説明

有機発光表示装置およびその製造方法

【課題】有機発光表示装置の駆動トランジスタとスイッチングトランジスタとに要求される特性を十分に満たす有機発光表示装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】同一の基板上に形成された逆スタガ型のスイッチングトランジスタおよび駆動トランジスタを備える有機発光表示装置であって、スイッチングトランジスタは、第1半導体層からなる第1チャネル層を有し、駆動トランジスタは、第1半導体層とは異なる結晶質である第2半導体層と、第2半導体層上に積層される第1半導体層とからなる第2チャネル層を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、有機発光表示装置)または液晶表示装置を用いた電子機器がある。このような電子機器すなわち有機発光表示装置または液晶表示装置において、マトリクス状に配置された表示素子が構成されており、表示素子は、複数の薄膜トランジスタにより駆動している。
【0003】
表示素子が構成される有機発光表示装置は、2つの電極とその2つの電極間に発光層とを有する。このような有機発光表示装置では、それぞれの電極から電子または正孔が注入されて再結合し、基底状態に戻る際、エネルギーを放出しながら発光する。
【0004】
また、このような有機発光表示装置において、アクティブマトリクス方式とパッシブマトリクス方式との駆動方式がある。アクティブマトリクス方式では、有機発光表示装置は、画素毎に、スイッチング素子(スイッチングトランジスタ)および電流駆動ドライブ素子(電流駆動トランジスタ)からなる薄膜トランジスタとキャパシタンスとで構成されている。目的の画素を選択するためのスイッチング素子がONされると、データ線からのデータ電圧はキャパシタンスに記憶される。さらに、それらを電流駆動トランジスタのゲート電圧に印加し、電流供給線からの電流を電流駆動トランジスタのソースまたはドレイン電極に流すことにより発光素子に電流を供給する(例えば、特許文献1および特許文献2)。
【0005】
特許文献1では、チャネル層が非晶質シリコン膜の積層構造からなる電流駆動トランジスタと、チャネル層が多結晶シリコン、微結晶シリコンおよび非晶質シリコンの3層構造からなるスイッチングトランジスタとを備える表示装置が開示されている。また、特許文献2では、チャネル層が微結晶シリコン膜単層または非晶質シリコン膜単層からなる電流駆動トランジスタと、チャネル層が非晶質シリコンからなるスイッチングトランジスタとを備える表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−226656号公報
【特許文献2】特開2007−219517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1および上記特許文献2に開示される駆動トランジスタおよびスイッチングトランジスタを備える有機発光表示装置では、駆動トランジスタおよびスイッチングトランジスタそれぞれに要求される特性を十分に満たすことができない。
【0008】
それは以下の理由からである。有機発光表示装置では、スイッチングトランジスタと駆動トランジスタとで要求される特性が異なる。すなわち、駆動トランジスタのチャネル層においては、有機発光素子に大きな電流を流す特性が必要とされており、スイッチングトランジスタのチャネル層にはオフ電流を下げる特性が要求されている。そのため、駆動トランジスタに大きな電流を流すには、多結晶または微結晶の半導体膜からなるチャネル層が必要であり、上記特許文献1および特許文献2に開示される非晶質シリコン膜の積層構造または非晶質シリコン膜単層からなるチャネル層では要求される特性を十分に満たせない。また、スイッチングトランジスタのチャネル層に、上記特許文献1に開示される多結晶または微結晶の半導体膜を用いた場合、チャネル層のバックチャネル側の界面に流れるオフ電流が増加してしまう。そのため、駆動トランジスタへ供給されるゲート電圧が減少し、表示品位が低下してしまう可能性がある。つまり、スイッチングトランジスタのチャネル層に要求される特性を十分に満たせない。
【0009】
そこで、本発明は、上記の問題点に着目したものであり、有機発光表示装置の駆動トランジスタとスイッチングトランジスタとに要求される特性を十分に満たす有機発光表示装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明に係る有機発光表示装置は、同一の基板上に形成された逆スタガ型のスイッチングトランジスタおよび駆動トランジスタを備える有機発光表示装置であって、前記スイッチングトランジスタは、第1半導体層からなる第1チャネル層を有し、前記駆動トランジスタは、前記第1半導体層とは異なる結晶質である第2半導体層と、前記第2半導体層上に積層される前記第1半導体層とからなる第2チャネル層とを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、有機発光表示装置の駆動トランジスタとスイッチングトランジスタとに要求される特性を十分に満たす有機発光表示装置およびその製造方法を実現することができる。それにより、有機発光表示装置の表示品位の特性を向上させることができる効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る有機発光表示装置を構成する薄膜トランジスタの構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る有機発光表示装置の等価回路を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る有機発光表示装置の薄膜トランジスタの製造工程を示すフローチャートである。
【図4A】本発明の実施の形態に係る有機発光表示装置の薄膜トランジスタの製造方法を説明するための断面図である。
【図4B】本発明の実施の形態に係る有機発光表示装置の薄膜トランジスタの製造方法を説明するための断面図である。
【図4C】本発明の実施の形態に係る有機発光表示装置の薄膜トランジスタの製造方法を説明するための断面図である。
【図4D】本発明の実施の形態に係る有機発光表示装置の薄膜トランジスタの製造方法を説明するための断面図である。
【図4E】本発明の実施の形態に係る有機発光表示装置の薄膜トランジスタの製造方法を説明するための断面図である。
【図4F】本発明の実施の形態に係る有機発光表示装置の薄膜トランジスタの製造方法を説明するための断面図である。
【図4G】本発明の実施の形態に係る有機発光表示装置の薄膜トランジスタの製造方法を説明するための断面図である。
【図4H】本発明の実施の形態に係る有機発光表示装置の薄膜トランジスタの製造方法を説明するための断面図である。
【図4I】本発明の実施の形態に係る有機発光表示装置の薄膜トランジスタの製造方法を説明するための断面図である。
【図4J】本発明の実施の形態に係る有機発光表示装置の薄膜トランジスタの製造方法を説明するための断面図である。
【図4K】本発明の実施の形態に係る有機発光表示装置の薄膜トランジスタの製造方法を説明するための断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る有機発光表示装置の薄膜トランジスタの電流電圧特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一態様に係る有機発光表示装置は、同一の基板上に形成された逆スタガ型のスイッチングトランジスタおよび駆動トランジスタを備える有機発光表示装置であって、前記スイッチングトランジスタは、第1半導体層からなる第1チャネル層を有し、前記駆動トランジスタは、前記第1半導体層とは異なる結晶質である第2半導体層と、前記第2半導体層上に積層される前記第1半導体層とからなる第2チャネル層とを有する。
【0014】
ここで、前記有機発光表示装置は、さらに、データ線、走査線および電流供給線を備え、前記スイッチングトランジスタは、さらに、前記走査線と電気的に接続される第1ゲート電極と、前記基板上に、前記ゲート電極を覆うよう形成されている第1ゲート絶縁膜と、前記第1ゲート絶縁膜上における前記第1チャネル層の両端に形成され、前記データ線と電気的に接続される第1ソースまたは第1ドレイン電極とを有し、前記第1チャネル層は、当該ゲート電極に対応する前記第1ゲート絶縁膜上に形成されており、前記駆動トランジスタは、さらに、前記スイッチングトランジスタの前記第1ソースまたは第1ドレイン電極の一方と接続されている第2ゲート電極と、前記基板上に、当該ゲート電極を覆うよう形成されている第2ゲート絶縁膜と、前記第2ゲート絶縁膜上における前記第2チャネル層の両端に形成され、前記電流供給線と電気的に接続される第2ソースまたは第2ドレイン電極とを有し、前記第2チャネル層は、当該第2ゲート電極に対応する前記第2ゲート絶縁膜上に形成されているとしてもよい。
【0015】
本態様によれば、駆動トランジスタのチャネル層は、下層から第2半導体層と第1半導体層とが積層された積層構造であり、スイッチングトランジスタのチャネル層は第1半導体層のみからなる構造である。つまり、駆動トランジスタとスイッチングトランジスタとにおけるゲート電極側のチャネル層を構成する半導体層の結晶性は異なり、駆動トランジスタとスイッチングトランジスタとの電流伝達の特性は異なる。それにより、有機発光表示装置の駆動トランジスタとスイッチングトランジスタとに要求される特性を十分に満たす有機発光表示装置を実現することができる。
【0016】
また、前記第1半導体層は、非晶質の半導体からなり、前記第2半導体層は、多結晶の半導体からなるとしてもよい。
【0017】
本態様によれば、第2半導体層は結晶質(微結晶も含む)の半導体からなることで、駆動トランジスタは高い移動度と、オン電流を有することが可能となる。そのため、有機EL素子へ大きな電流を供給することが可能となる。また、第1半導体層を非晶質の半導体とすることで、スイッチングトランジスタにおいては、第2半導体層の多結晶(微結晶も含む)の半導体をチャネル層として用いた場合と比べて、オフ電流を減らすことが可能となる。そのため、スイッチングトランジスタによるデータ電圧低下を抑制することができる。これは、第1半導体層の多結晶あるいは微結晶半導体を用いた場合、バックチャネル界面側に流れるオフ電流が増加するためである。
【0018】
このとき、前記第2半導体層は、非晶質の半導体を熱処理またはレーザにより結晶性を有した多結晶の半導体として形成されている。
【0019】
また、本発明の一態様である有機発光表示装置は、前記駆動トランジスタの前記第2チャネル層では、前記第1半導体層と前記第2半導体層とは、積層構造となっていてもよい。
【0020】
本態様によれば、駆動トランジスタにおいて、第1半導体層を第2半導体層の上に積層構造とすることで、ソース電極とドレイン電極間の抵抗を高くすることが可能となり、オフ電流を抑制する効果が得られる。
【0021】
また、本発明の一態様である有機発光表示装置は、前記駆動トランジスタの前記第2チャネル層における第1半導体層と前記スイッチングトランジスタの前記第1チャネル層における第1半導体層とが膜中に有する各水素含有量は、同じであるとしてもよく、前記スイッチングトランジスタの前記第2チャネル層における第1半導体層と前記駆動トランジスタの前記第1チャネル層における第1半導体層の各膜厚は、同じであるとしてもよい。
【0022】
本態様によれば、駆動トランジスタとスイッチングトランジスタとで用いる、第1半導体層の各膜厚と各膜中の水素含有量を同一とすることでチャネルエッチ工程のドライエッチングプロセスの仕様を同じにできるという効果がある。
【0023】
なお、本発明は、このような特徴的な手段を備える有機発光表示装置として実現することができるだけでなく、有機発光表示装置に含まれる特徴的な手段をステップとする有機発光表示装置の製造方法として実現することができる。
【0024】
本発明の一態様に係る有機発光表示装置の製造方法は、同一の基板上に形成された逆スタガ型のスイッチングトランジスタおよび駆動トランジスタを備える有機発光表示装置の製造方法であって、前記駆動トランジスタのチャネル層を構成する第2半導体層を形成する第1工程と、前記第2半導体層とは異なる結晶質である第1半導体層を形成する第2工程とを含み、前記第2工程において、前記スイッチングトランジスタのチャネル層を構成する前記第1半導体層と、前記駆動トランジスタのチャネル層を構成し、前記第2半導体層上に積層される前記第1半導体層とを形成する。
【0025】
ここで、前記第1工程において、前記第2半導体層を、多結晶の半導体で形成し、前記第2工程において、前記第1半導体層を、非晶質の半導体で形成するとしてもよい。
【0026】
また、前記第1工程において、前記第2半導体層を、非晶質半導体で形成した後、形成した非晶質半導体に熱処理またはレーザ処理を行うことで結晶性を有した多結晶の半導体にするとしてもよい。
【0027】
(実施の形態)
以下、本発明における実施の形態の一例を、図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施の形態に係る有機発光表示装置を構成する薄膜トランジスタの構造を示す断面図である。図1では、スイッチングトランジスタ1を構成する薄膜トランジスタと駆動トランジスタ2を構成する薄膜トランジスタとの断面図を示しており、それらは共有の絶縁基板10上に形成されている。
【0029】
図1に示すように、駆動トランジスタ2は、逆スタガ型でチャネルエッチ型の薄膜トランジスタであり、絶縁基板10と、ゲート電極12と、ゲート絶縁膜13と、結晶質シリコン膜15と、非晶質シリコン膜16と、n+シリコン膜17と、ソース・ドレイン電極18とを備える。
【0030】
絶縁基板10は、透明なガラスまたは石英からなる基板である。
ゲート電極12は、絶縁基板10上に形成され、例えばモリブデン(Mo)若しくはMo合金などの金属、チタニウム(Ti)、アルミニウム(Al)若しくはAl合金などの金属、銅(Cu)若しくはCu合金などの金属、または、銀(Ag)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)若しくはタングステン(W)等の金属からなる。
【0031】
ゲート絶縁膜13は、ゲート電極12を覆うように形成され、酸化珪素(SiOx)または窒化珪素(SiNx)からなる。なお、ゲート絶縁膜13は、酸化珪素(SiOx)と窒化珪素(SiNx)との積層構造からなっていても良い。
【0032】
結晶質シリコン膜15は、ゲート絶縁膜13上に形成される。結晶質シリコン膜15は、ゲート絶縁膜13上に非晶質シリコン膜14(不図示)が形成され、その非晶質シリコン膜14が熱処理あるいはレーザにより多結晶質化(微結晶化も含む)されることにより形成される。
【0033】
なお、ここで言う多結晶とは、50nm以上の結晶からなる狭義の意味での多結晶だけでなく、50nm以下の結晶からなる狭義の意味での微結晶を含んだ広義の意味としている。以下、多結晶を広義の意味として記載する。
【0034】
非晶質シリコン膜16は、パターニングで残された結晶質シリコン膜15上に形成されている。このように、駆動トランジスタ2は、結晶質シリコン膜15に非晶質シリコン膜16が積層された構造のチャネル層を有する。
【0035】
n+シリコン膜17は、非晶質シリコン膜16と結晶質シリコン膜15の側面とゲート絶縁膜13とを覆うように形成されている。
【0036】
ソース・ドレイン電極18は、n+シリコン膜17上に形成され、例えばモリブデン(Mo)若しくはMo合金などの金属、チタニウム(Ti)、アルミニウム(Al)若しくはAl合金などの金属、銅(Cu)若しくはCu合金などの金属、または、銀(Ag)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)若しくはタングステン(W)等の金属の材料からなる。
【0037】
以上のように駆動トランジスタ2は、構成されている。
一方、スイッチングトランジスタ1は、逆スタガ型でチャネルエッチ型の薄膜トランジスタであり、絶縁基板10と、ゲート電極11と、ゲート絶縁膜13と、非晶質シリコン膜16と、n+シリコン膜17と、ソース・ドレイン電極18とを備える。なお、駆動トランジスタ2と同様の要素には同一の符号を付している。
【0038】
絶縁基板10は、透明なガラスまたは石英からなる基板である。
ゲート電極11は、絶縁基板10上に形成され、ゲート電極12同様に例えばモリブデン(Mo)若しくはMo合金などの金属、チタニウム(Ti)、アルミニウム(Al)若しくはAl合金などの金属、銅(Cu)若しくはCu合金などの金属、または、銀(Ag)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)若しくはタングステン(W)等の金属からなる。
【0039】
ゲート絶縁膜13は、ゲート電極11を覆うように形成されている。ここで、ゲート絶縁膜13は、上述したように、酸化珪素(SiOx)または窒化珪素(SiNx)からなる。また、ゲート絶縁膜13は、酸化珪素(SiOx)と窒化珪素(SiNx)との積層構造からなっていても良い。
【0040】
非晶質シリコン膜16は、ゲート絶縁膜13上に形成されている。ここで、結晶質シリコン膜15がないのは、パターニングにより除去されたからである。つまり、非晶質シリコン膜16は、パターニングで結晶質シリコン膜15が除去されたゲート絶縁膜13上に形成されている。このように、スイッチングトランジスタ1は、非晶質シリコン膜16のみからなる構造のチャネル層を有する。
【0041】
なお、スイッチングトランジスタ1における非晶質シリコン膜16と駆動トランジスタ2における非晶質シリコン膜16の膜厚は略等しいのが好ましい。また、スイッチングトランジスタ1における非晶質シリコン膜16と駆動トランジスタ2における非晶質シリコン膜16は、それぞれ水素を含有し、それら水素含有量は同一であるのが好ましい。
【0042】
n+シリコン膜17は、非晶質シリコン膜16とゲート絶縁膜13とを覆うように形成されている。
【0043】
ソース・ドレイン電極18は、n+シリコン膜17上に形成されている。また、ソース・ドレイン電極18は、上述したように例えばモリブデン(Mo)若しくはMo合金などの金属、チタニウム(Ti)、アルミニウム(Al)若しくはAl合金などの金属、銅(Cu)若しくはCu合金などの金属、または、銀(Ag)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)若しくはタングステン(W)等の金属の材料からなる。
【0044】
以上のように、スイッチングトランジスタ1は構成されている。
このように、本発明の実施の形態に係る有機発光表示装置の薄膜トランジスタであるスイッチングトランジスタ1および駆動トランジスタ2は、構成される。
【0045】
図2は、本発明の実施の形態に係る有機発光表示装置の等価回路を示す図である。図2に示す有機発光表示装置は、スイッチングトランジスタ1と、駆動トランジスタ2と、データ線3と、走査線4と、電流供給線5と、キャパシタンス6と、有機EL素子7とを備える。
【0046】
スイッチングトランジスタ1は、データ線3と走査線4とキャパシタンス6とに接続されている。
【0047】
駆動トランジスタ2は、電流供給線5とキャパシタンス6と有機EL素子7とに接続されている。
【0048】
データ線3は、有機EL素子7の画素の明暗を決めるデータ(電圧値の大小)が、有機EL素子7の画素に伝達される配線である。
【0049】
走査線4は、有機EL素子7の画素のスイッチ(ON/OFF)を決めるデータが有機EL素子7の画素に伝達される配線である。
【0050】
電流供給線5は、駆動トランジスタ2に大きな電流を供給するための配線である。
キャパシタンス6は、電圧値(電荷)を一定時間保持する。
【0051】
以上のように、本実施の形態における有機発光表示装置は構成されている。
次に、以上のように構成される有機発光表示装置の薄膜トランジスタすなわちスイッチングトランジスタ1および駆動トランジスタ2の製造方法について説明する。
【0052】
図3は、本発明の実施の形態に係る有機発光表示装置の薄膜トランジスタの製造工程を示すフローチャートである。図4A〜図4Kは、本発明の実施の形態に係る有機発光表示装置の薄膜トランジスタの製造方法を説明するための図である。
【0053】
まず、ゲート電極(ゲート電極11およびゲート電極12)の成膜、パターニングを行う(S101)。
【0054】
具体的には、絶縁基板10上にスパッタ法によりゲート電極(ゲート電極11およびゲート電極12)となる金属を堆積し、ホトおよびエッチングによりスイッチングトランジスタ1におけるゲート電極11と駆動トランジスタにおけるゲート電極12とを形成する(図4A)。ここで、ゲート電極11およびゲート電極12は、モリブデン(Mo)若しくはMo合金などの金属、チタニウム(Ti)、アルミニウム(Al)若しくはAl合金などの金属、銅(Cu)若しくはCu合金などの金属、または、銀(Ag)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)若しくはタングステン(W)等の金属の材料で形成される。
【0055】
続いて、ゲート電極(ゲート電極11およびゲート電極12)上にゲート絶縁膜13を成膜し(S102)、ゲート絶縁膜13上に非晶質シリコン膜を成膜する(S103)。
【0056】
具体的には、プラズマCVD法により、ゲート電極11およびゲート電極12の上にすなわち絶縁基板10とゲート電極11とゲート電極12とを覆うようにゲート絶縁膜13を成膜し(図4B)、成膜したゲート絶縁膜13上に非晶質シリコン膜14を連続的に成膜する(図4C)。ここで、ゲート絶縁膜13は、酸化珪素(SiOx)または窒化珪素(SiNx)からなる。なお、ゲート絶縁膜13は、酸化珪素(SiOx)と窒化珪素(SiNx)との積層構造からなっていても良い。
【0057】
続いて、非晶質シリコン膜14を例えばレーザアニール法により結晶質シリコン膜15にする(S104)。具体的には、成膜された非晶質シリコン膜14に対して脱水素処理を実施する。その後、非晶質シリコン膜14をレーザまたは熱アニール法により、多結晶質(微結晶を含む)にすることにより結晶質シリコン膜15を形成する(図4D)。
【0058】
続いて、駆動トランジスタ2となる領域である駆動トランジスタ領域の結晶質シリコン膜を残すようにパターニングする(S105)。
【0059】
具体的には、駆動トランジスタ領域の結晶質シリコン膜15を残すように結晶質シリコン膜15を、ホトおよびエッチングによりパターニング形成する。ここで、結晶質シリコン膜15は、駆動トランジスタ2のチャネル領域以上に残され、スイッチングトランジスタ1のチャネルとなる領域には残さないようにパターニングされる(図4E)。
【0060】
続いて、2層目の非晶質シリコン膜16を成膜し(S106)、駆動トランジスタ2のチャネル領域およびスイッチングトランジスタ1のチャネル領域のシリコン膜層をパターニングする(S107)。
【0061】
具体的には、まず、水素プラズマ処理等により、パターニングで残された結晶質シリコン膜15に水素終端化処理を行う。次いで、プラズマCVD法により、パターニングで残された結晶質シリコン膜15上と、パターニングで結晶質シリコン膜15が除去されたゲート絶縁膜13上とに、2層目の非晶質シリコン膜16を成膜する(図4F)。そして、駆動トランジスタ2のチャネル領域とスイッチングトランジスタ1のチャネル領域とが残るようにシリコン膜層(非晶質シリコン膜16ならびに結晶質シリコン膜15および非晶質シリコン膜16の層)をパターニングし、除去すべき非晶質シリコン膜16と結晶質シリコン膜15とをエッチングにより除去する(図4G)。それにより、スイッチングトランジスタ1および駆動トランジスタ2において所望のチャネル層を形成する。
【0062】
ここで、駆動トランジスタ2とスイッチングトランジスタ1とにおける非晶質シリコン膜16の膜厚と膜中の水素含有量とを同一にする。それにより後に実施するチャネルエッチ工程のドライエッチングプロセスの仕様を同じにできる。
【0063】
続いて、n+シリコン膜17とソース・ドレイン電極18とを成膜する(S108)。
具体的には、プラズマCVD法により、スイッチングトランジスタ1となる領域において非晶質シリコン膜16とゲート絶縁膜13とを覆うように、駆動トランジスタ2となる領域において非晶質シリコン膜16と結晶質シリコン膜15の側面とゲート絶縁膜13とを覆うようn+シリコン膜17を成膜する(図4H)。
【0064】
そして、成膜したn+シリコン膜17上に、スパッタ法によりソース・ドレイン電極18となる金属が堆積される(図4I)。ここで、ソース・ドレイン電極は、モリブデン(Mo)若しくはMo合金などの金属、チタニウム(Ti)、アルミニウム(Al)若しくはAl合金などの金属、銅(Cu)若しくはCu合金などの金属、または、銀(Ag)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)若しくはタングステン(W)等の金属の材料で形成される。
【0065】
続いて、ソース・ドレイン電極18のパターニングを行う(S109)。そして、n+シリコン膜17をエッチングし(S109)、また、2層目の非晶質シリコン膜16を一部エッチングする(S110)。
【0066】
具体的には、ソース・ドレイン電極18をホトおよびエッチングにより形成する(図4J)。また、n+シリコン膜17をエッチングし、スイッチングトランジスタ1および駆動トランジスタ2のチャネル領域の非晶質シリコン膜16を一部エッチングする(図4K)。言い換えると、非晶質シリコン膜16は、スイッチングトランジスタ1および駆動トランジスタ2のチャネル領域の非晶質シリコン膜16を一部残すようにチャネルエッチングされる。
【0067】
このようにして、チャネルエッチ型の薄膜トランジスタすなわちスイッチングトランジスタ1および駆動トランジスタ2が一括して形成される。
【0068】
以上のように、有機発光表示装置の薄膜トランジスタすなわちスイッチングトランジスタ1および駆動トランジスタ2を製造する。
【0069】
図5は、本発明の実施の形態に係る有機発光表示装置の薄膜トランジスタの電流電圧特性を示す図である。
【0070】
図5では、上記のように構成された有機発光表示装置のスイッチングトランジスタ1および駆動トランジスタ2のTFT(Thin Film Transistor)特性を示している。具体的には、スイッチングトランジスタ1のTFT特性は実線で示されており、駆動トランジスタ2のTFT特性は点線で示されている。
【0071】
図5に示されるように、スイッチングトランジスタ1では、オン電流=7.0μA、オフ電流=1.9pAが得られ、駆動トランジスタ2においては、オン電流=110μA、オフ電流=11.2pAが得られている。ここで、オン電流はVg=5.0V時のドレイン電流、オフ電流はVg=−10V時のドレイン電流値である。
【0072】
このように、スイッチングトランジスタ1のオフ電流は、駆動トランジスタ2に比べて、およそ10分の1の低減効果がある。一方、駆動トランジスタ2のオン電流は、スイッチングトランジスタ1に比べて、およそ15倍の値が得られている。
【0073】
以上のように、本発明の実施の形態に係る有機発光表示装置の薄膜トランジスタでは、駆動トランジスタ2のチャネル層を結晶質シリコン膜15と非晶質シリコン膜16の積層構造とし、スイッチングトランジスタ1のチャネル層を非晶質シリコン膜16のみとする。すなわち、駆動トランジスタ2とスイッチングトランジスタ1とは、ゲート絶縁膜13側のチャネル層で異なる結晶性の半導体層を有する。それにより、駆動トランジスタ2とスイッチングトランジスタ1とは、異なる電流伝達の特性を有することができる。
【0074】
具体的には、駆動トランジスタ2は、多結晶半導体からなる結晶質シリコン膜15を有することで、高い移動度とオン電流とを有することができる。したがって、有機EL素子7へ大きな電流を供給することが可能となる。
【0075】
一方、スイッチングトランジスタ1は非晶質の半導体からなる非晶質シリコン膜16のみを有することにより、スイッチングトランジスタ1において多結晶半導体からなる結晶質シリコン膜15がチャネル層として形成されている場合に比べて、オフ電流を減らすことができる。したがって、スイッチングトランジスタ1によるデータ電圧低下を抑制することができる。なお、ここで、スイッチングトランジスタ1が多結晶半導体からなる結晶質シリコン膜15がチャネル層として形成されている場合には、バックチャネル界面側に流れるオフ電流が増加する。
【0076】
また、駆動トランジスタ2は、非晶質シリコン膜16が結晶質シリコン膜15の上に積層された構造のチャネル層を有することで、ソース電極とドレイン電極間の抵抗を高くすることができ、オフ電流を抑制する効果が得られる。
【0077】
また、駆動トランジスタ2とスイッチングトランジスタ1とにおける非晶質シリコン膜16の膜厚と膜中の水素含有量とを同一にすることでチャネルエッチ工程のドライエッチングプロセスの仕様を同じにできるという効果がある。
【0078】
以上のように、本発明によれば、有機発光表示装置の駆動トランジスタとスイッチングトランジスタとに要求される特性を十分に満たす有機発光表示装置およびその製造方法を実現することができる。
【0079】
以上、本発明の有機発光表示装置およびその製造方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、有機発光表示装置およびその製造方法に利用でき、特に、共有基板上に素子構造が異なる複数の薄膜トランジスタを形成する技術を用いた電子機器を構成する有機発光表示装置およびその製造方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 スイッチングトランジスタ
2 駆動トランジスタ
3 データ線
4 走査線
5 電流供給線
6 キャパシタンス
7 有機EL素子
10 絶縁基板
11、12 ゲート電極
13 ゲート絶縁膜
14、16 非晶質シリコン膜
15 結晶質シリコン膜
17 n+シリコン膜
18 ソース・ドレイン電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の基板上に形成された逆スタガ型のスイッチングトランジスタおよび駆動トランジスタを備える有機発光表示装置であって、
前記スイッチングトランジスタは、
第1半導体層からなる第1チャネル層を有し、
前記駆動トランジスタは、
前記第1半導体層とは異なる結晶質である第2半導体層と、前記第2半導体層上に積層される前記第1半導体層とからなる第2チャネル層とを有する
有機発光表示装置。
【請求項2】
前記有機発光表示装置は、さらに、データ線、走査線および電流供給線を備え、
前記スイッチングトランジスタは、さらに、
前記走査線と電気的に接続される第1ゲート電極と、
前記基板上に、前記ゲート電極を覆うよう形成されている第1ゲート絶縁膜と、
前記第1ゲート絶縁膜上における前記第1チャネル層の両端に形成され、前記データ線と電気的に接続される第1ソースまたは第1ドレイン電極とを有し、
前記第1チャネル層は、当該ゲート電極に対応する前記第1ゲート絶縁膜上に形成されており、
前記駆動トランジスタは、さらに、
前記スイッチングトランジスタの前記第1ソースまたは第1ドレイン電極の一方と接続されている第2ゲート電極と、
前記基板上に、当該ゲート電極を覆うよう形成されている第2ゲート絶縁膜と、
前記第2ゲート絶縁膜上における前記第2チャネル層の両端に形成され、前記電流供給線と電気的に接続される第2ソースまたは第2ドレイン電極とを有し、
前記第2チャネル層は、当該第2ゲート電極に対応する前記第2ゲート絶縁膜上に形成されている
請求項1に記載の有機発光表示装置。
【請求項3】
前記第1半導体層は、非晶質の半導体からなり、前記第2半導体層は、多結晶の半導体からなる
請求項1または2に記載の有機発光表示装置。
【請求項4】
前記第2半導体層は、非晶質の半導体を熱処理またはレーザにより結晶性を有した多結晶の半導体として形成されている
請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機発光表示装置。
【請求項5】
前記駆動トランジスタの前記第2チャネル層では、前記第1半導体層と前記第2半導体層とは、積層構造となっている
請求項1または2に記載の有機発光表示装置。
【請求項6】
前記駆動トランジスタの前記第2チャネル層における第1半導体層と前記スイッチングトランジスタの前記第1チャネル層における第1半導体層とが膜中に有する各水素含有量は、同じである
請求項1または2に記載の有機発光表示装置。
【請求項7】
前記スイッチングトランジスタの前記第2チャネル層における第1半導体層と前記駆動トランジスタの前記第1チャネル層における第1半導体層の各膜厚は、同じである
請求項1または2に記載の有機発光表示装置。
【請求項8】
同一の基板上に形成された逆スタガ型のスイッチングトランジスタおよび駆動トランジスタを備える有機発光表示装置の製造方法であって、
前記駆動トランジスタのチャネル層を構成する第2半導体層を形成する第1工程と、
前記第2半導体層とは異なる結晶質である第1半導体層を形成する第2工程とを含み、
前記第2工程において、
前記スイッチングトランジスタのチャネル層を構成する前記第1半導体層と、前記駆動トランジスタのチャネル層を構成し、前記第2半導体層上に積層される前記第1半導体層とを形成する
有機発光表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1工程において、前記第2半導体層を、多結晶の半導体で形成し、
前記第2工程において、前記第1半導体層を、非晶質の半導体で形成する
請求項8に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1工程において、前記第2半導体層を、非晶質半導体で形成した後、形成した非晶質半導体に熱処理またはレーザ処理を行うことで結晶性を有した多結晶の半導体にする
請求項9に記載の有機発光表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【図4I】
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【図4J】
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【図4K】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−61098(P2011−61098A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211116(P2009−211116)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】