炭化珪素半導体装置
【課題】従来よりオン抵抗が低くかつ高い耐圧を有する炭化珪素半導体装置を提供する。
【解決手段】この発明に従ったJFET10は、n型基板11と、p型層2、12と、n型層13と、ソース領域15と、ドレイン領域17と、ゲート領域16とを備える。n型基板11は、{0001}面に対するオフ角が32°以上である主表面11Aを有し、炭化珪素(SiC)からなる。p型層2、12は、n型基板11の主表面11A上に形成され、導電型がp型である。n型層13は、p型層2、12上に形成され、導電型がn型である。ソース領域15およびドレイン領域17は、n型層13において、互いに間隔を隔てて形成され、導電型がn型である。ゲート領域16は、n型層13において、ソース領域15とドレイン領域17との間の領域に形成され、導電型がp型である。
【解決手段】この発明に従ったJFET10は、n型基板11と、p型層2、12と、n型層13と、ソース領域15と、ドレイン領域17と、ゲート領域16とを備える。n型基板11は、{0001}面に対するオフ角が32°以上である主表面11Aを有し、炭化珪素(SiC)からなる。p型層2、12は、n型基板11の主表面11A上に形成され、導電型がp型である。n型層13は、p型層2、12上に形成され、導電型がn型である。ソース領域15およびドレイン領域17は、n型層13において、互いに間隔を隔てて形成され、導電型がn型である。ゲート領域16は、n型層13において、ソース領域15とドレイン領域17との間の領域に形成され、導電型がp型である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭化珪素半導体装置に関し、より特定的には、横型接合型電界効果トランジスタである炭化珪素半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭化珪素半導体装置として横型接合型電界効果トランジスタが知られている(たとえば、特開2003−68762号公報(特許文献1)参照)。このような横型接合型電界効果トランジスタでは、チャネル層内の電流の向きとドリフト層内の電界の向きがそれぞれ横方向となっている。そして、横型接合型電界効果トランジスタを炭化珪素(SiC)からなる基板上に形成する場合、当該基板としては4H−SiCからなり、主表面の面方位が{0001}面となっている基板を用いることが一般的である。上記のような炭化珪素半導体装置では、チャネル層内の電流の向きとドリフト層内の電界の向きとが、上記基板の主表面に平行な方向(つまり、{0001}面に平行な方向(たとえば[11-20]方向など)となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−68762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の炭化珪素半導体装置では、チャネル層内での電流の向きが{0001}面に平行な方向となっているため、当該チャネル層内での電子の移動度が他の方向に電流を流す場合に比べて低くなっていた。具体的には、{0001}面に平行な方向(たとえば[11−20]方向)における電子の移動度は、{0001}面に垂直な方向における電子の移動度の約0.8倍である。このため、上述した従来の炭化珪素半導体装置では、一般的な炭化珪素を用いた場合でのオン抵抗の理論値より高いオン抵抗を示すことになっていた。
【0005】
さらに、上述した従来の炭化珪素半導体装置では、ドリフト層において{0001}面に平行な方向に電界が印加されるが、当該{0001}面に平行な方向における炭化珪素の絶縁破壊電界は、{0001}面に垂直な方向における絶縁破壊電界の約0.75倍となっている。そのため、上述した従来の炭化珪素半導体装置では、一般的な炭化珪素を用いた場合での耐圧の理論値より低い耐圧を示すことになっていた。このように、従来の炭化珪素半導体装置は、炭化珪素の特性を十分に発揮させているとは言えなかった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するために成されたものであり、この発明の目的は、従来よりオン抵抗が低くかつ高い耐圧を有する炭化珪素半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に従った炭化珪素半導体装置は、基板と、第1半導体層と、第2半導体層と、ソース領域と、ドレイン領域と、ゲート領域とを備える。基板は、{0001}面に対するオフ角が32°以上である主表面を有し、炭化珪素からなる。第1半導体層は、基板の主表面上に形成され、導電型が第1導電型である。第2半導体層は、第1半導体層上に形成され、導電型が第2導電型である。ソース領域およびドレイン領域は、第2半導体層において、互いに間隔を隔てて形成され、導電型が第2導電型である。ゲート領域は、第2半導体層において、ソース領域とドレイン領域との間の領域に形成され、導電型が第1導電型である。
【0008】
このようにすれば、本発明による炭化珪素半導体装置は横型接合型電界効果トランジスタであって、ドリフト層における電界の印加方向が基板の主表面と平行な方向(つまり{0001}面に対するオフ角が32°以上となっている面の方向)となっているので、当該電界の印加方向が{0001}面に平行な方向となっている従来の炭化珪素半導体装置より耐圧を10%以上高くすることができる。また、本発明によれば、炭化珪素半導体装置におけるチャネル層内での電流の向きが、{0001}面に対するオフ角が32°以上となっている基板の主表面と平行な方向となっているので、従来の炭化珪素半導体装置(チャネル層での電流の向きが{0001}面に平行な方向となっている場合)よりチャネル層内での電子の移動度を高くすることができる。このため、従来の炭化珪素半導体装置よりオン抵抗を低減できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、{0001}面に対するオフ角が大きな結晶面を主表面とする基板を用いることで、従来よりオン抵抗が低くかつ高い耐圧を有する炭化珪素半導体装置を得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に従った炭化珪素半導体装置の実施の形態1を示す断面模式図である。
【図2】図1に示した炭化珪素半導体装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図3】図1に示した炭化珪素半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【図4】図1に示した炭化珪素半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【図5】図1に示した炭化珪素半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【図6】図1に示した炭化珪素半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【図7】図1に示した炭化珪素半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【図8】図1に示した炭化珪素半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【図9】図1に示した炭化珪素半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【図10】図1に示した炭化珪素半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【図11】本発明に従った炭化珪素半導体装置の実施の形態2を示す断面模式図である。
【図12】炭化珪素半導体装置における基板の主表面の{0001}面からの結晶面の傾きと、ドリフト部での破壊電界強度およびチャネルでの電子移動度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0012】
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明による炭化珪素半導体装置の実施の形態1を説明する。図1に示した炭化珪素半導体装置はJFET(Junction Field Effect Transistor;接合型電界効果トランジスタ)である。図1に示したJFET10は、炭化珪素(SiC)からなり、導電型がn型であるn型基板11と、n型基板11上に形成された電界緩和層であるp型層2と、p型層2上に形成された耐圧保持層としてのp型層12と、p型層12上に形成されたn型層13と、n型層13上に形成されたRESURF(リサーフ)層としてのp型層14とを備えている。ここで、上記p型層2、12、14およびn型層13は、それぞれ導電型がp型およびn型であるSiCからなる層である。なお、図1に示したJFETは、図1の紙面に垂直な方向(n型基板11の主表面に沿った方向)に複数個並ぶように配置されていてもよい。また、図1ではp型層2とp型層12とが形成されているが、n型基板11の主表面11A上に直接p型層12を形成してもよい。
【0013】
n型基板11の主表面11Aは、{0001}面に対するオフ角が32°以上となっている。また、後述するようにp型層2、p型層12、n型層13、p型層14は、n型基板11の主表面11A上にエピタキシャル成長された層であるため、それぞれの層における結晶の面方位は基本的にn型基板11の面方位と同様になっている。そのため、各層の主表面(n型基板11の主表面11Aと平行な表面)は、それぞれn型基板11と同様に{0001}面に対するオフ角が32°以上となっている。
【0014】
p型層14およびn型層13には、n型層13よりも高濃度の導電型がn型である不純物(n型不純物)を含むソース領域15およびドレイン領域17が形成されるとともに、ソース領域15およびドレイン領域17に挟まれるように、p型層12、14よりも高濃度の導電型がp型である不純物(p型不純物)を含むゲート領域16が形成されている。すなわち、ソース領域15、ゲート領域16およびドレイン領域17は、それぞれp型層14を貫通してn型層13に至るように形成されている。また、ソース領域15、ゲート領域16およびドレイン領域17の底部は、n型層13の内部において、p型層12の上部表面(p型層12とn型層13との境界部)から間隔を隔てて配置されている。
【0015】
また、ソース領域15から見てゲート領域16とは反対側には、p型層14の上部表面(n型層13の側とは反対側の主面)からp型層14を貫通してn型層13に至るように、溝部31が形成されている。つまり、溝部31の底壁は、p型層12とn型層13との界面から間隔を隔て、n型層13の内部に位置している。さらに、溝部31の底壁からn型層13を貫通し、p型層12に至るように、p型層12およびp型層14よりも高濃度のp型不純物を含む電位保持領域23が形成されている。この電位保持領域23の底部は、n型基板11の上部表面(n型基板11とp型層2との境界部)から間隔を隔てて(より具体的には、p型層2とp型層12との境界部からから間隔を隔ててp型層12の内部に)配置されている。
【0016】
さらに、ソース領域15、ゲート領域16、ドレイン領域17および電位保持領域23のそれぞれの上部表面に接触するように、コンタクト電極19が形成されている。コンタクト電極19は、ソース領域15、ゲート領域16、ドレイン領域17および電位保持領域23とオーミック接触可能な材料、たとえばNiSi(ニッケルシリサイド)からなっている。
【0017】
そして、隣接するコンタクト電極19同士の間には、酸化膜18が形成されている。より具体的には、絶縁層としての酸化膜18が、p型層14の上部表面、溝部31の底壁および側壁において、コンタクト電極19が形成されている領域以外の領域全体を覆うように形成されている。これにより、隣り合うコンタクト電極19同士の間が絶縁されている。
【0018】
さらに、ソース領域15、ゲート領域16およびドレイン領域17上のコンタクト電極19の上部表面に接触するように、ソース電極25、ゲート電極26およびドレイン電極27がそれぞれ形成されている。これにより、ソース電極25、ゲート電極26およびドレイン電極27は、コンタクト電極19を介して、それぞれソース領域15、ゲート領域16およびドレイン領域17と電気的に接続されている。また、ソース電極25は、電位保持領域23上のコンタクト電極19の上部表面にも接触し、コンタクト電極19を介して電位保持領域23とも電気的に接続されている。つまり、ソース電極25は、ソース領域15上のコンタクト電極19の上部表面上から電位保持領域23上のコンタクト電極19の上部表面上にまで延在するように形成されている。これにより、電位保持領域23上のコンタクト電極19は、ソース領域15上のコンタクト電極19と同電位に保持されている。
【0019】
ソース電極25、ゲート電極26およびドレイン電極27は、たとえばアルミニウム(Al)などの導電体から構成されている。このソース電極25、ゲート電極26およびドレイン電極27は、JFET10が並ぶ方向に延在することにより、コンタクト電極19を介して、それぞれ複数のJFET10のソース領域15同士、ゲート領域16同士およびドレイン領域17同士を電気的に接続している。このようにして、上記複数個のJFET10は、ソース領域15同士を接続するソース電極25と、ドレイン領域17同士を接続するドレイン電極27と、ゲート領域16同士を接続するゲート電極26とにより並列に接続されている。
【0020】
また、図1に示したJFET10では、酸化膜18およびゲート電極26を覆うと共に、ソース電極25とドレイン電極27との間の領域を充填するように、絶縁体からなる絶縁保護膜28が形成されている。絶縁保護膜28においては、ソース領域15および電位保持領域23上の領域と、ドレイン領域17上の領域とにそれぞれ開口部33、34が形成されている。開口部33、34の内部に、上記ソース電極25およびドレイン電極27が配置されている。ソース電極25およびドレイン電極27の上部表面は絶縁保護膜28の上部表面より上に位置している(つまり、ソース電極25とドレイン電極27とはそれぞれその上部が絶縁保護膜28の上部表面より突出している)。そして、ソース電極25、ゲート電極26およびドレイン電極27は、それぞれソース電極25、ゲート電極26およびドレイン電極27を外部と接続するための、図示していないソース電極パッド、ゲート電極パッドおよびドレイン電極パッドと電気的に接続されている。これらのソース電極パッド、ゲート電極パッドおよびドレイン電極パッドは、絶縁保護膜28から露出している。これにより、並列に接続されたJFET10のソース領域15、ゲート領域16およびドレイン領域17に対して、外部から電圧を印加することが可能となっている。そして、JFET10が並列に接続されていることにより、JFET10を含む半導体装置は電流容量の大容量化に対応することができる。
【0021】
次に、JFET10が、たとえばノーマリーオン型である場合について、その動作を説明する。図1を参照して、ゲート電極26の電位が0Vの状態では、n型層13において、ドレイン領域17とゲート領域16とで挟まれた領域および当該挟まれた領域とp型層12とで挟まれた領域、ならびにゲート領域16とp型層12とで挟まれた領域は空乏化されておらず、ソース領域15とドレイン領域17とはn型層13を介して電気的に接続された状態となっている。そのため、ソース電極25とドレイン電極27との間に電界が印加されると、ソース領域15とドレイン領域17との間を電子が移動することにより、ソース電極25とドレイン電極27との間に電流が流れる(オン状態)。
【0022】
一方、ゲート電極26に負の電圧を印加していくと、上記電子が移動すべきドリフト領域(ゲート領域16とドレイン領域17との間に位置するn型層13とp型層14との部分)の空乏化が進行し、ソース領域15とドレイン領域17とは電気的に遮断された状態となる。そのため、ソース領域15とドレイン領域17との間を電子が移動することができず、電流は流れない(オフ状態)。ここで、本実施の形態におけるJFET10は、n型層13上に接するようにp型層14(リサーフ層)が形成されたRESURF型JFETとなっている。そのため、上記オフ状態においては、ドリフト領域内の空乏層がn型層13とp型層14との界面から上下方向(厚み方向)に伸張する。その結果、ドリフト領域内の電界分布が均一となり、ゲート領域16付近の電界集中が緩和され、耐圧が向上している。
【0023】
また、図1に示したJFET10では、ソース領域15からドレイン領域17に向けて流れる電子の向きを、上述したようにn型基板11の主表面に沿った方向(つまり{0001}面に対するオフ角が32°以上となっている結晶面に沿った方向)としているので、従来のJFETより(つまり当該電子の向きが{0001}面に沿った方向となっている場合より)電子の移動度を高くできる。このため、JFET10でのオン抵抗を従来より低減できる。また、本発明によるJFET10のドリフト層における電界の印加方向も、上記{0001}面に対するオフ角が32°以上となっている結晶面に沿った方向となっているので、上述した従来のJFETより耐圧を高くすることができる。
【0024】
次に、図2〜図10を参照して、実施の形態1における炭化珪素半導体装置であるJFET10の製造方法について説明する。
【0025】
図2を参照して、実施の形態1におけるJFET10の製造方法においては、まず、工程(S10)として、基板準備工程が実施される。具体的には、工程(S10)では、図5に示すように、高濃度のn型不純物を含むSiCからなるn型基板11が準備される。また、当該n型基板11の主表面は、{0001}面に対するオフ角が32°以上、より好ましくは当該オフ角が38°以上となっている。このようなn型基板11は、従来周知の任意の方法で得る事ができる。たとえば、1つの主面が{0001}面となっているSiCインゴットを、所定の結晶面が露出するように({0001}面に対して傾斜した方向に沿って)スライスすることにより、当該n型基板11を得る事ができる。
【0026】
次に、図2を参照して、工程(S20)としてエピタキシャル成長工程が実施される。この工程(S20)では、図3を参照して、工程(S10)において準備されたn型基板11の一方の主面上に、たとえば気相エピタキシャル成長によりSiCからなるp型層2、p型層12、n型層13およびp型層14が順次形成される。気相エピタキシャル成長においては、たとえば材料ガスとしてシラン(SiH4)ガスおよびプロパン(C3H8)ガスを用い、キャリアガスとして水素(H2)ガスを採用することができる。また、p型層を形成するためのp型不純物源としては、たとえばジボラン(B2H6)やトリメチルアルミニウム(TMA)を、n型層を形成するためのn型不純物としては、たとえば窒素(N2)を採用することができる。
【0027】
次に、図2を参照して、工程(S30)として、溝部形成工程が実施される。具体的には、工程(S30)では、図4に示すように、p型層14の上部表面14Aからp型層14を貫通してn型層13に至るように、溝部31が形成される。溝部31の形成は、たとえば所望の溝部31の形成位置に開口を有するマスク層をp型層14の上部表面14A上に形成した後、たとえばSF6ガスを用いたドライエッチングにより実施することができる。
【0028】
次に、工程(S40)として、第1イオン注入工程が実施される。この工程(S40)では、高濃度のp型不純物を含む領域であるゲート領域および電位保持領域(ベースコンタクト領域)が形成される。具体的には、図5を参照して、まず、p型層14の上部表面14A上および溝部31の内壁にレジストが塗布された後、露光および現像が行なわれ、所望のゲート領域16および電位保持領域23の平面形状に応じた領域に開口を有するレジスト膜が形成される。そして、このレジスト膜をマスクとして用いて、Al(アルミニウム)、B(ホウ素)などのp型不純物がイオン注入によりp型層14、n型層13およびp型層12に導入される。これにより、ゲート領域16および電位保持領域23が形成される。
【0029】
次に、工程(S50)として、第2イオン注入工程が実施される。この工程(S50)では、高濃度のn型不純物を含む領域であるソース領域15およびドレイン領域17が形成される。具体的には、図6を参照して、まず、工程(S40)と同様の手順で、所望のソース領域15およびドレイン領域17の平面形状に応じた領域に開口を有するレジスト膜が形成される。そして、このレジスト膜をマスクとして用いて、P(リン)、N(窒素)などのn型不純物がイオン注入によりp型層14およびn型層13に導入される。これにより、ソース領域15およびドレイン領域17が形成される。
【0030】
次に、図2を参照して、工程(S60)として活性化アニール工程が実施される。この工程(S60)では、工程(S50)において形成されたレジスト膜が除去された後、工程(S40)および工程(S50)においてイオン注入が実施されたp型層14、n型層13およびp型層12が加熱されることにより、上記イオン注入によって導入された不純物を活性化させる熱処理である活性化アニールが実施される。活性化アニールは、たとえばアルゴンガス雰囲気中において、1700℃程度の温度に30分間程度保持する熱処理を実施することにより行なうことができる。
【0031】
次に、工程(S70)として、酸化膜形成工程が実施される。この工程(S70)では、図7を参照して、工程(S10)〜工程(S60)までが実施されて所望のイオン注入層を含むp型層14、n型層13、p型層12およびp型層2が形成されたn型基板11が熱酸化される。これにより、二酸化珪素(SiO2)からなる酸化膜18が、p型層14の上部表面14Aおよび溝部31の内壁を覆うように形成される。
【0032】
次に、図2を参照して、工程(S80)としてコンタクト電極形成工程が実施される。この工程(S80)では、図8を参照して、ソース領域15、ゲート領域16、ドレイン領域17および電位保持領域23のそれぞれの上部表面に接触するように、たとえばNiSiからなるコンタクト電極19が形成される。具体的には、まず、工程(S40)と同様の手順で所望のコンタクト電極19の平面形状に応じた領域に開口を有するレジスト膜が形成される。そして、当該レジスト膜をマスクとして用いて、たとえばRIE(Reactive Ion Etching;反応性イオンエッチング)により、ソース領域15、ゲート領域16、ドレイン領域17および電位保持領域23上の酸化膜18が除去される。
【0033】
その後、たとえばNi(ニッケル)が蒸着されることにより、酸化膜18から露出したソース領域15、ゲート領域16、ドレイン領域17および電位保持領域23上、およびレジスト膜上にニッケル層が形成される。さらに、レジスト膜が除去されることにより、レジスト膜上のニッケル層が除去(リフトオフ)されて、酸化膜18から露出したソース領域15、ゲート領域16、ドレイン領域17および電位保持領域23上にニッケル層が残存する。そして、たとえば900°以上1000℃以下といった温度範囲の所定温度(たとえば950℃)に加熱する熱処理が実施されることにより、ニッケル層がシリサイド化する。これにより、図8に示すように、ソース領域15、ゲート領域16、ドレイン領域17および電位保持領域23にオーミック接触可能なNiSiからなるオーミック電極であるコンタクト電極19が形成される。
【0034】
次に、図2を参照して、工程(S90)として、電極形成工程が実施される。この工程(S90)では、図9を参照して、ゲート領域16上のコンタクト電極19の上部表面に接触するゲート電極26が形成される。ゲート電極26およびドレイン電極27は、たとえばソース電極25、ゲート電極26およびドレイン電極27を形成すべき所望の領域に開口を有するレジスト膜を形成し、Alを蒸着した後、レジスト膜とともにレジスト膜上のAlを除去すること(リフトオフ)により形成することができる。
【0035】
次に、図2を参照して、工程(S100)として、絶縁保護膜形成工程が実施される。この工程(S100)では、図10および図1を参照して、ゲート電極26、コンタクト電極19および酸化膜18を覆い、たとえばSiO2などの絶縁体からなる絶縁保護膜28が形成される。具体的には、たとえばCVD法(Chemical Vapor Deposition;化学蒸着法)により、ゲート電極26、ソース領域15とドレイン領域17と電位保持領域23との上にそれぞれ配置されたコンタクト電極19、および酸化膜18を覆うSiO2膜からなる絶縁保護膜28(図10参照)が形成される。
【0036】
次に、図4を参照して、工程(S110)として、電極パッド形成工程が実施される。この工程(S110)では、図1を参照して、ソース領域15および電位保持領域23上のコンタクト電極19の上部表面に接触するソース電極25、ドレイン領域17上のコンタクト電極19の上部表面に接触するドレイン電極27、さらにソース電極25に電気的に接続されたソース電極パッド、ゲート電極26に電気的に接続されたゲート電極パッド、ドレイン電極27に電気的に接続されたドレイン電極パッドが形成される。具体的には、まず図10に示すように絶縁保護膜28においてソース領域15、ドレイン領域17および電位保持領域23上に位置する領域に、フォトリソグラフィ法を用いて開口部33、34が形成される。開口部33、34の形成方法としては、たとえば絶縁保護膜28の主表面上に、開口部33、34の平面形状と同様の開口を有するレジスト膜を形成し、当該レジスト膜をマスクとして用いて絶縁保護膜28の一部をエッチングなどにより除去する。このようにして、図10に示すように絶縁保護膜28において上記開口部33、34が形成される。なお、上記のように開口部33、34が形成された後、レジスト膜を従来周知の任意の方法により除去すれば、図10に示すような構造を得る事ができる。
【0037】
そして、ソース電極25およびドレイン電極27は、たとえばソース電極25およびドレイン電極27を形成すべき所望の領域(上記開口部33、34が形成された領域)に開口を有するレジスト膜を形成し、Alを蒸着した後、レジスト膜とともにレジスト膜上のAlを除去すること(リフトオフ)により形成することができる。また、ソース電極25に接続されるソース電極パッド、ドレイン電極27に接続されるドレイン電極パッド、ゲート電極26に接続されるゲート電極パッドは、たとえば上記ソース電極25およびドレイン電極27を形成するときに同時に形成してもよい。すなわち、上記レジスト膜において、ゲート電極26と一部重なる領域であってゲート電極パッドが形成されるべき領域に開口を形成しておき、ソース電極25およびドレイン電極27となるべきAlを蒸着するときに、当該開口内部に同時にAlを蒸着し、その後リフトオフによってゲート電極パッドを形成してもよい。また、ソース電極パッドおよびドレイン電極パッドについても、同様に上記ゲート電極パッドを形成する方法と同様の方法により形成してもよい。
【0038】
なお、ソース電極25およびドレイン電極27を形成するために用いる上記レジスト膜として、上記開口部33、34を形成するために用いたレジスト膜を流用してもよい。すなわち、上記のように開口部33、34を、レジスト膜をマスクとしてエッチングにより形成した後、当該レジスト膜を除去することなく、上記のようにAlなどの電極を構成する導電体膜を形成してから、リフトオフにより開口部33、34内部にソース電極25およびドレイン電極27を形成してもよい。
【0039】
ここで、工程(S10)において準備されたn型基板11上に、工程(S20)〜(S80)においては、上記JFET10の構造が複数個並べて形成されてもよい。そして、工程(S90)〜工程(S110)においてソース電極25、ゲート電極26およびドレイン電極27が、図1を参照して、コンタクト電極19を介して、それぞれ複数の上記JFET10のソース領域15同士、ゲート領域16同士およびドレイン領域17同士を接続するように形成される。これにより、複数個のJFET10が、ソース領域15同士を接続するソース電極25と、ドレイン領域17同士を接続するドレイン電極27と、ゲート領域16同士を接続するゲート電極26とにより並列に接続される。以上の工程により、本実施の形態におけるJFET10は完成する。
【0040】
(実施の形態2)
図11を参照して、本発明による炭化珪素半導体装置の実施の形態2を説明する。図11に示した炭化珪素半導体装置は、図1に示した炭化珪素半導体装置と同様にJFETであって、基本的には図1に示したJFET10と同様の構造を備えるが、n型層13上には図1に示すようなp型層14は形成されていない点が、図1に示したJFET10とは異なっている。すなわち、図11に示したJFET10では、n型層13においてソース領域15、ゲート領域16、ドレイン領域17が形成されており、また、n型層13の上部表面(および溝部31の内壁)上に酸化膜18が形成されている。
【0041】
図11に示したJFET10においては、図1に示したJFET10におけるリサーフ層としてのp型層14が形成されていることによる効果は得られないものの、n型基板11が、{0001}面に対するオフ角が32°以上である主表面を有することから、図1に示したJFET10と同様に、従来のJFETよりチャネル層内での電子の移動度を高くするとともに、耐圧も高くすることができる。
【0042】
また、図11に示したJFET10の製造方法は、基本的に図1に示したJFET10の製造方法と同様であるが、図2に示したエピタキシャル成長工程である工程(S20)において、n型基板11の主表面上に、p型層2、p型層12、n型層13のみが形成される(つまりn型層13上にはリサーフ層であるp型層14は形成されない)。この点のみ、図1に示したJFET10の製造方法と異なっており、他の製造工程は図1に示したJFET10の製造工程と同様である。
【0043】
以下、上述した実施の形態と一部重複する部分もあるが、本発明の特徴的な構成を列挙する。この発明に従った炭化珪素半導体装置であるJFET10は、基板としてのn型基板11と、第1半導体層(p型層2、12)と、第2半導体層(n型層13)と、ソース領域15と、ドレイン領域17と、ゲート領域16とを備える。n型基板11は、{0001}面に対するオフ角が32°以上である主表面11Aを有し、炭化珪素(SiC)からなる。第1半導体層(p型層2、12)は、n型基板11の主表面11A上に形成され、導電型が第1導電型(p型)である。第2半導体層(n型層13)は、第1半導体層(p型層2、12)上に形成され、導電型が第2導電型(n型)である。ソース領域15およびドレイン領域17は、第2半導体層(n型層13)において、互いに間隔を隔てて形成され、導電型が第2導電型(n型)である。ゲート領域16は、第2半導体層(n型層13)において、ソース領域15とドレイン領域17との間の領域に形成され、導電型が第1導電型(p型)である。
【0044】
このようにすれば、本発明による炭化珪素半導体装置は横型接合型電界効果トランジスタであって、ドリフト層(ゲート領域16とドレイン領域17との間の領域)における電界の印加方向がn型基板11の主表面11Aと平行な方向(つまり{0001}面に対するオフ角が32°以上となっている面の方向)となっているので、当該電界の印加方向が{0001}面に平行な方向となっている従来の炭化珪素半導体装置より耐圧を10%以上高くすることができる。また、本発明によれば、炭化珪素半導体装置におけるチャネル層(n型層13)内での電流の向きが、{0001}面に対するオフ角が32°以上となっているn型基板11の主表面11Aと平行な方向となっているので、従来の炭化珪素半導体装置(チャネル層での電流の向きが{0001}面に平行な方向となっている場合)よりチャネル層(n型層13)内での電子の移動度を高くすることができる。このため、従来の炭化珪素半導体装置よりオン抵抗を低減できる。
【0045】
上記JFET10では、少なくともゲート領域16とドレイン領域17との間において、第2半導体層(n型層13)の表面層が第1導電型(p型)の第3半導体層(p型層14)となっていてもよい。この場合、ゲート領域16とドレイン領域17との間においてn型層13とp型層14とによりいわゆるRESURF(リサーフ)構造が形成される。つまり、ゲート領域16とドレイン領域17との間では、炭化珪素半導体装置のオフ時にはn型層13とp型層14との境界部より空乏層が上下方向(n型基板11の主表面11Aに対して交差する方向)に伸張するため、ゲート領域16とドレイン領域17との間の領域(いわゆるドリフト領域)内での電界分布が均一となる。このため、ゲート電極26付近での電界集中が緩和されるので、当該電界集中による絶縁破壊を抑制できる。その結果、JFET10の耐圧特性を向上させることができる。
【0046】
上記JFET10では、第1半導体層(p型層2、12)が、下部半導体層(p型層2)と上部半導体層(p型層12)とを含んでいてもよい。下部半導体層(p型層2)は、n型基板11の主表面11A上に形成され、導電型が第1導電型(p型)である。上部半導体層(p型層12)は、p型層2上に形成され、p型層2の不純物濃度より低い不純物濃度を有し、導電型が第1導電型(p型)である。この場合、上部半導体層をいわゆる耐圧保持層として、また、下部半導体層をいわゆる電界緩和層として利用することができる。
【0047】
上記JFET10において、n型基板11の主表面11Aは、{0001}面に対するオフ角が38°以上であってもよい。この場合、当該JFET10のドリフト層における電界の印加方向が、より電子の移動度が高くなる方向となるため、従来より確実にオン抵抗の低い(従来より10%以上オン抵抗の低い)JFET10を得る事ができる。
【0048】
上記JFET10において、n型基板11の主表面11Aは、{03-38}面に対するオフ角が±5°以下であってもよい。ここで、{03-38}面に対するオフ角が±5°以下であるとは、たとえば当該主表面11Aを構成する結晶面が{03−38}面となっている場合、および主表面11Aを構成する結晶面について、特定の結晶方位(たとえば<1−100>方向)における{03−38}面に対するオフ角が−5°以上5°以下の面となっている場合を意味する。なお、「<1−100>方向における{03−38}面に対するオフ角」とは、<1−100>方向および<0001>方向の張る平面への上記端面の法線の正射影と、{03−38}面の法線とのなす角度であり、その符号は、上記正射影が<1−100>方向に対して平行に近づく場合が正であり、上記正射影が<0001>方向に対して平行に近づく場合が負である。この場合、n型基板11の主表面11Aが炭化珪素の自然面である{03−38}面または当該{03−38}面からのオフ角が±5°以下(すなわち実質的に{03−38}面と見なせる結晶面)になっているので、すでに述べたようにn型基板11の主表面11Aに沿った方向におけるチャネル層内での電子の移動度を高くすることができるとともに、n型基板11の主表面11A上に形成されるエピタキシャル層の表面に酸化膜18などの絶縁膜を形成した場合に、当該酸化膜18とエピタキシャル層との界面状態を良好なものとすることができる。
【0049】
上記JFET10において、n型基板11の主表面11Aは、{11−20}面にするオフ角が±5°以下であってもよい。この場合、n型基板11の主表面11Aが炭化珪素の自然面である{11−20}面または当該{11−20}面からのオフ角が±5°以下(すなわち実質的に{11−20}面と見なせる結晶面)になっているので、すでに述べたようにn型基板11の主表面11Aに沿った方向におけるチャネル層内での電子の移動度を高くすることができるとともに、n型基板11の主表面11A上に形成されるエピタキシャル層の表面に酸化膜18などの絶縁膜を形成した場合に、当該酸化膜18とエピタキシャル層との界面状態を良好なものとすることができる。
【0050】
上記JFET10において、n型基板11の主表面11Aは、{1−100}面にするオフ角が±5°以下であってもよい。この場合、n型基板11の主表面11Aが炭化珪素の自然面である{1−100}面または当該{1−100}面からのオフ角が±5°以下(すなわち実質的に{1−100}面と見なせる結晶面)になっているので、すでに述べたようにn型基板11の主表面11Aに沿った方向におけるチャネル層内での電子の移動度を高くすることができるとともに、n型基板11の主表面11A上に形成されるエピタキシャル層の表面に酸化膜18などの絶縁膜を形成した場合に、当該酸化膜18とエピタキシャル層との界面状態を良好なものとすることができる。
【0051】
(実施例1)
本発明の効果を確認するため以下のような実験を行った。
【0052】
(試料の準備)
図2に示した半導体装置の製造方法を用いて、図1に示した構成のJFETであって、基板の主表面の面方位が異なる4種類の試料を、試験用の試料として準備した。まず、図2に示した工程(S10)として、4H−SiCからなるn型基板を4種類準備した。具体的には、本発明の実施例の試料を作成するため、主表面が(03−38)面となっているn型基板、主表面が(11−20)面となっているn型基板、主表面が(1−100)面となっているn型基板という3種類の実施例の基板を準備した。また、比較例の試料を作成するため、主表面が(0001)面となっている4H−SiCからなるn型基板を準備した。
【0053】
なお、(03−38)面は、{0001}面から<01−10>方向に54.7°傾いた面である。また、(11−20)面は、{0001}面から<11−20>方向に90°傾いた面である。また、(1−100)面は、{0001}面から<1-100>方向に90°傾いた面である。上述した面は、いずれもいわゆる自然面である。これらの基板の主表面上にSiCのエピタキシャル層を形成した後、これらのエピタキシャル層の上部表面も上記基板の主表面と同じ結晶面(自然面)となっており、当該自然面上に酸化膜などの絶縁膜を形成した場合に絶縁膜と炭化珪素からなるエピタキシャル層との界面をスムーズにすることができる。このため、信頼性の高い絶縁膜を得る事ができる。
【0054】
上述した4種類の基板を用いて、実施例1〜3および比較例の試料として、図2〜図10に示した製造方法により図1に示した構造のJFETを作成した。まず、図2の工程(S20)を実施した。具体的には、上記基板の主表面上に電界緩和層であるp型層2として、p型の不純物密度が5.0×1017cm−3のSiCエピタキシャル層を形成した。p型層2の厚みは0.5μmとした。なお、p型不純物としてはアルミニウム(Al)を用いた。次に、p型層2上に、耐圧保持層であるp型層12として、p型の不純物密度が1.0×1016cm−3のSiCエピタキシャル層を形成した。当該p型層12の厚みは10μmとした。なお、p型不純物としてはアルミニウム(Al)を用いた。
【0055】
次に、p型層12上に、チャネル層であるn型層13として、n型の不純物密度が2.0×1017cm−3のSiCエピタキシャル層を形成した。n型層13の厚みは0.4μmとした。なお、n型不純物としては窒素(N)を用いた。次に、n型層13上に、リサーフ層であるp型層14として、p型の不純物密度が2.0×1017cm−3のSiCエピタキシャル層を形成した。当該p型層14の厚みは0.3μmとした。なお、p型不純物としてはアルミニウム(Al)を用いた。
【0056】
次に、図2の工程(S30)を実施した。具体的には、深さが0.4μmの溝部31をドライエッチングにより形成した。次に、図2の工程(S40)を実施した。具体的には、p型不純物としてAlを上記エピタキシャル層へイオン注入することにより、p型のゲート領域16および電位保持領域23(ベースコンタクト領域)を形成した。ゲート領域16と電位保持領域23との深さはそれぞれ0.5μmとした。次に、図2の工程(S50)を実施した。具体的には、n型不純物としてリン(P)を上記エピタキシャル層へイオン注入することによりn型のソース領域15およびドレイン領域17を形成した。ソース領域15およびドレイン領域17の深さはそれぞれ0.5μmとした。
【0057】
次に、図2の工程(S60)を実施した。具体的には、上記のようにエピタキシャル層においてソース領域15、ゲート領域16、ドレイン領域17、電位保持領域23が形成された基板に対して、アルゴン(Ar)雰囲気中で加熱温度1700℃、保持時間を30分という条件で熱処理(活性化アニール処理)を行った。
【0058】
次に、図2の工程(S70)を実施した。具体的には、上記基板に対して、酸素雰囲気中で加熱温度1300℃、保持時間を60分という条件で熱処理することにより、図7に示した酸化膜18(フィールド酸化膜)を形成した。酸化膜18の厚みは0.1μmとした。
【0059】
次に、図2の工程(S80)を実施した。具体的には、リフトオフ法を用いてソース領域15、ゲート領域16、ドレイン領域17、電位保持領域23の上部表面に接触するようにニッケル(Ni)を形成した。その後、アルゴン雰囲気中で、加熱温度950℃、保持時間2分という条件で熱処理を行うことにより、ソース領域15、ゲート領域16、ドレイン領域17、電位保持領域23のそれぞれとオーミック接触したコンタクト電極19を形成した。
【0060】
次に、図2の工程(S90)を実施した。具体的には、Alを蒸着することによりゲート電極26を形成した。次に、図2の工程(S100)を実施した。具体的には、プラズマCVD法を用いてSiO2からなる絶縁保護膜28を形成した。
【0061】
次に、図2の工程(S110)を実施した。具体的には、絶縁保護膜28の所定の位置に開口部33、34を形成するとともに、Alからなるソース電極25、ドレイン電極27、ソース電極パッド、ゲート電極パッド、ドレイン電極パッドを形成した。
【0062】
(実験方法)
作成した実施例1〜3および比較例の試料について、耐圧(ブレークダウン電圧)およびオン抵抗を測定した。耐圧およびオン抵抗の測定は、試料をプローバーにセットし、ソース電極パッド、ゲート電極パッド、ドレイン電極パッドのそれぞれに当てたプローブ針を半導体パラメータアナライザに接続して行った。
【0063】
(結果)
オン抵抗について:
比較例の試料におけるオン抵抗を基準とすると、実施例1の試料におけるオン抵抗は比較例の0.85倍、実施例2の試料におけるオン抵抗は比較例の0.80倍、実施例3の試料におけるオン抵抗は比較例の0.80倍となった。
【0064】
耐圧について:
比較例の試料における耐圧を基準とすると、実施例1の試料における耐圧は比較例の1.23倍、実施例2の試料における耐圧は比較例の1.33倍、実施例3の試料における耐圧は比較例の1.33倍となった。
【0065】
このように、比較例に比べて本発明の実施例の試料では、オン抵抗を低減できるとともに、耐圧が向上していることがわかる。
【0066】
(実施例2)
発明者は、4H−SiCの破壊電界強度と電子移動度の<0001>方向およびこれに直交する方向に対する測定データから、図1に示したJFETを構成する基板の主表面について、{0001}面からの傾き角(オフ角)を異ならせた場合の、ドリフト領域(ドリフト部)の破壊電界強度(耐圧)とチャネルでの電子移動度を算出した。その結果を図12に示す。
【0067】
図12を参照して、図12に示したグラフの横軸はJFETを構成する基板の主表面に関する、{0001}面からの傾き(オフ角)を示しており、単位は(°)である。また、縦軸は、JFETのドリフト部の破壊電界強度(耐圧)およびチャネル層での電子移動度の相対値を示している。なお、耐圧および電子移動度は、基板の主表面に関する{0001}面に対するオフ角が0°である場合の値を基準として、相対値で示されている。図12から分かるように、基板の主表面に関する{0001}面に対するオフ角が32°以上であると、耐圧については上記基準値(基板の主表面が{0001}面である場合の耐圧)の1.1倍以上となっている。さらに、上記オフ角が38°以上であると、さらにチャネルの電子移動度についても基準値(基板の主表面が{0001}面である場合の電子移動度)の1.1倍以上となっている。
【0068】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、炭化珪素からなる基板を用いた横型接合型電界効果トランジスタに対して特に有利に適用される。
【符号の説明】
【0070】
2,12,14 p型層、10 JFET、11 n型基板、11A 主表面、13 n型層、14A 上部表面、15 ソース領域、16 ゲート領域、17 ドレイン領域、18 酸化膜、19 コンタクト電極、23 電位保持領域、25 ソース電極、26 ゲート電極、27 ドレイン電極、28 絶縁保護膜、31 溝部、33,34 開口部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭化珪素半導体装置に関し、より特定的には、横型接合型電界効果トランジスタである炭化珪素半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭化珪素半導体装置として横型接合型電界効果トランジスタが知られている(たとえば、特開2003−68762号公報(特許文献1)参照)。このような横型接合型電界効果トランジスタでは、チャネル層内の電流の向きとドリフト層内の電界の向きがそれぞれ横方向となっている。そして、横型接合型電界効果トランジスタを炭化珪素(SiC)からなる基板上に形成する場合、当該基板としては4H−SiCからなり、主表面の面方位が{0001}面となっている基板を用いることが一般的である。上記のような炭化珪素半導体装置では、チャネル層内の電流の向きとドリフト層内の電界の向きとが、上記基板の主表面に平行な方向(つまり、{0001}面に平行な方向(たとえば[11-20]方向など)となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−68762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の炭化珪素半導体装置では、チャネル層内での電流の向きが{0001}面に平行な方向となっているため、当該チャネル層内での電子の移動度が他の方向に電流を流す場合に比べて低くなっていた。具体的には、{0001}面に平行な方向(たとえば[11−20]方向)における電子の移動度は、{0001}面に垂直な方向における電子の移動度の約0.8倍である。このため、上述した従来の炭化珪素半導体装置では、一般的な炭化珪素を用いた場合でのオン抵抗の理論値より高いオン抵抗を示すことになっていた。
【0005】
さらに、上述した従来の炭化珪素半導体装置では、ドリフト層において{0001}面に平行な方向に電界が印加されるが、当該{0001}面に平行な方向における炭化珪素の絶縁破壊電界は、{0001}面に垂直な方向における絶縁破壊電界の約0.75倍となっている。そのため、上述した従来の炭化珪素半導体装置では、一般的な炭化珪素を用いた場合での耐圧の理論値より低い耐圧を示すことになっていた。このように、従来の炭化珪素半導体装置は、炭化珪素の特性を十分に発揮させているとは言えなかった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するために成されたものであり、この発明の目的は、従来よりオン抵抗が低くかつ高い耐圧を有する炭化珪素半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に従った炭化珪素半導体装置は、基板と、第1半導体層と、第2半導体層と、ソース領域と、ドレイン領域と、ゲート領域とを備える。基板は、{0001}面に対するオフ角が32°以上である主表面を有し、炭化珪素からなる。第1半導体層は、基板の主表面上に形成され、導電型が第1導電型である。第2半導体層は、第1半導体層上に形成され、導電型が第2導電型である。ソース領域およびドレイン領域は、第2半導体層において、互いに間隔を隔てて形成され、導電型が第2導電型である。ゲート領域は、第2半導体層において、ソース領域とドレイン領域との間の領域に形成され、導電型が第1導電型である。
【0008】
このようにすれば、本発明による炭化珪素半導体装置は横型接合型電界効果トランジスタであって、ドリフト層における電界の印加方向が基板の主表面と平行な方向(つまり{0001}面に対するオフ角が32°以上となっている面の方向)となっているので、当該電界の印加方向が{0001}面に平行な方向となっている従来の炭化珪素半導体装置より耐圧を10%以上高くすることができる。また、本発明によれば、炭化珪素半導体装置におけるチャネル層内での電流の向きが、{0001}面に対するオフ角が32°以上となっている基板の主表面と平行な方向となっているので、従来の炭化珪素半導体装置(チャネル層での電流の向きが{0001}面に平行な方向となっている場合)よりチャネル層内での電子の移動度を高くすることができる。このため、従来の炭化珪素半導体装置よりオン抵抗を低減できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、{0001}面に対するオフ角が大きな結晶面を主表面とする基板を用いることで、従来よりオン抵抗が低くかつ高い耐圧を有する炭化珪素半導体装置を得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に従った炭化珪素半導体装置の実施の形態1を示す断面模式図である。
【図2】図1に示した炭化珪素半導体装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図3】図1に示した炭化珪素半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【図4】図1に示した炭化珪素半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【図5】図1に示した炭化珪素半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【図6】図1に示した炭化珪素半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【図7】図1に示した炭化珪素半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【図8】図1に示した炭化珪素半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【図9】図1に示した炭化珪素半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【図10】図1に示した炭化珪素半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【図11】本発明に従った炭化珪素半導体装置の実施の形態2を示す断面模式図である。
【図12】炭化珪素半導体装置における基板の主表面の{0001}面からの結晶面の傾きと、ドリフト部での破壊電界強度およびチャネルでの電子移動度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0012】
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明による炭化珪素半導体装置の実施の形態1を説明する。図1に示した炭化珪素半導体装置はJFET(Junction Field Effect Transistor;接合型電界効果トランジスタ)である。図1に示したJFET10は、炭化珪素(SiC)からなり、導電型がn型であるn型基板11と、n型基板11上に形成された電界緩和層であるp型層2と、p型層2上に形成された耐圧保持層としてのp型層12と、p型層12上に形成されたn型層13と、n型層13上に形成されたRESURF(リサーフ)層としてのp型層14とを備えている。ここで、上記p型層2、12、14およびn型層13は、それぞれ導電型がp型およびn型であるSiCからなる層である。なお、図1に示したJFETは、図1の紙面に垂直な方向(n型基板11の主表面に沿った方向)に複数個並ぶように配置されていてもよい。また、図1ではp型層2とp型層12とが形成されているが、n型基板11の主表面11A上に直接p型層12を形成してもよい。
【0013】
n型基板11の主表面11Aは、{0001}面に対するオフ角が32°以上となっている。また、後述するようにp型層2、p型層12、n型層13、p型層14は、n型基板11の主表面11A上にエピタキシャル成長された層であるため、それぞれの層における結晶の面方位は基本的にn型基板11の面方位と同様になっている。そのため、各層の主表面(n型基板11の主表面11Aと平行な表面)は、それぞれn型基板11と同様に{0001}面に対するオフ角が32°以上となっている。
【0014】
p型層14およびn型層13には、n型層13よりも高濃度の導電型がn型である不純物(n型不純物)を含むソース領域15およびドレイン領域17が形成されるとともに、ソース領域15およびドレイン領域17に挟まれるように、p型層12、14よりも高濃度の導電型がp型である不純物(p型不純物)を含むゲート領域16が形成されている。すなわち、ソース領域15、ゲート領域16およびドレイン領域17は、それぞれp型層14を貫通してn型層13に至るように形成されている。また、ソース領域15、ゲート領域16およびドレイン領域17の底部は、n型層13の内部において、p型層12の上部表面(p型層12とn型層13との境界部)から間隔を隔てて配置されている。
【0015】
また、ソース領域15から見てゲート領域16とは反対側には、p型層14の上部表面(n型層13の側とは反対側の主面)からp型層14を貫通してn型層13に至るように、溝部31が形成されている。つまり、溝部31の底壁は、p型層12とn型層13との界面から間隔を隔て、n型層13の内部に位置している。さらに、溝部31の底壁からn型層13を貫通し、p型層12に至るように、p型層12およびp型層14よりも高濃度のp型不純物を含む電位保持領域23が形成されている。この電位保持領域23の底部は、n型基板11の上部表面(n型基板11とp型層2との境界部)から間隔を隔てて(より具体的には、p型層2とp型層12との境界部からから間隔を隔ててp型層12の内部に)配置されている。
【0016】
さらに、ソース領域15、ゲート領域16、ドレイン領域17および電位保持領域23のそれぞれの上部表面に接触するように、コンタクト電極19が形成されている。コンタクト電極19は、ソース領域15、ゲート領域16、ドレイン領域17および電位保持領域23とオーミック接触可能な材料、たとえばNiSi(ニッケルシリサイド)からなっている。
【0017】
そして、隣接するコンタクト電極19同士の間には、酸化膜18が形成されている。より具体的には、絶縁層としての酸化膜18が、p型層14の上部表面、溝部31の底壁および側壁において、コンタクト電極19が形成されている領域以外の領域全体を覆うように形成されている。これにより、隣り合うコンタクト電極19同士の間が絶縁されている。
【0018】
さらに、ソース領域15、ゲート領域16およびドレイン領域17上のコンタクト電極19の上部表面に接触するように、ソース電極25、ゲート電極26およびドレイン電極27がそれぞれ形成されている。これにより、ソース電極25、ゲート電極26およびドレイン電極27は、コンタクト電極19を介して、それぞれソース領域15、ゲート領域16およびドレイン領域17と電気的に接続されている。また、ソース電極25は、電位保持領域23上のコンタクト電極19の上部表面にも接触し、コンタクト電極19を介して電位保持領域23とも電気的に接続されている。つまり、ソース電極25は、ソース領域15上のコンタクト電極19の上部表面上から電位保持領域23上のコンタクト電極19の上部表面上にまで延在するように形成されている。これにより、電位保持領域23上のコンタクト電極19は、ソース領域15上のコンタクト電極19と同電位に保持されている。
【0019】
ソース電極25、ゲート電極26およびドレイン電極27は、たとえばアルミニウム(Al)などの導電体から構成されている。このソース電極25、ゲート電極26およびドレイン電極27は、JFET10が並ぶ方向に延在することにより、コンタクト電極19を介して、それぞれ複数のJFET10のソース領域15同士、ゲート領域16同士およびドレイン領域17同士を電気的に接続している。このようにして、上記複数個のJFET10は、ソース領域15同士を接続するソース電極25と、ドレイン領域17同士を接続するドレイン電極27と、ゲート領域16同士を接続するゲート電極26とにより並列に接続されている。
【0020】
また、図1に示したJFET10では、酸化膜18およびゲート電極26を覆うと共に、ソース電極25とドレイン電極27との間の領域を充填するように、絶縁体からなる絶縁保護膜28が形成されている。絶縁保護膜28においては、ソース領域15および電位保持領域23上の領域と、ドレイン領域17上の領域とにそれぞれ開口部33、34が形成されている。開口部33、34の内部に、上記ソース電極25およびドレイン電極27が配置されている。ソース電極25およびドレイン電極27の上部表面は絶縁保護膜28の上部表面より上に位置している(つまり、ソース電極25とドレイン電極27とはそれぞれその上部が絶縁保護膜28の上部表面より突出している)。そして、ソース電極25、ゲート電極26およびドレイン電極27は、それぞれソース電極25、ゲート電極26およびドレイン電極27を外部と接続するための、図示していないソース電極パッド、ゲート電極パッドおよびドレイン電極パッドと電気的に接続されている。これらのソース電極パッド、ゲート電極パッドおよびドレイン電極パッドは、絶縁保護膜28から露出している。これにより、並列に接続されたJFET10のソース領域15、ゲート領域16およびドレイン領域17に対して、外部から電圧を印加することが可能となっている。そして、JFET10が並列に接続されていることにより、JFET10を含む半導体装置は電流容量の大容量化に対応することができる。
【0021】
次に、JFET10が、たとえばノーマリーオン型である場合について、その動作を説明する。図1を参照して、ゲート電極26の電位が0Vの状態では、n型層13において、ドレイン領域17とゲート領域16とで挟まれた領域および当該挟まれた領域とp型層12とで挟まれた領域、ならびにゲート領域16とp型層12とで挟まれた領域は空乏化されておらず、ソース領域15とドレイン領域17とはn型層13を介して電気的に接続された状態となっている。そのため、ソース電極25とドレイン電極27との間に電界が印加されると、ソース領域15とドレイン領域17との間を電子が移動することにより、ソース電極25とドレイン電極27との間に電流が流れる(オン状態)。
【0022】
一方、ゲート電極26に負の電圧を印加していくと、上記電子が移動すべきドリフト領域(ゲート領域16とドレイン領域17との間に位置するn型層13とp型層14との部分)の空乏化が進行し、ソース領域15とドレイン領域17とは電気的に遮断された状態となる。そのため、ソース領域15とドレイン領域17との間を電子が移動することができず、電流は流れない(オフ状態)。ここで、本実施の形態におけるJFET10は、n型層13上に接するようにp型層14(リサーフ層)が形成されたRESURF型JFETとなっている。そのため、上記オフ状態においては、ドリフト領域内の空乏層がn型層13とp型層14との界面から上下方向(厚み方向)に伸張する。その結果、ドリフト領域内の電界分布が均一となり、ゲート領域16付近の電界集中が緩和され、耐圧が向上している。
【0023】
また、図1に示したJFET10では、ソース領域15からドレイン領域17に向けて流れる電子の向きを、上述したようにn型基板11の主表面に沿った方向(つまり{0001}面に対するオフ角が32°以上となっている結晶面に沿った方向)としているので、従来のJFETより(つまり当該電子の向きが{0001}面に沿った方向となっている場合より)電子の移動度を高くできる。このため、JFET10でのオン抵抗を従来より低減できる。また、本発明によるJFET10のドリフト層における電界の印加方向も、上記{0001}面に対するオフ角が32°以上となっている結晶面に沿った方向となっているので、上述した従来のJFETより耐圧を高くすることができる。
【0024】
次に、図2〜図10を参照して、実施の形態1における炭化珪素半導体装置であるJFET10の製造方法について説明する。
【0025】
図2を参照して、実施の形態1におけるJFET10の製造方法においては、まず、工程(S10)として、基板準備工程が実施される。具体的には、工程(S10)では、図5に示すように、高濃度のn型不純物を含むSiCからなるn型基板11が準備される。また、当該n型基板11の主表面は、{0001}面に対するオフ角が32°以上、より好ましくは当該オフ角が38°以上となっている。このようなn型基板11は、従来周知の任意の方法で得る事ができる。たとえば、1つの主面が{0001}面となっているSiCインゴットを、所定の結晶面が露出するように({0001}面に対して傾斜した方向に沿って)スライスすることにより、当該n型基板11を得る事ができる。
【0026】
次に、図2を参照して、工程(S20)としてエピタキシャル成長工程が実施される。この工程(S20)では、図3を参照して、工程(S10)において準備されたn型基板11の一方の主面上に、たとえば気相エピタキシャル成長によりSiCからなるp型層2、p型層12、n型層13およびp型層14が順次形成される。気相エピタキシャル成長においては、たとえば材料ガスとしてシラン(SiH4)ガスおよびプロパン(C3H8)ガスを用い、キャリアガスとして水素(H2)ガスを採用することができる。また、p型層を形成するためのp型不純物源としては、たとえばジボラン(B2H6)やトリメチルアルミニウム(TMA)を、n型層を形成するためのn型不純物としては、たとえば窒素(N2)を採用することができる。
【0027】
次に、図2を参照して、工程(S30)として、溝部形成工程が実施される。具体的には、工程(S30)では、図4に示すように、p型層14の上部表面14Aからp型層14を貫通してn型層13に至るように、溝部31が形成される。溝部31の形成は、たとえば所望の溝部31の形成位置に開口を有するマスク層をp型層14の上部表面14A上に形成した後、たとえばSF6ガスを用いたドライエッチングにより実施することができる。
【0028】
次に、工程(S40)として、第1イオン注入工程が実施される。この工程(S40)では、高濃度のp型不純物を含む領域であるゲート領域および電位保持領域(ベースコンタクト領域)が形成される。具体的には、図5を参照して、まず、p型層14の上部表面14A上および溝部31の内壁にレジストが塗布された後、露光および現像が行なわれ、所望のゲート領域16および電位保持領域23の平面形状に応じた領域に開口を有するレジスト膜が形成される。そして、このレジスト膜をマスクとして用いて、Al(アルミニウム)、B(ホウ素)などのp型不純物がイオン注入によりp型層14、n型層13およびp型層12に導入される。これにより、ゲート領域16および電位保持領域23が形成される。
【0029】
次に、工程(S50)として、第2イオン注入工程が実施される。この工程(S50)では、高濃度のn型不純物を含む領域であるソース領域15およびドレイン領域17が形成される。具体的には、図6を参照して、まず、工程(S40)と同様の手順で、所望のソース領域15およびドレイン領域17の平面形状に応じた領域に開口を有するレジスト膜が形成される。そして、このレジスト膜をマスクとして用いて、P(リン)、N(窒素)などのn型不純物がイオン注入によりp型層14およびn型層13に導入される。これにより、ソース領域15およびドレイン領域17が形成される。
【0030】
次に、図2を参照して、工程(S60)として活性化アニール工程が実施される。この工程(S60)では、工程(S50)において形成されたレジスト膜が除去された後、工程(S40)および工程(S50)においてイオン注入が実施されたp型層14、n型層13およびp型層12が加熱されることにより、上記イオン注入によって導入された不純物を活性化させる熱処理である活性化アニールが実施される。活性化アニールは、たとえばアルゴンガス雰囲気中において、1700℃程度の温度に30分間程度保持する熱処理を実施することにより行なうことができる。
【0031】
次に、工程(S70)として、酸化膜形成工程が実施される。この工程(S70)では、図7を参照して、工程(S10)〜工程(S60)までが実施されて所望のイオン注入層を含むp型層14、n型層13、p型層12およびp型層2が形成されたn型基板11が熱酸化される。これにより、二酸化珪素(SiO2)からなる酸化膜18が、p型層14の上部表面14Aおよび溝部31の内壁を覆うように形成される。
【0032】
次に、図2を参照して、工程(S80)としてコンタクト電極形成工程が実施される。この工程(S80)では、図8を参照して、ソース領域15、ゲート領域16、ドレイン領域17および電位保持領域23のそれぞれの上部表面に接触するように、たとえばNiSiからなるコンタクト電極19が形成される。具体的には、まず、工程(S40)と同様の手順で所望のコンタクト電極19の平面形状に応じた領域に開口を有するレジスト膜が形成される。そして、当該レジスト膜をマスクとして用いて、たとえばRIE(Reactive Ion Etching;反応性イオンエッチング)により、ソース領域15、ゲート領域16、ドレイン領域17および電位保持領域23上の酸化膜18が除去される。
【0033】
その後、たとえばNi(ニッケル)が蒸着されることにより、酸化膜18から露出したソース領域15、ゲート領域16、ドレイン領域17および電位保持領域23上、およびレジスト膜上にニッケル層が形成される。さらに、レジスト膜が除去されることにより、レジスト膜上のニッケル層が除去(リフトオフ)されて、酸化膜18から露出したソース領域15、ゲート領域16、ドレイン領域17および電位保持領域23上にニッケル層が残存する。そして、たとえば900°以上1000℃以下といった温度範囲の所定温度(たとえば950℃)に加熱する熱処理が実施されることにより、ニッケル層がシリサイド化する。これにより、図8に示すように、ソース領域15、ゲート領域16、ドレイン領域17および電位保持領域23にオーミック接触可能なNiSiからなるオーミック電極であるコンタクト電極19が形成される。
【0034】
次に、図2を参照して、工程(S90)として、電極形成工程が実施される。この工程(S90)では、図9を参照して、ゲート領域16上のコンタクト電極19の上部表面に接触するゲート電極26が形成される。ゲート電極26およびドレイン電極27は、たとえばソース電極25、ゲート電極26およびドレイン電極27を形成すべき所望の領域に開口を有するレジスト膜を形成し、Alを蒸着した後、レジスト膜とともにレジスト膜上のAlを除去すること(リフトオフ)により形成することができる。
【0035】
次に、図2を参照して、工程(S100)として、絶縁保護膜形成工程が実施される。この工程(S100)では、図10および図1を参照して、ゲート電極26、コンタクト電極19および酸化膜18を覆い、たとえばSiO2などの絶縁体からなる絶縁保護膜28が形成される。具体的には、たとえばCVD法(Chemical Vapor Deposition;化学蒸着法)により、ゲート電極26、ソース領域15とドレイン領域17と電位保持領域23との上にそれぞれ配置されたコンタクト電極19、および酸化膜18を覆うSiO2膜からなる絶縁保護膜28(図10参照)が形成される。
【0036】
次に、図4を参照して、工程(S110)として、電極パッド形成工程が実施される。この工程(S110)では、図1を参照して、ソース領域15および電位保持領域23上のコンタクト電極19の上部表面に接触するソース電極25、ドレイン領域17上のコンタクト電極19の上部表面に接触するドレイン電極27、さらにソース電極25に電気的に接続されたソース電極パッド、ゲート電極26に電気的に接続されたゲート電極パッド、ドレイン電極27に電気的に接続されたドレイン電極パッドが形成される。具体的には、まず図10に示すように絶縁保護膜28においてソース領域15、ドレイン領域17および電位保持領域23上に位置する領域に、フォトリソグラフィ法を用いて開口部33、34が形成される。開口部33、34の形成方法としては、たとえば絶縁保護膜28の主表面上に、開口部33、34の平面形状と同様の開口を有するレジスト膜を形成し、当該レジスト膜をマスクとして用いて絶縁保護膜28の一部をエッチングなどにより除去する。このようにして、図10に示すように絶縁保護膜28において上記開口部33、34が形成される。なお、上記のように開口部33、34が形成された後、レジスト膜を従来周知の任意の方法により除去すれば、図10に示すような構造を得る事ができる。
【0037】
そして、ソース電極25およびドレイン電極27は、たとえばソース電極25およびドレイン電極27を形成すべき所望の領域(上記開口部33、34が形成された領域)に開口を有するレジスト膜を形成し、Alを蒸着した後、レジスト膜とともにレジスト膜上のAlを除去すること(リフトオフ)により形成することができる。また、ソース電極25に接続されるソース電極パッド、ドレイン電極27に接続されるドレイン電極パッド、ゲート電極26に接続されるゲート電極パッドは、たとえば上記ソース電極25およびドレイン電極27を形成するときに同時に形成してもよい。すなわち、上記レジスト膜において、ゲート電極26と一部重なる領域であってゲート電極パッドが形成されるべき領域に開口を形成しておき、ソース電極25およびドレイン電極27となるべきAlを蒸着するときに、当該開口内部に同時にAlを蒸着し、その後リフトオフによってゲート電極パッドを形成してもよい。また、ソース電極パッドおよびドレイン電極パッドについても、同様に上記ゲート電極パッドを形成する方法と同様の方法により形成してもよい。
【0038】
なお、ソース電極25およびドレイン電極27を形成するために用いる上記レジスト膜として、上記開口部33、34を形成するために用いたレジスト膜を流用してもよい。すなわち、上記のように開口部33、34を、レジスト膜をマスクとしてエッチングにより形成した後、当該レジスト膜を除去することなく、上記のようにAlなどの電極を構成する導電体膜を形成してから、リフトオフにより開口部33、34内部にソース電極25およびドレイン電極27を形成してもよい。
【0039】
ここで、工程(S10)において準備されたn型基板11上に、工程(S20)〜(S80)においては、上記JFET10の構造が複数個並べて形成されてもよい。そして、工程(S90)〜工程(S110)においてソース電極25、ゲート電極26およびドレイン電極27が、図1を参照して、コンタクト電極19を介して、それぞれ複数の上記JFET10のソース領域15同士、ゲート領域16同士およびドレイン領域17同士を接続するように形成される。これにより、複数個のJFET10が、ソース領域15同士を接続するソース電極25と、ドレイン領域17同士を接続するドレイン電極27と、ゲート領域16同士を接続するゲート電極26とにより並列に接続される。以上の工程により、本実施の形態におけるJFET10は完成する。
【0040】
(実施の形態2)
図11を参照して、本発明による炭化珪素半導体装置の実施の形態2を説明する。図11に示した炭化珪素半導体装置は、図1に示した炭化珪素半導体装置と同様にJFETであって、基本的には図1に示したJFET10と同様の構造を備えるが、n型層13上には図1に示すようなp型層14は形成されていない点が、図1に示したJFET10とは異なっている。すなわち、図11に示したJFET10では、n型層13においてソース領域15、ゲート領域16、ドレイン領域17が形成されており、また、n型層13の上部表面(および溝部31の内壁)上に酸化膜18が形成されている。
【0041】
図11に示したJFET10においては、図1に示したJFET10におけるリサーフ層としてのp型層14が形成されていることによる効果は得られないものの、n型基板11が、{0001}面に対するオフ角が32°以上である主表面を有することから、図1に示したJFET10と同様に、従来のJFETよりチャネル層内での電子の移動度を高くするとともに、耐圧も高くすることができる。
【0042】
また、図11に示したJFET10の製造方法は、基本的に図1に示したJFET10の製造方法と同様であるが、図2に示したエピタキシャル成長工程である工程(S20)において、n型基板11の主表面上に、p型層2、p型層12、n型層13のみが形成される(つまりn型層13上にはリサーフ層であるp型層14は形成されない)。この点のみ、図1に示したJFET10の製造方法と異なっており、他の製造工程は図1に示したJFET10の製造工程と同様である。
【0043】
以下、上述した実施の形態と一部重複する部分もあるが、本発明の特徴的な構成を列挙する。この発明に従った炭化珪素半導体装置であるJFET10は、基板としてのn型基板11と、第1半導体層(p型層2、12)と、第2半導体層(n型層13)と、ソース領域15と、ドレイン領域17と、ゲート領域16とを備える。n型基板11は、{0001}面に対するオフ角が32°以上である主表面11Aを有し、炭化珪素(SiC)からなる。第1半導体層(p型層2、12)は、n型基板11の主表面11A上に形成され、導電型が第1導電型(p型)である。第2半導体層(n型層13)は、第1半導体層(p型層2、12)上に形成され、導電型が第2導電型(n型)である。ソース領域15およびドレイン領域17は、第2半導体層(n型層13)において、互いに間隔を隔てて形成され、導電型が第2導電型(n型)である。ゲート領域16は、第2半導体層(n型層13)において、ソース領域15とドレイン領域17との間の領域に形成され、導電型が第1導電型(p型)である。
【0044】
このようにすれば、本発明による炭化珪素半導体装置は横型接合型電界効果トランジスタであって、ドリフト層(ゲート領域16とドレイン領域17との間の領域)における電界の印加方向がn型基板11の主表面11Aと平行な方向(つまり{0001}面に対するオフ角が32°以上となっている面の方向)となっているので、当該電界の印加方向が{0001}面に平行な方向となっている従来の炭化珪素半導体装置より耐圧を10%以上高くすることができる。また、本発明によれば、炭化珪素半導体装置におけるチャネル層(n型層13)内での電流の向きが、{0001}面に対するオフ角が32°以上となっているn型基板11の主表面11Aと平行な方向となっているので、従来の炭化珪素半導体装置(チャネル層での電流の向きが{0001}面に平行な方向となっている場合)よりチャネル層(n型層13)内での電子の移動度を高くすることができる。このため、従来の炭化珪素半導体装置よりオン抵抗を低減できる。
【0045】
上記JFET10では、少なくともゲート領域16とドレイン領域17との間において、第2半導体層(n型層13)の表面層が第1導電型(p型)の第3半導体層(p型層14)となっていてもよい。この場合、ゲート領域16とドレイン領域17との間においてn型層13とp型層14とによりいわゆるRESURF(リサーフ)構造が形成される。つまり、ゲート領域16とドレイン領域17との間では、炭化珪素半導体装置のオフ時にはn型層13とp型層14との境界部より空乏層が上下方向(n型基板11の主表面11Aに対して交差する方向)に伸張するため、ゲート領域16とドレイン領域17との間の領域(いわゆるドリフト領域)内での電界分布が均一となる。このため、ゲート電極26付近での電界集中が緩和されるので、当該電界集中による絶縁破壊を抑制できる。その結果、JFET10の耐圧特性を向上させることができる。
【0046】
上記JFET10では、第1半導体層(p型層2、12)が、下部半導体層(p型層2)と上部半導体層(p型層12)とを含んでいてもよい。下部半導体層(p型層2)は、n型基板11の主表面11A上に形成され、導電型が第1導電型(p型)である。上部半導体層(p型層12)は、p型層2上に形成され、p型層2の不純物濃度より低い不純物濃度を有し、導電型が第1導電型(p型)である。この場合、上部半導体層をいわゆる耐圧保持層として、また、下部半導体層をいわゆる電界緩和層として利用することができる。
【0047】
上記JFET10において、n型基板11の主表面11Aは、{0001}面に対するオフ角が38°以上であってもよい。この場合、当該JFET10のドリフト層における電界の印加方向が、より電子の移動度が高くなる方向となるため、従来より確実にオン抵抗の低い(従来より10%以上オン抵抗の低い)JFET10を得る事ができる。
【0048】
上記JFET10において、n型基板11の主表面11Aは、{03-38}面に対するオフ角が±5°以下であってもよい。ここで、{03-38}面に対するオフ角が±5°以下であるとは、たとえば当該主表面11Aを構成する結晶面が{03−38}面となっている場合、および主表面11Aを構成する結晶面について、特定の結晶方位(たとえば<1−100>方向)における{03−38}面に対するオフ角が−5°以上5°以下の面となっている場合を意味する。なお、「<1−100>方向における{03−38}面に対するオフ角」とは、<1−100>方向および<0001>方向の張る平面への上記端面の法線の正射影と、{03−38}面の法線とのなす角度であり、その符号は、上記正射影が<1−100>方向に対して平行に近づく場合が正であり、上記正射影が<0001>方向に対して平行に近づく場合が負である。この場合、n型基板11の主表面11Aが炭化珪素の自然面である{03−38}面または当該{03−38}面からのオフ角が±5°以下(すなわち実質的に{03−38}面と見なせる結晶面)になっているので、すでに述べたようにn型基板11の主表面11Aに沿った方向におけるチャネル層内での電子の移動度を高くすることができるとともに、n型基板11の主表面11A上に形成されるエピタキシャル層の表面に酸化膜18などの絶縁膜を形成した場合に、当該酸化膜18とエピタキシャル層との界面状態を良好なものとすることができる。
【0049】
上記JFET10において、n型基板11の主表面11Aは、{11−20}面にするオフ角が±5°以下であってもよい。この場合、n型基板11の主表面11Aが炭化珪素の自然面である{11−20}面または当該{11−20}面からのオフ角が±5°以下(すなわち実質的に{11−20}面と見なせる結晶面)になっているので、すでに述べたようにn型基板11の主表面11Aに沿った方向におけるチャネル層内での電子の移動度を高くすることができるとともに、n型基板11の主表面11A上に形成されるエピタキシャル層の表面に酸化膜18などの絶縁膜を形成した場合に、当該酸化膜18とエピタキシャル層との界面状態を良好なものとすることができる。
【0050】
上記JFET10において、n型基板11の主表面11Aは、{1−100}面にするオフ角が±5°以下であってもよい。この場合、n型基板11の主表面11Aが炭化珪素の自然面である{1−100}面または当該{1−100}面からのオフ角が±5°以下(すなわち実質的に{1−100}面と見なせる結晶面)になっているので、すでに述べたようにn型基板11の主表面11Aに沿った方向におけるチャネル層内での電子の移動度を高くすることができるとともに、n型基板11の主表面11A上に形成されるエピタキシャル層の表面に酸化膜18などの絶縁膜を形成した場合に、当該酸化膜18とエピタキシャル層との界面状態を良好なものとすることができる。
【0051】
(実施例1)
本発明の効果を確認するため以下のような実験を行った。
【0052】
(試料の準備)
図2に示した半導体装置の製造方法を用いて、図1に示した構成のJFETであって、基板の主表面の面方位が異なる4種類の試料を、試験用の試料として準備した。まず、図2に示した工程(S10)として、4H−SiCからなるn型基板を4種類準備した。具体的には、本発明の実施例の試料を作成するため、主表面が(03−38)面となっているn型基板、主表面が(11−20)面となっているn型基板、主表面が(1−100)面となっているn型基板という3種類の実施例の基板を準備した。また、比較例の試料を作成するため、主表面が(0001)面となっている4H−SiCからなるn型基板を準備した。
【0053】
なお、(03−38)面は、{0001}面から<01−10>方向に54.7°傾いた面である。また、(11−20)面は、{0001}面から<11−20>方向に90°傾いた面である。また、(1−100)面は、{0001}面から<1-100>方向に90°傾いた面である。上述した面は、いずれもいわゆる自然面である。これらの基板の主表面上にSiCのエピタキシャル層を形成した後、これらのエピタキシャル層の上部表面も上記基板の主表面と同じ結晶面(自然面)となっており、当該自然面上に酸化膜などの絶縁膜を形成した場合に絶縁膜と炭化珪素からなるエピタキシャル層との界面をスムーズにすることができる。このため、信頼性の高い絶縁膜を得る事ができる。
【0054】
上述した4種類の基板を用いて、実施例1〜3および比較例の試料として、図2〜図10に示した製造方法により図1に示した構造のJFETを作成した。まず、図2の工程(S20)を実施した。具体的には、上記基板の主表面上に電界緩和層であるp型層2として、p型の不純物密度が5.0×1017cm−3のSiCエピタキシャル層を形成した。p型層2の厚みは0.5μmとした。なお、p型不純物としてはアルミニウム(Al)を用いた。次に、p型層2上に、耐圧保持層であるp型層12として、p型の不純物密度が1.0×1016cm−3のSiCエピタキシャル層を形成した。当該p型層12の厚みは10μmとした。なお、p型不純物としてはアルミニウム(Al)を用いた。
【0055】
次に、p型層12上に、チャネル層であるn型層13として、n型の不純物密度が2.0×1017cm−3のSiCエピタキシャル層を形成した。n型層13の厚みは0.4μmとした。なお、n型不純物としては窒素(N)を用いた。次に、n型層13上に、リサーフ層であるp型層14として、p型の不純物密度が2.0×1017cm−3のSiCエピタキシャル層を形成した。当該p型層14の厚みは0.3μmとした。なお、p型不純物としてはアルミニウム(Al)を用いた。
【0056】
次に、図2の工程(S30)を実施した。具体的には、深さが0.4μmの溝部31をドライエッチングにより形成した。次に、図2の工程(S40)を実施した。具体的には、p型不純物としてAlを上記エピタキシャル層へイオン注入することにより、p型のゲート領域16および電位保持領域23(ベースコンタクト領域)を形成した。ゲート領域16と電位保持領域23との深さはそれぞれ0.5μmとした。次に、図2の工程(S50)を実施した。具体的には、n型不純物としてリン(P)を上記エピタキシャル層へイオン注入することによりn型のソース領域15およびドレイン領域17を形成した。ソース領域15およびドレイン領域17の深さはそれぞれ0.5μmとした。
【0057】
次に、図2の工程(S60)を実施した。具体的には、上記のようにエピタキシャル層においてソース領域15、ゲート領域16、ドレイン領域17、電位保持領域23が形成された基板に対して、アルゴン(Ar)雰囲気中で加熱温度1700℃、保持時間を30分という条件で熱処理(活性化アニール処理)を行った。
【0058】
次に、図2の工程(S70)を実施した。具体的には、上記基板に対して、酸素雰囲気中で加熱温度1300℃、保持時間を60分という条件で熱処理することにより、図7に示した酸化膜18(フィールド酸化膜)を形成した。酸化膜18の厚みは0.1μmとした。
【0059】
次に、図2の工程(S80)を実施した。具体的には、リフトオフ法を用いてソース領域15、ゲート領域16、ドレイン領域17、電位保持領域23の上部表面に接触するようにニッケル(Ni)を形成した。その後、アルゴン雰囲気中で、加熱温度950℃、保持時間2分という条件で熱処理を行うことにより、ソース領域15、ゲート領域16、ドレイン領域17、電位保持領域23のそれぞれとオーミック接触したコンタクト電極19を形成した。
【0060】
次に、図2の工程(S90)を実施した。具体的には、Alを蒸着することによりゲート電極26を形成した。次に、図2の工程(S100)を実施した。具体的には、プラズマCVD法を用いてSiO2からなる絶縁保護膜28を形成した。
【0061】
次に、図2の工程(S110)を実施した。具体的には、絶縁保護膜28の所定の位置に開口部33、34を形成するとともに、Alからなるソース電極25、ドレイン電極27、ソース電極パッド、ゲート電極パッド、ドレイン電極パッドを形成した。
【0062】
(実験方法)
作成した実施例1〜3および比較例の試料について、耐圧(ブレークダウン電圧)およびオン抵抗を測定した。耐圧およびオン抵抗の測定は、試料をプローバーにセットし、ソース電極パッド、ゲート電極パッド、ドレイン電極パッドのそれぞれに当てたプローブ針を半導体パラメータアナライザに接続して行った。
【0063】
(結果)
オン抵抗について:
比較例の試料におけるオン抵抗を基準とすると、実施例1の試料におけるオン抵抗は比較例の0.85倍、実施例2の試料におけるオン抵抗は比較例の0.80倍、実施例3の試料におけるオン抵抗は比較例の0.80倍となった。
【0064】
耐圧について:
比較例の試料における耐圧を基準とすると、実施例1の試料における耐圧は比較例の1.23倍、実施例2の試料における耐圧は比較例の1.33倍、実施例3の試料における耐圧は比較例の1.33倍となった。
【0065】
このように、比較例に比べて本発明の実施例の試料では、オン抵抗を低減できるとともに、耐圧が向上していることがわかる。
【0066】
(実施例2)
発明者は、4H−SiCの破壊電界強度と電子移動度の<0001>方向およびこれに直交する方向に対する測定データから、図1に示したJFETを構成する基板の主表面について、{0001}面からの傾き角(オフ角)を異ならせた場合の、ドリフト領域(ドリフト部)の破壊電界強度(耐圧)とチャネルでの電子移動度を算出した。その結果を図12に示す。
【0067】
図12を参照して、図12に示したグラフの横軸はJFETを構成する基板の主表面に関する、{0001}面からの傾き(オフ角)を示しており、単位は(°)である。また、縦軸は、JFETのドリフト部の破壊電界強度(耐圧)およびチャネル層での電子移動度の相対値を示している。なお、耐圧および電子移動度は、基板の主表面に関する{0001}面に対するオフ角が0°である場合の値を基準として、相対値で示されている。図12から分かるように、基板の主表面に関する{0001}面に対するオフ角が32°以上であると、耐圧については上記基準値(基板の主表面が{0001}面である場合の耐圧)の1.1倍以上となっている。さらに、上記オフ角が38°以上であると、さらにチャネルの電子移動度についても基準値(基板の主表面が{0001}面である場合の電子移動度)の1.1倍以上となっている。
【0068】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、炭化珪素からなる基板を用いた横型接合型電界効果トランジスタに対して特に有利に適用される。
【符号の説明】
【0070】
2,12,14 p型層、10 JFET、11 n型基板、11A 主表面、13 n型層、14A 上部表面、15 ソース領域、16 ゲート領域、17 ドレイン領域、18 酸化膜、19 コンタクト電極、23 電位保持領域、25 ソース電極、26 ゲート電極、27 ドレイン電極、28 絶縁保護膜、31 溝部、33,34 開口部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
{0001}面に対するオフ角が32°以上である主表面を有し、炭化珪素からなる基板と、
前記基板の主表面上に形成された第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層上に形成された、第2導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層において、互いに間隔を隔てて形成された第2導電型のソース領域およびドレイン領域と、
前記第2半導体層において、前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の領域に形成された第1導電型のゲート領域とを備える、炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
少なくとも前記ゲート領域と前記ドレイン領域との間において、前記第2半導体層の表面層が第1導電型の第3半導体層となっている、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記第1半導体層は、
前記基板の主表面上に形成された第1導電型の下部半導体層と、
前記下部半導体層上に形成され、前記下部半導体層の不純物濃度より低い不純物濃度を有する第1導電型の上部半導体層とを含む、請求項1または2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記基板の前記主表面は、{0001}面に対するオフ角が38°以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記基板の前記主表面は、{03-38}面に対するオフ角が±5°以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記基板の前記主表面は、{11−20}面に対するオフ角が±5°以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記基板の前記主表面は、{1−100}面に対するオフ角が±5°以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項1】
{0001}面に対するオフ角が32°以上である主表面を有し、炭化珪素からなる基板と、
前記基板の主表面上に形成された第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層上に形成された、第2導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層において、互いに間隔を隔てて形成された第2導電型のソース領域およびドレイン領域と、
前記第2半導体層において、前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の領域に形成された第1導電型のゲート領域とを備える、炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
少なくとも前記ゲート領域と前記ドレイン領域との間において、前記第2半導体層の表面層が第1導電型の第3半導体層となっている、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記第1半導体層は、
前記基板の主表面上に形成された第1導電型の下部半導体層と、
前記下部半導体層上に形成され、前記下部半導体層の不純物濃度より低い不純物濃度を有する第1導電型の上部半導体層とを含む、請求項1または2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記基板の前記主表面は、{0001}面に対するオフ角が38°以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記基板の前記主表面は、{03-38}面に対するオフ角が±5°以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記基板の前記主表面は、{11−20}面に対するオフ角が±5°以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記基板の前記主表面は、{1−100}面に対するオフ角が±5°以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−109348(P2012−109348A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255940(P2010−255940)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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