歯面加工装置及び歯車製造方法
【課題】高硬歯車の面粗さの改善などを目的として加工圧を調節することができる歯面加工装置及び歯車製造方法を提供する。
【解決手段】歯面処置装置10は、はす歯状砥石2と、はす歯状砥石2の回転軸Cと被加工歯車Wの回転軸Xとの相対位置を移動できる位置調節手段3と、はす歯状砥石2の回転軸Cと被加工歯車Wの回転軸Xとの相対位置を調節して、被加工歯車Wの1つの歯を形成する歯面のうち一方の被加工歯面11のみ、はす歯状砥石2の砥石歯面21に当接させてはす歯状砥石2及び被加工歯車Wを噛み合わせるように位置調節手段3を作動させる相対位置制御部71と、砥石回転手段4を作動させる砥石回転手段制御部72と、回転トルクを所定範囲に調節するように回転トルク制御手段5を作動させるトルク制御手段制御部73と、をもつ制御手段7とを有する。
【解決手段】歯面処置装置10は、はす歯状砥石2と、はす歯状砥石2の回転軸Cと被加工歯車Wの回転軸Xとの相対位置を移動できる位置調節手段3と、はす歯状砥石2の回転軸Cと被加工歯車Wの回転軸Xとの相対位置を調節して、被加工歯車Wの1つの歯を形成する歯面のうち一方の被加工歯面11のみ、はす歯状砥石2の砥石歯面21に当接させてはす歯状砥石2及び被加工歯車Wを噛み合わせるように位置調節手段3を作動させる相対位置制御部71と、砥石回転手段4を作動させる砥石回転手段制御部72と、回転トルクを所定範囲に調節するように回転トルク制御手段5を作動させるトルク制御手段制御部73と、をもつ制御手段7とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯面加工装置及び歯車製造方法に関し、特に、はす歯状砥石を用いて高硬歯車の歯面を仕上げる歯面加工装置及び歯車製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯車の歯面の面粗さを改善(面粗度を小さく)すれば、歯車の耐久性、伝達効率、騒音が改善することが知られている。
【0003】
高硬歯車の歯面を仕上げる方法には、高速で回転しているネジ状砥石のフランク面と被加工歯車を強制的に同期回転させながら、被加工歯車の両歯面を同時に仕上げる高能率な歯車研削法が主流である。歯車研削法では、砥石のフランク面(砥石歯面)と被加工歯車の歯面との隙間がゼロ(バックラッシュゼロ)の状態で噛み合わせるため、砥石の切り込み速度をコントロールすることは出来るが、加工面の加工圧をコントロールすることが難しい。結果、加工条件や加工の状況(砥石の切れ味・砥石の目詰まり・削り代など)により、歯面加工点の圧力が変動し、被加工歯車の限度を超した高圧力が発生することがあり、被加工歯車の歯面に研磨焼けやクラックが発生し、時には砥石が破損することがあった。
【0004】
また、従来の歯車研削法では、歯面の面粗度を小さくするために、例えば仕上げ用砥石(軟らかい、あるいは微細砥粉)を使用したとしても、バックラッシュゼロの条件で加工するため、加工圧のコントロールが難しく、砥石の破損を招き、面粗度を小さくするには限界があった。すなわち、面粗度を小さくするためには、適切な加工速度になるよう加工圧をコントロールすることが望まれていた。
【0005】
さらに、他の歯面仕上げ法としては、ギヤホーニング法が存在している。しかしながら、特許文献1に示されるように、ギヤホーニング法は、砥石の歯面と歯車とをバックラッシュゼロで噛み合わせ、両歯面を同時に加工する方法のため、砥石の歯面と被加工歯車の歯面との間の加工圧を微妙にコントロールすることが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−126530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、高硬歯車の面粗さの改善などを目的として加工圧を調節することができる歯面加工装置及び歯車製造方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る歯面加工装置は、回転軸で回転可能に支承されるはす歯状砥石と、被加工歯車を回転軸で回転可能に支承する被加工歯車支持手段と、前記はす歯状砥石の回転軸と前記被加工歯車の回転軸との相対位置を移動できる位置調節手段と、前記はす歯状砥石を回転させる砥石回転手段と、前記被加工歯車の回転トルクを制御する回転トルク制御手段を有し、前記はす歯状砥石の回転軸と前記被加工歯車の回転軸との相対位置を調節して、前記被加工歯車の1つの歯を形成する歯面のうち一方の被加工歯面のみ、前記はす歯状砥石の砥石歯面に当接させて前記はす歯状砥石及び前記被加工歯車を噛み合わせるように前記位置調節手段を作動させる相対位置制御部と、前記砥石回転手段を作動させる砥石回転手段制御部と、前記回転トルクを所定範囲に調節するように前記回転トルク制御手段を作動させるトルク制御手段制御部とをもつ制御手段と、を有することを特徴とするものである。
【0009】
ここで、はす歯状砥石は、歯の角度が大きくなったネジ状砥石を含む。ネジ状砥石は、1条又は2条以上のネジ山を有する。
【0010】
また、本発明に係る歯面加工装置において、前記はす歯状砥石は、前記砥石歯面が前記被加工歯面の形状に沿うように変形可能な弾性素材とすることができる。
【0011】
さらに、本発明に係る歯面加工装置では、前記砥石回転制御部が前記砥石回転手段を回転させ、前記回転トルク制御手段制御部が前記被加工歯車を一方向及び他方向に回転トルクを切り替え、前記被加工歯車の前記一方及び他方の被加工歯面を加工することができる。
【0012】
またさらに、本発明に係る歯面加工装置において、前記はす歯状砥石は、前記被加工歯車の歯溝の幅より歯厚を小さくすることが好適である。
【0013】
さらにまた、本発明に係る歯面加工装置において、前記制御手段は、前記はす歯状砥石及び/又は前記被加工歯車を振動させるように前記位置調節手段を作動させる振動制御部をもつことができる。
【0014】
また、本発明に係る歯面加工装置では、少なくとも隣り合う1対の山の形状を有し、前記1対の山で形成される谷で前記砥石の1つの山を拘束した状態で前記砥石歯面を成形及び目立てする砥石目立手段を有することができる。
【0015】
さらに、本発明に係る歯面加工装置において、前記砥石目立手段には、両端面の箇所に、前記被加工歯車の小径に相当する円筒成形部が形成されていることとすることができる。
【0016】
またさらに、本発明に係る歯面加工装置において、前記被加工歯車を回転可能に支承する被加工歯車支持手段には、ねじれ量を発生させるねじり緩衝体を設置することができる。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る歯車製造方法は、回転軸で回転可能に支承されるはす歯状砥石と被加工歯車を回転軸で回転可能に支承する被加工歯車支持手段とをもつ加工装置を用い、前記はす歯状砥石の回転軸と前記被加工歯車の回転軸との相対位置を調節して、前記被加工歯車の1つの歯を形成する歯面のうち一方の被加工歯面のみ、前記はす歯状砥石の砥石歯面に当接させて、前記はす歯状砥石及び前記被加工歯車を噛み合わせる位置調節工程と、前記はす歯状砥石を回転させる砥石回転工程と、前記砥石回転工程中に、前記被加工歯車の回転トルクを所定範囲に調節する回転トルク制御工程を有することを特徴とするものである。
【0018】
位置調節工程と砥石回転工程とは、砥石回転工程は、位置調節工程の終了後、位置調節工程をしている間、あるいは位置調節工程より前に開始して良い。
【0019】
また、本発明に係る歯車製造方法において、前記はす歯状砥石は、前記砥石歯面が前記被加工歯面の形状に沿うように変形可能な弾性素材とすることができる。
【0020】
さらに、本発明に係る歯車製造方法において、前記砥石回転工程では、前記はす歯状砥石を回転させ、前記回転トルク制御工程では、前記被加工歯車を一方向及び他方向に回転トルクを切り替えることで、前記被加工歯車の前記一方及び他方の被加工歯面を加工することができる。
【0021】
またさらに、本発明に係る歯車製造方法において、前記はす歯状砥石は、前記被加工歯車の歯溝の幅より歯厚を小さくすることが好適である。
【0022】
さらにまた、本発明に係る歯車製造方法において、前記砥石回転工程では、前記はす歯状砥石及び/又は前記被加工歯車を振動させ、さらに、前記はす歯状砥石の回転軸と前記被加工歯車の回転軸との相対位置を変化させる振動工程を実行することができる。
【0023】
また、本発明に係る歯車製造方法では、少なくとも隣り合う1対の山の形状を有する砥石目立手段を用いることで、前記1対の山で形成される谷で前記砥石の1つの山を拘束した状態で、前記砥石歯面の成形及び目立てを行う砥石目立工程を実行することができる。
【0024】
さらに、本発明に係る歯車製造方法において、前記砥石目立手段には、両端面の箇所に、前記被加工歯車の小径に相当する円筒成形部が形成されており、前記砥石目立工程は、前記円筒成形部を用いて前記砥石歯面の成形及び目立てを行う処理を含むこととすることができる。
【0025】
またさらに、本発明に係る歯車製造方法において、前記被加工歯車を回転可能に支承する被加工歯車支持手段には、ねじれ量を発生させるねじり緩衝体を設置することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る歯面加工装置では、被加工歯車の1つの歯を形成する歯面のうち一方の被加工歯面のみ、はす歯状砥石の砥石歯面に当接させ、他方の被加工歯面は砥石歯面に当接しない状態で噛み合わせ、砥石回転手段がはす歯状砥石を回転させる。すなわち、被加工歯車の他方の被加工歯面は砥石歯面に接していないため、砥石歯面との間に隙間がある状態で、はす歯状砥石が回転する。そのため、砥石歯面と被加工歯面との間の加工圧をコントロールしやすい。加工圧のコントロールは、回転トルク制御手段によって被加工歯車の回転トルクを制御することで行う。結果、被加工歯車の研磨焼けやクラックの発生、砥石の破損を回避しながら、被加工歯車の被加工歯面の面粗さを改善することが可能である。
【0027】
また、砥石歯面との間に隙間があると、はす歯状砥石の回転軸と被加工歯車の回転軸との相対位置関係を変化させやすいため、被加工歯車が実際に噛み合う歯車を考慮して被加工歯面を加工することができる。
【0028】
また、本発明によれば、砥石歯面が被加工歯面の形状に沿うように変形可能な弾性素材をはす歯状砥石に採用することで、前工程の精度に影響されずに加工圧のコントロールがし易く、被加工歯車の研磨焼けやクラックの発生、砥石の破損をより回避することができる。つまり、前工程に生じた歯面の凹凸によって加工圧が変わることが考えられるが、変形可能であれば、歯面の凹凸にそって変形することができるため、前工程の精度に影響されにくい。
【0029】
また、本発明によれば、はす歯状砥石を一定速度に回転させ、被加工歯車の回転トルクを切り替えることで、被加工歯車やはす歯状砥石などの取り付け向きをセットし直すことなく、被加工歯車の被加工歯面の片歯面ずつ、両歯面を加工することができる。また、はす歯状砥石の回転を素早く反転させるには大きなトルクが必要であるが、本発明のはす歯状砥石は一定速度で一方向に回転させた状態で、回転トルク制御手段による回転トルクの方向を反転するだけで足りる。よって、回転トルク制御手段によるトルクの反転は小さなトルクで実現可能なため、全体としてみた場合であっても、それほど大きな出力のモーターを必要とせず、モーターなど装置全体を小型化できる。
【0030】
また、本発明によれば、はす歯状砥石の歯厚を、被加工歯車の歯溝の幅より小さくすることで、はす歯状砥石と被加工歯車との相対位置の調節がし易く、より確実に被加工歯車一方の被加工歯面にのみ砥石歯面を当接することができる。
【0031】
また、本発明によれば、制御手段が位置調節手段を作動させて、はす歯状砥石及び/又は被加工歯車を振動させ、被加工歯車とはす歯状砥石との相対位置を変化させることができるため、被加工歯車が実際に噛み合う歯車を考慮して被加工歯面を加工することができる。
【0032】
また、本発明によれば、砥石目立手段の隣り合う1対の山で形成される谷で、砥石の1つの山を挟み込んで拘束するため、砥石の山が成形及び目立てにより変形しにくい。そのため、砥石の砥石歯面が被加工歯面の形状に沿うように変形可能な弾性素材である場合に、特に効果的に砥石を成形及び目立てすることができる。
【0033】
さらに、本発明によれば、砥石目立手段には、両端面の箇所に、被加工歯車の小径に相当する円筒成形部が形成されているので、さらに効率良く砥石を成形及び目立てすることができる。
【0034】
また、本発明によれば、被加工歯車を回転可能に支承する被加工歯車支持手段に対して、ねじれ量を発生させるねじり緩衝体を設置しているので、例えば、歯面の加工荷重(トルク)測定と、より安定的な加工荷重(トルク)を得る為に、歯車軸のトルクを計測する機能と、トルクを蓄える機能を得ることができる。
【0035】
また、本発明に係る歯車製造方法では、位置調節工程で被加工歯車の1つの歯を形成する歯面のうち一方の被加工歯面のみ、はす歯状砥石の砥石歯面に当接し、砥石回転工程ではす歯状砥石を回転させるため、被加工歯車の他方の被加工歯面は砥石歯面と当接しておらず、隙間が確保された状態で被加工歯面を加工することができる。そのため、砥石歯面と被加工歯面との間の加工圧をコントロールしやすい。加工圧のコントロールは、回転トルク制御工程で被加工歯車の回転トルクを所定範囲に調節することで行われる。結果、被加工歯車の研磨焼けやクラックの発生、砥石の破損を回避しながら、被加工歯車の被加工歯面の面粗さを改善することが可能である。
【0036】
そして、砥石歯面との間に隙間があると、はす歯状砥石と被加工歯車との相対位置関係を変化させやすいため、被加工歯車実際に噛み合う歯車を考慮して被加工歯面を加工することができる。
【0037】
また、本発明によれば、砥石歯面が被加工歯面の形状に沿うように変形可能な弾性素材をはす歯状砥石に採用することで、前工程の精度に影響されずに加工圧のコントロールがし易く、被加工歯車の研磨焼けやクラック発生、砥石の破損をより回避することができる。
【0038】
また、本発明によれば、砥石回転工程においてはす歯状砥石を一定方向で回転させ、回転トルク制御工程において被加工歯車の回転トルクを切り替えることができるため、被加工歯車やはす歯状砥石などの取り付け向きをセットし直すことなく、被加工歯車の歯面の片歯毎、両歯面を加工することができる。また、はす歯状砥石の回転を素早く反転させるには大きなトルクが必要であるが、本発明のはす歯状砥石は一定速度で一方向に回転させた状態で、回転トルク制御手段による回転トルクの方向を反転するだけで足りる。よって、回転トルク制御手段によるトルクの反転は小さなトルクで実現可能なため、全体としてみた場合であっても、それほど大きな出力のモーターを必要とせず、装置全体を小型化できる。
【0039】
また、本発明によれば、はす歯状砥石の歯厚を、被加工歯車の歯溝の幅より小さくすることで、より確実に被加工歯車一方の被加工歯面にのみ砥石歯面を当接することができる。
【0040】
また、本発明によれば、振動工程において、被加工歯車の回転軸とはす歯状砥石の回転軸との相対位置を変化させることができるため、被加工歯車が実際に噛み合う歯車を考慮して被加工歯面を加工することができる。
【0041】
また、本発明によれば、少なくとも隣り合う1対の山の形状を有する砥石目立手段を用いることで、1対の山で形成される谷で砥石の1つの山を拘束した状態で、砥石歯面の成形及び目立てを行う砥石目立工程を実行するので、効果的に砥石を成形及び目立てすることができる。
【0042】
さらに、本発明によれば、砥石目立手段には、両端面の箇所に、被加工歯車の小径に相当する円筒成形部が形成されており、この砥石目立工程は、円筒成形部を用いて砥石歯面の成形及び目立てを行う処理を含むので、さらに効率良く砥石を成形及び目立てすることができる。
【0043】
また、本発明によれば、被加工歯車を回転可能に支承する被加工歯車支持手段に対して、ねじれ量を発生させるねじり緩衝体を設置しているので、例えば、歯面の加工荷重(トルク)測定と、より安定的な加工荷重(トルク)を得る為に、歯車軸のトルクを計測する機能と、トルクを蓄える機能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施形態1の歯面加工装置10の構成の説明図である。
【図2】本実施形態1の歯面加工装置10で用いられる回転トルク制御手段5の構成を示す一部断面である。
【図3】本実施形態1の歯車加工装置10で用いられる調節部材8の構成を示す一部断面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】本実施形態1の歯面加工装置10の構成の説明図である。
【図6】本実施形態1の歯面加工装置10で実行される歯車製造方法のフローチャートである。
【図7】本実施形態1の歯面加工装置10で実行される歯車製造方法の砥石回転工程S4のフローチャートである。
【図8】本実施形態2の歯面加工装置で用いられる調節部材9の構成を示す説明図である。
【図9】本実施形態2の歯面加工装置における回転トルクを測定する方法を説明するための図であり、(a)が初期状態、(b)及び(c)が初期状態からのずれを示す説明図である。
【図10】本実施例1に係る歯面加工装置におけるシステム構成を示す図である。
【図11】本実施例2に係る歯面加工装置におけるシステム構成を示す図である。
【図12】本実施例3に係る歯面加工装置におけるシステム構成例を示す図である。
【図13】本実施例4に係る歯面加工装置におけるシステム構成例を示す図である。
【図14】本変形形態1の歯面加工装置で用いられる砥石目立手段23の構成を示す説明図である。
【図15】図14の一部断面図である。
【図16】砥石の歯面を成形及び目立てする従来の方法を説明するための説明図である。
【図17】本変形形態2に係る砥石目立手段を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の代表的な実施形態を図1〜図9を参照して説明する。本実施形態に係る歯面加工装置及び歯車製造方法は、被加工歯車Wとして平歯車又ははす歯歯車の歯面を加工するものである。そして、本実施形態で用いられる加工方法は、片歯面ずつを加工する方法であり、歯面の加工程度は問わない。本実施形態に係る歯面加工装置及び歯車製造方法は、例えば、研削法、ホーニング法、超仕上げ法に応用でき、シェービング加工方法のカッターを砥石に代えて応用することもできる。
【0046】
[実施形態1]
本実施形態1の歯面加工装置10は、図1に示されるように、砥石(はす歯状砥石)2と、位置調節手段3と、砥石回転モーター(砥石回転手段)4と、回転トルク制御手段5と、制御手段7とを有する。
【0047】
砥石2は、はす歯状砥石の歯の角度が大きくなったネジ状砥石を用いる。そして、砥石2は、砥石歯面21が被加工歯車Wの被加工歯面11の形状に沿うように変形可能な弾性素材を用いている。砥石2の歯厚は、被加工歯車Wの歯溝の幅より小さい。砥石2は、回転軸Cを回転中心として回転可能に取り付け基部(図略)に支承されている。
【0048】
砥石回転モーター4は、減速機構(図示略、必ずしも必要ではない)を介して、砥石2を回転軸C周りに回転させる。
【0049】
回転トルク制御手段5は、図2に示されるように、被加工歯車支持手段6と、保持部材51と、調節部材52とを有する。被加工歯車支持手段6は、被加工歯車Wに一端部611が挿入される軸部61と、軸部61のフランジ部612との間で被加工歯車Wを側面から挟持する押さえ部材62と、押さえ部材62の中心を貫通し軸部61の一端部611に締結挿入される締結部材63とを有する。被加工歯車Wの内周に挿入される一端部611には、軸線方向に開口し、締結部材32が締結挿入されるネジ穴613が形成されている。押さえ部材62には、軸部61の一端部611に合わせたときに、軸部61のネジ穴613と連通する貫通孔621が中央部分に形成されている。締結部材63は、押さえ部材62の貫通孔621及び軸部61のネジ穴613と締結挿入されるネジ631と、ネジ631及び押さえ部材62の間に位置する座金632とを有する。被加工歯車支持手段6の軸部61は、被加工歯車Wに挿入される一端部611と、軸部61の他端部614に取り付けられた保持回転軸615以外の部分が保持部材51によって回転可能に保持される。保持部材51は、図示されていない台座に固定される本体部511と、軸受け部材512とを有する。本体部511は、軸部61が挿入される貫通孔511aが内部に形成されており、軸受け部材512を介して軸部61(被加工歯車支持手段6)を回転可能に保持する。保持部材51に回転可能に支承される被加工歯車支持手段6の軸部61に被加工歯車Wは挿入され、軸部61の一端部611に押さえ部材62を合わせた後、締結部材63によって締結され、被加工歯車Wは、被加工歯車支持手段6と回転軸Xで一体回転可能に支承される。
【0050】
調節部材52は、被加工歯車Wが挿入される被加工歯車支持手段6の保持回転軸615に設置される。例えば、保持回転軸615にオイルシール521をいくつか嵌挿することで、被加工歯車Wの回転トルクを所定範囲内に調節することが考えられる。
【0051】
また、図3及び図4には、オイルシール521以外の方法を利用して、被加工歯車Wの回転トルクを調節する調節部材8が示されている。軸部61の被加工歯車Wに挿入される一端部611とは反対側の他端部614の外周には、軸部61と一体回転する第1ディスク81が嵌合されている。他端部614に固定される保持回転軸616の外周には、摩擦材82を介して第1ディスク83と相対回転可能に第2ディスク83が配置されている。摩擦材82は、リング状をしており、軸部61の軸線方向において、第1ディスク81と第2ディスク83との間に位置する。本実施形態では、摩擦材82は第2ディスク83の表面(第1ディスク81と当接する面)に貼り付けられているが、第1ディスク81の表面(第2ディスク83と当接する面)に貼り付けても良いし、第1ディスク81及び第2ディスク83の双方に貼り付けても良い。なお、摩擦材82の形状は、リング状に限られず、周方向に適当な間隔(等間隔、不等間隔問わず)で配置されても良い。
【0052】
第2ディスク83の外周側の一箇所には、棒状のストッパ86が周方向に2つ並んだ状態で配置されており、ストッパ86の軸線が軸部61の軸線方向を向くように一端部で嵌合されている。そして、ストッパ86は、他端が第2ディスク83から軸線方向に突き出しており、突き出した2つのストッパ86の間には、弾性体からなる測定用部材87が位置する。測定用部材87は、補助部材871と共に、第2ディスク83の外周側で、締結部材872によってケース80に固定されている。測定用部材87には、ひずみ計測器が取り付けられており、計測された計測値は、後述するトルク制御手段制御部73に伝達される。ひずみ計測器は、ひずみゲージなどによりひずみの大きさを測定するものや、光学的方法などにより測定用部材87の位置(回転トルクが付加されていない場合を基準とした位置)を計測することによりひずみの大きさを測定するものなどを採用でき、その測定原理や測定方式は特に限定されない。
【0053】
第2ディスク83は、軸線方向において摩擦材82とは逆側で、軸部61の他端部614に固定されている保持回転軸616に軸受け84を介して回転自在に支承されている。軸線方向において、第2ディスク83とケース80との間には、コイル状バネ85と補助ディスク88とが配置されている。コイル状バネ85は、一端が第2ディスク83に、他端が補助ディスク88に当接され、軸線方向に伸縮可能に配置されており、補助ディスク88は、コイル状バネ85が係合する面とは逆の面がケース80の外部から挿入されるトルク調節部材89によって、軸線方向に押圧される。
【0054】
トルク調節部材89は、軸線方向に移動可能に配設されている。そして、トルク調節部材89は、軸線方向に移動することにより、被加工歯車Wと砥石2との間に作用する圧力に関連する被加工歯車Wに加わる回転トルクの大きさを調節することができる。例えば、被加工歯車Wの回転トルクを大きくする場合は、トルク調節部材89を軸線方向で軸部61側に移動させることで、補助ディスク88が軸線方向にコイル状バネ85を押す。そして、縮み方向に荷重が加えられたコイル状バネ85は、第2ディスク83を軸線方向に押圧し、摩擦材82が第1ディスク81に押圧される。結果、回転軸Xで回転する被加工歯車Wと一体回転する軸部61は、その押圧力に応じた回転トルクを回転方向とは反対方向に変えられ、回転トルクが大きくなる。
【0055】
本実施形態におけるトルク調節部材89は、ケース80に螺合するネジ(図略)が外周に形成され、回転することでそのネジの作用により軸線方向に移動する。また、トルク調節部材89は、後述するトルク制御手段制御部73によって回転させられる。なお、トルク調節部材89を軸線方向に移動する手段は、ケース80に対して軸線方向に移動することができるものであれば、ネジに限られない。
【0056】
図1に戻って、位置調節手段3は、送りネジ(図示略)と送りネジの一端と係合するサーボモーター(図示略)とを有し、送りネジの他端は、取り付け基部に係合する。取り付け基部は、砥石2を回転可能に支承しており、台座(図略)に移動可能に配置されている。そして、位置調節手段3は、サーボモーターの作動によって、砥石2の回転軸Cと被加工歯車Wの回転軸Xとの相対位置を調節する。なお、サーボモーターは、パルスモーターなど他のモーターを用いることができる。
【0057】
制御手段7は、相対位置制御部71と、砥石回転手段制御部72と、トルク制御手段制御部73と、振動制御部74とを有する。相対位置制御部71は、砥石2の回転軸Cと被加工歯車Wの回転軸Xとの相対位置を調節して、被加工歯車の1つの歯を形成する歯面のうち一方の被加工歯面11のみ、砥石2の砥石歯面21に当接させて、砥石2及び被加工歯車Wを噛み合わせるように位置調節手段3を作動させる。砥石歯面21と被加工歯車Wの他方の被加工歯面12との間に隙間dを確保した状態で砥石2及び被加工歯車Wを噛み合わせる位置の調節は、機構的にも電気的にも行うことができる。例えば、本実施形態1では、砥石2の歯厚を被加工歯車Wの歯溝の幅より小さくしているため、機構的に、被加工歯車Wの歯先が砥石2の歯底に当接した時点で、砥石2及び/又は被加工歯車Wの移動は停止する。あるいは、光位置センサー、超音波距離計、光学式距離測定器などを用いて、砥石歯面2と被加工歯車Wの他方の被加工歯面12との隙間を測定し、その測定結果に基づいて目的の相対位置になるように、位置調節手段3を作動させることができる。また、隙間dが確保できる砥石2の回転軸Cと被加工歯車Wの回転軸Xとの位置関係をあらかじめ導き出しておき、その位置に砥石2の回転軸C及び/又は被加工歯車Wの回転軸Xとの位置関係を調節する構成とすることもできる。
【0058】
砥石回転手段制御部72は、砥石回転モーター4を制御することで、砥石2の回転方向を切り替えることができる。図1において、砥石2が回転方向N(回転方向Z)で回転する場合に、被加工歯車Wが回転方向Aで回転すると、図1に示す断面において、見かけ上、歯(山)が矢印G方向に移動する。砥石2の回転の制御は特に限定しないが、砥石の周速度が一定になるように制御することが望ましい。従って、砥石が摩耗して小さくなった場合には、砥石2の角速度を大きくするなどして周速度を一定に保つことが望ましい。
【0059】
トルク制御手段制御部73は、被加工歯車Wの回転トルクFを所定範囲に調節するように、回転トルク制御手段5を作動させる。トルク制御手段制御部73は、被加工歯車Wの回転トルクFを検出し、回転トルクFを調節する。被加工歯車Wの回転トルクFは、回転トルク制御手段5の調節部材8の測定用部材87によって測定されたひずみに基づき、トルク制御手段制御部73によって求められる。そして、求められた回転トルクFが所定範囲内となるように、調節部材8のトルク調節部材89を軸線方向に移動させる制御信号を送信する。検出した回転トルクFが基準となる所定範囲よりも小さければ回転トルクFを大きくする方向にトルク調節部材89を移動させ、検出した回転トルクFが基準となる所定範囲よりも大きければ回転トルクFを小さくする方向にトルク調節部材89を移動させ、検出した回転トルクFが基準となる所定範囲の範囲内であればトルク調節部材89の軸線方向の位置を維持する。被加工歯車Wの回転トルクFを制御することで、砥石歯面21と被加工歯面11との加工圧力Pを調節することができる。
【0060】
振動制御部74は、砥石2及び/又は被加工歯車Wを振動させるように位置調節手段3を作動させ、砥石2の回転軸Cと被加工歯車Wの回転軸Xとの相対位置を変化させる。例えば、図1に示すように、被加工歯面11の歯面の形状に沿う方向Yに、砥石2を移動させる。移動(振動)させる方向は、被加工歯面11の歯幅、歯たけ方向に対して傾斜している方向や平行、垂直方向、あるいは円形に振動する等、限定されないが、特に、径方向に振動するのが好ましい。なお、振幅の大きさは、砥石歯面21と被加工歯面11とが噛み合って振動できる範囲であり、例えば、本実施形態1の場合は、1μm〜100μmとなっている。そして、砥石歯面21と被加工歯面11とは接触している状態が望ましく、また、振動制御部74による砥石2の移動(振動)方向は圧力が変化しない方向が望ましく、さらには圧力変化が許容できる範囲での移動(振動)が望ましい。
【0061】
位置調節手段3により振動を付与する場合には、位置調節手段3自身が有する、送りネジとサーボモーターとによって、砥石2を目的の振幅・周波数で移動させて振動させる構成を用いても良いし、位置調節手段3以外に別の振動装置を有する構成とすることもできる。別の振動装置としては、例えば、超音波発生手段などがある。
【0062】
制御手段7は、被加工歯面11の加工後、被加工歯車Wの他方の被加工歯面12を加工するために、砥石回転手段制御部72によって、砥石2の回転方向を切り替える。歯車加工装置10の砥石2を逆回転した場合が、図5に示されている。図5において、砥石2が回転方向Nの逆回転方向M(回転方向B)に回転すると、図5に示す断面において、見かけ上、歯(山)が矢印H方向に移動する。すると、被加工歯車Wの1つの歯の被加工歯面11の他方の被加工歯面12が、砥石歯面21と当接する。また、被加工歯車Wは、回転方向Aの逆方向の回転方向Eの方向に回転する。その際、トルク制御手段制御部73は、被加工歯車Wの回転トルクJを所定範囲に調節するように、回転トルク制御手段5を作動させる。
【0063】
図6は、本実施形態1の歯車処理装置10で実行される歯車製造方法の代表的な制御方法を示したフローチャートを示す。但し、このフローチャートにて示した制御方法は一例であり、これに限定されるものではない。
【0064】
歯車製造方法は、位置調節工程S3と砥石回転工程S4とを有する。位置調節工程S3では、相対位置制御部71によって、砥石2の回転軸Cと被加工歯車Wの回転軸Xとの相対位置を調節し、被加工歯面11のみ砥石歯面21に当接させて砥石2と被加工歯車Wとを噛み合わせる。砥石回転工程S4では、砥石回転手段制御部72によって、砥石2を回転させる。砥石回転工程S4は、位置調節工程S3の途中や、位置調節工程S3を開始する前に開始しても良い。なお、本実施形態1の歯車製造方法は、位置調節工程S3及び砥石回転工程S4を所定条件が満たされるまで繰り返すようにしても良い。所定条件としては、一定時間が経過すること、砥石2の回転軸Cと被加工歯車Wの回転軸Xとの相対位置が所定の範囲に入ったこと、被加工歯面11の加工程度が所定範囲にまで進んでいることなどが考えられる。
【0065】
回転トルク制御工程S5は、図7に示されるように、砥石回転工程S4中に実行される。回転トルク制御工程S5は、回転トルク制御部73によって、被加工歯車Wの回転トルクを所定範囲に調節するように回転トルク制御手段5の作動を制御する。また、砥石回転工程S4中において、振動工程S6を実行する場合もある。振動工程S6では、振動制御部74からの動作指令に基づいて、位置調節手段3による砥石2の移動が実行される。砥石2が移動することで、砥石2の回転軸Cと被加工歯車Wの回転軸Xとの相対位置が変化する。
【0066】
歯車製造方法は、砥石回転工程S4において砥石2を回転させ、回転トルク制御工程S5を実行する。回転トルク制御工程S5では、被加工歯車Wの回転トルクを制御し、砥石歯面21と被加工歯面11との加工圧Pをコントロールする。そして、砥石回転工程S4中で回転トルク制御工程S5が実行されている状態で、振動工程S6を任意に実行することができる。振動工程S6を実行することで、被加工歯面11の形状をより精密に、あるいは高能率に加工することができる。
【0067】
そして、本実施形態1の歯車処理装置10で実行される歯車製造方法によれば、被加工歯車Wの歯面の一方の処理の後、砥石2の回転方向を切り替えることで、他方の被加工歯面を加工することができる。また、回転トルク制御手段5が、回転トルクを被加工歯車Wが増速する方向にも付与できる場合(調節部材52,8を回転させることができるモーターが設けられている場合など)には、回転トルク制御工程S5において、被加工歯車Wの回転トルクを制御し、砥石2の回転する速さより被加工歯車Wの回転が増速する方向に回転トルクを付与することで、被加工歯車Wの他方の被加工歯面を加工することができる。
【0068】
本実施形態1の歯面加工装置10及び歯車製造方法によれば、砥石歯面21と被加工歯面11とを当接させ、砥石歯面21と他方の被加工歯面12との間に隙間dが設けられるように、砥石2と被加工歯車Wとを噛み合わせるため、砥石歯面21と被加工歯面11との間の加工圧Pをコントロールし易い。加工圧Pのコントロールは、例えば、歯車付勢工程S5を実行して歯車回転モーター4で被加工歯車Wの回転トルクを制御する。加工圧Pをコントロールし易いことで、被加工歯車Wの研磨焼けやクラックの発生、砥石2の破損を回避しながら、被加工歯車Wの被加工歯面11の面粗さを改善することができる。
【0069】
また、隙間dがあることで、砥石2と被加工歯車Wとの相対位置関係も変化させ易い。例えば、振動工程S6を実行して位置調節手段3によって砥石2を移動させる。このように、砥石2が回転している状態で、砥石2を振動するように移動させることで、被加工歯車Wが実際に噛み合う歯車を考慮して、被加工歯面の形状を加工することができる。実際に噛み合う歯車を考慮した歯面によれば、騒音が抑制される。
【0070】
また、砥石回転モーター4の回転方向を切り替えられるため、被加工歯車Wの取り付け向きを変えてセットし直すことなく、被加工歯車Wの他方の被加工歯面12を加工することができる。
【0071】
さらに、砥石2として、砥石歯面12が被加工歯面11の形状に沿うように変形可能な素材を採用することで、変形した歯面に沿って磨き上げる事が出来る。
【0072】
[実施形態2]
本実施形態2の歯面加工装置は、実施形態1の歯面加工装置10と基本的に同様の構成及び作用効果を有する。以下、異なる構成及び作用効果を中心に説明する。
【0073】
本実施形態2の歯面加工装置は、調節部材9が、実施形態1の歯面加工装置10で用いられる調節部材52,8と異なっている。本実施形態2の歯面加工装置で用いられる調節部材9は、図8に示されるように、被加工歯車Wに一端が挿入され、図略された軸受け部に対して回転可能な状態で軸部61の他端614側が設置される。調節部材9は、他端の端部にトルクを生成するトルク生成モーター91と、トルク生成モーター91及び軸部61の間に第1測定部材92と、第2測定部材93と、ねじり緩衝体94とを有する。第1測定部材92及び第2測定部材93は、トルク生成モーター91のモーター軸90に同軸に回転可能に設置される円盤状の部材である。第1測定部材92及び第2測定部材93は、軸線方向に厚みのある円筒状の部材でも良い。ねじり緩衝体94は、軸線方向で第1測定部材92と第2測定部材93との間に位置するねじりバネである。ただし、ねじり緩衝体94は、ねじりバネに限られるものではなく、ゴムやコイルバネ等の弾性力を有する部材であれば良い。
【0074】
第1測定部材92及び第2測定部材93は、それぞれ周方向に少なくとも1つ、基準ポイント921,931を有する。被加工歯車Wの被加工歯面11に加わる回転トルクの調節は、2つの基準ポイント921,931のずれを検知し、その値を用いて行うことができる。基準ポイント921,931の検知は、光学センサー、磁気センサー、画像処理センサーなどの位置検出センサー95,96で行う。なお、図8において、基準ポイント921,931は、円盤状の本体から径方向に突出した形状としてあるが、突出した形状に限定されない。通過を画像によって識別可能な色彩だけの場合、あるいは磁石が埋め込まれており外観に現れていない場合も考えられる。
【0075】
基準ポイント921,931を用いて、回転トルクを調節する方法として、例えば以下に示す方法がある。なお、これは一例であり、本発明は、この方法に限定されるものではない。まず、被加工歯車Wが砥石2と噛み合っておらず、トルク生成モーター91が駆動していない状態の基準ポイント921,931のぞれぞれの位置を確認する。必要に応じて、それぞれの位置を周方向で同じ位置に調整する(図9(a)参照)。次に、噛み合っていない状態で、被加工歯車Wと砥石2とが同期回転する回転数となるように、トルク生成モーター91を駆動する。砥石2の回転数がN2、被加工歯車Wの歯数がZ、砥石2の条数がJである場合、被加工歯車Wは、回転数N3=N2/Z*Jで同期回転する。トルク生成モーター91が被加工歯車Wを回転数N3となるように駆動したとき、基準ポイント921,931が周方向でずれた状態を初期状態(被加工歯車Wの被加工歯面11に加わるトルクがゼロ)とする。被加工歯車Wと砥石2とが位置調節手段3によって、相対位置が調節されて噛み合い、砥石回転手段制御部72によって砥石2が回転した後は、基準ポイント931が初期状態からどれだけずれているか検知し(図9(b)、(c))、トルク生成モーター91の駆動を調節する。なお、初期状態は、被加工歯車Wを取り替える毎、一定時間経過毎、加工の進行程度に応じてなど、適正に設定すれば良い。
【0076】
トルク生成モーター91を加速方向に駆動して基準ポイント931がずれた正方向の場合(図9(b))、被加工歯面11が加工される。トルク生成モーター91を減速方向に駆動して基準ポイント931が正方向に対して逆方向にずれた場合(図9(c))、被加工歯面11の逆歯面である他方の被加工歯面12が加工される。トルク制御手段制御部73は、トルク生成モーターの電力や回転数を増減させ、初期状態からの±Sの大きさを変えて、加工圧Pを調節する。
【0077】
本実施形態2の歯面加工装置によれば、砥石回転モーター4の回転方向を切り替えるのではなく、回転トルク制御手段5としての調節部材9のトルク生成モーター91を調節することで、被加工歯車Wの他方の被加工歯面12を加工することができ、被加工歯車Wの取り付け向きを変えてセットし直したり、砥石の回転方向を変える必要がなく、効率的に被加工歯車Wの両歯面を加工することができる。
【0078】
以上、図1〜図9を用いることで、本発明の基本構成である実施形態1及び2を説明した。ただし、上述した実施形態1及び2は、本発明に係る歯面加工装置と、この装置を用いて実行される歯車製造方法の基本的な概念を説明したものである。そこで、次に、図10〜図13を参照して、本発明に係る歯面加工装置の具体的なシステム構成の実施例を説明することとする。
【0079】
[実施例1]
ここで、図10は、本実施例1に係る歯面加工装置におけるシステム構成を示す図である。なお、図10で例示する実施例1に係る歯面加工装置は、砥石2と被加工歯車Wが同期回転を行う方式を採用した装置である。
【0080】
本実施例1に係る歯面加工装置において、砥石2には、スピンドルモーターである砥石回転モーター4が連結されており、このスピンドルモーター4によって、はす歯状をした砥石2が回転駆動可能となっている。なお、スピンドルモーター4には、内蔵検出器4aが設置されており、砥石2の回転量を把握できるようになっている。一方、被加工歯車Wは、C軸16とタイミングベルト17を介して駆動用サーボモーター18と連結されており、被加工歯車Wについても、この駆動用サーボモーター18によって回転駆動可能となっている。そして、スピンドルモーター4に連結された砥石2と、駆動用サーボモーター18に連結された被加工歯車Wとは、電子ギヤボックス19を介して電気的かつ制御的に接続されており、両者は噛み合わさった状態で同期回転することができるように構成されている。
【0081】
なお、一般的な数値制御を使って研削を行う従来の機構においても、スピンドルモーターと連結した「はす歯状砥石」と、駆動用サーボモーターと連結した「被加工歯車」とを、電子ギヤボックスを介して噛み合わせて同期回転させることが行われていた。しかしながら、従来技術では、はす歯状砥石の切込みは、被加工歯車のラジアル方向に向けて別のサーボモーターを使って切込みをかけることで、被加工歯車の両歯面を同時研削することが行われていた。しかしながら、図10で例示する本実施例1に係る歯面加工装置では、被加工歯車Wのラジアル方向への砥石2の切り込みに際して、別のサーボモーターを使用する必要がない。すなわち、本実施例1に係る歯面加工装置によれば、電子ギヤボックス19で同期回転して噛合っている砥石2と被加工歯車Wのうち、被加工歯車Wに連結された駆動用サーボモーター18に対して、同期の「進み」や「遅れ」を別個に指令し、歯車の噛合いピッチ方向に「切込み」(位置制御・電流制限)をかけることで、歯車の片歯面毎に歯面圧力を加えて研磨することが可能となっている。
【0082】
このように、電子ギヤボックス19を用いた同期回転方式のシステム構成は、はす歯状砥石2と被加工歯車Wとが自身のトルクによって回転することになるので、例えばC軸16の慣性や回転抵抗に左右されず、加工歯面に対して小さく安定した荷重を与えることが可能となる。また、砥石2と被加工歯車Wとの相対加工方向が同じ方向となり、左右歯面が同じ加工条件となるので、表面性状や表面粗さが均一化できるといった利点も得られる。さらに、本実施例1によれば、はす歯状砥石2の回転停止・逆回転起動の動作が不要となるので、省エネ・省資源・加工時間短縮等といった効果が得られる。
【0083】
[実施例2]
以上、図10を用いて、本実施例1に係る歯面加工装置を説明した。しかし、実施例1の構造は、「進み」方向のトルク調製は容易であるが、「遅れ・減速」方向でのトルク調整に改良すべき余地が残されていた。そこで次に、実施例2として、「進み・遅れ」方向に関係無くトルク管理が容易なシステム構成例を説明する。ここで、図11は、本実施例2に係る歯面加工装置におけるシステム構成を示す図である。なお、図11で例示する実施例2に係る歯面加工装置についても、砥石2と被加工歯車Wが同期回転を行う方式を採用した装置である。また、本実施例2の歯面加工装置は、実施例1の歯面加工装置と同一又は類似の構成及び作用効果を有するので、以下では、異なる構成及び作用効果を中心に説明する。
【0084】
本実施例2に係る歯面加工装置では、被加工歯車Wと駆動用サーボモーター18との間に設置されたC軸16´に対して、ねじり緩衝体16aが設置されるとともに、このねじり緩衝体16aの両端に対して、それぞれ1つずつポジションコーダー16b,16cを設置する構成が採用されている。一対のポジションコーダー16b,16cは、ねじり緩衝体16aのねじれ量を測定して被加工歯車Wに加わる加工トルクを検知するとともに、駆動用サーボモーター18に対して位置制御と電流制御を行うことができるので、かかる構成によって、被加工歯車Wに加わる加工圧力を調整することが可能となっている。なお、ねじり緩衝体16aについては、ばねやゴム等といった小さな力で変形し、共振し難い素材を用いることが好適である。ただし、本実施例2で用いることのできるねじり緩衝体16aは、これらのものに限られず、例えば、電気的な緩衝体を用いることも可能である。
【0085】
なお、図11では示していないが、本実施例2に係る歯面加工装置に対しては、被加工歯車Wの回転軸上に砥石成形用ロータリードレッサーを設置してもよい。本実施例2に係る歯面加工装置に砥石成形用ロータリードレッサーを併設することで、砥石成形が容易な装置構成とすることができる。
【0086】
また、本実施例2に係る歯面加工装置に対して、ねじり緩衝体16aの機能選択を行うためのクラッチ機能を追加することで、ねじり緩衝体16aの機能のON/OFFが可能な装置構成を採用することも可能である。クラッチ機能をON状態としてねじり緩衝体16aを剛体として機能させれば、C軸16´は研磨軸とドレス軸を兼用した軸となり、好適である。
【0087】
さらに、上述した実施例2では、ねじり緩衝体16aのねじれ量を一対のポジションコーダー16b,16cによって測定する構成が採用されていたが、例えば、ねじり緩衝体16aに対してストレンゲージを貼り、直接撓み量を検出することで、加工トルクを測定する手法を採用することもできる。
【0088】
[実施例3]
上述した本実施例2については、電子ギヤボックス19を廃止することで、コスト削減を図った装置構成を実現することも可能である。かかる廉価版の構成を、図12に例示する。ここで、図12は、本実施例3に係る歯面加工装置におけるシステム構成例を示す図である。
【0089】
図12に示す本実施例3に係る歯面加工装置の場合、実施例1及び2で示した電子ギヤボックス19が廃止されている。そこで、本実施例3に係る歯面加工装置では、スピンドルモーターである砥石回転モーター4の駆動力に対し、機械的に同期回転している被加工歯車W用の駆動用サーボモーター18の回転方向に「進み」及び「遅れ」を別個に指令し、歯車の噛合いピッチ方向に切込みを掛けると同時に、電流制限(加工トルク)を指示することで、歯車の片歯面毎に歯面圧力を加えて研磨することが可能となる。かかる制御方式の採用によって、電子ギヤボックス19が不要となるので、製造コストの削減効果を得ることができる。
【0090】
[実施例4]
以上説明した実施例1〜3は、砥石2と被加工歯車Wとの両方に駆動源が設置され、両者が同期回転することで歯面加工を行うものであった。しかし、次に図13を用いて説明する本実施例4に係る歯面加工装置では、被加工歯車W用の駆動用サーボモーター18と電子ギヤボックス19とが廃止されており、駆動源は、砥石2に連結されたスピンドルモーターである砥石回転モーター4のみとなっている。ただし、被加工歯車Wの側には、ブレーキ装置18´が設置されており、スピンドルモーター4の回転駆動力に対して、ブレーキを掛けることで歯面加工を制御する方式となっている。
【0091】
すなわち、本実施例4に係る歯面加工装置は、はす歯状の砥石2と被加工歯車Wとをバックラッシュ有りの状態で噛み合わせ、砥石2側を回転させることでその回転力によって被加工歯車Wをも回転させ、連れ回りに基づく回転トルクに対して被加工歯車Wの軸側に設けられたブレーキ装置18´を作動させることでブレーキを掛け、歯車歯面に圧力を加えて研磨する構成を特徴とする装置である。かかる装置構成は、砥石2に対して被加工歯車Wが連れ回ることで歯面加工が実現する方式である。本実施例4に係る構造では、逆歯面を研磨する時は、はす歯状砥石2の回転方向を変える必要がある。また、歯車歯面への加工圧力の調整は、ブレーキ装置18´側でトルク検知する方式と、被加工歯車Wに連結するC軸16´に設置されたねじり緩衝体16aをもって検知する方式を選択することができる。さらに、本実施例4では、ねじり緩衝体16aの強さ(コイルバネに例えればバネ定数)の選定により、より緻密な加工圧力が調整できる。またさらに、ねじり緩衝体16aを設けることにより、直接的に微小なトルクが調節できるので、結果として精度の高い研磨面を得る事ができる。さらにまた、ねじり緩衝体16aは、ゴム・各種スプリング、樹脂などの部材を使い、ストレンゲージ等により直接撓み量を測定し荷重を測定できる。なお、ねじり緩衝体16aについては、電気的な緩衝体を採用することも可能である。
【0092】
以上、本発明の好適な実施形態及び各種の実施例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態等に記載の範囲には限定されない。上記実施形態等には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。例えば、以下に説明する変形形態1等の構成を採用することも可能である。
【0093】
[変形形態1]
本変形形態1の砥石目立手段23は、実施形態1及び実施形態2の歯面加工装置で被加工歯車Wを加工する砥石2を成形及び目立てするための手段である。
【0094】
本変形形態1の砥石目立手段23は、図14及び図15に示されるように、表面がダイヤモンド製のロータリードレッサーとして構成されている。この砥石目立手段23は、2枚の円盤が並んだ形状である。砥石2の1つの山が、砥石目立手段23の相隣り合う2つの山による谷フランクで、左右両側から所定の圧力角で挟み込まれる。
【0095】
砥石2を成形及び目立てする構成としては、図14に示されるように、砥石目立手段23が砥石2の歯スジに沿うように配置される。砥石2は、モーター4によって回転軸Cを回転中心として回転する。砥石目立手段23は、砥石目立手段23の軸周りで回転できるように支持され、砥石2の回転に従動し、軸線方向に移動する。また、図示が省略されているが、砥石目立手段23を砥石2と噛み合わせる方向に、砥石目立手段23の位置を調節する手段も有する。
【0096】
ところで、従来、砥石を成形及び目立てする場合には、図16に示されるように、砥石目立手段24,25のような形状のロータリードレッサーが用いられていた。1つの山だけの砥石目立手段24は、1つの山が、砥石の2つの山の一方の砥石歯面21を一方向から押圧する。また、目立てされる側の砥石の隣り合う2つの山を挟み込んで砥石歯面21を成形及び目立てする砥石目立手段25は、砥石の隣り合う2つの山を近づけるように砥石目立手段25によって一方向から押圧する。砥石が被加工歯面の形状に沿うように変形可能な弾性素材である場合、この砥石目立手段24,25では、図に示される小さい矢印の方向に、砥石の山が変形してしまい、砥石を成形及び目立てすることが難しかった。
【0097】
しかしながら、本変形形態1の歯面加工装置によれば、砥石目立手段23が2つの山で砥石2の1つの山を成形及び目立てするため、接触面積が狭く抵抗が少ないため、小さな力(電力等)で砥石2の成形及び目立てをすることができる。また、特に、砥石が被加工歯面の形状に沿うように変形可能な弾性素材である場合、本変形形態1に係る砥石目立手段23は効果的であり、砥石の1つの山は砥石目立手段23の2つの山に挟み込まれて拘束されて、砥石が成形及び目立てされることとなる。
【0098】
[変形形態2]
以上、変形形態1の砥石目立手段23として構成されるロータリードレッサーの形態例を図14及び図15を用いて説明したが、本発明に適用可能な砥石目立手段については、さらに多様な変形形態を採用することができる。例えば、図17は、変形形態2に係る砥石目立手段26を例示する図であるが、図17で例示する砥石目立手段26としてのロータリードレッサーは、砥石目立手段26の両端面の箇所に、被加工歯車Wの小径に相当する円筒成形部26aが形成されていることを特徴としている。また、変形形態2に係る砥石目立手段26としてのロータリードレッサーは、2つのネジ山を有する歯型形状のロータリードレッサーとして形成されている。
【0099】
変形形態2に係る砥石目立手段26は、2つのネジ山を有する歯型形状のロータリードレッサーとして形成されることで、上述した変形形態1の砥石目立手段23と同様に、従来技術に比べて非常に効率よく砥石2の成形及び目立てをすることが可能となっている。また、変形形態2に係る砥石目立手段26は、両端面の箇所に円筒成形部26aを有しており、図17にて例示するように、その円筒成形部26aの形状を生かした動作を実行させることで、変形形態1の砥石目立手段23と比較しても、非常に効率よく砥石2の成形及び目立てをすることが可能となっている。
【0100】
なお、図17で例示した変形形態2に係る砥石目立手段26は、2つのネジ山を有する構成例が示されているが、ネジ山の個数は2つに限定されるものではなく、3つ以上のネジ山を設けることも可能である。
【0101】
[その他の実施形態]
以上、本発明の好適な実施形態、実施例及び変形形態について説明したが、本発明は上記の実施形態等に限定されるものではない。例えば、トルク調節部材89は、弾性体からなる計測用部材87のひずみを計測することで、被加工歯車Wの回転トルクを導出しているが、計測用部材87の変形に伴う位置の変化や、計測用部材87ではなく第2ディスク83の移動量(回転角度)等を計測することで、被加工歯車Wの回転トルクを導出する構成を採用することもできる。
【0102】
また、振動工程S6で実行される振動手段6は、被加工歯車Wを移動させることで振動させる装置、あるいは砥石2及び被加工歯車Wの両方を移動させることで振動させる装置、とすることができる。
【0103】
また、回転トルク制御手段5としては、被加工歯車Wの回転を制御する手段に代えて、位置制御手段3を用いて、砥石2の回転軸Cと被加工歯車Wの回転軸Xとの相対位置を変化させることのみで行っても良い。つまり、砥石2の回転軸Cと被加工歯車Wの回転軸Xとの相対位置を変化させることにより、砥石2と被加工歯車Wとの当接の程度を変化させることができる。本実施形態では、砥石2は被加工歯車Wの被加工歯面のうちの一方のみに当接させた状態で加工を進行させているため、位置制御手段3のみにより加工圧を適正に制御することが可能である。
【0104】
[付記]
その他の歯面加工装置の構成上の特徴は、前記はす歯状砥石の歯幅以上の歯幅で、前記はす歯状砥石の回転に従動して回転し、前記はす歯状砥石の軸方向の移動に従動する砥石目立手段を有することである。砥石歯面を目立てする砥石目立手段の歯幅が砥石歯面の歯幅以上とすることで、砥石目立手段の回転及び軸方向移動がはす歯状砥石に従動することができるため、砥石目立手段を回転させ、軸方向に移動させる手段を追加することなく、砥石歯面を目立てすることができる。本発明は、研磨焼けやクラックの発生、砥石の破損を回避することができるため、はす歯状砥石によって被加工歯車を加工しながら、砥石歯面の目立てをすることができ、加工効率が高い。
【0105】
また、その他の歯車製造方法の特徴は、前記加工装置が、前記はす歯状砥石の歯幅以上の歯幅で、前記はす歯状砥石の回転に従動して回転し、前記はす歯状砥石の軸方向の移動に従動する砥石目立手段を有することである。当該方法によれば、砥石歯面を目立てする砥石目立手段の歯幅が砥石歯面の歯幅以上とすることで、砥石目立手段の回転及び軸方向移動がはす歯状砥石に従動することができるため、砥石目立手段を回転させ、軸方向に移動させる手段を追加することなく、砥石歯面を目立てすることができる。本発明は、研磨焼けやクラックの発生、砥石の破損を回避することができるため、はす歯状砥石によって被加工歯車を加工しながら、砥石歯面の目立てをすることができ、加工効率が高い。
【符号の説明】
【0106】
10:歯面加工装置、W:被加工歯車、11:被加工歯面、12:他方の被加工歯面、16,16´:C軸、16a ねじり緩衝体、16b,16c:ポジションコーダー、17:タイミングベルト、18:駆動用サーボモーター、18´:ブレーキ装置、19:電子ギヤボックス、2:砥石(はす歯状砥石)、21:砥石歯面、23,26:砥石目立手段、24,25:砥石目立手段(従来)、3:位置調節手段、4:砥石回転手段(スピンドルモーター)、4a 内蔵検出器、5:回転トルク制御手段、51:保持部材、511:本体部、512:軸受け部材、52:調節部材、521:オイルシール、6:被加工歯車支持手段、61:軸部、611:一端部、612:フランジ部、613:ネジ穴、614:他端部、615,616:保持回転軸、62:押さえ部材、621:貫通孔、63:締結部材、631:ネジ、632:座金、7:制御手段、71:相対位置制御部、72:砥石回転手段制御部、73:トルク制御手段制御部、74:振動制御部、8:調節部材、80:ケース、81:第1ディスク、82:摩擦部材、83:第2ディスク、84:軸受け、85:コイル状バネ85、86:ストッパ、87:測定用部材、871:補助部材、872:締結部材、88:補助ディスク、89:トルク調節部材、9:調節部材、90:モーター軸、91:トルク生成モーター、92:第1測定部材、921,931:基準ポイント、93:第2測定部材、94:ねじり緩衝体、95,96:位置検出センサー。
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯面加工装置及び歯車製造方法に関し、特に、はす歯状砥石を用いて高硬歯車の歯面を仕上げる歯面加工装置及び歯車製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯車の歯面の面粗さを改善(面粗度を小さく)すれば、歯車の耐久性、伝達効率、騒音が改善することが知られている。
【0003】
高硬歯車の歯面を仕上げる方法には、高速で回転しているネジ状砥石のフランク面と被加工歯車を強制的に同期回転させながら、被加工歯車の両歯面を同時に仕上げる高能率な歯車研削法が主流である。歯車研削法では、砥石のフランク面(砥石歯面)と被加工歯車の歯面との隙間がゼロ(バックラッシュゼロ)の状態で噛み合わせるため、砥石の切り込み速度をコントロールすることは出来るが、加工面の加工圧をコントロールすることが難しい。結果、加工条件や加工の状況(砥石の切れ味・砥石の目詰まり・削り代など)により、歯面加工点の圧力が変動し、被加工歯車の限度を超した高圧力が発生することがあり、被加工歯車の歯面に研磨焼けやクラックが発生し、時には砥石が破損することがあった。
【0004】
また、従来の歯車研削法では、歯面の面粗度を小さくするために、例えば仕上げ用砥石(軟らかい、あるいは微細砥粉)を使用したとしても、バックラッシュゼロの条件で加工するため、加工圧のコントロールが難しく、砥石の破損を招き、面粗度を小さくするには限界があった。すなわち、面粗度を小さくするためには、適切な加工速度になるよう加工圧をコントロールすることが望まれていた。
【0005】
さらに、他の歯面仕上げ法としては、ギヤホーニング法が存在している。しかしながら、特許文献1に示されるように、ギヤホーニング法は、砥石の歯面と歯車とをバックラッシュゼロで噛み合わせ、両歯面を同時に加工する方法のため、砥石の歯面と被加工歯車の歯面との間の加工圧を微妙にコントロールすることが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−126530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、高硬歯車の面粗さの改善などを目的として加工圧を調節することができる歯面加工装置及び歯車製造方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る歯面加工装置は、回転軸で回転可能に支承されるはす歯状砥石と、被加工歯車を回転軸で回転可能に支承する被加工歯車支持手段と、前記はす歯状砥石の回転軸と前記被加工歯車の回転軸との相対位置を移動できる位置調節手段と、前記はす歯状砥石を回転させる砥石回転手段と、前記被加工歯車の回転トルクを制御する回転トルク制御手段を有し、前記はす歯状砥石の回転軸と前記被加工歯車の回転軸との相対位置を調節して、前記被加工歯車の1つの歯を形成する歯面のうち一方の被加工歯面のみ、前記はす歯状砥石の砥石歯面に当接させて前記はす歯状砥石及び前記被加工歯車を噛み合わせるように前記位置調節手段を作動させる相対位置制御部と、前記砥石回転手段を作動させる砥石回転手段制御部と、前記回転トルクを所定範囲に調節するように前記回転トルク制御手段を作動させるトルク制御手段制御部とをもつ制御手段と、を有することを特徴とするものである。
【0009】
ここで、はす歯状砥石は、歯の角度が大きくなったネジ状砥石を含む。ネジ状砥石は、1条又は2条以上のネジ山を有する。
【0010】
また、本発明に係る歯面加工装置において、前記はす歯状砥石は、前記砥石歯面が前記被加工歯面の形状に沿うように変形可能な弾性素材とすることができる。
【0011】
さらに、本発明に係る歯面加工装置では、前記砥石回転制御部が前記砥石回転手段を回転させ、前記回転トルク制御手段制御部が前記被加工歯車を一方向及び他方向に回転トルクを切り替え、前記被加工歯車の前記一方及び他方の被加工歯面を加工することができる。
【0012】
またさらに、本発明に係る歯面加工装置において、前記はす歯状砥石は、前記被加工歯車の歯溝の幅より歯厚を小さくすることが好適である。
【0013】
さらにまた、本発明に係る歯面加工装置において、前記制御手段は、前記はす歯状砥石及び/又は前記被加工歯車を振動させるように前記位置調節手段を作動させる振動制御部をもつことができる。
【0014】
また、本発明に係る歯面加工装置では、少なくとも隣り合う1対の山の形状を有し、前記1対の山で形成される谷で前記砥石の1つの山を拘束した状態で前記砥石歯面を成形及び目立てする砥石目立手段を有することができる。
【0015】
さらに、本発明に係る歯面加工装置において、前記砥石目立手段には、両端面の箇所に、前記被加工歯車の小径に相当する円筒成形部が形成されていることとすることができる。
【0016】
またさらに、本発明に係る歯面加工装置において、前記被加工歯車を回転可能に支承する被加工歯車支持手段には、ねじれ量を発生させるねじり緩衝体を設置することができる。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る歯車製造方法は、回転軸で回転可能に支承されるはす歯状砥石と被加工歯車を回転軸で回転可能に支承する被加工歯車支持手段とをもつ加工装置を用い、前記はす歯状砥石の回転軸と前記被加工歯車の回転軸との相対位置を調節して、前記被加工歯車の1つの歯を形成する歯面のうち一方の被加工歯面のみ、前記はす歯状砥石の砥石歯面に当接させて、前記はす歯状砥石及び前記被加工歯車を噛み合わせる位置調節工程と、前記はす歯状砥石を回転させる砥石回転工程と、前記砥石回転工程中に、前記被加工歯車の回転トルクを所定範囲に調節する回転トルク制御工程を有することを特徴とするものである。
【0018】
位置調節工程と砥石回転工程とは、砥石回転工程は、位置調節工程の終了後、位置調節工程をしている間、あるいは位置調節工程より前に開始して良い。
【0019】
また、本発明に係る歯車製造方法において、前記はす歯状砥石は、前記砥石歯面が前記被加工歯面の形状に沿うように変形可能な弾性素材とすることができる。
【0020】
さらに、本発明に係る歯車製造方法において、前記砥石回転工程では、前記はす歯状砥石を回転させ、前記回転トルク制御工程では、前記被加工歯車を一方向及び他方向に回転トルクを切り替えることで、前記被加工歯車の前記一方及び他方の被加工歯面を加工することができる。
【0021】
またさらに、本発明に係る歯車製造方法において、前記はす歯状砥石は、前記被加工歯車の歯溝の幅より歯厚を小さくすることが好適である。
【0022】
さらにまた、本発明に係る歯車製造方法において、前記砥石回転工程では、前記はす歯状砥石及び/又は前記被加工歯車を振動させ、さらに、前記はす歯状砥石の回転軸と前記被加工歯車の回転軸との相対位置を変化させる振動工程を実行することができる。
【0023】
また、本発明に係る歯車製造方法では、少なくとも隣り合う1対の山の形状を有する砥石目立手段を用いることで、前記1対の山で形成される谷で前記砥石の1つの山を拘束した状態で、前記砥石歯面の成形及び目立てを行う砥石目立工程を実行することができる。
【0024】
さらに、本発明に係る歯車製造方法において、前記砥石目立手段には、両端面の箇所に、前記被加工歯車の小径に相当する円筒成形部が形成されており、前記砥石目立工程は、前記円筒成形部を用いて前記砥石歯面の成形及び目立てを行う処理を含むこととすることができる。
【0025】
またさらに、本発明に係る歯車製造方法において、前記被加工歯車を回転可能に支承する被加工歯車支持手段には、ねじれ量を発生させるねじり緩衝体を設置することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る歯面加工装置では、被加工歯車の1つの歯を形成する歯面のうち一方の被加工歯面のみ、はす歯状砥石の砥石歯面に当接させ、他方の被加工歯面は砥石歯面に当接しない状態で噛み合わせ、砥石回転手段がはす歯状砥石を回転させる。すなわち、被加工歯車の他方の被加工歯面は砥石歯面に接していないため、砥石歯面との間に隙間がある状態で、はす歯状砥石が回転する。そのため、砥石歯面と被加工歯面との間の加工圧をコントロールしやすい。加工圧のコントロールは、回転トルク制御手段によって被加工歯車の回転トルクを制御することで行う。結果、被加工歯車の研磨焼けやクラックの発生、砥石の破損を回避しながら、被加工歯車の被加工歯面の面粗さを改善することが可能である。
【0027】
また、砥石歯面との間に隙間があると、はす歯状砥石の回転軸と被加工歯車の回転軸との相対位置関係を変化させやすいため、被加工歯車が実際に噛み合う歯車を考慮して被加工歯面を加工することができる。
【0028】
また、本発明によれば、砥石歯面が被加工歯面の形状に沿うように変形可能な弾性素材をはす歯状砥石に採用することで、前工程の精度に影響されずに加工圧のコントロールがし易く、被加工歯車の研磨焼けやクラックの発生、砥石の破損をより回避することができる。つまり、前工程に生じた歯面の凹凸によって加工圧が変わることが考えられるが、変形可能であれば、歯面の凹凸にそって変形することができるため、前工程の精度に影響されにくい。
【0029】
また、本発明によれば、はす歯状砥石を一定速度に回転させ、被加工歯車の回転トルクを切り替えることで、被加工歯車やはす歯状砥石などの取り付け向きをセットし直すことなく、被加工歯車の被加工歯面の片歯面ずつ、両歯面を加工することができる。また、はす歯状砥石の回転を素早く反転させるには大きなトルクが必要であるが、本発明のはす歯状砥石は一定速度で一方向に回転させた状態で、回転トルク制御手段による回転トルクの方向を反転するだけで足りる。よって、回転トルク制御手段によるトルクの反転は小さなトルクで実現可能なため、全体としてみた場合であっても、それほど大きな出力のモーターを必要とせず、モーターなど装置全体を小型化できる。
【0030】
また、本発明によれば、はす歯状砥石の歯厚を、被加工歯車の歯溝の幅より小さくすることで、はす歯状砥石と被加工歯車との相対位置の調節がし易く、より確実に被加工歯車一方の被加工歯面にのみ砥石歯面を当接することができる。
【0031】
また、本発明によれば、制御手段が位置調節手段を作動させて、はす歯状砥石及び/又は被加工歯車を振動させ、被加工歯車とはす歯状砥石との相対位置を変化させることができるため、被加工歯車が実際に噛み合う歯車を考慮して被加工歯面を加工することができる。
【0032】
また、本発明によれば、砥石目立手段の隣り合う1対の山で形成される谷で、砥石の1つの山を挟み込んで拘束するため、砥石の山が成形及び目立てにより変形しにくい。そのため、砥石の砥石歯面が被加工歯面の形状に沿うように変形可能な弾性素材である場合に、特に効果的に砥石を成形及び目立てすることができる。
【0033】
さらに、本発明によれば、砥石目立手段には、両端面の箇所に、被加工歯車の小径に相当する円筒成形部が形成されているので、さらに効率良く砥石を成形及び目立てすることができる。
【0034】
また、本発明によれば、被加工歯車を回転可能に支承する被加工歯車支持手段に対して、ねじれ量を発生させるねじり緩衝体を設置しているので、例えば、歯面の加工荷重(トルク)測定と、より安定的な加工荷重(トルク)を得る為に、歯車軸のトルクを計測する機能と、トルクを蓄える機能を得ることができる。
【0035】
また、本発明に係る歯車製造方法では、位置調節工程で被加工歯車の1つの歯を形成する歯面のうち一方の被加工歯面のみ、はす歯状砥石の砥石歯面に当接し、砥石回転工程ではす歯状砥石を回転させるため、被加工歯車の他方の被加工歯面は砥石歯面と当接しておらず、隙間が確保された状態で被加工歯面を加工することができる。そのため、砥石歯面と被加工歯面との間の加工圧をコントロールしやすい。加工圧のコントロールは、回転トルク制御工程で被加工歯車の回転トルクを所定範囲に調節することで行われる。結果、被加工歯車の研磨焼けやクラックの発生、砥石の破損を回避しながら、被加工歯車の被加工歯面の面粗さを改善することが可能である。
【0036】
そして、砥石歯面との間に隙間があると、はす歯状砥石と被加工歯車との相対位置関係を変化させやすいため、被加工歯車実際に噛み合う歯車を考慮して被加工歯面を加工することができる。
【0037】
また、本発明によれば、砥石歯面が被加工歯面の形状に沿うように変形可能な弾性素材をはす歯状砥石に採用することで、前工程の精度に影響されずに加工圧のコントロールがし易く、被加工歯車の研磨焼けやクラック発生、砥石の破損をより回避することができる。
【0038】
また、本発明によれば、砥石回転工程においてはす歯状砥石を一定方向で回転させ、回転トルク制御工程において被加工歯車の回転トルクを切り替えることができるため、被加工歯車やはす歯状砥石などの取り付け向きをセットし直すことなく、被加工歯車の歯面の片歯毎、両歯面を加工することができる。また、はす歯状砥石の回転を素早く反転させるには大きなトルクが必要であるが、本発明のはす歯状砥石は一定速度で一方向に回転させた状態で、回転トルク制御手段による回転トルクの方向を反転するだけで足りる。よって、回転トルク制御手段によるトルクの反転は小さなトルクで実現可能なため、全体としてみた場合であっても、それほど大きな出力のモーターを必要とせず、装置全体を小型化できる。
【0039】
また、本発明によれば、はす歯状砥石の歯厚を、被加工歯車の歯溝の幅より小さくすることで、より確実に被加工歯車一方の被加工歯面にのみ砥石歯面を当接することができる。
【0040】
また、本発明によれば、振動工程において、被加工歯車の回転軸とはす歯状砥石の回転軸との相対位置を変化させることができるため、被加工歯車が実際に噛み合う歯車を考慮して被加工歯面を加工することができる。
【0041】
また、本発明によれば、少なくとも隣り合う1対の山の形状を有する砥石目立手段を用いることで、1対の山で形成される谷で砥石の1つの山を拘束した状態で、砥石歯面の成形及び目立てを行う砥石目立工程を実行するので、効果的に砥石を成形及び目立てすることができる。
【0042】
さらに、本発明によれば、砥石目立手段には、両端面の箇所に、被加工歯車の小径に相当する円筒成形部が形成されており、この砥石目立工程は、円筒成形部を用いて砥石歯面の成形及び目立てを行う処理を含むので、さらに効率良く砥石を成形及び目立てすることができる。
【0043】
また、本発明によれば、被加工歯車を回転可能に支承する被加工歯車支持手段に対して、ねじれ量を発生させるねじり緩衝体を設置しているので、例えば、歯面の加工荷重(トルク)測定と、より安定的な加工荷重(トルク)を得る為に、歯車軸のトルクを計測する機能と、トルクを蓄える機能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施形態1の歯面加工装置10の構成の説明図である。
【図2】本実施形態1の歯面加工装置10で用いられる回転トルク制御手段5の構成を示す一部断面である。
【図3】本実施形態1の歯車加工装置10で用いられる調節部材8の構成を示す一部断面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】本実施形態1の歯面加工装置10の構成の説明図である。
【図6】本実施形態1の歯面加工装置10で実行される歯車製造方法のフローチャートである。
【図7】本実施形態1の歯面加工装置10で実行される歯車製造方法の砥石回転工程S4のフローチャートである。
【図8】本実施形態2の歯面加工装置で用いられる調節部材9の構成を示す説明図である。
【図9】本実施形態2の歯面加工装置における回転トルクを測定する方法を説明するための図であり、(a)が初期状態、(b)及び(c)が初期状態からのずれを示す説明図である。
【図10】本実施例1に係る歯面加工装置におけるシステム構成を示す図である。
【図11】本実施例2に係る歯面加工装置におけるシステム構成を示す図である。
【図12】本実施例3に係る歯面加工装置におけるシステム構成例を示す図である。
【図13】本実施例4に係る歯面加工装置におけるシステム構成例を示す図である。
【図14】本変形形態1の歯面加工装置で用いられる砥石目立手段23の構成を示す説明図である。
【図15】図14の一部断面図である。
【図16】砥石の歯面を成形及び目立てする従来の方法を説明するための説明図である。
【図17】本変形形態2に係る砥石目立手段を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の代表的な実施形態を図1〜図9を参照して説明する。本実施形態に係る歯面加工装置及び歯車製造方法は、被加工歯車Wとして平歯車又ははす歯歯車の歯面を加工するものである。そして、本実施形態で用いられる加工方法は、片歯面ずつを加工する方法であり、歯面の加工程度は問わない。本実施形態に係る歯面加工装置及び歯車製造方法は、例えば、研削法、ホーニング法、超仕上げ法に応用でき、シェービング加工方法のカッターを砥石に代えて応用することもできる。
【0046】
[実施形態1]
本実施形態1の歯面加工装置10は、図1に示されるように、砥石(はす歯状砥石)2と、位置調節手段3と、砥石回転モーター(砥石回転手段)4と、回転トルク制御手段5と、制御手段7とを有する。
【0047】
砥石2は、はす歯状砥石の歯の角度が大きくなったネジ状砥石を用いる。そして、砥石2は、砥石歯面21が被加工歯車Wの被加工歯面11の形状に沿うように変形可能な弾性素材を用いている。砥石2の歯厚は、被加工歯車Wの歯溝の幅より小さい。砥石2は、回転軸Cを回転中心として回転可能に取り付け基部(図略)に支承されている。
【0048】
砥石回転モーター4は、減速機構(図示略、必ずしも必要ではない)を介して、砥石2を回転軸C周りに回転させる。
【0049】
回転トルク制御手段5は、図2に示されるように、被加工歯車支持手段6と、保持部材51と、調節部材52とを有する。被加工歯車支持手段6は、被加工歯車Wに一端部611が挿入される軸部61と、軸部61のフランジ部612との間で被加工歯車Wを側面から挟持する押さえ部材62と、押さえ部材62の中心を貫通し軸部61の一端部611に締結挿入される締結部材63とを有する。被加工歯車Wの内周に挿入される一端部611には、軸線方向に開口し、締結部材32が締結挿入されるネジ穴613が形成されている。押さえ部材62には、軸部61の一端部611に合わせたときに、軸部61のネジ穴613と連通する貫通孔621が中央部分に形成されている。締結部材63は、押さえ部材62の貫通孔621及び軸部61のネジ穴613と締結挿入されるネジ631と、ネジ631及び押さえ部材62の間に位置する座金632とを有する。被加工歯車支持手段6の軸部61は、被加工歯車Wに挿入される一端部611と、軸部61の他端部614に取り付けられた保持回転軸615以外の部分が保持部材51によって回転可能に保持される。保持部材51は、図示されていない台座に固定される本体部511と、軸受け部材512とを有する。本体部511は、軸部61が挿入される貫通孔511aが内部に形成されており、軸受け部材512を介して軸部61(被加工歯車支持手段6)を回転可能に保持する。保持部材51に回転可能に支承される被加工歯車支持手段6の軸部61に被加工歯車Wは挿入され、軸部61の一端部611に押さえ部材62を合わせた後、締結部材63によって締結され、被加工歯車Wは、被加工歯車支持手段6と回転軸Xで一体回転可能に支承される。
【0050】
調節部材52は、被加工歯車Wが挿入される被加工歯車支持手段6の保持回転軸615に設置される。例えば、保持回転軸615にオイルシール521をいくつか嵌挿することで、被加工歯車Wの回転トルクを所定範囲内に調節することが考えられる。
【0051】
また、図3及び図4には、オイルシール521以外の方法を利用して、被加工歯車Wの回転トルクを調節する調節部材8が示されている。軸部61の被加工歯車Wに挿入される一端部611とは反対側の他端部614の外周には、軸部61と一体回転する第1ディスク81が嵌合されている。他端部614に固定される保持回転軸616の外周には、摩擦材82を介して第1ディスク83と相対回転可能に第2ディスク83が配置されている。摩擦材82は、リング状をしており、軸部61の軸線方向において、第1ディスク81と第2ディスク83との間に位置する。本実施形態では、摩擦材82は第2ディスク83の表面(第1ディスク81と当接する面)に貼り付けられているが、第1ディスク81の表面(第2ディスク83と当接する面)に貼り付けても良いし、第1ディスク81及び第2ディスク83の双方に貼り付けても良い。なお、摩擦材82の形状は、リング状に限られず、周方向に適当な間隔(等間隔、不等間隔問わず)で配置されても良い。
【0052】
第2ディスク83の外周側の一箇所には、棒状のストッパ86が周方向に2つ並んだ状態で配置されており、ストッパ86の軸線が軸部61の軸線方向を向くように一端部で嵌合されている。そして、ストッパ86は、他端が第2ディスク83から軸線方向に突き出しており、突き出した2つのストッパ86の間には、弾性体からなる測定用部材87が位置する。測定用部材87は、補助部材871と共に、第2ディスク83の外周側で、締結部材872によってケース80に固定されている。測定用部材87には、ひずみ計測器が取り付けられており、計測された計測値は、後述するトルク制御手段制御部73に伝達される。ひずみ計測器は、ひずみゲージなどによりひずみの大きさを測定するものや、光学的方法などにより測定用部材87の位置(回転トルクが付加されていない場合を基準とした位置)を計測することによりひずみの大きさを測定するものなどを採用でき、その測定原理や測定方式は特に限定されない。
【0053】
第2ディスク83は、軸線方向において摩擦材82とは逆側で、軸部61の他端部614に固定されている保持回転軸616に軸受け84を介して回転自在に支承されている。軸線方向において、第2ディスク83とケース80との間には、コイル状バネ85と補助ディスク88とが配置されている。コイル状バネ85は、一端が第2ディスク83に、他端が補助ディスク88に当接され、軸線方向に伸縮可能に配置されており、補助ディスク88は、コイル状バネ85が係合する面とは逆の面がケース80の外部から挿入されるトルク調節部材89によって、軸線方向に押圧される。
【0054】
トルク調節部材89は、軸線方向に移動可能に配設されている。そして、トルク調節部材89は、軸線方向に移動することにより、被加工歯車Wと砥石2との間に作用する圧力に関連する被加工歯車Wに加わる回転トルクの大きさを調節することができる。例えば、被加工歯車Wの回転トルクを大きくする場合は、トルク調節部材89を軸線方向で軸部61側に移動させることで、補助ディスク88が軸線方向にコイル状バネ85を押す。そして、縮み方向に荷重が加えられたコイル状バネ85は、第2ディスク83を軸線方向に押圧し、摩擦材82が第1ディスク81に押圧される。結果、回転軸Xで回転する被加工歯車Wと一体回転する軸部61は、その押圧力に応じた回転トルクを回転方向とは反対方向に変えられ、回転トルクが大きくなる。
【0055】
本実施形態におけるトルク調節部材89は、ケース80に螺合するネジ(図略)が外周に形成され、回転することでそのネジの作用により軸線方向に移動する。また、トルク調節部材89は、後述するトルク制御手段制御部73によって回転させられる。なお、トルク調節部材89を軸線方向に移動する手段は、ケース80に対して軸線方向に移動することができるものであれば、ネジに限られない。
【0056】
図1に戻って、位置調節手段3は、送りネジ(図示略)と送りネジの一端と係合するサーボモーター(図示略)とを有し、送りネジの他端は、取り付け基部に係合する。取り付け基部は、砥石2を回転可能に支承しており、台座(図略)に移動可能に配置されている。そして、位置調節手段3は、サーボモーターの作動によって、砥石2の回転軸Cと被加工歯車Wの回転軸Xとの相対位置を調節する。なお、サーボモーターは、パルスモーターなど他のモーターを用いることができる。
【0057】
制御手段7は、相対位置制御部71と、砥石回転手段制御部72と、トルク制御手段制御部73と、振動制御部74とを有する。相対位置制御部71は、砥石2の回転軸Cと被加工歯車Wの回転軸Xとの相対位置を調節して、被加工歯車の1つの歯を形成する歯面のうち一方の被加工歯面11のみ、砥石2の砥石歯面21に当接させて、砥石2及び被加工歯車Wを噛み合わせるように位置調節手段3を作動させる。砥石歯面21と被加工歯車Wの他方の被加工歯面12との間に隙間dを確保した状態で砥石2及び被加工歯車Wを噛み合わせる位置の調節は、機構的にも電気的にも行うことができる。例えば、本実施形態1では、砥石2の歯厚を被加工歯車Wの歯溝の幅より小さくしているため、機構的に、被加工歯車Wの歯先が砥石2の歯底に当接した時点で、砥石2及び/又は被加工歯車Wの移動は停止する。あるいは、光位置センサー、超音波距離計、光学式距離測定器などを用いて、砥石歯面2と被加工歯車Wの他方の被加工歯面12との隙間を測定し、その測定結果に基づいて目的の相対位置になるように、位置調節手段3を作動させることができる。また、隙間dが確保できる砥石2の回転軸Cと被加工歯車Wの回転軸Xとの位置関係をあらかじめ導き出しておき、その位置に砥石2の回転軸C及び/又は被加工歯車Wの回転軸Xとの位置関係を調節する構成とすることもできる。
【0058】
砥石回転手段制御部72は、砥石回転モーター4を制御することで、砥石2の回転方向を切り替えることができる。図1において、砥石2が回転方向N(回転方向Z)で回転する場合に、被加工歯車Wが回転方向Aで回転すると、図1に示す断面において、見かけ上、歯(山)が矢印G方向に移動する。砥石2の回転の制御は特に限定しないが、砥石の周速度が一定になるように制御することが望ましい。従って、砥石が摩耗して小さくなった場合には、砥石2の角速度を大きくするなどして周速度を一定に保つことが望ましい。
【0059】
トルク制御手段制御部73は、被加工歯車Wの回転トルクFを所定範囲に調節するように、回転トルク制御手段5を作動させる。トルク制御手段制御部73は、被加工歯車Wの回転トルクFを検出し、回転トルクFを調節する。被加工歯車Wの回転トルクFは、回転トルク制御手段5の調節部材8の測定用部材87によって測定されたひずみに基づき、トルク制御手段制御部73によって求められる。そして、求められた回転トルクFが所定範囲内となるように、調節部材8のトルク調節部材89を軸線方向に移動させる制御信号を送信する。検出した回転トルクFが基準となる所定範囲よりも小さければ回転トルクFを大きくする方向にトルク調節部材89を移動させ、検出した回転トルクFが基準となる所定範囲よりも大きければ回転トルクFを小さくする方向にトルク調節部材89を移動させ、検出した回転トルクFが基準となる所定範囲の範囲内であればトルク調節部材89の軸線方向の位置を維持する。被加工歯車Wの回転トルクFを制御することで、砥石歯面21と被加工歯面11との加工圧力Pを調節することができる。
【0060】
振動制御部74は、砥石2及び/又は被加工歯車Wを振動させるように位置調節手段3を作動させ、砥石2の回転軸Cと被加工歯車Wの回転軸Xとの相対位置を変化させる。例えば、図1に示すように、被加工歯面11の歯面の形状に沿う方向Yに、砥石2を移動させる。移動(振動)させる方向は、被加工歯面11の歯幅、歯たけ方向に対して傾斜している方向や平行、垂直方向、あるいは円形に振動する等、限定されないが、特に、径方向に振動するのが好ましい。なお、振幅の大きさは、砥石歯面21と被加工歯面11とが噛み合って振動できる範囲であり、例えば、本実施形態1の場合は、1μm〜100μmとなっている。そして、砥石歯面21と被加工歯面11とは接触している状態が望ましく、また、振動制御部74による砥石2の移動(振動)方向は圧力が変化しない方向が望ましく、さらには圧力変化が許容できる範囲での移動(振動)が望ましい。
【0061】
位置調節手段3により振動を付与する場合には、位置調節手段3自身が有する、送りネジとサーボモーターとによって、砥石2を目的の振幅・周波数で移動させて振動させる構成を用いても良いし、位置調節手段3以外に別の振動装置を有する構成とすることもできる。別の振動装置としては、例えば、超音波発生手段などがある。
【0062】
制御手段7は、被加工歯面11の加工後、被加工歯車Wの他方の被加工歯面12を加工するために、砥石回転手段制御部72によって、砥石2の回転方向を切り替える。歯車加工装置10の砥石2を逆回転した場合が、図5に示されている。図5において、砥石2が回転方向Nの逆回転方向M(回転方向B)に回転すると、図5に示す断面において、見かけ上、歯(山)が矢印H方向に移動する。すると、被加工歯車Wの1つの歯の被加工歯面11の他方の被加工歯面12が、砥石歯面21と当接する。また、被加工歯車Wは、回転方向Aの逆方向の回転方向Eの方向に回転する。その際、トルク制御手段制御部73は、被加工歯車Wの回転トルクJを所定範囲に調節するように、回転トルク制御手段5を作動させる。
【0063】
図6は、本実施形態1の歯車処理装置10で実行される歯車製造方法の代表的な制御方法を示したフローチャートを示す。但し、このフローチャートにて示した制御方法は一例であり、これに限定されるものではない。
【0064】
歯車製造方法は、位置調節工程S3と砥石回転工程S4とを有する。位置調節工程S3では、相対位置制御部71によって、砥石2の回転軸Cと被加工歯車Wの回転軸Xとの相対位置を調節し、被加工歯面11のみ砥石歯面21に当接させて砥石2と被加工歯車Wとを噛み合わせる。砥石回転工程S4では、砥石回転手段制御部72によって、砥石2を回転させる。砥石回転工程S4は、位置調節工程S3の途中や、位置調節工程S3を開始する前に開始しても良い。なお、本実施形態1の歯車製造方法は、位置調節工程S3及び砥石回転工程S4を所定条件が満たされるまで繰り返すようにしても良い。所定条件としては、一定時間が経過すること、砥石2の回転軸Cと被加工歯車Wの回転軸Xとの相対位置が所定の範囲に入ったこと、被加工歯面11の加工程度が所定範囲にまで進んでいることなどが考えられる。
【0065】
回転トルク制御工程S5は、図7に示されるように、砥石回転工程S4中に実行される。回転トルク制御工程S5は、回転トルク制御部73によって、被加工歯車Wの回転トルクを所定範囲に調節するように回転トルク制御手段5の作動を制御する。また、砥石回転工程S4中において、振動工程S6を実行する場合もある。振動工程S6では、振動制御部74からの動作指令に基づいて、位置調節手段3による砥石2の移動が実行される。砥石2が移動することで、砥石2の回転軸Cと被加工歯車Wの回転軸Xとの相対位置が変化する。
【0066】
歯車製造方法は、砥石回転工程S4において砥石2を回転させ、回転トルク制御工程S5を実行する。回転トルク制御工程S5では、被加工歯車Wの回転トルクを制御し、砥石歯面21と被加工歯面11との加工圧Pをコントロールする。そして、砥石回転工程S4中で回転トルク制御工程S5が実行されている状態で、振動工程S6を任意に実行することができる。振動工程S6を実行することで、被加工歯面11の形状をより精密に、あるいは高能率に加工することができる。
【0067】
そして、本実施形態1の歯車処理装置10で実行される歯車製造方法によれば、被加工歯車Wの歯面の一方の処理の後、砥石2の回転方向を切り替えることで、他方の被加工歯面を加工することができる。また、回転トルク制御手段5が、回転トルクを被加工歯車Wが増速する方向にも付与できる場合(調節部材52,8を回転させることができるモーターが設けられている場合など)には、回転トルク制御工程S5において、被加工歯車Wの回転トルクを制御し、砥石2の回転する速さより被加工歯車Wの回転が増速する方向に回転トルクを付与することで、被加工歯車Wの他方の被加工歯面を加工することができる。
【0068】
本実施形態1の歯面加工装置10及び歯車製造方法によれば、砥石歯面21と被加工歯面11とを当接させ、砥石歯面21と他方の被加工歯面12との間に隙間dが設けられるように、砥石2と被加工歯車Wとを噛み合わせるため、砥石歯面21と被加工歯面11との間の加工圧Pをコントロールし易い。加工圧Pのコントロールは、例えば、歯車付勢工程S5を実行して歯車回転モーター4で被加工歯車Wの回転トルクを制御する。加工圧Pをコントロールし易いことで、被加工歯車Wの研磨焼けやクラックの発生、砥石2の破損を回避しながら、被加工歯車Wの被加工歯面11の面粗さを改善することができる。
【0069】
また、隙間dがあることで、砥石2と被加工歯車Wとの相対位置関係も変化させ易い。例えば、振動工程S6を実行して位置調節手段3によって砥石2を移動させる。このように、砥石2が回転している状態で、砥石2を振動するように移動させることで、被加工歯車Wが実際に噛み合う歯車を考慮して、被加工歯面の形状を加工することができる。実際に噛み合う歯車を考慮した歯面によれば、騒音が抑制される。
【0070】
また、砥石回転モーター4の回転方向を切り替えられるため、被加工歯車Wの取り付け向きを変えてセットし直すことなく、被加工歯車Wの他方の被加工歯面12を加工することができる。
【0071】
さらに、砥石2として、砥石歯面12が被加工歯面11の形状に沿うように変形可能な素材を採用することで、変形した歯面に沿って磨き上げる事が出来る。
【0072】
[実施形態2]
本実施形態2の歯面加工装置は、実施形態1の歯面加工装置10と基本的に同様の構成及び作用効果を有する。以下、異なる構成及び作用効果を中心に説明する。
【0073】
本実施形態2の歯面加工装置は、調節部材9が、実施形態1の歯面加工装置10で用いられる調節部材52,8と異なっている。本実施形態2の歯面加工装置で用いられる調節部材9は、図8に示されるように、被加工歯車Wに一端が挿入され、図略された軸受け部に対して回転可能な状態で軸部61の他端614側が設置される。調節部材9は、他端の端部にトルクを生成するトルク生成モーター91と、トルク生成モーター91及び軸部61の間に第1測定部材92と、第2測定部材93と、ねじり緩衝体94とを有する。第1測定部材92及び第2測定部材93は、トルク生成モーター91のモーター軸90に同軸に回転可能に設置される円盤状の部材である。第1測定部材92及び第2測定部材93は、軸線方向に厚みのある円筒状の部材でも良い。ねじり緩衝体94は、軸線方向で第1測定部材92と第2測定部材93との間に位置するねじりバネである。ただし、ねじり緩衝体94は、ねじりバネに限られるものではなく、ゴムやコイルバネ等の弾性力を有する部材であれば良い。
【0074】
第1測定部材92及び第2測定部材93は、それぞれ周方向に少なくとも1つ、基準ポイント921,931を有する。被加工歯車Wの被加工歯面11に加わる回転トルクの調節は、2つの基準ポイント921,931のずれを検知し、その値を用いて行うことができる。基準ポイント921,931の検知は、光学センサー、磁気センサー、画像処理センサーなどの位置検出センサー95,96で行う。なお、図8において、基準ポイント921,931は、円盤状の本体から径方向に突出した形状としてあるが、突出した形状に限定されない。通過を画像によって識別可能な色彩だけの場合、あるいは磁石が埋め込まれており外観に現れていない場合も考えられる。
【0075】
基準ポイント921,931を用いて、回転トルクを調節する方法として、例えば以下に示す方法がある。なお、これは一例であり、本発明は、この方法に限定されるものではない。まず、被加工歯車Wが砥石2と噛み合っておらず、トルク生成モーター91が駆動していない状態の基準ポイント921,931のぞれぞれの位置を確認する。必要に応じて、それぞれの位置を周方向で同じ位置に調整する(図9(a)参照)。次に、噛み合っていない状態で、被加工歯車Wと砥石2とが同期回転する回転数となるように、トルク生成モーター91を駆動する。砥石2の回転数がN2、被加工歯車Wの歯数がZ、砥石2の条数がJである場合、被加工歯車Wは、回転数N3=N2/Z*Jで同期回転する。トルク生成モーター91が被加工歯車Wを回転数N3となるように駆動したとき、基準ポイント921,931が周方向でずれた状態を初期状態(被加工歯車Wの被加工歯面11に加わるトルクがゼロ)とする。被加工歯車Wと砥石2とが位置調節手段3によって、相対位置が調節されて噛み合い、砥石回転手段制御部72によって砥石2が回転した後は、基準ポイント931が初期状態からどれだけずれているか検知し(図9(b)、(c))、トルク生成モーター91の駆動を調節する。なお、初期状態は、被加工歯車Wを取り替える毎、一定時間経過毎、加工の進行程度に応じてなど、適正に設定すれば良い。
【0076】
トルク生成モーター91を加速方向に駆動して基準ポイント931がずれた正方向の場合(図9(b))、被加工歯面11が加工される。トルク生成モーター91を減速方向に駆動して基準ポイント931が正方向に対して逆方向にずれた場合(図9(c))、被加工歯面11の逆歯面である他方の被加工歯面12が加工される。トルク制御手段制御部73は、トルク生成モーターの電力や回転数を増減させ、初期状態からの±Sの大きさを変えて、加工圧Pを調節する。
【0077】
本実施形態2の歯面加工装置によれば、砥石回転モーター4の回転方向を切り替えるのではなく、回転トルク制御手段5としての調節部材9のトルク生成モーター91を調節することで、被加工歯車Wの他方の被加工歯面12を加工することができ、被加工歯車Wの取り付け向きを変えてセットし直したり、砥石の回転方向を変える必要がなく、効率的に被加工歯車Wの両歯面を加工することができる。
【0078】
以上、図1〜図9を用いることで、本発明の基本構成である実施形態1及び2を説明した。ただし、上述した実施形態1及び2は、本発明に係る歯面加工装置と、この装置を用いて実行される歯車製造方法の基本的な概念を説明したものである。そこで、次に、図10〜図13を参照して、本発明に係る歯面加工装置の具体的なシステム構成の実施例を説明することとする。
【0079】
[実施例1]
ここで、図10は、本実施例1に係る歯面加工装置におけるシステム構成を示す図である。なお、図10で例示する実施例1に係る歯面加工装置は、砥石2と被加工歯車Wが同期回転を行う方式を採用した装置である。
【0080】
本実施例1に係る歯面加工装置において、砥石2には、スピンドルモーターである砥石回転モーター4が連結されており、このスピンドルモーター4によって、はす歯状をした砥石2が回転駆動可能となっている。なお、スピンドルモーター4には、内蔵検出器4aが設置されており、砥石2の回転量を把握できるようになっている。一方、被加工歯車Wは、C軸16とタイミングベルト17を介して駆動用サーボモーター18と連結されており、被加工歯車Wについても、この駆動用サーボモーター18によって回転駆動可能となっている。そして、スピンドルモーター4に連結された砥石2と、駆動用サーボモーター18に連結された被加工歯車Wとは、電子ギヤボックス19を介して電気的かつ制御的に接続されており、両者は噛み合わさった状態で同期回転することができるように構成されている。
【0081】
なお、一般的な数値制御を使って研削を行う従来の機構においても、スピンドルモーターと連結した「はす歯状砥石」と、駆動用サーボモーターと連結した「被加工歯車」とを、電子ギヤボックスを介して噛み合わせて同期回転させることが行われていた。しかしながら、従来技術では、はす歯状砥石の切込みは、被加工歯車のラジアル方向に向けて別のサーボモーターを使って切込みをかけることで、被加工歯車の両歯面を同時研削することが行われていた。しかしながら、図10で例示する本実施例1に係る歯面加工装置では、被加工歯車Wのラジアル方向への砥石2の切り込みに際して、別のサーボモーターを使用する必要がない。すなわち、本実施例1に係る歯面加工装置によれば、電子ギヤボックス19で同期回転して噛合っている砥石2と被加工歯車Wのうち、被加工歯車Wに連結された駆動用サーボモーター18に対して、同期の「進み」や「遅れ」を別個に指令し、歯車の噛合いピッチ方向に「切込み」(位置制御・電流制限)をかけることで、歯車の片歯面毎に歯面圧力を加えて研磨することが可能となっている。
【0082】
このように、電子ギヤボックス19を用いた同期回転方式のシステム構成は、はす歯状砥石2と被加工歯車Wとが自身のトルクによって回転することになるので、例えばC軸16の慣性や回転抵抗に左右されず、加工歯面に対して小さく安定した荷重を与えることが可能となる。また、砥石2と被加工歯車Wとの相対加工方向が同じ方向となり、左右歯面が同じ加工条件となるので、表面性状や表面粗さが均一化できるといった利点も得られる。さらに、本実施例1によれば、はす歯状砥石2の回転停止・逆回転起動の動作が不要となるので、省エネ・省資源・加工時間短縮等といった効果が得られる。
【0083】
[実施例2]
以上、図10を用いて、本実施例1に係る歯面加工装置を説明した。しかし、実施例1の構造は、「進み」方向のトルク調製は容易であるが、「遅れ・減速」方向でのトルク調整に改良すべき余地が残されていた。そこで次に、実施例2として、「進み・遅れ」方向に関係無くトルク管理が容易なシステム構成例を説明する。ここで、図11は、本実施例2に係る歯面加工装置におけるシステム構成を示す図である。なお、図11で例示する実施例2に係る歯面加工装置についても、砥石2と被加工歯車Wが同期回転を行う方式を採用した装置である。また、本実施例2の歯面加工装置は、実施例1の歯面加工装置と同一又は類似の構成及び作用効果を有するので、以下では、異なる構成及び作用効果を中心に説明する。
【0084】
本実施例2に係る歯面加工装置では、被加工歯車Wと駆動用サーボモーター18との間に設置されたC軸16´に対して、ねじり緩衝体16aが設置されるとともに、このねじり緩衝体16aの両端に対して、それぞれ1つずつポジションコーダー16b,16cを設置する構成が採用されている。一対のポジションコーダー16b,16cは、ねじり緩衝体16aのねじれ量を測定して被加工歯車Wに加わる加工トルクを検知するとともに、駆動用サーボモーター18に対して位置制御と電流制御を行うことができるので、かかる構成によって、被加工歯車Wに加わる加工圧力を調整することが可能となっている。なお、ねじり緩衝体16aについては、ばねやゴム等といった小さな力で変形し、共振し難い素材を用いることが好適である。ただし、本実施例2で用いることのできるねじり緩衝体16aは、これらのものに限られず、例えば、電気的な緩衝体を用いることも可能である。
【0085】
なお、図11では示していないが、本実施例2に係る歯面加工装置に対しては、被加工歯車Wの回転軸上に砥石成形用ロータリードレッサーを設置してもよい。本実施例2に係る歯面加工装置に砥石成形用ロータリードレッサーを併設することで、砥石成形が容易な装置構成とすることができる。
【0086】
また、本実施例2に係る歯面加工装置に対して、ねじり緩衝体16aの機能選択を行うためのクラッチ機能を追加することで、ねじり緩衝体16aの機能のON/OFFが可能な装置構成を採用することも可能である。クラッチ機能をON状態としてねじり緩衝体16aを剛体として機能させれば、C軸16´は研磨軸とドレス軸を兼用した軸となり、好適である。
【0087】
さらに、上述した実施例2では、ねじり緩衝体16aのねじれ量を一対のポジションコーダー16b,16cによって測定する構成が採用されていたが、例えば、ねじり緩衝体16aに対してストレンゲージを貼り、直接撓み量を検出することで、加工トルクを測定する手法を採用することもできる。
【0088】
[実施例3]
上述した本実施例2については、電子ギヤボックス19を廃止することで、コスト削減を図った装置構成を実現することも可能である。かかる廉価版の構成を、図12に例示する。ここで、図12は、本実施例3に係る歯面加工装置におけるシステム構成例を示す図である。
【0089】
図12に示す本実施例3に係る歯面加工装置の場合、実施例1及び2で示した電子ギヤボックス19が廃止されている。そこで、本実施例3に係る歯面加工装置では、スピンドルモーターである砥石回転モーター4の駆動力に対し、機械的に同期回転している被加工歯車W用の駆動用サーボモーター18の回転方向に「進み」及び「遅れ」を別個に指令し、歯車の噛合いピッチ方向に切込みを掛けると同時に、電流制限(加工トルク)を指示することで、歯車の片歯面毎に歯面圧力を加えて研磨することが可能となる。かかる制御方式の採用によって、電子ギヤボックス19が不要となるので、製造コストの削減効果を得ることができる。
【0090】
[実施例4]
以上説明した実施例1〜3は、砥石2と被加工歯車Wとの両方に駆動源が設置され、両者が同期回転することで歯面加工を行うものであった。しかし、次に図13を用いて説明する本実施例4に係る歯面加工装置では、被加工歯車W用の駆動用サーボモーター18と電子ギヤボックス19とが廃止されており、駆動源は、砥石2に連結されたスピンドルモーターである砥石回転モーター4のみとなっている。ただし、被加工歯車Wの側には、ブレーキ装置18´が設置されており、スピンドルモーター4の回転駆動力に対して、ブレーキを掛けることで歯面加工を制御する方式となっている。
【0091】
すなわち、本実施例4に係る歯面加工装置は、はす歯状の砥石2と被加工歯車Wとをバックラッシュ有りの状態で噛み合わせ、砥石2側を回転させることでその回転力によって被加工歯車Wをも回転させ、連れ回りに基づく回転トルクに対して被加工歯車Wの軸側に設けられたブレーキ装置18´を作動させることでブレーキを掛け、歯車歯面に圧力を加えて研磨する構成を特徴とする装置である。かかる装置構成は、砥石2に対して被加工歯車Wが連れ回ることで歯面加工が実現する方式である。本実施例4に係る構造では、逆歯面を研磨する時は、はす歯状砥石2の回転方向を変える必要がある。また、歯車歯面への加工圧力の調整は、ブレーキ装置18´側でトルク検知する方式と、被加工歯車Wに連結するC軸16´に設置されたねじり緩衝体16aをもって検知する方式を選択することができる。さらに、本実施例4では、ねじり緩衝体16aの強さ(コイルバネに例えればバネ定数)の選定により、より緻密な加工圧力が調整できる。またさらに、ねじり緩衝体16aを設けることにより、直接的に微小なトルクが調節できるので、結果として精度の高い研磨面を得る事ができる。さらにまた、ねじり緩衝体16aは、ゴム・各種スプリング、樹脂などの部材を使い、ストレンゲージ等により直接撓み量を測定し荷重を測定できる。なお、ねじり緩衝体16aについては、電気的な緩衝体を採用することも可能である。
【0092】
以上、本発明の好適な実施形態及び各種の実施例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態等に記載の範囲には限定されない。上記実施形態等には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。例えば、以下に説明する変形形態1等の構成を採用することも可能である。
【0093】
[変形形態1]
本変形形態1の砥石目立手段23は、実施形態1及び実施形態2の歯面加工装置で被加工歯車Wを加工する砥石2を成形及び目立てするための手段である。
【0094】
本変形形態1の砥石目立手段23は、図14及び図15に示されるように、表面がダイヤモンド製のロータリードレッサーとして構成されている。この砥石目立手段23は、2枚の円盤が並んだ形状である。砥石2の1つの山が、砥石目立手段23の相隣り合う2つの山による谷フランクで、左右両側から所定の圧力角で挟み込まれる。
【0095】
砥石2を成形及び目立てする構成としては、図14に示されるように、砥石目立手段23が砥石2の歯スジに沿うように配置される。砥石2は、モーター4によって回転軸Cを回転中心として回転する。砥石目立手段23は、砥石目立手段23の軸周りで回転できるように支持され、砥石2の回転に従動し、軸線方向に移動する。また、図示が省略されているが、砥石目立手段23を砥石2と噛み合わせる方向に、砥石目立手段23の位置を調節する手段も有する。
【0096】
ところで、従来、砥石を成形及び目立てする場合には、図16に示されるように、砥石目立手段24,25のような形状のロータリードレッサーが用いられていた。1つの山だけの砥石目立手段24は、1つの山が、砥石の2つの山の一方の砥石歯面21を一方向から押圧する。また、目立てされる側の砥石の隣り合う2つの山を挟み込んで砥石歯面21を成形及び目立てする砥石目立手段25は、砥石の隣り合う2つの山を近づけるように砥石目立手段25によって一方向から押圧する。砥石が被加工歯面の形状に沿うように変形可能な弾性素材である場合、この砥石目立手段24,25では、図に示される小さい矢印の方向に、砥石の山が変形してしまい、砥石を成形及び目立てすることが難しかった。
【0097】
しかしながら、本変形形態1の歯面加工装置によれば、砥石目立手段23が2つの山で砥石2の1つの山を成形及び目立てするため、接触面積が狭く抵抗が少ないため、小さな力(電力等)で砥石2の成形及び目立てをすることができる。また、特に、砥石が被加工歯面の形状に沿うように変形可能な弾性素材である場合、本変形形態1に係る砥石目立手段23は効果的であり、砥石の1つの山は砥石目立手段23の2つの山に挟み込まれて拘束されて、砥石が成形及び目立てされることとなる。
【0098】
[変形形態2]
以上、変形形態1の砥石目立手段23として構成されるロータリードレッサーの形態例を図14及び図15を用いて説明したが、本発明に適用可能な砥石目立手段については、さらに多様な変形形態を採用することができる。例えば、図17は、変形形態2に係る砥石目立手段26を例示する図であるが、図17で例示する砥石目立手段26としてのロータリードレッサーは、砥石目立手段26の両端面の箇所に、被加工歯車Wの小径に相当する円筒成形部26aが形成されていることを特徴としている。また、変形形態2に係る砥石目立手段26としてのロータリードレッサーは、2つのネジ山を有する歯型形状のロータリードレッサーとして形成されている。
【0099】
変形形態2に係る砥石目立手段26は、2つのネジ山を有する歯型形状のロータリードレッサーとして形成されることで、上述した変形形態1の砥石目立手段23と同様に、従来技術に比べて非常に効率よく砥石2の成形及び目立てをすることが可能となっている。また、変形形態2に係る砥石目立手段26は、両端面の箇所に円筒成形部26aを有しており、図17にて例示するように、その円筒成形部26aの形状を生かした動作を実行させることで、変形形態1の砥石目立手段23と比較しても、非常に効率よく砥石2の成形及び目立てをすることが可能となっている。
【0100】
なお、図17で例示した変形形態2に係る砥石目立手段26は、2つのネジ山を有する構成例が示されているが、ネジ山の個数は2つに限定されるものではなく、3つ以上のネジ山を設けることも可能である。
【0101】
[その他の実施形態]
以上、本発明の好適な実施形態、実施例及び変形形態について説明したが、本発明は上記の実施形態等に限定されるものではない。例えば、トルク調節部材89は、弾性体からなる計測用部材87のひずみを計測することで、被加工歯車Wの回転トルクを導出しているが、計測用部材87の変形に伴う位置の変化や、計測用部材87ではなく第2ディスク83の移動量(回転角度)等を計測することで、被加工歯車Wの回転トルクを導出する構成を採用することもできる。
【0102】
また、振動工程S6で実行される振動手段6は、被加工歯車Wを移動させることで振動させる装置、あるいは砥石2及び被加工歯車Wの両方を移動させることで振動させる装置、とすることができる。
【0103】
また、回転トルク制御手段5としては、被加工歯車Wの回転を制御する手段に代えて、位置制御手段3を用いて、砥石2の回転軸Cと被加工歯車Wの回転軸Xとの相対位置を変化させることのみで行っても良い。つまり、砥石2の回転軸Cと被加工歯車Wの回転軸Xとの相対位置を変化させることにより、砥石2と被加工歯車Wとの当接の程度を変化させることができる。本実施形態では、砥石2は被加工歯車Wの被加工歯面のうちの一方のみに当接させた状態で加工を進行させているため、位置制御手段3のみにより加工圧を適正に制御することが可能である。
【0104】
[付記]
その他の歯面加工装置の構成上の特徴は、前記はす歯状砥石の歯幅以上の歯幅で、前記はす歯状砥石の回転に従動して回転し、前記はす歯状砥石の軸方向の移動に従動する砥石目立手段を有することである。砥石歯面を目立てする砥石目立手段の歯幅が砥石歯面の歯幅以上とすることで、砥石目立手段の回転及び軸方向移動がはす歯状砥石に従動することができるため、砥石目立手段を回転させ、軸方向に移動させる手段を追加することなく、砥石歯面を目立てすることができる。本発明は、研磨焼けやクラックの発生、砥石の破損を回避することができるため、はす歯状砥石によって被加工歯車を加工しながら、砥石歯面の目立てをすることができ、加工効率が高い。
【0105】
また、その他の歯車製造方法の特徴は、前記加工装置が、前記はす歯状砥石の歯幅以上の歯幅で、前記はす歯状砥石の回転に従動して回転し、前記はす歯状砥石の軸方向の移動に従動する砥石目立手段を有することである。当該方法によれば、砥石歯面を目立てする砥石目立手段の歯幅が砥石歯面の歯幅以上とすることで、砥石目立手段の回転及び軸方向移動がはす歯状砥石に従動することができるため、砥石目立手段を回転させ、軸方向に移動させる手段を追加することなく、砥石歯面を目立てすることができる。本発明は、研磨焼けやクラックの発生、砥石の破損を回避することができるため、はす歯状砥石によって被加工歯車を加工しながら、砥石歯面の目立てをすることができ、加工効率が高い。
【符号の説明】
【0106】
10:歯面加工装置、W:被加工歯車、11:被加工歯面、12:他方の被加工歯面、16,16´:C軸、16a ねじり緩衝体、16b,16c:ポジションコーダー、17:タイミングベルト、18:駆動用サーボモーター、18´:ブレーキ装置、19:電子ギヤボックス、2:砥石(はす歯状砥石)、21:砥石歯面、23,26:砥石目立手段、24,25:砥石目立手段(従来)、3:位置調節手段、4:砥石回転手段(スピンドルモーター)、4a 内蔵検出器、5:回転トルク制御手段、51:保持部材、511:本体部、512:軸受け部材、52:調節部材、521:オイルシール、6:被加工歯車支持手段、61:軸部、611:一端部、612:フランジ部、613:ネジ穴、614:他端部、615,616:保持回転軸、62:押さえ部材、621:貫通孔、63:締結部材、631:ネジ、632:座金、7:制御手段、71:相対位置制御部、72:砥石回転手段制御部、73:トルク制御手段制御部、74:振動制御部、8:調節部材、80:ケース、81:第1ディスク、82:摩擦部材、83:第2ディスク、84:軸受け、85:コイル状バネ85、86:ストッパ、87:測定用部材、871:補助部材、872:締結部材、88:補助ディスク、89:トルク調節部材、9:調節部材、90:モーター軸、91:トルク生成モーター、92:第1測定部材、921,931:基準ポイント、93:第2測定部材、94:ねじり緩衝体、95,96:位置検出センサー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸で回転可能に支承されるはす歯状砥石と、
被加工歯車を回転軸で回転可能に支承する被加工歯車支持手段と、
前記はす歯状砥石の回転軸と前記被加工歯車の回転軸との相対位置を移動できる位置調節手段と、
前記はす歯状砥石を回転させる砥石回転手段と、
前記被加工歯車の回転トルクを制御する回転トルク制御手段と、
を有し、
前記はす歯状砥石の回転軸と前記被加工歯車の回転軸との相対位置を調節して、前記被加工歯車の1つの歯を形成する歯面のうち一方の被加工歯面のみ、前記はす歯状砥石の砥石歯面に当接させて前記はす歯状砥石及び前記被加工歯車を噛み合わせるように前記位置調節手段を作動させる相対位置制御部と、前記砥石回転手段を作動させる砥石回転手段制御部と、前記回転トルクを所定範囲に調節するように前記回転トルク制御手段を作動させるトルク制御手段制御部とをもつ制御手段を有することを特徴とする歯面加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の歯面加工装置において、
前記はす歯状砥石は、前記砥石歯面が前記被加工歯面の形状に沿うように変形可能な弾性素材であることを特徴とする歯面加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の歯面加工装置において、
前記砥石回転制御部は、前記砥石回転手段を回転させ、
前記回転トルク制御手段制御部は、前記被加工歯車を一方向及び他方向に回転トルクを切り替え、前記被加工歯車の前記一方及び他方の被加工歯面を加工することを特徴とする歯車加工装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯面加工装置において、
前記はす歯状砥石は、前記被加工歯車の歯溝の幅より歯厚が小さいことを特徴とする歯面加工装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯面加工装置において、
前記制御手段は、前記はす歯状砥石及び/又は前記被加工歯車を振動させるように前記位置調節手段を作動させる振動制御部をもつことを特徴とする歯面加工装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の歯面加工装置において、
少なくとも隣り合う1対の山の形状を有し、前記1対の山で形成される谷で前記砥石の1つの山を拘束した状態で前記砥石歯面を成形及び目立てする砥石目立手段を有することを特徴とする歯面加工装置。
【請求項7】
請求項6に記載の歯面加工装置において、
前記砥石目立手段は、両端面の箇所に、前記被加工歯車の小径に相当する円筒成形部が形成されていることを特徴とする歯面加工装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の歯面加工装置において、
前記被加工歯車を回転可能に支承する被加工歯車支持手段には、ねじれ量を発生させるねじり緩衝体が設置されていることを特徴とする歯面加工装置。
【請求項9】
回転軸で回転可能に支承されるはす歯状砥石と被加工歯車を回転軸で回転可能に支承する被加工歯車支持手段とをもつ加工装置を用い、
前記はす歯状砥石の回転軸と前記被加工歯車の回転軸との相対位置を調節して、前記被加工歯車の1つの歯を形成する歯面のうち一方の被加工歯面のみ、前記はす歯状砥石の砥石歯面に当接させて、前記はす歯状砥石及び前記被加工歯車を噛み合わせる位置調節工程と、
前記はす歯状砥石を回転させる砥石回転工程と、
前記砥石回転工程中に、前記被加工歯車の回転トルクを所定範囲に調節する回転トルク制御工程を有することを特徴とする歯車製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の歯車製造方法において、
前記はす歯状砥石は、前記砥石歯面が前記被加工歯面の形状に沿うように変形可能な弾性素材であることを特徴とする歯車製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の歯車製造方法において、
前記砥石回転工程で前記はす歯状砥石を回転させ、
前記回転トルク制御工程で前記被加工歯車を一方向及び他方向に回転トルクを切り替え、前記被加工歯車の前記一方及び他方の被加工歯面を加工することを特徴とする歯車製造方法。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか1項に記載の歯車製造方法において、
前記はす歯状砥石は、前記被加工歯車の歯溝の幅より歯厚が小さいことを特徴とする歯車製造方法。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか1項に記載の歯車製造方法において、
前記砥石回転工程で前記はす歯状砥石及び/又は前記被加工歯車を振動させ、さらに、
前記はす歯状砥石の回転軸と前記被加工歯車の回転軸との相対位置を変化させる振動工程を実行することを特徴とする歯車製造方法。
【請求項14】
請求項9〜13のいずれか1項に記載の歯車製造方法において、
少なくとも隣り合う1対の山の形状を有する砥石目立手段を用い、前記1対の山で形成される谷で前記砥石の1つの山を拘束した状態で、前記砥石歯面の成形及び目立てを行う砥石目立工程を実行することを特徴とする歯車製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の歯車製造方法において、
前記砥石目立手段には、両端面の箇所に、前記被加工歯車の小径に相当する円筒成形部が形成されており、
前記砥石目立工程は、前記円筒成形部を用いて前記砥石歯面の成形及び目立てを行う処理を含むことを特徴とする歯車製造方法。
【請求項16】
請求項9〜15のいずれか1項に記載の歯車製造方法において、
前記被加工歯車を回転可能に支承する被加工歯車支持手段には、ねじれ量を発生させるねじり緩衝体が設置されていることを特徴とする歯車製造方法。
【請求項1】
回転軸で回転可能に支承されるはす歯状砥石と、
被加工歯車を回転軸で回転可能に支承する被加工歯車支持手段と、
前記はす歯状砥石の回転軸と前記被加工歯車の回転軸との相対位置を移動できる位置調節手段と、
前記はす歯状砥石を回転させる砥石回転手段と、
前記被加工歯車の回転トルクを制御する回転トルク制御手段と、
を有し、
前記はす歯状砥石の回転軸と前記被加工歯車の回転軸との相対位置を調節して、前記被加工歯車の1つの歯を形成する歯面のうち一方の被加工歯面のみ、前記はす歯状砥石の砥石歯面に当接させて前記はす歯状砥石及び前記被加工歯車を噛み合わせるように前記位置調節手段を作動させる相対位置制御部と、前記砥石回転手段を作動させる砥石回転手段制御部と、前記回転トルクを所定範囲に調節するように前記回転トルク制御手段を作動させるトルク制御手段制御部とをもつ制御手段を有することを特徴とする歯面加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の歯面加工装置において、
前記はす歯状砥石は、前記砥石歯面が前記被加工歯面の形状に沿うように変形可能な弾性素材であることを特徴とする歯面加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の歯面加工装置において、
前記砥石回転制御部は、前記砥石回転手段を回転させ、
前記回転トルク制御手段制御部は、前記被加工歯車を一方向及び他方向に回転トルクを切り替え、前記被加工歯車の前記一方及び他方の被加工歯面を加工することを特徴とする歯車加工装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯面加工装置において、
前記はす歯状砥石は、前記被加工歯車の歯溝の幅より歯厚が小さいことを特徴とする歯面加工装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯面加工装置において、
前記制御手段は、前記はす歯状砥石及び/又は前記被加工歯車を振動させるように前記位置調節手段を作動させる振動制御部をもつことを特徴とする歯面加工装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の歯面加工装置において、
少なくとも隣り合う1対の山の形状を有し、前記1対の山で形成される谷で前記砥石の1つの山を拘束した状態で前記砥石歯面を成形及び目立てする砥石目立手段を有することを特徴とする歯面加工装置。
【請求項7】
請求項6に記載の歯面加工装置において、
前記砥石目立手段は、両端面の箇所に、前記被加工歯車の小径に相当する円筒成形部が形成されていることを特徴とする歯面加工装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の歯面加工装置において、
前記被加工歯車を回転可能に支承する被加工歯車支持手段には、ねじれ量を発生させるねじり緩衝体が設置されていることを特徴とする歯面加工装置。
【請求項9】
回転軸で回転可能に支承されるはす歯状砥石と被加工歯車を回転軸で回転可能に支承する被加工歯車支持手段とをもつ加工装置を用い、
前記はす歯状砥石の回転軸と前記被加工歯車の回転軸との相対位置を調節して、前記被加工歯車の1つの歯を形成する歯面のうち一方の被加工歯面のみ、前記はす歯状砥石の砥石歯面に当接させて、前記はす歯状砥石及び前記被加工歯車を噛み合わせる位置調節工程と、
前記はす歯状砥石を回転させる砥石回転工程と、
前記砥石回転工程中に、前記被加工歯車の回転トルクを所定範囲に調節する回転トルク制御工程を有することを特徴とする歯車製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の歯車製造方法において、
前記はす歯状砥石は、前記砥石歯面が前記被加工歯面の形状に沿うように変形可能な弾性素材であることを特徴とする歯車製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の歯車製造方法において、
前記砥石回転工程で前記はす歯状砥石を回転させ、
前記回転トルク制御工程で前記被加工歯車を一方向及び他方向に回転トルクを切り替え、前記被加工歯車の前記一方及び他方の被加工歯面を加工することを特徴とする歯車製造方法。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか1項に記載の歯車製造方法において、
前記はす歯状砥石は、前記被加工歯車の歯溝の幅より歯厚が小さいことを特徴とする歯車製造方法。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか1項に記載の歯車製造方法において、
前記砥石回転工程で前記はす歯状砥石及び/又は前記被加工歯車を振動させ、さらに、
前記はす歯状砥石の回転軸と前記被加工歯車の回転軸との相対位置を変化させる振動工程を実行することを特徴とする歯車製造方法。
【請求項14】
請求項9〜13のいずれか1項に記載の歯車製造方法において、
少なくとも隣り合う1対の山の形状を有する砥石目立手段を用い、前記1対の山で形成される谷で前記砥石の1つの山を拘束した状態で、前記砥石歯面の成形及び目立てを行う砥石目立工程を実行することを特徴とする歯車製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の歯車製造方法において、
前記砥石目立手段には、両端面の箇所に、前記被加工歯車の小径に相当する円筒成形部が形成されており、
前記砥石目立工程は、前記円筒成形部を用いて前記砥石歯面の成形及び目立てを行う処理を含むことを特徴とする歯車製造方法。
【請求項16】
請求項9〜15のいずれか1項に記載の歯車製造方法において、
前記被加工歯車を回転可能に支承する被加工歯車支持手段には、ねじれ量を発生させるねじり緩衝体が設置されていることを特徴とする歯車製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−39659(P2013−39659A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−128742(P2012−128742)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【出願人】(592058315)アイシン・エーアイ株式会社 (490)
【出願人】(511174443)エーアイ・マシンテック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【出願人】(592058315)アイシン・エーアイ株式会社 (490)
【出願人】(511174443)エーアイ・マシンテック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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