説明

油圧制御装置

【課題】潤滑箇所からの油圧の漏出を封止して油圧を閉じ込めることができる油圧制御装置を提供する。
【解決手段】固定シーブ5aと一体のシャフト部13に可動シーブ5bが前後動可能に嵌合され、可動シーブ5bを固定シーブ5aに向けて押圧する油圧室5cが設けられ、その油圧室5cに油圧を給排するとともに可動シーブ5bとシャフト部13との嵌合箇所14を連通して潤滑する油路28が形成された油圧制御装置において、可動シーブ5bの内周部とシャフト部13の外周部とに、軸線方向で互いに対向するロック面5e,13bがそれぞれ形成され可動シーブ5bが固定シーブ5aに接近した場合に、ロック面5e,13bで挟み込まれて可動シーブ5bとシャフト部13との間の液密状態を確立して油圧室5cに油圧を閉じ込めるシール部材Sがロック面5e,13bの間に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、変速機に対して供給する油圧を制御する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の装置の一例が、特許文献1に記載されている。この特許文献1には、駆動基軸と固定プーリ片との間の隙間をシールするように、駆動基軸の軸線方向に摺動する可動プーリ片における固定プーリ片側の端部にシールリングが設けられた発明が記載されている。また、特許文献2には、可動シーブが変速機入力軸方向に摺動する場合に、可動シーブの変速機入力軸側に、可動シーブと変速機入力軸との間をシールすることができるシール面が形成された発明が記載されている。さらにまた、特許文献3には、油圧が供給されるベルト式無段変速機におけるプライマリ油圧室から外部に対するオイルの排出を禁止するように構成された発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−34020号公報
【特許文献2】特開2005−344922号公報
【特許文献3】特開2006ー300270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載された発明によれば、シールリングによって固定プーリ片と可動プーリ片との間の隙間をシールすることができる。しかしながら、この特許文献1に記載された構成では、駆動基軸の軸線方向に摺動する可動プーリ片と固定プーリ片との間の隙間をシールリングによって常にシールすることになる。そのため、シールリングによるシール性を調整することにより、例えば油圧を給排したり、閉じ込めたりすることができない。すなわち、このシールリングを介して油圧を供給し、その後、油圧の供給を停止した場合には、その供給した油圧が漏出することを防止できない虞がある。言い換えれば油圧を閉じ込めることができない虞がある。
【0005】
また、特許文献2に記載された発明によれば、変速機入力軸と可動シーブの変速機入力軸側との間をシール面によりシールすることができる。しかしながら、特許文献2に記載された構成では、可動シーブの変速機入力軸側と変速機入力軸との間には油路が形成されており、可動シーブに対する油圧が供給されている。また、このようなシール面は不可避的に油圧の漏れが生じる虞があり、すなわち、油圧を閉じ込めることができない虞がある。
【0006】
さらにまた、特許文献3に記載された発明によれば、プライマリ油圧室にオイルを閉じ込めることができるから、変速比を固定することができる。しかしながら、特許文献3に記載された構成では、オイルの排出を禁止する制御弁が可動シーブに一体化して設けられているため、構成が複雑になり、この点で改善の余地があった。
【0007】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、油圧の漏出を封止することにより油圧を閉じ込めることができる油圧制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、固定シーブと一体のシャフト部に可動シーブが前後動可能に嵌合されるとともに、前記可動シーブを前記固定シーブに向けて押圧する油圧室が設けられ、さらにその油圧室に油圧を給排するとともに前記可動シーブと前記シャフト部との嵌合箇所を連通して潤滑する油路が形成された油圧制御装置において、前記可動シーブの内周部と前記シャフト部の外周部とに、軸線方向で互いに対向するロック面がそれぞれ形成され、前記可動シーブが前記固定シーブに接近した場合に、前記ロック面で挟み込まれて前記可動シーブと前記シャフト部との間の液密状態を確立して前記油圧室に油圧を閉じ込めるシール部材が前記ロック面の間に配置されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記シール部材は、その外周側もしくは内周側に複数の切欠き部が形成されていることを特徴とする油圧制御装置である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、可動シーブが固定シーブに接近した場合に、シール部材がロック面で挟み込まれて可動シーブとシャフト部との間の液密状体が確立され、油圧室に油圧が閉じ込められる。このように請求項1の発明によれば、可動シーブとシャフト部との間からの油圧の漏れを防止もしくは抑制でき、油圧室に油圧を閉じ込めることができる。その結果、変速比を固定することができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明による効果と同様の効果に加えて、シール部材には複数の切欠き部が形成されている。そのため、それらの複数の切欠き部によって、可動シーブとシャフト部との間を潤滑させる油路を確保することができる。したがって、ロック面によってシール部材が挟み込まれていない場合には、可動シーブとシャフト部との間を潤滑させる油路を確保でき、これとは反対に、ロック面によってシール部材が挟み込まれている場合には、可動シーブとシャフト部との間の液密状体が確立され、すなわち油圧の漏れを防止もしくは抑制して、油圧室に油圧を閉じ込めることができる。その結果、変速比を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】車両に搭載されている無段変速機を含む動力伝達装置を対象とした油圧制御装置に、この発明を適用した例を模式的に示す図である
【図2】図1に示す開閉弁の構成例を模式的に示す図である。
【図3】この発明における嵌合箇所を拡大して模式的に示す図である。
【図4】この発明におけるシール部材を模式的に示す図である。
【図5】この発明におけるシール部材を、この発明におけるロック面によって挟み込むことにより油路を封止した場合の構成例を模式的に示す図である。
【図6】この発明におけるシール部材の他の構成例を模式的に示す図である。
【図7】この発明におけるシール部材の更に他の構成例を模式的に示す図である。
【図8】この発明を適用できる車両の構成例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、この発明を具体例を参照して説明する。この発明に係る油圧制御装置は、車両や航空機、船舶、産業用機械などの各種の分野の機械・装置類に用いることができる。この発明は、要は、油圧を閉じ込める構成の油圧制御装置に適用することができる。図8に、この発明を適用できる車両の構成例を模式的に示してある。この発明で対象とする車両は、内燃機関(以下、エンジンと記す)1を備えており、そのエンジン1は、具体的にはガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどが用いられる。
【0014】
エンジン1の出力側に、すなわちエンジン1の出力軸(クランクシャフト)2に、トルクコンバータや前後進切換機構などの伝動機構3および無段変速機4などが設けられている。この無段変速機4は、伝動機構3を介して入力されたトルクを適宜に変更して所定の変速比を設定するためのものである。その無段変速機4は、従来知られているベルト式のものであってよく、駆動プーリ5と従動プーリ6とに無端状のベルト7を巻き掛けてこれらのプーリ5,6の間でトルクを伝達し、かつ各プーリ5,6に対するベルト7の巻き掛け半径を変化させることにより、変速比を連続的に変化させるように構成されている。
【0015】
より具体的に説明すると、各プーリ5,6は、固定シーブ5a,6aとその固定シーブ5a,6aに対して接近・離隔するように配置された可動シーブ5b,6bとを備え、それらの固定シーブ5a,6aと可動シーブ5b,6bとの間にV溝状のベルト巻き掛け溝が形成されるように構成されている。各プーリ5,6には、それぞれの可動シーブ5b,6bをその軸線の方向に前後動させるための油圧アクチュエータ5c,6cが設けられている。それらの油圧アクチュエータ5c,6cのうちのいずれか一方、例えば従動プーリ6における油圧アクチュエータ6cには、プーリ6がベルト7を挟み付ける挟圧力を発生させる油圧が供給され、また油圧アクチュエータ5c,6cのうちの他方、例えば駆動プーリ5における油圧アクチュエータ5cには、ベルト7の巻き掛け半径を変化させて変速をおこなうための油圧が供給されている。そして、無段変速機4によって増減されたトルクは、プロペラシャフト8および最終減速機ならびにドライブシャフト9などを介して駆動輪10に伝達されるようになっている。
【0016】
つぎに、油圧アクチュエータ5cに油圧を給排するための構成について説明する。図1は、車両に搭載されている無段変速機4を含む動力伝達装置を対象とした油圧制御装置に、この発明を適用した例を模式的に示す図である。ケーシング11とエンドカバー12とによって構成される中空部にベルト式無段変速機4が収納されている。ケーシング11の内部に収納された可動シーブ5bは、固定シーブ5aと一体のシャフト部(プライマリシャフト)13の外周側に、ボールスプライン14によってその軸線方向へ前後動可能に嵌合されている。このシャフト部13は、軸受15によって回転可能に支持されている。
【0017】
ボールスプライン14について説明すると、可動シーブ5bの内周側(すなわちシャフト部13に対向する側)には、シャフト部13の軸線方向に並行な複数の嵌合溝5dが形成されている。一方、シャフト部13の外周側(すなわち可動シーブ5bに対向する側)には、嵌合溝5dに対向する位置に、軸側嵌合溝13aが形成されている。そして、これらの嵌合溝5dと軸側嵌合溝13aとによって形成された通路に、可動シーブ5bの軸線方向への前後動を滑らかにするためのボールベアリング14aが収納されている。
【0018】
図1に示す可動シーブ5bは、ダブルピストンタイプのものであり、可動シーブ5bと一体回転可能に形成されたドラム16の内部に、第一ピストン部17が収められている。この第一ピストン部17における一方の端部(図1において上方側の端部)は、円筒部18を介して可動シーブ5bと一体回転可能に形成されている。そして、第一ピストン部17における他方の端部(図1において下方側の端部)が、可動シーブ5bの背面側であって、可動シーブ5bと一体回転可能に形成されたシリンダ19に一体回転可能に形成されている。可動シーブ5bの背面側であって、可動シーブ5bと一体に第二ピストン部20が形成されている。
【0019】
シリンダ19の内周側と第二ピストン部20とによって構成される中空の内部(第二油圧室)21は、抜き孔22を介して給排油路23に連通するように構成されている。そして、この第二油圧室21に供給された油圧は抜き穴24を介してドラム16の内周側と第一ピストン部17の外周側とによって構成される中空の内部(第一油圧室)25に連通するように供給されるようになっている。したがって、これらの第一油圧室25および第二油圧室21に油圧を給排することによって、可動シーブ5bを軸線方向に前後動させる油圧アクチュエータ5c(油圧サーボ機構)が形成されている。給排油路23は、シャフト部(プライマリシャフト)13の中心軸線に沿って図1における左端から所定長さの範囲に亘って形成されている。
【0020】
なお、第一ピストン部17におけるドラム16との接触端部およびシリンダ19との接触端部には、第一油圧室25に供給された油圧の漏出を防止もしくは抑制するためのシール材17Sがそれぞれ設けられている。同様に、シリンダ19と円筒部18との接触端部には、第二油圧室21に供給された油圧の漏出を防止もしくは抑制するためのシール材19Sが設けられている。また、前述したドラム16および軸受15などのシャフト部13と一体回転する部材は、ロックナット26によってシャフト部13に固定されている。
【0021】
つぎに、油圧アクチュエータ5cに油圧を給排するための構成について説明する。油圧ポンプ27は、車両に搭載されているエンジン1もしくはモータ(図示せず)によって駆動されて油圧を発生させるものであればよい。したがって、この発明では、エンジン1と併せてモータ・ジェネレータなどの電動機を設けてもよい。
【0022】
図1において、油圧ポンプ27から吐出された油圧は、図示しない調圧弁によって所定の圧力に調圧されるようになっている。この調圧弁は、制御などのための元圧を調圧するためのものである。油圧ポンプ27から吐出され、また前述した調圧弁によって調圧された油圧は、油路28に介装された開閉弁29を介して給排油路23に供給されている。この開閉弁29は、油圧ポンプ27から油圧アクチュエータ5cに向けて圧油を供給する場合に開き、これとは反対方向の圧油の流れを阻止するように閉弁する一方向弁である。
【0023】
図2には、前述した開閉弁29の構成例を模式的に示してあり、その開閉弁29は、先端部がテーパ状もしくは半球状に形成された弁体30と、その弁体30が押し付けられる弁座シート部31と、弁体30を弁座シート部31に向けて押圧するスプリング32と、弁体30をスプリング32の弾性力に抗して弁座シート部31とは反対方向に押し戻すアクチュエータ33とを備えている。また、弁体30とアクチュエータ33とは支持部材34によって連結されている。さらに開閉弁29に油圧を導入する入力ポート35は、油圧ポンプ27側の油路28に連通されており、反対に開閉弁29から油圧を導出する出力ポート36は、油路28を介して給排油路23に連通されている。
【0024】
アクチュエータ33は、電気的に制御されるようになっており、例えばアクチュエータ33がOFF状態では、弁体30がスプリング32によって弁座シート部31に押し付けられるので、入力ポート35と出力ポート36との連通が断たれるようになっている。これとは反対に、アクチュエータ33がON状態では、弁体30が弁座シート部31から離れるようにアクチュエータ33が駆動して、弁体30を押し戻すので、入力ポート35と出力ポート36とが連通するようになっている。このようして開閉弁29が開閉され、油圧アクチュエータ5cに油圧が給排されるようになっている。すなわち、開閉弁29を開制御(ON状態)することにより油圧アクチュエータ5cに油圧を供給し、これとは反対に、閉制御(OFF状態)にすることにより油圧アクチュエータ5cに油圧を閉じ込めることができるようになっている。
【0025】
図3に、この発明における嵌合箇所を拡大して模式的に示してある。可動シーブ5bに形成された嵌合溝5dよりも固定シーブ5a側であって、可動シーブ5bの内周側には、その最内周側から半径方向外側に凹んで段差部5eが形成されている。この段差部5eによって半径方向外側に凹んだ面(シール面)5fは、可動シーブ5bにおける固定シーブ5a側の端部に向けて所定長さの範囲に亘って形成されている。一方、シャフト部13に形成された軸側嵌合溝13aよりも固定シーブ5a側であって、かつシャフト部13の外周側には、半径方向外側に突となって段差部13bが形成されている。この段差部13bによって半径方向外側に突となった面(シール面)13cは、固定シーブ5a側に向けて所定長さの範囲に亘って形成されている。
【0026】
これらの段差部5e,13bは互いに対向するように形成されており、また、これらの段差部5e,13bの高さΔHは、ほぼ同一になるように形成されている。これらの段差部5e,13bがこの発明におけるロック面に相当している。そして、これらの段差部5e,13bの間であってシャフト部13の外周側に、これらの段差部5e,13bによって挟み込まれて可動シーブ5bとシャフト部13との隙間を封止するためのこの発明におけるシール部材Sが設けられている。なお、可動シーブ5bとシャフト部13との隙間および前述した給排油路23が、この発明における油路28に相当する。
【0027】
図4に、この発明におけるシール部材Sを模式的に示してある。図4に示すように、シール部材Sは、例えば無端状かつリング形状のものであって、シール部材Sには、Oリングもしくは矩形などの任意の形状のものを適用することができる。また、その材質には、樹脂もしくは金属などを適宜用いることができる。そして、シール部材Sの内径D1は、シャフト部13の中心軸線からシャフト部13の軸側嵌合溝13aが形成される面までの径よりも大きく、かつシャフト部13の中心軸線から可動シーブ5bの嵌合溝5dが形成される面までの径よりも小さくなるように形成されている。また、シール部材Sの外径D2は、シャフト部13の中心軸線から可動シーブ5bの嵌合溝5dが形成される面までの径よりも大きく、かつシャフト部13の中心軸線から可動シーブ5bのシール面5fが形成される面までの径よりも小さくなるように形成されている。このシール部材Sは、要は、段差部(ロック面)5e,13bに挟み込まれて、可動シーブ5bとシャフト部13との隙間(油路28)を封止するように構成されていればよい。
【0028】
図5に、この発明におけるシール部材Sを、この発明におけるロック面5e,13bによって挟み込むことにより油路28を封止した場合の構成例を模式的に示してある。図5に示すように、可動シーブ5bがベルト7の巻掛け半径を大きくするように固定シーブ5a側に移動すると、可動シーブ5bのロック面5eがシャフト部13のロック面13bに接近する。そして、ベルト7の巻掛け半径が最大になる状態、言い換えれば最小変速比γminになる状態まで可動シーブ5bが移動すると、ロック面5e,13bによってシール部材Sが挟み込まれる。その結果、可動シーブ5bとシャフト部13との隙間(油路28)がシール部材Sによって封止される。ここで、可動シーブ5bとシャフト部13との間の油路28は抜き孔22を介して油圧アクチュエータ5cに連通している。したがって、上記のように可動シーブ5bとシャフト部13との隙間(油路28)を封止することにより、油路28からの油圧の漏出を防止もしくは抑制することができる。また、前述したように、油圧アクチュエータ5cに対する油圧の供給は、前述した開閉弁29を閉制御することにより封止することができる。したがって、開閉弁29を閉制御し、シール部材Sをロック面5e,13bによって挟み込むことにより、油圧アクチュエータ5cの油圧を閉じ込めることができ、無段変速機4の変速比を固定することができる。
【0029】
したがって、図1および図3ならびに図4そして図5に示す構成によれば、油圧ポンプ27によって発生させられた油圧が油圧アクチュエータ5cに供給されて、可動シーブ5bがベルト7の巻掛け半径を増大させるように移動する。そして、ロック面5e,13bが接近してシール部材Sを挟み込む場合に、言い換えれば最小変速比γminが設定される場合に、シール部材Sはロック面5e,13bによって挟み込まれ、油路28が封止される。その結果、可動シーブ5bとシャフト部13との間の油路28からの油圧の漏出が防止もしくは抑制される。また、この時、開閉弁29を閉制御することにより油圧アクチュエータ5cの油圧を閉じ込めることができ、変速比を固定することができる。さらにまた、油路28を封止することにより油圧の漏出を防止して変速比を固定する必要がない場合には、言い換えれば最小変速比を設定しない場合には、シール面5f,13cに対する潤滑を確保することができる。すなわち、可動シーブ5bの内周側およびシャフト部13の外周側が潤滑される。
【0030】
したがって、この発明に係る装置によれば、可動シーブ5bとシャフト部13との嵌合箇所からの油圧の漏出を防止もしくは抑制することができる。その結果、変速比を固定することができ、装置としての信頼性および耐久性を向上させることができる。また、シール部材Sを配置させるための溝などを新設する必要がないので、前述したような油圧の閉じ込みを低コストでおこなうことができる。さらにまた、シール部材Sには、任意の形状および任意の材質のものを適用することができる。さらに、例えばシール部材Sとして、Oリングなどをシャフト部13の外周部に設ければよいので、容易に組み付けることができ、この点でも低コスト化を図ることができる。そして、シール部材Sが挟み込まれて油圧の漏れが防止もしくは抑制されるので、油圧ポンプ27の負荷が低減して燃費の向上を図ることができる。
【0031】
図6には、この発明におけるシール部材Sの他の構成例を模式的に示してある。図6に示すように、シール部材Sの半径方向外側に複数の切欠き部37が設けられている。そして、それらの切欠き部37(突部38の間)を、圧油が流通するようになっている。したがって、前述したようにロック面5e,13bによってシール部材Sを挟み込まず、すなわち変速比を固定しない場合(最小変速比を設定しない場合)に、複数の切欠き部37を圧油が流通できるので、シール面5f,13cに対する潤滑を確保することができる。そして、変速比を固定する場合(最小変速比を設定する場合)には、ロック面5e,13bによってシール部材Sを挟み込んで可動シーブ5bとシャフト部13との間の油路28を封止することができる。その結果、可動シーブ5bとシャフト部13との嵌合箇所からの油圧の漏れを防止もしくは抑制することができ、変速比を固定することができる。
【0032】
図7には、この発明におけるシール部材Sの更に他の構成例を模式的に示してある。図7に示すように、シール部材Sの半径方向内側に複数の切欠き部37が設けられている。そして、それらの切欠き部37(突部38の間)を、圧油が流通するようになっている。したがって、前述したようにロック面5e,13bによってシール部材Sを挟み込まず、すなわち変速比を固定しない場合(最小変速比を設定しない場合)に、複数の切欠き部37を圧油が流通できるので、シール面5f,13cに対する潤滑を確保することができる。そして、変速比を固定する場合(最小変速比を設定する場合)には、ロック面5e,13bによってシール部材Sを挟み込んで可動シーブ5bとシャフト部13との間の油路28を封止することができる。その結果、可動シーブ5bとシャフト部13との嵌合箇所からの油圧の漏れを防止もしくは抑制することができ、変速比を固定することができる。
【0033】
なお、この発明におけるシール部材は、前述した構成のものに限定されないのであり、また、前述した構成は、従動プーリ6に適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
5…駆動プーリ、 5a…固定シーブ、 5b…可動シーブ、 5c…油圧アクチュエータ、 5e…ロック面(段差部)、 13…シャフト部(プライマリシャフト)、 13b…ロック面(段差部)、 28…油路、 S…シール部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定シーブと一体のシャフト部に可動シーブが前後動可能に嵌合されるとともに、前記可動シーブを前記固定シーブに向けて押圧する油圧室が設けられ、さらにその油圧室に油圧を給排するとともに前記可動シーブと前記シャフト部との嵌合箇所を連通して潤滑する油路が形成された油圧制御装置において、
前記可動シーブの内周部と前記シャフト部の外周部とに、軸線方向で互いに対向するロック面がそれぞれ形成され、
前記可動シーブが前記固定シーブに接近した場合に、前記ロック面で挟み込まれて前記可動シーブと前記シャフト部との間の液密状態を確立して前記油圧室に油圧を閉じ込めるシール部材が前記ロック面の間に配置されていることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項2】
前記シール部材は、その外周側もしくは内周側に複数の切欠き部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−58543(P2011−58543A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207469(P2009−207469)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】