説明

気化ユニットの洗浄方法

【課題】気化ユニット内部に堆積物が大量に蓄積する前に、気化ユニットを配管から取り外すこと無くその堆積物を外部へと排出させる。また、原料の分解によって発生した副生成物を除去してパ−ティクル(塵埃)の増加を防止し、配管やバルブ等のメンテナンス周期を延ばす。
【解決手段】気化ユニット内に堆積した生成物を除去して気化ユニットを洗浄する気化ユニットの洗浄方法において、生成物が堆積した気化ユニット内に第1の洗浄液を供給する第1の工程と、第1の洗浄液を気化ユニット内から排出しない状態で、気化ユニット内に第2の洗浄液を供給する第2の工程と、第1の洗浄液および第2の洗浄液を気化ユニットから排出する第3の工程と、を順に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置およびそれに接続される液体材料の供給装置を備える基板処理システムに関し、特に、液体材料を気化する目的の気化ユニット、又はその気化ユニットを有する液体材料供給装置の洗浄システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
HfO2やZrO2のような高誘電率膜を形成する際、常温、常圧で液体である原料が主に使用されている。また、液体材料を反応室に供給する際は気化器で気化して使用する必要がある。
【0003】
また、気化器としては、不活性ガスでバブリングして供給する方式と、加熱・気化させて供給する方式があり、加熱気化方式は供給量を多く確保できることから最近では良く用いられる方式である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1に加熱気化方式の気化器242の概略構造を示した。液体原料入口21より供給された液体原料は、キャリア入口27から供給されたキャリア(N2などの不活性ガス)と混合した後、原料導入管22を通ってヒータ23で加熱された気化室24で気化されて気化原料出口25より反応室に送られる。
【0005】
使用される原料の中で、例えば、TEMAH(Hf(NEtMe)4)は水分との反応性が高く、キャリアN2に含まれる水分などと反応して副生成物26を作りやすく、配管の詰まりやパーティクルの原因となっている。液体材料の中には、水分との反応性が非常に高いものや加熱により自己分解を起こしやすい性質のものが多数存在する。
【0006】
このような要因により、しばしば液体材料の一部が気化ユニット内部で分解し、その分解物が起因する様々な不具合が引き起される場合がある。水分や熱による分解物(副生成物)の沸点が、元の液体材料の沸点よりも高い場合には、その分解物は気化ユニット内で気化されずに液体又は固体となって気化ユニット内部に堆積することになる。
【0007】
この残留物質は、塵埃の発生源となったり、気化ユニットの内壁表面に付着して気化器の温度を下げて、気化性能を悪化させたり、流路を狭めてガスの流れを阻害したりするため、気化ユニットを短期間でオーバーホールする必要があった。
【0008】
図8はALD法の膜形成時の反応メカニズムを示している(出所:D.M.Hausmann, E.Kim, J.Becker and R.G.Gordon, Chem. Matter 14 (2002) 4350-4358)。例えば、原料がZr(NMe2)4の場合は、基板のSi-OHへのZr(NMe2)4の吸着とMe2N-Hの離脱がまず行われる。次いで、酸化剤としてH2Oを用いた場合には、Zrに付いていたMe2N-がH2Oとの置換反応によりMe2N-Hとして離脱してZr-OHが形成されるとしている。ここで、キャリアガス中にH2Oが含まれていると、Zr(NMe2)4とH2Oが同時に存在するため、(NMe2)n(OH)mZrOlのようなクラスターを形成してパーティクルの原因となる。
【0009】
従って、本発明の主な目的は、気化ユニット内部に堆積物が大量に蓄積する前に、気化ユニットを配管から取り外すこと無くその堆積物を外部へと排出させることにある。すなわち、原料の分解によって発生した副生成物を除去してパ−ティクル(塵埃)の増加を防止し、配管やバルブ等のメンテナンス周期を延ばすことのできる液体材料供給系の洗浄方法および基板処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、
生成物が堆積した気化ユニット内に第1の洗浄液を供給する第1の工程と、
前記第1の洗浄液を前記気化ユニット内から排出しない状態で、前記気化ユニット内に第2の洗浄液を供給する第2の工程と、
前記第1の洗浄液および前記第2の洗浄液を前記気化ユニットから排出する第3の工程と、
を順に行い、前記気化ユニット内に堆積した生成物を除去して前記気化ユニットを洗浄する気化ユニットの洗浄方法、が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原料の分解によって発生した副生成物を除去してパ−ティクル(塵埃)の増加を防止して、配管やバルブ等のメンテナンス周期を延ばすことのできる液体材料供給系の基板処理システムが提供される。
【0012】
更には、この配管系統のメンテナンスには、多額の費用(部材と人件費)が必要であり、それらの多額な費用の節約が可能となる。更には、分解物が原因のパ−ティクル(塵埃)や配管の詰まりが防止され、又、配管系統のメンテナンス期間を著しく拡大する事が可能となることから、装置稼働率の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る基板処理システムで使用される気化器の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る基板処理システムの概略構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る基板処理システムにおける洗浄シーケンスを示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る基板処理システムで適用される基板処理装置の概略斜透視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る基板処理システムで適用される基板処理装置の概略側面透視図である。
【図6】本発明の実施形態に係る基板処理システムで適用される処理炉の縦断面図である。
【図7】図6のA−A線拡大断面図である。
【図8】ALD成膜における原料の付着と膜形成の解説図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好ましい実施例を図面を参照して説明する。
【0015】
まず、図4、図5を用いて、半導体デバイスの製造方法における処理工程を実施する基板処理システムにて適用される基板処理装置について説明する。尚、以下の説明では、基板処理装置として、基板に酸化、拡散処理やCVD処理などを行なう半導体製造装置(以下、単に処理装置という)を適用した場合について述べる。図4は、本発明に適用される処理装置の斜透視図として示されている。また、図5は図4に示す処理装置の側面透視図である。
【0016】
図4および図5に示されているように、シリコン等からなるウェーハ(基板)200を収納したウェーハキャリアとしてのカセット110が使用されている本発明の処理装置101は、筐体111を備えている。筐体111の正面壁111aの下方にはメンテナンス可能なように設けられた開口部としての正面メンテナンス口103が開設され、この正面メンテナンス口103を開閉する正面メンテナンス扉104が建て付けられている。メンテナンス扉104には、カセット搬入搬出口(基板収容器搬入搬出口)112が筐体111内外を連通するように開設されており、カセット搬入搬出口112はフロントシャッタ(基板収容器搬入搬出口開閉機構)113によって開閉されるようになっている。カセット搬入搬出口112の筐体111内側にはカセットステージ(基板収容器受渡し台)114が設置されている。カセット110はカセットステージ114上に工程内搬送装置(図示せず)によって搬入され、かつまた、カセットステージ114上から搬出されるようになっている。
【0017】
カセットステージ114は、工程内搬送装置によって、カセット110内のウエハ200が垂直姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように載置される。カセットステージ114は、カセット110を筐体後方に右回り縦方向90°回転し、カセット110内のウエハ200が水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が筐体後方を向くように動作可能となるよう構成されている。
【0018】
筐体111内の前後方向の略中央部には、カセット棚(基板収容器載置棚)105が設置されており、カセット棚105は複数段複数列にて複数個のカセット110を保管するように構成されている。カセット棚105にはウエハ移載機構125の搬送対象となるカセット110が収納される移載棚123が設けられている。また、カセットステージ114の上方には予備カセット棚107が設けられ、予備的にカセット110を保管するように構成されている。
【0019】
カセットステージ114とカセット棚105との間には、カセット搬送装置(基板収容器搬送装置)118が設置されている。カセット搬送装置118は、カセット110を保持したまま昇降可能なカセットエレベータ(基板収容器昇降機構)118aと搬送機構としてのカセット搬送機構(基板収容器搬送機構)118bとで構成されており、カセットエレベータ118aとカセット搬送機構118bとの連続動作により、カセットステージ114、カセット棚105、予備カセット棚107との間で、カセット110を搬送するように構成されている。
【0020】
カセット棚105の後方には、ウエハ移載機構(基板移載機構)125が設置されており、ウエハ移載機構125は、ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置(基板移載装置)125aおよびウエハ移載装置125aを昇降させるためのウエハ移載装置エレベータ(基板移載装置昇降機構)125bとで構成されている。ウエハ移載装置エレベータ125bは、耐圧筐体111の右側端部に設置されている。これら、ウエハ移載装置エレベータ125bおよびウエハ移載装置125aの連続動作により、ウエハ移載装置125aのツイーザ(基板保持体)125cをウエハ200の載置部として、ボート(基板保持具)217に対してウエハ200を装填(チャージング)および脱装(ディスチャージング)するように構成されている。
【0021】
図5に示されているように、筐体111の後部上方には、処理炉202が設けられている。処理炉202の下端部は、炉口シャッタ(炉口開閉機構)147により開閉されるように構成されている。
【0022】
処理炉202の下方にはボート217を処理炉202に昇降させる昇降機構としてのボートエレベータ(基板保持具昇降機構)115が設けられ、ボートエレベータ115の昇降台に連結された連結具としてのアーム128には蓋体としてのシールキャップ219が水平に据え付けられており、シールキャップ219はボート217を垂直に支持し、処理炉202の下端部を閉塞可能なように構成されている。
【0023】
ボート217は複数本の保持部材を備えており、複数枚(例えば、50枚〜150枚程度)のウエハ200をその中心を揃えて垂直方向に整列させた状態で、それぞれ水平に保持するように構成されている。
【0024】
図4に示されているように、カセット棚105の上方には、清浄化した雰囲気であるクリーンエアを供給するよう供給ファン及び防塵フィルタで構成されたクリーンユニット134aが設けられておりクリーンエアを前記筐体111の内部に流通させるように構成されている。
【0025】
また、図4に模式的に示されているように、ウエハ移載装置エレベータ125bおよびボートエレベータ115側と反対側である筐体111の左側端部には、クリーンエアを供給するよう供給フアンおよび防塵フィルタで構成されたクリーンユニット(図示せず)が設置されており、図示しない前記クリーンユニットから吹き出されたクリーンエアは、ウエハ移載装置125a、ボート217を流通した後に、図示しない排気装置に吸い込まれて、筐体111の外部に排気されるようになっている。
【0026】
次に、本発明の処理装置の動作について説明する。
【0027】
図4および図5に示されているように、カセット110がカセットステージ114に供給されるに先立って、カセット搬入搬出口112がフロントシャッタ113によって開放される。その後、カセット110はカセット搬入搬出口112から搬入され、カセットステージ114の上にウエハ200が垂直姿勢であって、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように載置される。その後、カセット110は、カセットステージ114によって、カセット110内のウエハ200が水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が筐体後方を向けるように、筐体後方に右周り縦方向90°回転させられる。
【0028】
次に、カセット110は、カセット棚105ないし予備カセット棚107の指定された棚位置へカセット搬送装置118によって自動的に搬送されて受け渡され、一時的に保管された後、カセット棚105ないし予備カセット棚107からカセット搬送装置118によって移載棚123に移載されるか、もしくは直接移載棚123に搬送される。
【0029】
カセット110が移載棚123に移載されると、ウエハ200はカセット110からウエハ移載装置125aのツイーザ125cによってウエハ出し入れ口を通じてピックアップされ、移載室124の後方にあるボート217に装填(チャージング)される。ボート217にウエハ200を受け渡したウエハ移載装置125aはカセット110に戻り、次のウエハ110をボート217に装填する。
【0030】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、炉口シャッタ147によって閉じられていた処理炉202の下端部が、炉口シャッタ147によって、開放される。続いて、ウエハ200群を保持したボート217はシールキャップ219がボートエレベータ115によって上昇されることにより、処理炉202内へ搬入(ローディング)されて行く。ローディング後は、処理炉202にてウエハ200に任意の処理が実施される。処理後は、上述の逆の手順で、ウエハ200およびカセット110は筐体111の外部へ払出される。
【0031】
次に、図6、図7を用いて、前述した基板処理装置に適用される処理炉202について説明する。
【0032】
図6は、本実施の形態で好適に用いられる縦型の基板処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面で示し、図7は本実施の形態で好適に用いられる縦型の基板処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を図6のA−A線断面図で示す。
【0033】
加熱装置(加熱手段)であるヒータ207の内側に、基板であるウエハ200を処理する反応容器としての反応管203が設けられ、この反応管203の下端には、例えばステンレス等によりマニホールド209が気密部材であるOリング220を介して下端開口は蓋体であるシールキャップ219によりOリング220を介して気密に閉塞され、少なくとも、反応管203、マニホールド209及びシールキャップ219により処理室201を形成している。シールキャップ219にはボート支持台218を介して基板保持部材(基板保持手段)であるボート217が立設され、ボート支持台218はボートを保持する保持体となっている。そして、ボート217は処理室201に挿入される。ボート217にはバッチ処理される複数のウエハ200が水平姿勢で管軸方向に多段に積載される。ヒータ207は処理室201に挿入されたウエハ200を所定の温度に加熱する。
【0034】
処理室201へは複数種類、ここでは2種類の処理ガスを供給する供給経路としての2本のガス供給管(第1のガス供給管232a,第2のガス供給管232b)が設けられている。第1のガス供給管232aには上流方向から順に流量制御装置(流量制御手段)である液体マスフローコントローラ240、気化器242、及び開閉弁である第1のバルブ243aを介し、キャリアガスを供給する第1のキャリアガス供給管234aが合流されている。このキャリアガス供給管234aには上流方向から順に流量制御装置(流量制御手段)である第2のマスフローコントローラ241b、及び開閉弁である第3のバルブ243cが設けられている。また、第1のガス供給管232aの先端部には、処理室201を構成している反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の下部より上部の内壁にウエハ200の積載方向に沿って、第1のノズル233aが設けられ、第1のノズル233aの側面にはガスを供給する供給孔である第1のガス供給孔248aが設けられている。この第1のガス供給孔248aは、下部から上部にわたってそれぞれ同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0035】
第2のガス供給管232bには上流方向から順に流量制御装置(流量制御手段)である第1のマスフローコントローラ241a、開閉弁である第2のバルブ243bを介し、キャリアガスを供給する第2のキャリアガス供給管234bが合流されている。このキャリアガス供給管234bには上流方向から順に流量制御装置(流量制御手段)である第3のマスフローコントローラ241c、及び開閉弁である第4のバルブ243dが設けられている。また、第2のガス供給管232bの先端部には、処理室201を構成している反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の下部より上部の内壁にウエハ200の積載方向に沿って、第2のノズル233bが設けられ、第2のノズル233bの側面にはガスを供給する供給孔である第2のガス供給孔248bが設けられている。この第2のガス供給孔248bは、下部から上部にわたってそれぞれ同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0036】
例えば第1のガス供給管232aから供給される原料が液体の場合、第1のガス供給管232aからは、液体マスフローコントローラ240、気化器242、及び第1のバルブ243aを介し、第1のキャリアガス供給管234と合流し、更にノズル233aを介して処理室201内に反応ガスが供給される。例えば第1のガス供給管232aから供給される原料が気体の場合には、液体マスフローコントローラ240を気体用のマスフローコントローラに交換し、気化器242は不要となる。また、第2のガス供給管232bからは第1のマスフローコントローラ241a、第2のバルブ243bを介し、第2のキャリアガス供給管234bと合流し、更に第2のノズル233bを介して処理室201に反応ガスが供給される。
【0037】
また、処理室201は、ガスを排気する排気管であるガス排気管231により第5のバルブ243eを介して排気装置(排気手段)である真空ポンプ246に接続され、真空排気されるようになっている。なお、この第5のバルブ243eは弁を開閉して処理室201の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調節して圧力調整可能となっている開閉弁である。
【0038】
反応管203内の中央部には、複数枚のウエハ200を多段に同一間隔で載置するボート217が設けられており、このボート217は、図示しないボートエレベータ機構により反応管203に出入りできるようになっている。また、処理の均一性を向上するためにボート217を回転するためのボート回転機構267が設けてあり、ボート回転機構267を駆動することにより、ボート支持台218に支持されたボート217を回転するようになっている。
【0039】
制御部(制御手段)であるコントローラ280は、液体マスフローコントローラ240、第1〜第3のマスフローコントローラ241a、241b、241c、第1〜第5のバルブ243a、243b、243c、243d、243e、ヒータ207、真空ポンプ246、ボート回転機構267、図示しないボート昇降機構とに接続されており、液体マスフローコントローラ240、及び第1〜第3のマスフローコントローラ241a、241b、241cの流量調整、第1〜第4のバルブ243a、243b、243c、243dの開閉動作、第5のバルブ243eの開閉及び圧力調整動作、ヒータ207の温度調整、真空ポンプ246の起動・停止、ボート回転機構267の回転速度調節、ボート昇降機構の昇降動作制御が行われる。
【0040】
次に、本発明の処理炉202を用いた成膜処理例について説明する。
【0041】
なお、本発明の処理炉202では、HfO2やZrO2のような高誘電率膜が成膜される。その材料として、HfO2用として、TEMAH(テトラキスメチルエチルアミノハフニウム、Hf(NEtMe)4)、Hf(O-tBu)4、 TDMAH(テトラキスジメチルアミノハフニウム、Hf(NMe2)4)、 TDEAH(テトラキスジエチルアミノハフニウム、Hf(NEt2)4)、 Hf(MMP)4などであり、ZrO2材料としては、Hf材料同様、Zr(NEtMe)4, Zr(O-tBu)4、 Zr(NMe2)4、 Zr(NEt2)4などが用いられる。尚、Meはメチル基(CH3)、Etはエチル基(C2H5)を、Zr(O-tBu)4はZr(OC(CH3)3)4をそれぞれ表している。
【0042】
またこれ以外の材料として、Xn(NR1R2)mの化学式で表されるアミン系の材料も使用可能である。(但し、III〜V族の元素、R1およびR2はMeまたはEt、nおよびmは自然数、を示している。)
【0043】
以下では、ALD法を用いた成膜処理例について、半導体デバイスの製造工程の一つである、TEMAH及びO3を用いてHfO2膜を成膜する例を基に説明する。
【0044】
CVD(Chemical Vapor Deposition)法の一つであるALD(Atomic Layer Deposition)法は、ある成膜条件(温度、時間等)の下で、成膜に用いる少なくとも2種類の原料となる反応性ガスを1種類ずつ交互に基板上に供給し、1原子単位で基板上に吸着させ、表面反応を利用して成膜を行う手法である。このとき、膜厚の制御は、反応性ガスを供給するサイクル数で行う(例えば、成膜速度が1Å/サイクルとすると、20Åの膜を形成する場合、20サイクル行う)。
【0045】
ALD法では、例えばHfO2膜形成の場合、TEMAHとO3を用いて180〜250℃の低温で高品質の成膜が可能である。
【0046】
まず、上述したようにウエハ200をボート217に装填し、処理室201に搬入する。ボート217を処理室201に搬入後、後述する3つのステップを順次実行する。
【0047】
(ステップ1)
第1のガス供給管232aにTEMAH、第1のキャリアガス供給管234aにキャリアガス(N2)を流す。この時ガス排気管231の第5のバルブ243eは開けられている。第1のガス供給管232aの第1のバルブ243a、第1のキャリアガス供給管234aの第3のバルブ243cを共に開ける。キャリアガスは、第1のキャリアガス供給管234aから流れ、第2のマスフローコントローラ241bにより流量調整される。TEMAHは、第1のガス供給管232aから流れ、液体マスフローコントローラにより流量調整され、気化器242により気化され、流量調整されたキャリアガスを混合し、第1のノズル233aの第1のガス供給孔248aから処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。この時、第5のバルブ243eを適正に調整して処理室201内の圧力を6.6-665Paの範囲であって、例えば300Paとする。液体マスフローコントローラ240で制御するTEMAHの供給量は0.01〜0.5g/minである。TEMAHガスにウエハ200を晒す時間は30〜180秒間である。このときヒータ207温度はウエハの温度が180〜300℃の範囲であって、例えば200℃になるよう設定してある。
TEMAHを処理室201内に供給することで、ウエハ200上の下地膜などの表面部分と表面反応(化学吸着)する。
【0048】
(ステップ2)
第1のガス供給管232aの第1のバルブ243aを閉め、TEMAHの供給を停止する。このときガス排気管231の第5のバルブ243eは開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を20Pa以下となるまで排気し、残留TEMAHガスを処理室201内から排除する。このときN2等の不活性ガスを処理室201内へ供給すると、更に残留TEMAHガスを排除する効果が高まる。
【0049】
(ステップ3)
第2のガス供給管232bにO3、第2のキャリアガス供給管234bにキャリアガス(N2)を流す。第2のガス供給管232bの第2のバルブ243b、第2のキャリアガス供給管234bの第4のバルブ243dを共に開ける。キャリアガスは、第2のキャリアガス供給管234bから流れ、第3のマスフローコントローラ241cにより流量調整される。O3は第2のガス供給管232bから流れ、第3のマスフローコントローラにより流量調整され、流量調整されたキャリアガスを混合し、第2のノズル233bの第2のガス供給孔248bから処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。この時、第5のバルブ243eを適正に調整して処理室201内の圧力を26-266Paの範囲であって、例えば66Paに維持する。O3にウエハ200を晒す時間は10〜120秒間である。このときのウエハの温度が、ステップ1のTEMAHガスの供給時と同じく180〜300℃の範囲であって、例えば200℃となるようヒータ207を設定する。O3の供給により、ウエハ200の表面に化学吸着したTEMAHとO3とが表面反応して、ウエハ200上にHfO2膜が成膜される。
成膜後、第2のガス供給管232bの第2のバルブ243b及び、第2のキャリアガス供給管234bの第4のバルブ243dを閉じ、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、残留するO3の成膜に寄与した後のガスを排除する。このとき、N2等の不活性ガスを反応管203内に供給すると、更に残留するO3の成膜に寄与した後のガスを処理室201から排除する効果が高まる。
【0050】
また、上述したステップ1〜3を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことにより、ウエハ200上に所定の膜厚のHfO2膜を成膜することができる。
【0051】
次に、図1の気化ユニットにTEMAHを流した際、その内部に堆積する生成物について述べる。生成物をEPMA(電子線マイクロ分析)したところHf、O、C、Nが検出され、Oは13‐30%含まれていることが判った。又、FT‐IR(フーリエ変換型赤外吸収スペクトル)では、酸化ハフニウムに比して、C-H、C-N、O-H結合によるピークが観測され、アミノ基を含む有機物が残っていると考えられた。これらの分析結果により、生成物は(NMeEt)n(OH)mHfOlのようなクラスターであると予測された。又、この生成物は、配管の洗浄溶剤として用いているN-ヘキサンには溶けないことが明らかになった。
【0052】
そこで、本発明者らは、(NMeEt)n(OH)mHfOlのような生成物は極性のない非プロトン性のN-ヘキサンのような溶媒には溶けないが、プロトン性溶媒には溶かす又は反応、分解することが出来ると考えた。
【0053】
前述した生成物(NMeEt)n(OH)mHfOlはイオン結合によりクラスターを形成しており、イオン化合物の結合を解くためにはイオン化しやすい溶媒に接触させることにより、分解し、生成物クラスターを各分子に分離することが可能となる。ここでイオン化しやすい溶媒とはプロトン性溶媒のことであり、プロトンの脱離により容易にイオン化してイオンクラスターを形成する(NMeEt)n(OH)mHfOlと反応することにより、生成物イオンが溶媒分子のイオンに囲まれた溶媒和の状態となって、生成物クラスターを各分子に分離することが可能となる。
【0054】
ここで、プロトン性溶媒とはメチルアルコール、エチルアルコールのようなアルコール性溶媒である。極性のない非プロトン性溶媒とはオクタン、ヘキサンのようなハイドロカーボン系溶剤である。
【0055】
気化器242内の洗浄手順の概略としては、次の通りである。
ここでは、非プロトン性溶剤としてヘキサンを、プロトン性溶剤としてメタノールを例にとって説明する。
【0056】
(1) まず、気化ユニットへ非プロトン性溶剤であるヘキサンを供給する。この工程で、ヘキサンは生成物クラスターと反応することなく、生成物クラスター中に浸透する。
【0057】
(2) 続いて、ヘキサンを気化ユニット内から排出しない状態で、プロトン性溶剤であるメタノールを供給する。この工程で、生成物クラスターがメタノールと反応して分解され、アミンを発生する。
なお、この工程においてはヘキサンは排出しない方が良い。この理由としては、ヘキサンは揮発性が高いので、気化ユニットからヘキサンを排出してしまうと、生成物クラスター中に浸透したヘキサンも揮発してしまい、その状態でメタノールが供給されると、生成物クラスターがゲル化してしまうことがあるからである。但し、ヘキサンの排出時間が十分短かければ、一旦ヘキサンを排出させてもある程度の効果が期待できるが、排出させない方がより好ましい。
また、メタノールで分解されたクラスターの分子は、ヘキサンに溶ける。
【0058】
(3) 気化ユニットから溶剤を排出する。
(4) 好ましくは、この後にヘキサンを供給して排出する。これは、気化ユニットから極性溶剤であるメタノールを抜くより、非極性溶剤のヘキサンを抜く方が抜き易いからである(減圧排気だけで容易に抜くことが可能)。
なお、気化ユニット内の生成物をより確実に除去するため、上記(1)〜(3)の工程を複数回繰り返しても良い。
【0059】
ここで、上記(1)の工程において、ヘキサンに代わって、最初にプロトン性溶剤であるメタノールを気化ユニットへ供給すると、生成物クラスターが難溶性のゲル状になり(Hf-O-Hfの形成)、この状態でヘキサンを加えても除去する(溶かす)ことは難しくなる。
【0060】
よって、最初にヘキサンを供給することで、主に次の2つの効果がある。
第一に、(ヘキサンが無い状態で)最初にメタノールを供給すると、熱が発生して縮合反応を起こしゲル化してしまうので、これを防ぐことができる。
第二に、生成物クラスターにヘキサンが浸透(又は、気化ユニット内にヘキサンが充満)されていると、次に供給されるメタノールが生成物クラスター中に均一に入り込むことができ、メタノールと生成物クラスターが均一に反応することができる。
【0061】
すなわち、メタノールに先立ちヘキサンを気化ユニット内に供給し、ヘキサンとメタノールとを生成物クラスターに対し相互に作用させることで、生成物クラスターを反応して分解することが可能となる。結果、気化ユニットから生成物クラスターを容易に除去させることができるものである。
【0062】
なお、なお、TEMAHを使用した場合の気化ユニット内の生成物クラスターとメタノールとの反応は、次式で表すことができると考えられる。
(NMeEt)n(OH)mHfOl+ MeOH → (MeO)n(OH)mHfOl + HNMeEt↑
ここで、(MeO)n(OH)mHfOl はヘキサン可溶性であり、HNMeEtはアミンのガスである。
【0063】
次に、図2に本発明の基板処理システムの概略構成を示す。液体原料タンク30内の原料は、第1の圧送ガス40により液体流量計240を経由して気化器242に送られ、気化器242にて気化された後、処理炉202へ供給され成膜に寄与する。通常の基板処理システムの原料供給系は、この原料タンク30、液体流量計240、気化器242、処理炉202で構成される。本発明の基板処理システムの構成では、洗浄液Aを収容する洗浄液タンク31、洗浄液Bを収容する洗浄液タンク32が更に設けられる構成となる。
【0064】
一定期間の成膜で気化器内に副生成物が堆積すると、洗浄液タンク31、32を用いて洗浄を行うことになる。バルブ10を経由して配管内に残留した液体原料を排気ポンプ246を通して排気した後、第2の圧送ガス41を用いて洗浄液Aを気化器242内に送る。
【0065】
一定時間、副生成物に洗浄液Aを含浸させた後、第3の圧送ガス42により洗浄液Bを気化器242に送り込む。これにより、生成物は容易に洗浄液Bにより反応、分解される。
【0066】
図3に洗浄シーケンスの一例を示す。
洗浄シーケンスとして、まずバルブ10を開け、配管内に残留した液体原料を排気ポンプ246で排気する。続けてバルブ11を開け、第1の圧送ガス40により配管内をパージする。次にバルブ11を閉じ、洗浄液Aを導入するため真空にする。そしてバルブ10を閉じ、バルブ2、5を開け、第2の圧送ガス41の作用により気化器内に洗浄液Aを導入する。ここで配管や気化ユニット内の生成物がに洗浄液Aが浸透する。所定時間、洗浄液Aを供給させた後、バルブ2、5を閉じ、バルブ7、11を開け洗浄液Aを除去する。なお、前述したように、洗浄液Aが揮発性が高い場合は、除去、排出させない方が好ましい。そしてバルブ7、11を閉じ、バルブ1、6を開け洗浄液Bを導入する。所定時間経過後、バルブ1、6を閉じ、バルブ7、11を開け洗浄液Bを除去する。このとき生成物も同時に排出される。そしてバルブ7、11を閉じ、バルブ10を開け真空引きする。
以上の手順を実施することで、生成物を除去することができる。
なお、上記の洗浄シーケンスは、各バルブ等の動作をコントローラ280により制御することにより実行される。
【0067】
以上説明したように、本発明の好ましい実施の形態によれば、
基板を処理する処理室と、
液体原料を気化させる気化ユニットと、
前記気化ユニットで気化された原料ガスを前記処理室へ供給する供給系と、
前記処理室内の雰囲気を排出する排出系と、
前記気化ユニット内に堆積した生成物を洗浄するための洗浄液を前記気化ユニットへ供給する洗浄液供給系を備え、
前記洗浄液供給系は、少なくとも2種類の洗浄液を前記気化ユニットへ供給し、前記生成物に対して前記2種類の洗浄液のそれぞれを作用させることで前記生成物を前記気化ユニットから除去可能とした ことを特徴とする基板処理システム、が提供される。
【0068】
好ましくは、
前記洗浄液は第1の洗浄液と第2の洗浄液を含み、前記第1の洗浄液は非プロトン性の溶剤、前記第2の洗浄液はプロトン性の溶剤であって、
前記洗浄液の供給順は、前記第1の洗浄液を前記気化ユニットへ供給した後、前記第2の洗浄液を前記気化ユニットへ供給する。
【0069】
また、好ましくは、前記第2の洗浄液は、前記第1の洗浄液が前記気化ユニット内に残留している状態で、前記気化ユニット内に供給する。
【0070】
また、好ましくは、前記気化ユニットから前記第1の洗浄液と第2の洗浄液とを排出した後、再度、前記気化ユニットに前記第1の洗浄液を供給する。
【0071】
また、好ましくは、前記気化ユニットに前記第1の洗浄液が供給されることで前記第1の洗浄液が前記生成物の中に浸透し、しかる後、前記第2の洗浄液が供給されることで前記第2の洗浄液が前記生成物と反応して分解させる。
【0072】
また、好ましくは、前記第1の洗浄液は、非プロトン性溶媒であり、更に好ましくはハイドロカーボン系溶剤である。
【0073】
また、好ましくは、前記第2の洗浄液はプロトン性溶媒であり、更に好ましくはアルコール系溶剤である。
【0074】
また、本発明の好ましい実施の形態によれば、
基板を処理する処理室と、
液体原料を気化させる気化ユニットと、
前記気化ユニットで気化された原料ガスを前記処理室へ供給する供給系と、
前記処理室内の雰囲気を排出する排出系と、
前記気化ユニット内に堆積した生成物を洗浄するための洗浄液を前記気化ユニットへ供給する洗浄液供給系と、を備えた基板処理システムにおける前記気化ユニットの洗浄方法であって、
前記洗浄液供給系は、少なくとも2種類の洗浄液を前記気化ユニットへ供給し、前記生成物に対して前記2種類の洗浄液のそれぞれを作用させることで前記生成物を前記気化ユニットから除去させることを特徴とする洗浄方法、が提供される。
【符号の説明】
【0075】
20…シャットオフバルブ
21…液体原料入口
22…原料導入ノズル
23…ヒータ
24…気化室
25…気化原料出口
26…副生成物
27…キャリア入口
30…原料供給タンク
31…洗浄液Aのタンク
32…洗浄液Bのタンク
40…第1の圧送ガス
41…第2の圧送ガス
42…第3の圧送ガス
200…ウエハ
202…処理炉
203…反応管
207…ヒータ
209…マニホールド
217…ボート
218…ボート支持台
219…シールキャップ
220…Oリング
231…ガス排気管
232a…第1のガス供給管
232b…第2のガス供給管
233a…第1のノズル
233b…第2のノズル
234a…第1のキャリアガス供給管
234b…第2のキャリアガス供給管
240…液体マスフローコントローラ
241a…第1のマスフローコントローラ
241b…第2のマスフローコントローラ
241c…第3のマスフローコントローラ
242…気化器
243a…第1のバルブ
243b…第2のバルブ
243c…第3のバルブ
243d…第4のバルブ
243e…第5のバルブ
246…空ポンプ
248a…第1のガス供給孔
248b…第2のガス供給孔
267…ボート回転機構
280…コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生成物が堆積した気化ユニット内に第1の洗浄液を供給する第1の工程と、
前記第1の洗浄液を前記気化ユニット内から排出しない状態で、前記気化ユニット内に第2の洗浄液を供給する第2の工程と、
前記第1の洗浄液および前記第2の洗浄液を前記気化ユニットから排出する第3の工程と、
を順に行い、前記気化ユニット内に堆積した生成物を除去して前記気化ユニットを洗浄する気化ユニットの洗浄方法。
【請求項2】
前記第1の洗浄液は非プロトン性の溶剤であり、前記第2の洗浄液はプロトン性の溶剤である請求項1に記載の気化ユニットの洗浄方法。
【請求項3】
前記第3の工程の後に、
前記気化ユニット内に第1の洗浄液を供給する第4の工程を行う請求項1に記載の気化ユニットの洗浄方法。
【請求項4】
前記第1の洗浄液はハイドロカーボン系溶媒である請求項2に記載の気化ユニットの洗浄方法。
【請求項5】
前記第2の洗浄液はアルコール系溶媒である請求項2に記載の気化ユニットの洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−8978(P2013−8978A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−171654(P2012−171654)
【出願日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【分割の表示】特願2006−255635(P2006−255635)の分割
【原出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】