説明

有機トランジスター、有機トランジスターの製造方法、電気光学装置および電子機器

【課題】大気中動作に優れており、また電気特性が経時的に劣化し難く、高いキャリア移動度とともに大きなon/off比を有する有機トランジスター、および有機トランジスターの製造方法、かかる有機トランジスターを備え信頼性の高い電子デバイスおよび電子機器を提供することにある。
【解決手段】本適用例の有機トランジスター1Aは、ソース電極20aと、ドレイン電極20bと、ソース電極20aとドレイン電極20bとの間に設けられた有機半導体膜30と、ゲート電極50と、有機半導体膜30とゲート電極50との間に設けられ、ゲート電極50と接する第1のゲート絶縁膜40aと、有機半導体膜30と接する第2のゲート絶縁膜40bとを有するゲート絶縁膜40と、を備え、第2のゲート絶縁膜40bが炭素原子と水素原子よりなる炭化水素化合物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機トランジスター、有機トランジスターの製造方法、電気光学装置および電子機器などに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体的な電気伝導を示す有機材料(有機半導体材料)を使用した有機トランジスターの開発が進められている。この有機トランジスターは、薄型軽量化に適すること、可撓性を有すること、材料コストが安価であることなどの長所を有しており、フレキシブルディスプレイなどのスイッチング素子として期待されている。
このような有機トランジスターにおいて、ゲート絶縁膜の材料として無機材料を用いたものがある(例えば、特許文献1参照)。しかし、有機トランジスターの利点の1つであるフレキシブル性が損なわれるという問題や、ゲート絶縁膜の形成に気相成膜法や高温の加熱処理を用いるためゲート絶縁膜の形成に手間、コスト、時間などを要するという製造方法上の問題もある。また、有機半導体膜形成後にゲート絶縁膜を形成する構造の有機トランジスターにおいては、ゲート絶縁膜形成時に有機半導体膜に変質・劣化を生じさせてしまうおそれがあり無機材料を用いた典型的なプロセスを使用して良好なトランジスター特性を得ることが一般に困難となる。
【0003】
かかる不都合を解消すべく、ゲート絶縁膜の構成材料として、例えば、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂などの有機材料を用いることがある。ところが、これらの樹脂は吸湿性が高く、かかる有機トランジスターを大気中で使用した場合、ゲート絶縁膜が吸湿しゲート絶縁膜中の水分が上昇すると、しきい値電圧(Vth)のシフト、ゲートリーク電流の上昇、絶縁破壊が生じ易くなるというような問題が一般的には発生する。またゲート絶縁膜、もしくはゲート絶縁膜と有機半導体膜の界面にフッ素含有ポリマーを使用した有機トランジスターもある(例えば、特許文献2参照)。典型的なフッ素含有ポリマーは吸湿性が低いため、大気中安定動作する有機トランジスターを作製できるとともに、フッ素が電気陰性度を有しているため、有機半導体膜と接することでホールが形成された際に放出された電子を収容することが可能である。このためホールをキャリアとする有機トランジスターで高いキャリア移動度を得ることが可能であるという利点がある。しかしこれは同時に、off電流値の上昇を招く可能性があり、その場合、大きいon/off比を得ることができなくなり、結果トランジスターとしてのスイッチング性能が低下してしまうことに繋がる。
【0004】
一方、ゲート絶縁膜を積層構造にした有機トランジスターも開発されているが(例えば、特許文献3、特許文献4参照)、有機半導体膜やゲート絶縁膜の濡れ性制御、有機半導体膜とゲート絶縁膜界面の劣化抑制に関するもので、高いキャリア移動度、また大きなon/off比を有し、かつ実用に耐えうる大気中安定動作を確立している有機トランジスターは現時点では発明されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−86805号公報
【特許文献2】特開2006−191115号公報
【特許文献3】特開2007−150246号公報
【特許文献4】特開2008−172028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明のいくつかの態様は、大気中動作に優れており、また電気特性が経時的に劣化し難く、高いキャリア移動度とともに大きなon/off比を有する有機トランジスター、および有機トランジスターの製造方法、かかる有機トランジスターを備え信頼性の高い電気光学装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
〔適用例1〕本適用例の有機トランジスターは、ソース電極と、ドレイン電極と、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられた有機半導体膜と、ゲート電極と、前記有機半導体膜と前記ゲート電極との間に設けられ、前記ゲート電極と接する第1のゲート絶縁膜と、前記有機半導体膜と接する第2のゲート絶縁膜とを有するゲート絶縁膜と、を備え、前記第2のゲート絶縁膜が炭素原子と水素原子よりなる炭化水素化合物を含むことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、フッ素系の材料に比べて極性の低い炭化水素系の材料を第2のゲート絶縁膜に用いることで、第2のゲート絶縁膜と有機半導体膜の間に良好な界面を形成し、すなわち有機半導体膜が導電化する際にキャリアの輸送を妨げる捕獲準位の形成を抑制することができるため、高いキャリア移動度とともに大きなon/off比を有する有機トランジスターが得られる。
【0010】
〔適用例2〕上記適用例の有機トランジスターにおいて、前記第2のゲート絶縁膜は、平面的に前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられているとしてもよい。
この構成によれば、有機半導体膜と第2のゲート絶縁膜との界面において捕獲準位が少ない良好な界面を形成できる。
【0011】
〔適用例3〕上記適用例の有機トランジスターにおいて、前記第2のゲート絶縁膜は、前記有機半導体膜の前記ゲート電極に面する側の表面を少なくとも覆って設けられていることが好ましい。
この構成によれば、上記適用例2に比べて、より広い範囲で捕獲準位が少ない良好な海面を形成できる。
【0012】
〔適用例4〕上記適用例の有機トランジスターにおいて、前記第2のゲート絶縁膜は、前記有機半導体膜の前記ゲート電極に面する側の表面と前記表面に連続する側面とを覆って設けられていることがより好ましい。
この構成によれば、有機半導体膜の上記側面が第2のゲート絶縁膜で覆われていない場合に比べて、上記側面におけるキャリアのトラップを防いで安定したキャリアの移動度を実現できる。
【0013】
〔適用例5〕上記適用例の有機トランジスターにおいて、前記有機トランジスターは、トップゲート構造となっており、前記第1のゲート絶縁膜は、フッ素原子を含有する有機化合物を含むことが好ましい。
これにより、例えば、吸湿性が低く、特性が経時的に劣化し難いトップゲート構造の有機トランジスターが得られる。
【0014】
〔適用例6〕上記適用例の有機トランジスターにおいて、前記有機トランジスターは、ボトムゲート構造となっており、前記第1のゲート絶縁膜は、無機化合物またはフッ素原子を含有する有機化合物を含むことが好ましい。
これにより、例えば、吸湿性が低く、特性が経時的に劣化し難いボトムゲート構造の有機トランジスターが得られる。
【0015】
〔適用例7〕上記適用例の有機トランジスターにおいて、前記フッ素原子を含有する有機化合物は、炭素環の側鎖に均等に結合したフッ素原子を有する炭素環式炭化水素化合物を含むことが好ましい。
これによれば、フッ素原子が炭素環の側鎖に均等に結合して極性が偏らないので、第1のゲート絶縁膜の形成に際して、例えば、液相プロセスを採用する場合に、採用される溶媒の選択範囲が広がる。つまり、有機半導体膜を作り易くなる。
【0016】
〔適用例8〕上記適用例の有機トランジスターにおいて、前記第1のゲート絶縁膜の膜厚は、前記第2のゲート絶縁膜の膜厚より大であることが好ましい。
これにより、第1のゲート絶縁膜でソース電極およびドレイン電極、あるいはゲート電極を確実に絶縁し、動作電圧が低く、特性が経時的に劣化し難い有機トランジスターが得られる。
【0017】
〔適用例9〕上記適用例の有機トランジスターにおいて、前記第2のゲート絶縁膜の膜厚が5nm〜500nmであることが好ましい。
これにより、ゲート電極との間でソース電極およびドレイン電極ならびに有機半導体膜を確実に絶縁し、動作電圧の低い有機トランジスターが得られる。
【0018】
〔適用例10〕上記適用例の有機トランジスターにおいて、前記第2のゲート絶縁膜は、炭素数が30以上の炭化水素化合物からなることが好ましい。
これによれば、少なくとも常温において安定した動作が得られる有機トランジスターを提供できる。
【0019】
〔適用例11〕本適用例の電気光学装置は、基板と、前記基板上に位置する上記適用例の有機トランジスターと、前記有機トランジスターに電気的に接続される画素電極と、前記画素電極に位置する電気光学材料と、を含むことを特徴とする。
これにより、安定した動作と高い信頼性を有する電気光学装置が得られる。
【0020】
〔適用例12〕本適用例の電子機器は、上記適用例の電気光学装置を含むことを特徴とする。
これにより、安定した動作と高い信頼性を有する電子機器が得られる。
【0021】
〔適用例13〕本適用例の有機トランジスターの製造方法は、基板上にソース電極およびドレイン電極を形成する工程と、前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に位置するように有機半導体膜を形成する工程と、前記有機半導体膜上に炭素原子と水素原子よりなる炭化水素化合物を含む第2のゲート絶縁膜を形成する工程と、前記第2のゲート絶縁膜上にフッ素原子を含有する有機化合物を含む第1のゲート絶縁膜を形成する工程と、前記第1のゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、を有することを特徴とする。
かかる製造方法によれば、例えば、高いキャリア移動度、大きなon/off比を有するとともに、特性が経時的に劣化し難いトップゲート構造の有機トランジスターが得られる。
【0022】
〔適用例14〕本適用例の他の有機トランジスターの製造方法は、基板上にゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極を覆うように無機化合物またはフッ素原子を含有する有機化合物を含む第1のゲート絶縁膜を形成する工程と、前記第1のゲート絶縁膜上に炭素原子と水素原子よりなる炭化水素化合物を含む第2のゲート絶縁膜を形成する工程と、前記第2のゲート絶縁膜上にソース電極とドレイン電極とを形成する工程と、前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に位置するように有機半導体膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
かかる製造方法によれば、例えば、高いキャリア移動度、大きなon/off比を有するとともに、特性が経時的に劣化し難いボトムゲート構造の有機トランジスターが得られる。
【0023】
〔適用例15〕上記適用例の有機トランジスターの製造方法において、前記有機半導体膜を形成する工程は、前記有機半導体膜の形成材料を含む液状体を用いた液相プロセスにより行なわれるものであることを特徴とする。
かかる製造方法によれば、所定の領域に上記液状体を塗布して固化することにより、有機半導体膜を形成することができ、蒸着法などに比べて複雑な製造設備を必要としないので、高いコストパフォーマンスで有機半導体膜を形成することができる。
【0024】
〔適用例16〕上記適用例の有機トランジスターの製造方法において、前記ゲート電極を形成する工程は、導電性高分子または金属粒子を水系分散媒に分散してなる電極形成用液状材料を用いた液相プロセスにより行なわれるものであることを特徴とする。
かかる液相プロセスにおいて、例えば、電極形成用材料をインクジェット法により供給することで、寸法精度の高いゲート電極を簡便に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態の有機トランジスターを適用したアクティブマトリクス装置の構成を示すブロック図。
【図2】図1に示すアクティブマトリクス装置が備えるトップゲート構造の有機トランジスターの構成図((a)縦断面図および(b)平面図)。
【図3】図1に示すアクティブマトリクス装置が備えるボトムゲート構造の有機トランジスターの構成図((a)縦断面図および(b)平面図)。
【図4】図2に示す有機トランジスターの製造方法を説明するための図(縦断面図)。
【図5】電気泳動表示装置の実施形態を示す縦断面図。
【図6】本実施形態の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態を示す斜視図。
【図7】本実施形態の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態を示す図。
【図8】各実施例および各比較例で製造した有機トランジスターの構成とその電気特性評価の結果を示す表。
【図9】(a)および(b)は変形例の有機トランジスターの構成を示す概略図(平面図と断面図)。
【図10】(a)および(b)は変形例の有機トランジスターの構成を示す概略図(平面図と断面図)。
【図11】(a)〜(c)は変形例の有機トランジスターの構造を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の有機トランジスター、有機トランジスターの製造方法、電気光学装置および電子機器について、好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下では、本発明の有機トランジスターをアクティブマトリクス装置に適用した場合を一例に説明する。
【0027】
<アクティブマトリクス装置>
図1は、本実施形態の有機トランジスターを適用したアクティブマトリクス装置の構成を示すブロック図、図2は図1に示すアクティブマトリクス装置が備えるトップゲート構造の有機トランジスターの構成図(縦断面図および平面図)、図3は図1に示すアクティブマトリクス装置が備えるボトムゲート構造の有機トランジスターの構成図(縦断面図および平面図)、図4は図2に示す有機トランジスターの製造方法を説明するための図(縦断面図)である。
【0028】
図1に示すアクティブマトリクス装置300は、基板500と、いずれも基板500上に設けられ、互いに交差する複数のデータ線301と、複数の走査線302と、これらのデータ線301と走査線302との各交点付近に設けられた有機トランジスター1および画素電極303を有している。
そして、有機トランジスター1が有するゲート電極50は走査線302に、ソース電極20aはデータ線301に、ドレイン電極20bは画素電極(個別電極)303に、それぞれ接続されている。すなわち、画素電極303を有する画素がデータ線301の延在方向と走査線302の延在方向とにマトリクス状に配置されている。
【0029】
有機トランジスター1について、図2に記載のトップゲート構造の有機トランジスターを例として詳細に説明していくこととする。図2(a)に示すように、本実施形態のトップゲート構造の有機トランジスター1Aは、基板500上に互いに離間して設けられたソース電極20aおよびドレイン電極20bと、ソース電極20aおよびドレイン電極20bに接触して設けられた有機半導体膜30と、有機半導体膜30を覆うように設けられた第2のゲート絶縁膜40bと、ゲート電極50と第2のゲート絶縁膜40bの間に位置する第1のゲート絶縁膜40aと、ゲート電極50および第1のゲート絶縁膜40aを覆うように設けられた保護膜60とを有している。
【0030】
以下、各部の構成について、順次説明する。
基板500は、有機トランジスター1A(アクティブマトリクス装置300)を構成する各層(各部)を支持するものである。
基板500としては、例えば、ガラス基板、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリイミド(PI)などで構成されるプラスチック基板(樹脂基板)、石英基板、シリコン基板、金属基板、ガリウム砒素基板などを用いることができる。
有機トランジスター1Aに可撓性を付与する場合には、基板500には、プラスチック基板、あるいは薄い(比較的膜厚の小さい)金属基板や薄いガラス基板が選択される。
基板500上には、所定の間隔を離間してソース電極20aおよびドレイン電極20bが設けられている。
【0031】
ソース電極20aおよびドレイン電極20bの構成材料としては、例えば、Pd、Pt、Au、W、Ta、Mo、Al、Cr、Ti、Cuまたはこれらを含む合金などの金属材料、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの炭素材料、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)のようなポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾール、ポリシランまたはこれらの誘導体、およびこれらを含む混合物などの導電性高分子材料などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、混合物系の導電性高分子材料としては、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PSS)などが挙げられる。
【0032】
これらの中でも、ソース電極20aおよびドレイン電極20bの構成材料としては、それぞれ、Au、Ag、Cu、Ptまたはこれらを含む合金を主とするものが好ましい。これらのものは、比較的仕事関数が大きいため、有機半導体膜30がp型である場合には、ソース電極20aをこれらの材料で構成することにより、有機半導体膜30への正孔(キャリア)の注入効率を向上させることができる。
なお、ソース電極20aおよびドレイン電極20bの平均厚さは、特に限定されないが、それぞれ、10nm〜1000nm程度であるのが好ましく、50nm〜500nm程度であるのがより好ましい。
【0033】
ソース電極20aとドレイン電極20bとの距離、すなわち、図2(a)および(b)に示すチャネル長Lは、特に限定されないが、0.05μm〜100μm程度であるのが好ましく、0.5μm〜50μm程度であるのがより好ましい。このような範囲にチャネル長Lの値を設定することにより、有機トランジスター1Aの特性の向上(特に、on電流値の上昇)を図ることができる。
また、ソース電極20aおよびドレイン電極20bの長さ、すなわち、図2(b)に示すチャネル幅Wは、特に限定されないが、0.01mm〜50mm程度であるのが好ましく、0.05mm〜1mm程度であるのがより好ましい。このような範囲にチャネル幅Wの値を設定することにより、寄生容量を低減させることができ、有機トランジスター1Aの特性の劣化を防止することができる。また、有機トランジスター1Aの大型化を防止することもできる。言い換えれば、より小型な有機トランジスター1Aを提供できる。
【0034】
有機半導体膜30は、ソース電極20aおよびドレイン電極20bに接触するように設けられている。有機半導体膜30の構成材料としては、例えば、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)(PTV)、ポリ(パラ−フェニレンビニレン)(PPV)、ポリ(2−メトキシ,5−(2’−エチルヘキソキシ)−パラ−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)(PFO)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ビス−N,N’−(4−メトキシフェニル)−ビス−N,N’−フェニル−1,4−フェニレンジアミン)(PFMO)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ベンゾチアジアゾール)(BT)、フルオレン−トリアリールアミン共重合体、トリアリールアミン系ポリマー、フルオレン−ビチオフェン共重合体(F8T2)、ポリアリールアミン(PAA)のような高分子の有機半導体材料、フラーレン、金属フタロシアニンまたはその誘導体、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセンなどのアセン分子材料、クォーターチオフェン(4T)、セキシチオフェン(6T)、オクチチオフェン(8T)、ジヘキシルクォーターチオフェン(DH4T)、ジヘキシルセキシチオフェン(DH6T)などのα−オリゴチオフェン類のような低分子の有機半導体材料などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
これらの中で、低分子の有機半導体材料を主成分とするもの、例えばペンタセンなどの結晶性を有する低分子の有機半導体材料は一般的にキャリア輸送能に優れており、高分子の有機半導体材料を主成分とするもの、例えばP3HTのような材料は、ペンタセンのような低分子材料よりも一般的に溶媒に対する溶解性に優れているため、液相プロセスに適した材料であるといえる。ここで液相プロセスとは、成膜したい材料を溶解もしくは分散させることで液状体とし、この液状体を用いてスピンコート法、ディップ法、あるいは液滴吐出法(インクジェット法)などにより膜を作製する方法である。
また、高分子の有機半導体材料を主材料として構成される有機半導体膜30は、一般的に可撓性に優れており、フレキシブルディスプレイの画素回路やその周辺回路などを構成するスイッチング素子への適用に好適である。
この有機半導体膜30の平均厚さは、特に限定されないが、0.1nm〜500nm程度であるのが好ましく、1nm〜200nm程度であるのがより好ましく、液相プロセスを適用する観点では、10nm〜100nm程度であるのがさらに好ましい。
【0036】
なお、有機半導体膜30は、ソース電極20aとドレイン電極20bとの間の領域(チャネル領域)に選択的に設けられた構成のものであってもよく、ソース電極20aおよびドレイン電極20bのほぼ全体を覆うように設けられた構成のものであってもよい。
【0037】
この有機半導体膜30と接触し、かつ、有機半導体膜30、ソース電極20aおよびドレイン電極20bを覆うように、第2のゲート絶縁膜40bが設けられており、さらに第2のゲート絶縁膜40bに接触し、かつ、第2のゲート絶縁膜40bを覆うように、第1のゲート絶縁膜40aが設けられている。第1のゲート絶縁膜40aと第2のゲート絶縁膜40bとによりゲート絶縁膜40が構成されている。
【0038】
この第1のゲート絶縁膜40aおよび第2のゲート絶縁膜40b(すなわちゲート絶縁膜40)は、ソース電極20aおよびドレイン電極20bに対して、後述するゲート電極50を絶縁するものである。
第1のゲート絶縁膜40aおよび第2のゲート絶縁膜40bの構成材料としては、例えばポリイミド、ポリアミドイミドのようなイミド系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のようなアクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素系樹脂、ポリパラキシリレンのようなパリレン樹脂、ポリビニルアルコールのようなポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルフェノールあるいはノボラック樹脂のようなフェノール系樹脂、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリフェニルシルセスキオキサンなどのシルセスキオキサン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリブテン、テトラテトラコンタンなどのオレフィン系樹脂のような有機系絶縁材料、SiO(シリコンの酸化物)、SiN(シリコンの窒化物)のような無機系絶縁材料などが挙げられる。有機半導体膜30に対して成膜時に余計な例えば熱などのストレスを与え難いという観点では、有機系絶縁材料(有機化合物)のほうが好ましい。
【0039】
本実施形態のトップゲート構造の有機トランジスター1Aにおいては、第1のゲート絶縁膜40aはフッ素原子を有する有機化合物を含んでおり、第2のゲート絶縁膜40bは炭素原子と水素原子よりなる炭化水素化合物を含んでいることを特徴としている。
特に有機半導体膜30に接する第2のゲート絶縁膜40bは、トランジスターとしての動作安定性を確保する観点から、少なくとも常温において安定した固相を示すことが求められ、含まれる上記炭化水素化合物の炭素数は、30以上が好ましい。炭素数を30以上とすることで、融点がおよそ65℃以上となる。また、ゲートリーク電流を効果的に抑制する観点から常温での比抵抗が108Ωcm以上である炭化水素化合物を選択することが望ましい。
【0040】
第1のゲート絶縁膜40aの平均厚さは、特に限定されないが、10nm〜5000nm程度であるのが好ましく、100nm〜2000nm程度であるのがより好ましい。また、炭素原子と水素原子よりなる炭化水素化合物で構成されている第2のゲート絶縁膜40bの平均厚さは5nm〜500nmであるのが最も好ましい。第1のゲート絶縁膜40aおよび第2のゲート絶縁膜40bの平均厚さを前記範囲(すなわち、第2のゲート絶縁膜40bの厚さよりも第1のゲート絶縁膜40aの厚さを厚くする)とすることにより、ソース電極20aおよびドレイン電極20bとゲート電極50とを確実に絶縁しつつ、有機トランジスター1Aの動作電圧を低くすることができる。
【0041】
第1のゲート絶縁膜40a上の所定の位置、すなわち、ソース電極20aとドレイン電極20bとの間の領域に対応する位置には、有機半導体膜30に電界をかけるゲート電極50が設けられている。
このゲート電極50の構成材料としては、例えば、Pd、Pt、Au、W、Ta、Mo、Al、Cr、Ti、Cuまたはこれらを含む合金などの金属材料、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの炭素材料、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)のようなポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾール、ポリシランまたはこれらの誘導体、およびこれらを含む混合物などの導電性高分子材料などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、混合物系の導電性高分子材料としては、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PSS)などが挙げられる。
ゲート電極50の平均厚さは、特に限定されないが、1nm〜1000nm程度であるのが好ましく、1nm〜200nm程度であるのがより好ましい。
【0042】
また、以上のような各膜を覆うようにして、保護膜60が設けられている。この保護膜60は、例えば有機半導体膜30に水分が浸入することで有機トランジスター1Aの特性が劣化するのを防止する機能や、ゲート電極50に異物が接触して、隣接する有機トランジスター1A同士がショートするのを防止する機能を有する。
保護膜60の構成材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルフェニレン、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のようなアクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素系樹脂、ポリパラキシリレンのようなパリレン樹脂、ポリビニルアルコールのようなポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルフェノールあるいはノボラック樹脂のようなフェノール系樹脂、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリフェニルシルセスキオキサンなどのシルセスキオキサン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテン、テトラテトラコンタンなどのオレフィン系樹脂のような有機系絶縁材料、SiO、SiNのような無機系絶縁材料などが挙げられる。
保護膜60の平均厚さは、特に限定されないが、0.05μm〜20μm程度であるのが好ましく、0.1μm〜5μm程度であるのがより好ましい。
なお、保護膜60は、必要に応じて設けるようにすればよく、省略することもできる。
【0043】
<有機トランジスターの動作>
このような有機トランジスター1Aでは、ソース電極20aおよびドレイン電極20bの間に電圧を印加した状態で、有機半導体膜30の第2のゲート絶縁膜40bとの界面付近にキャリア(正孔または電子)が誘起されチャネル(キャリアの流路)が形成されるようにゲート電極50にゲート電圧を印加すると、チャネル領域をキャリアが移動することでソース電極20aおよびドレイン電極20bの間に電流が流れる。
一方、有機半導体膜30の第2のゲート絶縁膜40bとの界面付近にキャリアが誘起されないように(空乏化するように)ゲート電極50にゲート電圧を印加すると、ソース電極20aおよびドレイン電極20bとの間に電圧を印加しても、有機半導体膜30中にほとんどキャリアが存在しないため、微少な電流しか流れない。
【0044】
ここで、第1のゲート絶縁膜40aおよび第2のゲート絶縁膜40bのうち少なくともいずれか一方が、炭素原子と水素原子よりなる炭化水素化合物またはフッ素原子を含有する含フッ素化合物を有することで例えば次のような特徴を有する有機トランジスター1Aが得られる。すなわち、含フッ素化合物をゲート絶縁膜40に用いることで例えば吸湿性が低い化合物であるため、経時的に特性が劣化し難く、また大気中の水分に起因するゲートリーク電流の少ない十分な絶縁性をもつ有機トランジスター1Aを得ることができる。また、炭化水素化合物をゲート絶縁膜40に用いることで例えば大きな極性基を持たない化合物であることからキャリアの移動を妨げる要因となりうる捕獲準位を有機半導体膜30のチャネル部に形成しがたく、すなわち大きなon電流、on/off比を有する有機トランジスター1Aを得ることができるようになる。
【0045】
本実施形態では、ゲート絶縁膜40を第1のゲート絶縁膜40aと、第2のゲート絶縁膜40bとの積層構造にすることで、各々の絶縁膜に各々の機能を付加できるようになる。
すなわち、例えば第1のゲート絶縁膜40aがフッ素を含有する含フッ素化合物を有し、かつ第2のゲート絶縁膜40bが炭化水素化合物を有する有機トランジスター1Aにおいては、第1のゲート絶縁膜40aで吸湿による特性の劣化、特にイオン電流の発生に伴うしきい値電圧(Vth)のシフト(変動)、ゲートリーク電流の上昇、絶縁破壊の発生などを効果的に防止することができ、かつ第2のゲート絶縁膜40bを有機半導体膜30との界面に用いることで捕獲準位が少ない良好な界面を形成できることから、大きなon電流、on/off比を有する有機トランジスター1Aが得られる。
【0046】
さらに、第1のゲート絶縁膜40aを第2のゲート絶縁膜40bより厚くすることで、第1のゲート絶縁膜40aでより確実に絶縁性を確保することができるようになる。
また、第2のゲート絶縁膜40bの平均厚さを5nm〜500nmの範囲にすることで、低いゲート電圧でもチャネル部に十分なキャリアを発生させることができ、またチャネル部の導電化を確実に防止することができるようになる。よって大きなon電流、on/off比を有する有機トランジスター1Aが得られるようになる。つまりこれは、有機トランジスター1Aの動作電圧を低減できることを表している。ちなみに第2のゲート絶縁膜40bの平均厚さが、この範囲より小さい場合、第2のゲート絶縁膜40bを確実に形成することが困難となる。また、この範囲より大きい場合、第2のゲート絶縁膜40bの厚さが厚くなりすぎることで、有機半導体膜30にチャネルを形成するあるいはチャネル部の導電化を防止するにあたって、より大きなゲート電圧が必要となる。つまり有機トランジスター1Aの動作電圧が大きくなってしまうことが考えられる。
【0047】
<アクティブマトリクス装置の製造方法>
次に、アクティブマトリクス装置300の製造方法について説明する。なお、以下では、有機トランジスター1Aの製造方法を中心に説明する。
[1]ソース電極およびドレイン電極形成工程(図4(a)参照)
まず、基板500を用意し、基板500上に、ソース電極20aおよびドレイン電極20bを所定距離離間して形成する。
これらの電極の形成方法としては、基板500上にまず金属膜(金属層)を形成する。金属膜(金属層)は、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着法、スパッタリング(低温スパッタリング)、イオンプレーティングなどの乾式メッキ法、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキなどの湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合などにより形成することができる。
この金属膜上に、レジスト材料を塗布した後に硬化させ、ソース電極20aおよびドレイン電極20bの形状に対応する形状のレジスト層を形成する。このレジスト層をマスクとして用いて、金属膜の不要部分を除去する。この金属膜の除去には、例えば、プラズマエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチングなどの物理的エッチング法、ウェットエッチングなどの化学的エッチング法などのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
その後、レジスト層を除去することにより、ソース電極20aおよびドレイン電極20bが得られる。
【0048】
なお、ソース電極20aおよびドレイン電極20bは、例えば、導電性粒子を含む導電性材料を基板500上に供給して液状被膜を形成した後、必要に応じて、この液状被膜に対して後処理(例えば加熱、真空乾燥、赤外線の照射、超音波の付与など)を施すことにより形成することもできる。
なお、この導電性材料を供給する方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法、マイクロコンタクトプリンティング法などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、このとき、データ線301(図示省略)および画素電極303(図示省略)も形成する。
【0049】
[2]有機半導体膜形成工程(図4(b)参照)
次に、ソース電極20aおよびドレイン電極20bに接触するように、有機半導体膜30を形成する。
有機半導体膜30は、例えば、有機半導体材料またはその前駆体を含む溶液を、基板500上の、ソース電極20aとドレイン電極20bとの間の領域を含む所定の領域に供給して液状被膜を形成した後、必要に応じて、この液状被膜に対して後処理(例えば加熱、真空乾燥、赤外線の照射、超音波の付与など)を施すことにより形成することができる。
なお、この溶液を供給する方法には、前記工程[1]で挙げた導電性材料を供給する方法を用いることができる。
【0050】
[3]第2のゲート絶縁膜形成工程(図4(c)参照)
次に、ソース電極20a、ドレイン電極20bおよび有機半導体膜30を覆うように、第2のゲート絶縁膜40bを形成する。
第2のゲート絶縁膜40bは、例えばプラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)や真空蒸着法のような気相プロセスにより形成することができる。また、例えば第2のゲート絶縁膜40bに用いる絶縁性高分子を溶媒に溶解した溶液を、ソース電極20a、ドレイン電極20bおよび有機半導体膜30を覆うように基板500上に供給した後、脱溶媒する方法(液相プロセス)によっても形成することができる。気相プロセスでは、成膜温度が100℃程度になるのに比べ、液相プロセスでは乾燥温度が溶媒の種類にも依存するが、60℃程度で行うことが可能であるため、液相プロセスを用いることにより、有機半導体膜30に不要な熱が加わるのを防止して、有機半導体膜30の特性、ひいては、有機トランジスター1Aの特性の低下を好適に防止することができる。
【0051】
溶液の調製に用いる溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリンなどのアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)などのエーテル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ギ酸エチルなどのエステル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドンなどの芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)などのアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化合物系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホランなどの硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリルなどのニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、あるいはこれらの混合溶媒などが挙げられるが、この場合、溶液の調製に用いる溶媒には、有機半導体膜30に溶解や膨潤を生じさせないものが選択されることが好適である。
また、この溶液を供給する方法には、前記工程[1]で挙げた導電性材料を供給する方法を用いることができる。
【0052】
[4]第1のゲート絶縁膜形成工程(図4(d)参照)
次に、第2のゲート絶縁膜40bを覆うように第1のゲート絶縁膜40aを形成する。
第1のゲート絶縁膜40aは、前記第2のゲート絶縁膜40bと同様に、気相プロセスもしくは液相プロセスにより形成することができる。
液相プロセスを用いる際の溶液の調製に用いる溶媒には、第2のゲート絶縁膜40bに溶解や膨潤を生じさせないものが選択されることが好適である。
【0053】
[5]ゲート電極形成工程(図4(e)参照)
次に、第1のゲート絶縁膜40a上に、ソース電極20aとドレイン電極20bとの間の領域に対応するように、ゲート電極50を形成する。
ゲート電極50は、前記ソース電極20aおよびドレイン電極20bと同様にして形成することができる。中でも、ゲート電極50は、電極形成用材料(導電性材料)として、例えば、PEDOT/PSS(導電性高分子)の分散液や、銀コロイド、銅コロイドのような金属粒子を含む分散液などを用いた液相プロセスにより形成するのが好適である。
かかる液相プロセスにおいて、例えば、電極形成用材料を第1のゲート絶縁膜40a上にインクジェット法により供給することで、寸法精度の高いゲート電極50を簡便に形成することができる。
【0054】
ここで、これらの電極形成用材料は、水系分散媒を用いて調製されるが、水系分散媒中には、不純物または金属粒子から溶出するなどして各種イオンが溶存することが多い。ところが、例えば第1のゲート絶縁膜40aを、前述したような耐湿性の高い(吸湿性の低い)絶縁性高分子を主材料として構成することにより、各種イオンが第1のゲート絶縁膜40aに拡散するのを防止することができ、第2のゲート絶縁膜40bと有機半導体膜30とで形成された良好な界面を維持することができる。つまり、第1のゲート絶縁膜40aにイオンが拡散することが原因となって生じる不都合(例えば、イオン電流の発生、絶縁破壊など)が防止されることから、良好な界面が形成されることで得られる有機トランジスター1Aの良好な特性を長期に亘って維持することができる。
また、このとき、走査線302(図示省略)を形成する。
なお、本実施形態では、走査線302は、ゲート電極50とは別途形成されるが、隣接する有機トランジスター1Aのゲート電極50を連続して形成することにより走査線302としてもよい。
【0055】
[6]保護膜形成工程(図4(f)参照)
次に、第1のゲート絶縁膜40a上に、ゲート電極50を覆うように保護膜60を形成する。
保護膜60は、前記第1のゲート絶縁膜40a、第2のゲート絶縁膜40bと同様にして形成することができる。
【0056】
<電気光学装置>
次に、本実施形態の電気光学装置の一例として、前述したようなアクティブマトリクス装置が組み込まれた電気泳動表示装置の一形態を説明する。
図5は、電気泳動表示装置の実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図5中上側を「上」、下側を「下」として説明する。
【0057】
図5に示す電気泳動表示装置200は、前述したアクティブマトリクス装置300と、このアクティブマトリクス装置300上に設けられた電気泳動表示部400とで構成されている。
この電気泳動表示部400は、透明電極(共通電極)403を備える透明基板404と、バインダー材405により透明電極403に固定されたマイクロカプセル402とで構成されている。
そして、マイクロカプセル402が画素電極303に接触するようにして、アクティブマトリクス装置300と電気泳動表示部400とが接合されている。
各マイクロカプセル402内には、それぞれ、特性の異なる複数種の電気泳動粒子、本実施形態では、電荷および色(色相)の異なる2種の電気泳動粒子421、422を含む電気泳動分散液420が封入されている。
【0058】
このような電気泳動表示装置200では、1本あるいは複数本の走査線302に選択信号(選択電圧)を供給すると、この選択信号(選択電圧)が供給された走査線302に電気的に接続されている有機トランジスター1がONとなる。
これにより、かかる有機トランジスター1に電気的に接続されているデータ線301と画素電極303とは、実質的に導通する。このとき、データ線301に所望のデータ(電圧)を供給した状態であれば、このデータ(電圧)は画素電極303に供給される。
これにより、画素電極303と透明電極403との間に電界が生じ、この電界の方向、強さ、電気泳動粒子421、422の特性などに応じて、電気泳動粒子421、422は、いずれかの電極に向かって電気泳動する。
【0059】
一方、この状態から、走査線302への選択信号(選択電圧)の供給を停止すると、有機トランジスター1はOFFとなり、かかる有機トランジスター1に電気的に接続されているデータ線301と画素電極303とは非導通状態となる。
したがって、走査線302への選択信号の供給および停止、あるいは、データ線301へのデータの供給および停止を適宜組み合わせて行うことにより、電気泳動表示装置200の表示面側(透明基板404側)に、所望の画像(情報)を表示させることができる。
特に、本実施形態の電気泳動表示装置200では、電気泳動粒子421、422の色を異ならせていることにより、多階調の画像を表示することが可能となっている。
【0060】
また、本実施形態の電気泳動表示装置200は、アクティブマトリクス装置300を有することにより、特定の走査線302に接続された有機トランジスター1を選択的にON/OFFすることができるので、クロストークの問題が生じにくく、また、回路動作の高速化が可能であることから、高い品質の画像(情報)を得ることができる。
また、本実施形態の電気泳動表示装置200は、低い駆動電圧で作動するため、省電力化が可能である。
なお、前述したような電気泳動表示装置200は、有機トランジスター1に電気的に接続されている画素電極303上に、電気光学材料としてマイクロカプセルが配置された電気光学装置であってもよいし、図示しないが、複数の収容部を有し、各複数の収容部に電気泳動粒子を含む電気泳動分散液が充填された隔壁型の電気光学装置であってもよい。また、このような電気泳動表示装置200への適用に限定されるものではなく、例えば、電気光学装置として有機エレクトロルミネッセンス装置などに適用することもできる。その場合、電気光学材料としては正孔注入層、正孔輸送層、有機発光材料、電子輸送層、電子注入層といった材料のうち適切なものが、画素電極303上に配置される。
【0061】
<電子機器>
このような電気泳動表示装置200は、各種電子機器に組み込むことができる。以下、電気泳動表示装置200を備える本実施形態の電子機器の実施形態について説明する。
<<電子ペーパー>>
まず、上記実施形態の電気泳動表示装置200を電子機器としての電子ペーパーに適用した場合の実施形態について説明する。
図6は、本実施形態の電子機器としての電子ペーパーを示す斜視図である。
この図に示す電子ペーパー600は、紙と同様の質感および柔軟性を有するリライタブルシートで構成される本体601と、表示ユニット602とを備えている。
このような電子ペーパー600では、表示ユニット602が、前述したような電気泳動表示装置200で構成されている。
【0062】
<<ディスプレイ>>
次に、上記電子ペーパーをディスプレイに適用した場合の実施形態について説明する。
図7は、電子ペーパーをディスプレイに適用した場合の実施形態を示す図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。
この図に示すディスプレイ800は、本体部801と、この本体部801に対して着脱自在に設けられた上記実施形態の電子ペーパー600とを備えている。
本体部801は、その側部801b(図7(a)中、右側)に電子ペーパー600を挿入可能な挿入口805が形成され、また、内部に二組の搬送ローラー対802a、802bが設けられている。電子ペーパー600を、挿入口805を介して本体部801内に挿入すると、電子ペーパー600は、搬送ローラー対802a、802bにより挟持された状態で本体部801に設置される。
【0063】
また、本体部801の表示面801a側(図7(b)中、紙面手前側)には、矩形状の孔部803が形成され、この孔部803には、透明ガラス板804が嵌め込まれている。これにより、本体部801の外部から、本体部801に設置された状態の電子ペーパー600を視認することができる。すなわち、このディスプレイ800では、本体部801に設置された状態の電子ペーパー600を、透明ガラス板804において視認させることで表示面を構成している。
また、電子ペーパー600の挿入方向先端部(図7(a)中、左側)には、端子部806が設けられており、本体部801の内部には、電子ペーパー600を本体部801に設置した状態で端子部806が接続されるソケット807が設けられている。このソケット807には、コントローラー808と操作部809とが電気的に接続されている。
このようなディスプレイ800では、電子ペーパー600は、本体部801に着脱自在に設置されており、本体部801から取り外した状態で携帯して使用することもできる。
また、このようなディスプレイ800では、電子ペーパー600が、前述したような電気泳動表示装置200で構成されている。
【0064】
なお、本発明にかかる電子機器は、以上のようなものへの適用に限定されず、例えば、テレビ、ビューファインダー型、モニター直視型のビデオテープレコーダー、モニター直視型のビデオディスクレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、電子新聞、ワードプロセッサー、パーソナルコンピューター、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器などを挙げることができ、これらの各種電子機器の表示部に、電気泳動表示装置200を適用することが可能である。
【0065】
以上、有機トランジスター1Aおよびその製造方法につき、上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。図3は図1に示すアクティブマトリクス装置が備えるボトムゲート構造の有機トランジスターの構成図(縦断面図および平面図)である。なお、上記有機トランジスター1Aと同じ構成の部分には、同じ符号を付して詳細の説明は省略する。
上記実施形態では、有機トランジスター1がトップゲート構造である有機トランジスター1Aである場合を説明したが、有機トランジスター1は、図3に示すようなゲート電極50がソース電極20aおよびドレイン電極20bより基板500側に位置するボトムゲート構造の有機トランジスター1Bであってもよい。このボトムゲート構造では、基板500上にゲート電極50が形成され、ゲート電極50上に第1のゲート絶縁膜40aが形成され、第1のゲート絶縁膜40a上に炭素原子と水素原子とからなる炭化水素化合物を含む第2のゲート絶縁膜40bが形成され、第2のゲート絶縁膜40b上にソース電極20aとドレイン電極20bとが離間して形成され、ソース電極20aとドレイン電極20bとの間の、ゲート電極50と重なる位置に有機半導体膜30が形成され、有機半導体膜30を覆うように保護膜60が形成されている。
有機半導体膜30は、ソース電極20aやドレイン電極20bが形成された第2のゲート絶縁膜40b上に設けられるので、第1のゲート絶縁膜40aの形成に伴う熱などの影響は受けない。したがって、第1のゲート絶縁膜40aは、前述したフッ素原子を含む有機化合物に加えて、SiOやSiNなどの無機絶縁材料(無機化合物)を用いて形成してもよい。
より具体的な有機トランジスター1の実施例と比較例およびその電気特性の評価結果について、以下に説明する。
【0066】
<有機トランジスターの製造と電気特性>
以下図8の表1に示すようにして、実施例1〜4および比較例1〜5の有機トランジスターを、それぞれ、200個ずつ製造した。図8は、各実施例および各比較例で製造した有機トランジスターの構成とその電気特性評価の結果を示す表である。
【0067】
(実施例1)
まず、ガラス基板(日本電気硝子株式会社製、「OA−10」)を用意し、アセトンで洗浄後、さらに純水を用いて洗浄した後に乾燥した。
次に、ガラス基板上に蒸着法により金の膜を形成した後、フォトリソグラフィー法によりレジスト層を形成し、このレジスト層をマスクとして金の薄膜をエッチングした。これにより、平均厚さ100nm、チャネル長(L)10μm/チャネル幅(W)1mmのソース電極およびドレイン電極を得た。
【0068】
次に、ソース電極およびドレイン電極を形成したガラス基板上に、1wt%となるように調製したポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,4−ジイル)(P3HT)のトルエン溶液を、インクジェット法により塗布した後、100℃×10分間で乾燥した。これにより、平均厚さ50nmの有機半導体膜を得た。
【0069】
次に、有機半導体膜、ソース電極およびドレイン電極を覆うように、テトラテトラコンタン(C44H90)の膜を蒸着法により形成することで、平均厚さ50nmの第2のゲート絶縁膜を得た。なお、表1中でテトラテトラコンタンを用いた場合を「TTC」と略して示す。
【0070】
次に、この第2のゲート絶縁膜を覆うように、『サイトップ(登録商標)』(旭硝子製、フッ素系ポリマー)をスピンコート法により塗布した後、80℃×1時間で乾燥した。これにより、平均厚さ500nmの第1のゲート絶縁膜を得た。
【0071】
次に、第1のゲート絶縁膜上のソース電極とドレイン電極との間に対応する領域に、Ag粒子の水分散液を、インクジェット法により塗布した後、80℃×10分間で乾燥した。これにより、平均厚さ100nm、平均幅30μmのゲート電極を得た。なお、表1中でゲート電極の形成に、Ag粒子の水分散液を用いた場合を「Ag−IJ(InkJet)」と略して示す。
【0072】
(実施例2)
第2のゲート絶縁膜を形成する際に、テトラテトラコンタンに代えて、ポリ−1−ブテンを用いた以外は、前記実施例1と同様にして有機トランジスターを製造した。なお、表1中でポリ−1−ブテンを用いた場合を「P1B」と略して示す。
【0073】
(実施例3)
第1のゲート絶縁膜を形成する際に、サイトップ(登録商標)に代えて、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして有機トランジスターを製造した。
【0074】
(実施例4)
第1のゲート絶縁膜を形成する際に、サイトップ(登録商標)に代えて、化合物Aを用いた以外は、前記実施例1と同様にして有機トランジスターを製造した。なお、化合物Aの製造方法は以下の通りである。
【0075】
〔化合物Aの製造方法〕
ジフェニルエーテル6.8g、塩化アルミニウム26.8gおよび乾燥ジクロロエタン60mlを、滴下ロートおよび塩化カルシウム(CaCl2)乾燥管を備えた250ml容の三つ口フラスコに仕込んだ。2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾクロライド18.5gおよび乾燥ジクロロエタン15mlよりなる溶液を、攪拌しながらゆっくりフラスコ中に滴下した。滴下終了後、反応混合物を室温で一晩攪拌した。少量の水を、反応混合物に非常にゆっくり加え、15分間攪拌し続けた。ついで、反応混合物を250mlの水中に注加し、ジクロロメタンで抽出した。有機層を集めて、水洗し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、蒸発させた。活性炭処理しメタノールからの再結晶により、4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル(以下、「BPDE」という)の白色結晶を生成した(収率61.2%)。
一方、トルエンから再結晶により精製された2,2−ビス(4−ビドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−へキサフルオロプロパン1.2g、重質炭酸カリウム1.48g、ジメチルアセトアミド13mlおよびトルエン10mlを、ディーンスタークトラップ、コンデンサー、マグネティック撹拌機および窒素供給管を備えた100ml容の三つ口丸底フラスコに仕込んだ。この混合物を160℃に加熱し、2時間還流に供し、ついでトルエンを留去した。先ほど合成したBPDE2.0gをこの混合物に添加し、80℃で20時間重合反応を行なった。冷却後、この溶液を急速撹拌下に1% 酢酸を含有する水中に注加した。析出した重合体を濾過により捕集し、水洗した後、乾燥し、化合物Aを得た(収率91.0%)。
このようにして得られた化合物Aは、フッ素原子が炭素環の側鎖に均等に結合した低極性のフッ素系有機高分子化合物(炭素環式炭化水素化合物)であって、特に第1のゲート絶縁膜40aを液相プロセスを用いて形成する場合、化合物Aを溶解または分散させる溶媒を選択する範囲が広がるという特徴を有している。これにより、インクジェット法などの液相プロセスに好適な第1のゲート絶縁膜40aの形成材料とすることができる。
【0076】
(比較例1)
第2のゲート絶縁膜を形成しなかったこと以外は、前記実施例1と同様にして有機トランジスターを製造した。
【0077】
(比較例2)
第2のゲート絶縁膜を形成しなかったこと以外は、前記実施例3と同様にして有機トランジスターを製造した。
【0078】
(比較例3)
第1のゲート絶縁膜をポリ−1−ブテンで形成し、第2のゲート絶縁膜を形成しなかったこと以外は、前記実施例1と同様にして有機トランジスターを製造した。
【0079】
(比較例4)
第1のゲート絶縁膜を化合物Aで形成し、第2のゲート絶縁膜を形成しなかったこと以外は、前記実施例1と同様にして有機トランジスターを製造した。
【0080】
(比較例5)
第1のゲート絶縁膜をPMMAで形成し、第2のゲート絶縁膜を化合物Aで形成したこと以外は、前記実施例1と同様にして有機トランジスターを製造した。
【0081】
図8の表1は各実施例および各比較例で製造した有機トランジスターの電気特性評価の結果を示すものである。
まず、電気特性評価の方法として、それぞれ、窒素(N2)中または大気(Air)中(25℃、60%RH)において伝達特性を測定した。
そして、得られた結果から、それぞれの雰囲気での移動度、オン電流とオフ電流との比率であるオン/オフ比(on−off比)、しきい値電圧(Vth)を算出した。
なお、表1には、移動度、on−off比、および、窒素中でのVthと大気中でのVthとの差(ΔVth=Vth(Air)−Vth(N2))とを示した。
さらに、表1中には、大気中(25℃、60%RH)において絶縁破壊試験を5回以上行い、その最低値をVbd(絶縁破壊電圧)として示した。
また、表1中の各数値は、いずれも、200個の有機トランジスターで得られたデータの平均値である。
表1に示すように、いずれの有機トランジスターも、窒素中に比べて大気中では移動度が低下する傾向を示した。しかしながら、各実施例1〜4の有機トランジスターは、いずれも、その移動度の低下が、対応する比較例1〜5の有機トランジスターの移動度の低下に比較して小さかった。
また各実施例1〜4の有機トランジスターの移動度の方が、対応する比較例1〜5の有機トランジスターの移動度と比べて大きいことも明らかとなった。
同様の傾向がon−off比についても認められ、いずれの実施例も比較例と比べて大きなon−off比が得られた。
また、各実施例1〜4の有機トランジスターは、いずれも、そのΔVthが比較例1〜5の有機トランジスターのΔVthに対して小さいことも明らかとなった。
さらに、大気中での絶縁破壊電圧は、各実施例1〜4の有機トランジスターの方が、全体的に各比較例1〜5の有機トランジスターより高くなる傾向を示した。すなわち、高い信頼性を有する有機トランジスターが得られた。
【0082】
上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0083】
(変形例1)上記実施形態における有機トランジスター1Aの構造は、これに限定されない。図9(a)および(b)、図10(a)および(b)は変形例の有機トランジスターの構成を示す概略図(平面図と断面図)、図11(a)〜(c)は変形例の有機トランジスターの構造を示す概略断面図である。なお、有機トランジスター1Aと同じ構成の部分には同じ符号を付して説明する。
【0084】
例えば、液相プロセスを用いて有機半導体膜30および第2のゲート絶縁膜40bを形成した場合には、図2(b)に示したように必ずしも平面的な外形が直線で構成される四角形にならず、図9(a)に示す変形例の有機トランジスター1Cのように、有機半導体膜30の平面的な外形が凹凸部を含むものであってもよい。また、ソース電極20aやドレイン電極20bを覆うように塗布された有機半導体膜30の形成材料を含む液状体を固化すると、図9(b)に示すように、形成された有機半導体膜30の断面形状は、塗布された上記液状体の断面形状が反映され、その表面が円弧を含んだものとなる。したがって、有機半導体膜30が形成された後に、同じく液相プロセス、例えばスピンコート法を用いて第2のゲート絶縁膜40bの形成材料を含む液状体を塗布すれば、基板500上において有機半導体膜30、ソース電極20a、ドレイン電極20bを確実に被覆することができる。
【0085】
また、液相プロセスを用いた有機半導体膜30の形成範囲は、図9(a)に示したように、平面的にチャネル長(L)を置いて対向配置されたソース電極20aとドレイン電極20bの幅に亘る必要はない。例えば、図10(a)および(b)に示す変形例の有機トランジスター1Dのように、ソース電極20aとドレイン電極20bとの間に有機半導体膜30の形成材料を含む液状体をインクジェット法で液滴として吐出し、着弾後に平面視で略円形となるように上記液状体を濡れ広げ、固化する。そして、これを覆うように、同じくインクジェット法で第2のゲート絶縁膜40bの形成材料を含む液状体を液滴として有機半導体膜30上に吐出して濡れ広げ、固化する。このようにすれば、着弾後の上記液状体の径を制御することにより、チャネル幅(W)の長さを自在に制御することができる。
【0086】
また、有機半導体膜30や第2のゲート絶縁膜40bを液相プロセスを用いて形成することに限らず、有機半導体膜30と第2のゲート絶縁膜40bとの界面の形成については、図11(a)〜(c)に示した変形例が考えられる。
【0087】
例えば、図11(a)に示すように、変形例の有機トランジスター1Eは、ソース電極20aとドレイン電極20bとに跨るように設けられた有機半導体膜30と、有機半導体膜30のゲート電極50側の表面30aに接して設けられ、例えばソース電極20aとドレイン電極20bとの間隔よりも狭くゲート電極50とほぼ同じ幅を有する第2のゲート絶縁膜40bと、これらのソース電極20a、ドレイン電極20b、有機半導体膜30、第2のゲート絶縁膜40bを覆う第1のゲート絶縁膜40aとを有する。
前述したようにキャリア(正孔または電子)は、有機半導体膜30のゲート電極50側の表面30aの付近を移動してゆく。したがって、該表面30aの少なくとも一部、好ましくはゲート電極50の幅と同程度の幅で接するように第2のゲート絶縁膜40bを設ければ、キャリアの移動を妨げる捕獲準位の形成を抑制してキャリアが移動し易くなる。
【0088】
また、上記捕獲準位の形成を抑制して、キャリアの高い移動度を実現する観点では、図11(b)に示す変形例の有機トランジスター1Fのように、有機半導体膜30のゲート電極50側の表面30aをすべて覆うように第2のゲート絶縁膜40bを形成することが好ましい。これによれば、上記変形例の有機トランジスター1Eに比べて高いキャリアの移動度を実現できる。
さらには、図11(c)に示す変形例の有機トランジスター1Gのように、ソース電極20aとドレイン電極20bとの間に形成された有機半導体膜30が、ゲート電極50側の表面30aに連続する側面30bを有する場合、該側面30bを含めて有機半導体膜30を覆うように第2のゲート絶縁膜40bを形成することがより好ましい。
これによれば、有機半導体膜30においてキャリアが移動すると考えられる側の表面をすべて第2のゲート絶縁膜40bで覆うので、より確実にキャリアの高い移動度を実現できる。
【0089】
なお、以上の図11(a)〜(c)に示した変形例は、トップゲート構造に限らず、ボトムゲート構造の有機トランジスターにも適用可能である。
【符号の説明】
【0090】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G…有機トランジスター、20a…ソース電極、20b…ドレイン電極、30…有機半導体膜、30a…有機半導体膜の表面、30b…有機半導体膜の側面、40…ゲート絶縁膜、40a…第1のゲート絶縁膜、40b…第2のゲート絶縁膜、50…ゲート電極、60…保護膜、200…電気光学装置としての電気泳動表示装置、300…アクティブマトリクス装置、301…データ線、302…走査線、303…画素電極、400…電気泳動表示部、402…マイクロカプセル、420…電気泳動分散液、421,422…電気泳動粒子、403…透明電極、404…透明基板、405…バインダー材、500…基板、600…電子機器としての電子ペーパー、601…本体、602…表示ユニット、800…電子機器としてのディスプレイ、801…本体部、802a,802b…搬送ローラー対、803…孔部、804…透明ガラス板、805…挿入口、806…端子部、807…ソケット、808…コントローラー、809…操作部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソース電極と、
ドレイン電極と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられた有機半導体膜と、
ゲート電極と、
前記有機半導体膜と前記ゲート電極との間に設けられ、前記ゲート電極と接する第1のゲート絶縁膜と、前記有機半導体膜と接する第2のゲート絶縁膜とを有するゲート絶縁膜と、を備え、
前記第2のゲート絶縁膜が炭素原子と水素原子よりなる炭化水素化合物を含むことを特徴とする有機トランジスター。
【請求項2】
請求項1に記載の有機トランジスターにおいて、
前記第2のゲート絶縁膜は、平面的に前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられていることを特徴とする有機トランジスター。
【請求項3】
請求項1または2に記載の有機トランジスターにおいて、
前記第2のゲート絶縁膜は、前記有機半導体膜の前記ゲート電極に面する側の表面を少なくとも覆って設けられていることを特徴とする有機トランジスター。
【請求項4】
請求項3に記載の有機トランジスターにおいて、
前記第2のゲート絶縁膜は、前記有機半導体膜の前記ゲート電極に面する側の表面と前記表面に連続する側面とを覆って設けられていることを特徴とする有機トランジスター。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の有機トランジスターにおいて、
前記有機トランジスターは、トップゲート構造となっており、
前記第1のゲート絶縁膜は、フッ素原子を含有する有機化合物を含むことを特徴とする有機トランジスター。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の有機トランジスターにおいて、
前記有機トランジスターは、ボトムゲート構造となっており、
前記第1のゲート絶縁膜は、無機化合物またはフッ素原子を含有する有機化合物を含むことを特徴とする有機トランジスター。
【請求項7】
請求項5または6に記載の有機トランジスターにおいて、
前記フッ素原子を含有する有機化合物は、炭素環の側鎖に均等に結合したフッ素原子を有する炭素環式炭化水素化合物を含むことを特徴とする有機トランジスター。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の有機トランジスターにおいて、
前記第1のゲート絶縁膜の膜厚は、前記第2のゲート絶縁膜の膜厚より大であることを特徴とする有機トランジスター。
【請求項9】
請求項8に記載の有機トランジスターにおいて、
前記第2のゲート絶縁膜の膜厚が5nm〜500nmであることを特徴とする有機トランジスター。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の有機トランジスターにおいて、
前記第2のゲート絶縁膜は、炭素数が30以上の炭化水素化合物からなることを特徴とする有機トランジスター。
【請求項11】
基板と、
前記基板上に位置する請求項1乃至10のいずれか一項に記載の有機トランジスターと、
前記有機トランジスターに電気的に接続される画素電極と、
前記画素電極に位置する電気光学材料と、を含むことを特徴とする電気光学装置。
【請求項12】
請求項11に記載の電気光学装置を含むことを特徴とする電子機器。
【請求項13】
基板上にソース電極およびドレイン電極を形成する工程と、
前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に位置するように有機半導体膜を形成する工程と、
前記有機半導体膜上に炭素原子と水素原子よりなる炭化水素化合物を含む第2のゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記第2のゲート絶縁膜上にフッ素原子を含有する有機化合物を含む第1のゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記第1のゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、
を有することを特徴とする有機トランジスターの製造方法。
【請求項14】
基板上にゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極を覆うように無機化合物またはフッ素原子を含有する有機化合物を含む第1のゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記第1のゲート絶縁膜上に炭素原子と水素原子よりなる炭化水素化合物を含む第2のゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記第2のゲート絶縁膜上にソース電極とドレイン電極とを形成する工程と、
前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に位置するように有機半導体膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする有機トランジスターの製造方法。
【請求項15】
請求項13または14に記載の有機トランジスターの製造方法において、
前記有機半導体膜を形成する工程は、前記有機半導体膜の形成材料を含む液状体を用いた液相プロセスにより行なわれるものであることを特徴とする有機トランジスターの製造方法。
【請求項16】
請求項13または14に記載の有機トランジスターの製造方法において、
前記ゲート電極を形成する工程は、導電性高分子または金属粒子を水系分散媒に分散してなる電極形成用液状材料を用いた液相プロセスにより行なわれるものであることを特徴とする有機トランジスターの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−283332(P2010−283332A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50231(P2010−50231)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】