説明

熱拡散シート及びその実装方法

【課題】面方向の熱伝導率がよく、グラファイトシートよりも一回り大きい熱伝導性粘着層を放熱板へ貼り付けることでグラファイト部分が封止される構造をもち、信頼性のある安価で熱を放熱板へ伝熱させる特性を有する熱拡散シートを提供する。
【解決手段】熱拡散シート(10)は、グラファイトシート(3)主表面の両面に熱伝導性粘着層(2,5)を貼り合わせており、第1面の熱伝導性粘着層(2)はグラファイトシート(3)と実質的に同サイズであり、第2面の熱伝導性粘着層(5)は第1面の熱伝導性粘着層(2)よりも相対的に大きいサイズであり、グラファイトシート(3)より全周囲が突出しており、第1面及び第2面の熱伝導性粘着層(2,5)の粘着力は、初期と比較して、40℃で168時間暴露した後の粘着力減少率が20%以下であり、第1面及び第2面の熱伝導性粘着層(2,5)のポリマー成分の硬化物は、熱伝導率が0.6W/m・K以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)などの半導体部品の熱伝導部品、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶表示装置(LCD)などの画像表示装置の発熱部からの熱を拡散させる熱拡散シート及びその実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ(CPU)、トランジスタ、発光ダイオード(LED)などの半導体、パワーモジュール、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶表示装置(LCD)などは使用中に発熱し、その熱のため電子部品の性能が低下することがある。そのため発熱するような電子部品には放熱体が取り付けられる。グラファイトシートは面方向の熱伝導率が非常によいことが知られている。この熱伝導率を利用して放熱材料として活用することは従来から知られている。グラファイトシート単独ではもろく扱いにくいためフィルムで補強し、同時に電気絶縁性も付与している。実際に放熱シートを実装するには発熱体あるいは放熱体に仮固定する必要があり、その必要性から両面テープあるいはグラファイトシートに直接、粘着剤を載せて粘着層を設けることが提案されている(特許文献1)。グラファイトシートを発光ダイオードや液晶表示装置(LCD)に適用した例は特許文献2〜3で提案されている。
【0003】
一方、グラファイトシートは導電性があり、もろい性質があり、半導体などは電気回路上に実装される場合、導電性であるグラファイトシートから剥離したグラファイト粉が電気回路上に落ちて短絡することもある。このような問題を解決するため、特許文献4では、グラファイトシートの両面に支持フィルムを配置し、端面にスペーサーを入れて一体化することが提案されている。
【0004】
しかし、特許文献4では、粘着層自体は熱絶縁性であるため、熱伝導に関して更なる改良が必要である。一般的に両面テープは薄いフィルムが芯としてあり、その両面に粘着層が設けられているものが使われる場合が多い。グラファイトシートを補強するという意味が大きいが、フィルムが芯として挿入されていないとグラファイトシートが粘着層を構成している物質を吸収してしまうため経時変化で粘着力が低下する問題がある。とくにグラファイトシートに粘着層を直接設ける場合は、経時変化で粘着力が低下する現象が目立つ。また、両面テープ、粘着剤は熱伝導率が低いものが多く、せっかく面方向の熱伝導率が高いグラファイトシートを用いてもグラファイトシートに達するまでの材料の熱伝導率が低くては「熱を伝える」という効率面では好ましくはなかった。
【0005】
従来の技術では両面テープ、粘着剤、絶縁フィルムは熱伝導率が低いものが多く、せっかく横の熱伝導率が高いグラファイトシートを用いてもグラファイトシートに達するまでの材料の熱伝導率が低くては「熱を伝える」という効率からいえば問題があった。
【特許文献1】特開平11−317480号公報
【特許文献2】特開2007−108547号公報
【特許文献3】特開2008−028352号公報
【特許文献4】特開2007−044994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこれら従来の問題を改良し、面方向の熱伝導率がよく、グラファイトシートよりも一回り大きい熱伝導性粘着層を放熱板へ貼り付けることでグラファイト部分が封止される構造をもち、信頼性のある安価で熱を放熱板へ伝熱させる特性を有する熱拡散シート及びその実装方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱拡散シートは、グラファイトシート主表面の両面に熱伝導性粘着層を貼り合わせた熱拡散シートであって、
第1面の熱伝導性粘着層は前記グラファイトシートと実質的に同サイズであり、
第2面の熱伝導性粘着層は前記第1面の熱伝導性粘着層よりも相対的に大きいサイズであり、前記グラファイトシートより全周囲が突出しており、
前記第1面及び第2面の熱伝導性粘着層の粘着力は、初期と比較して、40℃で168時間暴露した後の粘着力減少率が20%以下であり、
前記第1面及び第2面の熱伝導性粘着層のポリマー成分の硬化物は、熱伝導率が0.6W/m・K以上であることを特徴とする。
【0008】
本発明の熱拡散シートの実装方法は、グラファイトシート主表面の両面に直接熱伝導性粘着層を貼り合わせた熱拡散シートを放熱板に実装する方法であって、
第1面の熱伝導性粘着層は前記グラファイトシートと実質的に同サイズであり、
第2面の熱伝導性粘着層は前記第1面の熱伝導性粘着層よりも相対的に大きいサイズであり、前記グラファイトシートより全周囲が突出しており、
前記第1面及び第2面の熱伝導性粘着層の粘着力は、初期と比較して、40℃で168時間暴露した後の粘着力減少率が20%以下であり、
前記第1面及び第2面の熱伝導性粘着層のポリマー成分の硬化物は、熱伝導率が0.6W/m・K以上であり、
前記グラファイトシートと実質的に同サイズの熱伝導性粘着層を放熱板に貼り付け、前記相対的に大きいサイズの熱伝導性粘着層の突出部を放熱板に貼り付けることにより前記グラファイトシートの端面部分を封止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱拡散シートは、直接グラファイトシートに熱伝導性粘着層を設けており、面方向の熱伝導率がよく、グラファイトシートよりも一回り大きい熱伝導性粘着層を放熱板へ貼り付けることでグラファイト部分が封止される構造をもち、信頼性のある安価で熱を放熱板へ伝熱させる特性を有する。また、放熱板に貼り付ける際にはグラフファイトシートの端面部分は封止され、実装後であってもグラファイトシートの端面からグラファイト粉が剥離又は崩壊による落脱がなく、電気回路上の実装においても短絡の心配がなく、信頼性がある熱拡散シートが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明の一実施例における熱拡散シートの断面図である。
【図2】図2は本発明の一実施例における熱拡散シートを放熱器に貼り付けた状態の断面図である。
【図3】図3は同実施例における熱拡散シートの製造工程で使用する打ち抜き型を示す平面図である。
【図4】図4Aは本発明の一実施例における熱拡散シートの製造工程平面図、図4Bは同断面図である。
【図5】図5は本発明の一実施例における熱拡散シートの製造工程断面図である。
【図6】図6Aは本発明の一実施例における熱拡散シートを放熱器に貼り付けた状態の平面図、図6Bは同断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の熱拡散シートは、グラファイトシート主表面の両面に直接熱伝導性粘着層を貼り合わせてあり、第1面の熱伝導性粘着層は前記グラファイトシートと実質的に同サイズであり、第2面の熱伝導性粘着層は前記第1面の熱伝導性粘着層よりも相対的に大きいサイズであり、前記グラファイトシートより全周囲が突出しており、前記グラファイトシートと実質的に同サイズの熱伝導性粘着層を放熱板に貼り付け、前記相対的に大きいサイズの熱伝導性粘着層の突出部を放熱板に貼り付けることにより前記グラファイトシートの端面部分が封止可能である。前記において、実質的とは±1mm以下を言う。
【0012】
熱伝導性粘着層はポリマー成分と熱伝導性フィラーを含む組成物であることが好ましい。ポリマー成分はポリシロキサン(シリコーンポリマー),ポリアクリル,ポリオレフィンであることが好ましい。耐熱性、フィラーの充填しやすさの点からポリシロキサンであることが好ましい。しかし、用途によってはポリシロキサンが嫌われる場合もあり用途によって適宜ポリマーは選択する。ポリマー分は硬化後ゴム弾性であることが好ましいが、保形性の有る粘着剤のようなものでもよい。特にシリコーン粘着剤はポリシロキサンの一種であるレジンとガムと呼ばれるもので構成され、耐熱性はポリアクリル,ポリオレフィンよりも高い。
【0013】
熱伝導性フィラーは金属酸化物,セラミックス粉体などがあり、フィラー自体は電気絶縁性であることが好ましい。金属酸化物,セラミックス粉体にはさまざまな種類,形状などがあり公知のものが使用できる。さらにこれらには表面処理をしてもよい。また、電気絶縁性のないフィラーに絶縁膜を生させ電気絶縁性を付与したフィラーとして使用することもできる。
【0014】
熱伝導性フィラーの添加量は、ポリマー成分100重量部に対してフィラー100〜3000重量部であることが好ましい。フィラーを添加しすぎると熱伝導性粘着層の粘着が低下するので熱伝導率とのバランスが大事である。
【0015】
ポリマー成分には必要に応じて可塑剤を添加してもよい。グラファイトシートはオイルを吸収しやすいためグラファイトシートに貼り合わせた熱伝導性粘着層の組成が変化し粘着が低下しやすくなるので、可塑剤としてオイルは極略避ける必要がある。
【0016】
ポリマー成分にはフィラー以外に難燃剤,耐熱剤,顔料,加硫剤,硬化剤を添加することができる。
【0017】
グラファイトシートは高分子フィルムをグラファイト化する方法と天然黒鉛,膨張黒鉛を粉末にし、圧延によってシート化する方法によって製造される。高分子フィルムをグラファイト化する方法は横方向の熱伝導率が高いという特徴がある。天然黒鉛,膨張黒鉛を粉末にし、圧延によってシート化する方法は安価であることが特徴である。熱拡散の用途の場合ある程度の熱伝導率があればよいので天然黒鉛,膨張黒鉛を粉末にし、圧延によってシート化する方法によるグラファイトシートを使うのが好ましい。
【0018】
相対的に大きいサイズの熱伝導性粘着層は、転写しやすくするためとグラファイトシート端面を完全に封止する必要性があることから、グラファイトシートよりも全周囲を1mm以上突出させるのが好ましい。より好ましくは2〜10mm、とくに好ましいのは3〜5mm突出させる。前記において、熱伝導性粘着層をグラファイトシートよりも全周囲を1mm以上突出させるとは、例えばグラファイトシートが4角形の場合は、熱伝導性粘着層の1辺の各々の端部がグラファイトシートより1mm以上長いことを言う。別の例として、グラファイトシートが円形の場合は、熱伝導性粘着層の半径がグラファイトシートの半径より1mm以上長いことを言う。
【0019】
熱伝導性粘着層の厚みは0.1〜5.0mmであることが好ましい。グラファイトシートの厚みは60〜500μmであることが好ましい。よって製品の総厚みは0.26〜10.5mmの範囲になるが、より好ましい厚みは0.1〜1.5mmである。前記の範囲であれば、半導体等の発熱部品に組み込むのに都合よい。
【0020】
グラファイトシート両表面の熱伝導性粘着層の粘着力は、初期と比較して、40℃で168時間暴露した後の粘着力減少率は20%以下が好ましい。これにより、長期間粘着力を保持できる。さらに好ましい粘着力減少率は10%以下である。また、熱伝導性粘着層の初期の粘着力は0.5〜10.0N/cmであることが好ましい。この範囲であれば放熱板に貼り付けやすく、剥離しにくい。
【0021】
前記熱伝導性粘着層の粘着力は、ポリシロキサン(シリコーンポリマー)の場合、(A)ビニル含有リニアシリコーンと、(B)ビニル官能性がなく(A)成分と相溶するシリコーンレジンと、(C)1分子中のSiH基数が平均で2.5〜4のシリコーンであってSiHとビニル基の比は0.3〜3.0と、(D)白金触媒と、(E)熱伝導性フィラーとを混合し、加硫することにより発現できる。
【0022】
グラファイトシートの両面の熱伝導性粘着層は同じ材料を貼り合わせても良いし、異なった材料を貼り合わせても良い。例えば、第1面の熱伝導性粘着層の粘着力と第2面の熱伝導性粘着層の粘着力と差があってもよい。好ましくはグラファイトシート実質的に同サイズの第1面の熱伝導性粘着層Aと、前記一回り大きい第2面の熱伝導性粘着層Bとでは、AはBの1〜10倍粘着力が高いことが好ましい。
【0023】
また、第1面の熱伝導性粘着層の硬度と第2面の熱伝導性粘着層の硬度と差にあっても良い。好ましくはグラファイトシート実質的に同サイズの第1面の熱伝導性粘着層Aと、前記一回り大きい第2面の熱伝導性粘着層Bとでは、AはBの0.5〜2倍硬度が高いことが好ましい。
【0024】
グラファイトシートの横方向の熱伝導率は120W/m・K以上であることがさらに熱拡散性を向上するために好ましい。
【0025】
グラファイトシートは40℃における放射度が0.3〜0.95であることが好ましい。放射度が高いと赤外線として空気中に熱が逃げる可能性が高いためである。グラファイトシート以外の部分、例えば両面テープやゴムの部分の放射度は0.5以上であることが好ましい。
【0026】
前記熱伝導性粘着層は、ポリマー成分としてポリシロキサン(シリコーンポリマー),ポリアクリル又はポリオレフィンを使用し、前記ポリマー成分に熱伝導性フィラーが添加されたコンパウンドから構成され、その硬化物の熱伝導率は0.6W/m・K以上であることが好ましい。熱伝導率が0.6W/m・K以上であれば、半導体等の発熱部品からの熱を効率的に拡散移動できる。この熱伝導率はポリマー成分と熱伝導性フィラーの種類及び添加量によって決めることができる。
【0027】
また、熱拡散シートの熱抵抗値は0.2〜5.0℃・cm2/Wであり、電気絶縁性が200MΩ以上であることが好ましい。熱抵抗値が前記の範囲であると、半導体等の発熱部品からの熱を効率的に拡散移動できる。また電気絶縁性が前記の範囲であると電気的短絡事故の発生も起きない。この熱抵抗値はポリマー成分と熱伝導性フィラーの種類及び添加量によって決めることができる。
【0028】
グラファイトシートの放射度はグラファイトシートの製造方法によって違ってくる。圧延など方法は表面が鏡面上になり放射度が低くなる。テープなどの高分子品は放射度が50%以上になる。近年は熱対策にサーモグラフを用いる場合が多い。そのサーモグラフを使う際に放射度を設定しないと精密な熱分析ができない。そのため放射度を明記することによって熱分析の手助けとなる。
【0029】
グラファイトシートに熱伝導性粘着層を載せる方法にはナイフコーター,圧延,プレス,ラミネート,スクリーン印刷などがありどれを用いてもよい。場合によっては熱伝導性粘着層材料を溶剤などで希釈しインク化してグラファイトシートに載せてもよい。
【0030】
グラファイトシートと熱伝導性粘着層の接着を強固にするため必要に応じてプライマー処理をしてもよい。プライマー処理剤は選択するポリマーの種類によって選択ができる。
【0031】
リール巻き仕様とは長尺の離型フィルム上に熱拡散シートが整然と並んだ仕様のことをいう。さまざまな仕様形態があるが長尺フィルム上に熱拡散シートが自己の粘着で保持され、熱拡散シートが所定の大きさに規則的にカットあるいは打ち抜きされているなど規則的に並んでおり,最終的には巻物形態になるのが好ましい。これによって熱拡散シートを貼る作業が自動化できる。
【0032】
次に図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施例における熱拡散シートの断面図である。この熱拡散シートは、グラファイトシート3の両面に直接熱伝導性粘着層2,5を貼り合わせている。熱伝導性粘着層2はグラファイトシート3と実質的に同サイズであり、反対面の熱伝導性粘着層5は熱伝導性粘着層2よりも相対的に大きいサイズであり、グラファイトシート3より4辺とも突出している。1,4は保護シートである。保護シート1はエンボス処理されたポリエチレンフィルムが好ましく、保護シート4は剥離処理されたポリエステルフィルムが好ましい。
【0033】
前記熱拡散シートを放熱器に貼り付ける際は、図2に示すように、まず保護シート1を剥ぎ取り、熱伝導性粘着層2を放熱器6に貼り付け、次いで保護シート4の上から手で押圧し、保護シート4を除去する。その結果、グラファイトシート3の端面部分が封止される。10は熱拡散シートである。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。本発明は下記の実施例に限定されない。
【0035】
熱伝導性粘着層は以下のように用意した。
【0036】
(熱伝導性粘着材料A)
シリコーンポリマー(XE14−C2068:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ)100重量部に対してアルミナ(AS20:昭和電工社)200重量部,酸化鉄5重量部添加しプラネタリーミキサーで10分脱泡しながら撹拌しコンパウンドとした。
【0037】
(熱伝導性粘着材料B)
ポリイソブチレンポリマ−(EP200A:カネカ社)100重量部に対してアルミナ(AS20:昭和電工社)200重量部,架橋剤(CR300:カネカ社)5重量部,白金触媒:PT−VTSC−3.0IPA(ユミコアプレシャスメタルズ・ジャパン社)0.3重量部,遅延剤:サーフィノール61(日信化学工業)0.1重量部,酸化鉄5重量部添加しプラネタリーミキサーで10分脱泡しながら撹拌しコンパウンドとした。
【0038】
(熱伝導性粘着材料C)
シリコーン粘着材(TSR1510:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)110重量部に対してアルミナ(AS20:昭和電工社)100重量部,酸化鉄5重量部,キシレン80重量部添加し、プラネタリーミキサーで10分撹拌して塗工液とした。
【0039】
(熱伝導性粘着材料D)
シリコーンポリマー(XE14−C2068:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ)100重量部に対してアルミナ(AS20:昭和電工社)100重量部,架橋剤(TSF484:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ)0.1重量部,酸化鉄5重量部添加しプラネタリーミキサーで10分脱泡しながら撹拌しコンパウンドとした。
【0040】
(粘着材料E)
シリコーン粘着材(TSR1510:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)110重量部に対してキシレン50重量部添加し塗工液とした。
【0041】
粘着材料と熱伝導粘着材料1〜4の物性を表1にまとめて示す。
【0042】
【表1】

【0043】
(備考)
硬度 :ASTM D2240 タイプCで測定。
熱伝導率:ASTM D5470
粘着力 :JIS Z0237(被接着体 アルミ板)
粘着力測定のための試験サンプルは以下のように作成した。
【0044】
(実験番号1及び2)
フッ素離型処理をしたポリエステルフィルムと厚み100μmの無処理のポリエステルフィルムに熱伝導性粘着材料を挟み無処理のポリエステルフィルム面から5MPでプレス加圧をして押圧し、120℃で60分加熱した。冷却後、フッ素離型処理をしたポリエステルフィルムを剥がすことにより、0.2mm厚の熱伝導性粘着層を無処理のポリエステルフィルムに貼り合わせた。
【0045】
(実験番号3及び4、5)
塗工液をナイフコートで厚み100μmの無処理のポリエステルフィルムに塗工した。これを30分風乾し、さらに120℃で10分硬化させた。粘着層の厚みは50μmとした。
【0046】
上記、熱伝導性粘着材料,粘着材料の他、以下グラファイトシートを用意した。グラファイトシート(TYKグラファイトシート:明智セラミックス社)厚み:80μm,250μm、熱伝導率:400W/m・K、放射度:0.40。放射度は表面温度40℃において、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR,日本電子社製JIR−5500型,赤外放射ユニットIR−IRR200、検出器MCT,測定波長範囲4.5〜20μm、分解能16cm-1、積算回数500回)を用いて積分放射度として求めた。次に、以下の実施例のように熱拡散シートを作成した。
【0047】
(実施例1〜4)
実施例1〜4は、同一種類で大きさの異なる熱伝導性粘着層をグラファイト層の上下に挟んだ例を示す。フッ素離型処理をしたポリエステルフィルム上の前記熱伝導性粘着材料Aの層(実施例1〜2)あるいはB(実施例3〜4)とグラファイトシートをラミネート加工し、その上に0.25mmの厚さの前記熱伝導性粘着層A(実施例1〜2)あるいはB(実施例3〜4)を設けた。図4A−Bを用いて説明すると、ポリエステルフィルム1の上に熱伝導性粘着層2を設け、その上に熱伝導性粘着層2と同一の大きさのグラファイトシート3をラミネート加工により位置あわせして重ねて積層した。フッ素離型処理をしたポリエステルフィルム上の熱伝導性粘着層5を図4A−Bのグラファイトシート3よりも4辺とも各5mm大きいもので打ち抜き、バリ部を除去した。グラファイトシートの大きさは、幅25mm、長さ100mm、厚さは表2に示すとおりである。図5において、4はフッ素処理したポリエステルフィルム、5は熱伝導性粘着層5である。図4A−Bの積層シートと図5の積層シートを貼り合わせることで、図1の積層シートが得られた。
【0048】
得られた熱拡散シートの特性は、表2にまとめて示す。
【0049】
(比較例1〜4)
各厚みのグラファイトシートに前記粘着材料E、又は前記熱伝導性粘着材料Cをナイフコートで塗工した。これを30分風乾し、さらに120℃で10分硬化させた。粘着厚みは50μmであった。その粘着面にフッ素離型フィルムを貼った。図1を用いて説明すると、グラファイトシート3の上に前記粘着材料E、又は前記熱伝導性粘着材料C(2)を形成し、その上にポリエステルフィルム1を貼り付けた。これ以外は実施例1〜4と同じである。
【0050】
これらの方法で得た熱拡散シートの実験結果を以下の表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
測定方法は以下のようにおこなった。
(熱抵抗値)
ASTM D5470にしたがった。
(LEDの温度)
5Wの出力のあるLEDと電源(電流0.6A 電圧10V)で回路を作った。幅35mm、長さ110mm、厚さ5mmのステンレス板上の中央に実験例1〜4,比較例1〜2にて作成した幅25mm、長さ100mmの熱拡散シートを置いた。LED1個を熱拡散シートの粘着性を利用して固定した。LEDの大きさは幅8mm、長さ10mm、厚さ2.5mmであり、このLEDの固定場所は、幅25mm、長さ100mmの熱拡散シートの中心部(中央部)とした。電源を入れて2時間後にLEDの発熱温度をサーモグラフ(アピステ社製)で測定した。
(粘着力)
測定方法はJIS Z0237にしたがった。熱拡散シートを粘着させるための被接着体はアルミ板とした。暴露は実験例1〜4,比較例1〜4にて作成した幅25mm、長さ100mmの熱拡散シートの粘着面を剥き出しかつ上面にして100℃、168時間熱風循環式オーブンで暴露した。
【0053】
(実施例5,6)
実施例5〜6は、異なった種類で大きさの異なる熱伝導性粘着層をグラファイト層の上下に挟んだ例を示す。グラファイトシートに粘着材料、熱伝導性粘着材料Dをナイフコートで塗工した。これを30分風乾し、さらに120℃で10分硬化させた。粘着厚みは50μmであった。その粘着面にフッ素離型フィルムを貼った。これのグラファイトシート面から、図3に示す打ち抜き型7で熱伝導性粘着側のポリエステルフィルムを離型台紙にして打ち抜いた。続いてバリの部分は除去した。得られたシートの平面図を図4Aに示し、断面図を図4Bに示す。図4A−Bにおいて、1はフッ素処理したポリエステルフィルム、2は熱伝導性粘着層D、3はグラファイトシートである。
【0054】
フッ素離型処理をしたポリエステルフィルム上の熱伝導性粘着層Aを図3の刃よりも4辺とも各5mm大きいもので打ち抜き、バリ部を除去した。グラファイトシートの大きさは、縦25mm、横
100mm、厚さは表3に示すとおりである。図5において、4はフッ素処理したポリエステルフィルム、5は熱伝導性粘着層Aである。図4A−Bの積層シートと図5の積層シートを貼り合わせることで、図1の積層シートが得られた。
【0055】
得られた熱拡散シート10を放熱装置6とLEDからなるライトバー11に応用した例を図6A−Bに示す。図6はLEDからなるライトバー11と放熱器6との間に熱拡散シート部分10を介在させたときの平面図である。図6Bは同断面図である。12は放熱装置である。熱拡散シート10は、図2に示す状態で放熱器6に貼り付けられている。ライトバー11から発生する熱は、熱拡散シート10を通過して放熱器6に効率よく移動した。熱拡散シートは均熱化にも優れていた。
【0056】
(比較例5,6)
比較例5,6においては、グラファイトシートの片面を両面テープ、もう片面を片面粘着材付きフィルムで貼った熱拡散シートも作成した。グラファイトシートに厚さ30μmの両面テープを貼り、もう片面に同じ厚みの片面粘着材付きフィルムを貼った。
【0057】
実施例5,6と比較例5,6の条件と結果を表3にまとめて示す。
【0058】
【表3】

【0059】
(絶縁性)
オームメータにて熱拡散シートの端面に端子をあてたときの抵抗値を測定した。
【0060】
(考察)
(1)実施例1,2はグラファイトシートに直接、熱伝導性粘着材を載せた例である。グラファイトシートに直接、熱伝導性粘着材を載せたにもかかわらず経時的な粘着力の低下は小さかった。一方、比較例1,2のシリコーン粘着材を直接グラファイトシートに貼り合わせた例ではグラファイトシートがシリコーン粘着材に含有される可塑剤を吸収するため、粘着力が経時的に低下した。
(2)実施例1,2はシリコーンポリマーの一種であるシリコーンゴムにフィラーを添加したもので比較例3,4はシリコーンポリマーの一種であるシリコーン粘着材にフィラーを添加したものである。両例ともポリマー成分に対してフィラーが添加されているにもかかわらず、実施例1,2は経時的な粘着力の低下は小さかった。それに対して比較例3,4は顕著に粘着力が経時的に低下した。
しかも、実施例1,2は比較例3,4に対してベースポリマーに対するフィラー添加量が多いにもかかわらず経時的な粘着力の低下は小さかった。
同様にポリマー成分としてイソブチレンポリマーを使用した実施例3,4でも経時的な粘着力の低下は小さかった。実施例3,4は比較例3,4に対してベースポリマーに対するフィラー添加量が多いにもかかわらず経時的な粘着力の低下は小さかった。
(3)実施例1〜6の熱伝導性粘着材料の熱伝導率は比較例1,2よりも高いため実施例1〜6の熱抵抗値は比較例1,2よりも低くなった。それら伴いLEDの温度は、実施例1〜6は比較例1,2よりも低くなった。
(4)実施例1〜4は比較例3,4と比較するとLEDの温度は若干高い。しかしながら、比較例3,4は粘着力が経時的に低下したため、好ましくなかった。
(5)比較例5,6はグラファイトシートの片面には厚さ30μmの両面テープ(熱伝導率0.3W/m・k)が貼ってあり、その反対面は厚み30μmの片面粘着材付きフィルム(熱伝導率0.3W/m・k)が貼ってある。そのため熱伝達の邪魔になる厚さ30μmの両面テープと片面粘着付きフィルムにより、実施例5,6は比較例5,6と比較して熱抵抗値は低く、LED温度も低い数値となった。
【符号の説明】
【0061】
1,4 保護シート
2,5 熱伝導性粘着層
3 グラファイトシート
6 放熱器
7 打ち抜き型
10 熱拡散シート
11 ライトバー
12 放熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラファイトシート主表面の両面に熱伝導性粘着層を貼り合わせた熱拡散シートであって、
第1面の熱伝導性粘着層は前記グラファイトシートと実質的に同サイズであり、
第2面の熱伝導性粘着層は前記第1面の熱伝導性粘着層よりも相対的に大きいサイズであり、前記グラファイトシートより全周囲が突出しており、
前記第1面及び第2面の熱伝導性粘着層の粘着力は、初期と比較して、40℃で168時間暴露した後の粘着力減少率が20%以下であり、
前記第1面及び第2面の熱伝導性粘着層のポリマー成分の硬化物は、熱伝導率が0.6W/m・K以上であることを特徴とする熱拡散シート。
【請求項2】
前記第1面の熱伝導性粘着層の粘着力と第2面の熱伝導性粘着層の粘着力とは差があり、前記第1面の熱伝導性粘着層の粘着力の方が高い請求項1に記載の熱拡散シート。
【請求項3】
前記第1面の熱伝導性粘着層の硬度と第2面の熱伝導性粘着層の硬度とは差があり、前記第1面の熱伝導性粘着層の硬度の方が高い請求項1に記載の熱拡散シート。
【請求項4】
前記グラファイトシートは、40℃における放射度が0.3〜0.95である請求項1に記載の熱拡散シート。
【請求項5】
前記熱伝導性粘着層のポリマー成分がポリシロキサン,ポリアクリル及びポリオレフィンから選ばれる少なくとも一つのポリマーであり、前記ポリマー成分に熱伝導性フィラーが添加されたコンパウンドである請求項1に記載の熱拡散シート。
【請求項6】
前記熱拡散シートの熱伝導性粘着層の初期の粘着力が0.5〜10.0N/cmの範囲である請求項1に記載の熱拡散シート。
【請求項7】
前記熱拡散シートの熱抵抗値が0.2〜5.0℃・cm2/Wの範囲である請求項1に記載の熱拡散シート。
【請求項8】
前記熱拡散シートの電気絶縁性が200MΩ以上である請求項1に記載の熱拡散シート。
【請求項9】
前記第2面の熱伝導性粘着層は、前記第1面の熱伝導性粘着層よりも全周囲が1mm以上突出している請求項1に記載の熱拡散シート。
【請求項10】
前記熱拡散シートは、リール巻きされている請求項1に記載の熱拡散シート。
【請求項11】
グラファイトシート主表面の両面に直接熱伝導性粘着層を貼り合わせた熱拡散シートを放熱板に実装する方法であって、
第1面の熱伝導性粘着層は前記グラファイトシートと実質的に同サイズであり、
第2面の熱伝導性粘着層は前記第1面の熱伝導性粘着層よりも相対的に大きいサイズであり、前記グラファイトシートより全周囲が突出しており、
前記第1面及び第2面の熱伝導性粘着層の粘着力は、初期と比較して、40℃で168時間暴露した後の粘着力減少率が20%以下であり、
前記第1面及び第2面の熱伝導性粘着層のポリマー成分の硬化物は、熱伝導率が0.6W/m・K以上であり、
前記グラファイトシートと実質的に同サイズの熱伝導性粘着層を放熱板に貼り付け、前記相対的に大きいサイズの熱伝導性粘着層の突出部を放熱板に貼り付けることにより前記グラファイトシートの端面部分を封止することを特徴とする熱拡散シートの実装方法。
【請求項12】
前記グラファイトシートの横方向の熱伝導率が120W/m・K以上である請求項11に記載の熱拡散シートの実装方法。
【請求項13】
前記グラファイトシートは、40℃における放射度が0.3〜0.95である請求項11に記載の熱拡散シートの実装方法。
【請求項14】
前記熱伝導性粘着層のポリマー成分がポリシロキサン,ポリアクリル及びポリオレフィンから選ばれる少なくとも一つのポリマーであり、前記ポリマー成分に熱伝導性フィラーが添加されたコンパウンドである請求項11に記載の熱拡散シートの実装方法。
【請求項15】
前記熱拡散シートの熱伝導性粘着層の初期の粘着力が0.5〜10.0N/cmの範囲である請求項11に記載の熱拡散シートの実装方法。
【請求項16】
前記熱拡散シートの熱抵抗値が0.2〜5.0℃・cm2/Wの範囲である請求項11に記載の熱拡散シートの実装方法。
【請求項17】
前記熱拡散シートの電気絶縁性が200MΩ以上である請求項11に記載の熱拡散シートの実装方法。
【請求項18】
前記第2面の熱伝導性粘着層は、前記第1面の熱伝導性粘着層よりも全周囲が1mm以上突出している請求項11に記載の熱拡散シートの実装方法。
【請求項19】
前記熱拡散シートは、リール巻きされている請求項11に記載の熱拡散シートの実装方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−149509(P2010−149509A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262906(P2009−262906)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000237422)富士高分子工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】