説明

無線ICタグとその製造方法

【課題】通信距離が長い無線ICタグ、低コストの無線ICタグを提供する。
【解決手段】一方の基材に他方の基材を上下に重ねたときに両方のパターンの端部が2つとも一致する様に2つの基材にパターンを形成し、パターンが形成された一方の基材の上側に、パターンの2つの端部に当る位置に各々貫通孔が形成され、かつICチップ以上の厚さを有する絶縁フイルムを被せ、固定し、パターンの2つの端部に当たる位置のパターン上に各々半田、熱可塑性導電接着性樹脂あるいは熱硬化性導電接着性樹脂を塗布し、被覆固定ステップ後の絶縁フイルムの2個の貫通孔の一方にICチップを設置し、その状態の絶縁フイルム上に、他方の基材を重ね、その状態で全体を押圧加熱して一体構造のフイルムとし、両方のパターンをその一方の端部にて各々ICチップに電気的に接続し、他方の端部にて相互に電気的に接続する無線ICタグの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線ICタグとその製造方法に関し、特に絶縁フイルムの上下に分割して1個のアンテナを形成した無線ICタグとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録できる情報量がバーコードや識別タグに比べて桁違いに多く、新たな情報を自由に書き込むようにすることも可能であるため、アンテナとICを備えた無線ICタグ(無線ICカードを含む。以下、原則として「ICタグ」と記す)が広く用いられている。
特に、平面型のICタグは、財布等に入れて持ち運びしたり、物品へ取付けたりするのに便利であるため広く用いられている。
【0003】
量産性の面から、平面型のICタグは、通常は絶縁性を有する樹脂フイルムの表面に極めて薄い銅やアルミニウムの薄膜箔を全面形成させ、不必要な箇所をエッチングで除去したり、めっきで銅の薄膜を形成したりしてコイルアンテナパターン(コイル状のアンテナのパターン。以下、「コイルパターン」あるいは後で出てくる配線ジャンパーのパターンと誤解の恐れがない場合や、区別する必要がないときには単に「パターン」とも記す)とすることにより、平面状のコイルアンテナ(以下、原則として「アンテナ」と記す)を形成している。
その他、導電性樹脂(導電性ペースト)を使用して、印刷でパターンを形成する発明もなされている(特許文献1)。
【0004】
なお、ICタグそのものは、樹脂の表面にコイルパターンとして形成されたアンテナの両端に電気的に接続された状態でICチップを同じく樹脂フイルム上に取付け、次いで樹脂フイルムの上面にアンテナとICチップの厚さを補償する樹脂フイルムを被せ、最後に上下に保護膜を兼ねて厚手の化粧用フイルムを熱融着で取付けたりすることにより製造されている(特許文献2、同3)。
【0005】
【特許文献1】特開昭62−198196号
【特許文献2】特開2005−94319号
【特許文献3】特開2005−346684号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、絶縁性を有する樹脂の表面に銅やアルミニウムの薄膜(箔)を全面形成させ、さらにエッチングをしたり、銅の薄膜をめっきで析出させたりしてパターンを形成するのは、それらの作業のみならず、前処理や廃棄物の処理等の付随する作業も面倒となり、また製造設備も複雑かつ大型となり、又使用できる基材も限定され、低コスト化の阻害となっている。
【0007】
また、導電性樹脂やナノ金属粒子を使用して、印刷でコイルパターンを形成する方法では、導電性樹脂やナノ金属粒子や極めて薄い金属膜等からなるコイルパターンは、蒸着やめっきで形成された金属薄膜製のアンテナに比べて導電性が劣り、そのままでは抵抗で消費する電力が増加し、通信距離が短くなったりする。このため、どうしてもコイルパターンの線幅を広げる必要があり、ひいてはコイルアンテナの開口面積を広げる必要があり、無線ICタグの小型化と低コスト化の阻害となりかねなかった。
【0008】
また、どの様な方法でコイルパターンを形成するのであれ、形成したコイルパターンの両端をICチップに電気的に接続するためには、既に形成してあるコイルパターンの一方の端部にICチップを取付け、他方の端部とICチップをコイルパターンとの絶縁性を確保しながら接続する必要がある。そのため、コイルパターンを形成後、必要箇所に絶縁層とオーバブリッジ配線を形成したり、スルーホール電極を形成して裏面配線を形成したりする等の追加工程が必要であった。
さらに、裏面配線を形成する場合には、表面と裏面のコイルパターンの精度良い位置合わせも必要となり、作業が煩雑となる。
【0009】
この様に、基材上にコイルパターンを形成しICチップを接続した状態を通常インレットと呼ばれるが、このままでは衝撃や湾曲でICチップとコイルパターンが基材から剥離する恐れがあるので、全体を補強する必要があり、またコイルパタ−ンとICチップの厚さの差を補償するために、これらが形成され、取付けられている樹脂フイルム上に、ICチップの部分に凹みを形成した樹脂フイルムで被覆する等の追加工程も必要であった。
【0010】
また、ICチップも、アンテナとの2箇所の電気的接続を行なう端子が上部と下部に形成されているタイプのものと、いずれか一方、例えば上部のみに形成されているタイプのものがあるが、何れのタイプのICチップであっても容易に適用可能な製造方法の開発も望まれていた。
【0011】
これらのため、コイルパターンの形成が容易であり、製造設備も簡単で済むICタグの開発が望まれていた。
また、コイルパターンの両端とICタグを接続したり、コイルパターンとICタグの厚さの相違を補償したりするための追加工程の必要がないICタグの開発が望まれていた。
また、コイルパターンが導電性が低い材料で形成されていても、性能が良好なICタグの開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としてなされたものである。以下、各請求項の発明を説明する。
【0013】
請求項1に記載の発明は、
絶縁フイルムの上面側と下面側にパターンが形成されている無線ICタグの製造方法であって、
一方の基材に他方の基材を上下に重ねたときに両方のパターンの端部が2つとも一致する様に2つの基材にパターンを形成するパターン形成ステップと、
前記パターンが形成された一方の基材の上側に、前記パターンの2つの端部に当る位置に各々貫通孔が形成され、かつ前記ICチップ以上の厚さを有する絶縁フイルムを被せ、固定する被覆固定ステップと、
前記パターンの2つの端部に当たる位置のパターン上に各々半田、熱可塑性導電接着性樹脂あるいは熱硬化性導電接着性樹脂のいずれかを塗布する塗布ステップと、
前記被覆固定ステップ後の絶縁フイルムの2個の貫通孔の一方にICチップを設置する設置ステップと、
前記設置ステップがなされた状態の絶縁フイルム上に、前記他方の基材を重ねる重ねステップと、
前記重ねステップがなされた状態で全体を押圧加熱して前記一方の基材と前記絶縁フイルムと前記他方の基材が一体となった構造のフイルムとする接着ステップと、
前記重ねステップがなされた後、両方のパターンをその一方の端部にて各々ICチップに電気的に接続し、他方の端部にて相互に電気的に接続する接続ステップとを、
有していることを特徴とする無線ICタグの製造方法である。
【0014】
本請求項の発明においては、一方の基材(例えば下面側の基材)に他方の基材(例えば上面側の基材)を上下に重ねたときに、両方の基材に形成されているパターンの端部が2つとも一致する様にパターンを形成し、絶縁フイルムを間に挟んで2つの基材を重ね、さらに両方のパターンの両側を一方はICチップを介して、他方は直接電気的に接続して無線ICタグ用のパターンを形成する。このため、裏面への配線ジャンパー等のパターン形成等が容易となる。その結果、絶縁フイルムの表裏にあることとなるパターンを基材に形成する際のコストダウンにも繋がる。
【0015】
また、ICチップの配置および接続は、ICチップより厚いかつ所定の位置に貫通孔が形成されている絶縁フイルム内にICチップを落とし込むだけで配置でき、さらに全体を押圧加熱するだけで電気的に接続できる。
また、ICチップとパターンの高さの補償をする必要もなくなる。
さらに、貫通孔内で上下のパターンを電気的に接続するには、例えば貫通孔内に導電性物質(例えば半田粒)を絶縁フイルムの貫通孔内に落とし込んで、全体を押圧加熱するだけであるため、従来のようなオーバブリッジ配線等の追加工程が不要となり、作業も楽になる。
【0016】
なお、「上面側、下面側」あるいは他の請求項の「右、左、表側、裏側」等は、ICタグの構造と製造方法を文書で説明するために便宜上その様に記載しているだけであり、現実のICタグの使用時に上面側(空側)あるいは下面側(地面側)となったり、右側あるいは左側になったり、表面(通常は、美しい意匠が施されている)や裏面(通常は、地味である)になったりすることとは無関係である。
また、「基材」とは、パターンの形成、折り重ね、パターンの電気的接続のための処置が可能な限り材質を問わないが、コスト、廃棄性等から紙が、特にグラシン紙(パラフィン紙)等の平滑耐熱紙が好ましい。
【0017】
さらに、パターン形成の方法は問わないが、印刷、特に導電性樹脂を使用するスクリーン印刷を採用することが好ましく、さらにICチップの用途等によっては、印刷されたパターン上にさらに半田等の導電性金属層を被せて電気抵抗をいっそう小さくすることがなお好ましい。この場合、導電性樹脂として半田付けが可能なことはもちろん、低温(200℃以下)硬化型の導電性樹脂を選択することが好ましい。
【0018】
また、「一方の基材に他方の基材を上下に重ねたときに両方のパターンの端部が2つとも一致する」とは、一方の基材のパターンと他方の基材のパターンが、両方のパターンを例えば1枚のより大きな基材の左右(前記の理由で、上下を含む)に形成したのであれば、折り曲げて重ねたりする際の基準となる線、この場合には左右の中心線に対して線対称の位置にあることを指す。平面形が長方形や円形の2枚の基材に上下のパターンを別々に形成した場合には、ICタグを製造するため、上下2枚の基材を、その周囲や所定の周辺を位置合わせして上下に重ねる必要があるが、そのようにして重ねた際に、上下の基材に形成されているパターンの端部が上下方向に(表裏の方向に)重なっていること等を指す。
【0019】
また、「ICチップ以上の厚さを有する絶縁フイルム」とは、基材と接着可能であれば材質を問わず、上下に接着層が形成された厳密には複数層のフイルムであっても良い。厚さは、加熱、押圧で基材と接着するのであれば、多少薄くなりうるため、その分ICチップより厚くすることが好ましい。
【0020】
また、「絶縁フイルムを被せ、固定する」とは、ICチップと導電材、例えば半田粒等を安定して設置可能とし、併せて接着ステップを容易に行なえる様にするためであり、例えば4周あるいは4隅を熱融着する様なことを指す。なお、後の接着ステップにおいて内部の気体が逃げ易い様にするため、接着の方法にもよるが、4周は完全には接着せず、内部の気体が逃げる穴を残しておく方が好ましいであろう。
【0021】
また、「接続ステップ」は、良好な電気的接続を得るためには、導電性物質として半田を使用する場合には、加熱溶融時に半田が酸化して電気的接続の妨げとなることを防ぐ為、不活性ガス雰囲気中、還元性ガス雰囲気中あるいは真空雰囲気中での加熱を行なうことが望ましいが、あらかじめフラックスを含有あるいは別途塗布する場合には通常の大気中で行なっても良い。尚、その際使用するフラックスは、後で洗浄を必要としないタイプであることが望ましい。
また、超音波加圧による局所摩擦を利用した押圧加熱を使用すれば、加熱溶融時の半田の酸化膜は超音波によって強制的に除去できるので、通常の大気中でも、フラックスを使用せずとも電気的接続ができる。
【0022】
また、パターンを形成する導電性材料の種類によっては、電気的な接続のためにわざわざ半田、熱可塑性導電接着性樹脂、熱硬化性導電接着性樹脂のいずれか(含む、複数)の導電性物質を使用したりせず、接続すべき箇所を半田ごて等で押圧して当該箇所にあるパターンを形成している導電性材料同士を接触させ、熱融着させても良い。なお、この場合には、パターン形成ステップが、塗布ステップを兼ねることとなる。
【0023】
さらに、熱融着の温度が同じであれば、「接着ステップ」と同時に行なっても良い。
また、貫通孔を介して上下にある2つのアンテナのパターンの端部の電気的接続は、貫通孔内に導電性物質を設置して熱融着させても良いし、パターンの材質によっては導電性物質を使用せずに上方にあるパターンの端部を貫通孔内部に押し込み下方にあるパターンの端部と熱融着させてもよい。
【0024】
また、「接続ステップ」は、ストロークを与えつつ加熱することが好ましいが、加熱用の器具からの加熱が良好になされれば、単に接触させるだけ等であってもよい。
また、超音波加圧を使用すれば、加熱用の器具を使用しなくても超音波による局所的加熱が得られるので、単に加圧するだけ等であってもよい。
以上の他、ケースによっては、電気的接続がなされた貫通孔を覆い、見栄えをよくするために、上下に化粧用のフイルムが張られたり、さらにコンデンサのパターンも同時に形成されたり、抜き取りで各種の性能検査がなされたりして、製品としての無線ICタグが完成される。
【0025】
請求項2に記載の発明は、前記の無線ICタグの製造方法であって、
前記パターン形成ステップは、
両方の基材のいずれにもアンテナのパターンを、基材の両側を上下に重ねたときに磁界の方向が一致する様に形成する、あるいは、
一方の基材にはアンテナのパターンを、他方の基材には配線ジャンパーのパターンを形成する、
のいずれかであることを特徴とする無線ICタグの製造方法である。
【0026】
本請求項の発明においては、両方の基材のいずれにもアンテナのパターンを形成するのであれば、アンテナの長さを2倍にすることが可能となり、アンテナによる起電力が増加し、通信距離もその分長くすることも可能となる。
従って、高価な高導電性材料を用いなくても、導電性樹脂製であっても、パターンの線幅を広げる必要なく、起電力が充分なアンテナを形成することができる。
【0027】
また、一方の基材にはアンテナのパターンを、他方の基材には配線ジャンパーのパターンを形成するのであれば、裏面の配線パターン形成が容易となるだけでなく、一方の面は配線ジャンパーのみであるため、空いたスペースを他の用途に使用可能となる。
また、通信可能距離が短くても良い場合には、複雑なアンテナのパターンを多く形成する必要がなく、コストダウンにつながる。
【0028】
請求項3に記載の発明は、前記の無線ICタグの製造方法であって、
前記パターン形成ステップは、前記一方の基材と前記他方の基材が一体の大きな基材となっている状態で、一体の大きな基材の左右両側に各々の基材のパターンを形成するものであることを特徴とする無線ICタグの製造方法である。
【0029】
本請求項の発明においては、ICチップが完成した状態で、間に絶縁フイルムを介して
上下にあることとなる2つの基材のパターンを両方同時に、両方の基材が一体となっている状態で、一体の大きな基材に形成するため、ずれが生じることなく、精度良く形成することが可能となる。このあと、一体の大きな基材は、中心線で折り曲げられたり、一旦切り離した後位置合せして重ねられたりすることとなる。
なおここに、「一体の大きな基材の左右両側」とは、前記のごとく一体の大きな基材の上下両側をも含む。
【0030】
請求項4に記載の発明は、前記の無線ICタグの製造方法であって、
パターン形成ステップは、前記一方の基材と前記他方の基材が一体の大きな基材となっている状態の大きな基材の左側と右側に各々、所定の直線を軸にして折り曲げて、一方の側を他方の側に重ねたときに両方のパターンの端部が2つとも一致する様にパターンを形成するものであり、
前記重ねステップは、前記設置ステップがなされた状態の絶縁フイルム上に、前記他方の基材を、前記所定の直線を折り目にして重ねるものであることを特徴とする無線ICタグの製造方法である。
【0031】
本請求項の発明においては、一方の基材と前記他方の基材が一体の大きな基材となっている状態の大きな基材の左側と右側を所定の直線を軸にして折り曲げ、一方の側を他方の側に絶縁フイルムを介在させて折り重ねて製造するものである。これにより、折り重ねるという簡単な操作だけで、1枚の基材に同時に形成された上下両方のパターンを、ずれが生じること無く合わせることが可能となる。
なお、「所定の直線」とは、パターンが形成された状態の一体の大きな基材の左右(含む、上下)を折り重ねる線を指し、原則として中心線であるが、間に絶縁フイルムがあることを考慮したりすれば、厳密に基材の中心にあるとは限らない。
【0032】
なお、一体の大きな基材の所定の直線の位置、例えば左右の中心に、そのことを示す加工、例えばエンボス加工による凹部(溝)の形成がなされておれば、中心線での正確な折り重ねや切断が容易となる。この際、加工は、一体の大きな基材の表面になされていても良いし、裏面になされていても良い。
【0033】
請求項5に記載の発明は、前記の無線ICタグの製造方法であって、
パターン形成ステップは、前記一方の基材と前記他方の基材が一体の大きな基材となっている状態の大きな基材の左側と右側に各々、所定の直線を軸にして折り曲げて、一方の側を他方の側に重ねたときに両方のパターンの端部が2つとも一致する様にパターンを形成するものであり、
前記重ねステップは、前記設置ステップがなされた状態の絶縁フイルム上に、前記他方の基材を、前記所定の直線から切り離し、さらに裏返しにし、位置合せして重ねるものであることを特徴とする無線ICタグの製造方法である。
【0034】
本請求項の発明においては、各々コイルパターンが形成された一体の大きな基材の左側と右側は、折り重ねられるのではなく一端切り離され、上面にパターンが形成された裏側のフイルムとなる側の半分の基材に絶縁フイルムが被覆、固定され、絶縁フイルムの貫通孔に導電性物質を付けたICチップが配置された後、下面にパターンが形成された表側のフイルムとなる側の半分の基材が裏返された後貼り付けられる。これにより、1枚の一体の大きな基材に同時に形成された上下両方のパターンを、ずれがほとんど生じることなく合わせることが可能となる。
また、「折り曲げ」が無いため、基材の厚みの制限がなく、又折り曲げが非常に困難な基材も使用できる。
なお、「重ねステップ」における切断と「被覆固定ステップ」あるいは「設置ステップ」との時間的な前後は問わない。
【0035】
請求項6に記載の発明は、
絶縁フイルムの上面側と下面側のいずれか一方に第1のパターンと第2のパターンが、他方に第3のパターンが形成されている無線ICタグの製造方法であって、
基材の左側と右側に各々、
いずれか一方の側(左側または右側)には第1のパターンと第2のパターンを、それらの両端間にICチップを電気的に接続することが可能である様に形成し、
他方の側(右側または左側)には第3のパターンを、その両端が、前記一方の側に重ねたときに、前記一方の側の基材に形成されている第1のパターンと第2のパターンのICチップに電気的に接続されない方の各端部と一致する様に形成し、
前記第1のパターンと第3のパターンの一方はアンテナのパターンであり、他方はアンテナまたは配線ジャンパーのパターンであり、前記第2のパターンは配線ジャンパーのパターンであり、
さらにまた基材の左側と右側に形成されている第1のパターンと第3のパターンは、何れもがアンテナのパターンであれば、磁界の向きも同じとなる様に形成するパターン形成ステップと、
前記基材の一方の側上に、前記ICチップを電気的に接続する箇所と、前記第1のパターンと第2のパターンのICチップを電気的に接続しない方の端部に当る位置に各々、合計3個の貫通孔が形成され、かつ前記ICチップ以上の厚さを有する絶縁フイルムを被せ、固定する被覆固定ステップと、
前記各パターンの2つの端部に当たる位置のパターン上に各々半田、熱可塑性導電接着性樹脂あるいは熱硬化性導電接着性樹脂のいずれかを塗布する塗布ステップと、
前記被覆固定ステップ後の絶縁フイルムの前記第1のパターンと第2のパターンとICチップを電気的に接続する箇所に当る貫通孔にICチップを設置する設置ステップと、
前記設置ステップがなされた状態の絶縁フイルム上に、前記基材の他方の側(右側または左側)を重ねる重ねステップと、
前記重ねステップがなされた状態で全体を押圧加熱して基材の一方の側と絶縁フイルムと基材の他方の側が一体となった構造のフイルムとする接着ステップと、
前記重ねステップがなされた後、前記第1のパターンと第2のパターンの端部と前記ICチップ、及び前記2箇所の貫通孔を介して上下に位置する前記パターンの端部相互を電気的に接続する接続ステップとを有していることを特徴とする無線ICタグの製造方法である。
【0036】
本請求項の発明は、絶縁フイルムの上面側と下面側のいずれか一方にアンテナのパターンと配線ジャンパーのパターン(第1と第2のパターン)が、他方にアンテナまたは配線ジャンパーのパターン(第3のパターン)が形成されている無線ICタグの、前記請求項1の発明に対応する製造方法の発明であり、ICチップは上面側または下面側のいずれか一方で電気的に接続されているため、より薄いICタグを製造することができる。
【0037】
請求項7に記載の発明は、前記の無線ICタグの製造方法であって、
前記パターン形成ステップは、基材の左側と右側に各々、所定の直線を軸にして折り曲げて、一方の側を他方の側に重ねたときに両方のパターンの端部が2つとも一致する様にパターンを形成するものであり、
前記重ねステップは、前記設置ステップがなされた状態の絶縁フイルム上に、前記基材の他方の側を、前記所定の直線を折り目にして重ねるものであることを特徴とする無線ICタグの製造方法である。
【0038】
本請求項の発明は、絶縁フイルムの上面側と下面側のいずれか一方にアンテナのパターンと配線ジャンパーのパターンが、他方にアンテナのパターンが形成されている無線ICタグの、前記請求項4の発明に対応する製造方法の発明である。
【0039】
請求項8に記載の発明は、前記の無線ICタグの製造方法であって、
前記パターン形成ステップは、基材の左側と右側に各々、所定の直線を軸にして折り曲げて、一方の側を他方の側に重ねたときに両方のパターンの端部が2つとも一致する様にパターンを形成するものであり、
前記重ねステップは、前記設置ステップがなされた状態の絶縁フイルム上に、前記基材の他方の側を、前記所定の直線から切り離し、さらに裏返しにし、位置合せして重ねるものであることを特徴とする無線ICタグの製造方法である。
【0040】
本請求項の発明は、絶縁フイルムの上面側と下面側のいずれか一方にアンテナのパターンと配線ジャンパーのパターンが、他方にアンテナのパターンが形成されている無線ICタグの、前記請求項5の発明に対応する製造方法の発明である。
【0041】
請求項9に記載の発明は、前記の無線ICタグの製造方法であって、
前記基材は紙製であることを特徴とする無線ICタグの製造方法である。
【0042】
本請求項の発明においては、紙製の基材を使用するが、紙は化学樹脂製フイルムに比べてパターン形成時に塗布する材料(塗布時にはペースト状の導電性樹脂)が表面に染込み易く、このため密着性も良好となり、パターン形成材料の流れ、にじみも生じ難い。これらのため、印刷面にわざわざ粗面加工を施す必要もなくなる。さらに、裁断や折り曲げ加工が容易であり、材料費も安い。これらのため、製品の製造の容易化と低コスト化につながる。
また、廃棄も問題が生じない。
さらに、紙であれば、ことに防水性を有する多少厚めの紙を基材に使用すれば、基材をそのままICチップ外表面の化粧板、保護板とすることも容易である。
【0043】
なお、紙製の基材にパターンを形成する手段としては、印刷を、特にスクリーン印刷が挙げられるが、グラビア、オフセット、インクジェット等の印刷を排除するものではない。
紙としては、グラシン紙(パラフィン紙)等の耐熱紙、特にベーキングペーパと言われる表面にシリコン加工を施した耐熱紙が挙げられる。
また、フェノール紙のように耐水性を有する紙であれば、印刷で形成された樹脂パターン層に金属層をめっきで被覆してもよい。
また、印刷に使用するインクとしては、200℃程度の温度で硬化する熱可塑性導電接着性樹脂あるいは熱硬化性導電接着性樹脂等を挙げられる。
また、アンテナ等のパターンを導電性塗料を使用する印刷により形成すれば、作業が簡単となり、また他の形成方法に比較して、大掛かりな設備も必要でなくなる。
【0044】
請求項10に記載の発明は、
請求項1ないし請求項9に記載の何れかの方法で製造されたことを特徴とする無線ICタグである。
【0045】
本請求項の発明は、請求項1ないし請求項9に記載の何れかの方法を物発明として捉えたものである。
【0046】
請求項11に記載の発明は、
表側のフイルムと、絶縁フイルムと、裏側のフイルムと、絶縁フイルムの表側と裏側に位置するアンテナのパターンと、絶縁フイルムの貫通孔内に設置されているICチップを有する無線ICタグであって、
前記表側のフイルムと前記裏側のフイルムは、前記絶縁フイルムを間に挟んで張り合わされており、
前記絶縁フイルムの表側に位置するアンテナのパターンと、前記裏側に位置するアンテナのパターンは、磁界の向きが同じであり、
さらに、いずれも一端は前記ICチップに電気的に接続されており、
他端は前記絶縁フイルムに形成された貫通孔内で相互に電気的に接続されていることを特徴とする無線ICタグである。
【0047】
本請求項の発明は、製造方法の発明である請求項2の内、上下にアンテナが形成される
発明を、製造された物の発明として捉えたものである。
【0048】
請求項12に記載の発明は、
表側のフイルムと、絶縁フイルムと、裏側のフイルムと、絶縁フイルムの表側に位置するアンテナのパターンと、裏側に位置する配線ジャンパーのパターンと、絶縁フイルムの貫通孔内に設置されているICチップを有する無線ICタグであって、
前記表側のフイルムと前記裏側のフイルムは、前記絶縁フイルムを間に挟んで張り合わされており、
前記絶縁フイルムの表側に位置するアンテナのパターンと、前記裏側に位置する配線ジャンパーのパターンは、いずれも一端は前記ICチップに電気的に接続されており、
他端は前記絶縁フイルムに形成された貫通孔内で相互に電気的に接続されていることを特徴とする無線ICタグである。
【0049】
本請求項の発明は、製造方法の発明である請求項2の内、一方にアンテナを、他方に配線ジャンパーを有する発明を、製造された物の発明として捉えたものである。
【0050】
請求項13に記載の発明は、
表側のフイルムと、絶縁フイルムと、裏側のフイルムと、絶縁フイルムの裏側に位置する第1のパターン及び第2のパターンと、表側に位置する第3のパターンと絶縁フイルムの貫通孔内に設置されているICチップを有する無線ICタグであって、
前記第1のパターンと第3のパターンの一方はアンテナのパターンであり、他方はアンテナまたは配線ジャンパーのパターンであり、前記第2のパターンは配線ジャンパーのパターンであり、
前記表側のフイルムと前記裏側のフイルムは、前記絶縁フイルムを間に挟んで張り合わされており、
前記絶縁フイルムの裏側に位置する第1のパターンと第2のパターンは、いずれも一端は前記ICチップに電気的に接続されており、
他端はいずれも前記絶縁フイルムの表側に形成された第3のパターンと貫通孔内で電気的に接続されていることを特徴とする無線ICタグである。
【0051】
本請求項の発明は、製造方法の発明である請求項6の発明を、製造された物の発明として捉えたものである。
【発明の効果】
【0052】
本発明においては、基材の左側と右側のパターンの形成を同時に行なうため、パターン形成時に位置合せがし易く、また形成する際のコストダウンにも繋がる。
また、ICチップの配置および接続は、ICチップより厚いかつ所定の位置に貫通孔が形成されている絶縁フイルム内にICチップを落とし込むだけで配置でき、さらに全体を押圧加熱するだけで電気的に接続できる。
また、ICチップとパターンの高さの補償をする必要もなくなる。
さらに、貫通孔内で上下のパターンを電気的に接続するには、例えば貫通孔内に導電性物質(例えば半田粒)を絶縁フイルムの貫通孔内に落とし込んで、全体を押圧加熱するだけであるため、従来のようなオーバブリッジ配線等の追加工程が不要となり、作業も楽になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下、本発明をその最良の実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0054】
(第1の実施の形態)
本実施の形態は、基材の左右半分ずつにアンテナのコイルパターンを形成し、間に絶縁フイルムを介在させて折り曲げるものであり、またICチップとアンテナとの接続は上下で行なうものである。以下、図面を参照しつつ説明する。
【0055】
図1は、本実施の形態におけるICタグの製造工程の要部を示す図である。本図において、10はICチップの上下に重なった2つの基材が一体となっている状態の基材(請求項3における「一体の大きな基材」に相当する基材。実施の形態では、単に「基材」と記す)であり、11はその左半分であり、21は基材の左半分においてその表面(紙面の表側)に形成された(全体の)半分のコイルパターンであり、23は基材の左半分において図面で上部に位置する端部(以下、「上部側の端部」と記す。このことは、他のパターンでも同様である)であり、25は同じく基材の左半分において図面で下部側に位置する端部(以下、「下部側の端部」と記す。このことは、他のパターンでも同様である)である。12は基材10の右半分であり、22は基材の右半分において表面(図で、紙面の表側)に形成された(全体の)半分のコイルパターンであり、24はその上部側の端部であり、26はその下部側の端部であり、50は上部側端部の接続箇所である。また、19は基材10の表面の中央にエンボス加工で形成された凹部である。31と33は、各々絶縁フイルム30に形成された半田粒とICチップを収納するための貫通孔である。40は、ICチップである。
【0056】
但し、厳密に描くとかえって見難くなるため、図は各部の技術的特徴が判り易くなる様に概念的に描いてある。またこのため、図は比例尺でもなく、さらに2つのコイルパターン21、22の2つの(上部側と下部側の)端部23、24、25、26は、実際には曲げ応力が掛り難くなる様に、ICタグの外周寄りに位置している。
【0057】
図1の(1)に示す様に、表面の前記凹部19を形成した基材の左半分11と右半分12に、各々コイルパターン21、22をスクリーン印刷で形成した。この際、左半分のコイルパターン21の2つの端部23、25と右半分のコイルパターン22の2つ端部24、26は、図面上基材10の縦方向の中心線に対して線対称の位置にあり、それ以外の箇所ではコイルパターン21とコイルパターン22とが対称とならない様にした。
【0058】
なお、基材10は、ベーキングペーパと呼ばれるグラシン紙の表面にシリコン加工を施してある絶縁性がある耐熱紙であり、寸法は48mm×64mm、厚さ100μmである。なお、ベーキングペーパの表面は、シリコン加工のため剥離性がある。このため、その裏面にコイルパターンを形成した。従って、基材10の表面は、材料としてのベーキングペーパの裏面となる。
基材10の右半分と左半分のコイルパターン21、22は、市販の導電性塗料であり、乳剤を10μm塗布した250メッシュのステンレス製印刷マスクを使用してスクリーン印刷し、160℃大気雰囲気中で30分加熱硬化させて形成した。
【0059】
形成したコイルパターン21、22の線幅及び間隔は共に200μm、厚さは15μmとし、いずれも左右半分の基材11、12の外周側近くを5周回している(但し、前記の理由で、図1では2〜3回周に描いてある)。
使用した導電性塗料は半田付けが可能であるので、水平式半田コータで全面に厚さ7μmの半田を塗布し(図示せず)、これにより電気抵抗値を大よそ1/10とした。なお、使用した半田は、錫96.5%、銀3.5%の無鉛半田である。
【0060】
図1の(2)に示す様に、左半分の基材11の上面にPET製の絶縁フイルム30を被せ、ホットシーラ(電気こて)を用いて四辺を熱圧着させた。なお、図1の(2)に点線で示すのは、絶縁フイルム30の下方に位置するコイルパターン21である。
この絶縁フイルム30は、厚さ15μmのコイルパターンの上に載せるICチップ40の厚さが400μmであることと、熱圧着時の潰れを考慮して、厚さ500μmのフイルムを材料として使用した。なお、この絶縁フイルム30の、左半分の基材11の表面に形成されたコイルパターン21の上部側と下部側の端部23、25に位置する箇所には、予めのパンチング加工により貫通孔31、33が形成されている。このため、図1の(2)に示す状態では、絶縁フイルム30の当該箇所には、穴が形成されている。
【0061】
図1の(3)に示す様に、下部側の穴33には導電性接着剤を塗った後ICチップ40を、上部側の穴31には半田粒(図示せず)を挿入した後、左半分の基材11の表面に貼り付けた絶縁フイルム30上に、右半分の基材12を前記凹部19に合せて折り返して被せ、さらに還元性ガス雰囲気中で、ホットローラを使用して全体を熱圧着した。なお、凹部19に合わせて折り返すため、上下の位置合せは容易、かつ精度良く行なえた。
次いで、ICチップ40の上下(紙面に直行する方向)とその上下に位置する左半分と右半分のコイルパターン21、22の下部側の端部25、26及び半田粒を介して上下に位置する左半分と右半分のコイルパターン21、22の上部側の端部23、24相互を、局部的に半田付け可能かつ基材10の耐熱温度以下の温度にして電気的に接続した。
【0062】
なおこの際、絶縁フイルム30の膜厚さは元来500μmであり、ICチップ40の厚さは400μmしかないため、確実な電気的接触がなされる様に、軽く押圧しつつ、即ちストロークを与えて、熱圧着を行った。また、左半分と右半分のコイルパターン21、22の上部側の端部23、24相互の接続箇所50も、同様にストロークを与えて熱圧着を行った。
圧着部が冷却後、市販の同じサイズの無線ICタグと性能を比較したところ、優れた特性及び通信距離を発揮した。
【0063】
(第2の実施の形態)
本実施の形態は、第1の実施の形態における図1の(2)に示す状態において、下部側の穴33にはフラックス(ペースト)を塗ったICチップを、上部側の穴31にはフラックスを含有させた半田粒、例えば糸半田のカット端(図示せず)を挿入し、またこのため、ICチップの上下とその上下に位置する左右のコイルパターン21、22の下部側の端部25、26及び半田粒を介して上下に位置する左右のコイルパターン21、22の上部側の端部23、24相互の電気的な接続を、大気中で行なった点が第1の実施の形態と異なる。
本実施の形態においては、大気中において電気的な接続を行なっているが、ICチップおよび半田粒にフラックスを塗っているため良好な電気的接続が得られ、第1の実施の形態と同様に優れた特性及び通信距離を発揮した。
【0064】
(第3の実施の形態)
本実施の形態は、第1の実施の形態における図1の(1)に示す状態において、前記凹部19がなく、左半分と右半分のコイルパターン21、22が形成された基材10を、左半分の基材11と右半分の基材12に切り離し、図1の(3)に示す状態において、絶縁フイルム30の上に切り離された右半分の基材12を裏返して貼り付ける点が第1の実施の形態と異なる。
本実施の形態においても、優れた特性及び通信距離を発揮した。
【0065】
(第4の実施の形態)
本実施の形態は、アンテナは1層のみであり、基材の他方の半分には配線ジャンパーを形成する点とアンテナと配線ジャンパーの端部相互の電気的結合に硬化していない半分の方の基材の押し込みを利用する点が第1の実施の形態と相違する。
図2は、本実施の形態におけるICタグの製造工程の要部と電気的接続の要部を示す図である。本図において、第1の実施の形態における図1に示す構成(物や構造等)と形成位置や形状等に多少の相違があっても、基本的には同じ構成については、同じ符号を付すことによりその説明を省略し、本実施の形態の特徴部についてのみ説明する。
【0066】
図2において、27は配線ジャンパーであり、28はその上部側の端部であり、29はその下部側の端部である。48と49は、ICチップの2つの接続端子であり、50は左側のコイルパターン21の上部側端部23と配線ジャンパー27の上部側の端部28の接続箇所である。60は、超音波振動ごてである。
本図2の(1)と(3)は、各々図1の(1)と(3)に相当する。図2の(1)に示す様に、本実施の形態においては、基材の右半分には、右半分のアンテナのパターン22に換えて配線ジャンパー27が形成されている。さらに、この配線ジャンパー27の上部側の端部28と下部側の端部29は、左右の中心線を折り目にして基材10の左半分11に右半分12を折り重ねたときには、左半分のコイルパターン21の上部側の端部23と下部側の端部25とにそれぞれ重なる様に形成してある。なおこのため、基材10の左半分11のコイルパターン21の上部側の端部23の位置は、第1の実施の形態と相違している。
【0067】
第1の実施の形態の図1の(2)と同様に、図2の(1)の状態から、基材10の左半分11に絶縁フイルム30を被せ、その四周を基材10の左半分11と熱融着で固定し、さらに2つの貫通孔のある箇所に形成された2箇所の穴のうち、下部側の穴にはICチップ40を配置した。ただし、上部側の穴には半田粒は配置していない。
この状態で、基材10の右半分12を絶縁フイルム30の上に折り重ね、ICチップ40等の電気的接続と、3層のフイルムを熱圧着するのは、第1の実施の形態と同じである。この状態を、図2の(3)の上の図に示す。
【0068】
また、図2の(3)の下側の左に記載したA部断面詳細の図に示す様に、ICチップ40とその上下にある2つのパターン、即ちコイルパターン21と配線ジャンパー27の下部側の端部25、29との電気的接続は第1の実施の形態と同じである。即ち、ICチップ40は、その天井部と底部にある2つの接続端子48、49にて2つのパターン27、21の下部側の端部29、25と電気的接続がなされている。
【0069】
しかし、右のB部断面詳細の図に示す様に、左側のコイルパターン21の上部側の端部23と配線ジャンパー27の上部側の端部28の接続方法が異なる。即ち、図に示す様に、折り重ねにより最上部にある右半分の基材12の上方から超音波振動ごて60を使用して摩擦によって接触部分を局所加熱しつつ絶縁フイルム30の貫通孔31の内部に、当該部の右半分の基材12をその内面に形成されている配線ジャンパー27ごと押込み、当該配線ジャンパー27の上部側の端部28をその下方にあるコイルパターン21の上部側の端部23と熱融着により電気的に接続させる。
本実施の形態においても、優れた特性及び通信距離を発揮した。
【0070】
(第5の実施の形態)
本実施の形態は、アンテナは上下2層であるのは第1の実施の形態と同じであるが、ICチップとの電気的接続は上下のいずれか一方でのみ、あるいは左右の半分の基材のいずれか一方側でのみ行ない、またこのため電気的接続を行なう側の基材の半分にはアンテナのみならず配線ジャンパーのパターンをも形成し、さらに絶縁フイルムに形成される貫通孔は合計3つとなる点が先の各実施の形態と異なる。
【0071】
図3は、本実施の形態におけるICタグの製造工程の要部と電気的接続の要部を示す図である。本図においても、第1の実施の形態における図1、および第4の実施の形態における図2に示す構成(物や構造等)と形成位置や形状等に多少の相違があっても、基本的には同じ構成については、同じ符号を付すことによりその説明を省略し、本実施の形態の特徴部についてのみ説明する。
本図3の(1)と(3)は、各々図1、あるいは図2の(1)と(3)に相当する。さらに、図3の(3)の下の左右の図は、図2の(3)の下の左右の図に相当する。
本図3において、41は上下両方でなく、いずれか一方(図面では下方)にのみ2つの接続端子48、49があるICチップであり、59は貫通孔内部の導電性樹脂である。
【0072】
図3の(1)に示す様に、基材10の左半分11には、コイルパターン21と配線ジャンパーパターン27を形成する。この際、コイルパターン21の下部側の端部25と配線ジャンパー27の上部側の端部28間の距離は、ICチップの2つの接続端子48、49間の寸法に合わる。
また、基材10の右半分12に形成されたコイルパターン22の上部側の端部24と下部側の端部26は各々、基材10の右半分12を基材の左右の中心の凹部19から基材の左半分11に折り重ねたときには、それぞれその上面に形成されているコイルパターン21の上部側の端部23および配線ジャンパー27の下部側の端部29に重なる位置にある。
【0073】
第1の実施の形態の図1の(2)に示したことと同様に、基材の左半分11に絶縁フイルム30を位置合せして被せ、基材の左半分11と四周を熱融着する。その後、コイルパターン21の下部側の端部25と配線ジャンパーのパターン27の上部側の端部28間に位置する貫通孔により形成された穴内に異方性導電性樹脂を塗布し、その後2つの接続端子48、49を同じ側に有するICチップ41を位置合せして固定し、また残りの2つの穴に導電性樹脂59を詰める。
この下で、第1の実施の形態と同様に、ICチップ41と左半分のコイルパターン21の下部側の端部25、配線ジャンパー27の上側の端部28や貫通孔を介して上下にあるパターンの端部相互の電気的接続、3層の樹脂の熱融着を行なう。
【0074】
図3の(3)が、この状態である。本図3の(3)の下の左のA部断面詳細図に示す様に、ICチップ41の2つの接続端子48、49の電気的接続は、何れも下側にある(左半分の)基材11に形成されたコイルパターン21の下部側の端部25、配線ジャンパーのパターン27の上部側の端部28となされている。
また、図3の(3)の下の右のB部断面詳細図に示す様に、絶縁フイルム30の貫通孔を介しての上下のパターン相互の接続は、貫通孔内に充たされた導電性物質59によりなされている。
【0075】
(第6の実施の形態)
本実施の形態は、製品としての無線ICタグである。
前記第1から第5の実施の形態の無線ICタグは、あくまでも本発明に関わる部分を説明するためのものであり、製品あるいは商品としてのICタグとしては、必ずしも十分とは言えない場合があり、必要に応じてさらに幾つかの工程を経て完成される。図4に、この状態の無線ICタグを示す。図4の上の図は、配線パターン等は異なるが、第1の実施の形態で説明した方法で製造された無線ICタグの平面を、下の図は断面を概念的に示す図である。
【0076】
図4において、55は容量(コンデンサー)であり、71は表側の化粧板であり、72は裏側の化粧板である。
この、無線ICタグは、中央の絶縁フイルム30の表裏に容量55を有し、これによりアンテナは規格に合わせた共振周波数を有する様になっている。なお、容量55のパターンは、基材10の左右両側11、12にアンテナのパターン21、22と同時に印刷により形成される。
【0077】
表側と裏側の化粧板71、72は、各々厚さ0.3mm程度の固めの樹脂からなり、第1から第5の実施例において、3層のフイルムが接着され、ICチップや各パターンの電気的接続が終了した段階の無線ICタグの、即ち図1から図3の(3)に示す段階の無線ICタグの上下の面に接着され、内部を保護し、美観を付与することとなる。
但し、図4の上の図では、美観を付与するための絵模様は省略し、内部のアンテナと容量を点線等で示している。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるICタグの製造工程の要部を示す図である。
【図2】本発明の第4の実施の形態におけるICタグの製造工程の要部と電気的接続の要部を示す図である。
【図3】本発明の第5の実施の形態におけるICタグの製造工程の要部と電気的接続の要部を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるICタグの製品としての完成状態を概念的に示す図である。
【符号の説明】
【0079】
10 基材
11 左半分の基材
12 右半分の基材
19 凹(エンボス)部
21 左半分のコイルパターン
22 右半分のコイルパターン
23 左半分のコイルパターンの上部側の端部
24 右半分のコイルパターンの上部側の端部
25 左半分のコイルパターンの下部側の端部
26 右半分のコイルパターンの下部側の端部
27 配線ジャンパーのパターン
28 配線ジャンパーの上部側の端部
29 配線ジャンパーの下部側の端部
30 絶縁フイルム
31 貫通孔(穴)
33 貫通孔(穴)
40 ICチップ(上下接続)
41 ICチップ(一方接続)
48 ICチップの接続端子
49 ICチップの接続端子
50 上部側端部の接続箇所
55 容量
59 導電性樹脂
60 超音波振動ごて
71 化粧板(表側)
72 化粧板(裏側)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁フイルムの上面側と下面側にパターンが形成されている無線ICタグの製造方法であって、
一方の基材に他方の基材を上下に重ねたときに両方のパターンの端部が2つとも一致する様に2つの基材にパターンを形成するパターン形成ステップと、
前記パターンが形成された一方の基材の上側に、前記パターンの2つの端部に当る位置に各々貫通孔が形成され、かつ前記ICチップ以上の厚さを有する絶縁フイルムを被せ、固定する被覆固定ステップと、
前記パターンの2つの端部に当たる位置のパターン上に各々半田、熱可塑性導電接着性樹脂あるいは熱硬化性導電接着性樹脂のいずれかを塗布する塗布ステップと、
前記被覆固定ステップ後の絶縁フイルムの2個の貫通孔の一方にICチップを設置する設置ステップと、
前記設置ステップがなされた状態の絶縁フイルム上に、前記他方の基材を重ねる重ねステップと、
前記重ねステップがなされた状態で全体を押圧加熱して前記一方の基材と前記絶縁フイルムと前記他方の基材が一体となった構造のフイルムとする接着ステップと、
前記重ねステップがなされた後、両方のパターンをその一方の端部にて各々ICチップに電気的に接続し、他方の端部にて相互に電気的に接続する接続ステップとを、
有していることを特徴とする無線ICタグの製造方法。
【請求項2】
前記パターン形成ステップは、
両方の基材のいずれにもアンテナのパターンを、基材の両側を上下に重ねたときに磁界の方向が一致する様に形成する、あるいは、
一方の基材にはアンテナのパターンを、他方の基材には配線ジャンパーのパターンを形成する、
のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の無線ICタグの製造方法。
【請求項3】
前記パターン形成ステップは、前記一方の基材と前記他方の基材が一体の大きな基材となっている状態で、一体の大きな基材の左右両側に各々の基材のパターンを形成するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線ICタグの製造方法。
【請求項4】
パターン形成ステップは、前記一方の基材と前記他方の基材が一体の大きな基材となっている状態の大きな基材の左側と右側に各々、所定の直線を軸にして折り曲げて、一方の側を他方の側に重ねたときに両方のパターンの端部が2つとも一致する様にパターンを形成するものであり、
前記重ねステップは、前記設置ステップがなされた状態の絶縁フイルム上に、前記他方の基材を、前記所定の直線を折り目にして重ねるものであることを特徴とする請求項3に記載の無線ICタグの製造方法。
【請求項5】
パターン形成ステップは、前記一方の基材と前記他方の基材が一体の大きな基材となっている状態の大きな基材の左側と右側に各々、所定の直線を軸にして折り曲げて、一方の側を他方の側に重ねたときに両方のパターンの端部が2つとも一致する様にパターンを形成するものであり、
前記重ねステップは、前記設置ステップがなされた状態の絶縁フイルム上に、前記他方の基材を、前記所定の直線から切り離し、さらに裏返しにし、位置合せして重ねるものであることを特徴とする請求項3に記載の無線ICタグの製造方法。
【請求項6】
絶縁フイルムの上面側と下面側のいずれか一方に第1のパターンと第2のパターンが、他方に第3のパターンが形成されている無線ICタグの製造方法であって、
基材の左側と右側に各々、
いずれか一方の側(左側または右側)には第1のパターンと第2のパターンを、それらの両端間にICチップを電気的に接続することが可能である様に形成し、
他方の側(右側または左側)には第3のパターンを、その両端が、前記一方の側に重ねたときに、前記一方の側の基材に形成されている第1のパターンと第2のパターンのICチップに電気的に接続されない方の各端部と一致する様に形成し、
前記第1のパターンと第3のパターンの一方はアンテナのパターンであり、他方はアンテナまたは配線ジャンパーのパターンであり、前記第2のパターンは配線ジャンパーのパターンであり、
さらにまた基材の左側と右側に形成されている第1のパターンと第3のパターンは、何れもがアンテナのパターンであれば、磁界の向きも同じとなる様に形成するパターン形成ステップと、
前記基材の一方の側上に、前記ICチップを電気的に接続する箇所と、前記第1のパターンと第2のパターンのICチップを電気的に接続しない方の端部に当る位置に各々、合計3個の貫通孔が形成され、かつ前記ICチップ以上の厚さを有する絶縁フイルムを被せ、固定する被覆固定ステップと、
前記各パターンの2つの端部に当たる位置のパターン上に各々半田、熱可塑性導電接着性樹脂あるいは熱硬化性導電接着性樹脂のいずれかを塗布する塗布ステップと、
前記被覆固定ステップ後の絶縁フイルムの前記第1のパターンと第2のパターンとICチップを電気的に接続する箇所に当る貫通孔にICチップを設置する設置ステップと、
前記設置ステップがなされた状態の絶縁フイルム上に、前記基材の他方の側(右側または左側)を重ねる重ねステップと、
前記重ねステップがなされた状態で全体を押圧加熱して基材の一方の側と絶縁フイルムと基材の他方の側が一体となった構造のフイルムとする接着ステップと、
前記重ねステップがなされた後、前記第1のパターンと第2のパターンの端部と前記ICチップ、及び前記2箇所の貫通孔を介して上下に位置する前記パターンの端部相互を電気的に接続する接続ステップとを有していることを特徴とする無線ICタグの製造方法。
【請求項7】
前記パターン形成ステップは、基材の左側と右側に各々、所定の直線を軸にして折り曲げて、一方の側を他方の側に重ねたときに両方のパターンの端部が2つとも一致する様にパターンを形成するものであり、
前記重ねステップは、前記設置ステップがなされた状態の絶縁フイルム上に、前記基材の他方の側を、前記所定の直線を折り目にして重ねるものであることを特徴とする請求項6に記載の無線ICタグの製造方法。
【請求項8】
前記パターン形成ステップは、基材の左側と右側に各々、所定の直線を軸にして折り曲げて、一方の側を他方の側に重ねたときに両方のパターンの端部が2つとも一致する様にパターンを形成するものであり、
前記重ねステップは、前記設置ステップがなされた状態の絶縁フイルム上に、前記基材の他方の側を、前記所定の直線から切り離し、さらに裏返しにし、位置合せして重ねるものであることを特徴とする請求項6に記載の無線ICタグの製造方法。
【請求項9】
前記基材は、紙製であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の無線ICタグの製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9に記載の何れかの方法で製造されたことを特徴とする無線ICタグ。
【請求項11】
表側のフイルムと、絶縁フイルムと、裏側のフイルムと、絶縁フイルムの表側と裏側に位置するアンテナのパターンと、絶縁フイルムの貫通孔内に設置されているICチップを有する無線ICタグであって、
前記表側のフイルムと前記裏側のフイルムは、前記絶縁フイルムを間に挟んで張り合わされており、
前記絶縁フイルムの表側に位置するアンテナのパターンと、前記裏側に位置するアンテナのパターンは、磁界の向きが同じであり、
さらに、いずれも一端は前記ICチップに電気的に接続されており、
他端は前記絶縁フイルムに形成された貫通孔内で相互に電気的に接続されていることを特徴とする無線ICタグ。
【請求項12】
表側のフイルムと、絶縁フイルムと、裏側のフイルムと、絶縁フイルムの表側に位置するアンテナのパターンと、裏側に位置する配線ジャンパーのパターンと、絶縁フイルムの貫通孔内に設置されているICチップを有する無線ICタグであって、
前記表側のフイルムと前記裏側のフイルムは、前記絶縁フイルムを間に挟んで張り合わされており、
前記絶縁フイルムの表側に位置するアンテナのパターンと、前記裏側に位置する配線ジャンパーのパターンは、いずれも一端は前記ICチップに電気的に接続されており、
他端は前記絶縁フイルムに形成された貫通孔内で相互に電気的に接続されていることを特徴とする無線ICタグ。
【請求項13】
表側のフイルムと、絶縁フイルムと、裏側のフイルムと、絶縁フイルムの裏側に位置する第1のパターン及び第2のパターンと、表側に位置する第3のパターンと絶縁フイルムの貫通孔内に設置されているICチップを有する無線ICタグであって、
前記第1のパターンと第3のパターンの一方はアンテナのパターンであり、他方はアンテナまたは配線ジャンパーのパターンであり、前記第2のパターンは配線ジャンパーのパターンであり、
前記表側のフイルムと前記裏側のフイルムは、前記絶縁フイルムを間に挟んで張り合わされており、
前記絶縁フイルムの裏側に位置する第1のパターンと第2のパターンは、いずれも一端は前記ICチップに電気的に接続されており、
他端はいずれも前記絶縁フイルムの表側に形成された第3のパターンと貫通孔内で電気的に接続されていることを特徴とする無線ICタグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−4604(P2008−4604A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169995(P2006−169995)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(591020445)立山科学工業株式会社 (71)
【Fターム(参考)】