説明

炎症性疾患、増殖性疾患および免疫介在性疾患の治療のためのTECファミリータンパク質キナーゼのインヒビターとして有用なピリド−2−オン

本発明は、化学式(I)の化合物又はそれらの薬学的に許容される塩について記載するものであり、式中、R及びRはそれぞれ独立して、H、ハロゲン、又は場合によりハロゲン、C1−2脂肪族化合物、OCH、NO、NH、CN、NHCH、SCH又はN(CH)で置換されるC1−4脂肪族化合物である。R及びRは本明細書に記載される通りである。これらの化合物はTecファミリー(例えば、Tec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)タンパク質キナーゼの阻害物質として有効である。これらの化合物及びそれらの薬学的に許容される組成物は、自己免疫性、炎症性、増殖性若しくは過増殖性疾患又は免疫介在性疾患を含むがこれらに限定されない種々の疾患、疾病又は病態を治療又は予防するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質キナーゼの阻害物質として有用な化合物に関する。本発明は又、本発明の化合物からなる薬学的に許容される組成物、及び種々の疾患の治療において組成物を使用する方法を提供する。本発明は又、本発明の化合物を調製するプロセス、及びこれらのプロセスにおいて有用な中間化合物を提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
近年新薬の研究は、疾患に伴う酵素及びその他の生体分子の構造の理解の深まりにより大きな進歩を遂げてきた。広範にわたる研究の対象となってきた重要な酵素の一つがタンパク質キナーゼである。
【0003】
タンパク質キナーゼは、細胞内での種々のシグナル伝達プロセスの制御を担う構造的に関連のある酵素の大きなファミリーである(非特許文献1を参照)。タンパク質キナーゼは共通の祖先の遺伝子からその構造及び触媒機能が保存されたまま進化してきたと考えられている。ほぼ全てのキナーゼは、類似する250〜300個のアミノ酸触媒ドメインを含む。キナーゼは、リン酸化する基質によって幾つかのファミリーに分類される場合がある(例えば、タンパク質−チロシン、タンパク質−セリン/トレオニン、脂質等)。一般的にこれらのキナーゼファミリーのそれぞれに対応する配列モチーフが同定されてきた(例えば、非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6)。
【0004】
一般的に、タンパク質キナーゼは、ホスホリル基をヌクレオシド三リン酸からシグナル伝達経路に関与するタンパク質受容体へ移動させることによって、細胞内のシグナル伝達を媒介する。これらのリン酸化は、標的となるタンパク質の生物学的機能を調整又は調節することができる分子のオンオフスイッチとして機能する。これらのリン酸化は、最終的には種々の細胞外及びその他の刺激に反応して開始される。こうした刺激の例としては、環境的及び化学的ストレスシグナル(例えば、浸透圧ショック、熱ショック、紫外線照射、細菌内毒素、及びH)、サイトカイン(例えば、インターロイキン−1(IL−1)及び腫瘍壊死因子α(TNF−α))、及び増殖因子(例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)及び線維芽細胞増殖因子(FGF))が含まれる。細胞外の刺激は、細胞の増殖、移動、分化、ホルモン分泌、転写因子の活性化、筋収縮、糖代謝、タンパク質合成の制御、及び細胞周期の調節に関連する、1つ以上の細胞反応に影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
多くの疾患は、前述のタンパク質キナーゼが媒介する事象によって開始する異常な細胞反応に起因する。これらの疾患には、自己免疫性疾患、炎症性疾患、骨疾患、代謝性疾患、神経学的及び神経変性疾患、癌、心血管疾患、アレルギー及び喘息、アルツハイマー病、及びホルモン関連疾患が含まれるが、これらに限定されない。したがって、治療薬として有効なタンパク質キナーゼ阻害物質を見つけるために、医化学分野では相当な努力が払われてきた。
【0006】
非受容体チロシンキナーゼのTecファミリーは、TCR、BCR及びFcε受容体といった抗原受容体を介するシグナル伝達において中心的な役割を果たしている(非特許文献7にて考察)。Tecファミリーキナーゼは、T細胞の活性化に不可欠である。Tecファミリーに属する3つのキナーゼ、Itk、Rlk及びTecは、T細胞における抗原受容体の結合の下流で活性化し、シグナルをPLC−γをはじめとする下流の効果器に伝達する。Itk欠損マウスでは、T細胞受容体(TCR)誘発性増殖及びサイトカインIL−2、IL−4、IL−5、IL−10及びIFN−γの分泌が減少した(Schaeffer,ら,Science 284;638−641 (1999);Fowell,ら,Immunity 11;399−409 (1999);Schaeffer,ら,Nature Immunology 2,12;1183−1188 (2001))。アレルギー性喘息の免疫学的症状は、Itk−/−マウスで緩和した。アレルゲンOVAを負荷した場合、肺の炎症、好酸球浸潤及び粘膜の産生はItk−/−マウスで劇的に減少した(Mueller,ら,Journal of Immunology 170: 5056−5063 (2003))。Itkは又、アトピー性皮膚炎にも関与している。この遺伝子は、中等度及び/又は重度のアトピー性皮膚炎を有する患者の末梢血中のT細胞で、対照群又は軽度のアトピー性皮膚炎患者よりも多く発現することが報告されている(Matsumoto,ら,International archives of Allergy and Immunology 129;327−340 (2002))。
【0007】
Rlk−/−マウスの脾細胞は、TCRの結合に反応して野生種が産生するIL−2の半量しか分泌しないが(Schaeffer,ら,Science 284;638−641 (1999))、Itk及びRlkが共に欠損しているマウスでは、サイトカインIL−2、IL−4、IL−5及びIFN−γの増殖及び産生をはじめとするTCR誘発性の反応が著明に阻害される(Schaeffer,ら,Nature Immunology 2,12;1183−1188 (2001);Schaeffer,ら,Science 284;638−641 (1999))。Itk/Rlk欠損T細胞ではTCR結合後の細胞内シグナル伝達が影響を受け、イノシトール三リン酸の産生、カルシウムの動員、MAPキナーゼの活性化、並びに転写因子NFAT及びAP−1の活性化が全て低減する(Schaeffer,ら,Science 284;638−641 (1999);Schaeffer,ら,Nature Immunology 2,12;1183−1188 (2001))。
【0008】
Tecファミリーキナーゼは又、B細胞の発生及び活性化にも不可欠である。Btkが突然変異している患者では、B細胞の発生が著しく阻害されるため、Bリンパ球及び形質細胞がほぼ完全に欠損し、Ig値がきわめて減少し、想起抗原に対する液性反応が著明に阻害される(Vihinen,ら,Frontiers in Bioscience 5: d917−928にて考察)。Btk欠損マウスでは又、末梢血B細胞の数が少なく、IgM及びIgG3値はきわめて低い。マウスにおけるBtk欠損は、抗IgMにより惹起されるB細胞の増殖に著明な作用をもたらし、胸線非依存性II型抗原に対する免疫反応を阻害する(Ellmeier,ら,J Exp Med 192: 1611−1623 (2000))。
【0009】
Tecキナーゼは又、高親和性IgE受容体(FcεRI)を介して肥満細胞の活性化にも役割を果たす。Itk及びBtkは肥満細胞内に発現し、FcεRIの架橋によって活性化される(Kawakami,ら,Journal of Immunology;3556−3562 (1995))。Btk欠損マウス肥満細胞は、FcεRIの架橋後、脱顆粒が低減し、催炎症性サイトカインの産生量を減少させる(Kawakami,ら,Journal of leukocyte biology 65: 286−290)。又、Btkの欠損により、マクロファージ効果器の機能も低減する(Mukhopadhyay,ら,Journal of Immunology;168,2914−2921 (2002))。
【非特許文献1】Hardie,G.およびHanks,S.,The Protein Kinase Facts Book,1995年,第I巻および第II巻,Academic Press,San Diego,CA
【非特許文献2】Hanks,S.K.,Hunter,T.,FASEB J.,1995年,第9巻,p.576−596
【非特許文献3】Knighton,ら,Science,1991年,第253巻,p.407−414
【非特許文献4】Hiles,ら,Cell,1992年,第70巻,p.419−429
【非特許文献5】Kunz,ら,Cell,1993年,第73巻,p.585−596
【非特許文献6】Garcia−Bustos,ら,EMBO J.,1994年,第13巻,p.2352−2361
【非特許文献7】Miller A,ら,Current Opinion in Immunology,2002年,第14巻,p.331−340
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、タンパク質キナーゼの阻害物質として有用な化合物の開発が強く求められている。特に、Tecファミリー(例えば、Tec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)タンパク質キナーゼは、それらの活性化が関与する疾患の大半に対して現在十分な治療が行われていないことから、その阻害物質として有用な化合物を開発することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明の化合物及びそれらの薬学的に許容される組成物は、タンパク質キナーゼの阻害物質として有効であることが明らかにされている。特定の実施形態において、これらの化合物はTecファミリー(例えば、Tec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)タンパク質キナーゼの阻害物質として有効である。これらの化合物は、本明細書に定義される化学式I又はその薬学的に許容される塩を有する。
【0012】
これらの化合物及びそれらの薬学的に許容される組成物は、自己免疫性、炎症性、増殖性若しくは過増殖性疾患又は免疫介在性疾患を含むがこれらに限定されない種々の疾患、疾病又は病態を治療又は予防するのに有用である。これらの組成物は又、トロンビン誘発性血小板凝集の予防方法にも有用である。本発明による化合物は又、生物学的及び病理学的現象におけるキナーゼの試験、当該キナーゼに媒介される細胞内シグナル伝達経路の試験、及び新しいキナーゼ阻害物質の包括的評価にも有用である。
【0013】
本発明は又、本発明の化合物の調製プロセス、及びこれらのプロセスに有用な中間化合物も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
本発明は、化学式Iの化合物
【0015】
【化17】

又はそれらの薬学的に許容される塩を記載するものであり、式中、R及びRはそれぞれ独立して、H、ハロゲン、又は場合によりハロゲン、C1−2脂肪族化合物、OCH、NO、NH、CN、NHCH、SCH又はN(CH)で置換されるC1−4脂肪族化合物である。Rは、窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する、3〜8員の飽和、部分不飽和又は完全不飽和の単環化合物、又は窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有する、8〜12員の飽和、部分不飽和又は完全不飽和の二環化合物であり;Rは場合によりJで置換され;
及びXはそれぞれ独立して−C(O)−、−NR−又は−SO−であって、X又はXの一方が−NR−であり、X又はXの他方が−C(O)−又は−SO−であり;
RはH、未置換C1−6脂肪族化合物であり;
は−T−Qであり;
Tは結合又はC1−6脂肪族化合物であり、ここで鎖の最高3個のメチレン単位は場合により独立してG又はG’で置き換えられ、ここでGは−NR−、−O−、−S−、−SO−、SO−、−CS−又は−CO−であり;G’はシクロプロピル、C≡C又はC=Cであり;Tは場合によりJで置換され;
Qは独立して水素、C1−6脂肪族、又は、窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する、3〜8員の飽和、部分不飽和若しくは完全不飽和の単環化合物、又は、窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有する、8〜12員の飽和、部分不飽和若しくは完全不飽和の二環化合物であって;Qは場合によりJで置換され;
は場合により置換されるR、C6−10アリール、C3−10脂環化合物、5〜14員ヘテロアリール、又は5〜14員ヘテロシクリルであり、2個のR基は、それらが結合する原子と一緒になって、場合により置換される3〜7員単環化合物又は8〜14員二環化合物を形成し;
その場合による置換基J、J及びJは本明細書に定義される。
【0016】
本発明の特定の実施形態は、
が4−ピリジル又は3−ピリジルであり、RがHであり、Xが−NR−であり、RがHであり、Xが−C(O)−である場合に;a)RはCH(CH)OC(=O)CH;CHOC(=O)CH;又はCHC(=O)CHではなく;b)RはC1−6アルキル又はO(C1−6アルキル)ではなく;
が4ピリジルであり、R及びRがHであり、Xが−NR−であり、RがHであり、Xが−C(O)−である場合、a)Tが結合である場合に、Qはメチル、イミダゾール、OCH又はHではなく;b)Tが−CH−である場合に、Qは3−OH−フェニル、4−OH−フェニル、4−ピリジル、3−NO−フェニル、OH、−O(C=O)CH又は−C(=O)CHではなく;c)Tが−CH(CH)−ある場合に、Qは−OC(=O)CHではなく;d)Tが−CHCH−である場合に、Qは2−ピリジル又は−COOHではなく;e)TがCH(CH)OC(=O)−である場合に、QはCHではなく;
が4−ピリジルであり、RがHであり、RがHではなく、Xが−NR−であり、RがHであり、Xが−C(O)−である場合、a)Tが結合である場合に、QはCHではなく;b)RはCH(CH)OC(=O)CHではなく;
が2,4−ピリミジルであり、R及びRがHであり、Xが−NR−であり、RがHであり、Xが−C(O)−である場合、a)Rはメチル、NHCH又は−NHC(=O)NHではなく;
が4−ピリジルであり、R及びRがHであり、Xが−NR−であり、RがHであり、Xが−SO−である場合、a)Tが結合である場合に、Qは場合により置換されるC6−10アリール又はC5−10ヘテロアリールではなく;
が4−チアゾリルであり、RがHであり、RがCHであり、Xが−C(O)−であり、Xが−NR−であり、RがHである場合、a)Tが−CHCH−である場合に、QはN(CHではなく;
が未置換フェニルであり、R及びRがHであり、Xが−NR−であり、RがHであり、Xが−C(O)−である場合、TがC脂肪族化合物であり、ここで該鎖の1個のメチレン単位がGで置き換えられ;Gが−NR−であり;RがHである場合に;Qは2,6−ジ−イソプロピルフェニルではなく;
が未置換フェニルであり、RがHであり、RがCHであり、Xが−C(O)−であり、Xが−NR−であり、RがHである場合、a)Tが結合である場合に、QはCH又はCHCHではなく;b)Tが−CHCH−である場合に、Qは未置換フェニル又はN(CHCHではなく;c)Tが−CHCHCH−である場合に、QはN(CHCHではなく;d)RはNHではなく;
が未置換フェニルであり、RがHであり、RがCHであり、Xが−NR−であり、RがHであり、Xが−C(O)−である場合、a)Tが−O−CH−である場合に、Qは未置換フェニルではなく;
が4−OCHフェニルであり、RがHであり、RがCHであり、Xが−NR−であり、RがHであり、Xが−C(O)−である場合、a)Tが結合である場合に、QはCHではなく;
が2個の窒素原子を有する6員ヘテロアリールであり;RがH、メチル又はエチルであり;Rがメチル又はエチルであり;Xが−NR−であり;RがHであり;Xが−C(O)−である場合、a)RはCHではなく;
が−C(O)−であり、Xが−NR−であり、RがHである場合、RはH又はメチルではなく;

【0017】
【化18】

であり、R及びRがHであり、Xが−NR−であり、RがHであり、Xが−C(O)−である場合、RはCHではなく;
が未置換フェニルであり、R及びRがHであり、Xが−C(O)−であり、Xが−NR−であり、RがHである場合、R
【0018】
【化19】

ではないことを前提とする。
【0019】
本発明の他の実施形態は、
が4−ピリジル、3−ピリジル又は
【0020】
【化20】

であり;RがHであり、Xが−NR−であり、RがHであり、Xが−C(O)−である場合;a)RはH、C1−6アルキル、O(C1−6アルキル)、CH(CH)OC(=O)CH又はイミダゾールではなく;b)Tが−CH−である場合に、Qは3−OH−フェニル、4−OH−フェニル、4−ピリジル、3−NO−フェニル、OH、OC(=O)CH又は−C(=O)CHではなく;c)Tが−CHCH−である場合に、Qは2−ピリジル又は−COOHではなく;
が2,4−ピリミジルであり、R及びRがHであり、Xが−NR−であり、RがHであり、Xが−C(O)−である場合、a)Rはメチル、NHCH又は−NHC(=O)NHではなく;
が4−ピリジルであり、R及びRがHであり、Xが−NR−であり、RがHであり、Xが−SO−である場合、a)Tが結合である場合に、Qは場合により置換されるC6−10アリール又はC5−10ヘテロアリールではなく;
が4−チアゾリルであり、RがHであり、RがCHであり、Xが−C(O)−であり、Xが−NR−であり、RがHである場合、a)Tが−CHCH−である場合に、QはN(CHではなく;
が場合により置換されるフェニルであり、RがHであり、Xが−NR−であり、RがHであり、Xが−C(O)−である場合、a)TがC脂肪族化合物であり、この場合鎖の1個のメチレン単位がGで置換され;Gが−NR−であり;RがHである場合に、Qは2,6−ジ−イソプロピルフェニルではなく;b)Tが−O−CH−である場合に、Qは未置換フェニルではなく;c)Tが結合である場合に、QはCHではなく;
が未置換フェニルであり、RがHであり、Xが−C(O)−であり、Xが−NR−であり、RがHである場合、a)Tが結合である場合に、QはCH又はCHCHではなく;b)Tが−CHCH−である場合に、Qは未置換フェニル又はN(CHCHではなく;c)Tが−CHCHCH−である場合に、QはN(CHCHではなく;d)RはNH又は
【0021】
【化21】

ではなく;
が2個の窒素原子を有する6員ヘテロアリールであり;RがH、メチル又はエチルであり;Rがメチル又はエチルであり;Xが−NR−であり、RがHであり、Xが−C(O)−である場合、RはCHではなく;
が−C(O)−であり、Xが−NR−であり、RがHである場合、RはH又はメチルではないことを前提とする。
【0022】
本発明の化合物には、一般的に上述の化合物が含まれ、本明細書に開示するクラス、サブクラス及び種類によって更に説明される。本明細書で使用される以下の定義は、特に言及がない限り、適用されるものとする。本発明において、化学元素は、Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics,75th Ed.に従って同定される。加えて、有機化学の一般的な原則は、Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito: 1999の“Organic Chemistry”及びSmith,M.B.and March,J.,John Wiley & Sons,New York: 2001編集の“March’s Advanced Organic Chemistry”,5th Ed.に記載されており、これらの全ての内容は参考として本明細書に盛り込まれている。
【0023】
本明細書に記載の通り、本発明の化合物は、上に概説した通り、或いは本発明の特定のクラス、サブクラス又は種類によって例示される通り、場合により1種以上の置換基で置換される場合がある。「場合により置換される」という表現は、「置換又は未置換」という表現と交換可能に使用されることに留意されたい。一般的に、「置換される」という用語は、「場合により」という用語が先行するか否かにかかわらず、所定の構造において水素基が特定の置換基で置き換えられることを指す。特に言及がない限り、場合により置換される基は、その基の置換可能な各位置に置換基を有する場合があり、所定の構造内の複数の位置が特定の群から選択される複数の置換基で置換される場合、置換基は全ての位置で同じである場合もあれば、異なる場合もある。本発明で想定する置換基の組み合わせは、好ましくは安定した又は化学的に実行可能な化合物を形成するものであるのがよい。本明細書で使用される「安定した」という用語は、本明細書に開示される一つ以上の目的のためにそれらの生成、検出、並びに好ましくはそれらの回収、精製及び使用を可能にする条件に付した際に、実質的に変化しない化合物を指す。一部の実施形態において、安定した化合物又は化学的に実行可能な化合物は、湿度又はその他の化学反応性の高い条件の非存在下で、40℃以下の温度に少なくとも1週間保存した場合でも化学構造が実質的に変化しない化合物である。
【0024】
「場合により割り込まれる」という用語は、アルキリデン鎖の中で1個の原子が別の原子と置換されることを指す。特に言及がない限り、この二つ目の原子は、末端の原子も含め、何れの位置においても一つ目の原子と置換されてよい。例えば、場合により−O−で割り込まれるC1−3アルキル鎖は、−OCHCH、−CH−OCH又はCHCHOHを形成することができる。特に言及がない限り、末端基は末端側で水素と結合する。
【0025】
本明細書で使用される「脂肪族」又は「脂肪族基」という用語は、完全に飽和しているか、1個以上の不飽和単位を含む、直鎖(即ち、無枝鎖)又は分岐鎖で、置換又は未置換の炭化水素鎖、又は完全に飽和しているか、1個以上の不飽和単位を含む、単環炭化水素又は二環炭化水素であるが、芳香族(本明細書では「炭素環化合物」、「脂環化合物」又は「シクロアルキル」とも呼ばれる)ではなく、残りの分子と1点で結合しているものを指す。特に言及がない限り、脂肪族基は1〜20個の脂肪族炭素原子を含む。一部の実施形態において、脂肪族基は1〜10個の脂肪族炭素原子を含む。他の実施形態において、脂肪族基は1〜8個の脂肪族炭素原子を含む。更に他の実施形態において、脂肪族基は1〜6個の脂肪族炭素原子を含み、尚更に他の実施形態において、脂肪族基は1〜4個の脂肪族炭素原子を含む。一部の実施形態において、「脂環化合物」(又は「単素環化合物」又は「シクロアルキル」)は、完全に飽和しているか、1個以上の不飽和単位を含む、単環C−C炭化水素又は二環C−C12炭化水素であるが、芳香族ではなく、残りの分子と1点で結合しており、前記二環系の個々の環が3〜7員環であるものを指す。好適な脂肪族基には、直鎖又は分岐鎖で、飽和又は不飽和のアルキル、アルケニル、アルキニル基及び(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキル又は(シクロアルキル)アルケニルといったその複合型が含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
本明細書に記載の環系は線状縮合環、架橋環又はスピロ環化合物となる場合があることに留意されたい。
【0027】
本明細書で使用される「ヘテロ脂肪族」という用語は、1個又は2個の炭素原子が独立して1個以上の酸素、硫黄、窒素、リン又は珪素で置換される脂肪族基を指す。ヘテロ脂肪族基は、置換又は未置換、分枝鎖又は非分枝鎖、環式又は非環式となる場合があり、これらには「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロ脂環」又は「ヘテロ環」基が含まれる。
【0028】
本明細書で使用される「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロ脂環」又は「ヘテロ環」という用語は、非芳香族であって、1個以上の環員が独立して選択されたヘテロ原子である、単環、二環又は三環系を指す。一部の実施形態において、「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロ脂環」又は「ヘテロ環」基は3〜14個の環員を有し、そのうち1個以上の環員が酸素、硫黄、窒素又はリンから独立して選択されたヘテロ原子であり、系の各環が3〜7個の環員を含む。
【0029】
「ヘテロ原子」という用語は、1個以上の酸素、硫黄、窒素、リン又は珪素(窒素、硫黄、リン又は珪素の任煮の酸化形態;任意の塩基性窒素の四級化形態;又はヘテロ環の置換可能な窒素、例えば(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリル中のような)N、(ピロリジニル中のような)NH又は(N置換ピロリジニル中のような)NRを含む)を意味する。
【0030】
本明細書で使用される「不飽和」という用語は、ある部分が1個以上の不飽和単位を有することを意味する。
【0031】
本明細書で使用される「アルコキシ」又は「チオアルキル」という用語は、先に定義した通り、酸素(「アルコキシ」)又は硫黄(「チオアルキル」)原子を介して主炭素鎖に結合するアルキル基を指す。
【0032】
「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」及び「ハロアルコキシ」という用語は、場合によって、1個以上のハロゲン原子で置換されるアルキル、アルケニル又はアルコキシを意味する。「ハロゲン」という用語は、F、Cl、Br又はIを意味する。
【0033】
単独で、又は「アラルキル」、「アラルコキシ」若しくは「アリールオキシアルキル」中のようなより大きな部分の一部として使用される「アリール」という用語は、合計5〜14個の環員を有し、少なくとも系中の1個の環が芳香族であり、系中の各環が3〜7個の環員を含む、単環、二環及び三環系を指す。「アリール」という用語は、「アリール環」という用語と交換可能に使用される場合がある。
【0034】
単独で、又は「ヘテロアラルキル」若しくは「ヘテロアリールアルコキシ」中のようなより大きな部分の一部として使用される「ヘテロアリール」という用語は、合計5〜14個の環員を有する単環、二環及び三環系を指し、ここで系中の少なくとも1個の環が芳香族であり、系中の少なくとも1個の環は1個以上のヘテロ原子を含み、系中の各環は3〜7個の環員を含む。「ヘテロアリール」という用語は、「ヘテロアリール環」又は「ヘテロ芳香族」という用語と交換可能に使用される場合がある。
【0035】
アリール(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキル等を含む)又はヘテロアリール(ヘテロアラルキル及びヘテロアリールアルコキシ等を含む)基は、1個以上の置換基を含む場合がある。アリール又はヘテロアリール基の不飽和炭素原子上の好適な置換基(例えば、J、J及びJ)は、ハロゲン;−R;場合によりRで置換されるC1−6アルキルであって、該鎖の最高3個のメチレン単位が場合により独立して、化学的に安定した配列において−NR−、−O−、−S−、−SO−、SO−又は−CO−で置き換えられるもの;−OCF;−SCF;C1−4ハロアルキル;−CH−ハロゲン;場合によりRで置換されるC6−10アリール;場合によりRで置換される5〜12員ヘテロアリール;場合によりRで置換される3〜12員複素環;場合によりRで置換される−O(Ph);場合によりRで置換される−CH=CH(Ph);場合によりRで置換される−CH≡CH(Ph);場合によりRで置換される−C1−6アルキル−(5〜12員複素環);場合によりRで置換される−C1−6アルキル−(C6−10アリール);場合によりRで置換される−C1−6アルキル−(5〜10員ヘテロアリール);場合によりRで置換されるC3−10脂環化合物、場合によりRで置換される−C1−6アルキル−(C3−10脂環化合物);場合によりRで置換される−(C1−6アルキル)−OR;場合によりRで置換される−(C1−6アルキル)−N(R;場合によりRで置換される−(C1−6アルキル)−SR;−NO;−CN;−OR;−SR;−N(R;−NRC(O)R;−NR−C(S)R;−NRC(O)N(R;−NRC(S)N(R;−NRCO;−NRNRC(O)R;−NRNRC(O)N(R;−NRNRCO;−C(O)C(O)R;−C(O)CHC(O)R;−CO;−C(O)R;−C(S)R;−C(O)N(R;−C(S)N(R;−OC(O)N(R;−OC(O)R;−C(O)N(OR)R;−C(NOR)R;−S(O);−S(O);−SON(R;−S(O)R;−NRSON(R;−NRSO;−N(OR)R;−C(=NH)−N(R;−P(O);−PO(R;−OPO(R;及び−(CH0−2NHC(O)Rから選択される。
【0036】
各Rは、水素、NH、NH(C1−4脂肪族化合物)、N(C1−4脂肪族化合物)、ハロゲン、OH、O(C1−4脂肪族化合物)、NO、CN、COH、CO(C1−4脂肪族化合物)、O(ハロC1−4脂肪族化合物)、ハロC1−4脂肪族化合物、場合により置換されるC1−6脂肪族化合物であって、そのうち最高2個のメチレン単位が場合によりO、N又はSで置換されるもの、場合により置換される5〜8員複素環、未置換5〜6員ヘテロアリール、未置換3〜6員脂環化合物、未置換フェニル、未置換−O(Ph)、未置換−CH(Ph)、未置換−CH(5〜7員複素環)、又は未置換−CH(5〜6員ヘテロアリール)から独立して選択されるか;或いは、上述の定義にかかわらず、2個の独立したRが同じ置換基又は異なる置換基上で発生した場合に、各R基が結合する原子と一緒になって、場合により置換される3〜12員の飽和、部分不飽和又は完全不飽和の、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有する、単環又は二環を形成する。
【0037】
の脂肪族基上の、又は2個のR基で形成される環上の任意の置換基は、NH、NH(C1−4脂肪族化合物)、N(C1−4脂肪族化合物)、ハロゲン、C1−4脂肪族化合物、OH、O(C1−4脂肪族化合物)、NO、CN、COH、CO(C1−4脂肪族化合物)、O(ハロC1−4脂肪族化合物)、及びハロC1−4脂肪族化合物(前記RのC1−4脂肪族基はそれぞれ未置換である)から選択される。
【0038】
脂肪族若しくはヘテロ脂肪族基、又は非芳香族の脂環は、1個以上の置換基を含む場合がある。脂肪族若しくはヘテロ脂肪族基、又は非芳香族の脂環の飽和炭素上の好適な置換基(例えば、J、J及びJ)は、アリール又はヘテロアリール基の不飽和炭素の上述の置換基から選択され、これらには追加として=O、=S、=NNHR、=NN(R、=NNHC(O)R、=NNHCO(アルキル)、=NNHSO(アルキル)、=NOH、及び=NRが含まれ、各Rは水素及び場合により置換されるC1−6脂肪族化合物から独立して選択される。Rの脂肪族基上の場合による置換基は、NH、NH(C1−4脂肪族化合物)、N(C1−4脂肪族化合物)、ハロゲン、C1−4脂肪族化合物、OH、O(C1−4脂肪族化合物)、NO、CN、COH、CO(C1−4脂肪族化合物)、O(ハロC1−4脂肪族化合物)及びハロ(C1−4脂肪族化合物)(前記RのC1−4脂肪族基はそれぞれ未置換である)から選択される。
【0039】
非芳香族の複素環の窒素上、又はヘテロアリール環の窒素上の任意の置換基(例えば、J、J及びJ)は、−R、−N(R、−C(O)R、−CO、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−SO、−SON(R、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(R、及び−NRSOから選択され;ここでRは水素、場合により置換されるC1−6脂肪族化合物、場合により置換されるフェニル、場合により置換される−O(Ph)、場合により置換される−CH(Ph);場合により置換される−(CH(Ph);場合により置換される−CH=CH(Ph);又は、酸素、窒素及び硫黄から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する未置換の5〜6員ヘテロアリール又は複素環から選択されるか、上述の定義にかかわらず、2個の独立したRが同じ置換基又は異なる置換基上で発生した場合に、各R基が結合する原子と一緒になって、5〜8員複素環、アリール環又はヘテロアリール環、又は窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員脂環を形成する。Rの脂肪族基又はフェニル環上の任意の置換基は、NH、NH(C1−4脂肪族化合物)、N(C1−4脂肪族化合物)、ハロゲン、C1−4脂肪族化合物、OH、O(C1−4脂肪族化合物)、NO、CN、COH、CO(C1−4脂肪族化合物)、O(ハロC1−4脂肪族化合物)、及びハロ(C1−4脂肪族化合物)(前記RのC1−4脂肪族基はそれぞれ未置換である)から選択される。
【0040】
「アルキリデン鎖」という用語は、完全に飽和しているか、又は1個以上の不飽和単位を有する場合があり、且つ残りの分子と2点で結合している、直鎖又は分枝鎖の炭素鎖を指し、1個以上のメチレン単位が、CO、CO、COCO、CONR、OCONR、NRNR、NRNRCO、NRCO、NRCO、NRCONR、SO、SO、NRSO、SONR、NRSONR、O、S又はNRを含むがこれらに限定されない基で場合により独立して置換される場合がある。
【0041】
上述の通り、一部の実施形態において、2個の独立したR(又はR若しくはは本明細書に同様に定義されるその他何れかの変数)が発生し、各変数が結合する原子と一緒になって、5〜8員複素環、アリール環又はヘテロアリール環、又は窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員シクロアルキル環が形成される。2個の独立して発生したR(又はR若しくは本明細書に同様に定義されるその他何れかの変数)が、各変数が結合する原子と一緒になって形成する代表的な環には:a)2個の独立して発生したR(又はR若しくは本明細書に同様に定義されるその他何れかの変数)が同じ原子に結合し、その原子と一緒になって環、例えばN(Rを形成し、そこで2個の発生したRが窒素原子と一緒になってピペリジン−1−イル、ピペラジン−1−イル又はモルフォリン−4−イル基を形成するもの;及び、b)2個の独立して発生したR(又はR若しくは本明細書に同様に定義されるその他何れかの変数)が異なる原子に結合し、これらの2個の原子と共に環、例えばフェニル基が2個の発生したOR
【0042】
【化22】

で置換され、これらの2個の発生したRが結合した2個の酸素原子と一緒になって、以下の環
【0043】
【化23】

を含む酸素6員縮合環を形成するものが含まれるが、これらに限定されない。2個の独立して発生するR(又はR若しくは本明細書に同様に定義されるその他何れかの変数)が、各変数が結合する原子と一緒になって、その他の種々の環を形成することができ、上述の例は限定を目的としたものではないことに留意されたい。
【0044】
特に言及がない限り、本明細書に図示する構造は又、例えば、各不斉中心のR及びS立体配置、(Z)及び(E)の二重結合異性体、並びに(Z)及び(E)の配座異性体をはじめとして、その構造の異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオマー及び幾何異性体(又は配座異性体))の全てを含むものとして意図される。このため、本発明の化合物の単一の立体化学的異性体、並びに鏡像異性体、ジアステレオマー及び幾何異性体(又は配座異性体)の混合物は、本発明の適用範囲に含まれる。特に言及がない限り、本発明の化合物の全互変異性型は、本発明の適用範囲に含まれる。加えて、特に言及がない限り、本明細書に図示する構造は又、1個以上の同位体標識原子の存在下においてのみ異なる化合物を含むものとしても意図される。例えば、本発明の構造を有するものの、水素がジュウテリウム又はトリチウムで置換されているもの、又は炭素が13C又は14Cで標識された炭素で置換されている化合物も、本発明の適用範囲に含まれる。こうした化合物は、分析ツール又は生物学的アッセイにおけるプローブとして有用である。
【0045】
特に言及がない限り、本明細書に図示する構造は又、N−オキシド誘導体又は化学式Iの化合物それぞれの薬学的に許容される塩を含むものとしても意図される。
【0046】
本発明の一実施形態において、Tは、0又は1個のG基で場合により割り込まれるC1−3脂肪族化合物であって、GはO、NR及びSから選択される。
【0047】
一部の実施形態において、Tは−C1−2脂肪族化合物−G−であって、GはO又はNRであり、Gは化学的に安定した配列においてQに結合する。他の実施形態において、Gは化学的に安定した配列においてXに結合する。更に他の実施形態において、Tは0個のG基で場合により割り込まれるC1−3脂肪族化合物である。
【0048】
一部の実施形態において、Tは、0又は1個のG’基で場合により割り込まれるC1−3脂肪族化合物である。他の実施形態において、Tは、0又は1個のG又はG’基で場合により割り込まれるC1−3脂肪族化合物である。
【0049】
一部の実施形態において、Tは−CH−であり、他の実施形態において、Tは結合である。
【0050】
本発明の一実施形態において、R及びRはそれぞれ独立してHである。一部の実施形態において、R及びRは何れもHである。
【0051】
一部の実施形態において、Rは、最高5個のJ基で場合により置換される5〜8員単環化合物である。特定の実施形態において、Rは、最高5個のJ基で場合により置換される5〜6員アリール又はヘテロアリールである。他の実施形態において、Rは、最高5個のJ基で場合により置換される5〜6員ヘテロアリールであり、好ましくは、Rは、1又は2個の窒素原子を有する6員ヘテロアリールであるのがよく、Rは最高5個のJ基で場合により置換される。
【0052】
一部の実施形態において、Rは、最高5個のJ基で場合により置換されるC3−8脂環化合物である。他の実施形態において、Rは、最高5個のJ基で場合により置換されるC3−8シクロアルキルである。特定の実施形態において、Rは、最高5個のJ基で場合により置換されるC3−8シクロアルケニルである。他の実施形態において、Rは、最高5個のJ基で場合により置換されるシクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル又はシクロヘプテニルである。
【0053】
一部の実施形態において、Rは、最高5個のJ基で場合により置換されるピリジン環である。一部の実施形態において、Rは、最高5個のJ基で場合により置換される2−ピリジニル、3−ピリジル又は4−ピリジルである。特定の実施形態において、Rは、最高5個のJ基で場合により置換されるピリミジン環である。一部の実施形態において、Rは2,4−ピリミジニルである。他の実施形態において、Rは、最高5個のJ基で場合により置換される5員ヘテロアリール環である。一部の実施形態において、Rは、最高5個のJ基で場合により置換されるチオフェン又はピラゾールである。更に他の実施形態において、Rは、最高5個のJ基で場合により置換されるフェニルである。
【0054】
は、一部の実施形態において最高5個のJ基で、他の実施形態において最高3個のJ基で、更に他の実施形態において0又は1個のJ基で、場合により置換される。
【0055】
本発明の一部の実施形態において、Jは、C1−6アルキル、C6−10アリール、−C1−6アルキル−C6−10アリール、C1−4ハロアルキル、−OR、−N(R、−SR、3〜12員複素環、−(C1−6アルキル)−OR、−(C1−6アルキル)−N(R、−(C1−6アルキル)−SR、−C(O)OR、−NRCOR、−COR、−CON(R、−SO、−SON(R、並びに、鎖の最高3個のメチレン単位が化学的に安定した配列において−NR−、−O−、−S−、−SO−、SO−又は−CO−で独立して置き換えられるC1−6アルキルから選択される。
【0056】
特定の実施形態において、Jはオキソ又は=NOHから選択される。
【0057】
他の実施形態において、Jは−OR、−N(R、−SR、NO、CN、−(C1−6アルキル)−OR、−(C1−6アルキル)−N(R、又は−(C1−6アルキル)−SRである。
【0058】
一部の実施形態において、各Jは、場合により置換される5〜8員複素環、場合により置換される−NR(C1−4アルキル)N(R、場合により置換される−NR(C1−4アルキル)OR、−N(R、又は場合により置換される−NH(5〜6員複素環)から独立して選択される。特定の実施形態において、Jは−NH(C1−4アルキル)N(Rであり;他の実施形態において−NH(C1−4アルキル)NHR又は−NH(C1−4アルキル)NHである。一部の実施形態において、Jは−NR(CHCH)N(Rであり;他の実施形態において、Jは−N(CH)CHCHN(Rである。
【0059】
他の実施形態において、各Jは、場合により置換される−NH(5〜6員複素環)から独立して選択される。
【0060】
特定の実施形態において、各Jは1〜2個の窒素原子を含む5〜6員複素環である。一部の実施形態において、5〜6員複素環は、ピロリジン、ピペリジン又はピペラジンから選択される。
【0061】
一部の実施形態において、Jは、Rで場合により独立して置換される。
【0062】
本発明の一実施形態において、X及びXはそれぞれ独立して−C(O)−又は−NR−であって、X又はXの一方が−NR−であり、X又はXの他方が−C(O)−である。
【0063】
一部の実施形態において、Xは−C(O)−であり、Xは−NR−である。
【0064】
他の実施形態において、Xは−NR−であり、Xは−C(O)−である。
【0065】
本発明の一実施形態において、Qは、窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する、3〜8員の飽和、部分不飽和若しくは完全不飽和の単環であるか、或いは窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有する、8〜12員の飽和、部分不飽和若しくは完全不飽和の二環である。
【0066】
特定の実施形態において、Qは、C6−10アリール、C3−10脂環化合物、5〜14員ヘテロアリール、又は5〜14員複素環である。他の実施形態において、Qは、C6−10アリール又は5〜14員ヘテロアリールである。更に他の実施形態において、Qは5〜6員アリール又はヘテロアリールである。一部の実施形態において、Qは5〜8員複素環であり;特定の実施形態において、Qは5〜6員複素環であり;特定の実施形態において、Qはフェニルである。
【0067】
本発明の一部の実施形態において、Qは、最高5個のJ基で置換され、JはCN、C1−6アルキル、C6−10アリール、−C1−6アルキル−C6−10アリール、C1−4ハロアルキル、−OR、−N(R、−SR、−(C1−6アルキル)−OR、−(C1−6アルキル)−N(R、−(C1−6アルキル)−SR、−C1−6アルキル−(C3−10複素環)、−C(O)OR、−NRCOR、−COR、−CON(R、−SO、−SON(R、又は、最高3個のメチレン単位が化学的に安定した配列において−NR−、−O−、−S−、−SO−、SO−又は−CO−で場合により独立して置き換えられるC1−6アルキルである。
【0068】
一部の実施形態において、Jは、C1−6アルキル、CN、C1−4ハロアルキル、−OR、−N(R、−SR、−(C1−6アルキル)−OR、−(C1−6アルキル)−N(R、−(C1−6アルキル)−SR、C6−10アリール、−C1−6アルキル−C6−10アリール、C3−10脂環化合物、−C1−6アルキル−(C3−10脂環化合物)、C3−10複素環、−C1−6アルキル−(C3−10複素環)、−C(O)OR、−NRCOR、−COR、−CON(R、−SO、−SON(R、又は、C1−6アルキルから選択され、最高3個のメチレン単位が化学的に安定した配列において−NR−、−O−、−S−、−SO−、SO−、−CO−、シクロプロピル、C≡C又はC=Cで場合により独立して置換され;各Jは場合により独立してRで置換される。
【0069】
一部の実施形態において、Jは、−SON(R、−SO、−NRC(O)OR、−C≡C−R、−C=C−R、フェニル、−O−Ph、−O−CHPh、C5−6ヘテロアリール、C3−7複素環、又はC3−7脂環化合物である。
【0070】
特定の実施形態において、Jは、CN、C1−6アルキル、−CF、−OCF、−OR、−N(R、−SR、−CH−ハロゲン、−SCF、−(C1−6アルキル)−N(R、Cアリール、C5−6ヘテロアリール、−C(O)OR、−NRCOR、−COR、又は−CON(Rである。
【0071】
は、一部の実施形態において最高5個のJ基で、他の実施形態において最高3個のJ基で、更に他の実施形態において0又は1個のJ基で、場合により置換される。
【0072】
一部の実施形態において、Rは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、sec−ブチル、n−ブチル、t−ブチル、OH、ハロゲン、−CH−ピロリジン、COCH、−(C1−4アルキル)0−1−O(C1−4アルキル)、−(C1−4アルキル)0−1−O(C1−4アルキル)OH、−(C1−4アルキル)0−1−O(C1−4アルキル)OH、−(C1−4アルキル)0−1−NH(C1−4アルキル)、−(C1−4アルキル)0−1−N(C1−4アルキル)、又は−(C1−4アルキル)0−1−NHから選択される。
【0073】
一部の実施形態において、変数は表1の化合物に示されている。
【0074】
よって、化学式Iの化合物の代表例を表1に示す。
【0075】
【化24】

【0076】
【化25】

【0077】
【化26】

【0078】
【化27】

【0079】
【化28】

【0080】
【化29】

【0081】
【化30】

【0082】
【化31】

【0083】
【化32】

【0084】
【化33】

【0085】
【化34】

【0086】
【化35】

【0087】
【化36】

【0088】
【化37】

【0089】
【化38】

【0090】
【化39】

【0091】
【化40】

【0092】
【化41】

【0093】
【化42】

【0094】
【化43】

【0095】
【化44】

【0096】
【化45】

【0097】
【化46】

本発明の化合物は一般的に、以下の一般的なスキーム及び以下の予備的な例で説明するように、類似の化合物用の当業界で既知の方法で調製される場合がある。
【0098】
(スキームI)
【0099】
【化47】

試薬及び条件:(a)ピリジン、RT、16時間。
【0100】
上のスキームIは、Rが本明細書に記載される通りである場合に、本発明の化合物3aを調製するために使用される一般的な合成経路を示す。化学式3aの化合物は、スキームIの手順(a)に従って、ピリジン中の塩酸とアムリノン1とを反応させることにより調製される場合がある。この反応は種々の塩酸によって行うことができる。
【0101】
I−1からI−67まで、及びI−82からI−85までの化合物を、スキームIに記載の一般的な方法に従って調製した。
【0102】
(スキームII)
【0103】
【化48】

試薬及び条件:(a)NMP、xs(RNH、160℃、2時間、マイクロ波。
【0104】
上のスキームIIは、Rが本明細書に記載される通りである場合に、本発明の化合物3bを調製するために使用される一般的な合成経路を示す。化学式3bの化合物は、スキームIIの手順(a)に従って、NMP中の過剰なアミンとI−20とを反応させることにより調製される場合がある。この反応は種々のアミンによって行うことができる。
【0105】
I−68からI−81までの化合物を、スキームIIに記載の一般的な方法に従って調製した。
【0106】
(スキームIII)
【0107】
【化49】

試薬及び条件:(a)MeI、AgCO、CHCl、RT、48時間;(b)ビス(ピナコラト)ジボロン、Pd(Oac)、KOAc、DMF、85℃、3時間;(c)R−Hal、Pd(Pph、aq.NaCO、トルエン、EtOH、還流、4時間。
【0108】
上のスキームIIIは、Rが本明細書に記載される通りである場合に、本発明の化合物7を調製するために使用される一般的な合成経路を示す。Warner,,ら,J.Med.Chem.1994,37,3090にて記載される方法によって調製される場合がある出発原料4を、スキームIIの手順(a)に従ってメチル化する。化学式6の化合物は、触媒としてのパラジウムの存在下でビス(ピナコラト)ジボロンとヨウ化物5を反応させることによって生成する。誘導体7の生成は、当業界で既知のSuzuki結合法を使用して、触媒としてのパラジウムの存在下でハロゲン化物R−Halでホウ素エステル誘導体6を処理することにより達成される。この反応は種々の置換ハロゲン化物R−Halによって行うことができる。
【0109】
(スキームIV)
【0110】
【化50】

試薬及び条件:(a)aq.Hcl、1,4−ジオキサン、還流、30分間;(b)H、10%Pd/C、MeOH、EtOAc、2時間;(c)ピリジン、RT、16時間。
【0111】
上のスキームIVは、R及びRが本明細書に記載される通りである場合に、本発明の化合物10を調製するために使用される一般的な合成経路を示す。7を酸性条件下で脱メチル化することにより、8が生成され、それを手順(b)に従って脱保護する。最後に、化学式10の化合物は、ピリジン中の塩酸2と誘導体9を反応させることにより調製される場合がある。この反応は種々の塩酸2によって行うことができる。
【0112】
(スキームV)
【0113】
【化51】

試薬及び条件:(a)H、10% Pd/C、MeOH、EtOAc、2時間;(b)ピリジン、RT、16時間;(c)aq.Hcl、1,4−ジオキサン、還流、30分間。
【0114】
上のスキームVは、R及びRが本明細書に記載される通りである場合に、本発明の化合物10を調製するために使用される別の一般的な合成経路を示す。アミン7の脱保護によって得られた中間生成物11を、ピリジン中の塩酸2と反応させる。この反応は種々の塩酸2によって行うことができる。中間生成物12を酸性培地で脱メチル化して、ピリドン10を得る。
【0115】
(スキームVI)
【0116】
【化52】

試薬及び条件:(a)H、Pd(OH)/C、MeOH、RT、5時間;(b)EtN、DCM、RT、10分間;(c)R−Hal、Pd(Pph、aq.NaCO、トルエン、EtOH、還流、4時間、(d)aq.Hcl、1,4−ジオキサン、還流、30分間。
【0117】
上のスキームVIは、R及びRが本明細書に記載される通りである場合に、本発明の化合物10を調製するために使用される別の一般的な合成経路を示す。アミン6の脱保護によって得られた中間生成物13を、塩酸2と反応させて、化学式14の化合物を生成する。この反応は種々の塩酸2によって行うことができる。誘導体12の生成は、当業界で既知のSuzuki結合法を使用して、触媒としてのパラジウムの存在下でハロゲン化物R−Halでホウ素エステル誘導体14を処理することによって達成される。この反応は種々の置換ハロゲン化物R−Halによって行うことができる。中間生成物12を酸性培地で脱メチル化して、ピリドン10を得る。
【0118】
(スキームVII)
【0119】
【化53】

試薬及び条件:(a)(a)NMP、xs(RNH、160℃、2時間、マイクロ波。
【0120】
上のスキームVIIは、R及びRが本明細書に記載される通りである場合に、本発明の化合物16を調製するために使用される一般的な合成経路を示す。化学式16の化合物は、スキームVIIの手順(a)に従って、NMP中の過剰なアミンと15とを反応させることにより調製される場合がある。この反応は種々のアミンによって行うことができる。
【0121】
II−1からII−182までの化合物を、スキームIII、IV、V、VI及びVIIに記載の一般的な方法で調製した。
【0122】
(スキームVIII)
【0123】
【化54】

試薬及び条件:(a)HOBt、DMAP、EDC、THF、RT、16時間。
【0124】
上のスキームVIIIは、R、R及びRが本明細書に記載される通りである場合に、本発明の化合物19を調製するために使用される一般的な合成経路を示す。出発原料17は、Church,ら,J.Org.Chem.1995,60,3750による文献に記載の方法と実質的に似た方法により調製される場合がある。スキームVIIIの手順(a)に従って、化学式19の化合物を調製する。
【0125】
III−1からIII−54までの化合物を、スキームVIIIに記載の一般的な方法に従って調製した。
【0126】
(スキームIX)
【0127】
【化55】

試薬及び条件:(a)ピリジン、0℃、2時間。
【0128】
上のスキームIXは、R及びRが本明細書に記載される通りである場合に、本発明の化合物21を調製するために使用される一般的な合成経路を示す。化学式21の化合物は、誘導体9をピリジン中の塩化スルホニル20と反応させることにより調製される場合がある。この反応は種々の塩化スルホニル20によって行うことができる。
【0129】
化合物IV−1を、スキームIXに記載の一般的な方法に従って調製した。
【0130】
本発明は又、本発明の化合物を合成するために中間生成物として使用できる化合物も提供する。加えて、本発明は、本発明の化合物を調整するためにこれらの中間化合物を使用するプロセスも提供する。
【0131】
具体的に、化合物22は、化合物23を調製するプロセスにおいて中間化合物として使用することができる。化合物23はその後、化学式Iの化合物にすることができる。
【0132】
(スキームX)
【0133】
【化56】

式中:
10はアミノ保護基であり;
11はH又はC1−6アルキルであるか、R10及びR11は結合した窒素原子と一緒になってアミン保護基を形成し;
12はヒドロキシル保護基であり;
は本明細書に定義される通りである。
【0134】
一実施形態において、化合物22は、Rからなる適切な化合物と適切な反応条件下で反応して、化合物23を形成する。Rからなる適切な化合物の例としては、R−Xがあり、式中Xはハロ基のような適切な脱離基となる。適切な反応条件は、ホウ素エステル(又はボロン酸)とR−Xの間に結合が形成されるような結合条件である。適切な脱離基及び適切な結合条件は、当業者に既知である(例えば、March,前掲を参照)。
【0135】
化合物23は、例えばSuzuki結合法のような当業界で既知の結合法を使用して、触媒としてのパラジウムの存在下でハロゲン化物R−Halでホウ素エステル誘導体22を処理することにより調製される場合がある。
【0136】
スキームXIは、本発明の方法においてSuzuki結合条件を使用する例を示したものである。スキームXIでは、R10はCbz基であり、R11は水素であり、R12はメチル基である。但し、スキームXIに示す反応では、化合物6の代わりに化合物22を、化合物7の代わりに化合物23を使用できることに留意されたい。
【0137】
(スキームXI)
【0138】
【化57】

(a)R−Hal、Pd(Pph、aq.NaCO、トルエン、EtOH、還流。
【0139】
化合物23は又、23を得るための当業界で既知の結合法を使用して(Chernick,ら,J.Org.Chem.2005,1486を参照)、環中の窒素原子を触媒としての銅の存在下で反応させることによって、飽和、部分不飽和又は完全不飽和の単環又は二環(Rの定義で記述の通り)を含む窒素でホウ素エステル誘導体22を処理することにより調製される場合もある(この場合、Rは3〜8員の飽和、部分不飽和又は完全不飽和で、少なくとも1個の窒素へテロ原子を有する単環、又は8〜12員の飽和、部分不飽和又は完全不飽和で、少なくとも1個の窒素へテロ原子を有する二環系であり、Rは場合によりJで置換される)。スキームXIIは、本発明の方法において、銅を介する結合条件の例を示すものである。スキームXIIでは、R10はCbz基であり、R11は水素であり、R12はメチル基である。但し、スキームXIIに示す反応では、化合物6の代わりに化合物22を、化合物7の代わりに化合物23を使用できることに留意されたい。
【0140】
(スキームXII)
【0141】
【化58】

(a)Cu(OAc)、EtN、O、CHCl、保持時間、20時間。
【0142】
本発明の一プロセスにおいて、化合物23(及び化合物7のような関連化合物)は、本発明に開示される方法を含むがこれらに限定されない当業者に既知の方法によって、化学式Iの化合物に変換される。特定の実施形態において、化合物23のヒドロキシル保護基を除去した後、アミノ保護基を除去する。結果として得られるアミンを適切なR含有中間生成物と反応させて、化学式Iの化合物を得る。この実施形態の具体例については、スキームIV及びスキームIXを参照のこと。スキームIVでは、R10はCbz基であり、R11は水素であり、R12はメチル基である。但し、スキームIVに示す反応では、化合物7の代わりに化合物23を使用できることに留意されたい。
【0143】
別の実施形態において、化合物23のアミノ保護基を除去し、得られたアミンを適切なR含有中間生成物と反応させて、化合物Xを得る。化学式Iの化合物は、化合物Xからヒドロキシル保護基を除去することによって得られる。この実施形態の具体例については、スキームVを参照のこと。スキームVでは、R10はCbz基であり、R11は水素であり、R12はメチル基である。但し、スキームVに示す反応では、化合物11の代わりに化合物Xを、化合物12の代わりに化合物XXを使用できることに留意されたい。
【0144】
【化59】

が−NR−である実施形態において、アミノ保護基R11はR−X−基である場合がある。こうした実施形態で認知されている通り、アミノ保護基を除去して、これをR含有基と置き換える必要はない。このため、化学式Iの化合物を得るには、ヒドロキシル保護基を除去する上で好適な条件下で化合物23を反応させる(それによって化学式Iの化合物を得る)。RC(=O)−基がホウ素エステル形成に適合しない実施形態において、ホウ素エステルは、CbzであるR10で形成することができ、ホウ素エステルの形成後にCbz基をR含有基と置き換えることができる。この実施形態の具体例については、スキームVIを参照のこと。スキームVIでは、(化合物14中の)R10はRC(=O)−であり、R11は水素であり、R12はメチル基である。但し、スキームVIに示す反応では、化合物6の代わりに化合物22を使用できることに留意されたい。
【0145】
或いは、23中のR10はR−X−に変換される場合がある。即ち、R10中の官能基を所望のR含有基に変換することができる。その後、ヒドロキシル保護基を除去して、化学式Iの化合物を得る。この実施形態の具体例については、スキームII及びスキームVIIを参照のこと。
【0146】
化合物22は、本明細書に開示される方法を含むがこれらに限定されない、当業者に既知の方法により調製される場合がある。一実施形態において、ヨード化合物24は、諸条件下で反応させて、ホウ素エステル22を形成する(スキームXIII)。こうした条件の具体例については、スキームIIIを参照のこと。スキームIIIでは、R10はCbz基であり、R11は水素であり、R12はメチル基である。但し、スキームXIIに示す反応では、化合物6の代わりに化合物22を、化合物7の代わりに化合物23を使用できることに留意されたい。
【0147】
(スキームXIII)
【0148】
【化60】

本発明の一プロセスにおいてホウ素エステル22を使用する代わりに、対応するボロン酸を使用できることに留意されたい(スキームXIV)。ボロン酸は、出発原料として使用することもできれば、in situで生成することもできる。化合物25は、ホウ素エステル22からボロン酸25への変換を含むがこれに限定されない既知の方法により調製される場合がある。
【0149】
(スキームXIV)
【0150】
【化61】

保護基は、ホウ素エステル又はボロン酸からR基へ変換するための諸条件で反応することから、アミノ及びヒドロキシル官能基を保護する。多くのアミノ保護基及びヒドロキシル保護基は、当業者において既知である。こうした保護基の例は、T.W.Greene and P.G.M.Wutz,“Protective Groups in Organic Synthesis”,3rd Edition,John Wiley & Sons,Inc.(1999)及び本書籍の以前の版、並びにJ.W.F.McOmie,“Protective Groups in Organic Synthesis”,Plenum Press (1973)に記載される。
【0151】
特定の実施形態において、R0は−C(O)R13又は−C(O)OR13であり、式中R13は:
未置換C1−6アルキル、
−C10アリールで置換されるC1−6アルキル、又は
−C10アリールであり、この場合各C−C10アリールは場合によりハロ、−CN、−NO、−N(R14、未置換C1−6アルキル、又は−CFで置換され;
14はH又は未置換C1−6アルキルである。
【0152】
好ましくは、R10はCbz(カルボベンジルオキシ)又はBoc(t−ブトキシカルボニル)である。
【0153】
特定の実施形態において、R11は水素である。
【0154】
特定の実施形態において、R12はC1−6アルキルである。好ましくは、R12はメチル又はエチルである。
【0155】
好ましい実施形態において、R10はCbz(カルボベンジルオキシ)又はBoc(t−ブトキシカルボニル)であり;R11は水素であり;R12はメチルである。
【0156】
特定の代表的な実施形態を上記及び本明細書に図示し説明しているが、本発明の化合物は上に概説する方法に従い、適切な出発原料を使用して、当業者が一般的に利用可能な方法で調製できることに留意されたい。
【0157】
本明細書に開示する通り、本発明はタンパク質キナーゼの阻害物質となる化合物を提供し、そのため、本発明の化合物は、自己免疫性、炎症性、増殖性若しくは過増殖性疾患又は免疫介在性疾患を含むがこれらに限定されない種々の疾患、疾病又は病態を治療するのに有用である。したがって、本発明の別の態様において、薬学的に許容される組成物が提供され、これらの組成物は本明細書に記載の化合物の何れかからなり、場合により薬学的に許容される担体、アジュバンド又はビヒクルからなる。特定の実施形態において、これらの組成物は、場合により更に1個以上の追加の治療薬からなる。こうした追加の治療薬には、自己免疫性、炎症性、増殖性、過増殖性疾患、又は移植臓器若しくは組織の拒絶反応又は後天性免疫不全症候群(AIDS)をはじめとする免疫介在性疾患の治療薬が含まれるが、これらに限定されない。
【0158】
又、本発明の特定の化合物は治療に際して自由な形態で、又は適切な場合にはその薬学的に許容される誘導体として存在することができることにも留意されたい。本発明によれば、薬学的に許容される誘導体には、薬学的に許容される塩、エステル、こうしたエステルの塩、又は、患者への投与の必要時に、本明細書に別途記載される化合物又はその代謝物若しくは残留物を直接又は間接的に提供することのできるその他何れかの付加物又は誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0159】
本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」という用語は、正しい医学的判断の範囲内において、ヒト及び下等動物の組織と接触した場合に、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等を伴わずに好適に使用することができ、妥当な利益リスク比で釣り合いの取れる塩を指す。「薬学的に許容される塩」とは、本発明の化合物の非毒性の塩又はエステルの塩であって、レシピエントへの投与時に、本発明の化合物又はその阻害活性を有する代謝物又は残留物を直接又は間接的に提供することのできるものを意味する。本明細書で使用される「その阻害活性を有する代謝物又は残留物」という用語は、その代謝物又は残留物もTecファミリー(例えば、Tec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)のタンパク質キナーゼの阻害物質であることを意味する。
【0160】
薬学的に許容される塩は、当業界で既知である。例えば、S.M.Berge等は、薬学的に許容される塩の詳細を、本明細書にも参考として盛り込まれるJ.Pharmaceutical Sciences,1977,66,1−19に詳述している。本発明の化合物の薬学的に許容される塩には、好適な無機酸及び有機酸及び塩基から誘導される塩が含まれる。薬学的に許容可能で、非毒性である酸添加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及び過塩素酸といった無機酸、又は酢酸、蓚酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸又はマロン酸といった有機酸により形成されるか、或いは当業界で使用されるイオン交換等のその他の方法を使用して形成されるアミノ基の塩がある。その他の薬学的に許容される塩には、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、カンフル酸塩、カンホスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、硫酸ドデシル、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、蓚酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチニン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等がある。適切な塩基に由来する塩には、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩及びN(C1−4アルキル)塩がある。本発明は又、本明細書に開示される化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化も想定している。こうした四級化によって水溶性又は脂溶性又は分散性の生成物が得られる。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等が含まれる。更に薬学的に許容される塩には、適切な場合、非毒性のアンモニウム、四級アンモニウム、並びに、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低アルキルスルホン酸塩及びアリールスルホン酸塩のような対イオンを使用して形成されるアミン陽イオンが含まれる。
【0161】
上述の通り、本発明の薬学的に許容される組成物は、追加として、薬学的に許容される担体、アジュバンド又はビヒクルからなり、これらには、本明細書で使用される通り、所望の特別な剤型に合わせた全ての溶媒、希釈剤又は他の液状ビヒクル、分散剤又は懸濁剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤又は乳化剤、保存剤、固体結合剤、潤滑剤等が含まれる。Remington’s Pharmaceutical Sciences,Sixteen Edition,E.W.Martin (Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)には、薬学的に許容される組成物の処方に使用される種々の担体及びその調製のための既知の技法が開示されている。従来の担体媒体が、例えば何らかの望ましくない生物学的作用を生成するか、又は別様に薬学的に許容される組成物のその他何れかの成分と有害に相互作用する等により、本発明の化合物に適合しない場合を除き、該媒体の使用は、本発明の適用範囲に含まれることが想定される。薬学的に許容される担体として機能できる物質の一部の例としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、例えばヒト血清アルブミン等の血清タンパク質、例えばリン酸塩等の緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ロウ、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、羊毛脂等の植物飽和脂肪酸、水、塩又は電解質の部分グリセリド混合物、乳糖、グルコース及びスクロース等の糖;コーンスターチ及びポテトスターチ等のデンプン;ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース及びセルロースアセテート等のセルロース及びその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバター及び座薬用ロウ等の賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びダイズ油等の油類;プロピレングリコール又はポリエチレングリコール等のグリコール類;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル等のエステル類;カンテン;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム等の緩衝剤;アルギニン酸;発熱物質を含有しない水;等張性生食水;リンゲル液;エチルアルコール及びリン酸緩衝液、並びに、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム等のその他の非毒性適合潤滑剤が含まれるが、これらに限定されず、並びに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、風味剤及び芳香剤、保存剤及び抗酸化剤も又、処方者の判断に応じて組成物中に存在してもよい。
【0162】
特定の実施形態において、本組成物は、請求項1の化合物の有効量及び薬学的に許容される担体、アジュバンド又はビヒクルからなる。特定の実施形態において、本化合物は、Tecファミリー(例えば、Tec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)タンパク質キナーゼを検出可能なほど阻害できる量で存在する。
【0163】
本発明は又、本発明の化合物及び薬学的に許容な担体、アジュバンド又はビヒクルを結合することによって作製される薬学的組成物、並びに本発明の化合物及び薬学的に許容な担体、アジュバンド又はビヒクルを結合することからなる薬学的組成物の作製プロセスも提供する。
【0164】
更に別の態様において、有効量の化合物又は化合物からなる薬学的に許容される組成物を必要とする対象者へ投与することによって、Tecファミリー(例えば、Tec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)が介在する疾患を治療する、又はその重症度を軽減する方法が提供される。この方法は、化学式Iの化合物、又は本発明のその他何れかの化合物:
【0165】
【化62】

又はその薬学的に許容される塩を使用する場合があり、式中、
及びRはそれぞれ独立して、H、ハロゲン、又は場合によりハロゲン、C1−2脂肪族化合物、OCH、NO、NH、CN、NHCH、SCH又はN(CH)で置換されるC1−4脂肪族化合物である。
は、Rは、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する、3〜8員の飽和、部分不飽和若しくは完全不飽和の単環化合物、又は窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有する、8〜12員の飽和、部分不飽和若しくは完全不飽和の二環化合物であり;Rは場合によりJで置換され;
及びXはそれぞれ独立して−C(O)−、−NR−又は−SO−であって、X又はXの一方が−NR−であり、X又はXの他方が−C(O)−又は−SO−であり;
RはH、未置換C1−6脂肪族化合物であり;
は−T−Qであり;
Tは結合又はC1−6脂肪族化合物であり、ここで鎖の最高3個のメチレン単位は場合により独立してG又はG’で置き換えられ、ここでGは−NR−、−O−、−S−、−SO−、SO−、−CS−又は−CO−であり;G’はシクロプロピル、C≡C又はC=Cであり;Tは場合によりJで置換され;
Qは独立して水素、C1−6脂肪族、又は、窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する、3〜8員の飽和、部分不飽和若しくは完全不飽和の単環化合物、又は、窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有する、8〜12員の飽和、部分不飽和若しくは完全不飽和の二環化合物であって;Qは場合によりJで置換され;
は場合により置換されるR、C6−10アリール、C3−10脂環化合物、5〜14員ヘテロアリール、又は5〜14員ヘテロシクリルであり、2個のR基は、それらが結合する原子と一緒になって、場合により置換される3〜7員単環化合物又は8〜14員二環化合物を形成し;
その場合による置換基J、J及びJは本明細書に定義される。
【0166】
本発明の特定の実施形態において、化合物又は薬学的に許容される組成物の「有効量」とは、Tecファミリー(例えば、Tec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)が介在する疾患に対して有効な量である。本発明の方法によれば、化合物及び組成物は、Tecファミリー(例えば、Tec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)が介在する疾患を治療する、又はその重症度を軽減する上で有効な任意の量及び任意の投与経路を使用して投与される場合がある。必要とされる正確な量は、対象者、動物種、年齢及び対象者の全体的な状態、感染症の重症度、特定の薬物、その投与法等によって異なる。本発明の化合物は好ましくは、投与が容易で用量が均一な剤型単位で製剤化される。本明細書で使用される「剤型単位」という表現は、治療対象の患者にとって適切な薬剤の物理的に別個の単位を指す。但し、本発明の化合物及び組成物の1日合計使用量は、正しい医学的判断の範囲内で主治医が決定することが了解される。任意の特定の患者又は生物にとっての具体的な有効量は、治療対象となる疾患とその疾患の重症度;使用される特定の化合物の活性;使用される特定の組成物;患者の年齢、体重、全体的な健康状態、性別及び食事;投与時間、投与経路及び使用する特定の化合物の排泄速度;投与期間;使用する特定の化合物と併用する薬物及び医学業界で既知の因子によって異なる。本明細書で使用される「患者」という用語は、動物、好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトを意味する。
【0167】
本発明の薬学的に許容される組成物は、治療対象の感染症の重症度に応じて、経口、経直腸、非経口、脳槽内、膣内、腹腔内、局所(粉末、軟膏又は滴剤による)、口腔内、口腔又は鼻スプレー等によりヒト又はその他の動物に投与することができる。特定の実施形態において、本発明の化合物は、対象者の体重から換算して1日用量約0.01mg/kgから約50mg/kgにて、好ましくは約1mg/kgから約25mg/kgにて、1日に1回又は複数回、経口又は非経口投与されて、所望の治療効果を得る場合ある。
【0168】
経口投与の液体剤型には、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルが含まれるが、これらに限定されない。活性化合物に加えて、液体剤型には、例えば水又はその他の溶媒のような、当業界で一般的に使用される不活性希釈液のほか、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチル、アルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油類(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、肺芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタン脂肪酸エステル及びその混合物が含まれる場合がある。不活性溶媒を除き、経口組成物には又、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味剤、風味剤及び芳香剤等のアジュバンドも含まれてよい。
【0169】
注射用製剤、例えば滅菌注射用の水性又は油性懸濁液は、好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して、既知の技術に従って製剤化される場合がある。滅菌注射用製剤は又、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液のように、非毒性の非経口で許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌注射用溶液、懸濁液又はエマルジョンとなる場合もある。使用される可能性がある許容可能なビヒクル及び溶媒には、水、リンゲル液、U.S.P及び等張性生食水である。加えて、滅菌した不揮発性油は、従来から溶媒又は懸濁液培地として使用されている。この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む、刺激の少ない任意の不揮発性油が使用される場合がある。加えて、オレイン酸等の脂肪酸が注射用製剤において使用される。
【0170】
注射用製剤は、例えば細菌除去フィルタで濾過するか、又は滅菌水又はその他の滅菌注射用培地に使用前に溶解又は分散させることのできる滅菌固形組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって滅菌することができる。
【0171】
本発明の化合物の作用を延長させるには、皮下注射又は筋肉内注射による化合物の吸収を緩徐にすることが望ましい場合が多い。これは、水溶性の低い水晶性又は非晶質の液体懸濁液を使用することによって達成される場合がある。その後、化合物の吸収速度は、溶解速度に左右され、そして又この速度は結晶のサイズ及び結晶の形態に左右される。或いは、非経口投与される化合物の吸収を遅延させるには、化合物を油性ビヒクルに溶解又は懸濁させる。蓄積注射の剤型は、ポリラクチド−ポリグリコリドのような生体分解性ポリマー中で化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製される。化合物とポリマーの比率及び使用した特定のポリマーの性質によって、化合物の放出速度を制御することができる。その他の生体分解性ポリマーには、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が含まれる。蓄積注射の剤型は又、体組織と適合するリポソーム又はマイクロエマルジョンに化合物を封じ込めることによっても調製される。
【0172】
直腸内及び膣内投与用の組成物は、好ましくは、ココアバター、ポリエチレングリコール又は座薬用ロウのように、室温では固体であるが体温では液体になるために、直腸又は腟で溶解して活性化合物を放出する好適な非刺激性の賦形剤又は担体と本発明の化合物とを混合させることにより調製できる座薬であるのがよい。
【0173】
経口投与用の固形剤型には、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末及び顆粒が含まれる。こうした固形剤型では、活性化合物は少なくとも1種の不活性の薬学的に許容されるビヒクル又は担体、例えばクエン酸ナトリウム又はリン酸ジカルシウム、及び/又はa)デンプン、乳糖、スクロース、グルコース、マンニトール及び硅酸等の充填剤又は増量剤、b)カルボキシメチルセルロース、アージネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース及びアカシア等の結合剤、c)グリセロール等の湿潤剤、d)カンテン、炭酸カルシウム、ポテト又はタピオカデンプン、アルギニン酸、特定のケイ酸塩及び炭酸ナトリウム等の崩壊剤、e)パラフィン等の溶解遅延剤、f)四級アンモニウム化合物等の吸収促進剤、g)例えば、セチルアルコール及びグリセロールモノステアレート等の湿潤剤、h)カオリン及びベントナイト等の吸収剤、及びi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ナトリウムラウリルスルファート及びその混合物等の潤滑剤と混合される。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合、剤型は又緩衝剤からなる場合もある。
【0174】
同種の固形組成物は又、ラクトース又は乳糖並びに高分子量ポリエチレングリコール等のようなビヒクルを使用した、軟又は硬ゼラチンカプセルの充填剤として使用される場合もある。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤及び顆粒剤等の固形剤型は、腸溶コーティング及び製剤業界で既知のその他のコーティングのようなコーティング及びシェルで調製することができる。これらは場合により乳白剤を含有する場合があり、活性成分のみを、好ましくは腸管の特定の部位で、場合により遅延させて放出させる組成物にすることもできる。使用できる包埋組成物の例には、ポリマー物質及びワックスが含まれる。同種の固形組成物は又、ラクトース又は乳糖並びに高分子量ポリエチレングリコール等のビヒクルを使用した、軟又は硬ゼラチンカプセルの充填剤として使用される場合がある。
【0175】
活性化合物は又、上述の1種以上のビヒクルでマイクロカプセル化することもできる。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤及び顆粒剤といった固形剤型は、腸溶コーティング、放出制御コーティング及び製剤業界で既知のその他のコーティングのようなコーティング及びシェルで調製することができる。こうした固形剤型において、活性化合物は少なくとも1種のスクロース、乳糖又はデンプンのような不活性希釈剤と混合される場合がある。こうした剤型は又、普通の実践のように、不活性希釈剤以外の追加の物質、例えばステアリン酸マグネシウム及びマイクロクリスタリンセルロースのような錠剤潤滑剤及びその他の打錠剤からなる場合もある。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合、これらの剤型は又緩衝剤からなる場合もある。これらは場合により乳白剤を含有する場合があり、活性成分のみを、好ましくは腸管の特定の部位で、場合により遅延させて放出させる組成物にすることもできる。使用できる包埋組成物の例には、ポリマー物質及びワックスが含まれる。
【0176】
本発明の化合物の局所投与又は経皮投与用の剤型には、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ジェル、粉末、溶液、スプレー、吸入剤又はパッチが含まれる。活性化合物は滅菌条件下で薬学的に許容される担体及び必要となる何れかの保存剤又は緩衝剤と混合する。眼科用製剤、点耳薬及び点眼薬も又、本発明の適用範囲に含まれるものとして考慮される。加えて、本発明は、化合物の身体への送達を制御するという点で追加の利点を有する経皮パッチの使用も想定している。こうした剤型は、化合物を適切な培地で溶解又は分散させることにより作製することができる。吸収促進剤も又、皮膚を通した化合物の流量を増加させるために使用することができる。この速度は、速度制御膜を用意するか、化合物をポリマーマトリックス又はジェルに分散させることにより制御することができる。
【0177】
上に概説する通り、本発明の化合物はタンパク質キナーゼの阻害物質として有用である。一実施形態において、本発明の化合物及び組成物は、1個以上のTecファミリー(例えば、Tec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)キナーゼの阻害物質であり、そのため、如何なる特殊な理論によって結合しなくても、この化合物及び組成物は、1種以上のTecファミリー(例えば、Tec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)キナーゼの活性化が疾患、病態又は疾病に関与している疾患、病態又は疾病を治療する、又はその重症度を軽減するのに特に有用である。Tecファミリー(例えば、Tec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)の活性化が、特別な疾患、病態又は疾病に関与している場合、この疾患、病態又は疾病は又、「Tecファミリー(例えば、Tec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)介在性疾患」又は疾患症状と呼ばれる場合もある。このため、別の態様において、本発明は、1種以上のTecファミリー(例えば、Tec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)の活性化が病状に関与している疾患、病態又は疾病を治療する、又はその重症度を軽減するための方法を提供する。
【0178】
又、如何なる特定の理論によって結合しなくても、本発明の化合物及び組成物は、Itkキナーゼの活性化が疾患、病態又は疾病に関与している場合に、疾患、病態又は疾病を治療又はその重症度を軽減するのに特に有用であり、Btk及びRlkの中でも選択的にItkを阻害するのに特に有用である(実施例14〜16及び18を参照)。
【0179】
本発明で使用されるTecファミリー(例えば、Tec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)キナーゼの阻害物質としての化合物の活性は、in vitro、in vivo又は細胞系で評価される場合がある。In vitroアッセイには、活性化Tecファミリー(例えば、Tec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)の、リン酸化活性又はATPase活性の何れかの阻害を測定するアッセイが含まれる。別のin vitroアッセイでは、この阻害物質がTecファミリー(例えば、Tec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)キナーゼと結合する能力を定量する。阻害物質の結合は、結合前に阻害物質を放射標識し、阻害物質/Tecファミリー(例えば、Tec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)複合体を単離し、結合した放射標識の量を判定することにより測定される場合がある。或いは、阻害物質の結合は、既知の放射性リガンドと結合するTecファミリー(例えば、Tec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)キナーゼと共に新しい阻害物質をインキュベートさせる競合試験を行うことによっても測定される場合がある。
【0180】
本明細書で使用される「測定可能に阻害する」という用語は、前記組成物及びTecファミリー(例えば、Tec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)キナーゼを含む試料と、前記組成物の非存在下でTecファミリー(例えば、Tec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)キナーゼを含む同等の試料との間で、Tecファミリー(例えば、Tec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)キナーゼの活性が測定可能に変化することを意味する。
【0181】
本明細書で使用される「Tecファミリーチロシンキナーゼ介在性病態」という用語は、Tecファミリーキナーゼが役割を果たしていることが知られている何れかの疾患又はその他の有害な病態を意味する。こうした病態には、自己免疫性、炎症性、増殖性、過増殖性疾患、又は移植臓器若しくは組織の拒絶反応又は後天性免疫不全症候群(AIDS)をはじめとする免疫介在性疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0182】
例えば、Tecファミリーチロシンキナーゼ介在性病態には、気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息及び塵埃喘息、特に慢性又は難治性喘息(例えば、後発性の気道過剰反応)及び気管支炎等の喘息を含む可逆性閉塞性気道疾患を含むがこれらに限定されない呼吸器疾患が含まれる。加えて、Tecファミリーチロシンキナーゼ疾患には、急性鼻炎、アレルギー性、萎縮性鼻炎及び乾酪性鼻炎、肥厚性鼻炎、化膿性鼻炎、乾燥性鼻炎及び薬物性鼻炎のような慢性鼻炎;クループ性、線維素性及び偽膜性鼻炎のような膜性鼻炎及び腺病性鼻炎、神経性鼻炎(枯草熱)及び血管運動神経性鼻炎のような季節性鼻炎、サルコイドーシス、農夫肺及び関連疾患、肺線維症及び特発性間質性肺炎をはじめとする鼻腔粘膜の炎症による病態が含まれるが、これらに限定されない。
【0183】
Tecファミリーチロシンキナーゼ介在性病態には又、慢性関節リウマチ(中のパンヌス形成)、血清反応陰性脊椎関節症(強直性脊椎炎、乾癬性関節炎及びライター病を含む)、ベーチェット病、シェーグレン症候群及び全身性硬化症を含むがこれらに限定されない骨及び関節の疾患も含まれる。
【0184】
Tecファミリーキナーゼ介在性病態には又、乾癬、全身性硬化症、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎及びその他の湿疹様皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、天疱瘡、水疱性天疱瘡、表皮水疱症、蕁麻疹、乾皮症、脈管炎、紅斑、皮膚性好酸球増多、ブドウ膜炎、円形脱毛症及び春季結膜炎を含むがこれらに限定されない皮膚の疾患及び疾病も含まれる。
【0185】
Tecファミリーチロシンキナーゼ介在性病態には又、脂肪便症、直腸炎、好酸球性胃腸炎、肥満細胞症、膵炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、並びに腸から隔たった位置で偏頭痛、鼻炎及び湿疹といった作用を引き起こす食物関連アレルギーを含むがこれらに限定されない消化器の疾患及び疾病も含まれる。
【0186】
Tecファミリーチロシンキナーゼ介在性病態には又、多発性硬化症、アテローム性硬化症、後天性免疫不全症候群(AIDS)、紅斑性狼瘡、全身性狼瘡、エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、I型糖尿病、ネフローゼ症候群、好酸球性筋膜炎、高IgE症候群、結節癩、セザリー症候群、特発性血小板減少性紫斑病、血管再建術後の再狭窄、腫瘍(例えば、白血病、リンパ腫)、関節硬化症、及び全身性紅斑性狼瘡を含むがこれらに限定されないその他の組織の疾患及び疾病並びに全身性疾患も含まれる。
【0187】
Tecファミリーチロシンキナーゼ介在性病態には又、例えば腎、心臓、肝臓、肺、骨髄、皮膚及び角膜の移植後の急性及び慢性の同種移植拒絶;並びに慢性の移植片対宿主病を含むがこれらに限定されない同種移植拒絶も含まれる。
【0188】
本発明の化合物及び薬学的に許容される組成物は、併用療法において使用することができ、即ち、化合物及び薬学的に許容される組成物は、その他1種以上の所望の治療薬又は医学的手技と同時に、これに先立って、又はこれに続いて投与できることに留意されたい。併用療法の計画で使用する特定の療法の組み合わせ(治療薬又は手技)は、所望の治療薬及び/又は手技の適合性、及び達成すべき所望の治療効果を考慮に入れなければならない。又、使用する療法は、同じ疾患に対して所望の作用を及ぼすこともあれば(例えば、同じ疾患の治療に使用される別の薬物と本発明の化合物が同時に投与される場合がある)、それらが異なる作用を及ぼすこともある(例えば、何らかの副作用の制御等)。本明細書で使用される、特定の疾患又は病態を治療又は予防するために通常投与される追加の治療薬は、「治療対象の疾患又は病態に適切である」ことが知られている。
【0189】
本発明の方法で使用できる追加の治療薬には、自己免疫性、炎症性、増殖性、過増殖性疾患、又は移植臓器若しくは組織の拒絶反応又は後天性免疫不全症候群(AIDS)をはじめとする免疫介在性疾患の治療用の薬物が含まれるが、これらに限定されず、追加の治療薬は治療対象の疾患に対して適切であり、追加の治療薬は、単一の剤型として前記組成物と共に、或いは複数の剤型の一部として前記組成物とは別々に投与される。
【0190】
例えば、化学療法薬又はその他の抗増殖薬は、増殖性疾患及び癌を治療するために、本発明の化合物と組み合わせて使用される場合がある。既知の化学療法薬の例には、以下が含まれるが、これらに限定されない。例えば、本発明の抗癌剤と併用することのできるその他の療法又は抗癌剤には、手術、放射線治療(数例を挙げれば、ガンマ線照射、中性子ビーム照射、電子ビーム照射、陽子線治療、近接照射及び放射活性を有するアイソトープの全身投与)、内分泌治療、生物学的反応修飾物質(数例を挙げれば、インターフェロン、インターロイキン及び腫瘍壊死因子(TNF))、温熱療法及び凍結療法、何れかの副作用を緩和する薬剤(例えば、制吐薬)、及びアルキル化薬(メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イホスファミド)、抗代謝薬(メトトレキセート)、プリン拮抗体及びピリミジン拮抗体(6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、シタラビル、ゲンシタビン)、紡錘体毒(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル)、ポドフィロトキシン(エトポシド、イリノテカン、トポテカン)、抗生物質(ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン)、ニトロソ尿素(カルムスチン、ロムスチン)、無機イオン(シスプラチン、カルボプラチン)、酵素(アスパラギナーゼ)及びホルモン(タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド及びメゲストロール)、GleevecTM、アドリアマイシン、デキサメタゾン、及びシクロホスファミドを含むがこれらに限定されないその他の承認された化学療法薬が含まれる。癌治療の最前線のより包括的な考察については、http://www.nci.nih.gov/、FDAが承認した抗腫瘍薬の一覧(http://www.fda.gov/cder/cancer/druglistframe.htm)、及びThe Merck Manual,Seventeenth Ed.1999を参照のこと。これらの内容は全て参考として本明細書に盛り込まれている。
【0191】
本発明の阻害物質と併用される場合がある薬物のその他の例には、アリセプト(登録商標)及びエクセロン(登録商標)のようなアルツハイマー病治療薬;L−DOPA/カルビドパ、エンタカポン、ロピンロール、プラミペキソール、ブロモクリプチン、ペルゴリド、トリヘキセフェンジル及びアマンタジンのようなパーキンソン病治療薬;βインターフェロン(例えば、アボネックス(登録商標)及びレビフ(登録商標))、コパキソン(登録商標)及びミトキサントロンのような多発性硬化症(MS)の治療薬;アルブテロール及びシングレア(登録商標)のような喘息治療薬;ジプレキサ、リスペルダール、セロクエル及びハロペリドールのような統合失調症の治療薬;コルチコステロイド、TNF遮断薬、IL−1 RA、アザチオプリン、シクロホスファミド及びスルファサラジンのような抗炎症薬;シクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、インターフェロン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン及びスルファサラジンのような免疫調節及び免疫抑制剤;アセチルコリンステラーゼ阻害薬、MAO阻害薬、インターフェロン、抗痙攣薬、イオンチャネル遮断薬、リルゾール及び抗パーキンソン病薬のような神経栄養因子;β遮断薬、ACE阻害薬、利尿薬、硝酸塩、カルシウムチャネル遮断薬及びスタチンのような心血管疾患の治療薬;コルチコステロイド、コレスチルアミン、インターフェロン及び抗ウイルス薬のような肝疾患の治療薬;コルチコステロイド、抗白血病薬及び増殖因子のような血液疾患の治療薬;γグロブリンのような免疫不全疾患の治療薬が含まれるが、これらに限定されない。
【0192】
本発明の組成物中に存在する追加の治療薬の量は、その治療薬が唯一の活性成分として含まれる組成物において通常投与される量を超えてはならない。好ましくは、本明細書に開示される組成物における追加の治療薬の量は、その治療薬が唯一の活性成分として含まれる組成物中に通常存在する量の約50〜100%となるのがよい。
【0193】
本発明の化合物又はそれらの薬学的に許容される組成物は又、プロテーゼ、人工弁、代用血管、ステント及びカテーテルといった植込みデバイスをコーティングする組成物に組み込まれる場合もある。このため、本発明には、別の態様において、上に概説する通り、本明細書のクラス及びサブクラスにおいて、本発明の化合物を含む植込みデバイスのコーティング用組成物、及び前記植込みデバイスのコーティングに好適な担体が含まれる。
【0194】
例えば、血管ステントは、再狭窄(外傷後の血管壁の再狭窄)の克服に使用されてきた。しかし、ステント又はその他の植込みデバイスを使用する患者には、血栓形成及び血小板活性化のリスクがある。これらの望ましくない作用は、キナーゼ阻害物質からなる薬学的に許容される組成物でデバイスを予めコーティングすることにより、予防又は緩和することができる。コーティングされた植込みデバイスの好適なコーティング剤及び一般的な調剤については、米国特許第6099562号;米国特許第5886026号;及び米国特許第5304121号に記載されている。コーティング剤とは一般的に、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレンビニルアセテート、及びその混合物等の生体適合性ポリマー材料である。コーティング剤は、組成物の放出性を制御するために、場合により、フルオロシリコン、多糖類、ポリエチレングリコール、リン脂質又はそれらの組み合わせの好適なトップコートで更に被覆される場合がある。
【0195】
本発明の別の態様は、生物学的試料又は患者においてTecファミリー(例えば、Tec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)の活性を阻害することに関し、その方法は、患者へ投与すること、又は化学式Iの化合物若しくは前記化合物からなる組成物と前記生物学的試料を接触させることからなる。本明細書で使用される「生物学的試料」という用語には、細胞培養物又はその抽出物;哺乳類から採取した生検材料又はその抽出物;並びに血液、唾液、尿、糞便、精液、涙若しくはその他の体液又はその抽出物が含まれるが、これらに限定されない。
【0196】
生物学的試料におけるTecファミリー(例えば、Tec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)キナーゼの活性を阻害することは、当業者に既知の種々の目的に有用である。こうした目的の例には、輸血、臓器移植、生物学的標本の保存及び生物学的アッセイが含まれるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0197】
本明細書で使用される「Rt(分)」という用語は、本化合物に伴うHPLCの保持時間を分で表したものである。特に言及がない限り、記載の保持時間を得るために使用したHPLC法は以下の通りである:
カラム:Ace 5 C8、15cm×4.6mm 内径
勾配:0〜100%アセトニトリル+メタノール(50:50)(pH7.0の20mMリン酸トリス)
流速:1.5mL/分
検出:225nm
(実施例1)
【0198】
【化63】

4−tert−ブチル−N−(6−オキソ−1,6−ジヒドロ−[3,4’]ビピリジニル−5−イル)−ベンズアミド I−11
アミリノン(200mg、1.07mmol)をピリジン(5mL)中に懸濁し、4−tert−塩化ブチルベンゾイル(209μL、1.07mmol)を添加した。この反応混合物を室温で一晩攪拌した。固形物を濾過し、MeOHで洗浄して、ピンク色の固形物である表題の化合物を得た(33mg、収率9%)。
【0199】
【数1】

(実施例2)
【0200】
【化64】

N−(1,2−ジヒドロ−2−オキソ−5−(ピリジン−4−イル)ピリジン−3−イル)−4−(ピペリジン−1−イル)ベンズアミド I−68
4−ブロモ−N−(1,2−ジヒドロ−2−オキソ−5−(ピリジン−4−イル)ピリジン−3−イル)ベンズアミド(30mg,0.081mmol)I−20を、撹拌バーの付いたマイクロ波管に入れた。NMP(0.75mL)を添加し、その後にピペリジン(1.5mL)を添加した。反応槽をマイクロ波内において160℃で2時間加熱した。冷却後、溶媒及び過剰なピペリジンを真空中で除去した。この粗化合物をメタノールから再結晶化させて、白色の固形物である表題の化合物を得た(13mg、収率43%)。
【0201】
【数2】

化学式Iのその他種々の化合物を、本明細書に記載の方法と実質的に似た方法で予め調製した。これらの化合物の特徴データを以下の表I−Aにまとめるが、これらにはHPLC、LC/MS(実測値)及びH NMRデータも含まれる。
【0202】
H NMRデータを以下の表I−Aにまとめる。H NMRデータは、特に言及がない限りジューテロ化したDMSOにて400Mhzで得られたものであり、構造は均一であることが判明している。化合物番号は、表1に示す化合物番号と対応している。
【0203】
(表I−A 化学式Iの選択化合物に関する特徴データ)
【0204】
【化65】

【0205】
【化66】

【0206】
【化67】

【0207】
【化68】

【0208】
【化69】

【0209】
【化70】

【0210】
【化71】

【0211】
【化72】

(実施例3)
【0212】
【化73】

(5−ヨード−2−メトキシ−ピリジン−3−イル)−カルバミン酸ベンジルエステル
(5−ヨード−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−カルバミン酸ベンジルエステル(3.68g、9.94mmol)を、室温、窒素下、暗所(ホイルで覆う)でクロロホルム(50mL)に溶解した。炭酸銀(3.70g、13.2mmol)を添加した後、ヨードメタン(6.2mL、99.4mmol)を添加した。この反応混合物を室温で48時間攪拌した。セライトパッドで銀塩を濾過して除去した後、新たなクロロホルムで洗浄して、濾過物を真空中で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィーで精製し、白色の固形物である表題の化合物を得た(3.14g、収率82%)。
【0213】
【数3】

(実施例4)
【0214】
【化74】

[2−メトキシ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−ピリジン−3−イル]−カルバミン酸ベンジルエステル
(5−ヨード−2−メトキシ−ピリジン−3−イル)カルバミン酸ベンジルエステル(1g、2.6mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(727mg、2.86mmol)、KOAc(766mg、7.81mmol)及びPd(Oac)(18mg、3mol%)を無水DMF(20mL)中で懸濁した。この系に30分かけて窒素を緩徐に通気して脱ガスした後、85℃で3時間加熱した。この反応物を室温まで冷却し、水で希釈した。この反応混合物をEtOAc(×3)で抽出し、MgSOで乾燥させ、真空中で濾過し濃縮した。カラムクロマトグラフィーによる精製により、白色の固形物である表題の化合物を得た(501mg、収率50%)。
【0215】
【数4】

(実施例5)
【0216】
【化75】

[2−メトキシ−5−(2−メチルスルファニル−ピリミジン−4−イル)−ピリジン−3−イル]−カルバミル酸ベンジルエステル
[2−メトキシ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−ピリジン−3−イル]−カルバミン酸ベンジルエステル(377mg、0.98mmol)、4−クロロ−2−チオメチルピリミジン(171μL、1.47mmol)及びPd(Pph(113mg、10mol%)を、トルエン(15mL)及びEtOH(3mL)中に溶解した。水(6mL)中のNaCO(717mg、6.77mmol)を添加し、その反応混合物を加熱して4時間還流した。室温まで冷却した後、反応混合物を水で希釈し、EtOAc(×3)で抽出した。この結合有機抽出物をMgSOで乾燥させ、真空中で濾過し濃縮した。残留物をシリカに吸収させ、カラムクロマトグラフィーで精製してオフホワイトの固形物である表題の化合物を得た(261mg、収率70%)。
【0217】
【数5】

(実施例6)
【0218】
【化76】

[5−(2−メチルスルファニル−ピリミジン−4−イル)−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル]−カルバミン酸ベンジルエステル II−3
[2−メトキシ−5−(2−メチルスルファニル−ピリミジン−4−イル)−ピリジン−3−イル]−カルバミル酸ベンジルエステル(20mg、0.05mmol)を、1,4−ジオキサン(1mL)及び水(300μL)中に溶解した。濃縮HCl(100μL)を添加し、その反応混合物を加熱して30分間還流した。反応混合物を室温まで冷却し、水を添加した。得られた沈殿物を濾過によって単離し、真空下で乾燥させて、黄色の固形物である表題の化合物を得た(12.9mg、収率67%)。
【0219】
【数6】

(実施例7)
【0220】
【化77】

2−メトキシ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−ピリジン−3−イルアミン
[2−メトキシ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−ピリジン−3−イル]−カルバミン酸ベンジルエステル(506mg、1.32mmol)を、メタノール(10mL)中に溶解した。炭素上のPd(OH)(51mg、10mol%)を添加し、その反応物を窒素で脱ガスした。窒素雰囲気を水素に代え、反応混合物を室温で5時間攪拌した。パラジウム残留物をセライトで濾過して除去し、新たなメタノールで洗浄した。濾過物を真空中で濃縮し、オフホワイトの固形物である表題の化合物を得た(319mg、収率97%)。
【0221】
【数7】

(実施例8)
【0222】
【化78】

4−tert−ブチル−N−[2−メトキシ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−ピリジン−3−イル]−ベンズアミド
2−メトキシ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−ピリジン−3−イルアミン(319mg、1.28mmol)を、ジクロロメタン(5mL)中で溶解した。トリエチルアミン(117μL、1.40mmol)及び4−tert−ブチルベンゾイルクロリド(274μL、1.40mmol)を添加し、反応物を室温で10分間攪拌した。この粗混合物をシリカに吸収させ、カラムクロマトグラフィーで精製して、オフホワイトの固形物である表題の化合物を得た(274mg、収率52%)。
【0223】
【数8】

(実施例9)
【0224】
【化79】

4−tert−ブチル−N−[2−メトキシ−5−(2−メチルスルファニル−ピリミジン−4−イル)−ピリジン−3−イル]−ベンズアミド
4−tert−ブチル−N−[2−メトキシ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−ピリジン−3−イル]−ベンズアミド(274mg、0.67mmol)、4−クロロ−2−チオメチルピリミジン(116μL、1.00mmol)及びPd(Pph(77mg、10mol%)を、トルエン(10mL)及びEtOH(2mL)中で溶解した。水(4mL)中のNaCO(488mg、4.61mmol)を添加し、反応混合物を加熱して2時間還流した。室温にまで冷却した後、反応混合物を水に希釈し、EtOAc(×3)で抽出した。この結合有機抽出物をMgSOで乾燥させ、真空中で濾過し濃縮した。残留物をシリカに吸収させ、カラムクロマトグラフィーで精製して、黄色の固形物である表題の化合物を得た(120mg、収率44%)。
【0225】
【数9】

(実施例10)
【0226】
【化80】

4−tert−ブチル−N−[5−(2−メチルスルファニル−ピリミジン−4−イル)−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル]−ベンズアミド II−4
4−tert−ブチル−N−[2−メトキシ−5−(2−メチルスルファニル−ピリミジン−4−イル)−ピリジン−3−イル]−ベンズアミド(120mg、0.29mmol)を、1,4−ジオキサン(6mL)及び水(1.2mL)中に溶解した。濃縮HCl(600μL)を添加し、この反応混合物を加熱して30分間還流した。反応混合物を室温まで冷却し、水を添加した。得られた沈殿物を濾過によって単離し、真空下で乾燥させた。粗固形物をフラッシュクロマトグラフィーで精製して、淡黄褐色の固形物である表題の化合物を得た(29mg、収率25%)。
【0227】
【数10】

(実施例11)
【0228】
【化81】

N−(1,2−ジヒドロ−5−(2−(メチルアミノ)ピリミジン−4−イル)−2−オキソピリジン−3−イル)−4−(ピペリジン−1−イル)ベンズアミド II−40
4−ブロモ−N−(2−メトキシ−5−(2−(メチルアミノ)ピリミジン−4−イル)ピリジン−3−イル)ベンズアミド(50mg、0.121mmol)を、撹拌バーの付いたマイクロ波管に入れた。NMP(1.5mL)を添加した後、ピペリジン(1.5mL)を添加した。反応槽をマイクロ波内において160℃で2時間加熱した。冷却後、溶媒及び過剰なピペリジンを真空中で除去した。この粗化合物をメタノールから再結晶化させて、白色の固形物である表題の化合物を得た(22mg、収率45%)。
【0229】
【数11】

化学式IIのその他種々の化合物を、本明細書に記載の方法と実質的に似た方法で予め調製した。これらの化合物の特徴データを以下の表II−Aにまとめるが、これらにはHPLC、LC/MS(実測値)及びH NMRデータも含まれる。
【0230】
H NMRデータを以下の表II−Aにまとめる。H NMRデータは、特に言及がない限りジューテロ化したDMSにて400Mhzで得られたものであり、構造は均一であることが判明している。化合物番号は、表1に示す化合物番号と対応している。
【0231】
(表II−A 化学式IIの選択化合物に関する特徴データ)
【0232】
【化82】

【0233】
【化83】

【0234】
【化84】

【0235】
【化85】

【0236】
【化86】

【0237】
【化87】

【0238】
【化88】

【0239】
【化89】

【0240】
【化90】

【0241】
【化91】

【0242】
【化92】

【0243】
【化93】

【0244】
【化94】

【0245】
【化95】

【0246】
【化96】

【0247】
【化97】

【0248】
【化98】

【0249】
【化99】

【0250】
【化100】

【0251】
【化101】

(実施例12)
【0252】
【化102】

2−オキソ−5−フェニル−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボキシル酸フェニルアミド III−1
テトラヒドロフラン(5mL)中の2−オキソ−5−フェニル−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボキシル酸の溶液(44g、0.20mmol)に、アニリン(20μL、0.23mmol)、ヒドロキシベンゾトリアゾル(30mg、0.23mmol)、ジメチルアミノピリジン(27mg、0.23mmol)及びEDC(43mg、0.23mmol)を連続して添加した。この反応混合物を室温で16時間攪拌した。溶媒を真空中で除去し、10%MeOHを含有するDCMで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーで残留物を精製して、白色の固形物である表題の化合物を得た(20mg、収率34%)。
【0253】
【数12】

化学式IIIのその他種々の化合物を、本明細書の実施例12に記載の方法と実質的に似た方法で予め調製した。これらの化合物の特徴データを以下の表III−Aにまとめるが、これらにはHPLC、LC/MS(実測値)及びH NMRデータも含まれる。
【0254】
H NMRデータを以下の表III−Aにまとめる。H NMRデータは、特に言及がない限りジューテロ化したDMSOにて400Mhzで得られたものであり、構造は均一であることが判明している。化合物番号は、表1に示す化合物番号と対応している。
【0255】
(表III−A 化学式IIIの選択化合物に関する特徴データ)
【0256】
【化103】

【0257】
【化104】

【0258】
【化105】

【0259】
【化106】

【0260】
【化107】

【0261】
【化108】

(実施例13)
【0262】
【化109】

N−(6−オキソ−1,6−ジヒドロ−[3,4’]ビピリジニル−5−イル)−ベンゼンスルホンアミド IV−1
アムリノン(100mg、0.53mmol)をピリジン(2mL)中で懸濁し、ベンゼンスルホニルクロリド(75μL、0.59mmol)を0℃で徐々に滴加した。この反応混合物を2時間攪拌した。ピリジンを真空中で除去した。MeOHをこの粗混合物に添加して、固形物を濾過し、新たなMeOHで洗浄して、淡黄色の固形物である表題の化合物を得た(100mg、収率57%)。
【0263】
【数13】

(実施例14:ITK阻害アッセイ:)
放射性リン酸標式アッセイを使用して、化合物のItkの阻害能力をスクリーニングした。このアッセイは、100mM HEPES(pH7.5)、10mM MgCl、25mM NaCl、0.01% BSA及び1mM DTTの混合物中で実施した。最終の基質濃度は15μM [γ−33P]ATP(400mCi 33P ATP/ mmol ATP,Amersham Pharmacia Biotech/ Sigma Chemicals)及び2μMペプチド(SAM68 protein D332−443)であった。このアッセイは30nM Itkの存在下にて25℃で実施した。ATP及び被験化合物を除く前述の試薬全てを含むアッセイ用の緩衝原液を調製した。この緩衝原液50μLを98穴プレートに入れ、2連で連続して希釈した被験化合物(通常は最終濃度15μMから始め、2倍ずつ連続で希釈)を含むDMSO原液1.5μLを添加した(最終DMSO濃度は1.5%)。このプレートを25℃で10分間プレインキュベートし、その後[γ−33P]ATP50μL(最終濃度15μL)を添加することによって反応を開始した。
【0264】
この反応を10分後にTCA/ATP混合物(20%TCA、0.4mM ATP)50μLを添加することによって中止した。Unifilter GF/C 96穴プレート(Perkin Elmer Life Sciences、カタログ番号6005174)を50μLのMilli Q水で前処理した後、反応混合物全て(150μL)を添加した。このプレートを200μLのMilliQ水で、次に200mLのTCA/ATP混合物(5%TCA、1mM ATP)で洗浄した。この洗浄サイクルを更に2回繰り返した。乾燥後、30μLのOptiphase “SuperMix”液体シンチレーションカクテル(Perkin Elmer)をウェルに添加した後、シンチレーション計数を行った(1450 Microbeta Liquid Scintillation Counter,Wallac)。
【0265】
Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Prism version 3.0cx for Macintosh,GraphPad Software[米国カリフォルニア州サンディエゴ])を使用して、初速度データの非線型回帰分析からIC50データを算出した。
【0266】
このアッセイは、20mM MOPS(pH 7.0)、10mM MgCl、0.1% BSA及び1mM DTTの混合物中で実施した。このアッセイでの最終基質濃度は、7.5μM [γ−33P] ATP(400mCi 33P ATP/mmol ATP、Amersham Pharmacia Biotech / Sigma Chemicals)及び3μMペプチド(SAM68 protein D332−443)であった。このアッセイは500nM Itkの存在下にて25℃で実施した。ATP及び被験化合物を除く前述の試薬全てを含むアッセイ用の緩衝原液を調製した。この緩衝原液50μLを96穴プレートに入れ、2連で連続して希釈した被験化合物(通常は最終濃度50μMから始め、2倍ずつ連続で希釈)を含むDMSO原液2μLを添加した(最終DMSO濃度は2%)。このプレートを25℃で10分間プレインキュベートし、その後[γ−33P]ATP50μL(最終濃度7.5μL)を添加することによって反応を開始した。
【0267】
この反応を10分後に0.2Mリン酸+0.01 TWEEN 20 100mLを添加することによって中止した。マルチスクリーンホスホセルロースフィルター96穴プレート(Millipore、カタログ番号MAPHN0B50)を100μLの0.2Mリン酸+0.01% TWEEN 20で前処理した後、先ほど中止したアッセイの混合物170mLを添加した。このプレートを200μLの0.2Mリン酸+0.01% TWEEN 20で4回洗浄した。乾燥後、30μLのOptiphase “SuperMix”液体シンチレーションカクテル(Perkin Elmer)をウェルに添加した後、シンチレーション計数を行った(1450 Microbeta Liquid Scintillation Counter,Wallac)。
【0268】
Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Prism version 3.0cx for Macintosh,GraphPad Software[米国カリフォルニア州サンディエゴ])を使用して、初速度データの非線型回帰分析からKi(app)データを算出した。
【0269】
一般的に本発明の化合物は、ITKの阻害において有効である。好ましい化合物は、放射性標式アッセイで0.1μM未満のKi値を示した
【0270】
【数14】

好ましい化合物は、放射性標式アッセイで0.1μM〜1μMのKi値を示した
【0271】
【数15】

(実施例15:ITK阻害アッセイ(UV):)
従来の結合酵素アッセイ(Fox,ら,Protein Sci.,(1998)7,2249)を使用して、化合物のItk阻害能力をスクリーニングした。
【0272】
アッセイは、20mM MOPS(pH 7.0)、10mM MgCl、0.1% BSA、1mM DTT、2.5mMホスホエノールピルビン酸塩、300μM NADH、30μg/mLピルビン酸キナーゼ及び10μg/mL乳酸デヒドロゲナーゼの混合物中で実施した。このアッセイでの最終基質濃度は、100μM ATP(Sigma Chemicals)及び3μMペプチド(Biotinylated SAM68 D332−443)であった。このアッセイは100nM Itkの存在下にて25℃で実施した。
【0273】
ATP及び被験化合物を除く前述の試薬全てを含むアッセイ用の緩衝原液を調製した。この緩衝原液60μLを96穴プレートに入れ、連続して希釈した被験化合物(通常は最終濃度15μMから始める)を含むDMSO原液2μLを添加した。このプレートを25℃で10分間プレインキュベートし、その後ATP5μLを添加することによって反応を開始した。反応の初速度を10分間、Molecular Devices SpectraMax Plusプレートリーダーで測定した。Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Prism version 3.0cx for Macintosh,GraphPad Software[米国カリフォルニア州サンディエゴ])を使用して、非線型回帰分析からIC50及びKiデータを算出した。
【0274】
一般的に本発明の化合物は、ITKの阻害において有効である。好ましい化合物は、結合酵素アッセイで0.1μM未満のKi値を示した(I−70、I−76、I−78、I−79、I−80)。好ましい化合物は、結合酵素アッセイで0.1μM〜1μMのKi値を示した(I−5、I−10、I−11、I−69、I−82、I−83、I−84、II−4、II−7、II−41)。
【0275】
(実施例16:BTK阻害アッセイ:)
放射性リン酸標式アッセイを使用して、Vertex Pharmaceuticalsにて化合物のBtkの阻害能力をスクリーニングした。このアッセイは、20mM MOPS(pH7.0)、10mM MgCl、0.1% BSA及び1mM DTTの混合物中で実施した。最終の基質濃度は50μM [γ−33P] ATP(200mCi 33P ATP/ mmol ATP,Amersham Pharmacia Biotech,Amersham,UK / Sigma Chemicals)及び2μMペプチド(SAM68 D332−443)であった。このアッセイは25nM Btkの存在下にて25℃で実施した。ペプチド及び被験化合物を除く前述の試薬全てを含むアッセイの緩衝原液を調製した。この緩衝原液75μLを96穴プレートに入れ、2連で連続して希釈した被験化合物(通常は最終濃度15μMから始める)を含むDMSO原液2μLを添加した(最終DMSO濃度は2%)。このプレートを25℃で15分間プレインキュベートし、その後ペプチド25μL(最終濃度2μL)を添加することによって反応を開始した。バックグラウンド計数は、アッセイ緩衝原液及びDMSOを含む対照ウェルに、100mLの0.2Mリン酸+0.01% TWEENを添加することによって行い、その後ペプチドで反応を開始した。
【0276】
この反応を10分後に0.2Mリン酸+0.01% TWEEN 100mLを添加することによって中止した。マルチスクリーンホスホセルロースフィルター96穴プレート(Millipore、カタログ番号MAPHN0B50)を100μLの0.2Mリン酸+0.01% TWEEN 20で前処理した後、先ほど中止したアッセイの混合物170mLを添加した。このプレートを200μLの0.2Mリン酸+0.01% TWEEN 20で4回洗浄した。乾燥後、30μLのOptiphase “SuperMix”液体シンチレーションカクテル(Perkin Elmer)をウェルに添加した後、シンチレーション計数を行った(1450 Microbeta Liquid Scintillation Counter,Wallac)。
【0277】
全てのデータポイントの平均バックグラウンド値を除いた後、Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Prism version 3.0cx for Macintosh,GraphPad Software[米国カリフォルニア州サンディエゴ])を使用して、非線型回帰分析からKi(app)データを算出した。
【0278】
一般的に本発明の化合物は、表1の化合物をはじめ、BtKの阻害において有効である。好ましい化合物は、放射性標式アッセイで0.5μMを超えるKi値を示した(II−43、II−61、II−114、II−149)。好ましい化合物は、放射性標式アッセイで0.5μM未満のKi値を示した(II−51、II−58、II−61、II−63、II−77、II−78、II−80、II−112)。
【0279】
(実施例17:BTK阻害アッセイ(AlphaScreenTM):)
AlphaScreenTMホスホチロシンアッセイを使用して、Vertex Pharmaceuticalsにて化合物のBtkの阻害能力をスクリーニングした。このアッセイは、20mM MOPS(pH7.0)、10mM MgCl、0.1% BSA及び1mM DTTの混合物中で実施した。本アッセイの最終基質濃度は、50μM ATP(Sigma Chemicals)及び2μMペプチド(Biotinylated SAM68 D332−443)であった。このアッセイは25nM Btkの存在下にて25℃で実施した。ペプチド及び被験化合物を除く前述の試薬全てを含むアッセイ用の緩衝原液を調製した。この緩衝原液37.5μLを96穴プレートに入れ、2連で連続して希釈した被験化合物(通常は最終濃度15μMから始める)を含むDMSO原液1μLを添加した(最終DMSO濃度は2%)。このプレートを25℃で15分間プレインキュベートし、その後ペプチド12.5μL(最終濃度2μL)を添加することによって反応を開始した。バックグラウンド計数は、アッセイ緩衝原液及びDMSOを含む対照ウェルに、5μLの500mM EDTAを添加することによって行い、その後Biotin−SAM68で反応を開始した。
【0280】
この反応を30分後に、50mM EDTAを含むMOPS緩衝液(20mM MOPS (pH 7.0)、1mM DDT、10mM MgCl、0.1% BSA)で反応物を225倍に希釈することによって中止し、ペプチドの最終濃度を9nMにした。
【0281】
製造元の説明書に従ってAlphaScreenTM試薬を調製した(AlphaScreenTMホスホチロシン(P−Tyr−100)アッセイキット、PerkinElmerカタログ番号6760620C)。明るさを抑えた照明下で、20μLのAlphaScreenTM試薬を白色ハーフエリア96ウェルプレート(Corning Inc.−COSTAR 3693)の各ウェルに入れ、先ほど中止した希釈キナーゼ反応物30μLを添加した。これらのプレートを暗所で60分間インキュベートした後、Fusion Alphaプレートリーダー(PerkinElmer)で読取りを行った。
【0282】
全てのデータポイントから平均バックグラウンド値を除いた後、Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Prism version 3.0cx for Macintosh,GraphPad Software[米国カリフォルニア州サンディエゴ])を使用して、非線型回帰分析からKi(app)データを算出した。
【0283】
(実施例18:RTK阻害アッセイ:)
従来の結合酵素アッセイ(Fox,ら,Protein Sci.,(1998)7,2249)を使用して、化合物のRlk阻害能力をスクリーニングした。このアッセイは、20mM MOPS(pH 7.0)、10mM MgCl、0.1% BSA及び1mM DTTの混合物中で実施した。このアッセイでの最終基質濃度は、100μM ATP(Sigma Chemicals)及び10μMペプチド(Poly Glu:Tyr 4:1)であった。このアッセイは40nM Rlkの存在下にて30℃で実施した。結合酵素系の化合物の最終濃度は、2.5mMホスホエノールピルビン酸塩、300μM NADH、30μg/mLピルビン酸キナーゼ及び10μg/mL乳酸デヒドロゲナーゼであった。
【0284】
ATP及び被験化合物を除く前述の試薬全てを含むアッセイの緩衝原液を調製した。この緩衝原液60μLを96穴プレートに入れ、連続して希釈した被験化合物(通常は最終濃度7.5μMから始める)を含むDMSO原液2μLを添加した。このプレートを30℃で10分間プレインキュベートし、その後ATP5μLを添加することによって反応を開始した。反応の初速度を10分間、Molecular Devices SpectraMax Plusプレートリーダーで測定した。Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Prism version 3.0cx for Macintosh,GraphPad Software[米国カリフォルニア州サンディエゴ])を使用して、非線型回帰分析からIC50及びKiデータを算出した。
【0285】
一般的に本発明の化合物は、RLKの阻害において有効である。好ましい化合物は、結合酵素アッセイで1μMを超えるKi値を示した
【0286】
【数16】

好ましい化合物は、結合酵素アッセイで1μM未満のKi値を示した
【0287】
【数17】

ここまで本発明の幾つかの実施例を説明してきたが、本発明者等の提示した基本的な実施例を変えて、本発明の化合物及び方法を使用するその他の実施形態を提供できる場合があることは明白である。そのため、本発明の適用範囲は、実施例の形で示した特定の実施形態ではなく、添付の請求項によって定義されることに留意されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学式I:
【化1】

又はその薬学的に許容される塩の化合物であって、式中、
及びRがそれぞれ独立してH、ハロゲン、又は、場合によりハロゲン、C1−2脂肪族化合物、OCH、NO、NH、CN、NHCH、SCH又はN(CH)で置換されるC1−4脂肪族化合物であり;
が、窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する、3〜8員の飽和、部分不飽和若しくは完全不飽和の単環系、又は窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有する、8〜12員の飽和、部分不飽和若しくは完全不飽和の二環系であり;Rが場合によりJで置換され;
及びXがそれぞれ独立して、−C(O)−、−NR−又は−SO−であって、X又はXの一方が−NR−であり、X又はXの他方が−C(O)−又は−SO−であり;
RがH、未置換C1−6脂肪族化合物であり;
が−T−Qであり;
Tは結合又はC1−6脂肪族化合物であり、ここで該鎖の最高3個のメチレン単位が場合により独立してG又はG’で置き換えられ、ここでGが−NR−、−O−、−S−、−SO−、SO−、−CS−又は−CO−であり;G’がシクロプロピル、C≡C又はC=Cであり;Tは場合によりJと置換され;
Qが独立して水素、C1−6脂肪族、又は、窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和、部分不飽和又は完全不飽和の単環化合物、あるいは窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有する8〜12員の飽和、部分不飽和若しくは完全不飽和の二環系であって;Qは場合によりJで置換され;
は場合により置換されるR、C6−10アリール、C3−10脂環化合物、5〜14員ヘテロアリール、又は5〜14員ヘテロシクリルであり;2個のR基は、それらが結合する原子と一緒になって、場合により置換される3〜7員単環化合物又は8〜14員二環化合物を形成し;
アリール又はヘテロアリール基の不飽和炭素原子上のJ、J及びJ置換基が、ハロゲン;−R;場合によりRで置換されるC1−6アルキルであって、該鎖の最高3個のメチレン単位が場合により独立して、化学的に安定した配列において−NR−、−O−、−S−、−SO−、SO−、−CO−、シクロプロピル、C≡C又はC=Cで置き換えられるもの;−OCF;−SCF;C1−4ハロアルキル;−CH−ハロゲン;場合によりRで置換されるC6−10アリール;場合によりRで置換される5〜12員ヘテロアリール;場合によりRで置換される3〜12員複素環;場合によりRで置換される−O(Ph);場合によりRで置換される−CH=CH(Ph);場合によりRで置換される−CH≡CH(Ph);場合によりRで置換される−C1−6アルキル−(3〜12員複素環);場合によりRで置換される−C1−6アルキル−(C6−10アリール);場合によりRで置換される−C1−6アルキル−(5〜10員ヘテロアリール);場合によりRで置換されるC3−10脂環化合物;場合によりRで置換される−C1−6アルキル−(C3−10脂環化合物);場合によりRで置換される−(C1−6アルキル)−OR;場合によりRで置換される−(C1−6アルキル)−N(R;場合によりRで置換される−(C1−6アルキル)−SR;−NO;−CN;−OR;−SR;−N(R;−NRC(O)R;−NR−C(S)R;−NRC(O)N(R;−NRC(S)N(R;−NRCO;−NRNRC(O)R;−NRNRC(O)N(R;−NRNRCO;−C(O)C(O)R;−C(O)CHC(O)R;−CO;−C(O)R;−C(S)R;−C(O)N(R;−C(S)N(R;−OC(O)N(R;−OC(O)R;−C(O)N(OR)R;−C(NOR)R;−S(O);−S(O);−SON(R;−S(O)R;−NRSON(R;−NRSO;−N(OR)R;−C(=NH)−N(R;−P(O);−PO(R;−OPO(R;及び−(CH0−2NHC(O)Rから選択され;
各Rが、水素、NH、NH(C1−4脂肪族化合物)、N(C1−4脂肪族化合物)、ハロゲン、OH、O(C1−4脂肪族化合物)、NO、CN、COH、CO(C1−4脂肪族化合物)、O(ハロC1−4脂肪族化合物)、ハロC1−4脂肪族化合物、場合により置換されるC1−6脂肪族化合物から独立して選択され、最高2個のメチレン単位が、O、N若しくはS、場合により置換される5〜8員複素環、未置換5〜6員ヘテロアリール、未置換3〜6員脂環化合物、未置換フェニル、未置換−O(Ph)、未置換−CH(Ph)、未置換−CH(5〜7員複素環)又は未置換−CH(5〜6員ヘテロアリール)で場合により置き換えられ;或いは、上述の定義にかかわらず、2個の独立したRが同じ置換基又は異なる置換基上で発生した場合に、各R基が結合する原子と一緒になって、場合により置換される3〜12員の飽和、部分不飽和又は完全不飽和の、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有する単環又は二環を形成し;
の脂肪族基上の、又は2個のR基で形成される環上の任意の置換基が、NH、NH(C1−4脂肪族化合物)、N(C1−4脂肪族化合物)、ハロゲン、C1−4脂肪族化合物、OH、O(C1−4脂肪族化合物)、NO、CN、COH、CO(C1−4脂肪族化合物)、O(ハロC1−4脂肪族化合物)及びハロC1−4脂肪族化合物から選択され、ここでRの上述のC1−4脂肪族基がそれぞれ未置換であり;
脂肪族基、ヘテロ脂肪族基又は非芳香族の脂環の飽和炭素上のJ、J及びJ置換基が、アリール又はヘテロアリール基の不飽和炭素の上述の置換基から選択され、これらには追加として=O、=S、=NNHR、=NN(R、=NNHC(O)R、=NNHCO(アルキル)、=NNHSO(アルキル)、=NOH及び=NRが含まれ、各Rが水素又は場合により置換されるC1−6脂肪族化合物から独立して選択され;
非芳香族の複素環の窒素上、又はヘテロアリール環の窒素上のJR、J及びJ置換基が、−R、−N(R、−C(O)R、−CO、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−SO、−SON(R、−C(=S)N(R+1、−C(=NH)−N(R及び−NRSOから選択され;ここでRが水素、場合により置換されるC1−6脂肪族化合物、場合により置換されるフェニル、場合により置換される−O(Ph)、場合により置換される−CH(Ph)、場合により置換される−(CH(Ph);場合により置換される−CH=CH(Ph);又は、酸素、窒素及び硫黄から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する未置換の5〜6員ヘテロアリール又は複素環から選択されるか、上述の定義にかかわらず、2個の独立したRが同じ置換基又は異なる置換基上で発生した場合に、各R基が結合する原子と一緒になって、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有する場合により置換される3〜12員の飽和、部分不飽和又は完全不飽和の単環又は二環を形成し;
の脂肪族基又はフェニル環上の任意の置換基が、−NH、NH(C1−4脂肪族化合物)、−N(C1−4脂肪族化合物)、ハロゲン、C1−4脂肪族化合物、−OH、−O(C1−4脂肪族化合物)、−NO、−CN、−COH、−CO(C1−4脂肪族化合物)、−O(ハロC1−4脂肪族化合物)及びハロ(C1−4脂肪族化合物)から選択され、Rの上述のC1−4脂肪族化合物がそれぞれ未置換であるが;但し、
が4−ピリジル又は3−ピリジルであり、RがHであり、Xが−NR−であり、RがHであり、Xが−C(O)−である場合に;
a)RがCH(CH)OC(=O)CH;CHOC(=O)CH;又はCHC(=O)CHではなく;
b)RがC1−6アルキル又はO(C1−6アルキル)ではなく;
が4ピリジルであり、R及びRがHであり、Xが−NR−であり、RがHであり、Xが−C(O)−である場合;
a)Tが結合である場合に、Qがメチル、イミダゾール、OCH又はHではなく;
b)Tが−CH−である場合に、Qが3−OH−フェニル、4−OH−フェニル、4−ピリジル、3−NO−フェニル、OH、−O(C=O)CH又は−C(=O)CHではなく;
c)Tが−CH(CH)−である場合に、Qが−OC(=O)CHではなく;
d)Tが−CHCH−である場合に、Qが2−ピリジル又は−COOHではなく;
e)TがCH(CH)OC(=O)−である場合に、QがCHではなく;
が4−ピリジルであり、RがHであり、RがHではなく、Xが−NR−であり、RがHであり、Xが−C(O)−である場合;
a)Tが結合である場合に、QがCHではなく;
b)RがCH(CH)OC(=O)CHではなく;
が2,4−ピリミジルであり、R及びRがHであり、Xが−NR−であり、RがHであり、Xが−C(O)−である場合;
a)Rがメチル、NHCH又は−NHC(=O)NHではなく;
が4−ピリジルであり、R及びRがHであり、Xが−NR−であり、RがHであり、Xが−SO−である場合;
a)Tが結合である場合に、Qが場合により置換されるC6−10アリール又はC5−10ヘテロアリールではなく;
が4−チアゾリルであり、RがHであり、RがCHであり、Xが−C(O)−であり、Xが−NR−であり、RがHである場合;
a)Tが−CHCH−である場合に、QがN(CHではなく;
が未置換フェニルであり、R及びRがHであり、Xが−NR−であり、RがHであり、Xが−C(O)−である場合;
TがC脂肪族化合物であって、該鎖の1個のメチレン単位がGで置き換えられ;Gが−NR−であり;RがHである場合に;Qが2,6−ジ−イソプロピルフェニルではなく;
が未置換フェニルであり、RがHであり、RがCHであり、Xが−C(O)−であり、Xが−NR−であり、RがHである場合;
a)Tが結合である場合に、QがCH又はCHCHではなく;
b)Tが−CHCH−である場合に、Qが未置換フェニル又はN(CHCHではなく;
c)Tが−CHCHCH−である場合に、QがN(CHCHではなく;
d)RがNHではなく;
が未置換フェニルであり、RがHであり、RがCHであり、Xが−NR−であり、RがHであり、Xが−C(O)−である場合;
a)Tが−O−CH−である場合に、Qが未置換フェニルではなく;
が4−OCHフェニルであり、RがHであり、RがCHであり、Xが−NR−であり、RがHであり、Xが−C(O)−である場合;
a)Tが結合である場合に、QがCHではなく;
が窒素原子2個を有する6員ヘテロアリールであり;RがH、メチル又はエチルであり;Rがメチル又はエチルであり、Xが−NR−であり;RがHであり;Xが−C(O)−である場合;
a)RがCHではなく;
が−C(O)−であり、Xが−NR−であり、RがHである場合、RがH又はメチルではなく;

【化2】

であり、R及びRがHであり、Xが−NR−であり、RがHであり、Xが−C(O)−である場合、RはCHではなく;
が未置換フェニルであり、R及びRがHであり、Xが−C(O)−であり、Xが−NR−であり、RがHである場合、R
【化3】

ではない、化合物。
【請求項2】
Tが0又は1個のG基で場合により割り込まれるC1−3脂肪族化合物であって、GがO、NR及びSから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Tが−C1−2脂肪族化合物−G−であり、GがO又はNRであり、Gが化学的に安定した配列においてQに結合する、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Tが0個のG基で場合により割り込まれるC1−3脂肪族化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Tが0又は1個のG’基で場合により割り込まれるC1−3脂肪族化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Tが−CH−である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
Tが結合である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
及びRがそれぞれ独立してHである、請求項1〜7の何れかに記載の化合物。
【請求項9】
及びRの何れもがHである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
が、最高5個のJ基で場合により置換される5〜8員単環化合物である、請求項1〜9の何れかに記載の化合物。
【請求項11】
が、最高5個のJ基で場合により置換されるC3−8脂環化合物である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
が、最高5個のJ基で場合により置換されるC3−8シクロアルキルである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
が、最高5個のJ基で場合により置換されるC3−8シクロアルケニルである、請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
が、最高5個のJ基で場合により置換されるシクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル又はシクロヘプテニルである、請求項11に記載の化合物。
【請求項15】
が、最高5個のJ基で場合により置換される5〜6員アリール又はヘテロアリールである、請求項10に記載の化合物。
【請求項16】
が、最高5個のJ基で場合により置換される5〜6員ヘテロアリールである、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
が、1又は2個の窒素原子を有する6員ヘテロアリールであり、Rが、最高5個のJ基で場合により置換される、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
が、最高5個のJ基で場合により置換されるピリジン環である、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
が、最高5個のJ基で場合により置換される2−ピリジニルである、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
が、最高5個のJ基で場合により置換される3−ピリジニルである、請求項18に記載の化合物。
【請求項21】
が、最高5個のJ基で場合により置換される4−ピリジニルである、請求項18に記載の化合物。
【請求項22】
が、最高5個のJ基で場合により置換されるピリミジン環である、請求項17に記載の化合物。
【請求項23】
が、最高5個のJ基で場合により置換される2−4ピリミジニルである、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
が、最高5個のJ基で場合により置換される5員ヘテロアリール環である、請求項16に記載の化合物。
【請求項25】
が、最高5個のJ基で場合により置換されるチオフェン環である、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
が、最高5個のJ基で場合により置換されるピラゾール環である、請求項24に記載の化合物。
【請求項27】
が、最高5個のJ基で場合により置換されるフェニルである、請求項15に記載の化合物。
【請求項28】
各Jがオキソ又は=NOHから選択される、請求項1〜27の何れかに記載の化合物。
【請求項29】
各Jが、C1−6アルキル、C6−10アリール、−C1−6アルキル−C6−10アリール、C1−4ハロアルキル、−OR、−N(R、−SR、NO、CN,3〜12員複素環、−(C1−6アルキル)−OR、−(C1−6アルキル)−N(R、−(C1−6アルキル)−SR、−C(O)OR、−NRCOR、−COR、−CON(R、−SO、−SON(R、及びC1−6アルキルから選択され、該鎖の最高3個のメチレン単位が独立して、化学的に安定した配列において−NR−、−O−、−S−、−SO−、SO−又は−CO−で置き換えられ;各Jが場合により独立してRで置換される、請求項1〜27の何れかに記載の化合物。
【請求項30】
各Jが場合により独立してRで置換され、−OR、−N(R、−SR、−(C1−6アルキル)−OR、−(C1−6アルキル)−N(R、又は−(C1−6アルキル)−SRから選択される、請求項29に記載の化合物。
【請求項31】
各Jが独立して、場合により置換される5〜8員複素環、場合により置換される−NR(C1−4アルキル)N(R、場合により置換される−NR(C1−4アルキル)OR、−N(R、又は場合により置換される−NH(5〜6員複素環)から選択される、請求項29に記載の化合物。
【請求項32】
各Jが独立して、場合により置換される−NH(5〜6員複素環)から選択される、請求項31に記載の化合物。
【請求項33】
前記5〜6員複素環が1〜2個の窒素原子を含む、請求項32に記載の化合物。
【請求項34】
前記5〜6員複素環が、ピロリジン、ピペリジン又はピペラジンから選択される、請求項33に記載の化合物。
【請求項35】
及びXがそれぞれ独立して−C(O)−又は−NR−であって、X又はXの一方が−NR−であり、X又はXの他方が−C(O)−である、請求項1〜30の何れかに記載の化合物。
【請求項36】
がC(O)であり、XがNRである、請求項35に記載の化合物。
【請求項37】
がNRであり、XがC(O)である、請求項35に記載の化合物。
【請求項38】
Qが、窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する、3〜8員の飽和、部分不飽和若しくは完全不飽和の単環、又は窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有する、8〜12員の飽和、部分不飽和若しくは完全不飽和の二環系である、請求項1〜37の何れかに記載の化合物。
【請求項39】
QがC6−10アリール、C3−10脂環化合物、5〜14員ヘテロアリール又は5〜14員複素環である、請求項38に記載の化合物。
【請求項40】
QがC6−10アリール又は5〜14員ヘテロアリールである、請求項39に記載の化合物。
【請求項41】
Qが5〜6員アリール又はヘテロアリールである、請求項40に記載の化合物。
【請求項42】
Qがフェニルである、請求項41に記載の化合物。
【請求項43】
Qが最高3個のJ基で置換され、各JがCN、C1−6アルキル、C1−4ハロアルキル、−OR、−N(R、−SR、−(C1−6アルキル)−OR、−(C1−6アルキル)−N(R、−(C1−6アルキル)−SR、C1−6アリール、−C1−6アルキル−C6−10アリール、C3−10脂環化合物、−C1−6アルキル−(C3−10脂環化合物)、C3−10複素環、−C1−6アルキル−(C3−10複素環)、−C(O)OR、−NRCOR、−COR、−CON(R、−SO、−SON(R又はC1−6アルキルから選択され、最高3個のメチレン単位が化学的に安定した配列において−NR−、−O−、−S−、−SO−、SO−、−CO−、シクロプロピル、C≡C又はC=Cで場合により独立して置換され;各Jが場合により独立してRで置換される、請求項1〜42の何れかに記載の化合物。
【請求項44】
各Jが−SON(R、−SO、−NRC(O)OR、−C≡C−R、−C=C−R、フェニル、−O−Ph、−O−CHPh、C5−6ヘテロアリール、C3−7複素環又はC3−7脂環化合物である、請求項43に記載の化合物。
【請求項45】
各JがCN、C1−6アルキル、−CF、−OCF、−OR、−N(R、−SR、−CH−ハロゲン、−SCF、−(C1−6アルキル)−N(R、Cアリール、C5−6ヘテロアリール、−C(O)OR、−NRCOR、−COR又は−CON(Rである、請求項43に記載の化合物。
【請求項46】
が、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、sec−ブチル、n−ブチル、t−ブチル、OH、ハロゲン、−CH−ピロリジン、COCH、−(C1−4アルキル)0−1−O(C1−4アルキル)、−(C1−4アルキル)0−1−O(C1−4アルキル)OH、−(C1−4アルキル)0−1−NH(C1−4アルキル)、−(C1−4アルキル)0−1−N(C1−4アルキル)、又は−(C1−4アルキル)0−1−NHから選択される、請求項38〜45の何れかに記載の化合物。
【請求項47】
以下:
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

から選択される化合物。
【請求項48】
I−82〜I−85、II−88、II−89、II−90、II−91、II−92〜II−182、III−11〜III−54、IV−1から選択される化合物。
【請求項49】
請求項1〜48の何れかに記載の化合物及び薬学的に許容される担体、アジュバンド又はビヒクルを含む薬学的組成物。
【請求項50】
(a)患者;又は
(b)生物学的試料;
におけるTecファミリー(例えば、Tec、Btk、Itk/Emt/Tsk、Bmx、Txk/Rlk)キナーゼの活性を阻害する方法であって、請求項1の化合物を前記患者へ投与する工程、又は前記化合物を前記生物学的試料と接触させる工程を包含する方法。
【請求項51】
Itkキナーゼ活性を阻害する工程を包含する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
自己免疫性、炎症性、増殖性若しくは過増殖性疾患又は免疫介在性疾患から選択される疾患又は病態を治療する、又はその重症度を軽減する方法であって、請求項1〜48の何れかに記載の化合物を、それを必要とする患者に投与する工程を包含する方法。
【請求項53】
前記疾患又は疾病が、喘息、急性鼻炎、アレルギー性、萎縮性鼻炎、慢性鼻炎、膜性鼻炎、季節性鼻炎、サルコイドーシス、農夫肺、肺線維症、特発性間質性肺炎、慢性関節リウマチ、血清反応陰性脊椎関節症(強直性脊椎炎、乾癬性関節炎及びライター病を含む)、ベーチェット病、シェーグレン症候群、全身性硬化症、乾癬、全身性硬化症、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎及びその他の湿疹様皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、天疱瘡、水疱性天疱瘡、表皮水疱症、蕁麻疹、乾皮症、脈管炎、紅斑、皮膚性好酸球増多、ブドウ膜炎、円形脱毛症、春季結膜炎、脂肪便症、直腸炎、好酸球性胃腸炎、肥満細胞症、膵炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、食物関連アレルギー、多発性硬化症、アテローム性硬化症、後天性免疫不全症候群(AIDS)、紅斑性狼瘡、全身性狼瘡、エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、I型糖尿病、ネフローゼ症候群、好酸球性筋膜炎、高IgE症候群、結節癩、セザリー症候群、特発性血小板減少性紫斑病、血管再建術後の再狭窄、腫瘍、関節硬化症、全身性紅斑性狼瘡、同種移植拒絶(例えば腎、心、肝、肺、骨髄、皮膚及び角膜の移植後の急性及び慢性の同種移植拒絶)、及び慢性の移植片対宿主病である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
以下の化学式22の化合物であって:
【化15】

式中、
10がアミノ保護基であり;
11がH又はC1−6アルキルであるか、R10及びR11が、結合した窒素原子と一緒になってアミン保護基を形成し;
12がヒドロキシル保護基であり;並びに
が本明細書に記載の通りである、化合物。
【請求項55】
化学式Iの化合物を調製するプロセスであって、以下の化学式22の化合物と化合物R−Xとを反応させる工程を包含し、式中、Xが、以下の化学式23の化合物を得る上で適切な脱離基であり:
【化16】

式中、
10がアミノ保護基であり;
11がH又はC1−6アルキルであるか、R10及びR11が、結合した窒素原子と一緒になってアミン保護基を形成し;
12がヒドロキシル保護基であり;並びに
が本明細書に記載の通りである、プロセス。

【公表番号】特表2008−524233(P2008−524233A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546878(P2007−546878)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/045336
【国際公開番号】WO2006/065946
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】