説明

液晶ポリエステルおよびその溶液組成物

【課題】優れた屈曲性を有し、かつ寸法安定性にも優れ、銅張積層板やフレキシブルプリント配線板の作成時にカール性が小さい液晶ポリエステルフィルムを得ることができる液晶ポリエステル、該液晶ポリエステルを含有する溶液組成物、該溶液組成物を用いた液晶ポリエステルフィルム、該液晶ポリエステルフィルムの製造方法及び該液晶ポリエステルフィルムを用いた銅張積層板の提供。
【解決手段】特定の構造を有する液晶ポリエステル樹脂、非プロトン性溶媒を含有することを特徴とする液晶ポリエステル樹脂組成物、該樹脂組成物を用いた液晶ポリエステルフィルム、該フィルムの製造方法、該フィルムを有する屈曲性が高く且つカールが少ない銅張積層板、該フィルムを有するフレキシブルプリント配線板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステルおよび該液晶ポリエステルを含有する溶液組成物に関する。さらには、該液晶ポリエステルからなるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信用・民生用の電子機器の小型化、軽量化、高密度化が進んでいる。このような状況下、フレキシブル配線板は、可とう性を有し、空間的な自由度が大きく、立体的高密度の実装が可能であるため、電子機器への配線、ケーブル、或いはコネクター機能を付与した複合部品としてもその用途が拡大しつつある。
フレキシブル配線板は電気絶縁性のベースフィルムと金属箔とを積層一体化し回路を作製したもので、ベースフィルムには、高い屈曲性を有することが求められていた。
【0003】
上記のようなベースフィルムを提供するため、芳香族アミン誘導体由来の構造単位を含む芳香族液晶ポリエステルと非プロトン性溶媒とを含有してなる溶液組成物を支持体に流延した後、溶媒を除去して得られる芳香族液晶ポリエステルフィルムが提案されている(特許文献1)。
さらに、該ベースフィルムとしては、寸法安定性ならびに優れたカール性等の特性が求められており、該寸法安定性を向上される手法としては、液晶ポリエステルからなるベースフィルムに、無機フィラー等のフィラーを入れることが、広範に用いられていた。
【0004】
【特許文献1】特開2004-315678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の液晶ポリエステルからなるフィルムを、フレキシブル配線板のベースフィルムとして使用すると屈曲性としては優れるものが得られるが、該屈曲性に加え、寸法安定性がより優れるベースフィルム、特にフィルムと導体層との積層体やフレキシブルプリント配線板としたときのカール性が著しく小さくなるものが求められていた。
しかしながら、従来用いられているフィラーを含有したフィルムでは、寸法安定性は向上させるためにフィラーを高充填すると、屈曲性が悪くなったり、フィルムが裂けやすくなったりする等の問題があることを本発明者らは見出した。
【0006】
本発明の目的は、優れた屈曲性を有し、かつ寸法安定性にも優れ、フィルムと導体層との積層体やフレキシブルプリント配線板の作成時にカール性が小さい液晶ポリエステルフィルムを得ることができる液晶ポリエステルを提供する。さらに、当該液晶ポリエステルを含有する溶液組成物、当該溶液組成物からなるフィルム、該フィルムから得られる積層体ならびにフレキシブル配線板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記したような問題を解決し得る液晶ポリエステルを見出すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、下記の液晶ポリエステルを提供するものである。
<1>式(1)で示される構造単位を誘導するモノマー1と、式(2)で示される構造単位を誘導するモノマー2と、式(3)で示される構造単位を誘導するモノマー3と、式(4)で示される構造単位を誘導するモノマー4を、モノマーの合計モル量に対して、それぞれモノマー1が30〜80モル%、モノマー2が10〜35モル%、モノマー3とモノマー4の合計が10〜35モル%であり、かつモノマー4が、該合計モル量に対して1モル%以上となる比率で重合させて得られることを特徴とする液晶ポリエステル
(1) −O−Ar1−CO−
(2) ―NH−Ar2−X−
(3) −CO−Ar3−CO−
(4) −CO−Ar4−Z−Ar5−CO−
(式中、Ar1は、1,4−フェニレン、2,6−ナフチレンまたは4,4'−ビフェニレンを表わし、Ar2は、1,4−フェニレンまたは1,3−フェニレンを表わし、Xは―O―または―NH―を表わし、Ar3は、1,4−フェニレン、1,3−フェニレンまたは2,6−ナフチレンを表わす。Ar4、Ar5は、それぞれ独立に1,4−フェニレン、2,6−ナフチレンまたは4,4’−ビフェニレンを表わす。Zは、−O−、−SO2−または−CO−を表わす。)
<2>Ar1が2,6−ナフチレンであり、Ar2が1,4−フェニレンであり、Xが−O−であり、Ar3が1,3−フェニレンであり、Ar4およびAr5がいずれも1,4−フェニレンであり、Zが−O−である上記<1>に記載の液晶ポリエステル
【0008】
さらに、本発明は上記記載の液晶ポリエステルに関し、下記の組成物、用途を提供する。
<3>上記<1>または<2>に記載の液晶ポリエステルを含有することを特徴とするフィルム
<4>上記<1>または<2>に記載の液晶ポリエステルおよび溶媒を含有することを特徴とする溶液組成物
<5>溶媒が非プロトン性溶媒を含有することを特徴とする上記<4>に記載の溶液組成物
<6>非プロトン性溶媒100重量部に対して、上記<1>または<2>に記載の液晶ポリエステル0.01〜100重量部を含有する上記<4>または<5>に記載の溶液組成物
<7>非プロトン性溶媒がハロゲン原子を含まない非プロトン性溶媒である上記<4>〜<6>のいずれかに記載の溶液組成物
<8>非プロトン性溶媒が、双極子モーメントが3以上5以下の非プロトン性溶媒である上記<4>〜<7>のいずれかに記載の溶液組成物
<9>上記<4>〜<8>のいずれかに記載の溶液組成物を支持体上に流延したのちに、溶媒を除去し、次いで加熱処理し、支持体を剥離することを特徴とするフィルムの製造方法
<10>上記<9>記載の製造方法で得られることを特徴とするフィルム
<11>上記<3>または<10>に記載のフィルムからなる層と導体からなる層とを有することを特徴とする積層体
<12>上記<11>に記載の積層体を有することを特徴とするフレキシブルプリント配線板
【発明の効果】
【0009】
本発明の液晶ポリエステルから得られるフィルムは、線膨張が低く、さらに屈曲性が優れているため、そのフィルムからなる層と導体からなる層との積層体またはフレキシブルプリント配線基板に用いると、優れた屈曲性及び寸法安定性を有しカールが少ない積層体又はフレキシブルプリント配線板を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の液晶ポリエステルは、式(1)で示される構造単位を誘導するモノマー1と、式(2)で示される構造単位を誘導するモノマー2と、式(3)で示される構造単位を誘導するモノマー3と、式(4)で示される構造単位を誘導するモノマー4を、モノマーの合計モル量(モノマー1のモル量、モノマー2のモル量、モノマー3のモル量およびモノマー4のモル量の合計)に対して、モノマー1が30〜80モル%、モノマー2が10〜35モル%、モノマー3とモノマー4の合計が10〜35モル%であり、かつ該合計モル量に対してモノマー4が1モル%以上となる比率で重合して得られることを特徴とする。なお、本発明の液晶ポリエステルは、式(2)で表される構造単位で表すように、ポリマー鎖中に部分的にアミド結合も有するものであるが、本発明では「液晶ポリエステル」と表記する。
(1) −O−Ar1−CO−
(2) ―NH−Ar2−X−
(3) −CO−Ar3−CO−
(4) −CO−Ar4−Z−Ar5−CO−
(式中、Ar1は、1,4−フェニレン、2,6−ナフチレンまたは4,4'−ビフェニレンを表わし、Ar2は、1,4−フェニレンまたは1,3−フェニレンを表わし、Xは―O―または―NH―を表わし、Ar3は、1,4−フェニレン、1,3−フェニレンまたは2,6−ナフチレンを表わす。Ar4、Ar5は、それぞれ独立に1,4−フェニレン、2,6−ナフチレンまたは4,4’−ビフェニレンを表わす。Zは、−O−、−SO2−または−CO−を表わす。)
【0011】
式(1)で示される構造単位は、芳香族ヒドロキシカルボン酸またはその誘導体(モノマー1)から誘導される構造単位であり、具体的には、式(1a)で表される化合物がモノマー1として好ましい。
(1a) R10−O−Ar1−CO−R11
(式中、Ar1は前記と同等の定義であり、R10は、水素原子または炭素数1〜8の置換されていてもよいアシル基を表し、R11は、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜8の置換されていてもよいアルコキシル基または炭素数1〜8の置換されていてもよいアシロキシル基を表す。)
【0012】
具体的に、モノマー1として好適なものを例示すると、p−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ―6―ナフトエ酸および4’−ヒドロキシビフェニル―4−カルボン酸からなる郡から選ばれる芳香族ヒドロキシカルボン酸が挙げられ、さらに液晶ポリエステルを製造する際の重合性を向上させる観点から、該芳香族ヒドロキシカルボン酸のフェノール性水酸基をアシル基に置換したもの、該芳香族ヒドロキシカルボン酸のカルボキシル基を酸ハロゲン基、エステル基またはアシロキシカルボニル基に置換したものを挙げることができる。フェノール性水酸基をアシル基に置換する方法およびカルボキシル基をアシロキシカルボニル基に置換する方法は、芳香族ヒドロキシカルボン酸に適当なカルボン酸無水物を反応させる方法が挙げられ、カルボキシル基を酸ハロゲン基、エステル基に置換する方法は、芳香族ヒドロキシカルボン酸に、ハロゲン化剤(塩化チオニル、臭化チオニル、N―ブロモスクシンアミドなど)またはアルコールを反応させる方法が挙げられる。これらの中でも、液晶ポリエステルの重合性向上と操作が容易である面から、芳香族ヒドロキシカルボン酸にカルボン酸無水物を反応させて得られるものをモノマー1として使用するのが好ましい。また、ここで使用されるカルボン酸無水物の好適なものは後述する。
【0013】
本発明の液晶ポリエステルを得る際に、モノマー1のモル量は前記モノマーの合計モル量に対して30〜80モル%であり、35〜65モル%であることがより好ましく、40〜55モル%であることがさらに好ましい。かかるモノマー1の使用モル量比は、液晶ポリエステルにある式(1)で示される構造単位の共重合比と同等となり、式(1)で表される構造単位の共重合比が30モル%を下回ると液晶性が発現しにくくなり、80モル%を越えると、後述の溶液組成物を得る際に、溶媒への溶解性が著しく低下する傾向があり、いずれも好ましくない。
【0014】
式(2)で示される構造単位は、Xが−NH−である場合は芳香族ジアミンまたはその誘導体から誘導される構造単位であり、Xが−O−である場合はフェノール性水酸基を有する芳香族アミンまたはその誘導体から誘導される構造単位である。式(2)で示される構造単位を誘導するモノマー2を具体的に例示すると、下記式(2a)で表される化合物である。
(2a) R20―NH−Ar2−X−R21
(式中、Ar2、Xは前記と同等の定義である。R20、R21はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜8の置換されていてもよいアシル基を表す。)
【0015】
具体的に、モノマー2として好適なものを例示すると、1,3−フェニレンジアミンまたは1,4−フェニレンジアミンである芳香族ジアミン、3−アミノフェノールまたは4−アミノフェノールであるフェノール性水酸基を有する芳香族アミン、これらとカルボン酸無水物を反応せしめて得られるものが挙げられる。なお、好適なカルボン酸無水物は後述する。これらの中でも芳香族ジアミンおよび/またはフェノール性水酸基を有する芳香族アミンにカルボン酸無水物を反応せしめて得られるものをモノマー2として用いると、液晶ポリエステルの重合性がより向上するため好ましい。
【0016】
本発明の液晶ポリエステルを得る際に、モノマー2のモル量は前記モノマーの合計モル量に対して10〜35モル%であり、17.5〜32.5モル%がより好ましく、22.5〜30.0モル%が特に好ましい。かかるモノマー2の使用モル量比は、液晶ポリエステルにある式(2)で示される構造単位の共重合比と同等となり、式(2)で表される構造単位の共重合比が10モル%を下回ると溶媒への溶解性が著しく低下する傾向があり、35モル%を越えると、液晶性が発現しにくくなる傾向があり、いずれも好ましくない。
【0017】
式(3)で示される構造単位は、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(モノマー3)から誘導される構造単位であり、具体的には、式(3a)で表される化合物がモノマー3として好ましい。
(3a) R30−CO−Ar3−CO−R31
(式中、Ar3は前記と同等の定義であり、R30、R31はそれぞれ独立に、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜8の置換されていてもよいアルコキシル基または炭素数1〜8の置換されていてもよいアシロキシル基を表す。)
【0018】
具体的に、モノマー3として好適なものを例示すると、テレフタル酸、フタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸から選ばれる芳香族ジカルボン酸が挙げられ、さらに液晶ポリエステルを製造する際の重合性を向上させる観点から、該芳香族ジカルボン酸のカルボキシル基を酸ハロゲン基、エステル基またはアシロキシカルボニル基に置換したものを挙げることができ、該カルボキシル基をこのような基に置換する方法は、モノマー1で示した方法と同等であり、中でも、液晶ポリエステルの重合性向上と操作が容易である面から、芳香族ジカルボン酸にカルボン酸無水物を反応させて得られるものをモノマー3として使用することが好ましい。
【0019】
また、式(4)で示される構造単位は、Z基を有する芳香族ジカルボン酸またはその誘導体(モノマー4)から誘導される構造単位であり、具体的には、式(4a)で表される化合物がモノマー4として好ましい。
(4a) R40−CO−Ar4−Z−Ar5−CO−R41
(式中、Ar4、Ar5およびZは前記と同等の定義であり、R40、R41はそれぞれ独立に、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜8の置換されていてもよいアルコキシル基または炭素数1〜8の置換されていてもよいアシロキシル基を表す。)
【0020】
具体的に、モノマー4として好適なものを例示すると、ジフェニルエーテル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェニルスルフォン−4,4'−ジカルボン酸およびベンゾフェノン−4,4'−ジカルボン酸から選ばれる芳香族ジカルボン酸が挙げられ、さらに液晶ポリエステルを製造する際の重合性を向上させる観点から、該芳香族ジカルボン酸のカルボキシル基を酸ハロゲン基、エステル基またはアシロキシカルボニル基に置換したものを挙げることができ、該カルボキシル基をこのような基に置換する方法は、モノマー4の場合と同等である。中でも、液晶ポリエステルの重合性向上と操作が容易である面から、かかる芳香族ジカルボン酸にカルボン酸無水物を反応させて得られるものをモノマー4として使用することが好ましい。
【0021】
本発明の液晶ポリエステルを得る際に、モノマー3とモノマー4の合計モル量は前記モノマーの合計モル量に対して10〜35モル%であり、17.5〜32.5モル%がより好ましく、22.5〜30.0モル%が特に好ましい。この使用モル量比はそれぞれ、液晶ポリエステルにある式(3)で示される構造単位、式(4)で示される構造単位の共重合比と同等となり、かかる共重合比は、式(2)で示される構造単位と同様に、液晶ポリエステルの液晶性と溶媒に対する溶解性から選ばれた範囲である。
【0022】
さらに、本発明の液晶ポリエステルは、モノマー4の使用モル量のモノマー合計モル量に対する比率、すなわち液晶ポリエステルにある式(4)で示される構造単位の共重合比が1モル%以上であることを特徴とする。かかる共重合比は、10〜30モル%であるとさらに好ましく、15〜25モル%であると特に好ましい。また、モノマー3を全く使用せず、モノマー4のみを使用してもよい。
【0023】
また、モノマー2の使用モル量は、モノマー3の使用モル量とモノマー4の使用モル量の合計と実質的に等量用いられることが好ましいが、[モノマー2の使用モル量]/[モノマー3の使用モル量とモノマー4の使用モル量の合計]で表して、0.9〜1.1の範囲で調整することにより、液晶ポリエステルの重合度を制御することもできる。
【0024】
本発明の液晶ポリエステルは、前記のモノマー1、モノマー2、モノマー3およびモノマー4を重合して得られるものであるが、好適な方法としては、例えば、特開2002-220444号公報または特開2002-146003号公報に記載の方法に準じ、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジアミンおよび/またはフェノール性水酸基を有する芳香族アミン、芳香族ジカルボン酸を混合した後に、カルボン酸無水物を同一系中で予備反応せしめ、各モノマーの重合性を向上させてから、重合を行うと好ましい。
【0025】
より具体的には、芳香族ヒドロキシカルボン酸、フェノール性水酸基を有する芳香族アミンまたは芳香族ジアミンのフェノール性水酸基やアミノ基を、過剰量のカルボン酸無水物によりアシル化してアシル化物を得、得られたアシル化物と、芳香族ジカルボン酸とをエステル交換・アミド交換(重合)して溶融重合する方法などが挙げられる。
【0026】
アシル化反応においては、カルボン酸無水物の添加量は、フェノール性水酸基とアミノ基の合計に対して、1.0〜1.2倍当量であることが好ましく、より好ましくは1.05〜1.1倍当量である。かかる無水物の添加量が少なすぎると、エステル交換・アミド交換(重合)時にアシル化物や原料モノマーなどが昇華し、反応系が閉塞し易い傾向があり、また、多すぎると、得られる液晶ポリエステルの着色が著しくなる傾向がある。
【0027】
アシル化反応は、130〜180℃で5分間〜10時間反応させることが好ましく、140〜160℃で10分間〜3時間反応させることがより好ましい。
【0028】
アシル化反応に使用されるカルボン酸無水物は,例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水2エチルヘキサン酸、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロモ酢酸、無水ジブロモ酢酸、無水トリブロモ酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水グルタル酸、無水コハク酸、無水β−ブロモプロピオン酸などが挙げられ、これらは2種類以上を混合して用いてもよい。価格と取り扱い性の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸または無水イソ酪酸が好ましく、無水酢酸がより好ましい。
【0029】
かかる重合においては、アシル化物のアシル基がカルボキシル基の0.8〜1.2倍当量であることが好ましい。
重合は、400℃まで0.1〜50℃/分の割合で昇温しながら行うことが好ましく、350℃まで0.3〜5℃/分の割合で昇温しながら行うことがより好ましい。
また、重合させる際、平衡を移動させるため、副生するカルボン酸と未反応のカルボン酸無水物は、蒸発させるなどして系外へ留去することが好ましい。
【0030】
なお、アシル化反応ならびに重合は、触媒の存在下に行ってもよい。該触媒としては、従来からポリエステルの重合用触媒として公知のものを使用することができ、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモンなどの金属塩触媒、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾールなどの有機化合物触媒などを挙げることができる。
これらの触媒の中で、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾールなどの窒素原子を2個以上含む複素環状化合物が好ましく使用される(特開2002−146003号公報参照)。
該触媒は、通常、モノマー類の投入時に、一緒に投入され、アシル化後も除去することは必ずしも必要ではなく、該触媒を除去しない場合にはそのまま重合を行うことができる。
【0031】
重合は、通常、溶融重合により行なわれるが、溶融重合と固相重合とを併用してもよい。固相重合は、溶融重合工程からポリマーを抜き出し、その後、粉砕してパウダー状もしくはフレーク状にした後、公知の固相重合方法により行うことが好ましい。具体的には、例えば、窒素などの不活性雰囲気下、20〜350℃で、1〜30時間固相状態で熱処理する方法などが挙げられる。固相重合は、攪拌しながらでも、攪拌することなく静置した状態で行ってもよい。なお適当な攪拌機構を備えることにより溶融重合槽と固相重合槽とを同一の反応槽とすることもできる。固相重合後、得られた液晶ポリエステルは、公知の方法によりペレット化し、成形しても良い。
液晶ポリエステルの製造は、例えば、回分装置、連続装置等を用いて行うことができる。
【0032】
かくして、本発明の液晶ポリエステルを得ることができる。該液晶ポリエステルは公知の成形法によって成形することが可能であり、特にフィルムの形態に形成して得られるものは、高度の屈曲性と寸法安定性を発現する。さらには該フィルムと導体層とを積層して得られる積層体は、カール性が著しく小さい積層体となる。
【0033】
また本発明の目的を損なわない範囲で、本発明の液晶ポリエステルを成形する際に、公知のフィラー、添加剤、熱可塑性樹脂等を含有させてもよい。この場合、フィラーとしては、例えば、エポキシ樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、尿素樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、スチレン樹脂などの有機系のフィラー、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ジルコニア、カオリン、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ガラス繊維、アルミナ繊維などの無機系のフィラーなどが挙げられる。また添加剤としては、公知のカップリング剤、沈降防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などが挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルエーテル及びその変性物、ポリエーテルイミド、グリシジルメタクリレートとポリエチレンの共重合体などのエラストマーなどが挙げられる。
【0034】
本発明の液晶ポリエステルは溶媒に対する溶解性に優れる点から、溶媒に溶解した溶液組成物として種々の用途に用いることができる。かかる溶液組成物を製造する方法について説明する。溶液組成物の製造に用いる溶媒としては、液晶ポリエステルを溶解できるものであれば特に限定されないが、非プロトン性溶媒を含む溶媒が挙げられ、好ましくは該溶媒が実質的に非プロトン性溶媒からなるものであると好ましい。
【0035】
本発明の溶液組成物は、通常非プロトン性溶媒100重量部に対して液晶ポリエステル0.01〜100重量部が含有される。液晶ポリエステルの濃度が低すぎると溶液粘度が低すぎて、かかる溶液組成物を基板等に塗工する際に、均一な塗工がしにくくなり、逆に高すぎると、高粘度化しやすくなる傾向がある。
作業性や経済性の観点から、非プロトン性溶媒100重量部に対して、液晶ポリエステルが、1〜50重量部であることがより好ましく、2〜40重量部であることがさらに好ましい。
【0036】
該非プロトン性溶媒としては、例えば、1−クロロブタン、クロロベンゼン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタンなどのハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエ-テル系溶媒、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、γ―ブチロラクトンなどのラクトン系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、トリエチルアミン、ピリジンなどのアミン系溶媒、アセトニトリル、サクシノニトリルなどのニトリル系溶媒、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ系溶媒、ジメチルスルホキシド、スルホランなどのスルフィド系溶媒、ヘキサメチルリン酸アミド、トリn−ブチルリン酸などのリン酸系溶媒などが挙げられる。
【0037】
これらの中で、ハロゲン原子を含まない溶媒が環境への影響面から好ましく、双極子モーメントが3以上5以下の溶媒が溶解性の観点から好ましい。具体的には、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒またはγ−ブチロラクトンなどのラクトン系溶媒がより好ましく、N,N'−ジメチルホルムアミド、N,N'−ジメチルアセトアミドまたはN−メチルピロリドンがさらに好ましく使用される。
また、本発明の溶液組成物には、前記のように非プロトン性溶剤が好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、それ以外の溶媒が含まれていても良い。
【0038】
前記の溶液組成物を必要に応じて、フィルターなどによってろ過し、溶液組成物中に含まれる微細な異物を除去してもよい。
また本発明の目的を損なわない範囲で、該溶液組成物に公知のフィラー、添加剤、熱可塑性樹脂等を含有させてもよい。これらのフィラー、添加剤および熱可塑性樹脂としては、前記に例示したものと同様である。
【0039】
かくして得られた溶液組成物を用いると、溶液キャスト法のような簡便な操作で、本発明の液晶ポリエステルを含有するフィルムを得ることができる。
このフィルムの製造方法を説明すると、例えば、前記の溶液組成物を支持体上に流延したのちに、溶媒を除去し、次いで加熱処理し、支持体を剥離して、フィルムが得られる。支持体上に溶液組成物を塗布する方法としては、例えば、ローラーコート法、ディップコーター法、スプレイコーター法、カーテンコート法、スロットコート法、スクリーン印刷法等の各種手段が挙げられる。
【0040】
ここで、溶媒の除去方法は、特に限定されないが、溶媒の蒸発により行うことが好ましい。該溶媒を蒸発させる方法としては、加熱、減圧、通風などの方法が挙げられるが、中でも生産効率、取り扱い性の観点から加熱して蒸発させることが好ましく、通風しつつ加熱して蒸発せしめることがより好ましい。このときの条件としては蒸発させる溶媒の沸点以上で行うことが好ましい。
加熱温度などは、溶液組成物に適用した溶媒にもよるが、100℃から200℃の範囲で10分から2時間まで予備乾燥を行って、200℃から350℃の範囲で10分から4時間まで熱処理を行うのが望ましい。
【0041】
溶液組成物を塗布する支持体としては、ガラスや金属板が用いられる。該金属板としては、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケルなどの板が挙げられる。該支持体として好ましくは、銅箔などの金属板が用いられる。
【0042】
このような方法で得られたフィルムの厚みは、特に限定されることはないが、製膜性や機械特性の観点から、1〜500μm程度であることが好ましく、取り扱い性の観点から1〜200μmであることがより好ましい。特に高い絶縁性が要求される場合は、200μm以上に厚くしてもよい。該フィルムの表面は、必要に応じて、研磨や酸、あるいは酸化剤などの薬液、紫外線、プラズマ照射などの処理を行ってもよい。
【0043】
このようにして得られるフィルムは、屈曲性、寸法安定性、およびカール性に優れるので、近年注目されている、銅張積層板用のベースフィルム、ビルドアップ法などによる半導体パッケージやマザーボード用の多層プリント基板用フィルム、フレキシブルプリント配線板用フィルム、テープオートメーテッドボンデリング用フィルム、タグテープ用フィルム、電子レンジ加熱用の包装フィルム、電磁波シールド用フィルム等に、好適に用いることができる。
【0044】
また、本発明のフィルムは、高周波特性、低吸水性などにも優れるので、高周波プリント配線基板、高周波ケーブル、通信機器回路、パッケージ用基板等に好適に用いることができる。
【0045】
また本発明のフィルムを用いて、導体からなる層とフィルムからなる層とを有する本発明の積層体を以下のようにして製造することができる。
銅箔などの導体を積層するにあたって、フィルムに導体層を積層する面には、接着力を高めるためコロナ放電処理、紫外線照射処理、またはプラズマ処理を行うことが好ましい。
【0046】
本発明のフィルムに導体からなる層を積層する方法としては、例えば、次のような方法を挙げることができる。
(1)液晶ポリエステルを溶媒に溶解して溶液組成物を得、これを必要に応じて、フィルターによってろ過し、溶液中に含まれる微細な異物を除去した後、該溶液を金属箔上に、例えば、ローラーコート法、ディップコート法、スプレイコート法、スピナーコート法、カーテンコート法、スロットコート法、スクリーン印刷法等の各種手段により表面平坦かつ均一に流延し、その後、溶媒を除去して得られるフィルムと金属箔との積層する方法。
(2)前記したフィルムを加熱圧着により金属箔に貼付する方法。
(3)前記したフィルムと金属箔とを接着剤により貼付する方法。
(4)前記したフィルムに金属層を蒸着により形成する方法。
【0047】
(1)の方法は、容易に均一な膜厚でかつ金属箔との密着性が高い積層体を得ることができるため好ましい。
【0048】
(2)の方法は、フィルムを、該フィルムの流動開始温度付近でプレス機または加熱ロールを用いて金属箔と容易に圧着できるため好ましい。
【0049】
(3)の方法においては、使用される接着剤は、特に限定されないが、例えば、ホットメルト接着剤、ポリウレタン接着剤などが挙げられる。中でもエポキシ基含有エチレン共重合体などが接着剤として好ましく使用される。
【0050】
(4)の方法においては、金属を蒸着する方法は、特に限定されないが、例えば、イオンビームスパッタリング法、高周波スパッタリング法、直流マグネトロンスパッタリング法、グロー放電法などが挙げられる。中でも高周波スパッタリング法が好ましく使用される。
【0051】
本発明で導体層に使用される金属としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウムなどが挙げられる。タブテープ、プリント配線板用途では銅が好ましく、コンデンサー用途ではアルミニウムが好ましい。
【0052】
このようにして得られる積層体の構造としては、例えば、フィルムからなる層と導体からなる層とのニ層構造、フィルム両面に導体層を積層させた三層構造、フィルムと導体層を交互に積層させた五層構造などが挙げられる。また、該積層体には、高強度発現の目的で、必要に応じて、熱処理を行ってもよい。
【0053】
また上記の本発明の積層体の導体上にレジストを用いて所望の回路を描き、酸性条件下で導体を溶解除去するエッチングを行い、さらに前記レジストを除去することにより導体回路を形成させ、その回路上にカバーフィルムを張り合わせることによって、プリント配線基板を得ることができる。また、前記カバーフィルムに本発明のフィルムを用いることもできる。
【0054】
上記において、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むものである。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0056】
実施例1
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸(以下、「HNA」という)84.7g(0.45モル)、4−ヒドロキシアセトアニリド(以下、「APAP」という)41.6g(0.275モル)、イソフタル酸(以下、「IPA」という)12.5g(0.075モル)、ジフェニルエーテル−4,4'−ジカルボン酸(以下、「DEDA」という)51.7g(0.20モル)及び無水酢酸 81.7g(1.1モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して3時間還流させた。
その後、留出する副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら170分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。得られた固形分は室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素雰囲気下250℃で3時間保持し、固相で重合反応を進めた。
【0057】
実施例2
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、HNA75.3g(0.40モル)、APAP45.3g(0.30モル)、IPA13.3g(0.08モル)、DEDA56.8g(0.22モル)及び無水酢酸 81.7g(1.1モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して3時間還流させた。
その後、留出する副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら170分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。得られた固形分は室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素雰囲気下250℃で3時間保持し、固相で重合反応を進めた。
【0058】
参考例1
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、HNA84.7g(0.45モル)、APAP41.6g(0.275モル)、IPA45.7g(0.275モル)、及び無水酢酸 81.7g(1.1モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して3時間還流させた。
その後、留出する副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら170分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。得られた固形分は室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素雰囲気下250℃で3時間保持し、固相で重合反応を進めた。
【0059】
参考例2
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、HNA75.3g(0.40モル)、APAP45.3g(0.30モル)、IPA13.3g(0.30モル)、及び無水酢酸 81.7g(1.1モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して3時間還流させた。
その後、留出する副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら170分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。得られた固形分は室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素雰囲気下250℃で3時間保持し、固相で重合反応を進めた。
【0060】
実施例3
実施例1で得られた液晶ポリエステル粉末 80gをN−メチル−2−ピロリドン 920gに加え、160℃に加熱し完全に溶解し褐色透明な液晶ポリエステル溶液組成物を得た。次いで、この溶液組成物を電解銅箔(3EC−VLP,18μm、三井金属(株))の上にフィルムアプリケーターを用いてキャスト後、高温熱風乾燥器で120℃で加熱して溶媒を除去した後、300℃で熱処理してフィルムからなる層と導体からなる層との積層体を得た。この積層体を全面エッチングすることにより25μm厚さのフィルムを得た。
【0061】
実施例4
実施例2で得られた液晶ポリエステル粉末 80gをN−メチル−2−ピロリドン 920gに加え、160℃に加熱し完全に溶解し褐色透明な液晶ポリエステル溶液組成物を得た。次いで、この溶液組成物を電解銅箔(3EC−VLP,18μm、三井金属(株))の上にフィルムアプリケーターを用いてキャスト後、高温熱風乾燥器で120℃で加熱して溶媒を除去した後、300℃で熱処理してフィルムからなる層と導体からなる層との積層体を得た。この積層体を全面エッチングすることにより25μm厚さのフィルムを得た。
【0062】
比較例1
参考例1で得られた液晶ポリエステル粉末 80gをN−メチル−2−ピロリドン 920gに加え、160℃に加熱し完全に溶解し褐色透明な液晶ポリエステル比較溶液組成物を得た。次いで、この比較溶液組成物を電解銅箔(3EC−VLP,18μm、三井金属(株))の上にフィルムアプリケーターを用いてキャスト後、高温熱風乾燥器で120℃で加熱して溶媒を除去した後、300℃で1時間加熱処理し、本発明のフィルムからなる層と導体からなる層との積層体を得た。この積層体を全面エッチングすることにより25μm厚さのフィルムを得た。
【0063】
比較例2
参考例2で得られた液晶ポリエステル粉末 80gをN−メチル−2−ピロリドン 920gに加え、160℃に加熱し完全に溶解し褐色透明な液晶ポリエステル比較溶液組成物を得た。次いで、この比較溶液組成物を電解銅箔(3EC−VLP,18μm、三井金属(株))の上にフィルムアプリケーターを用いてキャスト後、高温熱風乾燥器で120℃で加熱して溶媒を除去した後、300℃で1時間加熱処理し、本発明のフィルムからなる層と導体からなる層との積層体を得た。この積層体を全面エッチングすることにより25μm厚さのフィルムを得た。
【0064】
前記の実施例3〜4、比較例1〜2で得られた積層体については、次の方法によりカール性を測定した。また、得られたフィルムについては、次の方法により線膨張率と屈曲性を測定した。それらの結果を表1に記載した。
(積層体のカール性)
300℃1時間でアニールして得られた積層体を150mmx150mmに切り出し、積層体の導体側を下にして定盤に置き、積層体の導体の両端間の距離D(単位:mm)を測定した。
積層体のカールの程度が小さい場合は、次の式により積層体のカール量(単位:mm)を求めた(図1参照。図1において、積層体の導体の両端間の距離をD(単位:mm)で示す。)。カール量は、0〜1の範囲となる。
積層体のカール量=(150−D)/150
積層体のカールの程度が大きく、丸まってしまう場合は、上記のカール量が1を超える、と呼ぶ。そのような場合を図2に示す。
カール量が小さいほど、カール性が小さく、優れることを示す。
【0065】
(フィルムの線膨張率)
セイコー電子株式会社製 熱機械分析装置TMAを用いて、窒素気流下、5℃/分で昇温し、50〜100℃のフィルムの線膨張係数を測定した。引き取り方向をMD、その直角方向をTDとしたときに、それぞれの線膨張係数を測定した。
【0066】
(フィルムの屈曲性)
東洋精機製作所製MIT屈曲試験機(JIS−P8815の規則に準じた)を用いて、折り曲げ角135°(R=0.38)でフィルムが破断するまでの屈曲回数を測定した。
【0067】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】積層体のカール性を測定する模式図(カール量が1以下の場合)
【図2】積層体のカール性を測定する模式図(カール量が1を超える場合)
【符号の説明】
【0069】
1・・・銅箔
2・・・フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示される構造単位を誘導するモノマー1と、式(2)で示される構造単位を誘導するモノマー2と、式(3)で示される構造単位を誘導するモノマー3と、式(4)で示される構造単位を誘導するモノマー4を、モノマーの合計モル量に対して、それぞれモノマー1が30〜80モル%、モノマー2が10〜35モル%、モノマー3とモノマー4の合計が10〜35モル%であり、かつモノマー4が該合計モル量に対して1モル%以上となる比率で重合させて得られることを特徴とする液晶ポリエステル。
(1) −O−Ar1−CO−
(2) ―NH−Ar2−X−
(3) −CO−Ar3−CO−
(4) −CO−Ar4−Z−Ar5−CO−
(式中、Ar1は、1,4−フェニレン、2,6−ナフチレンまたは4,4'−ビフェニレンを表わし、Ar2は、1,4−フェニレンまたは1,3−フェニレンを表わし、Xは―O―または―NH―を表わし、Ar3は、1,4−フェニレン、1,3−フェニレンまたは2,6−ナフチレンを表わす。Ar4、Ar5は、それぞれ独立に1,4−フェニレン、2,6−ナフチレンまたは4,4’−ビフェニレンを表わす。Zは、−O−、−SO2−または−CO−を表わす。)
【請求項2】
Ar1が2,6−ナフチレンであり、Ar2が1,4−フェニレンであり、Xが−O−であり、Ar3が1,3−フェニレンであり、Ar4およびAr5がいずれも1,4−フェニレンであり、Zが−O−である請求項1記載の液晶ポリエステル。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液晶ポリエステルを含有することを特徴とするフィルム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の液晶ポリエステルおよび溶媒を含有することを特徴とする溶液組成物。
【請求項5】
溶媒が非プロトン性溶媒を含有することを特徴とする請求項4に記載の溶液組成物。
【請求項6】
非プロトン性溶媒100重量部に対して、請求項1または2に記載の液晶ポリエステルが0.01〜100重量部含有する、請求項4または5に記載の溶液組成物。
【請求項7】
非プロトン性溶媒がハロゲン原子を含まない非プロトン性溶媒である請求項4〜6のいずれかに記載の溶液組成物。
【請求項8】
非プロトン性溶媒が、双極子モーメントが3以上5以下の非プロトン性溶媒である請求項4〜7のいずれかに記載の溶液組成物。
【請求項9】
請求項4〜8のいずれかに記載の溶液組成物を支持体上に流延したのちに、溶媒を除去し、次いで加熱処理し、支持体を剥離することを特徴とするフィルムの製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の製造方法で得られることを特徴とするフィルム。
【請求項11】
請求項3または10に記載のフィルムからなる層と導体からなる層とを有することを特徴とする積層体。
【請求項12】
請求項11記載の積層体を有することを特徴とするフレキシブルプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−238915(P2007−238915A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−205875(P2006−205875)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】