説明

熱硬化性エポキシ樹脂組成物及び光半導体装置

【課題】長期間に亘り反射性、耐熱性、耐光性を保持し、機械的強度に優れた硬化物を与える熱硬化性エポキシ樹脂組成物、該組成物の硬化物からなる反射部材、及び該反射部材を有する光半導体装置を提供する。
【解決手段】(A)(A−1)トリアジン誘導体エポキシ樹脂と(A−2)酸無水物との組み合わせ、又はこれらを反応させて得られるプレポリマーであって、〔(A−1)成分が有するエポキシ基〕/〔(A−2)成分が有する酸無水物基〕のモル比が0.6〜2.0である組み合わせ又はプレポリマー、(B)ガラス繊維、(C)内部離型剤、(D)反射向上剤、(E)無機充填剤、及び(F)硬化触媒を所定量含み、上記(B)成分の平均長が50〜400μm、平均直径が5.0〜25μmである熱硬化性エポキシ樹脂組成物;上記組成物の硬化物からなる光半導体装置用反射部材;上記組成物の硬化物からなる反射部材と光半導体素子とを有する光半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型性、流動性、高温保管時の信頼性に優れると共に、良好な耐光性を有し、熱による変色、特に黄変を抑えて、反射性に優れた硬化物を与える熱硬化性エポキシ樹脂組成物、該組成物の硬化物からなる光半導体装置用反射部材、及び該反射部材と発光素子、受光素子その他の光半導体素子とを有する光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体・電子機器装置の封止材及び反射部材への信頼性要求は、薄型化、小型化と共に、高出力化によって、益々厳しくなっている。一例として、LEDやLD(lazer diode)等の半導体素子は、小型で効率よく鮮やかな色の発光をし、また半導体素子であるため球切れがなく、駆動特性が優れ、振動にもON/OFF点灯の繰り返しにも強い。そのため、各種インジケータ及び種々の光源として利用されている。
【0003】
このような半導体素子を用いたフォトカプラー等の半導体・電子機器装置の材料のひとつとして、ポリフタルアミド樹脂(PPA)が現在広く使用されている。
【0004】
しかしながら、今日の光半導体技術の飛躍的な進歩により、光半導体装置の高出力化及び短波長化が著しく、高エネルギー光を発光又は受光可能なフォトカプラー等の光半導体装置では、特に無着色・白色の材料として従来のPPA樹脂を用いた半導体素子封止体及びプレモールドパッケージでは、長期間使用による劣化が著しく、色ムラの発生、剥離、機械的強度の低下等が起こりやすく、このため、このような問題を効果的に解決することが望まれている。
【0005】
更に詳述すると、特許第2656336号公報(特許文献1)には、封止樹脂が、エポキシ樹脂、硬化剤及び硬化促進剤を構成成分とするBステージ状の光半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、上記構成成分が分子レベルで均一に混合されている樹脂組成物の硬化体で構成されていることを特徴とする光半導体装置が記載されている。この場合、エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂が主として用いられ、トリグリシジルイソシアネート等を使用し得ることも記載されているが、トリグリシジルイソシアネートは、実施例においてビスフェノール型エポキシ樹脂に少量添加使用されているもので、本発明者らの検討によれば、このBステージ状半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、特に高温・長時間の放置で黄変するという問題がある。
【0006】
また、発光素子封止用エポキシ樹脂組成物におけるトリアジン誘導体エポキシ樹脂の使用については、特開2000−196151号公報(特許文献2)、特開2003−224305号公報(特許文献3)、特開2005−306952号公報(特許文献4)に記載があるが、これらは、いずれもトリアジン誘導体エポキシ樹脂と酸無水物とを用いてBステージ化したものではない。更に、トリアジン誘導体エポキシ樹脂と酸無水物との組み合わせでは機械的強度が低いという欠点がある。
【0007】
なお、本発明に関連する公知文献としては、上記の公報に加えて、下記特許文献5〜7及び非特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2656336号公報
【特許文献2】特開2000−196151号公報
【特許文献3】特開2003−224305号公報
【特許文献4】特開2005−306952号公報
【特許文献5】特許第3512732号公報
【特許文献6】特開2001−234032号公報
【特許文献7】特開2002−302533号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】エレクトロニクス実装技術2004.4の特集
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、長期間に亘り反射性(即ち、白色性)、耐熱性、耐光性を保持し、機械的強度に優れた硬化物を与える熱硬化性エポキシ樹脂組成物、該組成物の硬化物からなる反射部材、及び該反射部材を有する光半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。即ち、本発明は第一に、
(A)(A−1)トリアジン誘導体エポキシ樹脂と(A−2)酸無水物との組み合わせ、又はこれらを反応させて得られるプレポリマーであって、〔(A−1)成分が有するエポキシ基〕/〔(A−2)成分が有する酸無水物基〕のモル比が0.6〜2.0である組み合わせ又はプレポリマー、
(B)ガラス繊維、
(C)内部離型剤、
(D)反射向上剤、
(E)無機充填剤、及び
(F)硬化触媒
を含有し、
上記(A−1)成分と(A−2)成分の合計100質量部に対して、
前記(B)成分を10〜200質量部、
前記(C)成分を0.2〜10.0質量部、
前記(D)成分を50〜800質量部、
前記(E)成分を50〜1,000質量部、そして、
前記(F)成分を0.05〜5.0質量部
含む熱硬化性エポキシ樹脂組成物であって、
上記(B)成分のガラス繊維の平均長が50〜400μm、平均直径が5.0〜25μmである前記組成物を提供する。
【0012】
この熱硬化性エポキシ樹脂組成物によれば、長期間に亘り白色性、耐熱性、耐光性を保持し、機械的強度に優れた硬化物が得られる。
【0013】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は、白色性が高いために光反射性に優れているので、光半導体装置に用いられる反射部材として有用である。即ち、本発明は第二に、上記組成物の硬化物からなる光半導体装置用反射部材を提供する。
【0014】
また、本発明は第三に、上記組成物の硬化物からなる反射部材と光半導体素子とを有する光半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、流動性、耐リフロー性、高温保管時の信頼性、離型性に優れると共に、機械的強度に優れ、長期間に亘り耐光性を保持し、均一で且つ黄変の少ない硬化物を与えるものである。また、本組成物の硬化物は、特に機械的強度に優れ、光による変色が起こり難く、リフロー後に良好な反射性を有するのでプレモールドパッケージ等の反射部材に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の組成物で形成したプレモールドパッケージに半導体素子を搭載し樹脂封止した半導体装置の概略断面図である。
【図2】基板とサブマウントの一部の表面を、本発明の組成物で形成した被膜状反射部材で被覆したフリップチップ型LED素子構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<(A)エポキシ樹脂−酸無水物の組み合わせ、又はそれらの反応生成物(プレポリマー)>
本発明に係る熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、(A−1)トリアジン誘導体エポキシ樹脂と(A−2)酸無水物とを、〔(A−1)成分が有するエポキシ基〕/〔(A−2)成分が有する酸無水物基〕のモル比0.6〜2.0で反応させて得られた反応生成物を樹脂成分として使用する。
【0018】
−(A−1)トリアジン誘導体エポキシ樹脂−
(A−1)成分のトリアジン誘導体エポキシ樹脂を(A−2)酸無水物と特定の割合で反応させて得られるプレポリマーを樹脂成分として本発明に係る熱硬化性エポキシ樹脂組成物に添加することにより、該組成物の硬化物の黄変が抑制され、且つ経時劣化の少ない光半導体装置が実現する。かかるトリアジン誘導体エポキシ樹脂は、1,3,5−トリアジン誘導体エポキシ樹脂(例えば、イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂、シアヌレート環含有エポキシ樹脂等)であることが好ましい。特にイソシアヌレート環を有するエポキシ樹脂は、耐光性及び電気絶縁性に優れており、1つのイソシアヌレート環に対して、2価の(即ち、2個の)、より好ましくは3価の(即ち、3個の)エポキシ基を有することが望ましい。具体的には、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(γ−グリシドキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(α−メチルグリシジル)イソシアヌレート等を用いることができる。
【0019】
(A−1)成分のトリアジン誘導体エポキシ樹脂の軟化点は90〜125℃であることが好ましい。なお、本発明において、(A−1)成分のトリアジン誘導体エポキシ樹脂は、トリアジン環を水素化したものを包含しない。(A−1)成分のトリアジン誘導体エポキシ樹脂は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0020】
−(A−2)酸無水物−
本発明で用いられる(A−2)成分の酸無水物(即ち、カルボン酸無水物)は、硬化剤として作用する。該酸無水物は、硬化物に耐光性が与えられるよう、非芳香族であり、且つ炭素炭素二重結合を有しないものが好ましく、例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、水素化メチルナジック酸無水物などが挙げられる。これらの中でもメチルヘキサヒドロ無水フタル酸がより好ましい。(A−2)成分の酸無水物は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0021】
酸無水物の配合量としては、〔(A−1)成分が有するエポキシ基〕/〔(A−2)成分が有する酸無水物基〕のモル比が0.6〜2.0、好ましくは1.0〜2.0、更に好ましくは1.2〜1.6となる量である。このモル比が0.6未満では硬化不良が生じ易く、信頼性が低下することがある。また、2.0を超えると、未反応の酸無水物が硬化物中に残り、得られる硬化物の耐湿性を悪化させる場合がある。
【0022】
(A)成分のプレポリマーは例えば次のようにして調製される。
(i)(A−1)成分及び(A−2)成分を、又は、(A−1)成分、(A−2)成分、及び後述する酸化防止剤を、予め70〜120℃、好ましくは80〜110℃にて4〜20時間、好ましくは6〜15時間反応させる。あるいは、(ii)(A−1)成分、(A−2)成分及び(F)成分の硬化触媒を、又は、(A−1)成分、(A−2)成分、後述する酸化防止剤、及び(F)成分の硬化触媒を、予め30〜80℃、好ましくは40〜60℃にて10〜72時間、好ましくは36〜60時間反応させる。こうして、(A)成分たるプレポリマーを含む固形物を得る。該固形物は、軟化点が50〜100℃であることが好ましく、より好ましくは60〜90℃である。これを粉砕して他の成分と配合して組成物を調製することが好ましい。
【0023】
上記固形物の軟化点が50〜100℃の範囲にあることは取り扱い、作業性の点で望ましい。この軟化点が低すぎると固形物であっても取り扱いにくく、高すぎると加熱したときに望ましい適度の流動性が得難い。軟化点は反応生成物中の高分子成分の量及び分子量によるので、適度の軟化点が得られるように反応温度と反応時間を選択することが望ましい。なお、本発明において、軟化点はJIS K 2207に規定の軟化点試験方法(環球法)に準拠して測定された値である。
【0024】
ここで得られた固形物は、(A−1)成分のトリアジン誘導体エポキシ樹脂と(A−2)成分の酸無水物とのプレポリマーを主成分とするものであるが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分析において(但し、試料濃度:0.2質量%、注入量:50μl、移動相:100%THF、流量:1.0ml/min.、温度:40℃という分析条件下、検出器としてRI(示差屈折計)を用いて測定)、ポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、単に「平均分子量」という)が1,500を超える高分子量成分と、平均分子量300〜1,500までの中分子量成分と、モノマー成分と、を含有し、高分子量成分が20〜70質量%、中分子量成分が10〜60質量%、モノマー成分が10〜40質量%であることが好ましい。モノマー成分の存在は、プレモールドパッケージ等を成形するために上記固形物を加熱したときの流動性を良好にする。
【0025】
上記固形物は、(A−1)成分としてトリグリシジルイソシアヌレート(即ち、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート)を用いた場合、下記式(1)で示されるプレポリマーを含有し、特に(A−2)成分の酸無水物がメチルヘキサヒドロ無水フタル酸である場合、下記式(2)で示されるプレポリマーを含有する。
【0026】
【化1】

【0027】
【化2】

【0028】
上記式中、R1は酸無水物残基を示し、mは0〜200、好ましくは0〜100の数である。上記式(1)または(2)で表されるプレポリマーは、通常、平均分子量が500〜10万であるが、該プレポリマーを含む固形物は、上述したように、分子量が300〜1,500の中分子量成分を10〜60質量%、特に10〜40質量%、モノマー成分(未反応エポキシ樹脂及び酸無水物)を10〜40質量%、特に15〜30質量%含有することが好ましい。
【0029】
<(B)ガラス繊維>
本発明のエポキシ樹脂組成物には、ガラス繊維を配合する。(B)成分のガラス繊維は、硬化物の機械的強度を高めるために配合するものである。(B)成分は1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0030】
(B)成分のガラス繊維は、溶融ガラスを種々の方法にて延伸しながら急冷し、所定直径の細い繊維状としたものである。(B)成分のガラス繊維には、単繊維同士を集束剤で集束させたストランドを均一に引き揃えて束にしたロービング、およびストランド、ロービング等の粉砕物等が含まれる。(B)成分のガラス繊維としては、例えば、Eガラスからなるチョップドストランドが用いられる。
【0031】
(B)成分のガラス繊維の平均直径は5.0〜25μm、好ましくは8.0〜15μmである。平均直径が細過ぎると硬化物の機械的強度が十分に向上しないことがあり、また太過ぎると組成物の製造時に作業性が低下することがある。
【0032】
また、エポキシ樹脂組成物の製造時に添加するガラス繊維の長さは、該組成物中に残るガラス繊維の長さに影響する要素の一つとして重要である。本発明において、(B)成分としてエポキシ樹脂組成物の製造時に添加するガラス繊維の平均長は50〜400μm、好ましくは60〜300μmである。(B)成分の平均長が上記の範囲内であると、得られるエポキシ樹脂組成物中に存在するガラス繊維の長さは、該組成物の成形時に影響を与えず、かつ、得られる硬化物が機械的強度を維持することができる長さになりやすい。エポキシ樹脂組成物の製造時に添加するガラス繊維の平均長が短すぎると、得られる組成物中に残るガラス繊維の長さが短くなりすぎ、得られる硬化物の機械的強度が低下してしまうことがある。またエポキシ樹脂組成物の製造時に添加するガラス繊維の平均長が長すぎると組成物の製造時に作業性が低下することがある。
【0033】
ガラス繊維の平均長及び平均直径はそれぞれ、電子顕微鏡観察によって測定したガラス繊維の長さの平均値及び直径の平均値である。測定に用いられるガラス繊維の本数は例えば100本である。
【0034】
(B)成分のガラス繊維の充填量は、(A−1)トリアジン誘導体エポキシ樹脂と(A−2)酸無水物の総量100質量部に対し、10〜200質量部であり、15〜100質量部が好ましい。10質量部未満では十分な機械的強度を有する硬化物が得難く、200質量部を超えると未充填及びボイドが発生し易いなどの理由で、成形性が低下し易い。
【0035】
<(C)内部離型剤>
本発明のエポキシ樹脂組成物には、内部離型剤を配合する。(C)成分の内部離型剤は、成形時の離型性を高めるために配合するものである。(C)成分は1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
(C)成分の内部離型剤としては、下記一般式(3):
【0036】
【化3】


〔式中、R1、R2、R3は、独立に、H、−OH、−OR、又は−OCOCabであり、R1、R2、R3の少なくともひとつは−OCOCabである。RはCn2n+1のアルキル基(nは1〜30の整数である。)、aは10〜100の整数、bは17〜201の整数である。〕
で示され、且つ融点が50〜70℃の範囲である化合物を含むことが好ましい。
【0037】
内部離型剤としては、カルナバワックス等の天然ワックス;酸ワックス、ポリエチレンワックス、脂肪酸エステル等の合成ワックスが知られているが、これらの多くは一般的に高温条件下又は光照射下では、容易に黄変し、また、経時劣化して離型性を喪失する。これに対して、上記一般式(3)で表される化合物は、高温放置下及び光照射下においても、黄変性が低く、且つ長期間に亘り良好な離型性を継続して保持する。
【0038】
一般式(3)中のR1、R2及びR3のうち、少なくともひとつは−OCOCabであることが必須である。すべてが−OHでは、十分な離型性、耐熱性が得られないが、構造内に−OCOCabを含むことにより、他の成分、特に前記プレポリマーとの良好な相溶性、硬化物の良好な耐熱性及び離型性が得られる。
【0039】
−OCOCabに含まれるaは10〜100の整数であり、好ましくは10〜30の整数であり、より好ましくは11〜20の整数である。aが10未満では、十分な耐熱黄変性が得られない場合があり、aが100を超えると他の成分と十分に相溶せず、良好な離型効果が得られない場合がある。
【0040】
abは飽和あるいは不飽和の脂肪族炭化水素基である。不飽和の場合には、不飽和結合を1個又は2個有するものが好ましく、従ってb=2a+1、2a−1又は2a−3であることが好ましく、特にb=2a+1又は2a−1であることが好ましい。この点からbは17〜201の整数であり、好ましくは19〜61の整数であり、より好ましくは21〜61の整数であり、特に好ましくは23〜41の整数である。
【0041】
具体的には、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノ12−ヒドロキシステアレート、グリセリントリ12−ヒドロキシステアレート、グリセリンモノベヘネート等のグリセリン脂肪酸エステル;プロピレングリコールモノパルミテート、プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールモノベヘネート等のプロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0042】
但し、融点、高温での揮発分も耐熱性に影響を与える重要なファクターである。融点は好ましくは50〜90℃であり、より好ましくは65〜85℃である。また、250℃での揮発分が10質量%以下のものが好ましい。融点が50〜90℃であると、他の成分との相溶性が十分になりやすく、良好な離型効果が発現しやすく、また、十分な耐熱黄変性を有する硬化物が得やすい。特に組成物中での分散性、他の成分との相溶性の面から融点50〜70℃のグリセリン脂肪酸エステル(具体的には、グリセリンモノステアレート)及びプロピレングリコール脂肪酸エステル(具体的には、プロピレングリコールモノベヘネート)が好ましい。
【0043】
(C)成分の内部離型剤は、上記一般式(3)で表される化合物を20〜100質量%、特に50〜100質量%の割合で含有することが好ましい。
【0044】
(C)成分の内部離型剤として、上記一般式(3)で表される化合物に他の化合物を併用する場合には、下記一般式(4):
−COO−R (4)
(式中、R4とR5はCn2n+1で示される同一又は異種のアルキル基であり、nは1〜30、好ましくは2〜28、更に好ましくは5〜25の整数である。)
で示されるカルボン酸エステルと併用することが好ましい。その他の離型剤としては、上述した天然ワックス、酸ワックス、他の合成ワックス等が挙げられる。
【0045】
上記一般式(4)のカルボン酸エステルも、高温放置下及び光照射下においても、黄変性が低く、且つ長期間に亘り良好な離型性を継続して保持するものである。この場合、一般式(4)のカルボン酸エステル:一般式(3)の化合物の質量比は、好ましくは1:5〜10:1、より好ましくは1:4〜8:1である。該質量比が上記範囲内であると、硬化物と金属フレームとの接着性及び硬化物の機械的強度を維持しやすい。
【0046】
(C)成分の内部離型剤の添加量は、(A−1)トリアジン誘導体エポキシ樹脂と(A−2)酸無水物の総量100質量部に対し、0.2〜10.0質量部であり、0.5〜5.0質量部が好ましい。該添加量が0.2質量部未満では、十分な離型性が得られない場合があり、10.0質量部を超えると、硬化不良のために十分な離型性が得られない場合があり、また、金属フレームとの接着性不良等が起こる場合がある。
【0047】
<(D)反射向上剤>
本発明のエポキシ樹脂組成物には、反射向上剤を配合する。(D)成分の反射向上剤は、白色着色剤として、硬化物の白色性を高めることにより硬化物表面における光反射性を高めるために配合するものである。(D)成分は1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0048】
反射向上剤としては白色顔料が好ましく、中でも二酸化チタンが好ましく、特に耐候性の点でルチル型が好ましい。二酸化チタン以外の白色顔料としてはチタン酸カリウム、酸化ジルコン、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等を挙げることができる。二酸化チタン以外の白色原料は二酸化チタンと併用することが好ましい。
【0049】
特に限定されないが、(D)成分の平均粒径は典型的には0.05〜5.0μmである。ここで、平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における累積質量平均値D50(又はメジアン径)として求めることができる。
【0050】
上記二酸化チタンを初めとして、(D)成分の反射向上剤は樹脂成分及び無機充填剤との混合性及び分散性並びに耐候性を高めるため、Al化合物、Si化合物、ポリオール等の無機物及び/又は有機物で予め表面処理したものでもよく、特にAl化合物、Si化合物及びポリオールの少なくとも1種で処理することが好ましい。Al化合物としては、例えば、アルミン酸ナトリウム等が挙げられる。Si化合物としては、例えば、アルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物などの有機ケイ素化合物等が挙げられる。ポリオールとしては、例えば、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0051】
また、本発明の(D)成分には、鉛の含有量が少ない二酸化チタンを使用することが好ましい。環境対策の面で鉛の含有量が多い二酸化チタンは使用が規制されることがある他、意外にもエポキシ樹脂硬化物の光反射性にも鉛含有量が影響を及ぼす場合がある。鉛の含有量としては質量基準で10ppm未満(即ち、0ppm以上10ppm未満)が好ましく、より好ましくは5ppm以下(即ち、0〜5ppm)、特に好ましくは2ppm以下(即ち、0〜2ppm)であり、更には1ppm以下(即ち、0〜1ppm)が好ましい。このような二酸化チタンとしては具体的に石原産業製のCR−95(商品名、鉛含有量1ppm(質量基準))などが選ばれるが特に限定されるものではない。
【0052】
(D)成分の反射向上剤の充填量は、(A−1)トリアジン誘導体エポキシ樹脂と(A−2)酸無水物の総量100質量部に対し、50〜800質量部であり、60〜600質量部が好ましい。50質量部未満では十分な白色性を有する硬化物が得難く、800質量部を超えると未充填及びボイドが発生し易いなどの理由で、成形性が低下し易い。
【0053】
<(E)無機充填剤>
本発明のエポキシ樹脂組成物には、更に無機充填剤を配合する。(E)成分は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。(E)成分の無機充填剤としては、通常エポキシ樹脂組成物に配合されるものを使用することができる。例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、三酸化アンチモン等が挙げられるが、(B)成分として用いられるガラス繊維及び(D)成分として用いられる白色顔料は除かれる。
【0054】
(E)成分の無機充填剤の平均粒径及び形状は特に限定されないが、平均粒径は好ましくは5〜75μmである。ここで、平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における累積質量平均値D50(又はメジアン径)として求めることができる。
【0055】
(E)成分の無機充填剤は、樹脂成分と無機充填剤との結合強度を強くするため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤で予め表面処理したものでもよい。
【0056】
このようなカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシランなどを用いることが好ましい。なお、表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については特に制限されるものではない。
【0057】
無機充填剤の充填量は、(A−1)トリアジン誘導体エポキシ樹脂と(A−2)酸無水物の総量100質量部に対し、50〜1,000質量部、特に80〜800質量部が好ましい。50質量部未満では、硬化物の強度が不十分となるおそれがあり、1,000質量部を超えると、得られる組成物の増粘により、充填不良及び硬化物の柔軟性喪失が起こり、該組成物で形成した反射部材の剥離等の不良が半導体装置内で発生する場合がある。
【0058】
<(F)硬化触媒>
(F)成分の硬化触媒としては、エポキシ樹脂組成物の硬化触媒として公知のものが使用でき、特に限定されない。(F)成分は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。(F)成分としては、例えば、第三級アミン類;イミダゾール類;それらの有機カルボン酸塩;有機カルボン酸金属塩;金属−有機キレート化合物;芳香族スルホニウム塩、有機ホスフィン化合物類、ホスホニウム化合物類、これらリン化合物の塩類等のリン系硬化触媒が挙げられる。これらの中でも、イミダゾール類(例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾール)、リン系硬化触媒(例えば、第4級ホスホニウムブロマイド、メチル−トリブチルホスホニウム−ジメチルホスフェイト)、第三級アミン類のオクチル酸塩が好ましい。また、第4級ホスホニウムブロマイドとアミンの有機酸塩との組み合わせも好ましく用いられる。
【0059】
硬化触媒の使用量は、(A−1)トリアジン誘導体エポキシ樹脂と(A−2)酸無水物の総量100質量部に対し、0.05〜5.0質量部であり、0.1〜3.0質量部が好ましい。該使用量が上記範囲を外れると、エポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性と耐湿性とのバランスが悪くなるおそれがある。
【0060】
<その他の成分>
本発明のエポキシ樹脂組成物には、更に必要に応じて(A)〜(F)成分以外にその他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で添加配合することができる。その他の成分としては、例えば、(A−1)成分以外のエポキシ樹脂、酸化防止剤、本発明の組成物又はその硬化物の性質を改善する目的で種々の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、有機合成ゴム等の低応力剤、ハロゲントラップ剤等の添加剤を挙げることができる。その他の成分は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0061】
−(A−1)成分以外のエポキシ樹脂−
本発明の組成物に、必要に応じて配合する、(A−1)成分以外のエポキシ樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で一定量以下(特に、(A−1)成分100質量部に対し0〜40質量部、特に5〜20質量部の割合で)配合することができる。(A−1)成分以外のエポキシ樹脂は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0062】
(A−1)成分以外のエポキシ樹脂の例として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂、4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂のようなビフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ナフタレンジオール型エポキシ樹脂;トリスフェニロールメタン型エポキシ樹脂;テトラキスフェニロールエタン型エポキシ樹脂;及びフェノールジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂の芳香環を水素化したエポキシ樹脂等が挙げられる。(A−1)成分以外のエポキシ樹脂の軟化点は70〜100℃であることが好ましい。
【0063】
−酸化防止剤−
本発明の組成物には、該組成物又はその硬化物の劣化防止のために酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤が挙げられる。
【0064】
フェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート],2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられる。中でも、得られる硬化物の耐熱性及び強度の点からペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。
【0065】
リン系酸化防止剤としては、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸ジフェニルアルキル、亜リン酸フェニルジアルキル、亜リン酸トリ(ノニルフェニル)、亜リン酸トリラウリル、亜リン酸トリオクタデシル、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリトリトールジホスファイト、ジ(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト及びテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニルジホスホネート等が挙げられ、中でも亜リン酸トリフェニルが好ましい。
【0066】
硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0067】
酸化防止剤の配合量は、(A−1)トリアジン誘導体エポキシ樹脂と(A−2)酸無水物の総量100質量部に対し、0.02〜7質量部であり、0.03〜5質量部とすることが好ましい。該配合量が少なすぎると十分な耐熱性を有する硬化物が得にくく、硬化物が変色する場合があり、多すぎると組成物は硬化阻害を起こしやすく、十分な硬化性を有する組成物及び十分な強度を有する硬化物を得ることができない場合がある。
【0068】
<組成物の調製>
本発明のエポキシ樹脂組成物を成形材料として調製する場合の方法としては、例えば、予め(A−1)及び(A−2)成分を混合して、70〜120℃、好ましくは80〜110℃の温度範囲にて、又は、予め(A−1),(A−2)及び(F)成分を混合して30〜80℃、好ましくは40〜60℃の温度範囲にて、無溶媒の加温可能な反応釜等の装置により均一に溶融混合し、混合物が常温で取扱うのに十分な軟化点、具体的には50〜100℃、より好ましくは60〜90℃になるまで増粘させたものを冷却して、固形化したものを得る方法が挙げられる。なお、各成分の混合時には酸化防止剤を添加してもよい。
【0069】
この場合、これら成分を混合する温度域としては、(A−1)及び(A−2)成分を混合する場合、70〜120℃が適切であり、より好ましくは80〜110℃の範囲である。温度が高すぎると反応速度が速くなりすぎるため、期待した反応度で反応を停止することが難しくなってしまう。又、(A−1),(A−2)及び(F)成分を混合する場合、30〜80℃が適切であり、より好ましくは40〜60℃の範囲である。温度が高すぎると反応速度が速くなりすぎるため、期待した反応度で反応を停止することが難しくなってしまう。
【0070】
次に、この固形物を粉砕した後、(F)成分を上記固形物の調製に用いない場合には、(B),(C),(D),(E)及び(F)成分、更に、必要により、その他の成分を所定の組成比で配合する。また、(F)成分を上記固形物の調製に用いる場合には、(B),(C),(D)及び(E)成分、更に、必要により、その他の成分を所定の組成比で配合する。こうして得た配合物をミキサー等によって十分均一に混合した後、熱ロールミル、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させた後、適当な大きさの粒子に粉砕してエポキシ樹脂組成物の成形材料とすることができる。
【0071】
この場合、本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物の成形の最も一般的な方法としては低圧トランスファ成形法が挙げられる。なお、本発明のエポキシ樹脂組成物の成形温度は150〜185℃が望ましく、時間は通常30〜180秒でよい。必要に応じて、後硬化を行ってもよく、その場合の温度は150〜185℃が望ましく、時間は2〜20時間でよい。
【0072】
<反射部材>
本発明の組成物で形成される反射部材の代表的なものとしては、プレモールドパッケージが挙げられる。図1に示す例では、プレモールドパッケージ5を本発明の組成物によりリードフレーム2上に成形した後、半導体素子1をリードフレーム2に配置する。素子1をボンディングワイヤ3により電極(図示略)に接続後、透明樹脂からなる透明封止体4により素子1を封止し、同時にレンズ6が形成される。
【0073】
プレモールドパッケージ以外の反射部材としては、光反射性を付与したい部材であれば特に制限なく挙げられる。例えば、LED素子のような発光素子の場合、光が特定方向(例えば、上方)にのみ放出されるように、透明樹脂からなる封止体の側部周囲を覆う部材、ベース基板、サブマウント等の他の構成部材の表面の少なくとも一部を覆う被膜状部材などを挙げることができる。
【0074】
例えば、図2はフリップチップ型LED素子構造を示す。ベース基板21上にサブマウント22が形成されている。一方、サファイア基板23上に順に高成長AlNバッファー層24、n−コンタクト層(GaN:Si)25、DH構造(発光部)26、p−コンタクト層(GaN:Mg)27が積層構造に形成されて、p−コンタクト層27上のp−電極28がAuバンプ29aを介してサブマウント22に接続されており、n−コンタクト層25上のn−電極30はAuバンプ29bを介してサブマウント22に接続されている。そして、サブマウント22の一部が本発明組成物で形成される被膜状反射部材31により被覆されている。さらに、素子全体がシリコーン樹脂からなる透明封止体32で封止されている。反射部材31によりサブマウント22の表面上での反射効率が著しく向上する。
【実施例】
【0075】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
下記例で使用した原料を以下に示す。
【0076】
(A)
(A−1)トリアジン誘導体エポキシ樹脂
トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート(商品名:TEPIC−S、日産化学工業(株)製、エポキシ当量100)
(A−2)酸無水物
メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(商品名:リカシッドMH、新日本理化(株)製、炭素炭素二重結合を有しない酸無水物)
【0077】
(B)ガラス繊維
平均長 200μm、30μm、600μm又は1300μm、直径 13μmのEガラスからなるチョップドストランド
【0078】
(C)内部離型剤
(C−1)プロピレングリコールモノベヘネート(商品名:PB−100、理研ビタミン(株)製、融点57℃)
(C−2)ステアリルステアレート(商品名:SL−900A、理研ビタミン(株)製、融点55℃)
【0079】
(D)反射向上剤
Al化合物、Si化合物及びポリオールの少なくとも1種で表面処理された、塩素法二酸化チタン(商品名:CR−95、石原産業(株)製、ルチル型、鉛含有量1ppm(質量基準))
(E)無機充填剤
球状溶融シリカ((株)龍森製)
(F)硬化触媒
第4級ホスホニウムブロマイド(商品名:U−CAT5003、サンアプロ(株)製)
【0080】
[実施例1〜3、比較例1〜5]
各例において、トリアジン誘導体エポキシ樹脂及び酸無水物を反応釜に入れ、100℃にて3時間溶融混合し、次に冷却して固化させて軟化点60℃の固形物を得た。該固形物を粉砕して粉末化した。該粉末化した固形物を、他成分と表1に記載の組成比にて配合し、熱2本ロールミルにて均一に溶融混合し、冷却、粉砕して白色エポキシ樹脂組成物を得た。
これらの組成物につき、以下の諸特性を測定した。結果を表1に示す。
【0081】
《製造時の作業性》
上記の熱2本ロールミルによる溶融混合時の作業性を以下の基準で評価した。
○:各成分を均一に混合することが容易であり、組成物を得ることができた。
×:各成分を均一に混合することが困難であり、組成物を得ることができなかった。
【0082】
《スパイラルフロー値》
EMMI規格に準じた金型を使用して、175℃,6.9N/mm2、成形時間120秒の条件で測定した。
【0083】
《曲げ強度》
175℃,6.9N/mm2、成形時間120秒の条件で、厚さ4mm×幅10mm×長さ100mmからなる硬化物を成形し、150℃で2時間の2次硬化後、熱硬化性プラスチック一般試験方法 JIS K 6911に基づき、室温で測定した。
【0084】
《光反射率》
175℃,6.9N/mm2、成形時間120秒の条件で直径50mm×厚さ3mmの円盤(硬化物)を成形した。成形直後に光反射率を測定した。その後、該円盤にピーク波長365nmの高圧水銀灯から強度60mW/cmのUVを24時間照射した。UV照射後に光反射率を測定した。次いで、該円盤を180℃にて4時間保管した後に光反射率を測定した。光反射率の測定は分光測色計(商品名:X−rite 8200、エス・デイ・ジー(株)製)を使用して波長450nmにおいて行った。
【0085】
【表1】


*1:組成物を得ることができず成形不可
*2:硬化物が脆すぎて曲げ強度の測定不可
【0086】
表1に示すように、ガラス繊維の平均長が長すぎる比較例2及び3では、製造時の作業性が悪く、エポキシ樹脂組成物を得ることができなかった。また、ガラス繊維の平均長が短すぎる比較例1及びガラス繊維の添加量が少なすぎる比較例4のエポキシ樹脂組成物からは十分な機械的強度を有する硬化物が得られなかった。更に、ガラス繊維を添加しなかった比較例5のエポキシ樹脂組成物から得られた硬化物は脆すぎて機械的強度を測定することができなかった。対照的に、本発明に包含される実施例1のエポキシ樹脂組成物は製造時の作業性に優れ、該組成物から得られた硬化物は機械的強度に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、光半導体装置用の反射部材の形成に有用である。
【符号の説明】
【0088】
1 半導体素子
2 リードフレーム
3 ボンディングワイヤ
4 透明封止体
5 プレモールドパッケージ
6 レンズ
21 ベース基板
22 サブマウント
23 サファイア基板
24 高成長AlNバッファー層
25 n−コンタクト層
26 DH構造
27 p−コンタクト層
28 p−電極
29a Auバンプ
29b Auバンプ
30 n−電極
31 被膜状反射部材
32 透明封止体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(A−1)トリアジン誘導体エポキシ樹脂と(A−2)酸無水物との組み合わせ、又はこれらを反応させて得られるプレポリマーであって、〔(A−1)成分が有するエポキシ基〕/〔(A−2)成分が有する酸無水物基〕のモル比が0.6〜2.0である組み合わせ又はプレポリマー、
(B)ガラス繊維、
(C)内部離型剤、
(D)反射向上剤、
(E)無機充填剤、及び
(F)硬化触媒
を含有し、
上記(A−1)成分と(A−2)成分の合計100質量部に対して、
前記(B)成分を10〜200質量部、
前記(C)成分を0.2〜10.0質量部、
前記(D)成分を50〜800質量部、
前記(E)成分を50〜1,000質量部、そして、
前記(F)成分を0.05〜5.0質量部
含む熱硬化性エポキシ樹脂組成物であって、
上記(B)成分のガラス繊維の平均長が50〜400μm、平均直径が5.0〜25μmである前記組成物。
【請求項2】
前記(A−1)成分のトリアジン誘導体エポキシ樹脂が、1,3,5−トリアジン誘導体エポキシ樹脂である請求項1に係る組成物。
【請求項3】
上記(A)成分のプレポリマーが、下記一般式(1):
【化1】


(式中、R1は酸無水物残基を示し、mは0〜200の数である。)
で示される化合物を含有する請求項1又は2に係る組成物。
【請求項4】
上記(C)成分の内部離型剤が、融点50〜70℃であるグリセリンモノステアレートを含む、請求項1〜3のいずれか1項に係る組成物。
【請求項5】
上記(D)成分の反射向上剤が二酸化チタン粉末である請求項1〜4のいずれか1項に係る組成物。
【請求項6】
前記二酸化チタン粉末の鉛含有量が質量基準で10ppm未満である請求項5に係る組成物。
【請求項7】
上記(D)成分の反射向上剤がAl化合物、Si化合物及びポリオールの少なくとも1種で処理されている請求項1〜5のいずれか1項に係る組成物。
【請求項8】
光半導体装置を構成する反射部材形成用である請求項1〜7のいずれか1項に係る組成物。
【請求項9】
前記反射部材がプレモールドパッケージである請求項8に係る組成物。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物の硬化物からなる光半導体装置用反射部材。
【請求項11】
プレモールドパッケージである請求項10に係る反射部材。
【請求項12】
他の構成部材の表面の少なくとも一部を覆う被膜状である請求項10に係る反射部材。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物の硬化物からなる反射部材と光半導体素子とを有する光半導体装置。
【請求項14】
前記反射部材が、前記光半導体素子を搭載するプレモールドパッケージである請求項13に係る光半導体装置。
【請求項15】
前記反射部材が、他の構成部材の表面の少なくとも一部を覆う被膜状である、請求項13に係る光半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−172012(P2012−172012A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33458(P2011−33458)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】