説明

水晶振動子、電子部品、及び水晶振動子用素子の製造方法

【課題】ウェハ1枚あたりの生産性を向上することができる水晶振動子用素子の製造方法を提供すること。
【解決手段】ウェハ表面10及びウェハ裏面30にエッチングにより、断面形状が逆台形となる第1凹部21の列と第1凹部21に対して各々交互に配列される第2凹部41の列とを、表面区画列20a及び裏面区画列40aに形成する際に、第1凹部21と第2凹部42双方の同一の斜度を有する第1側壁23、43、若しくは第2側壁24、44同士がウェハWの厚さ方向で重なるように夫々の凹部を形成している。これにより水晶片51の形成できない傾斜した第1側壁23、42、若しくは第2側壁24、44をウェハ表面10とウェハ裏面30でオーバーラップさせることができ、第1凹部21、第2凹部41の配設数を多くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ATカットの水晶片を用いた水晶振動子用素子を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ATカットの水晶ウェハから水晶振動子に用いられる矩形状の多数の水晶片を得る方法としては、X軸に沿って長辺が形成されるようにダイシングによりカットする方法が知られており、中央領域に励振電極を形成し、−X側(X軸におけるマイナス側)に引き出し電極を形成する方法が知られている。一方、本発明者はウェットエッチングにより水晶片の外形を形成することを検討している。図17はこの様子を示す図であり、ウェハW1には矩形の区画101が複数形成され、この夫々の区画101でウェハW1に支持された状態の水晶片を形成し、この水晶片に励振電極と引き出し電極を形成することによって水晶振動子用素子を形成している。
【0003】
水晶振動子の周波数特性は、水晶振動子用素子の水晶片の厚さによって決定される。近年求められている周波数特性は、10MHzから数百MHzであり、その際の水晶片の厚みは数μmから数十μmとなる。そのため上述した厚さのウェハW1を使用して水晶片を形成することが理想的であるが、ウェハW1が薄いと強度等の問題が発生して作業を行うのが非常に困難になり生産性が低下するという問題がある。そこで水晶片を形成する際には、作業し易い厚さ、例えば300μmのウェハW1を使用し、ウェハW1上に水晶片を形成する区画101を複数設けると共に各区画101にエッチングを行って凹部110を形成し、凹部110の底部の厚みを調整して水晶片を形成している。
【0004】
ただし凹部110は、その側壁が図18に示すように傾斜し、深さ方向の断面が逆台形状として形成される。ATカットされた水晶には異方性があり、エッチングは水晶の各結晶軸上で夫々個別の斜度を持って進行するため、凹部110の側壁が傾斜面となり1つの区画101の面積は、水晶片を形成するために必要な底面111の面積とエッチングの際に必要となるレジストマスクの領域の他に、凹部110の側壁の傾斜面の領域を考慮して決定する必要がある。尚図18では、説明の便宜上、ウェハW1上の9個の凹部110のみを示し、他については記載を省略している。
【0005】
そのため図18(b)に示すように、X軸方向に並んだ2つの凹部110の間には、エッチングマスクとなるレジスト膜が成膜されるマスク領域120から双方の凹部110の底面111にかけて末広がりの傾斜面が形成され、台形状の側方領域CXが形成されることになる。また図18(c)に示すようにZ軸方向に並んだ2つの凹部110の間には、マスク領域120から一方の凹部110の底面111にかけて末広がりの傾斜面が形成され、台形状の側方領域CZが形成されることになる。この傾斜面を含む側方領域CX、CZには水晶片を形成することができないため、この側方領域CX、CZの長さ、つまり台形の底辺の長さはできる限り小さくすることが理想的である。しかしながら区画101の数を多くすると、区画101の数に比例して側方領域CX、CZの数が増えるため、従来のウェハW1では生産性の上昇率が抑制され、生産性を向上させることが困難となり、結果として水晶片1個あたりの単価を低減させることが困難であった。
【0006】
一方特許文献1には、半導体種結晶基板の基板の面積に対する利用効率と材料の利用効率を改善する方法として、基板の原料となる円柱形ロッドを結晶方位に合わせて斜めに切断し、楕円形状の基板を形成して基板の面積を大きくする事項が記載されている。しかしながら特許文献1の方法で、ATカットされた水晶のウェハW1を形成したとしてもエッチングを行った際に水晶の異方性によって凹部110の側壁が傾斜面となる点は変わらないため、上述した問題点を解決することは不可能である。
【0007】
【特許文献1】特開2005−116661号公報(段落番号0029〜0031、0099)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ウェハ1枚あたりの生産性を向上することができる水晶振動子用素子の製造方法と、この水晶振動子用素子を備えた水晶振動子及び水晶発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の水晶振動子用素子の製造方法では、
水晶基板に矩形の水晶振動子用素子の列を形成する方法において、
水晶基板の一面側からマスクを用いてエッチング液によりエッチングし、各々平面形状が矩形でかつ断面形状が水晶の異方性により逆台形となる第1の凹部の列を形成して、その厚さが調整された矩形の素子形成領域を得る工程と、
水晶基板の他面側からマスクを用いてエッチング液によりエッチングし、第1の凹部に対して各々交互に配列され、平面形状が矩形でかつ断面形状が水晶の異方性により逆台形となる第2の凹部の列を形成して、その厚さが調整された矩形の素子形成領域を得る工程と、
前記素子形成領域に電極を形成して水晶振動子用素子を得る工程と、を含み、
第1の凹部と第2の凹部とは、傾斜した側面同士が厚さ方向で重なっていることを特徴としている。
【0010】
また前記水晶基板はATカットされた水晶基板であり、前記素子形成領域はX軸方向またはZ軸方向に配列されていることを特徴としている。また本発明の水晶振動子は、前記各製造方法により製造された水晶振動子用素子を密閉した容器と、この容器に設けられ、前記引き出し電極に電気的に接続される端子部と、を備えたことを特徴としている。また本発明の電子部品は、上記水晶振動子と、この水晶振動子を発振させるための発振回路と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水晶基板の一面側及び他面側にエッチングにより、各々平面形状が矩形でかつ断面形状が逆台形となる第1の凹部の列と第1の凹部に対して各々交互に配列される第2の凹部の列とを形成する際に、第1の凹部と第2の凹部の傾斜した側面同士が厚さ方向で重なるように夫々の凹部を形成する。これにより本発明では、水晶片の形成できない傾斜した第1の凹部の側面と第2の凹部の側面とをオーバーラップさせる、つまり第1の凹部と第2の凹部との側方領域をオーバーラップさせることができる。従って第1の凹部と第2の凹部との側方領域の長さを短くすることができ、片面のみに凹部を複数配設した場合に比べて水晶片が形成される穴部の配設数を多くすることができるため、ウェハ1枚あたりの水晶片の生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[第1の実施形態]
本発明の水晶片形成用の水晶基板に係るウェハWについて図1ないし図5を参照しながら説明する。図1(a)に示すウェハWは、ATカットされた水晶により形成された水晶基板である。ウェハWの一面側に当たるウェハ表面10には、水晶片51(後述する図8参照)を形成するための表側区画20が配設され、この表側区画20を図示Z方向に複数例えば10個連続的に、かつ隣り合う表側区画20が夫々の区画が重なりあうことがないように並べた素子形成領域となる表側区画列20aが形成されている。表側区画列20aは、図示X方向に一定の間隔を空けて5列配設されており、各表側区画列20aの間の領域と、−X側の端に形成された表側区画列20aより−X側の領域が対面領域11となる。
【0013】
また図1(b)に示すように、ウェハWの他面側に当たるウェハ裏面30には対面領域11と対向する位置に、水晶片51を形成するための裏側区画40が配設され、この裏側区画40を表側区画列20aの表側区画20と同様に並べた素子形成領域となる裏側区画列40aが図示X方向に一定の間隔を空けて5列形成されている。そして各裏側区画列40aの間の領域と、+X側の端に形成された裏側区画列40aより+X側の領域が表側区画20の対面領域31となる。
【0014】
図2に示すように、破線で示す表側区画20にはウェハWの厚さを水晶片51が所望の周波数特性を得ることができる厚さに調整する際に、エッチングにより矩形状の第1凹部21が形成される。第1凹部21は、水晶片51を形成する領域となる底部22の他に、表側区画20の中央から見て図示+X方向に、傾斜面を有する第1側壁23、図示−X方向に、第1側壁23とは異なる角度の傾斜面を有する第2側壁24、図示−Z方向に、傾斜面を有する第3側壁25、及び図示+Z方向に第4側壁26を有しており、図2の矢視A−Aの断面を示す図3に示すように、第1凹部21の深さ方向におけるX軸上の断面形状は逆台形状となる。また第1凹部21の縁部より外側の領域は、エッチングを行う際に金属膜2及びレジスト膜3(後述する図6参照)が成膜され、この金属膜2及びレジスト膜3により第1凹部21を形成する際のマスクパターンが形成されるマスク領域12となっている。
【0015】
また裏側区画40には、図2に二点鎖線で示す第2凹部41が第1凹部21と同態様で形成され、第2凹部41は、水晶片51を形成する領域となる底部42の他、第1凹部21と同じ傾斜角を有する第1側壁43、第2側壁44、第3側壁45、第4側壁46、及びマスク領域32を有している。そして図3に示すように、第1凹部21及び第2凹部41は、底部22、42が対面の第1側壁23、43及び第2側壁24、44とウェハWの厚み方向で重ならないように+X方向において交互に形成されている。尚図2では、説明の便宜上、図18と同様にウェハW上の6個の第1凹部21と1個の第2凹部41のみを示し、他の記載については省略している。また第2凹部41では、第1側壁43が−X方向の側壁に、第2側壁44が+X方向の側壁に、第3側壁45が+Z方向の側壁に、第4側壁46が−Z方向の側壁になる。この理由については以下に説明する。
【0016】
上述したようにATカットされた水晶には異方性があり、エッチングは水晶の各結晶軸上で夫々個別の斜度を持って進行するため、ウェハ表面10から底部22に向けてエッチングは斜めに進行する。そしてウェハ裏面30では底部42に向けてエッチングが進行する斜度は、夫々の結晶軸上でウェハ表面10からみて反転する。そのため隣接する表側区画20と裏側区画40では、形成される第1凹部21と第2凹部41の側壁の斜度が入れ替わり、図3に示すように同じ傾斜角を有する第1側壁23、43、若しくは第2側壁24、44が対向することになる。このとき第1側壁23、24、及び第2側壁24、44の斜度は、それぞれ底部22若しくは底部42どちらかを基準としたときにその角度の誤差が0ないし1度程度となるように形成されるため、対向する側壁同士は、略平行となるように形成される。従って本実施形態のウェハWでは、表側区画20と裏側区画40において第1側壁23、43、及び第2側壁24、44の形成される領域がオーバーラップすることになる。尚図2の矢視B−Bの断面を示す図4に示すように、Z軸方向においては第1凹部21若しくは第2凹部41のどちらか一方が複数並ぶように表側区画列20a、裏側区画列40aが配設されているため、その断面形状は従来のウェハW1と同態様となる。
【0017】
そして本実施形態のウェハWと、図18(b)に示す従来のウェハW1と比較すると、図5に示すように、底部111を3つ並べたウェハW1の場合、側方領域CXの距離がマスク領域120の幅B、凹部110の第1側壁に対応する+X側の傾斜面の幅b1、第2側壁に対応する−X側の傾斜面の幅b2を合計したB+b1+b2となり、側方領域CXが2箇所あるため、X軸方向における全側方領域C1の距離は2(B+b1+b2)となる。これに対し本実施形態の底部22の間に底部42が形成されたウェハWでは、第1側壁23、43が対向している側表領域CX1の距離は、第1側壁23、43の幅b1と第1凹部21と第2凹部41とを隔てる水晶の厚さα1を合計したb1+α1となり、第2側壁24、44が対向している側方領域CX2の距離は、第2側壁24、44の幅b2と第1凹部21と第2凹部41とを隔てる水晶の厚さα2を合計したb2+α2となるため、X軸方向における全側方領域C2の距離はb1+b2+α1+α2となる。
【0018】
ここでα1+α2は2Bに近似するためα1+α2を2Bに置き換えると、全側方領域C2の距離は2B+b1+b2となり、従来のウェハW1の全側方領域C1と比較してb1+b2だけ全側方領域C2の方が短くなる。つまりウェハWでは、ウェハW1に比べて水晶片51の形成に使用不可能な全側方領域C2の距離が短くなるため、これに伴って底部22、42を計3つ並べた際のX軸方向の距離を従来のウェハW1と比較して約b1+b2分だけ短くすることができる。そして底部22、42の数が多くなればなるほど、従来のウェハW1と比較して必要となるX軸方向の距離を短くすることができ、その分底部22、42の数を増やすことができる。その結果、例えば図1に示す本実施形態のウェハWと図17に示す従来のウェハW1とを比較すると、ウェハW1に比べてウェハWでは表側区画列20aと裏側区画列40aの合計数を2本増やすことができ、表側区画20、裏側区画40の合計数を20個多くすることができる。
【0019】
以上上述した各理由により、本実施形態のウェハWでは、ウェハ表面10及びウェハ裏面30にエッチングにより、各々平面形状が矩形でかつ断面形状が逆台形となる第1凹部21の列と、第1凹部21に対して各々交互に配列される第2凹部41の列とを、表面区画列20a、裏面区画列40aに形成する際に、第1凹部21と第2凹部41双方の同一の斜度を有する第1側壁23、43、若しくは第2側壁24、44同士がウェハWの厚さ方向で重なるように夫々の凹部を形成している。そして底部22、42がウェハWの厚み方向で第1側壁23、43及び第2側壁24、44と重ならないように形成される。これにより本実施形態のウェハWでは、水晶片51の形成できない傾斜した第1側壁23、42、若しくは第2側壁24、44をウェハ表面10とウェハ裏面30でオーバーラップさせる、つまり水晶片51の形成を阻害しない態様で第1凹部21と第2凹部41との側方領域C2のみをオーバーラップさせることができる。従って片面のみに第1凹部21を複数配設した場合に比べて水晶片51が形成される第1凹部21、第2凹部41の配設数を多くすることができ、ウェハW一枚あたりの水晶片51の製造数を向上させることができる。
【0020】
次に本実施形態のウェハWの製造工程について、図6、7を参照して説明する。本実施形態では水晶片51を形成するウェハWの表側区画20、及び裏側区画40に対してエッチングを行い、底部22、42の厚みを形成される水晶片51が所望の周波数特性を備えることが可能となる厚さとなるまで薄くする。この厚み調整は、水晶片51を形成する表側区画20及び裏側区画40に対してエッチングを行い、底部22、42の厚さを、形成される水晶片51の固有振動数が所望の周波数となるように厚さに調整する。
【0021】
具体的には、図6(a)、6(b)に示すようにウェハ表面10、ウェハ裏面30にCr(クロム)及びAu(金)からなる金属膜2、及びレジスト膜3を夫々成膜し、フォトリグラフィーによりレジストマスクを形成すると共にKI(ヨウ化カリウム)溶液により金属膜2をエッチングして表側区画20に対応する積層マスクを形成する。そして図6(c)に示すように弗酸溶液にウェハWを浸漬してウェハWに対してエッチングを行い、図6(d)に示すように第1凹部21を形成し、金属膜2とレジスト膜3を剥離すると共に図示しないプローブにより底部22の周波数の確認を行う。これにより図6(e)、6(f)に示すように、ウェハ表面10の複数の表面区画20に第1凹部21が形成される。尚図6(a)ないし7(e)は図3と同じく矢印A−Aにて示す位置でのウェハWの断面を模式的に示し、図6(f)は、矢視A−Aの位置のウェハ表面10を示している。
【0022】
次に図7(a)に示すように、ウェハWを反転させウェハ表面10、ウェハ裏面30、及び第1凹部21にCr(クロム)及びAu(金)からなる金属膜2、及びレジスト膜3を夫々成膜し、フォトリグラフィーによりレジストマスクを形成すると共にKI(ヨウ化カリウム)溶液により金属膜2をエッチングして裏側区画40に対応する積層マスクを形成する。そして図7(b)に示すように弗酸溶液にウェハWを浸漬してウェハWに対してエッチングを行い、図7(c)に示すように第2凹部41を形成し、金属膜2とレジスト膜3を剥離すると共に図示しないプローブにより底部42の周波数の確認を行う。これにより図7(d)、7(e)に示すように、ウェハ表面10の複数の表面区画20に、対応する第1凹部21が形成される。尚図7(a)ないし7(d)は図3と同じく矢印A−Aにて示す位置でのウェハWの断面を模式的に示し、図7(e)は、矢視A−Aの位置のウェハ表面10を示している。
【0023】
以上の各工程により本実施形態のウェハWは、図3及び図7(d)に示すように図示X方向にて第1凹部21と第2凹部41が交互に形成されたウェハWとして形成され、エッチングによって第1凹部21、第2凹部41を形成していることから、水晶の異方性を利用して自動的に同一の斜度を有する第1側壁23、43、及び第2側壁24、44が対向するように形成される。尚第1凹部21と第2凹部41とを別々の工程で形成しているが、本発明の実施の形態としては、例えば、図6(b)に示す第1凹部21の形状に合わせてウェハ表面10の金属膜2及びレジスト膜3を剥離する工程で、第2凹部41の形状に合わせてウェハ裏面30のレジスト膜3及び金属膜2を剥離し、第1凹部21と第2凹部41の形成を同時に行ってもよい。
【0024】
次に本実施形態のウェハWから水晶片51及びその水晶片51を用いた水晶振動子用素子50について図8、9を参照して説明する。この水晶振動子用素子50は、以下の手順によりウェハWから形成される。まず第1凹部21、第2凹部41を形成した後、図8(a)に示すようにウェハ表面10及びウェハ裏面30に金属膜4及びレジスト膜5を成膜し、これらの金属膜4及びレジスト膜5に対して上述したフォトリソグラフィーとKI溶液によるエッチングによって水晶片51の外形形成を行うための外形マスクパターン68を形成する。そして外形マスクパターン68に沿ってウェハWをエッチングして、図8(b)に示すようにウェハWから水晶片51を形成し、残存しているレジスト膜4と金属膜5を剥離する。このとき水晶片51は、図示しない接続支持部によってウェハWに接続支持された状態となる。
【0025】
水晶片51が形成されると、図8(c)に示すように水晶片51の全面に金属膜6及びレジスト膜7が成膜され、フォトリソグラフィーとKI溶液によるエッチングによって水晶振動子用素子50の励振電極52、引き出し電極53の形状に対応するマスクパターンが形成される。そして図8(d)に示すように金属膜6をエッチングして、励振電極52と引き出し電極53が形成され、レジスト膜7を除去すると共にレーザーダイジングにより接続支持部を切削することにより個片の水晶振動子用素子50が形成される。この水晶振動子用素子50は、図9に示すように水晶片51の対向する表面に励振電極52が形成され、夫々の励振電極52に接続されている引き出し電極53が、接続された励振電極52が形成されている表面からその裏面に亘って、共通する側面を経由する形で形成されている。尚図8(a)ないし7(d)は図3と同じく矢印A−Aにて示す位置でのウェハWの断面を模式的に示したものである。
【0026】
次に本実施形態のウェハWから形成された水晶振動子用素子50が組み込まれる水晶振動子70について図10を参照して説明する。図10に示すように外装体71内にこの水晶振動子用素子50を封入することによって水晶振動子70は形成される。この水晶振動子70では、外装体71内に設けられた一対の取り付け電極72に引き出し電極53が導電性接着剤73によって電気的に接続するように水晶振動子用素子50が固着されている。そして取り付け電極72と配線を介して接続された外装体71下部の外部電極74が、発振器等の電子部品の電極と接続することによって内部の水晶振動子用素子50と電子部品とを電気的に接続することが可能となる。
【0027】
[第2の実施形態]
本発明の水晶片形成用水晶基板における第2の実施形態について図11ないし図15を参照して説明する。図11に示す第2の実施形態のウェハW2は表側区画列20aの代わりに、図示X方向に複数例えば8個連続的に並べられることにより形成される素子形成領域となる表側区画列20bが図示Z方向に一定の間隔を空けて例えば6列配設され、各表側区画列20bの間の領域と、Z方向の−X側の表側区画列20bより−X側の領域が対面領域11となる。そしてウェハ裏面30の対面領域11と対向する位置には、表側区画列20bと同態様で、裏側区画40を並べて形成された素子形成領域となる裏側区画列40bが図示Z方向に一定の間隔を空けて6列配設され、各裏側区画列40bの間の領域、及びZ方向の−Z側の裏側区画列40bより−X側の領域が表側区画列20の対面領域31となる。
【0028】
従ってウェハW2では図12ないし図14に示すように、破線で示す表側区画20にはウェハW2の厚さを水晶片51が所望の周波数特性を得ることができる厚さに調整するために、エッチングにより第1の実施形態と同形状の第1凹部21が形成され、裏側区画40には図12に二点鎖線で示す第2凹部41が第1凹部21と同態様で形成される。ここで図13は、図3と同じく図12に示す矢視A−Aの断面を示し、図14は、図4と同じく矢視B−Bの断面を示しており、X軸方向においては第1凹部21若しくは第2凹部41のどちらか一方が複数並ぶように表側区画列20b、裏側区画列40bが配設されているため、その断面形状は従来のウェハW1と同態様となる。
【0029】
一方図14に示すように図示Z軸方向においては隣接する第1凹部21と第2凹部41の同じ斜度の傾斜を有する第3側壁25、45、若しくは第4側壁26、46が対向し、かつ斜度を有する第3側壁25、45がオーバーラップするように形成される。そして本実施形態のウェハW2と、図18(c)に示す従来のウェハW1と比較すると、図15に示すように、底部111を3つ並べたウェハW1の場合、側方領域CZの距離がマスク領域120の幅B、凹部110の第13側壁に対応する+Z側の傾斜面の幅b3を合計したB+b3となり、側方領域CZが2箇所あるため、Z軸方向における全側方領域C3の距離は2(B+b3)となる。これに対し本実施形態の底部22の間に底部42が形成されたウェハWでは、第3側壁25、45が対向している側表領域CZ1の距離は、第3側壁25、45の幅b3と第1凹部21と第2凹部41とを隔てる水晶の厚さα1を合計したb3+α1となり、第4側壁26、46が対向している側表領域CZ2の距離は、第1凹部21と第2凹部41とを隔てる水晶の厚さα2となるため、Z軸方向における全側方領域C4の距離はb3+α1+α2となる。
【0030】
ここでα1+α2は2Bに近似するためα1+α2を2Bに置き換えると、全側方領域C4の距離は2B+b3となり、従来のウェハW1の全側方領域C3と比較してb3だけ全側方領域C4の方が短くなる。つまりウェハWでは、ウェハW1に比べて水晶片51の形成に使用不可能な全側方領域C4の距離が短くなるため、これに伴って底部22、42を計3つ並べた際のZ軸方向の距離を従来のウェハW1と比較して約b3分だけ短くすることができる。そして底部22、42の数が多くなればなるほど、従来のウェハW1と比較して必要となるX軸方向の距離を短くすることができ、その分底部22、42の数を増やすことができる。その結果、例えば図11に示す本実施形態のウェハWと図17に示す従来のウェハW1とを比較すると、ウェハW1に比べてウェハWでは、表側区画列20bと裏側区画列40bの合計数を2本増やすことができ、表側区画20、裏側区画40の合計数を16個多くすることができる。従って本実施形態のウェハW2においても、ウェハWと同じく表側区画20と裏側区画40の配設数を、片面のみに形成区画を配設した場合に比べて多くすることができ、水晶片51を形成するウェハW2一枚あたりの水晶片51の生産性を向上させることができる。
【0031】
[他の実施形態]
また本発明のウェハでは、第1凹部と第2凹部の底部が水晶振動子用素子の形成領域となっていることから、第1凹部、第2凹部の各側壁をそのまま水晶振動子の外装体の一部として使用することも可能となる。例えば図16(a)に示すように、第1実施形態のウェハWの他に、ATカットされた水晶で形成された上部ウェハW3と下部ウェハW4を用意する。上部ウェハW3には第1凹部21に対応する位置に第1凹部21を封止する封止部81が形成され、封止部81の間に水晶片51を支持する支持部82が形成されている。また下部ウェハW4には、第2凹部41に対応する位置に第2凹部41を封止する封止部91が形成され、封止部91の間に水晶片51を支持する支持部92が形成されている。
【0032】
そして図16(b)に示すように、水晶振動子用素子50が接続支持されている状態のウェハWと、上部ウェハW3及び下部ウェハW4とを例えば接着剤等により、支持部82、92に形成されている取り付け電極83、93に夫々対応する電極53が接触する態様で接合して複合ウェハW5を形成する。そして図16(c)に示すカット位置線Dで第1凹部21、第2凹部41に対応する位置で複合ウェハW5を、例えばレーザーダイシング等のダイシングにより切り離すことによって、図16(d)に示すように水晶振動子701を製造することも可能となる。尚水晶片51を形成する際はエッチングに限らず、例えばレーザーダイシング等のダイシングによって切削することにより水晶片51を形成してもよい。またウェハWの変わりに第2の実施形態のウェハW2を使用することもできる。
【0033】
尚本発明は、水晶基板であるウェハの表面及び裏面の両面に水晶片を形成するための第1凹部と第2凹部とを設け、双方の斜度を有する側壁の形成される領域をウェハの厚み方向でオーバーラップさせることによって1枚の水晶基板より製造可能な水晶片の数を増やすものであることから、隣接する第1凹部と第2凹部の対向する双方の側壁は必ずしも同じ斜度を有している必要はなく、例えば第1の実施形態において隣接する第1凹部21の第1側壁23と第2凹部41の第2側壁44、及び第1凹部21の第2側壁24と第2凹部41の第1側壁43とが対向するように形成してもよい。また本実施形態では、表側区画列20a、20b、及び裏側区画列40a、40bは、全て同じ数の表側区画20、裏側区画40を並べて形成されていたが、本発明の実施の形態としては例えば表側区画列20a、20b、及び裏側区画列40a、40bを配設した後にウェハの余剰領域に、区画の数を減らした表側区画列、または裏側区画列を配設することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態のウェハWの概略平面図である。
【図2】本実施形態のウェハWの第1凹部と第2凹部の関係を説明するための第1の説明図である。
【図3】本実施形態のウェハWの第1凹部と第2凹部の関係を説明するための第2の説明図である。
【図4】本実施形態のウェハWの第1凹部と第2凹部の関係を説明するための第3の説明図である。
【図5】本実施形態のウェハWと従来のウェハW1との比較について説明するための比較図である。
【図6】本実施形態のウェハWにおける第1凹部を形成する工程を説明するための第1の説明図である。
【図7】本実施形態のウェハWにおける第2凹部を形成する工程を説明するための第2の説明図である。
【図8】本実施形態のウェハWから水晶片を形成する工程を説明するための説明図である。
【図9】本実施形態の水晶振動子用素子を説明するための斜視図である。
【図10】本実施形態の水晶振動子の一例を説明するための断面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態におけるウェハW2の概略平面図である。
【図12】ウェハW2の第1凹部と第2凹部の関係を説明するための第1の説明図である。
【図13】ウェハW2の第1凹部と第2凹部の関係を説明するための第2の説明図である。
【図14】ウェハW2の第1凹部と第2凹部の関係を説明するための第3の説明図である。
【図15】ウェハW2と従来のウェハW1との比較について説明するための比較図である。
【図16】本発明に係る水晶振動子の他の実施例を説明するための説明図である。
【図17】従来のウェハW1の概略平面図である。
【図18】従来のウェハW1の穴部とウェハWの関係を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0035】
10 ウェハ表面
11 対面領域
20 表側区画
20a、20b 表側区画列
21 第1凹部
22 底部
23、43 第1側壁
24、44 第2側壁
25、45 第3側壁
26、46 第4側壁
30 ウェハ裏面
31 対面領域
40 裏面区画
40a、40b 裏面区画列
41 第2凹部
42 底部
50 水晶振動子用素子
51 水晶片
52 励振電極
53 引き出し電極
70 水晶振動子
W、W1、W2 ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶基板に矩形の水晶振動子用素子の列を形成する方法において、
水晶基板の一面側からマスクを用いてエッチング液によりエッチングし、各々平面形状が矩形でかつ断面形状が水晶の異方性により逆台形となる第1の凹部の列を形成して、その厚さが調整された矩形の素子形成領域を得る工程と、
水晶基板の他面側からマスクを用いてエッチング液によりエッチングし、第1の凹部に対して各々交互に配列され、平面形状が矩形でかつ断面形状が水晶の異方性により逆台形となる第2の凹部の列を形成して、その厚さが調整された矩形の素子形成領域を得る工程と、
前記素子形成領域に電極を形成して水晶振動子用素子を得る工程と、を含み、
第1の凹部と第2の凹部とは、傾斜した側面同士が厚さ方向で重なっていることを特徴とする水晶振動子用素子の製造方法。
【請求項2】
前記水晶基板はATカットされた水晶基板であり、前記素子形成領域はX軸方向またはZ軸方向に配列されていることを特徴とする請求項1に記載の水晶振動子用素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2の製造方法により製造された水晶振動子用素子を密閉した容器と、
この容器に設けられ、前記引き出し電極に電気的に接続される端子部と、を備えたことを特徴とする水晶振動子。
【請求項4】
請求項3に記載の水晶振動子と、この水晶振動子を発振させるための発振回路と、を備えたことを特徴とする電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−11222(P2010−11222A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169444(P2008−169444)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】