流体軸受、流体ベアリング及びステージ装置並びに露光装置
【課題】ベース部材に凹部が存在している場合でも、不測の挙動を示すことを抑制する。
【解決手段】第一部材の第一面10Aに形成された溝部14の内側に設けられた第一流体吹出部11と、溝部14とは異なる第一面10A内の領域に設けられた第二流体吹出部21A、21Bとを有する。
【解決手段】第一部材の第一面10Aに形成された溝部14の内側に設けられた第一流体吹出部11と、溝部14とは異なる第一面10A内の領域に設けられた第二流体吹出部21A、21Bとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体軸受、流体ベアリング及びステージ装置並びに露光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや液晶表示デバイスは、マスク上に形成されたパターンを感光性の基板上に転写する、所謂フォトリソグラフィの手法により製造される。このフォトリソグラフィ工程で使用される露光装置は、マスクを支持するマスクステージと基板を支持する基板ステージとを有し、マスクステージ及び基板ステージを逐次移動しながらマスクのパターンを投影光学系を介して基板に転写するものである。従来より、上記基板ステージ及びマスクステージでは、ベース部材に対して可動部材を流体軸受(気体軸受、静圧軸受等)で非接触支持しつつリニアモータ等の駆動装置で可動部材を駆動する構成が採用されている。例えば、特許文献1には、流体軸受として、エアベアリングに関する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003−194059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
ベース部材にポアと称される凹部が存在する場合、この凹部上をエアパッドの流体吹出部が通過した際に、微少量ながらエアパッドが上下動して変位する、いわゆるパッド飛びという不測の挙動を示すことが判明している。また、凹部が存在する場合には、エアパッドの上下動以外にも、ステージが移動方向と交差する方向周りに変位する、いわゆるピッチング誤差が生じる可能性がある。
これらの挙動は、凹部の存在に起因する渦流れの変化、流体吹出部から吹き出される流体圧の変化に伴うモーメント剛性、及びエアパッドの負荷容量の変化等により生じるものと考えられている。
【0004】
このような挙動を示した場合、ステージの駆動特性、ひいては露光処理におけるパターン転写精度にも悪影響を及ぼす虞があるため、目視検査や顕微鏡検査を実施し、検出された凹部を埋める工程を設けることにより対処しているが、検査及び埋設に要する作業時間が多くなり生産性が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、ベース部材に凹部が存在している場合でも、不測の挙動を抑制できる流体軸受、流体ベアリング及びステージ装置並びに露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために本発明は、実施の形態を示す図1ないし図14に対応付けした以下の構成を採用している。
本発明の流体軸受は、第一部材(1)の第一面(10A)に形成された溝部(14)の内側に設けられた第一流体吹出部(11)と、前記溝部とは異なる前記第一面内の領域に設けられた第二流体吹出部(21、21A、21B)とを有することを特徴とするものである。
【0007】
従って、本発明の流体軸受では、第一流体吹出部(11)から吹き出した流体が溝を通って、対向する支持部材(第二部材、2、51)の支持面(第二面、2A、51A)との間に供給され、流体の圧力により第一面、第二面との間で隙間が形成されることで、摩擦抵抗が小さい状態で相対移動が可能になる。そして、この相対移動時に、支持面の凹部上を第一流体吹出部が通過した際には、渦流れの変化、流体圧の変化に伴うモーメント剛性、及び流体軸受の負荷容量の変化等が生じるが、第二流体吹出部(21、21A、21B)から吹き出した流体が支持部材(2、51)の支持面(2A、51A)との間に供給され、流体の圧力により第一面、第二面との間に隙間を形成するため、第一流体吹出部(11)で生じた圧力変化を緩和することができる。これにより、いわゆるパッド飛びという不測の挙動の発生を抑制することが可能になる。
【0008】
また、本発明の流体ベアリングは、先に記載の流体軸受を有する第一部材(1)と、前記第一部材の第一面(10A)と対向する第二面(51A)を有する第二部材(51)とを備えることを特徴とするものである。
従って、本発明の流体ベアリングでは、不測の挙動が生じることを抑制された状態で第一部材(1)が第二部材(51)の第二面(51A)に沿って小さな摩擦抵抗で相対移動することが可能になり、第一部材を所望の駆動特性で駆動することができる。
【0009】
そして、本発明のステージ装置は、移動ステージ(41、42、46)が支持部材(51)上を移動するステージ装置(50)であって、前記移動ステージの移動面(51A)に、先に記載の流体ベアリングが用いられていることを特徴とするものである。
従って、本発明のステージ装置では、不測の挙動が生じることを抑制された状態で移動ステージが支持部材(51)の移動面(51A)に沿って小さな摩擦抵抗で相対移動することが可能になり、移動ステージを所望の駆動特性で駆動することができる。
【0010】
そして、本発明の露光装置は、マスクステージ(MST)に保持されたマスク(M)のパターンを基板ステージ(PST)に保持された基板(P)に露光する露光装置(EX)であって、前記マスクステージと前記基板ステージとの少なくとも一方に、先に記載のステージ装置が用いられていることを特徴とするものである。
【0011】
従って、本発明の露光装置では、マスク(M)と基板(P)との少なくとも一方を、不測の挙動が生じることを抑制された状態で相対移動することが可能になり、マスク(M)と基板(P)との少なくとも一方を所望の駆動特性で駆動することができ、マスクのパターンを高精度に基板に転写することが可能になる。
なお、本発明をわかりやすく説明するために、一実施例を示す図面の符号に対応付けて説明したが、本発明が実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、ベース部材に凹部が存在してもパッド飛びやピッチング誤差等の挙動が生じることを抑制できる。また、本発明では、移動ステージを安定した駆動特性で駆動することができるとともに、生産の効率が低下することを防止できるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の流体軸受、流体ベアリング及びステージ装置並びに露光装置の実施の形態を、図1ないし図15を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係る流体軸受を示す概略斜視図、図2は流体軸受を示す平面図、図3は図1のA−A線に沿う部分断面図、図4は図1のB−B線に沿う部分断面図である。なお、以下の説明においては、流体軸受(静圧軸受)がエアを吹き出すものとして、適宜「エアパッド」と称する。
【0014】
図1において、エアパッド10は第一部材1の表面1Aに設けられている。エアパッド10の表面であるパッド面10A(パッド本体12及びブッシュ13の表面;第一面)と対向する位置には、第二部材2の第二面2Aが配置されている。このパッド面10Aには、平面視田の字状に絞り溝(溝部)14が形成されている。これら第一部材1及び第二部材2によりエアベアリング(流体ベアリング)が構成される。
また、エアパッド10には、図2に示すように、絞り溝14の内部に設けられた第一エア吹出口(第一流体吹出部)11と、パッド面10Aの絞り溝14に周囲を囲まれたリセス部に配置された4つの第二エア吹出口(第二流体吹出部)21A、21Bとが形成されている。
第一エア吹出口11は、パッド面10Aにおけるエアパッド10の重心に対応する位置(平面視で略中心位置)に配置されている。第二エア吹出口21A、21Bは、第一エア吹出口11を挟んで対称に対をなして配置されている。
【0015】
また、図3及び図4に示すように、エアパッド10は、パッド本体12と、パッド本体12とは別体のブッシュ13A、13Bとを備えている。パッド本体12及びブッシュ13を形成する材料としては、アルミナ、ジルコニア、及びプラスチックを用いることができる。また、パッド本体12及びブッシュ13は例えば射出成形法によって製造することができる。また、ブッシュ13(パッド本体12)を金属で形成した場合、例えばマイクロ放電加工法を用いることができる。もちろん、流路20全体をマイクロ放電加工法に基づいて形成してもよい。あるいは、ドリルを使って切削(穴あけ)してもよい。
【0016】
各ブッシュ13A、13Bは円筒形状であり、パッド本体12の中央部に形成された孔部12Hにそれぞれ配置されている。孔部12Hの形状(断面)とブッシュ13A、13Bの形状(断面)とはほぼ同じであり、ブッシュ13A、13Bは孔部12Hに嵌合しており、溝15に充填された接着剤によってパッド本体12に固定されている。円筒形状のブッシュ13A、13Bの内部には、その軸方向に延びる流路(オリフィス)20が形成されている。流路20の一端部はエア吹出口11、または21A、21Bに接続されている。また、これら第一エア吹出口11と第二エア吹出口21A、21Bとは、略同一の吹出特性でエアを吹き出すように、開口径、エア吹出量、エア圧等が同一量に調整されている。
【0017】
図5は、上述したエアパッド10を備えるXYステージの構成を示す斜視図である。
このXYステージ(ステージ装置)50は、定盤(第二部材、支持部材)51とXガイドバー30とエアスライド要素部材40とを備えている。Xガイドバー30は矩形状の定盤51の上面(第二面、移動面)51Aに設けられ、エアスライド要素部材40をX軸方向へガイドする。エアスライド要素部材40はX方向スライド部材とY方向スライド部材とを有する。
【0018】
X方向スライド部材は、移動部材(第一部材)41、42とYガイドバー43とを有する。Xガイドバー30に沿ってX軸方向へ移動する移動部材41は、移動部材42に平行であり、移動部材41と移動部材42とはそれぞれX方向へ延びる。
Yガイドバー43はY軸方向へ延び、Yガイドバー43の両端は移動部材41の中間部及び移動部材42の中間部にそれぞれ固定されている。すなわち、X方向スライド部材はほぼH形をしている。
移動部材41の下面及び移動部材42の下面には上述したエアパッド10がそれぞれ設けられ、エアパッド10のオリフィスから吐出される圧縮空気によって移動部材41及び移動部材42は、定盤51の上面51Aに対して移動自在に浮上して支持されている。
【0019】
Y方向スライド部材は一対の保持部材45とベース(第一部材)46とを有する。Y軸方向へ延びる一対の係合部材45はベース46の上面に一体に設けられ、一対の係合部材45によってガイド溝が形成されている。ガイド溝はYガイドバー43と係合し、係合部材45はYガイドバー43にガイドされてベース46とともにY軸方向へ移動する。
ベース46の下面には上述したエアパッド10が設けられ、エアパッド10のオリフィスから吐出される圧縮空気によってベース46は定盤51の上面51Aに対して移動自在に浮上して支持されている。
【0020】
続いて、上記の構成のXYステージ50において、移動部材41、42及びベース46が定盤51に対して相対移動する際のエアパッド10の作用について、図6乃至図9を参照して説明する。
ここでは、図6に示すように、定盤51の上面51Aにおいて、エアパッド10が移動する際の第一エア吹出口11の移動経路上に凹部(ポア)51Bが存在する場合について説明する。また、ここでは、図6(a)〜(c)に示すように、エアパッド10が図中左側から右側に移動する場合において、第一エア吹出口11が凹部51Bに達する前の状態を状態(1)、第一エア吹出口11が凹部51B上に位置する状態を状態(2)、第一エア吹出口11が凹部51B上を通り過ぎた後の状態を状態(3)とし、それぞれの状態において第一エア吹出口11及び第二エア吹出口21A、21Bの双方が設けられる場合と、第二エア吹出口21A、21Bが設けられず第一エア吹出口11のみが設けられる場合とについて説明する。
【0021】
なお、いずれの場合についても、凹部51Bは長さ(幅)が約200μm、深さが約100μm程度の大きさを有し、第一エア吹出口11及び第二エア吹出口21A、21Bは口径が約200μmで約0.5MPaの圧力でエアを給気し、給気されたエアは不図示の吸引装置により約0.1MPaの圧力で排気されるものとする。また、エアパッド10は定盤51に対して500mm/sの速度で移動するモデルを用い、各場合における、負荷容量、動的不釣合いモーメント、乱流エネルギについて説明する。
【0022】
(負荷容量)
図7は、上述した各状態(1)〜(3)におけるエアパッド10の負荷容量を示す図であり、図7(a)は第二エア吹出口21A、21Bが設けられず第一エア吹出口11のみが設けられる場合の第一エア吹出口11の負荷容量を示し、図7(b)は第一エア吹出口11及び第二エア吹出口21A、21Bの双方が設けられる場合の第二エア吹出口21Aの負荷容量、図7(c)は第二エア吹出口21Bの負荷容量、図7(d)は第一エア吹出口11の負荷容量を示す図である。ここで、図7(a)の縦軸のスケールと、図7(b)〜(d)の縦軸のスケールとは合わせてある。
【0023】
図7(a)に示す単数給気モデルの場合には、第一エア吹出口11が凹部51B上を通過する際にエアパッド10の負荷容量が低下するため、エアパッド10(従って、移動部材41、42及びベース46)はZ方向に変位することになる。
一方、第一エア吹出口11及び第二エア吹出口21A、21Bの双方を有する複数給気モデルの場合には、図7(b)に示すように、状態(1)から状態(2)にかけて第二エア吹出口21Aにおける負荷容量が低下し、図7(c)に示すように、状態(2)から状態(3)にかけて第二エア吹出口21Bにおける負荷容量が増加する。図7(a)と図7(d)とを比較して判るとおり、第一エア吹出口11に生じる負荷容量は、単数給気モデルでは大きく変化するのに対し、複数給気モデルではほとんど変化しない。つまり、状態(1)から状態(3)にかけて第一エア吹出口11に生じる負荷容量の変化を第二エア吹出口21A、21Bが負担することになり、図7(d)に示すように、第一エア吹出口11の負荷容量については図7(a)に示した単数給気モデルの場合と比較して変動が抑制される。
また、図7(a)と図7(b)、(d)とを比較して判るように、第二エア吹出口21A、21Bにおける負荷容量の変化も、複数給気モデルの方が単数給気モデルより小さい。つまり、複数給気モデルの方が負荷容量の変動が抑制されている。
【0024】
(動的不釣合いモーメント)
図8は、上述した各状態(1)〜(3)におけるエアパッド10の動的不釣合いモーメントを示す図であり、図8(a)は単数給気モデル場合の第一エア吹出口11モーメントを示し、図8(b)は複数給気モデルの場合の第二エア吹出口21Aのモーメント、図8(c)は第二エア吹出口21Bのモーメント、図8(d)は第一エア吹出口11のモーメントを示す図である。ここで、図8(a)の縦軸のスケールと、図8(b)〜(d)の縦軸のスケールとは合わせてある。
なお、これらの図におけるモーメント値は、図6中で時計回り方向を正の向きとして示している。
【0025】
図8(a)に示す単数給気モデルの場合には、第一エア吹出口11が凹部51B上を通過するまでは、エアパッド10には正の向きのモーメントが作用し、第一エア吹出口11が凹部51B上を通過した後は、負の向きのモーメントが作用する。
そして、複数給気モデルの場合には、図8(b)に示すように、状態(2)までは第二エア吹出口21Aに正の向きのモーメントが作用し、状態(2)以降は第二エア吹出口21Aにはモーメントが作用しない。
一方、図8(c)に示すように、第二エア吹出口21Bには、状態(2)まではモーメントが作用せず、状態(2)以降に負の向きのモーメントが作用する。
【0026】
つまり、状態(2)までにエアパッド10(第一エア吹出口11)に加わるモーメントは、第二エア吹出口21Aにおいて負担し、状態(2)以降にエアパッド10(第一エア吹出口11)加わるモーメントは、第二エア吹出口21Bにおいて負担することになり、図8(d)に示すように、第一エア吹出口11に作用するモーメントについては図8(a)に示したモーメントと比較して変動が大幅に抑制される。また、第二エア吹出口21A、21Bに作用するモーメントについても、図8(a)と図8(b)、(c)とを比較して判るように、複数給気モデルの場合のモーメントは、単数給気モデルの場合のモーメントの約1/2まで抑制される。
【0027】
(乱流エネルギ)
図9は、上述した各状態(1)〜(3)におけるエアパッド10に加わる乱流エネルギ量を示す図であり、図9(a)は単数給気モデルの場合の第一エア吹出口11に作用する乱流エネルギを示し、図9(b)は複数給気モデルの場合に第二エア吹出口21Aに作用する乱流エネルギ、図9(c)は複数給気モデルの場合に第二エア吹出口21Bに作用する乱流エネルギを示す図である。ここで、図9(a)の縦軸のスケールと、図9(b)〜(d)の縦軸のスケールとは合わせてある。
【0028】
図9(a)に示す単数給気モデルの場合には、状態(1)から状態(3)にかけて第一エア吹出口11が凹部51B上を通過する際にエアパッド10に対する乱流エネルギが低下するため、エアパッド10(従って、移動部材41、42及びベース46)はZ方向に変位することになる。
一方、複数給気モデルの場合には、図9(b)に示すように、状態(1)から状態(2)にかけて第二エア吹出口21Aに対する乱流エネルギが低下し、図9(c)に示すように、状態(2)から状態(3)にかけて第二エア吹出口21Bに対する乱流エネルギが増加する。つまり、状態(1)から状態(3)にかけて第一エア吹出口11に対する乱流エネルギの変化を第二エア吹出口21A、21Bが負担することになり、図9(d)に示すように、第一エア吹出口11に対する乱流エネルギについては図9(a)に示した単数給気モデルの場合と比較して変動が大幅に抑制される。
【0029】
以上、説明したように、本実施の形態では、エアパッド10が絞り溝14の内側に設けられた第一エア吹出口11に加えて、パッド面10Aに設けられた第二エア吹出口21A、21Bを有しているので、定盤51の上面51Aに凹部51Bが存在し、当該凹部51B上を第一エア吹出口11が通過した場合でも、負荷容量の変化、動的不釣合いモーメント、乱流エネルギの変動に起因して、パッド飛びやピッチング誤差等の挙動が生じることを抑制できる。
【0030】
従って、このようなエアパッド10を備えた本実施形態のXYステージ50では、エアパッド10が設けられた移動部材41、42及びベース46が不測の挙動を生じることなく、安定した駆動特性で駆動することができる。
また、本実施形態では、定盤51に凹部(ポア)が存在していても、移動ステージを安定して駆動することが可能なため、目視検査や顕微鏡検査により定盤51に存在する凹部を検出する工程や、検出した凹部を埋める工程を設ける必要がなくなり、XYステージ50を用いた生産の効率が低下することを防止できる。
【0031】
また、上記実施形態では、第二エア吹出口21A、21Bが第一エア吹出口11を挟んで対称に配置されているので、第一エア吹出口11に生じる可能性がある不測の挙動を安定して、且つ効果的に抑制することが可能になる。特に、本実施形態では、第一エア吹出口11がエアパッド11の重心に対応する位置に配置される場合、第一エア吹出口11に作用する不安定な挙動要因をより効果的に負担することが可能である。
さらに、本実施形態では、第一エア吹出口11及び第二エア吹出口21A、21Bにおいて、略同一の吹出特性でエアを吹き出す構成を採っているため、エア供給系を一系統で対応することが可能であり、装置の小型化及び低価格化に寄与できる。
【0032】
(第2実施形態)
図10は、エアパッド10の第2実施形態を示す平面図である。
上記第1実施形態におけるエアパッド10は、重心に対応する位置に第一エア吹出口11が設けられ、この第一エア吹出口11を挟んで対称に第二エア吹出口21A、21Bが配置される構成であってが、第2実施形態では、逆の配置構成を採る場合の例を用いて説明する。この図において、図2に示した第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を簡略化する。
【0033】
図10に示すように、エアパッド10のパッド面10Aには、左右の側縁に沿ってコ字状に絞り溝14が互いに分離して設けられている。また、エアパッド10のパッド面10Aの重心に対応する位置には、第二エア吹出口(第二流体吹出部)21が設けられている。そして、絞り溝14の内側には、第二エア吹出口21を挟んで対称に第一エア吹出口11、11がそれぞれ設けられている。
【0034】
上記の構成のエアパッド10では、例えばステージが大型化して第一エア吹出口11を複数設ける必要性が生じて、重心と対応する位置に配置しない場合であっても、第1実施形態と同様の作用・効果が得られ、定盤51の凹部の存在により、パッド飛びやピッチング誤差等の挙動が生じることを抑制できる。
【0035】
また、例えば図11に示すように、絞り溝14がパッド面10Aの重心Gを含む位置に形成され、第一エア吹出口11及び第二エア吹出口21A、21Bを双方とも重心Gに配置できない場合には、第二エア吹出口21A、21Bを重心Gを挟んで対称に配置することが好ましい。
これにより、第1、第2実施形態と同様の作用・効果が得られ、定盤51の凹部の存在により、パッド飛びやピッチング誤差等の挙動が生じることを抑制できる。
なお、パッド面10Aの重心に対応する位置を挟んで第二エア吹出口を対称に設ける場合には、上述したピッチング誤差を効果的に抑制するために、エアパッド10の相対移動方向で重心に対応する位置を挟んで対称に第二エア吹出口を設けることが好ましい。
【0036】
次に、本発明のエアパッド10の別の実施形態について説明する。以下の説明において、上述した実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略もしくは省略する。
図12は、表面1Aに複数のエアパッド10を設けられた第一部材1を示す平面図、図13は図12のB−B線に沿う断面図である。本実施形態において、エアパッド10のパッド面10Aには十文字状に絞り溝(表面絞り)14が形成されている。
【0037】
第1部材1の表面1Aは、第一エア吹出口11が設けられた絞り溝14及び第二エア吹出口21A、21Bを含むパッド面10Aと、そのパッド面10Aに隣り合う位置にパッド面10Aとは独立して設けられたスクイズ面24とを備えている。スクイズ面24は、エアパッド10の動特性を調整するために設けられたものである。パッド面10Aとスクイズ面24との間には溝部(凹部)26が設けられている。図12においては、エアパッド10は4つ(複数)設けられている。そして、各エアパッド10において、第一エア吹出口11は各エアパッド10の重心に対応する位置に設けられ、第二エア吹出口21A、21Bは、第一エア吹出口11を挟んて対称に配置されている。
【0038】
また、スクイズ面24は、エアパッド10のパッド面10Aに隣り合う位置に溝部26を介して複数設けられている。具体的には、スクイズ面24は、複数(4つ)のパッド面10Aのそれぞれに隣接する位置に設けられた平面視略L字状のスクイズ面24Aと、それらスクイズ面24Aどうしの間に配置された複数(4つ)のスクイズ面24Bとを備えている。
また、図13に示すように、エアパッド10のパッド面10Aとスクイズ面24とはほぼ面一(ほぼ同じ高さ)に設けられ、表面1Aと、これに対向する第二面2A(図1参照)との隙間が、パッド面10Aとスクイズ面24とで等しくなるように形成されている。また、パッド面10A及びスクイズ面24は平坦面である。
【0039】
また、図12に示すように、溝部26の複数の所定位置のそれぞれには、気体を吸引する吸引口25が設けられている。エアパッド10は、第一エア吹出口11からの気体の吹き出しによる反発力と吸引口25による吸引力との釣り合いにより、第一部材1と第二部材2との間に一定の隙間(エアギャップ)を保持し、第一部材1に対して第二部材2を非接触支持する。更に、溝部26の複数の所定位置のそれぞれには、大気解放用の孔部27が設けられている。
【0040】
吸引口25は、例えば真空源に接続され、吸引口25においてパッド面10Aに予圧を発生させることができる。これにより、エアパッド10は、第一エア吹出口11からの気体の吹き出しによる反発力と、吸引口25における吸引力との釣り合いによって、第一部材1と第二部材2との間に一定の隙間(ギャップ)を維持する予圧型の気体軸受を構成し、第一部材1に対して第二部材2を非接触支持する。
対向する第1面(1A、10A)と第2面(2A)との間に配置された気体の膜は、その膜厚方向に圧力を発生するスクイズ作用を発生する。本実施形態は、そのスクイズ作用を使って、エアパッド10の動特性を調整するものである。そして、そのスクイズ作用を発生させるために、エアパッド10のパッド面10Aに隣り合う位置に、パッド面10Aとほぼ面一のスクイズ面24を設けた構成である。そして、エアパッド10の動特性の目標値に応じて、そのスクイズ面24の大きさ(面積)や形状、あるいはパッド面10Aに対する高さ、あるいはスクイズ面24の表面荒さを最適化することで、所望の動特性を得ることができる。
【0041】
スクイズ面24の高さ、大きさ、あるいは表面荒さを調整することで、エアパッド10の動特性、具体的にはエアパッド10の剛性成分(バネ成分)及び減衰成分(ダンパ成分)、ひいては共振周波数及び減衰率を調整することができる。例えば、スクイズ面24の面積を大きくすることで、バネ成分及びダンパ成分を大きくすることができ、逆にスクイズ面24の面積を小さくすることで、バネ成分及びダンパ成分を小さくすることができる。また、スクイズ面24の高さを高くする(スクイズ面24と第2面との隙間を小さくする)ことで、バネ成分及びダンパ成分を大きくすることができる。このように、エアパッド10の使用状況などに応じてスクイズ面24を調整するだけで、所望の動特性(共振周波数、減衰率)を得ることができる。
このようなエアパッド10を用いる際にも、第一エア吹出口11に加えて、第二エア吹出口21A、21Bを設けることにより、凹部の存在により、パッド飛びやピッチング誤差等の挙動が生じることを抑制できる。
【0042】
次に、本発明に係るエアパッド10を備えたステージ装置及び露光装置について、図14を参照して説明する。図14は本発明に係る露光装置の一実施形態を示す概略構成図である。本実施形態における露光装置EXは、マスクMと感光性の基板Pとを同期移動しつつマスクMに設けられているパターンを投影光学系PLを介して基板P上に転写する所謂スキャニングステッパである。以下の説明において、投影光学系PLの光軸AXと一致する方向をZ軸方向、Z軸方向に垂直な平面内における前記同期移動方向(走査方向)をY軸方向、Z軸方向及びY軸方向と垂直な方向(非走査方向)をX軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。なお、ここでいう「基板」は半導体ウエハ上に感光性材料であるフォトレジストを塗布したものを含み、「マスク」は基板上に縮小投影されるデバイスパターンを形成されたレチクルを含む。
【0043】
図14において、露光装置EXは、マスクMを保持して移動可能なマスクステージMSTと、基板Pを保持して移動可能な基板ステージPSTと、マスクステージMSTに保持されたマスクMを露光光ELで照明する照明光学系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターンの像を基板ステージPSTに保持された基板Pに投影する投影光学系PLとを備えている。投影光学系PLは、例えば1/4又は1/5の投影倍率を有する縮小系である。なお、投影光学系PLとしては等倍系あるいは拡大系のいずれでもよい。マスクステージMSTは、上面に案内面が形成されたマスク定盤(支持部材)103上を移動可能に設けられている。マスクステージMSTの下面はマスク定盤103の案内面に対向している。基板ステージPSTは基板定盤105上を移動可能に設けられている。基板定盤105は、床面に設置されたベースプレート101上に防振ユニット108を介して支持されている。ベースプレート101上にはメインコラム102が設けられている。メインコラム102上には、照明光学系ILを支持する支持コラム109が設けられている。
また、メインコラム102は、内側に向けて突出する上側段部102A及び下側段部102Bを備えている。マスク定盤103はメインコラム102の上側段部102A上に防振ユニット106を介して支持されている。投影光学系PLを構成する複数の光学素子は鏡筒PKで保持されている。投影光学系PL(鏡筒PK)は鏡筒定盤104に支持されている。鏡筒定盤104はメインコラム102の下側段部102B上に防振ユニット107を介して支持されている。
【0044】
照明光学系ILは、マスクステージMSTに保持されたマスクMを露光光ELで照明するものである。露光光ELとしては、例えば水銀ランプから射出される紫外域の輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)や、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)及びF2 レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)などが用いられる。
【0045】
マスクステージMSTは、マスクMを保持して移動可能に設けられている。マスクステージMSTの底面には複数のエアパッド10が設けられており、マスクステージMSTはエアパッド10によりマスク定盤103の支持面(第二面)103Aに対して移動可能に非接触支持されている。マスクステージMST及びマスク定盤103のそれぞれには、マスクMをパターン像が通過可能な開口部114A、114Bが設けられている。
マスクステージMSTは、マスク定盤103上に設けられたマスク粗動ステージMST1と、マスク粗動ステージMST1上に設けられたマスク微動ステージMST2と、マスク定盤103上において粗動ステージMST1をY軸方向に所定ストロークで移動可能な一対のYリニアモータ(不図示)と、Y軸方向に移動する粗動ステージMST1を案内する一対のYガイド部111、111とを備えている。
【0046】
基板ステージPSTは基板Pを保持して移動可能に設けられており、基板Pを保持する基板ホルダPHを有している。基板ステージPSTの底面には複数のエアパッド10が設けられている。基板ステージPSTはエアパッド10により上面に案内面が形成された基板定盤(支持部材)105に対して移動可能に非接触支持されている。基板ステージPSTの下面は基板定盤105の案内面(第二面)105Aに対向している。基板ステージPSTは、基板Pを保持した状態で、基板定盤105上をXY平面に沿った2次元方向に移動可能である。基板ステージPSTは、Xガイドステージ120によりX軸方向への移動を案内される。また、基板ステージPSTは、Xガイドステージ120に設けられたXリニアモータ121によりX軸方向に移動する。また、Xガイドステージ120は、ベースプレート101上に設けられた側面視略L字状の支持部材123の上端部のガイド部123BによりY軸方向への移動を案内される。ガイド部123B(支持部材123)はXガイドステージ120の両端部のそれぞれに対応する位置に設けられており、Xガイドステージ120の両端部のそれぞれには、ガイド部123Bに対応する被ガイド部124が設けられている。ガイド部123Bと被ガイド部124との間にはエアパッド10が介在しており、被ガイド部124はガイド部123Bに対して非接触支持されている。基板ステージPSTは、Yリニアモータ122の駆動により、Xガイドステージ120とともにY軸方向へ移動する。
【0047】
本実施形態においては、マスクステージMST及び基板ステージPSTに、本発明に係るエアパッド10を用いたので、パッド飛びやピッチング誤差等の挙動が生じることを抑制できる。従って、このようなエアパッド10を備えたマスクステージMST、基板ステージPSTでは、不測の挙動を生じることなく、安定した駆動特性で駆動することができ、ステージの移動精度や位置決め精度等が向上されているので、精度良く露光することができる。
【0048】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0049】
例えば、上述した実施形態では、エアパッド10はパッド本体12とブッシュ13とを組み合わせた構成であり、流路20はブッシュ13の内部に形成された構成であるが、ブッシュ13を設けずにパッド本体12のみによって構成してもよい。その場合、パッド本体12の内部に流路20が形成されるとともにそのパッド本体12の表面に流路20に接続する第一エア吹出口11を形成すればよい。
また、上記実施形態では、第二エア吹出口21A、21Bを絞り溝14に周囲を囲まれたリセス部に設ける構成としたが、これに限定されるものではなく、パッド面10Aで絞り溝14よりも外側のランド面に設ける構成としてもよい。さらに、第二エア吹出口の配置としては、必ずしもエアパッド10の重心と対応する位置を挟んで対称にする必要はなく、例えば三角形の頂点となる位置に第二エア吹出口を配置してもよい。この場合、この三角形の重心と、パッド面10Aにおけるエアパッド10の重心と対応する位置とが合致させることが好ましい。
【0050】
また、上記実施形態では、流体パッドとしてエアパッドを用いる例で説明したが、使用する流体としては、エアに限定されるものではなく、他の気体、例えば窒素やヘリウム等、光化学的に不活性な気体を用いる構成としてもよい。
また、上記実施形態では、本発明に係るエアパッドを用いたステージ装置を露光装置に適用するものとして説明したが、これに限定されるものではなく、移動ステージを有する工作機械にも適用可能である。
【0051】
なお、上記実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス用の半導体ウエハのみならず、液晶ディスプレイデバイス用のガラス基板や、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
【0052】
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置にも適用することができる。
露光装置EXの種類としては、ウエハに半導体デバイスパターンを露光する半導体デバイス製造用の露光装置に限られず、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを露光する液晶表示素子製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)あるいはマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
【0053】
また、露光用照明光の光源として、超高圧水銀ランプから発生する輝線(g線(436nm)、h線(404.7nm)、i線(365nm))、KrFエキシマレーザ(248nm)、ArFエキシマレーザ(193nm)、F2 レーザ(157nm)のみならず、X線や電子線などの荷電粒子線を用いることができる。例えば、電子線を用いる場合には電子銃として、熱電子放射型のランタンヘキサボライト(LaB6 )、タンタル(Ta)を用いることができる。さらに、電子線を用いる場合は、マスクMを用いる構成としてもよいし、マスクMを用いずに直接ウエハ上にパターンを形成する構成としてもよい。また、YAGレーザや半導体レーザ等の高周波などを用いてもよい。
【0054】
投影光学系PLとしては、エキシマレーザなどの遠紫外線を用いる場合は硝材として石英や蛍石などの遠紫外線を透過する材料を用い、F2 レーザやX線を用いる場合は反射屈折系または屈折系の光学系にし(マスクMも反射型タイプのものを用いる)、また電子線を用いる場合には光学系として電子レンズ及び偏向器からなる電子光学系を用いればよい。なお、電子線が通過する光路は、真空状態にすることはいうまでもない。また、投影光学系PLを用いることなく、マスクMと基板Pとを密接させてマスクMのパターンを露光するプロキシミティ露光装置にも適用可能である。
【0055】
上記実施形態のように基板ステージPSTやマスクステージMSTにリニアモータを用いる場合においてエアベアリングを用いたエア浮上型に限られず、ローレンツ力又はリアクタンス力を用いた磁気浮上型を用いてもよい。また、各ステージPST、MSTは、ガイドに沿って移動するタイプでもよく、ガイドを設けないガイドレスタイプであってもよい。
【0056】
基板ステージPSTの移動により発生する反力は、特開平8−166475号公報に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。また、マスクステージMSTの移動により発生する反力は、特開平8−330224号公報に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。
【0057】
以上のように、本願実施形態の露光装置EXは、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度及びクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0058】
半導体デバイスは、図15に示すように、デバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、前述した実施形態の露光装置EXによりマスクのパターンを基板に露光する基板処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】第1実施形態に係る流体軸受を示す概略斜視図である。
【図2】流体軸受を示す平面図である。
【図3】図1のA−A線に沿う部分断面図である。
【図4】図1のB−B線に沿う部分断面図である。
【図5】エアパッドを備えるXYステージの構成を示す斜視図である。
【図6】エアパッドが定盤上を移動する図である。
【図7】エアパッドの負荷容量を示す図である。
【図8】エアパッドの動的不釣合いモーメントを示す図である。
【図9】エアパッドに加わる乱流エネルギ量を示す図である。
【図10】エアパッドの第2実施形態を示す平面図である。
【図11】エアパッドの別形態を示す平面図である。
【図12】エアパッドの別の実施形態を示す平面図である。
【図13】図12のB−B線断面図である。
【図14】本発明の露光装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図15】半導体デバイスの製造工程の一例を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0060】
EX…露光装置、 M…マスク(レチクル)、 MST…マスクステージ、 P…基板(ウエハ)、 PST…基板ステージ、 1…第一部材、 2…第二部材、 2A…第二面、 10…エアパッド(流体軸受)、 10A…パッド面(第一面)、 11…第一エア吹出口(第一流体吹出部)、 14…絞り溝(溝部)、 21、21A、21B…第二エア吹出口(第二流体吹出部)、 41、42…移動部材(第一部材)、 46…ベース(第一部材)、 50…XYステージ(ステージ装置)、 51…定盤(第二部材、支持部材)、 51A…上面(第二面、移動面)、 103…マスク定盤(支持部材)、 105…基板定盤(支持部材)、 105A…案内面(第二面)
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体軸受、流体ベアリング及びステージ装置並びに露光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや液晶表示デバイスは、マスク上に形成されたパターンを感光性の基板上に転写する、所謂フォトリソグラフィの手法により製造される。このフォトリソグラフィ工程で使用される露光装置は、マスクを支持するマスクステージと基板を支持する基板ステージとを有し、マスクステージ及び基板ステージを逐次移動しながらマスクのパターンを投影光学系を介して基板に転写するものである。従来より、上記基板ステージ及びマスクステージでは、ベース部材に対して可動部材を流体軸受(気体軸受、静圧軸受等)で非接触支持しつつリニアモータ等の駆動装置で可動部材を駆動する構成が採用されている。例えば、特許文献1には、流体軸受として、エアベアリングに関する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003−194059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
ベース部材にポアと称される凹部が存在する場合、この凹部上をエアパッドの流体吹出部が通過した際に、微少量ながらエアパッドが上下動して変位する、いわゆるパッド飛びという不測の挙動を示すことが判明している。また、凹部が存在する場合には、エアパッドの上下動以外にも、ステージが移動方向と交差する方向周りに変位する、いわゆるピッチング誤差が生じる可能性がある。
これらの挙動は、凹部の存在に起因する渦流れの変化、流体吹出部から吹き出される流体圧の変化に伴うモーメント剛性、及びエアパッドの負荷容量の変化等により生じるものと考えられている。
【0004】
このような挙動を示した場合、ステージの駆動特性、ひいては露光処理におけるパターン転写精度にも悪影響を及ぼす虞があるため、目視検査や顕微鏡検査を実施し、検出された凹部を埋める工程を設けることにより対処しているが、検査及び埋設に要する作業時間が多くなり生産性が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、ベース部材に凹部が存在している場合でも、不測の挙動を抑制できる流体軸受、流体ベアリング及びステージ装置並びに露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために本発明は、実施の形態を示す図1ないし図14に対応付けした以下の構成を採用している。
本発明の流体軸受は、第一部材(1)の第一面(10A)に形成された溝部(14)の内側に設けられた第一流体吹出部(11)と、前記溝部とは異なる前記第一面内の領域に設けられた第二流体吹出部(21、21A、21B)とを有することを特徴とするものである。
【0007】
従って、本発明の流体軸受では、第一流体吹出部(11)から吹き出した流体が溝を通って、対向する支持部材(第二部材、2、51)の支持面(第二面、2A、51A)との間に供給され、流体の圧力により第一面、第二面との間で隙間が形成されることで、摩擦抵抗が小さい状態で相対移動が可能になる。そして、この相対移動時に、支持面の凹部上を第一流体吹出部が通過した際には、渦流れの変化、流体圧の変化に伴うモーメント剛性、及び流体軸受の負荷容量の変化等が生じるが、第二流体吹出部(21、21A、21B)から吹き出した流体が支持部材(2、51)の支持面(2A、51A)との間に供給され、流体の圧力により第一面、第二面との間に隙間を形成するため、第一流体吹出部(11)で生じた圧力変化を緩和することができる。これにより、いわゆるパッド飛びという不測の挙動の発生を抑制することが可能になる。
【0008】
また、本発明の流体ベアリングは、先に記載の流体軸受を有する第一部材(1)と、前記第一部材の第一面(10A)と対向する第二面(51A)を有する第二部材(51)とを備えることを特徴とするものである。
従って、本発明の流体ベアリングでは、不測の挙動が生じることを抑制された状態で第一部材(1)が第二部材(51)の第二面(51A)に沿って小さな摩擦抵抗で相対移動することが可能になり、第一部材を所望の駆動特性で駆動することができる。
【0009】
そして、本発明のステージ装置は、移動ステージ(41、42、46)が支持部材(51)上を移動するステージ装置(50)であって、前記移動ステージの移動面(51A)に、先に記載の流体ベアリングが用いられていることを特徴とするものである。
従って、本発明のステージ装置では、不測の挙動が生じることを抑制された状態で移動ステージが支持部材(51)の移動面(51A)に沿って小さな摩擦抵抗で相対移動することが可能になり、移動ステージを所望の駆動特性で駆動することができる。
【0010】
そして、本発明の露光装置は、マスクステージ(MST)に保持されたマスク(M)のパターンを基板ステージ(PST)に保持された基板(P)に露光する露光装置(EX)であって、前記マスクステージと前記基板ステージとの少なくとも一方に、先に記載のステージ装置が用いられていることを特徴とするものである。
【0011】
従って、本発明の露光装置では、マスク(M)と基板(P)との少なくとも一方を、不測の挙動が生じることを抑制された状態で相対移動することが可能になり、マスク(M)と基板(P)との少なくとも一方を所望の駆動特性で駆動することができ、マスクのパターンを高精度に基板に転写することが可能になる。
なお、本発明をわかりやすく説明するために、一実施例を示す図面の符号に対応付けて説明したが、本発明が実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、ベース部材に凹部が存在してもパッド飛びやピッチング誤差等の挙動が生じることを抑制できる。また、本発明では、移動ステージを安定した駆動特性で駆動することができるとともに、生産の効率が低下することを防止できるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の流体軸受、流体ベアリング及びステージ装置並びに露光装置の実施の形態を、図1ないし図15を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係る流体軸受を示す概略斜視図、図2は流体軸受を示す平面図、図3は図1のA−A線に沿う部分断面図、図4は図1のB−B線に沿う部分断面図である。なお、以下の説明においては、流体軸受(静圧軸受)がエアを吹き出すものとして、適宜「エアパッド」と称する。
【0014】
図1において、エアパッド10は第一部材1の表面1Aに設けられている。エアパッド10の表面であるパッド面10A(パッド本体12及びブッシュ13の表面;第一面)と対向する位置には、第二部材2の第二面2Aが配置されている。このパッド面10Aには、平面視田の字状に絞り溝(溝部)14が形成されている。これら第一部材1及び第二部材2によりエアベアリング(流体ベアリング)が構成される。
また、エアパッド10には、図2に示すように、絞り溝14の内部に設けられた第一エア吹出口(第一流体吹出部)11と、パッド面10Aの絞り溝14に周囲を囲まれたリセス部に配置された4つの第二エア吹出口(第二流体吹出部)21A、21Bとが形成されている。
第一エア吹出口11は、パッド面10Aにおけるエアパッド10の重心に対応する位置(平面視で略中心位置)に配置されている。第二エア吹出口21A、21Bは、第一エア吹出口11を挟んで対称に対をなして配置されている。
【0015】
また、図3及び図4に示すように、エアパッド10は、パッド本体12と、パッド本体12とは別体のブッシュ13A、13Bとを備えている。パッド本体12及びブッシュ13を形成する材料としては、アルミナ、ジルコニア、及びプラスチックを用いることができる。また、パッド本体12及びブッシュ13は例えば射出成形法によって製造することができる。また、ブッシュ13(パッド本体12)を金属で形成した場合、例えばマイクロ放電加工法を用いることができる。もちろん、流路20全体をマイクロ放電加工法に基づいて形成してもよい。あるいは、ドリルを使って切削(穴あけ)してもよい。
【0016】
各ブッシュ13A、13Bは円筒形状であり、パッド本体12の中央部に形成された孔部12Hにそれぞれ配置されている。孔部12Hの形状(断面)とブッシュ13A、13Bの形状(断面)とはほぼ同じであり、ブッシュ13A、13Bは孔部12Hに嵌合しており、溝15に充填された接着剤によってパッド本体12に固定されている。円筒形状のブッシュ13A、13Bの内部には、その軸方向に延びる流路(オリフィス)20が形成されている。流路20の一端部はエア吹出口11、または21A、21Bに接続されている。また、これら第一エア吹出口11と第二エア吹出口21A、21Bとは、略同一の吹出特性でエアを吹き出すように、開口径、エア吹出量、エア圧等が同一量に調整されている。
【0017】
図5は、上述したエアパッド10を備えるXYステージの構成を示す斜視図である。
このXYステージ(ステージ装置)50は、定盤(第二部材、支持部材)51とXガイドバー30とエアスライド要素部材40とを備えている。Xガイドバー30は矩形状の定盤51の上面(第二面、移動面)51Aに設けられ、エアスライド要素部材40をX軸方向へガイドする。エアスライド要素部材40はX方向スライド部材とY方向スライド部材とを有する。
【0018】
X方向スライド部材は、移動部材(第一部材)41、42とYガイドバー43とを有する。Xガイドバー30に沿ってX軸方向へ移動する移動部材41は、移動部材42に平行であり、移動部材41と移動部材42とはそれぞれX方向へ延びる。
Yガイドバー43はY軸方向へ延び、Yガイドバー43の両端は移動部材41の中間部及び移動部材42の中間部にそれぞれ固定されている。すなわち、X方向スライド部材はほぼH形をしている。
移動部材41の下面及び移動部材42の下面には上述したエアパッド10がそれぞれ設けられ、エアパッド10のオリフィスから吐出される圧縮空気によって移動部材41及び移動部材42は、定盤51の上面51Aに対して移動自在に浮上して支持されている。
【0019】
Y方向スライド部材は一対の保持部材45とベース(第一部材)46とを有する。Y軸方向へ延びる一対の係合部材45はベース46の上面に一体に設けられ、一対の係合部材45によってガイド溝が形成されている。ガイド溝はYガイドバー43と係合し、係合部材45はYガイドバー43にガイドされてベース46とともにY軸方向へ移動する。
ベース46の下面には上述したエアパッド10が設けられ、エアパッド10のオリフィスから吐出される圧縮空気によってベース46は定盤51の上面51Aに対して移動自在に浮上して支持されている。
【0020】
続いて、上記の構成のXYステージ50において、移動部材41、42及びベース46が定盤51に対して相対移動する際のエアパッド10の作用について、図6乃至図9を参照して説明する。
ここでは、図6に示すように、定盤51の上面51Aにおいて、エアパッド10が移動する際の第一エア吹出口11の移動経路上に凹部(ポア)51Bが存在する場合について説明する。また、ここでは、図6(a)〜(c)に示すように、エアパッド10が図中左側から右側に移動する場合において、第一エア吹出口11が凹部51Bに達する前の状態を状態(1)、第一エア吹出口11が凹部51B上に位置する状態を状態(2)、第一エア吹出口11が凹部51B上を通り過ぎた後の状態を状態(3)とし、それぞれの状態において第一エア吹出口11及び第二エア吹出口21A、21Bの双方が設けられる場合と、第二エア吹出口21A、21Bが設けられず第一エア吹出口11のみが設けられる場合とについて説明する。
【0021】
なお、いずれの場合についても、凹部51Bは長さ(幅)が約200μm、深さが約100μm程度の大きさを有し、第一エア吹出口11及び第二エア吹出口21A、21Bは口径が約200μmで約0.5MPaの圧力でエアを給気し、給気されたエアは不図示の吸引装置により約0.1MPaの圧力で排気されるものとする。また、エアパッド10は定盤51に対して500mm/sの速度で移動するモデルを用い、各場合における、負荷容量、動的不釣合いモーメント、乱流エネルギについて説明する。
【0022】
(負荷容量)
図7は、上述した各状態(1)〜(3)におけるエアパッド10の負荷容量を示す図であり、図7(a)は第二エア吹出口21A、21Bが設けられず第一エア吹出口11のみが設けられる場合の第一エア吹出口11の負荷容量を示し、図7(b)は第一エア吹出口11及び第二エア吹出口21A、21Bの双方が設けられる場合の第二エア吹出口21Aの負荷容量、図7(c)は第二エア吹出口21Bの負荷容量、図7(d)は第一エア吹出口11の負荷容量を示す図である。ここで、図7(a)の縦軸のスケールと、図7(b)〜(d)の縦軸のスケールとは合わせてある。
【0023】
図7(a)に示す単数給気モデルの場合には、第一エア吹出口11が凹部51B上を通過する際にエアパッド10の負荷容量が低下するため、エアパッド10(従って、移動部材41、42及びベース46)はZ方向に変位することになる。
一方、第一エア吹出口11及び第二エア吹出口21A、21Bの双方を有する複数給気モデルの場合には、図7(b)に示すように、状態(1)から状態(2)にかけて第二エア吹出口21Aにおける負荷容量が低下し、図7(c)に示すように、状態(2)から状態(3)にかけて第二エア吹出口21Bにおける負荷容量が増加する。図7(a)と図7(d)とを比較して判るとおり、第一エア吹出口11に生じる負荷容量は、単数給気モデルでは大きく変化するのに対し、複数給気モデルではほとんど変化しない。つまり、状態(1)から状態(3)にかけて第一エア吹出口11に生じる負荷容量の変化を第二エア吹出口21A、21Bが負担することになり、図7(d)に示すように、第一エア吹出口11の負荷容量については図7(a)に示した単数給気モデルの場合と比較して変動が抑制される。
また、図7(a)と図7(b)、(d)とを比較して判るように、第二エア吹出口21A、21Bにおける負荷容量の変化も、複数給気モデルの方が単数給気モデルより小さい。つまり、複数給気モデルの方が負荷容量の変動が抑制されている。
【0024】
(動的不釣合いモーメント)
図8は、上述した各状態(1)〜(3)におけるエアパッド10の動的不釣合いモーメントを示す図であり、図8(a)は単数給気モデル場合の第一エア吹出口11モーメントを示し、図8(b)は複数給気モデルの場合の第二エア吹出口21Aのモーメント、図8(c)は第二エア吹出口21Bのモーメント、図8(d)は第一エア吹出口11のモーメントを示す図である。ここで、図8(a)の縦軸のスケールと、図8(b)〜(d)の縦軸のスケールとは合わせてある。
なお、これらの図におけるモーメント値は、図6中で時計回り方向を正の向きとして示している。
【0025】
図8(a)に示す単数給気モデルの場合には、第一エア吹出口11が凹部51B上を通過するまでは、エアパッド10には正の向きのモーメントが作用し、第一エア吹出口11が凹部51B上を通過した後は、負の向きのモーメントが作用する。
そして、複数給気モデルの場合には、図8(b)に示すように、状態(2)までは第二エア吹出口21Aに正の向きのモーメントが作用し、状態(2)以降は第二エア吹出口21Aにはモーメントが作用しない。
一方、図8(c)に示すように、第二エア吹出口21Bには、状態(2)まではモーメントが作用せず、状態(2)以降に負の向きのモーメントが作用する。
【0026】
つまり、状態(2)までにエアパッド10(第一エア吹出口11)に加わるモーメントは、第二エア吹出口21Aにおいて負担し、状態(2)以降にエアパッド10(第一エア吹出口11)加わるモーメントは、第二エア吹出口21Bにおいて負担することになり、図8(d)に示すように、第一エア吹出口11に作用するモーメントについては図8(a)に示したモーメントと比較して変動が大幅に抑制される。また、第二エア吹出口21A、21Bに作用するモーメントについても、図8(a)と図8(b)、(c)とを比較して判るように、複数給気モデルの場合のモーメントは、単数給気モデルの場合のモーメントの約1/2まで抑制される。
【0027】
(乱流エネルギ)
図9は、上述した各状態(1)〜(3)におけるエアパッド10に加わる乱流エネルギ量を示す図であり、図9(a)は単数給気モデルの場合の第一エア吹出口11に作用する乱流エネルギを示し、図9(b)は複数給気モデルの場合に第二エア吹出口21Aに作用する乱流エネルギ、図9(c)は複数給気モデルの場合に第二エア吹出口21Bに作用する乱流エネルギを示す図である。ここで、図9(a)の縦軸のスケールと、図9(b)〜(d)の縦軸のスケールとは合わせてある。
【0028】
図9(a)に示す単数給気モデルの場合には、状態(1)から状態(3)にかけて第一エア吹出口11が凹部51B上を通過する際にエアパッド10に対する乱流エネルギが低下するため、エアパッド10(従って、移動部材41、42及びベース46)はZ方向に変位することになる。
一方、複数給気モデルの場合には、図9(b)に示すように、状態(1)から状態(2)にかけて第二エア吹出口21Aに対する乱流エネルギが低下し、図9(c)に示すように、状態(2)から状態(3)にかけて第二エア吹出口21Bに対する乱流エネルギが増加する。つまり、状態(1)から状態(3)にかけて第一エア吹出口11に対する乱流エネルギの変化を第二エア吹出口21A、21Bが負担することになり、図9(d)に示すように、第一エア吹出口11に対する乱流エネルギについては図9(a)に示した単数給気モデルの場合と比較して変動が大幅に抑制される。
【0029】
以上、説明したように、本実施の形態では、エアパッド10が絞り溝14の内側に設けられた第一エア吹出口11に加えて、パッド面10Aに設けられた第二エア吹出口21A、21Bを有しているので、定盤51の上面51Aに凹部51Bが存在し、当該凹部51B上を第一エア吹出口11が通過した場合でも、負荷容量の変化、動的不釣合いモーメント、乱流エネルギの変動に起因して、パッド飛びやピッチング誤差等の挙動が生じることを抑制できる。
【0030】
従って、このようなエアパッド10を備えた本実施形態のXYステージ50では、エアパッド10が設けられた移動部材41、42及びベース46が不測の挙動を生じることなく、安定した駆動特性で駆動することができる。
また、本実施形態では、定盤51に凹部(ポア)が存在していても、移動ステージを安定して駆動することが可能なため、目視検査や顕微鏡検査により定盤51に存在する凹部を検出する工程や、検出した凹部を埋める工程を設ける必要がなくなり、XYステージ50を用いた生産の効率が低下することを防止できる。
【0031】
また、上記実施形態では、第二エア吹出口21A、21Bが第一エア吹出口11を挟んで対称に配置されているので、第一エア吹出口11に生じる可能性がある不測の挙動を安定して、且つ効果的に抑制することが可能になる。特に、本実施形態では、第一エア吹出口11がエアパッド11の重心に対応する位置に配置される場合、第一エア吹出口11に作用する不安定な挙動要因をより効果的に負担することが可能である。
さらに、本実施形態では、第一エア吹出口11及び第二エア吹出口21A、21Bにおいて、略同一の吹出特性でエアを吹き出す構成を採っているため、エア供給系を一系統で対応することが可能であり、装置の小型化及び低価格化に寄与できる。
【0032】
(第2実施形態)
図10は、エアパッド10の第2実施形態を示す平面図である。
上記第1実施形態におけるエアパッド10は、重心に対応する位置に第一エア吹出口11が設けられ、この第一エア吹出口11を挟んで対称に第二エア吹出口21A、21Bが配置される構成であってが、第2実施形態では、逆の配置構成を採る場合の例を用いて説明する。この図において、図2に示した第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を簡略化する。
【0033】
図10に示すように、エアパッド10のパッド面10Aには、左右の側縁に沿ってコ字状に絞り溝14が互いに分離して設けられている。また、エアパッド10のパッド面10Aの重心に対応する位置には、第二エア吹出口(第二流体吹出部)21が設けられている。そして、絞り溝14の内側には、第二エア吹出口21を挟んで対称に第一エア吹出口11、11がそれぞれ設けられている。
【0034】
上記の構成のエアパッド10では、例えばステージが大型化して第一エア吹出口11を複数設ける必要性が生じて、重心と対応する位置に配置しない場合であっても、第1実施形態と同様の作用・効果が得られ、定盤51の凹部の存在により、パッド飛びやピッチング誤差等の挙動が生じることを抑制できる。
【0035】
また、例えば図11に示すように、絞り溝14がパッド面10Aの重心Gを含む位置に形成され、第一エア吹出口11及び第二エア吹出口21A、21Bを双方とも重心Gに配置できない場合には、第二エア吹出口21A、21Bを重心Gを挟んで対称に配置することが好ましい。
これにより、第1、第2実施形態と同様の作用・効果が得られ、定盤51の凹部の存在により、パッド飛びやピッチング誤差等の挙動が生じることを抑制できる。
なお、パッド面10Aの重心に対応する位置を挟んで第二エア吹出口を対称に設ける場合には、上述したピッチング誤差を効果的に抑制するために、エアパッド10の相対移動方向で重心に対応する位置を挟んで対称に第二エア吹出口を設けることが好ましい。
【0036】
次に、本発明のエアパッド10の別の実施形態について説明する。以下の説明において、上述した実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略もしくは省略する。
図12は、表面1Aに複数のエアパッド10を設けられた第一部材1を示す平面図、図13は図12のB−B線に沿う断面図である。本実施形態において、エアパッド10のパッド面10Aには十文字状に絞り溝(表面絞り)14が形成されている。
【0037】
第1部材1の表面1Aは、第一エア吹出口11が設けられた絞り溝14及び第二エア吹出口21A、21Bを含むパッド面10Aと、そのパッド面10Aに隣り合う位置にパッド面10Aとは独立して設けられたスクイズ面24とを備えている。スクイズ面24は、エアパッド10の動特性を調整するために設けられたものである。パッド面10Aとスクイズ面24との間には溝部(凹部)26が設けられている。図12においては、エアパッド10は4つ(複数)設けられている。そして、各エアパッド10において、第一エア吹出口11は各エアパッド10の重心に対応する位置に設けられ、第二エア吹出口21A、21Bは、第一エア吹出口11を挟んて対称に配置されている。
【0038】
また、スクイズ面24は、エアパッド10のパッド面10Aに隣り合う位置に溝部26を介して複数設けられている。具体的には、スクイズ面24は、複数(4つ)のパッド面10Aのそれぞれに隣接する位置に設けられた平面視略L字状のスクイズ面24Aと、それらスクイズ面24Aどうしの間に配置された複数(4つ)のスクイズ面24Bとを備えている。
また、図13に示すように、エアパッド10のパッド面10Aとスクイズ面24とはほぼ面一(ほぼ同じ高さ)に設けられ、表面1Aと、これに対向する第二面2A(図1参照)との隙間が、パッド面10Aとスクイズ面24とで等しくなるように形成されている。また、パッド面10A及びスクイズ面24は平坦面である。
【0039】
また、図12に示すように、溝部26の複数の所定位置のそれぞれには、気体を吸引する吸引口25が設けられている。エアパッド10は、第一エア吹出口11からの気体の吹き出しによる反発力と吸引口25による吸引力との釣り合いにより、第一部材1と第二部材2との間に一定の隙間(エアギャップ)を保持し、第一部材1に対して第二部材2を非接触支持する。更に、溝部26の複数の所定位置のそれぞれには、大気解放用の孔部27が設けられている。
【0040】
吸引口25は、例えば真空源に接続され、吸引口25においてパッド面10Aに予圧を発生させることができる。これにより、エアパッド10は、第一エア吹出口11からの気体の吹き出しによる反発力と、吸引口25における吸引力との釣り合いによって、第一部材1と第二部材2との間に一定の隙間(ギャップ)を維持する予圧型の気体軸受を構成し、第一部材1に対して第二部材2を非接触支持する。
対向する第1面(1A、10A)と第2面(2A)との間に配置された気体の膜は、その膜厚方向に圧力を発生するスクイズ作用を発生する。本実施形態は、そのスクイズ作用を使って、エアパッド10の動特性を調整するものである。そして、そのスクイズ作用を発生させるために、エアパッド10のパッド面10Aに隣り合う位置に、パッド面10Aとほぼ面一のスクイズ面24を設けた構成である。そして、エアパッド10の動特性の目標値に応じて、そのスクイズ面24の大きさ(面積)や形状、あるいはパッド面10Aに対する高さ、あるいはスクイズ面24の表面荒さを最適化することで、所望の動特性を得ることができる。
【0041】
スクイズ面24の高さ、大きさ、あるいは表面荒さを調整することで、エアパッド10の動特性、具体的にはエアパッド10の剛性成分(バネ成分)及び減衰成分(ダンパ成分)、ひいては共振周波数及び減衰率を調整することができる。例えば、スクイズ面24の面積を大きくすることで、バネ成分及びダンパ成分を大きくすることができ、逆にスクイズ面24の面積を小さくすることで、バネ成分及びダンパ成分を小さくすることができる。また、スクイズ面24の高さを高くする(スクイズ面24と第2面との隙間を小さくする)ことで、バネ成分及びダンパ成分を大きくすることができる。このように、エアパッド10の使用状況などに応じてスクイズ面24を調整するだけで、所望の動特性(共振周波数、減衰率)を得ることができる。
このようなエアパッド10を用いる際にも、第一エア吹出口11に加えて、第二エア吹出口21A、21Bを設けることにより、凹部の存在により、パッド飛びやピッチング誤差等の挙動が生じることを抑制できる。
【0042】
次に、本発明に係るエアパッド10を備えたステージ装置及び露光装置について、図14を参照して説明する。図14は本発明に係る露光装置の一実施形態を示す概略構成図である。本実施形態における露光装置EXは、マスクMと感光性の基板Pとを同期移動しつつマスクMに設けられているパターンを投影光学系PLを介して基板P上に転写する所謂スキャニングステッパである。以下の説明において、投影光学系PLの光軸AXと一致する方向をZ軸方向、Z軸方向に垂直な平面内における前記同期移動方向(走査方向)をY軸方向、Z軸方向及びY軸方向と垂直な方向(非走査方向)をX軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。なお、ここでいう「基板」は半導体ウエハ上に感光性材料であるフォトレジストを塗布したものを含み、「マスク」は基板上に縮小投影されるデバイスパターンを形成されたレチクルを含む。
【0043】
図14において、露光装置EXは、マスクMを保持して移動可能なマスクステージMSTと、基板Pを保持して移動可能な基板ステージPSTと、マスクステージMSTに保持されたマスクMを露光光ELで照明する照明光学系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターンの像を基板ステージPSTに保持された基板Pに投影する投影光学系PLとを備えている。投影光学系PLは、例えば1/4又は1/5の投影倍率を有する縮小系である。なお、投影光学系PLとしては等倍系あるいは拡大系のいずれでもよい。マスクステージMSTは、上面に案内面が形成されたマスク定盤(支持部材)103上を移動可能に設けられている。マスクステージMSTの下面はマスク定盤103の案内面に対向している。基板ステージPSTは基板定盤105上を移動可能に設けられている。基板定盤105は、床面に設置されたベースプレート101上に防振ユニット108を介して支持されている。ベースプレート101上にはメインコラム102が設けられている。メインコラム102上には、照明光学系ILを支持する支持コラム109が設けられている。
また、メインコラム102は、内側に向けて突出する上側段部102A及び下側段部102Bを備えている。マスク定盤103はメインコラム102の上側段部102A上に防振ユニット106を介して支持されている。投影光学系PLを構成する複数の光学素子は鏡筒PKで保持されている。投影光学系PL(鏡筒PK)は鏡筒定盤104に支持されている。鏡筒定盤104はメインコラム102の下側段部102B上に防振ユニット107を介して支持されている。
【0044】
照明光学系ILは、マスクステージMSTに保持されたマスクMを露光光ELで照明するものである。露光光ELとしては、例えば水銀ランプから射出される紫外域の輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)や、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)及びF2 レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)などが用いられる。
【0045】
マスクステージMSTは、マスクMを保持して移動可能に設けられている。マスクステージMSTの底面には複数のエアパッド10が設けられており、マスクステージMSTはエアパッド10によりマスク定盤103の支持面(第二面)103Aに対して移動可能に非接触支持されている。マスクステージMST及びマスク定盤103のそれぞれには、マスクMをパターン像が通過可能な開口部114A、114Bが設けられている。
マスクステージMSTは、マスク定盤103上に設けられたマスク粗動ステージMST1と、マスク粗動ステージMST1上に設けられたマスク微動ステージMST2と、マスク定盤103上において粗動ステージMST1をY軸方向に所定ストロークで移動可能な一対のYリニアモータ(不図示)と、Y軸方向に移動する粗動ステージMST1を案内する一対のYガイド部111、111とを備えている。
【0046】
基板ステージPSTは基板Pを保持して移動可能に設けられており、基板Pを保持する基板ホルダPHを有している。基板ステージPSTの底面には複数のエアパッド10が設けられている。基板ステージPSTはエアパッド10により上面に案内面が形成された基板定盤(支持部材)105に対して移動可能に非接触支持されている。基板ステージPSTの下面は基板定盤105の案内面(第二面)105Aに対向している。基板ステージPSTは、基板Pを保持した状態で、基板定盤105上をXY平面に沿った2次元方向に移動可能である。基板ステージPSTは、Xガイドステージ120によりX軸方向への移動を案内される。また、基板ステージPSTは、Xガイドステージ120に設けられたXリニアモータ121によりX軸方向に移動する。また、Xガイドステージ120は、ベースプレート101上に設けられた側面視略L字状の支持部材123の上端部のガイド部123BによりY軸方向への移動を案内される。ガイド部123B(支持部材123)はXガイドステージ120の両端部のそれぞれに対応する位置に設けられており、Xガイドステージ120の両端部のそれぞれには、ガイド部123Bに対応する被ガイド部124が設けられている。ガイド部123Bと被ガイド部124との間にはエアパッド10が介在しており、被ガイド部124はガイド部123Bに対して非接触支持されている。基板ステージPSTは、Yリニアモータ122の駆動により、Xガイドステージ120とともにY軸方向へ移動する。
【0047】
本実施形態においては、マスクステージMST及び基板ステージPSTに、本発明に係るエアパッド10を用いたので、パッド飛びやピッチング誤差等の挙動が生じることを抑制できる。従って、このようなエアパッド10を備えたマスクステージMST、基板ステージPSTでは、不測の挙動を生じることなく、安定した駆動特性で駆動することができ、ステージの移動精度や位置決め精度等が向上されているので、精度良く露光することができる。
【0048】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0049】
例えば、上述した実施形態では、エアパッド10はパッド本体12とブッシュ13とを組み合わせた構成であり、流路20はブッシュ13の内部に形成された構成であるが、ブッシュ13を設けずにパッド本体12のみによって構成してもよい。その場合、パッド本体12の内部に流路20が形成されるとともにそのパッド本体12の表面に流路20に接続する第一エア吹出口11を形成すればよい。
また、上記実施形態では、第二エア吹出口21A、21Bを絞り溝14に周囲を囲まれたリセス部に設ける構成としたが、これに限定されるものではなく、パッド面10Aで絞り溝14よりも外側のランド面に設ける構成としてもよい。さらに、第二エア吹出口の配置としては、必ずしもエアパッド10の重心と対応する位置を挟んで対称にする必要はなく、例えば三角形の頂点となる位置に第二エア吹出口を配置してもよい。この場合、この三角形の重心と、パッド面10Aにおけるエアパッド10の重心と対応する位置とが合致させることが好ましい。
【0050】
また、上記実施形態では、流体パッドとしてエアパッドを用いる例で説明したが、使用する流体としては、エアに限定されるものではなく、他の気体、例えば窒素やヘリウム等、光化学的に不活性な気体を用いる構成としてもよい。
また、上記実施形態では、本発明に係るエアパッドを用いたステージ装置を露光装置に適用するものとして説明したが、これに限定されるものではなく、移動ステージを有する工作機械にも適用可能である。
【0051】
なお、上記実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス用の半導体ウエハのみならず、液晶ディスプレイデバイス用のガラス基板や、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
【0052】
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置にも適用することができる。
露光装置EXの種類としては、ウエハに半導体デバイスパターンを露光する半導体デバイス製造用の露光装置に限られず、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを露光する液晶表示素子製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)あるいはマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
【0053】
また、露光用照明光の光源として、超高圧水銀ランプから発生する輝線(g線(436nm)、h線(404.7nm)、i線(365nm))、KrFエキシマレーザ(248nm)、ArFエキシマレーザ(193nm)、F2 レーザ(157nm)のみならず、X線や電子線などの荷電粒子線を用いることができる。例えば、電子線を用いる場合には電子銃として、熱電子放射型のランタンヘキサボライト(LaB6 )、タンタル(Ta)を用いることができる。さらに、電子線を用いる場合は、マスクMを用いる構成としてもよいし、マスクMを用いずに直接ウエハ上にパターンを形成する構成としてもよい。また、YAGレーザや半導体レーザ等の高周波などを用いてもよい。
【0054】
投影光学系PLとしては、エキシマレーザなどの遠紫外線を用いる場合は硝材として石英や蛍石などの遠紫外線を透過する材料を用い、F2 レーザやX線を用いる場合は反射屈折系または屈折系の光学系にし(マスクMも反射型タイプのものを用いる)、また電子線を用いる場合には光学系として電子レンズ及び偏向器からなる電子光学系を用いればよい。なお、電子線が通過する光路は、真空状態にすることはいうまでもない。また、投影光学系PLを用いることなく、マスクMと基板Pとを密接させてマスクMのパターンを露光するプロキシミティ露光装置にも適用可能である。
【0055】
上記実施形態のように基板ステージPSTやマスクステージMSTにリニアモータを用いる場合においてエアベアリングを用いたエア浮上型に限られず、ローレンツ力又はリアクタンス力を用いた磁気浮上型を用いてもよい。また、各ステージPST、MSTは、ガイドに沿って移動するタイプでもよく、ガイドを設けないガイドレスタイプであってもよい。
【0056】
基板ステージPSTの移動により発生する反力は、特開平8−166475号公報に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。また、マスクステージMSTの移動により発生する反力は、特開平8−330224号公報に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。
【0057】
以上のように、本願実施形態の露光装置EXは、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度及びクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0058】
半導体デバイスは、図15に示すように、デバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、前述した実施形態の露光装置EXによりマスクのパターンを基板に露光する基板処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】第1実施形態に係る流体軸受を示す概略斜視図である。
【図2】流体軸受を示す平面図である。
【図3】図1のA−A線に沿う部分断面図である。
【図4】図1のB−B線に沿う部分断面図である。
【図5】エアパッドを備えるXYステージの構成を示す斜視図である。
【図6】エアパッドが定盤上を移動する図である。
【図7】エアパッドの負荷容量を示す図である。
【図8】エアパッドの動的不釣合いモーメントを示す図である。
【図9】エアパッドに加わる乱流エネルギ量を示す図である。
【図10】エアパッドの第2実施形態を示す平面図である。
【図11】エアパッドの別形態を示す平面図である。
【図12】エアパッドの別の実施形態を示す平面図である。
【図13】図12のB−B線断面図である。
【図14】本発明の露光装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図15】半導体デバイスの製造工程の一例を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0060】
EX…露光装置、 M…マスク(レチクル)、 MST…マスクステージ、 P…基板(ウエハ)、 PST…基板ステージ、 1…第一部材、 2…第二部材、 2A…第二面、 10…エアパッド(流体軸受)、 10A…パッド面(第一面)、 11…第一エア吹出口(第一流体吹出部)、 14…絞り溝(溝部)、 21、21A、21B…第二エア吹出口(第二流体吹出部)、 41、42…移動部材(第一部材)、 46…ベース(第一部材)、 50…XYステージ(ステージ装置)、 51…定盤(第二部材、支持部材)、 51A…上面(第二面、移動面)、 103…マスク定盤(支持部材)、 105…基板定盤(支持部材)、 105A…案内面(第二面)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材の第一面に形成された溝部の内側に設けられた第一流体吹出部と、
前記溝部とは異なる前記第一面内の領域に設けられた第二流体吹出部とを有することを特徴とする流体軸受。
【請求項2】
請求項1記載の流体軸受において、
前記第一流体吹出部と前記第二流体吹出部との一方は、前記第一流体吹出部と前記第二流体吹出部との他方を挟んで対称に配置されることを特徴とする流体軸受。
【請求項3】
請求項1または2記載の流体軸受において、
前記第二流体吹出部は、前記第一面の重心に対応する位置を挟んで対称に配置されることを特徴とする流体軸受。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の流体軸受において、
前記第一流体吹出部と前記第二流体吹出部とは、略同一の吹出特性で流体を吹き出すことを特徴とする流体軸受。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の流体軸受を有する第一部材と、前記第一部材の前記第一面と対向する第二面を有する第二部材とを備えることを特徴とする流体ベアリング。
【請求項6】
移動ステージが支持部材上を移動するステージ装置であって、
前記移動ステージの移動面に請求項5記載の流体ベアリングが用いられていることを特徴とするステージ装置。
【請求項7】
請求項6記載のステージ装置において、
前記移動ステージには、前記流体軸受が複数設けられ、
前記複数の流体軸受のそれぞれに前記第二流体吹出部が設けられていることを特徴とするステージ装置。
【請求項8】
マスクステージに保持されたマスクのパターンを基板ステージに保持された基板に露光する露光装置であって、
前記マスクステージと前記基板ステージとの少なくとも一方に、請求項6または請求項7記載のステージ装置が用いられていることを特徴とする露光装置。
【請求項1】
第一部材の第一面に形成された溝部の内側に設けられた第一流体吹出部と、
前記溝部とは異なる前記第一面内の領域に設けられた第二流体吹出部とを有することを特徴とする流体軸受。
【請求項2】
請求項1記載の流体軸受において、
前記第一流体吹出部と前記第二流体吹出部との一方は、前記第一流体吹出部と前記第二流体吹出部との他方を挟んで対称に配置されることを特徴とする流体軸受。
【請求項3】
請求項1または2記載の流体軸受において、
前記第二流体吹出部は、前記第一面の重心に対応する位置を挟んで対称に配置されることを特徴とする流体軸受。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の流体軸受において、
前記第一流体吹出部と前記第二流体吹出部とは、略同一の吹出特性で流体を吹き出すことを特徴とする流体軸受。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の流体軸受を有する第一部材と、前記第一部材の前記第一面と対向する第二面を有する第二部材とを備えることを特徴とする流体ベアリング。
【請求項6】
移動ステージが支持部材上を移動するステージ装置であって、
前記移動ステージの移動面に請求項5記載の流体ベアリングが用いられていることを特徴とするステージ装置。
【請求項7】
請求項6記載のステージ装置において、
前記移動ステージには、前記流体軸受が複数設けられ、
前記複数の流体軸受のそれぞれに前記第二流体吹出部が設けられていることを特徴とするステージ装置。
【請求項8】
マスクステージに保持されたマスクのパターンを基板ステージに保持された基板に露光する露光装置であって、
前記マスクステージと前記基板ステージとの少なくとも一方に、請求項6または請求項7記載のステージ装置が用いられていることを特徴とする露光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−247704(P2007−247704A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−69194(P2006−69194)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]