説明

樹脂組成物、硬化膜、重合体およびプリント配線板

【課題】優れた難燃性を有し、しかも、ポリイミド樹脂などの樹脂および銅などの金属の両方に対して良好な接着性を有する硬化膜が得られる樹脂組成物、この樹脂組成物に好適に用いることができる重合体、この樹脂組成物から得られる硬化膜、およびこの硬化膜を有するプリント配線板を提供する。
【解決手段】本発明の樹脂組成物は、下記(A)成分および下記(B)成分を含有することを特徴とする。
(A)成分:リン含有基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構造単位(a1)と、共役ジエン系単量体由来の構造単位(a2)とを含有してなる重合体。
(B)成分:溶剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、硬化膜、重合体およびプリント配線板に関する。さらに詳しくは、リジッドプリント配線板やフレキシブルプリント配線板などのプリント配線板などに好適に用いることができる熱硬化性若しくは感放射線性の樹脂組成物、当該樹脂組成物を硬化してなる硬化膜、当該樹脂組成物に用いられる重合体、および前記硬化膜を有するプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板用の材料としては、ポリイミド樹脂などの樹脂よりなる絶縁性基板と銅などの金属箔とを、エポキシ樹脂やアクリル樹脂などを含む硬化膜、ポリエステル・ポリウレタンタイプの硬化膜(特許文献1参照)やNBR系の硬化膜(特許文献2参照)によって貼りあわせたものが用いられている。
また、近年、各種工業製品における難燃化の規制が厳しく、プリント配線板等に使用される材料についても難燃化が求められており、前述の硬化膜にも難燃性を有するものが求められてきている。難燃性を有する硬化膜を形成することができる樹脂組成物としては、ホスファゼンオリゴマー、リン酸メラミン化合物、ビフェニルホスフェート化合物などの有機リン化合物を含有してなる樹脂組成物(特許文献3参照)や、フェノキシホスファゼン化合物を含有してなる樹脂組成物(特許文献4参照)などが提案されている。
更に、難燃性を有する硬化膜を形成することができる樹脂組成物としては、リン酸エステル基を有する重合体が含有されてなるものが提案されている(特許文献5および特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−116930号公報
【特許文献2】特開2000−273430号公報
【特許文献3】特開2005−283762号公報
【特許文献4】特開2008−107458号公報
【特許文献5】特開2005−336430号公報
【特許文献6】特開2008−274003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように、樹脂組成物において、難燃性を付与するためには、一般に、樹脂組成物中の成分中に有機リン化合物を添加することによって達成されることが知られている。 しかしながら、ポリイミド樹脂などの樹脂と銅などの金属とを接着するために用いられる樹脂組成物においては、上記の有機リン化合物を添加した場合には、樹脂および金属の両方に対する十分な接着性が得られない、という問題がある。
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、優れた難燃性を有し、しかも、ポリイミド樹脂などの樹脂および銅などの金属の両方に対して良好な接着性を有する硬化膜が得られる樹脂組成物、この樹脂組成物に好適に用いることができる重合体、この樹脂組成物から得られる硬化膜、およびこの硬化膜を有するプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の樹脂組成物は、下記(A)成分および下記(B)成分を含有することを特徴とする。
(A)成分:リン含有基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構造単位(a1)と、共役ジエン系単量体由来の構造単位(a2)とを含有してなる重合体。
(B)成分:溶剤。
【0007】
本発明の樹脂組成物においては、前記リン含有基が、下記式(1)に示す基であることが好ましい。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、X1 は、炭素数が1〜6の2価の脂肪族炭化水素基、フェニレン基、炭素数が1〜3のアルキレンオキシ基、炭素数が1〜3のアルキレンアミノ基または単結合を示し、R1 およびR2 は、それぞれ独立して水酸基、炭素数が1〜6の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数が1〜3のアルキルオキシ基または下記式(2)で表される芳香族基を示す。)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、R3 は、炭素数が1〜3の1価の脂肪族炭化水素基または水酸基を示し、nは0〜5の整数であり、nが2〜5の場合には、複数のR3 はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。X2 は、単結合または酸素原子である。)
【0012】
また、本発明の樹脂組成物においては、前記(A)成分を構成する重合体は、構造単位(a1)100質量部に対して構造単位(a2)を0.5〜80質量部含有してなることが好ましい。
【0013】
また、本発明の樹脂組成物においては、さらに、下記(C)成分および下記(D)成分を含有してなるものであってもよい。
(C)成分:熱硬化性樹脂。
(D)成分:熱により、前記(C)成分の硬化を促進させる化合物。
このような樹脂組成物においては、前記(C)成分が、エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の樹脂組成物においては、さらに、下記(E)成分および下記(F)成分を含有するものであってもよい。
(E)成分:多官能性単量体。
(F)成分:感放射線性重合開始剤。
【0015】
本発明の硬化膜は、前記(C)成分および前記(D)成分を含有する前記樹脂組成物が、熱により硬化されてなることを特徴とする。
また、本発明の硬化膜は、前記(E)成分および前記(F)成分を含有する前記樹脂組成物が、放射線により硬化されてなることを特徴とする。
【0016】
本発明の重合体は、リン含有基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構造単位(a1)と、共役ジエン系単量体由来の構造単位(a2)とを含有してなることを特徴とする。 本発明の重合体においては、前記リン含有基が、前記式(1)に示す基であることが好ましい。
【0017】
本発明のプリント配線板は、樹脂よりなる絶縁性基板上に、前記硬化膜を介して、回路を形成する金属層が接着されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の樹脂組成物によれば、リン含有基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構造単位(a1)と、共役ジエン系単量体由来の構造単位(a2)とを含有してなる重合体が含有されていることにより、優れた難燃性を有し、しかも、ポリイミド樹脂などの樹脂および銅などの金属の両方に対して良好な接着性を有する硬化膜を得ることができる。
本発明の重合体によれば、優れた難燃性、およびポリイミド樹脂などの樹脂および銅などの金属の両方に対して良好な接着性が得られる。
上記の樹脂組成物は、プリント配線板において、ポリイミド樹脂などの樹脂よりなる絶縁性基板と回路を形成する銅などよりなる金属層とを接着するための硬化膜を形成する材料として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、構造単位(a1)および構造単位(a2)を含有してなる重合体よりなる(A)成分と、溶剤よりなる(B)成分とを含有してなるものである。
【0020】
〔(A)成分〕
(A)成分は、リン含有基を有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位(a1)と、共役ジエン系単量体に由来する構造単位(a2)とを含有してなる重合体(以下、「特定のリン含有重合体」という。)よりなるものである。
【0021】
特定のリン含有重合体中の構造単位(a1)を得るための単量体としては、上記式(1)で表されるリン含有基を有する単量体(以下、「特定のリン含有単量体」という。)が好ましい。
上記式(1)において、X1 は、炭素数が1〜6の2価の脂肪族炭化水素基、フェニレン基、−R4 −O−(但し、R4 は炭素数が1〜3のアルキレン基)で表される炭素数が1〜3のアルキレンオキシ基、−R5 −NH−(但し、R5 は炭素数が1〜3のアルキレン基)で表される炭素数が1〜3のアルキレンアミノ基、または単結合である。
1 およびR2 は、それぞれ独立して水酸基、炭素数が1〜6の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数が1〜3のアルキルオキシ基または上記式(2)で表される芳香族基である。 また、上記式(2)において、R3 は、炭素数が1〜3の1価の脂肪族炭化水素基または水酸基である。また、nは0〜5の整数であり、nが2〜5の場合には、複数のR3 はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。X2 は、単結合または酸素原子である。
【0022】
特定のリン含有単量体の具体例としては、2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジエチル−(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート等のリン酸エステル基含有(メタ)アクリレート化合物、
ジフェニル−(メタクリロイルオキシメチル)ホスホナート、ジフェニル−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)ホスホナート、ジフェニル−(3−(メタクリロイルオキシ)プロピル)ホスホナート、ジフェニル−(4−(メタクリロイルオキシ)ブチル)ホスホナート、ジフェニル−(5−(メタクリロイルオキシ)ペンチル)ホスホナート、ジフェニル−(6−(メタクリロイルオキシ)ヘキシル)ホスホナート、ジメチル−(メタクリロイルオキシメチル)ホスホナート、ジメチル−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)ホスホナート、ジメチル−(3−(メタクリロイルオキシ)プロピル)ホスホナート、ジメチル−(4−(メタクリロイルオキシ)ブチル)ホスホナート、ジメチル−(5−(メタクリロイルオキシ)ペンチル)ホスホナート、ジメチル−(6−(メタクリロイルオキシ)ヘキシル)ホスホナート、ジエチル−(メタクリロイルオキシメチル)ホスホナート、ジエチル−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)ホスホナート、ジエチル−(3−(メタクリロイルオキシ)プロピル)ホスホナート、ジエチル−(4−(メタクリロイルオキシ)ブチル)ホスホナート、ジエチル−(5−(メタクリロイルオキシ)ペンチル)ホスホナート、ジエチル−(6−(メタクリロイルオキシ)ヘキシル)ホスホナート、ジプロピル−(メタクリロイルオキシメチル)ホスホナート、ジプロピル−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)ホスホナート、ジプロピル−(3−(メタクリロイルオキシ)プロピル)ホスホナート、ジプロピル−(4−(メタクリロイルオキシ)ブチル)ホスホナート、ジプロピル−(5−(メタクリロイルオキシ)ペンチル)ホスホナート、ジプロピル−(6−(メタクリロイルオキシ)ヘキシル)ホスホナート等のホスホン酸エステル基含有(メタ)アクリレート化合物、
【0023】
ジフェニル−(メタクリロイルオキシメチル)ホスフィナート、ジフェニル−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)ホスフィナート、ジフェニル−(3−(メタクリロイルオキシ)プロピル)ホスフィナート、ジフェニル−(4−(メタクリロイルオキシ)ブチル)ホスフィナート、ジフェニル−(5−(メタクリロイルオキシ)ペンチル)ホスフィナート、ジフェニル−(6−(メタクリロイルオキシ)ヘキシル)ホスフィナート、ジメチル−(メタクリロイルオキシメチル)ホスフィナート、ジメチル−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)ホスフィナート、ジメチル−(3−(メタクリロイルオキシ)プロピル)ホスフィナート、ジメチル−(4−(メタクリロイルオキシ)ブチル)ホスフィナート、ジメチル−(5−(メタクリロイルオキシ)ペンチル)ホスフィナート、ジメチル−(6−(メタクリロイルオキシ)ヘキシル)ホスフィナート、ジエチル−(メタクリロイルオキシメチル)ホスフィナート、ジエチル−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)ホスフィナート、ジエチル−(3−(メタクリロイルオキシ)プロピル)ホスフィナート、ジエチル−(4−(メタクリロイルオキシ)ブチル)ホスフィナート、ジエチル−(5−(メタクリロイルオキシ)ペンチル)ホスフィナート、ジエチル−(6−(メタクリロイルオキシ)ヘキシル)ホスフィナート、ジプロピル−(メタクリロイルオキシメチル)ホスフィナート、ジプロピル−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)ホスフィナート、ジプロピル−(3−(メタクリロイルオキシ)プロピル)ホスフィナート、ジプロピル−(4−(メタクリロイルオキシ)ブチル)ホスフィナート、ジプロピル−(5−(メタクリロイルオキシ)ペンチル)ホスフィナート、ジプロピル−(6−(メタクリロイルオキシ)ヘキシル)ホスフィナート等のホスフィン酸エステル基含有(メタ)アクリレート化合物、
ジフェニル−(メタクリロイルオキシメチル)ホスフィンオキシド、ジフェニル−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)ホスフィンオキシド、ジフェニル−(3−(メタクリロイルオキシ)プロピル)ホスフィンオキシド、ジフェニル−(4−(メタクリロイルオキシ)ブチル)ホスフィンオキシド、ジフェニル−(5−(メタクリロイルオキシ)ペンチル)ホスフィンオキシド、ジフェニル−(6−(メタクリロイルオキシ)ヘキシル)ホスフィンオキシド、ジメチル−(メタクリロイルオキシメチル)ホスフィンオキシド、ジメチル−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)ホスフィンオキシド、ジメチル−(3−(メタクリロイルオキシ)プロピル)ホスフィンオキシド、ジメチル−(4−(メタクリロイルオキシ)ブチル)ホスフィンオキシド、ジメチル−(5−(メタクリロイルオキシ)ペンチル)ホスフィンオキシド、ジメチル−(6−(メタクリロイルオキシ)ヘキシル)ホスフィンオキシド、ジエチル−(メタクリロイルオキシメチル)ホスフィンオキシド、ジエチル−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)ホスフィンオキシド、ジエチル−(3−(メタクリロイルオキシ)プロピル)ホスフィンオキシド、ジエチル−(4−(メタクリロイルオキシ)ブチル)ホスフィンオキシド、ジエチル−(5−(メタクリロイルオキシ)ペンチル)ホスフィンオキシド、ジエチル−(6−(メタクリロイルオキシ)ヘキシル)ホスフィンオキシド、ジプロピル−(メタクリロイルオキシメチル)ホスフィンオキシド、ジプロピル−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)ホスフィンオキシド、ジプロピル−(3−(メタクリロイルオキシ)プロピル)ホスフィンオキシド、ジプロピル−(4−(メタクリロイルオキシ)ブチル)ホスフィンオキシド、ジプロピル−(5−(メタクリロイルオキシ)ペンチル)ホスフィンオキシド、ジプロピル−(6−(メタクリロイルオキシ)ヘキシル)ホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド基含有(メタ)アクリレート化合物、
【0024】
スチリルホスホン酸ジフェニル、スチリルホスホン酸ジメチル、スチリルホスホン酸ジエチル、スチリルメチルホスホン酸ジフェニル(=ベンジルホスホン酸ジフェニルと同じ)、スチリルメチルホスホン酸ジメチル、スチリルメチルホスホン酸ジエチル、スチリルエチルホスホン酸ジフェニル、スチリルエチルホスホン酸ジメチル、スチリルエチルホスホン酸ジエチル、スチリルプロピルホスホン酸ジフェニル、スチリルプロピルホスホン酸ジメチル、スチリルプロピルホスホン酸ジエチル、スチリルブチルホスホン酸ジフェニル、スチリルブチルホスホン酸ジメチル、スチリルブチルホスホン酸ジエチル、スチリルペンチルホスホン酸ジフェニル、スチリルペンチルホスホン酸ジメチル、スチリルペンチルホスホン酸ジエチル、スチリルヘキシルホスホン酸ジフェニル、スチリルヘキシルホスホン酸ジメチル、スチリルヘキシルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸エステル基含有スチレン化合物、
スチリルジフェニルホスフィンオキシド、スチリルジメチルホスフィンオキシド、スチリルジエチルホスフィンオキシド、(スチリルメチル)ジフェニルホスフィンオキシド(=ベンジルジフェニルホスフィンオキシドと同じ)、(スチリルメチル)ジメチルホスフィンオキシド、(スチリルメチル)ジエチルホスフィンオキシド、(スチリルエチル)ジフェニルホスフィンオキシド、(スチリルエチル)ジメチルホスフィンオキシド、(スチリルエチル)ジエチルホスフィンオキシド、(スチリルプロピル)ジフェニルホスフィンオキシド、(スチリルプロピル)ジメチルホスフィンオキシド、(スチリルプロピル)ジエチルホスフィンオキシド、(スチリルブチル)ジメチルホスフィンオキシド、(スチリルブチル)ジエチルホスフィンオキシド、(スチリルペンチル)ジフェニルホスフィンオキシド、(スチリルペンチル)ジメチルホスフィンオキシド、(スチリルペンチル)ジエチルホスフィンオキシド、(スチリルヘキシル)ジフェニルホスフィンオキシド、(スチリルヘキシル)ジメチルホスフィンオキシド、(スチリルヘキシル)ジエチルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド基含有スチレン化合物、
ビニルホスホナート化合物、ビニルホスフィナート化合物、ビニルホスフィンオキシド化合物などが挙げられる。これらの化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらの化合物の中では、ジエチル−(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)ホスフェート等のリン酸エステル基含有(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0025】
特定のリン含有重合体中の構造単位(a2)は、共役ジエン系単量体に由来する構造単位である。かかる共役ジエン系単量体の具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、ミルセン、クロロプレンなどが挙げられる。これらの共役ジエン系単量体は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらの共役ジエン系単量体中では、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
【0026】
(A)成分を構成する特定のリン含有重合体において、構造単位(a1)に対する構造単位(a2)の割合は、構造単位(a1)100質量部に対して構造単位(a2)が、0.5〜80質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜70質量部、更に好ましくは2〜60質量部である。構造単位(a2)の割合が上記範囲内である場合には、硬化膜の接着性および屈曲性の点で優れ、且つエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂との相溶性に優れ、さらに、難燃性の点で好ましい。
【0027】
特定のリン含有重合体においては、構造単位(a1)および構造単位(a2)の他に、カルボキシル基および/またはフェノール性水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(以下、「特定のアルカリ可溶性単量体」という。)に由来する構造単位(a3)が含有されていてもよい。
特定のアルカリ可溶性単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、プロピオル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、オレイン酸、エライジン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、アトロパ酸、けい皮酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸、メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシ基含有単量体、4−ヒドロキシフェニルメタクリル酸、4−ヒドロキシフェニルアクリル酸、イソプロペニルフェノール、ヒドロキシスチレン等のフェノール性水酸基含有単量体などが挙げられる。これらの化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、カルボキシ基含有単量体が好ましく、特にメタクリル酸やアクリル酸が好ましい。
特定のリン含有重合体において、構造単位(a3)の割合は、全構造単位中、通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下である。
【0028】
特定のリン含有重合体は、各単量体を混合して得られる単量体混合物を、例えば公知の乳化重合法によって重合処理することによって得られる。
また、特定のリン含有重合体は、ゲルパーミエーション法によるポリスチレン換算の重量平均分子量が、通常1,000〜1,000,000であり、接着剤の強度の点で、好ましくは100,000〜1,000,000、より好ましくは、300,000〜1,000,000である。
【0029】
〔(B)成分〕
本発明の樹脂組成物においては、特定のリン含有重合体よりなる(A)成分と共に、溶剤よりなる(B)成分が含有されている。
(B)成分を構成する溶剤としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;
プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;
ブチルカルビトール等のカルビトール類;
乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸イソプロピル等の乳酸エステル類; 酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;
3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;
2−ブタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;
N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;
γ−ブチロラクン等のラクトン類などを用いることができる。
これらの溶剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
本発明の樹脂組成物において、(B)成分を構成する溶剤の割合は、(B)成分以外の成分の合計100質量部に対して、通常40〜900質量部であり、好ましくは60〜400質量部である。(B)成分の割合が40〜900質量部である場合には、塗布性や塗工性の点で優れたものとなる。
【0031】
〔(C)成分〕
本発明の樹脂組成物中には、さらに(C)成分として熱硬化性樹脂を後述する(D)成分と共に含有することができる。かかる熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などを用いることができる。これらの中でもエポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂としては、分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する構造のものを用いることが好ましく、その具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。なお、上記熱硬化性樹脂は、単独で、又は2種以上を組み合わせて(C)成分として用いることができる。また、難燃性付与のために、エポキシ樹脂に臭素化エポキシ樹脂のようなハロゲン化エポキシ樹脂を添加することもできる。
本発明の樹脂組成物において、(C)成分を構成する熱硬化性樹脂の割合は、(A)成分100質量部に対して、通常2,000質量部以下であり、好ましくは10〜1,500質量部、より好ましくは50〜1,000質量部である。このような割合で熱硬化性樹脂が含有されることにより、熱硬化性樹脂の耐熱性を損なわず、接着性、難燃性、屈曲性を改良することができる。
【0032】
〔(D)成分〕
本発明の樹脂組成物中には、上記の(C)成分と共に、(D)成分として熱により当該(C)成分の硬化を促進させる化合物(以下、「硬化剤」という。)を含有することができる。かかる硬化剤としては、熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜選択して用いることができ、その具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフィド、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノベンゾフェノン等のアミン類、ポリアミド樹脂、2−アルキル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−アルキルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、無水フタル酸、無水トリメリット酸等の酸無水物類、フェノール樹脂類、ポリスルフィフィド樹脂、ポリビニルフェノール類、ジシアンジアミド、二塩基酸ジヒドラジド、有機ボロン、有機ホスフィン、グアニジン類およびこれらの塩などを挙げることができる。
本発明の樹脂組成物において、(D)成分を構成する硬化剤の割合は、(C)成分100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量部である。このような割合で硬化剤が含有されることにより、熱硬化性樹脂を熱により十分に硬化することができる。
【0033】
〔(E)成分〕
本発明の樹脂組成物中には、さらに(E)成分として多官能性単量体を後述する(F)成分と共に含有することができる。かかる多官能性単量体としては、多官能(メタ)アクリレート化合物を用いることが好ましい。
多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化2−メチル−1, 3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1, 6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1, 8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1, 9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1, 10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエリレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましい。
本発明の樹脂組成物において、(E)成分を構成する多官能性単量体の割合は、(A)成分100質量部に対して、通常100質量部以下であり、好ましくは1〜80質量部、より好ましくは5〜50質量部である。このような割合で(E)成分が含有されることにより、紫外線照射後に、十分な膜特性有する硬化膜を得ることができる。
【0034】
〔(F)成分〕
本発明の樹脂組成物中には、上記の(E)成分と共に、(F)成分として感放射線性重合開始剤を含有させることができる。かかる感放射線性重合開始剤としては、放射線の照射により(E)成分である多官能性単量体を重合し得るものが用いられ、その具体例としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1などを挙げることができる。
本発明の樹脂組成物において、(F)成分を構成する感放射線性重合開始剤の割合は、(E)成分1質量部に対して、通常0.01〜1質量部であり、好ましくは0.05〜0.8質量部である。このような割合で(F)成分が含有されることにより、短時間の紫外線照射により、十分な膜特性の硬化膜を得ることができる。
【0035】
〔その他の成分〕
本発明の樹脂組成物においては、上記の(A)成分〜(F)成分以外に、必要に応じて、アルカリ可溶性樹脂、難燃剤、無機フィラー、増感剤、レベリング剤・界面活性剤などを、本発明の樹脂組成物の特性を損なわない程度に含有させることができる。
【0036】
アルカリ可溶性樹脂としては、アルカリに可溶なものであれば特に限定はされないが、具体的には、酸性を示す基を有していればよく、分子中にカルボキシル基やフェノール性水酸基を有する樹脂を用いることができる。分子中にカルボキシル基を有する樹脂としては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂等を挙げることができ、フェノール性水酸基を有する重合体としては、ノボラック樹脂やフェノール性水酸基を有する重合性単量体を重合したものなどを挙げることができる。これらの中でも、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を用いることが好ましい。
かかるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の具体例としては、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ビフェニルノボラック型(メタ)アクリレート樹脂、ナフトールノボラック型(メタ)アクリレート、フェノールノボラック型(メタ)アクリレート等のノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂等のビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂などが挙げられる。
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の酸価は、10〜120mgKOH/gであることが好ましい。ここで、酸価は、JIS K 0070 化学製品の酸化、けん化価、エステル価、ヨウ素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法に従って手順によって測定することができる。
【0037】
難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン等の臭素系難燃剤;
トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリス(t−ブチル化フェニル)ホスフェート、1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)等のリン酸エステル系難燃剤;
三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化マグネシウム等の無機系難燃剤;
などを用いることができる。これらの難燃剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、リン酸エステル系難燃剤が好ましい。
【0038】
また上記レベリング剤・界面活性剤は、樹脂組成物の塗布性を向上させるために添加される。このようなレベリング剤・界面活性剤としては、特に限定されないが、その具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステリアルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレインエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;
ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類;
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー類;
ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類;
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのノニオン系レベリング剤・界面活性剤;
エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、株式会社トーケムプロダクツ製)、メガファックF171、同F172、同F173(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム株式会社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−381、同S−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106、サーフィノールE1004、KH−10、KH−20、KH−30、KH−40(以上、旭硝子株式会社製)、フタージェント250、同251、同222F、FTX−218(以上、株式会社ネオス製)等のフッ素系レベリング剤・界面活性剤;
オルガノシロキサンポリマーKP341、X−70−092、X−70−093(以上、信越化学工業株式会社製)、SH8400(東レ・ダウコーニング製)、アクリル酸系又はメタクリル酸系ポリフローNo.75、同No.77、同No.90、同No.95(以上、共栄社油脂化学工業株式会社製)が挙げられる。
これらのレベリング剤・界面活性剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
このような樹脂組成物においては、目的とする基材の表面に塗布し、(C)成分および(D)成分を含有する場合には、得られた塗膜を加熱処理によって硬化することにより、(E)成分および(F)成分を含有する場合には、得られた塗膜を放射線照射処理によって硬化することにより、当該基材の表面に硬化膜を形成することができ、また、(C)成分、(D)成分、(E)成分および(F)成分を含有する場合には、得られた塗膜に対して放射線照射処理を行った後、更に、加熱処理を行って硬化することにより、当該基材の表面に硬化膜を形成することができる。
加熱処理手段としては、オーブン、加熱プレス機などを用いることができる。
また、放射線照射処理手段としては、水銀ランプなどの光源を備えた紫外線照射装置を用いることができる。
加熱処理または放射線照射処理の具体的な条件は、用いられる(C)成分〜(F)成分の種類等に応じて適宜選択される。
また、加熱処理または放射線照射処理を行った後、必要に応じてポストベークを行ってもよい。
【0040】
そして、上記の樹脂組成物によれば、特定のリン含有重合体を含有するため、優れた難燃性を有すると共に、ボリイミドなどの樹脂および銅などの金属の両方に対する接着性が良好な硬化膜を得ることができる。
【0041】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、樹脂よりなる絶縁性基板上に、上記の樹脂組成物から得られる硬化膜を介して、回路を形成する金属層が接着されてなるものである。
本発明のプリント配線板における基板材料としては、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などを用いることができ、これらの中では、難燃性、電気絶縁性、耐熱性、弾性率等の点で、ポリイミド樹脂が好ましい。
また、本発明のプリント配線板における基板は、多層構造のものであってもよい。
また、回路を形成する金属層としては、例えば、銅、銀等の電気抵抗値が小さい金属よりなるものを用いることが好ましい。
【0042】
本発明のプリント配線板は、例えば以下のようにして製造することができる。
先ず、絶縁性基板または回路を形成するための金属箔の表面に、(C)成分および(D)成分を含有する樹脂組成物、または(E)成分および(F)成分を含有する樹脂組成物を塗布し、得られた塗膜上に金属箔または絶縁性基板を配置する。そして、絶縁性基板と金属箔との間の塗膜に対して、(C)成分および(D)成分を含有する樹脂組成物を用いるときには加熱処理、(E)成分および(F)成分を含有する樹脂組成物を用いるときには放射線照射処理を行うことにより、絶縁性基板と金属箔との間に両者を接着する硬化膜を形成する。
そして、金属箔に対して、フォトリソグラフィーおよびエッチング処理を施すことにより、所要のパターンの回路(金属層)が形成され、更に、必要に応じて保護膜を形成することにより、本発明のプリント配線板が得られる。
【0043】
このようなプリント配線板は、絶縁性基板上に、上記の樹脂組成物から得られる硬化膜を介して、回路を形成する金属層が接着されているため、優れた難燃性を有すると共に、絶縁性基板と回路を形成する金属層との接着性が良好なものである。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
また、以下の実施例等において、「部」は「質量部」を意味する。
また、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法によるポリスチレン換算値を示す。
また、特定のリン含有重合体を得るための原料単量体、比較用重合体、および樹脂組成物における各成分として、下記のものを使用した。
【0045】
[特定のリン含有重合体用単量体]
単量体(a1−1):ジフェニル−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)ホスフェート(商品名「M−260」、大八化学工業(株)製)
単量体(a1−2):ジエチル−(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート(ユニオンケミカル社製、商品名「DEAP」)
単量体(a2−1):1,3−ブタジエン
単量体(a2−2):イソプレン
単量体(a3−1):メタクリル酸
単量体(a3−2):2−メタクリロイロキシエチルコハク酸(共栄社化学社製、商品名「ライトエステルHO−MS」)
[比較例用重合体]
重合体(AR−2):アクリロニトリルブタジエンゴム(製品名「JSR N236H」、JSR株式会社製)
[溶剤]
溶剤(B−1):メチルエチルケトン
[熱硬化性樹脂]:
樹脂(C−1):ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「エピコート828」、ジャパンエポキシレジン社製)
樹脂(C−2):ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「エピコート1001」、ジャパンエポキシレジン社製)
[硬化剤]
硬化剤(D−1):ジアミノジフェニルメタン(商品名「スミキュアM」、住友化学社製)
[多官能性単量体]
単量体(E−1):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製、商品名;ライトアクリレートDPE−6A)
[感放射線性重合開始剤]
開始剤(F−1):2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(商品名「イルガキュア369」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)
【0046】
[特定のリン含有重合体の合成]
《合成例1》
水200部にポリオキシエチレンイソデシルエーテル(第一工業製薬社製、商品名:SD−110)10部およびアルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム(花王(株)製、商品名:ペレックスSS−L)1部を溶解し、得られた水溶液に、原料単量体として単量体(a1−1)70部および単量体(a2−1)30部(単量体のモル比25.8:74.2)、ターピノーレン1部、並びに硫酸鉄(I)0.1部をオートクレーブに仕込み、10℃に温度調整した後、パラメンタンハイドロオキサイド0.01部を加え、重合転化率75%まで乳化重合を行った。次いで、反応停止剤としてN,N−ジエチルヒドロキシルアミンを添加し、重合体のエマルジョンを得た。その後、このエマルジョン中に水蒸気を吹き込み未反応の原料単量体を除去した後、室温まで放冷した。次いで、得られたエマルジョンに、硫酸アンモニウム20部を加え、完全に溶解したことを確認した後、スチームを吹き込み、エマルジョンの温度を90℃以上にすることによって、ゴム状の重合体を析出させた。析出した重合体を蒸留水で水洗し、80℃に設定した送風乾燥機で乾燥することにより、特定のリン含有重合体を得た。得られた特定のリン含有重合体を「重合体(A−1)」とする。重合体(A−1)の重量平均分子量(Mw)を、下記表1に示す。
【0047】
《合成例2〜8および比較合成例1》
原料単量体の配合を下記表1に従って変更したこと以外は、実施例1と同様にして特定のリン含有重合体および比較用重合体を得た。得られた特定のリン含有重合体を「重合体(A−2)」〜「重合体(A−8)」とし、得られた比較用重合体を「重合体(AR−1)」とする。これらの重合体の重量平均分子量(Mw)を、下記表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
〈実施例1〉
(A)成分として重合体(A−1)100部、並びに(C)成分として樹脂(C−1)50部および樹脂(C−2)50部を、(B)成分である溶剤(B−1)308部に添加し、撹拌機「MAZERA Z」(東京理科器械社製)により攪拌して溶解させた。その後、得られた溶液に、(D)成分として硬化剤(D−1)5部を添加し、上記撹拌機により攪拌し、固形分濃度が40質量%である本発明の樹脂組成物を得た。
【0050】
〈実施例2〜9および比較例1〜2〉
(A)成分〜(F)成分およびその他の成分の配合を下記表2に示す処方に従って変更したこと以外は、実施例1と同様にして本発明の樹脂組成物および比較用の樹脂組成物を調製した。
【0051】

【表2】

【0052】
[樹脂組成物の評価]
実施例1〜9および比較例1〜2で得られた樹脂組成物について、下記の手法に従ってその性能を評価した。結果を表3に示す。
【0053】
(1)接着性(ポリイミド樹脂および銅との接着性):
厚みが1mmの銅板に樹脂組成物をアプリケーターバーにて塗布し、対流式オーブンで90℃で15分間加熱し塗膜を得た。得られた塗膜上に厚みが25μmのポリイミドフィルム(宇部興産社製、商品名「ユーピレックス75S」)を重ねた後、プレス機(関西ロール社製)を用いて130℃、0.5MPa、1分の条件で熱圧着処理を行った後、クリーンオーブンによって170℃で1時間の加熱処理を行うことにより、銅板上に厚みが30μmの硬化膜を介してポリイミドフィルムが接着されてなる試験片を作製した。
但し、実施例9に係る樹脂組成物については、プレス機による熱圧着処理の代わりに、水銀ランプを備えた紫外線照射装置によって、500mJ/ cm2 の条件で放射線照射処理を行った後、クリーンオーブンによって170℃で1時間加熱処理を行うことにより、銅板上に厚みが30μmの硬化膜を介してポリイミドフィルムが接着されてなる試験片を作製した。
このようにして得られた試験片におけるポリイミドフィルムに幅1cmの切れ目をカッターにより形成し、90度ピ−ル試験を実施した。ここで、90度ピール試験においては、JIS C6481(プリント配線板用銅張積層版試験法)に準拠した密着性試験機(山本鍍金試験器社製)を用いて90度ピール強度(kg/cm)を測定した。
【0054】
(2)相溶性:
厚みが25μmのポリイミドフィルムに、樹脂組成物を、アプリケーターバーを用いて塗布し、得られた塗布膜に対して、オーブンにより90℃で15分間の条件で加熱処理を行うことにより、ポリイミドフィルム上に厚みが30μmの硬化膜を形成した。
但し、実施例9に係る樹脂組成物については、オーブンによる加熱処理の代わりに、水銀ランプを備えた紫外線照射装置によって、500mJ/ cm2 の条件で放射線照射処理を行った後、クリーンオーブンによって170℃で1時間加熱処理を行うことにより、ポリイミドフィルム上に厚みが30μmの硬化膜を形成した。
得られた硬化膜の表面を目視で観察し、硬化膜の表面に異物の発生が認められないものを「○」、硬化膜の表面に異物の発生が認められるものを「×」として評価した。
【0055】
(3)難燃性試験: 厚み25μmのポリイミドフィルムに、樹脂組成物をアプリケーターバーを用いて塗布し、得られた塗布膜に対して、オーブンによって90℃で15分間の加熱処理を行った後、クリーンオーブンによって170℃で1時間加熱処理を行うことにより、ポリイミドフィルム上に厚みが30μmの硬化膜が形成されてなる積層フィルムを作製した。
但し、実施例9に係る樹脂組成物については、オーブンによる加熱処理の代わりに、水銀ランプを備えた紫外線照射装置によって、500mJ/ cm2 の条件で放射線照射処理を行った後、クリーンオーブンによって170℃で1時間加熱処理を行うことにより、ポリイミドフィルム上に厚みが30μmの硬化膜が形成されてなる積層フィルムを作製した。
得られた積層フィルムを用い、ASTM D4804に準拠して、試験片を作製して難燃性試験を実施した。ここで、試験条件は、接炎時間が3秒/2回、炎長が20mmとした。
そして、試験片の接炎後の燃焼時間を測定し、10秒間以下のものを「VTM−0」、30秒間以下のものを「VTM−1」、30秒間を超えるものを「NG」として判定した。
【0056】
(4)屈曲性:
上記(3)と同様にして得られた積層フィルムから、硬化膜を、幅1cm×長さ10cmに切り抜き、試験片を作製した。この試験片を中央で折り曲げ500gのおもりを乗せた後、反対に折り返して再度500gのおもりを載せ、試験片の折り目を目視により観察した。そして、試験片の折り目上にクラックが発生していない場合を「○」、折り目上にクラックが発生している場合を「×」と記載した。
【0057】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分および下記(B)成分を含有することを特徴とする樹脂組成物。
(A)成分:リン含有基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構造単位(a1)と、共役ジエン系単量体由来の構造単位(a2)とを含有してなる重合体。
(B)成分:溶剤。
【請求項2】
前記リン含有基が、下記式(1)に示す基であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】

(式中、X1 は、炭素数が1〜6の2価の脂肪族炭化水素基、フェニレン基、炭素数が1〜3のアルキレンオキシ基、炭素数が1〜3のアルキレンアミノ基または単結合を示し、R1 およびR2 は、それぞれ独立して水酸基、炭素数が1〜6の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数が1〜3のアルキルオキシ基または下記式(2)で表される芳香族基を示す。)
【化2】

(式中、R3 は、炭素数が1〜3の1価の脂肪族炭化水素基または水酸基を示し、nは0〜5の整数であり、nが2〜5の場合には、複数のR3 はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。X2 は、単結合または酸素原子である。)
【請求項3】
前記(A)成分を構成する重合体は、構造単位(a1)100質量部に対して構造単位(a2)を0.5〜80質量部含有してなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、下記(C)成分および下記(D)成分を含有してなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
(C)成分:熱硬化性樹脂。
(D)成分:熱により前記(C)成分の硬化を促進させる化合物。
【請求項5】
前記(C)成分が、エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、下記(E)成分および下記(F)成分を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
(E)成分:多官能性単量体。
(F)成分:感放射線性重合開始剤。
【請求項7】
請求項4または請求項5に記載の樹脂組成物が、熱により硬化されてなることを特徴とする硬化膜。
【請求項8】
請求項6に記載の樹脂組成物が、放射線により硬化されてなることを特徴とする硬化膜。
【請求項9】
リン含有基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構造単位(a1)と、共役ジエン系単量体由来の構造単位(a2)とを含有してなることを特徴とする重合体。
【請求項10】
前記リン含有基が、請求項2に記載の式(1)に示す基であることを特徴とする請求項9に記載の重合体。
【請求項11】
樹脂よりなる絶縁性基板上に、請求項7または請求項8に記載の硬化膜を介して、回路を形成する金属層が接着されてなることを特徴とするプリント配線板。

【公開番号】特開2011−105837(P2011−105837A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261594(P2009−261594)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】