説明

減速エネルギ回収制御装置

【課題】ドライバビリティを悪化させることなく減速エネルギ回収量を増大させる減速エネルギ回収制御装置を提供する。
【解決手段】蓄冷器及びバッテリへ車両減速エネルギを回収させるよう、車両の減速時に冷媒圧縮機及び発電機を駆動させる減速エネルギ回収制御を実施する回収制御手段と、蓄冷要求量及び蓄電要求量のバランスに応じて、減速エネルギ回収制御時の圧縮機及び発電機の駆動トルクの分配率λを設定するトルク分配設定手段と、を備える。そして、減速エネルギ回収制御による圧縮機の駆動を開始させてから、圧縮機の実駆動トルクTHが分配率λに応じた目標駆動トルク(Tsum×λ)に上昇するまでの応答待ち期間(t1〜t3或いはt1〜t4)には、分配率λに応じた発電機の目標駆動トルク(Tsum×(1−λ))よりも大きいトルクで発電機を駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の減速エネルギをバッテリ及び蓄冷器へ回収させるよう制御する、減速エネルギ回収制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関により駆動する補機としては、冷凍サイクル中の冷媒を圧縮して吐出する圧縮機、及び発電機が挙げられる。そして、燃料噴射をカットした状態で車両を減速させている時等に両補機(圧縮機及び発電機)を駆動させて、車両の減速エネルギを蓄冷器及びバッテリへ回収させるシステムが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1記載のシステムはアイドルストップ機能を有する車両を対象としており減速エネルギを回収するにあたり、蓄冷要求量と蓄電要求量とのバランスに応じて、減速時における両補機の駆動トルク分配率を制御している。これによれば、アイドルストップ中に蓄冷量又は蓄電量が不足することの機会を減少させることができ、アイドルストップ期間を拡大させて燃費向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−196457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、両補機の合計駆動トルクを大きくするほど減速エネルギの回収量を増大できて燃費を向上できるものの、補機の駆動トルクが過大になると、車両運転者に違和感を与えるほどに減速度が大きくなってしまい、ドライバビリティが悪化する。そして上記特許文献1記載の制御では、この点について改良の余地がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ドライバビリティを悪化させることなく減速エネルギ回収量を増大させる減速エネルギ回収制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0008】
請求項1記載の発明では、内燃機関により駆動して冷凍サイクル中の冷媒を圧縮して吐出する圧縮機、及び前記冷凍サイクルに設けられた蓄冷器と、内燃機関により駆動して発電する発電機、及び前記発電機により発電された電力を充電可能なバッテリと、を備えた車両に適用されることを前提とする。
【0009】
そして、前記蓄冷器及び前記バッテリの少なくとも一方へ前記車両の減速エネルギを回収させるよう、前記車両の減速時に前記圧縮機及び前記発電機の少なくとも一方を駆動させる減速エネルギ回収制御を実施する回収制御手段と、前記蓄冷器の蓄冷要求量及び前記バッテリの蓄電要求量のバランスに応じて、前記減速エネルギ回収制御時の前記圧縮機及び前記発電機の駆動トルクの分配率を設定するトルク分配設定手段と、前記減速エネルギ回収制御による前記圧縮機の駆動を開始させてから、前記圧縮機の実駆動トルクが前記分配率に応じた目標駆動トルクに上昇するまでの応答待ち期間には、前記分配率に応じた前記発電機の目標駆動トルクよりも大きいトルクで前記発電機を駆動させる応答待ち発電制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
ここで、圧縮機の駆動トルクの応答遅れは、発電機の駆動トルクの応答遅れに比べて著しく大きい。そのため、上記発明に反して応答待ち発電制御手段による制御を実施しない場合には以下の問題が生じる。すなわち、圧縮機の駆動を開始させてから所定時間が経過するまでの期間(応答待ち期間)では、圧縮機の実駆動トルクは、蓄冷要求量及び蓄電要求量のバランスに応じて設定された分配率に相当する駆動トルクよりも小さくなっている。よって、そのトルク不足分だけ減速エネルギの回収量が少なくなっている。
【0011】
この点に着目した上記発明では、応答待ち発電制御手段により、圧縮機30の駆動トルクが分配率に応じた値にまで上昇していない応答待ち期間に発電機の駆動トルクを増大させるので、その増大分だけ減速エネルギの回収量を増大できる。しかも、このように発電機の駆動トルクを増大させる大きさを、応答待ち期間における圧縮機30の駆動トルク不足分に設定すれば、車両運転者に違和感を与えるほどに減速度を大きくさせることなく、減速エネルギの回収量を増大させることができる。よって、ドライバビリティを悪化させることなく減速エネルギ回収量を増大させることができる。
【0012】
請求項2記載の発明では、前記応答待ち発電制御手段は、前記分配率に応じた前記圧縮機の目標駆動トルクと前記圧縮機の実駆動トルクとの偏差を取得する偏差取得手段と、前記偏差が大きいほど、前記応答待ち期間に前記発電機の駆動トルクを増大させる量を大きく設定するトルク増大量設定手段と、を有することを特徴とする。
【0013】
上述した圧縮機の応答遅れによる圧縮機のトルク不足量は、圧縮機の駆動開始から逐次変化していく。この点を鑑みた上記発明によれば、上記圧縮機のトルク不足量(つまり分配率に応じた圧縮機の目標駆動トルクと圧縮機の実駆動トルクとの偏差)を取得する偏差取得手段を備え、前記偏差が大きいほど発電機のトルク増大量を大きく設定するので、逐次変化していく圧縮機のトルク不足量に応じて発電機のトルク増大量を設定することができる。よって、減速エネルギの回収量を過不足なく増大させることができるので、回収過大によるドライバビリティ悪化及び回収過小による燃費悪化を回避できる。
【0014】
請求項3,4記載の発明では、車両運転者の減速操作に応じた要求減速度に基づき、車両運転者に対して許容できる最大の減速トルクである許容減速トルクを算出する許容減速トルク算出手段と、前記許容減速トルク及び前記分配率に基づき、前記減速エネルギ回収制御を実施する時の前記圧縮機の駆動トルク及び前記発電機の駆動トルクを算出する駆動トルク算出手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
上記発明によれば、減速エネルギ回収制御時の圧縮機及び発電機の駆動トルクを、蓄冷要求量及び蓄電要求量のバランスに応じた値にすることができるとともに、両駆動トルクの合計値を、車両運転者に違和感を与えない範囲内で最大(許容減速トルク)にできる。よって、ドライバビリティを悪化させることなく減速エネルギ回収量を増大させることができる。
【0016】
請求項5,6記載の発明では、前記車両は、車輪に制動力を付与する制動アクチュエータ、及び当該制動アクチュエータによる制動力を制御する制動力制御手段を備えており、車両運転者の減速操作に応じた要求減速度に基づき、前記制動力を設定する制動力設定手段と、前記減速エネルギ回収制御を実施する時には、前記制動力設定手段により設定された制動力を減少させるとともに、その減少分に相当するトルクだけ、前記圧縮機及び前記発電機の駆動トルクを増大させる補機トルク増大制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0017】
上記発明によれば、減速エネルギ回収制御を実施する時には制動アクチュエータによる制動力を減少させ、その減少分に相当するトルク分だけ圧縮機及び発電機の駆動トルクを増大させるので、車両の減速度を増大させることなく、圧縮機及び発電機による両駆動トルクの合計値を増大させることができる。よって、ドライバビリティを悪化させることなく減速エネルギ回収量を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態において、バッテリシステム及び空調システムの全体構成を示す図。
【図2】第1実施形態において、オルタネータ及び圧縮機の駆動トルクを制御する手順を示すフローチャート。
【図3】補機合計トルクTsumをオルタネータ及び圧縮機に分配するにあたり、その分配率λを設定する手法を説明する機能ブロック図。
【図4】図2中のステップS19〜S22による処理内容を説明する機能ブロック図。
【図5】図2〜図4に示す処理を実施した場合における、経過時間に対する各種変化の一態様を示すタイムチャート。
【図6】本発明の第2実施形態において、オルタネータ及び圧縮機の駆動トルクを制御する手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0020】
(第1実施形態)
図1に、本実施形態にかかるバッテリシステム及び空調システム等の全体構成を示す。
【0021】
車両Bに搭載されたエンジン10(内燃機関)の各気筒には、エンジン10の燃焼室に燃料を供給するための燃料噴射弁11が備えられている。燃料噴射弁11の作動は電子制御装置(エンジンECU12)により制御される。エンジンECU12は、周知のCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されている。
【0022】
燃料の燃焼によって発生するエネルギは、エンジン10の出力軸(クランク軸13)の回転動力として取り出される。この回転動力は、変速装置14を介して車両の図示しない駆動輪へと伝達される。なお、エンジン10は、ガソリンエンジン等の火花点火式内燃機関であってもよいし、ディーゼルエンジン等の圧縮着火式内燃機関であってもよい。
【0023】
エンジンECU12には、クランク軸13の回転速度を検出するクランク角センサや、吸気量を検出するエアフローセンサ、車速センサ、外気温センサ等の各種センサの検出信号が入力される。エンジンECU12は、上記入力に応じて、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、燃料噴射弁11による燃料噴射制御等、エンジン10の燃焼制御を行う。
【0024】
クランク軸13には、スタータ20が接続されている。スタータ20は、図示しないイグニッションスイッチのオンによりバッテリ21から電力供給されて始動し、エンジン10を始動させるべくクランク軸13に初期回転を付与する。バッテリ21は、オルタネータ22(発電機)により発電された電力を充電可能な二次電池である。エンジンECU12は、バッテリ21の充電量を表すSOC(State of charge:満充電時の充電量に対する実際の充電量の割合)が適正範囲となるように、オルタネータ22による発電量を制御する。詳細には、オルタネータ22のロータコイルに流す励磁電流を調節することで、発電量を調節(制御)する。
【0025】
車両Bには、車室内を空調する空調システムが搭載されている。この空調システムは、冷凍サイクルに冷媒を循環させるべく冷媒を吸入・吐出する圧縮機30や、コンデンサ31、レシーバ32、膨張弁33、及び蒸発器34等を備えて構成されている。
【0026】
上記圧縮機30は、これが備える電磁駆動式のコントロールバルブ(CV30a)の通電操作によって冷媒の吐出容量を連続的に可変設定可能な可変容量型圧縮機である。圧縮機30の駆動軸に機械的に連結されたプーリは、ベルト15及びクランクプーリ16を介してクランク軸13と機械的に連結されている。このクランク軸13の回転動力が圧縮機30に伝達される状況下、CV30aへの通電操作により上記吐出容量が調節される。なお、以下の説明では、上記吐出容量が0より大きくなる状態を圧縮機30が駆動されるものとし、上記吐出容量が0となる状態を圧縮機30が停止されるものとする。
【0027】
コンデンサ31は、DCモータ等によって回転駆動される図示しないファンから送風される空気(外気)と、圧縮機30から吐出供給される冷媒との熱交換が行われる部材である。レシーバ32は、コンデンサ31より流入した冷媒を気液分離して且つ分離された液冷媒を一時的に貯蔵し、液冷媒のみを下流側に供給するために設けられるものである。レシーバ32に貯蔵された液冷媒は、膨張弁33によって急激に膨張され霧状とされる。霧状とされた冷媒は、車室内へ送風される空気を冷却する蒸発器34に供給される。蒸発器34では、DCモータ等によって回転駆動されるファン(エバファン35)から送風された空気と上記霧状とされた冷媒とが熱交換することで、冷媒の一部又は全部が気化する。これにより、エバファン35から送風された空気が冷却され、冷却された空気が車室内へと送風されることで車室内を冷房することが可能となる。
【0028】
また、蒸発器34には、冷媒の熱を蓄えるパラフィン等の蓄冷剤を封入して構成される蓄冷器36が取り付けられている。これは、後述するアイドルストップ制御によりエンジン10が自動停止されるアイドルストップ期間において、圧縮機30を駆動させることなく蓄冷器36により車室内を冷房するための構成である。
【0029】
詳しくは、圧縮機30が駆動されることで蒸発器34に供給された冷媒と蓄冷器36との熱交換によって、冷媒の熱が蒸発器34に蓄えられる。その後、圧縮機30が停止される状況下、エバファン35から送風された空気と蓄冷器36とが熱交換することにより、上記送風された空気が冷却され、冷却された空気が車室へと送られることで車室内を冷房することが可能となる。なお、蒸発器34の出口直近には、冷媒温度を検出する冷媒温度センサ34aが設けられている。また、蒸発器34から流出した冷媒は、圧縮機30の吸入口に吸入される。
【0030】
空調システムを制御対象とする電子制御装置(以下、エアコンECU37)は、周知のCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されている。エアコンECU37には、車両乗員により操作されるA/Cスイッチの操作信号であって車室内を冷房すべく圧縮機30の駆動指令となる信号や、車両乗員により操作される目標温度設定スイッチの操作信号であって車室内温度の目標値(目標温度)となる信号、車室内温度を検出する車室内温度センサ及び冷媒温度センサ34a等の検出信号が入力される。エアコンECU37は、これら入力に応じてROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、エバファン35や、CV30a等の各種機器を操作する。そして、これら各種機器を操作することで、圧縮機30の駆動制御や車室内の冷房制御等を行う。
【0031】
圧縮機30の駆動制御は、圧縮機30の現在の実駆動トルクを、後述する目標値に制御すべくCV30aが通電操作されることで行われる。詳しくは、実駆動トルクを目標値にするよう圧縮機30に対する指令吐出容量を算出し、この指令吐出容量をCV30aの駆動電流値に換算する。そして、この駆動電流値に応じてCV30aに流れる駆動電流をデューティ制御することにより、実駆動トルクを目標値にするようフィードバック制御する。
【0032】
本実施形態にかかる車両Bはアイドルストップ機能を有する。すなわち、エンジンECU12は、エンジン10の運転中に所定の停止条件が成立した場合に、エンジン10を自動停止させるアイドルストップ制御を行う。そして、アイドルストップ期間中に所定の再始動条件が成立した場合には、スタータ20によりエンジン10を自動再始動させる。これにより、エンジン10の燃費低減効果を得ることが可能となる。
【0033】
さらに、本実施形態にかかる車両Bは減速エネルギ回収機能を有する。すなわち、燃料噴射弁11からの燃料噴射をカットした状態で車両Bが減速走行しており、かつ、以下に説明するロックアップ機構を作動させている時に、クランク軸13の回転駆動力によりオルタネータ22及び圧縮機30を駆動させる制御(減速エネルギ回収制御)を、エンジンECU12(回収制御手段)は実施する。これにより、車両Bの減速走行エネルギは、熱エネルギに変換されて蓄冷器36に蓄冷されるとともに電気エネルギに変換されてバッテリ21に蓄電されて、回収されることとなる。
【0034】
上記ロックアップ制御について説明すると、クランク軸13と変速装置14との間には、流体を介してクランク軸13の回転駆動力を変速装置14へ伝達するトルクコンバータ(図示せず)が備えられている。そして、トルクコンバータに備えられたロックアップ機構を作動させると、前記流体を介することなくクランク軸13と変速装置14とが直結される。これにより、クランク軸13の回転駆動力は、トルクコンバータによりトルク変換されることなく、クランクプーリ16及びベルト15を介してオルタネータ22及び圧縮機30へ伝達される。
【0035】
減速エネルギ回収制御時の圧縮機30の駆動トルク(蓄冷量に相当)は、CV30aの作動を制御して吐出容量を可変設定することにより制御することができる。また、減速エネルギ回収制御時のオルタネータ22の駆動トルク(蓄電量に相当)は、オルタネータ22のロータコイルに流す励磁電流を調節することにより制御することができる。以下、減速エネルギ回収制御時において、オルタネータ22及び圧縮機30の上記駆動トルクを制御する手順について説明する。
【0036】
図2は、エンジンECU12が有するマイコンによる上記駆動トルクの制御手順を示すフローチャートであり、当該処理は、イグニッションスイッチがオン操作されたことをトリガとして起動した後、所定周期(例えば先述のCPUが行う演算周期又は所定のクランク角度毎)で繰り返し実行される。
【0037】
先ず、図2に示すステップS10において、減速エネルギ回収が要求されているか否かを判定する。具体的には、燃料噴射弁11からの燃料噴射をカットした状態で車両Bが減速走行しており、かつ、ロックアップ機構を作動させている時に減速エネルギ回収が要求される。
【0038】
減速エネルギ回収が要求されている場合(S10:YES)には、ステップS11に進み、減速エネルギ回収が要求されていない通常時のブレーキトルクTbk(制動力)を取得する。なお、前記ブレーキトルクTbkは、図2とは別のルーチン処理で算出されるものであり、運転者のブレーキペダル操作量に応じたトルクである。
【0039】
続くステップS12(許容減速トルク算出手段)では、ステップS11で取得したブレーキトルクTbkに基づき、以下に説明する許容トルクT0を算出する。ここで、減速走行時におけるオルタネータ22及び圧縮機30の駆動トルクが過大になると、運転者に違和感を与えるほどに車両Bの減速度が大きくなってしまい、ドライバビリティが悪化する。但し、例えばブレーキトルクTbkに相当する減速度を僅かに増大させただけでは、運転者に違和感を与えることはない。そこで上記ステップS12では、運転者に違和感を与えない程度に減速度を増大できる量を許容トルクT0として算出する。なお、ブレーキ操作量が大きくブレーキトルクTbkが大きい場合であるほど、許容トルクT0を大きく設定することができる。
【0040】
車両運転者のブレーキ操作量(要求減速度)に基づき、車両運転者に対して許容できる最大の減速トルクである「許容減速トルク」は、上述したブレーキトルクTbkに許容トルクT0を加算した値に相当する。
【0041】
続くステップS13では、現時点における蓄冷器36での蓄冷量及びバッテリ21での蓄電量を取得する。なお、これらの蓄冷量及び蓄電量は、図2とは別のルーチン処理で算出されるものであり、蓄冷量は、冷媒温度センサ34aの検出値等に基づき算出され、蓄電量を表すSOCは、バッテリ21の入出力電流等に基づき算出される。
【0042】
続くステップS14では、オルタネータ22及び圧縮機30の駆動トルクの最大値(補機最大トルクTmax)を算出する。続くステップS15では、ステップS12で算出した許容トルクT0とステップS14で算出した補機最大トルクTmaxとを大小比較する。
【0043】
Tmax>T0と判定された場合(S15:YES)には、次のステップS16において、オルタネータ22及び圧縮機30の駆動トルクの合計値(補機合計トルクTsum)を許容トルクT0に設定する。一方、Tmax≦T0と判定された場合(S15:NO)には、次のステップS17において、補機合計トルクTsumを補機最大トルクTmaxに設定する。要するに、補機合計トルクTsumが許容トルクT0を超えると、運転者に違和感を与えてしまう程に減速度が増大するので、このような不具合が生じないように、Tmax>T0である場合には補機合計トルクTsumを補機最大トルクTmaxに制限する。
【0044】
続くステップS18(トルク分配設定手段)では、ステップS13で取得した蓄電量及び蓄熱量に基づき、蓄冷要求レベル(蓄冷要求量に相当)及び蓄電要求レベル(蓄電要求量に相当)を設定し、これら要求レベルに基づき、オルタネータ22及び圧縮機30に対する補機合計トルクTsumの分配率λを設定する。詳しくは、図3を用いて以下に説明する。
【0045】
図3は、ステップS18による処理内容を表した機能ブロック図である。図中の蓄電要求レベル設定手段B10は、バッテリ21のSOCを複数の領域(レベル1〜5等)に分割して構成されたテーブルを有しており、バッテリ入出力電流等に基づき算出した現時点でのSOCが、前記テーブル中のいずれの領域に該当するかを判定する。これにより蓄電要求レベルを設定する。
【0046】
図中の蓄冷要求レベル設定手段B11は、蓄冷器36での蓄冷量を複数の領域(レベル1〜5等)に分割して構成されたテーブルを有しており、冷媒温度センサ34aにより検出された蒸発器出口温度に基づき算出した現時点での蓄冷量が、前記テーブル中のいずれの領域に該当するかを判定する。これにより蓄冷要求レベルを設定する。
【0047】
図中の分配率設定手段B12は、各々の要求レベル設定手段B10,B11により設定された蓄電要求レベル及び蓄冷要求レベルに基づき、補機合計トルクTsumの分配率λを演算する。具体的には、蓄冷要求レベル>蓄電要求レベル+α1である場合には分配率λを1に設定し、補機合計トルクTsumの全てを圧縮機30の駆動トルクに分配する(圧縮機優先モード)。なお、α1は、例えば1レベル又は2レベルに設定されている。
【0048】
蓄冷要求レベル<蓄電要求レベル−α2である場合には分配率λを0に設定し、補機合計トルクTsumの全てをオルタネータ22の駆動トルクに分配す(オルタネータ優先モード)。なお、α2は、例えば1レベル又は2レベルに設定されている。
【0049】
上記以外である場合、すなわち−α2≦蓄冷要求レベル−蓄電要求レベル≦α1である場合には分配率λを0.5に設定し、補機合計トルクTsumに分配率λを乗じた値を圧縮機30の駆動トルクに分配するとともに、補機合計トルクTsumに(1−λ)を乗じた値をオルタネータ22の駆動トルクに分配する(均等分配モード)。なお、分配率λは1,0.5,0以外の値を用いてもよい。
【0050】
図2の説明に戻り、次のステップS19(駆動トルク算出手段)では、補機合計トルクTsum及び分配率λに基づき、圧縮機30の駆動トルクの目標値である目標トルクTHtrgを算出する(THtrg=Tsum・λ)。なお、この目標トルクTHtrgは「分配率に応じた圧縮機の目標駆動トルク」に相当する。
【0051】
続くステップS20(駆動トルク算出手段)では、補機合計トルクTsum及び分配率λに基づき、オルタネータ22の駆動トルクの目標ベース値である目標ベーストルクTEbを算出する(TEb=Tsum・(1−λ))。なお、この目標ベーストルクTEbは「分配率に応じた発電機の目標駆動トルク」に相当する。
【0052】
続くステップS21では、圧縮機30の実駆動トルクTHと目標トルクTHtrgとの偏差ΔTHを算出し、その偏差ΔTHに基づきオルタネータ22の補正トルクTEaを算出する(TEa=f(ΔTH))。具体的には、前記偏差ΔTHが大きいほど補正トルクTEaを大きい値に設定する。なお、上記関数fは、TEa<ΔTHとなるように偏差ΔTHにゲインをかけるものであるが、ゲインを1に設定して偏差ΔTHをそのまま補正トルクTEaとして設定してもよい。
【0053】
続くステップS22(応答待ち発電制御手段)では、目標ベーストルクTEb及び補正トルクTEaに基づき、オルタネータ22の目標最終トルクTEfinを算出する(TEfin=TEb+TEa)。なお、減速エネルギ回収を実施していない時に車両Bへ付与される制動トルクはブレーキトルクTbkであるのに対し、図2の処理に基づく減速エネルギ回収時には、車両Bへ付与される制動トルクはブレーキトルクTbkに許容トルクT0を加算した大きさとなっており、ブレーキ操作量に対する減速度は大きくなっている。但しその減速増大分は、車両運転者へ違和感を与えない範囲で最大に設定される。
【0054】
図4は、ステップS19〜S22による処理内容を表した機能ブロック図である。図中の圧縮機目標トルク演算手段B20は、ステップS19に相当する手段であり、Tsum×λ=THtrgの演算を実施することで圧縮機30の目標トルクTHtrgを算出する。図中のオルタネータ目標ベーストルク演算手段B21は、ステップS20に相当する手段であり、Tsum−THtrg=TEbの演算を実施することでオルタネータ22の目標ベーストルクTEbを算出する。
【0055】
実トルク演算手段B22では圧縮機30の実駆動トルクTHを演算し、偏差演算手段B23(偏差取得手段)では目標トルクTHtrgと実駆動トルクTHとの偏差ΔTHを演算する。補正トルク演算手段B24(トルク増大量設定手段)は、ステップS21に相当する手段であり、所定のゲインを偏差ΔTHに乗算し、その演算値をオルタネータ22の補正トルクTEaとして出力する。
【0056】
最終トルク演算手段B25は、ステップS22に相当する手段であり、目標ベーストルクTEbに補正トルクTEaを加算し、その演算値をオルタネータ22の目標最終トルクTEfinとして出力する。要するに、許容トルクT0に基づき設定された補機合計トルクTsumに補機合計実トルクTactが近づくよう、圧縮機30の偏差ΔTHに応じてオルタネータ22の駆動トルクをフィードバック制御する。
【0057】
なお、図中の実トルク演算手段B26ではオルタネータ22の実駆動トルクTEを演算し、加算手段B27では圧縮機30の実駆動トルクTHとオルタネータ22の実駆動トルクTEとを加算し、その演算値を補機合計実トルクTactとして出力する。
【0058】
図5は、図2〜図4に示す処理を実施した場合における、経過時間に対する各種変化の一態様を示すタイムチャートである。図5の例では、車両走行中のt1時点で運転者がブレーキペダルの踏み込みを開始しており(図5(a)参照)、このブレーキ操作に伴い車速が減速していきt2時点で車速がゼロになっている(図5(b)参照)。そして、この減速期間t1〜t2中に、オルタネータ22及び圧縮機30の少なくとも一方を駆動させて減速エネルギを回収させる要求が発生している。
【0059】
図5の例では、ブレーキ操作量が一定であるため、図2のステップS11にて算出されるブレーキトルクTbkは一定のままである(図5(c)中の実線参照)。したがって、ステップS12にてブレーキトルクTbkに基づき算出される許容トルクT0も一定のままである(図5(c)中の点線参照)。なお、図5の例では、許容トルクT0を補機合計トルクTsumとして設定している。
【0060】
図5(d)に示す如く圧縮機優先モード(λ=1)に設定されている場合には、圧縮機30の実駆動トルクが目標トルクTHtrg(この場合THtrg=Tsum)に上昇するまでに応答遅れ(応答待ち期間)が発生する(図5(d)中の一点鎖線参照)。この応答待ち期間t1〜t3にはオルタネータ22が駆動される(図5(d)中の点線参照)。
【0061】
この時、図4に示すフィードバック制御により、圧縮機30の実駆動トルクTHと目標トルクTHtrgとの偏差ΔTHが大きいほどオルタネータ22の駆動トルクを増大させる。よって、t1時点からt3時点にかけて圧縮機30の実駆動トルクTHが徐々に上昇するにつれて、オルタネータ22の実駆動トルクTEは徐々に減少している。これにより、応答遅れ期間t1〜t3において、補機合計実トルクTact(図5(d)中の実線参照)を補機合計トルクTsumに過不足なく一致させることができる。
【0062】
図5(e)に示す如くオルタネータ優先モード(λ=0)に設定されている場合には、オルタネータ22の実駆動トルクが目標最終トルクTEfin(この場合TEfin=Tsum)にまで直ぐに上昇し、その時の応答遅れは圧縮機30の応答遅れに比べて極めて小さい。よって、オルタネータ22の応答遅れ期間中には圧縮機30を駆動させることはしない。
【0063】
図5(f)に示す如く均等分配モード(λ=0.5)に設定されている場合には、圧縮機30の実駆動トルクが目標トルクTHtrg(この場合THtrg=Tsum×0.5)に上昇するまでに応答遅れが発生する(図5(f)中の一点鎖線参照)。この応答遅れが生じている期間(応答待ち期間t1〜t4)には、オルタネータ22の目標ベーストルクTEbは増大するよう補正されることに起因して、オルタネータ22の実駆動トルクは目標ベーストルクTEb(この場合THtrg=Tsum×0.5)よりも高くなっている(図5(f)中の点線参照)。
【0064】
この時、図4に示すフィードバック制御により、圧縮機30の実駆動トルクTHと目標トルクTHtrgとの偏差ΔTHが大きいほどオルタネータ22の駆動トルクを増大させる。よって、t1時点からt4時点にかけて圧縮機30の実駆動トルクTHが徐々に上昇するにつれて、オルタネータ22の実駆動トルクTEは徐々に減少している。これにより、応答遅れ期間t1〜t4において、補機合計実トルクTact(図5(f)中の実線参照)を補機合計トルクTsumに過不足なく一致させることができる。
【0065】
以上により、本実施形態によれば、圧縮機30の実駆動トルクTHと目標トルクTHtrgよりも少なくなっている応答待ち期間t1〜t3,t1〜t4に、オルタネータ22の駆動トルク(目標最終トルクTEfin)を増大させるので、その増大分だけ減速エネルギの回収量を増大できる。よって、アイドルストップ中に蓄電量が不足して、オルタネータ22を駆動させてバッテリ21を充電させるようエンジン10を再始動させたり、アイドルストップ中に蓄冷量が不足して、圧縮機30を駆動させて車室内への送風空気を十分に低下させて冷房させるようエンジンを再始動させたりすることの機会を低減できる。
【0066】
しかも、圧縮機30の実駆動トルクTHと目標トルクTHtrgとの偏差ΔTHに応じた量だけオルタネータ22の目標ベーストルクTEbを増大させるので、応答遅れに起因した圧縮機30のトルク不足分(偏差ΔTH)だけオルタネータ22の駆動トルクを増大させることができる。よって、車両運転者に違和感を与えるほどに減速度を大きくさせることなく、減速エネルギの回収量増大といった上記効果を発揮できるので、ドライバビリティを悪化させることなく減速エネルギ回収量を増大させることができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、ブレーキトルクTbkに加算しても車両運転者が過度な減速と感じない程度の最大値を許容トルクT0として算出し、その許容トルクT0及び分配率λに基づき、減速エネルギ回収制御時の目標トルクTHtrg及び目標ベーストルクTEbを算出する。そのため、減速エネルギ回収制御時の両実駆動トルクTE,THを、蓄冷要求量及び蓄電要求量のバランスに応じた値にすることができるとともに、補機合計実トルクTactを、車両運転者に違和感を与えない範囲内で最大(Tbk+T0)にできる。よって、ドライバビリティを悪化させることなく減速エネルギ回収量を増大させることができる。
【0068】
また、車両運転者が過度な減速と感じない程度の最大値(許容トルクT0)は、その時のブレーキ操作量に応じて異なる。この点を鑑みた本実施形態では、車両運転者によるブレーキ操作量に応じて許容トルクT0を可変設定するので、ドライバビリティを悪化させることなく減速エネルギ回収量を増大させることを高精度で実現できる。
【0069】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、車両運転者によるブレーキ操作量に応じたブレーキトルクTbkが車両Bの駆動輪や従動輪へ付与される。これに対し本実施形態にかかる車両Bは、図1中の一点鎖線に示す油圧駆動式のブレーキアクチュエータ40(制動アクチュエータ)を備えており、ブレーキアクチュエータ40によるブレーキトルクTbk(制動力)は、エンジンECU12(制動力制御手段)により制御可能である。
【0070】
詳細には、先ずエンジンECU12は、運転者のブレーキ操作量に応じた要求制動力を算出する。そして減速回収制御時には、オルタネータ22及び圧縮機30を駆動させることによる制動力(補機合計実トルクTact)の、要求制動力に対する不足分を、ブレーキアクチュエータ40による制動力(ブレーキトルクTbk)で補うよう、ブレーキアクチュエータ40の作動を制御する。このように、ブレーキアクチュエータ40を有する車両Bにおいては、ブレーキトルクTbkを減少させ、その減少分だけ補機合計実トルクTactを増大させるように制御可能である。
【0071】
図6は、本実施形態にかかる処理内容を示すフローチャートであり、以下、図2との違いを中心に説明する。なお、図6中、図2と同一符号部分についてはその説明を援用する。また、本実施形態におけるバッテリシステム及び空調システムのハード構成は、図1に示す上記第1実施形態と同じである。
【0072】
先ず、図6に示すステップS10〜S14では、図2と同様にして、現時点での蓄電量及び蓄冷量を取得するとともに、通常ブレーキトルクTbk、許容トルクT0及び補機最大トルクTmaxを算出する。
【0073】
続くステップS15aでは、ステップS12で算出した許容トルクT0に通常のブレーキトルクTbkを加算した値と、ステップS14で算出した補機最大トルクTmaxとを大小比較する。
【0074】
Tmax>T0+Tbkと判定された場合(S15a:YES)には、次のステップS16a(補機トルク増大制御手段)において、オルタネータ22及び圧縮機30の駆動トルクの合計値(補機合計トルクTsum)を、通常ブレーキトルクTbkに許容トルクT0を加算した値にする(Tsum=Tbk+T0)。この場合には、車両Bへ付与する制動力の全てをオルタネータ22及び圧縮機30の駆動トルクにより生成されることとなり、ブレーキアクチュエータ40によるトルクはゼロになる。この変形例として、ブレーキアクチュエータ40によるトルクを僅かでも発生させるために、Tsum=T0+Tbk−Treと設定して、前記Treの分だけブレーキアクチュエータ40によるブレーキトルクを発生させてもよい。
【0075】
一方、Tmax≦T0+Tbkと判定された場合(S15a:NO)には、次のステップS17において、補機合計トルクTsumを補機最大トルクTmaxに設定する。要するに、補機合計トルクTsumがT0+Tbkを超えると、運転者に違和感を与えてしまう程に減速度が増大するので、このような不具合が生じないように、Tmax>T0+Tbkである場合には補機合計トルクTsumを補機最大トルクTmaxに制限する。
【0076】
続くステップS16b(補機トルク増大制御手段)では、ブレーキアクチュエータ40によるブレーキトルクの目標値(目標トルクTbktrg)を算出する。具体的には、ステップS16a,S17で決定した補機合計トルクTsumとブレーキアクチュエータ40によるブレーキトルクとの合計が、通常ブレーキトルクTbkに許容トルクT0を加算したトルクとなるよう、ブレーキアクチュエータ40の目標トルクTbktrgを算出する(Tbktrg=Tbk+T0−Tsum)。
【0077】
以降のステップS18〜S22では、図2と同様にして、蓄冷要求レベル及び蓄電要求レベルを設定し、これら要求レベルに基づき補機合計トルクTsumの分配率λを設定する。そして、補機合計トルクTsum及び分配率λに基づき圧縮機30の目標トルクTHtrgを算出するとともに、オルタネータ22の目標ベーストルクTEbを算出する。そして、圧縮機30の偏差ΔTHに基づき目標ベーストルクTEbを補正して目標最終トルクTEfinを算出する。
【0078】
以上詳述した本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果が得られるとともに以下の効果も発揮される。すなわち、減速エネルギ回収制御を実施する時にはブレーキアクチュエータ40により発揮されるブレーキトルクを減少させ、その減少分に相当するトルク分だけ補機合計トルクTsumを増大させるので、車両Bの減速度を増大させることなく、補機合計トルクTsumを増大させることができる。よって、ドライバビリティを悪化させることなく減速エネルギ回収量を増大できる。
【0079】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、以下のように変更して実施してもよい。また、各実施形態の特徴的構成をそれぞれ任意に組み合わせるようにしてもよい。
【0080】
・図4に示す例では、補正トルク演算手段B24を設けて偏差ΔTHに所定のゲイン(1未満の正の値)をかけているが、前記ゲインを廃止して偏差ΔTHをそのまま補正トルクTEaとして設定するようにしてもよい。
【0081】
・図4に示す例では、補正トルク演算手段B24による上記ゲインを固定した値に設定しているが、バッテリシステムや空調システムの運転状態に応じて可変設定してもよい。すなわち、クランク軸13の回転速度、バッテリ21のSOC、外気温度、冷媒圧力等の状態量が異なれば、目標最終トルクTEfinや目標トルクTHtrgが同じであっても実駆動トルクTH,TEは異なる。この点を鑑みて、前記状態量に応じて補正トルク演算手段B24による上記ゲインを可変設定すれば、ドライバビリティを悪化させることなく減速エネルギ回収量を増大させることをより一層高精度にできる。
【0082】
・図3に示す例では、蓄電要求レベル及び蓄冷要求レベルのレベル分けを3段階に設定しているが、当該レベル分けは2段階でもよいし4段階以上でもよい。
【0083】
・図4に示す例では、圧縮機30の実駆動トルクTHと目標トルクTHtrgとの偏差ΔTHに基づき、オルタネータ22の目標ベーストルクTEbに対する補正トルクTEaを算出している。この変形例として、補機合計実トルクTactと補機合計トルクTsumとの偏差に応じて補正トルクTEaを算出するようにしてもよい。
【0084】
・上記実施形態では、アイドルストップ機能を有した車両Bにおいて、アイドルストップ中に蓄冷量又は蓄電量が不足することの機会を低減させるべく減速エネルギ回収量の増大を図っているが、本発明は、アイドルストップ機能を有していない車両にも適用できる。
【0085】
・図1に示す例では、蓄冷器36を蒸発器34に設けているが、本発明にかかる蓄冷器はこのような配置に限られるものではなく、例えば、圧縮機30の冷媒吸入口と蒸発器34との間に蓄冷器36を接続してもよいし、蒸発器34と蓄冷器36とを並列に接続した構成の冷凍サイクルであってもよい。
【符号の説明】
【0086】
12…エンジンECU(回収制御手段、制動力制御手段)、21…バッテリ、22…オルタネータ(発電機)、30…圧縮機、36…蓄冷器、S11…制動力設定手段、S12…許容減速トルク算出手段、S16a,S16b…補機トルク増大制御手段、S18…トルク分配設定手段、S19,S20…駆動トルク算出手段、S22…応答待ち発電制御手段、B23…偏差取得手段、B24…トルク増大量設定手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関により駆動して冷凍サイクル中の冷媒を圧縮して吐出する圧縮機、及び前記冷凍サイクルに設けられた蓄冷器と、
内燃機関により駆動して発電する発電機、及び前記発電機により発電された電力を充電可能なバッテリと、
を備えた車両に適用され、
前記蓄冷器及び前記バッテリの少なくとも一方へ前記車両の減速エネルギを回収させるよう、前記車両の減速時に前記圧縮機及び前記発電機の少なくとも一方を駆動させる減速エネルギ回収制御を実施する回収制御手段と、
前記蓄冷器の蓄冷要求量及び前記バッテリの蓄電要求量のバランスに応じて、前記減速エネルギ回収制御時の前記圧縮機及び前記発電機の駆動トルクの分配率を設定するトルク分配設定手段と、
前記減速エネルギ回収制御による前記圧縮機の駆動を開始させてから、前記圧縮機の実駆動トルクが前記分配率に応じた目標駆動トルクに上昇するまでの応答待ち期間には、前記分配率に応じた前記発電機の目標駆動トルクよりも大きいトルクで前記発電機を駆動させる応答待ち発電制御手段と、
を備えることを特徴とする減速エネルギ回収制御装置。
【請求項2】
前記応答待ち発電制御手段は、
前記分配率に応じた前記圧縮機の目標駆動トルクと前記圧縮機の実駆動トルクとの偏差を取得する偏差取得手段と、
前記偏差が大きいほど、前記応答待ち期間に前記発電機の駆動トルクを増大させる量を大きく設定するトルク増大量設定手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の減速エネルギ回収制御装置。
【請求項3】
車両運転者の減速操作に応じた要求減速度に基づき、車両運転者に対して許容できる最大の減速トルクである許容減速トルクを算出する許容減速トルク算出手段と、
前記許容減速トルク及び前記分配率に基づき、前記減速エネルギ回収制御を実施する時の前記圧縮機の駆動トルク及び前記発電機の駆動トルクを算出する駆動トルク算出手段と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の減速エネルギ回収制御装置。
【請求項4】
内燃機関により駆動して冷凍サイクル中の冷媒を圧縮して吐出する圧縮機、及び前記冷凍サイクルに設けられた蓄冷器と、
内燃機関により駆動して発電する発電機、及び前記発電機により発電された電力を充電可能なバッテリと、
を備えた車両に適用され、
前記蓄冷器及び前記バッテリの少なくとも一方へ前記車両の減速エネルギを回収させるよう、前記車両の減速時に前記圧縮機及び前記発電機の少なくとも一方を駆動させる減速エネルギ回収制御を実施する回収制御手段と、
前記蓄冷器の蓄冷要求量及び前記バッテリの蓄電要求量のバランスに応じて、前記減速エネルギ回収制御時の前記圧縮機及び前記発電機の駆動トルクの分配率を設定するトルク分配設定手段と、
車両運転者の減速操作に応じた要求減速度に基づき、車両運転者に対して許容できる最大の減速トルクである許容減速トルクを算出する許容減速トルク算出手段と、
前記許容減速トルク及び前記分配率に基づき、前記減速エネルギ回収制御を実施する時の前記圧縮機の駆動トルク及び前記発電機の駆動トルクを算出する駆動トルク算出手段と、
を備えることを特徴とする減速エネルギ回収制御装置。
【請求項5】
前記車両は、当該車両に制動力を付与する制動アクチュエータ、及び当該制動アクチュエータによる制動力を制御する制動力制御手段を備えており、
車両運転者の減速操作に応じた要求減速度に基づき、前記制動力を設定する制動力設定手段と、
前記減速エネルギ回収制御を実施する時には、前記制動力設定手段により設定された制動力を減少させるとともに、その減少分に相当するトルクだけ、前記圧縮機及び前記発電機の駆動トルクを増大させる補機トルク増大制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の減速エネルギ回収制御装置。
【請求項6】
内燃機関により駆動して冷凍サイクル中の冷媒を圧縮して吐出する圧縮機、及び前記冷凍サイクルに設けられた蓄冷器と、
内燃機関により駆動して発電する発電機、及び前記発電機により発電された電力を充電可能なバッテリと、
車輪に制動力を付与する制動アクチュエータと、
前記制動アクチュエータによる制動力を制御する制動力制御手段と、
を備えた車両に適用され、
前記蓄冷器及び前記バッテリの少なくとも一方へ前記車両の減速エネルギを回収させるよう、前記車両の減速時に前記圧縮機及び前記発電機の少なくとも一方を駆動させる減速エネルギ回収制御を実施する回収制御手段と、
車両運転者の減速操作に応じた要求減速度に基づき、前記制動力を設定する制動力設定手段と、
前記減速エネルギ回収制御を実施する時には、前記制動力設定手段により設定された制動力を減少させるとともに、その減少分に相当するトルクだけ、前記圧縮機及び前記発電機の駆動トルクを増大させる補機トルク増大制御手段と、
を備えることを特徴とする減速エネルギ回収制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−244568(P2011−244568A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113325(P2010−113325)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】