域に含めるようにしている。具体的には、色領域毎に間隙部分との境界を構成する画素の数を計数し、この計数値が大きい方の色領域の画像データを間隙部分の各画素に設定する。この結果、図3(4)に示すように、間隙部分が消失し、2つの色領域(青色領域と緑色領域)が連続した状態になる。
【0040】
上記の間隙部分を消失させる処理は正確なものであるとは言いきれないが、フィレットの表面の傾斜角度は方向Fに沿って徐々に変化するものであり、各照明色に対応する傾斜面の境界が厳密に定められるものでないことを考えれば、各色領域間の間隙が消された画像が表す勾配の変化とフィレットの実際の勾配の変化との違いは許容範囲になると思われる。また、このように各色領域が分断された画像から各色領域が連続した画像に変換し、。変換後の画像を表示すれば、ユーザは違和感を感じることなく、フィレットの表面状態を容易に確認することができる。
【0041】
ただし、間隙部分を消失させる処理は、色領域間の間隙の幅が所定のしきい値以内であるときに限定して行うべきである。処理対象とする間隙部分の幅を制限せずに上記の処理を行うと、連続していない傾斜面まで一連に連なった面として誤認識されてしまうからである。さらに、この場合のしきい値を、LED21Rと21Gとの間隔やLED21Bと21Gとの間隔に基づいて定めておけば、照明装置2の構成以外の要因により生じた間隙が消失するのを防止でき、認識精度を高めることができる。
【0042】
また最初の2値化結果に基づき高輝度領域を特定する場合にも、あらかじめ照明装置2の各LED21R,21G,21Bの大きさから高輝度領域の構成画素数の基準値を求めておき、画像中の輝度の高い領域のうち、構成画素数と上記の基準値との差が許容値以内になるものを高輝度領域として特定するのが望ましい。また、特定された高輝度領域の代表点を3点ずつ組み合わせる処理においても、各LEDの間隔に応じたしきい値を設定し、代表点間の間隔がこのしきい値を超えている場合には、これらの代表点を含む組み合わせを設定しないようにするのが望ましい。
【0043】
この実施例では、各LED21R,21G,21Bからの光を直接基板Sに照射するので、各光を拡散板により拡散させて基板Sに照射する場合に比べると、照明光やフィレットからの正反射光の強度は格段に強くなる。よって、カメラ1の露光時間を短くすることができ、その結果、検査時間を短縮することができる。ただし、露光時間を調整しても、各LED21R,21G,21Bの光像による高輝度領域の明るさが飽和するおそれがある場合には、カメラ1として、対数変換型のカメラのようなダイナミックレンジの広い撮像装置を使用するのが望ましい。
【0044】
つぎに、図4を用いて、1枚の基板に対して実行される検査の流れを説明する。なお、図4中のSTは「ステップ(STEP)」の略である。
まず最初のステップ1において、検査対象の基板が基板支持テーブル上に搬入されると、ステップ2では、X,Yテーブル部3,4の動作を制御して、各カメラ1の視野を登録された撮像対象領域に位置合わせし、撮像を行う。
【0045】
撮像が終了すると、検査対象の一部品に着目し、メモリ内の検査情報に基づき、この部品および近傍のランドを確実に含む範囲に「部品抽出ウィンドウ」と呼ばれるウィンドウを設定する。そして、部品抽出ウィンドウ内のカラー画像から、赤,緑,青の各色彩が現れている箇所をランドとして特定し、この箇所にランドウィンドウを設定する。
ランドウィンドウの大きさや設定数は、あらかじめ検査用情報として登録されており、通常は複数のランドウィンドウが設定される。この後、設定されたランドウィンドウ毎にステップ4〜14の処理が行われるが、この例では、説明を簡単にするため、1部品に対し、ランドウィンドウが1つのみ設定されるものとして説明する。
【0046】
ステップ4では、ランドウィンドウ内のカラー画像を2値化して赤、緑、青の各色彩を表している画素を抽出する。この後は、ステップ5において、3種類の色彩のいずれか1つに着目し、その着目した色彩について、ステップ6〜9を実行する。
【0047】
ステップ6では、着目中の色彩による高輝度領域を特定する。具体的には、着目中の色彩を表す画素が連続している箇所を抽出し、その連続する画素の数と前出のLEDの大きさに応じた基準値との差を求め、この差が許容値以内であれば、抽出された箇所を高輝度領域として特定する。
【0048】
ステップ7では、ステップ6で特定された高輝度領域につき、それぞれ代表点Oの座標を算出する。つぎのステップ8では、隣り合う3つの代表点を組み合わせて三角領域を設定する。ただし、隣り合う代表点であっても、LED間の間隔に基づくしきい値を超える距離を隔てて位置する代表点については、組み合わせから排除する。
【0049】
ステップ9では、各三角領域の構成画素にそれぞれ着目中の色彩に基づく一様な色彩を設定する。たとえば、R,G,Bの各濃度をそれぞれ256階調のデータで表す場合、着目中の色彩が赤であればR=255,G=0,B=0とし、着目中の色彩が緑であればR=0,G=255,B=0とし、着目中の色彩が青であればR=0,G=0,B=255とする。
【0050】
上記のステップ7〜9の処理により、各LED間の距離に応じた間隔を隔てて高輝度領域が分布する範囲全体が着目中の色彩に対応する色領域として特定された状態になる。
【0051】
赤、緑、青の各色彩につきそれぞれ色領域が特定されると、ステップ10が「YES」となってステップ11に進む。このステップ11では、色領域間の間隙の画素にいずれか一方の色領域の色彩を設定する。すなわち赤色領域と緑色領域との間の間隙の画素には赤色または緑色が設定され、青色領域と緑色領域との間の間隙の画素には青色または緑色が設定される。これによりフィレットの形状が良好であれば、色領域間の間隙がなくなり、3色の色領域が連なる範囲をフィレットの形成範囲として認識することができる。
先に説明したように、間隙の画素に設定する色彩は、この間隙を挟んで対向する2つの色領域のうち境界を構成する画素数が多い方の色領域の色彩とする。ただし、これに限らず、たとえば間隙を幅方向で二分し、この分断位置を境に、設定する色彩を分けてもよい。
【0052】
上記ステップ4〜11の処理により各色領域の範囲が確定すると、ステップ12では、処理中のランドウィンドウにつき、色領域の範囲が確定された最終画像およびカメラ1により最初に生成された原画像をメモリに保存する。つぎのST13では、色領域毎に構成画素数を計数する。ステップ14では各計数値をそれぞれ基準値と比較することにより、フィレットの良否を判定する。
【0053】
以下、処理対象画像に含まれるすべての部品に対し、上記と同様に、ステップ3〜14を実行することにより、フィレット検査が実行される。
【0054】
処理対象画像中の部品に対する検査が終了すると、ステップ15が「YES」となる。ここで他に撮像対象領域があれば、ステップ16からステップ2に戻り、その撮像対象領域にカメラ1を合わせ、再度撮像を行った後、この撮像対象領域に含まれる部品に対し、上記と同様の処理を順次実行する。
【0055】
すべての撮像対象領域に対する処理が終了すると、ステップ16が「YES」となってステップ17に進み、一連の検査結果を統合して出力する。この後は、ステップ18において検査の終了した基板を搬出し、しかる後に処理を終了する。
【0056】
なお、ステップ17では、適宜、部品単位もしくはフィレット単位の検査結果をステップ12で保存した画像とともに表示部57に表示することができる。この場合、原画像と最終画像とを並べて表示または切り替えて表示できるようにすれば、ユーザは両画像を見比べながら色領域の特定結果や検査結果に誤りがないかどうかを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】基板外観検査装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】光学系の構成例を示す説明図である。
【図3】フィレットの画像における良好な色彩分布パターン、図2の光学系により生成されたカラー画像の拡大図、およびこのカラー画像に対する色領域の特定処理により変換された画像を対応づけて示す説明図である。
【図4】検査の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
1 カラーカメラ
2 照明装置
11 カメラの光軸
21(R,G,B) LED
50 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面体を検査対象として、カラー画像を生成する撮像装置をその受光面を前記曲面体に向けて配備するとともに、複数の点光源が配列された光出射面を具備する複数の照明部をそれぞれ前記撮像装置の視野に対して異なる方向から光が入射するように配置するとともに、各点光源の照明色を照明部毎に異なるものにして照明を行い、この照明下で撮像装置により生成されたカラー画像を用いて前記曲面体の表面状態を検査する方法において、
各照明部の光出射面の前方に各点光源からの光を拡散するための手段を設けずに、各照明部による照明を実行し、
前記撮像により生成されたカラー画像において、各照明部の照明色毎に、その照明色に対応する色彩が現れている画素が複数連続する領域を個別に抽出するステップAと、ステップAで抽出された領域が前記点光源間の距離に応じた間隔を隔てて分布する範囲全体を当該照明色に対応する色領域として特定するステップBとを実行し、各照明色に対応する色領域の分布状態に基づき前記曲面体の表面の傾斜状態を判別する、ことを特徴とする曲面状態検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載された方法において、
前記ステップBで特定された各色領域の間に所定のしきい値以内の幅の間隙があるとき、この間隙を構成する各画素をそれぞれ当該間隙に隣接する2つの色領域のいずれかに含めることにより前記間隙を消失させた後に、前記曲面体の表面の傾斜状態を判別する、曲面状態検査方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載された方法において、
前記撮像により生成されたカラー画像を、各色領域にそれぞれその領域に対応する一様な色彩データが設定されたカラー画像に変換し、この変換後のカラー画像を表示する、曲面状態検査方法。
【請求項4】
はんだ付け後の基板を検査対象として、この基板の上方に受光面を基板面に向けて配備され、カラー画像を生成する撮像装置と、複数の点光源が配列された光出射面を具備する複数の照明部がそれぞれ前記撮像装置の視野に対して異なる方向から光を入射するように配置されるとともに、各点光源の照明色が照明部によって異なるように構成された照明装置と、前記照明装置による照明下で撮像装置により生成されたカラー画像を用いて前記基板上のはんだの表面状態を検査する検査実行手段とを具備し、
前記照明装置は、各照明部の光出射面の前方に各点光源からの光を拡散するための手段が設けられない構成のものであり、
前記検査実行手段は、前記撮像により生成されたカラー画像において、各照明部の照明色毎に、その照明色に対応する色彩が現れている画素が複数連続する領域を個別に抽出するステップAと、ステップAで抽出された領域が点光源間の距離に応じた間隔を隔てて分布する範囲全体を当該照明色に対応する色領域として特定するステップBとを実行し、各照明色に対応する色領域の分布状態に基づき前記はんだの表面状態を判別する、基板外観検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−31228(P2009−31228A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198083(P2007−198083)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】