説明

湿気硬化型樹脂組成物

【課題】低粘度と金属に対する接着性とを両立した湿気硬化型樹脂組成物を提供する。
【解決手段】加水分解性シリル基を有する有機重合体(A)100質量部と、(メタ)アクリロキシ基含有有機ケイ素化合物(B)と、エポキシ樹脂(C)3〜100質量部と、ケチミン化合物(D)と、加水分解性シリル基に対する硬化触媒(E)とを含み、前記ケチミン化合物が有するイミノ基のモル当量の前記エポキシ樹脂が有するエポキシ基のモル当量に対する比(イミノ基のモル当量/エポキシ基のモル当量)が0.5〜1.5であり、23℃における粘度が0.1〜100Pa・sである湿気硬化型樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は湿気硬化型樹脂組成物に関する。より詳細には、接着剤用途に好適な湿気硬化型樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加水分解性シリル基を有する変性ポリオキシアルキレン重合体を含有する室温湿気硬化型組成物は接着剤やシーリング剤のメインポリマーとして使用されており、硬化物の可撓性と粘度のバランスに優れるジメトキシシリル基を末端に有するポリマーが広く使用されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、反応性基としてトリメトキシシリル基および/またはトリエトキシシリル基を有し主鎖を構成する繰り返し単位としてオキシアルキレン基を繰り返し単位の総モル数の50%以上の量で含むトリアルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体100質量部と、エポキシ樹脂3〜100質量部と、特定のカルボニル化合物とポリアミンとを反応させることによって得られるケチミンと、数平均分子量が500〜3,000であり末端ヒドロキシ基が封鎖されているポリエーテル5〜50質量部と、硬化触媒とを含有し、前記ケチミンが有するイミノ基の量が、前記エポキシ樹脂が有するエポキシ基に対して、0.5〜1.5当量であり、前記ポリエーテルにおいて前記末端ヒドロキシ基がアルキル基、アルコキシ基またはアルキルシリル基で封鎖されており、さらに、前記トリアルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体100質量部に対して特定のN−シリルアミド化合物を0.2〜30質量部含む接着剤組成物が記載されている。
【0004】
一方、特許文献1に記載されたような加水分解性シリル基変性ポリオキシアルキレン重合体・エポキシ系接着剤組成物では、低粘度と金属に対する接着性との両立が要求される用途がある。
【0005】
従来、加水分解性シリル基変性ポリオキシアルキレン重合体・エポキシ系接着剤組成物の粘度を下げるためには、ジオクチルフタレート(DOP)やジイソノニルフタレート(DINP)などのフタル酸エステル系の可塑剤、アジピン酸ジオクチル(DOA)等のアジペート類、リン酸エステル等、いずれもエステル系の可塑剤が広く使用されてきた。
しかし、これらエステル系可塑剤は接着剤組成物が硬化した後に、硬化物表面にブリードアウトする為、硬化後の残留タック・塗装性に課題がある上に、特にフタル酸エステル類はいわゆる環境ホルモンとしてリストアップされるなど環境上問題視されている為、環境面からも問題がある。
【0006】
また、加水分解性シリル基変性ポリオキシアルキレン重合体・エポキシ系接着剤組成物の金属に対する接着性を向上させる手段としては、フィラーの増量や高分子量のポリマーなどの使用が考えられるが、いずれも粘度が高くなり、低粘度と接着性とを両立させることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4450107号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、低粘度と金属に対する接着性とを両立した湿気硬化型樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、加水分解性シリル基を有する有機重合体(A)100質量部と、(メタ)アクリロキシ基含有有機ケイ素化合物(B)と、エポキシ樹脂(C)3〜100質量部と、ケチミン化合物(D)と、加水分解性シリル基に対する硬化触媒(E)とを含み、上記ケチミン化合物が有するイミノ基のモル当量の上記エポキシ樹脂が有するエポキシ基のモル当量に対する比(イミノ基のモル当量/エポキシ基のモル当量)が0.5〜1.5であり、23℃における粘度が0.1〜100Pa・sであると、低粘度と金属に対する接着性とを両立した湿気硬化型樹脂組成物とすることができることを知得し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下に掲げる(1)〜(5)である。
【0010】
(1)加水分解性シリル基を有する有機重合体(A)100質量部と、(メタ)アクリロキシ基含有有機ケイ素化合物(B)と、エポキシ樹脂(C)3〜100質量部と、ケチミン化合物(D)と、加水分解性シリル基に対する硬化触媒(E)とを含み、
上記ケチミン化合物が有するイミノ基のモル当量の上記エポキシ樹脂が有するエポキシ基のモル当量に対する比(イミノ基のモル当量/エポキシ基のモル当量)が0.5〜1.5であり、
23℃における粘度が0.1〜100Pa・sである湿気硬化型樹脂組成物。
【0011】
(2)上記有機重合体(A)が、加水分解性シリル基としてメチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリメトキシシリル基およびトリエトキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種類のアルコキシシリル基を有し、主鎖が実質的にポリオキシアルキレンであるアルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体である、上記(1)に記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【0012】
(3)上記ケチミン化合物(D)が、下記式(1)で表されるカルボニル化合物とポリアミンとを反応させて得られるケチミンを含む、上記(1)または(2)に記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【化1】


(式中、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基であり、Rはメチル基またはエチル基であり、Rは水素原子、メチル基またはエチル基であり、Rは水素原子またはアルキル基であり、nは1または2である。)
【0013】
(4)上記有機ケイ素化合物(B)がメチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリメトキシシリル基およびトリエトキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種類のアルコキシシリル基を有する、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【0014】
(5)さらに、平均粒径が0.01〜0.1μmの表面処理コロイダル炭酸カルシウム(F)を、上記有機重合体(A)100質量部に対して、5〜50質量部含む、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低粘度と金属に対する接着性とを両立した湿気硬化型樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明について、以下、詳細に説明する。
本発明の湿気硬化型樹脂組成物(以下、単に「本発明の組成物」という場合がある。)は、
加水分解性シリル基を有する有機重合体(A)100質量部と、(メタ)アクリロキシ基含有有機ケイ素化合物(B)と、エポキシ樹脂(C)3〜100質量部と、ケチミン化合物(D)と、加水分解性シリル基に対する硬化触媒(E)とを含み、
上記ケチミン化合物が有するイミノ基のモル当量の上記エポキシ樹脂が有するエポキシ基のモル当量に対する比(イミノ基のモル当量/エポキシ基のモル当量)が0.5〜1.5であり、
23℃における粘度が0.1〜100Pa・sである。
【0017】
〈有機重合体(A)〉
加水分解性シリル基を有する有機重合体(A)(以下、単に「有機重合体(A)」という場合がある。)について説明する。
本発明の組成物に含有される重合体(A)は、加水分解性シリル基を有する有機重合体であれば特に限定されないが、アルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体であることが好ましい。
アルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体は、反応性基としてアルコキシシリル基を有し、主鎖が実質的にポリオキシアルキレンである重合体である。アルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体を含有することによって、発泡させずに室温における硬化時間を短縮することができる。
【0018】
上記アルコキシシリル基は、シリル基のケイ素原子に結合する3個の水素原子(水素基)のうち、1〜3個の水素原子がアルコキシ基によって置換され、その余の0〜2個の水素原子が非置換であるかまたは非加水分解性基によって置換されたものであれば、特に限定されない。上記3個の水素原子は、アルコキシ基によって2個以上置換されたものが好ましく、3個とも置換されたものがより好ましい。硬化時間がより短縮されるからである。
【0019】
上記アルコキシ基としては、加水分解性の穏やかさから、炭素数1〜5個のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基またはエトキシ基がより好ましく、メトキシ基がさらに好ましい。
【0020】
上記非加水分解性基としては、非加水分解性の置換基であれば特に限定されないが、例えば、アルキル基、アシル基、アルケニル基等が挙げられ、この中でも、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0021】
上記アルコキシシリル基としては、例えば、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等が挙げられる。
【0022】
上記有機重合体(A)としては、加水分解性シリル基としてメチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリメトキシシリル基およびトリエトキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種類のアルコキシシリル基を有し、主鎖が実質的にポリオキシアルキレンであるアルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体が好ましい。
【0023】
アルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体の主鎖は、実質的にポリオキシアルキレンである。ポリオキシアルキレンは特に限定されない。例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンが挙げられ、接着性・親水性などを考慮して選択される。
【0024】
なお、本発明において、主鎖が実質的にポリオキシアルキレンであるとは、主鎖を構成する繰り返し単位としてオキシアルキレン基を繰り返し単位の総モル数の50%以上の量で含むことをいう。
【0025】
ポリオキシアルキレンが含むことができる、オキシアルキレン基以外の繰り返し単位は特に限定されない。
【0026】
トリアルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体において主鎖はホモポリマーまたは共重合体であってもよい。
【0027】
また、主鎖は直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。主鎖が直鎖状の場合硬化物の伸びに優れる。主鎖が分岐状の場合はより強靭な硬化物を得ることができる。
【0028】
アルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体は、反応性基として、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリメトキシシリル基およびトリエトキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種類のアルコキシシリル基を有することが好ましい。反応性基の数は、速硬化性により優れ、粘度と可撓性のバランスに優れるという観点から、アルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体1分子あたり1〜4個であるのが好ましい。
【0029】
反応性基は主鎖の末端におよび/または側鎖として結合することができる。硬化物の破断強度、破断伸度に優れるという観点から、反応性基は主鎖の少なくとも両末端に結合すのが好ましい。
【0030】
反応性基は主鎖と直接にまたは有機基を介して結合することができる。有機基は特に限定されない。例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有してもよい炭化水素基が挙げられる。
【0031】
アルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体は、速硬化性、貯蔵安定性により優れ、粘度と可撓性のバランスに優れるという観点から、末端にトリメトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン重合体、末端にトリエトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン重合体が好ましく、2つ以上の末端にトリメトキシシリル基をそれぞれ1個有するポリオキシプロピレン重合体、2つ以上の末端にトリエトキシシリル基をそれぞれ1個有するポリオキシプロピレン重合体がより好ましく、両末端にトリメトキシシリル基を有する直鎖状のポリオキシプロピレン重合体、両末端にトリエトキシシリル基を有する直鎖状のポリオキシプロピレン重合体、両末端にトリメトキシシリル基を有し側鎖の末端にトリメトキシシリル基を有する3官能の分岐状ポリオキシプロピレン重合体、両末端にトリエトキシシリル基を有し側鎖の末端にトリエトキシシリル基を有する3官能の分岐状ポリオキシプロピレン重合体がさらに好ましい。
【0032】
トリアルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体としては、例えば、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
【化2】


式中、R、Rは炭素原子数1〜5のアルキレン基であり、Rはメチル基またはエチル基であり、nは9〜900の整数であり、mは1〜5の整数であり、Aは原料として使用される、ポリオキシアルキレンモノオールまたはポリオキシアルキレンポリオールを製造する際に用いられる開始剤の残基である。
【0033】
トリアルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体を製造する際、原料としてポリオキシアルキレンモノオールまたはポリオキシアルキレンポリオールを使用することができるが、そのポリオキシアルキレンモノオールまたはポリオキシアルキレンポリオールを製造する際に用いられる開始剤は特に限定されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0034】
トリアルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体は、貯蔵安定性、速硬化性により優れ、増粘を抑制することができ組成物の粘度を適正なものとすることができるという観点から、上記式(2)で表されるものが好ましい。
【0035】
本発明の組成物は、組成物を低粘度にすることを目的として、2個以上の末端にアルコキシシリル基をそれぞれ1個有するポリオキシプロピレン重合体に対して、片末端にアルコキシシリル基を1個有するポリオキシプロピレン重合体を混合することができる。片末端にアルコキシシシリル基を1個有するポリオキシプロピレン重合体は、別の末端にアルコキシシリル基を有さずヒドロキシ基を有してもよい。
【0036】
片末端にアルコキシシリル基を1個有するポリオキシプロピレン重合体の量は、2個以上の末端にアルコキシシリル基をそれぞれ1個有するポリオキシプロピレン重合体に対して、10質量%以下であるのが硬化物の物性(強度と伸び)が極端に低下しないという点から好ましい。
【0037】
アルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体の数平均分子量は、本発明の組成物の、難燃性、耐熱性、耐湿性により優れ、速硬化性、貯蔵安定性、せん断強度、粘度と可撓性のバランスに優れるという観点から、3,000〜50,000であるのが好ましく、10,000〜30,000であるのがより好ましく、10,000〜25,000であるのがさらに好ましく、10,000〜20,000であるのがいっそう好ましい。
【0038】
アルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体は、速硬化性、貯蔵安定性により優れ、本発明の組成物の粘度を適正なものとすることができるという観点から、ウレタン結合、ウレア結合を含まないのが好ましい。
【0039】
アルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体はその製造について特に限定されない。例えば、ポリオキシアルキレンモノオールおよび/またはポリオキシアルキレンポリオール(例えば、A−[(OR−OH]で表される化合物が挙げられる。R、n、mは、Aは上記式(2)と同義である。)と、ハロゲン化不飽和炭化水素基(例えば、R−Xで表される化合物が挙げられる。Rは炭素原子数1〜10の、不飽和結合を有する炭化水素基であり、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のようなハロゲン原子である。)とを反応させ、不飽和結合を有するポリオキシアルキレン化合物(例えば、A−[(OR−O−Rで表される化合物。)を得ることができる。
【0040】
次に、不飽和結合を有するポリオキシアルキレン化合物を白金ビニルシロキサン錯体のような白金触媒の存在下においてヒドロトリアルコキシシラン(例えば、HSi(ORで表される化合物。Rは上記式(2)と同義である。)またはヒドロジアルコキシアルキルシランと反応させることによってアルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体を製造することができる。上記白金触媒は、ヒドロシラン化合物と不飽和炭化水素基との反応に使用できるものであれば特に限定されない。
【0041】
本発明の重合体(A)においては、このようなアルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体を、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
上記重合体(A)は、市販品を用いてもよい。例えば、主鎖構造が実質的にポリオキシアルキレンであり、加水分解性シリル基としてトリメトキシシリル基を有するものとしては、SAX510(直鎖状,数平均分子量=29000;カネカ社製)、SAX530(直鎖状,数平均分子量=15000;カネカ社製)が挙げられる。
【0043】
〈有機ケイ素化合物(B)〉
(メタ)アクリロキシ基含有有機ケイ素化合物(B)(以下、単に「有機ケイ素化合物(B)」という場合がある。)について説明する。なお、本明細書において、(メタ)アクリロキシ基とは、アクリロキシ基またはメタクリロキシ基を意味する。
本発明の組成物に含有される有機ケイ素化合物(B)は、(メタ)アクリロキシ基を有する有機ケイ素化合物であれば特に限定されない。例えば、(メタ)アクリロキシ基と反応性基を有する有機化合物と、その反応性基と反応して共有結合を形成する基を有する有機ケイ素化合物とを従来公知の方法によって反応させて合成されるものが挙げられる。
また、上記有機ケイ素化合物は反応性シリル基を有することが好ましく、アルコキシシリル基を有することがより好ましい。
上記有機ケイ素化合物としては、具体的には、例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン;N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランとビスフェノールA EO変性(n≒2)ジアクリレートとから合成されるもの;3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
有機ケイ素化合物(B)は、このような有機ケイ素化合物を、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の組成物中の有機ケイ素化合物(B)の含有量は特に限定されないが、有機重合体(A)100質量部に対して、0.2〜20質量部であるのが好ましく、0.4〜10質量部であるのがより好ましい。0.2質量部未満では、接着性が期待できず、20質量部超では、ゲル化など貯蔵中の安定性に問題がある。
【0044】
〈エポキシ樹脂(C)〉
エポキシ樹脂(C)について説明する。
本発明の組成物は、エポキシ樹脂およびケチミンを含有することによって、耐熱性、貯蔵安定性、せん断強度に優れる。
本発明の組成物に含有されるエポキシ樹脂(C)は、1分子中にエポキシ基を2個以上有する化合物であれば特に限定されない。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ヘキサヒドロビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ピロカテコール、レゾルシノール、クレゾールノボラック、テトラブロモビスフェノールA、トリヒドロキシビフェニル、ビスレゾルシノール、ビスフェノールヘキサフルオロアセトン、テトラメチルビスフェノールF、ビキシレノール等の多価フェノールとエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテル型;グリセリン、ネオペンチルグリール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコールとエピクロルヒドリンとの反応によって得られるポリグリシジルエーテル型;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテルエステル型;フタル酸、メチルフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラハイドロフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸、エンドメチレンテトラハイドロフタル酸、エンドメチレンヘキサハイドロフタル酸、トリメリット酸、重合脂肪酸等のポリカルボン酸から誘導されるポリグリシジルエステル型;アミノフェノール、アミノアルキルフェノール等から誘導されるグリシジルアミノグリシジルエーテル型;アミノ安息香酸から誘導されるグリシジルアミノグリシジルエステル型;アニリン、トルイジン、トリブロムアニリン、キシリレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、4,4´−ジアミノジフェニルメタン、4,4´−ジアミノジフェニルスルホン等から誘導されるグリシジルアミン型;さらにエポキシ化ポリオレフィン、グリシジルヒダントイン、グリシジルアルキルヒダントイン、トリグリシジルシアヌレートが挙げられる。
なかでも、速硬化性、貯蔵安定性により優れ、耐熱性に優れ、せん断強度が高く、粘度と可撓性のバランスに優れるという観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂(C)は、このようなエポキシ樹脂を、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の組成物中のエポキシ樹脂(C)の含有量は、有機重合体(A)100質量部に対して、3〜100質量部である。速硬化性、貯蔵安定性により優れ、耐熱性に優れ、せん断強度が高く、粘度と可撓性のバランスに優れるという観点から、エポキシ樹脂の量は、トリアルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体100質量部に対して、3〜100質量部であるのが好ましく、10〜50質量部であるのがより好ましい。
【0045】
〈ケチミン(D)〉
ケチミン化合物(D)(以下、単に「ケチミン(D)」という場合がある。)について説明する。
本発明の接着剤組成物に含有されるケチミンは、下記式(1)で表されるカルボニル化合物とポリアミンとを反応させることによって得られる化合物である。
【化3】


式中、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基であり、Rはメチル基またはエチル基であり、Rは水素原子、メチル基またはエチル基であり、R4は水素原子またはアルキル基であり、nは1または2である。
とRとは互いに結合して環構造を形成することができる。RとRとは互いに結合して環構造を形成することができる。
ケチミンが有する1つのイミノ基(−N=)は湿気と反応して加水分解することで1級のアミンになり、1個または2個のエポキシ基と反応することができる。
【0046】
ケチミン(D)の製造の際に使用される、上記式(1)で表されるカルボニル化合物について説明する。
上記式(1)において、Rの炭素原子数1〜6のアルキル基は直鎖状および分岐状のうちのいずれであってもよい。炭素原子数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基が挙げられる。
としてのアルキル基は特に限定されない。例えば、上記の炭素原子数1〜6のアルキル基と同義である。
カルボニル化合物としては、例えば、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、メチルt−ブチルケトン(MTBK)、メチルシクロヘキシルケトン、メチルシクロヘキサノンのような上記式(1)中のnが1でありR4がアルキル基であるケトン;上記式(1)中のnが2であるケトン;上記式(1)中のnが1であり、Rが水素原子であるアルデヒド化合物;等が挙げられる。
なかでも、速硬化性、貯蔵安定性により優れるという観点から、上記式(1)中のnが1でありRがアルキル基であるケトンが好ましく、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、メチルt−ブチルケトン(MTBK)、メチルシクロヘキシルケトン、メチルシクロヘキサノンがより好ましい。
【0047】
ケチミン(D)の製造の際に使用されるポリアミンについて以下に説明する。
ポリアミンは、アミノ基を2個以上有する化合物であれば特に限定されない。例えば、下記式(3)で表される化合物が挙げられる。
【化4】


式中、Rは例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有してもよい炭化水素基であり、nは2以上の整数である。
Rは速硬化性、貯蔵安定性に優れるという観点から、炭素原子数1〜10であるのが好ましい。
nは、入手が容易な1〜4であるのが好ましい。
ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパンのような脂肪族ポリアミン;サンテクノケミカル社製のジェファーミンEDR148のようなポリエーテル骨格のジアミン;1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチル−シクロヘキシルアミン、三井東圧化学(株)製のNBDA(ノルボルナンジアミン)に代表されるノルボルナン骨格のジアミン、N−アミノエチルピペラジンのような脂環式炭化水素基を有するポリアミン;芳香族ポリアミン;メタキシリレンジアミン、テトラメチルキシリレンジアミンのような芳香族炭化水素基に結合する脂肪族炭化水素基を有するポリアミン;ポリアミドの分子末端にアミノ基を有するポリアミドアミンが挙げられる。
なかでも、速硬化で、エポキシ樹脂との貯蔵安定性に優れるという観点から、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、NBDAが好ましい。
【0048】
カルボニル化合物とポリアミンとの組み合わせとしては、速硬化性と貯蔵安定性のバランスに優れるという観点から、メチルイソプロピルケトン(MIPK)とヘキサメチレンジアミン(HMDA)との組み合わせ、メチルイソプロピルケトン(MIPK)とNBDAとの組み合わせが好ましい。
ケチミン(D)は、このようなケチミン化合物を、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において、上記ケチミン(D)が有するイミノ基のモル当量の、上記エポキシ樹脂(C)が有するエポキシ基のモル当量に対する比(イミノ基のモル当量/エポキシ基のモル当量;以下、単に「モル当量比」という場合がある。)は、0.5〜1.5である。
上記モル当量比は、貯蔵安定性により優れ、耐熱性に優れるという観点から、0.7〜1.0であるのが好ましい。
【0049】
〈硬化触媒(E)〉
加水分解性シリル基に対する硬化触媒(E)(以下、単に「硬化触媒(E)」という場合がある。)について説明する。
本発明の接着剤組成物に含有される硬化触媒(E)は、シラノール縮合触媒として使用される硬化触媒であれば特に限定されない。例えば、チタン系エステル類、錫化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、ビスマス化合物、アミン化合物が挙げられる。
なかでも、速硬化性、硬化物の変色が比較的おきにくいという観点から、錫化合物が好ましく、4価の錫化合物がより好ましい。
4価の錫化合物としては、例えば、ジブチルスズジラウリレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ、ラウリン酸スズのようなカルボン酸塩;ジブチルスズオキサイドとフタル酸エステルとの反応物;ジアルキルスタノキサンジカルボキシレート;ジブチルスズジメトキシドのようなジアルキルスズアルコラート;(ジアルキルスタノキサン)ジシリケート化合物;ジブチルスズジアセチルアセトナートのようなキレートが挙げられる。
なかでも、速硬化性、貯蔵安定性により優れ、ポリエーテルに対して安定であるという観点から、ジアルキルスズアルコラート、キレート、(ジアルキルスタノキサン)ジシリケート化合物が好ましい。
【0050】
上記硬化触媒の製造は特に限定されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
硬化触媒(E)は上記硬化触媒を、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の組成物中の硬化触媒(E)の含有量は、速硬化性、貯蔵安定性に優れるという観点から、上記有機重合体(A)100質量部に対して、0.1〜3.0質量部であるのがより好ましい。
【0051】
〈炭酸カルシウム(F)〉
本発明の組成物は、さらに、表面処理コロイダル炭酸カルシウム(F)(以下、単に「炭酸カルシウム(F)」という場合がある。)を含有することができる。
本発明の組成物がさらに炭酸カルシウム(F)を含有する場合、補強性に効果があり、結果せん断強度に優れる。
上記炭酸カルシウム(F)は、特に限定されず、従来公知の表面処理炭酸カルシウムを使用することができる。
上記表面処理炭酸カルシウムの表面処理剤は特に限定されない。例えば、脂肪酸、各種シランカップリング剤、ウレタン樹脂・パラフィン等のワックスが挙げられる。なかでも、相溶性がよく、補強効果の大きい脂肪酸で処理することが好ましい。
上記表面処理炭酸カルシウムの平均粒径は、樹脂への分散性、貯蔵安定性、せん断強度に優れるという観点から、0.01〜0.1μmであるのが好ましい。
上記表面処理コロイダル炭酸カルシウムはその製造について特に限定されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
炭酸カルシウム(F)は、このような表面処理コロイダル炭酸カルシウムを、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の組成物中の炭酸カルシウム(F)の含有量は、せん断強度と組成物の粘度のバランスから、上記有機重合体(A)100質量部に対して5〜50質量部であるのが好ましい。
【0052】
〈その他含有してよい成分(G)〉
本発明の組成物は、上記成分のほかに必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、さらに添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、カーボンブラック、溶融シリカ、珪砂、珪酸カルシウム等、マイカ、タルク、アルミナ、モンモリロナイトの充填剤、チッ化アルミニウム、チッ化ホウ素などの熱伝導性フィラー、ガラスバルーン、各種樹脂バルーン等の中空フィラー、ポリメタクリル酸等を微細化した各種樹脂フィラー、ハロゲン系化合物、酸化アンチモン、赤リン、リン酸エステル、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム水和物、硫酸マグネシウム水和物等の難燃剤、本発明の組成物に含有されるポリエーテル以外の可塑剤、ビニルシラン、シリケート化合物のような脱水剤、エポキシシラン、アミノシラン、メタクリルシランのようなシランカップリング剤、脂肪酸ポリアマイド系ワックスのようなチクソトロピー付与剤、酸化チタン等の顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、接着付与剤、分散剤、溶剤、硬化剤が挙げられる。
【0053】
[粘度]
本発明の組成物の粘度は、23℃において、0.1〜100Pa・sである。なお、ここで、上記粘度は、本発明の組成物の初期粘度を、コーン・プレート型(E型)粘度計(ローター#7、1.0rpm)を使用して、23℃の条件下で測定したものである。
初期粘度がこの範囲内であると、本発明の組成物は優れたレベリング性を有する湿気硬化型樹脂組成物とすることができる。
本発明の組成物の初期粘度は0.1〜100Pa・sの範囲内であれば特に限定されないが、レベリング性がより向上するという観点から、0.1〜70Pa・sの範囲内であるのが好ましく、0.1〜50Pa・sであるのがより好ましく、0.1〜30Pa・sであるのがさらに好ましい。
【0054】
[製造方法]
本発明の組成物はその製造について特に限定されない。例えば、上述の各成分を減圧し窒素雰囲気下において混合ミキサー等の攪拌装置を用いて十分混練し、均一に分散させて製造する方法が挙げられる。
本発明の組成物は、1液型または2液型として製造することができる。
本発明の組成物がさらに水を含有する場合は貯蔵安定性により優れるという観点から、トリアルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体、末端封鎖ポリエーテルおよび硬化触媒を含有する主剤と、水を少なくとも含有する硬化剤とを有する2液型とするのが好ましい態様の1つとして挙げられる。ヒュームドシリカ、表面処理コロイダル炭酸カルシウム、添加剤は、それぞれ主剤および/または硬化剤に加えることができる。
【0055】
[使用方法]
本発明の組成物は室温(5〜35℃)で硬化することができるが、硬化速度をさらに速めるためにより高温での硬化も可能である。また、本発明の組成物は例えば大気中の湿気、組成物に含有することができる充填剤のような成分中に含まれる水分、被着体に付着させた水分等によっても硬化することができる。
【0056】
本発明の組成物を適用することができる被着体は特に限定されない。例えば、金属、プラスチック、ゴム、ガラス、セラミックに対して優れた接着性を有する。本発明の組成物を被着体に適用する方法は特に限定されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0057】
[用途]
本発明の組成物の用途としては、例えば、接着剤、シーリング材、コーティング材、プライマー、塗料、ポッティング材が挙げられる。
本発明の組成物は、各種電気・電子分野用、建築物用、自動車用、土木用等に使用可能である。
本発明の組成物は、エアコン、ファンヒーター、送風機、除湿機、加湿器に使用することができる。
また、本発明の組成物は難燃性製品の部品接着に使用することができる。難燃性製品としては、例えばスピーカー、ビデオカセットプレイヤー、テレビ、ラジオ、自動販売機、冷蔵庫、パーソナルコンピューター、カード型電池、ビデオカメラ、カメラ、自動車部品、精密機器等が挙げられる。
また、本発明の組成物を高圧部品、高圧となりうる回路やその周辺で使用される部品の接着、長時間連続運転される電器製品内の接着に適用することができる。これらの部品の具体例としては、例えば、コネクター、スイッチ、リレー、電線ケーブル、フライバックトランス、偏向ヨークが挙げられる。
【実施例】
【0058】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0059】
1.湿気硬化型樹脂組成物の製造
第1表に示す各成分を、各処方に従い混練して、実施例1〜5および比較例1〜3の湿気硬化型樹脂組成物を製造した。
なお、ケチミン化合物は従来公知の方法によりポリアミン化合物とカルボニル化合物とから合成した。
【0060】
2.湿気硬化型樹脂組成物の試験
(1)粘度(初期粘度)
実施例1〜5および比較例1〜3の各組成物について、初期粘度(単位:Pa・s)を、E型粘度計(TV20型粘度計、ローター#7、1.0rpm)を使用して、23℃の条件下で測定した。
粘度が0.1〜100Pa・sの範囲内にあるものを合格として「○」で評価し、100Pa・sを超えるものを不合格として「×」で評価した。
試験結果および評価は、第1表の粘度の欄に示す。
【0061】
(2)接着性
実施例1〜5および比較例1〜3の各組成物について、得られた各組成物を鋼板(SPCC−SD)または陽極酸化アルミ板の上に膜厚約10mmとなるようにビード状に塗布した後、20℃、55%RHの条件下で7日間養生し、試験体を得た。
得られた試験体について、ビード部分を手で剥離し破壊様式を観察した。
凝集破壊(CF)、界面破壊(AF)を記録し,CFとAFが同程度に混在し、CFの面積がAFの面積より大きいものはCF/AFと記録した。
CFおよびCF/AFを合格として、「○」と評価し、AFを不合格として「×」と評価した。
試験結果および評価は、第1表の接着性の欄の鋼板の項目およびアルミ板の項目にそれぞれ示す。
(3)総合評価
粘度、鋼板に対する接着性および陽極酸化アルミ板に対する接着性のいずれにも「×」評価がなかったものを総合的な合格として「○」と評価した。
【0062】
【表1】

【0063】
第1表の「処方」に欄に示す各成分は以下のものである。なお、各成分の含有量は、質量部単位で記載している。
〔A欄〕
(1)有機重合体1:トリメトキシシリル変性ポリオキシアルキレン重合体(SAX510,カネカ社製;数平均分子量=29000,直鎖状)
(2)有機重合体2:トリメトキシシリル変性ポリオキシアルキレン重合体(SAX530,カネカ社製;数平均分子量=15000,直鎖状)
〔B欄〕
(1)有機ケイ素化合物1:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503,信越化学工業社製)
(2)有機ケイ素化合物2:3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103,信越化学工業社製)
(3)有機ケイ素化合物3:以下に記載する方法によって合成された有機ケイ素化合物A
・有機ケイ素化合物Aの合成方法
ビスフェノールA EO変性(n≒2)ジアクリレート(アロニックス M−211B,東亜合成社製)100gと、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−573,信越化学工業社製)50gとを計量し、両者を混合し、80℃条件下で9時間撹拌して合成した。
〔C欄〕
(1)エポキシ樹脂1:ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(アデカレジン EP−4100E,ADEKA社製;エポキシ当量190)
〔D欄〕
(1)ケチミン1:ヘキサメチレンジアミンとメチルイソプロピルケトンとの反応によって得られるケチミン化合物
〔E欄〕
(1)硬化触媒1:4価の錫化合物(ネオスタンU−303,日東化成社製;ジブチル錫塩と正珪酸エチルとの反応生成物)
〔F欄〕
(1)炭酸カルシウム1:脂肪酸表面処理コロイダル炭酸カルシウム(ネオライトSP,竹原化学工業社製;平均粒径0.08μm)
〔G欄〕
(1)脱水剤1:ビニルトリメトキシシラン(KBM−1003,信越化学工業社製)
〔H欄〕
(1)モル当量比:ケチミン化合物が有するイミノ基のモル当量のエポキシ樹脂が有するエポキシ基のモル当量に対する比(イミノ基のモル当量/エポキシ基のモル当量)
【0064】
3.試験結果の説明
(実施例1〜5)
実施例1〜5の組成物は、低粘度と金属に対する接着性を両立していた。
(比較例1〜3)
比較例1は、有機重合体(A)としてSAX510を使用し、有機ケイ素化合物(B)、エポキシ樹脂(C)およびケチミン(D)を含有しない例である。金属に対する接着性は良好であったが、初期粘度が高く、低粘度と金属に対する接着性を両立することができなかった。
比較例2は、有機重合体(A)としてSAX530を使用し、有機ケイ素化合物(B)、エポキシ樹脂(C)およびケチミン(D)を含有しない例である。初期粘度は低かったが、金属に対する接着性は劣悪であり、低粘度と金属に対する接着性を両立することができなかった。
比較例3は、有機ケイ素化合物(B)を含有しない例である。初期粘度は十分に低かったが、金属に対する接着性は劣悪であり、低粘度と金属に対する接着性を両立することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の湿気硬化性樹脂組成物は、特に、接着剤用途に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性シリル基を有する有機重合体(A)100質量部と、(メタ)アクリロキシ基含有有機ケイ素化合物(B)と、エポキシ樹脂(C)3〜100質量部と、ケチミン化合物(D)と、加水分解性シリル基に対する硬化触媒(E)とを含み、
前記ケチミン化合物が有するイミノ基のモル当量の前記エポキシ樹脂が有するエポキシ基のモル当量に対する比(イミノ基のモル当量/エポキシ基のモル当量)が0.5〜1.5であり、
23℃における粘度が0.1〜100Pa・sである湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記有機重合体(A)が、加水分解性シリル基としてメチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリメトキシシリル基およびトリエトキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種類のアルコキシシリル基を有し、主鎖が実質的にポリオキシアルキレンであるアルコキシシリル基変性ポリオキシアルキレン重合体である、請求項1に記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
前記ケチミン化合物(D)が、下記式(1)で表されるカルボニル化合物と、ポリアミンとを反応させて得られるケチミンを含む、請求項1または2に記載の湿気硬化型樹脂組成物。


(式中、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基であり、Rはメチル基またはエチル基であり、Rは水素原子、メチル基またはエチル基であり、Rは水素原子またはアルキル基であり、nは1または2である。)
【請求項4】
前記有機ケイ素化合物(B)がメチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリメトキシシリル基およびトリエトキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種類のアルコキシシリル基を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、平均粒径が0.01〜0.1μmの表面処理コロイダル炭酸カルシウム(F)を、前記有機重合体(A)100質量部に対して、5〜50質量部含む、請求項1〜4のいずれかに記載の湿気硬化型樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−246643(P2011−246643A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122966(P2010−122966)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】