説明

欠陥検査方法

【課題】 欠陥検査において欠陥検出閾値及び欠陥検出フォーカス等のパラメータを高精度で且つ短時間に設定できるようにする。
【解決手段】 検査対象基板にエネルギービームを照射することによって、当該検査対象基板から反射されたエネルギービームをディジタル画像信号として取得し、取得されたディジタル画像信号の強度が閾値を超える場合に当該ディジタル画像信号を欠陥として検出する。閾値は、ディジタル画像信号に含まれるノイズ信号の最大強度に基づいて設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線、光又はX線などのエネルギービームを用いて、回路パターンが形成された半導体ウェハ、回路基板、液晶基板、ホトマスク、磁気ディスクヘッド、光ディスク又はハードディスクなどの検査対象物から荷電子、反射光又は散乱光などの物理的性質を現した画像を取得し、その画像を用いて検査対象物の欠陥を検査する欠陥検査方法に関し、具体的には当該画像信号又は差分画像信号に対して閾値を設定することによって欠陥か否かを判別するアルゴリズムを用いた欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電子デバイスの性能向上及びチップコスト削減のための微細化、又は映像デバイスへの顧客ニーズ若しくは商品差別化のための大面積化などが進む中で、デバイス製造における異物などの欠陥が歩留まりや品質に大きな影響を与えている。
【0003】
しかし、パターンの微細化に伴う検査スポット径の微細化又は検査面積の増大によって検査時間が増大し、それによってスループットが低下している。また、検査スポット径の微細化に起因してコントラストの高い鮮明な画像を得ることが難しくなり、その結果、欠陥検出信号とノイズ信号との比(S/N比)が低下している。このため、欠陥を検出するための閾値設定が困難になって合わせこみに多大な時間が必要になるなどの問題点が発生している。
【0004】
従って、パターンの微細化に対応した検査スポット径の微細化及び検査の高感度化、並びに検査面積拡大に対応した検査速度の高速化が必要となっている。
【0005】
例えば特許文献1には、パターン比較検査装置に関する検査閾値の設定方法が開示されている。
【0006】
ところで、パターン画像比較による検査では、検査対象の画像(以下、検査画像と呼ぶ)と、比較相手の画像(以下、参照画像と呼ぶ)との差分を求め、その差分(差画像)が閾値以上ならば欠陥と判定し、閾値未満ならば正常と判定する。すなわち、閾値を上げると検査感度が下がり、閾値を下げると検査感度が上がるという関係にあり、欠陥を判定の基準となる閾値は検査性能を左右する重要なパラメータである。また、検査対象がパターン無しの場合においても、検査領域とその近傍領域との間で画像比較を行ったり又は画像比較されていない生データ信号での信号強度変化により欠陥を検出したりしているが、いずれの場合であっても検査対象に応じて閾値設定を行なう必要がある。
【0007】
特許文献1では、閾値調整を検査中に行うことによって、閾値が低すぎることによる擬似欠陥(検査対象の色むらなどに起因する下地ノイズを誤検出し、欠陥ではないものが欠陥として検出されたもの)の検出を抑制し、それによって検査装置のオーバーフローをなくす方法が開示されている。具体的には、検査前に予め初期閾値を設定して検査を実施しながら、検査中に欠陥密度を判定し、欠陥密度が所定値を超える場合には、閾値を上げて検査感度を緩めて再検査する方法である。
【0008】
また、例えば特許文献2には、複数の検出系を設けることによって検査時間を短縮した検査装置が開示されている。特許文献2に示す検査装置においては、複数の検出系に対して、その間の検出系差をなくすために、階調校正及び閾値校正をノイズ信号を用いて実施している。ノイズ信号は、パターンがない検査対象を用いた検査などによって得られ、各検出系の暗レベルとノイズ信号のピーク値とから直線近似を行なって、各検出系について得られた直線の傾き及び切片が同じになるように階調校正を行なう。また、閾値調整に関しては、各検出系でのノイズ信号のバラツキ幅(標準偏差σ)から経験的なオフセット(dd)を加算してそれぞれの検出系に対して閾値を設定するか、又は検出系のノイズ信号のバラツキ幅が最大となるバラツキ幅(σMax)を用いて経験的なオフセット(dd)を加算することにより各検出系の閾値を一定に設定している。
【0009】
尚、実際の検査対象を検査する際の閾値調整に関しては、検査前に閾値を何段階かに細かく振り且つ検査領域を広くとって検査を行い、これらの検査結果を比較して最適と思われる閾値を選んでいる。
【特許文献1】特開2002−228606号公報
【特許文献2】特開2000−67797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の閾値設定方法では、欠陥密度がある値を超過した場合には閾値を上げるという手法であるため、閾値を上げた際に実際の欠陥を見逃すという問題が発生する。また、閾値の上げ幅が小さい場合には、閾値設定が条件を満たすまで数回の予備検査が必要となり、検査時間に非常に時間を要する一方、閾値の上げ幅が大きい場合には、本質的な欠陥を見逃す可能性が高い。すなわち、特許文献1の閾値設定方法においては、評価バラツキが大きくなるという問題、及び閾値を設定するための上げ幅や初期値の調整のために多大な時間を要するという問題が生じていた。
【0011】
また、複数検出系を有する検査装置における特許文献2の閾値校正方法では、各検出系のノイズ信号のバラツキ幅(標準偏差σ)に対して経験的なオフセット(dd)を加算して閾値を設定しているので、実際の欠陥検出に係るノイズ信号の最大値に対しては閾値調整が不十分となる。このため、各検出系のノイズ信号最大値の誤差が大きいので、言い換えると、欠陥判定閾値とノイズ信号最大値との間隔にバラツキが生じるので、閾値調整精度不足に起因する欠陥の誤検出及び見逃しが発生する。特に、複数のピークを持つ複雑なノイズ信号の場合においては、ノイズ信号のバラツキ幅の誤差が大きくなるので、適正な閾値調整ができず、その結果、欠陥の誤検出及び見逃しが多発する。
【0012】
また、特許文献1及び2において検査フォーカスについては特記されていないが、検査対象となるパターンが微細化されてきているため、フォーカス調整が難しく、フォーカスがずれることによる画像ぼけが顕著となり、その結果、欠陥の見逃しが発生するという問題が発生している。
【0013】
また、特許文献2において検出系のフォーカス調整方法については特記されていないが、各検出系のフォーカスの校正精度不足による画像ぼけが顕著となり、その結果、欠陥の見逃しが発生するという問題が発生している。
【0014】
また、特許文献1及び2の欠陥検査装置及び欠陥検査システムでは、欠陥情報を保存するデータベースに欠陥検出信号が存在せず、また、閾値の適正度合いを示す指標がないことから、閾値を合わせこむために、閾値を変化させて数回の検査を繰り返し行う必要がある。このため、電子線を用いた検査では、特にチャージアップによる画像変化が顕著となり、その結果、検査ができなくなるという問題が発生している。
【0015】
前記に鑑み、本発明は、欠陥検査において欠陥検出閾値及び欠陥検出フォーカス等のパラメータを高精度で且つ短時間に設定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の目的を達成するために、本発明に係る第1の欠陥検査方法は、検査対象基板にエネルギービームを照射することによって、当該検査対象基板から反射された前記エネルギービームをディジタル画像信号として取得し、取得されたディジタル画像信号の強度が閾値を超える場合に当該ディジタル画像信号を欠陥として検出する欠陥検査方法であって、前記ディジタル画像信号に含まれるノイズ信号の最大強度に基づいて前記閾値を設定する。
【0017】
第1の欠陥検査方法によると、検査対象基板における色むらなどを含むノイズ信号の評価を行うことによって、特に検査対象基板の欠陥密度が低い場合又は欠陥信号とノイズ信号との比が小さい場合においても、検査対象基板のノイズ信号の最大強度に基づいて欠陥検出閾値を高精度で且つ短時間に設定することができる。従って、欠陥の誤検出や見逃しの可能性を最小化することができると共に検査バラツキを低減することができる。また、従来多大な時間を要していた検出系の感度調整についても高精度な校正を短時間に実施することができる。
【0018】
第1の欠陥検査方法において、前記検査対象基板における所定の検査領域について前記ノイズ信号の強度を識別階調として取得し、当該識別階調に対する前記ノイズ信号の検出数を求め、当該検出数を前記識別階調により積分することによって累積検出数を求め、前記ノイズ信号の正規分布特性を利用して前記累積検出数を対数変換した後にその3乗根を対数変換3乗根累積検出数として求め、当該対数変換3乗根累積検出数の前記識別階調に対する線形特性に基づいて、前記累積検出数が1未満となる最大の前記識別階調を算出し、当該算出値を前記閾値に設定することが好ましい。
【0019】
このようにすると、欠陥の累積検出数が少なく実欠陥を用いて閾値を設定することが難しい検査対象基板においても、当該検査対象基板に応じた適正な閾値を高精度で設定することができるので、欠陥の誤検出や見逃しを最小限にした欠陥検査が可能となる。さらに、閾値設定に要する時間を大幅に短縮できると共に、閾値設定をコンピュータ及びソフトウェアを用いて自動化することができる。
【0020】
この場合において、複数の検出系を有する欠陥検査装置を用いる場合には、言い換えると、ディジタル画像信号が同じ検査対象基板について複数の検出系のそれぞれによって取得される場合には、前記検出数、前記累積検出数、前記対数変換3乗根累積検出数及び前記閾値は前記複数の検出系のそれぞれについて算出され、前記複数の検出系のそれぞれについて算出された前記閾値が同じになるように当該各閾値に対してオフセット値を設定すると共に前記複数の検出系のそれぞれについて算出された前記対数変換3乗根累積検出数の前記識別階調に対する線形特性を表す直線の傾きが同じになるように当該各傾きに対して係数を設定することが好ましい。このようにすると、複数の検出系を有する欠陥検査装置を用いる場合であっても、各検出系の欠陥検出閾値が同じになるように閾値校正を行なうことが可能となるので、各検出系の欠陥検出閾値を高精度で一定且つ適正に保つことができる。
【0021】
また、この場合、前記ディジタル画像信号は前記エネルギービームのパラメータの値を変化させることによって当該パラメータの値毎に取得され、前記検出数、前記累積検出数、前記対数変換3乗根累積検出数、及び前記累積検出数が1未満となる最大の前記識別階調である前記閾値は前記パラメータの値毎に算出され、前記パラメータの値毎に算出された前記閾値に基づいて、前記閾値を最大化できる前記パラメータの値を求めることが好ましい。このようにすると、検査対象基板の画像コントラストを利用してフォーカス等のパラメータ設定を行なっていた従来技術と比べて、当該検査対象基板に応じた適正なパラメータの値を高精度で設定することができるので、欠陥の誤検出や見逃しを最小限にした欠陥検査が可能となる。さらに、パラメータ設定に要する時間を大幅に短縮できると共に、パラメータ設定をコンピュータ及びソフトウェアを用いて自動化することができる。ここで、複数の検出系を有する欠陥検査装置を用いる場合には、言い換えると、ディジタル画像信号が同じ検査対象基板について複数の検出系のそれぞれによって前記パラメータの値毎に取得される場合には、前記検出数、前記累積検出数、前記対数変換3乗根累積検出数、及び前記累積検出数が1未満となる最大の前記識別階調である前記閾値は前記複数の検出系のそれぞれについて前記パラメータの値毎に算出され、前記閾値を最大化できる前記パラメータの値は前記複数の検出系のそれぞれについて算出され、前記複数の検出系のそれぞれについて算出された、前記閾値を最大化できる前記パラメータの値が同じになるように当該各パラメータの値に対してオフセット値を設定することが好ましい。このようにすると、複数の検出系を有する欠陥検査装置を用いる場合であっても、各検出系のフォーカス等のパラメータの値が同じになるようにパラメータ校正を行なうことが可能となるので、各検出系のパラメータの値を高精度で一定且つ適正に保つことができる。尚、前記エネルギービームが光である場合には前記パラメータはフォーカス又は波長であり、前記エネルギービームが電子線である場合には前記パラメータは、電子レンズによるフォーカス、加速エネルギー又は通電電流であってもよい。
【0022】
本発明に係る第2の欠陥検査方法は、検査対象基板にエネルギービームを照射することによって、当該検査対象基板から反射された前記エネルギービームをディジタル画像信号として取得し、取得されたディジタル画像信号の強度が閾値を超える場合に当該ディジタル画像信号を欠陥として検出する欠陥検査方法であって、前記検査対象基板における所定の検査領域に対してサンプリング検査を実施し、それにより得られた前記ディジタル画像信号に含まれるノイズ信号の最大強度に基づいて前記閾値を設定するサンプリング検査工程と、前記検査対象基板に対して本検査を実施し、それにより得られた前記ディジタル画像信号の強度が、前記サンプリング検査工程で設定された前記閾値を超える場合に当該ディジタル画像信号を欠陥として検出する本検査工程とを備えている。
【0023】
第2の欠陥検査方法によると、検査対象基板における色むらなどを含むノイズ信号の評価を行うことによって、特に検査対象基板の欠陥密度が低い場合又は欠陥信号とノイズ信号との比が小さい場合においても、検査対象基板のノイズ信号の最大強度に基づいて欠陥検出閾値を高精度で且つ短時間に設定することができる。従って、欠陥の誤検出や見逃しの可能性を最小化することができると共に検査バラツキを低減することができる。
【0024】
第2の欠陥検査方法において、前記検査対象基板上にパターンが存在する場合には前記所定の検査領域は前記パターンを満遍なく含み、前記所定の検査領域の面積の前記検査対象基板の全検査領域の面積に対する比率は100分の1以上で且つ10分の1以下であり、前記所定の検査領域は前記全検査領域に対して偏り無く配置されていることが好ましい。
【0025】
このようにすると、欠陥検出閾値を高精度で且つ短時間に設定することができる。ここで、前記所定の検査領域はストライプ状又はアレイ状に設定されていてもよい。
【0026】
第2の欠陥検査方法において、前記本検査工程で前記欠陥として検出された前記ディジタル画像信号の強度と前記ノイズ信号の最大強度とのS/N比を算出し、算出されたS/N比に基づいて前記閾値を再設定すると共に、新たに本検査を実施することなく、前記本検査により得られた前記ディジタル画像信号と前記再設定された前記閾値とを用いて欠陥を再抽出することが好ましい。
【0027】
このようにすると、欠陥としての確からしさの指標としてS/N比を確認できるので、当該S/N比に基づいて欠陥検出閾値を高精度で再設定することができる。また、一回の本検査により得られたS/N比を欠陥毎にデータベースに記録しておけば、再び本検査を行なうことなく閾値を仮想的に変化させてやることによって、検査データの有用性及び欠陥のスクリーニングを容易に実施することができる。尚、同じ検査対象基板について所定の処理工程を経た後に、本発明の欠陥検査を実施し、欠陥検出信号とノイズ信号とのS/N比を算出して欠陥毎にデータベースに記録してもよい。また、同一構造を持つ複数の検査対象基板の欠陥検査においてそれぞれ検出された前述のS/N比を算出しておき、各検査対象基板間における当該S/N比の差に基づき、検出された欠陥の妥当性について判断しても良い。
【0028】
第2の欠陥検査方法において、前記本検査工程で前記欠陥として検出された前記ディジタル画像信号の強度と前記ノイズ信号の最大強度とのS/N比を算出し、算出されたS/N比を前記本検査工程で検出された前記欠陥のそれぞれについて前記本検査工程の最中に又はその終了後に表示し、或いは、前記本検査工程で前記欠陥として検出された前記ディジタル画像信号の強度の最小値、平均値及び最大値のそれぞれと前記ノイズ信号の最大強度とのS/N比を算出し、算出された各S/N比を前記本検査工程の最中に又はその終了後に表示し、或いは、前記本検査工程で前記欠陥として検出された前記ディジタル画像信号の検出数、累積検出数若しくは対数変換3乗根累積検出数と、当該ディジタル画像信号の強度との相関関係を前記本検査工程の最中に又はその終了後に表示することが好ましい。
【0029】
このようにすると、検査実施中においてもノイズ信号と欠陥信号との違いを把握することができるので、検査結果の信憑性をリアルタイムで確認することができる。すなわち、ノイズに起因する欠陥の誤検出などを迅速に把握することができる。
【0030】
第2の欠陥検査方法において、前記本検査工程よりも前に、前記ディジタル画像信号の強度と前記ノイズ信号の最大強度とのS/N比が所定値よりも小さい領域を予め抽出しておき、抽出された領域を除外領域に設定する工程をさらに備え、前記本検査工程において、前記検査対象基板における前記除外領域を除く領域に対して前記本検査を実施することが好ましい。
【0031】
このようにすると、欠陥の誤検出が起こりやすいパターン群等を含む領域を予め抽出して検査対象領域から除外できるため、その他の領域に対してはS/N比を高く(つまり欠陥検出閾値を小さく)設定して欠陥検出感度を上げることが可能になる。
【0032】
第2の欠陥検査方法において、前記本検査工程は複数回実施され、前記各本検査工程で前記欠陥として検出された前記ディジタル画像信号の強度と前記ノイズ信号の最大強度とのS/N比を算出し、任意の欠陥について算出されたS/N比を前記各本検査工程の間で比較することによって、前記各本検査工程のうち当該S/N比が相対的に高い1つ又は複数の本検査工程を抽出することが好ましい。
【0033】
このようにすると、任意の欠陥について欠陥検出感度の高い本検査工程を容易に抽出することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によると、単一又は複数の検出系を用いた欠陥検査方法における閾値設定において、検査対象基板における色むらなどを含むノイズ信号の評価を行うことにより、特に検査対象基板の欠陥密度が低い場合又は欠陥信号とノイズ信号との比が小さい場合においても、ノイズ信号の最大強度に基づいて欠陥検出閾値を高精度で且つ短時間に設定できる。また、従来多大な時間を要していた検出系の感度調整についても高精度な校正を短時間に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る欠陥検査方法について図面を参照しながら説明する。
【0036】
図1は、第1の実施形態に係る欠陥検査方法、具体的には、本発明のノイズ評価により欠陥検出閾値を決定する方法の処理フローを示している。また、図2(a)〜(f)は、図1に示す処理フローの各ステップ(特にノイズ評価アルゴリズムによる信号変換方法)を説明するための図である。具体的には、図2(a)は図1のステップS102と対応し、図2(b)は図1のステップS103及びS104と対応し、図2(c)は図1のステップS105と対応し、図2(d)は図1のステップS106と対応し、図2(e)は図1のステップS107と対応し、図2(f)は図1のステップS109と対応する。尚、本実施形態においては、図2(a)〜(f)に示す処理によって、欠陥検査装置から画像信号を取り込み、当該信号に対してノイズ評価を行ない、その結果に基づいて閾値を決定する。
【0037】
まず、ステップS101において、サンプリング領域の設定を行う。これは、実際の検査対象(例えば基板)における検査対象領域を減らすための処理である。検査対象領域を減らすことによって、以下に説明するノイズ評価アルゴリズムを用いた閾値決定方法で処理されるデータに、実欠陥信号が極力含まれないようにすることができ、それによりノイズを正確に評価することができる。また、検査対象領域を減らすことによって、閾値決定に関する処理を迅速に行うことができる。
【0038】
後述するように、本実施形態によると、欠陥検査で検出される欠陥数の母数(全体数)が少ない場合においても、検査対象に合わせて閾値を高精度に設定することが可能である。また、閾値設定時には検査対象において欠陥を検出する必要がないので、より確実に閾値を設定することが可能であると共に閾値設定の自動化(高速化)も容易である。
【0039】
図3(a)〜(f)は、検査対象となるウェハ上におけるサンプリング領域の設定例を示している。本実施形態においては、欠陥検出閾値を高精度で且つ短時間に設定するためには、検査対象領域の全体面積に対するサンプリング領域の面積の割合(以下、サンプリング比率Rsと称する)を1%程度以上で且つ10%程度以下に設定することが望ましい。尚、図3(a)〜(c)は、サンプリング比率Rsが大きいサンプリング領域の設定例を示し、図3(d)〜(f)は、サンプリング比率Rsが小さいサンプリング領域の設定例を示す。
【0040】
本実施形態においては、サンプリング領域に対する検査によるノイズ評価結果を、サンプリング比率Rsを考慮して検査対象領域全体のノイズ評価結果とみなす。尚、サンプリング領域は検査対象領域全体に対して偏り無く設定される。これにより、サンプリング領域の設定によって検査対象領域の面積を減らした分に関しても、検査対象領域の全面積でのノイズ信号を精度良く復元できる。このため、ノイズの最大値(ノイズ信号の最大強度)を高精度で求めることが可能となり、サンプリング領域での色むらなどによる信号バラツキをノイズ信号として取り込むことが可能となる。
【0041】
具体的には、図3(a)〜(f)に示すように、ストライプ状又はアレイ状にサンプリング領域を設定することができる。検査対象上にパターンが無いような場合には、図3(a)、(d)に示すように、ストライプ状にサンプリング領域を設定するか、又は図3(b)、(e)に示すように、アレイ状に小さいサンプリング領域を設定することが有効である。一方、検査対象上にパターンが存在する場合には、図3(c)、(f)に示すように、パターンの繰り返し単位(例えばチップ領域などの繰り返し単位)に合わせて、アレイ状にサンプリング領域を設定することが望ましい。すなわち、サンプリング領域は、パターンの繰り返し単位を満遍なく含むことが好ましい。これにより、検査対象上にランダムにパターンが配置されている場合においても、繰り返しパターン間の差を全てノイズ信号に含ませることができる。
【0042】
次に、ステップS102において、前検査を行う。これは、サンプリング領域に対して前検査を行い、それによってノイズを評価するための処理である。具体的には、検査対象(例えば基板)にエネルギービーム(例えば電磁波)を照射することによって、当該検査対象から反射されたエネルギービームを画像信号として取得し、当該画像信号に含まれるノイズを評価する。尚、この前検査では欠陥数をカウントするための閾値設定は不要である。
【0043】
図2(a)は、ステップS102で得られた信号データ(画像信号)を示している。図2(a)に示すように、欠陥検査装置によって画像情報となる信号データ201を取得し、取得された信号データ201をA/D変換を用いてディジタル信号(ディジタル画像信号)に変換する。当該ディジタル信号にはノイズ信号と実際の欠陥信号とが含まれる。ここで、欠陥信号とは、検査対象上においてパターンが変形していたり又は異物が存在しているなどの異常(実欠陥)が生じていることを示している信号である。また、ノイズ信号は、検査対象上におけるパターン変形や異物の存在を示しているわけではないが、パターン比較の際に生じた検査パターンの位置ずれや色むらなどによって発生している信号である。すなわち、ノイズ信号は欠陥検査において欠陥として認識させたくない信号である。
【0044】
本実施形態では、ステップS101でサンプリング領域の面積を検査対象領域の全体面積に対して小さく設定しており、当該サンプリング領域に実欠陥がほとんど含まれていないため、図2(a)に示すように、ステップS101で得られた信号データ201はノイズ信号のみからなる。
【0045】
尚、検査対象上に繰り返しパターンが存在する場合には、同一検査対象内の繰り返しパターンを構成する複数の領域についてデータ信号201の差分を取得する。これにより、パターン自体に起因する信号が原理的にはキャンセルされるため、より高精度に欠陥を検出できる。従って、繰り返しパターンを有する検査対象に関しては、以下に説明するデータ処理において差分画像データを用いるものとする。また、パターンが存在しない検査対象に関しては、以下に説明するデータ処理において、検査対象領域を適切に分割することによって得られる差分画像データ、又は生画像データのいずれかを用いるものとする。
【0046】
次に、ステップS103において、データ変換(度数変換)を行う。これは、ステップS102の前検査によって得られたディジタル信号に対して度数変換を行うものである。また、度数変換とは、図2(a)に示すような、検査位置(検査ロケーション)と信号強度との関係を表すデータを、信号強度と信号度数(信号検出数)との関係を表すデータに変換することである。図2(b)は、ステップS102で得られた信号データを度数変換したデータを示している。図2(b)に示すデータは、横軸に信号強度を、離散化した数値である識別階調(256階調)を用いて表し、縦軸に各識別階調(256階調の刻み)に対して検出された信号数を表したものである。
【0047】
ところで、ノイズ信号は一般的に正規分布しているので、本実施形態においては、ステップS103で得られたノイズ信号データ(サンプリングデータ202)が正規分布しているものとする。すなわち、信号強度(本実施形態では識別階調)をtとすると検出数F(t)は、図2(b)に示すように、正規分布する。また、検出数F(t)は下記(式1)
【0048】
【数1】

【0049】
で表される。
【0050】
(式1)中には特に記述していないが、F(t)は、t=(t−m)/aとなるノイズ信号強度の平均値mを中心に正規分布している。aはバラツキ幅に関する係数である。
【0051】
尚、以上の説明においては、ステップS102の前検査とステップS103のデータ変換(度数変換)とを別処理として記述した。しかし、ステップS102の前検査とステップS103のデータ変換(度数変換)とは同時に処理されることが望ましい。すなわち、各処理を別々に行うためには全てのデータを一時保存する必要があり、膨大なメモリが必要となるからである。そこで、ステップS102の前検査でデータを取得しながら識別諧調毎のカウンターに加算すれば、データの一時保存用のメモリは識別諧調の数だけでよくなり、ステップS102の前検査と同時にステップS103のデータ変換(度数変換)を容易に実施することができる。
【0052】
次に、ステップS104において、データ変換(母数変換)を行う。具体的には、サンプリング領域と全検査対象領域とではノイズの検出母数が異なっているため、サンプリング領域で検出されたノイズの検出数に、(検査対象領域の全体面積/サンプリング領域の面積=1/Rs)を掛け合わせることによって、サンプリング領域で得られたノイズの検出数(サンプリングデータ202)を全検査対象領域の母集団データ203に直す。例えば、サンプリング領域の面積を検査対象領域の全体面積の10%程度に設定した場合には、サンプリングデータ202を10倍することによって母集団データ203が得られる。
【0053】
尚、以下に説明するデータ処理は、全検査対象領域の母集団データ203に対して行うものとする。但し、図2(b)〜(e)においては、サンプリング領域のサンプリングデータ202及び全検査対象領域の母集団データ203を合わせて示している。
【0054】
また、図2(b)に示す度数変換後のデータにおいて、縦軸は検出数であり、横軸は識別諧調であるが、検査単位(ピクセルサイズ)が小さくなれば、全検査対象領域の母集団データ203の数は大きくなる。
【0055】
次に、ステップS105において、データ変換(累積変換)を行う。具体的には、ステップS104で得られた全検査対象領域の母集団データ203について、ある識別諧調を以上の強度を持つノイズ信号の数をカウントし、それにより、信号強度(識別諧調)と累積検出数との関係を表すデータに変換する。図2(c)は、ステップS105の累積変換により得られたデータを示している。図2(b)において、横軸は識別諧調(t)を表し、縦軸は、識別諧調(t)以上の強度を持つノイズ信号の検出数を識別諧調(t)により積分することによって得られた累積検出数S(t)である。累積検出数S(t)は、下記(式2)
【0056】
【数2】

【0057】
で表される。尚、(式2)における積分区間はt=t〜∞である。
【0058】
次に、ステップS106において、データ変換(対数変換)を行う。具体的には、ステップS105で得られた全検査対象領域の母集団データ203を対数変換する。図2(d)は、ステップS106の対数変換により得られたデータを示している。ここで、対数変換とは、累積検出数S(t)を対数値L(t)に変換することである。すなわち、母集団データ203の総数をNとすると、対数値L(t)は、下記(式3)
【0059】
【数3】

【0060】
で表される。
【0061】
次に、ステップS107において、データ変換(3乗根変換)を行う。具体的には、ステップS106で得られた、対数変換後の母集団データ203を3乗根変換する。図2(e)は、ステップS107の3乗根変換により得られたデータを示している。ここで、3乗根変換とは、累積検出数S(t)の対数値L(t)を3乗根G(t)に変換することである。すなわち、3乗根G(t)は、下記(式4)
【0062】
【数4】

【0063】
で表される。
【0064】
尚、3乗根G(t)は、データが存在しているtの区間においては、−tに比例する直線となる。また、G(t)の最大値となるte以下のtにおいてはG(t)=G(te)で一定である。
【0065】
次に、ステップS108において、データ分解を行う。本実施形態は、ノイズ信号が複数の正規分布の集まりから構成されているものとして、ノイズ信号が複雑である場合においても高精度に閾値を決定するものである。但し、検査対象上にパターンが存在しない場合などのように、ノイズ信号の主体が下地色むらに起因するノイズ信号であれば、データ分解の必要はない。また、検査対象上にパターンが存在する場合でも当該パターンが検査ピクセルサイズと同等か若しくはそれ以下の微細な繰り返しパターンであって当該パターンを無視できる場合も、データ分解の必要はない。
【0066】
ここでは、まず、ステップS108のデータ分解が必要ない場合に関して、ステップS109以降のデータ処理の流れを説明する。
【0067】
すなわち、ステップS109において、閾値設定を行う。具体的には、まず、図2(e)に示すように、3乗根G(t)に対してクロスポイントt0を求めるために、S(t)=1となるG(t)を求める。すなわち、G(t0)=(log(1/N))1/3 となるクロスポイントt0をG(t)の直線近似式を用いて求める。
【0068】
ここで、S(t)=1とはノイズ信号の累積検出数が1個であることを意味し、t0は、ノイズ信号の最大強度を表す。そこで、信号強度をディジタル値である識別諧調を用いて表している本実施形態では、図2(f)に示すように、t0が属する識別諧調の1つ上の識別諧調を欠陥検出閾値tthに設定する。言い換えると、累積検出数S(t)が1未満となる最大の識別階調を欠陥検出閾値tthに設定する。すなわち、t0が小数点以下を持つ数であれば、tthはt0の小数点以下を切り上げた整数となる。
【0069】
尚、G(t)の直線近似式を求めるためのデータとしては、t0を精度良く求めるためにt0近傍のデータを用いることが有効である。また、t0近傍のデータ、具体的には、tがt0−1、t0−2、・・・t0−nとなるG(t)のデータを用いて直線近似を行なう場合、S(t0−n)×サンプリング比率Rsが100以上となるnを用いる。すなわち、Rsが10%であれば、S(t0−n)が1000以上となるnを用い、Rsが1%であれば、S(t0−n)が10000以上となるnを用いる。このとき、直線近似において用いるデータの個数が4個以上であれば、十分な近似精度を得ることができる。また、以上に述べた、ディジタル信号であるノイズ信号の最大強度t0は、直線近似による外挿値として算出されるが、最大強度t0の近傍のデータを用いて直線近似を行っているため、最大強度t0に関して実データと近似直線との一致性が高く、ノイズ信号の最大強度t0を高精度で算出することができる。
【0070】
以下、ステップS108のデータ分解が必要な場合に関して、ステップS109の閾値設定までの処理内容について、図4(a)〜(f)を参照しながら説明する。尚、図4(a)〜(f)において、ステップS108のデータ分解を説明するために、図4(f)に示すデータ変換(3乗根変換)後に行うデータ分解の元データとなる図4(b)〜(f)に示すデータに関しても、データ分解されたデータを併記している。尚、ステップS108のデータ分解において分解されるノイズ信号データは、(式4)に示した3乗根G(t)関数である。ステップS108ではG(t)が−tに比例することを用いる。
【0071】
まず、検査対象上のパターン(下地パターン)が複雑な場合には、図4(a)に示すように、ステップS102で得られた信号データ(画像信号)401つまりノイズ信号には、色むらやパターンエッジなどに起因する信号バラツキが存在する。このノイズ信号に対して、ステップS103のデータ変換(度数変換)及びステップS104のデータ変換(母数変換)を行うと、図4(b)に示すサンプリングデータ402及び母集団データ403が得られる。ここで、図4(b)に示すデータは、図4(c)に示すように、複数のノイズ信号が重なり合うことによって生成される。尚、図4(c)は、4種類のノイズ信号成分(F1、F2、F3、F4)が重なり合っている場合を示している。また、図4(c)において、各ノイズ信号成分はそれぞれ正規分布形状を示しているが、各ノイズ信号成分の信号数(検出数)、バラツキ幅及び平均値などは互いに異なっている。さらに、図4(c)においては、各ノイズ信号成分の信号強度(本実施形態では識別階調)(t)に対する度数分布関数をFx(t)として示している。ここで、xはノイズ成分の数である。また、実際に検出されるノイズ信号数F(t)は、各ノイズ信号成分の和として、下記(式5)
【0072】
【数5】

【0073】
で表される。また、Fx(t)は下記(式6)
【0074】
【数6】

【0075】
で表される。
【0076】
次に、ステップS105のデータ変換(累積変換)により、図4(c)に示すデータが図4(d)に示すデータに変換される。尚、実際に検出されるノイズ信号の累積検出数S(t)は、各ノイズ信号成分の識別階調(t)に対する累積検出数Sx(t)の和として、下記(式7)
【0077】
【数7】

【0078】
で表される。また、Sx(t)は下記(式8)
【0079】
【数8】

【0080】
で表される。尚、(式8)における積分区間はt=t〜∞である。
【0081】
次に、ステップS106のデータ変換(対数変換)により、図4(d)に示すデータが図4(e)に示すデータに変換される。尚、実際に検出されるノイズ信号の対数変換累積検出数L(t)及び各ノイズ信号成分の対数変換累積検出数Lx(t)はそれぞれ、母集団データ403の総数をNとすると、下記(式9)及び(式10)
【0082】
【数9】

【0083】
【数10】

【0084】
で表される。
【0085】
次に、ステップS107のデータ変換(3乗根変換)により、図4(e)に示すデータが図4(f)に示すデータに変換される。尚、実際に検出されるノイズ信号の対数変換3乗根累積検出数G(t)及び各ノイズ信号成分の対数変換3乗根累積検出数Gx(t)はそれぞれ、下記(式11)及び(式12)
【0086】
【数11】

【0087】
【数12】

【0088】
で表される。尚、3乗根G(t)及びGx(t)は、データが存在しているtの区間においては、−tに比例する直線となる。
【0089】
次に、ステップS108において、図5及び図6に示すように、データ分解を行ない、その後、ステップS109において、閾値設定を行う。
【0090】
まず、図4(f)及び図5に示すように、3乗根G(t)に対してクロスポイントt0を求めるために、S(t)=1となるG(t)を求める。具体的には、図5に示すように、3乗根G(t)をtのマイナス方向へ微分し、D(t)=dG(t)/dtを得る。
【0091】
次に、tのマイナス方向へ向かって、D(t)がプラス向きとなる識別階調t(以下、データスタート階調txcと称する)を検出していく。このとき、データスタート階調txcのうちの最大値tmaxはノイズ信号の最大強度(つまり図4(f)に示すクロスポイントt0)を示している。また、最大データスタート階調tmax未満のtxcについては、別のノイズ信号成分の存在を示している。
【0092】
次に、tのマイナス方向へ向かって、D(t)がマイナス向きとなる識別階調t(以下、データエンド階調txeと称する)を検出していく。txeは、あるノイズ信号成分が存在しなくなる識別階調を示している。
【0093】
次に、tのマイナス方向へ向かって、D(t)が一定となるときの当該D(t)の値(つまりG(t)の傾きDx(t))を検出する。
【0094】
次に、図6に示すように、図5に示す処理で得られた最大データスタート階調tmax、データエンド階調txe、データスタート階調txc、及びG(t)の傾きDx(t)を用いて、G(t)をGx(t)に分解する。図6においては、分解後のGx(t)を破線で示している。
【0095】
次に、G(t)の直線近似を行って閾値を決定するためのデータ範囲を決定する。データ範囲決定要件の1つは、識別階調tの大きい方からG(t)のグラフを見たときに傾きが最初に減少する識別階調(図6ではデータエンド階調t4e)以上であることである。さらに、他のデータ範囲決定要件は、S(t0−n)×サンプリング比率Rsが100以上となるn(図6では階調tb)であることである。以上が、ステップS108のデータ分解の処理内容である。
【0096】
次に、ステップS109において、閾値設定を行う。具体的には、前述のデータ範囲内に他のGx(t)のデータが存在している場合には、当該Gx(t)によるデータ増加分を差し引いて直線近似のためのデータ(図6ではG4のデータ)を得る。続いて、tmaxを通るGx(t)のデータ(直線近似のためのデータ)を用いて、S(t)=1となるクロスポイントt0を求める。最後に、t0が属する識別諧調の1つ上の識別諧調を欠陥検出閾値tthに設定する。言い換えると、累積検出数S(t)が1未満となる最大の識別階調を欠陥検出閾値tthに設定する。
【0097】
次に、ステップS110において、ステップS101〜S109で得られた各種データ(信号分布データ)をデータベース(欠陥データベース)に出力する。
【0098】
以上に説明したように、第1の実施形態によると、検査対象基板における色むらなどを含むノイズ信号の評価を行うことによって、特に検査対象基板の欠陥密度が低い場合又は欠陥信号とノイズ信号との比が小さい場合においても、検査対象基板のノイズ信号の最大強度に基づいて欠陥検出閾値を高精度で且つ短時間に設定することができる。すなわち、欠陥検出閾値を一意に且つ自動的に設定することができる。特に、全検査対象領域に対して満遍なく設定されたサンプリング領域の検査によって得られたノイズ信号を評価することによって、欠陥検出閾値を高精度で且つより短時間に設定することができる。従って、欠陥の誤検出や見逃しの可能性を最小化することができると共に検査バラツキを低減することができる。
【0099】
また、第1の実施形態によると、検査対象のノイズ信号を考慮して欠陥検出閾値を求めるため、検査対象基板における色むらなどに起因するノイズ信号(下地ノイズ)の変化によって、欠陥の誤検出や見逃しが起こることを防止することができる。
【0100】
また、第1の実施形態によると、欠陥の累積検出数が少なく実欠陥を用いて閾値を設定することが難しい検査対象基板においても、当該検査対象基板に応じた適正な閾値を高精度で設定することができるので、欠陥の誤検出や見逃しを最小限にした欠陥検査が可能となる。さらに、閾値設定に要する時間を大幅に短縮できると共に、閾値設定をコンピュータ及びソフトウェアを用いて自動化することができる。
【0101】
尚、第1の実施形態において、欠陥検出閾値を求めるためのサンプリング領域の面積の全検査対象領域の面積に対する比率(サンプリング比率Rs)を1%以上で且つ10%以下に設定した。しかし、検査対象上の欠陥密度が小さく且つサンプリング領域の検査に要する時間が短い場合には、つまり実質的に運用可能である場合には、サンプリング比率Rsが10%を超えてもよい。
【0102】
また、第1の実施形態において、ステップS102の前検査で用いるエネルギービームの種類は特に限定されないが、例えば光等の電磁波、電子線又は放射線などを用いることができる。
【0103】
また、第1の実施形態において、ステップS102の前検査とステップS103のデータ変換(度数変換)とを同時処理することが望ましいこと、言い換えると、当該前検査でデータを取得しながら識別諧調毎のカウンターに加算すれば、データを一時保存するためのメモリは識別諧調の数だけ準備すればよくなり、ステップS102の前検査と同時にステップS103のデータ変換(度数変換)を容易に実施できることを説明した。しかし、これに代えて、ステップS103のデータ変換(度数変換)の処理をスキップして、ステップS102の前検査とステップS105のデータ変換(累積変換)とによって、図2(c)に示すデータを取得することも可能である。具体的には、当該前検査でデータを取得しながら、検査中に逐次検出される信号の強度を判別し、当該強度がある値(識別諧調)以上である場合には当該識別諧調に対して信号検出数を加算すればよい。このようにすると、ステップS103のデータ変換(度数変換)を省略できるため、さらに高速な処理を実現できる。また、この場合、データを取得しながら行う信号処理は、メモリと演算装置とによってなされるが、検査における検査装置及びアプリケーションソフトのそれぞれに対する負荷を考慮し、当該信号処理にそれぞれ専用のメモリ及び演算装置を用いることによって、処理の高速化を図ることが望ましい。
【0104】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る欠陥検査方法について図面を参照しながら説明する。
【0105】
図7は、第2の実施形態に係る欠陥検査方法、具体的には、本発明のノイズ評価により検査フォーカスを決定する方法の処理フローを示している。また、図8(a)〜(e)及び図9は、図7に示す処理フローの各ステップ(特にノイズ評価アルゴリズムによる信号変換方法)を説明するための図である。具体的には、図8(a)は図7のステップS202と対応し、図8(b)は図7のステップS203及びS204と対応し、図8(c)は図7のステップS205と対応し、図8(d)は図7のステップS206と対応し、図8(e)は図7のステップS207及びS208と対応し、図9は図7のステップS211と対応する。尚、本実施形態においては、図8(a)〜(e)及び図9に示す処理によって、欠陥検査装置から画像信号を取り込み、当該信号に対してノイズ評価を行ない、その結果に基づいて検査フォーカス閾値を決定する。
【0106】
本実施形態の検査フォーカスの設定においては、フォーカスを例えば4水準変化させ、それぞれのフォーカスで得られる欠陥検出閾値を用いて当該閾値を最大にできるフォーカス値を求める。
【0107】
具体的には、まず、ステップS201において、サンプリング領域の設定を行うと共にフォーカスの初期設定を行う。続いて、フォーカスを4水準変化させて、各フォーカスについて、ステップS202の前検査からステップS209の閾値設定までの処理を実施する。尚、ステップS201〜S209の処理内容(図8(a)〜(e)参照)については、基本的に第1の実施形態のステップS101〜S109の処理内容と同じであるので、詳細な説明を省略する。また、説明を簡単にするために、図8(e)に示すデータ分解については、各フォーカスにより得られたノイズ信号を構成する複数のノイズ信号成分を示さないで、データ分解後における最大信号強度を持つノイズ信号成分のみを示している。
【0108】
次に、ステップS210において、4水準のフォーカスによる検査が全て終了したかどうかを判定し、終了した場合にはステップS211のフォーカス設定に進む。ここで、ステップS209の閾値設定において、各検査フォーカスfx(x=1〜4)について得られた欠陥検出閾値をtth(fx)とする。
【0109】
次に、ステップS211において、フォーカス設定を行う。本実施形態では、図9に示すように、フォーカスfに対する閾値tの関係を、下記(式13)
【0110】
【数13】

【0111】
で表される、上に凸のfの2乗曲線によって近似する。そこで、最小二乗法を用いてt(f)が最大となるフォーカス値fmを求める。これにより得られたフォーカス値fmが最適フォーカスとなる。すなわち、フォーカス値fmにおいて検査した場合に、欠陥検出閾値が最大になるので、当該場合に、ノイズ信号の振幅つまり信号強度が大きいことになるからである。
【0112】
次に、ステップS212において、各検査フォーカスfx(x=1〜4)について得られた欠陥検出閾値tth(fx)、及び最適フォーカス値fmを出力する。
【0113】
以上に説明したように、第2の実施形態によると、第1の実施形態と同様の効果に加えて、次のような効果が得られる。すなわち、検査対象基板の画像コントラストを利用してフォーカス設定を行なっていた従来技術と比べて、当該検査対象基板に応じた適正なフォーカスを高精度で一意に且つ自動的に設定することができる。特に、全検査対象領域に対して満遍なく設定されたサンプリング領域の検査によって得られたノイズ信号を評価することによって、検査対象のノイズ信号を考慮したフォーカスを高精度で設定できるので、欠陥の誤検出や見逃しの可能性が低く且つ検査ばらつきが少ない欠陥検査を実現することができる。
【0114】
また、第2の実施形態によると、フォーカス設定に要する時間を大幅に短縮できると共に、後述するように、フォーカス設定をコンピュータ及びソフトウェアを用いて自動化することができる。
【0115】
尚、第2の実施形態において、フォーカスを4水準変化させることによって最適フォーカスを導出したが、これに限らず、検査時間や検査対象の状態等に応じて、フォーカスを3水準以上の任意の水準数で変化させることによって最適フォーカスを導出してもよい。
【0116】
また、第2の実施形態において、ステップS202の前検査で用いるエネルギービームの種類は特に限定されないが、例えば光等の電磁波、電子線又は放射線などを用いることができる。また、本実施形態では、エネルギービームとして光を用いることを前提として、フォーカス設定を行なったが、これに代えて、波長等の他のパラメータの設定も同様に行うことができ、選択したパラメータについて感度が最大となる値を得ることができる。また、エネルギービームとして電子線を用いる場合には、電子レンズによるフォーカス、加速エネルギー又は通電電流等のパラメータの設定も同様に行うことができる。
【0117】
また、第2の実施形態において、フォーカスを高精度で且つ短時間に設定するためには、サンプリング領域の面積の全検査対象領域の面積に対する比率(サンプリング比率Rs)を1%以上で且つ10%以下に設定することが好ましい。しかし、検査対象上の欠陥密度が小さく且つサンプリング領域の検査に要する時間が短い場合には、つまり実質的に運用可能である場合には、サンプリング比率Rsが10%を超えてもよい。
【0118】
また、第2の実施形態において、ステップS202の前検査とステップS203のデータ変換(度数変換)とを同時処理することが望ましい。具体的には、当該前検査でデータを取得しながら識別諧調毎のカウンターに加算すれば、データを一時保存するためのメモリは識別諧調の数だけ準備すればよくなり、ステップS202の前検査と同時にステップS203のデータ変換(度数変換)を容易に実施することができる。しかし、これに代えて、ステップS203のデータ変換(度数変換)の処理をスキップして、ステップS202の前検査とステップS205のデータ変換(累積変換)とによって、図8(c)に示すデータを取得することも可能である。具体的には、当該前検査でデータを取得しながら、検査中に逐次検出される信号の強度を判別し、当該強度がある値(識別諧調)以上である場合には当該識別諧調に対して信号検出数を加算すればよい。このようにすると、ステップS203のデータ変換(度数変換)を省略できるため、さらに高速な処理を実現できる。また、この場合、データを取得しながら行う信号処理は、メモリと演算装置とによってなされるが、検査における検査装置及びアプリケーションソフトのそれぞれに対する負荷を考慮し、当該信号処理にそれぞれ専用のメモリ及び演算装置を用いることによって、処理の高速化を図ることが望ましい。
【0119】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係る欠陥検査方法について図面を参照しながら説明する。
【0120】
図10は、第3の実施形態に係る欠陥検査方法、具体的には、本発明のノイズ評価に基づいて、複数の検査器(検出系)を有する検査装置における各検査器が同じ検査感度を持つように検査特性を調整する方法の処理フローを示している。また、図11(a)〜(e)は、図10に示す処理フローの各ステップ(特にノイズ評価アルゴリズムによる信号変換方法)を説明するための図である。具体的には、図11(a)は図10のステップS302と対応し、図11(b)は図10のステップS303及びS304と対応し、図11(c)は図10のステップS305と対応し、図11(d)は図10のステップS306と対応し、図11(e)は図10のステップS307及びS308と対応する。尚、本実施形態においては、図8(a)〜(e)に示す処理によって、欠陥検査装置から画像信号を取り込み、当該信号に対してノイズ評価を行ない、その結果から得られた閾値に基づいて、後述する各検査器の閾値オフセット及び係数を決定する。
【0121】
まず、ステップS301において、サンプリング領域の設定を行った後、全ての検査器について、ステップS302の前検査からステップS309の閾値設定までの処理を実施する。尚、ステップS301〜S309の処理内容(図11(a)〜(e)参照)については、基本的に第1の実施形態のステップS101〜S109の処理内容と同じであるので、詳細な説明を省略する。また、説明を簡単にするために、図11(e)に示すデータ分解については、各検査器によって得られたノイズ信号を構成する複数のノイズ信号成分を示さないで、データ分解後における最大信号強度を持つノイズ信号成分のみを示している。
【0122】
次に、ステップS310において、全ての検査器についての検査が全て終了したかどうかを判定し、終了した場合にはステップS311の閾値調整値の設定に進む。ここで、ステップS309の閾値設定において、各検査器x(本実施形態ではx=1〜4)について得られた欠陥検出閾値及び対数変換3乗根累積検出数をそれぞれtthx及びGx(t)とする。
【0123】
次に、ステップS311において、閾値調整値の設定を行う。具体的には、まず、各Gx(t)を信号強度(本実施形態では識別階調)tによって微分することにより、各Gx(t)の傾きDx=dGx(t)/dtを得る。次に、tthx及びDxのそれぞれの中央値、つまり中央値(tthx)及び中央値(Dx)と、下記(式14)及び(式15)
【0124】
【数14】

【0125】
【数15】

【0126】
とを用いて、各検査器xについて、閾値tthxのオフセット値t0xと傾きDxの係数αxを求め、各検査器xによる検査特性を調整する。すなわち、各閾値tthxについては、(式14)に示すように、同じ中央値(tthx)が得られるように、オフセット値t0xを加算する。また、各傾きDxについては、同じ中央値(Dx)が得られるように、係数αxを積算する。
【0127】
次に、ステップS312において、各検査器xについて得られた傾き(閾値近似直線Gx(t)の傾き)Dx及びオフセット値t0xを出力する。
【0128】
以上に説明したように、第3の実施形態によると、第1の実施形態と同様の効果に加えて、次のような効果が得られる。すなわち、複数の検出系を有する欠陥検査装置を用いる場合であっても、各検出系の欠陥検出閾値が同じになるように閾値校正を行なうことが可能となるので、各検出系の欠陥検出閾値を高精度で一定且つ適正に保つことができる。言い換えると、欠陥検出閾値の調整を一意に且つ自動的に行うことができる。従って、欠陥の誤検出や見逃しの可能性が低く且つ検査ばらつきが少ない欠陥検査を実現することができる。
【0129】
また、第3の実施形態によると、各検査器(検出系)について得られたノイズ信号の最大強度に基づいて算出された閾値が一定となるようにフィッティングを行っているので、検出系間の閾値ずれが小さくなるように閾値校正を実施できる。
【0130】
また、第3の実施形態によると、検出系間における前述の閾値tthx及び傾きDxのそれぞれのばらつきから、異常な検出系を特定することも可能となる。当該特定の方法としては、例えば統計的データに対する分散分析による検定を用いてもよい。
【0131】
尚、第3の実施形態において、検出系の数が限定されないことは言うまでもない。
【0132】
また、第3の実施形態において、ステップS302の前検査で用いるエネルギービームの種類は特に限定されないが、例えば光等の電磁波、電子線又は放射線などを用いることができる。
【0133】
また、第3の実施形態において、閾値校正を高精度で且つ短時間に行なうためには、サンプリング領域の面積の全検査対象領域の面積に対する比率(サンプリング比率Rs)を1%以上で且つ10%以下に設定することが好ましい。しかし、検査対象上の欠陥密度が小さく且つサンプリング領域の検査に要する時間が短い場合には、つまり実質的に運用可能である場合には、サンプリング比率Rsが10%を超えてもよい。
【0134】
また、第3の実施形態において、ステップS302の前検査とステップS303のデータ変換(度数変換)とを同時処理することが望ましい。具体的には、当該前検査でデータを取得しながら識別諧調毎のカウンターに加算すれば、データを一時保存するためのメモリは識別諧調の数だけ準備すればよくなり、ステップS302の前検査と同時にステップS303のデータ変換(度数変換)を容易に実施することができる。しかし、これに代えて、ステップS303のデータ変換(度数変換)の処理をスキップして、ステップS302の前検査とステップS305のデータ変換(累積変換)とによって、図11(c)に示すデータを取得することも可能である。具体的には、当該前検査でデータを取得しながら、検査中に逐次検出される信号の強度を判別し、当該強度がある値(識別諧調)以上である場合には当該識別諧調に対して信号検出数を加算すればよい。このようにすると、ステップS303のデータ変換(度数変換)を省略できるため、さらに高速な処理を実現できる。また、この場合、データを取得しながら行う信号処理は、メモリと演算装置とによってなされるが、検査における検査装置及びアプリケーションソフトのそれぞれに対する負荷を考慮し、当該信号処理にそれぞれ専用のメモリ及び演算装置を用いることによって、処理の高速化を図ることが望ましい。
【0135】
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態に係る欠陥検査方法について図面を参照しながら説明する。
【0136】
図12は、第4の実施形態に係る欠陥検査方法、具体的には、本発明のノイズ評価により、複数の検査器(検出系)を有する検査装置における各検査器が同じフォーカスを持つように検査特性を調整する方法の処理フローを示している。
【0137】
本実施形態においては、全ての検査器について、図7、図8(a)〜(e)及び図9に示す第2の実施形態と同様にフォーカスを例えば4水準変化させ、それぞれのフォーカスで得られる欠陥検出閾値を用いて当該閾値を最大にできるフォーカス値を求め、当該フォーカス値が各検査器において同じになるように当該フォーカス値に対してオフセット値を加算する。
【0138】
具体的には、まず、ステップS401において、サンプリング領域の設定を行うと共にフォーカスの初期設定を行う。続いて、全ての検査器について、フォーカスを4水準変化させてステップS402の前検査からステップS409の閾値設定までの処理を実施する。尚、ステップS401〜S409の処理内容については、基本的に第1の実施形態のステップS101〜S109の処理内容又は第2の実施形態のステップS201〜S209の処理内容と同じであるので、詳細な説明を省略する。また、説明を簡単にするために、ステップS408のデータ分解については、各検査器によって得られたノイズ信号を構成する複数のノイズ信号成分に代えて、データ分解後における最大信号強度を持つノイズ信号成分のみを考慮する。
【0139】
次に、ステップS410において、ある検査器について、4水準のフォーカスによる検査が全て終了したかどうかを判定し、終了した場合にはステップS411のフォーカス設定に進む。ステップS411の処理内容については、基本的に第2の実施形態のステップS211の処理内容と同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0140】
次に、ステップS412において、全ての検査器についての検査が全て終了したかどうかを判定し、終了した場合にはステップS413のフォーカス調整値の設定に進む。ここで、ステップS411のフォーカス設定において、各検査器x(本実施形態ではx=1〜4)について得られた最適フォーカス値をfmxとする。
【0141】
次に、ステップS413において、フォーカス調整値を行う。具体的には、各検査器xの最適フォーカス値fmxの中央値、つまり中央値(fmx)と、下記(式16)
【0142】
【数16】

【0143】
とを用いて、各検査器xについて、最適フォーカス値fmxのオフセット値f0xを求め、各検査器xによる検査特性を調整する。すなわち、各最適フォーカス値fmxについては、(式16)に示すように、同じ中央値(fmx)が得られるように、オフセット値f0xを加算する。
【0144】
次に、ステップS414において、各検査器x(x=1〜4)について得られた欠陥検出閾値tthx及び最適フォーカス値fmx(フォーカス曲線データ)を出力する。
【0145】
以上に説明したように、第4の実施形態によると、第1の実施形態と同様の効果に加えて、次のような効果が得られる。すなわち、複数の検出系を有する欠陥検査装置を用いる場合であっても、各検出系の検査フォーカス値が同じになるようにフォーカス校正を行なうことが可能となるので、各検出系の検査フォーカス値を高精度で一定且つ適正に保つことができる。言い換えると、検査フォーカス値の調整を一意に且つ自動的に行うことができる。従って、欠陥の誤検出や見逃しの可能性が低く且つ検査ばらつきが少ない欠陥検査を実現することができる。
【0146】
また、第4の実施形態によると、各検査器(検出系)について得られたノイズ信号の最大強度に基づいて算出された最適フォーカス値が一定となるようにフィッティングを行っているので、検出系間のフォーカスずれが小さくなるようにフォーカス校正を実施することができる。
【0147】
また、第4の実施形態によると、検出系間における前述の最適フォーカス値fmxのばらつきから、異常な検出系を特定することも可能となる。当該特定の方法としては、例えば統計的データに対する分散分析による検定を用いてもよい。
【0148】
尚、第4の実施形態において、検出系の数が限定されないことは言うまでもない。
【0149】
また、第4の実施形態において、フォーカスを4水準変化させることによって最適フォーカスを導出したが、これに限らず、検査時間や検査対象の状態等に応じて、フォーカスを3水準以上の任意の水準数で変化させることにより最適フォーカスを導出してもよい。
【0150】
また、第4の実施形態において、ステップS402の前検査で用いるエネルギービームの種類は特に限定されないが、例えば光等の電磁波、電子線又は放射線などを用いることができる。また、本実施形態では、エネルギービームとして光を用いることを前提として、フォーカス設定を行なったが、これに代えて、波長等の他のパラメータの設定も同様に行うことができ、選択したパラメータについて感度が最大となる値を得ることができる。また、エネルギービームとして電子線を用いる場合には、電子レンズによるフォーカス、加速エネルギー又は通電電流等のパラメータの設定も同様に行うことができる。
【0151】
また、第4の実施形態において、フォーカスを高精度で且つ短時間に設定するためには、サンプリング領域の面積の全検査対象領域の面積に対する比率(サンプリング比率Rs)を1%以上で且つ10%以下に設定することが好ましい。しかし、検査対象上の欠陥密度が小さく且つサンプリング領域の検査に要する時間が短い場合には、つまり実質的に運用可能である場合には、サンプリング比率Rsが10%を超えてもよい。
【0152】
また、第4の実施形態において、ステップS402の前検査とステップS403のデータ変換(度数変換)とを同時処理することが望ましい。具体的には、当該前検査でデータを取得しながら識別諧調毎のカウンターに加算すれば、データを一時保存するためのメモリは識別諧調の数だけ準備すればよくなり、ステップS402の前検査と同時にステップS403のデータ変換(度数変換)を容易に実施することができる。しかし、これに代えて、ステップS403のデータ変換(度数変換)の処理をスキップして、ステップS402の前検査とステップS405のデータ変換(累積変換)とによって、累積検出数を取得することも可能である。具体的には、当該前検査でデータを取得しながら、検査中に逐次検出される信号の強度を判別し、当該強度がある値(識別諧調)以上である場合には当該識別諧調に対して信号検出数を加算すればよい。このようにすると、ステップS403のデータ変換(度数変換)を省略できるため、さらに高速な処理を実現できる。また、この場合、データを取得しながら行う信号処理は、メモリと演算装置とによってなされるが、検査における検査装置及びアプリケーションソフトのそれぞれに対する負荷を考慮し、当該信号処理にそれぞれ専用のメモリ及び演算装置を用いることによって、処理の高速化を図ることが望ましい。
【0153】
(第5の実施形態)
以下、本発明のノイズ評価アルゴリズムを組み込んだ、第5の実施形態に係る欠陥検査システム、欠陥検査方法、S/N比評価方法及び検査オペレーションについて、図面を参照しながら説明する。
【0154】
図13は、第5の実施形態に係る欠陥検査システムの概略構成及びデータフローを示している。図13に示すように、本実施形態の欠陥検査システム(欠陥検査装置)の構成は、制御部1001、検出部1002及び画像処理部1003に大きく分けられる。制御部1001は、システム制御を行なう制御部本体1004と、オペレーターが指示を出したり又は欠陥検査結果のデータを確認したりするためのオペレーション端末1005とから構成されている。検出部1002は、ステージ1011上に設置された評価対象1010に対して光などを照射することによって得られる投影像を検出するための例えばイメージセンサー1007並びにレンズ1008及び1009から構成されている。
【0155】
イメージセンサー1007によって得られた画像信号は画像処理部1003の画像メモリ1012に逐次転送される。画像処理部1003においては、欠陥抽出画像処理回路1016により当該画像信号に対して画像比較や画像のフィルタリングなどの処理が行われ、欠陥と判定されたデータが欠陥部画像メモリ1017に蓄積される。また、同時に、画像メモリ1012に転送された画像データ信号は、累積カウンター1013によって、信号強度と検出数(度数)又は累積検出数(累積度数)との関係を表すデータに変換され、当該データは信号分布データとしてバッファメモリ1014に蓄積される。さらに、バッファメモリ1014に蓄積された累積度数データに対して、演算装置1015によって対数変換や3乗根変換が行なわれ、その結果がバッファメモリ1014に格納される。
【0156】
後述する本実施形態のサンプリング検査では、バッファメモリ1014に格納された変換データを用いて、欠陥検出閾値の自動設定を行う。
【0157】
また、後述する本実施形態の本体検査で検出された欠陥についてはそれぞれS/N比が算出され、算出結果が欠陥部画像メモリ1017に欠陥情報として付加される。また、欠陥情報として、欠陥の位置、大きさ、種類又はS/N比などがデータベース1006に蓄積される。さらに、前述のデータ変換により得られた信号分布データもデータベース1006に蓄積される。
【0158】
以下、図13に示す本実施形態の欠陥検査システムを用いた欠陥検査方法、S/N比評価方法及び検査オペレーションについて説明する。
【0159】
図14は、本実施形態の欠陥検査方法の処理フローを示している。図15(a)及び(b)はそれぞれ、本実施形態のS/N比評価方法(データ解析方法)を説明するための図である。また、図16及び図17は、本実施形態の検査オペレーションを説明するための図である。
【0160】
まず、ステップS501において、検査条件設定を行う。具体的には、最初に、ステップS502において、オペレーション端末1005に表示された例えば図16に示すような画面のサンプリング条件1301を選択することによって、サンプリング検査の条件設定を行う。図16に示すサンプリング条件1301の選択肢としては例えば「自動」及び「マニュアル」がある。「自動」が選択された場合には、検査時間を考慮して例えば検査対象基板上において検査対象チップ又は検査対象領域が自動的に満遍なく設定される。また、「マニュアル」が選択された場合には、検査対象チップやサンプリング比率を個別に設定したり又はサンプリング検査を行わないなどの選択をすることができる。
【0161】
次に、ステップS503において、閾値設定条件選択を行う。具体的には、例えば図16に示すような画面の閾値設定条件1302を選択することによって、第1の実施形態で説明したサンプリング検査による閾値の自動設定を行うか又は閾値を事前に与えるかを選択する。ここでは、第1の実施形態の閾値自動設定を選択するものとする。
【0162】
次に、ステップS504において、フォーカス設定条件選択を行う。具体的には、例えば図16に示すような画面のフォーカス設定条件1303を選択することによって、第2の実施形態で説明したサンプリング検査によるフォーカス値の自動設定を行うか又はフォーカス値を事前に与えるかを選択する。ここでは、第2の実施形態のフォーカス自動設定を選択するものとする。
【0163】
次に、ステップS505において、サンプリング検査を実施する。サンプリング検査においては、ステップS502で検査対象基板上に設定されたサンプリング領域に対してエネルギービームを照射し、当該領域から反射されたエネルギービームを画像信号として取得する。具体的には、最初に、ステップS506において、フォーカス自動評価を実施する。フォーカス自動評価の内容は次の通りである。尚、本実施形態では、検査対象基板に光を照射することによって、当該検査対象基板から反射された光を画像信号として取得するものとする。まず、従来技術と同様に、光学的にフォーカスを合わせることにより、初期フォーカスを設定する。次に、本発明のフォーカス自動設定(第2の実施形態参照)を実施するが、このとき、初期フォーカスを中心としてフォーカスを上下に2水準づつ変化させる。尚、フォーカスのふり幅は検査倍率に基づいて経験的に決定される。例えば検査倍率が高い場合、つまりピクセルサイズを小さくして微細な欠陥を検出する場合には、フォーカスのふり幅をピクセルサイズ程度に小さく設定する。そして、第2の実施形態で説明したように、欠陥検出閾値を最も高くできるフォーカス値を評価すると共に当該欠陥検出閾値の最大値を導出する。このとき、フォーカス値の中心が大きくずれるようであれば、言い換えると、フォーカスをふることにより得られたノイズの最大値がフォーカス値に対して単調増加又は単調減少する場合のように、最適フォーカス値となるノイズのピーク値が、フォーカスをふった際のフォーカス値の最小値から最大値までの間に存在しないようであれば、必要に応じてフォーカス自動評価を再度実施する。
【0164】
次に、ステップS507において、閾値自動評価を実施する。このとき、ステップS506のフォーカス自動評価を行ったときのフォーカスが、変化したフォーカスの水準値と同じであれば、言い換えると、フォーカス自動評価を行って得られた最適フォーカス値と、最適フォーカスの評価を行う際に用いたフォーカス値とが一致した場合には、ステップS507をスキップしてもよい。ステップS507をスキップしない場合には、ステップS506のフォーカス自動評価で設定された最適フォーカス値を用いて改めてステップS507の閾値自動評価を実施し、それによって最適フォーカス値を再設定すると共に欠陥検出閾値を設定する。ステップS505で得られたサンプリング検査結果は、例えば図16に示すような画面の信号分布データ1304に表示される。但し、ステップS505のサンプリング検査の実施時点では欠陥検出閾値は設定されていないので、後述するS/N比の計算は行われず、また、その結果の表示もされない。
【0165】
次に、ステップS508において、本体検査を実施する。具体的には、最初に、ステップS509において、ステップS505のサンプリング検査で設定されたフォーカス値及び閾値を用いて本検査を実施する。本検査においては、検査対象基板に対してエネルギービームを照射し、当該基板から反射されたエネルギービームを画像信号として取得する。取得された画像信号データは、画像処理部1003の画像メモリ1012に逐次蓄積される。このとき、取得された画像信号(ディジタル画像信号)の強度が、ステップS505のサンプリング検査で設定された閾値を超える場合に当該信号を欠陥として検出すると同時に、画像信号データの検出数が画像処理部1003の累積カウンター1013によって累積されていく。これにより、前述したように、画像データ信号が、信号強度と検出数(度数)又は累積検出数(累積度数)との関係を表すデータに変換され、当該データは信号分布データとしてバッファメモリ1014に蓄積される。さらに、バッファメモリ1014に蓄積された累積度数データに対して、演算装置1015によって対数変換や3乗根変換が行なわれ、その結果がバッファメモリ1014に信号分布データとして格納される。バッファメモリ1014に格納された信号分布データは、例えば図16に示すような画面の信号分布データ1304に表示される。このとき、表示される内容は、例えば図16に示すような画面の表示モード1305において選択することができる。
【0166】
次に、ステップS510において、前述の変換データを用いてデータ解析を行い、それによってS/N比を算出する。以下、S/N比の算出方法について、図15(a)及び(b)を参照しながら説明する。図15(a)は、ステップS509の本検査で得られた信号データ(画像信号)を示している。図15(a)に示すデータが取得されると、当該データは累積データに逐次変換される。図15(b)は、S/N比算出のために累積データ変換されたデータを度数グラフを用いて模式的に示している。ステップS505のサンプリング検査で設定された閾値をtthとすると、図15(b)に示すように、ノイズ信号の強度(具体的には識別階調(t))はtthが最大強度となるように分布している。また、欠陥信号データは、tthよりも大きい強度を持つ信号であって、各欠陥信号の強度は例えばtd1、td2、・・・tdxとなっている。ここで、各欠陥信号のS/N比であるSN1、SN2、・・・SNxは下記(式17)
【0167】
【数17】

【0168】
で表される。それぞれの欠陥について計算されたS/N比は、画像処理部1003の欠陥部画像メモリ1017に欠陥情報として蓄積される。
【0169】
また、ステップS510のS/N比算出と同時に、ステップS511において、画面出力を実施する。具体的には、例えば図16に示すような画面のSIGNAL表示領域1306に、欠陥情報として、欠陥数、欠陥密度並びにS/N比の平均値、最大値及び最小値を表示する。ここで、S/N比は、欠陥信号強度と欠陥検出閾値との比であって、欠陥信号を欠陥と判別した検出確度を示している。言い換えると、S/N比は、検査条件が適正であるかどうかを示す値、つまり検査条件の適正度(スコア)を示している。従って、S/N比を本体検査中にリアルタイムにSIGNAL表示領域1306に表示することによって、欠陥信号強度と欠陥検出閾値との強度比が十分得られているかどうか、つまり検査結果の信憑性をリアルタイムで確認することができる。
【0170】
次に、ステップS512において、欠陥レビューを行う。欠陥レビューは、欠陥として検出された画像の詳細情報を取り込み、それによって欠陥の有無や欠陥の種類などを特定するためのものである。
【0171】
次に、ステップS513において、欠陥の位置、大きさ、種類若しくはS/N比又は欠陥検出閾値などの検査条件を含むデータを欠陥情報としてデータベース1006に出力する。また、ステップS514において、ステップS509の本検査で得られた信号分布データをデータベース1006に出力する。出力される信号分布データは、例えば、信号強度(識別階調)と検出数(度数)との関係を示すデータ(図2(b)参照)、検出数を信号強度により積分することによって得られる累積検出数と信号強度(識別階調)との関係を示すデータ(図2(c)参照)、累積検出数を対数変換した後に3乗根変換した対数変換3乗根累積検出数と信号強度(識別階調)との関係を示すデータ(図2(e)参照)、対数変換3乗根累積検出数の識別階調に対する線形特性の傾き、及び、前記累積検出数が1未満となる最大の識別階調である閾値データ(図2(f)参照)のいずれであってもよい。
【0172】
次に、ステップS515において、ステップS508の本体検査で得られた欠陥情報について、データ解析を行う。具体的には、まず、ステップS516において、検査領域除外設定を行なう。当該検査領域除外設定におけるデータ解析例について、オペレーション端末1005に表示された例えば図17に示すような画面のMAP(欠陥マップ)1401を参照しながら説明する。ステップS516の検査領域除外設定においては、S/N比が所定値よりも小さい検査対象領域を抽出し、抽出された領域を除外領域に設定する。すなわち、例えば同一のチップ領域(チップ内座標)に存在する、S/N比の低い欠陥を抽出する。例えば図17に示すような画面のMAP1401に、S/N比の低い欠陥の1つとして欠陥1402が示されている。このような欠陥について、データベース1006に記録されている欠陥レビュー画像を用いて、実欠陥であるかどうかを確認する。その後、実欠陥ではないことが判明した欠陥1402が存在しているチップ領域を除外領域に設定する。これにより、例えば同一品種の複数の検査対象に対して欠陥検査を実施する場合において、一の検査対象についての検査結果に基づいて、欠陥が誤検出されやすいパターン群などを含む領域を予め除外領域に設定しておけば、他の検査対象についての検査において、設定された除外領域を除く他の領域に対して検査を実施することができる。従って、当該検査において当該他の領域に対してS/N比を高く(つまり欠陥検出閾値を小さく)設定して欠陥検出感度を上げることが可能になる。
【0173】
次に、ステップS517において、閾値変更シミュレーションを行う。当該閾値変更シミュレーションにおけるデータ解析例について、例えば図17に示すような画面の信号分布データ(グラフ)1403を参照しながら説明する。ステップS517の閾値変更シミュレーションにおいては、既に得られている検査結果(例えばステップS510で算出されたS/N比)に基づいて、欠陥検出閾値をソフトウェアにより変更し、欠陥のスクリーニングを行う。具体的には、まず、欠陥情報等を記録しているデータベース1006から欠陥情報及び信号分布データを取り込む。取り込まれたデータの一例が、例えば図17に示すような画面のMAP1401及び信号分布データ1403に表示されている。次に、閾値変更シミュレーションを行う。シミュレーション上では、信号分布データ1403に示されている閾値が可変となり、閾値を変更するに伴い、欠陥数、欠陥密度若しくはS/N比など又はMAP1401に示される欠陥分布が変更される。また、閾値変更によって新たに検出された欠陥について、データベース1006に記録されている欠陥レビュー画像を用いて、実欠陥であるかどうかを確認する。これにより、実際に測定(本検査)をやり直すことなく、データベース1006に蓄積されている欠陥データについて、欠陥としての確からしさを示すS/N比を確認しながら、欠陥データの有用性の確認及び欠陥のスクリーニングを容易に実施することができる。従って、欠陥検出閾値を高精度で再設定することができる。
【0174】
次に、ステップS518において、検査工程の選定を行う。具体的には、同一検査対象に対して実施された複数の本検査工程の検査結果がデータベース1006に蓄積されている場合に、ある欠陥種に対して、より感度の高い本検査工程の選定を行う。すなわち、同一検査対象に対して実施された複数の本検査工程の検査結果がデータベース1006に蓄積されており、且つ少なくとも2つ以上の本検査工程により同一箇所で欠陥が検出されている場合に、同一箇所で欠陥が検出された本検査工程の間で当該欠陥のS/N比(欠陥情報に含まれる)を比較することによって、当該欠陥のS/N比が相対的に高い1つ又は複数の本検査工程をピックアップする。これにより、任意の欠陥種について欠陥検出感度の高い本検査工程を抽出できる。
【0175】
以上に説明したように、第5の実施形態によると、検査対象基板における色むらなどを含むノイズ信号の評価を行うことによって、特に検査対象基板の欠陥密度が低い場合又は欠陥信号とノイズ信号との比が小さい場合においても、検査対象基板のノイズ信号の最大強度に基づいて欠陥検出閾値を高精度で且つ短時間に設定することができる。従って、欠陥の誤検出や見逃しの可能性を最小化することができると共に検査バラツキを低減することができる。
【0176】
尚、第1〜第5の実施形態において、欠陥検査の原理は特に限定されるものではない。具体的には、検査入力信号(検査対象に照射されるエネルギービーム)は、電子線、光学系(レーザー光、ランプ光等)、X線、赤外線又は磁場等であってもよい。また、出力信号(検査対象から反射されたエネルギービーム)は、反射光、散乱光若しくは干渉光などの光、二次電子、反射電子、透過電子若しくは吸収電子などの電子線、又はα線、γ線若しくはX線などの放射線等であってもよい。これらの出力信号を検出して画像信号に変換し、該変換された画像信号をA/D変換して得られたディジタル画像信号について、各実施形態の欠陥検査を適用することによって、各実施形態と同様の効果を得ることが可能である。尚、ディジタル画像信号が生画像信号又は差分画像信号のいずれであっても同様の効果が得られる。
【0177】
特に、第5の実施形態に係る欠陥検査システムの構成については光学系の検出器を用いる場合を例として説明したが、光学系の検出器に代えて、前述の電子線や放射線などの検出器を用いても、同様の効果が得られる。
【0178】
また、第1〜第5の実施形態において、検査対象上にパターンが存在しても又は存在しなくても同様の効果が得られる。
【0179】
また、第5の実施形態において、サンプリング検査(前検査)と本体検査とを行うに際して、サンプリング検査における検査対象範囲と本体検査における検査対象範囲とを排他的に設定してもよい。このようにすると、サンプリング検査の対象領域に対して2回以上に亘って検査が行なわれることがないため、本体検査において当該対象領域が電子ビームなどによるダメージを受けることを回避することができる。尚、サンプリング検査の対象領域は、第1の実施形態で述べたように、ほとんど欠陥を含んでいないので、本体検査において当該対象領域を除くことは、検査対象全体としての検査結果(欠陥密度又は欠陥数等)にほとんど影響を及ぼさない。
【0180】
また、第5の実施形態において、検査対象上にパターンが存在する場合にはサンプリング検査の対象領域は当該パターンを満遍なく含み、当該対象領域の面積の検査対象の全検査領域の面積に対する比率は100分の1以上で且つ10分の1以下であり、当該対象領域は前記の全検査領域に対して偏り無く配置されていることが好ましい。このようにすると、欠陥検出閾値を高精度で且つ短時間に設定することができる。また、この場合、サンプリング検査の対象領域はストライプ状又はアレイ状に設定されていることが好ましい。
【0181】
また、第5の実施形態において、ステップS510で算出されたS/N比を、ステップS509の本検査で検出された欠陥のそれぞれについて、当該本検査の最中に又はその終了後に表示してもよい。或いは、ステップS509の本検査で欠陥として検出されたディジタル画像信号の強度の最小値、平均値及び最大値のそれぞれについてS/N比を算出し、算出された各S/N比を当該本検査の最中に又はその終了後に表示してもよい。或いは、ステップS509の本検査で欠陥として検出されたディジタル画像信号の検出数、累積検出数若しくは対数変換3乗根累積検出数と、当該ディジタル画像信号の強度との相関関係を当該本検査の最中に又はその終了後に表示してもよい。このようにすると、検査実施中においてもノイズ信号と欠陥信号との違いを把握することができるので、検査結果の信憑性をリアルタイムで確認することができる。すなわち、ノイズに起因する欠陥の誤検出などを迅速に把握することができる。
【0182】
また、第5の実施形態において、同一構造を持つ複数の検査対象の欠陥検査においてそれぞれ検出された欠陥のS/N比を算出しておき、各検査対象間における当該S/N比の差に基づき、検出された欠陥の妥当性について判断しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0183】
本発明は、欠陥検出閾値を設定して欠陥検査を行う方法に関し、出荷外観検査又は工程追跡検査などの検査全般、具体的にはレチクル検査、ウェハ検査、ハードディスク表面検査又は白傷検査(液晶パネル又はCCDなどを対象とする)等に利用可能であり、特に、パターンを有する検査対象のパターン検査又はパターンを持たない検査対象のパーティクル検査に利用した場合には、欠陥検出閾値を高精度で且つ短時間に設定できるという効果が得られ、非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態に係る欠陥検査方法のフロー図である。
【図2】図2(a)〜(f)は、図1に示す処理フローの各ステップ(データ分解が必要ない合)を説明するための図である。
【図3】図3(a)〜(f)は、本発明の第1〜第5の実施形態に係る欠陥検査方法におけるサンプリング領域の設定例を示す図である。
【図4】図4(a)〜(f)は、図1に示す処理フローの各ステップ(データ分解が必要な場合)を説明するための図である。
【図5】図5は本発明の第1の実施形態に係る欠陥検査方法におけるデータ分解を説明するための図である。
【図6】図6は本発明の第1の実施形態に係る欠陥検査方法におけるデータ分解を説明するための図である。
【図7】図7は本発明の第2の実施形態に係る欠陥検査方法のフロー図である。
【図8】図8(a)〜(e)は、図7に示す処理フローの各ステップを説明するための図である。
【図9】図9は、図7に示す処理フローの一ステップを説明するための図である。
【図10】図10は本発明の第3の実施形態に係る欠陥検査方法のフロー図である。
【図11】図11(a)〜(e)は、図10に示す処理フローの各ステップを説明するための図である。
【図12】図12は本発明の第4の実施形態に係る欠陥検査方法のフロー図である。
【図13】図13は本発明の第5の実施形態に係る欠陥検査システムの概略構成及びデータフローを示す図である。
【図14】図14は本発明の第5の実施形態に係る欠陥検査方法のフロー図である。
【図15】図15(a)及び(b)は本発明の第5の実施形態に係る欠陥検査方法におけるS/N比評価方法を説明するための図である。
【図16】図16は本発明の第5の実施形態に係る欠陥検査方法における検査オペレーションを説明するための図である。
【図17】図17は本発明の第5の実施形態に係る欠陥検査方法における検査オペレーションを説明するための図である。
【符号の説明】
【0185】
201 信号データ
202 サンプリングデータ
203 母集団データ
401 信号データ
402 サンプリングデータ
403 母集団データ
1001 制御部
1002 検出部
1003 画像処理部
1004 制御部本体
1005 オペレーション端末
1006 データベース
1007 イメージセンサー
1008 レンズ
1009 レンズ
1010 評価対象
1011 ステージ
1012 画像メモリ
1013 累積カウンター
1014 バッファメモリ
1015 演算装置
1016 欠陥抽出画像処理回路
1017 欠陥部画像メモリ
1301 サンプリング条件
1302 閾値設定条件
1303 フォーカス設定条件
1304 信号分布データ
1305 表示モード
1306 SIGNAL表示領域
1401 MAP
1402 欠陥
1403 信号分布データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象基板にエネルギービームを照射することによって、当該検査対象基板から反射された前記エネルギービームをディジタル画像信号として取得し、取得されたディジタル画像信号の強度が閾値を超える場合に当該ディジタル画像信号を欠陥として検出する欠陥検査方法であって、
前記ディジタル画像信号に含まれるノイズ信号の最大強度に基づいて前記閾値を設定することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の欠陥検査方法において、
前記検査対象基板における所定の検査領域について前記ノイズ信号の強度を識別階調として取得し、当該識別階調に対する前記ノイズ信号の検出数を求め、当該検出数を前記識別階調により積分することによって累積検出数を求め、前記ノイズ信号の正規分布特性を利用して前記累積検出数を対数変換した後にその3乗根を対数変換3乗根累積検出数として求め、当該対数変換3乗根累積検出数の前記識別階調に対する線形特性に基づいて、前記累積検出数が1未満となる最大の前記識別階調を算出し、当該算出値を前記閾値に設定することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項3】
請求項2に記載の欠陥検査方法において、
前記ディジタル画像信号は前記検査対象基板について複数の検出系のそれぞれによって取得され、
前記検出数、前記累積検出数、前記対数変換3乗根累積検出数及び前記閾値は前記複数の検出系のそれぞれについて算出され、
前記複数の検出系のそれぞれについて算出された前記閾値が同じになるように当該各閾値に対してオフセット値を設定すると共に前記複数の検出系のそれぞれについて算出された前記対数変換3乗根累積検出数の前記識別階調に対する線形特性を表す直線の傾きが同じになるように当該各傾きに対して係数を設定することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項4】
請求項2に記載の欠陥検査方法において、
前記ディジタル画像信号は前記エネルギービームのパラメータの値を変化させることによって当該パラメータの値毎に取得され、
前記検出数、前記累積検出数、前記対数変換3乗根累積検出数、及び前記累積検出数が1未満となる最大の前記識別階調である前記閾値は前記パラメータの値毎に算出され、
前記パラメータの値毎に算出された前記閾値に基づいて、前記閾値を最大化できる前記パラメータの値を求めることを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項5】
請求項4に記載の欠陥検査方法において、
前記ディジタル画像信号は前記検査対象基板について複数の検出系のそれぞれによって前記パラメータの値毎に取得され、
前記検出数、前記累積検出数、前記対数変換3乗根累積検出数、及び前記累積検出数が1未満となる最大の前記識別階調である前記閾値は前記複数の検出系のそれぞれについて前記パラメータの値毎に算出され、
前記閾値を最大化できる前記パラメータの値は前記複数の検出系のそれぞれについて算出され、
前記複数の検出系のそれぞれについて算出された、前記閾値を最大化できる前記パラメータの値が同じになるように当該各パラメータの値に対してオフセット値を設定することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の欠陥検査方法において、
前記エネルギービームが光である場合には前記パラメータはフォーカス又は波長であり、前記エネルギービームが電子線である場合には前記パラメータは、電子レンズによるフォーカス、加速エネルギー又は通電電流であることを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項7】
検査対象基板にエネルギービームを照射することによって、当該検査対象基板から反射された前記エネルギービームをディジタル画像信号として取得し、取得されたディジタル画像信号の強度が閾値を超える場合に当該ディジタル画像信号を欠陥として検出する欠陥検査方法であって、
前記検査対象基板における所定の検査領域に対してサンプリング検査を実施し、それにより得られた前記ディジタル画像信号に含まれるノイズ信号の最大強度に基づいて前記閾値を設定するサンプリング検査工程と、
前記検査対象基板に対して本検査を実施し、それにより得られた前記ディジタル画像信号の強度が、前記サンプリング検査工程で設定された前記閾値を超える場合に当該ディジタル画像信号を欠陥として検出する本検査工程とを備えていることを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項8】
請求項7に記載の欠陥検査方法において、
前記検査対象基板上にパターンが存在する場合には前記所定の検査領域は前記パターンを満遍なく含み、
前記所定の検査領域の面積の前記検査対象基板の全検査領域の面積に対する比率は100分の1以上で且つ10分の1以下であり、
前記所定の検査領域は前記全検査領域に対して偏り無く配置されていることを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項9】
請求項8に記載の欠陥検査方法において、
前記所定の検査領域はストライプ状又はアレイ状に設定されていることを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項10】
請求項7に記載の欠陥検査方法において、
前記本検査工程で前記欠陥として検出された前記ディジタル画像信号の強度と前記ノイズ信号の最大強度とのS/N比を算出し、算出されたS/N比に基づいて前記閾値を再設定すると共に、新たに本検査を実施することなく、前記本検査により得られた前記ディジタル画像信号と前記再設定された前記閾値とを用いて欠陥を再抽出することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項11】
請求項7に記載の欠陥検査方法において、
前記本検査工程で前記欠陥として検出された前記ディジタル画像信号の強度と前記ノイズ信号の最大強度とのS/N比を算出し、算出されたS/N比を前記本検査工程で検出された前記欠陥のそれぞれについて前記本検査工程の最中に又はその終了後に表示し、
前記本検査工程で前記欠陥として検出された前記ディジタル画像信号の強度の最小値、平均値及び最大値のそれぞれと前記ノイズ信号の最大強度とのS/N比を算出し、算出された各S/N比を前記本検査工程の最中に又はその終了後に表示し、又は
前記本検査工程で前記欠陥として検出された前記ディジタル画像信号の検出数、累積検出数若しくは対数変換3乗根累積検出数と、当該ディジタル画像信号の強度との相関関係を前記本検査工程の最中に又はその終了後に表示することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項12】
請求項7に記載の欠陥検査方法において、
前記本検査工程よりも前に、前記ディジタル画像信号の強度と前記ノイズ信号の最大強度とのS/N比が所定値よりも小さい領域を予め抽出しておき、抽出された領域を除外領域に設定する工程をさらに備え、
前記本検査工程において、前記検査対象基板における前記除外領域を除く領域に対して前記本検査を実施することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項13】
請求項7に記載の欠陥検査方法において、
前記本検査工程は複数回実施され、
前記各本検査工程で前記欠陥として検出された前記ディジタル画像信号の強度と前記ノイズ信号の最大強度とのS/N比を算出し、任意の欠陥について算出されたS/N比を前記各本検査工程の間で比較することによって、前記各本検査工程のうち当該S/N比が相対的に高い1つ又は複数の本検査工程を抽出することを特徴とする欠陥検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−275743(P2006−275743A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−94743(P2005−94743)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】