漏洩磁束検出型回転位置検出装置を組み込んだ液密サーボモータ装置
【課題】小型化、液密構造に適し、温度ドリフト補償に優れ、検出信号の伝送路のインピーダンス変化の影響を受けにくい回転位置検出装置を備えたサーボモータ装置を提供する。
【解決手段】サーボモータ1と共に液密にケーシング4内に収納されたセンサ10は、サーボモータ回転子から生じる漏洩磁束を検知する複数のコイルを備え、各コイルに対応して高透磁率磁性体がそれぞれ近接配置され、該高透磁率磁性体においては回転位置に対応する漏洩磁束の変化に応じて磁気飽和が生ぜしめられる。各コイルは磁気飽和の変化特性に応じて、回転位置に対応した振幅関数を持つ交流信号を出力する。正弦関数的振幅特性の2つのコイルは漏洩磁束の変化に対して互いに逆相となるように配置され、余弦関数的振幅特性の別の2つのコイルも同様に互いに逆相となるように配置される。この出力交流信号を合成して、電気的位相によって回転位置を示す検出信号を生成する。
【解決手段】サーボモータ1と共に液密にケーシング4内に収納されたセンサ10は、サーボモータ回転子から生じる漏洩磁束を検知する複数のコイルを備え、各コイルに対応して高透磁率磁性体がそれぞれ近接配置され、該高透磁率磁性体においては回転位置に対応する漏洩磁束の変化に応じて磁気飽和が生ぜしめられる。各コイルは磁気飽和の変化特性に応じて、回転位置に対応した振幅関数を持つ交流信号を出力する。正弦関数的振幅特性の2つのコイルは漏洩磁束の変化に対して互いに逆相となるように配置され、余弦関数的振幅特性の別の2つのコイルも同様に互いに逆相となるように配置される。この出力交流信号を合成して、電気的位相によって回転位置を示す検出信号を生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏洩磁束検出型の回転位置検出装置を組み込んだ液密サーボモータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば原子力発電所や病院の医療機器等から放射線を発生する環境下で、作業や機器操作を行うには、遠隔操作によりロボットやマニピュレータを制御している。このようなロボットやマニピュレータの各駆動軸の駆動源としてサーボモータが用いられ、このサーボモータの回転位置を検出すると共に、その検出信号を中央制御装置に伝送して制御に必要な演算処理を行い、その演算結果に基づいてサーボモータを駆動するようにしている。従来、サーボモータの回転位置を検出するには、放射線環境下では半導体による検出器が使用できないため、回転体に発光ダイオード等を設けて光学的に回転位置を検出するエンコーダ方式が考えられるが、このような回転位置検出器では光信号を伝送するための光ファイバーが必要となる。しかし、この光ファイバーは放射線が当たると変色する、所謂ブラウニング(browning)現象が発生するという問題がある。そこで、放射線による影響を受けないでサーボモータの回転位置が検出可能なものとして、ロータ側に回転トランスを備えた構成の誘導型の回転位置検出器の使用が考えられている。しかし、この誘導型の回転位置検出器は回転トランスに鉄心が設けられているため、検出器の小型化が困難であり、超小型のサーボモータと一体化するには寸法の違いが大きく構造的に無理がある。
【0003】
この点に鑑みて、下記特許文献1においては、空心コイルを用いた微弱な磁界で回転位置を高精度で検出可能なレゾルバをサーボモータに直結して一体化することにより、全体を小型化したサーボモータ装置が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2においては、検出コイルの出力をPWM信号化して伝送するように構成し、温度特性誤差を成分を除去した高精度な検出データを得、かつ出力配線数を減少して、構成の簡略化を計った位置検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4070869号
【特許文献2】特開2006−214948号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のサーボモータ用の誘導型の回転位置検出装置は、サーボモータとは別構造の位置検出装置をモータ回転軸に取り付けることになるため、小型化には限界があった。また、検出用コイルの温度ドリフト補償が十分ではなかった。更に、上記のような原子力発電所等において使用されるサーボモータにあっては、水中環境に置かれることも考慮して液密構造とされるが、その場合、回転位置検出装置にも液密性が要求されることになる。この点、従来の回転位置検出装置を備えたサーボモータ装置においては、サーボモータとは別構造の回転位置検出装置に対して格別の液密構造を施す必要があるので、設計・製造が面倒となり、また、コスト高にもなる。更に、制御装置本体は、サーボモータ及び回転位置検出装置から離れた場所に置かれるため、回転位置検出信号を制御装置本体に伝送する配線が比較的長くなり、伝送路のインピーダンス等の影響を受けやすくなる。
【0007】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたもので、小型化に適し、液密構造にするのにも適し、温度ドリフト補償性能に優れ、かつ、検出信号の伝送路のインピーダンス等の影響を受けにくい構成からなる回転位置検出装置を備えたサーボモータ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1によれば、本発明に係るサーボモータ装置は、サーボモータと、前記サーボモータの回転子の回転位置を検出するための回転位置検出装置とを備えており、前記回転位置検出装置は、前記サーボモータの回転子に近接して該回転子の移動経路に沿って配置され、該回転子から生じる漏洩磁束を検知する複数のコイルと、ここで、前記複数のコイルの各々に対応して高透磁率磁性体が近接配置されており、該高透磁率磁性体においては前記回転子の回転位置に対応する関数特性で生じる前記漏洩磁束の変化に応じて磁気飽和が生ぜしめられ、各コイルにおいては、前記磁気飽和の変化特性に応じてインピーダンスが変化せしめられ、かつ、前記高透磁率磁性体は、近接した前記回転子の変位に伴って前記磁気飽和の変化特性が正弦関数的特性を示すように、前記回転子の変位方向に関して漸次変化する形状を有しており、更に、前記複数のコイルのうち第1及び第2のコイルは、前記回転子から生じる前記漏洩磁束の変化に対して互いに逆相となるように配置され、かつ、前記複数のコイルのうち第3及び第4のコイルも、前記回転子から生じる前記漏洩磁束の変化に対して互いに逆相となるように配置され、更に、前記第1及び第2のコイルの組と前記第3及び第4のコイルの組とが前記回転子から生じる前記漏洩磁束の変化に対して互いに所定位相だけずれるように配置されており、前記各コイルを所定の基準交流信号で励磁し、該各コイルのインピーダンスに応じた出力信号を各コイルから生成すると共に、前記第1及び第2のコイルの出力信号を差動合成して第1の合成出力交流信号を生成し、かつ、前記第3及び第4のコイルの出力信号を差動合成して第2の合成出力交流信号を生成するセンサ回路と、前記第1及び第2の合成出力交流信号に基づき、前記サーボモータの回転子の位置に対応するシフト量だけ前記基準交流信号に対して正及び負の一方向にシフトされた電気的位相角を持つ第1の電気的交流信号と、同じ前記検出対象位置に対応するシフト量だけ前記基準交流信号に対して正及び負の他方向にシフトされた電気的位相角を持つ第2の電気的交流信号とを生成する信号生成回路と、前記基準交流信号の基準位相と前記第1の電気的交流信号の基準位相と前記第2の電気的交流信号の基準位相とに基づき、前記第1の電気的交流信号と前記第2の電気的交流信号の電気的位相差を示す位相出力信号を生成する位相出力回路とを具備し、生成された位相出力信号を前記サーボモータの回転子の位置検出信号として出力することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、回転位置検出装置の検出要素は、前記複数のコイルのみであり、検出要素としての特段の磁性体ロータが不要であるので、回転位置検出装置の構成をかなり小型化することができる。従って、液密サーボモータ装置として構成する場合に、サーボモータと回転位置検出装置を一体化して1つのケーシング内に液密に収納することが容易に行えるものとなり、液密構造化するのに適する。また、複数のコイルの各々に取り付ける高透磁率磁性体は、サーボモータ回転子から漏洩する磁束に敏感に反応するので、サーボモータ回転子から漏洩する磁束の向きとコイルの軸線方向との関係に自由度をもたせることができ、回転位置検出装置の配置あるいはコイル配置などの自由度が高いので、実用上優れている。
【0010】
更に、複数のコイルの各々に取り付けた高透磁率磁性体の形状をサーボモータ回転子の変位方向に関して漸次変化するように工夫することで、近接したサーボモータ回転子の変位に伴って該回転子からの漏洩磁束に基づく磁気飽和の変化特性が正弦関数的特性を示すようにしたので、コイルに生じるインピーダンス変化の特性を所望の正弦関数的特性とすることが容易にできる。従って、各コイルから生成する各コイルのインピーダンスに応じた出力信号として、所望の正弦関数及び余弦関数的振幅特性を持つ交流信号を適切に生成させることができ、後段での位相検出処理にとって都合がよいものとなる。
【0011】
更に、前記複数のコイルのうち第1及び第2のコイルは、前記回転子から生じる前記漏洩磁束の変化に対して互いに逆相となるように配置され、前記第1及び第2のコイルの出力信号を差動合成して第1の合成出力交流信号を生成するので、第1の合成出力交流信号としてコイルの温度ドリフト補償を行った信号を得ることができる。複数のコイルのうち第3及び第4のコイルについても同様に、前記回転子から生じる前記漏洩磁束の変化に対して互いに逆相となるように配置され、前記第3及び第4のコイルの出力信号を差動合成して第2の合成出力交流信号を生成するので、第2の合成出力交流信号としてコイルの温度ドリフト補償を行った信号を得ることができる。
【0012】
また、前記第1及び第2の合成出力交流信号に基づき、前記サーボモータの回転子の位置に対応するシフト量だけ前記基準交流信号に対して正及び負の一方向にシフトされた電気的位相角を持つ第1の電気的交流信号と、同じ前記検出対象位置に対応するシフト量だけ前記基準交流信号に対して正及び負の他方向にシフトされた電気的位相角を持つ第2の電気的交流信号とを生成し、更に、前記基準交流信号の基準位相と前記第1の電気的交流信号の基準位相と前記第2の電気的交流信号の基準位相とに基づき、前記第1の電気的交流信号と前記第2の電気的交流信号の電気的位相差を示す位相出力信号を生成し、生成された位相出力信号を前記サーボモータの回転子の位置検出信号として出力するので、コイル以外の電気回路及び磁気回路要素による温度ドリフト誤差成分を、正及び負の両方向にシフトされた電気的位相角の合成により、相殺的に除去した高精度な位置検出信号を得ることができる。また、サーボモータの回転子の位置検出信号は、電気的位相差を示す信号であるため、該検出信号を遠隔の制御装置まで伝送する場合において、伝送路のインピーダンス等の影響を受けにくい。
【0013】
請求項2によれば、前記位相出力回路は、前記第1の電気的交流信号と前記第2の電気的交流信号の位相差を示すPWM信号を,前記位相出力信号として、生成する。このように、第1の電気的交流信号と第2の電気的交流信号との電気的位相差に対応するパルス幅を持つPWM信号を出力するように構成したことで、出力配線数を減少することができ、構成の簡略化を図ることができる。
【0014】
請求項3によれば、前記位相出力回路は、前記第1の電気的交流信号の基準位相のタイミングを始点とし、前記基準交流信号の基準位相のタイミングを経過した後の前記第2の電気的交流信号の基準位相のタイミングを終点として、該始点から終点までの時間間隔で前記第1の電気的交流信号と前記第2の電気的交流信号の電気的位相差を示す前記位相出力信号を生成する。これによれば、前記第1及び第2の電気的交流信号の前記基準交流信号に対する前記電気的位相角シフトが180度以上であっても、正確な検出データを生成することができる。
【0015】
請求項4によれば、前記センサ回路は、外部から与えられる直流電源に基づき前記基準交流信号を生成する回路を含む。これによれば、センサ回路内部で基準交流信号を生成するので、長い伝送路を経て外部から基準交流信号を供給する構成に比べて、基準交流信号に誤差が生じにくく、正確な検出が行える。
【0016】
請求項5によれば、前記サーボモータ及び前記回転位置検出装置を液密に収納するケーシングと、前記ケーシングの内部に外部から空気圧を導入するために前記ケーシングに設けられた圧力ポート部とを更に備えることを特徴とする。これによれば、液密サーボモータ装置を提供することができ、かつ、ケーシング内圧を高める若しくは調整することで、液密性をより一層高めることができる。
【0017】
請求項6によれば、前記サーボモータの出力軸に対して取り付けられる液密構造の減速機を更に備え、前記ケーシングは、前記サーボモータ及び前記回転位置検出装置を液密に収納する空間の外側において、前記減速機を交換可能に収納し、前記減速機の出力軸の周囲を液密にシールする第1のシール部材と、前記第1のシール部材の内側寄りで前記減速機の出力軸の周囲を液密にシールする第2のシール部材とを備え、前記第1のシール部材は、前記減速機の内部への外部からの液体の侵入を防止し、前記第2のシール部材は、前記減速機の内部の圧力を保持することを特徴とする。これによれば、サーボモータ装置の出力軸に減速機を設ける場合において、両者の液密構造を分離することにより、減速機の交換を容易に行うことができる構成とすることができる。また、その場合、減速機の出力軸を二重にシールすることにより、減速機の内部への外部からの液体の侵入防止と、減速機の内部の圧力保持の両方を達成することで、液密性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例を示す液密サーボモータ装置の概略断面図。
【0019】
【図2】漏洩磁束検出型の回転位置検出装置の一例を、コイル部分の構成例について示す図。
【0020】
【図3】コイル部分の変形例として、高透磁率磁性体の形状を図2の例とは異ならせた例を示す正面略図。
【0021】
【図4】回転位置検出装置に含まれる検出用電気回路例を示す図。
【0022】
【図5】回転位置検出装置の出力をマイクロコンピュータに接続してなるシステムの一例を示すブロック図。
【0023】
【図6】図4の検出回路構成によって検出データの温度ドリフト補償が行えることを説明するタイミングチャート。
【0024】
【図7】回転位置検出装置の出力をマイクロコンピュータに接続してなる検出システムの別の構成例を示すブロック図。
【0025】
【図8】電気的位相角の時間差をカウントする動作例を示すタイミングチャート。
【0026】
【図9】図8に従う時間差カウント動作を行う処理の一例を示すフローチャート。
【0027】
【図10】図8に従う時間差カウント動作を行うように構成したPWM変換回路の一例を示すロジック回路図。
【0028】
【図11】漏洩磁束検出型の回転位置検出装置のコイル部分の別の構成例を示す図。
【0029】
【図12】コイルと高透磁率磁性体の別の配置例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1において、本発明の一実施例に係る液密サーボモータ装置は、サーボモータ1と、サーボモータ1のローター(回転子)2の回転位置を検出するためのセンサ(回転位置検出装置)10とを備える。サーボモータ1は、公知のどのようなタイプのサーボモータであってもよく、励磁コイルを備えたステータ3と、ローター(回転子)2とで構成される。なお、ローター(回転子)2には、所定の配置でN極とS極が形成されるものを用いる。ここでは、ローター(回転子)2において永久磁石のN極とS極が形成されている同期モータをサーボモータ1として用いる例を想定する。
【0031】
ケーシング4は、サーボモータ1及びセンサ10を液密に収納するもので、液密構造かつ防錆材質若しくは防錆表面処理を施したものからなる。一例として、ケーシング4は、防水を目的とし、かつ、モータ本体の形成を兼ねた一体ケース構造を有する。該ケーシング内にローター2とステータ3を組み立てることによりサーボモータ1を構成し、かつ、該サーボモータ1に対して所定の配置をなすようにセンサ10をケーシング4内に取り付け収納する。
【0032】
更に、ケーシング4には、該ケーシング4の内部に外部から空気圧を導入するための圧力ポート部5が形成されている。この圧力ポート部5を介して外部の空気圧供給源(図示せず)から空気圧をケーシング4内に供給することで、ケーシング4の内圧を高める、若しくは調整し、液密性をより一層高めることができる。例えば、内部圧力調整機構(調整弁)を適宜箇所に設置し、ケーシング4の内部圧力と外部圧力を調整することで、ケーシング4の液密性を保つ。このように液密サーボモータ装置として構成することで、原子力発電所等における水中環境に置かれたマニピュレータのサーボモータ装置として本発明を適用することができる。
【0033】
ケーシング4において、サーボモータ1の出力軸6の側は、仕切壁7が形成されており、その外側(つまり、サーボモータ1及びセンサ10を液密に収納するための空間の外側)に減速機8を交換可能に収納するための領域が形成されている。減速機8はサーボモータ1の出力軸6の回転を変速して出力軸9から出力する。減速機8に液密性をもたせるために、減速機8の出力軸9の周囲を液密にシールする第1のシール部材18と、第1のシール部材18の内側寄りで減速機8の出力軸9の周囲を液密にシールする第2のシール部材19とが設けられる。第1のシール部材18は、減速機8の内部への外部からの液体の侵入を防止し、第2のシール部材19は、減速機8の内部の圧力を保持する役目を果たす。これによれば、サーボモータ1の出力軸6に減速機8を設ける場合において、両者の液密構造を分離することにより、減速機8の交換を容易に行うことができる構成とすることができる。また、その場合、減速機8の出力軸9を二段階にシールすることにより、減速機8の内部への外部からの液体の侵入防止と、減速機8の内部の圧力保持の両方を達成し、液密性を向上させることができる。
【0034】
図2は、漏洩磁束検出型の回転位置検出装置として構成されたセンサ10のコイル部分の構成例を示す図であり、(a)は正面略図、(b)は側面略図である。一例として、サーボモータ1のローター(回転子)2は、永久磁石MGのN極とS極を180度の間隔で配置した構成からなるものとしている。その場合、サーボモータ1のローター2の一回転につき、ローター2の永久磁石MGによる磁界が2サイクル回転する。センサ10は、サーボモータ1のローター2の永久磁石MGの漏洩磁束を検出し、ローター2の永久磁石MGによる磁界の現在角度を割り出すことで、サーボモータ1の回転位置を検出する。
【0035】
図2(a)において、センサ10は、リング状の回路基板15において所定の角度間隔で配置された4極のフラットコイル11,12,13,14を含む。例えば、各極のフラットコイル11,12,13,14は、渦巻き状のプリント配線からなるもので、渦巻きプリント配線コイルを複数層重ねてインダクタンスを高めている。図2(b)に示すように、サーボモータ1のローター2の一部がステータ3よりも幾分突出して形成され、その突出部分2aの周囲にセンサ10のリング状回路基板15が嵌め込まれる。図2(b)に示すように、各フラットコイル11,12,13,14の配置に対応して基板15の両面において高透磁率磁性体16が配置される。各高透磁率磁性体16は例えばアモルファスのような高透磁率材質からなり、薄い板若しくは薄膜を成している。このような高透磁率材質は、フラックスゲートとして機能する。すなわち、高透磁率材質に永久磁石の磁極が近接すると、該高透磁率材質は大きな磁束の影響により磁気飽和を起こし、その透磁率を大きく低下させる性質を有している。従って、各フラットコイル11,12,13,14における各高透磁率磁性体16は、ローター2の永久磁石MGの磁極S,Nの近接に応じて透磁率を変化させ、対応するコイル11,12,13,14にそれに応じたインピーダンス変化を生じさせる。このフラックスゲート原理により、ローター2の永久磁石MGから生じる漏洩磁束を各コイル11,12,13,14で検知することができる。なお、高透磁率磁性体16は、各フラットコイル11,12,13,14の配置に対応して基板15の片面に配置するだけでもよい。
【0036】
例えば、図示例のように、サーボモータ1のローター2の一回転につき、ローター2の永久磁石MGの磁極S,Nによる磁界が2サイクル回転する場合は、ローター2の回転角度をφとすると、該ローター2の回転角度φに応じた永久磁石の漏洩磁束に応じて各フラットコイル11,12,13,14における各高透磁率磁性体16にはφに対して2倍の周期性を持つ(つまり、該回転角度φに相関する)磁気飽和が生ぜしめられ、各コイル11,12,13,14においては、前記磁気飽和の周期的変化に応じてインピーダンスが変化せしめられる。
【0037】
ここで、高透磁率磁性体16の形状を適切に設定することにより、ローター2の回転角度φに応じて第1のコイル11(サイン極S)に生じるインピーダンス変化の特性が正弦関数sinθと同等若しくはそれに近いものとなるようにすることができる。なお、θ=2φである。また、第1のコイル11から時計方向に機械角で約90度ずれて配置された第2のコイル12(マイナスサイン極−S)では、ローター2の回転角度φに応じたインピーダンス変化の特性がマイナス正弦関数−sinθと同等若しくはそれに近いものとなるようにすることができる。同様に、第1のコイル11から時計方向に機械角で約225度ずれて配置された第3のコイル13(コサイン極C)では、ローター2の回転角度φに応じたインピーダンス変化の特性が余弦関数cosθと同等若しくはそれに近いものとなるようにすることができる。また、第1のコイル11から時計方向に機械角で約315度ずれて配置された第4のコイル14(マイナスコサイン極−C)では、ローター2の回転角度φに応じたインピーダンス変化の特性がマイナス余弦関数−cosθと同等若しくはそれに近いものとなるようにすることができる。なお、各コイル11〜14の機械的配置は、上記例に限らず、適宜設計変更可能である。要は、各コイル11〜14におけるローター2の回転角度φに応じたインピーダンス変化の特性がそれぞれsinθ,−sinθ,cosθ,−cosθとなるようにすればよい。
【0038】
なお、高透磁率磁性体16の形状は、図2(a)では、各フラットコイル11,12,13,14の円形状に合わせて略円形状としている。このような略円形状であっても、ローター2の変位方向に関して漸次変化する形状であるから、近接したローター2の変位に伴って磁気飽和の変化特性が正弦関数的特性を示すようにすることができるかもしれない。しかし、より好ましくは、図3に示すように、高透磁率磁性体16の形状は、眼の輪郭のような先細り形状を有するものとするのがよいかもしれない。いずれにせよ、上述のように、各コイル11〜14におけるローター2の回転角度φに応じたインピーダンス変化の特性がそれぞれsinθ,−sinθ,cosθ,−cosθとなるように、若しくはできるだけそれに近いものとなるように、高透磁率磁性体16の形状を、ローター2の変位方向に関して漸次変化する形状とする。
【0039】
このように、第1及び第2のコイル11,12は、ローター2から生じる漏洩磁束の変化に対して互いに逆相となるように配置され、かつ、第3及び第4のコイル13,14も、ローター2から生じる漏洩磁束の変化に対して互いに逆相となるように配置されている。そして、第1及び第2のコイル11,12の組と前記第3及び第4のコイル13,14の組とがローター2から生じる漏洩磁束の変化に対して互いに所定位相(π/2)だけずれるように配置されている。
【0040】
図4は、センサ10に含まれる検出用電気回路例を示す。図4において、各コイル11〜14は可変インダクタンス要素として等価的に示されている。各コイル11〜14は、基準交流信号源40から与えられる所定の高周波交流信号(便宜上、これをEsinωtで示す)によって1相で励磁される。各コイル11〜14に生じる電圧Va,Vc,Vb,Vdは、等価的に、下記のように、検出対象たるローター2の回転位置φに対応する角度変数θ(=2φ)に応じた上記コイル11〜14毎のインピーダンス値に応じた大きさを示す。なお、P0は磁気回路の定数要素である。
Va=(P0+sinθ)sinωt
Vb=(P0+cosθ)sinωt
Vc=(P0−sinθ)sinωt
Vd=(P0−cosθ)sinωt
【0041】
アナログ演算器31は、下記のように、サイン相に相当するコイル11の出力電圧Vaと、それに対して差動変化するマイナスサイン相に相当するコイル12の出力電圧Vcとの差を求め、角度変数θのサイン関数特性の振幅係数を持つ交流出力信号を生成する。
Va−Vc=(P0+sinθ)sinωt−(P0−sinθ)sinωt
=2sinθsinωt
アナログ演算器32は、下記のように、コサイン相に相当するコイル13の出力電圧Vbと、それに対して差動変化するマイナスコサイン相に相当するコイル14の出力電圧Vdとの差を求め、角度変数θのコサイン関数特性の振幅係数を持つ交流出力信号を生成する。
Vb−Vd=(P0+cosθ)sinωt−(P0−cosθ)sinωt
=2cosθsinωt
【0042】
こうして、検出対象たる回転位置φに相関する角度変数θを含む2つの周期的振幅関数(sinθとcosθ)によってそれぞれ振幅変調された2つの交流出力信号「2sinθsinωt」と「2cosθsinωt」が得られる(以下、係数の「2」は省略する。)。これは、従来からレゾルバとして知られた検出器のサイン相出力信号sinθsinωt及びコサイン相出力信号cosθsinωtと同等のものである。なお、サイン相及びコサイン相という呼び名、及び2つの交流出力信号の振幅関数のサイン、コサインの表わし方は便宜的なものであり、一方がサインで他方がコサインでありさえすれば、どちらをサインと言ってもよい。すなわち、Va−Vc=cosθsinωtで、Vb−Vd=sinθsinωtである、と表現してもよい。
【0043】
基準交流信号源40及びアナログ演算器31,32の部分が、各コイル11〜14を所定の基準交流信号で励磁し、該各コイル11〜14のインピーダンスに応じた出力信号を各コイル11〜14から生成すると共に、第1及び第2のコイル11,12の出力信号を差動合成して第1の合成出力交流信号sinθsinωtを生成し、かつ、第3及び第4のコイル13,14の出力信号を差動合成して第2の合成出力交流信号cosθsinωtを生成するセンサ回路に相当する。
【0044】
ここで、温度ドリフト特性の補償について説明すると、温度に応じて各コイル11〜14のインピーダンスが変化し、その出力電圧Va〜Vdも変動する。しかし、これらを演算合成したサイン及びコサイン関数特性の交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtにおいては、「Va−Vc」及び「Vb−Vd」の演算によって、コイルの温度ドリフト誤差が補償されるので、温度ドリフトによるコイルインピーダンス変化の影響を受けないものとなる。従って、精度のよい検出が可能である。また、その他の回路部分例えば基準交流信号源40等での温度ドリフト特性も、後述するように自動的に補償される。
【0045】
本実施例においては、演算器31、32から出力される2つの交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtに基づき、位相検出方式で回転位置検出を行う。この場合の位相検出方式としては、例えば特開平9−126809号公報に示された技術を適宜用いるとよい。例えば、一方の交流出力信号sinθsinωtをシフト回路33で電気的に90度シフトすることで、交流信号sinθcosωtを生成し、これと他方の交流出力信号cosθsinωtをアナログ加算器34で加算合成することで、sin(ωt+θ)なる、θに応じてプラス方向(進相)に位相シフトされた交流信号(位相成分θを交流位相ずれに変換した信号)を生成する。
【0046】
一方、シフト回路33から出力される交流出力信号sinθcosωtと他方の交流出力信号cosθsinωtとをアナログ引算器36で引算合成することで、sin(ωt−θ)なる、θに応じてマイナス方向(遅相)に位相シフトされた交流信号(位相成分θを交流位相ずれに変換した信号)を生成する。
【0047】
これらのシフト回路33、アナログ加算器34、アナログ引算器36の部分が、第1及び第2の合成出力交流信号sinθcosωt及びcosθsinωtに基づき、サーボモータ1のローター2の回転位置φに対応するシフト量θだけ基準交流信号sinωtに対して正及び負の一方向にシフトされた電気的位相角を持つ第1の電気的交流信号sin(ωt+θ)と、同じ検出対象回転位置φに対応するシフト量θだけ基準交流信号sinωtに対して正及び負の他方向にシフトされた電気的位相角を持つ第2の電気的交流信号sin(ωt−θ)を生成する信号生成回路に相当する。
【0048】
そして、進相シフトされた交流検出信号sin(ωt+θ)のゼロクロスをコンパレータ35で検出し、ゼロクロス検出パルスLpを生成する。また、遅相シフトされた交流検出信号sin(ωt−θ)のゼロクロスをコンパレータ37で検出し、ゼロクロス検出パルスLmを生成する。ゼロクロス検出パルスLpは、上記第1の電気的交流信号sin(ωt+θ)の基準位相(位相角0)のタイミングを示している。ゼロクロス検出パルスLmは、上記第2の電気的交流信号sin(ωt−θ)の基準位相(位相角0)のタイミングを示している。
【0049】
コンパレータ35から出力される進相シフトのゼロクロス検出パルスLpは、進相シフトされた交流検出信号sin(ωt+θ)における位相シフト量θを、基準交流信号sinωtのゼロ位相時点に対する進み時間位置で示すタイミング信号に相当する。
【0050】
また、コンパレータ37から出力される遅相シフトのゼロクロス検出パルスLmは、遅相シフトされた交流検出信号sin(ωt−θ)における位相シフト量θを、基準交流信号sinωtのゼロ位相時点からの遅れ時間位置で示すタイミング信号に相当する。
【0051】
このように、進相シフトのゼロクロス検出パルスLpと遅相シフトのゼロクロス検出パルスLmのどちらもが、サーボモータ1のローター2の回転位置φに対応する位相シフト量θを、時間位置で示す検出データである。従って、原理的には、進相シフトのゼロクロス検出パルスLpと遅相シフトのゼロクロス検出パルスLmのどちらか一方を、ローター2の回転位置φの検出信号として出力するようにすればよい。しかし、後述するように温度ドリフト補償した検出データを得るためには、両方を用いるのがよい。
【0052】
図4に示されたセンサ10の各回路31〜37、40は1つの回路基板15上にユニット化して収容されて回路ユニットとしてまとめられる。そして、該回路ユニットを含むセンサ10が、図1に示すように、ケーシング4内に収納される。こうして、ケーシング4内にコイルと回路を含むセンサ10がコンパクトに収められる。図5は、ケーシング4内に収納された図2〜図4に示す実施例に係るセンサ10を、その検出出力を利用するためのマイクロコンピュータ20に接続してなるシステム構成例を示す。マイクロコンピュータ20と図4実施例回路との間は、少なくとも直流電源供給ラインと2本の出力ライン21a,21bで接続されるだけでよい。この2本の出力ライン21a,21bには、上述の進相シフトのゼロクロス検出パルスLpと遅相シフトのゼロクロス検出パルスLmがそれぞれ出力される。マイクロコンピュータ20は、タイミング信号キャプチャ用の入力ポートを複数有しており、この入力ポートに上記出力ライン21a,21bをそれぞれ接続する。マイクロコンピュータ20は該入力ポートに接続されたライン21a,21bから与えられる2つのタイミング信号(パルスLpとLm)の時間差Δtをカウントすることで、サーボモータ1のローター2の回転位置φに対応する位相角データθをデジタル的に測定する。なお、この例の場合、位相角データθは、ローター2の180度の回転範囲を1サイクルとしてその1サイクル範囲内のアブソリュート値で回転位置を示す。180度を越える回転範囲に関しては、サイクル数をインクリメントすることで検出可能である。測定した位相角データθは、サーボモータ1のローター回転位置φのフィードバック信号としてサーボモータ制御回路(図示せず)に与えられる。サーボモータ制御回路(図示せず)を公知の手法により目標値とローター回転位置φのフィードバック信号とに基づきサーボモータ1の回転指令信号を生成し、サーボモータ1に与える。
【0053】
コンパレータ35、37及びマイクロコンピュータ20でΔtをカウントする部分が、基準交流信号sinωtの基準位相と第1の電気的交流信号sin(ωt+θ)の基準位相と第2の電気的交流信号sin(ωt−θ)の基準位相とに基づき、第1の電気的交流信号sin(ωt+θ)と第2の電気的交流信号sin(ωt−θ)の電気的位相差を示す位相出力信号を生成する位相出力回路に相当する。勿論、マイクロコンピュータ20に代えて、パルスLpとLmの時間差Δtをカウントするデジタル回路を使用してもよい。
【0054】
なお、マイクロコンピュータ20では、ライン21a,21bから与えられる2つのタイミング信号(パルスLpとLm)の時間差Δtをカウントするだけでよく、センサ10内に設けられた基準交流信号源40から発生される基準交流信号sinωtのゼロ位相時点を知る必要がない。よって、コンピュータ20の側での時間測定のための処理・構成が簡素化される。一方、ケーシング4内に収納されたセンサ10内の回路では、基準交流信号源40としてアナログ発振回路により又はサイン波関数発生器などを使用して、外部から供給される直流電源に基づき、内部で基準交流信号sinωtを発生するだけでよく、これを同期化のための参照信号としてマイクロコンピュータ20に与える必要がないので、液密構成のケーシング4に設けねばならない外部端子の構成を簡素化でき、コスト削減につながる。
【0055】
ここで、再び温度ドリフト特性の補償について説明する。温度ドリフト特性によって、例えば基準交流信号源40で発生する交流信号の周波数や振幅レベルに変動が起きたり、その他の回路要素や信号線路でのインピーダンスが変動した場合、検出される前記進相シフトのゼロクロス検出パルスLpと遅相シフトのゼロクロス検出パルスLmにおけるそれぞれの位相シフト値θには温度ドリフト特性による誤差εが含まれることになる。しかし、この誤差εは両検出パルスLp,Lmにおいて同値同一方向(同値同一符号)で現われるので、2つの検出パルスLp,Lm(タイミング信号)の時間差Δtにおいては、自動的に誤差εが相殺されることになる。従って、温度ドリフトによる回路等のインピーダンス変化の影響を受けず、高精度な検出が可能となる。
【0056】
図6は、この温度補償の様子を模式的に示すタイミング図である。(a)は温度ドリフトによる誤差εがない場合の検出パルスLp,Lm(タイミング信号)の発生タイミング例を示し、時間差Δtは、理論的には2θであり、正確な回転位置を示す。(b)は温度ドリフトによる誤差εがある場合の検出パルスLp,Lm(タイミング信号)の発生タイミング例を示す。この場合、進相の検出パルスLpは、基準交流信号のゼロ位相時点に対して、誤差εを含む「+θ−ε」に相当する進み時間だけ先行して発生し、遅相の検出パルスLmは、基準交流信号のゼロ位相時点に対して、誤差εを含む「−θ−ε」に相当する遅れ時間だけ遅れて発生する。しかし、2つの検出パルスLp,Lm(タイミング信号)のそれぞれがこのように誤差εを含んでいても、両者の時間差Δtにおいては、自動的に誤差εが相殺され、正確な回転位置を示す理論値2θに対応している。このように、温度ドリフト補償が達成されている。
【0057】
図7は、センサ10の回路ユニット内に搭載する回路構成の別の例を示す。図7の例では、ケーシング4内に収納されたセンサ10内の回路構成は、図4の回路構成に加えて、進相の検出パルスLpと遅相の検出パルスLmとのを時間差Δtに対応するパルス幅を持つ可変パルス幅信号PWMを形成するPWM変換回路38を更に備える。このPWM変換回路38で形成された該時間差Δtに対応するパルス幅を持つ可変パルス幅信号PWMは、1本の出力ライン21cを介して出力され、マイクロコンピュータ20に入力される。マイクロコンピュータ20は、PWM信号キャプチャ用の入力ポートを有しており、この入力ポートに上記出力ライン21cを接続する。マイクロコンピュータ20は該入力ポートに接続されたライン21cからのPWM信号のパルス時間幅Δtをカウントすることで、サーボモータ1のローター2の回転位置φに対応する位相角データθをデジタル的に測定する。測定した位相角データθは、前述と同様に、サーボモータ1のフィードバック制御のために利用される。この回路構成例においては、出力ライン21cが1本で済むので、より一層、構成を簡素化できる。
【0058】
ところで、上述のように、パルスLpとLmの時間差Δtをカウントする場合、図8(a)に示すように、基準交流信号sinωtの基準位相(0度)に対して、第1の電気的交流信号sin(ωt+θ)の電気的位相角シフト+θ(つまりLpのタイミング)及び第2の電気的交流信号sin(ωt−θ)の電気的位相角シフト−θ(つまりLmのタイミング)が180度以内であれば、単純にパルスLpとLmの時間差Δtをカウントすることで正確な位相角シフトデータθ(つまり2θ)を得ることができる。
【0059】
一方、図8(b)に示すように、基準交流信号sinωtの基準位相(0度)に対して、第1の電気的交流信号sin(ωt+θ)の電気的位相角シフト+θ(つまりLp1のタイミング)及び第2の電気的交流信号sin(ωt−θ)の電気的位相角シフト−θ(つまりLm1のタイミング)が180度以上の場合は、単純に、パルスLpとLmの時間差Δtをカウントしたのでは、今回サイクルのパルスLp1のタイミングと前回サイクルのパルスLm0の時間差をカウントしてしまうことになり、正確な位相角シフトデータθ(つまり2θ)を得ることができない。そこで、そのような場合でも、正確な位相角シフトデータθ(つまり2θ)を得ることができるようにすることが新たな課題となる。
【0060】
そのような課題を解決するために、図5の実施例において、センサ10の回路側で基準交流信号sinωtの基準位相(0度)を示す基準ゼロクロスパルスR0を生成して、これをマイクロコンピュータ20に供給し、マイクロコンピュータ20の側において、例えば、図9に示すような手順で時間差Δtのカウントを行うとよい。図9においては、要するに、第1の電気的交流信号sin(ωt+θ)の基準位相のタイミング(つまりLpのタイミング)を始点とし、基準交流信号sinωtの基準位相のタイミング(R0)を経過した後の第2の電気的交流信号sin(ωt−θ)の基準位相のタイミング(つまりLmのタイミング)を終点として、該始点から終点までの時間間隔Δtで第1の電気的交流信号と前記第2の電気的交流信号の電気的位相差(2θ)を示す位相出力信号を生じるようにしている。
【0061】
図9の処理は、基準ゼロクロスパルスR0の発生タイミングでスタートする。ステップS1では、Δtのカウント動作中であるか(カウントフラグが立っているか)を判定する。YESであれば、ステップS2に行き、Lmの発生タイミングが到来したかを判定する。Lmの発生タイミングになると、ステップS3でΔtのカウント動作を終了する。この場合、Δtのカウントデータを回転位置検出データとして保存し、カウントフラグをリセットする。その後、ステップS4でLpの発生タイミングが到来したかを判定する。Lpの発生タイミングが到来したならば、ステップS5でΔtのカウント動作を開始し、カウントフラグを立てる。ステップS3のYESを経てステップS4,S5の処理に進むのは、図8(a)の例のように、基準交流信号sinωtの基準位相(0度)に対して、第1の電気的交流信号sin(ωt+θ)の電気的位相角シフト+θ(つまりLpのタイミング)及び第2の電気的交流信号sin(ωt−θ)の電気的位相角シフト−θ(つまりLmのタイミング)が180度以内である場合である。
【0062】
ステップS4がNOの場合は、ステップS6で基準ゼロクロスパルスR0の発生タイミングが到来したかを判定し、到来していなければ、ステップS4に戻る。つまり、ステップS4とステップS6を巡回することにより、LpとR0のいずれか早い方の発生に応じて処理を行う。R0が発生する前にLpが発生した場合は、上述のようにステップS5に進む。
【0063】
一方、Lpが発生する前にR0が発生した場合は、ステップS6でYESと判定し、図9のルーチンのスタートにジャンプする。この場合、Δtのカウント動作中ではない(カウントフラグがリセットされている)ので、ステップS1はNOであり、ステップS4に進む。ステップS4では、Lpの発生タイミングが到来したかを判定する。Lpの発生タイミングが到来したならば、ステップS5でΔtのカウント動作を開始し、カウントフラグを立てる。そして、このルーチンを終了し、次にR0が発生するまで待機する。ステップS1のNOからステップS4、S5の処理を行うのは、図8(b)の例のように、基準交流信号sinωtの基準位相(0度)に対して、第1の電気的交流信号sin(ωt+θ)の電気的位相角シフト+θ(つまりLpのタイミング)及び第2の電気的交流信号sin(ωt−θ)の電気的位相角シフト−θ(つまりLmのタイミング)が180度以上の場合である。
【0064】
一方、上記のような課題を解決するために、図7の実施例においては、センサ10の回路側に設けられたPWM変換回路38において、上記図9の処理のコンセプトと同様に、第1の電気的交流信号sin(ωt+θ)の基準位相のタイミング(つまりLpのタイミング)を始点とし、基準交流信号sinωtの基準位相のタイミング(R0)を経過した後の第2の電気的交流信号sin(ωt−θ)の基準位相のタイミング(つまりLmのタイミング)を終点とするように、PWM信号を生成するようにロジック回路を構成すればよい。そのためには、PWM変換回路38を例えば図10に示すように構成するとよい。図10においては、第1の電気的交流信号sin(ωt+θ)のゼロクロス検出パルスLpをフリップフロップ381のセット入力Sに入力し、このフリップフロップ381のセット出力QをANDゲート382に入力し、基準交流信号sinωtの基準位相(0度)のタイミングで発生するパルスR0をANDゲート382の他方入力に入力し、ANDゲート382の出力をフリップフロップ383のセット入力Sに入力する。フリップフロップ383のセット出力QはANDゲート384に入力され、ANDゲート384の他の入力には第2の電気的交流信号sin(ωt−θ)のゼロクロス検出パルスLmが入力され、ANDゲート384の出力はフリップフロップ381のリセット入力Rに入力される。フリップフロップ381のセット出力Qが回転位置に応じた時間差Δtを示すPWM信号として出力ライン21cに出力される。そして、フリップフロップ381のセット出力Qをインバータ385で反転した信号がフリップフロップ383のリセット入力Rに入力される。この構成によれば、第1の電気的交流信号sin(ωt+θ)のゼロクロス検出パルスLpの発生タイミングでフリップフロップ381がセットされ、フリップフロップ381がセットされた状態で基準位相(0度)のタイミングパルスR0が発生されると、ANDゲート382のAND条件が成立してフリップフロップ383がセットされ、フリップフロップ383がセットされた状態で第2の電気的交流信号sin(ωt−θ)のゼロクロス検出パルスLmが発生されると、ANDゲート384のAND条件が成立してフリップフロップ381がリセットされる。これにより、第1の電気的交流信号sin(ωt+θ)の基準位相のタイミング(つまりLpのタイミング)を始点とし、基準交流信号sinωtの基準位相のタイミング(R0)を経過した後の第2の電気的交流信号sin(ωt−θ)の基準位相のタイミング(つまりLmのタイミング)を終点とするように、PWM信号を生成することができる。そして、PWM信号が0に立ち下がったとき、インバータ385の出力1によりフリップフロップ383がリセットされる。
【0065】
なお、センサ10における検出用コイル11〜14の構成は、上記実施例のようなプリント回路基板に形成されたフラットコイル型のものに限らず、どのようなタイプでもよい。例えば、図11は、高透磁率磁性体のコア26の周りにコイル11〜14を巻回したタイプからなっている。あるいは、図12に示すように、単体のコイル11に隣接して所定形状の高透磁率磁性体16を配置する構成でもよい。フラックスゲートタイプのセンサにおいては、漏洩磁束に敏感に応答して検出を行うことができるので、漏洩磁束の発生源であるローター2から発生される漏洩磁束の向きとコイルの軸線の向きとの関係には自由度があり、コイルの配置の許容度が高い。
【符号の説明】
【0066】
1 サーボモータ
2 ローター(回転子)
3 ステータ
4 ケーシング
10 センサ(回転位置検出装置)
11,12,13,14 コイル
15 回路基板
16 高透磁率磁性体
MG 永久磁石
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏洩磁束検出型の回転位置検出装置を組み込んだ液密サーボモータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば原子力発電所や病院の医療機器等から放射線を発生する環境下で、作業や機器操作を行うには、遠隔操作によりロボットやマニピュレータを制御している。このようなロボットやマニピュレータの各駆動軸の駆動源としてサーボモータが用いられ、このサーボモータの回転位置を検出すると共に、その検出信号を中央制御装置に伝送して制御に必要な演算処理を行い、その演算結果に基づいてサーボモータを駆動するようにしている。従来、サーボモータの回転位置を検出するには、放射線環境下では半導体による検出器が使用できないため、回転体に発光ダイオード等を設けて光学的に回転位置を検出するエンコーダ方式が考えられるが、このような回転位置検出器では光信号を伝送するための光ファイバーが必要となる。しかし、この光ファイバーは放射線が当たると変色する、所謂ブラウニング(browning)現象が発生するという問題がある。そこで、放射線による影響を受けないでサーボモータの回転位置が検出可能なものとして、ロータ側に回転トランスを備えた構成の誘導型の回転位置検出器の使用が考えられている。しかし、この誘導型の回転位置検出器は回転トランスに鉄心が設けられているため、検出器の小型化が困難であり、超小型のサーボモータと一体化するには寸法の違いが大きく構造的に無理がある。
【0003】
この点に鑑みて、下記特許文献1においては、空心コイルを用いた微弱な磁界で回転位置を高精度で検出可能なレゾルバをサーボモータに直結して一体化することにより、全体を小型化したサーボモータ装置が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2においては、検出コイルの出力をPWM信号化して伝送するように構成し、温度特性誤差を成分を除去した高精度な検出データを得、かつ出力配線数を減少して、構成の簡略化を計った位置検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4070869号
【特許文献2】特開2006−214948号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のサーボモータ用の誘導型の回転位置検出装置は、サーボモータとは別構造の位置検出装置をモータ回転軸に取り付けることになるため、小型化には限界があった。また、検出用コイルの温度ドリフト補償が十分ではなかった。更に、上記のような原子力発電所等において使用されるサーボモータにあっては、水中環境に置かれることも考慮して液密構造とされるが、その場合、回転位置検出装置にも液密性が要求されることになる。この点、従来の回転位置検出装置を備えたサーボモータ装置においては、サーボモータとは別構造の回転位置検出装置に対して格別の液密構造を施す必要があるので、設計・製造が面倒となり、また、コスト高にもなる。更に、制御装置本体は、サーボモータ及び回転位置検出装置から離れた場所に置かれるため、回転位置検出信号を制御装置本体に伝送する配線が比較的長くなり、伝送路のインピーダンス等の影響を受けやすくなる。
【0007】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたもので、小型化に適し、液密構造にするのにも適し、温度ドリフト補償性能に優れ、かつ、検出信号の伝送路のインピーダンス等の影響を受けにくい構成からなる回転位置検出装置を備えたサーボモータ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1によれば、本発明に係るサーボモータ装置は、サーボモータと、前記サーボモータの回転子の回転位置を検出するための回転位置検出装置とを備えており、前記回転位置検出装置は、前記サーボモータの回転子に近接して該回転子の移動経路に沿って配置され、該回転子から生じる漏洩磁束を検知する複数のコイルと、ここで、前記複数のコイルの各々に対応して高透磁率磁性体が近接配置されており、該高透磁率磁性体においては前記回転子の回転位置に対応する関数特性で生じる前記漏洩磁束の変化に応じて磁気飽和が生ぜしめられ、各コイルにおいては、前記磁気飽和の変化特性に応じてインピーダンスが変化せしめられ、かつ、前記高透磁率磁性体は、近接した前記回転子の変位に伴って前記磁気飽和の変化特性が正弦関数的特性を示すように、前記回転子の変位方向に関して漸次変化する形状を有しており、更に、前記複数のコイルのうち第1及び第2のコイルは、前記回転子から生じる前記漏洩磁束の変化に対して互いに逆相となるように配置され、かつ、前記複数のコイルのうち第3及び第4のコイルも、前記回転子から生じる前記漏洩磁束の変化に対して互いに逆相となるように配置され、更に、前記第1及び第2のコイルの組と前記第3及び第4のコイルの組とが前記回転子から生じる前記漏洩磁束の変化に対して互いに所定位相だけずれるように配置されており、前記各コイルを所定の基準交流信号で励磁し、該各コイルのインピーダンスに応じた出力信号を各コイルから生成すると共に、前記第1及び第2のコイルの出力信号を差動合成して第1の合成出力交流信号を生成し、かつ、前記第3及び第4のコイルの出力信号を差動合成して第2の合成出力交流信号を生成するセンサ回路と、前記第1及び第2の合成出力交流信号に基づき、前記サーボモータの回転子の位置に対応するシフト量だけ前記基準交流信号に対して正及び負の一方向にシフトされた電気的位相角を持つ第1の電気的交流信号と、同じ前記検出対象位置に対応するシフト量だけ前記基準交流信号に対して正及び負の他方向にシフトされた電気的位相角を持つ第2の電気的交流信号とを生成する信号生成回路と、前記基準交流信号の基準位相と前記第1の電気的交流信号の基準位相と前記第2の電気的交流信号の基準位相とに基づき、前記第1の電気的交流信号と前記第2の電気的交流信号の電気的位相差を示す位相出力信号を生成する位相出力回路とを具備し、生成された位相出力信号を前記サーボモータの回転子の位置検出信号として出力することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、回転位置検出装置の検出要素は、前記複数のコイルのみであり、検出要素としての特段の磁性体ロータが不要であるので、回転位置検出装置の構成をかなり小型化することができる。従って、液密サーボモータ装置として構成する場合に、サーボモータと回転位置検出装置を一体化して1つのケーシング内に液密に収納することが容易に行えるものとなり、液密構造化するのに適する。また、複数のコイルの各々に取り付ける高透磁率磁性体は、サーボモータ回転子から漏洩する磁束に敏感に反応するので、サーボモータ回転子から漏洩する磁束の向きとコイルの軸線方向との関係に自由度をもたせることができ、回転位置検出装置の配置あるいはコイル配置などの自由度が高いので、実用上優れている。
【0010】
更に、複数のコイルの各々に取り付けた高透磁率磁性体の形状をサーボモータ回転子の変位方向に関して漸次変化するように工夫することで、近接したサーボモータ回転子の変位に伴って該回転子からの漏洩磁束に基づく磁気飽和の変化特性が正弦関数的特性を示すようにしたので、コイルに生じるインピーダンス変化の特性を所望の正弦関数的特性とすることが容易にできる。従って、各コイルから生成する各コイルのインピーダンスに応じた出力信号として、所望の正弦関数及び余弦関数的振幅特性を持つ交流信号を適切に生成させることができ、後段での位相検出処理にとって都合がよいものとなる。
【0011】
更に、前記複数のコイルのうち第1及び第2のコイルは、前記回転子から生じる前記漏洩磁束の変化に対して互いに逆相となるように配置され、前記第1及び第2のコイルの出力信号を差動合成して第1の合成出力交流信号を生成するので、第1の合成出力交流信号としてコイルの温度ドリフト補償を行った信号を得ることができる。複数のコイルのうち第3及び第4のコイルについても同様に、前記回転子から生じる前記漏洩磁束の変化に対して互いに逆相となるように配置され、前記第3及び第4のコイルの出力信号を差動合成して第2の合成出力交流信号を生成するので、第2の合成出力交流信号としてコイルの温度ドリフト補償を行った信号を得ることができる。
【0012】
また、前記第1及び第2の合成出力交流信号に基づき、前記サーボモータの回転子の位置に対応するシフト量だけ前記基準交流信号に対して正及び負の一方向にシフトされた電気的位相角を持つ第1の電気的交流信号と、同じ前記検出対象位置に対応するシフト量だけ前記基準交流信号に対して正及び負の他方向にシフトされた電気的位相角を持つ第2の電気的交流信号とを生成し、更に、前記基準交流信号の基準位相と前記第1の電気的交流信号の基準位相と前記第2の電気的交流信号の基準位相とに基づき、前記第1の電気的交流信号と前記第2の電気的交流信号の電気的位相差を示す位相出力信号を生成し、生成された位相出力信号を前記サーボモータの回転子の位置検出信号として出力するので、コイル以外の電気回路及び磁気回路要素による温度ドリフト誤差成分を、正及び負の両方向にシフトされた電気的位相角の合成により、相殺的に除去した高精度な位置検出信号を得ることができる。また、サーボモータの回転子の位置検出信号は、電気的位相差を示す信号であるため、該検出信号を遠隔の制御装置まで伝送する場合において、伝送路のインピーダンス等の影響を受けにくい。
【0013】
請求項2によれば、前記位相出力回路は、前記第1の電気的交流信号と前記第2の電気的交流信号の位相差を示すPWM信号を,前記位相出力信号として、生成する。このように、第1の電気的交流信号と第2の電気的交流信号との電気的位相差に対応するパルス幅を持つPWM信号を出力するように構成したことで、出力配線数を減少することができ、構成の簡略化を図ることができる。
【0014】
請求項3によれば、前記位相出力回路は、前記第1の電気的交流信号の基準位相のタイミングを始点とし、前記基準交流信号の基準位相のタイミングを経過した後の前記第2の電気的交流信号の基準位相のタイミングを終点として、該始点から終点までの時間間隔で前記第1の電気的交流信号と前記第2の電気的交流信号の電気的位相差を示す前記位相出力信号を生成する。これによれば、前記第1及び第2の電気的交流信号の前記基準交流信号に対する前記電気的位相角シフトが180度以上であっても、正確な検出データを生成することができる。
【0015】
請求項4によれば、前記センサ回路は、外部から与えられる直流電源に基づき前記基準交流信号を生成する回路を含む。これによれば、センサ回路内部で基準交流信号を生成するので、長い伝送路を経て外部から基準交流信号を供給する構成に比べて、基準交流信号に誤差が生じにくく、正確な検出が行える。
【0016】
請求項5によれば、前記サーボモータ及び前記回転位置検出装置を液密に収納するケーシングと、前記ケーシングの内部に外部から空気圧を導入するために前記ケーシングに設けられた圧力ポート部とを更に備えることを特徴とする。これによれば、液密サーボモータ装置を提供することができ、かつ、ケーシング内圧を高める若しくは調整することで、液密性をより一層高めることができる。
【0017】
請求項6によれば、前記サーボモータの出力軸に対して取り付けられる液密構造の減速機を更に備え、前記ケーシングは、前記サーボモータ及び前記回転位置検出装置を液密に収納する空間の外側において、前記減速機を交換可能に収納し、前記減速機の出力軸の周囲を液密にシールする第1のシール部材と、前記第1のシール部材の内側寄りで前記減速機の出力軸の周囲を液密にシールする第2のシール部材とを備え、前記第1のシール部材は、前記減速機の内部への外部からの液体の侵入を防止し、前記第2のシール部材は、前記減速機の内部の圧力を保持することを特徴とする。これによれば、サーボモータ装置の出力軸に減速機を設ける場合において、両者の液密構造を分離することにより、減速機の交換を容易に行うことができる構成とすることができる。また、その場合、減速機の出力軸を二重にシールすることにより、減速機の内部への外部からの液体の侵入防止と、減速機の内部の圧力保持の両方を達成することで、液密性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例を示す液密サーボモータ装置の概略断面図。
【0019】
【図2】漏洩磁束検出型の回転位置検出装置の一例を、コイル部分の構成例について示す図。
【0020】
【図3】コイル部分の変形例として、高透磁率磁性体の形状を図2の例とは異ならせた例を示す正面略図。
【0021】
【図4】回転位置検出装置に含まれる検出用電気回路例を示す図。
【0022】
【図5】回転位置検出装置の出力をマイクロコンピュータに接続してなるシステムの一例を示すブロック図。
【0023】
【図6】図4の検出回路構成によって検出データの温度ドリフト補償が行えることを説明するタイミングチャート。
【0024】
【図7】回転位置検出装置の出力をマイクロコンピュータに接続してなる検出システムの別の構成例を示すブロック図。
【0025】
【図8】電気的位相角の時間差をカウントする動作例を示すタイミングチャート。
【0026】
【図9】図8に従う時間差カウント動作を行う処理の一例を示すフローチャート。
【0027】
【図10】図8に従う時間差カウント動作を行うように構成したPWM変換回路の一例を示すロジック回路図。
【0028】
【図11】漏洩磁束検出型の回転位置検出装置のコイル部分の別の構成例を示す図。
【0029】
【図12】コイルと高透磁率磁性体の別の配置例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1において、本発明の一実施例に係る液密サーボモータ装置は、サーボモータ1と、サーボモータ1のローター(回転子)2の回転位置を検出するためのセンサ(回転位置検出装置)10とを備える。サーボモータ1は、公知のどのようなタイプのサーボモータであってもよく、励磁コイルを備えたステータ3と、ローター(回転子)2とで構成される。なお、ローター(回転子)2には、所定の配置でN極とS極が形成されるものを用いる。ここでは、ローター(回転子)2において永久磁石のN極とS極が形成されている同期モータをサーボモータ1として用いる例を想定する。
【0031】
ケーシング4は、サーボモータ1及びセンサ10を液密に収納するもので、液密構造かつ防錆材質若しくは防錆表面処理を施したものからなる。一例として、ケーシング4は、防水を目的とし、かつ、モータ本体の形成を兼ねた一体ケース構造を有する。該ケーシング内にローター2とステータ3を組み立てることによりサーボモータ1を構成し、かつ、該サーボモータ1に対して所定の配置をなすようにセンサ10をケーシング4内に取り付け収納する。
【0032】
更に、ケーシング4には、該ケーシング4の内部に外部から空気圧を導入するための圧力ポート部5が形成されている。この圧力ポート部5を介して外部の空気圧供給源(図示せず)から空気圧をケーシング4内に供給することで、ケーシング4の内圧を高める、若しくは調整し、液密性をより一層高めることができる。例えば、内部圧力調整機構(調整弁)を適宜箇所に設置し、ケーシング4の内部圧力と外部圧力を調整することで、ケーシング4の液密性を保つ。このように液密サーボモータ装置として構成することで、原子力発電所等における水中環境に置かれたマニピュレータのサーボモータ装置として本発明を適用することができる。
【0033】
ケーシング4において、サーボモータ1の出力軸6の側は、仕切壁7が形成されており、その外側(つまり、サーボモータ1及びセンサ10を液密に収納するための空間の外側)に減速機8を交換可能に収納するための領域が形成されている。減速機8はサーボモータ1の出力軸6の回転を変速して出力軸9から出力する。減速機8に液密性をもたせるために、減速機8の出力軸9の周囲を液密にシールする第1のシール部材18と、第1のシール部材18の内側寄りで減速機8の出力軸9の周囲を液密にシールする第2のシール部材19とが設けられる。第1のシール部材18は、減速機8の内部への外部からの液体の侵入を防止し、第2のシール部材19は、減速機8の内部の圧力を保持する役目を果たす。これによれば、サーボモータ1の出力軸6に減速機8を設ける場合において、両者の液密構造を分離することにより、減速機8の交換を容易に行うことができる構成とすることができる。また、その場合、減速機8の出力軸9を二段階にシールすることにより、減速機8の内部への外部からの液体の侵入防止と、減速機8の内部の圧力保持の両方を達成し、液密性を向上させることができる。
【0034】
図2は、漏洩磁束検出型の回転位置検出装置として構成されたセンサ10のコイル部分の構成例を示す図であり、(a)は正面略図、(b)は側面略図である。一例として、サーボモータ1のローター(回転子)2は、永久磁石MGのN極とS極を180度の間隔で配置した構成からなるものとしている。その場合、サーボモータ1のローター2の一回転につき、ローター2の永久磁石MGによる磁界が2サイクル回転する。センサ10は、サーボモータ1のローター2の永久磁石MGの漏洩磁束を検出し、ローター2の永久磁石MGによる磁界の現在角度を割り出すことで、サーボモータ1の回転位置を検出する。
【0035】
図2(a)において、センサ10は、リング状の回路基板15において所定の角度間隔で配置された4極のフラットコイル11,12,13,14を含む。例えば、各極のフラットコイル11,12,13,14は、渦巻き状のプリント配線からなるもので、渦巻きプリント配線コイルを複数層重ねてインダクタンスを高めている。図2(b)に示すように、サーボモータ1のローター2の一部がステータ3よりも幾分突出して形成され、その突出部分2aの周囲にセンサ10のリング状回路基板15が嵌め込まれる。図2(b)に示すように、各フラットコイル11,12,13,14の配置に対応して基板15の両面において高透磁率磁性体16が配置される。各高透磁率磁性体16は例えばアモルファスのような高透磁率材質からなり、薄い板若しくは薄膜を成している。このような高透磁率材質は、フラックスゲートとして機能する。すなわち、高透磁率材質に永久磁石の磁極が近接すると、該高透磁率材質は大きな磁束の影響により磁気飽和を起こし、その透磁率を大きく低下させる性質を有している。従って、各フラットコイル11,12,13,14における各高透磁率磁性体16は、ローター2の永久磁石MGの磁極S,Nの近接に応じて透磁率を変化させ、対応するコイル11,12,13,14にそれに応じたインピーダンス変化を生じさせる。このフラックスゲート原理により、ローター2の永久磁石MGから生じる漏洩磁束を各コイル11,12,13,14で検知することができる。なお、高透磁率磁性体16は、各フラットコイル11,12,13,14の配置に対応して基板15の片面に配置するだけでもよい。
【0036】
例えば、図示例のように、サーボモータ1のローター2の一回転につき、ローター2の永久磁石MGの磁極S,Nによる磁界が2サイクル回転する場合は、ローター2の回転角度をφとすると、該ローター2の回転角度φに応じた永久磁石の漏洩磁束に応じて各フラットコイル11,12,13,14における各高透磁率磁性体16にはφに対して2倍の周期性を持つ(つまり、該回転角度φに相関する)磁気飽和が生ぜしめられ、各コイル11,12,13,14においては、前記磁気飽和の周期的変化に応じてインピーダンスが変化せしめられる。
【0037】
ここで、高透磁率磁性体16の形状を適切に設定することにより、ローター2の回転角度φに応じて第1のコイル11(サイン極S)に生じるインピーダンス変化の特性が正弦関数sinθと同等若しくはそれに近いものとなるようにすることができる。なお、θ=2φである。また、第1のコイル11から時計方向に機械角で約90度ずれて配置された第2のコイル12(マイナスサイン極−S)では、ローター2の回転角度φに応じたインピーダンス変化の特性がマイナス正弦関数−sinθと同等若しくはそれに近いものとなるようにすることができる。同様に、第1のコイル11から時計方向に機械角で約225度ずれて配置された第3のコイル13(コサイン極C)では、ローター2の回転角度φに応じたインピーダンス変化の特性が余弦関数cosθと同等若しくはそれに近いものとなるようにすることができる。また、第1のコイル11から時計方向に機械角で約315度ずれて配置された第4のコイル14(マイナスコサイン極−C)では、ローター2の回転角度φに応じたインピーダンス変化の特性がマイナス余弦関数−cosθと同等若しくはそれに近いものとなるようにすることができる。なお、各コイル11〜14の機械的配置は、上記例に限らず、適宜設計変更可能である。要は、各コイル11〜14におけるローター2の回転角度φに応じたインピーダンス変化の特性がそれぞれsinθ,−sinθ,cosθ,−cosθとなるようにすればよい。
【0038】
なお、高透磁率磁性体16の形状は、図2(a)では、各フラットコイル11,12,13,14の円形状に合わせて略円形状としている。このような略円形状であっても、ローター2の変位方向に関して漸次変化する形状であるから、近接したローター2の変位に伴って磁気飽和の変化特性が正弦関数的特性を示すようにすることができるかもしれない。しかし、より好ましくは、図3に示すように、高透磁率磁性体16の形状は、眼の輪郭のような先細り形状を有するものとするのがよいかもしれない。いずれにせよ、上述のように、各コイル11〜14におけるローター2の回転角度φに応じたインピーダンス変化の特性がそれぞれsinθ,−sinθ,cosθ,−cosθとなるように、若しくはできるだけそれに近いものとなるように、高透磁率磁性体16の形状を、ローター2の変位方向に関して漸次変化する形状とする。
【0039】
このように、第1及び第2のコイル11,12は、ローター2から生じる漏洩磁束の変化に対して互いに逆相となるように配置され、かつ、第3及び第4のコイル13,14も、ローター2から生じる漏洩磁束の変化に対して互いに逆相となるように配置されている。そして、第1及び第2のコイル11,12の組と前記第3及び第4のコイル13,14の組とがローター2から生じる漏洩磁束の変化に対して互いに所定位相(π/2)だけずれるように配置されている。
【0040】
図4は、センサ10に含まれる検出用電気回路例を示す。図4において、各コイル11〜14は可変インダクタンス要素として等価的に示されている。各コイル11〜14は、基準交流信号源40から与えられる所定の高周波交流信号(便宜上、これをEsinωtで示す)によって1相で励磁される。各コイル11〜14に生じる電圧Va,Vc,Vb,Vdは、等価的に、下記のように、検出対象たるローター2の回転位置φに対応する角度変数θ(=2φ)に応じた上記コイル11〜14毎のインピーダンス値に応じた大きさを示す。なお、P0は磁気回路の定数要素である。
Va=(P0+sinθ)sinωt
Vb=(P0+cosθ)sinωt
Vc=(P0−sinθ)sinωt
Vd=(P0−cosθ)sinωt
【0041】
アナログ演算器31は、下記のように、サイン相に相当するコイル11の出力電圧Vaと、それに対して差動変化するマイナスサイン相に相当するコイル12の出力電圧Vcとの差を求め、角度変数θのサイン関数特性の振幅係数を持つ交流出力信号を生成する。
Va−Vc=(P0+sinθ)sinωt−(P0−sinθ)sinωt
=2sinθsinωt
アナログ演算器32は、下記のように、コサイン相に相当するコイル13の出力電圧Vbと、それに対して差動変化するマイナスコサイン相に相当するコイル14の出力電圧Vdとの差を求め、角度変数θのコサイン関数特性の振幅係数を持つ交流出力信号を生成する。
Vb−Vd=(P0+cosθ)sinωt−(P0−cosθ)sinωt
=2cosθsinωt
【0042】
こうして、検出対象たる回転位置φに相関する角度変数θを含む2つの周期的振幅関数(sinθとcosθ)によってそれぞれ振幅変調された2つの交流出力信号「2sinθsinωt」と「2cosθsinωt」が得られる(以下、係数の「2」は省略する。)。これは、従来からレゾルバとして知られた検出器のサイン相出力信号sinθsinωt及びコサイン相出力信号cosθsinωtと同等のものである。なお、サイン相及びコサイン相という呼び名、及び2つの交流出力信号の振幅関数のサイン、コサインの表わし方は便宜的なものであり、一方がサインで他方がコサインでありさえすれば、どちらをサインと言ってもよい。すなわち、Va−Vc=cosθsinωtで、Vb−Vd=sinθsinωtである、と表現してもよい。
【0043】
基準交流信号源40及びアナログ演算器31,32の部分が、各コイル11〜14を所定の基準交流信号で励磁し、該各コイル11〜14のインピーダンスに応じた出力信号を各コイル11〜14から生成すると共に、第1及び第2のコイル11,12の出力信号を差動合成して第1の合成出力交流信号sinθsinωtを生成し、かつ、第3及び第4のコイル13,14の出力信号を差動合成して第2の合成出力交流信号cosθsinωtを生成するセンサ回路に相当する。
【0044】
ここで、温度ドリフト特性の補償について説明すると、温度に応じて各コイル11〜14のインピーダンスが変化し、その出力電圧Va〜Vdも変動する。しかし、これらを演算合成したサイン及びコサイン関数特性の交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtにおいては、「Va−Vc」及び「Vb−Vd」の演算によって、コイルの温度ドリフト誤差が補償されるので、温度ドリフトによるコイルインピーダンス変化の影響を受けないものとなる。従って、精度のよい検出が可能である。また、その他の回路部分例えば基準交流信号源40等での温度ドリフト特性も、後述するように自動的に補償される。
【0045】
本実施例においては、演算器31、32から出力される2つの交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtに基づき、位相検出方式で回転位置検出を行う。この場合の位相検出方式としては、例えば特開平9−126809号公報に示された技術を適宜用いるとよい。例えば、一方の交流出力信号sinθsinωtをシフト回路33で電気的に90度シフトすることで、交流信号sinθcosωtを生成し、これと他方の交流出力信号cosθsinωtをアナログ加算器34で加算合成することで、sin(ωt+θ)なる、θに応じてプラス方向(進相)に位相シフトされた交流信号(位相成分θを交流位相ずれに変換した信号)を生成する。
【0046】
一方、シフト回路33から出力される交流出力信号sinθcosωtと他方の交流出力信号cosθsinωtとをアナログ引算器36で引算合成することで、sin(ωt−θ)なる、θに応じてマイナス方向(遅相)に位相シフトされた交流信号(位相成分θを交流位相ずれに変換した信号)を生成する。
【0047】
これらのシフト回路33、アナログ加算器34、アナログ引算器36の部分が、第1及び第2の合成出力交流信号sinθcosωt及びcosθsinωtに基づき、サーボモータ1のローター2の回転位置φに対応するシフト量θだけ基準交流信号sinωtに対して正及び負の一方向にシフトされた電気的位相角を持つ第1の電気的交流信号sin(ωt+θ)と、同じ検出対象回転位置φに対応するシフト量θだけ基準交流信号sinωtに対して正及び負の他方向にシフトされた電気的位相角を持つ第2の電気的交流信号sin(ωt−θ)を生成する信号生成回路に相当する。
【0048】
そして、進相シフトされた交流検出信号sin(ωt+θ)のゼロクロスをコンパレータ35で検出し、ゼロクロス検出パルスLpを生成する。また、遅相シフトされた交流検出信号sin(ωt−θ)のゼロクロスをコンパレータ37で検出し、ゼロクロス検出パルスLmを生成する。ゼロクロス検出パルスLpは、上記第1の電気的交流信号sin(ωt+θ)の基準位相(位相角0)のタイミングを示している。ゼロクロス検出パルスLmは、上記第2の電気的交流信号sin(ωt−θ)の基準位相(位相角0)のタイミングを示している。
【0049】
コンパレータ35から出力される進相シフトのゼロクロス検出パルスLpは、進相シフトされた交流検出信号sin(ωt+θ)における位相シフト量θを、基準交流信号sinωtのゼロ位相時点に対する進み時間位置で示すタイミング信号に相当する。
【0050】
また、コンパレータ37から出力される遅相シフトのゼロクロス検出パルスLmは、遅相シフトされた交流検出信号sin(ωt−θ)における位相シフト量θを、基準交流信号sinωtのゼロ位相時点からの遅れ時間位置で示すタイミング信号に相当する。
【0051】
このように、進相シフトのゼロクロス検出パルスLpと遅相シフトのゼロクロス検出パルスLmのどちらもが、サーボモータ1のローター2の回転位置φに対応する位相シフト量θを、時間位置で示す検出データである。従って、原理的には、進相シフトのゼロクロス検出パルスLpと遅相シフトのゼロクロス検出パルスLmのどちらか一方を、ローター2の回転位置φの検出信号として出力するようにすればよい。しかし、後述するように温度ドリフト補償した検出データを得るためには、両方を用いるのがよい。
【0052】
図4に示されたセンサ10の各回路31〜37、40は1つの回路基板15上にユニット化して収容されて回路ユニットとしてまとめられる。そして、該回路ユニットを含むセンサ10が、図1に示すように、ケーシング4内に収納される。こうして、ケーシング4内にコイルと回路を含むセンサ10がコンパクトに収められる。図5は、ケーシング4内に収納された図2〜図4に示す実施例に係るセンサ10を、その検出出力を利用するためのマイクロコンピュータ20に接続してなるシステム構成例を示す。マイクロコンピュータ20と図4実施例回路との間は、少なくとも直流電源供給ラインと2本の出力ライン21a,21bで接続されるだけでよい。この2本の出力ライン21a,21bには、上述の進相シフトのゼロクロス検出パルスLpと遅相シフトのゼロクロス検出パルスLmがそれぞれ出力される。マイクロコンピュータ20は、タイミング信号キャプチャ用の入力ポートを複数有しており、この入力ポートに上記出力ライン21a,21bをそれぞれ接続する。マイクロコンピュータ20は該入力ポートに接続されたライン21a,21bから与えられる2つのタイミング信号(パルスLpとLm)の時間差Δtをカウントすることで、サーボモータ1のローター2の回転位置φに対応する位相角データθをデジタル的に測定する。なお、この例の場合、位相角データθは、ローター2の180度の回転範囲を1サイクルとしてその1サイクル範囲内のアブソリュート値で回転位置を示す。180度を越える回転範囲に関しては、サイクル数をインクリメントすることで検出可能である。測定した位相角データθは、サーボモータ1のローター回転位置φのフィードバック信号としてサーボモータ制御回路(図示せず)に与えられる。サーボモータ制御回路(図示せず)を公知の手法により目標値とローター回転位置φのフィードバック信号とに基づきサーボモータ1の回転指令信号を生成し、サーボモータ1に与える。
【0053】
コンパレータ35、37及びマイクロコンピュータ20でΔtをカウントする部分が、基準交流信号sinωtの基準位相と第1の電気的交流信号sin(ωt+θ)の基準位相と第2の電気的交流信号sin(ωt−θ)の基準位相とに基づき、第1の電気的交流信号sin(ωt+θ)と第2の電気的交流信号sin(ωt−θ)の電気的位相差を示す位相出力信号を生成する位相出力回路に相当する。勿論、マイクロコンピュータ20に代えて、パルスLpとLmの時間差Δtをカウントするデジタル回路を使用してもよい。
【0054】
なお、マイクロコンピュータ20では、ライン21a,21bから与えられる2つのタイミング信号(パルスLpとLm)の時間差Δtをカウントするだけでよく、センサ10内に設けられた基準交流信号源40から発生される基準交流信号sinωtのゼロ位相時点を知る必要がない。よって、コンピュータ20の側での時間測定のための処理・構成が簡素化される。一方、ケーシング4内に収納されたセンサ10内の回路では、基準交流信号源40としてアナログ発振回路により又はサイン波関数発生器などを使用して、外部から供給される直流電源に基づき、内部で基準交流信号sinωtを発生するだけでよく、これを同期化のための参照信号としてマイクロコンピュータ20に与える必要がないので、液密構成のケーシング4に設けねばならない外部端子の構成を簡素化でき、コスト削減につながる。
【0055】
ここで、再び温度ドリフト特性の補償について説明する。温度ドリフト特性によって、例えば基準交流信号源40で発生する交流信号の周波数や振幅レベルに変動が起きたり、その他の回路要素や信号線路でのインピーダンスが変動した場合、検出される前記進相シフトのゼロクロス検出パルスLpと遅相シフトのゼロクロス検出パルスLmにおけるそれぞれの位相シフト値θには温度ドリフト特性による誤差εが含まれることになる。しかし、この誤差εは両検出パルスLp,Lmにおいて同値同一方向(同値同一符号)で現われるので、2つの検出パルスLp,Lm(タイミング信号)の時間差Δtにおいては、自動的に誤差εが相殺されることになる。従って、温度ドリフトによる回路等のインピーダンス変化の影響を受けず、高精度な検出が可能となる。
【0056】
図6は、この温度補償の様子を模式的に示すタイミング図である。(a)は温度ドリフトによる誤差εがない場合の検出パルスLp,Lm(タイミング信号)の発生タイミング例を示し、時間差Δtは、理論的には2θであり、正確な回転位置を示す。(b)は温度ドリフトによる誤差εがある場合の検出パルスLp,Lm(タイミング信号)の発生タイミング例を示す。この場合、進相の検出パルスLpは、基準交流信号のゼロ位相時点に対して、誤差εを含む「+θ−ε」に相当する進み時間だけ先行して発生し、遅相の検出パルスLmは、基準交流信号のゼロ位相時点に対して、誤差εを含む「−θ−ε」に相当する遅れ時間だけ遅れて発生する。しかし、2つの検出パルスLp,Lm(タイミング信号)のそれぞれがこのように誤差εを含んでいても、両者の時間差Δtにおいては、自動的に誤差εが相殺され、正確な回転位置を示す理論値2θに対応している。このように、温度ドリフト補償が達成されている。
【0057】
図7は、センサ10の回路ユニット内に搭載する回路構成の別の例を示す。図7の例では、ケーシング4内に収納されたセンサ10内の回路構成は、図4の回路構成に加えて、進相の検出パルスLpと遅相の検出パルスLmとのを時間差Δtに対応するパルス幅を持つ可変パルス幅信号PWMを形成するPWM変換回路38を更に備える。このPWM変換回路38で形成された該時間差Δtに対応するパルス幅を持つ可変パルス幅信号PWMは、1本の出力ライン21cを介して出力され、マイクロコンピュータ20に入力される。マイクロコンピュータ20は、PWM信号キャプチャ用の入力ポートを有しており、この入力ポートに上記出力ライン21cを接続する。マイクロコンピュータ20は該入力ポートに接続されたライン21cからのPWM信号のパルス時間幅Δtをカウントすることで、サーボモータ1のローター2の回転位置φに対応する位相角データθをデジタル的に測定する。測定した位相角データθは、前述と同様に、サーボモータ1のフィードバック制御のために利用される。この回路構成例においては、出力ライン21cが1本で済むので、より一層、構成を簡素化できる。
【0058】
ところで、上述のように、パルスLpとLmの時間差Δtをカウントする場合、図8(a)に示すように、基準交流信号sinωtの基準位相(0度)に対して、第1の電気的交流信号sin(ωt+θ)の電気的位相角シフト+θ(つまりLpのタイミング)及び第2の電気的交流信号sin(ωt−θ)の電気的位相角シフト−θ(つまりLmのタイミング)が180度以内であれば、単純にパルスLpとLmの時間差Δtをカウントすることで正確な位相角シフトデータθ(つまり2θ)を得ることができる。
【0059】
一方、図8(b)に示すように、基準交流信号sinωtの基準位相(0度)に対して、第1の電気的交流信号sin(ωt+θ)の電気的位相角シフト+θ(つまりLp1のタイミング)及び第2の電気的交流信号sin(ωt−θ)の電気的位相角シフト−θ(つまりLm1のタイミング)が180度以上の場合は、単純に、パルスLpとLmの時間差Δtをカウントしたのでは、今回サイクルのパルスLp1のタイミングと前回サイクルのパルスLm0の時間差をカウントしてしまうことになり、正確な位相角シフトデータθ(つまり2θ)を得ることができない。そこで、そのような場合でも、正確な位相角シフトデータθ(つまり2θ)を得ることができるようにすることが新たな課題となる。
【0060】
そのような課題を解決するために、図5の実施例において、センサ10の回路側で基準交流信号sinωtの基準位相(0度)を示す基準ゼロクロスパルスR0を生成して、これをマイクロコンピュータ20に供給し、マイクロコンピュータ20の側において、例えば、図9に示すような手順で時間差Δtのカウントを行うとよい。図9においては、要するに、第1の電気的交流信号sin(ωt+θ)の基準位相のタイミング(つまりLpのタイミング)を始点とし、基準交流信号sinωtの基準位相のタイミング(R0)を経過した後の第2の電気的交流信号sin(ωt−θ)の基準位相のタイミング(つまりLmのタイミング)を終点として、該始点から終点までの時間間隔Δtで第1の電気的交流信号と前記第2の電気的交流信号の電気的位相差(2θ)を示す位相出力信号を生じるようにしている。
【0061】
図9の処理は、基準ゼロクロスパルスR0の発生タイミングでスタートする。ステップS1では、Δtのカウント動作中であるか(カウントフラグが立っているか)を判定する。YESであれば、ステップS2に行き、Lmの発生タイミングが到来したかを判定する。Lmの発生タイミングになると、ステップS3でΔtのカウント動作を終了する。この場合、Δtのカウントデータを回転位置検出データとして保存し、カウントフラグをリセットする。その後、ステップS4でLpの発生タイミングが到来したかを判定する。Lpの発生タイミングが到来したならば、ステップS5でΔtのカウント動作を開始し、カウントフラグを立てる。ステップS3のYESを経てステップS4,S5の処理に進むのは、図8(a)の例のように、基準交流信号sinωtの基準位相(0度)に対して、第1の電気的交流信号sin(ωt+θ)の電気的位相角シフト+θ(つまりLpのタイミング)及び第2の電気的交流信号sin(ωt−θ)の電気的位相角シフト−θ(つまりLmのタイミング)が180度以内である場合である。
【0062】
ステップS4がNOの場合は、ステップS6で基準ゼロクロスパルスR0の発生タイミングが到来したかを判定し、到来していなければ、ステップS4に戻る。つまり、ステップS4とステップS6を巡回することにより、LpとR0のいずれか早い方の発生に応じて処理を行う。R0が発生する前にLpが発生した場合は、上述のようにステップS5に進む。
【0063】
一方、Lpが発生する前にR0が発生した場合は、ステップS6でYESと判定し、図9のルーチンのスタートにジャンプする。この場合、Δtのカウント動作中ではない(カウントフラグがリセットされている)ので、ステップS1はNOであり、ステップS4に進む。ステップS4では、Lpの発生タイミングが到来したかを判定する。Lpの発生タイミングが到来したならば、ステップS5でΔtのカウント動作を開始し、カウントフラグを立てる。そして、このルーチンを終了し、次にR0が発生するまで待機する。ステップS1のNOからステップS4、S5の処理を行うのは、図8(b)の例のように、基準交流信号sinωtの基準位相(0度)に対して、第1の電気的交流信号sin(ωt+θ)の電気的位相角シフト+θ(つまりLpのタイミング)及び第2の電気的交流信号sin(ωt−θ)の電気的位相角シフト−θ(つまりLmのタイミング)が180度以上の場合である。
【0064】
一方、上記のような課題を解決するために、図7の実施例においては、センサ10の回路側に設けられたPWM変換回路38において、上記図9の処理のコンセプトと同様に、第1の電気的交流信号sin(ωt+θ)の基準位相のタイミング(つまりLpのタイミング)を始点とし、基準交流信号sinωtの基準位相のタイミング(R0)を経過した後の第2の電気的交流信号sin(ωt−θ)の基準位相のタイミング(つまりLmのタイミング)を終点とするように、PWM信号を生成するようにロジック回路を構成すればよい。そのためには、PWM変換回路38を例えば図10に示すように構成するとよい。図10においては、第1の電気的交流信号sin(ωt+θ)のゼロクロス検出パルスLpをフリップフロップ381のセット入力Sに入力し、このフリップフロップ381のセット出力QをANDゲート382に入力し、基準交流信号sinωtの基準位相(0度)のタイミングで発生するパルスR0をANDゲート382の他方入力に入力し、ANDゲート382の出力をフリップフロップ383のセット入力Sに入力する。フリップフロップ383のセット出力QはANDゲート384に入力され、ANDゲート384の他の入力には第2の電気的交流信号sin(ωt−θ)のゼロクロス検出パルスLmが入力され、ANDゲート384の出力はフリップフロップ381のリセット入力Rに入力される。フリップフロップ381のセット出力Qが回転位置に応じた時間差Δtを示すPWM信号として出力ライン21cに出力される。そして、フリップフロップ381のセット出力Qをインバータ385で反転した信号がフリップフロップ383のリセット入力Rに入力される。この構成によれば、第1の電気的交流信号sin(ωt+θ)のゼロクロス検出パルスLpの発生タイミングでフリップフロップ381がセットされ、フリップフロップ381がセットされた状態で基準位相(0度)のタイミングパルスR0が発生されると、ANDゲート382のAND条件が成立してフリップフロップ383がセットされ、フリップフロップ383がセットされた状態で第2の電気的交流信号sin(ωt−θ)のゼロクロス検出パルスLmが発生されると、ANDゲート384のAND条件が成立してフリップフロップ381がリセットされる。これにより、第1の電気的交流信号sin(ωt+θ)の基準位相のタイミング(つまりLpのタイミング)を始点とし、基準交流信号sinωtの基準位相のタイミング(R0)を経過した後の第2の電気的交流信号sin(ωt−θ)の基準位相のタイミング(つまりLmのタイミング)を終点とするように、PWM信号を生成することができる。そして、PWM信号が0に立ち下がったとき、インバータ385の出力1によりフリップフロップ383がリセットされる。
【0065】
なお、センサ10における検出用コイル11〜14の構成は、上記実施例のようなプリント回路基板に形成されたフラットコイル型のものに限らず、どのようなタイプでもよい。例えば、図11は、高透磁率磁性体のコア26の周りにコイル11〜14を巻回したタイプからなっている。あるいは、図12に示すように、単体のコイル11に隣接して所定形状の高透磁率磁性体16を配置する構成でもよい。フラックスゲートタイプのセンサにおいては、漏洩磁束に敏感に応答して検出を行うことができるので、漏洩磁束の発生源であるローター2から発生される漏洩磁束の向きとコイルの軸線の向きとの関係には自由度があり、コイルの配置の許容度が高い。
【符号の説明】
【0066】
1 サーボモータ
2 ローター(回転子)
3 ステータ
4 ケーシング
10 センサ(回転位置検出装置)
11,12,13,14 コイル
15 回路基板
16 高透磁率磁性体
MG 永久磁石
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボモータと、前記サーボモータの回転子の回転位置を検出するための回転位置検出装置とを備えるサーボモータ装置であって、
前記回転位置検出装置は、
前記サーボモータの回転子に近接して該回転子の移動経路に沿って配置され、該回転子から生じる漏洩磁束を検知する複数のコイルと、ここで、前記複数のコイルの各々に対応して高透磁率磁性体が近接配置されており、該高透磁率磁性体においては前記回転子の回転位置に対応する関数特性で生じる前記漏洩磁束の変化に応じて磁気飽和が生ぜしめられ、各コイルにおいては、前記磁気飽和の変化特性に応じてインピーダンスが変化せしめられ、かつ、前記高透磁率磁性体は、近接した前記回転子の変位に伴って前記磁気飽和の変化特性が正弦関数的特性を示すように、前記回転子の変位方向に関して漸次変化する形状を有しており、更に、前記複数のコイルのうち第1及び第2のコイルは、前記回転子から生じる前記漏洩磁束の変化に対して互いに逆相となるように配置され、かつ、前記複数のコイルのうち第3及び第4のコイルも、前記回転子から生じる前記漏洩磁束の変化に対して互いに逆相となるように配置され、更に、前記第1及び第2のコイルの組と前記第3及び第4のコイルの組とが前記回転子から生じる前記漏洩磁束の変化に対して互いに所定位相だけずれるように配置されており、
前記各コイルを所定の基準交流信号で励磁し、該各コイルのインピーダンスに応じた出力信号を各コイルから生成すると共に、前記第1及び第2のコイルの出力信号を差動合成して第1の合成出力交流信号を生成し、かつ、前記第3及び第4のコイルの出力信号を差動合成して第2の合成出力交流信号を生成するセンサ回路と、
前記第1及び第2の合成出力交流信号に基づき、前記サーボモータの回転子の位置に対応するシフト量だけ前記基準交流信号に対して正及び負の一方向にシフトされた電気的位相角を持つ第1の電気的交流信号と、同じ前記検出対象位置に対応するシフト量だけ前記基準交流信号に対して正及び負の他方向にシフトされた電気的位相角を持つ第2の電気的交流信号とを生成する信号生成回路と、
前記基準交流信号の基準位相と前記第1の電気的交流信号の基準位相と前記第2の電気的交流信号の基準位相とに基づき、前記第1の電気的交流信号と前記第2の電気的交流信号の電気的位相差を示す位相出力信号を生成する位相出力回路と
を具備し、生成された位相出力信号を前記サーボモータの回転子の位置検出信号として出力することを特徴とするサーボモータ装置。
【請求項2】
前記位相出力回路は、前記第1の電気的交流信号と前記第2の電気的交流信号の位相差を示すPWM信号を,前記位相出力信号として、生成する請求項1に記載のサーボモータ装置。
【請求項3】
前記位相出力回路は、前記第1の電気的交流信号の基準位相のタイミングを始点とし、前記基準交流信号の基準位相のタイミングを経過した後の前記第2の電気的交流信号の基準位相のタイミングを終点として、該始点から終点までの時間間隔で前記第1の電気的交流信号と前記第2の電気的交流信号の電気的位相差を示す前記位相出力信号を生成する請求項1又は2に記載のサーボモータ装置。
【請求項4】
前記センサ回路は、外部から与えられる直流電源に基づき前記基準交流信号を生成する回路を含む請求項1乃至3のいずれかに記載のサーボモータ装置。
【請求項5】
前記サーボモータ及び前記回転位置検出装置を液密に収納するケーシングと、
前記ケーシングの内部に外部から空気圧を導入するために前記ケーシングに設けられた圧力ポート部と
を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のサーボモータ装置。
【請求項6】
前記サーボモータの出力軸に対して取り付けられる液密構造の減速機を更に備え、
前記ケーシングは、前記サーボモータ及び前記回転位置検出装置を液密に収納する空間の外側において、前記減速機を交換可能に収納し、
前記減速機の出力軸の周囲を液密にシールする第1のシール部材と、
前記第1のシール部材の内側寄りで前記減速機の出力軸の周囲を液密にシールする第2のシール部材と
を備え、前記第1のシール部材は、前記減速機の内部への外部からの液体の侵入を防止し、前記第2のシール部材は、前記減速機の内部の圧力を保持することを特徴とする請求項5に記載のサーボモータ装置。
【請求項1】
サーボモータと、前記サーボモータの回転子の回転位置を検出するための回転位置検出装置とを備えるサーボモータ装置であって、
前記回転位置検出装置は、
前記サーボモータの回転子に近接して該回転子の移動経路に沿って配置され、該回転子から生じる漏洩磁束を検知する複数のコイルと、ここで、前記複数のコイルの各々に対応して高透磁率磁性体が近接配置されており、該高透磁率磁性体においては前記回転子の回転位置に対応する関数特性で生じる前記漏洩磁束の変化に応じて磁気飽和が生ぜしめられ、各コイルにおいては、前記磁気飽和の変化特性に応じてインピーダンスが変化せしめられ、かつ、前記高透磁率磁性体は、近接した前記回転子の変位に伴って前記磁気飽和の変化特性が正弦関数的特性を示すように、前記回転子の変位方向に関して漸次変化する形状を有しており、更に、前記複数のコイルのうち第1及び第2のコイルは、前記回転子から生じる前記漏洩磁束の変化に対して互いに逆相となるように配置され、かつ、前記複数のコイルのうち第3及び第4のコイルも、前記回転子から生じる前記漏洩磁束の変化に対して互いに逆相となるように配置され、更に、前記第1及び第2のコイルの組と前記第3及び第4のコイルの組とが前記回転子から生じる前記漏洩磁束の変化に対して互いに所定位相だけずれるように配置されており、
前記各コイルを所定の基準交流信号で励磁し、該各コイルのインピーダンスに応じた出力信号を各コイルから生成すると共に、前記第1及び第2のコイルの出力信号を差動合成して第1の合成出力交流信号を生成し、かつ、前記第3及び第4のコイルの出力信号を差動合成して第2の合成出力交流信号を生成するセンサ回路と、
前記第1及び第2の合成出力交流信号に基づき、前記サーボモータの回転子の位置に対応するシフト量だけ前記基準交流信号に対して正及び負の一方向にシフトされた電気的位相角を持つ第1の電気的交流信号と、同じ前記検出対象位置に対応するシフト量だけ前記基準交流信号に対して正及び負の他方向にシフトされた電気的位相角を持つ第2の電気的交流信号とを生成する信号生成回路と、
前記基準交流信号の基準位相と前記第1の電気的交流信号の基準位相と前記第2の電気的交流信号の基準位相とに基づき、前記第1の電気的交流信号と前記第2の電気的交流信号の電気的位相差を示す位相出力信号を生成する位相出力回路と
を具備し、生成された位相出力信号を前記サーボモータの回転子の位置検出信号として出力することを特徴とするサーボモータ装置。
【請求項2】
前記位相出力回路は、前記第1の電気的交流信号と前記第2の電気的交流信号の位相差を示すPWM信号を,前記位相出力信号として、生成する請求項1に記載のサーボモータ装置。
【請求項3】
前記位相出力回路は、前記第1の電気的交流信号の基準位相のタイミングを始点とし、前記基準交流信号の基準位相のタイミングを経過した後の前記第2の電気的交流信号の基準位相のタイミングを終点として、該始点から終点までの時間間隔で前記第1の電気的交流信号と前記第2の電気的交流信号の電気的位相差を示す前記位相出力信号を生成する請求項1又は2に記載のサーボモータ装置。
【請求項4】
前記センサ回路は、外部から与えられる直流電源に基づき前記基準交流信号を生成する回路を含む請求項1乃至3のいずれかに記載のサーボモータ装置。
【請求項5】
前記サーボモータ及び前記回転位置検出装置を液密に収納するケーシングと、
前記ケーシングの内部に外部から空気圧を導入するために前記ケーシングに設けられた圧力ポート部と
を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のサーボモータ装置。
【請求項6】
前記サーボモータの出力軸に対して取り付けられる液密構造の減速機を更に備え、
前記ケーシングは、前記サーボモータ及び前記回転位置検出装置を液密に収納する空間の外側において、前記減速機を交換可能に収納し、
前記減速機の出力軸の周囲を液密にシールする第1のシール部材と、
前記第1のシール部材の内側寄りで前記減速機の出力軸の周囲を液密にシールする第2のシール部材と
を備え、前記第1のシール部材は、前記減速機の内部への外部からの液体の侵入を防止し、前記第2のシール部材は、前記減速機の内部の圧力を保持することを特徴とする請求項5に記載のサーボモータ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−10492(P2011−10492A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152671(P2009−152671)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(597156971)株式会社アミテック (20)
【出願人】(390014568)東芝プラントシステム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(597156971)株式会社アミテック (20)
【出願人】(390014568)東芝プラントシステム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】
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