説明

熱処理装置及び冷却方法

【課題】特殊な高価な高温用の熱交換器を不要にして、耐熱性の低い汎用の安価な熱交換器を用いることができるようにした熱処理装置を提供する。
【解決手段】複数枚の被処理体Wに対して同時に熱処理を施す熱処理装置において、筒体状に形成された処理容器4と、処理容器内へ挿脱可能に収容される支持手段18と、被処理体を加熱するために処理容器の外周側に、冷却空間28を介して囲むようにして設けられた加熱炉30と、押込用送風機が接続された気体導入通路42を有し、冷却空間に熱処理後の降温時に冷却気体を導入する冷却気体導入手段36と、熱交換器54と吸出用送風機56とが順次設けられた気体排出通路52を有し、冷却空間から昇温した冷却気体を排出する冷却気体排出手段38と、熱交換器の上流側にて気体排出通路に設けられて、昇温した冷却気体に降温用気体を導入して降温させる降温用気体導入手段40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被処理体に熱処理を施すバッチ式の熱処理装置及び冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイスを製造するには、シリコン基板等よりなる半導体ウエハに対して、成膜処理、エッチング処理、酸化拡散処理、アニール処理等の各種の処理が繰り返し行われる。そして、成膜処理等の熱処理を一度に複数枚の半導体ウエハに対して処理することができるバッチ式の熱処理装置で行った場合には、製品のスループットを向上させるために高温状態になっている半導体ウエハを、半導体ウエハにスリップ等のダメージを与えない範囲で可能な限り高速で冷却する必要がある。
【0003】
このために、従来のバッチ式の熱処理装置として、半導体ウエハを多数枚収容した縦長の処理容器の外周側に、半導体ウエハの熱処理が終了したことに応答して冷却空気を流すことによって高温状態、例えば800〜1000℃程度になっている処理容器から急激に熱を奪うことによって処理済みの高温の半導体ウエハを高速で冷却するようにした熱処理装置が提案されている(例えば特許文献1〜5)。
【0004】
そして、上記冷却空気は押込用送風機によって処理容器の側壁の周囲の冷却空間に送り込まれ、吸出用送風機によってその冷却空間から吸い出されている。この場合、処理態様にもよるが、処理容器を冷却した冷却空気は昇温して400〜500℃程度まで達して高温状態の空気となっていることから、この高温状態の空気が上記吸出用送風機に直接流入すると吸出用送風機自体に熱的な損傷を与えてしまうことになる。そのため、上記吸出用送風機の上流側には熱交換器が設けられており、高温状態になっている空気を上記熱交換器によって所定の温度、例えば50℃程度まで冷却して吸出用送風機が熱的損傷を受けないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−031707号公報
【特許文献2】特開平09−190982号公報
【特許文献3】特開平11−260725号公報
【特許文献4】特開2002−110576号公報
【特許文献5】特開2008−078196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記したような熱処理装置の場合、400〜500℃程度の高温状態になった空気は、吸出用送風機には流入しない替わりに、その上流側に設けた熱交換器に流入することになる。そのため、この熱交換器自体の構成を高温仕様にして耐熱性を高めなければならない。そのため、熱交換器を形成する材質、構造自体も特殊なものとなり、またサイズも大型化し、装置自体が高コスト化する、といった問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の第1の目的は、処理容器と熱交換によって昇温した冷却気体に熱交換器の上流側で降温用気体を混合させて混合気体の温度を下げることによって、特殊な高価な高温用の熱交換器を不要にして、耐熱性の低い汎用の安価な熱交換器を用いることができるようにした熱処理装置及び冷却方法を提供することにある。
【0008】
本発明の第2の目的は、処理容器に向かう冷却気体の一部をバイパスさせ、このバイパスした冷却気体を処理容器との熱交換によって昇温した冷却気体に熱交換器の上流側で混合させて混合気体の温度を下げることによって、特殊な高価な高温用の熱交換器を不要にして、耐熱性の低い汎用の安価な熱交換器を用いることができるようにした熱処理装置及び冷却方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、複数の被処理体を熱処理する熱処理装置において、処理容器と、前記被処理体を複数枚支持しつつ前記処理容器内に挿脱可能に移動する支持手段と、前記処理容器の外側に気体の通る冷却空間を介して囲むように設けた加熱炉と、前記冷却空間に前記処理容器を冷却する冷却気体を導入するために押込用送風機と気体導入通路とを有する冷却気体導入手段と、前記冷却空間から昇温した前記冷却気体を排出するために気体排出通路と熱交換器と吸出用送風機とを有する冷却気体排出手段と、前記冷却空間と前記熱交換器との間に設けられた降温用気体導入手段とを備えたことを特徴とする熱処理装置である。
【0010】
請求項2に係る発明は、複数枚の被処理体に対して同時に熱処理を施す熱処理装置において、筒体状に形成された処理容器と、前記被処理体を複数段に亘って支持しつつ前記処理容器内へ挿脱可能に収容される支持手段と、前記被処理体を加熱するために前記処理容器の外周側に、所定の幅の冷却空間を介して囲むようにして設けられた加熱炉と、押込用送風機が接続された気体導入通路を有し、前記冷却空間に前記熱処理後の降温時に冷却気体を導入する冷却気体導入手段と、熱交換器と吸出用送風機とが上流側から下流側に向けて順次設けられた気体排出通路を有し、前記冷却空間から昇温した前記冷却気体を排出する冷却気体排出手段と、前記熱交換器の上流側にて前記気体排出通路に設けられて、前記昇温した冷却気体に降温用気体を導入して降温させる降温用気体導入手段と、を備えたことを特徴とする熱処理装置である。
【0011】
このように、複数枚の被処理体に対して同時に熱処理を施す熱処理装置において、処理容器と熱交換によって昇温した冷却気体に熱交換器の上流側で降温用気体を混合させて混合気体の温度を下げるようにしたので、特殊な高価な高温用の熱交換器を不要にして、耐熱性の低い汎用の安価な熱交換器を用いることが可能となる。
【0012】
請求項8に係る発明は、複数の被処理体を熱処理する熱処理装置において、処理容器と、前記被処理体を複数枚支持しつつ前記処理容器内に挿脱可能に移動する支持手段と、前記処理容器の外側に気体の通る冷却空間を介して囲むように設けた加熱炉と、前記冷却空間に前記処理容器を冷却する冷却気体を導入するために押込用送風機と気体導入通路とを有する冷却気体導入手段と、前記冷却空間から昇温した前記冷却気体を排出するために気体排出通路と熱交換器と吸出用送風機とを有する冷却気体排出手段と、前記気体導入通路と前記気体排出通路とを必要に応じて連通して前記冷却気体の一部をバイパスさせるバイパス手段とを備えたことを特徴とする熱処理装置である。
【0013】
請求項9に係る発明は、複数枚の被処理体に対して同時に熱処理を施す熱処理装置において、筒体状に形成された処理容器と、前記被処理体を複数段に亘って支持しつつ前記処理容器内へ挿脱可能に収容される支持手段と、前記被処理体を加熱するために前記処理容器の外周側に、所定の幅の冷却空間を介して囲むようにして設けられた加熱炉と、押込用送風機が接続された気体導入通路を有し、前記冷却空間に前記熱処理後の降温時に冷却気体を導入する冷却気体導入手段と、熱交換器と吸出用送風機とが上流側から下流側に向けて順次設けられた気体排出通路を有し、前記冷却空間から昇温した前記冷却気体を排出する冷却気体排出手段と、前記気体導入通路と前記気体排出通路とを必要に応じて連通して前記冷却気体の一部をバイパスさせるバイパス手段と、を備えたことを特徴とする熱処理装置である。
【0014】
このように、複数枚の被処理体に対して同時に熱処理を施す熱処理装置において、処理容器に向かう冷却気体の一部をバイパスさせ、このバイパスした冷却気体を処理容器との熱交換によって昇温した冷却気体に熱交換器の上流側で混合させて混合気体の温度を下げるようにしたので、特殊な高価な高温用の熱交換器を不要にして、耐熱性の低い汎用の安価な熱交換器を用いることが可能となる。
【0015】
請求項15に係る発明は、複数の被処理体に同時に熱処理を施すようにした熱処理装置の冷却方法において、前記被処理体を収容する筒体状の処理容器と前記被処理体を加熱するために前記処理容器の外周側を囲むようにして設けた加熱炉との間に形成された所定の幅の冷却空間に、冷却気体を導入して前記処理容器を冷却すると共に昇温した前記冷却気体を排出するようにした冷却工程と、前記冷却空間より排出される前記昇温した冷却気体中に降温用気体を導入して両気体の混合気体が所定の温度以下になるようにする混合工程と、を有することを特徴とする熱処理装置の冷却方法である。
【0016】
請求項16に係る発明は、複数の被処理体に同時に熱処理を施すようにした熱処理装置の冷却方法において、前記被処理体を収容する筒体状の処理容器と前記被処理体を加熱するために前記処理容器の外周側を囲むようにして設けた加熱炉との間に形成された所定の幅の冷却空間に、冷却気体を導入して前記処理容器を冷却すると共に昇温した前記冷却気体を排出するようにした冷却工程と、前記冷却空間に向けて流れる前記冷却気体の一部をバイパスさせて該バイパスされた冷却気体を前記冷却空間より排出されて昇温している冷却気体中に導入して両気体の混合気体が所定の温度以下になるようにする混合工程と、を有することを特徴とする熱処理装置の冷却方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の熱処理装置及び冷却方法によれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
請求項1、2、請求項15及びこれらを引用する請求項の発明によれば、複数枚の被処理体に対して同時に熱処理を施す熱処理装置において、処理容器と熱交換によって昇温した冷却気体に熱交換器の上流側で降温用気体を混合させて混合気体の温度を下げるようにしたので、特殊な高価な高温用の熱交換器を不要にして、耐熱性の低い汎用の安価な熱交換器を用いることができる。
【0018】
請求項8、9、請求項16及びこれらを引用する請求項の発明によれば、複数枚の被処理体に対して同時に熱処理を施す熱処理装置において、処理容器に向かう冷却気体の一部をバイパスさせ、このバイパスした冷却気体を処理容器との熱交換によって昇温した冷却気体に熱交換器の上流側で混合させて混合気体の温度を下げるようにしたので、特殊な高価な高温用の熱交換器を不要にして、耐熱性の低い汎用の安価な熱交換器を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る熱処理装置の第1実施例を示す構成図である。
【図2】処理容器の冷却時に熱交換器に流入する気体の温度と降温用気体の流量との関係を示すグラフである。
【図3】第1実施例の熱処理装置における冷却方法の各工程を示すフローチャートである。
【図4】本発明の熱処理装置の第2実施例の一部を示す構成図である。
【図5】本発明の熱処理装置の第3実施例を示す構成図である。
【図6】処理容器の冷却時に熱交換器に流入する気体の温度とバイパス通路の弁の開閉動作との関係を示すグラフである。
【図7】第3実施例の熱処理装置における冷却方法の各工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る熱処理装置及び冷却方法の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
<第1実施例>
図1は本発明に係る熱処理装置の第1実施例を示す構成図である。図1に示すように、この熱処理装置2は、縦長の筒体状に成形された処理容器4を有している。この処理容器4は、円筒体状に成形された石英よりなる内筒6と、その外側を所定の間隔を隔てて覆う石英よりなる外筒8とにより主に構成されて、二重管構造になされている。
【0021】
上記外筒8の上部は閉じられて有天井になっており、下端部は開口されて、この開口部に例えばステンレススチール等よりなる円筒状のマニホールド10が気密に接続されている。そして、このマニホールド10に必要なガスを流量制御しつつ処理容器4内へ導入するガスノズル等を有するガス導入手段12が設けられる。また、上記外筒8の底部の側壁にガス排気口14が設けられ、このガス排気口14に、圧力調整弁や真空ポンプ(図示せず)等を有する排気系16が接続されている。
【0022】
これにより、処理容器4内の下部から導入されたガスは内筒6内を上昇して天井部で折り返し、内筒6と外筒8との間の空間を流れて上記ガス排気口14から排気されるようになっている。この場合、処理の態様によって、処理容器4内は常圧雰囲気になされる場合もあるし、図示例のように真空雰囲気になされる場合もある。尚、上記マニホールド10を設けない熱処理装置もある。
【0023】
そして、処理容器4内には、被処理体である半導体ウエハWを複数段に亘って支持しつつその下方より挿脱可能になされた支持手段18が設けられている。この支持手段18としては、例えば石英製の半導体ウエハボートよりなり、この半導体ウエハボート中に複数枚、例えば50〜150枚程度の半導体ウエハWを所定のピッチで多段に支持するようになっている。また、この半導体ウエハボートは石英製の保温筒20上に設置されている。
【0024】
そして、上記マニホールド10の下端の開口部は、例えばステンレススチール等よりなる蓋部22で気密に密閉できるようになっていると共に、この蓋部22は、ボートエレベータよりなる昇降機構24に連結されて昇降可能になされている。そして、上記保温筒20は、上記蓋部22を気密に回転自在に貫通された回転軸26上に支持されて、回転可能としている。従って、上記昇降機構24を昇降させることにより、上記ウエハボートよりなる支持手段18は、処理容器4の下方より処理容器4内へ挿脱可能になされている。
【0025】
そして、この処理容器4の外周側には、所定の空間を介して囲むようにして加熱炉30が設けられており、この内側に位置する処理容器4や半導体ウエハWを加熱するようになっている。具体的には、この加熱炉30は、上記処理容器4の側部及び天井部を囲むようにして設けられた断熱部材32を有している。そして、この断熱部材32の内壁の略全面に沿って抵抗加熱ヒータ34が設けられており、この抵抗加熱ヒータ34からの熱によって上述のように半導体ウエハW等を加熱するようになっている。そして、上記処理容器4と加熱炉30との間の上記所定の空間が冷却空間28として構成されている。
【0026】
この冷却空間28の下端部はシール材35によりシールされており、冷却空間28内を密封している。そして、上記加熱炉30には、上記冷却空間28内へ熱処理後の降温時に冷却気体を導入する冷却気体導入手段36と、上記冷却空間28から昇温した上記冷却気体を排出する冷却気体排出手段38と、上記昇温した冷却気体中に降温用気体を導入して降温させる本発明の特徴とする降温用気体導入手段40とが設けられている。
【0027】
具体的には、上記冷却気体導入手段36は、冷却気体を流すための気体導入通路42を有しており、この気体導入通路42の上流側には冷却気体を送風するための押込用送風機44が接続されている。ここで冷却気体としては、例えば室温の空気を用いることができる。また、上記処理容器4の下部の周辺部であって上記冷却空間28の下方には、これを取り囲むようにしてリング状の送風ヘッダ43が設けられており、この送風ヘッダ43に上記気体導入通路42が接続されている。そして、この送風ヘッダ43からは、上記冷却空間28に対して複数本の気体ノズル46が延びている。この気体ノズル46は、送風ヘッダ43の周方向に沿って所定の間隔で配置されている。これにより、上記気体ノズル46から冷却気体を処理容器4の外周面に対して吹き付けて、これを冷却するようになっている。
【0028】
一方、上記加熱炉30の天井部には、上記冷却により昇温した冷却気体を排出する排気口48が形成されており、この排気口48には、熱処理時には閉じられて冷却時に開放される排気シャッタ50が設けられている。そして、上記冷却気体排出手段38は、上記排気口48に接続された気体排出通路52を有しており、この中を昇温した冷却気体を流すようになっている。この気体排出通路52には、その上流側より下流側に向けて熱交換器54及び吸出用送風機56が順次設けられている。そして、上記熱交換器54には、冷媒が流されており、ここを通過する温度の高い冷却気体を安全温度まで冷却し、安全な温度まで冷却した冷却気体を外部へ放出するようになっている。
【0029】
そして、本発明の特徴とする上記降温用気体導入手段40は、上記熱交換器54の上流側において上記気体排出通路52に接続された降温用気体導入通路58を有している。この降温用気体導入通路58の接続部には、両気体の混合を効率的に行うミキサ60が設けられている。そして、上記降温用気体導入通路58の途中には、降温用気体の流れを制御する弁62が設けられており、その先端には降温用送風機64が接続されて、降温用気体を送り込むようになっている。この降温用気体としては、室温の空気を用いることができる。
【0030】
そして、上記ミキサ60と熱交換器54との間の気体排出通路52には、気体温度測定手段として例えば熱電対66が設けられており、ここを流れる昇温している冷却気体と降温用気体との混合気体の温度を測定するようになっている。すなわち、この熱電対66によって熱交換器54に流入する気体の温度を測定するようになっている。
【0031】
そして、上記弁62の動作及び降温用送風機64の動作を制御するために、例えばコンピュータ等よりなる弁制御部68を有しており、ここではこの弁制御部68は上記熱電対66で測定された測定温度値に基づいて上記気体の温度が所定の温度以下になるように上記弁62の開閉動作等を制御するようになっている。上記所定の温度としては、上記熱交換器54の耐熱温度、例えば300℃用いられる。
【0032】
実際の制御では、後述する図2に示すように、上記所定の温度よりも少し低い温度t1を測定した時に降温用気体の導入を開始し、温度がピークを過ぎて降温時に温度t2を測定した時に降温用気体の導入を停止するようになっている。
【0033】
そして、この熱処理装置2の全体の動作は、例えばコンピュータ等よりなる装置制御部70により制御され、熱処理のための各ガスの制御、圧力制御、温度制御等に加えて各送風機44、56の動作制御等が行われる。上記装置制御部70は、上記動作に必要なコンピュータに読み取り可能なコンピュータプログラムを記憶する記憶媒体72を有している。この記憶媒体72は、例えばフレキシブルディスク、CD(Compact Disc)、ハードディスク、フラッシュメモリ或いはDVD等よりなる。また上記弁制御部68は、上記装置制御部70の支配下で動作している。
【0034】
<冷却方法の説明>
次に、以上のように形成された熱処理装置における冷却方法について図2及び図3も参照して説明する。図2は処理容器の冷却時に熱交換器に流入する気体の温度と降温用気体の流量との関係を示すグラフ、図3は第1実施例の熱処理装置における冷却方法の各工程を示すフローチャートである。尚、図2において、曲線Aは降温用気体を用いない従来の装置の場合を示し、曲線Bは降温用気体を用いた本発明の第1実施例の熱処理装置の場合を示す。
【0035】
ここでは、熱交換器54の耐熱温度を上述したように例えば300℃に設定してあり、熱電対66が300℃よりも少し低い温度t1℃になった時に降温用気体の導入を開始し、温度のピークを過ぎて300℃よりも低い温度t2℃になった時に降温用気体の導入を停止するようにしている。上記温度t1℃及びt2℃は、経験的に求められており、降温用気体の単位時間当たりの送風量にもよるが、例えば耐熱温度である300℃よりも5〜40℃程度低い温度に設定してある。
【0036】
さて、処理容器4内へ挿入されている半導体ウエハWの熱処理が行われ、熱処理が完了すると、この直後の処理容器4及びこの中の半導体ウエハWは、加熱炉30の抵抗加熱ヒータ34によって加熱されていたので、処理態様にもよるが例えば500℃程度に加熱されている。この熱処理の種類としては、CVD(Chemical Vapor Deposition)成膜処理、酸化拡散処理、アニール処理等が対応する。
【0037】
そして、上述のように熱処理が完了すると、製品のスループットを向上させるために半導体ウエハWを処理容器4内から排出させるアンロードができる温度まで、半導体ウエハWにスリップが生じないような適正な降温速度を維持したまま高速で冷却しなければならない。
【0038】
まず、一般的な概略的な流れについて説明する。冷却方法が開始されると、加熱炉30の排気口48に設けた排気シャッタ50を開き、冷却気体導入手段36の押込用送風機44を始動させる(S1)。すると、冷却気体である室温の空気が気体導入通路42を流れて送風ヘッダ43に至り、この送風ヘッダ43に設けた各気体ノズル46から冷却空間28内に向けて噴射される。この噴射された室温の冷却気体は高温状態になっている処理容器4、すなわち外筒8の外周面と接触しつつこれを冷却し、これに伴って内筒6及びその内側の半導体ウエハWも順次冷却されることになる。
【0039】
この冷却によって、冷却気体は逆に昇温して高温状態となって天井部に設けた排気口48より冷却気体排出手段38の気体排出通路52内へ流れて行く。この気体排出通路52を流れる冷却気体の温度が所定の値よりも高い場合には、降温用気体導入通路58の降温用送風機64が始動し、且つ降温用気体導入通路58に設けた弁62が開いて上記高温の冷却気体中に降温用気体、すなわち室温の空気が導入されてこの混合気体の温度を低下させる。そして、この温度が低下した混合気体は熱交換器54内に流入してここで冷媒により更に冷却されて吸出用送風機56から外へ排出されることになる。
【0040】
次に、上述した操作をより詳しく説明する。まず、上述したように押込用送風機44を始動すると(S1)、冷却空間28内に冷却気体である室温の空気が流れ込み、処理容器4等の冷却が開始される。図2に示すように、冷却開始の当初は、気体排出通路52内に残留する低温の空気が流れ出すので熱交換器54に流入する空気の温度は当初は低いが、次第に冷却空間28内の空気が流入してくるので、開始後、僅かな時間で急激に上昇して行くことになる。そして、この気体排出通路52内を流れる空気(冷却気体)の温度は、この途中に設けた熱電対66により測定されて弁制御部68へ入力されている。
【0041】
この測定温度値がt1℃よりも低い場合には(S2のNO)、そのまま上記動作が継続されるが、測定温度値がt1℃以上になると(S2のYES)、降温用気体導入手段40の弁62を開き、且つ降温用送風機64を始動し、降温用気体、すなわち室温の空気の送風を開始する(S3)。そして、これと同時に、吸出用送風機56も始動し、冷却体の吸い出しを開始する(S3)。上記降温用気体は、降温用気体導入通路58内を流れて開放された弁62を通過してミキサ60に至り、このミキサ60内で気体排出通路52内を流れてくる昇温されて高温になった空気(冷却気体)と混合されてこの混合気体の温度が低下することになる。そして、この混合気体は、吸出用送風機56によって下流へ流れて行く。この時の導入する降温用気体の流量は一定であり、その流量Qb[m /min]は、下記の式で予め定められている。
【0042】
Qb=Qa・(Ta−Tp)/(Tp−Tr)
Qa:気体排出通路内を流れてくる風量[m /min]
Ta:従来の装置の冷却気体の最大値[℃](図2参照)
Tp:熱交換器の耐熱温度[℃](図2参照)
Tr:室温[℃]
【0043】
この場合、熱電対66で測定される測定温度値は、降温用気体が導入されると暫くの間は混合気体の温度は上昇するが短時間で測定温度値はピークとなり(S4のYES)、その後、混合気体の温度は次第に少しずつ低下して行くことになる。上記ピーク点は、図2において曲線Aがピークになった点に一致している。この場合、曲線Bのピーク値は、熱交換器54の耐熱温度であるTp(300℃)よりも低く、これにより熱交換器54が熱損傷を受けることを防止することができる。従って、この熱交換器54として特殊な耐熱性の高いものを使う必要がなく、小型で、しかも安価な汎用性のある熱交換器を用いることができる。
【0044】
そして、上記混合気体の温度がt2℃以下になると(S5のYES)、弁制御部68は降温用送風機64を停止し、且つ弁62を閉じて降温用気体の導入を停止する(S6)。このt2℃の値は、経験的に求められ、処理容器4の温度が熱交換器54の耐熱温度Tpになった時の混合気体の温度に設定すればよい。
【0045】
その後、降温用気体の導入を停止してから、所定の時間が経過した否かを判断する(S7)。この所定の時間の長さは、経験的に求められ、この気体排出通路52内を流れる冷却気体が安全温度以下まで降温する長さに設定する。そして、この所定の時間が経過したならば(S7のYES)、押込用送風機44の駆動を停止し、また吸出用送風機56の駆動を停止し、更に排気シャッタ50を閉じることによって(S8)、冷却操作を終了することになる。これ以降は、処理容器4内から冷却された半導体ウエハWを降下させてアンロードし、これを搬出することになる。
【0046】
このように、本発明によれば、複数枚の被処理体に対して同時に熱処理を施す熱処理装置において、処理容器4と熱交換によって昇温した冷却気体に熱交換器54の上流側で降温用気体を混合させて混合気体の温度を下げるようにしたので、特殊な高価な高温用の熱交換器を不要にして、耐熱性の低い汎用の安価な熱交換器を用いることができる。
【0047】
尚、上記実施例では、降温用気体導入通路58に設けた弁62の動作は開閉動作だけであったが、これに加えて弁開度を調整できる弁を用いてもよい。この弁開度を調整できる弁を用いれば、例えば図2において一点鎖線で示す特性Cのように、弁62を全開した後、暫くしてから(例えば温度ピークTaを過ぎた時点から)、弁開度を少しずつ小さくして降温用気体の流量を徐々に少なくするように制御することができる。
【0048】
また、上記第1実施例では、降温用気体導入手段40の一部として降温用送風機64を設けて降温用気体の導入を促進させるようにしたが、これに限定されず、この降温用送風機64を設けないで、降温用気体導入通路58の先端をクリーンルーム内等の大気側へ開放させるようにしてもよい。この場合には、吸出用送風機56を動作させることにより、降温用気体導入通路58内が負圧になり、弁62を制御することで上述したと同様に降温用気体を導入させることができる。
【0049】
<第2実施例>
次に本発明の熱処理装置の第2実施例について説明する。先の第1実施例は降温用気体導入手段40に熱交換器に流入する気体の温度を測定するために熱電対66よりなる気体温度測定手段を設けたが、これに限定されず、この気体温度測定手段を設けないで省略するようにしてもよい。
【0050】
図4はこのような本発明の熱処理装置の第2実施例の一部を示す構成図である。尚、図4において図1に示す構成部分と同一構成部分については同一参照符号を付して、その説明を省略する。図4に示すように、ここでは気体排出通路52には図1に示した熱電対66よりなる気体温度測定手段を設けていない。この場合、弁制御部68は装置制御部70側からの冷却開始指令を受けて、時間管理により弁62の開閉動作や降温用送風機64の始動、或いは停止を行う。
【0051】
具体的には、図2中における温度t1、t2の各タイミング(時間)は、実験的、或いは経験的に知ることができ、各タイミングの時期を冷却開始を起点とするデータとして予め求めておく。そして、このデータを上記弁制御部68に予め記憶させておき、これにより、上記第1実施例と同様な動作を行うことができる。この場合にも、先の第1実施例と同様な作用効果を発揮することができる。またこの第2実施例においても、先の第1実施例で説明したと同様に、上記降温用送風機64を設けないで、降温用気体導入通路58の先端をクリーンルーム内等の大気側へ開放させるようにしてもよい。この場合には、吸出用送風機56を動作させることにより、降温用気体導入通路58内が負圧になり、弁62を制御することで上述したと同様に降温用気体を導入させることができる。
【0052】
<第3実施例>
次に本発明の第3実施例について説明する。先の第1及び第2実施例では、降温用気体として別途設けた降温用気体導入手段40から降温用気体として室温の空気を導入するようにしたが、この第3実施例では押込用送風機で押し込んだ冷却気体(室温の空気)を一部分岐してバイパスさせて、このバイパスさせた冷却気体を、冷却空間を通過して昇温した冷却気体中へ導入して混合するようにしている。図5はこのような本発明の熱処理装置の第3実施例を示す構成図、図6は処理容器の冷却時に熱交換器に流入する気体の温度とバイパス通路の弁の開閉動作との関係を示すグラフ、図7は第3実施例の熱処理装置における冷却方法の各工程を示すフローチャートである。
【0053】
尚、図6において曲線Aはバイパスした冷却気体を用いない従来の装置の場合を示し、曲線Dはバイパスした気体を用いた本発明の第3実施例の熱処理装置の場合を示す。また、図5乃至図7において、先の図1乃至図3に示す構成部分と同一構成部分については同一参照符号を付してその説明を省略する。
【0054】
図5に示すように、ここでは第1及び第2実施例で設けた降温用気体導入通路58に替えて冷却気体の一部を必要に応じてバイパスさせるバイパス手段76が設けられている。具体的には、このバイパス手段76は、冷却気体導入手段36の気体導入通路42と冷却気体排出手段38の気体排出通路52との間を連通するバイパス通路78を有している。この場合、このバイパス通路78の一端は、上記押込用送風機44の下流側で上記気体導入通路42へ接続され、他端は上記熱交換器54の上流側で気体排出通路52へ接続され、この接続点にはミキサ60が設けられている。
【0055】
そして、上記バイパス通路78の途中に弁62が介設されており、バイパスされる気体の流れを制御するようになっている。そして、上記熱交換器54とミキサ60との間の気体排出通路52には、上記冷却空間を流れて昇温した冷却気体と上記バイパス通路78を流れた気体との混合気体の温度を測定する気体温度測定手段として、例えば熱電対66が設けられている。すなわち、この熱電対66によって熱交換器54に流入する気体の温度を測定するようになっている。そして、第1及び第2実施例と同様に、弁制御部68は気体温度測定手段である熱電対66の測定温度値に基づいて上記気体が所定の温度以下になるように上記弁62を制御するようになっている。
【0056】
<冷却方法の説明>
この第3実施例の動作は、降温用送風機64に関する点を除いて基本的には第1実施例の場合と略同じであり、図7中のS21〜S28は、図3中のS1〜S8に対応している。
【0057】
まず、一般的な概略的な流れについて説明する。最初はバイパス弁62は閉じられており、冷却操作が開始されると、加熱炉30の排気口48に設けた排気シャッタ50を開き、冷却気体導入手段36の押込用送風機44を始動させる(S21)。すると、冷却気体である室温の空気が気体導入通路42を流れて送風ヘッダ43に至り、この送風ヘッダ43に設けた各気体ノズル46から冷却空間28内に向けて噴射される。この噴射された室温の冷却気体は高温状態になっている処理容器4、すなわち外筒8の外周面と接触しつつこれを冷却し、これに伴って内筒6及びその内側の半導体ウエハWも順次冷却されることになる。
【0058】
この冷却によって、冷却気体は逆に昇温して高温状態となって天井部に設けた排気口48より冷却気体排出手段38の気体排出通路52内へ流れて行く。この気体排出通路52を流れる冷却気体の温度が所定の値よりも高い場合には、バイパス通路78に設けた弁62が開いて上記気体導入通路42に流れる冷却気体の一部が分岐されてバイパス通路78内に流れ込み、この気体は冷却空間28を通って昇温した冷却気体と混合されて、この混合気体の温度を低下させる。そして、この温度が低下した混合気体は熱交換器54内に流入してここで冷媒により更に冷却されて吸出用送風機56から外へ排出されることになる。
【0059】
次に、上述した操作をより詳しく説明する。まず、上述したように押込用送風機44を始動すると(S21)、冷却空間28内に冷却気体である室温の空気が流れ込み、処理容器4等の冷却が開始される。図6に示すように、冷却開始の当初は、気体排出通路52内に残留する低温の空気が流れ出すので熱交換器54に流入する空気の温度は当初は低いが、次第に冷却空間28内の空気が流入してくるので、開始後、僅かな時間で急激に上昇して行くことになる。そして、この気体排出通路52内を流れる空気(冷却気体)の温度は、この途中に設けた熱電対66により測定されて弁制御部68へ入力されている。
【0060】
この測定温度値がt1℃よりも低い場合には(S22のNO)、そのまま上記動作が継続されるが、測定温度値がt1℃以上になると(S22のYES)、バイパス通路78に設けた弁62を開き、気体導入通路42内を流れる冷却気体の一部を分岐してバイパスさせる。そして、これと同時に、吸出用送風機56も始動し、冷却体の吸い出しを開始する(S23)。上記分岐された冷却気体は、バイパス通路78内を流れて開放された弁62を通過してミキサ60に至り、このミキサ60内で気体排出通路52内を流れてくる昇温されて高温になった空気(冷却気体)と混合されてこの混合気体の温度が低下することになる。そして、この混合気体は、吸出用送風機56によって下流へ流れて行く。この時、バイパス通路78側へ分岐して流入する冷却気体の量は、装置設計にもよるが、例えば押込用送風機44で押し込まれる冷却気体の全流量の半分程度である。
【0061】
ここで、熱電対66で測定される測定温度値は、バイパスされる冷却気体が導入されると暫くの間は混合気体の温度は上昇するが短時間で測定温度値はピークとなり(S24のYES)、その後、混合気体の温度は次第に少しずつ低下して行くことになる。上記ピーク点は、図6において曲線Aがピークになった点に一致している。この場合、曲線Dのピーク値は、熱交換器54の耐熱温度であるTp(300℃)よりも低く、これにより熱交換器54が熱損傷を受けることを防止することができる。従って、この熱交換器54として特殊な耐熱性の高いものを使う必要がなく、小型で、しかも安価な汎用性のある熱交換器を用いることができる。
【0062】
そして、上記混合気体の温度がt2℃以下になると(S25のYES)、弁制御部68は弁62を閉じてバイパスされた気体の導入を停止する(S26)。このt2℃の値は、経験的に求められ、処理容器4の温度が熱交換器54の耐熱温度Tpになった時の混合気体の温度に設定すればよい。
【0063】
その後、降温用気体の導入を停止してから、所定の時間が経過した否かを判断する(S27)。この所定の時間の長さは、第1及び第2実施例の場合と同様に、経験的に求められ、この気体排出通路52内を流れる冷却気体が安全温度まで以下するまでの長さに設定する。そして、この所定の時間が経過したならば(S27のYES)、押込用送風機44の駆動を停止し、また吸出用送風機56の駆動を停止し、更に排気シャッタ50を閉じることによって(S28)、冷却操作を終了することになる。これ以降は、処理容器4内から冷却された半導体ウエハWを降下させてアンロードし、これを搬出することになる。
【0064】
このように、本発明によれば、複数枚の被処理体、例えば半導体ウエハWに対して同時に熱処理を施す熱処理装置において、処理容器4に向かう冷却気体の一部をバイパスさせ、このバイパスした冷却気体を処理容器54との熱交換によって昇温した冷却気体に熱交換器の上流側で混合させて混合気体の温度を下げるようにしたので、特殊な高価な高温用の熱交換器を不要にして、耐熱性の低い汎用の安価な熱交換器を用いることが可能となる。
【0065】
尚、上記実施例では、バイパス通路78に設けた弁62の動作は開閉動作だけであったが、これに加えて弁開度を調整できる弁を用いてもよい。この弁開度を調整できる弁を用いれば、例えば図6において一点鎖線で示す特性Eのように、弁62を全開した後、暫くしてから(例えば温度ピークTaを過ぎた時点から)、弁開度を少しずつ小さくしてバイパス気体の流量を徐々に少なくするように制御することができる。
【0066】
<第4実施例>
次に本発明の熱処理装置の第4実施例について説明する。先の第3実施例はバイパス手段76に混合気体の温度を測定するために熱電対66よりなる気体温度測定手段を設けたが、これに限定されず、この気体温度測定手段を設けないで省略するようにしてもよい。この場合、先に第2実施例と同様に弁制御部68は装置制御部70側からの冷却開始指令を受けて、時間管理により弁62の開閉動作を行う。
【0067】
具体的には、図6中における温度t1、t2の各タイミングは、実験的、或いは経験的に知ることができ、各タイミングの時期を冷却開始を起点とするデータとして予め求めておく。そして、このデータを上記弁制御部68に予め記憶させておき、これにより、上記第3実施例と同様な動作を行うことができる。この場合にも、先の第3実施例と同様な作用効果を発揮することができる。
【0068】
また、この第3及び第4実施例の場合には、冷却操作の途中で冷却空間28内に導入される冷却気体の流量が、第1及び第2実施例の場合よりも少なくなるので、その分、冷却速度が低下するが、ここでは押込用送風機44と吸出用送風機56を流れる流量が常に同じなので、同じ送風容量の送風機を用いることができる利点を有する。
【0069】
尚、上記各実施例において、冷却気体、或いは降温用気体として室温の空気を用いたが、これに限定されず、空気を室温より低い温度に予め冷却して用いるようにしてもよいし、或いは空気に替えてN ガスやHe等の希ガスよりなる不活性ガスを用いてもよい。
また、上記各実施例では、二重管構造の処理容器4を例にとって説明したが、この処理容器は単に一例を示したに過ぎず、単管構造の処理容器を用いてもよいし、ガス導入手段12も上記実施例で説明した構成に限定されない。
【0070】
また、ここでは被処理体として半導体ウエハを例にとって説明したが、この半導体ウエハにはシリコン基板やGaAs、SiC、GaNなどの化合物半導体基板も含まれ、更にはこれらの基板に限定されず、液晶表示装置に用いるガラス基板やセラミック基板等にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
2 熱処理装置
4 処理容器
6 内筒
8 外筒
12 ガス導入手段
16 排気系
18 支持手段(半導体ウエハボート)
28 冷却空間
30 加熱炉
32 断熱部材
34 抵抗加熱ヒータ
36 冷却気体導入手段
38 冷却気体排出手段
40 降温用気体導入手段
42 気体導入通路
52 気体排出通路
54 熱交換器
56 吸出用送風機
58 降温用気体導入通路
62 弁
64 降温用送風機
66 熱電対(気体温度測定手段)
68 弁制御部
76 バイパス手段
78 バイパス通路
W 半導体ウエハ(被処理体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被処理体を熱処理する熱処理装置において、
処理容器と、
前記被処理体を複数枚支持しつつ前記処理容器内に挿脱可能に移動する支持手段と、
前記処理容器の外側に気体の通る冷却空間を介して囲むように設けた加熱炉と、
前記冷却空間に前記処理容器を冷却する冷却気体を導入するために押込用送風機と気体導入通路とを有する冷却気体導入手段と、
前記冷却空間から昇温した前記冷却気体を排出するために気体排出通路と熱交換器と吸出用送風機とを有する冷却気体排出手段と、
前記冷却空間と前記熱交換器との間に設けられた降温用気体導入手段とを備えたことを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
複数枚の被処理体に対して同時に熱処理を施す熱処理装置において、
筒体状に形成された処理容器と、
前記被処理体を複数段に亘って支持しつつ前記処理容器内へ挿脱可能に収容される支持手段と、
前記被処理体を加熱するために前記処理容器の外周側に、所定の幅の冷却空間を介して囲むようにして設けられた加熱炉と、
押込用送風機が接続された気体導入通路を有し、前記冷却空間に前記熱処理後の降温時に冷却気体を導入する冷却気体導入手段と、
熱交換器と吸出用送風機とが上流側から下流側に向けて順次設けられた気体排出通路を有し、前記冷却空間から昇温した前記冷却気体を排出する冷却気体排出手段と、
前記熱交換器の上流側にて前記気体排出通路に設けられて、前記昇温した冷却気体に降温用気体を導入して降温させる降温用気体導入手段と、
を備えたことを特徴とする熱処理装置。
【請求項3】
前記降温用気体導入手段は、
前記気体排出通路に接続された降温用気体導入通路と、
前記降温用気体導入通路の途中に介設されて前記降温用気体の流れを制御する弁と、
前記熱交換器の上流側に設けられて前記熱交換器に流入する気体の温度を測定する気体温度測定手段と、
前記気体温度測定手段の測定温度値に基づいて前記気体が所定の温度以下になるように前記弁を制御する弁制御部と、
を有することを特徴とする請求項1又は2記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記降温用気体導入手段は、
前記気体排出通路に接続された降温用気体導入通路と、
前記降温用気体導入通路に接続された降温用送風機と、
前記降温用気体導入通路の途中に介設されて前記降温用気体の流れを制御する弁と、
冷却開始を起点として予め定められた時間で前記弁を制御して前記熱交換器に流入する気体の温度が所定の温度以下になるようにする弁制御部と、
を有することを特徴とする請求項1又は2記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記弁は、開閉弁であることを特徴とする請求項3又は4記載の熱処理装置。
【請求項6】
前記弁は、弁開度を調整することが可能な開閉弁であることを特徴とする請求項3又は4記載の熱処理装置。
【請求項7】
前記気体排出通路と前記降温用気体導入通路との接続部にはミキサが設けられていることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項8】
複数の被処理体を熱処理する熱処理装置において、
処理容器と、
前記被処理体を複数枚支持しつつ前記処理容器内に挿脱可能に移動する支持手段と、
前記処理容器の外側に気体の通る冷却空間を介して囲むように設けた加熱炉と、
前記冷却空間に前記処理容器を冷却する冷却気体を導入するために押込用送風機と気体導入通路とを有する冷却気体導入手段と、
前記冷却空間から昇温した前記冷却気体を排出するために気体排出通路と熱交換器と吸出用送風機とを有する冷却気体排出手段と、
前記気体導入通路と前記気体排出通路とを必要に応じて連通して前記冷却気体の一部をバイパスさせるバイパス手段とを備えたことを特徴とする熱処理装置。
【請求項9】
複数枚の被処理体に対して同時に熱処理を施す熱処理装置において、
筒体状に形成された処理容器と、
前記被処理体を複数段に亘って支持しつつ前記処理容器内へ挿脱可能に収容される支持手段と、
前記被処理体を加熱するために前記処理容器の外周側に、所定の幅の冷却空間を介して囲むようにして設けられた加熱炉と、
押込用送風機が接続された気体導入通路を有し、前記冷却空間に前記熱処理後の降温時に冷却気体を導入する冷却気体導入手段と、
熱交換器と吸出用送風機とが上流側から下流側に向けて順次設けられた気体排出通路を有し、前記冷却空間から昇温した前記冷却気体を排出する冷却気体排出手段と、
前記気体導入通路と前記気体排出通路とを必要に応じて連通して前記冷却気体の一部をバイパスさせるバイパス手段と、
を備えたことを特徴とする熱処理装置。
【請求項10】
前記バイパス手段は、
前記気体導入通路の前記押込用送風機の下流側と前記気体排出通路に介設した前記熱交換器の上流側とを連通するバイパス通路と、
前記バイパス通路の途中に介設されてバイパスされる気体の流れを制御する弁と、
前記熱交換器に流入する気体の温度を測定する気体温度測定手段と、
前記気体温度測定手段の測定温度値に基づいて前記気体が所定の温度以下になるように前記弁を制御する弁制御部と、
を有することを特徴とする請求項8又は9記載の熱処理装置。
【請求項11】
前記バイパス手段は、
前記気体導入通路の前記押込用送風機の下流側と前記気体排出通路に介設した前記熱交換器の上流側とを連通するバイパス通路と、
前記バイパス通路の途中に介設されてバイパスされる気体の流れを制御する弁と、
冷却開始を起点として予め定められた時間で前記弁を制御して前記冷却空間を流れた冷却気体と前記バイパス通路を流れた気体との混合気体の温度が所定の温度以下になるようにする弁制御部と、
を有することを特徴とする請求項8又は9記載の熱処理装置。
【請求項12】
前記弁は、開閉弁であることを特徴とする請求項10又は11記載の熱処理装置。
【請求項13】
前記弁は、弁開度を調整することが可能な開閉弁であることを特徴とする請求項10又は11記載の熱処理装置。
【請求項14】
前記気体排出通路と前記バイパス通路との接続部にはミキサが設けられていることを特徴とする請求項10乃至13のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項15】
複数の被処理体に同時に熱処理を施すようにした熱処理装置の冷却方法において、
前記被処理体を収容する筒体状の処理容器と前記被処理体を加熱するために前記処理容器の外周側を囲むようにして設けた加熱炉との間に形成された所定の幅の冷却空間に、冷却気体を導入して前記処理容器を冷却すると共に昇温した前記冷却気体を排出するようにした冷却工程と、
前記冷却空間より排出される前記昇温した冷却気体中に降温用気体を導入して両気体の混合気体が所定の温度以下になるようにする混合工程と、
を有することを特徴とする熱処理装置の冷却方法。
【請求項16】
複数の被処理体に同時に熱処理を施すようにした熱処理装置の冷却方法において、
前記被処理体を収容する筒体状の処理容器と前記被処理体を加熱するために前記処理容器の外周側を囲むようにして設けた加熱炉との間に形成された所定の幅の冷却空間に、冷却気体を導入して前記処理容器を冷却すると共に昇温した前記冷却気体を排出するようにした冷却工程と、
前記冷却空間に向けて流れる前記冷却気体の一部をバイパスさせて該バイパスされた冷却気体を前記冷却空間より排出されて昇温している冷却気体中に導入して両気体の混合気体が所定の温度以下になるようにする混合工程と、
を有することを特徴とする熱処理装置の冷却方法。
【請求項17】
前記所定の温度は、前記混合気体が流れる下流側に設けられた熱交換器の耐熱温度であることを特徴とする請求項15又は16記載の熱処理装置の冷却方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−71357(P2011−71357A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221697(P2009−221697)
【出願日】平成21年9月26日(2009.9.26)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】