説明

潤滑装置

【課題】内燃機関内と変速機ハウジング内とで潤滑油の流通を好適に行うことができる内燃機関及び変速機の潤滑機構を提供する。
【解決手段】内燃機関1内と変速機ハウジング11内とで潤滑油を共有できるように、第1潤滑油通路23及び第2潤滑油通路24を備えている。また、ブローバイガス通路13の途中に設けられたPCVケース17と変速機ハウジング11内とを接続するブリーザ通路33とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関と変速機とで潤滑油を共有する潤滑装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の燃費向上やドライバビリティ向上を目的として、車両全体の軽量化、コンパクト化するために、内燃機関と変速機とで、潤滑油を共有する潤滑装置が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の潤滑機構では、内燃機関内のオイルタンクと変速機ハウジング内のオイルタンクとの間に2つの潤滑油通路が設けられている。そのため、内燃機関内のオイルタンクにある潤滑油が変速機ハウジング内へと流通可能であり、さらに変速機ハウジング内にある潤滑油が内燃機関内のオイルタンクへと流通可能になっている。これにより、内燃機関と変速機とで、潤滑油が共有可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−132318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の潤滑装置では、内燃機関内と変速機ハウジング内とがいずれも密閉された空間であるため、それぞれの空間内の温度や運転状況により内圧が大きく異なる場合がある。二つの空間の内圧が大きく異なると、低圧側から高圧側への潤滑油の流通が困難となり、いずれか一方に潤滑油が偏る恐れがある。潤滑油の偏りが生じると、一方で、潤滑油が不足し、各部の潤滑及び冷却が不十分になり、他方では、潤滑油が過多となり、ギア等の回転により潤滑油が攪拌されることによる攪拌ロスの増大を招くという問題を生じる虞がある。そのため、内燃機関と変速機とで、潤滑油を共有する場合には、潤滑油の偏りが生じないように、この二つの空間の内圧の差が過度に大きくなることを抑制する必要がある。
【0006】
内燃機関内はポンピングロスの低減等のため、負圧になっている場合が多い。しかしながら、変速機ハウジング内の潤滑油の回収ポンプの容量が大きいときには、変速機ハウジング内が過度に負圧になるために、二つの空間の内圧の差が過度に大きくなることがある。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑み、内燃機関内と変速機ハウジング内とで潤滑油の流通を好適に行うことができる潤滑装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果を記載する。
上記課題を解決するため、本発明は、内燃機関内と変速機ハウジング内との間で潤滑油を循環させる潤滑装置であって、前記内燃機関内から前記変速機ハウジング内へ潤滑油を供給する第1潤滑油通路と、前記変速機ハウジング内から前記内燃機関内へ潤滑油を供給する第2潤滑油通路と、前記内燃機関内のブローバイガスを前記内燃機関の吸気通路に排出するブローバイガス通路と、前記変速機ハウジング内と前記ブローバイガス通路とを接続するブリーザ通路とを備えることを特徴とする変速機の潤滑機構を提供する。
【0009】
上記構成では、第1潤滑油通路と第2潤滑油通路により、内燃機関と変速機とで潤滑油が共有される。また、内燃機関内のブローバイガスを内燃機関の吸気通路へ排出し、負圧となっているブローバイガス通路と変速機ハウジング内とが、ブリーザ通路によって接続されている。そのため、変速機ハウジング内が過度に負圧になった場合には、ブローバイガス通路からブリーザ通路を介して空気及びブローバイガスが変速機ハウジング内に供給される。これにより、変速機ハウジング内を負圧に保ちつつ、過度に負圧になることを抑制することができるため、内燃機関内との内圧の差が過度に大きくならない。
【0010】
以上より、内燃機関内と変速機ハウジング内との内圧の差が過度に大きくなることを抑えて潤滑油の流通を好適に行うことが可能となる。
また、本発明は、上記構成に加えて、ブローバイガス通路の途中に、ブローバイガス中の潤滑油を分離する潤滑油分離手段を有したPCVケースをさらに備え、ブリーザ通路は、変速機ハウジング内とPCVケースとを接続することを特徴とする潤滑装置を提供する。
【0011】
上記構成によれば、内燃機関内の潤滑油がブローバイガスとともに、PCVケースに導入された場合でも、潤滑油分離手段によって潤滑油が分離され、ブリーザ通路内を介して変速機ハウジング内に供給される。従って、潤滑油分離手段によって分離された潤滑油を積極的にPCVケースから排出させることができる。
【0012】
また、本発明は、上記構成に加えて、内燃機関及び変速機へ潤滑油を送油する送油ポンプと、潤滑油による潤滑が行われる機構であって内燃機関の駆動トルクを送油ポンプに伝達するポンプ駆動機構と、ポンプ駆動機構を潤滑した潤滑油を回収してオイルタンクに送油する回収ポンプと、をさらに備え、回収ポンプは第2潤滑油通路内の潤滑油を回収することを特徴とする潤滑装置を提供する。
【0013】
一般に、内燃機関及び変速機へ潤滑油を送油する送油ポンプはその送油量がレギュレータよって制限されている。一方、ポンプ駆動機構を潤滑した潤滑油を回収してオイルタンクに送油する回収ポンプには上記レギュレータが設けられておらず、その送油量は送油ポンプに比して余力があることが多い。この点、上記構成によれば、変速機ハウジング内の潤滑油を内燃機関内へ供給する第2潤滑油通路が、ポンプ駆動機構の潤滑に用いられた潤滑油をオイルタンクに送油する回収ポンプ、すなわち送油量に余力のある上記回収ポンプへと接続されている。そのため、変速機ハウジング11内の潤滑油を回収するのに別途ポンプを設けることなく、内燃機関側のポンプを有効に活用して、変速機ハウジング内から内燃機関内への潤滑油の流通を促進させることができ、潤滑油の共有をより好適に行うことができる。
【0014】
また、本発明は、上記構成に加えて、変速機ハウジング内に潤滑油を貯留するオイル溜りを備え、第2潤滑油通路の変速機ハウジング側の開口部は、前記オイル溜りの底面より上方に設けられていることを特徴とする潤滑装置を提供する。
【0015】
上記構成によれば、変速機ハウジング内へ供給された潤滑油は、オイル溜りに貯留される。そして、オイル溜まりに貯留された潤滑油の容量がある程度増大してオイル溜まり内の油面が上記開口部に達すると、その開口部を超えて供給された潤滑油のみが第2潤滑油通路から内燃機関へと回収される。そのため、第2潤滑油通路は常に潤滑油で満たされるのではなく、間欠的に満たされるようになり、これにより回収ポンプの駆動負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかる潤滑装置が適用された変速機及び内燃機関の全体構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に、本発明にかかる潤滑装置が適用された変速機及び内燃機関の全体構成を示す。
内燃機関1は、シリンダヘッド6、シリンダブロック7、クランクケース8、ヘッドカバー9、及びフロントチェーンケース30、リアチェーンケース29を有している。またクランクケース8内には、クランクシャフト31が回転可能に支持されており、クランクシャフト31の回転は、クラッチハウジング10内に設けられた図示しないクラッチによって変速機ハウジング11内の変速機12へと伝達される。なお、内燃機関1内とは、シリンダヘッド6、シリンダブロック7、クランクケース8、ヘッドカバー9、フロントチェーンケース30、リアチェーンケース29によって形成された内部空間をいう。
【0018】
シリンダヘッド6には、空気を吸入するための吸気通路5が接続されている。吸気通路5には、吸気上流側から順に、吸気中の異物を取り除くエアクリーナ2、吸気脈動を吸収するためのサージタンク3、吸気量を調整するスロットルバルブ4が設けられている。なお、吸気上流側から順に、エアクリーナ2、スロットルバルブ4、サージタンク3を設けるようにしてもよい。またシリンダヘッド6には図示しない吸気バルブ、排気バルブや燃料噴射弁などが設けられている。
【0019】
ヘッドカバー9はシリンダヘッド6の上部を覆うように配設されている。またヘッドカバー9内には吸気バルブ、排気バルブを駆動するための図示しないカムシャフトが設けられている。
【0020】
シリンダブロック7は、シリンダヘッド6の下部に配設されている。シリンダブロック7の内部後端(変速機12側)には、後述するPCVケース17及びPCVバルブ16が設けられている。シリンダブロック7には図示しない気筒、ピストンなどが設けられており、これらとシリンダヘッド6が燃焼室を形成している。
【0021】
フロントチェーンケース30内には、クランクシャフト31の駆動トルクによって、図示しないエアコン用のコンプレッサ、オルタネータなどの補機類を駆動する補機駆動機構(例えばベルト機構やチェーン機構など)が設けられている。またクランクシャフト31の回転に合わせて、上記カムシャフトを回転させるタイミングチェーンも設けられている。
【0022】
リアチェーンケース29内には、潤滑油の吐出量を所定の量に制限するレギュレータを備えた送油ポンプ21、フロントチェーンケースオイル回収ポンプ28、クランクケースオイル回収ポンプ27、及びリアチェーンケースオイル回収ポンプ25を駆動するポンプ駆動機構50が設けられている。なお、リアチェーンケースオイル回収ポンプ25には、上記レギュレータは設けられておらず、潤滑油の吐出量はポンプの駆動量に応じて変化するようになっている。従って、リアチェーンケースオイル回収ポンプ25の送油能力は送油ポンプ21の送油能力も高くなっている。ポンプ駆動機構50は、例えばチェーン機構であり、リアチェーンケース29内においてポンプ駆動機構50には、内燃機関1内に送油された潤滑油の一部が供給されることにより、同ポンプ駆動機構50の潤滑が行われる。
【0023】
次に、内燃機関1内の掃気について説明する。内燃機関1内において混合気が燃焼されるとき、ピストン及び気筒の隙間からクランクケース8内に未燃燃料を含む、いわゆるブローバイガスが漏れ出ることがある。
【0024】
このブローバイガスを吸気通路5に排出して再び燃焼室で燃焼させるために、クランクケース8内と吸気通路5とを接続するブローバイガス通路13が設けられている。ブローバイガス通路13の途中には上述のPCVケース17が設けられている。PCVケース17は潤滑油分離手段を構成するラビリンス部18が設けられており、ブローバイガスと共にPCVケース17内に吸入された潤滑油をブローバイガスから分離することができる。またラビリンス部18の終端には、PCVケース17側から吸気通路5側にのみ開弁可能なワンウェイバルブであるPCVバルブ16が設けられており、吸気通路5の負圧を利用して吸気の逆流を防止しつつブローバイガスを同吸気通路5に排出することができるようになっている。
【0025】
さらに、このブローバイガスの排出によってクランクケース8内が過度に負圧にならないように、サージタンク3とヘッドカバー9内及びクランクケース8内を接続する掃気通路19が設けられている。特に、低負荷運転時など、スロットルバルブ4の開度が小さい場合には、PCVバルブ16の作用によってクランクケース8内に負圧が生じるため、掃気通路19から空気が供給されてヘッドカバー9及びクランクケース8内が掃気される。
【0026】
次に、内燃機関1及び変速機12の可動部の潤滑について説明する。本実施形態では、潤滑油の送油と回収にそれぞれ別のオイルポンプを有しており、いわゆるドライサンプ方式を採用した潤滑機構とされている。
【0027】
内燃機関1及び変速機12の可動部を潤滑するための潤滑油は、オイルタンク20に貯留されている。内燃機関1が始動すると、クランクシャフト31の駆動トルクによって送油ポンプ21が駆動される。送油ポンプ21の駆動によってオイルタンク20内の潤滑油は吸い上げられ、送油管22を通じて内燃機関1内の各部へと供給される。
【0028】
また、送油管22によって内燃機関1内へ供給された潤滑油の一部は、内燃機関1内と変速機ハウジング11内とを接続する第1潤滑油通路23を通じて変速機ハウジング11内へ供給される。変速機ハウジング11の底部にはオイル溜り32が形成されており、オイル溜り32内の潤滑油を変速機12が巻き上げることで潤滑油は霧状になり、変速機12の各部が潤滑される。
【0029】
さらに、変速機ハウジング11内から内燃機関1内へ潤滑油を供給する第2潤滑油通路24が設けられている。この第2潤滑油通路24の変速機ハウジング11側の開口部24aは、オイル溜り32の底面より上方に設けられており、オイル溜り32において規定量を超えた潤滑油は、第2潤滑油通路24を通じて内燃機関1内へ戻される。この第2潤滑油通路24は、リアチェーンケース29内のポンプ駆動機構50の潤滑に用いられた潤滑油を回収するためのリアチェーンケースオイル回収ポンプ25に接続されており、リアチェーンケースオイル回収ポンプ25に接続された回収管26を介してオイルタンク20へと回収される。また、クランクケースオイル回収ポンプ27及びフロントチェーンケースオイル回収ポンプ28も回収管26に接続されており、内燃機関1内の各部の潤滑に用いられた潤滑油も回収管26を介してオイルタンク20へと回収される。
【0030】
ドライサンプ方式では、内燃機関1の潤滑油が流れる通路、例えば上記回収管26などにブローバイガスも入り込むため、オイルタンク20の内部空間にはブローバイガスが存在する。そのため、オイルタンク20の内部とPCVケース17とを接続するオイルタンク用ブローバイガス通路14が設けられており、オイルタンク20内のブローバイガスをPCVケース17のラビリンス部18に導入できるようにしている。
【0031】
次に、変速機ハウジング11内が過度に負圧になることを抑えるための構造について説明する。変速機ハウジング11とPCVケース17とはブリーザ通路33で接続されている。より詳細には変速機ハウジング11の内部空間とPCVケース17の下部とが連通するように上記ブリーザ通路33は接続されている。そしてブリーザ通路33は、PCVケース17の底部近傍に、すなわちラビリンス部18の下方に接続されている。
【0032】
本実施形態では、リアチェーンケースオイル回収ポンプ25の送油能力が送油ポンプ21の送油能力も高くなっているため、変速機ハウジング11内の内圧が過度に低くなりやすい。内燃機関1内の内圧に対して、変速機ハウジング11内の内圧が過度に低い場合には、第2潤滑油通路24から内燃機関1内へ潤滑油が流通しにくくなる。この点、本実施形態では上記ブリーザ通路33を備えるようにしているため、内燃機関1内の内圧に対して変速機ハウジング11内の内圧が過度に低い場合には、PCVケース17からブリーザ通路33を介して変速機ハウジング11へ空気が流れるようになる。
【0033】
また、上述したように、PCVケース17は、PCVバルブ16、ブローバイガス通路13を介して吸気通路5へと接続されている。そのため、PCVケース17と変速機ハウジング11とをブリーザ通路33によって接続することにより、変速機ハウジング11内の内圧を負圧に保つこともできる。
【0034】
以上説明した本実施形態によれば、次の効果を得ることができる。
(1)内燃機関1内と変速機ハウジング11内とで潤滑油を共有できるように、第1潤滑油通路23及び第2潤滑油通路24を備えている。そして、ブローバイガス通路13の途中にあるPCVケース17と変速機ハウジング11内とを接続するブリーザ通路33を備えている。ここで、内燃機関1の内部空間は、一般には負圧になっており、PCVケース17内は負圧に保たれているため、変速機ハウジング11内も基本的には負圧になる。また、変速機ハウジング11の内部空間と連通されている回収ポンプ25により、変速機ハウジング11内が過度に負圧になった場合には、PCVケース17よりブリーザ通路33を介して、空気が供給される。そのため、変速機ハウジング11内が過度に負圧になることを抑制することができる。従って、内燃機関1内と変速機ハウジング11内との内圧の差が過度に大きくなることを抑えることができ、これにより内燃機関1と変速機ハウジング11との間で行われる潤滑油の流通を好適に行うことが可能となる。
【0035】
(2)ブリーザ通路33を介して変速機ハウジング11内にブローバイガスが入ることがある。この場合、このブローバイガスは第2潤滑油通路24や回収管26を介して潤滑油とともにオイルタンク20に導入され、同オイルタンク20内で潤滑油から分離された後にオイルタンク用ブローバイガス通路14を通じて吸気通路5へ排出される。従って、変速機ハウジング11内に入るブローバイガスを適切に処理することができる。
【0036】
また内燃機関1の燃焼室から漏れ出たブローバイガスとともに潤滑油が内燃機関の吸気通路5に導入されることがある。この点、本実施形態では、PCVケース17へブローバイガスと共に送られてきた潤滑油がブリーザ通路33を介して、変速機ハウジング11内へ排出されるようになっている。従って、潤滑油が吸気通路5に導入されることを抑えることができる。
【0037】
また、ブリーザ通路33がPCVケース17に、より詳細にはラビリンス部18の下方に接続されている。従って、ラビリンス部18でブローバイガスから分離されてPCVケース17の底面に集まった潤滑油は、第2潤滑油通路24を介して変速機ハウジング11へと流れるブローバイガスの流れによって、積極的にPCVケース17から排出されるようになる。
【0038】
(3)潤滑油の送油を行う送油ポンプ21を駆動するポンプ駆動機構50を内燃機関1の後方部(変速機12側)に有し、さらに、ポンプ駆動機構50の潤滑に用いられた潤滑油を回収するためのリアチェーンケースオイル回収ポンプ25を備えている。また、変速機ハウジング11内の潤滑油を内燃機関1内へ供給する第2潤滑油通路24が、リアチェーンケースオイル回収ポンプ25へ接続されている。
【0039】
内燃機関1及び変速機12へ潤滑油を送油する送油ポンプ21はその送油量がレギュレータにより制限されているため、他の潤滑油を送油する余力が少ない。一方、ポンプ駆動機構50を潤滑した潤滑油を回収してオイルタンク20に送油するリアチェーンケースオイル回収ポンプ25の送油量には上述したレギュレータが設けられておらず、その送油量には余力がある。そこで、本実施形態では、第2潤滑油通路24をリアチェーンケースオイル回収ポンプ25、すなわち送油量に余力のある同回収ポンプ25に接続するようにしている。そのため、変速機ハウジング11内の潤滑油を回収するポンプを別途設けることなく、内燃機関1側に設けられたポンプを有効に活用して、変速機ハウジング11内から内燃機関1内への潤滑油の流通を促進させることができ、潤滑油の共有をより好適に行うことができる。
【0040】
(4)変速機ハウジング11内へ供給された潤滑油は、オイル溜り32に貯留される。ここで、本実施形態では、第2潤滑油通路24の変速機ハウジング11側の開口部24aが、オイル溜まり32の底面、すなわち変速機ハウジング11の底面から離れた上方に設けられている。従って、オイル溜まり32に貯留された潤滑油の容量がある程度増大してオイル溜まり32内の油面が上記開口部24aに達すると、その開口部24aを超えて供給された潤滑油のみが第2潤滑油通路24内に流れ込む。そのため、第2潤滑油通路24は常に潤滑油で満たされるのではなく、間欠的に満たされるようになる。
【0041】
第2潤滑油通路24が常に潤滑油で満たされている場合には、リアチェーンケース29内のポンプ駆動機構50に供給された潤滑油と第2潤滑油通路24内の潤滑油とをリアチェーンケースオイル回収ポンプ25が常に回収しなければならないため、同回収ポンプ25の駆動負荷が増大して内燃機関1の燃費等に悪影響を与える。一方、第2潤滑油通路24が間欠的に潤滑油で満たされる場合、つまりオイル溜まり32内の油面が開口部24aよりも上になっているときには第2潤滑油通路24内が潤滑油で満たされ、オイル溜まり32内の油面が開口部24aよりも下になっているときには第2潤滑油通路24内に潤滑油が存在しない場合には、次の効果が得られる。すなわち第2潤滑油通路24内に潤滑油が存在しないときには、リアチェーンケースオイル回収ポンプ25はポンプ駆動機構50に供給された潤滑油のみを回収することになる。従って、ポンプ駆動機構50に供給された潤滑油と第2潤滑油通路24内の潤滑油とをリアチェーンケースオイル回収ポンプ25にて常に回収する場合と比較して、同回収ポンプ25の駆動負荷を周期的に低減させることができ、これにより同回収ポンプ25の駆動負荷を好適に低下させることができる。
【0042】
なお、以上説明した実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・PCVケース17がシリンダブロック7の後方部に設けられている例を示したが、PCVケース17の位置はこれに限られるものでない。例えばクランクケース8や、ヘッドカバー9等にPCVケースを設けるようにしてもよい。
【0043】
・第2潤滑油通路24をリアチェーンケースオイル回収ポンプ25に接続するようにしたが、他の潤滑油用ポンプに接続するようにしてもよい。また、ポンプに接続することなく、回収管26やオイルタンク20に直接接続するようにしてもよい。
【0044】
・潤滑油を回収ポンプによって回収する、いわゆるドライサンプ方式の潤滑装置に本発明を適用した例を示したが、潤滑方式はこれに限られるものでなく、潤滑油の自重によって潤滑油を回収する、いわゆるウェットサンプ方式を用いてもよい。なお、この変形例における内燃機関1内とは、ヘッドカバー9、シリンダヘッド6、シリンダブロック7、クランクケース8、フロントチェーンケース30、リアチェーンケース29、及びクランクケース下方に設けられるオイルパンで形成される内部空間をいう。そして、この変形例の場合には、第2潤滑油通路24を送油ポンプ21やオイルパンに接続してもよい。
【0045】
・第2潤滑油通路24の開口部24aをオイル溜まり32の底面に設けるようにしてもよい。この場合でも上記(1)〜(3)に記載の効果を得ることができる。
・本実施形態では、変速機ハウジング11の底部にてオイル溜り32が形成される例を示したが、別途、オイル溜りを設けてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…内燃機関、2…エアクリーナ、3…サージタンク、4…スロットルバルブ、5…吸気通路、6…シリンダヘッド、7…シリンダブロック、8…クランクケース、9…ヘッドカバー、10…クラッチハウジング、11…変速機ハウジング、12…変速機、13…ブローバイガス通路、14…オイルタンク用ブローバイガス通路、16…PCVバルブ、17…PCVケース、18…ラビリンス部、19…掃気通路、20…オイルタンク、21…送油ポンプ、22…送油管、23…第1潤滑油通路、24…第2潤滑油通路、24a…開口部、25…リアチェーンケースオイル回収ポンプ、26…回収管、27…クランクケースオイル回収ポンプ、28…フロントチェーンケースオイル回収ポンプ、29…リアチェーンケース、30…フロントチェーンケース、31…クランクシャフト、32…オイル溜り、33…ブリーザ通路、50…ポンプ駆動機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関内と変速機ハウジング内との間で潤滑油を循環させる潤滑装置であって、
前記内燃機関内から前記変速機ハウジング内へ潤滑油を供給する第1潤滑油通路と、
前記変速機ハウジング内から前記内燃機関内へ潤滑油を供給する第2潤滑油通路と、
前記内燃機関内のブローバイガスを前記内燃機関の吸気通路に排出するブローバイガス通路と、
前記変速機ハウジング内と前記ブローバイガス通路とを接続するブリーザ通路とを備えることを特徴とする潤滑装置。
【請求項2】
前記ブローバイガス通路の途中に、ブローバイガス中の潤滑油を分離する潤滑油分離手段を有したPCVケースをさらに備え、
前記ブリーザ通路は、前記変速機ハウジング内と前記PCVケースとを接続することを特徴とする請求項1に記載の潤滑装置。
【請求項3】
前記内燃機関及び前記変速機へ潤滑油を送油する送油ポンプと、
潤滑油による潤滑が行われる機構であって前記内燃機関の駆動トルクを前記送油ポンプに伝達するポンプ駆動機構と、
前記ポンプ駆動機構を潤滑した潤滑油を回収してオイルタンクに送油する回収ポンプと、をさらに備え、
前記回収ポンプは前記第2潤滑油通路内の潤滑油を回収することを特徴とする請求項1または2に記載の潤滑装置。
【請求項4】
前記変速機ハウジング内に潤滑油を貯留するオイル溜りを備え、
前記第2潤滑油通路の前記変速機ハウジング側の開口部は、前記オイル溜りの底面よりも上方に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の潤滑装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−36953(P2012−36953A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176806(P2010−176806)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】