液処理装置および液処理方法
【課題】基板の処理対象面を下向きにして基板を処理する際に、基板下面に付着した純水をIPAに効率よく置換すること。
【解決手段】基板処理方法は、処理対象面が下面となるように基板Wを保持して回転させる工程と、基板の下面にDIW(純水)を供給して基板にリンス処理を施す工程と、その後、基板の下面にIPA(イソプロピルアルコール)とN2ガスとを含むミストを供給してDIWをIPAで置換する工程と、を備える。ミストの供給は、基板の中心部に対向する位置と基板の周縁部に対向する位置の間に配列された複数の吐出口62を有する、基板の下方に設けられたノズル60により行われる。
【解決手段】基板処理方法は、処理対象面が下面となるように基板Wを保持して回転させる工程と、基板の下面にDIW(純水)を供給して基板にリンス処理を施す工程と、その後、基板の下面にIPA(イソプロピルアルコール)とN2ガスとを含むミストを供給してDIWをIPAで置換する工程と、を備える。ミストの供給は、基板の中心部に対向する位置と基板の周縁部に対向する位置の間に配列された複数の吐出口62を有する、基板の下方に設けられたノズル60により行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の下面に処理液を供給することにより基板に所定の液処理例えば洗浄処理またはエッチング処理を行う液処理装置および液処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程においては、基板例えば半導体ウエハの表面ないし裏面に付着した不要な膜(例えば、酸化膜、窒化膜、マスクとしての役割を終えたレジスト膜等)を除去するために、薬液を用いて洗浄ないしエッチング処理が行われる。一般的には、薬液処理の後、同じ装置において、リンス処理および乾燥処理が続いて行われる。
【0003】
特許文献1には、上記の処理を実施することが可能な液処理装置が開示されている。この液処理装置は、ウエハの周縁部を保持して回転するスピンチャックと、スピンチャックに保持されたウエハの上面中央部に処理液を供給する表面ノズルと、ウエハの下面中央部に処理液を供給する裏面ノズルとを備えており、表面ノズルおよび裏面ノズルによって、洗浄用薬液、純水等のリンス液、IPAのような乾燥溶媒をウエハに供給することができる。
【0004】
上記の除去すべき不要な膜の一つとして、ウエハ表面の自然酸化膜(SiO2膜)がある。自然酸化膜の除去のため、ウエハをDHF(希フッ酸)で洗浄すると、SiO2膜が除去されてベアSiが露出する。すなわち親水性のSiO2表面が、疎水性のSi表面に変化する。DHF洗浄工程の後には、通常、DIW(純水)リンス工程およびスピン乾燥工程が行われる。また、DIWが付着した疎水性表面を乾燥させる際は、乾燥ムラが生じやすく、すなわちウォーターマークが発生しやすいため、ウォーターマークの発生防止のため、DIWリンス工程とスピン乾燥工程との間に、DIWを一旦IPA(イソプロピルアルコール)で置換するIPA置換工程を挟むことが行われている。しかし、IPA置換工程を、特許文献1に記載されたようなウエハの処理対象面が下面に存在する形式の装置で行ったとすると、IPAは表面張力が低いため、ウエハ下面に供給されたIPAは重力によりウエハ下面から下方に落下しやすく、ウエハ下面に均一に広げることは困難である。また、ウエハ下面全面をIPAで覆うには大量のIPAが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−287999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、基板の下面を処理する液処理装置および方法において、基板の処理対象面をIPAにより効率良く乾燥させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点によれば、処理対象面が下面となるように基板を保持して回転させることと、前記基板の下面にDIW(純水)を供給して、前記基板にリンス処理を施すことと、その後、前記基板の下面にIPA(イソプロピルアルコール)とN2ガスとを含むミストを供給して、前記DIWをIPAで置換することと、を備え、前記ミストの供給は、前記基板の中心部に対向する位置と前記基板の周縁部に対向する位置の間に配列された複数の吐出口を有する、前記基板の下方に設けられたノズルにより行われる液処理方法が提供される。
【0008】
また、本発明の第2の観点によれば、基板の周縁部を保持する保持部材を有し、基板を水平に保持する基板保持部と、前記基板保持部を回転させる回転駆動部と、前記基板保持部に保持された基板の下面の下方に位置するように設けられたノズルであって、前記基板保持部により保持された基板の下面に薬液を吐出する第1の吐出口と、前記基板保持部により保持された基板の下面にIPAとN2ガスとを含むミストを吐出する複数の第2の吐出口と、前記基板保持部により保持された基板の下面にDIWを吐出する第3の吐出口と、前記基板保持部により保持された基板の下面にN2ガスを吐出する第4の吐出口と、を有するノズルと、を備え、前記複数の第2の吐出口は、前記基板保持部により保持された基板の中心部に対向する位置と前記基板の周縁部に対向する位置の間に配列されている液処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板の中心部に対向する位置と前記基板の周縁部に対向する位置の間に配列されている複数の吐出口を有する基板の下方に配置されたノズルを用いて、基板の下面にIPAとN2ガスとを含むミストを吐出しているため、基板の下面の全体を均一かつ迅速にIPAに置換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態による基板洗浄装置を含む液処理システムを上方から見た上方平面図である。
【図2A】本発明の実施の形態の基板洗浄装置の構成を示す縦断面図であって、リフトピンプレートおよび洗浄液供給管が下降位置にあるときの状態を示す図である。
【図2B】本発明の実施の形態の基板洗浄装置の構成を示す縦断面図であって、リフトピンプレートおよび洗浄液供給管が上昇位置にあるときの状態を示す図である。
【図2C】図2Aに示すような、ウエハが基板支持部および固定保持部により保持された状態を示す、図2Aにおける基板洗浄装置を上方から見た上面図である。
【図3】図2Aおよび図2Bに示す基板洗浄装置のリフトピンプレートの構成を示す斜視図である。
【図4】図2Aおよび図2Bに示す基板洗浄装置の保持プレートの構成を示す斜視図である。
【図5】図2Aおよび図2Bに示す基板洗浄装置における、リフトピンプレートから下方に延びる接続部材および保持プレートから下方に延び接続部材を収容する中空の収容部材の構成の詳細を示す拡大縦断面図である。
【図6】図2Aおよび図2Bに示す基板洗浄装置における保持プレートに設けられた基板支持部の構成を示す拡大縦断面図である。
【図7】図6に示す状態からリフトピンプレートが下方に移動したときの状態を示す拡大縦断面図である。
【図8】図7に示す状態からリフトピンプレートが更に下方に移動したときの状態を示す拡大縦断面図である。
【図9】図2Aおよび図2Bに示す基板洗浄装置の処理流体供給管およびV字形ノズル並びにこれらを昇降させる昇降機構の構成を示す斜視図である。
【図10A】V字形ノズルを示す平面図である。
【図10B】リフトピンプレートと搬送アームとの間でウエハが受け渡しされるときのV字形ノズル、リフトピンおよび搬送アームの位置関係を説明するための概略平面図である。
【図11】V字形ノズルの第1の棒状部分の構造および作用について説明する図であって、(a)は図10におけるXIa−XIa線に沿った第1の棒状部分の内部構造を示す断面図、(b)は第1の棒状部分からDHFが吐出される様子を示す作用図である。
【図12】V字形ノズルの第2の棒状部分の構造および作用について説明する図であって、(a)は図10におけるXIIa−XIIa線に沿った第2の棒状部分の内部構造を示す断面図、(b)は第2の棒状部分からIPAおよびN2ガスを混合してなるミスト状の二流体が吐出される様子を示す作用図である。
【図13】V字形ノズルの中央部分の構造を説明する図であって図10におけるXIII−XIII線に沿った断面図である。
【図14】V字形ノズルの中央部分の構造を説明する図であって図10におけるXVI−XVI線に沿った断面図である。
【図15】V字形ノズルから吐出された処理液がウエハ下面に形成するスポットを説明する概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。まず、図1を用いて、本発明による液処理装置の実施形態に係る基板洗浄装置を含む処理システムについて説明する。図1に示すように、処理システムは、外部から被処理基板としての半導体ウエハW(以下単に「ウエハW」と称する)を収容したキャリアを載置するための載置台101と、キャリアに収容されたウエハWを取り出すための搬送アーム102と、搬送アーム102によって取り出されたウエハWを載置するための棚ユニット103と、棚ユニット103に載置されたウエハWを受け取り、当該ウエハWを基板洗浄装置10内に搬送する搬送アーム104と、を備えている。図1に示すように、液処理システムには、複数(図1に示す態様では10個)の基板洗浄装置10と、2つのリバーサー(REV、ウエハ裏返し装置)105が組み込まれている。なお、図1に示すように、搬送アーム104は上方から見て略U字形状となっているが、この搬送アーム104はウエハWをリフトピン22(後述)上に載置したりリフトピン22上からウエハWを取り除いたりする際にリフトピン22および後に詳述するV字形ノズル60に接触しないような形状となっている(図10Bを参照)。
【0012】
次に、基板洗浄装置10の概略的な構成について図2Aおよび図2Bを用いて説明する。基板洗浄装置10は、ウエハWを保持する保持プレート30と、保持プレート30の上方に設けられ、ウエハWを下方から支持するリフトピン22を有するリフトピンプレート20と、保持プレート30を回転させる電動モータ等を備えた回転駆動部39と、保持プレート30の中心部分に形成された貫通穴30aおよびリフトピンプレート20の中心部分に形成された貫通穴20aを通るよう設けられた処理流体供給管40と、処理流体供給管40を介して供給された処理流体をウエハWの下面に向けて吹き付けるV字形ノズル60とを有している。処理時に、リフトピンプレート20は、保持プレート30と連動して一体的に回転するようになっている。
【0013】
リフトピンプレート20、処理流体供給管40およびV字形ノズル60は、保持プレート30に対して相対的に昇降することができる。ここで、図2Aは、リフトピンプレート20、処理流体供給管40およびV字形ノズル60がそれぞれ下降位置にあるときの状態を示しており、図2Bは、リフトピンプレート20、処理流体供給管40およびV字形ノズル60がそれぞれ上昇位置にあるときの状態を示している。リフトピンプレート20、処理流体供給管40およびV字形ノズル60は、それぞれ、図2Aに示すような下降位置と図2Bに示すような上昇位置との間で昇降する。
【0014】
次に、基板洗浄装置10の各構成要素の詳細について以下に説明する。
【0015】
図3に示すように、リフトピンプレート20は円板形状のものからなり、その中心部分には貫通穴20aが形成されている。貫通穴20aの周囲には環状突起20bが設けられており、リフトピンプレート20上にある液体が貫通穴20a内に入り込むことを防止している。貫通穴20aに処理流体供給管40が通される。リフトピンプレート20の表面の周縁部近傍には複数本(本例では4本)のリフトピン22が設けられている。好ましい実施形態においては、特に図2Cに示されるように、4本のリフトピン22が2つの対をなし、一方の対22a,22a’(図2C中で左側にある2本)が円周方向に中心角で30度(鋭角)に相当する距離だけ離れた位置に配置されており、他方の対22b,22b’(図2C内で右側にある2本)が円周方向に中心角で120度(鈍角)に相当する距離だけ離れた位置に配置されている。また、4本のリフトピン22は、図2C中においてウエハWの中心を通って左右方向に延びる仮想線に対して線対称に配置されている。図2Cに示すようにリフトピンを配置することにより、ウエハWを十分に安定した状態でリフトピン22上に支持させることが可能となるとともに、ウエハWの搬出入(図2Bを参照)の際にリフトピン22に邪魔されることなくU字形の搬送アーム104(図10Bも参照)をウエハWの下方に侵入(図2Cの右手側から左手側に向かって侵入)させることができる。リフトピンプレート20の下面(各リフトピン22が設けられた面とは反対側の面)から、複数例えば3つの棒状の接続部材24が下方に延びている。これらの接続部材24は、リフトピンプレート20の周縁部近傍において周方向に等間隔で設けられている。
【0016】
図4に示すように、保持プレート30は円板形状のものからなり、その中心部分には貫通穴30aが形成されている。この貫通穴30aには処理流体供給管40が通される。また、保持プレート30の表面には、図2Aに示すように、接続部材38を介して回転カップ36が取り付けられている。回転カップ36は、リフトピンプレート20、処理流体供給管40およびV字形ノズル60が下降位置にあるときに保持プレート30により保持されるウエハWの外周縁を囲む。また、図2Aおよび図2Cに示すように、回転カップ36には、ウエハWを保持するための2つの固定保持部材37が設けられている。固定保持部材37の具体的な機能については後述する。なお、これらの固定保持部材37は、回転カップ36に設けられる代わりに保持プレート30に設けられていてもよく、あるいは接続部材38に直接接続されていてもよい。固定保持部材37が接続部材38に直接接続されている場合には、水平方向の力に対する固定保持部材37の強度をより大きなものとすることができる。
【0017】
保持プレート30の下面(回転カップ36が設けられた面とは反対側の面)の中心部分には、当該保持プレート30の下面から下方に延びるよう中空の回転軸34が取り付けられている。回転軸34の中空部分には処理流体供給管40が収容されている。回転軸34はベアリング(図示せず)により支持されるとともに、電動モータ等の回転駆動部39により回転させられる。回転駆動部39が回転軸34を回転させることにより、保持プレート30も回転する。
【0018】
図4に示すように、保持プレート30には、3つの貫通穴(接続部材貫通穴)30bが形成されており、各貫通穴30bにリフトピンプレート20に結合された接続部材24がスライド可能に通されている。従って、接続部材24は、保持プレート30とリフトピンプレート20との相対的回転を禁止して保持プレート30およびリフトピンプレート20が一体的に回転するように接続する一方で、保持プレート30とリフトピンプレート20との相対的上下動を許容する。貫通穴30bは保持プレート30の周方向に等間隔に設けられている。また、保持プレート30の下面において、各貫通穴30bの箇所には、3つの円筒形状の収容部材32が設けられている。各収容部材32は、保持プレート30の下面から下方に延びるようになっており、リフトピンプレート20の下面から下方に延びる各接続部材24を収容するようになっている。これらの収容部材32は、保持プレート30の周縁部近傍において周方向に等間隔で設けられている。
【0019】
リフトピンプレート20の下面から下方に延びる各接続部材24および保持プレート30の下面から下方に延びる各収容部材32について図5を用いてより詳細に説明する。図5に示すように、円筒形状の各収容部材32の内径は各接続部材24の外径よりもやや大きくなっており、各収容部材32の長手方向(図5の上下方向)に沿って各接続部材24が各収容部材32内で移動することができるようになっている。図2Aに示すように、リフトピンプレート20が下降位置にあるときには、各接続部材24は各収容部材32に完全に収容された状態となる。一方、図2Bに示すように、リフトピンプレート20が上昇位置にあるときには、各接続部材24はその下部における一部分のみが各収容部材32に収容された状態となり、各接続部材24は保持プレート30に形成された貫通穴30bを通過してこの保持プレート30から上方に突出する。リフトピンプレート20が下降位置にあるときには、各接続部材24が各収容部材32に収容された状態となる。
【0020】
図5に示すように、各収容部材32の中空部分にはバネ26が圧縮された状態で収容されている。このバネ26は、その下端が接続部材24の下端部分に取り付けられるとともに、その上端が貫通穴30bの近傍における保持プレート30の下面に取り付けられている。このため、バネ26により接続部材24は下方に付勢されるようになっている。すなわち、バネ26が圧縮状態から元の状態に戻ろうとする力により、接続部材24には常に下向きの力(保持プレート30から下方に移動しようとする力)が加えられる。
【0021】
図2Aおよび図2Bに示すように、回転カップ36の外方には外カップ56が設けられており、保持プレート30や回転カップ36は外カップ56により覆われる。この外カップ56には排液管58が接続されており、ウエハWの洗浄のために使用され、ウエハWの回転により当該ウエハWから外方に飛散して外カップ56により受けられた洗浄液は排液管58により排出される。
【0022】
図2Aおよび図2Bに示すように、保持プレート30には、ウエハWを側方から支持するための可動の基板保持部材31が設けられている。基板保持部材31は、図2Aに示すようにリフトピンプレート20が下降位置にあるときにウエハWを側方から保持し、一方、図2Bに示すようにリフトピンプレート20が上昇位置にあるときにウエハWから離間する。より詳細に説明すると、図2Cに示すように、ウエハWの洗浄処理を行う際に、ウエハWは基板保持部材31および2つの固定保持部材(固定の基板保持部材)37により保持される。このときに、基板保持部材31はウエハWを固定保持部材37に向かって押し付ける。すなわち、図2Cにおいて基板保持部材31によりウエハWに対して図2Cにおける左方向に力が加えられ、これによりウエハWは2つの固定保持部材37に押し付けられる。このように、可動の基板保持部材31および固定保持部材37の両方を用いてウエハWを側方から保持する場合には、固定保持部材37を用いずに複数の可動の基板保持部材31だけを用いてウエハWを側方から保持する場合と比較して、ウエハWに対して移動(進退)する部材の数を1つのみとすることができるので、よりシンプルな構成でウエハWの保持を行うことができる。
【0023】
以下に基板保持部材31の構成の詳細について図6〜図8を参照して説明する。図6は、リフトピンプレート20が図2Bに示すような上昇位置から図2Aに示すような下降位置に向かって移動する途中での状態を示す図であり、図7は、図6に示す状態からリフトピンプレート20が下方に移動したときの状態を示す図であり、図8は、図6に示す状態からリフトピンプレート20が更に下方に移動し、リフトピンプレート20が図2Aに示すような下降位置に到達したときの状態を示す図である。
【0024】
図6乃至図8に示すように、基板保持部材31は軸31aを介して保持プレート30に軸支されている。より詳細には、図6乃至図8に示すように、保持プレート30には軸受け部33が取り付けられており、この軸受け部33に設けられた軸受け孔33aに軸31aが受け入れられる。軸受け孔33aは水平方向に延びる長孔からなり、基板保持部材31の軸31aはこの軸受け孔33aに沿って水平方向に移動することができる。このようにして、基板保持部材31は、軸受け部33の軸受け孔33aに受け入れられた軸31aを中心として揺動することができる。
【0025】
基板保持部材31の軸31aには、ねじりバネ等のバネ部材31dが巻き掛けられている。このバネ部材31dは、軸31aを中心として基板保持部材31を図6乃至図8における時計回りの方向に回転させるような力を基板保持部材31に付勢するようになっている。これにより、基板保持部材31に何ら力が加えられていない場合には、図2Bに示すように、基板保持部材31が保持プレート30に対して傾斜した状態となり、基板保持部材31におけるウエハWを側方から保持するための基板保持部分31b(後述)は保持プレート30の中心から遠ざかった状態となる。
【0026】
また、軸31aに巻き掛けられたバネ部材31dからは線状部分が伸び出しており、この線状部分は軸受け部33の内壁面33bに係止されて、軸31aを保持プレート30の中心に向かって押し返す。このように、バネ部材31dの線状部分により、軸31aは保持プレート30の中心に向かって(すなわち、図6乃至図8における左方向に向かって)常時押圧される。このため、比較的径が小さなウエハWが可動の基板保持部材31および固定保持部材37により支持される場合には、軸31aは、図6乃至図8に示すように、軸受け孔33aにおける保持プレート30の中心に近い位置(すなわち、図6乃至図8における左側の位置)に位置する。一方、比較的径が大きなウエハWが基板保持部材31および固定保持部材37により支持される場合には、バネ部材31dの線状部分による力に抗して、軸31aは軸受け孔33aに沿って図6等に示す位置から右方向に移動する。なお、ここでのウエハの径の大小とは、許容寸法誤差内でのウエハの径の大小を意味している。
【0027】
また、基板保持部材31は、ウエハWを側方から保持する基板保持部分31bと、軸31aに関して基板保持部分31bと反対側に設けられた被押圧部材31cとを有している。被押圧部材31cは、リフトピンプレート20と保持プレート30との間に設けられており、この被押圧部材31cは、図6乃至図8に示すようにリフトピンプレート20が下降位置またはその近傍位置にあるときに当該リフトピンプレート20の下面により下方に向かって押圧される。
【0028】
図6乃至図8に示すように、基板保持部材31は、リフトピンプレート20が上昇位置から下降位置に移動したときに、当該リフトピンプレート20の下面により被押圧部材31cが下方に押圧されることにより軸31aを中心として図6等の反時計回りの方向(図6等の矢印方向)に回転する。そして、基板保持部材31が軸31aを中心として回転することにより、基板保持部分31bがウエハWに向かって当該ウエハWの側方から移動する。これにより、リフトピンプレート20が下降位置に到達したときに、図8に示すように、ウエハWが基板保持部材31により側方から保持される。ここで、図8に示すように、ウエハWが基板保持部材31により側方から保持されたときに、このウエハWはリフトピン22の先端から上方に離間し、リフトピン22から上方に浮いた状態となる。また、前述のように、ウエハWの大きさによっては、バネ部材31dの線状部分による力に抗して軸31aが軸受け孔33aに沿って図6等に示す位置から右方向に移動する場合もある。このため、比較的大きなウエハWが基板保持部材31および固定保持部材37により保持される場合であっても、基板保持部材31が水平方向に移動可能となっているので、ウエハWを変形させたり破損させたりすることなくウエハWを側方から保持することができる。
【0029】
上述のような基板保持部材31が基板洗浄装置10に設けられていることにより、基板保持部材31を駆動するための専用の駆動機構(動力源)を設ける必要がなく、後述する昇降駆動部50によりリフトピンプレート20を昇降させるだけで、保持プレート30の基板保持部材31によるウエハWの保持/解放動作を行うことができるため、基板洗浄装置10の構成をよりシンプルなものとすることができる。また、リフトピンプレート20の昇降のタイミングと基板保持部材31の移動のタイミングとの間にタイムラグが生じることを抑制することができ、スループットを向上させることもできる。
【0030】
図2Aおよび図2Bに示すように、処理流体供給管40はリフトピンプレート20の貫通穴20aおよび保持プレート30の貫通穴30aをそれぞれ通過するよう設けられている。なお、処理流体供給管40は、リフトピンプレート20や保持プレート30が回転する際にも回転しないようになっている。処理流体供給管40の内部には、処理流体をV字形ノズル60に供給するため複数、本例では5つの流体供給路、すなわち第1の流体供給路(「DHF(希フッ酸)供給路」とも称する)40a、第2の流体供給路(「IPA(イソプロピルアルコール)供給路」とも称する)40b、第3の流体供給路(「第1のN2ガス供給路」とも称する)40c、第4の流体供給路(「DIW(純水)供給路」とも称する)40d、第5の流体供給路(「第2のN2ガス供給路」とも称する)40eが鉛直方向に延びるように設けられている。処理流体供給管40の上端には後に詳述するV字形ノズル60が取り付けられている。
【0031】
図2Aに示すように、処理流体供給管40内の第1〜第5の流体供給路40a,40b,40c,40d,40eは対応する第1〜第5の流体供給機構70a,70b,70c,70d,70eにそれぞれ接続されている。
第1の流体供給機構70aは、DHFを供給するDHF供給機構(以下、「DHF供給機構70a」と称する)であり、DHF供給源71aに接続された管路74aに上流側から順次介設された可変絞り弁72aおよび開閉弁73aを有している。
第2の流体供給機構70bは、IPAを供給するIPA供給機構(以下、「IPA供給機構70b」と称する)であり、IPA供給源71bに接続された管路74bに上流側から順次介設された可変絞り弁72bおよび開閉弁73bを有している。
第3の流体供給機構70cは、不活性ガス例えばN2ガスを供給するN2ガス供給機構(以下、「第1のN2ガス供給機構70c」と称する)であり、N2ガス供給源71cに接続された管路74cに上流側から順次介設された可変絞り弁72cおよび開閉弁73cを有している。
第4の流体供給機構70dは、リンス用液体であるDIW(純水)を供給するDIW供給機構(以下、「DIW供給機構70d」と称する)であり、DIW供給源71dに接続された管路74dに上流側から順次介設された可変絞り弁72dおよび開閉弁73dを有している。
第5流体供給機構70eは、不活性ガス例えばN2ガスを供給するN2ガス供給機構(以下、「第2のN2ガス供給機構70e」と称する)であり、N2ガス供給源71eに接続された管路74eに上流側から順次介設された可変絞り弁72eおよび開閉弁73eを有している。
【0032】
図2A、図2Bおよび図9に示すように、処理流体供給管40には接続部材52を介して昇降駆動部50が設けられている。昇降駆動部50は、処理流体供給管40を昇降させるようになっている。すなわち、昇降駆動部50が接続部材52を昇降させることにより、この接続部材52に接続された処理流体供給管40およびV字形ノズル60も昇降することとなる。より詳細には、昇降駆動部50は、図2Aに示すような下降位置と、図2Bに示すような上昇位置との間で処理流体供給管40およびV字形ノズル60を昇降させる。
【0033】
また、図9に示すように、処理流体供給管40には第1の連動部材44が接続されている。そして、第1の連動部材44には、3つの棒状の第2の連動部材46が第1の連動部材44から上方に延びるよう接続されている。ここで、各第2の連動部材46は、リフトピンプレート20の下面から下方に延びるよう設けられた各接続部材24に対応して設けられており、棒状の各第2の連動部材46の外径は円筒形状の収容部材32の内径よりも小さい。より詳細には、各第2の連動部材46は、各接続部材24の底面に接触するよう設けられており、各第2の連動部材46は、図2B等に示すように各収容部材32内で各接続部材24を上方に押し上げることができる。
【0034】
すなわち、図2Aに示すような状態において、昇降駆動部50が処理流体供給管40を上方に移動させたときには、処理流体供給管40に接続された第1の連動部材44および各第2の連動部材46も上方に移動し、各第2の連動部材46が各収容部材32内で各接続部材24を上方に押し上げることとなる。これにより、リフトピンプレート20も処理流体供給管40と連動して上方に移動し、図2Bに示すように、リフトピンプレート20、処理流体供給管40およびV字形ノズル60はそれぞれの上昇位置に到達することとなる。一方、図2Bに示すような状態において、昇降駆動部50が処理流体供給管40を下方に移動させたときには、収容部材32の内部に設けられたバネ26の力により接続部材24には常に下方に向かう力が加えられているので、各第2の連動部材46が下方に移動したときに各接続部材24もその下面が各第2の連動部材46の上端部分に接触するよう下方に移動する。このようにして、図2Aに示すように、リフトピンプレート20、処理流体供給管40およびV字形ノズル60はそれぞれの下降位置に到達する。
【0035】
図2Aに示すように、リフトピンプレート20は、下降位置にあるときには保持プレート30に隣接する。図示例においては、詳細には、リフトピンプレート20は保持プレート30上に載置され、保持プレート30により支持される。一方、図2Bに示すように、リフトピンプレート20は、上昇位置にあるときには、保持プレート30から上方に離間し、リフトピン22上へのウエハWの受け渡しおよびリフトピン22上からのウエハWの取り出しを行うことができるようになる。
【0036】
このように、第1の連動部材44および3つの第2の連動部材46により、リフトピンプレート20、処理流体供給管40およびV字形ノズル60を連動して一体的に昇降させる連動機構が構成されている。また、第1の連動部材44、3つの第2の連動部材46、昇降駆動部50、接続部材52により、リフトピンプレート20、処理流体供給管40およびV字形ノズル60を連動して昇降させて、リフトピンプレート20、処理流体供給管40およびV字形ノズル60を保持プレート30に対して相対的に昇降させる昇降機構が構成されている。
【0037】
次に、図2A、図2B、図9及び図10を参照して、V字形ノズル60の構成について説明する。V字形ノズル60は、中央部分60Cと、この中央部分60Cに接続されるとともにV字形に配置された第1の棒状部分60Aおよび第2の棒状部分60Bと、を有している。中央部分60Cにおいて、V字形ノズル60は処理流体供給管40の上端に取り付けられている。中央部分60Cは、リフトピンプレート20の貫通穴20aを覆うカバー部材としての役割をも果たす。棒状部分60A,60Bは中央部分60Cからリフトピンプレート20の半径方向外側すなわちウエハWの半径方向外側に延び、処理時にリフトピン22と干渉しないように(処理時にV字形ノズル60は回転しないがリフトピンプレート20は回転する)、リフトピン22が配置される仮想円周のわずかに手前で終端している。
【0038】
図10に示す実施形態においては、第1の棒状部分60Aおよび第2の棒状部分60Bは例えば30度(この角度に限定されるものではない)の角を成している。従って、リフトピンプレート20および保持プレート30を所定の角度位置に位置決めすることにより、第1の棒状部分60Aおよび第2の棒状部分60Bがそれぞれリフトピン22a、22a’に向かって延びるように位置合わせすることができる。図2Bより理解できるように、ウエハWの下面とV字形ノズル60との間は非常に狭いため、搬送アーム104とV字形ノズル60との両者の衝突を回避する観点からは、ウエハ搬出入時に搬送アーム104とV字形ノズル60とが平面視で重ならないようにすることが好ましい。図10に示すようなリフトピン22a,22a’と第1の棒状部分60Aおよび第2の棒状部分60Bとの位置関係が確保されていれば、図10Bに示すように、搬送アーム104を4つのリフトピンおよびV字形ノズル60に衝突しないようにウエハの下側に侵入させることが容易となる。なお、図10Bに示すように、搬送アーム104の二股の先端部は、搬送アーム104がウエハの下方に侵入するときに、リフトピン22a,22a’の外側であって、リフトピン22b,22b’の内側を通過する(図2Cを合わせて参照のこと)。上記のことは、第1の棒状部分60Aおよび第2の棒状部分60BをV字型に配置することにより生じうる利点の一つである。
【0039】
特に図11(a)および図12(a)に示すように、棒状部分60A,60Bは翼型に類似する断面形状を有している。この液処理装置では、棒状部分60A,60Bに対してウエハWが図10、図11(a)、図12(a)に示す矢印R方向に回転するようになっている。このとき、ウエハWの下面とリフトピンプレート20との間には矢印R方向の気流が生じる。翼型断面を有する棒状部分60A,60Bの上方を通過する気流により、液の流れが改善される。詳細には、気流は、棒状部分60A,60Bの背面とウエハWとの間を通過する際に、絞り効果により流速を増すとともにウエハWの下面に向かうように整流される。このように棒状部分60A,60Bの影響を受けた気流は、ウエハWの下面上に衝突した処理液(例えば薬液)がウエハWの下面に沿ってスムーズに拡散することを助ける。また、棒状部分60A,60Bが翼型断面を有することにより、気流の影響による棒状部分60A,60Bの振動が最小限に抑制される。
【0040】
V字型ノズル60は、ウエハWの中央部に対向する位置からウエハWの周縁部に対向する位置の間に配列された複数の第1の吐出口61を有している。第1の吐出口61は、DHFをウエハWに向けて吐出するためのものである。第1の吐出口61は、中央部分60Cから第1の棒状部分60Aの先端部に至るまでの区間内に、第1の棒状部分60Aの長手方向に沿って一列に配列されている。さらに、V字型ノズル60は、ウエハWの中央部に対向する位置からウエハWの周縁部に対向する位置の間に配列された複数の第2の吐出口62を有している。第2の吐出口62は、IPAとN2ガスの混合流体からなる二流体スプレーをウエハWに向けて吐出するためのものである。第2の吐出口62は、中央部分60Cから第2の棒状部分60Bの先端部に至るまでの区間内に、第2の棒状部分60Bの長手方向に沿って一列に配列されている。さらに、V字型ノズル60は、その中央部分60Cに、1つの第3の吐出口63を有している。第3の吐出口63はウエハWの中央部に向けてDIWを吐出するためのものである。さらに、V字型ノズル60は、その中央部分60Cに、1つの第4の吐出口64を有している。第4の吐出口64はウエハWの中央部に向けてN2ガスを吐出するためのものである。なお、第4の吐出口64は保持プレート30に保持されたウエハWの中心のほぼ真下に位置している。
【0041】
なお、第1および第2の吐出口61,62およびこれに連なる吐出路(67a,67b、68a、68b)の径はかなり小さい(直径0.3〜0.5mm程度)のため、液が吐出口および吐出路を通過するときに、摩擦で帯電する。これを防止するため、V字型ノズル60は、導電性のある材料、例えばカーボンファイバー入りのPFAにより形成することが望ましい。
【0042】
図14に示すように、処理流体供給管40は、その上端に拡径された頭部41を有している。V字形ノズル60の中央部分60Cは、処理流体供給管40の頭部41に対して図示しないネジにより連結される。
【0043】
図14に示すように、V字形ノズル60の中央部分60Cと処理流体供給管40の頭部41が連結されると、処理流体供給管40内を鉛直方向に延びるDIW供給路40eと中央部分60C内を鉛直方向に延びる吐出路63aが連通する。これにより、DIW供給路40dを介して送られてきたDIWを第3の吐出口63からウエハW下面に向けて吐出させることが可能となる。なお、第3の吐出口63は、そこから吐出されるDIWが確実にウエハW下面の中央Wcに到達することが保証されるような形状に形成されている。また、中央部分60Cと頭部41が連結されると、処理流体供給管40内を鉛直方向に延びる第2のN2ガス供給路40eと中央部分60C内を鉛直方向に延びる吐出路64aが連通する。これにより、第2のN2ガス供給路40eを介して送られてきたN2ガスを第4の吐出口64からウエハW下面に向けて吐出させることが可能となる。
【0044】
また、中央部分60Cと頭部41が連結されると、図13に示すように、処理流体供給管40内を鉛直方向に延びるIPA供給路40bとV字形ノズル60内に形成された流体通路(IPA通路)65bとが連通するとともに、処理流体供給管40内を鉛直方向に延びる第1のN2供給路40cとV字形ノズル60内に形成された流体通路(N2通路)66bとが連通する。図10に破線で示すように、IPA通路65bおよびN2通路66bは、V字形ノズル60の中央部分60Cから第2の棒状部分60Bの先端部に至るまで、棒状部分60Bの長手方向に沿って、水平に、かつ互いに平行に延びている。また、詳細に図示はされていないが、中央部分60Cと頭部41が連結されると、図13に示した態様と同様の態様(但し接続されるのは1つの供給路と1つの通路だけである)で、処理流体供給管40内を鉛直方向に延びるDHF供給路40aとV字形ノズル60内に形成された流体通路(DHF通路)65aとが連通する。図10に破線で示すように、DHF通路65aは、V字形ノズル60の中央部分60Cから第1の棒状部分60Aの先端部に至るまで、第1の棒状部分60Aの長手方向に沿って、水平に延びている。
【0045】
図11(a)に示すように、V字形ノズル60の中央部分60Cおよび第1の棒状部分60Aにおいては、各吐出口61に対応して、DHF通路65aに1つのDHF吐出路67aが接続されている。従って、各吐出口61から、DHFが吐出される。図11(b)に示すように、各吐出口61は、そこから吐出されるDHFの吐出方向がウエハW回転方向Rに傾斜するように、言い換えれば、各吐出口61から吐出されるDHFの吐出方向を示すベクトルV61がウエハ回転方向Rの成分を持つように、構成されていることが好ましい。これにより、ウエハWの下面に衝突したDHFがウエハWに弾かれること(液はね)を抑制することができ、吐出したDHFを無駄にすることなく吐出したDHFの多くをウエハWの処理に有効に利用することができる。なお、DHFの吐出方向がウエハWの回転方向の成分を持つことにより、一旦ウエハWに到達したDHFがウエハWから落下してV字形ノズル60の棒状部分60Aに再付着することを低減することができる。ウエハWからのDHFの落下は、DHFがウエハWに到達した時点およびその直後に生じやすいからである。複数の吐出口61の大部分は、吐出口61から吐出されるDHFの吐出方向を示すベクトルV61がウエハ回転方向Rの成分を持ち、かつ、ベクトルV61が第1の棒状部分60Aの長手方向と直交する方向を向いていることが好ましい。但し、最も半径方向外側にある1個の吐出口(61”)またはこれを含む数個の吐出口61は、そこから吐出されるDHFの吐出方向を示すベクトルV61が、図10中に符号V61eが付された矢印で示すように、半径方向外側を向いた成分を有していてもよい。これにより、反応済みのDHFがウエハWからスムーズに離脱する。また、最も半径方向内側にある1個または数個の吐出口61、特に最も半径方向内側にある1個の吐出口61’は、そこから吐出されるDHFの吐出方向を示すベクトルV61が、図10中に符号V61cが付された矢印で示すように、ウエハWの中心を向いていることが望ましい。このようにすることで、ウエハWの中心に未処理領域が発生することを防止することができる。
【0046】
図12(a)に示すように、V字形ノズル60の中央部分60Cおよび第2の棒状部分60Bにおいては、各吐出口62に対応して、IPA通路65bに1つのIPA吐出路67bが、N2通路66bに一つのN2吐出路68bがそれぞれ接続されている。IPA吐出路67bとN2吐出路68bは吐出口62の部分で合流している。
【0047】
また、IPAをDIW通路65bからIPA吐出路67bを介して流し、N2ガスをN2通路66bからN2吐出路68bを介して流すと、IPA吐出路67bとN2吐出路68bとの合流点すなわち吐出口62の位置でIPA流とN2ガス流とが衝突し、両者が混合され、IPAおよびN2ガスからなるミスト状の混合流体すなわち二流体スプレーが形成される。図12(b)に示すように、吐出口62から吐出される二流体スプレーは扇状に広がりつつ上方に向けて吐出される。なお、最も半径方向内側にある1個または数個の吐出口62は、特に最も半径方向内側にある1個の吐出口62’は、そこから吐出される二流体スプレーの吐出方向を示すベクトルV62が、図10中に符号V62cが付された矢印で示すように、ウエハWの中心を向いていることが望ましい。
【0048】
図15に示された複数の楕円は、各吐出口61、62から吐出された処理流体(DHF)がウエハWの下面に到達した瞬間に処理流体により覆われるウエハWの下面上の領域(以下に「スポット」とも称する)を模式的に示している。なお、処理流体はウエハWの下面に到達した後には、ウエハWの回転による遠心力、吐出口61、62からの処理流体の吐出圧力等の要因に応じてウエハWの下面上で広がる。吐出口61、62から処理流体は平面視で円の接線方向に、斜め上方に向けて吐出されているので、スポットは楕円になる。但しIPAおよびN2ガスからなる二流体スプレーの場合は、比較的大径の概ね円形になる。スポットの中心の間隔Pは、吐出口61、62の配列ピッチに等しい。また、吐出後ウエハ到達前に処理流体は拡散するため、楕円の短軸(短軸は吐出口の配列方向と一致する)の長さBは吐出口61、62の径よりも大きくなる。なお、楕円の長軸の長さAは吐出口61、62の径よりもずっと大きい。DHF等の薬液を吐出する際には、処理の均一性の観点から、隣接するスポットには所定の長さLの重複部分が生じるように吐出口61を設計することが好ましい。しかしながら、隣接するスポットを形成する薬液が直ちに融合するのであれば、隣接するスポット間に重複部分が無くてもかまわない。
【0049】
図10に示すように、V字形ノズル60は、V字形に配置された第1の棒状部分60Aと第2の棒状部分60Bとを有しているが、DHFを吐出するための吐出口61が設けられた第1の棒状部分60Aは、IPAおよびN2ガスからなる二流体スプレーを吐出するための第2の棒状部分60Bから、ウエハ回転方向Rに小さな鋭角(ここでは30度)だけ進んだ(回転した)位置に配置されている。この配置はV字形ノズル60の清浄度を維持する上で好ましい。すなわち、ウエハ下面側の空間内では、ウエハ回転方向Rに進行する気流が生じており、吐出口61、62から吐出した液はその気流に乗って流れる。また、吐出口61から吐出されてウエハWに到達したDHFの一部は、重力によりウエハWから落下する。仮に、第1の棒状部分60Aと第2の棒状部分60Bの位置が図示されたものと逆であったならば、第1の棒状部分60Aから吐出されたDHFおよび反応生成物が、IPAおよびN2ガスからなる二流体スプレーを吐出するための第2の棒状部分60Bに付着する可能性が高くなる。乾燥のための流体を供給する第2の棒状部分60BがDHFおよび反応生成物により汚染されることは好ましくない。従って、第2の棒状部分60Bが第1の棒状部分60Aからウエハ回転方向Rになるべく大きな角度(図示例では330度)だけ進んだ位置にあること、言い換えれば、第1の棒状部分60Aが第2の棒状部分60Bからウエハ回転方向Rになるべく小さな角度(図示例では30度)だけ進んだ位置にあることが有利である。
【0050】
基板洗浄装置10は、その全体の動作を統括制御するコントローラ100を有している。コントローラ100は、基板洗浄装置10の全ての機能部品(例えば回転駆動部39、昇降駆動部50、第1〜第5流体供給機構70a〜70e)の動作を制御する。コントローラ100は、ハードウエアとして例えば汎用コンピュータと、ソフトウエアとして当該コンピュータを動作させるためのプログラム(装置制御プログラムおよび処理レシピ等)とにより実現することができる。ソフトウエアは、コンピュータに固定的に設けられたハードディスクドライブ等の記憶媒体に格納されるか、或いはCDROM、DVD、フラッシュメモリ等の着脱可能にコンピュータにセットされる記憶媒体に格納される。このような記憶媒体が参照符号101で示されている。プロセッサ102は必要に応じて図示しないユーザーインターフェースからの指示等に基づいて所定の処理レシピを記憶媒体101から呼び出して実行させ、これによってコントローラ100の制御の下で基板洗浄装置10の各機能部品が動作して所定の処理が行われる。コントローラ100は、図1に示す液処理システム全体を制御するシステムコントローラであってもよい。
【0051】
次に、上述した基板洗浄装置10を用いて、ウエハ表面にある自然酸化膜(SiO2膜)を除去する洗浄処理の一連の工程について説明する。
【0052】
<ウエハ搬入および設置工程>
まず、昇降機構によって、リフトピンプレート20、処理流体供給管40およびV字形ノズル60を図2Bに示すような上昇位置に位置づける。次に、図2Bの二点鎖線に示すように、基板洗浄装置10の外部からウエハWが搬送アーム104により基板洗浄装置10に搬送され、このウエハWがリフトピンプレート20のリフトピン22上に載置される。次に、昇降駆動部50が処理流体供給管40およびV字形ノズル60を上昇位置から下降位置まで移動させる。この際に、収容部材32の内部に設けられたバネ26の力により接続部材24には常に下方に向かう力が加えられているので、処理流体供給管40の下方への移動に連動してリフトピンプレート20も下方に移動し、リフトピンプレート20が上昇位置から下降位置まで移動する。また、この際に、リフトピンプレート20の下面により基板保持部材31の被押圧部分31cが図6に示すような状態から下方に押圧され、これにより基板保持部材31が軸31aを中心として図6の反時計回りの方向に回転する。このようにして、基板保持部材31の基板保持部分31bがウエハWに向かって当該ウエハWの側方から移動し(図7参照)、基板保持部材31によりウエハWは側方から保持される(図8参照)。このときに、基板保持部材31により側方から保持されたウエハWはリフトピン22から上方に離間する。なお、ウエハWは、その「表面」(パターンが形成される面)が「下面」となり、その「裏面」(パターンが形成されない面)が「上面」となるように、基板洗浄装置10内に搬入される前にリバーサー105(図1参照)により裏返されており、この状態で保持プレート30により保持される。本明細書において、用語「上面(下面)」は、単に、ある時点において上(下)を向いている面という意味で用いられる。
【0053】
<DHF洗浄工程>
次に、回転駆動部39により保持プレート30を回転させる。この際に、保持プレート30の下面から下方に延びるよう設けられた各収容部材32に、リフトピンプレート20の下面から下方に延びるよう設けられた各接続部材24が収容された状態となっているので、保持プレート30が回転したときにリフトピンプレート20も連動して回転し、ウエハWも回転する。なお、この際に、処理流体供給管40およびこれに接続されたV字形ノズル60は回転することなく停止したままである。次に、DHF供給機構70aからDHF供給路40aにDHFを供給する。供給されたDHFは、吐出口61から吐出される。供給されたDHFによりウエハW上の自然酸化膜が除去され。反応生成物は、DHFと一緒に遠心力によりウエハWの下面上を半径方向外側に流れ、ウエハWの外側に流出し、回転カップ36により受け止められて下方に向きを変え、外カップ56の底部に接続された排液管58を介して排出される。このDHF洗浄工程中、ウエハWの下側はDHF雰囲気となるが、ウエハW自体が、DHF雰囲気がウエハWの上方に拡散することを防止するシールドとして機能し、かつ、ウエハWの周囲は回転カップ36および外カップ56により囲まれているため、DHF雰囲気は、ウエハWの下面および外カップ56の内面により囲まれた空間から外側には殆ど拡散しない。また、ウエハWの下面および外カップ56の内面により囲まれた空間内にあるDHF雰囲気は、工場排気系に接続された(すなわち微減圧状態にある)排液管58に吸い込まれ、DHFの廃液と一緒に排出される。従って、処理チャンバ内のウエハWより上方の空間にDHF雰囲気が拡散することが防止または抑制され、ウエハより上方の処理チャンバの内壁および装置部品がDHF雰囲気にさらされて腐食することによるコンタミネーションの原因物質の生成が防止される。
【0054】
<DIWリンス工程>
DHF洗浄工程を所定時間実行した後、吐出口61からのDHFの吐出を停止する。次いで、引き続きウエハWを回転させたまま、DIW供給機構70dからDIW供給路40dに比較的大流量(例えば毎分1500ml)でDIWを供給し、V字形ノズル60の中央部分60Cにある吐出口63からDIWをウエハWの中心部に向けて吐出させる。DIWは遠心力によりウエハWの下面上を半径方向外側に流れ、ウエハWの外側に流出し、回転カップ36により受け止められて下方に向きを変え、外カップ56の底部に接続された排液管58を介して排出される。ウエハWの下面上に残っているDHFおよび反応生成物などが、ウエハWの下面上を半径方向外側に流れるDIWにより洗い流される。
【0055】
<IPA置換工程>
DIWリンス工程を所定時間実行した後、吐出口63からのDIWの吐出を停止する。次いで、引き続きウエハWを回転させたまま、IPA供給機構70bからIPA供給路40bにIPAを供給し、かつ、第1のN2供給機構70cから第1のN2供給路40cにN2ガスを供給する。供給されたIPAおよびN2ガスは、図12(b)に示すように、吐出口62の直前で混合され、ミスト化されたIPAとN2ガスとの混相流からなる二流体スプレーとしてウエハW下面に向けて吐出される。これにより、ウエハW下面上のDIWは、回転するウエハの中央部に対向する位置からウエハの周縁部に対向する位置の間に概ね均等に配置された複数の吐出口62から吐出されたIPAのミストにより、ウエハWの全域において均一かつ迅速に置換され、均一なIPA液膜が直ちにウエハWの下面上に形成される。なお、このIPA置換工程において、IPAのミスト化にN2ガスを用いているため、ウエハWの下方空間の酸素濃度および湿度が低下し、これによりリンス液(DIW)とIPAの置換効率が向上するので、ウォーターマークの発生を抑制することができる。また、次工程のN2スピン乾燥工程の開始時に既に、ウエハWの下方空間に低酸素濃度および低湿度の雰囲気が形成されるという点においても有利である。
【0056】
<N2スピン乾燥工程>
IPA置換工程を所定時間実行した後、吐出口62からのIPAの吐出を停止する。次いで、引き続きウエハWを回転させたまま(回転速度を増大させることが好ましい)、第2のN2供給機構70eから第2のN2供給路40eにN2ガスを供給し、V字形ノズル60の中央部分60Cにある吐出口64からN2ガスをウエハWの中心部に向けて吐出させる。これにより、ウエハ中心部から周縁部に広がるN2ガスの流れが生じ、このN2ガス流によりウエハWの下面上に残留していたIPAが除去される。先にDHF洗浄工程に関連して説明したように、ウエハW自体が、ウエハWの下方の雰囲気がウエハWの上方に拡散することを防止するシールドとして機能し、かつ、ウエハWの周囲は回転カップ36および外カップ56により囲まれているため、ウエハの下方の雰囲気は、ウエハWの下面および外カップ56の内面により囲まれた空間から外側には殆ど拡散しない。また、ウエハWの下面および外カップ56の内面により囲まれた空間内の雰囲気は、工場排気系に接続された(すなわち微減圧状態にある)排液管58に吸い込まれる。従って、吐出口64からN2ガスを供給すると、ウエハWの下方の空間は容易にN2ガス雰囲気、すなわち低酸素低湿度の雰囲気に置換される。このためウォーターマークの発生をより効果的に防止することができる。なお、本実施形態においては、ウエハWに、ウエハWの下面全域をカバーする(ウエハWと概ね同じ大きさを有する)板状体すなわちリフトピンプレート20が対面している。このため、ウエハWの下面、リフトピンプレート20の上面、回転カップ36の内面により囲まれた小容積の空間が画成される。このような小容積の空間は、N2ガス雰囲気への置換がより容易である。このため、ウォーターマークの発生をより効果的に防止することができる。
【0057】
<ウエハ搬出工程>
N2スピン乾燥工程が終了したら、カバー部材80を上昇させて待機位置に戻す。次いで、昇降駆動部50が処理流体供給管40およびV字形ノズル60を下降位置から上昇位置まで移動させる。この際に、各第2の連動部材46が各接続部材24を上方に押し上げることにより、処理流体供給管40の上方への移動に連動してリフトピンプレート20も上方に移動し、リフトピンプレート20が下降位置から上昇位置まで移動する。また、この際に、基板保持部材31に対するバネ部材31dの付勢力により、基板保持部材31は軸31aを中心として図6の時計回りの方向(図6における矢印とは反対の方向)に回転する。これにより、基板保持部材31はウエハWから側方に離間する。基板保持部材31がウエハWから側方に離間することにより、このウエハWはリフトピン22により裏面から支持されるようになる。図2Bに示すようにリフトピンプレート20、処理流体供給管40およびV字形ノズル60が上昇位置に到達した後、リフトピン22上に載置されたウエハWは搬送アーム104により当該リフトピン22上から除去される。搬送アーム104により取り出されたウエハWは基板洗浄装置10の外部に搬出され、リバーサー105により表裏が反転される。
【0058】
なお、吐出路67a,67b,68bのうち、気体であるN2ガスが通流するN2吐出路68bにおいては、当該N2吐出路68bへのN2ガスの供給が遮断されているときには、ノズル外部の雰囲気が当該N2吐出路68b内に侵入しやすくなる。なお、液体が通流する吐出路においては、吐出路への液体の通流が遮断されても液体はその吐出路内に残るためこのような問題はない。例えば、N2吐出路68b内にDHFが侵入したら、その後に吐出するIPAおよびN2ガスからなる二流体スプレーの清浄度が損なわれ好ましくない。このような事態を防止するため、N2吐出路68bに常時微量のN2ガスを通流させて、吐出口62から微量のN2ガスが常時流出するようにしておくことが好ましい。なお、同様の観点から、吐出口64内の清浄度を維持するために、吐出口64からも微量のN2ガスが常時流出するようにしておくことが好ましい。
【0059】
上記の実施形態によれば、IPA置換工程におけるIPAミストの供給が、ウエハWの中心部に対向する位置とウエハWの周縁部に対向する位置の間に配列された複数の吐出口62を有する、ウエハWの下方に設けられたノズルにより行われるため、ウエハWの下面上にあるDIWを、ウエハW全域において均一に、かつ迅速に、IPAに置換することができる。また、各工程、特にN2スピン乾燥工程において、ウエハWの下方空間は、液処理装置の構成部材(特にリフトピンプレート22、回転カップ36)により囲まれるため、ウエハWの下方空間を意図する雰囲気に維持することが容易である。すなわち、薬液処理工程であるDHF洗浄工程では、薬液雰囲気をウエハWの下方空間に閉じこめておくことができ、また、N2スピン乾燥工程においては、ウエハWの下方空間すなわちウエハの処理対象面に面する空間を低酸素低湿度の雰囲気に維持することができる。
【0060】
また、上記の実施形態によれば、ウエハWの下面にIPAミスト(液滴)を供給しているため、IPAの利用効率を向上させることができる。すなわち、IPA置換工程においては、IPAミストの一部が気化してIPA蒸気となるが、IPA蒸気は空気より軽いため、ウエハの下面上あるいはウエハの下方空間に存在するIPAが気化した場合、IPA蒸気はウエハWの下面に向かって上昇し、ウエハに付着し、DIWを置換するために利用することができる。また、特に上記実施形態においては、ウエハの下面に対向するリフトピンプレート20が設けられ、さらにウエハの周囲が回転カップ36で囲まれている。リフトピンプレート20はウエハの下方空間からIPAが逃げることを防止するので、リフトピンプレート20に付着したIPAが気化するならばそれをDIWを置換するために利用することができる。回転カップ36にも同様の機能を期待できる。また、ウエハW、リフトピンプレート20および回転カップ36によりウエハの下方空間が囲まれているため、少量のIPAで比較的高濃度のIPA雰囲気を形成することが容易となる。
【0061】
また、上記の実施形態によれば、ウエハWの中央部に対向する位置から基板の周縁部に対向する位置の間に沿って配列されて各々から同じ処理流体を吐出する複数の吐出口61(62)を有するノズルを使用しているため、ウエハWの下面を高い面内均一性で処理することができる。
【0062】
また、上記の実施形態においては、リフトピンプレート20、処理流体供給管40およびV字形ノズル60が保持プレート30に対して相対的に昇降するようになっており、ウエハWを下方から支持するリフトピン22はリフトピンプレート20に設けられている。このため、従来のようなリフトピン22を通すための貫通穴が底板に形成されておりリフトピン22が当該貫通穴を通って底板の下方に退避するようになっている場合と比較して、ウエハWの乾燥後にリフトピン22に洗浄液が残ることがなくなり、これにより液処理後のウエハWの裏面に処理液が付着することを防止することができる。なぜならば、ウエハWの乾燥処理時に、リフトピン22がリフトピンプレート20と一体的に回転するからである。また、リフトピン22がリフトピンプレート20と一体的に回転することにより、リフトピン22に処理液の液滴が残ることが抑制され、これにより処理後のウエハWの裏面に処理液の液滴が付着することをより一層防止することができる。さらに、V字形ノズル60の中央部分60Cが、リフトピンプレート20の貫通穴20aを塞ぐようになっている。このため、処理流体供給管40を通すための貫通穴20aに処理液が入り込んでしまうことを防止することができる。また、上記の実施形態においては、処理流体供給管40およびV字形ノズル60とリフトピンプレート20とを一体的に昇降させるようになっているので、処理流体供給管40およびリフトピンプレート20が昇降する際にV字形ノズル60の中央部分60Cがリフトピンプレート20の貫通穴20aを塞ぐので、貫通穴20aに処理液が入り込んでしまうことをより一層防止することができる。
【0063】
また、上記の実施形態においては、保持プレート30に回転カップ36が設けられているので、ウエハWの液処理を行う際に回転しているウエハWから処理液が外方に飛散することを防止することができる。また、保持プレート30に基板保持部材31が設けられているので、ウエハWを回転させる際にウエハWを側方から支持することによってより安定的にウエハWが保持される。
【0064】
上記の実施形態は例えば下記のように改変することができる。
【0065】
上記実施形態においては、DHFによる薬液洗浄工程、DIWリンス工程、IPAおよびN2ガスからなる二流体吐出によるIPA置換工程、N2スピン乾燥工程を順次行うことにより自然酸化膜を除去した。しかし、上記実施形態に係る基板処理装置により実施される処理はこれに限定されるものではない。薬液洗浄工程においては、DHF以外の薬液洗浄を行うこともできる。また、薬液洗浄工程がレジスト除去工程であってもよい。
【0066】
ウエハの下面に薬液を供給するノズルとして図示されたようなものを用いることが、処理の均一性および処理液の節約の観点からは好ましいが、これに限定されるものではない。例えば、IPAおよびN2ガスからなる二流体スプレー供給するための第2の棒状部分60Bをそのまま維持する一方で、DHF供給用の第1の棒状部分60Aを削除し、そのかわりにノズルの中央部分60Cに設けた薬液吐出口からDHFを吐出してもよい。この場合、薬液(DHF)の消費量は多くなるが、薬液処理を実行することは可能である。
【0067】
上記実施形態においては、ウエハを保持して回転させる機構であるいわゆる「スピンチャック」の基板保持部として、リフトピンプレート20と回転カップ36と一体化された保持プレート30とを有する形式のものを用いた。しかしながら、上記実施形態に係るV字形ノズル60は、基板の周縁を保持する形式のものであるならば様々な形式のスピンチャックと組み合わせて液処理装置を構築することができる。
【符号の説明】
【0068】
20、30 基板保持部、(保持プレート、リフトピンプレート)
22 板状体(保持プレート)
31、37 保持部材(基板保持部材、固定保持部材)
39 回転駆動部
36 回転カップ
56 外カップ
60 ノズル(V字形ノズル)
60A ノズルの第1の棒状部分
60B ノズルの第2の棒状部分
60C ノズルの中央部分
61 第1の吐出口
62 第2の吐出口
63 第3の吐出口
64 第4の吐出口
W 基板(半導体ウエハ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の下面に処理液を供給することにより基板に所定の液処理例えば洗浄処理またはエッチング処理を行う液処理装置および液処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程においては、基板例えば半導体ウエハの表面ないし裏面に付着した不要な膜(例えば、酸化膜、窒化膜、マスクとしての役割を終えたレジスト膜等)を除去するために、薬液を用いて洗浄ないしエッチング処理が行われる。一般的には、薬液処理の後、同じ装置において、リンス処理および乾燥処理が続いて行われる。
【0003】
特許文献1には、上記の処理を実施することが可能な液処理装置が開示されている。この液処理装置は、ウエハの周縁部を保持して回転するスピンチャックと、スピンチャックに保持されたウエハの上面中央部に処理液を供給する表面ノズルと、ウエハの下面中央部に処理液を供給する裏面ノズルとを備えており、表面ノズルおよび裏面ノズルによって、洗浄用薬液、純水等のリンス液、IPAのような乾燥溶媒をウエハに供給することができる。
【0004】
上記の除去すべき不要な膜の一つとして、ウエハ表面の自然酸化膜(SiO2膜)がある。自然酸化膜の除去のため、ウエハをDHF(希フッ酸)で洗浄すると、SiO2膜が除去されてベアSiが露出する。すなわち親水性のSiO2表面が、疎水性のSi表面に変化する。DHF洗浄工程の後には、通常、DIW(純水)リンス工程およびスピン乾燥工程が行われる。また、DIWが付着した疎水性表面を乾燥させる際は、乾燥ムラが生じやすく、すなわちウォーターマークが発生しやすいため、ウォーターマークの発生防止のため、DIWリンス工程とスピン乾燥工程との間に、DIWを一旦IPA(イソプロピルアルコール)で置換するIPA置換工程を挟むことが行われている。しかし、IPA置換工程を、特許文献1に記載されたようなウエハの処理対象面が下面に存在する形式の装置で行ったとすると、IPAは表面張力が低いため、ウエハ下面に供給されたIPAは重力によりウエハ下面から下方に落下しやすく、ウエハ下面に均一に広げることは困難である。また、ウエハ下面全面をIPAで覆うには大量のIPAが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−287999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、基板の下面を処理する液処理装置および方法において、基板の処理対象面をIPAにより効率良く乾燥させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点によれば、処理対象面が下面となるように基板を保持して回転させることと、前記基板の下面にDIW(純水)を供給して、前記基板にリンス処理を施すことと、その後、前記基板の下面にIPA(イソプロピルアルコール)とN2ガスとを含むミストを供給して、前記DIWをIPAで置換することと、を備え、前記ミストの供給は、前記基板の中心部に対向する位置と前記基板の周縁部に対向する位置の間に配列された複数の吐出口を有する、前記基板の下方に設けられたノズルにより行われる液処理方法が提供される。
【0008】
また、本発明の第2の観点によれば、基板の周縁部を保持する保持部材を有し、基板を水平に保持する基板保持部と、前記基板保持部を回転させる回転駆動部と、前記基板保持部に保持された基板の下面の下方に位置するように設けられたノズルであって、前記基板保持部により保持された基板の下面に薬液を吐出する第1の吐出口と、前記基板保持部により保持された基板の下面にIPAとN2ガスとを含むミストを吐出する複数の第2の吐出口と、前記基板保持部により保持された基板の下面にDIWを吐出する第3の吐出口と、前記基板保持部により保持された基板の下面にN2ガスを吐出する第4の吐出口と、を有するノズルと、を備え、前記複数の第2の吐出口は、前記基板保持部により保持された基板の中心部に対向する位置と前記基板の周縁部に対向する位置の間に配列されている液処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板の中心部に対向する位置と前記基板の周縁部に対向する位置の間に配列されている複数の吐出口を有する基板の下方に配置されたノズルを用いて、基板の下面にIPAとN2ガスとを含むミストを吐出しているため、基板の下面の全体を均一かつ迅速にIPAに置換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態による基板洗浄装置を含む液処理システムを上方から見た上方平面図である。
【図2A】本発明の実施の形態の基板洗浄装置の構成を示す縦断面図であって、リフトピンプレートおよび洗浄液供給管が下降位置にあるときの状態を示す図である。
【図2B】本発明の実施の形態の基板洗浄装置の構成を示す縦断面図であって、リフトピンプレートおよび洗浄液供給管が上昇位置にあるときの状態を示す図である。
【図2C】図2Aに示すような、ウエハが基板支持部および固定保持部により保持された状態を示す、図2Aにおける基板洗浄装置を上方から見た上面図である。
【図3】図2Aおよび図2Bに示す基板洗浄装置のリフトピンプレートの構成を示す斜視図である。
【図4】図2Aおよび図2Bに示す基板洗浄装置の保持プレートの構成を示す斜視図である。
【図5】図2Aおよび図2Bに示す基板洗浄装置における、リフトピンプレートから下方に延びる接続部材および保持プレートから下方に延び接続部材を収容する中空の収容部材の構成の詳細を示す拡大縦断面図である。
【図6】図2Aおよび図2Bに示す基板洗浄装置における保持プレートに設けられた基板支持部の構成を示す拡大縦断面図である。
【図7】図6に示す状態からリフトピンプレートが下方に移動したときの状態を示す拡大縦断面図である。
【図8】図7に示す状態からリフトピンプレートが更に下方に移動したときの状態を示す拡大縦断面図である。
【図9】図2Aおよび図2Bに示す基板洗浄装置の処理流体供給管およびV字形ノズル並びにこれらを昇降させる昇降機構の構成を示す斜視図である。
【図10A】V字形ノズルを示す平面図である。
【図10B】リフトピンプレートと搬送アームとの間でウエハが受け渡しされるときのV字形ノズル、リフトピンおよび搬送アームの位置関係を説明するための概略平面図である。
【図11】V字形ノズルの第1の棒状部分の構造および作用について説明する図であって、(a)は図10におけるXIa−XIa線に沿った第1の棒状部分の内部構造を示す断面図、(b)は第1の棒状部分からDHFが吐出される様子を示す作用図である。
【図12】V字形ノズルの第2の棒状部分の構造および作用について説明する図であって、(a)は図10におけるXIIa−XIIa線に沿った第2の棒状部分の内部構造を示す断面図、(b)は第2の棒状部分からIPAおよびN2ガスを混合してなるミスト状の二流体が吐出される様子を示す作用図である。
【図13】V字形ノズルの中央部分の構造を説明する図であって図10におけるXIII−XIII線に沿った断面図である。
【図14】V字形ノズルの中央部分の構造を説明する図であって図10におけるXVI−XVI線に沿った断面図である。
【図15】V字形ノズルから吐出された処理液がウエハ下面に形成するスポットを説明する概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。まず、図1を用いて、本発明による液処理装置の実施形態に係る基板洗浄装置を含む処理システムについて説明する。図1に示すように、処理システムは、外部から被処理基板としての半導体ウエハW(以下単に「ウエハW」と称する)を収容したキャリアを載置するための載置台101と、キャリアに収容されたウエハWを取り出すための搬送アーム102と、搬送アーム102によって取り出されたウエハWを載置するための棚ユニット103と、棚ユニット103に載置されたウエハWを受け取り、当該ウエハWを基板洗浄装置10内に搬送する搬送アーム104と、を備えている。図1に示すように、液処理システムには、複数(図1に示す態様では10個)の基板洗浄装置10と、2つのリバーサー(REV、ウエハ裏返し装置)105が組み込まれている。なお、図1に示すように、搬送アーム104は上方から見て略U字形状となっているが、この搬送アーム104はウエハWをリフトピン22(後述)上に載置したりリフトピン22上からウエハWを取り除いたりする際にリフトピン22および後に詳述するV字形ノズル60に接触しないような形状となっている(図10Bを参照)。
【0012】
次に、基板洗浄装置10の概略的な構成について図2Aおよび図2Bを用いて説明する。基板洗浄装置10は、ウエハWを保持する保持プレート30と、保持プレート30の上方に設けられ、ウエハWを下方から支持するリフトピン22を有するリフトピンプレート20と、保持プレート30を回転させる電動モータ等を備えた回転駆動部39と、保持プレート30の中心部分に形成された貫通穴30aおよびリフトピンプレート20の中心部分に形成された貫通穴20aを通るよう設けられた処理流体供給管40と、処理流体供給管40を介して供給された処理流体をウエハWの下面に向けて吹き付けるV字形ノズル60とを有している。処理時に、リフトピンプレート20は、保持プレート30と連動して一体的に回転するようになっている。
【0013】
リフトピンプレート20、処理流体供給管40およびV字形ノズル60は、保持プレート30に対して相対的に昇降することができる。ここで、図2Aは、リフトピンプレート20、処理流体供給管40およびV字形ノズル60がそれぞれ下降位置にあるときの状態を示しており、図2Bは、リフトピンプレート20、処理流体供給管40およびV字形ノズル60がそれぞれ上昇位置にあるときの状態を示している。リフトピンプレート20、処理流体供給管40およびV字形ノズル60は、それぞれ、図2Aに示すような下降位置と図2Bに示すような上昇位置との間で昇降する。
【0014】
次に、基板洗浄装置10の各構成要素の詳細について以下に説明する。
【0015】
図3に示すように、リフトピンプレート20は円板形状のものからなり、その中心部分には貫通穴20aが形成されている。貫通穴20aの周囲には環状突起20bが設けられており、リフトピンプレート20上にある液体が貫通穴20a内に入り込むことを防止している。貫通穴20aに処理流体供給管40が通される。リフトピンプレート20の表面の周縁部近傍には複数本(本例では4本)のリフトピン22が設けられている。好ましい実施形態においては、特に図2Cに示されるように、4本のリフトピン22が2つの対をなし、一方の対22a,22a’(図2C中で左側にある2本)が円周方向に中心角で30度(鋭角)に相当する距離だけ離れた位置に配置されており、他方の対22b,22b’(図2C内で右側にある2本)が円周方向に中心角で120度(鈍角)に相当する距離だけ離れた位置に配置されている。また、4本のリフトピン22は、図2C中においてウエハWの中心を通って左右方向に延びる仮想線に対して線対称に配置されている。図2Cに示すようにリフトピンを配置することにより、ウエハWを十分に安定した状態でリフトピン22上に支持させることが可能となるとともに、ウエハWの搬出入(図2Bを参照)の際にリフトピン22に邪魔されることなくU字形の搬送アーム104(図10Bも参照)をウエハWの下方に侵入(図2Cの右手側から左手側に向かって侵入)させることができる。リフトピンプレート20の下面(各リフトピン22が設けられた面とは反対側の面)から、複数例えば3つの棒状の接続部材24が下方に延びている。これらの接続部材24は、リフトピンプレート20の周縁部近傍において周方向に等間隔で設けられている。
【0016】
図4に示すように、保持プレート30は円板形状のものからなり、その中心部分には貫通穴30aが形成されている。この貫通穴30aには処理流体供給管40が通される。また、保持プレート30の表面には、図2Aに示すように、接続部材38を介して回転カップ36が取り付けられている。回転カップ36は、リフトピンプレート20、処理流体供給管40およびV字形ノズル60が下降位置にあるときに保持プレート30により保持されるウエハWの外周縁を囲む。また、図2Aおよび図2Cに示すように、回転カップ36には、ウエハWを保持するための2つの固定保持部材37が設けられている。固定保持部材37の具体的な機能については後述する。なお、これらの固定保持部材37は、回転カップ36に設けられる代わりに保持プレート30に設けられていてもよく、あるいは接続部材38に直接接続されていてもよい。固定保持部材37が接続部材38に直接接続されている場合には、水平方向の力に対する固定保持部材37の強度をより大きなものとすることができる。
【0017】
保持プレート30の下面(回転カップ36が設けられた面とは反対側の面)の中心部分には、当該保持プレート30の下面から下方に延びるよう中空の回転軸34が取り付けられている。回転軸34の中空部分には処理流体供給管40が収容されている。回転軸34はベアリング(図示せず)により支持されるとともに、電動モータ等の回転駆動部39により回転させられる。回転駆動部39が回転軸34を回転させることにより、保持プレート30も回転する。
【0018】
図4に示すように、保持プレート30には、3つの貫通穴(接続部材貫通穴)30bが形成されており、各貫通穴30bにリフトピンプレート20に結合された接続部材24がスライド可能に通されている。従って、接続部材24は、保持プレート30とリフトピンプレート20との相対的回転を禁止して保持プレート30およびリフトピンプレート20が一体的に回転するように接続する一方で、保持プレート30とリフトピンプレート20との相対的上下動を許容する。貫通穴30bは保持プレート30の周方向に等間隔に設けられている。また、保持プレート30の下面において、各貫通穴30bの箇所には、3つの円筒形状の収容部材32が設けられている。各収容部材32は、保持プレート30の下面から下方に延びるようになっており、リフトピンプレート20の下面から下方に延びる各接続部材24を収容するようになっている。これらの収容部材32は、保持プレート30の周縁部近傍において周方向に等間隔で設けられている。
【0019】
リフトピンプレート20の下面から下方に延びる各接続部材24および保持プレート30の下面から下方に延びる各収容部材32について図5を用いてより詳細に説明する。図5に示すように、円筒形状の各収容部材32の内径は各接続部材24の外径よりもやや大きくなっており、各収容部材32の長手方向(図5の上下方向)に沿って各接続部材24が各収容部材32内で移動することができるようになっている。図2Aに示すように、リフトピンプレート20が下降位置にあるときには、各接続部材24は各収容部材32に完全に収容された状態となる。一方、図2Bに示すように、リフトピンプレート20が上昇位置にあるときには、各接続部材24はその下部における一部分のみが各収容部材32に収容された状態となり、各接続部材24は保持プレート30に形成された貫通穴30bを通過してこの保持プレート30から上方に突出する。リフトピンプレート20が下降位置にあるときには、各接続部材24が各収容部材32に収容された状態となる。
【0020】
図5に示すように、各収容部材32の中空部分にはバネ26が圧縮された状態で収容されている。このバネ26は、その下端が接続部材24の下端部分に取り付けられるとともに、その上端が貫通穴30bの近傍における保持プレート30の下面に取り付けられている。このため、バネ26により接続部材24は下方に付勢されるようになっている。すなわち、バネ26が圧縮状態から元の状態に戻ろうとする力により、接続部材24には常に下向きの力(保持プレート30から下方に移動しようとする力)が加えられる。
【0021】
図2Aおよび図2Bに示すように、回転カップ36の外方には外カップ56が設けられており、保持プレート30や回転カップ36は外カップ56により覆われる。この外カップ56には排液管58が接続されており、ウエハWの洗浄のために使用され、ウエハWの回転により当該ウエハWから外方に飛散して外カップ56により受けられた洗浄液は排液管58により排出される。
【0022】
図2Aおよび図2Bに示すように、保持プレート30には、ウエハWを側方から支持するための可動の基板保持部材31が設けられている。基板保持部材31は、図2Aに示すようにリフトピンプレート20が下降位置にあるときにウエハWを側方から保持し、一方、図2Bに示すようにリフトピンプレート20が上昇位置にあるときにウエハWから離間する。より詳細に説明すると、図2Cに示すように、ウエハWの洗浄処理を行う際に、ウエハWは基板保持部材31および2つの固定保持部材(固定の基板保持部材)37により保持される。このときに、基板保持部材31はウエハWを固定保持部材37に向かって押し付ける。すなわち、図2Cにおいて基板保持部材31によりウエハWに対して図2Cにおける左方向に力が加えられ、これによりウエハWは2つの固定保持部材37に押し付けられる。このように、可動の基板保持部材31および固定保持部材37の両方を用いてウエハWを側方から保持する場合には、固定保持部材37を用いずに複数の可動の基板保持部材31だけを用いてウエハWを側方から保持する場合と比較して、ウエハWに対して移動(進退)する部材の数を1つのみとすることができるので、よりシンプルな構成でウエハWの保持を行うことができる。
【0023】
以下に基板保持部材31の構成の詳細について図6〜図8を参照して説明する。図6は、リフトピンプレート20が図2Bに示すような上昇位置から図2Aに示すような下降位置に向かって移動する途中での状態を示す図であり、図7は、図6に示す状態からリフトピンプレート20が下方に移動したときの状態を示す図であり、図8は、図6に示す状態からリフトピンプレート20が更に下方に移動し、リフトピンプレート20が図2Aに示すような下降位置に到達したときの状態を示す図である。
【0024】
図6乃至図8に示すように、基板保持部材31は軸31aを介して保持プレート30に軸支されている。より詳細には、図6乃至図8に示すように、保持プレート30には軸受け部33が取り付けられており、この軸受け部33に設けられた軸受け孔33aに軸31aが受け入れられる。軸受け孔33aは水平方向に延びる長孔からなり、基板保持部材31の軸31aはこの軸受け孔33aに沿って水平方向に移動することができる。このようにして、基板保持部材31は、軸受け部33の軸受け孔33aに受け入れられた軸31aを中心として揺動することができる。
【0025】
基板保持部材31の軸31aには、ねじりバネ等のバネ部材31dが巻き掛けられている。このバネ部材31dは、軸31aを中心として基板保持部材31を図6乃至図8における時計回りの方向に回転させるような力を基板保持部材31に付勢するようになっている。これにより、基板保持部材31に何ら力が加えられていない場合には、図2Bに示すように、基板保持部材31が保持プレート30に対して傾斜した状態となり、基板保持部材31におけるウエハWを側方から保持するための基板保持部分31b(後述)は保持プレート30の中心から遠ざかった状態となる。
【0026】
また、軸31aに巻き掛けられたバネ部材31dからは線状部分が伸び出しており、この線状部分は軸受け部33の内壁面33bに係止されて、軸31aを保持プレート30の中心に向かって押し返す。このように、バネ部材31dの線状部分により、軸31aは保持プレート30の中心に向かって(すなわち、図6乃至図8における左方向に向かって)常時押圧される。このため、比較的径が小さなウエハWが可動の基板保持部材31および固定保持部材37により支持される場合には、軸31aは、図6乃至図8に示すように、軸受け孔33aにおける保持プレート30の中心に近い位置(すなわち、図6乃至図8における左側の位置)に位置する。一方、比較的径が大きなウエハWが基板保持部材31および固定保持部材37により支持される場合には、バネ部材31dの線状部分による力に抗して、軸31aは軸受け孔33aに沿って図6等に示す位置から右方向に移動する。なお、ここでのウエハの径の大小とは、許容寸法誤差内でのウエハの径の大小を意味している。
【0027】
また、基板保持部材31は、ウエハWを側方から保持する基板保持部分31bと、軸31aに関して基板保持部分31bと反対側に設けられた被押圧部材31cとを有している。被押圧部材31cは、リフトピンプレート20と保持プレート30との間に設けられており、この被押圧部材31cは、図6乃至図8に示すようにリフトピンプレート20が下降位置またはその近傍位置にあるときに当該リフトピンプレート20の下面により下方に向かって押圧される。
【0028】
図6乃至図8に示すように、基板保持部材31は、リフトピンプレート20が上昇位置から下降位置に移動したときに、当該リフトピンプレート20の下面により被押圧部材31cが下方に押圧されることにより軸31aを中心として図6等の反時計回りの方向(図6等の矢印方向)に回転する。そして、基板保持部材31が軸31aを中心として回転することにより、基板保持部分31bがウエハWに向かって当該ウエハWの側方から移動する。これにより、リフトピンプレート20が下降位置に到達したときに、図8に示すように、ウエハWが基板保持部材31により側方から保持される。ここで、図8に示すように、ウエハWが基板保持部材31により側方から保持されたときに、このウエハWはリフトピン22の先端から上方に離間し、リフトピン22から上方に浮いた状態となる。また、前述のように、ウエハWの大きさによっては、バネ部材31dの線状部分による力に抗して軸31aが軸受け孔33aに沿って図6等に示す位置から右方向に移動する場合もある。このため、比較的大きなウエハWが基板保持部材31および固定保持部材37により保持される場合であっても、基板保持部材31が水平方向に移動可能となっているので、ウエハWを変形させたり破損させたりすることなくウエハWを側方から保持することができる。
【0029】
上述のような基板保持部材31が基板洗浄装置10に設けられていることにより、基板保持部材31を駆動するための専用の駆動機構(動力源)を設ける必要がなく、後述する昇降駆動部50によりリフトピンプレート20を昇降させるだけで、保持プレート30の基板保持部材31によるウエハWの保持/解放動作を行うことができるため、基板洗浄装置10の構成をよりシンプルなものとすることができる。また、リフトピンプレート20の昇降のタイミングと基板保持部材31の移動のタイミングとの間にタイムラグが生じることを抑制することができ、スループットを向上させることもできる。
【0030】
図2Aおよび図2Bに示すように、処理流体供給管40はリフトピンプレート20の貫通穴20aおよび保持プレート30の貫通穴30aをそれぞれ通過するよう設けられている。なお、処理流体供給管40は、リフトピンプレート20や保持プレート30が回転する際にも回転しないようになっている。処理流体供給管40の内部には、処理流体をV字形ノズル60に供給するため複数、本例では5つの流体供給路、すなわち第1の流体供給路(「DHF(希フッ酸)供給路」とも称する)40a、第2の流体供給路(「IPA(イソプロピルアルコール)供給路」とも称する)40b、第3の流体供給路(「第1のN2ガス供給路」とも称する)40c、第4の流体供給路(「DIW(純水)供給路」とも称する)40d、第5の流体供給路(「第2のN2ガス供給路」とも称する)40eが鉛直方向に延びるように設けられている。処理流体供給管40の上端には後に詳述するV字形ノズル60が取り付けられている。
【0031】
図2Aに示すように、処理流体供給管40内の第1〜第5の流体供給路40a,40b,40c,40d,40eは対応する第1〜第5の流体供給機構70a,70b,70c,70d,70eにそれぞれ接続されている。
第1の流体供給機構70aは、DHFを供給するDHF供給機構(以下、「DHF供給機構70a」と称する)であり、DHF供給源71aに接続された管路74aに上流側から順次介設された可変絞り弁72aおよび開閉弁73aを有している。
第2の流体供給機構70bは、IPAを供給するIPA供給機構(以下、「IPA供給機構70b」と称する)であり、IPA供給源71bに接続された管路74bに上流側から順次介設された可変絞り弁72bおよび開閉弁73bを有している。
第3の流体供給機構70cは、不活性ガス例えばN2ガスを供給するN2ガス供給機構(以下、「第1のN2ガス供給機構70c」と称する)であり、N2ガス供給源71cに接続された管路74cに上流側から順次介設された可変絞り弁72cおよび開閉弁73cを有している。
第4の流体供給機構70dは、リンス用液体であるDIW(純水)を供給するDIW供給機構(以下、「DIW供給機構70d」と称する)であり、DIW供給源71dに接続された管路74dに上流側から順次介設された可変絞り弁72dおよび開閉弁73dを有している。
第5流体供給機構70eは、不活性ガス例えばN2ガスを供給するN2ガス供給機構(以下、「第2のN2ガス供給機構70e」と称する)であり、N2ガス供給源71eに接続された管路74eに上流側から順次介設された可変絞り弁72eおよび開閉弁73eを有している。
【0032】
図2A、図2Bおよび図9に示すように、処理流体供給管40には接続部材52を介して昇降駆動部50が設けられている。昇降駆動部50は、処理流体供給管40を昇降させるようになっている。すなわち、昇降駆動部50が接続部材52を昇降させることにより、この接続部材52に接続された処理流体供給管40およびV字形ノズル60も昇降することとなる。より詳細には、昇降駆動部50は、図2Aに示すような下降位置と、図2Bに示すような上昇位置との間で処理流体供給管40およびV字形ノズル60を昇降させる。
【0033】
また、図9に示すように、処理流体供給管40には第1の連動部材44が接続されている。そして、第1の連動部材44には、3つの棒状の第2の連動部材46が第1の連動部材44から上方に延びるよう接続されている。ここで、各第2の連動部材46は、リフトピンプレート20の下面から下方に延びるよう設けられた各接続部材24に対応して設けられており、棒状の各第2の連動部材46の外径は円筒形状の収容部材32の内径よりも小さい。より詳細には、各第2の連動部材46は、各接続部材24の底面に接触するよう設けられており、各第2の連動部材46は、図2B等に示すように各収容部材32内で各接続部材24を上方に押し上げることができる。
【0034】
すなわち、図2Aに示すような状態において、昇降駆動部50が処理流体供給管40を上方に移動させたときには、処理流体供給管40に接続された第1の連動部材44および各第2の連動部材46も上方に移動し、各第2の連動部材46が各収容部材32内で各接続部材24を上方に押し上げることとなる。これにより、リフトピンプレート20も処理流体供給管40と連動して上方に移動し、図2Bに示すように、リフトピンプレート20、処理流体供給管40およびV字形ノズル60はそれぞれの上昇位置に到達することとなる。一方、図2Bに示すような状態において、昇降駆動部50が処理流体供給管40を下方に移動させたときには、収容部材32の内部に設けられたバネ26の力により接続部材24には常に下方に向かう力が加えられているので、各第2の連動部材46が下方に移動したときに各接続部材24もその下面が各第2の連動部材46の上端部分に接触するよう下方に移動する。このようにして、図2Aに示すように、リフトピンプレート20、処理流体供給管40およびV字形ノズル60はそれぞれの下降位置に到達する。
【0035】
図2Aに示すように、リフトピンプレート20は、下降位置にあるときには保持プレート30に隣接する。図示例においては、詳細には、リフトピンプレート20は保持プレート30上に載置され、保持プレート30により支持される。一方、図2Bに示すように、リフトピンプレート20は、上昇位置にあるときには、保持プレート30から上方に離間し、リフトピン22上へのウエハWの受け渡しおよびリフトピン22上からのウエハWの取り出しを行うことができるようになる。
【0036】
このように、第1の連動部材44および3つの第2の連動部材46により、リフトピンプレート20、処理流体供給管40およびV字形ノズル60を連動して一体的に昇降させる連動機構が構成されている。また、第1の連動部材44、3つの第2の連動部材46、昇降駆動部50、接続部材52により、リフトピンプレート20、処理流体供給管40およびV字形ノズル60を連動して昇降させて、リフトピンプレート20、処理流体供給管40およびV字形ノズル60を保持プレート30に対して相対的に昇降させる昇降機構が構成されている。
【0037】
次に、図2A、図2B、図9及び図10を参照して、V字形ノズル60の構成について説明する。V字形ノズル60は、中央部分60Cと、この中央部分60Cに接続されるとともにV字形に配置された第1の棒状部分60Aおよび第2の棒状部分60Bと、を有している。中央部分60Cにおいて、V字形ノズル60は処理流体供給管40の上端に取り付けられている。中央部分60Cは、リフトピンプレート20の貫通穴20aを覆うカバー部材としての役割をも果たす。棒状部分60A,60Bは中央部分60Cからリフトピンプレート20の半径方向外側すなわちウエハWの半径方向外側に延び、処理時にリフトピン22と干渉しないように(処理時にV字形ノズル60は回転しないがリフトピンプレート20は回転する)、リフトピン22が配置される仮想円周のわずかに手前で終端している。
【0038】
図10に示す実施形態においては、第1の棒状部分60Aおよび第2の棒状部分60Bは例えば30度(この角度に限定されるものではない)の角を成している。従って、リフトピンプレート20および保持プレート30を所定の角度位置に位置決めすることにより、第1の棒状部分60Aおよび第2の棒状部分60Bがそれぞれリフトピン22a、22a’に向かって延びるように位置合わせすることができる。図2Bより理解できるように、ウエハWの下面とV字形ノズル60との間は非常に狭いため、搬送アーム104とV字形ノズル60との両者の衝突を回避する観点からは、ウエハ搬出入時に搬送アーム104とV字形ノズル60とが平面視で重ならないようにすることが好ましい。図10に示すようなリフトピン22a,22a’と第1の棒状部分60Aおよび第2の棒状部分60Bとの位置関係が確保されていれば、図10Bに示すように、搬送アーム104を4つのリフトピンおよびV字形ノズル60に衝突しないようにウエハの下側に侵入させることが容易となる。なお、図10Bに示すように、搬送アーム104の二股の先端部は、搬送アーム104がウエハの下方に侵入するときに、リフトピン22a,22a’の外側であって、リフトピン22b,22b’の内側を通過する(図2Cを合わせて参照のこと)。上記のことは、第1の棒状部分60Aおよび第2の棒状部分60BをV字型に配置することにより生じうる利点の一つである。
【0039】
特に図11(a)および図12(a)に示すように、棒状部分60A,60Bは翼型に類似する断面形状を有している。この液処理装置では、棒状部分60A,60Bに対してウエハWが図10、図11(a)、図12(a)に示す矢印R方向に回転するようになっている。このとき、ウエハWの下面とリフトピンプレート20との間には矢印R方向の気流が生じる。翼型断面を有する棒状部分60A,60Bの上方を通過する気流により、液の流れが改善される。詳細には、気流は、棒状部分60A,60Bの背面とウエハWとの間を通過する際に、絞り効果により流速を増すとともにウエハWの下面に向かうように整流される。このように棒状部分60A,60Bの影響を受けた気流は、ウエハWの下面上に衝突した処理液(例えば薬液)がウエハWの下面に沿ってスムーズに拡散することを助ける。また、棒状部分60A,60Bが翼型断面を有することにより、気流の影響による棒状部分60A,60Bの振動が最小限に抑制される。
【0040】
V字型ノズル60は、ウエハWの中央部に対向する位置からウエハWの周縁部に対向する位置の間に配列された複数の第1の吐出口61を有している。第1の吐出口61は、DHFをウエハWに向けて吐出するためのものである。第1の吐出口61は、中央部分60Cから第1の棒状部分60Aの先端部に至るまでの区間内に、第1の棒状部分60Aの長手方向に沿って一列に配列されている。さらに、V字型ノズル60は、ウエハWの中央部に対向する位置からウエハWの周縁部に対向する位置の間に配列された複数の第2の吐出口62を有している。第2の吐出口62は、IPAとN2ガスの混合流体からなる二流体スプレーをウエハWに向けて吐出するためのものである。第2の吐出口62は、中央部分60Cから第2の棒状部分60Bの先端部に至るまでの区間内に、第2の棒状部分60Bの長手方向に沿って一列に配列されている。さらに、V字型ノズル60は、その中央部分60Cに、1つの第3の吐出口63を有している。第3の吐出口63はウエハWの中央部に向けてDIWを吐出するためのものである。さらに、V字型ノズル60は、その中央部分60Cに、1つの第4の吐出口64を有している。第4の吐出口64はウエハWの中央部に向けてN2ガスを吐出するためのものである。なお、第4の吐出口64は保持プレート30に保持されたウエハWの中心のほぼ真下に位置している。
【0041】
なお、第1および第2の吐出口61,62およびこれに連なる吐出路(67a,67b、68a、68b)の径はかなり小さい(直径0.3〜0.5mm程度)のため、液が吐出口および吐出路を通過するときに、摩擦で帯電する。これを防止するため、V字型ノズル60は、導電性のある材料、例えばカーボンファイバー入りのPFAにより形成することが望ましい。
【0042】
図14に示すように、処理流体供給管40は、その上端に拡径された頭部41を有している。V字形ノズル60の中央部分60Cは、処理流体供給管40の頭部41に対して図示しないネジにより連結される。
【0043】
図14に示すように、V字形ノズル60の中央部分60Cと処理流体供給管40の頭部41が連結されると、処理流体供給管40内を鉛直方向に延びるDIW供給路40eと中央部分60C内を鉛直方向に延びる吐出路63aが連通する。これにより、DIW供給路40dを介して送られてきたDIWを第3の吐出口63からウエハW下面に向けて吐出させることが可能となる。なお、第3の吐出口63は、そこから吐出されるDIWが確実にウエハW下面の中央Wcに到達することが保証されるような形状に形成されている。また、中央部分60Cと頭部41が連結されると、処理流体供給管40内を鉛直方向に延びる第2のN2ガス供給路40eと中央部分60C内を鉛直方向に延びる吐出路64aが連通する。これにより、第2のN2ガス供給路40eを介して送られてきたN2ガスを第4の吐出口64からウエハW下面に向けて吐出させることが可能となる。
【0044】
また、中央部分60Cと頭部41が連結されると、図13に示すように、処理流体供給管40内を鉛直方向に延びるIPA供給路40bとV字形ノズル60内に形成された流体通路(IPA通路)65bとが連通するとともに、処理流体供給管40内を鉛直方向に延びる第1のN2供給路40cとV字形ノズル60内に形成された流体通路(N2通路)66bとが連通する。図10に破線で示すように、IPA通路65bおよびN2通路66bは、V字形ノズル60の中央部分60Cから第2の棒状部分60Bの先端部に至るまで、棒状部分60Bの長手方向に沿って、水平に、かつ互いに平行に延びている。また、詳細に図示はされていないが、中央部分60Cと頭部41が連結されると、図13に示した態様と同様の態様(但し接続されるのは1つの供給路と1つの通路だけである)で、処理流体供給管40内を鉛直方向に延びるDHF供給路40aとV字形ノズル60内に形成された流体通路(DHF通路)65aとが連通する。図10に破線で示すように、DHF通路65aは、V字形ノズル60の中央部分60Cから第1の棒状部分60Aの先端部に至るまで、第1の棒状部分60Aの長手方向に沿って、水平に延びている。
【0045】
図11(a)に示すように、V字形ノズル60の中央部分60Cおよび第1の棒状部分60Aにおいては、各吐出口61に対応して、DHF通路65aに1つのDHF吐出路67aが接続されている。従って、各吐出口61から、DHFが吐出される。図11(b)に示すように、各吐出口61は、そこから吐出されるDHFの吐出方向がウエハW回転方向Rに傾斜するように、言い換えれば、各吐出口61から吐出されるDHFの吐出方向を示すベクトルV61がウエハ回転方向Rの成分を持つように、構成されていることが好ましい。これにより、ウエハWの下面に衝突したDHFがウエハWに弾かれること(液はね)を抑制することができ、吐出したDHFを無駄にすることなく吐出したDHFの多くをウエハWの処理に有効に利用することができる。なお、DHFの吐出方向がウエハWの回転方向の成分を持つことにより、一旦ウエハWに到達したDHFがウエハWから落下してV字形ノズル60の棒状部分60Aに再付着することを低減することができる。ウエハWからのDHFの落下は、DHFがウエハWに到達した時点およびその直後に生じやすいからである。複数の吐出口61の大部分は、吐出口61から吐出されるDHFの吐出方向を示すベクトルV61がウエハ回転方向Rの成分を持ち、かつ、ベクトルV61が第1の棒状部分60Aの長手方向と直交する方向を向いていることが好ましい。但し、最も半径方向外側にある1個の吐出口(61”)またはこれを含む数個の吐出口61は、そこから吐出されるDHFの吐出方向を示すベクトルV61が、図10中に符号V61eが付された矢印で示すように、半径方向外側を向いた成分を有していてもよい。これにより、反応済みのDHFがウエハWからスムーズに離脱する。また、最も半径方向内側にある1個または数個の吐出口61、特に最も半径方向内側にある1個の吐出口61’は、そこから吐出されるDHFの吐出方向を示すベクトルV61が、図10中に符号V61cが付された矢印で示すように、ウエハWの中心を向いていることが望ましい。このようにすることで、ウエハWの中心に未処理領域が発生することを防止することができる。
【0046】
図12(a)に示すように、V字形ノズル60の中央部分60Cおよび第2の棒状部分60Bにおいては、各吐出口62に対応して、IPA通路65bに1つのIPA吐出路67bが、N2通路66bに一つのN2吐出路68bがそれぞれ接続されている。IPA吐出路67bとN2吐出路68bは吐出口62の部分で合流している。
【0047】
また、IPAをDIW通路65bからIPA吐出路67bを介して流し、N2ガスをN2通路66bからN2吐出路68bを介して流すと、IPA吐出路67bとN2吐出路68bとの合流点すなわち吐出口62の位置でIPA流とN2ガス流とが衝突し、両者が混合され、IPAおよびN2ガスからなるミスト状の混合流体すなわち二流体スプレーが形成される。図12(b)に示すように、吐出口62から吐出される二流体スプレーは扇状に広がりつつ上方に向けて吐出される。なお、最も半径方向内側にある1個または数個の吐出口62は、特に最も半径方向内側にある1個の吐出口62’は、そこから吐出される二流体スプレーの吐出方向を示すベクトルV62が、図10中に符号V62cが付された矢印で示すように、ウエハWの中心を向いていることが望ましい。
【0048】
図15に示された複数の楕円は、各吐出口61、62から吐出された処理流体(DHF)がウエハWの下面に到達した瞬間に処理流体により覆われるウエハWの下面上の領域(以下に「スポット」とも称する)を模式的に示している。なお、処理流体はウエハWの下面に到達した後には、ウエハWの回転による遠心力、吐出口61、62からの処理流体の吐出圧力等の要因に応じてウエハWの下面上で広がる。吐出口61、62から処理流体は平面視で円の接線方向に、斜め上方に向けて吐出されているので、スポットは楕円になる。但しIPAおよびN2ガスからなる二流体スプレーの場合は、比較的大径の概ね円形になる。スポットの中心の間隔Pは、吐出口61、62の配列ピッチに等しい。また、吐出後ウエハ到達前に処理流体は拡散するため、楕円の短軸(短軸は吐出口の配列方向と一致する)の長さBは吐出口61、62の径よりも大きくなる。なお、楕円の長軸の長さAは吐出口61、62の径よりもずっと大きい。DHF等の薬液を吐出する際には、処理の均一性の観点から、隣接するスポットには所定の長さLの重複部分が生じるように吐出口61を設計することが好ましい。しかしながら、隣接するスポットを形成する薬液が直ちに融合するのであれば、隣接するスポット間に重複部分が無くてもかまわない。
【0049】
図10に示すように、V字形ノズル60は、V字形に配置された第1の棒状部分60Aと第2の棒状部分60Bとを有しているが、DHFを吐出するための吐出口61が設けられた第1の棒状部分60Aは、IPAおよびN2ガスからなる二流体スプレーを吐出するための第2の棒状部分60Bから、ウエハ回転方向Rに小さな鋭角(ここでは30度)だけ進んだ(回転した)位置に配置されている。この配置はV字形ノズル60の清浄度を維持する上で好ましい。すなわち、ウエハ下面側の空間内では、ウエハ回転方向Rに進行する気流が生じており、吐出口61、62から吐出した液はその気流に乗って流れる。また、吐出口61から吐出されてウエハWに到達したDHFの一部は、重力によりウエハWから落下する。仮に、第1の棒状部分60Aと第2の棒状部分60Bの位置が図示されたものと逆であったならば、第1の棒状部分60Aから吐出されたDHFおよび反応生成物が、IPAおよびN2ガスからなる二流体スプレーを吐出するための第2の棒状部分60Bに付着する可能性が高くなる。乾燥のための流体を供給する第2の棒状部分60BがDHFおよび反応生成物により汚染されることは好ましくない。従って、第2の棒状部分60Bが第1の棒状部分60Aからウエハ回転方向Rになるべく大きな角度(図示例では330度)だけ進んだ位置にあること、言い換えれば、第1の棒状部分60Aが第2の棒状部分60Bからウエハ回転方向Rになるべく小さな角度(図示例では30度)だけ進んだ位置にあることが有利である。
【0050】
基板洗浄装置10は、その全体の動作を統括制御するコントローラ100を有している。コントローラ100は、基板洗浄装置10の全ての機能部品(例えば回転駆動部39、昇降駆動部50、第1〜第5流体供給機構70a〜70e)の動作を制御する。コントローラ100は、ハードウエアとして例えば汎用コンピュータと、ソフトウエアとして当該コンピュータを動作させるためのプログラム(装置制御プログラムおよび処理レシピ等)とにより実現することができる。ソフトウエアは、コンピュータに固定的に設けられたハードディスクドライブ等の記憶媒体に格納されるか、或いはCDROM、DVD、フラッシュメモリ等の着脱可能にコンピュータにセットされる記憶媒体に格納される。このような記憶媒体が参照符号101で示されている。プロセッサ102は必要に応じて図示しないユーザーインターフェースからの指示等に基づいて所定の処理レシピを記憶媒体101から呼び出して実行させ、これによってコントローラ100の制御の下で基板洗浄装置10の各機能部品が動作して所定の処理が行われる。コントローラ100は、図1に示す液処理システム全体を制御するシステムコントローラであってもよい。
【0051】
次に、上述した基板洗浄装置10を用いて、ウエハ表面にある自然酸化膜(SiO2膜)を除去する洗浄処理の一連の工程について説明する。
【0052】
<ウエハ搬入および設置工程>
まず、昇降機構によって、リフトピンプレート20、処理流体供給管40およびV字形ノズル60を図2Bに示すような上昇位置に位置づける。次に、図2Bの二点鎖線に示すように、基板洗浄装置10の外部からウエハWが搬送アーム104により基板洗浄装置10に搬送され、このウエハWがリフトピンプレート20のリフトピン22上に載置される。次に、昇降駆動部50が処理流体供給管40およびV字形ノズル60を上昇位置から下降位置まで移動させる。この際に、収容部材32の内部に設けられたバネ26の力により接続部材24には常に下方に向かう力が加えられているので、処理流体供給管40の下方への移動に連動してリフトピンプレート20も下方に移動し、リフトピンプレート20が上昇位置から下降位置まで移動する。また、この際に、リフトピンプレート20の下面により基板保持部材31の被押圧部分31cが図6に示すような状態から下方に押圧され、これにより基板保持部材31が軸31aを中心として図6の反時計回りの方向に回転する。このようにして、基板保持部材31の基板保持部分31bがウエハWに向かって当該ウエハWの側方から移動し(図7参照)、基板保持部材31によりウエハWは側方から保持される(図8参照)。このときに、基板保持部材31により側方から保持されたウエハWはリフトピン22から上方に離間する。なお、ウエハWは、その「表面」(パターンが形成される面)が「下面」となり、その「裏面」(パターンが形成されない面)が「上面」となるように、基板洗浄装置10内に搬入される前にリバーサー105(図1参照)により裏返されており、この状態で保持プレート30により保持される。本明細書において、用語「上面(下面)」は、単に、ある時点において上(下)を向いている面という意味で用いられる。
【0053】
<DHF洗浄工程>
次に、回転駆動部39により保持プレート30を回転させる。この際に、保持プレート30の下面から下方に延びるよう設けられた各収容部材32に、リフトピンプレート20の下面から下方に延びるよう設けられた各接続部材24が収容された状態となっているので、保持プレート30が回転したときにリフトピンプレート20も連動して回転し、ウエハWも回転する。なお、この際に、処理流体供給管40およびこれに接続されたV字形ノズル60は回転することなく停止したままである。次に、DHF供給機構70aからDHF供給路40aにDHFを供給する。供給されたDHFは、吐出口61から吐出される。供給されたDHFによりウエハW上の自然酸化膜が除去され。反応生成物は、DHFと一緒に遠心力によりウエハWの下面上を半径方向外側に流れ、ウエハWの外側に流出し、回転カップ36により受け止められて下方に向きを変え、外カップ56の底部に接続された排液管58を介して排出される。このDHF洗浄工程中、ウエハWの下側はDHF雰囲気となるが、ウエハW自体が、DHF雰囲気がウエハWの上方に拡散することを防止するシールドとして機能し、かつ、ウエハWの周囲は回転カップ36および外カップ56により囲まれているため、DHF雰囲気は、ウエハWの下面および外カップ56の内面により囲まれた空間から外側には殆ど拡散しない。また、ウエハWの下面および外カップ56の内面により囲まれた空間内にあるDHF雰囲気は、工場排気系に接続された(すなわち微減圧状態にある)排液管58に吸い込まれ、DHFの廃液と一緒に排出される。従って、処理チャンバ内のウエハWより上方の空間にDHF雰囲気が拡散することが防止または抑制され、ウエハより上方の処理チャンバの内壁および装置部品がDHF雰囲気にさらされて腐食することによるコンタミネーションの原因物質の生成が防止される。
【0054】
<DIWリンス工程>
DHF洗浄工程を所定時間実行した後、吐出口61からのDHFの吐出を停止する。次いで、引き続きウエハWを回転させたまま、DIW供給機構70dからDIW供給路40dに比較的大流量(例えば毎分1500ml)でDIWを供給し、V字形ノズル60の中央部分60Cにある吐出口63からDIWをウエハWの中心部に向けて吐出させる。DIWは遠心力によりウエハWの下面上を半径方向外側に流れ、ウエハWの外側に流出し、回転カップ36により受け止められて下方に向きを変え、外カップ56の底部に接続された排液管58を介して排出される。ウエハWの下面上に残っているDHFおよび反応生成物などが、ウエハWの下面上を半径方向外側に流れるDIWにより洗い流される。
【0055】
<IPA置換工程>
DIWリンス工程を所定時間実行した後、吐出口63からのDIWの吐出を停止する。次いで、引き続きウエハWを回転させたまま、IPA供給機構70bからIPA供給路40bにIPAを供給し、かつ、第1のN2供給機構70cから第1のN2供給路40cにN2ガスを供給する。供給されたIPAおよびN2ガスは、図12(b)に示すように、吐出口62の直前で混合され、ミスト化されたIPAとN2ガスとの混相流からなる二流体スプレーとしてウエハW下面に向けて吐出される。これにより、ウエハW下面上のDIWは、回転するウエハの中央部に対向する位置からウエハの周縁部に対向する位置の間に概ね均等に配置された複数の吐出口62から吐出されたIPAのミストにより、ウエハWの全域において均一かつ迅速に置換され、均一なIPA液膜が直ちにウエハWの下面上に形成される。なお、このIPA置換工程において、IPAのミスト化にN2ガスを用いているため、ウエハWの下方空間の酸素濃度および湿度が低下し、これによりリンス液(DIW)とIPAの置換効率が向上するので、ウォーターマークの発生を抑制することができる。また、次工程のN2スピン乾燥工程の開始時に既に、ウエハWの下方空間に低酸素濃度および低湿度の雰囲気が形成されるという点においても有利である。
【0056】
<N2スピン乾燥工程>
IPA置換工程を所定時間実行した後、吐出口62からのIPAの吐出を停止する。次いで、引き続きウエハWを回転させたまま(回転速度を増大させることが好ましい)、第2のN2供給機構70eから第2のN2供給路40eにN2ガスを供給し、V字形ノズル60の中央部分60Cにある吐出口64からN2ガスをウエハWの中心部に向けて吐出させる。これにより、ウエハ中心部から周縁部に広がるN2ガスの流れが生じ、このN2ガス流によりウエハWの下面上に残留していたIPAが除去される。先にDHF洗浄工程に関連して説明したように、ウエハW自体が、ウエハWの下方の雰囲気がウエハWの上方に拡散することを防止するシールドとして機能し、かつ、ウエハWの周囲は回転カップ36および外カップ56により囲まれているため、ウエハの下方の雰囲気は、ウエハWの下面および外カップ56の内面により囲まれた空間から外側には殆ど拡散しない。また、ウエハWの下面および外カップ56の内面により囲まれた空間内の雰囲気は、工場排気系に接続された(すなわち微減圧状態にある)排液管58に吸い込まれる。従って、吐出口64からN2ガスを供給すると、ウエハWの下方の空間は容易にN2ガス雰囲気、すなわち低酸素低湿度の雰囲気に置換される。このためウォーターマークの発生をより効果的に防止することができる。なお、本実施形態においては、ウエハWに、ウエハWの下面全域をカバーする(ウエハWと概ね同じ大きさを有する)板状体すなわちリフトピンプレート20が対面している。このため、ウエハWの下面、リフトピンプレート20の上面、回転カップ36の内面により囲まれた小容積の空間が画成される。このような小容積の空間は、N2ガス雰囲気への置換がより容易である。このため、ウォーターマークの発生をより効果的に防止することができる。
【0057】
<ウエハ搬出工程>
N2スピン乾燥工程が終了したら、カバー部材80を上昇させて待機位置に戻す。次いで、昇降駆動部50が処理流体供給管40およびV字形ノズル60を下降位置から上昇位置まで移動させる。この際に、各第2の連動部材46が各接続部材24を上方に押し上げることにより、処理流体供給管40の上方への移動に連動してリフトピンプレート20も上方に移動し、リフトピンプレート20が下降位置から上昇位置まで移動する。また、この際に、基板保持部材31に対するバネ部材31dの付勢力により、基板保持部材31は軸31aを中心として図6の時計回りの方向(図6における矢印とは反対の方向)に回転する。これにより、基板保持部材31はウエハWから側方に離間する。基板保持部材31がウエハWから側方に離間することにより、このウエハWはリフトピン22により裏面から支持されるようになる。図2Bに示すようにリフトピンプレート20、処理流体供給管40およびV字形ノズル60が上昇位置に到達した後、リフトピン22上に載置されたウエハWは搬送アーム104により当該リフトピン22上から除去される。搬送アーム104により取り出されたウエハWは基板洗浄装置10の外部に搬出され、リバーサー105により表裏が反転される。
【0058】
なお、吐出路67a,67b,68bのうち、気体であるN2ガスが通流するN2吐出路68bにおいては、当該N2吐出路68bへのN2ガスの供給が遮断されているときには、ノズル外部の雰囲気が当該N2吐出路68b内に侵入しやすくなる。なお、液体が通流する吐出路においては、吐出路への液体の通流が遮断されても液体はその吐出路内に残るためこのような問題はない。例えば、N2吐出路68b内にDHFが侵入したら、その後に吐出するIPAおよびN2ガスからなる二流体スプレーの清浄度が損なわれ好ましくない。このような事態を防止するため、N2吐出路68bに常時微量のN2ガスを通流させて、吐出口62から微量のN2ガスが常時流出するようにしておくことが好ましい。なお、同様の観点から、吐出口64内の清浄度を維持するために、吐出口64からも微量のN2ガスが常時流出するようにしておくことが好ましい。
【0059】
上記の実施形態によれば、IPA置換工程におけるIPAミストの供給が、ウエハWの中心部に対向する位置とウエハWの周縁部に対向する位置の間に配列された複数の吐出口62を有する、ウエハWの下方に設けられたノズルにより行われるため、ウエハWの下面上にあるDIWを、ウエハW全域において均一に、かつ迅速に、IPAに置換することができる。また、各工程、特にN2スピン乾燥工程において、ウエハWの下方空間は、液処理装置の構成部材(特にリフトピンプレート22、回転カップ36)により囲まれるため、ウエハWの下方空間を意図する雰囲気に維持することが容易である。すなわち、薬液処理工程であるDHF洗浄工程では、薬液雰囲気をウエハWの下方空間に閉じこめておくことができ、また、N2スピン乾燥工程においては、ウエハWの下方空間すなわちウエハの処理対象面に面する空間を低酸素低湿度の雰囲気に維持することができる。
【0060】
また、上記の実施形態によれば、ウエハWの下面にIPAミスト(液滴)を供給しているため、IPAの利用効率を向上させることができる。すなわち、IPA置換工程においては、IPAミストの一部が気化してIPA蒸気となるが、IPA蒸気は空気より軽いため、ウエハの下面上あるいはウエハの下方空間に存在するIPAが気化した場合、IPA蒸気はウエハWの下面に向かって上昇し、ウエハに付着し、DIWを置換するために利用することができる。また、特に上記実施形態においては、ウエハの下面に対向するリフトピンプレート20が設けられ、さらにウエハの周囲が回転カップ36で囲まれている。リフトピンプレート20はウエハの下方空間からIPAが逃げることを防止するので、リフトピンプレート20に付着したIPAが気化するならばそれをDIWを置換するために利用することができる。回転カップ36にも同様の機能を期待できる。また、ウエハW、リフトピンプレート20および回転カップ36によりウエハの下方空間が囲まれているため、少量のIPAで比較的高濃度のIPA雰囲気を形成することが容易となる。
【0061】
また、上記の実施形態によれば、ウエハWの中央部に対向する位置から基板の周縁部に対向する位置の間に沿って配列されて各々から同じ処理流体を吐出する複数の吐出口61(62)を有するノズルを使用しているため、ウエハWの下面を高い面内均一性で処理することができる。
【0062】
また、上記の実施形態においては、リフトピンプレート20、処理流体供給管40およびV字形ノズル60が保持プレート30に対して相対的に昇降するようになっており、ウエハWを下方から支持するリフトピン22はリフトピンプレート20に設けられている。このため、従来のようなリフトピン22を通すための貫通穴が底板に形成されておりリフトピン22が当該貫通穴を通って底板の下方に退避するようになっている場合と比較して、ウエハWの乾燥後にリフトピン22に洗浄液が残ることがなくなり、これにより液処理後のウエハWの裏面に処理液が付着することを防止することができる。なぜならば、ウエハWの乾燥処理時に、リフトピン22がリフトピンプレート20と一体的に回転するからである。また、リフトピン22がリフトピンプレート20と一体的に回転することにより、リフトピン22に処理液の液滴が残ることが抑制され、これにより処理後のウエハWの裏面に処理液の液滴が付着することをより一層防止することができる。さらに、V字形ノズル60の中央部分60Cが、リフトピンプレート20の貫通穴20aを塞ぐようになっている。このため、処理流体供給管40を通すための貫通穴20aに処理液が入り込んでしまうことを防止することができる。また、上記の実施形態においては、処理流体供給管40およびV字形ノズル60とリフトピンプレート20とを一体的に昇降させるようになっているので、処理流体供給管40およびリフトピンプレート20が昇降する際にV字形ノズル60の中央部分60Cがリフトピンプレート20の貫通穴20aを塞ぐので、貫通穴20aに処理液が入り込んでしまうことをより一層防止することができる。
【0063】
また、上記の実施形態においては、保持プレート30に回転カップ36が設けられているので、ウエハWの液処理を行う際に回転しているウエハWから処理液が外方に飛散することを防止することができる。また、保持プレート30に基板保持部材31が設けられているので、ウエハWを回転させる際にウエハWを側方から支持することによってより安定的にウエハWが保持される。
【0064】
上記の実施形態は例えば下記のように改変することができる。
【0065】
上記実施形態においては、DHFによる薬液洗浄工程、DIWリンス工程、IPAおよびN2ガスからなる二流体吐出によるIPA置換工程、N2スピン乾燥工程を順次行うことにより自然酸化膜を除去した。しかし、上記実施形態に係る基板処理装置により実施される処理はこれに限定されるものではない。薬液洗浄工程においては、DHF以外の薬液洗浄を行うこともできる。また、薬液洗浄工程がレジスト除去工程であってもよい。
【0066】
ウエハの下面に薬液を供給するノズルとして図示されたようなものを用いることが、処理の均一性および処理液の節約の観点からは好ましいが、これに限定されるものではない。例えば、IPAおよびN2ガスからなる二流体スプレー供給するための第2の棒状部分60Bをそのまま維持する一方で、DHF供給用の第1の棒状部分60Aを削除し、そのかわりにノズルの中央部分60Cに設けた薬液吐出口からDHFを吐出してもよい。この場合、薬液(DHF)の消費量は多くなるが、薬液処理を実行することは可能である。
【0067】
上記実施形態においては、ウエハを保持して回転させる機構であるいわゆる「スピンチャック」の基板保持部として、リフトピンプレート20と回転カップ36と一体化された保持プレート30とを有する形式のものを用いた。しかしながら、上記実施形態に係るV字形ノズル60は、基板の周縁を保持する形式のものであるならば様々な形式のスピンチャックと組み合わせて液処理装置を構築することができる。
【符号の説明】
【0068】
20、30 基板保持部、(保持プレート、リフトピンプレート)
22 板状体(保持プレート)
31、37 保持部材(基板保持部材、固定保持部材)
39 回転駆動部
36 回転カップ
56 外カップ
60 ノズル(V字形ノズル)
60A ノズルの第1の棒状部分
60B ノズルの第2の棒状部分
60C ノズルの中央部分
61 第1の吐出口
62 第2の吐出口
63 第3の吐出口
64 第4の吐出口
W 基板(半導体ウエハ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象面が下面となるように基板を保持して回転させることと、
前記基板の下面にDIW(純水)を供給して、前記基板にリンス処理を施すことと、
その後、前記基板の下面にIPA(イソプロピルアルコール)およびN2ガスを含むミストを供給して、前記DIWをIPAで置換することと、
を備え、
前記ミストの供給は、前記基板の中心部に対向する位置と前記基板の周縁部に対向する位置の間に配列された複数の吐出口を有する、前記基板の下方に設けられたノズルにより行われることを特徴とする液処理方法。
【請求項2】
前記基板の保持は、前記基板の下面に対面する板状体と、前記基板の周縁部を保持する複数の保持部材とを有する基板保持部により行われることを特徴とする、請求項1に記載の液処理方法。
【請求項3】
前記基板保持部に、当該基板保持部と一体的に回転する回転カップが設けられていることを特徴とする請求項2に記載の液処理方法。
【請求項4】
前記DIWを前記IPAで置換した後に、前記基板の下面にN2ガスを供給して、前記基板を乾燥させることをさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液処理方法。
【請求項5】
基板の周縁部を保持する保持部材を有し、基板を水平に保持する基板保持部と、
前記基板保持部を回転させる回転駆動部と、
前記基板保持部に保持された基板の下面の下方に位置するように設けられたノズルであって、前記基板保持部により保持された基板の下面に薬液を吐出する第1の吐出口と、前記基板保持部により保持された基板の下面にIPA(イソプロピルアルコール)およびN2ガスを含むミストを吐出する複数の第2の吐出口と、前記基板保持部により保持された基板の下面にDIW(純水)を吐出する第3の吐出口と、前記基板保持部により保持された基板の下面にN2ガスを吐出する第4の吐出口と、を有するノズルと、
を備え、
前記複数の第2の吐出口は、前記基板保持部により保持された基板の中心部に対向する位置と前記基板の周縁部に対向する位置の間に配列されていることを特徴とする液処理装置。
【請求項6】
前記基板保持部は、基板の下面に対面する板状体を有していることを特徴とする、請求項5に記載の液処理装置。
【請求項7】
前記基板保持部に、当該基板保持部と一体的に回転する回転カップが設けられていることを特徴とする請求項6に記載の液処理装置。
【請求項8】
請求項1に記載された方法を実行させるように液処理装置の動作を制御する制御部を更に備えたことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項1】
処理対象面が下面となるように基板を保持して回転させることと、
前記基板の下面にDIW(純水)を供給して、前記基板にリンス処理を施すことと、
その後、前記基板の下面にIPA(イソプロピルアルコール)およびN2ガスを含むミストを供給して、前記DIWをIPAで置換することと、
を備え、
前記ミストの供給は、前記基板の中心部に対向する位置と前記基板の周縁部に対向する位置の間に配列された複数の吐出口を有する、前記基板の下方に設けられたノズルにより行われることを特徴とする液処理方法。
【請求項2】
前記基板の保持は、前記基板の下面に対面する板状体と、前記基板の周縁部を保持する複数の保持部材とを有する基板保持部により行われることを特徴とする、請求項1に記載の液処理方法。
【請求項3】
前記基板保持部に、当該基板保持部と一体的に回転する回転カップが設けられていることを特徴とする請求項2に記載の液処理方法。
【請求項4】
前記DIWを前記IPAで置換した後に、前記基板の下面にN2ガスを供給して、前記基板を乾燥させることをさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液処理方法。
【請求項5】
基板の周縁部を保持する保持部材を有し、基板を水平に保持する基板保持部と、
前記基板保持部を回転させる回転駆動部と、
前記基板保持部に保持された基板の下面の下方に位置するように設けられたノズルであって、前記基板保持部により保持された基板の下面に薬液を吐出する第1の吐出口と、前記基板保持部により保持された基板の下面にIPA(イソプロピルアルコール)およびN2ガスを含むミストを吐出する複数の第2の吐出口と、前記基板保持部により保持された基板の下面にDIW(純水)を吐出する第3の吐出口と、前記基板保持部により保持された基板の下面にN2ガスを吐出する第4の吐出口と、を有するノズルと、
を備え、
前記複数の第2の吐出口は、前記基板保持部により保持された基板の中心部に対向する位置と前記基板の周縁部に対向する位置の間に配列されていることを特徴とする液処理装置。
【請求項6】
前記基板保持部は、基板の下面に対面する板状体を有していることを特徴とする、請求項5に記載の液処理装置。
【請求項7】
前記基板保持部に、当該基板保持部と一体的に回転する回転カップが設けられていることを特徴とする請求項6に記載の液処理装置。
【請求項8】
請求項1に記載された方法を実行させるように液処理装置の動作を制御する制御部を更に備えたことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の液処理装置。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−156267(P2012−156267A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13459(P2011−13459)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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