説明

水性ストリッピング及びクリーニング組成物

【課題】半導体の基板から有機及び無機のポストエッチ残渣ならびにポリマー残渣及び汚染物質を除去するために使用される水性組成物を提供すること。
【解決手段】組成物が、水溶性有機溶媒、スルホン酸及び水から構成される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
半導体あるいは半導体微細回路の製造において、半導体デバイスの基板の表面からいくつかの物質を除去することが必要である。ある例において、除去されるべき物質は、フォトレジストと呼ばれているポリマー組成物である。別の例において、除去されるべき物質は、エッチングあるいはアッシングプロセスの残渣あるいは単純に汚染物質である。ストリッピング及び(又は)クリーニング組成物の目的は、半導体基板からその基板の露出表面を腐食させたり、溶解したり、曇らせたりすることなく不所望な物質を除去することにある。
【0002】
この技術分野では、半導体基板からフォトレジストをストリッピングする際及び(又は)エッチング残渣、アッシングあるいはその他の汚染物質をクリーニングする際に使用するための異なるタイプの組成物について記載した多数の文献が存在している。例えば、アライド・シグナル社(Allied Signal)に対して付与された一連の特許は、有機溶媒と組み合わせて1種類もしくはそれ以上の有機スルホン酸を含む非水性の有機ストリッピング組成物やいろいろな改良品を開示している。シリーズの特許のなかで、第1の特許である特許文献1は、例えばフォトレジストのようなポリマー型の有機物質を除去するためのものであって、1種類もしくはそれ以上の有機スルホン酸、1種類もしくはそれ以上の有機溶媒及び任意にフェノールを含み、約5〜250ppmのフッ化物イオンを含有する組成物を開示している。第2の特許である特許文献2は、その組成物の改良を提供するものであり、有効な非共有電子対とともに窒素を有する錯形成剤と組み合わせてフッ化物を存在させている。シリーズの特許のなかで、第3の特許である特許文献3は、組成物の別の改良を提供するものであり、0.01〜5重量%のニトリル化合物を組成物に添加している。シリーズの特許のなかで、第4の特許である特許文献4は、スルホン酸に塩素化アリール化合物、1〜14個のアルキル炭素原子を有するアルキルアリール化合物、イソパラフィン系炭化水素又はその混合物を添加したフェノール不含のストリッピング組成物を開示している。
【0003】
特許文献5は、金属腐食力が低減せしめられたものであって、水溶液中におけるpK値が2.0もしくはそれ以上であり、当量が約140よりも小さい窒素不含の弱酸を含有しているアルカリ含有のフォトレジスト用ストリッピング組成物を開示している。弱酸は、組成物中に存在するアミンの19〜75%を中和するような量で使用される。特許文献6は、フッ化物含有化合物、水溶性有機溶媒、無機もしくは有機の酸、そして任意に第4級アンモニウム塩又はカルボン酸のアンモニウム塩及び(又は)有機カルボン酸のアミン塩を含む半導体デバイス用クリーニング液を開示している。特許文献7は、1種類もしくはそれ以上のカルボン酸をストリッピング組成物中で使用することを開示している。特許文献8は、例えば水酸化コリンのようなコリン化合物を主成分とするクリーニング化学を開示している。これらの組成物は、コリン化合物、水及び有機溶媒から構成されている。これらの組成物は、ヒドロキシルアミンや腐食抑制剤をさらに含有してもよい。
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,165,295号明細書
【特許文献2】米国特許第4,215,005号明細書
【特許文献3】米国特許第4,221,674号明細書
【特許文献4】米国特許第4,242,218号明細書
【特許文献5】米国特許第5,308,745号明細書
【特許文献6】米国特許第5,972,862号明細書
【特許文献7】米国特許第6,231,677号明細書
【特許文献8】国際公開第00/02238号パンフレット
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、フォトレジスト、エッチング及びアッシング残渣、そして汚染物質を半導体基板から除去するために使用される水性組成物に関する。これらの水性組成物は、低い表面張力と低い粘度を有しており、Al/Cu、Cu、Ti、W、Ta、TiN、W、TaN、低k値の物質、例えばメチルシルセスキオキサン(MSQ)、ブラックダイヤモンド、SiLK及び高k値の物質、例えばPt/BST/酸化物を含めた種々の物質との相容性を有している。BSTは、バリウム−ストロンチウム−チタン酸塩である。これらの組成物は、水溶性の有機溶媒、スルホン酸、水、そして任意に腐食抑制剤を含有している。本発明の組成物は、フッ化物を含有する化合物及び無機アミン類を含んでいない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、フォトレジスト、エッチング及びアッシング残渣、そして汚染物質を半導体基板から除去するために使用される水性組成物に関する。これらの組成物は、水に可溶な水溶性の有機溶媒、スルホン酸もしくはその対応する塩、水、そして任意の腐食抑制剤から構成される。
【0007】
水溶性の有機溶媒は、有機アミン類、アミド類、スルホキシド類、スルホン類、ラクタム類、イミダゾリジノン類、ラクトン類、多価アルコールなどを包含する。有機アミン類の例は、モノエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、エチレンジアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、ジプロピルアミン、2−エチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ピロール、ピロリジン、ピリジン、モルホリン、ピペリジン、オキサゾールなどを包含する。アミド類の例は、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミドなどを包含する。スルホキシド類の例は、ジメチルスルホキシドを包含する。スルホン類の例は、ジメチルスルホン及びジエチルスルホンを包含する。ラクタム類の例は、N−メチル−2−ピロリドン及びイミダゾリジノンを包含する。ラクトン類の例は、ブチロラクトン及びバレロラクトンを包含する。多価アルコールの例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどを包含する。好ましい水溶性有機溶媒の例は、モノエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、ジメチルスルホキシド及びジメチルアセトアミドを包含する。水溶性の有機溶媒は、単一の化合物として、あるいは複数の化合物の混合物として存在させることができる。水溶性の有機溶媒は、組成物の全重量を基準として、30〜90重量%、好ましくは40〜85重量%、最も好ましくは45〜80重量%の量で組成物中に存在せしめられる。
【0008】
組成物は、水溶性の有機溶媒に追加して、スルホン酸もしくはその対応する塩をさらに含有する。適当なスルホン酸の例は、p−トルエンスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、4−エチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、クメンスルホン酸、メチルエチルベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸の異性体、そして上記したスルホン酸の対応する塩類を包含する。スルホン酸の塩類の例は、p−トルエンスルホン酸エタノールアンモニウム及びp−トルエンスルホン酸トリエタノールアンモニウムを包含する。スルホン酸もしくはその対応する塩は、組成物中において単一の酸もしくは塩として、あるいはスルホン酸もしくは対応する塩の混合物として存在させることができる。スルホン酸もしくは対応する塩は、組成物の全重量を基準として、1〜20重量%、好ましくは1.5〜15重量%、最も好ましくは3〜10重量%の量で存在せしめられる。
【0009】
水は、本発明のストリッピング及びクリーニング組成物に必須の1成分である。水は、組成物の全重量を基準として、5〜50重量%、好ましくは5〜35重量%、最も好ましくは10〜30重量%の量で存在せしめられる。
【0010】
任意であるけれども、ストリッピング及びクリーニング組成物は腐食抑制剤を含有する。ストリッピング及びクリーニング組成物では、単一の腐食抑制剤化合物あるいは複数の腐食抑制剤化合物の混合物を使用することができる。腐食抑制剤の例は、ベンゾトリアゾール、安息香酸、マロン酸、没食子酸、カテコール、マロン酸アンモニウムなどを包含する。ストリッピング及びクリーニング組成物において、腐食抑制剤は、そのストリッピング及びクリーニング組成物の全重量を基準として、20重量%まで、好ましくは0.1〜15重量%の量で存在せしめられる。
【0011】
ストリッピング及びクリーニング組成物には、その他の一般的に知られた成分、例えば染料、殺菌剤などを、その組成物の全重量を基準にして全体で5重量%までの量で存在させることができる。
【0012】
本発明のストリッパー及びクリーナー組成物は、1つの容器内で各成分を一緒に、すべての固体が溶解してしまうまで混合することによって調製するのが一般的である。本発明の水性ストリッパー及びクリーナー組成物の例を下記の第1表に記載する。
【0013】
【表1】

【0014】
水性ストリッピング及びクリーニング組成物は、ポストエッチ及びアッシュ、有機及び無機の残渣ならびにポリマー残渣を半導体基板から、低温かつ低腐食で除去するために使用される。本発明の組成物を使用したストリッピング及びクリーニングプロセスは、25〜85℃の温度のストリッパー/クリーナー組成物中に基板を3分間ないし1時間にわたって浸漬することによって実施するのが一般的である。しかし、本発明の組成物は、フォトレジスト、アッシング又はエッチング残渣及び(又は)汚染物質を除去するために液体を利用する、この技術分野において公知の任意の方法で使用することができる。
【実施例】
【0015】
以下に記載するものは、本発明の組成物の使用についての非限定的な例である。
【0016】
実施例1
シリコンウエハ上にCVD法により成膜したAl−Cu薄膜からなる基板に対してポジ型フォトレジストをスピンコートした。ポジ型フォトレジストは、ジアゾナフトキノンとノボラック樹脂からなるものであった。フォトレジストの塗膜を90℃で90秒間にわたってベークした。パターン状のマスクを介してi線(365nm)に露光することによってフォトレジスト上にパターンを描画し、引き続いて現像を行った。パターン形成後のウエハをCl/BClエッチングガス混合物で、5トルの圧力及び20℃で168秒間にわたってプラズマエッチングした。エッチング後のパターンを、0.3トルの圧力及び65℃で55秒間にわたって酸素プラズマでアッシングした。
【0017】
パターン形成及びアッシング後のウエハを第1表の組成3を含む浴中に65℃で30分間にわたって浸漬することによって処理した。クリーニング後のウエハの分析をウエハのSEM写真の観察によって実施した。SEM写真から、ウエハは清浄であり、残渣を含まず、腐食の痕跡もないことがわかった。
【0018】
実施例2
シリコンウエハ上に化学的に堆積させたAl/Cu薄膜の上にさらにコーティングしたTiN反射防止コーティング(ARC)層の上に、TEOS(テトラエトキシシリケート)をコーティングした。TEOS層の上にポジ型フォトレジストをスピンコートした。フォトレジストの塗膜を90℃で90秒間にわたってベークした。パターン状のマスクを介してi線に露光することのよってフォトレジスト上にパターンを描画し、引き続いて現像を行った。レジストから基板にパターンを転写するために2段階プラズマプロセスを使用した。第1の工程で、TEOS層のため、CO/CF/Al/CHFプラズマエッチングガスにウエハをさらし、そして、その現場でその直後に、TiN ARC層のため、Ar/CF/Oによって処理した。エッチング後のパターンを、0.3トルの圧力及び60℃で150秒間にわたって酸素プラズマでアッシングした。エッチング及びアッシング後のウエハを組成3を含む浴中に65℃で30分間にわたって浸漬することによって処理した。クリーニング後のウエハの分析をウエハのSEM写真の観察によって実施した。SEM写真から、ウエハは清浄であり、残渣を含まず、腐食の痕跡もないことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)水溶性有機溶媒、
B)スルホン酸もしくはその対応する塩、及び
C)水
を含んでなる組成物。
【請求項2】
腐食抑制剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記水溶性有機溶媒が、モノエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド又はその混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記スルホン酸もしくはその対応する塩が、p−トルエンスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、4−エチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸又はその混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記腐食抑制剤が、没食子酸、カテコール、ベンゾトリアゾール、安息香酸、マロン酸、マロン酸アンモニウム又はその混合物である、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
A)30〜85重量%の水溶性有機溶媒、
B)1〜20重量%のスルホン酸もしくはその対応する塩、及び
C)5〜50重量%の水
を含んでなる組成物。
【請求項7】
0.1〜15重量%の腐食抑制剤をさらに含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
半導体基板からフォトレジスト、エッチング及び(又は)アッシング残渣又は汚染物質を除去する方法であって、
前記半導体基板に、
A)水溶性有機溶媒、
B)スルホン酸もしくはその対応する塩、及び
C)水
を含む組成物を、前記フォトレジスト、エッチング及び(又は)アッシング残渣又は汚染物質を除去するのに十分な時間にわたって接触させることを含んでなる、方法。
【請求項9】
前記組成物が腐食抑制剤をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記水溶性有機溶媒が、モノエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド又はその混合物である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記スルホン酸もしくはその対応する塩が、p−トルエンスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、4−エチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸又はその混合物である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記腐食抑制剤が、没食子酸、カテコール、ベンゾトリアゾール、安息香酸、マロン酸、マロン酸アンモニウム又はその混合物である、請求項9に記載の方法。

【公開番号】特開2009−102729(P2009−102729A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−238167(P2008−238167)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【分割の表示】特願2003−560132(P2003−560132)の分割
【原出願日】平成15年1月6日(2003.1.6)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】