測位システム、自律測位装置及びマーカ管理装置
【課題】測位対象から最も近くに設置されている測位対象検知器の位置を示す情報を受信して、確実かつ正確に測位対象の位置を補正することができるようにする。
【解決手段】自律測位装置2が測位対象1の位置を測位すると、測位対象1の位置を示す位置情報をマーカ管理装置7に送信し、マーカ管理装置7が自律測位装置2から送信された位置情報を参照して、屋内環境下に設置されている複数のRFIDリーダ4の中で、測位対象1から最も近くに設置されているRFIDリーダ4を特定し、そのRFIDリーダ4の検知感度を高める。
【解決手段】自律測位装置2が測位対象1の位置を測位すると、測位対象1の位置を示す位置情報をマーカ管理装置7に送信し、マーカ管理装置7が自律測位装置2から送信された位置情報を参照して、屋内環境下に設置されている複数のRFIDリーダ4の中で、測位対象1から最も近くに設置されているRFIDリーダ4を特定し、そのRFIDリーダ4の検知感度を高める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、加速度センサや角度センサを用いて、測位対象の位置を測位する自律測位装置と、自律測位装置により測位された測位対象の位置を補正する際に使用する補正情報を送信するマーカ管理装置と、自律測位装置やマーカ管理装置などから構成されている測位システムとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、屋外における測位に関しては、GPS衛星から送信されるGPS信号を利用する測位方法が主流になっている。
一方、屋内における測位に関しては、例えば、加速度センサや角度センサ・角速度センサ(ジャイロ)などを用いる慣性航法システム(INS:Inertial Navigation System)を利用して、測位対象の位置を決定する測位方法がある。
しかしながら、慣性航法システムが用いるセンサやジャイロには、ドリフトと呼ばれるゼロ値のずれによって、測位結果の誤差が蓄積するというデバイス依存の問題がある(例えば、非特許文献1を参照)。
【0003】
測位結果の誤差が蓄積するデバイス依存の問題を解消するため、測位対象の存在を検知するRFIDリーダを屋内環境下に複数設置し、何れかのRFIDリーダが測位対象の存在を検知(測位対象に取り付けられているRFIDタグを検知)すると、そのRFIDリーダが位置情報(RFIDリーダの位置を示す位置情報)を送信し、その位置情報にしたがって測位対象の位置を補正する測位システムが開発されている。
【0004】
【非特許文献1】多摩川精機株式会社,「ジャイロ活用技術入門〜その原理・機能・応用のポイントを詳述〜」,工業調査会,ISBN 4−7693−1208−3 C2055
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の測位システムは以上のように構成されているので、測位対象から最も近くに設置されているRFIDリーダから位置情報を受信できれば、測位対象の位置を適正に補正することができる。しかし、複数のRFIDリーダが測位対象の存在を検知して、測位対象から最も近くに設置されているRFIDリーダ以外のRFIDリーダから位置情報を受信すると、測位対象の位置を適正に補正することができなくなる課題があった。
また、測位対象から最も近くに設置されているRFIDリーダの検知感度が低いなどの要因で、測位対象の存在が検知されず、そのRFIDリーダから位置情報が送信されてこない場合には、測位対象の位置を補正することができないなどの課題もあった。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、測位対象から最も近くに設置されている測位対象検知器の位置を示す補正情報を受信して、確実かつ正確に測位対象の位置を補正することができる測位システム及び自律測位装置を得ることを目的とする。
また、この発明は、測位対象から最も近くに設置されている測位対象検知器の位置を示す補正情報を送信することができるマーカ管理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る測位システムは、自律測位装置が測位対象の位置を測位すると、測位対象の位置を示す位置情報をマーカ管理装置に送信し、マーカ管理装置が自律測位装置から送信された位置情報を参照して、複数の測位対象検知器の中で、測位対象から最も近くに設置されている測位対象検知器を特定し、その測位対象検知器の検知感度を高めるようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、自律測位装置が測位対象の位置を測位すると、測位対象の位置を示す位置情報をマーカ管理装置に送信し、マーカ管理装置が自律測位装置から送信された位置情報を参照して、複数の測位対象検知器の中で、測位対象から最も近くに設置されている測位対象検知器を特定し、その測位対象検知器の検知感度を高めるように構成したので、自律測位装置が測位対象から最も近くに設置されている測位対象検知器の位置を示す補正情報を受信して、確実かつ正確に測位対象の位置を補正することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による測位システムを示す構成図であり、図1では、歩行者が測位対象1である例を示している。
図1において、自律測位装置2は測位対象1に取り付けられており、測位対象1の移動状況を観測して、測位対象1の位置を測位する処理を実施する。
電波マーカであるRFID(Radio Frequency Identification)タグ3は測位対象1に取り付けられており、RFIDリーダ4と電波を送受信する。
【0010】
RFIDリーダ4は屋内環境下に設置されており、測位対象1に取り付けられているRFIDタグ3から発信される電波を検出して、測位対象1の存在を検知する。図1では説明の簡単化のため、2台のRFIDリーダ4がネットワーク5に接続されている例を示しているが、通常、3台以上のRFIDリーダ4がネットワーク5に接続されている。なお、RFIDリーダ4は測位対象検知器を構成している。
ネットワーク5は例えばLANなどのネットワークであり、屋内環境下に張り巡らされている。
【0011】
無線アクセスポイント6は例えば無線LANなどを利用して、自律測位装置2と各種の情報を送受信する通信機器であり、自律測位装置2から送信された情報はネットワーク5を介してマーカ管理装置7に送信し、マーカ管理装置7から送信された情報は無線LANを介して自律測位装置2に送信する。
マーカ管理装置7は自律測位装置2から無線アクセスポイント6経由で、測位対象1の位置を示す位置情報を受信すると、その位置情報を参照して、測位対象1から最も近くに設置されているRFIDリーダ4を特定し、そのRFIDリーダ4の検知感度を高める処理を実施するほか、そのRFIDリーダ4が測位対象1の存在を検知すると、無線アクセスポイント6を介して、測位対象1の位置を補正する際に使用する情報として、RFIDリーダ4の位置を示す補正情報を自律測位装置2に送信する処理などを実施する。
【0012】
自律測位装置2のINS11は例えば加速度センサや角度センサなどから構成されており、測位対象1の移動状況として、測位対象1の加速度や移動方向を観測する処理を実施する。なお、INS11は移動状況観測手段を構成している。
自律測位装置2の測位計算用デバイス12はジャイロ制御部13、測位処理部14、位置情報送信部15、補正情報受信部16及び位置補正部17から構成されている。
【0013】
測位計算用デバイス12のジャイロ制御部13は例えばMPUなどを実装している半導体集積回路基板から構成されており、INS11を制御して、INS11の観測結果を収集する処理を実施する。
測位処理部14は例えばMPUなどを実装している半導体集積回路基板から構成されており、ジャイロ制御部13により収集されたINS11の観測結果から測位対象1の位置を測位する処理を実施する。
なお、ジャイロ制御部13及び測位処理部14から測位手段が構成されている。
【0014】
位置情報送信部15は無線アクセスポイント6と無線通信を実施する無線通信機器などから構成されており、無線アクセスポイント6を介して、測位処理部14により測位された測位対象1の位置を示す位置情報をマーカ管理装置7に送信する処理を実施する。なお、位置情報送信部15は位置情報送信手段を構成している。
補正情報受信部16は無線アクセスポイント6と無線通信を実施する無線通信機器などから構成されており、マーカ管理装置7から無線アクセスポイント6経由で、測位対象1の存在を検知したRFIDリーダ4の位置を示す補正情報を受信する処理を実施する。なお、補正情報受信部16は補正情報受信手段を構成している。
位置補正部17は例えばMPUなどを実装している半導体集積回路基板から構成されており、補正情報受信部16により受信された補正情報にしたがって測位処理部14により測位された測位対象1の位置を補正する処理を実施する。なお、位置補正部17は位置補正手段を構成している。
【0015】
マーカ管理装置7の位置情報受信部21はネットワーク5に対するネットワークインタフェースなどから構成されており、自律測位装置2から無線アクセスポイント6経由で、測位対象1の位置を示す位置情報を受信する処理を実施する。なお、位置情報受信部21は位置情報受信手段を構成している。
感度制御部22は例えばMPUなどを実装している半導体集積回路基板から構成されており、位置情報受信部21により受信された位置情報を参照して、屋内環境下に設置されている複数のRFIDリーダ4の中で、測位対象1から最も近くに設置されているRFIDリーダ4を特定し、そのRFIDリーダ4の検知感度を高める処理を実施する。なお、感度制御部22は感度制御手段を構成している。
補正情報送信部23はネットワーク5に対するネットワークインタフェースなどから構成されており、感度制御部22により検知感度が高められたRFIDリーダ4が測位対象1の存在を検知すると、無線アクセスポイント6を介して、そのRFIDリーダ4の位置を示す補正情報を自律測位装置2に送信する処理を実施する。なお、補正情報送信部23は補正情報送信手段を構成している。
【0016】
図1の例では、マーカ管理装置7の構成要素である位置情報受信部21、感度制御部22及び補正情報送信部23がそれぞれ専用のハードウェアで構成されているものを想定しているが、マーカ管理装置7がコンピュータで構成される場合、位置情報受信部21、感度制御部22及び補正情報送信部23の処理内容を示すプログラムをコンピュータのメモリに格納し、コンピュータのCPUが当該メモリに格納されているプログラムを実行するようにしてもよい。
【0017】
図2はこの発明の実施の形態1による自律測位装置2のジャイロ制御部13、測位処理部14及び位置情報送信部15の処理内容を示すフローチャートである。
図3はこの発明の実施の形態1によるマーカ管理装置7の位置情報受信部21及び感度制御部22の処理内容を示すフローチャートである。
図4はこの発明の実施の形態1によるマーカ管理装置7の感度制御部22の処理内容を示すフローチャートである。
図5はこの発明の実施の形態1によるマーカ管理装置7の補正情報送信部23と自律測位装置2の補正情報受信部16との処理内容を示すフローチャートである。
【0018】
次に動作について説明する。
自律測位装置2における測位計算用デバイス12のジャイロ制御部13は、測位対象1の加速度及び移動方向の観測をINS11に要求する。
INS11は、ジャイロ制御部13から観測要求を受けると、測位対象1の加速度及び移動方向を観測し、加速度及び移動方向の観測結果であるセンサ情報をジャイロ制御部13に出力する。
ジャイロ制御部13は、INS11から出力されたセンサ情報を受けると(図2のステップST1)、そのセンサ情報を測位処理部14に転送する(ステップST2)。
【0019】
測位計算用デバイス12の測位処理部14は、ジャイロ制御部13からINS11のセンサ情報を受けると(ステップST3)、そのセンサ情報から測位対象1の位置を測位する(ステップST4)。
具体的には、次のようにして、測位対象1の位置を測位する。
【0020】
まず、測位処理部14は、INS11のセンサ情報である測位対象1の加速度を2階積分することにより、測位対象1の移動距離を計算する。
次に、測位処理部14は、INS11のセンサ情報である測位対象1の移動方向と、計算した測位対象1の移動距離から、測位対象1の移動量(測位対象1がどの方向にどのくらい移動したかを示すベクトル量)を求める。
実際には、INS自体のノイズなどの問題があるので、フィルタリングや周期計測などの各種手法を適用する。
【0021】
測位処理部14は、測位対象1の移動量を求めると、その移動量と計算前の測位対象1の位置を合計して、現在の測位対象1の位置を求める。
測位処理部14が上記の計算を連続的に行うことにより、測位対象1の位置を逐次に求めることができるが、上記の計算を行うには、測位対象1の初期位置の設定を行う必要がある。
この実施の形態1では、予め、測位対象1の初期位置が測位処理部14に与えられているものとする。
【0022】
測位処理部14は、測位対象1の位置を測位すると、測位対象1の位置を示す位置情報を位置情報送信部15に通知する(ステップST5)。
測位計算用デバイス12の位置情報送信部15は、測位処理部14から測位対象1の位置を示す位置情報を受けると(ステップST6)、無線LANを利用し、無線アクセスポイント6経由で、その位置情報をマーカ管理装置7に送信する(ステップST7)。
【0023】
マーカ管理装置7の位置情報受信部21は、測位対象1に取り付けられている自律測位装置2から無線アクセスポイント6経由で、測位対象1の位置を示す位置情報を受信する(図3のステップST11)。
マーカ管理装置7の感度制御部22は、位置情報受信部21が測位対象1の位置を示す位置情報を受信すると、その位置情報が示す測位対象1の位置と、ネットワーク5に接続されている全てのRFIDリーダ4の位置(RFIDリーダ4の位置は、予め、マーカ管理装置7に登録されているものとする)とを比較して、ネットワーク5に接続されている全てのRFIDリーダ4の中で、測位対象1から最も近くに設置されているRFIDリーダ4を特定する(ステップST12)。
【0024】
ただし、感度制御部22は、測位対象1の位置とRFIDリーダ4の位置とを比較する際、位置情報受信部21により受信された位置情報が示す測位対象1の位置と、予め登録されているRFIDリーダ4の位置とでは座標系が異なるため、これらの間での変換処理を行う。
即ち、INS11のセンサ情報から測位される測位対象1の位置はINS11の座標系であり、RFIDリーダ4の位置は、INS11の座標系と異なる地図座標系である。
これらの変換処理に関しては、例えば、地図座標系におけるINSの座標系軸の方向を予め測位処理部14又は感度制御部22に与えることにより、線形計算によって計算することができる。
【0025】
感度制御部22は、測位対象1から最も近くに設置されているRFIDリーダ4を特定すると、そのRFIDリーダ4と測位対象1の距離を求め、そのRFIDリーダ4が測位対象1から距離t以内に存在しているか否かを判定する(ステップST13)。
感度制御部22は、RFIDリーダ4が測位対象1から距離t以内に存在している場合、そのRFIDリーダ4の検知感度を高める処理を実施する(ステップST14)。例えば、そのRFIDリーダ4の検知感度を標準の検知感度の2倍に高めるようにする。
RFIDリーダ4の検知感度を高める処理としては、例えば、RFIDリーダ4がRFIDタグ3から送信される電波を受信する際の電波受信閾値を下げる処理や、RFIDリーダ4がRFIDタグ3から送信される電波を受信するサンプリング時間間隔(RFIDタグ3の検出時間間隔)を狭める処理などが考えられる。
【0026】
感度制御部22は、RFIDリーダ4が測位対象1から距離t以内に存在していない場合、測位対象1がそのRFIDリーダ4に近づくまで、そのRFIDリーダ4が測位対象1の存在を検知しないようにするため、そのRFIDリーダ4の検知感度を標準の検知感度に戻す処理を実施する(ステップST15)。
ただし、測位対象1が一度もRFIDリーダ4から距離t以内に近づいておらず、検知感度が高められていない場合には、標準の検知感度のままであるため、現状の検知感度を維持する。
【0027】
ネットワーク5に接続されている全てのRFIDリーダ4は、RFIDタグ3に対するタグIDの送信要求を示す電波(例えば、300MHzやUHFの電波)を送信し、その電波を受信したRFIDタグ3からタグIDを示す電波を受信することにより、RFIDタグ3の存在(RFIDタグ3が取り付けられている測位対象1の存在)を検知する処理を実施するが、マーカ管理装置7の感度制御部22により検知感度が高められたRFIDリーダ4は、他のRFIDリーダ4よりも測位対象1の存在を素早く検知する。
【0028】
マーカ管理装置7の感度制御部22により検知感度が高められたRFIDリーダ4は、測位対象1に取り付けられているRFIDタグ3からタグIDを示す電波を受信することにより、測位対象1の存在を検知すると、そのRFIDタグ3のタグIDをマーカ管理装置7に送信する。
【0029】
マーカ管理装置7の感度制御部22は、RFIDリーダ4からRFIDタグ3のタグIDを受けると(図4のステップST21)、そのタグIDを参照して、そのRFIDリーダ4が検知すべき測位対象1であるか否かを判定する。
即ち、感度制御部22は、測位対象1から距離t以内に存在しているRFIDリーダ4として、検知感度を高めたRFIDリーダ4が当該測位対象1を検知したものであるか否かを判定する(ステップST22)。
感度制御部22は、測位対象1から距離t以内に存在しているRFIDリーダ4が当該測位対象1を検知したものであると判定すると、そのRFIDリーダ4の位置を示す補正情報の送信要求を補正情報送信部23に出力する(ステップST23)。
【0030】
マーカ管理装置7の補正情報送信部23は、感度制御部22からRFIDリーダ4の位置を示す補正情報の送信要求を受けると(図5のステップST31)、無線アクセスポイント6経由で、そのRFIDリーダ4の位置を示す補正情報を自律測位装置2に送信する(ステップST32)。
自律測位装置2の補正情報受信部16は、マーカ管理装置7から無線アクセスポイント6経由で、測位対象1の存在を検知したRFIDリーダ4の位置を示す補正情報を受信すると(ステップST33)、その補正情報を位置補正部17に通知する(ステップST34)。
【0031】
自律測位装置2の位置補正部17は、補正情報受信部16から補正情報を受けると、その補正情報にしたがって測位処理部14により測位された測位対象1の位置を補正する。
例えば、補正情報受信部16により受信された補正情報が示す位置が測位対象1の位置の真値であるとして、その補正情報が示す位置と、測位処理部14により測位された測位対象1の位置との差分を補正する。
【0032】
以下、図6に示すような測位環境下を測位対象1が歩行する場合の適用例を具体的に説明する。
図6では、斜線丸で示す位置にRFIDリーダ4(図6では、RFIDリーダ4をS1,S2,S3で表記)が設置されており、測位対象1が実線で示す歩行ルートで、RFIDリーダS1付近まで移動するものである。
【0033】
図7に示すように、測位対象1が歩行を開始し、測位対象1がRFIDリーダS1を中心とする点線丸の範囲内に収まると、RFIDリーダS1の電波受信閾値を下げて検知感度を上げるようにしている。
これにより、RFIDリーダS1による測位対象1の検出可能性が上がり、そのRFIDリーダS1の近くに、測位対象1が実際に移動したときに、RFIDリーダS1が測位対象1の存在を検知することができる。
なお、図7の例では、測位対象1がRFIDリーダS1の近くに移動しているので、RFIDリーダS1の電波受信閾値を下げて検知感度を上げているが、他のRFIDリーダS2,S3の検知感度は上げていない。
【0034】
その後、図8に示すように、RFIDリーダS1が測位対象1の存在を検知すると、そのRFIDリーダS1の位置を示す補正情報を測位対象1に取り付けられている自律測位装置2に送信する。
測位対象1に取り付けられている自律測位装置2は、RFIDリーダS1の位置を示す補正情報を受信すると、図9に示すように、その補正情報にしたがって測位結果を補正する。
これにより、測位結果の誤差がRFIDリーダ4の位置を示す補正情報で逐次補正され、これを繰り返すことでINSの誤差が解消される。
【0035】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、自律測位装置2が測位対象1の位置を測位すると、測位対象1の位置を示す位置情報をマーカ管理装置7に送信し、マーカ管理装置7が自律測位装置2から送信された位置情報を参照して、屋内環境下に設置されている複数のRFIDリーダ4の中で、測位対象1から最も近くに設置されているRFIDリーダ4を特定し、そのRFIDリーダ4の検知感度を高めるように構成したので、自律測位装置2が測位対象1から最も近くに設置されているRFIDリーダ4の位置を示す補正情報を受信して、確実かつ正確に測位対象1の位置を補正することができる効果を奏する。
【0036】
即ち、INS11のセンサ情報による測位対象1の測位結果を利用して、RFIDリーダ4の検知感度を上げるようにしているので、RFIDリーダ4によるRFIDタグ3の検出ミスを防止することができるようになる。その結果、INSの誤差補正のために必要な補正情報を間違えずに測位対象1に送ることができるため、INSの測位誤差解消と、それによる測位精度の向上が可能になる。
【0037】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、測位対象1の歩行者が一人である例を示したが、この実施の形態2では、測位対象1の歩行者が複数人である例を説明する。
測位対象1の歩行者が複数人である場合、複数の測位対象1が同時に別々のRFIDリーダ4の近くに存在することがある。
この場合、図10に示すように、各測位対象1の近くにある複数のRFIDリーダ4の検知感度が同時に高められることになる。
このため、複数のRFIDリーダ4の配置によっては、測位対象1の近くない側のRFIDリーダ4が測位対象1の存在を検知してしまう状況の発生が考えられる。
【0038】
図11の例では、図中下側に存在する測位対象1(測位対象(1))の存在を、測位対象1の近くにない図中上側のRFIDリーダ4が検知している。
このような状況が発生すると、マーカ管理装置7から測位対象1の近くにないRFIDリーダ4の位置を示す補正情報が測位対象1に取り付けられている自律測位装置2に送信されてしまうため、自律測位装置2の測位精度が劣化することになる。
【0039】
また、図12は図中右側に存在する測位対象1(測位対象(1))が近づいたことにより、図中右側のRFIDリーダ4の検知感度が高められ、図中左側に存在する測位対象1(測位対象(2))が近づいたことにより、図中左側のRFIDリーダ4の検知感度が高められている例を示している。
このとき、図中右側に存在する測位対象1(測位対象(1))から図中右側のRFIDリーダ4までの距離が2m、図中右側に存在する測位対象1(測位対象(1))から図中左側のRFIDリーダ4までの距離が7mであるとすると、理論上は、図中右側に存在する測位対象1(測位対象(1))までの距離が短い図中右側のRFIDリーダ4が、図中左側のRFIDリーダ4よりも素早く、図中右側に存在する測位対象1(測位対象(1))を検知する。
その理由は、電波の強度は、理論上、距離の二乗に反比例するからであり、電波強度による閾値で検知感度の設定を変更することで、近い位置にあるRFIDリーダ4が主に反応すると考えられる。
【0040】
しかしながら、屋内環境下では電波の反射などに起因するマルチパスによって、遠い位置にあるRFIDリーダ4が先に反応することがある。
この場合、図13に示すように、マーカ管理装置7から図中左側のRFIDリーダ4の位置を示す補正情報が測位対象1(測位対象(1))に取り付けられている自律測位装置2に送信されてしまうため、自律測位装置2の測位精度が劣化することになる。
【0041】
そこで、この実施の形態2では、図14及び図15に示すように、2台のRFIDリーダS1,S2により測位対象1の存在が検知された場合、マーカ管理装置7の感度制御部22が位置情報受信部21により受信された位置情報が示す測位対象1の位置と、2台のRFIDリーダS1,S2の位置とを比較して、測位対象1からRFIDリーダS1までの距離Δx1と、測位対象1からRFIDリーダS2までの距離Δx2とを計算する。
【0042】
感度制御部22は、RFIDリーダS1までの距離Δx1とRFIDリーダS2までの距離Δx2を比較し、Δx1<Δx2であれば、距離が短いRFIDリーダS1の位置を示す補正情報の送信要求を補正情報送信部23に出力する。
補正情報送信部23は、感度制御部22から距離が短いRFIDリーダS1の位置を示す補正情報の送信要求を受けると、図16に示すように、無線アクセスポイント6経由で、距離が短いRFIDリーダS1の位置を示す補正情報を自律測位装置2に送信する。
これにより、距離が長いRFIDリーダS2の位置を示す補正情報が自律測位装置2に送信されるのを防止することができる。
【0043】
以上で明らかなように、この実施の形態2によれば、2台のRFIDリーダS1,S2により測位対象1の存在が検知された場合、マーカ管理装置7の感度制御部22が位置情報受信部21により受信された位置情報を参照して、2台のRFIDリーダS1,S2の中で、測位対象1から最も近くに設置されているRFIDリーダSを特定し、補正情報送信部23が感度制御部22により特定されたRFIDリーダSの位置を示す補正情報を自律測位装置2に送信するように構成したので、複数の測位対象1(測位対象(1)(2))によって、2台のRFIDリーダS1,S2の検知感度が同時に高められている場合でも、距離が長いRFIDリーダS2の位置を示す補正情報ではなく、距離が短いRFIDリーダS1の位置を示す補正情報を自律測位装置2に送信することができるようになり、確実かつ正確に測位対象1の位置を補正することができる効果を奏する。
【0044】
なお、この実施の形態2では、感度制御部22がRFIDリーダS1までの距離Δx1とRFIDリーダS2までの距離Δx2を比較し、Δx1<Δx2であれば、距離が短いRFIDリーダS1の位置を示す補正情報の送信要求を補正情報送信部23に出力するものについて示したが、図17に示すように、図3の処理内容にステップST16,ST17の処理を付加するようにしても、距離が長いRFIDリーダS2の位置を示す補正情報が自律測位装置2に送信されるのを防止することができる。
【0045】
即ち、感度制御部22は、RFIDリーダ4が測位対象1から距離t以内に存在していない場合、直前に、検知感度が高められているRFIDリーダ4が存在しているか否かを判定する(ステップST16)。
感度制御部22は、検知感度が高められているRFIDリーダ4が存在している場合、測位対象1(測位対象(1))と異なる他の測位対象1(測位対象(2))が、そのRFIDリーダ4の近くにいるか否かを判定する(ステップST17)。
感度制御部22は、他の測位対象1(測位対象(2))が、検知感度が高められているRFIDリーダ4の近くにいる場合、ステップST12の処理で特定したRFIDリーダ4の検知感度を標準の検知感度に戻すようにする(ステップST15)。
【0046】
実施の形態3.
上記実施の形態1では、マーカ管理装置7の感度制御部22が測位対象1から最も近くに設置されているRFIDリーダ4の検知感度を高めるものについて示したが、図18に示すように、感度制御部22が測位対象1から最も近くに設置されているRFIDリーダ4の検知感度を高めるとともに、測位対象1から最も近くに設置されているRFIDリーダ4以外のRFIDリーダ4の検知感度を下げるようにしてもよい(図19のステップST18)。
これにより、測位対象1から遠い位置にあるRFIDリーダ4が誤検知する可能性が低下するため、測位対象1に取り付けられている自律測位装置2に送信される補正情報の正確性が高まり、自律測位装置2の測位精度を高めることができる効果を奏する。
【0047】
実施の形態4.
上記実施の形態1では、マーカ管理装置7の感度制御部22が、測位対象1から距離t以内に存在しているRFIDリーダ4が当該測位対象1を検知したものであると判定すると、そのRFIDリーダ4の位置を示す補正情報の送信要求を補正情報送信部23に出力するものについて示したが、そのRFIDリーダ4により受信される電波の強度が基準強度より高い場合に限り、そのRFIDリーダ4の位置を示す補正情報の送信要求を補正情報送信部23に出力するようにしてもよい。
【0048】
図20はこの発明の実施の形態4によるマーカ管理装置7の感度制御部22の処理内容を示すフローチャートである。
マーカ管理装置7の感度制御部22は、上記実施の形態1と同様にして、測位対象1から距離t以内に存在しているRFIDリーダ4が当該測位対象1を検知したものであると判定すると(ステップST22)、そのRFIDリーダ4により受信された電波(RFIDタグ3から送信された電波)の強度を調査する(ステップST24)。
RFIDリーダ4により受信される電波の強度は、RFIDタグ3との距離の2乗に反比例するので、RFIDタグ3との距離が近いほど、RFIDリーダ4により受信される電波の強度が高くなる。
【0049】
感度制御部22は、RFIDリーダ4により受信された電波の強度と基準強度である閾値Thを比較し(ステップST25)、RFIDリーダ4により受信された電波の強度が閾値Thより高ければ、そのRFIDリーダ4の位置を示す補正情報の送信要求を補正情報送信部23に出力する(ステップST23)。
マーカ管理装置7の補正情報送信部23は、感度制御部22からRFIDリーダ4の位置を示す補正情報の送信要求を受けると(図5のステップST31)、無線アクセスポイント6経由で、そのRFIDリーダ4の位置を示す補正情報を自律測位装置2に送信する(ステップST32)。
【0050】
以上で明らかなように、この実施の形態4によれば、RFIDリーダ4により受信された電波の強度が基準強度より高い場合に限り、そのRFIDリーダ4の位置を示す補正情報を自律測位装置2に送信するように構成したので、測位対象1から近くにあるRFIDリーダ4が測位対象1の存在を検知した場合に限り、そのRFIDリーダ4の位置を示す補正情報を自律測位装置2に送信することができるようになり、その結果、自律測位装置2の測位精度を高めることができる効果を奏する。
【0051】
実施の形態5.
上記実施の形態1〜4では、自律測位装置2とマーカ管理装置7が無線アクセスポイント6経由で情報を送受信するものについて示したが、RFID3及びRFIDリーダ4で情報を送受信するようにしてもよい。
また、上記実施の形態1〜4では、測位対象検知器として、RFIDリーダ4を用いるものについて示したが、これは一例に過ぎず、他の電波デバイス(例えば、無線LAN、Bluetooth)を用いて、測位対象を検知するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明の実施の形態1による測位システムを示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による自律測位装置2のジャイロ制御部13、測位処理部14及び位置情報送信部15の処理内容を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1によるマーカ管理装置7の位置情報受信部21及び感度制御部22の処理内容を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1によるマーカ管理装置7の感度制御部22の処理内容を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1によるマーカ管理装置7の補正情報送信部23と自律測位装置2の補正情報受信部16との処理内容を示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態1による測位システムによる測位環境を示す説明図である。
【図7】この発明の実施の形態1による測位システムの処理内容を説明する説明図である。
【図8】この発明の実施の形態1による測位システムの処理内容を説明する説明図である。
【図9】この発明の実施の形態1による測位システムの処理内容を説明する説明図である。
【図10】複数のRFIDリーダ4の検知感度が同時に高められる測位環境を示す説明図である。
【図11】予定外のRFIDリーダ4が測位対象1の存在を検知する場合を示す説明図である。
【図12】複数のRFIDリーダ4の検知感度が同時に高められている例を示す説明図である。
【図13】遠い位置にあるRFIDリーダ4が先に反応している例を示す説明図である。
【図14】この発明の実施の形態2による測位システムの処理内容を説明する説明図である。
【図15】この発明の実施の形態2による測位システムの処理内容を説明する説明図である。
【図16】この発明の実施の形態2による測位システムの処理内容を説明する説明図である。
【図17】この発明の実施の形態2によるマーカ管理装置7の位置情報受信部21及び感度制御部22の処理内容を示すフローチャートである。
【図18】この発明の実施の形態3による測位システムの処理内容を説明する説明図である。
【図19】この発明の実施の形態3によるマーカ管理装置7の位置情報受信部21及び感度制御部22の処理内容を示すフローチャートである。
【図20】この発明の実施の形態4によるマーカ管理装置7の感度制御部22の処理内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
1 測位対象、2 自律測位装置、3 RFIDタグ、4 RFIDリーダ(測位対象検知器)、5 ネットワーク、6 無線アクセスポイント、7 マーカ管理装置、11 INS(移動状況観測手段)、12 測位計算用デバイス、13 ジャイロ制御部(測位手段)、14 測位処理部(測位手段)、15 位置情報送信部(位置情報送信手段)、16 補正情報受信部(補正情報受信手段)、17 位置補正部(位置補正手段)、21 位置情報受信部(位置情報受信手段)、22 感度制御部(感度制御手段)、23 補正情報送信部(補正情報送信手段)。
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、加速度センサや角度センサを用いて、測位対象の位置を測位する自律測位装置と、自律測位装置により測位された測位対象の位置を補正する際に使用する補正情報を送信するマーカ管理装置と、自律測位装置やマーカ管理装置などから構成されている測位システムとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、屋外における測位に関しては、GPS衛星から送信されるGPS信号を利用する測位方法が主流になっている。
一方、屋内における測位に関しては、例えば、加速度センサや角度センサ・角速度センサ(ジャイロ)などを用いる慣性航法システム(INS:Inertial Navigation System)を利用して、測位対象の位置を決定する測位方法がある。
しかしながら、慣性航法システムが用いるセンサやジャイロには、ドリフトと呼ばれるゼロ値のずれによって、測位結果の誤差が蓄積するというデバイス依存の問題がある(例えば、非特許文献1を参照)。
【0003】
測位結果の誤差が蓄積するデバイス依存の問題を解消するため、測位対象の存在を検知するRFIDリーダを屋内環境下に複数設置し、何れかのRFIDリーダが測位対象の存在を検知(測位対象に取り付けられているRFIDタグを検知)すると、そのRFIDリーダが位置情報(RFIDリーダの位置を示す位置情報)を送信し、その位置情報にしたがって測位対象の位置を補正する測位システムが開発されている。
【0004】
【非特許文献1】多摩川精機株式会社,「ジャイロ活用技術入門〜その原理・機能・応用のポイントを詳述〜」,工業調査会,ISBN 4−7693−1208−3 C2055
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の測位システムは以上のように構成されているので、測位対象から最も近くに設置されているRFIDリーダから位置情報を受信できれば、測位対象の位置を適正に補正することができる。しかし、複数のRFIDリーダが測位対象の存在を検知して、測位対象から最も近くに設置されているRFIDリーダ以外のRFIDリーダから位置情報を受信すると、測位対象の位置を適正に補正することができなくなる課題があった。
また、測位対象から最も近くに設置されているRFIDリーダの検知感度が低いなどの要因で、測位対象の存在が検知されず、そのRFIDリーダから位置情報が送信されてこない場合には、測位対象の位置を補正することができないなどの課題もあった。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、測位対象から最も近くに設置されている測位対象検知器の位置を示す補正情報を受信して、確実かつ正確に測位対象の位置を補正することができる測位システム及び自律測位装置を得ることを目的とする。
また、この発明は、測位対象から最も近くに設置されている測位対象検知器の位置を示す補正情報を送信することができるマーカ管理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る測位システムは、自律測位装置が測位対象の位置を測位すると、測位対象の位置を示す位置情報をマーカ管理装置に送信し、マーカ管理装置が自律測位装置から送信された位置情報を参照して、複数の測位対象検知器の中で、測位対象から最も近くに設置されている測位対象検知器を特定し、その測位対象検知器の検知感度を高めるようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、自律測位装置が測位対象の位置を測位すると、測位対象の位置を示す位置情報をマーカ管理装置に送信し、マーカ管理装置が自律測位装置から送信された位置情報を参照して、複数の測位対象検知器の中で、測位対象から最も近くに設置されている測位対象検知器を特定し、その測位対象検知器の検知感度を高めるように構成したので、自律測位装置が測位対象から最も近くに設置されている測位対象検知器の位置を示す補正情報を受信して、確実かつ正確に測位対象の位置を補正することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による測位システムを示す構成図であり、図1では、歩行者が測位対象1である例を示している。
図1において、自律測位装置2は測位対象1に取り付けられており、測位対象1の移動状況を観測して、測位対象1の位置を測位する処理を実施する。
電波マーカであるRFID(Radio Frequency Identification)タグ3は測位対象1に取り付けられており、RFIDリーダ4と電波を送受信する。
【0010】
RFIDリーダ4は屋内環境下に設置されており、測位対象1に取り付けられているRFIDタグ3から発信される電波を検出して、測位対象1の存在を検知する。図1では説明の簡単化のため、2台のRFIDリーダ4がネットワーク5に接続されている例を示しているが、通常、3台以上のRFIDリーダ4がネットワーク5に接続されている。なお、RFIDリーダ4は測位対象検知器を構成している。
ネットワーク5は例えばLANなどのネットワークであり、屋内環境下に張り巡らされている。
【0011】
無線アクセスポイント6は例えば無線LANなどを利用して、自律測位装置2と各種の情報を送受信する通信機器であり、自律測位装置2から送信された情報はネットワーク5を介してマーカ管理装置7に送信し、マーカ管理装置7から送信された情報は無線LANを介して自律測位装置2に送信する。
マーカ管理装置7は自律測位装置2から無線アクセスポイント6経由で、測位対象1の位置を示す位置情報を受信すると、その位置情報を参照して、測位対象1から最も近くに設置されているRFIDリーダ4を特定し、そのRFIDリーダ4の検知感度を高める処理を実施するほか、そのRFIDリーダ4が測位対象1の存在を検知すると、無線アクセスポイント6を介して、測位対象1の位置を補正する際に使用する情報として、RFIDリーダ4の位置を示す補正情報を自律測位装置2に送信する処理などを実施する。
【0012】
自律測位装置2のINS11は例えば加速度センサや角度センサなどから構成されており、測位対象1の移動状況として、測位対象1の加速度や移動方向を観測する処理を実施する。なお、INS11は移動状況観測手段を構成している。
自律測位装置2の測位計算用デバイス12はジャイロ制御部13、測位処理部14、位置情報送信部15、補正情報受信部16及び位置補正部17から構成されている。
【0013】
測位計算用デバイス12のジャイロ制御部13は例えばMPUなどを実装している半導体集積回路基板から構成されており、INS11を制御して、INS11の観測結果を収集する処理を実施する。
測位処理部14は例えばMPUなどを実装している半導体集積回路基板から構成されており、ジャイロ制御部13により収集されたINS11の観測結果から測位対象1の位置を測位する処理を実施する。
なお、ジャイロ制御部13及び測位処理部14から測位手段が構成されている。
【0014】
位置情報送信部15は無線アクセスポイント6と無線通信を実施する無線通信機器などから構成されており、無線アクセスポイント6を介して、測位処理部14により測位された測位対象1の位置を示す位置情報をマーカ管理装置7に送信する処理を実施する。なお、位置情報送信部15は位置情報送信手段を構成している。
補正情報受信部16は無線アクセスポイント6と無線通信を実施する無線通信機器などから構成されており、マーカ管理装置7から無線アクセスポイント6経由で、測位対象1の存在を検知したRFIDリーダ4の位置を示す補正情報を受信する処理を実施する。なお、補正情報受信部16は補正情報受信手段を構成している。
位置補正部17は例えばMPUなどを実装している半導体集積回路基板から構成されており、補正情報受信部16により受信された補正情報にしたがって測位処理部14により測位された測位対象1の位置を補正する処理を実施する。なお、位置補正部17は位置補正手段を構成している。
【0015】
マーカ管理装置7の位置情報受信部21はネットワーク5に対するネットワークインタフェースなどから構成されており、自律測位装置2から無線アクセスポイント6経由で、測位対象1の位置を示す位置情報を受信する処理を実施する。なお、位置情報受信部21は位置情報受信手段を構成している。
感度制御部22は例えばMPUなどを実装している半導体集積回路基板から構成されており、位置情報受信部21により受信された位置情報を参照して、屋内環境下に設置されている複数のRFIDリーダ4の中で、測位対象1から最も近くに設置されているRFIDリーダ4を特定し、そのRFIDリーダ4の検知感度を高める処理を実施する。なお、感度制御部22は感度制御手段を構成している。
補正情報送信部23はネットワーク5に対するネットワークインタフェースなどから構成されており、感度制御部22により検知感度が高められたRFIDリーダ4が測位対象1の存在を検知すると、無線アクセスポイント6を介して、そのRFIDリーダ4の位置を示す補正情報を自律測位装置2に送信する処理を実施する。なお、補正情報送信部23は補正情報送信手段を構成している。
【0016】
図1の例では、マーカ管理装置7の構成要素である位置情報受信部21、感度制御部22及び補正情報送信部23がそれぞれ専用のハードウェアで構成されているものを想定しているが、マーカ管理装置7がコンピュータで構成される場合、位置情報受信部21、感度制御部22及び補正情報送信部23の処理内容を示すプログラムをコンピュータのメモリに格納し、コンピュータのCPUが当該メモリに格納されているプログラムを実行するようにしてもよい。
【0017】
図2はこの発明の実施の形態1による自律測位装置2のジャイロ制御部13、測位処理部14及び位置情報送信部15の処理内容を示すフローチャートである。
図3はこの発明の実施の形態1によるマーカ管理装置7の位置情報受信部21及び感度制御部22の処理内容を示すフローチャートである。
図4はこの発明の実施の形態1によるマーカ管理装置7の感度制御部22の処理内容を示すフローチャートである。
図5はこの発明の実施の形態1によるマーカ管理装置7の補正情報送信部23と自律測位装置2の補正情報受信部16との処理内容を示すフローチャートである。
【0018】
次に動作について説明する。
自律測位装置2における測位計算用デバイス12のジャイロ制御部13は、測位対象1の加速度及び移動方向の観測をINS11に要求する。
INS11は、ジャイロ制御部13から観測要求を受けると、測位対象1の加速度及び移動方向を観測し、加速度及び移動方向の観測結果であるセンサ情報をジャイロ制御部13に出力する。
ジャイロ制御部13は、INS11から出力されたセンサ情報を受けると(図2のステップST1)、そのセンサ情報を測位処理部14に転送する(ステップST2)。
【0019】
測位計算用デバイス12の測位処理部14は、ジャイロ制御部13からINS11のセンサ情報を受けると(ステップST3)、そのセンサ情報から測位対象1の位置を測位する(ステップST4)。
具体的には、次のようにして、測位対象1の位置を測位する。
【0020】
まず、測位処理部14は、INS11のセンサ情報である測位対象1の加速度を2階積分することにより、測位対象1の移動距離を計算する。
次に、測位処理部14は、INS11のセンサ情報である測位対象1の移動方向と、計算した測位対象1の移動距離から、測位対象1の移動量(測位対象1がどの方向にどのくらい移動したかを示すベクトル量)を求める。
実際には、INS自体のノイズなどの問題があるので、フィルタリングや周期計測などの各種手法を適用する。
【0021】
測位処理部14は、測位対象1の移動量を求めると、その移動量と計算前の測位対象1の位置を合計して、現在の測位対象1の位置を求める。
測位処理部14が上記の計算を連続的に行うことにより、測位対象1の位置を逐次に求めることができるが、上記の計算を行うには、測位対象1の初期位置の設定を行う必要がある。
この実施の形態1では、予め、測位対象1の初期位置が測位処理部14に与えられているものとする。
【0022】
測位処理部14は、測位対象1の位置を測位すると、測位対象1の位置を示す位置情報を位置情報送信部15に通知する(ステップST5)。
測位計算用デバイス12の位置情報送信部15は、測位処理部14から測位対象1の位置を示す位置情報を受けると(ステップST6)、無線LANを利用し、無線アクセスポイント6経由で、その位置情報をマーカ管理装置7に送信する(ステップST7)。
【0023】
マーカ管理装置7の位置情報受信部21は、測位対象1に取り付けられている自律測位装置2から無線アクセスポイント6経由で、測位対象1の位置を示す位置情報を受信する(図3のステップST11)。
マーカ管理装置7の感度制御部22は、位置情報受信部21が測位対象1の位置を示す位置情報を受信すると、その位置情報が示す測位対象1の位置と、ネットワーク5に接続されている全てのRFIDリーダ4の位置(RFIDリーダ4の位置は、予め、マーカ管理装置7に登録されているものとする)とを比較して、ネットワーク5に接続されている全てのRFIDリーダ4の中で、測位対象1から最も近くに設置されているRFIDリーダ4を特定する(ステップST12)。
【0024】
ただし、感度制御部22は、測位対象1の位置とRFIDリーダ4の位置とを比較する際、位置情報受信部21により受信された位置情報が示す測位対象1の位置と、予め登録されているRFIDリーダ4の位置とでは座標系が異なるため、これらの間での変換処理を行う。
即ち、INS11のセンサ情報から測位される測位対象1の位置はINS11の座標系であり、RFIDリーダ4の位置は、INS11の座標系と異なる地図座標系である。
これらの変換処理に関しては、例えば、地図座標系におけるINSの座標系軸の方向を予め測位処理部14又は感度制御部22に与えることにより、線形計算によって計算することができる。
【0025】
感度制御部22は、測位対象1から最も近くに設置されているRFIDリーダ4を特定すると、そのRFIDリーダ4と測位対象1の距離を求め、そのRFIDリーダ4が測位対象1から距離t以内に存在しているか否かを判定する(ステップST13)。
感度制御部22は、RFIDリーダ4が測位対象1から距離t以内に存在している場合、そのRFIDリーダ4の検知感度を高める処理を実施する(ステップST14)。例えば、そのRFIDリーダ4の検知感度を標準の検知感度の2倍に高めるようにする。
RFIDリーダ4の検知感度を高める処理としては、例えば、RFIDリーダ4がRFIDタグ3から送信される電波を受信する際の電波受信閾値を下げる処理や、RFIDリーダ4がRFIDタグ3から送信される電波を受信するサンプリング時間間隔(RFIDタグ3の検出時間間隔)を狭める処理などが考えられる。
【0026】
感度制御部22は、RFIDリーダ4が測位対象1から距離t以内に存在していない場合、測位対象1がそのRFIDリーダ4に近づくまで、そのRFIDリーダ4が測位対象1の存在を検知しないようにするため、そのRFIDリーダ4の検知感度を標準の検知感度に戻す処理を実施する(ステップST15)。
ただし、測位対象1が一度もRFIDリーダ4から距離t以内に近づいておらず、検知感度が高められていない場合には、標準の検知感度のままであるため、現状の検知感度を維持する。
【0027】
ネットワーク5に接続されている全てのRFIDリーダ4は、RFIDタグ3に対するタグIDの送信要求を示す電波(例えば、300MHzやUHFの電波)を送信し、その電波を受信したRFIDタグ3からタグIDを示す電波を受信することにより、RFIDタグ3の存在(RFIDタグ3が取り付けられている測位対象1の存在)を検知する処理を実施するが、マーカ管理装置7の感度制御部22により検知感度が高められたRFIDリーダ4は、他のRFIDリーダ4よりも測位対象1の存在を素早く検知する。
【0028】
マーカ管理装置7の感度制御部22により検知感度が高められたRFIDリーダ4は、測位対象1に取り付けられているRFIDタグ3からタグIDを示す電波を受信することにより、測位対象1の存在を検知すると、そのRFIDタグ3のタグIDをマーカ管理装置7に送信する。
【0029】
マーカ管理装置7の感度制御部22は、RFIDリーダ4からRFIDタグ3のタグIDを受けると(図4のステップST21)、そのタグIDを参照して、そのRFIDリーダ4が検知すべき測位対象1であるか否かを判定する。
即ち、感度制御部22は、測位対象1から距離t以内に存在しているRFIDリーダ4として、検知感度を高めたRFIDリーダ4が当該測位対象1を検知したものであるか否かを判定する(ステップST22)。
感度制御部22は、測位対象1から距離t以内に存在しているRFIDリーダ4が当該測位対象1を検知したものであると判定すると、そのRFIDリーダ4の位置を示す補正情報の送信要求を補正情報送信部23に出力する(ステップST23)。
【0030】
マーカ管理装置7の補正情報送信部23は、感度制御部22からRFIDリーダ4の位置を示す補正情報の送信要求を受けると(図5のステップST31)、無線アクセスポイント6経由で、そのRFIDリーダ4の位置を示す補正情報を自律測位装置2に送信する(ステップST32)。
自律測位装置2の補正情報受信部16は、マーカ管理装置7から無線アクセスポイント6経由で、測位対象1の存在を検知したRFIDリーダ4の位置を示す補正情報を受信すると(ステップST33)、その補正情報を位置補正部17に通知する(ステップST34)。
【0031】
自律測位装置2の位置補正部17は、補正情報受信部16から補正情報を受けると、その補正情報にしたがって測位処理部14により測位された測位対象1の位置を補正する。
例えば、補正情報受信部16により受信された補正情報が示す位置が測位対象1の位置の真値であるとして、その補正情報が示す位置と、測位処理部14により測位された測位対象1の位置との差分を補正する。
【0032】
以下、図6に示すような測位環境下を測位対象1が歩行する場合の適用例を具体的に説明する。
図6では、斜線丸で示す位置にRFIDリーダ4(図6では、RFIDリーダ4をS1,S2,S3で表記)が設置されており、測位対象1が実線で示す歩行ルートで、RFIDリーダS1付近まで移動するものである。
【0033】
図7に示すように、測位対象1が歩行を開始し、測位対象1がRFIDリーダS1を中心とする点線丸の範囲内に収まると、RFIDリーダS1の電波受信閾値を下げて検知感度を上げるようにしている。
これにより、RFIDリーダS1による測位対象1の検出可能性が上がり、そのRFIDリーダS1の近くに、測位対象1が実際に移動したときに、RFIDリーダS1が測位対象1の存在を検知することができる。
なお、図7の例では、測位対象1がRFIDリーダS1の近くに移動しているので、RFIDリーダS1の電波受信閾値を下げて検知感度を上げているが、他のRFIDリーダS2,S3の検知感度は上げていない。
【0034】
その後、図8に示すように、RFIDリーダS1が測位対象1の存在を検知すると、そのRFIDリーダS1の位置を示す補正情報を測位対象1に取り付けられている自律測位装置2に送信する。
測位対象1に取り付けられている自律測位装置2は、RFIDリーダS1の位置を示す補正情報を受信すると、図9に示すように、その補正情報にしたがって測位結果を補正する。
これにより、測位結果の誤差がRFIDリーダ4の位置を示す補正情報で逐次補正され、これを繰り返すことでINSの誤差が解消される。
【0035】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、自律測位装置2が測位対象1の位置を測位すると、測位対象1の位置を示す位置情報をマーカ管理装置7に送信し、マーカ管理装置7が自律測位装置2から送信された位置情報を参照して、屋内環境下に設置されている複数のRFIDリーダ4の中で、測位対象1から最も近くに設置されているRFIDリーダ4を特定し、そのRFIDリーダ4の検知感度を高めるように構成したので、自律測位装置2が測位対象1から最も近くに設置されているRFIDリーダ4の位置を示す補正情報を受信して、確実かつ正確に測位対象1の位置を補正することができる効果を奏する。
【0036】
即ち、INS11のセンサ情報による測位対象1の測位結果を利用して、RFIDリーダ4の検知感度を上げるようにしているので、RFIDリーダ4によるRFIDタグ3の検出ミスを防止することができるようになる。その結果、INSの誤差補正のために必要な補正情報を間違えずに測位対象1に送ることができるため、INSの測位誤差解消と、それによる測位精度の向上が可能になる。
【0037】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、測位対象1の歩行者が一人である例を示したが、この実施の形態2では、測位対象1の歩行者が複数人である例を説明する。
測位対象1の歩行者が複数人である場合、複数の測位対象1が同時に別々のRFIDリーダ4の近くに存在することがある。
この場合、図10に示すように、各測位対象1の近くにある複数のRFIDリーダ4の検知感度が同時に高められることになる。
このため、複数のRFIDリーダ4の配置によっては、測位対象1の近くない側のRFIDリーダ4が測位対象1の存在を検知してしまう状況の発生が考えられる。
【0038】
図11の例では、図中下側に存在する測位対象1(測位対象(1))の存在を、測位対象1の近くにない図中上側のRFIDリーダ4が検知している。
このような状況が発生すると、マーカ管理装置7から測位対象1の近くにないRFIDリーダ4の位置を示す補正情報が測位対象1に取り付けられている自律測位装置2に送信されてしまうため、自律測位装置2の測位精度が劣化することになる。
【0039】
また、図12は図中右側に存在する測位対象1(測位対象(1))が近づいたことにより、図中右側のRFIDリーダ4の検知感度が高められ、図中左側に存在する測位対象1(測位対象(2))が近づいたことにより、図中左側のRFIDリーダ4の検知感度が高められている例を示している。
このとき、図中右側に存在する測位対象1(測位対象(1))から図中右側のRFIDリーダ4までの距離が2m、図中右側に存在する測位対象1(測位対象(1))から図中左側のRFIDリーダ4までの距離が7mであるとすると、理論上は、図中右側に存在する測位対象1(測位対象(1))までの距離が短い図中右側のRFIDリーダ4が、図中左側のRFIDリーダ4よりも素早く、図中右側に存在する測位対象1(測位対象(1))を検知する。
その理由は、電波の強度は、理論上、距離の二乗に反比例するからであり、電波強度による閾値で検知感度の設定を変更することで、近い位置にあるRFIDリーダ4が主に反応すると考えられる。
【0040】
しかしながら、屋内環境下では電波の反射などに起因するマルチパスによって、遠い位置にあるRFIDリーダ4が先に反応することがある。
この場合、図13に示すように、マーカ管理装置7から図中左側のRFIDリーダ4の位置を示す補正情報が測位対象1(測位対象(1))に取り付けられている自律測位装置2に送信されてしまうため、自律測位装置2の測位精度が劣化することになる。
【0041】
そこで、この実施の形態2では、図14及び図15に示すように、2台のRFIDリーダS1,S2により測位対象1の存在が検知された場合、マーカ管理装置7の感度制御部22が位置情報受信部21により受信された位置情報が示す測位対象1の位置と、2台のRFIDリーダS1,S2の位置とを比較して、測位対象1からRFIDリーダS1までの距離Δx1と、測位対象1からRFIDリーダS2までの距離Δx2とを計算する。
【0042】
感度制御部22は、RFIDリーダS1までの距離Δx1とRFIDリーダS2までの距離Δx2を比較し、Δx1<Δx2であれば、距離が短いRFIDリーダS1の位置を示す補正情報の送信要求を補正情報送信部23に出力する。
補正情報送信部23は、感度制御部22から距離が短いRFIDリーダS1の位置を示す補正情報の送信要求を受けると、図16に示すように、無線アクセスポイント6経由で、距離が短いRFIDリーダS1の位置を示す補正情報を自律測位装置2に送信する。
これにより、距離が長いRFIDリーダS2の位置を示す補正情報が自律測位装置2に送信されるのを防止することができる。
【0043】
以上で明らかなように、この実施の形態2によれば、2台のRFIDリーダS1,S2により測位対象1の存在が検知された場合、マーカ管理装置7の感度制御部22が位置情報受信部21により受信された位置情報を参照して、2台のRFIDリーダS1,S2の中で、測位対象1から最も近くに設置されているRFIDリーダSを特定し、補正情報送信部23が感度制御部22により特定されたRFIDリーダSの位置を示す補正情報を自律測位装置2に送信するように構成したので、複数の測位対象1(測位対象(1)(2))によって、2台のRFIDリーダS1,S2の検知感度が同時に高められている場合でも、距離が長いRFIDリーダS2の位置を示す補正情報ではなく、距離が短いRFIDリーダS1の位置を示す補正情報を自律測位装置2に送信することができるようになり、確実かつ正確に測位対象1の位置を補正することができる効果を奏する。
【0044】
なお、この実施の形態2では、感度制御部22がRFIDリーダS1までの距離Δx1とRFIDリーダS2までの距離Δx2を比較し、Δx1<Δx2であれば、距離が短いRFIDリーダS1の位置を示す補正情報の送信要求を補正情報送信部23に出力するものについて示したが、図17に示すように、図3の処理内容にステップST16,ST17の処理を付加するようにしても、距離が長いRFIDリーダS2の位置を示す補正情報が自律測位装置2に送信されるのを防止することができる。
【0045】
即ち、感度制御部22は、RFIDリーダ4が測位対象1から距離t以内に存在していない場合、直前に、検知感度が高められているRFIDリーダ4が存在しているか否かを判定する(ステップST16)。
感度制御部22は、検知感度が高められているRFIDリーダ4が存在している場合、測位対象1(測位対象(1))と異なる他の測位対象1(測位対象(2))が、そのRFIDリーダ4の近くにいるか否かを判定する(ステップST17)。
感度制御部22は、他の測位対象1(測位対象(2))が、検知感度が高められているRFIDリーダ4の近くにいる場合、ステップST12の処理で特定したRFIDリーダ4の検知感度を標準の検知感度に戻すようにする(ステップST15)。
【0046】
実施の形態3.
上記実施の形態1では、マーカ管理装置7の感度制御部22が測位対象1から最も近くに設置されているRFIDリーダ4の検知感度を高めるものについて示したが、図18に示すように、感度制御部22が測位対象1から最も近くに設置されているRFIDリーダ4の検知感度を高めるとともに、測位対象1から最も近くに設置されているRFIDリーダ4以外のRFIDリーダ4の検知感度を下げるようにしてもよい(図19のステップST18)。
これにより、測位対象1から遠い位置にあるRFIDリーダ4が誤検知する可能性が低下するため、測位対象1に取り付けられている自律測位装置2に送信される補正情報の正確性が高まり、自律測位装置2の測位精度を高めることができる効果を奏する。
【0047】
実施の形態4.
上記実施の形態1では、マーカ管理装置7の感度制御部22が、測位対象1から距離t以内に存在しているRFIDリーダ4が当該測位対象1を検知したものであると判定すると、そのRFIDリーダ4の位置を示す補正情報の送信要求を補正情報送信部23に出力するものについて示したが、そのRFIDリーダ4により受信される電波の強度が基準強度より高い場合に限り、そのRFIDリーダ4の位置を示す補正情報の送信要求を補正情報送信部23に出力するようにしてもよい。
【0048】
図20はこの発明の実施の形態4によるマーカ管理装置7の感度制御部22の処理内容を示すフローチャートである。
マーカ管理装置7の感度制御部22は、上記実施の形態1と同様にして、測位対象1から距離t以内に存在しているRFIDリーダ4が当該測位対象1を検知したものであると判定すると(ステップST22)、そのRFIDリーダ4により受信された電波(RFIDタグ3から送信された電波)の強度を調査する(ステップST24)。
RFIDリーダ4により受信される電波の強度は、RFIDタグ3との距離の2乗に反比例するので、RFIDタグ3との距離が近いほど、RFIDリーダ4により受信される電波の強度が高くなる。
【0049】
感度制御部22は、RFIDリーダ4により受信された電波の強度と基準強度である閾値Thを比較し(ステップST25)、RFIDリーダ4により受信された電波の強度が閾値Thより高ければ、そのRFIDリーダ4の位置を示す補正情報の送信要求を補正情報送信部23に出力する(ステップST23)。
マーカ管理装置7の補正情報送信部23は、感度制御部22からRFIDリーダ4の位置を示す補正情報の送信要求を受けると(図5のステップST31)、無線アクセスポイント6経由で、そのRFIDリーダ4の位置を示す補正情報を自律測位装置2に送信する(ステップST32)。
【0050】
以上で明らかなように、この実施の形態4によれば、RFIDリーダ4により受信された電波の強度が基準強度より高い場合に限り、そのRFIDリーダ4の位置を示す補正情報を自律測位装置2に送信するように構成したので、測位対象1から近くにあるRFIDリーダ4が測位対象1の存在を検知した場合に限り、そのRFIDリーダ4の位置を示す補正情報を自律測位装置2に送信することができるようになり、その結果、自律測位装置2の測位精度を高めることができる効果を奏する。
【0051】
実施の形態5.
上記実施の形態1〜4では、自律測位装置2とマーカ管理装置7が無線アクセスポイント6経由で情報を送受信するものについて示したが、RFID3及びRFIDリーダ4で情報を送受信するようにしてもよい。
また、上記実施の形態1〜4では、測位対象検知器として、RFIDリーダ4を用いるものについて示したが、これは一例に過ぎず、他の電波デバイス(例えば、無線LAN、Bluetooth)を用いて、測位対象を検知するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明の実施の形態1による測位システムを示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による自律測位装置2のジャイロ制御部13、測位処理部14及び位置情報送信部15の処理内容を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1によるマーカ管理装置7の位置情報受信部21及び感度制御部22の処理内容を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1によるマーカ管理装置7の感度制御部22の処理内容を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1によるマーカ管理装置7の補正情報送信部23と自律測位装置2の補正情報受信部16との処理内容を示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態1による測位システムによる測位環境を示す説明図である。
【図7】この発明の実施の形態1による測位システムの処理内容を説明する説明図である。
【図8】この発明の実施の形態1による測位システムの処理内容を説明する説明図である。
【図9】この発明の実施の形態1による測位システムの処理内容を説明する説明図である。
【図10】複数のRFIDリーダ4の検知感度が同時に高められる測位環境を示す説明図である。
【図11】予定外のRFIDリーダ4が測位対象1の存在を検知する場合を示す説明図である。
【図12】複数のRFIDリーダ4の検知感度が同時に高められている例を示す説明図である。
【図13】遠い位置にあるRFIDリーダ4が先に反応している例を示す説明図である。
【図14】この発明の実施の形態2による測位システムの処理内容を説明する説明図である。
【図15】この発明の実施の形態2による測位システムの処理内容を説明する説明図である。
【図16】この発明の実施の形態2による測位システムの処理内容を説明する説明図である。
【図17】この発明の実施の形態2によるマーカ管理装置7の位置情報受信部21及び感度制御部22の処理内容を示すフローチャートである。
【図18】この発明の実施の形態3による測位システムの処理内容を説明する説明図である。
【図19】この発明の実施の形態3によるマーカ管理装置7の位置情報受信部21及び感度制御部22の処理内容を示すフローチャートである。
【図20】この発明の実施の形態4によるマーカ管理装置7の感度制御部22の処理内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
1 測位対象、2 自律測位装置、3 RFIDタグ、4 RFIDリーダ(測位対象検知器)、5 ネットワーク、6 無線アクセスポイント、7 マーカ管理装置、11 INS(移動状況観測手段)、12 測位計算用デバイス、13 ジャイロ制御部(測位手段)、14 測位処理部(測位手段)、15 位置情報送信部(位置情報送信手段)、16 補正情報受信部(補正情報受信手段)、17 位置補正部(位置補正手段)、21 位置情報受信部(位置情報受信手段)、22 感度制御部(感度制御手段)、23 補正情報送信部(補正情報送信手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位対象の移動状況を観測して、上記測位対象の位置を測位する自律測位装置と、屋内環境下に設置され、上記測位対象の存在を検知する複数の測位対象検知器と、上記複数の測位対象検知器の中で、何れかの測位対象検知器が上記測位対象の存在を検知すると、上記測位対象検知器の位置を示す補正情報を上記自律測位装置に送信するマーカ管理装置とを備え、上記自律測位装置が上記補正情報にしたがって上記測位対象の位置を補正する測位システムにおいて、上記自律測位装置が測位対象の位置を測位すると、上記測位対象の位置を示す位置情報を上記マーカ管理装置に送信し、上記マーカ管理装置が上記自律測位装置から送信された位置情報を参照して、上記複数の測位対象検知器の中で、上記測位対象から最も近くに設置されている測位対象検知器を特定し、上記測位対象検知器の検知感度を高めることを特徴とする測位システム。
【請求項2】
測位対象の移動状況を観測する移動状況観測手段と、上記移動状況観測手段の観測結果から上記測位対象の位置を測位する測位手段と、上記測位手段により測位された測位対象の位置を示す位置情報をマーカ管理装置に送信する位置情報送信手段と、屋内環境下に設置されている複数の測位対象検知器の中から、上記位置情報に応じて上記マーカ管理装置により選択されて、検知感度が高められた測位対象検知器が上記測位対象の存在を検知すると、上記マーカ管理装置から送信される上記測位対象検知器の位置を示す補正情報を受信する補正情報受信手段と、上記補正情報受信手段により受信された補正情報にしたがって上記測位手段により測位された測位対象の位置を補正する位置補正手段とを備えた自律測位装置。
【請求項3】
自律測位装置から測位対象の位置を示す位置情報を受信する位置情報受信手段と、上記位置情報受信手段により受信された位置情報を参照して、屋内環境下に設置されている複数の測位対象検知器の中で、上記測位対象から最も近くに設置されている測位対象検知器を特定し、上記測位対象検知器の検知感度を高める感度制御手段と、上記感度制御手段により検知感度が高められた測位対象検知器が上記測位対象の存在を検知すると、上記測位対象の位置を補正する際に使用する情報として、上記測位対象検知器の位置を示す補正情報を上記自律測位装置に送信する補正情報送信手段とを備えたマーカ管理装置。
【請求項4】
複数の測位対象検知器により測位対象の存在が検知された場合、感度制御手段が位置情報受信手段により受信された位置情報を参照して、上記複数の測位対象検知器の中で、上記測位対象から最も近くに設置されている測位対象検知器を特定し、補正情報送信手段が上記感度制御手段により特定された測位対象検知器の位置を示す補正情報を自律測位装置に送信することを特徴とする請求項3記載のマーカ管理装置。
【請求項5】
感度制御手段は、測位対象から最も近くに設置されている測位対象検知器以外の測位対象検知器の検知感度を下げることを特徴とする請求項3または請求項4記載のマーカ管理装置。
【請求項6】
補正情報送信手段は、測位対象検知器により受信された電波の強度が基準強度より高い場合に限り、上記測位対象検知器の位置を示す補正情報を自律測位装置に送信することを特徴とする請求項3記載のマーカ管理装置。
【請求項1】
測位対象の移動状況を観測して、上記測位対象の位置を測位する自律測位装置と、屋内環境下に設置され、上記測位対象の存在を検知する複数の測位対象検知器と、上記複数の測位対象検知器の中で、何れかの測位対象検知器が上記測位対象の存在を検知すると、上記測位対象検知器の位置を示す補正情報を上記自律測位装置に送信するマーカ管理装置とを備え、上記自律測位装置が上記補正情報にしたがって上記測位対象の位置を補正する測位システムにおいて、上記自律測位装置が測位対象の位置を測位すると、上記測位対象の位置を示す位置情報を上記マーカ管理装置に送信し、上記マーカ管理装置が上記自律測位装置から送信された位置情報を参照して、上記複数の測位対象検知器の中で、上記測位対象から最も近くに設置されている測位対象検知器を特定し、上記測位対象検知器の検知感度を高めることを特徴とする測位システム。
【請求項2】
測位対象の移動状況を観測する移動状況観測手段と、上記移動状況観測手段の観測結果から上記測位対象の位置を測位する測位手段と、上記測位手段により測位された測位対象の位置を示す位置情報をマーカ管理装置に送信する位置情報送信手段と、屋内環境下に設置されている複数の測位対象検知器の中から、上記位置情報に応じて上記マーカ管理装置により選択されて、検知感度が高められた測位対象検知器が上記測位対象の存在を検知すると、上記マーカ管理装置から送信される上記測位対象検知器の位置を示す補正情報を受信する補正情報受信手段と、上記補正情報受信手段により受信された補正情報にしたがって上記測位手段により測位された測位対象の位置を補正する位置補正手段とを備えた自律測位装置。
【請求項3】
自律測位装置から測位対象の位置を示す位置情報を受信する位置情報受信手段と、上記位置情報受信手段により受信された位置情報を参照して、屋内環境下に設置されている複数の測位対象検知器の中で、上記測位対象から最も近くに設置されている測位対象検知器を特定し、上記測位対象検知器の検知感度を高める感度制御手段と、上記感度制御手段により検知感度が高められた測位対象検知器が上記測位対象の存在を検知すると、上記測位対象の位置を補正する際に使用する情報として、上記測位対象検知器の位置を示す補正情報を上記自律測位装置に送信する補正情報送信手段とを備えたマーカ管理装置。
【請求項4】
複数の測位対象検知器により測位対象の存在が検知された場合、感度制御手段が位置情報受信手段により受信された位置情報を参照して、上記複数の測位対象検知器の中で、上記測位対象から最も近くに設置されている測位対象検知器を特定し、補正情報送信手段が上記感度制御手段により特定された測位対象検知器の位置を示す補正情報を自律測位装置に送信することを特徴とする請求項3記載のマーカ管理装置。
【請求項5】
感度制御手段は、測位対象から最も近くに設置されている測位対象検知器以外の測位対象検知器の検知感度を下げることを特徴とする請求項3または請求項4記載のマーカ管理装置。
【請求項6】
補正情報送信手段は、測位対象検知器により受信された電波の強度が基準強度より高い場合に限り、上記測位対象検知器の位置を示す補正情報を自律測位装置に送信することを特徴とする請求項3記載のマーカ管理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2008−216196(P2008−216196A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57486(P2007−57486)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]