説明

炭素繊維布帛の検査方法および検査装置

【課題】布帛の検査項目、特に炭素繊維織物における開口率を簡便、かつ、高精度で信頼性高く検査を実施する
【解決手段】照明装置により布帛を照明し、撮像装置によって布帛および照明光を撮像して被検査布帛である炭素繊維布帛を検査する方法であって、少なくとも次の工程を有する欠点の最小サイズから検査条件を設定するキャリブレーション工程被検査布帛の検査面における照度が30〜400lxの範囲となる条件で布帛画像を撮像する撮像工程撮像した画像の濃度分布からバイナリ画像に変換する前処理工程バイナリ画像から被検査布帛における開口部、炭素繊維糸条の隙間または端部の形状情報を抽出する抽出工程被検査布帛の形状情報から布帛における開口率、炭素繊維糸条幅、炭素繊維糸条の配列密度、糸条の斜行、弧形または布帛総幅を算出する演算工程算出された被検査布帛の情報が欠点であるか否かを判定する判定工程判定結果を出力装置に出力する出力工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維布帛の検査方法および検査装置に関する。より詳しくは、炭素繊維布帛における検査項目(布帛の開口率、炭素繊維糸条幅、炭素繊維糸条の配列密度、糸条の斜行、弧形、布帛総幅など)を、簡便、かつ、高い精度で信頼性高く測定することができる検査方法および検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチックス(以下、FRPと呼称する。)は、その比強度、比弾性率の高さから様々な分野で多く利用されており、FRPに用いられる布帛の需要も急増している。中でも炭素繊維を用いた布帛は、特に高い性能を示すことから、航空機、船艇、自動車、などの高い強度を要求される用途に多く利用されている。
【0003】
これらFRPに用いられる布帛においては、少しの布帛欠点がFRPとした際の破壊起点および強度低下原因となり得るため、欠点に関して厳しい検査規格が設けられている。その中でも、開口率、糸条幅、糸条配列密度、糸条の斜行や弧形などの形状欠点については、数値による正確な検査がなされており、特にこれら検査規格の合否判定においては、高い精度の検査水準が要求される。
【0004】
これら検査は、一般的に人の目によって行われていたが、省人化、精度向上、欠点見逃しの抑制などを目的とした自動化技術の導入が進んでおり、検査時間の短縮や検査精度の向上のため、種々の技術が提案されている(例えば、特許文献1〜3など参照)。
【0005】
特許文献1には、単一の装置にて複数種の欠点を検出できる織物検査装置の提案がある。しかしながら、かかる提案においては複数種の欠点を検出できる点においては優れているが、照明装置および撮像装置が解放空間に配置されているため外乱の影響を受け易く、形状欠点のみについて考えた場合、検査の正確性に欠ける。
【0006】
特許文献2には、テクスチャ表面のカメラ画像をウェーブレット逆変換処理により生成したテクスチャまたは照明ムラ除去画像から表面異常を検出する表面検査方法の提案がある。しかしながら、かかる提案はそもそも外乱を多く含む画像から表面異常を抽出するため、上記画像解析処理を行う必要があり、その過程にて実画像と差異が生じる可能性を含む。特に、高い検査精度を要求される形状欠点において、その影響は顕著である。
【0007】
特許文献3には、検査対象織物を挟んで発光部および受光部を対置し、これらを同期移動させることで測定バラツキを可及的に阻止する開口率測定装置の提案がある。かかる提案においても検査対象を忠実かつ正確に反映した画像を取得するには十分でなく、撮像環境および照明環境に問題があった。すなわち、取得画像において糸条と空白部との境界部に透過光の回折によりグレイゾーンが発生してしまい、実物を正確に反映した画像を取得することができず、これに伴い、画像の正確な二値化を行うことができなかったのである。さらに、発光部と受光部とを同期移動させる機構が同期できず、検査の信頼性を損なう場合があった。
【0008】
つまり、特許文献1〜3をはじめとした従来技術では、外乱を抑制した精度の高い検査技術は確立されておらず、かかる技術が渇望されている。
【特許文献1】特開2003−218172号公報
【特許文献2】特開2004−212392号公報
【特許文献3】特開2005−290623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記に挙げた問題点を解決することにある。すなわち、本発明は、布帛の検査項目(布帛における開口率、炭素繊維糸条幅、炭素繊維糸条の配列密度、糸条の斜行、弧形、布帛総幅など)を、特に炭素繊維織物における開口率を簡便、かつ、高精度で、信頼性高く検査を実施することができる炭素繊維布帛の検査方法および検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
(1)照明装置により布帛を照明し、撮像装置によって布帛および照明光を撮像して被検査布帛である炭素繊維布帛を検査する方法であって、少なくとも次の(a)〜(g)の工程を有することを特徴とする炭素繊維布帛の検査方法。
(a)欠点の最小サイズから検査条件を設定するキャリブレーション工程
(b)被検査布帛の検査面における照度が30〜400lxの範囲となる条件で布帛画像を撮像する撮像工程
(c)撮像した画像の濃度分布から、バイナリ画像に変換する前処理工程
(d)バイナリ画像から、被検査布帛における開口部、炭素繊維糸条の隙間または端部の形状情報を抽出する抽出工程
(e)被検査布帛の形状情報から、布帛における開口率、炭素繊維糸条幅、炭素繊維糸条の配列密度、糸条の斜行、弧形または布帛総幅を算出する演算工程
(f)算出された被検査布帛の情報が、欠点であるか否かを判定する判定工程
(g)判定結果を出力装置に出力する出力工程
(2)前記(b)の撮像工程において、少なくとも一方から被検査布帛を透過照明する照明装置と、被検査布帛および透過光を撮像する撮像装置とが、被検査布帛の移動面を挟んで対向して配置され画像を取得する、前記(1)に記載の炭素繊維布帛の検査方法。
【0011】
(3)前記(b)の撮像工程において、照明装置と撮像装置とが同一暗室内に配置されている、前記(1)または(2)に記載の炭素繊維布帛の検査方法。
【0012】
(4)前記(b)の撮像工程において、撮像装置がCCDカメラであり、かつ、その分解能が0.003〜2mm/ピクセル(画素)の範囲内に設定されている、前記(1)ないし(3)のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査方法。
【0013】
(5)被検査布帛の送出および巻取装置を備え、かつ、該送出および巻取装置を連続運転して、炭素繊維布帛を移動させている状態で連続して検査する、前記(1)ないし(4)のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査方法。
【0014】
(6)被検査布帛の送出および巻取装置を備え、かつ、該送出および巻取装置を間欠運転して、炭素繊維布帛を停止させている状態で連続して検査する、前記(1)ないし(4)のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査方法。
【0015】
(7)被検査布帛の炭素繊維布帛が、たて糸およびよこ糸のいずれもが炭素繊維糸条からなる炭素繊維織物であるとともに、前記(d)の抽出工程において、抽出する情報が被検査布帛における開口部であり、前記(e)の演算工程において、開口部の周囲長Lと検査範囲の面積Sとの比(L/S)が、0〜1%の範囲内であり、かつ、布帛の形状情報から被検査布帛における開口率を算出する、前記(1)ないし(6)のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査方法。
【0016】
(8)被検査布帛の炭素繊維布帛が、たて糸およびよこ糸のいずれもが炭素繊維糸条からなる炭素繊維織物で、かつ、前記(b)の撮像工程において、被検査布帛の全幅画像を、一台または複数台の撮像装置で撮像し、前記(d)の抽出工程において、抽出する情報が被検査布帛における開口部であり、前記(e)の演算工程において、炭素繊維糸条の弧形および斜行を算出する、前記(1)ないし(6)のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査方法。
【0017】
(9)照明装置により布帛を照明し、撮像装置によって布帛および照明光を撮像して被検査布帛である炭素繊維布帛を検査する装置であって、少なくとも次の(a)〜(g)の手段を有することを特徴とする炭素繊維布帛の検査装置。
(a)欠点の最小サイズから検査条件を設定するキャリブレーション手段
(b)被検査布帛の検査面における照度が30〜400lxの範囲となる条件で布帛画像を撮像する撮像手段
(c)撮像した画像の濃度分布から、バイナリ画像に変換する前処理手段
(d)バイナリ画像から、被検査布帛における開口部、炭素繊維糸条の隙間または端部の形状情報を抽出する抽出手段
(e)被検査布帛の形状情報から、布帛における開口率、炭素繊維糸条幅、炭素繊維糸条の配列密度、糸条の斜行、弧形または布帛総幅を算出する演算手段
(f)算出された被検査布帛の情報が、欠点であるか否かを判定する判定手段
(g)判定結果を出力装置に出力する出力手段
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、(b)の撮像工程または撮像手段において、被検査布帛の検査面における照度が30〜400lxの範囲となる条件で布帛画像を撮像ことで、光の回折が主因となって発生する取得画像における糸条と開口部との境界部でのグレイゾーンの発生を最小限に抑制することができ、実物を正確に反映した画像を取得することができる。
【0019】
また、少なくとも一方から被検査布帛を透過照明する照明装置と、被検査布帛および透過光を撮像する撮像装置とが、被検査布帛の移動面を挟んで対置して画像を取得したり、照明装置と撮像装置とが同一暗室内に配置することにより、さらに忠実に実物を反映した高精度な画像を取得することができる。
【0020】
さらには、(d)の抽出工程または抽出手段において、開口部の周囲長Lとバイナリ画像の面積Sとの比(L/S)を、0〜1%の範囲内とすることで、(c)の前処理工程または前処理手段にて生じた誤差を最小限に抑制し、信頼性や再現性に優れる検査とすることができる。
【0021】
以上の効果により、優れた検査精度および信頼性を有する布帛の検査方法および検査装置を提供することができるのである。かかる検査方法および検査装置は、特に炭素繊維織物における開口率の検査にとりわけ有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、照明装置により布帛を照明し、撮像装置によって布帛および照明光を撮像する炭素繊維布帛の検査方法もしくは検査装置であって、少なくとも次の(a)〜(g)の工程または手段を有する。
(a)検査条件をセットアップするキャリブレーション工程または手段
(b)被検査布帛の検査面における照度が30〜400lxの範囲となる条件で布帛画像を撮像する撮像工程または手段
(c)撮像した画像の濃度分布から、バイナリ画像に変換する前処理工程または手段
(d)バイナリ画像から布帛の形状情報を抽出する抽出工程または手段
(e)布帛の形状情報から、布帛における開口率、炭素繊維糸条幅、炭素繊維糸条の配列密度、糸条の斜行、弧形または布帛総幅を算出する演算工程または手段
(f)算出された数値が、欠点であるか否かを判定する判定工程または手段
(g)判定結果を出力する出力工程または手段
以下に、各工程または手段の詳細について説明する。なお、以下の「工程」なる記載は手段を含むものである。
【0023】
(a)キャリブレーション工程
本発明において、キャリブレーション工程は、取得した画像が保有する画像単位(ピクセル)から、実際の単位(例えばmm)の測定値へ変換するために必要なパラメータをセットアップするものである。具体的には、分解能、視野の決定に加え、マスターワークについて本発明の検査方法または検査装置の(b)〜(e)の工程を試行するものである。
【0024】
本発明でいう分解能とは、被検査布帛の細部をどれほど再生できるかを示すものであり、被検査布帛における欠点の最小サイズに応じて、所望の分解能を取ることができ、分解能が小さいほど、被検査布帛を細部まで検査することができる。かかる分解能は、被検査布帛における欠点の最小サイズを表すのに必要なピクセル数を考慮したうえで決定すると良いが、分解能が0.01〜2mm/ピクセル(画素)の範囲内になるように設定するのが好ましい。より好ましくは0.03〜1mm/画素、さらに好ましくは0.05〜0.1mm/画素の範囲内である。
【0025】
分解能が0.01mm/ピクセル未満であると、極めて微少な欠点の検出が可能となるが、取得画像の視野が狭くなり過ぎて糸条幅や糸条配列密度などを検査するために必要な情報を得るために撮像装置が数多く必要となる場合がある。高い有効画素数の撮像装置は高価であり、安価な汎用品を使用しても多くの台数が必要となり、同様に設備費用がかかり過ぎるのである。一方、分解能が2mm/ピクセルを超えると、検査すべき対象領域(例えば、糸条の間隙や、隣り合う炭素繊維糸条同士の開口部や隙間など)自体が1ピクセル内に含まれる場合があり、被検査布帛の境界を明確にすることができない。このように境界が不明確な画像をもとに後述(c)の前処理工程において、二値化処理を行うと、高い精度での画像処理ができなくなる場合がある。
【0026】
本発明でいう視野とは、被検査布帛の中で、撮像装置が収録できる領域のことであり、分解能の最小条件を決める際の主要素である。かかる視野は、被検査布帛における欠点の最小サイズと撮像装置の仕様に応じた最適な視野を選択できる。
【0027】
なお、分解能および視野の決定においては、撮像装置の仕様(具体的には、センササイズ、ピクセル数)と大きく関係するため、これら3つのパラメータそれぞれを考慮したうえで、所望の数値に設定にすると良い。
【0028】
ここで、マスターワークについて、後述(b)〜(e)の工程を試行することで、後述(c)の前処理工程にて使用する閾値および照明条件を設定することができる。
【0029】
本発明でいうマスターワークとは、形状情報が既知の被検査布帛または決められた検査対象のことである。かかるマスターワークは、環境条件(例えば温度、湿度)の変化において実質的に不変であると、検査環境の差異により生じた微少な誤差を排除することができる。本発明の被検査布帛である炭素繊維布帛を模した形態であると、実検査により近い条件でのキャリブレーションを実施できる。また、検査対象毎に被検査布帛を模したマスターワークを用意することで、異なる被検査布帛間での検査条件の差異を補正できることから好ましい。
【0030】
閾値は、撮像画像内の輝度分布から、後述(c)の前処理工程にてバイナリ画像に変換する時の境界となる輝度に相当する値である。本工程においては、マスターワークについて、後述(d)〜(e)の工程を試行することで算出されるマスターワークの形状情報(例えば開口率)と、既知であるマスターワークの形状情報とが一致するよう、閾値を設定する。これにより、後述(c)の前処理工程において、取得画像を被検査布帛の形状情報を忠実に反映したバイナリ画像へ変換し、高い精度で検査を行うことができる。
【0031】
本発明でいう照明条件とは、被検査布帛から、所望の形状情報を含む画像を取得するための重要なパラメータであり、本発明においては、被検査布帛の検査面における照度を表す。かかる照明条件は、後述(b)の撮像工程に記述する通り、被検査布帛の検査面における照度が30〜400lxの範囲内となるよう設定すると、後述(b)の撮像工程において、所望の情報を含む布帛画像を撮像できることから好ましい。なお、本発明の透過照明装置の照度設定方法としては、電圧調整により照明強度を直接調整してもよいし、フィルター、などの透過性媒体を、透過照明装置と被検査布帛との間に介在させ、間接的に調整してもよい。好ましくは後者であり、直接照明強度を操作しないため、微弱照度下においても不安定な挙動を示すことなく、安定した照明条件のもと検査が可能である。
【0032】
(b)撮像工程
本発明において、撮像工程は、被検査布帛である炭素繊維布帛の画像を撮像する工程である。本工程において、被検査布帛の検査面における照度が30〜400lxの範囲内となる条件で布帛画像を撮像すると、被検査布帛の有する形状情報を、正確に抽出することができる。より好ましくは50〜200lxの範囲内である。しかしながら、上記条件を満足するには照明照度を最小限に抑える必要があり、そのため被検査布帛と背景との境界部が不鮮明となり、形状情報の抽出が困難であったり、所望の情報を抽出できなかったり、あるいは、画像処理による補正を必要とするなど、不具合が生じる場合がある。
【0033】
本発明では、前述(a)のキャリブレーション工程にて、マスターワークを基準に被検査布帛と背景との境界部を予め決定することで上記問題を解決でき、かつ、被検査布帛と背景との境界部において発生する光の回折を最小限に抑制し、実物を反映した画像を撮像することができる。
【0034】
かかる撮像工程において、照度が400lxより大きいと、露光過多、つまり飽和が起こり、撮像した画像において検出したい情報がすべて含まれず、所望の情報を抽出することができなくなる。また、炭素繊維布帛の隙間などを透過光により検出する場合は、炭素繊維布帛の隙間と糸条との境界部において光の回折が発生し、実物の間隙よりも大きく検出される。一方、照度が30lx未満であると、逆に露光不足となり、明るい部分と暗い部分との輝度差が小さいために、被検査布帛と背景とが同調してしまい、コントラスト不足となってしまう。つまり、撮像した画像において検出したい情報がすべて含まれず、所望の情報を抽出することができなくなる。
【0035】
本発明における照度とは、JIS C7612「照度測定方法」(1985)に定義される照度測定方法により得られる照度を指す。かかる照度の測定は、単位領域内にて5点の測定点を設ける5点法とし、布帛幅方向において左/中央/右の3つの単位区域について、被検査布帛の検査面と同じ高さにおける照度を照度計にて測定する。かかる単位区域は、布帛総幅の1/4の距離を一辺に持つ正方形とし、これら単位区域より得られた照度の平均値を本発明における照度とする。ここでの照度測定は、後述する暗室内において、実質的に透過照明装置以外の光が入射しない環境下にて測定する。
【0036】
本工程において、少なくとも一方から被検査布帛を透過照明する照明装置(透過照明装置)と、被検査布帛および透過光を撮像する撮像装置とが、被検査布帛の移動面を挟んで対向して配置されて画像を取得するのが好ましい。かかる態様であると、被検査布帛における開口部、炭素繊維糸条の隙間または端部の形状情報から、開口率、炭素繊維糸条幅、炭素繊維糸条の配列密度、糸条の斜行、弧形または布帛総幅、などの被検査布帛の形状に関わる情報を、高精度に抽出することができる。かかる照明装置としては、被検査布帛を透過照明する透過照明装置が好ましく、輪郭形状判別や寸法検査の分野で広く利用されている。照明装置が透過照明装置であると、被検査布帛をシルエット像として捉えることができ、被検査布帛の形状に関わる情報を、簡易かつ精度高く抽出することができる。本発明にて検査される布帛の形状に関わる情報は、被検査布帛における開口部、炭素繊維糸条の隙間または端部といった形状情報を起点に処理が行われることからも、シルエット像を得られる透過照明装置が有効である。
【0037】
また、照明装置として、被検査布帛を反射照明する反射照明装置がある。反射照明は、被検査布帛に照射した光の反射を撮像し、反射率や反射角の違いから対象表面の情報を抽出する用途に用いる。かかる反射照明装置は、被検査布帛の表面情報(例えば毛羽、異物混入)を検査するのに有効である反面、検査において被検査布帛の表面形状の影響を受けやすいという問題がある。特に、炭素繊維織物のような表面起伏の大きい対象については、その起伏を欠点として検出してしまう場合があり、所望の形状情報が欠点の中に埋もれてしまう。同様に、黒色で光沢の強い炭素繊維布帛では、被検査布帛表面にてハレーションが発生し易いため、所望の形状情報が欠点の中に埋もれてしまう。これらを鑑みた結果、本発明の炭素繊維布帛の検査方法および検査装置における照明装置としては、透過照明装置が好適である。
【0038】
ここで、透過照明装置と撮像装置を結ぶ直線が、被検査布帛を挟んで、被検査布帛の面方向と略垂直に配置されていると、撮像装置が前記透過照明装置の光を略垂直に入射でき、炭素繊維布帛の隙間と糸条との境界部における光の回折を抑制できることから好ましい。さらに、透過照明装置と撮像装置とが固定された状態で布帛が移動する構造であると、レンズと布帛との距離に変化がなく、被検査布帛の倍率が変化した様に見える視点エラーを防ぐことができる。
【0039】
さらに、透過照明装置と撮像装置とが同一暗室内に配置されていることで、外光の影響を最小限に抑制して検査画像における照明ムラを抑制するとともに、照明装置による光量調整などの不確定要素を排除し、検査対象を忠実かつ正確に反映した画像を取得することができる。特に、表面光沢が強く、また、ハレーションを起しやすい炭素繊維布帛の検査装置において、その効果は顕著である。
【0040】
上記の暗室は、透過照明装置以外の光が画像取得装置に実質的に撮像されないように遮光するためのものであり、透過照明装置と撮像装置とが同一暗室内に配置することができる空間容積を有するものであれば特に制限はない。例えば、透過照明装置と撮像装置とを遮光材で覆ったものでもよいし、検査装置全体を囲う部屋状のものであってもよい。透過照明装置以外の光を遮光するための遮光材としては、透過照明装置の光が暗室内にて反射しない無反射特性を有する材料であると、検査対象布帛へ反射光が照射するのを防ぐことができ、実質的に透過光のみを画像取得装置に撮像することができる。中でも、炭素繊維布帛はハレーションによるノイズが発生しやすいため、上記態様による効果を最大限に発揮することができる。
【0041】
本工程で使用する撮像装置が、CCDカメラであると、効率よく処理を行うことができるため、CCDカメラ(ラインセンサ、エリアセンサなど)を採用することが好ましい。中でも分解能を高くかつ高速処理ができ、ラインセンサが特に好ましい。
【0042】
上記ラインセンサ自体の画素数は、検査視野、検査精度から任意に選択することができる。例えば、有効画素数が4千画素程度の汎用モデルから9千画素程度のハイグレードモデルまで、所望の検査した規格に応じて所望の台数、仕様から構成することができ、カラー、白黒も同様である。中でも、撮像する取得画像の中央部と周辺部における画像の変化比率の小さい低ディストーションカメラが好ましい。撮像装置は、その分解能が0.01〜2mm/ピクセル(画素)の範囲内に設定されているのが好ましい。より好ましくは0.03〜1mm/画素、さらに好ましくは0.05〜0.1mm/画素の範囲内である。
【0043】
上記範囲内の分解能に設定するために、被検査布帛の幅方向に2〜15個のカメラを有し、それぞれのカメラが撮像した取得画像が布帛の幅方向に切れ目なく連続するか、もしくは、本装置が撮像した取得画像が布帛の幅方向に一部重複するように配置されるのが好ましい。かかる態様であると、後述(d)の抽出工程において、それぞれの画像を連結して布帛全幅にわたる炭素繊維糸条の位置情報を取得することができる。
【0044】
さらに、カメラが被検査布帛のそれぞれの端部が視野に入るように配置されているのが好ましい。かかる態様であると、後述(d)の抽出工程において、布帛端部に存在する地絡糸もしくは布帛端部の輪郭線の位置情報を取得することができる。
【0045】
(c)前処理工程
本発明において、前処理工程は、前述(b)の撮像工程にて撮像された取得画像の濃度分布から、バイナリ画像に変換する工程である。本工程は、取得画像の濃度分布を任意の閾値にて二値化処理することで、ピクセル濃度0(黒)または1(白)の二値化画像(バイナリ画像)を取得することができる。
【0046】
かかる二値化処理においては、濃度分布をピクセル濃度1と0とに二分するための境界となる閾値を決定する必要がある。閾値には、上述(a)キャリブレーション工程にて決定した閾値をそのまま使用することができる。
【0047】
本発明での取得画像は、透過照明装置の照度が微弱であるため、光の回折は抑制できるが、濃度分布に偏りが生じ、形状情報の抽出が困難な画像となってしまう。この場合、取得画像の濃度分布から直接、被検査布帛の欠点情報を抽出しようとすると、背景と対象物との分離が難しく、十分な検査感度を得ることができなくなる。
【0048】
そこで、本発明においては、形状情報が既知のマスターワークにて決定した閾値から二値化処理することで、取得画像を布帛の形状情報を忠実に反映したバイナリ画像へ変換し、高い精度での検査を可能としたものである。つまり、本工程を踏むことで、後述(d)の抽出工程において、被検査布帛の形状情報を高速かつ高精度で抽出することができる。
【0049】
(d)抽出工程
本発明において、抽出工程は、前述(c)の前処理工程にて得られたバイナリ画像から被検査布帛における開口部、炭素繊維糸条の隙間または端部の形状情報を抽出する工程である。本工程は、前述(c)の前処理工程にて得られたバイナリ画像から、ピクセル濃度0(黒)または1(白)、あるいは両方のピクセル数をカウントし、後述(e)の演算工程により、布帛の開口率、炭素繊維糸条幅、炭素繊維糸条の配列密度、糸条の斜行、弧形または布帛総幅などの布帛の形状に関わる情報を、ピクセル単位で抽出することができる。
【0050】
(e)演算工程
本発明において、演算工程は、前記(d)の抽出工程にて得られた被検査布帛の形状情報から、被検査布帛における開口率、炭素繊維糸条幅、炭素繊維糸条の配列密度、糸条の斜行、弧形または布帛総幅を算出する工程である。本工程は、前述(d)にて取得した布帛の形状情報を、実世界単位の測定値へ変換する第1の演算と、第1の演算にて得られた測定値から、布帛における開口率、炭素繊維糸条幅、炭素繊維糸条の配列密度、糸条の斜行、弧形および布帛総幅の少なくとも一つを算出する第2の演算から構成される。
【0051】
第1の演算は、前述(a)のキャリブレーション工程にて基準化されたパラメータ(分解能、視野)をもとに、画像単位(ピクセル)の情報から、実際の単位(例えばmm)の数値に変換することができる。
【0052】
第2の演算は、第1の演算にて得られた数値を、所望の演算式に代入し、布帛における開口率、炭素繊維糸条幅、炭素繊維糸条の配列密度、糸条の斜行、弧形または布帛総幅の少なくとも一種を算出することができる。また、算出された布帛総幅から被検査布帛幅方向における位置情報、後述する送出および巻取装置により検出された距離情報から被検査布帛長手方向における位置情報を算出することもでき、後述(f)の判定工程にて欠点位置を正確に割り出すことができる。
【0053】
本発明において、被検査布帛の開口率とは、炭素繊維布帛を平面で見た際の間隙の面積率を定義したものを指し、開口部の面積を検査面積で除した百分率にて表される。また、炭素繊維糸条の配列密度とは、炭素繊維糸条が単位長さ当たりに何本が存在するかを示す数値を指す。
【0054】
(f)判定工程
本発明において、判定工程は、前述(e)の算出工程にて算出された被検査布帛の情報が、欠点であるか否かを判定する工程である。本工程は、前述(e)の演算工程にて算出した布帛情報と、予め記憶された正常な布帛情報とを比較照合して、一致しない箇所を布帛欠点とし、一致しない布帛情報の種類から欠点の種類を判別するものである。具体的には、前記布帛情報に基づいて、被検査布帛における開口率、炭素繊維糸条幅、炭素繊維糸条の配列密度、糸条の斜行、弧形または布帛総幅、などを判定する。
【0055】
本工程にて判定された欠点は、上述(e)の演算工程にて算出された位置情報により、被検査布帛上の正確な位置まで追跡することができ、再確認、欠点修正する際に容易に欠点箇所を見つけることが可能であり、本発明において好ましい態様といえる。
【0056】
(g)出力工程
本発明において、出力工程は、上述(f)の判定工程にて得られた判定結果を、ディスプレイやプリンタや記録媒体などの出力装置に出力(表示および/または記録)する工程である。
【0057】
本工程では、少なくとも布帛欠点の形状情報、種類および位置情報を出力装置に出力することにより、記録媒体に記録することにより炭素繊維布帛を製造した後に容易にトレースすることができる。また、さらに入力装置を追加して、被検査布帛に使用している原料や製造ロットなど被検査布帛に関する製造情報を入力することができる。かかる製造情報と記録した布帛欠点の位置および種類とを併せて、出力装置(ディスプレイやプリンタなど)に被検査布帛の検査結果表や検査証明書などとして出力することができ、大幅に省人化に貢献できる。
【0058】
本発明の炭素繊維布帛の検査方法および検査装置において、被検査布帛の炭素繊維布帛が、たて糸およびよこ糸のいずれもが炭素繊維糸条からなる炭素繊維織物について、開口率を検査できる態様であると好ましい。
【0059】
本発明でいう開口率は、炭素繊維布帛の中でも、特に炭素繊維織物について広く用いられるパラメータとして知られており、意匠性のみならず、FRPの成形性、強度、などに影響を及ぼす重要なパラメータである。かかる開口率は、その用途によって多種多様に設計されるが、中でも開口率0%〜10%の範囲内である炭素繊維織物は、高品質が要求される航空・宇宙用途や自動車に代表される構造部材、意匠が要求される自動車用途や一般産業用途において需要が高い。つまり、開口率の小さい炭素繊維織物のほど、より高品質での需要が強く、その品質検査においても高い精度の検査が必要とされる。本発明は、炭素繊維織物の開口率の検査方法について、鋭意検討した結果、開口率の小さい炭素繊維織物について、高い精度での開口率の検査方法を見出すに至った。
【0060】
かかる開口率の検査方法は、前記(e)の演算工程において、開口部の周囲長Lと検査範囲の面積Sとの比(L/S)が、0〜1%の範囲内であること以外は、本発明の他の検査方法と何ら変わりない。
【0061】
前記(d)の抽出工程おいて抽出される被検査布帛の形状情報は、開口部、炭素繊維糸条の隙間または端部の3つに限られており、開口率の検査をするに当たっては、開口部を形状情報として抽出する。
【0062】
さらに、算出される被検査布帛の開口部の周囲長L(ピクセル)と、検査範囲の面積S(ピクセル)との比L/Sが0〜1%の範囲内にあると、被検査布帛の検査精度をさらに高い水準とできることから好ましい。かかる被検査布帛の開口部の周囲長Lは、被検査布帛(バイナリ画像における黒)と開口部(バイナリ画像における白)との境界部の総距離に相当し、不安定なピクセル濃度領域に含まれる場合が多く、僅かな検査条件の変化において変動する値である。
【0063】
ここで、L/Sが1%より大きいと、周囲長に相当するピクセル全てが、白ないし黒に置き換わった場合に、1%以上の誤差が検査結果に生じることを意味し、開口率において1%以上の誤差を生じるということと同義であるため好ましくない。本発明の被検査対象である炭素繊維布帛は、航空機、船艇、自動車、などの高い強度を要求される用途に多く利用されており、少しの布帛欠点がFRPとした際の破壊起点および強度低下原因となり得るため、1%の誤差であってもその影響は顕著である。
【0064】
さらに、本発明の炭素繊維布帛の検査方法および検査装置は、透過照明装置から発せられる透過光を検出することが前提であり、本検査方法にて検出できる被検査布帛の形状情報の殆どが、開口部の形状情報を基準に算出される。そのため、周囲長Lの検査誤差が、布帛の形状情報全ての検査誤差を招く要因となる。
【0065】
なお、L/S=0であると布帛の開口が全く無い状態を示しており、0未満の値は存在しないということである。
【0066】
本発明の炭素繊維布帛の検査方法および検査装置において、被検査布帛の炭素繊維布帛が、たて糸およびよこ糸のいずれもが炭素繊維糸条からなる炭素繊維織物について、炭素繊維糸条の弧形および斜行を検査できる態様であると好ましい。
【0067】
本発明における炭素繊維糸条の弧形および斜行について、図面を参照しながら説明する。
【0068】
図1は、本発明の炭素繊維糸条の弧形および斜行を示す概略図である。
【0069】
本発明でいう弧形5とは、炭素繊維織物1の幅方向2において、一端の開口部3から、よこ糸を辿って至るもう一端の開口部4との間における、炭素繊維織物の長手方向でのよこ糸の最大変位量を定義したものである。
【0070】
一方、本発明でいう斜行6とは、炭素繊維織物の幅方向において、同一のよこ糸を辿って至る両端の開口部との間における、炭素繊維織物の長手方向での座標の差を定義したものである。
【0071】
本発明は、炭素繊維糸条の弧形および斜行の検査方法について、鋭意検討した結果、以下の検査アルゴリズムを構築することで、炭素繊維糸条の弧形および斜行を検査するに至った。
【0072】
かかる検査アルゴリズムとしては、先ず、上述(b)の撮像工程にて、被検査布帛の全幅にわたる画像を取得し、一時的にデータ保存装置に保存しておく。取得する画像は、一台の撮像装置にて被検査布帛の全幅を撮像したものでもよいし、複数台の撮像装置にて切れ目なく、もしくは、一部重複して撮像したものでもよい。
【0073】
次いで、一時保存されたデータを画像処理装置に読み込み、上述(c)の前処理工程において、取得画像の二値化処理を行う。二値化処理は、取得画像の有する濃度ヒストグラムを元に、前述(a)のキャリブレーション工程において設定される閾値により、被検査布帛(炭素繊維糸条)と背景(開口部)に分離する。
【0074】
そして、上述(e)の演算工程において、下記のA〜Cの演算を経ることで、被検査布帛における炭素繊維糸条の弧形および斜行を算出することができる。
【0075】
Aの演算は、得られた二値化画像から、開口部の面積、開口形状および位置を算出するものである。開口部の面積および開口形状は、上述(e)の演算工程に記す通りであり、二値化画像における白黒の分布から算出できる。また、開口部の位置は、開口部の面積および開口形状と、後述する送出および巻取装置に備えられたエンコーダーの距離情報とから算出できる。かかる開口部の位置としては、開口部の重心や、被検査布帛の炭素繊維糸条(よこ糸)と隣接する一辺の中点を位置情報とでき、好ましくは後者とすることで、後述する炭素繊維糸条の弧形および斜行の算出結果において、よこ糸の状態を忠実に再現した結果とすることができる。
【0076】
Bの演算は、Aの演算結果から、開口部の開口周期を算出し、数百個並ぶ開口部の連結性を特定するものであり、隣接する開口部を被検査布帛の幅方向において、連結された一集団として検出するものである。詳しくは、被検査布帛の幅方向と並行する方向に、長手方向に特定の間隔にてスキャンすることで、被検査布帛の長手方向における開口部の2〜10周期にわたる位置情報を取得する。好ましくは、処理速度およびパターン認識精度のバランスから3〜5周期である。得られた位置情報から、各開口部間の距離を算出し、隣接する開口部の中から、最も短い距離にある開口部を隣接する開口部として検出する。ここで検出される開口部は、被検査布帛の幅方向に対するものであり、被検査布帛の長手方向における開口部は実質的に含まれない。
【0077】
Cの演算は、Bの演算にて検出された開口部の集団から、炭素繊維糸条の弧形および斜行を算出するものである。かかるCの演算は、上述した炭素繊維糸条の弧形および斜行の定義に準じ、さらに局所的な斜行についても算出することができる。
【0078】
炭素繊維糸条の弧形は、Bの演算により得られた開口部の一集団について、被検査布帛の長手方向における開口部の位置情報の中で、最も大きい座標と最も小さい座標との差として得られる。
【0079】
炭素繊維糸条の斜行は、一集団に属する開口部の中で、被検査布帛の幅方向において、両端に位置するそれぞれの開口部の長手方向の座標の差から算出できる。ここでいう、両端の開口部とは、Bの演算により認識された、一集団の中にあって、被検査布帛の幅方向における座標が、最も大きい開口部および最も小さい開口部の2つであり、Aの演算により得られた位置情報から、容易に選択できる。かかるそれぞれの開口部について、Aの演算にて得られた被検査布帛の長手方向における位置情報から、二つの座標の差を斜行として算出できる。局所的な斜行を算出する場合は、少なくとも2つ以上の隣接する開口部について、上述同様の検査を実施することで算出でき、全幅における検査に比べ処理速度を早くできる。かかる斜行については、角度として算出することも可能であり、各開口部間の被検査布帛の幅方向、長手方向の座標差の正接から容易に算出することができる。
【0080】
なお、炭素繊維糸条の弧形および斜行の検査結果は、被検査布帛のよこ糸の状態をモデル的に再現した画像として出力することも可能であり、数値として得られた結果を容易に可視化することが可能である。
【0081】
本発明の炭素繊維布帛の検査方法および検査装置において、被検査布帛の送出および巻取装置を備えた態様であると、検査を高速化でき、かつ、大量の情報を短時間で取得できることから好ましい。
【0082】
本発明で用いる被検査布帛の送出および巻取装置は、被検査布帛を移動させ、かつ、移動させた距離を検出するものである。本装置は、トルクモーターなどでトルク制御してもよいし、被検査布帛の張力を検出して張力制御してもよい。被検査布帛の巻締を抑制し、より安定した巻姿の布帛を得るためには、送出または巻取装置は張力制御するのが好ましい。特に巻取装置においては、その効果は顕著に発現する。
【0083】
また、本装置は、1本の駆動軸に被検査布帛が巻かれたコアを取り付ける軸駆動方式で送出または巻取してもよいし、2本のローラのうち少なくとも1本が駆動するローラ群の隙間上に布帛巻物を置く表面駆動方式で送出または巻取してもよい。表面駆動方式は布帛巻物の交換が容易という利点がある。一方、伸縮性のない炭素繊維布帛において、被検査布帛の巻締を抑制し、より安定した巻姿の布帛を得るためには軸駆動方式がより好ましい。
【0084】
本装置にて、移動させた距離を検出し、この距離情報(布帛の長手方向)を前記(e)の演算工程にて、被検査布帛長手方向における位置情報とすることができる。かかる距離情報は、被検査布帛幅方向の位置情報の分解能と同じ分解能する、すなわち、0.01〜2mm/ピクセルの範囲内になりように設定・設置すると、前記(d)の抽出工程において、安定した正確な布帛情報の抽出を行えるため好ましい。
【0085】
移動させた距離を検出する方法としては、例えば移動する被検査布帛上に接触させるコンタクトローラの軸や、移動する被検査布帛が通過するローラの軸の回転数からエンコーダーで検出する方法などが挙げられる。炭素繊維布帛は0.1〜0.5mmと比較的厚いものが多いため、本発明においては、移動する布帛上に接触させるコンタクトローラの軸にエンコーダーを取り付けるのが好ましい。この場合、送出装置または巻取装置モーターのオン/オフ信号から運転/停機を判断できる信号にてノイズを最小限に抑えるのが好ましい。
【0086】
本装置は、布帛製造装置(例えば、織機、編機など)に備わっているものを使用すると、インライン検査を行うことができる。また、布帛製造装置ではない検反機などに備わっているものを使用すると、オフライン検査を行うことができる。検査の安定性や精度の観点からは、停機なく安定して布帛を走行することができ、かつ、照明装置や撮像装置などの振動などを最小限に抑制することができるオフライン検査が好ましい。一方、検査精度がそれほど厳しくなく、検査における費用を最小限にするという観点からは、インライン検査が好ましい。インライン検査によると、検反機などで巻き返す必要がなく、リードタイムも短くすることができる。
【0087】
なお、本装置は、さらにエッジポジションコントロール装置(EPC)を備えるのが好ましい。送出および/または巻取装置にEPCを備えると、綺麗な巻姿の布帛を得ることができるだけでなく、布帛検査における布帛端部の位置を安定させることができるため、布帛検査自体も安定させることができる。
【0088】
以上のように、本発明の炭素繊維布帛の検査方法および検査装置は、人の目による検査に較べて、光学的な処理が難しい黒色の炭素繊維布帛において、検査精度の向上、欠点見逃し抑制、検査時間の短縮、を実現することができる。また、既存の検反機、織機、などに簡単に設置することが可能であり、品質管理における省人化、高信頼化および高精度化としても大きな効果を示す。
【0089】
かかる検査装置は、高品質が要求される航空・宇宙用途や自動車に代表される構造部材、意匠が要求される自動車用途や一般産業用途に代表される外観部材などの炭素繊維布帛の検査に特に好適である。
【実施例】
【0090】
本発明の炭素繊維布帛の検査方法の一態様について、図面を参照しながら説明する。
【0091】
図2は、本発明の炭素繊維布帛の検査方法の一実施形態を説明する概略断面図である。
【0092】
<炭素繊維布帛の検査方法>
先ず、布帛の送出装置7により炭素繊維布帛8を送り出し、EPC9が備わった巻取装置10にて、布帛の巻取位置を揃えながら巻き取った。図2では、布帛製造装置ではない検反機に備わっているものを使用してオフライン検査とした。
【0093】
また、移動する布帛上に接触させるコンタクトローラ11の軸にエンコーダー(図示せず)を取り付け、かつ、巻取装置10のモーターのオン/オフ信号から運転/停機を判断できる信号を併用してノイズを最小限に抑え、布帛の移動距離を検出した。この距離情報(布帛長手方向)は、データ保存用パソコン12a〜12oに一時保存し、判定工程において判別される欠点の位置情報とした。なお、布帛幅方向における分解能と同じになるよう、布帛の搬送速度を設定した。
【0094】
透過照明装置13と撮像装置14a〜14oとは、布帛を挟んで配置され、両者を結ぶ直線と、布帛面とが略垂直となるように設置した。透過照明装置13には、検査布帛の全幅に渡って一様な照明強度を得られるライン形照明を選択し、光源には赤色LEDを用いた。撮像装置14a〜14oには、カラーラインセンサ(有効画素数は4096画素、周波数5kHz)を用いた。かかる撮像装置14a〜14oは、布帛搬送方向(布帛長手方向)と垂直方向に一列かつ等間隔に15台配列し、撮像装置14a〜14oにおいて、布帛の両端部が視野に入るよう配置した。これら撮像装置14a〜14oにより取得した画像を、布帛幅方向に連結することで、布帛全幅における画像を取得できるよう設定した。
【0095】
ここで、図2における透過照明装置13および撮像装置14a〜14oは、暗幕により囲った暗室15内に配置され、透過照明装置13以外の光が撮像装置14a〜14oに実質的に撮像されないように遮光した。
【0096】
撮像装置14a〜14oで撮像された画像は、データ保存用パソコン12a〜12oにデジタル転送され、そこから画像処理用パソコン16へ必要データのみを転送する態様とした。かかるデータ保存用パソコン12a〜12oは、撮像装置1台に対し1台とし、検査領域全てにおける布帛の形状情報および布帛の欠点画像を保存した。
【0097】
画像処理用パソコン16では、取得した布帛画像から、炭素繊維布帛の開口率を算出し、欠点数および欠点の位置情報を得た。かかる画像処理用パソコン16は、本発明(c)〜(g)の工程にて必要な種々の処理機能(二値化処理機能、形状情報抽出機能、演算機能、判定機能、データ出力機能)を有し、かつ、ディスプレイ17、キーボード18およびプリンタ19を併せて備え、検査結果を随時、表示または出力した。
【0098】
以上を合わせて本実施例における、炭素繊維布帛の検査装置とし、これら検査装置を用いて以下2つの検査を実施した。
【0099】
<開口率検査>
上述の炭素繊維布帛の検査装置を用い、炭素繊維布帛の開口率を測定した。先ず、開口率を測定するに当たりマスターワークによるキャリブレーションを行った。12K織物用マスターワークとしては、開口率1.5%(開口ピッチ:8.3mm×8.3mm、開口幅:1.0mm×1.0mm)の黒色のパンチングメタル、3K織物用マスターワークとしては、開口率4.5%(開口ピッチ:2.0mm×2.0mm、開口幅:0.4mm×0.4mm)の黒色のパンチングメタルを用いた。
開口率の測定は、被検査布帛の長手方向100mに対して、10m毎の計11点の開口率を取得した。同時に、11点の開口率の平均値である平均開口率についても取得した。
【0100】
さらに、得られた開口率の整合性を確認するため、上述した開口率の測定と同じ検査領域において、手計測により開口率を測定した。手計測は、被検査布帛を形成する炭素繊維糸条の幅と隙間とを、実体顕微鏡(検査精度:0.01mm)にて計測した結果から算出し、得られた開口率を実質開口率とした。かかる実質開口率と、本発明の炭素繊維布帛の検査方法により算出された開口率とを比較し、検査精度の確認を行った。
【0101】
<炭素繊維糸条の弧形および斜行検査>
上述の炭素繊維布帛の検査装置を用い、炭素繊維布帛における炭素繊維糸条の弧形および斜行を測定した。
炭素繊維糸条の弧形および斜行の測定について、上述開口率検査と同様に、送出装置7および巻取装置10を連続運転して、被検査布帛を8m/分で搬送している状態で、被検査布帛の長手方向100mに対して開口率測定を実施した。測定は、被検査布帛の全幅について、10m毎の計11点にて行い、被検査布帛の長手方向について開口部の3周期にわたる情報を取得した。ここで、炭素繊維糸条の弧形および斜行の上限値をそれぞれ10mmとし、それ以上の数値が検出された場合、該箇所は欠点と判定することとした。
【0102】
<被検査布帛>
炭素繊維布帛として、次のものについて、上記検査装置を用いて検査を行った。
【0103】
12K織物:東レ(株)製BT70−20、T700S−12K、平織、炭素繊維目付200g/m2、100m巻、炭素繊維糸条の配列密度1.2本/cm、実質開口率1.52%、100m巻
3K織物:東レ(株)製CO6343B、T300B−3K、平織、炭素繊維目付200g/m2、100m巻、炭素繊維糸条の配列密度5本/cm、実質開口率4.37%、100m巻
(実施例1)
送出装置7および巻取装置10を連続運転して、12K織物を8m/分の一定速度で搬送している状態で開口率、炭素繊維糸条の弧形および斜行を検査した。透過照明装置13と撮像装置14a〜14eとは、照度150lx、分解能が0.08mm/ピクセルとなるように設定した。なお、本実施例においては、撮像装置14f〜14jの5個を使用した。
これら条件において検査した結果、12K織物の平均開口率は1.73%、実質開口率との誤差+0.21%であり、L/Sは0.51%であった。
また、炭素繊維糸条の弧形は、20m、80mの2箇所において、欠点が検出され、それぞれ18mm、20mmという結果であった。斜行についても、80mの1箇所において、欠点が検出されており、19mmという結果であった。
【0104】
(実施例2)
送出装置7および巻取装置10を連続運転して、3K織物を1m/分の一定速度で搬送している状態で開口率、炭素繊維糸条の弧形および斜行を検査した。透過照明装置13と撮像装置14a〜14eとは、照度150lx、分解能が0.01mm/ピクセルとなるように設定した。なお、本実施例においては、撮像装置14a〜14eの15個全てを使用した。
これら条件において検査した結果、3K織物の平均開口率は4.73%、実質開口率との誤差+0.36%であり、L/Sは0.43%であった。
さらに、炭素繊維糸条の弧形は、10mの1箇所において、欠点が検出され、12mmという結果であった。斜行については、欠点は検出されなかった。
【0105】
(実施例3)
送出装置7および巻取装置10を連続運転して、3K織物を1m/分の一定速度で搬送している状態で開口率、炭素繊維糸条の弧形および斜行を検査した。透過照明装置13と撮像装置14a〜14eとは、照度65lx、分解能が0.01mm/ピクセルとなるように設定した。なお、本実施例においては、撮像装置14a〜14eの15個全てを使用した。
これら条件において検査した結果、3K織物の平均開口率は4.49%、実質開口率との誤差+0.36%であり、L/Sは0.39%であった。
さらに、炭素繊維糸条の弧形は、10mの1箇所において、欠点が検出され、12mmという結果であった。斜行については、欠点は検出されなかった。
【0106】
(実施例4)
送出装置7および巻取装置10を連続運転して、3K織物を1m/分の一定速度で搬送している状態で開口率、炭素繊維糸条の弧形および斜行を検査した。透過照明装置13と撮像装置14a〜14eとは、照度370lx、分解能が0.01mm/ピクセルとなるように設定した。なお、本実施例においては、撮像装置14a〜14eの15個全てを使用した。
これら条件において検査した結果、3K織物の平均開口率は5.16%、実質開口率との誤差+0.79%であり、L/Sは0.78%であった。実質開口率との誤差が0.78%とやや高めであったが、誤差1.0%の精度内に収まっており検査可能なレベルにあった。
さらに、炭素繊維糸条の弧形は、10mの1箇所において、欠点が検出され、13mmという結果であった。斜行については、欠点は検出されなかった。
【0107】
(比較例1)
送出装置7および巻取装置10を連続運転して、12K織物を8m/分の一定速度で搬送している状態で開口率、炭素繊維糸条の弧形および斜行を検査した。透過照明装置13と撮像装置14a〜14eとは、照度693lx、分解能が0.08mm/ピクセルとなるように設定した。なお、比較例1においては、撮像装置14f〜14jの5個を使用した。
これら条件において検査した結果、12K織物の平均開口率は2.34%、実質開口率との誤差+0.82%であり、L/Sは0.59%であった。
また、炭素繊維糸条の弧形は、20m、80mの2箇所において、欠点が検出され、それぞれ20mm、21mmという結果であった。斜行についても、80mの1箇所において、欠点が検出されており、21mmという結果であった。
【0108】
(比較例2)
送出装置7および巻取装置10を連続運転して、12K織物を8m/分の一定速度で搬送している状態で開口率、炭素繊維糸条の弧形および斜行を検査した。透過照明装置13と撮像装置14a〜14eとは、照度20lx、分解能が0.08mm/ピクセルとなるように設定した。なお、比較例2においては、撮像装置14f〜14jの5個を使用した。
これら条件において検査した結果、照明強度が小さすぎるためコントラスト不足となり、炭素繊維糸条と開口部を分離することができず、検査するに至らなかった。
【0109】
(比較例3)
送出装置7および巻取装置10を連続運転して、12K織物を8m/分の一定速度で搬送している状態で開口率、炭素繊維糸条の弧形および斜行を検査した。透過照明装置13と撮像装置14a〜14eとは、照度150lx、分解能が0.08mm/ピクセルとなるように設定し、それぞれを暗室内に配さずして検査を行った。なお、比較例3においては、撮像装置14f〜14jの5個を使用した。
これら条件において検査した結果、外光による被検査布帛表面においてハレーションが発生し、被検査布帛と開口部との境界を分離できずバイナリ画像に変換できなかったため、検査するに至らなかった。
【0110】
(比較例4)
送出装置7および巻取装置10を連続運転して、3K織物を1m/分の一定速度で搬送している状態で開口率、炭素繊維糸条の弧形および斜行を検査した。透過照明装置13と撮像装置14a〜14eとは、照度693lx、分解能が0.01mm/ピクセルとなるように設定した。なお、比較例4においては、撮像装置14a〜14eの15個全てを使用した。
これら条件において検査した結果、3K織物の平均開口率は8.19%、実質開口率との誤差+3.82%であり、L/Sは0.14%であった。
さらに、炭素繊維糸条の弧形は、10mの1箇所において、欠点が検出され、13mmという結果であった。斜行については、欠点は検出されなかった。
【0111】
(比較例5)
送出装置7および巻取装置10を連続運転して、3K織物を1m/分の一定速度で搬送している状態で開口率、炭素繊維糸条の弧形および斜行を検査した。透過照明装置13と撮像装置14a〜14eとは、照度20lx、分解能が0.01mm/ピクセルとなるように設定した。なお、比較例5においては、撮像装置14a〜14eの15個全てを使用した。
これら条件において検査した結果、照明強度が小さすぎるためコントラスト不足となり、炭素繊維糸条と開口部を分離することができず、検査するに至らなかった。
【0112】
(比較例6)
送出装置7および巻取装置10を連続運転して、3K織物を1m/分の一定速度で搬送している状態で開口率、炭素繊維糸条の弧形および斜行を検査した。透過照明装置13と撮像装置14a〜14oとは、照度150lx、分解能が0.01mm/ピクセルとなるように設定し、それぞれを暗室内に配さずして検査を行った。なお、比較例6においては、撮像装置14f〜14jの5個を使用した。
これら条件において検査した結果、外光による被検査布帛表面においてハレーションが発生し、被検査布帛と開口部との境界を分離できずバイナリ画像に変換できなかったため、検査するに至らなかった。
【0113】
これら実施例における開口率の測定結果を図3、図4にまとめる。図3、図4の結果から各被検査布帛の実質開口率に対し、実施例1、実施例2がそれぞれ最も良い相関を示した。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】炭素繊維糸条の弧形および斜行の検査モデル図である。
【図2】本発明の炭素繊維布帛の検査装置の一実施形態を説明する概略断面図である。
【図3】開口率検査結果(12K織物)を示すグラフである。
【図4】開口率検査結果(3K織物)を示すグラフである。
【符号の説明】
【0115】
1:炭素繊維織物
2:幅方向
3:左端の開口部
4:右端の開口部
5:弧形
6:斜行
7:送出装置
8:炭素繊維布帛
9:エッジポジションコントロール装置(EPC)
10:巻取装置
11:コンタクトローラ
12a〜12e:データ保存用パソコン
13:透過照明装置
14a〜14e:撮像装置
15:暗室
16:画像処理用パソコン
17:ディスプレイ
18:キーボード
19:プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明装置により布帛を照明し、撮像装置によって布帛および照明光を撮像して被検査布帛である炭素繊維布帛を検査する方法であって、少なくとも次の(a)〜(g)の工程を有することを特徴とする炭素繊維布帛の検査方法。
(a)欠点の最小サイズから検査条件を設定するキャリブレーション工程
(b)被検査布帛の検査面における照度が30〜400lxの範囲となる条件で布帛画像を撮像する撮像工程
(c)撮像した画像の濃度分布から、バイナリ画像に変換する前処理工程
(d)バイナリ画像から、被検査布帛における開口部、炭素繊維糸条の隙間または端部の形状情報を抽出する抽出工程
(e)被検査布帛の形状情報から、布帛における開口率、炭素繊維糸条幅、炭素繊維糸条の配列密度、糸条の斜行、弧形または布帛総幅を算出する演算工程
(f)算出された被検査布帛の情報が、欠点であるか否かを判定する判定工程
(g)判定結果を出力装置に出力する出力工程
【請求項2】
前記(b)の撮像工程において、少なくとも一方から被検査布帛を透過照明する照明装置と、被検査布帛および透過光を撮像する撮像装置とが、被検査布帛の移動面を挟んで対向して配置され画像を取得する、請求項1に記載の炭素繊維布帛の検査方法。
【請求項3】
前記(b)の撮像工程において、照明装置と撮像装置とが同一暗室内に配置されている、請求項1または2に記載の炭素繊維布帛の検査方法。
【請求項4】
前記(b)の撮像工程において、撮像装置がCCDカメラであり、かつ、その分解能が0.003〜2mm/ピクセル(画素)の範囲内に設定されている、請求項1ないし3のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査方法。
【請求項5】
被検査布帛の送出および巻取装置を備え、かつ、該送出および巻取装置を連続運転して、炭素繊維布帛を移動させている状態で連続して検査する、請求項1ないし4のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査方法。
【請求項6】
被検査布帛の送出および巻取装置を備え、かつ、該送出および巻取装置を間欠運転して、炭素繊維布帛を停止させている状態で連続して検査する、請求項1ないし4のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査方法。
【請求項7】
被検査布帛の炭素繊維布帛が、たて糸およびよこ糸のいずれもが炭素繊維糸条からなる炭素繊維織物であるとともに、前記(d)の抽出工程において、抽出する情報が被検査布帛における開口部であり、前記(e)の演算工程において、開口部の周囲長Lと検査範囲の面積Sとの比(L/S)が、0〜1%の範囲内であり、かつ、布帛の形状情報から被検査布帛における開口率を算出する、請求項1ないし6のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査方法。
【請求項8】
被検査布帛の炭素繊維布帛が、たて糸およびよこ糸のいずれもが炭素繊維糸条からなる炭素繊維織物で、かつ、前記(b)の撮像工程において、被検査布帛の全幅画像を、一台または複数台の撮像装置で撮像し、前記(d)の抽出工程において、抽出する情報が被検査布帛における開口部であり、前記(e)の演算工程において、炭素繊維糸条の弧形および斜行を算出する、請求項1ないし6のいずれかに記載の炭素繊維布帛の検査方法。
【請求項9】
照明装置により布帛を照明し、撮像装置によって布帛および照明光を撮像して被検査布帛である炭素繊維布帛を検査する装置であって、少なくとも次の(a)〜(g)の手段を有することを特徴とする炭素繊維布帛の検査装置。
(a)欠点の最小サイズから検査条件を設定するキャリブレーション手段
(b)被検査布帛の検査面における照度が30〜400lxの範囲となる条件で布帛画像を撮像する撮像手段
(c)撮像した画像の濃度分布から、バイナリ画像に変換する前処理手段
(d)バイナリ画像から、被検査布帛における開口部、炭素繊維糸条の隙間または端部の形状情報を抽出する抽出手段
(e)被検査布帛の形状情報から、布帛における開口率、炭素繊維糸条幅、炭素繊維糸条の配列密度、糸条の斜行、弧形または布帛総幅を算出する演算手段
(f)算出された被検査布帛の情報が、欠点であるか否かを判定する判定手段
(g)判定結果を出力装置に出力する出力手段

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−89534(P2008−89534A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273668(P2006−273668)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】