説明

洗浄方法

【課題】ガス溶解水による高圧ジェット洗浄又は二流体洗浄で高い洗浄効果を得て、低コストで省資源な洗浄方法を提供する。
【解決手段】洗浄流体吐出ノズルから、洗浄液又は洗浄液と気体との混合流体を被洗浄物に向けて吐出させて該被洗浄物を洗浄する高圧ジェット洗浄又は二流体洗浄方法において、該洗浄流体吐出ノズルに導入される洗浄液が、該洗浄液の液温における飽和溶解度以上の溶存ガスを含むことを特徴とする洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の被洗浄物の表面を効果的に洗浄する方法に関する。本発明の洗浄方法は、特に半導体用のシリコンウェハ、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板、フォトマスク用石英基板等、高度な清浄度が要求される電子材料(電子部品や電子部材等)などの洗浄に好適である。
【背景技術】
【0002】
半導体用のシリコンウェハ、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板、フォトマスク用石英基板などの電子材料の表面から、微粒子、有機物、金属などを除去するために、従来、いわゆるRCA洗浄法と呼ばれる過酸化水素をベースとする濃厚薬液による高温でのウェット洗浄が行われていた。RCA洗浄法は、電子材料の表面の金属などを除去するために有効な方法であるが、高濃度の酸、アルカリや過酸化水素を多量に使用するために、廃液中にこれらの薬液が排出され、廃液処理において中和や沈殿処理などに多大な負担がかかるとともに、多量の汚泥が発生する。
【0003】
そこで、特定のガスを純水に溶解させ、必要に応じて微量の薬剤を添加して調製したガス溶解水が、高濃度薬液に代わって使用されるようになってきている。ガス溶解水による洗浄であれば、被洗浄物への薬剤の残留の問題も少なく、洗浄効果も高いため、洗浄用水の使用量の低減を図ることができる。
【0004】
従来、電子材料用洗浄水としてのガス溶解水に用いられる特定のガスとしては、水素ガス、酸素ガス、オゾンガス、希ガス、炭酸ガスなどがある。
【0005】
一方で、各種材料の洗浄方法として、ノズルから高圧で洗浄液を噴射させる高圧ジェット洗浄や、洗浄液と気体(キャリアガス)とを二流体ノズルから吐出させる二流体洗浄などが知られており、高圧ジェット洗浄又は二流体洗浄であれば、ノズルから吐出された洗浄液の液滴が高速で被洗浄物に衝突することによる物理的な作用で良好な洗浄効果が得られる。
【0006】
ガス溶解水の洗浄効果は、ガスを溶解させていない水による洗浄効果に比べて高いものではあるが、その微粒子除去等の洗浄効果は、単なる高圧ジェット洗浄又は二流体洗浄では十分に高いものとは言えず、ガス溶解水による洗浄効果を十分に発現させるためには、超音波洗浄を組み合わせる必要があり、例えば、特許文献1には、超純水に水素ガスを溶解させ、過酸化水素を添加した洗浄液を用い、この洗浄液に超音波を照射しながら被洗浄物を洗浄する洗浄方法が提案されている。
【0007】
しかし、超音波洗浄設備は高価なため、洗浄コストを引き上げる要因となる。また、ガラス基板などにガス溶解水による超音波洗浄を適用する場合には、スコールノズルなどを用いて超音波を基板に作用させる必要があるため、大量の洗浄水が必要となる。
【0008】
高圧ジェット洗浄又は二流体洗浄により十分な洗浄効果が得られれば、超音波洗浄の場合の上述の問題点は解消され、より低コストかつ省資源な洗浄を行えるが、ガス溶解水による高圧ジェット洗浄又は二流体洗浄では十分な洗浄効果が得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−296463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ガス溶解水による高圧ジェット洗浄又は二流体洗浄で高い洗浄効果を得て、低コストで省資源な洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、高圧ジェット洗浄又は二流体洗浄において用いる洗浄液に、飽和溶解度以上のガスを溶解させておくことにより、この過飽和の溶存ガスが、ノズルから洗浄液滴として吐出されて開放され、被洗浄物表面に作用する間に活性な気泡に成長し、洗浄液滴が被洗浄物表面に衝突する物理的洗浄力に加えて、気泡のスクラブ効果、気泡衝突の衝撃力、気液界面の吸着力などの物理化学的な洗浄作用が、被洗浄物や被洗浄物の表面の微粒子等の汚泥物質に及ぼされることとなり、ガス溶解水による微粒子除去効果などの洗浄効果が向上することを見出した。
【0012】
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0013】
[1] 洗浄流体吐出ノズルから、洗浄液又は洗浄液と気体との混合流体を被洗浄物に向けて吐出させて該被洗浄物を洗浄する高圧ジェット洗浄又は二流体洗浄方法において、該洗浄流体吐出ノズルに導入される洗浄液が、該洗浄液の液温における飽和溶解度以上の溶存ガスを含むことを特徴とする洗浄方法。
【0014】
[2] [1]において、前記溶存ガスが、窒素ガス、酸素ガス、炭酸ガス、水素ガス、オゾンガス、清浄空気、及び希ガスよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする洗浄方法。
【0015】
[3] [1]又は[2]において、前記洗浄流体吐出ノズルに導入される洗浄液が、該洗浄液の液温における飽和溶解度の1〜5倍の溶存ガスを含むことを特徴とする洗浄方法。
【0016】
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、前記洗浄流体吐出ノズルに導入される洗浄液が、純水又は超純水に前記ガスを溶解させたものであることを特徴とする洗浄方法。
【0017】
[5] [1]ないし[4]のいずれかにおいて、前記洗浄流体吐出ノズルに導入される洗浄液が、脱気処理した水に前記ガスを溶解させたものであることを特徴とする洗浄方法。
【0018】
[6] [1]ないし[5]のいずれかにおいて、前記洗浄液が、アルカリ、酸、キレート剤及び界面活性剤よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の薬剤を含むことを特徴とする洗浄方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ガス溶解水を用いた高圧ジェット洗浄又は二流体洗浄で、省資源かつ低コストに効率的な洗浄を行って、被洗浄物を高度に清浄化することができる(請求項1)。
即ち、前述の如く、洗浄液に飽和溶解度以上のガスを溶解させておくことにより、この過飽和の溶存ガスが、ノズルから洗浄液滴として吐出されて開放され、被洗浄物表面に作用する間に活性な気泡に成長し、洗浄液滴が被洗浄物表面に衝突する物理的洗浄力に加えて、気泡のスクラブ効果、気泡衝突の衝撃力、気液界面の吸着力などの物理化学的な洗浄作用が、被洗浄物や被洗浄物の表面の微粒子等の汚泥物質に及ぼされることとなり、ガス溶解水による微粒子除去効果などの洗浄効果が向上する。
【0020】
本発明において、前記溶存ガスとしては、窒素ガス、酸素ガス、炭酸ガス、水素ガス、オゾンガス、清浄空気、及びアルゴンガスよりなる群から選らばれる1種又は2種以上が好ましく(請求項2)、これらの溶存ガスは、飽和溶解度の1〜5倍の過飽和度で溶存することが好ましい(請求項3)。
【0021】
また、ガスを溶解させる液としては純水又は超純水を用いることが好ましく(請求項4)、この水は脱気処理された水であることが、ガス溶解効率等の面で好ましい(請求項5)。
【0022】
本発明で用いる洗浄液は、アルカリ、酸、キレート剤及び界面活性剤よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の薬剤を含んでいてもよく、このような薬剤を含むことにより、より一層良好な洗浄効果を得ることができる(請求項6)。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施に好適な洗浄装置の一例を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の洗浄方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0025】
[被洗浄物]
本発明の洗浄方法の洗浄対象となる被洗浄物としては特に制限はないが、本発明はその優れた洗浄効果から、半導体用のシリコンウェハ、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板、フォトマスク用石英基板等、高度な清浄度が要求させる電子材料(電子部品や電子部材等)の洗浄に好適である。
【0026】
[洗浄液]
本発明で用いる洗浄液(本発明において、洗浄液とは、後述の洗浄流体吐出ノズルに導入される液をさす。)は、該洗浄液の液温における飽和溶解度以上の溶存ガスを含むものである。
【0027】
洗浄液の溶存ガス量が飽和溶解度未満では、本発明による優れた洗浄効果を得ることはできない。
【0028】
洗浄液の溶存ガス量は、飽和溶解度以上で多い方が洗浄効果が高くなる傾向があるが、溶存ガス量を過度に多くすると、そのための加圧設備等が過大となり、実用的ではなくなる。従って、洗浄液の溶存ガス量は、飽和溶解度の1〜5倍、特に1〜3倍、とりわけ1.5〜3倍とすることが好ましい。
なお、以下において、飽和溶解度に対する溶存ガス量の倍数を飽和度と称し、例えば、飽和溶解度と等量であれば「飽和度1」、飽和溶解度の2倍量であれば「飽和度2」、飽和溶解度の3倍量であれば「飽和度3」と称す。
【0029】
洗浄液の溶存ガス種としては特に制限はなく、例えば、窒素ガス、酸素ガス、炭酸ガス、水素ガス、オゾンガス、清浄空気、アルゴンガス等の希ガスが挙げられる。これらは1種のみが洗浄液中に溶存していてもよく、2種以上が洗浄液中に溶存していてもよい。2種以上のガスが洗浄液中に溶存している場合、そのうちの少なくとも1種が飽和溶解度以上であればよい。
【0030】
このようなガスを液中に飽和溶解度以上に溶解させる方法としては特に制限はないが、後述の如く、ガス溶解膜モジュールを用い、ガス溶解膜モジュールの気相室にガスを加圧供給して液相室内の液に溶解させる方法が挙げられる。
【0031】
上述のようなガスを溶解させて洗浄液を調製するための液体(以下「原水」と称す場合がある。)としては、一般に、被洗浄物を要求される清浄度に洗浄することができる程度に処理された純水又は超純水が用いられる。
【0032】
原水は、特定の溶存ガスのみを含む洗浄液を調製するためには、脱気処理した水であることが好ましく、また、脱気処理水であれば、ガスを効率的に飽和溶解度以上に溶解させることができる点においても好ましい。
脱気の程度としては、80%以上、望ましくは90%以上であることが好ましい。
ただし、原水の脱気処理は必須要件ではない。
【0033】
原水の脱気処理には、通常、後述のように脱気膜モジュールを用いることができる。
【0034】
また、原水には、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどのアルカリ剤や、フッ化水素、塩化水素、硫酸などの酸、キレート剤、界面活性剤などの薬剤の1種又は2種以上を添加して洗浄機能性を高めることもできる。特に、アンモニア等のアルカリ剤を添加して、洗浄液のpHを7以上、好ましくは9〜14のアルカリ性に調整することにより、微粒子等の洗浄効果を高めることができる。なお、このpH調整にはアルカリ性薬剤を用いる他、アルカリ性ガスを用いても良いが、取扱いが簡便で濃度管理を容易に行えるアンモニアを用いることが好ましい。特にアンモニアを1mg/L以上、例えば1〜200mg/L程度添加して、pH7〜11に調整した洗浄液を用いることにより、良好な洗浄効果を得ることができる。なお、この洗浄液のpHが過度に高かったりアンモニアの添加量が過度に多いと、被洗浄物に対するダメージが出るおそれがあり、好ましくない。
原水へのアンモニア等の薬剤の添加は、ガスの溶解後であっても溶解前であっても良い。
【0035】
[被洗浄物の洗浄方法]
本発明の洗浄方法では、上述の洗浄液を用いて高圧ジェット洗浄又は二流体洗浄により被洗浄物を洗浄する。
【0036】
この高圧ジェット洗浄又は二流体洗浄における洗浄液の温度は、10〜90℃の範囲を採用することができるが、本発明によれば、常温の洗浄液であっても優れた洗浄効果を得ることができることから、洗浄液温度は常温とすることが好ましい。
【0037】
本発明において、高圧ジェット洗浄を行う場合、洗浄流体吐出ノズルから吐出させる洗浄液の吐出条件としては、例えば次のような条件を採用することができる。
洗浄液供給量:0.5〜30L/min
ノズル液圧:5〜20MPa
【0038】
また、本発明において、二流体洗浄を行う場合、気体(キャリアガス)としては、窒素ガス、酸素ガス、炭酸ガス、水素ガス、オゾンガス、アルゴンガス、空気等の1種又は2種以上を用いることができ、その洗浄流体吐出ノズルから吐出させる洗浄液及びキャリアガスの吐出条件としては、例えば、次のような条件を採用することができる。
洗浄液供給量:0.05〜0.5L/min
ノズル液圧:0.05〜0.5MPa
キャリアガス圧:0.1〜0.6MPa
【0039】
なお、洗浄時間は、用いた洗浄液の飽和度や、薬剤添加の有無、その他の洗浄条件によっても異なるが、通常3〜60秒程度である。
【0040】
[洗浄装置]
以下に、本発明の洗浄方法の実施に好適な洗浄装置の一例を示す図1を参照して、本発明の洗浄方法をより具体的に説明する。
図1において、1は脱気膜モジュール、2はガス溶解膜モジュール、3はチャンバー、4は吐出ノズル、5は被洗浄物、6は回転台を示す。
【0041】
図示のように、被洗浄物5はチャンバー3内の回転台6にセットされる。チャンバー3は、その下方から排気がとれるものが好ましい。これは、ノズル4から吐出された洗浄流体が舞い上がり、被洗浄物5を汚染するのを防ぐためであり、下方から排気を行うことにより、洗浄流体の舞い上がりが抑制され、被洗浄物の汚染が防止される。回転台6への被洗浄物5の固定方法には特に制限はないが、回転台6内部を真空にして被洗浄物5を回転台6と密着させる方法(真空チャック)が好適である。この場合、回転台6と被洗浄物5の接触面との間にゴム(例えばポリテトラフルオロエチレン)製のスペーサーを介して空間を形成して真空場を作り、回転台6と被洗浄物5を密着させる方法が好適に用いられる。
【0042】
脱気膜モジュール1内は、ガス透過膜1aによって液相室1bと気相室1cに区画されている。同様に、ガス溶解膜モジュール2内も、ガス透過膜2aによって液相室2bと気相室2cに区画されている。
【0043】
これらガス透過膜1a,2aとしては、水を透過させず、かつガスを透過させるものであれば特に制限はなく、例えば、ポリプロピレン、ポリジメチルシロキサン、ポリカーボネート−ポリジメチルシロキサンブロック共重合体、ポリビニルフェノール−ポリジメチルシロキサン−ポリスルホンブロック共重合体、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキシド)、ポリテトラフルオロエチレンなどの高分子膜などを挙げることができる。
【0044】
原水を供給する原水配管11は、脱気膜モジュール1の液相室1bに接続されている。脱気膜モジュール1の気相室1cは、排気配管13を介して真空ポンプ13Rの吸込口に接続されている。
【0045】
真空ポンプ13Rには特に制限はないが、例えば、水封式真空ポンプや水蒸気除去機能を備えたスクロールポンプなどのように、水蒸気を吸気できるものが好ましい。
【0046】
この脱気膜モジュール1の液相室1bとガス溶解膜モジュール2の液相室2bとが、脱気水配管12によって接続されている。このガス溶解膜モジュール2の液相室2bに、吐出ノズル4にガス溶解水を供給するノズル給水配管14が接続され、気相室2cに、流量調節弁15Vを備えたガス供給配管15が接続されている。また、気相室2cには、圧力計2Pが設けられている。
【0047】
ノズル給水配管14には、ノズル給水流量調節弁14Vとノズル給水圧力計14Pとが設けられている。
また、ガス溶解水にアンモニア等の薬剤を添加する場合、このノズル給水配管14に、流量調節弁16Vを備えた薬剤供給配管16が接続されるが、薬剤の添加箇所は、吐出ノズル4の上流側であればよく、この箇所に何ら限定されない。
【0048】
吐出ノズル4には、ノズル給水配管14と共に、流量調節弁17Vと圧力計17Pとを備えるキャリアガス供給配管17が接続されており、ガス溶解水とキャリアガスが被洗浄物5に向けて吐出されるように構成されている。
【0049】
このように構成された洗浄装置を用いてガス溶解水を調製して被洗浄物の洗浄を行うには、原水(純水又は超純水)を、原水配管11を経由して脱気膜モジュール1の液相室1bに供給すると共に、真空ポンプ13Rを作動させて気相室1c内を減圧する。これにより、液相室1b内の原水に溶解している溶存ガスが、ガス透過膜1aを透過し、気相室及び排気配管13を経由して系外に排出される。このようにして、原水が脱気される。
【0050】
ここで、気相室1c内は、10kPa以下、特に5kPa以下に減圧されてることが好ましい。
【0051】
このようにして液相室1b内で脱気された脱気水は、脱気水配管12を経由してガス溶解膜モジュール2の液相室2b内に流入する。このガス溶解膜モジュール2の気相室2cには、ガス供給配管15を経由して溶解ガスが供給される。このとき、流量調節弁15Vでその溶解ガス供給量が制御されて、ガス溶解膜モジュール2の気相室2cへ供給された溶解ガスは、ガス透過膜2aを介して液相室2bへ供給され、原水(脱気水)に溶解される。その溶解量は原水が脱気水の場合、ガス供給量と水量から計算で求めてもよいし、ガス溶解膜モジュール2の二次側でその濃度を濃度計を用いて測定しても良いが、ガス溶解膜モジュール2の気相室2c内の圧力を測定する圧力計2Pの値で制御するのが簡便であり、好適に用いられる。即ち、その水温で原水中に溶存できるガスが飽和に達している場合を飽和度1とする場合、圧力計2P(ゲージ圧)の値が0MPa(≒1atm)のとき、得られるガス溶解水の飽和度は1、圧力計2Pの値が0.1MPaのときはガス溶解水の飽和度は2、圧力計2Pの値が0.2MPaのときはガス溶解水の飽和度は3となるので、圧力計2Pの値でガス溶解水の飽和度を調整することができる。
【0052】
なお、この圧力計2Pの値はノズル給水圧力計14Pの値より低い必要がある。即ち、圧力計2Pで測定されるガス溶解膜モジュール2の気相室2cの圧力Vと、ノズル給水圧力計14Pで測定されるガス溶解水の給水圧力Vとが、V<Vの関係となる必要がある。これは、吐出ノズル4までの給水配管14において、ガス溶解水から気泡を発生させないためであり、従って、ガス溶解水の飽和度を上げるためには、この水圧も上げる必要がある。このノズル給水圧Vの値に特に制限は特にないが、通常、0.1〜1MPa程度が望ましく、0.2〜0.6MPa程度がより好適に用いられる。
【0053】
ガス溶解膜モジュール2で所望のガスを原水に溶解させて得られたガス溶解水は、ノズル給水流量調節弁14Vで流量調整され、ノズル給水配管14を経て吐出ノズル4へ送液される。
【0054】
原水に薬剤を添加する場合は、薬剤供給配管16を経て、薬剤流量調節弁14Vで薬剤量を調整した薬剤をガス溶解水に注入する。図1では薬注点をガス溶解膜モジュール2の二次側としたが、注入場所に特に制限はなくガス溶解膜モジュール2の一次側でもよい。また、図示はしていないが、洗浄液の清浄度を上げるためにフィルターを設置してもよい。フィルターの設置場所に制限はない。
【0055】
吐出ノズル4では、洗浄液(ガス溶解水又は薬剤添加ガス溶解水)とキャリアガスが混合される。キャリアガスはキャリアガス供給配管17を経て、キャリアガス流量調節弁17Vによる流量制御又は圧力計17Pによる圧力制御のもとに、吐出ノズル4に供給される。キャリアガスの供給圧力はキャリアガス供給圧力計17Pで示される。このキャリアガス供給圧力Vはノズル給水圧力Vより高くする必要があるが(即ち、V>V)、その程度は、キャリアガス供給圧力Vが、ノズル給水圧力Vよりも0.1〜0.2MPa程度高い値となるようにすることが好ましい。
【0056】
吐出ノズル4でキャリアガスと洗浄液との混合流体となった洗浄流体は、被洗浄物5へ向けて吐出され、被洗浄物5表面が洗浄される。
このとき回転台6を1〜500rpm、好ましくは100〜300rpm程度で回転させることが好ましく、このようにすることで、被洗浄物5表面を効果的に洗浄することが可能となる。
【実施例】
【0057】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
[実施例1]
図1に示す洗浄装置により、以下の汚染ウェハを被洗浄物として洗浄実験を行った。
<被洗浄物>
酸化膜付きアルミナスラリー汚染ウェハ:6インチのシリコンウェハをオゾン水で処理してウェハ表面を親水化した後、アルミナスラリーで汚染させたもの。汚染後のウェハ表面の微粒子数(0.12μm以上の微粒子)は、6000〜7000個/ウェハであった。
【0059】
ガス溶解水としては、超純水を、脱気膜モジュールで脱気した後(脱気膜モジュールの気相室の圧力5kPa、95%脱気相当)、ガス溶解膜モジュールで酸素ガスを飽和度3となるように溶解(ガス溶解膜モジュールの気相室の圧力0.2MPa(飽和度3に相当))させた酸素ガス溶解水を用いた。
【0060】
洗浄に用いたノズル、その他の洗浄条件は次の通りである。
ノズル:(株)スプレーイングジャパン製「二流体ノズル(B1/4J−SS+SUN23−SS)」
ノズルへのガス溶解水供給量:0.4L/min
ノズル給水圧力:0.3MPa
キャリアガス:Nガス
キャリアガス供給圧力:0.4MPa
洗浄時回転台回転数:100rpm
洗浄時間:10秒
乾燥方法:窒素ガスブロー
乾燥時回転台回転数:1500rpm
乾燥時間:30秒
【0061】
上記の洗浄条件で洗浄を行った後のウェハ表面の微粒子数を調べ、洗浄前の微粒子数に対する除去率を求めて、結果を表1に示した。
【0062】
[比較例1]
実施例1において、酸素ガスを溶解させる前の脱気水を洗浄水として用いたこと以外は同様にして汚染ウェハの洗浄を行い、微粒子除去率を調べ、結果を表1に示した。
【0063】
[実施例2]
実施例1において、酸素ガス溶解水にアンモニアを1mg/Lの濃度(pH9.4)となるように添加したものを洗浄水として用いたこと以外は同様にして汚染ウェハの洗浄を行い、微粒子除去率を調べ、結果を表1に示した。
【0064】
[比較例2]
実施例2において、酸素ガスを溶解させる前の脱気水にアンモニアを1mg/Lの濃度となるように添加した水を洗浄水として用いたこと以外は同様にして汚染ウェハの洗浄を行い、微粒子除去率を調べ、結果を表1に示した。
【0065】
[実施例3〜6]
実施例1において、ガス溶解膜モジュールの気相室の圧力を調整し、酸素ガス溶解水の飽和度を表1に示す値としたこと以外は同様にして汚染ウェハの洗浄を行い、微粒子除去率を調べ、結果を表1に示した。
【0066】
[比較例3]
実施例1において、ガス溶解膜モジュールの気相室の圧力を調整し、酸素ガスガス溶解水の溶存酸素ガス量を飽和溶解度未満とし、飽和溶解度の1/2量(「飽和度1/2」と称す。)としたこと以外は同様にして汚染ウェハの洗浄を行い、微粒子除去率を調べ、結果を表1に示した。
【0067】
【表1】

【0068】
実施例1と比較例1の対比から、飽和溶解度以上のキャリアガスを溶解させることにより、二流体洗浄で良好な洗浄効果が得られることが分かる。
また、実施例2と比較例2の対比から、アンモニア等の洗浄薬剤を用いた場合においても、飽和溶解度以上のキャリアガスを溶解させることにより、洗浄効果が高められることが分かる。
【0069】
また、実施例1,3〜6と比較例3の対比から、ガス溶解水の飽和度は1〜5、特に1.5〜3が好ましく、飽和度3を超えても洗浄効果に大差はないことが分かる。
【符号の説明】
【0070】
1 脱気膜モジュール
2 ガス溶解膜モジュール
3 チャンバー
4 吐出ノズル
5 被洗浄物
6 回転台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄流体吐出ノズルから、洗浄液又は洗浄液と気体との混合流体を被洗浄物に向けて吐出させて該被洗浄物を洗浄する高圧ジェット洗浄又は二流体洗浄方法において、該洗浄流体吐出ノズルに導入される洗浄液が、該洗浄液の液温における飽和溶解度以上の溶存ガスを含むことを特徴とする洗浄方法。
【請求項2】
請求項1において、前記溶存ガスが、窒素ガス、酸素ガス、炭酸ガス、水素ガス、オゾンガス、清浄空気、及び希ガスよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする洗浄方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記洗浄流体吐出ノズルに導入される洗浄液が、該洗浄液の液温における飽和溶解度の1〜5倍の溶存ガスを含むことを特徴とする洗浄方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記洗浄流体吐出ノズルに導入される洗浄液が、純水又は超純水に前記ガスを溶解させたものであることを特徴とする洗浄方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記洗浄流体吐出ノズルに導入される洗浄液が、脱気処理した水に前記ガスを溶解させたものであることを特徴とする洗浄方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記洗浄液が、アルカリ、酸、キレート剤及び界面活性剤よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の薬剤を含むことを特徴とする洗浄方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−134864(P2011−134864A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292510(P2009−292510)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】