説明

気相成長装置及び気相成長方法

【課題】サセプタ上に落下したフレーク状の付着物を、サセプタのサイズに関係なく、サセプタ上のパージガスの乱れ及び巻き上がりを発生させることなく、確実に除去し、延いては、基板温度の均一性を保ち、再現性のよい膜品質を得ることができ、稼働率を高め得る気相成長装置及び気相成長方法を提供する。
【解決手段】シャワーヘッド14における複数のガス噴出孔を中心部から外周に向かって同心に区画した複数の領域に対して、ガスの噴出量を個別に制御する流量制御装置6が設けられている。流量制御装置6は、トレイ12のサセプタ13への載置前に、シャワーヘッド14に対向するサセプタ13の面内領域に向けて、複数の領域に対して個別に流量を変えながらパージガスをシャワーヘッド14のガス噴出孔からシャワー状に噴出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の製造に用いるMOCVD装置等の気相成長装置及び気相成長方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode)、半導体レーザー、及び太陽電池の製造方法として、トリメチルガリウムやトリメチルアルミニウム等の有機金属ガスと、アンモニア、ホスフィン、アルシン等の水素化合物とを原料として化合物半導体薄膜を形成するMOCVD法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属化学気相蒸着法)が行なわれている。MOCVD法は、原料ガスを反応炉内に導入して混合させ、基板上で熱反応させることにより基板上で薄膜形成するものである。
【0003】
この方法を用いる気相成長装置として、MOCVD装置がある。MOCVD装置は、膜厚及び膜質の面内均一性が良いという利点があり、半導体製造業界においてよく用いられている装置である。MOCVD装置は、一般的に、反応ガスやパージガスを導入するガス供給系と、基板をその内部に設置して供給されたガスと共に加熱し、基板上で反応させることによって成膜処理を行う反応炉と、反応炉で使用されたガスを無害化しながら外部へ排気する除害排気系とから構成される。
【0004】
以下、従来のMOCVD装置の反応炉周辺の構成について説明する。
【0005】
図11に示すように、直方体形状の反応炉101には、反応炉101へガスを供給するためのガス供給ライン102と、反応炉101からガスを排気するためのガス排気ライン106とが接続されている。ガス供給ライン102の上流側は、配管が分岐し、材料ガスを供給する材料ガス源103とパージガスを供給するパージガス源104とに接続され、材料ガス源103とパージガス源104との近傍には、それぞれにバルブ105が設置されている。このバルブ105の切り替えによって、材料ガス又はパージガスを、選択し供給することができる。
【0006】
一方、ガス排気ライン106の下流側には、排ガス処理装置107が連結されており、反応炉101で消費したガスは、反応炉101の外部へ排出され、ガス排気ライン106を通り、排ガス処理装置107で処理される構成となっている。
【0007】
また、反応炉101の内部においては、基板110を載置するためのトレイ111と、さらにそのトレイ111を載置するサセプタ112とが設置されている。基板110は、成長開始前に予め反応炉101の外部でトレイ111に載置される。基板110載置後のトレイ111は、図示しないトレイ搬送手段によって、反応炉101内部に搬入され、サセプタ112上に設置される。
【0008】
また、サセプタ112の下部にはヒータ113が設けられ、かつ反応炉内部上壁側には、シャワーヘッド114が設置されており、ガス供給ライン102から導入されたガスが反応炉101内部に供給される構成となっている。
【0009】
上記MOCVD装置における基板110への気相成長時においては、材料ガス源103からガス供給ライン102を介して反応炉101に材料ガスが導入され、反応炉101内でシャワーヘッド114により、シャワー状となって基板110上に供給される。また、同時に、ヒータ113にてサセプタ112を加熱することによって、熱伝導にてトレイ111及びその上に載置された基板110を加熱する。これにより、基板110上での気相化学反応が促進され、基板110上に薄膜が形成される。
【0010】
このようなMOCVD装置を含めた気相成長装置を使用する生産現場においては、製品の歩留まりに繋がる成膜品質が重視されると同時に、装置の稼働率を高めながら効率的に、かつ安定した歩留まりを長期間維持し続けることが重要となる。
【0011】
ところで、このような従来のMOCVD装置においては、成長後に処理された基板110を回収するために、図示しないトレイ搬送手段によって、トレイ111をサセプタ112から離脱させ、反応炉101の外部へ搬出する工程を要する。
【0012】
トレイ搬送手段によって、トレイ111を反応炉101の外部に搬出した後、サセプタ112上にはトレイ111が載置されないむき出しの状態となるが、次の成長を行うための基板110を載置したトレイ111を再び反応炉101内部へ搬入し、サセプタ112上に再度設置するまでの間、この状態が維持されることになる。このむき出しの状態が維持される時間は、当然ながら装置の仕様や作業方法によっても異なるが、2時間以上所要する場合がある。
【0013】
成長を繰り返すと、反応炉101内部には、反応生成物による付着物が壁面等に形成され、その付着物が剥がれ易くなることによって、サセプタ112上にフレークとなって頻繁に落下することがある。このフレークが、次の成長のために準備した基板110を載置したトレイ111を設置する際に、トレイ111とサセプタ112との間に挟まり、成長時にヒータ113によりトレイ111を加熱した際、トレイ111とサセプタ112との熱伝導状態が悪化する。この結果、基板110に温度分布を引き起こしたり、トレイ111にクラックを発生させたりして、成膜品質に悪影響を及ぼすという問題がある。
【0014】
一方、近年、気相成長装置の開発分野においては、半導体製造の生産効率を高めるため、基板110のトレイ111への搭載数が増加する傾向があり、それに伴って、トレイ111やサセプタ112を含めた反応炉101の大型化が顕著に進んでいる。反応炉101が大型化すると、それだけ成膜品質や生産歩留まりへ与える悪影響も大きくなるという問題があった。
【0015】
このような問題に対して、従来では、一般的には作業担当者の人手により、付着物がフレークとなってサセプタ112上に落下する度に、MOCVD装置を分解した上で反応炉101内部の清掃を行い、付着物の除去を行わなければならなかった。一旦、MOCVD装置を分解すると、組立てやMOCVD装置内部の部材の再調整だけでなく、反応炉101内部が空気に晒され、水分や不純物が内部に入り込む。水分や不純物は成膜品質に悪影響を及ぼすため、それらを完全に除去するためのパージ作業を行う必要がある。パージ作業とは、真空ポンプ等によって、反応炉101内部を高真空状態にした後、パージガスによる置換を繰り返し行うことである。ここで、パージガスには、水素や不活性ガスが一般的に用いられる。これらの作業を伴うため、毎回、長時間を要し、生産工程でのMOCVD装置稼働率の低下や作業者の労力消費による生産性悪化の大きな原因となっていた。また、生産性をさらに高めるために反応炉101が大型化すると、付着物の除去作業における作業者の労力や所要時間も益々大きくなるという問題があった。
【0016】
そこで、このような問題を解決する方法として、例えば、特許文献1に開示された方法がある。特許文献1に開示されたプラズマCVD装置200は、図12に示すように、反応炉201内部において成長過程に生じるフレーク状のダストを、クリーニングガス導入パイプ202・203からの不活性ガスによって、単純に吹き飛ばし、除去するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2001−131753号公報(2001年5月15日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、上記従来の特許文献1に記載の気相成長装置では、反応炉201内部に付着するフレーク状のダストを、不活性ガスにより吹き飛ばすことはできるが、その際、吹き飛ばされたフレーク状のダストが、舞い上がり易くなり、トレイ上に再度落下する。このため、不活性ガスによる吹き飛ばしを何度繰り返してもダストを完全に除去することは困難であり、ダストの吹き飛ばしの効果が少ないという問題点を有している。
【0019】
また、サセプタ204が大型化すると、フレーク状のダストを吹き飛ばすための不活性ガスの流量を大幅に増加させなければならず、それにより、フレーク状のダストが益々舞い上がり易くなる。その結果、結局ダストを除去できないために、人手作業に切り替えることになり、落下したフレーク状のダストの除去作業における作業者の労力や所要時間が却って大きくなるという問題点を有している。
【0020】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、サセプタ上に落下したフレーク状の付着物を、サセプタのサイズに関係なく、サセプタ上のパージガスの乱れ及び巻き上がりを発生させることなく、確実に除去し、延いては、基板温度の均一性を保ち、再現性のよい膜品質を得ることができ、稼働率を高め得る気相成長装置及び気相成長方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の気相成長装置は、上記課題を解決するために、複数のガス噴出孔を有するシャワーヘッドと、シャワーヘッドへ材料ガス又はパージガスを供給するガス供給ラインと、基板を搭載するトレイを載置するサセプタとを備えた気相成長装置において、上記シャワーヘッドにおける複数のガス噴出孔を中心部から外周に向かって同心に区画した複数の領域に対して、ガスの噴出量を個別に制御する流量制御手段が設けられていると共に、上記流量制御手段は、トレイのサセプタへの載置前に、シャワーヘッドに対向するサセプタの面内領域に向けて、上記複数の領域に対して個別に流量を変えながらパージガスをシャワーヘッドのガス噴出孔からシャワー状に噴出させることを特徴としている。
【0022】
また、本発明の気相成長方法は、上記課題を解決するために、複数のガス噴出孔を有するシャワーヘッドと、シャワーヘッドへ材料ガス又はパージガスを供給するガス供給ラインと、基板を搭載するトレイを載置するサセプタとを備えた気相成長装置を用いた気相成長方法において、トレイのサセプタへの載置前に、シャワーヘッドに対向するサセプタの面内領域に向けて、上記シャワーヘッドにおける複数のガス噴出孔を中心部から外周に向かって同心に区画した複数の領域に対して個別に流量を変えながらパージガスをシャワーヘッドのガス噴出孔からシャワー状に噴出することを特徴としている。
【0023】
従来の気相成長装置においては、気相成長を繰り返すことによって反応炉内部に反応生成物による付着物が形成され、それが剥がれ易くなることによりサセプタ上にフレークとなって落下することがある。このフレークが、次の気相成長のために準備した基板を載置したトレイを設置するときに、トレイとサセプタとの間に挟まる。この結果、気相成長時にヒータにてトレイを加熱したときに、トレイとサセプタとの熱伝導状態が悪化することによって、基板の温度分布を引き起こし、成膜品質に悪影響を及ぼすという問題があった。
【0024】
この問題に対して、本発明によれば、シャワーヘッドにおける複数のガス噴出孔は、中心部から外周に向かって同心の複数の領域に区画されている。そして、流量制御手段は、トレイのサセプタへの載置前に、シャワーヘッドに対向するサセプタの面内領域に向けて、上記複数の領域に対して個別に流量を変えながらパージガスをシャワーヘッドのガス噴出孔からシャワー状に噴出させる。
【0025】
この結果、サセプタ上に落下したフレーク状の付着物が存在する場合に、シャワーヘッドに対向するサセプタの面内領域に向けて、サセプタの同心領域別にパージガスをシャワー状に噴出させることができる。
【0026】
このため、サセプタ上に落下したフレーク状の付着物を、サセプタのサイズに関係なく、サセプタ上のパージガスの乱れ及び巻き上がりを発生させることなく、吹き飛ばして除去することができる。
【0027】
この結果、ひいては、基板温度の均一性を保ち、再現性のよい膜品質を得ることができ、稼働率を高め得る気相成長装置及び気相成長方法を提供することができる。
【0028】
また、この流量制御手段による流量制御は、次の気相成長の準備中に実施されるので、時間的ロスが最小限に抑えられ、生産性を大幅に向上させることができる。
【0029】
したがって、ダストの除去に関して、成膜品質を損ねることなく、稼働率を高めながら効率的に行うことにより、安定した歩留まりを長期間維持し続けることができる気相成長装置及び気相成長方法を提供することができる。
【0030】
また、本発明の気相成長装置では、前記流量制御手段は、シャワーヘッドにおける中心部から外周に向かって同心に区画する複数の領域に対して、中心部の領域から外周部の領域にかけて順番にパージガスを噴出させることが好ましい。
【0031】
これにより、サセプタ上に落下したフレーク状の付着物が存在する場合に、付着物を、サセプタ上の付着物を中心から外周に向けて順次吹き飛ばすので、サセプタ上のパージガスの乱れ及び巻き上がりを発生させることがない。
【0032】
また、サセプタ上に落下したフレーク状の付着物を、サセプタの外周側へ押しやりながら吹き飛ばすので、確実に除去することができる。
【0033】
また、本発明の気相成長装置では、前記流量制御手段は、前記シャワーヘッドからのパージガスの噴出量を、中心部の領域を外周部の領域よりも多くすることが好ましい。
【0034】
これにより、サセプタ上の中心部に多量のパージガスが噴出されるので、サセプタ上に落下したフレーク状の付着物を、確実に、サセプタの外周側へ押しやりながら吹き飛ばして除去することができる。
【0035】
また、本発明の気相成長装置では、前記流量制御手段は、前記シャワーヘッドからのパージガスの噴出量を、中心部の領域から外周部の領域にかけて段階的に少なくすることが好ましい。
【0036】
これにより、サセプタ上の外周部よりも中心部に多量のパージガスが噴出されるので、サセプタ上に落下したフレーク状の付着物を、確実に、サセプタの外周側へ押しやりながら吹き飛ばして除去することができる。
【0037】
また、本発明の気相成長装置では、前記サセプタの表面状態を監視するサセプタ監視手段が設けられていると共に、前記流量制御手段は、上記サセプタ監視手段により上記サセプタの表面状態を監視しながら、パージガスの噴出量を制御することが好ましい。
【0038】
これにより、サセプタ上に落下したフレーク状の付着物が除去できているかを監視しながらパージガスの噴出量を制御するので、例えば、除去できていない付着物を狙ってパージガスの噴出量を増加することができる。この結果、確実に、サセプタ上に落下したフレーク状の付着物を除去することができる。
【0039】
また、本発明の気相成長装置では、前記サセプタを昇降させるサセプタ昇降手段が設けられていると共に、上記サセプタ昇降手段は、パージガスのサセプタへの噴出時に、サセプタを昇降させることが好ましい。
【0040】
これにより、サセプタ昇降手段によって、サセプタの高さ位置を変えることにより、パージガスの気流を変更でき、サセプタ上のパージガスの乱れ及び巻き上がりを発生させることなく、吹き飛ばして除去することができる。
【0041】
また、本発明の気相成長装置では、前記サセプタを回転させるサセプタ回転手段が設けられていると共に、上記サセプタ回転手段は、パージガスのサセプタへの噴出時に、サセプタを回転させることが好ましい。
【0042】
これにより、サセプタの面内において、パージガスの流速に分布がある場合でも、パージガスが満遍なく平均的に吹き付けられ、確実に付着物を除去することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明の気相成長装置は、以上のように、シャワーヘッドにおける複数のガス噴出孔を中心部から外周に向かって同心に区画した複数の領域に対して、ガスの噴出量を個別に制御する流量制御手段が設けられていると共に、上記流量制御手段は、トレイのサセプタへの載置前に、シャワーヘッドに対向するサセプタの面内領域に向けて、上記複数の領域に対して個別に流量を変えながらパージガスをシャワーヘッドのガス噴出孔からシャワー状に噴出させるものである。
【0044】
また、本発明の気相成長方法は、以上のように、トレイのサセプタへの載置前に、シャワーヘッドに対向するサセプタの面内領域に向けて、上記シャワーヘッドにおける複数のガス噴出孔を中心部から外周に向かって同心に区画した複数の領域に対して個別に流量を変えながらパージガスをシャワーヘッドのガス噴出孔からシャワー状に噴出する方法である。
【0045】
それゆえ、サセプタ上に落下したフレーク状の付着物を、サセプタのサイズに関係なく、サセプタ上のパージガスの乱れ及び巻き上がりを発生させることなく、確実に除去し、延いては、基板温度の均一性を保ち、再現性のよい膜品質を得ることができ、稼働率を高め得る気相成長装置及び気相成長方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明における気相成長装置の実施の一形態を示す全体構成図である。
【図2】上記気相成長装置におけるシャワーヘッドの構成を示す底面図である。
【図3】上記気相成長装置におけるシャワーヘッドの構成を示す断面図である。
【図4】上記気相成長装置における流量制御装置の流量制御動作を示すフローチャートである。
【図5】上記気相成長装置における流量制御装置の流量制御動作を示す図である。
【図6】上記気相成長装置における流量制御装置の他の流量制御動作を示す図である。
【図7】本発明における気相成長装置の、他の実施の形態を示す全体構成図である。
【図8】上記気相成長装置における流量制御装置の流量制御動作を示すフローチャートである。
【図9】上記気相成長装置における流量制御装置の他の流量制御動作を示すフローチャートである。
【図10】上記気相成長装置における流量制御装置のさらに他の流量制御動作を示すフローチャートである。
【図11】従来の気相成長装置を示す全体構成図である。
【図12】従来の他の気相成長装置を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1〜図6に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0048】
図1は、本発明の気相成長装置としてのMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属気相堆積)装置の構成を示す模式図である。
【0049】
本実施の形態のMOCVD装置10Aは、図1に示すように、気相成長される基板11が配設される反応炉1を有している。
【0050】
反応炉1には、反応炉1へガスを供給するためのガス供給ライン2と、反応炉1からガスを排気するためのガス排気ライン7とが接続されている。
【0051】
ガス供給ライン2の上流側では配管が分岐され、各分岐配管は材料ガスを供給する材料ガス源3とパージガスを供給するパージガス源4とに接続され、材料ガス源3とパージガス源4との近傍には、バルブ5・5がそれぞれに設置されている。このバルブ5・5の切り替えによって、材料ガス又はパージガスが選択して供給されるようになっている。
【0052】
反応炉1は、複数箇所からガスが供給される構成となっており、ガス供給の手前で配管が複数に分岐し、それぞれに流量制御装置6…(後述する図3に示すMFC1〜MFC5)が設置されている。この流量制御装置6によって、反応炉1に供給する手前で分岐したそれぞれの配管内を流れるガスの流量を自在に制御することができる。
【0053】
一方、ガス排気ライン7の下流側には、反応炉1内部のガスを一定の圧力で引き出すための真空ポンプ8が接続され、さらに、排ガス処理装置9が連結されている。これにより、ガスは、反応炉1の外部へ排出され、ガス排気ライン7を通って、排ガス処理装置9にて処理される構成となっている。
【0054】
また、反応炉1の内部においては、基板11を載置するためのトレイ12を載置するサセプタ13が設置されている。基板11は、成長開始前に予め、反応炉1外部でトレイ12に載置される。基板11載置後のトレイ12は、図示しないトレイ搬送手段によって、反応炉1内部に搬入され、サセプタ13上に設置される。
【0055】
上記反応炉1の内部における上壁側には、シャワーヘッド14がサセプタ13と対向して設置されており、シャワーヘッド14は、その中心と同軸つまり同心に複数領域で分断し、個別化されている。シャワーヘッド14は、反応炉1外部に設置された流量制御装置6によって、ガスの供給量が、それぞれの個別化された領域にて自在に制御できる構成となっている。
【0056】
また、サセプタ13の下部近傍には、ヒータ15が設けられ、このヒータ15によってサセプタ13を加熱することができる。さらに、サセプタ13の下部には、昇降手段としてのサセプタ昇降装置16と回転手段としての回転軸17とが設置されており、サセプタ13を回転軸17にて回転可能に支持している。
【0057】
また、バルブ5、流量制御装置6、トレイ搬送手段、サセプタ昇降装置16及び回転軸17等のパーツ各部の動作は、予め設定されたシーケンスによって制御される。そのため、MOCVD装置10Aにはシーケンス制御装置20が設けられ、このシーケンス制御装置20は、パーツ各部と電気的に接続されている。また、シーケンス制御装置20は、その内部に情報処理部、情報記憶部、情報通信部を有して構成されており、パーツ各部の状態をリアルタイムに管理しながら、シーケンスの設定条件に応じて、パーツ各部の動作を集中制御することができる。
【0058】
次に、本実施の形態のMOCVD装置10Aにて設置されているシャワーヘッド14の構成について、図2及び図3に基づいて説明する。図2はシャワーヘッド14の底面図であり、図3はシャワーヘッド14の断面図である。
【0059】
図2及び図3に示すように、シャワーヘッド14においては、その中心部から外周部にかけて同軸つまり同心に広がるように、内部で分断し、中心部から外周部にかけて領域としてのエリア1〜エリア5の5領域に分割されている。上記エリア1〜エリア5の各領域は、個別にガスの噴出が制御できるように、領域毎に合計5台のMFC1〜MFC5の流量制御手段としての流量制御装置6が接続されている。上記流量制御装置6は、それぞれエリア1〜エリア5の領域の流量制御に対してMFC1〜MFC5が割り当てられており、個別に制御することが可能となっている。
【0060】
次に、上記構成を有するMOCVD装置10Aにおけるシーケンス制御装置20での、気相成長が終了してから次の気相成長が開始されるまでに実行されるシーケンスの基本フローを、図4のフローチャートに基づいて説明する。
【0061】
図4に示すように、気相成長が終了した後は(S1)、まず、トレイ12の搬出が実行される(S2)。トレイ12の搬出は、図示しないトレイ搬送手段によって、サセプタ13に載置されたトレイ12を反応炉1の外部へ取り出すことによって行われる。トレイ12を搬送した後では、サセプタ13はむき出しの状態になっているが、シャワーヘッド14に付着するフレークFがサセプタ13上に落ちて留まらないように、流量制御装置6の動作により、シャワーヘッド14から流量調整されたパージガスの噴出が開始され(S3)、サセプタ13表面へパージガスが噴き付けられる。
【0062】
このとき、サセプタ13上においては、シャワーヘッド14からのパージガスの噴き付けだけでなく、反応炉1の外部に設置された真空ポンプ8による吸引によって、パージガスは、サセプタ13の中央部から外周部に向かう流れができる。このパージガスの流れによって、サセプタ13上にフレークFが落下していた場合でも、サセプタ13の外周部にフレークFは移動していき、サセプタ13の端部から反応炉1の下部に落ちることによって、サセプタ13から除去されることになる。反応炉1の下部には図示しない回収用トレイが設置されており、定期的なメンテナンス等を行う際に、回収用トレイに堆積したフレークFを別途回収することができる。
【0063】
次いで、次の新しいトレイ12の搬入が行われ(S4)、次の気相成長が開始されることになる(S5)。なお、シャワーヘッド14からのパージガスの噴出は、次の新しいトレイ12の搬入が行われる直前まで継続される。
【0064】
上記の基本フローに基づいて、以下に、具体的なフローについて説明する。なお、シーケンス制御装置20の具体的な制御方法には、各種の方法があり、ここでは、以下の制御方法1及び制御方法2について説明する。
(制御方法1)
制御方法1は、シャワーヘッド14の噴出量調整において、パージガスの噴出を中心部から外周部にかけて順番に実行するものである。
【0065】
すなわち、制御方法1では、シャワーヘッド14からのパージガスの噴出が開始された後、シャワーヘッド14からのパージガスを噴出させる方法として、最初にシャワーヘッド14における中心のエリア1の領域からパージガスを噴出させた後、外周部のエリア2の領域に切り替え、その後同様にエリア3からエリア5まで順番に切り替えてパージガスが噴出するように実行する。
【0066】
図5は、シャワーヘッド14のパージガスの噴出量調整における、噴出を開始してからの経過時間(t1〜t5)と流量制御装置6(MFC1〜MFC5)の設定流量との一例を示すものである。
【0067】
図5に示すように、まず、経過時間t1においてはMFC1のみが「開」、その他は「閉」となり、シャワーヘッド14の中央部に位置するエリア1からパージガスを噴出させる。次に、経過時間t2においては、MFC2のみが「開」、その他は「閉」となり、シャワーヘッド14におけるエリア1よりも1領域だけ外周側のエリア2からパージガスを噴出させる。経過時間t3においても、同様にMFC3のみが「開」、その他は「閉」となり、シャワーヘッド14におけるエリア2よりも1領域だけ外周側のエリア3からパージガスを噴出させる。
【0068】
このように、時間経過にしたがって、パージガスが、シャワーヘッド14の中央部の領域から外周部の領域にかけて、個別の制御領域で順番に切り替わりながら噴出し、サセプタ13に噴き付けられることによって、フレークFが、サセプタ13表面上で中央部から外周部にかけて移動していくことになる。
【0069】
これにより、シャワーヘッド14に対向するサセプタ13に対し、パージガスが噴き付けられることによって、サセプタ13上に落下するフレークFは、サセプタ13の中心部から外周部にかけて、パージガスの切り替えシーケンスに伴って、ステップしながら移動していき、サセプタ13から除去される。
【0070】
なお、上記の説明では、シャワーヘッド14をエリア1〜エリア5の5領域に分割して制御する場合を示しているが、必ずしもこれに限らず、さらに複数領域に分割することによって、フレークFの移動量をさらに精度良く制御することができ、より一層効率的に操作を実行することができる。
【0071】
すなわち、本実施の形態では、シャワーヘッド14の中心と同軸つまり同心に、外周にかけて複数領域で個別にパージガスの流量を制御でき、トレイ搬入前に、パージガスをシャワーヘッド14に対向するサセプタ13の面内領域において、流量を変えながら、シャワー状に噴出させるシーケンスを有する。このため、サセプタ13のサイズに関係なく、サセプタ13上のパージガスの乱れを抑え、巻き上がりを発生させることなく、サセプタ13上に落下したフレーク状の付着物を、確実に除去できるため、基板温度の均一性が保たれ、再現性のよい膜品質が得られる。
【0072】
また、このシーケンスは、次の気相成長の準備中(バッチ間)に実施されることによって、時間的ロスが最小限に抑えられ、生産性を大幅に向上させることができる。
(制御方法2)
制御方法2は、シャワーヘッド14からのパージガスの噴出量において、中心部を外周部よりも多くするもの、及びシャワーヘッド14からのパージガスの噴出量を、中心部から外周部にかけて段階的に少なくするものである。
【0073】
図6は、シャワーヘッド14のパージガスの噴出量調整における、噴出を開始してからの経過時間(t1〜t5)と流量制御装置6(MFC1〜MFC5)の設定流量との一例を示すものである。
【0074】
図6に示すように、経過時間t1においてはMFC1が流量25Lの設定にて「開」となり、シャワーヘッド14の中央部のエリア1からパージガスを25L噴出させる。経過時間t2においては、MFC1の流量25Lを維持したまま、MFC2が流量20Lの設定で「開」となり、シャワーヘッド14のエリア1からは流量25L、エリア2からは流量20Lのパージガスを噴出させる。経過時間t3においても、同様に、MFC1及びMFC2の流量は維持したまま、MFC3が流量15Lの設定にて「開」となり、シャワーヘッド14のエリア1から流量25L、エリア2から流量20L、エリア3から流量15Lのパージガスを噴出させる。
【0075】
このように、シャワーヘッド14の中央部から外周部にかけてパージガスの流れを維持したまま、中央部から外周部にかけて次第に流量が減少するように噴出し、サセプタ13に噴き付けられることによって、サセプタ13上でパージガスの乱れが少なくなり、フレークFが舞い上がり難くなり、一層効率よくフレークFを除去することができる。
【0076】
このように、本実施の形態のMOCVD装置10Aは、複数のガス噴出孔を有するシャワーヘッド14と、シャワーヘッド14へ材料ガス又はパージガスを供給するガス供給ライン2と、基板11を搭載するトレイ12を載置するサセプタ13とを備えている。
【0077】
そして、上記MOCVD装置10A及び気相成長方法は、シャワーヘッド14における複数のガス噴出孔を中心部から外周に向かって同心に区画した複数のエリア1〜エリア5に対して、ガスの噴出量を個別に制御する流量制御装置6が設けられると共に、流量制御装置6は、トレイ12のサセプタ13への載置前に、シャワーヘッド14に対向するサセプタ13の面内領域に向けて、複数のエリア1〜エリア5に対して個別に流量を変えながらパージガスをシャワーヘッド14のガス噴出孔からシャワー状に噴出させる。
【0078】
この結果、サセプタ13上に落下したフレーク状の付着物が存在する場合に、シャワーヘッド14に対向するサセプタ13の面内領域に向けて、サセプタ13の同心領域別にパージガスをシャワー状に噴出させることができる。
【0079】
このため、サセプタ13上に落下したフレーク状の付着物を、サセプタ13のサイズに関係なく、サセプタ13上のパージガスの乱れ及び巻き上がりを発生させることなく、吹き飛ばして除去することができる。
【0080】
この結果、ひいては、基板温度の均一性を保ち、再現性のよい膜品質を得ることができ、稼働率を高め得るMOCVD装置10A及び気相成長方法を提供することができる。
【0081】
また、この流量制御装置6による流量制御は、次の気相成長の準備中(バッチ間)に実施されるので、時間的ロスが最小限に抑えられ、生産性を大幅に向上させることができる。
【0082】
したがって、ダストの除去に関して、成膜品質を損ねることなく、稼働率を高めながら効率的に行うことにより、安定した歩留まりを長期間維持し続けることができるMOCVD装置10A及び気相成長方法を提供することができる。
【0083】
また、本実施の形態のMOCVD装置10Aでは、流量制御装置6は、シャワーヘッド14における中心部から外周に向かって同心に区画する複数の領域に対して、中心部の領域であるエリア1から外周部の領域であるエリア5にかけて順番にパージガスを噴出させる。
【0084】
これにより、サセプタ13上に落下したフレーク状の付着物が存在する場合に、付着物を、サセプタ13上の付着物を中心から外周に向けて順次吹き飛ばすので、サセプタ13上のパージガスの乱れ及び巻き上がりを発生させることがない。
【0085】
また、サセプタ13上に落下したフレーク状の付着物を、サセプタ13の外周側へ押しやりながら吹き飛ばすので、確実に除去することができる。
【0086】
また、本実施の形態のMOCVD装置10Aでは、流量制御装置6は、シャワーヘッド14からのパージガスの噴出量を、中心部の領域を外周部の領域よりも多くする。
【0087】
これにより、サセプタ13上の中心部に多量のパージガスが噴出されるので、サセプタ13上に落下したフレーク状の付着物を、確実に、サセプタ13の外周側へ押しやりながら吹き飛ばして除去することができる。
【0088】
また、本実施の形態のMOCVD装置10Aでは、流量制御装置6は、シャワーヘッド14からのパージガスの噴出量を、中心部の領域から外周部の領域にかけて段階的に少なくする。
【0089】
これにより、サセプタ13上の外周部よりも中心部に多量のパージガスが噴出されるので、サセプタ13上に落下したフレーク状の付着物を、確実に、サセプタ13の外周側へ押しやりながら吹き飛ばして除去することができる。
【0090】
〔実施の形態2〕
本発明の、他の実施の形態について図7〜図10に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0091】
本実施の形態のMOCVD装置10Bは、図7に示すように、前記実施の形態1におけるMOCVD装置10Aの構成に加えて、サセプタ13の表面状態を監視するサセプタ監視手段としてのサセプタ監視装置30を設け、サセプタ13の表面状態を確認しながら、パージガスの流量を制御するものである。
【0092】
すなわち、シャワーヘッド14から落下するフレークFは、毎回、その大きさ、重さ、及び数量がそれぞれ異なるため、サセプタ13上に噴きつけるパージガスの流量は、その都度、サセプタ13上のフレークFの状態に応じて調整されることが望ましい。
【0093】
そこで、本実施の形態では、図7に示すように、反応炉1の外部において、反応炉1内部のサセプタ13上を臨むように、サセプタ監視装置30が設置され、サセプタ監視装置30は、バルブ5及び流量制御装置6等の他のパーツと同様、シーケンス制御装置20に接続されている。
【0094】
サセプタ監視装置30は、例えば反応炉1に石英等の耐熱性のある透明部材を使用したビューポートを設け、そこからCCDカメラ等にて、サセプタ13の表面状態をリアルタイムに画像として捕らえ、シーケンス制御装置20にその情報を転送することが可能となっている。シーケンス制御装置20においては、サセプタ監視装置30から転送された画像の情報をもとに、画像認識を行い、予め設定した条件(サセプタ13上のフレークFの状態:大きさ、重さ、数量等)と比較の上、流量制御装置6の流量制御を行うことができる。
【0095】
本実施の形態のMOCVD装置10Bにおけるシーケンスのフローを、図8のフローチャートに基づいて説明する。なお、図8において、図4のフローチャートと同じ部分は、図4と同じステップ番号を付し、その説明を省略する。
【0096】
図8に示すように、シャワーヘッド14のガス噴出を開始した後(S3)、サセプタ監視装置30によって、サセプタ13上に存在するフレークFの状態を、ある一定時間、画像として確認する(S11)。そして、サセプタ13上にフレークFが存在する場合は、S3に戻ってシャワーヘッド14の噴出量を多くすることができる。
【0097】
これによって、シャワーヘッド14から噴出されるパージガスの流量がリアルタイムに制御され、シャワーヘッド14から落下するフレークFの大きさ、重さ、及び数量が変化する場合であっても、パージガスの噴き付けを調整することによって、より確実にフレークFを除去することができる。
【0098】
次に、上記の説明では、上記のサセプタ監視装置30による流量制御装置6の流量制御の説明であった。しかしながら、必ずしもこれに限らず、例えば、サセプタ監視装置30による流量制御装置6の流量制御に替えて、又はサセプタ監視装置30共に、以下の制御を行うことが可能である。
【0099】
まず、シャワーヘッド14のガス噴出を開始した後、図7に示すように、サセプタ13を昇降させるサセプタ昇降手段としてのサセプタ昇降装置16により、パージガスのサセプタ13への供給時に、サセプタ13の高さ位置を昇降させることが可能である。
【0100】
上記サセプタ昇降装置16に基づく流量制御装置6における流量制御のシーケンスについて、図9のフローチャートに基づいて説明する。なお、図9において、図4のフローチャートと同じ部分は、図4と同じステップ番号を付し、その説明を省略する。
【0101】
図9に示すように、シャワーヘッド14からのパージガスの噴出が開始された後(S3)、サセプタ13を昇降させるシーケンスが実行される。シャワーヘッド14から、サセプタ13へのパージガスの噴出時に、サセプタ13をサセプタ昇降装置16によって、フレークFの大きさ、重さが異なる場合であっても、サセプタ13のシャワーヘッド14に対する高さ(h1)位置を昇降させる(S21)。これによって、シャワーヘッド14からのパージガスの噴出量を変化させることなく、少量で一定に保ったまま、サセプタ13上を流れるパージガスの流速を変化させることができ、フレークFの大きさに影響されることなく、確実に除去することができる。
【0102】
次に、サセプタ13を回転させるサセプタ回転手段としての回転軸17にて、パージガスのサセプタ13への供給時に、サセプタ13を回転させることが可能である。
【0103】
上記回転軸17によるサセプタ13の回転に基づく流量制御装置6における流量制御のシーケンスについて、図10のフローチャートに基づいて説明する。なお、図10において、図4のフローチャートと同じ部分は、図4と同じステップ番号を付し、その説明を省略する。
【0104】
図10に示すように、シャワーヘッド14からのパージガスの噴出が開始された後(S3)、サセプタ13を回転させるシーケンスが実行される(S31)。
【0105】
この結果、シャワーヘッド14から、サセプタ13へのパージガスの噴出時に、サセプタ13を回転軸17によって回転させることによって、サセプタ13の面内において、パージガスの流速の分布がある場合においても、パージガスが満遍なく平均的に噴き付けられ、一層確実にフレークFを除去することができる。
【0106】
このように、本実施の形態のMOCVD装置10Bでは、サセプタ13の表面状態を監視するサセプタ監視装置30が設けられていると共に、流量制御装置6は、サセプタ監視装置30によりサセプタ13の表面状態を監視しながら、パージガスの噴出量を制御する。
【0107】
これにより、サセプタ13上に落下したフレーク状の付着物が除去できているかを監視しながらパージガスの噴出量を制御するので、例えば、除去できていない付着物を狙ってパージガスの噴出量を増加することができる。この結果、確実に、サセプタ13上に落下したフレーク状の付着物を除去することができる。
【0108】
また、本実施の形態のMOCVD装置10Bでは、サセプタ13を昇降させるサセプタ昇降装置16が設けられていると共に、サセプタ昇降装置16は、パージガスのサセプタ13への噴出時に、サセプタ13を昇降させる。
【0109】
これにより、サセプタ昇降装置16によって、サセプタ13の高さ位置を変えることにより、パージガスの気流を変更でき、サセプタ13上のパージガスの乱れ及び巻き上がりを発生させることなく、吹き飛ばして除去することができる。
【0110】
また、本実施の形態のMOCVD装置10Bでは、サセプタ13を回転させる回転軸17が設けられていると共に、回転軸17は、パージガスのサセプタ13への噴出時に、サセプタ13を回転させる。
【0111】
これにより、サセプタ13の面内において、パージガスの流速に分布がある場合でも、パージガスが満遍なく平均的に吹き付けられ、確実に付着物を除去することができる。
【0112】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、シャワープレートの複数のガス吐出孔から基板の表面に材料ガス及びパージガスを供給するシャワープレートを用いた気相成長装置及び気相成長方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0114】
1 反応炉
2 ガス供給ライン
3 材料ガス源
4 パージガス源
6 流量制御装置(流量制御手段)
10A MOCVD装置
10B MOCVD装置
11 基板
12 トレイ
13 サセプタ
14 シャワーヘッド
15 ヒータ
16 サセプタ昇降装置(サセプタ昇降手段)
17 回転軸(サセプタ回転手段)
20 シーケンス制御装置
30 サセプタ監視装置(サセプタ監視手段)
F フレーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガス噴出孔を有するシャワーヘッドと、シャワーヘッドへ材料ガス又はパージガスを供給するガス供給ラインと、基板を搭載するトレイを載置するサセプタとを備えた気相成長装置において、
上記シャワーヘッドにおける複数のガス噴出孔を中心部から外周に向かって同心に区画した複数の領域に対して、ガスの噴出量を個別に制御する流量制御手段が設けられていると共に、
上記流量制御手段は、トレイのサセプタへの載置前に、シャワーヘッドに対向するサセプタの面内領域に向けて、上記複数の領域に対して個別に流量を変えながらパージガスをシャワーヘッドのガス噴出孔からシャワー状に噴出させることを特徴とする気相成長装置。
【請求項2】
前記流量制御手段は、シャワーヘッドにおける中心部から外周に向かって同心に区画した複数の領域に対して、中心部の領域から外周部の領域にかけて順番にパージガスを噴出させることを特徴とする請求項1記載の気相成長装置。
【請求項3】
前記流量制御手段は、前記シャワーヘッドからのパージガスの噴出量を、中心部の領域を外周部の領域よりも多くすることを特徴とする請求項1又は2記載の気相成長装置。
【請求項4】
前記流量制御手段は、前記シャワーヘッドからのパージガスの噴出量を、中心部の領域から外周部の領域にかけて段階的に少なくすることを特徴とする請求項1,2又は3記載の気相成長装置。
【請求項5】
前記サセプタの表面状態を監視するサセプタ監視手段が設けられていると共に、
前記流量制御手段は、上記サセプタ監視手段により上記サセプタの表面状態を監視しながら、パージガスの噴出量を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の気相成長装置。
【請求項6】
前記サセプタを昇降させるサセプタ昇降手段が設けられていると共に、
上記サセプタ昇降手段は、パージガスのサセプタへの噴出時に、サセプタを昇降させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の気相成長装置。
【請求項7】
前記サセプタを回転させるサセプタ回転手段が設けられていると共に、
上記サセプタ回転手段は、パージガスのサセプタへの噴出時に、サセプタを回転させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の気相成長装置。
【請求項8】
複数のガス噴出孔を有するシャワーヘッドと、シャワーヘッドへ材料ガス又はパージガスを供給するガス供給ラインと、基板を搭載するトレイを載置するサセプタとを備えた気相成長装置を用いた気相成長方法において、
トレイのサセプタへの載置前に、シャワーヘッドに対向するサセプタの面内領域に向けて、上記シャワーヘッドにおける複数のガス噴出孔を中心部から外周に向かって同心に区画した複数の領域に対して個別に流量を変えながらパージガスをシャワーヘッドのガス噴出孔からシャワー状に噴出することを特徴とする気相成長方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−196102(P2010−196102A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41148(P2009−41148)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】