説明

現在位置算出装置および車両

【課題】現在位置算出装置の現在位置精度を向上させる。
【解決手段】ABS用加速度センサ12a〜12d自体の傾斜角度θa〜θdを算出し、道路に対する車両10の傾斜角度αの影響を排除するように、加速度センサ11bのオフセット電圧の補正を行う。これにより、加速度センサ11bで検出される加速度に基づいて、車両10が走行する道路の傾斜角度θが正しく算出されて、車両10の高さ位置が正しく算出されるようになる。したがって、車両の現在位置が正しく算出されるようになり、カーナビゲーション装置1の現在位置算出精度を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現在位置を算出する現在位置算出装置およびこの現在位置算出装置を搭載する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されて車両の現在位置を算出する現在位置算出装置としてカーナビゲーション装置が知られている。このカーナビゲーション装置では、検出した車両の前後方向の傾斜角度から道路の傾斜角度を算出して車両の現在位置を算出している(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−277266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のカーナビゲーション装置では、車両自体が道路に対して傾斜している場合には、道路の傾斜角度を正しく算出できない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 請求項1の発明による現在位置算出装置は、車両の走行距離に関する信号を受信する受信手段と、車両の左右方向の旋回角度を検出する旋回角度検出手段と、車両の前後方向の傾斜角度を検出する傾斜角度検出手段と、受信手段で受信した車両の走行距離に関する信号と、旋回角度検出手段で検出した車両の左右方向の旋回角度と、傾斜角度検出手段で検出した車両の前後方向の傾斜角度とに基づいて、車両の現在位置を算出する現在位置算出手段と、車両の車輪近傍に設けられた加速度センサから得られる信号に基づいて、傾斜角度検出手段で検出される車両の前後方向の傾斜角度を補正する傾斜角度補正手段を備えることを特徴とする。
(2) 請求項2の発明は、請求項1に記載の現在位置算出装置において、傾斜角度補正手段が車両の前後方向の傾斜角度を補正するために利用する加速度センサは、車輪のスリップ状態に応じて車輪のロックを抑制するように車輪の制動力を制御するアンチロックブレーキシステム(ABS)で用いられる加速度センサであることを特徴とする。
(3) 請求項3の発明は、請求項2に記載の現在位置算出装置において、傾斜角度補正手段は、車両の各車輪の近傍にそれぞれ設けられた加速度センサから得られる信号の平均値により、傾斜角度検出手段で検出される車両の前後方向の傾斜角度を補正することを特徴とする。
(4) 請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の現在位置算出装置において、GPS衛星からのGPS信号を受信するGPS信号受信手段をさらに備え、現在位置算出手段は、受信手段で受信した車両の走行距離に関する信号と、旋回角度検出手段で検出した車両の左右方向の旋回角度と、傾斜角度検出手段で検出した車両の前後方向の傾斜角度とに基づいて自律航法によって車両の現在位置を算出し、および/または、GPS信号受信手段で受信したGPS信号に基づいて車両の現在位置を算出し、傾斜角度補正手段は、現在位置算出手段がGPS信号に基づいて車両の現在位置を算出できない場合に車両の車輪近傍に設けられた加速度センサから得られる信号に基づいて、傾斜角度検出手段で検出される車両の前後方向の傾斜角度を補正することを特徴とする。
(5) 請求項5の発明による車両は、請求項1に記載の現在位置算出装置と、車輪近傍に設けられた加速度センサとを備えることを特徴とする。
(6) 請求項6の発明は、請求項5に記載の車両において、加速度センサは、車輪のスリップ状態に応じて車輪のロックを抑制するように車輪の制動力を制御するアンチロックブレーキシステム(ABS)で用いられる加速度センサであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、現在位置算出装置の現在位置精度を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1〜4を参照して、本発明による現在位置算出装置をカーナビゲーション装置に適用した一実施の形態を説明する。図1は、本実施の形態のカーナビゲーション装置の全体構成を示す図であり、図2は、本実施の形態のカーナビゲーション装置が搭載された車両(車両10)の構成を示す図である。なお、図2では、車両10の構成について、本発明に関係する部分のみを示している。カーナビゲーション装置1は、車両位置周辺の道路地図を表示する機能、出発地から目的地までの推奨経路を演算する機能、演算された推奨経路に基づいて経路誘導を行う機能など、車両10の走行に関する情報を提示する機能を兼ね備えている。カーナビゲーション装置1は、いわゆるナビゲーションあるいは道路案内などを行う装置である。
【0008】
図1において、11は車両の現在地を検出する現在地検出装置であり、たとえば車両10の進行方位の変化量を検出するためのジャイロセンサ11a、車両10の前後方向の加速度を検出するための加速度センサ11b、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号を検出するGPSセンサ11c、車速を検出する車速センサ11d等から成る。なお、車速センサ11dは、車両10に設けられたセンサである。
【0009】
ABS用加速度センサ12a〜12dは、車両10のサスペンションのスプリングよりも車輪側となるサスペンションの構成部材など、車両10の各車輪の近傍に設けられて、車両10のアンチロックブレーキシステムの制御のために用いられる加速度センサである(図1,2)。すなわち、ABS用加速度センサ12a〜12dは、いわゆるバネ下と呼ばれる部位(部材)に取り付けられている。ABS用加速度センサ12a〜12dは、少なくとも車両10の前後方向の加速度を検出する。なお、アンチロックブレーキシステムは、車輪のスリップ状態に応じて車輪のロックを抑制するように車輪の制動力を制御するシステムである。
【0010】
100は制御装置であり、CPU101およびその周辺回路から成る。CPU101およびその周辺回路は互いにバスで接続されている。周辺回路は、メモリ102、パラレルI/O103、A/D変換器104a,104b、シリアルI/O105、カウンタ106、グラフィックコントローラ107、画像メモリ108、地図記憶装置109、I/F112等から成る。14は車室内の乗員が視認可能な位置に配設されて、地図や各種情報を表示する表示モニタである。15は乗員が車両の目的地等の入力など、各種操作入力を行うためのスイッチである。スイッチ15は、表示モニタ14の画面上に設けられたタッチパネルスイッチや、カーソルの移動や画面のスクロールを指示するジョイスティックなどを含む。スイッチ15は、リモコンスイッチであってもよく、表示画面周辺に設けられたスイッチであってもよい。
【0011】
制御装置100のメモリ102は、制御プログラムを格納するROMおよび作業エリアのRAM、および、各種設定値などを記憶する不揮発メモリを含むメモリである。CPU101は、メモリ102にアクセスして制御プログラムを実行し、各種の制御を行う。パラレルI/O103は、スイッチ15を構成する個別のスイッチ等が接続されるパラレルI/Oポートである。A/D変換器104a,104bは、それぞれジャイロセンサ11aおよび加速度センサ11bのアナログ信号をA/D変換する変換器である。シリアルI/O105は、GPSセンサ11cからのシリアル信号を受信するシリアルI/Oポートである。カウンタ106は、たとえば車軸の回転に伴って車速センサ11dから出力されるパルス信号、すなわち、車両10の走行距離に関する信号を受信してカウントするカウンタである。
【0012】
グラフィックコントローラ107は、CPU101から出力される表示データを、画像データとして画像メモリ(ビデオRAM)であるメモリ108に格納し、メモリ108に格納された画像データを表示モニタ14に表示するための制御を行う。CPU101から出力される表示データは、各種の文字データや道路地図などの各種の図形データなどから成る。制御装置100は、表示モニタ14の表示制御装置として機能する。
【0013】
地図記憶装置109は、ナビゲーション処理に使用する道路地図データやPOI情報(Point of Interest 観光地や各種施設の情報)など各種の情報を格納する地図記憶装置であり、ハードディスク装置が用いられている。なお、地図記憶装置109は、ハードディスク装置以外にも、道路地図データが格納されたCD−ROMやDVD、その他の記録媒体、および、その読み出し装置であってもよい。
【0014】
I/F112は、車両10に設けられているABS用加速度センサ12a〜12dを接続するためのインターフェースである。I/F112とABS用加速度センサ12a〜12dとは、たとえばIDB−1394高速車載ネットワークによって接続されている。
【0015】
−−−データ構成−−−
道路地図データは、地図に関する情報であり、地図表示用データ、経路探索用データ、誘導データ(交差点名称・道路名称・方面名称・方向ガイド・施設情報など)などから成る。地図表示用データは道路や道路地図の背景を表示するためのデータである。経路探索用データは、道路形状とは直接関係しない分岐情報などから成るデータであり、主に推奨経路を演算(経路探索)する際に用いられる。誘導データは、交差点の名称などから成るデータであり、演算された推奨経路に基づき運転者等に推奨経路を誘導する際に用いられる。
【0016】
このように構成されるカーナビゲーション装置1は、現在地検出装置11により取得した情報および地図記憶装置109に格納されている道路地図データに基づき各種のナビゲーションを行う。たとえば、制御装置100のCPU101は現在地検出装置11により取得した情報に基づいて、車両10の現在位置を算出し、現在位置近辺の道路地図および車両10の現在位置を表示モニタ14に表示する。また、CPU101は、経路探索によって得られた経路(推奨経路)に沿ってドライバーを誘導するように各部を制御する。
【0017】
本実施の形態のカーナビゲーション装置1では、制御装置100のCPU101は、GPSセンサ11cから出力される測位情報に基づいて、いわゆる衛星航法によって車両10の現在位置を算出する。また、CPU101は、GPSセンサ11cでGPS信号を受信できない場合など、衛星航法によって車両10の現在位置を算出できない場合には、いわゆる自律航法によって車両10の現在位置を推定し、公知のマップマッチングの手法によって車両10の現在位置を推定する。
【0018】
なお、CPU101は、自律航法によって車両10の現在位置を算出する場合、ジャイロセンサ11aからの出力に基づいて車両10の左右方向の旋回角度を算出し、加速度センサ11bからの出力に基づいて車両10の前後方向の傾斜角度を算出し、車速センサ11dからの出力に基づいて車両10の走行距離を算出する。そして、CPU101は、算出した車両10の旋回角度、前後方向の傾斜角度および走行距離に基づいて車両10の現在位置を算出する。
【0019】
車両10の現在位置を算出する場合、たとえば車両10が高架上の道路を走行しているのか、高架上の道路に近接した高架下の道路を走行しているのかを、CPU101は、車両10の高さ位置のデータを用いて判断する。衛星航法によって車両10の現在位置を算出する場合には、CPU101は、GPSセンサ11cから出力される測位情報に含まれる高度に関する情報に基づいて車両10の高さ位置を算出する。自律航法によって車両10の現在位置を算出する場合、CPU101は、次のようにして車両10の上下方向への移動量を算出することで車両10の高さ位置を算出する。
【0020】
勾配のついた道路を車両10が走行すると、車両10は水平方向および垂直方向に移動する。たとえば図3(a)に示すように、車両10が傾斜角度θで傾斜している道路を距離Lだけ走行すると、車両10は水平方向にLcosθだけ移動し、垂直方向(高さ方向)にLsinθだけ移動する。したがって、道路の傾斜角度θと車両10の走行距離Lとが分かれば、車両10の高さ方向への移動量が算出できる。なお、傾斜角度θは図3(b)に示すように加速度センサ11bの出力g・sinθから、走行距離Lは車速センサ11dの出力から求められる。
【0021】
このようにして算出した車両10の高さ方向への移動量をもとの車両10の高さ位置に加算することで新たな車両10の高さ位置(高度)を算出できる。算出された新たな車両10の高さ位置の情報は、次回の車両の高さ位置算出の際に用いられるため、メモリ102に記憶される。すなわち、メモリ102に記憶された前回算出の車両10の高さ位置に対して、上述したように算出した車両10の高さ方向への移動量を加算することで、新たな車両10の高さ位置を算出できる。なお、公知のマップマッチングの手法により車両10が走行していると判断された道路について、地図記憶装置109に格納されている道路地図データから道路の高度の情報を読み込み、読み込んだ高度の情報に基づいて、上述のように算出した車両10の高さ位置を適宜補正するようにしてもよい。
【0022】
車両10が道路に対して平行である場合には、加速度センサ11bで検出される加速度に基づいて算出される車両10の傾斜角度θsは、道路の傾斜角度θと一致する。車両10が停車しているか一定速度で走行していれば、図3(b)に示すように、加速度センサ11bで検出される車両10の前後方向の加速度は、gを重力加速度とするとgsinθとなる。なお、車両10が加速または減速している場合には、車両10の加速または減速による車両の前後方向の加速度も加速センサ11bで検出されることになる。しかし、車両10の加速または減速による車両の前後方向の加速度については、車速センサ11dで検出される車速の時間微分値と等しいため、加速度センサ11bで検出される車両10の前後方向の加速度と、車速センサ11dで検出される車速の時間微分値とによって、車両10の傾斜によって検出される加速度のみを算出できる。このように、車両10が道路に対して平行である場合には、車両10の加減速の有無にかかわらず、加速度センサ11bで検出される加速度に基づいて車両10の水平面に対する傾斜角度θs、すなわち、道路の傾斜角度θを算出できる。
【0023】
しかし、乗車人員や荷物の配置、車両10の加減速によって車両10のサスペンションストロークが変化すると、図3(c)に示すように、車両10が道路に対して平行でなくなってしまう。このように、車両10が道路に対して平行でなくなってしまうと、加速度センサ11bで検出される加速度に基づいて算出される車両10の水平面に対する傾斜角度θsは、道路の傾斜角度θと、道路に対する車両10の傾斜角度αの和となってしまう。そのため、従来のカーナビゲーション装置のように、道路に対する車両10の傾斜角度αを考慮しない場合には、道路の傾斜角度θが正しく算出されず、車両10の高さ方向への移動量が正しく算出できない。したがって、従来のカーナビゲーション装置では、車両10の高さ位置が誤って算出されてしまうため、実際に車両10が走行している道路とは別の道路上を車両10が走行しているものと判断されてしまい、車両10の現在位置が正しく算出されない恐れがある。
【0024】
同様に、従来のカーナビゲーション装置のように、道路に対する車両10の傾斜角度αを考慮しない場合には、道路の傾斜角度θが正しく算出されず、車両10の水平方向への移動量が正しく算出できない。したがって、従来のカーナビゲーション装置では、たとえば自律航法で立体駐車場のスロープのようなところを走行する場合、車両10の水平方向の位置が誤って算出されてしまうため、車両10の実際の現在位置とは異なる位置が車両10の現在位置として算出されてしまうことになる。また、算出される車両10の現在位置と実際の車両10の現在位置との差は、車両10の走行距離が長くなるほど大きくなってしまう。
【0025】
そこで、本実施の形態のカーナビゲーション装置1では、車両10のアンチロックブレーキシステムの制御のために用いられるABS用加速度センサ12a〜12dを利用して、道路の傾斜角度θを正しく算出する。具体的には、CPU101は、衛星航法による車両10の現在位置の算出から、自律航法による車両の現在位置の算出に切り替わると、衛星航法から自律航法に切り替わる前後における、4つのABS用加速度センサ12a〜12dそれぞれの出力電圧値を読み込む。そしてCPU101は、読み込んだ出力電圧値の変化から、それぞれのABS用加速度センサ12a〜12d自体の傾斜角度θa〜θdを算出する。ABS用加速度センサ12a〜12dは、上述したように車両10のサスペンションのスプリングよりも車輪側に設けられており、サスペンションストロークの影響を受けないため、ABS用加速度センサ12a〜12d自体の傾斜角度θa〜θd(すなわち水平面に対する傾斜角度)は、道路の傾斜角度θと略等しい。
【0026】
たとえばCPU101は、それぞれのABS用加速度センサ12a〜12dについて、ABS用加速度センサ12a〜12dから出力される信号の電圧値Va〜Vdを10ms毎に読み込む。そしてCPU101は、電圧値Vaを10回分読み込んだら読み込んだ10回分の電圧値Vaの平均値Vaaveを算出する。同様に、CPU101は、電圧値Vb〜Vdについても、それぞれの電圧値Vb〜Vdを10回分読み込んだら読み込んだ10回分の電圧値Vb〜Vdの平均値Vbave〜Vdaveを算出する。このようにして算出した平均値Vaave〜VdaveをABS用加速度センサ12a〜12d自体の傾斜角度θa〜θdの算出に利用する。
【0027】
CPU101は、算出したそれぞれのABS用加速度センサ12a〜12d自体の傾斜角度θa〜θdから、その平均値(平均傾斜角度)θaveを算出する。この平均傾斜角度θaveと、加速度センサ11bの出力値から算出される車両10の傾斜角度θsとが一致するように加速度センサ11bのオフセット電圧を補正する。このように加速度センサ11bのオフセット電圧を補正することで、加速度センサ11bで検出される加速度に基づいて算出される傾斜角度θsが道路の傾斜角度θと略等しくなるので、正しい傾斜角度θを算出できるようになる。
【0028】
−−−フローチャート−−−
図4は、車両10の現在位置を算出して表示モニタ14に表示する処理の動作を示したフローチャートである。車両の不図示のイグニッションキーによりアクセサリスイッチがオン(ACC ON)されると、図4に示す処理を行うプログラムが起動されてCPU101で適宜繰り返して実行される。ステップS1において、現在地検出装置11やABS用加速度センサ12a〜12d等から出力される各種データを読み込んでステップS3へ進む。ステップS3において、ABS用加速度センサ12a〜12dから出力される信号の電圧値Va〜Vdを所定のサンプリング時間(たとえば10ms)毎に読み込んで記憶する処理を開始する。なお、電圧値Va〜Vdは直近の所定時間分のデータがメモリ102に一時的に記憶される。
【0029】
ステップS3が実行されるとステップS5に進み、ステップS1で各種データを読み込んだ際に、GPSセンサ11cから出力される測位情報を取得できたか否かを判断する。ステップS5が肯定判断されるとステップS7へ進み、衛星航法による車両10の現在位置算出処理を行う。なお、衛星航法による車両10の現在位置算出処理は公知であるため詳細な説明を省略する。ステップS7では、公知のマップマッチングによる処理も行う。ステップS7が実行されるとステップS9へ進み、算出された車両10の現在位置を記憶する。なお、ステップS9で記憶された車両10の現在位置の情報は、車両10の現在位置の次回の演算の際に利用される。
【0030】
ステップS9が実行されるとステップS11へ進み、算出された車両10の現在位置に基づいて、表示モニタ14に表示された地図上に車両10の現在位置を示すカーマークを重畳表示するよう各部を制御してリターンする。
【0031】
ステップS5が否定判断されるとステップS31へ進み、ステップS3で記憶処理が開始されてメモリ102に記憶されている電圧値Va〜Vdのデータを読み込んでステップS33へ進む。ステップS33において、ABS用加速度センサ12a〜12dから出力される信号の電圧値Va〜Vdを所定のサンプリング時間毎に読み込んで加算してステップS35へ進む。ステップS35において、平均値Vbave〜Vdaveを算出するために電圧値Va〜Vdを所定回数(たとえば10回)だけ読み込むのに要する所定の時間が経過したか否かを判断する。ステップS35が否定判断されるとステップS33へ戻り、ステップS35が肯定判断されるとステップS37へ進む。
【0032】
ステップS37において、ステップS33で累積加算した電圧値Va〜Vdの値から平均値Vbave〜Vdaveを算出してステップS39へ進む。ステップS39において、ステップS31で読み込んだ電圧値Va〜VdのデータおよびステップS37で算出した平均値Vbave〜Vdaveに基づいて、ABS用加速度センサ12a〜12d自体の傾斜角度θa〜θdを算出してステップS41へ進む。ステップS41において、ステップS39で算出した傾斜角度θa〜θdから、その平均値である平均傾斜角度θaveを算出してステップS43へ進む。
【0033】
ステップS43において、ステップS41で算出した平均傾斜角度θaveと、ステップS1で読み込んだ加速度センサ11bの電圧値とに基づいて、加速度センサ11bのオフセット電圧を補正してステップS45へ進む。ステップS45において、ステップS1で読み込んだ加速度センサ11bの電圧値とステップS43で補正されたオフセット電圧とに基づいて傾斜角度θsを算出してステップS47へ進む。ステップS47において、ステップS1で読み込んだ車速のデータに基づいて車両10の走行距離Lを算出し、ステップS45で算出した補正後の傾斜角度θsに基づいて車両10の上下方向への移動量Lsinθ(=Lsinθs)および水平方向への移動量Lcosθ(=Lcosθs)を算出してステップS49へ進む。
【0034】
ステップS49において、前回の処理で算出されてメモリ102に記憶されている車両10の高さ位置および水平方向位置にステップS47で算出した車両10の移動量Lsinθ、Lcosθをそれぞれ加算することで新たな車両10の位置を算出してステップS51へ進む。ステップS51において、ステップS49で算出した車両の位置を現在の車両10の位置として、自律航法による車両10の現在位置算出処理を行う。なお、自律航法による車両10の現在位置算出処理は公知であるため詳細な説明を省略する。ステップS51では、公知のマップマッチングによる処理も行う。ステップS51が実行されるとステップS9へ進む。
【0035】
上述したカーナビゲーション装置1では次の作用効果を奏する。
(1) ABS用加速度センサ12a〜12d自体の傾斜角度θa〜θdに基づいて道路に対する車両10の傾斜角度αの影響を排除することで、加速度センサ11bのオフセット電圧の補正を行い、加速度センサ11bで検出される加速度に基づいて算出される傾斜角度θsが補正されるように構成した。したがって、車両10が走行する道路の傾斜角度θが正しく算出されて、車両10の高さ位置および水平方向の位置が正しく算出されるようになる。これにより、車両の現在位置が正しく算出されるようになり、カーナビゲーション装置1の現在位置算出精度を向上できる。
【0036】
(2) 上述した加速度センサ11bのオフセット電圧の補正を行うためにABS用加速度センサ12a〜12dを用いるように構成したので、新たなセンサ類を追加する必要がなく、コスト増を抑制できる。
【0037】
(3) 車両10に設けられたABS用加速度センサ12a〜12dの全てを用いるように構成した。これにより、たとえば自走式立体駐車場の螺旋状のスロープなどのように、車両10が左右方向にも傾斜するような通路を走行する場合であっても、道路の傾斜角度θの算出誤差を小さくできる。
【0038】
(4) 自律航法によって車両10の現在位置を算出するときに上述した加速度センサ11bのオフセット電圧の補正を行い、衛星航法によって車両10の現在位置を算出するときには上述した加速度センサ11bのオフセット電圧の補正を行わないように構成した。上述した加速度センサ11bのオフセット電圧の補正の処理を必要なときにのみ行うことで、CPU101の負荷を抑制できる。なお、衛星航法によって車両10の現在位置を算出する際には、GPSセンサ11cから出力される測位情報に含まれる高度に関する情報に基づいて車両10の高さ位置を算出できる。
【0039】
−−−変形例−−−
(1) 上述の説明では、加速度センサ11bのオフセット電圧の補正のためにABS用加速度センサ12a〜12dを用いたが、本発明はこれに限定されない。加速度センサ11bのオフセット電圧の補正のために用いる加速度センサは、車両10のサスペンションストロークの影響を受けない位置に設けられた加速度センサであれば、アンチロックブレーキシステムの制御用途に限らず、たとえば車両の横滑り防止機構の制御用途のものであってもよい。なお、ABS用加速度センサ12a〜12dは、タイヤ内に組み込む加速度センサであってもよい。この場合には、車両10のサスペンション側に設けられた受信装置によって、回転するタイヤに設けられた加速度センサから、たとえば無線によって信号を受信するようにしてもよい。
【0040】
(2) 上述の説明では、衛星航法によって車両10の現在位置を算出するときには上述した加速度センサ11bのオフセット電圧の補正を行わないように構成したが、本発明はこれに限定されず、衛星航法によって車両10の現在位置を算出するときにも上述した加速度センサ11bのオフセット電圧の補正を行うように構成してもよい。
(3) 上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0041】
上述の実施の形態およびその変形例において、たとえば、受信手段はカウンタ106に、旋回角度検出手段はジャイロセンサ11aに、傾斜角度検出手段は加速度センサ11bに、GPS信号受信手段はGPSセンサ11cに、加速度センサはABS用加速度センサ12a〜12dにそれぞれ対応する。現在位置算出手段および傾斜角度補正手段は、CPU101およびCPU101で実行されるメモリ102に格納された制御プログラムによって実現される。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する際、上記の実施形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係になんら限定も拘束もされない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施の形態のカーナビゲーション装置の全体構成を示す図である。
【図2】本実施の形態のカーナビゲーション装置が搭載された車両(車両10)の構成を示す図である。
【図3】車両10と傾斜した道路との関係を示す図である。
【図4】車両10の現在位置を算出して表示モニタ14に表示する処理の動作を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
1 カーナビゲーション装置 10 車両
11 現在地検出装置 11a ジャイロセンサ
11b 加速度センサ 11d 車速センサ
12a〜12d ABS用加速度センサ 14 表示モニタ
100 制御装置 101 CPU
106 カウンタ 109 地図記憶装置
112 I/F

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行距離に関する信号を受信する受信手段と、
前記車両の左右方向の旋回角度を検出する旋回角度検出手段と、
前記車両の前後方向の傾斜角度を検出する傾斜角度検出手段と、
前記受信手段で受信した前記車両の走行距離に関する信号と、前記旋回角度検出手段で検出した前記車両の左右方向の旋回角度と、前記傾斜角度検出手段で検出した前記車両の前後方向の傾斜角度とに基づいて、前記車両の現在位置を算出する現在位置算出手段と、
前記車両の車輪近傍に設けられた加速度センサから得られる信号に基づいて、前記傾斜角度検出手段で検出される前記車両の前後方向の傾斜角度を補正する傾斜角度補正手段を備えることを特徴とする現在位置算出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の現在位置算出装置において、
前記傾斜角度補正手段が前記車両の前後方向の傾斜角度を補正するために利用する加速度センサは、車輪のスリップ状態に応じて車輪のロックを抑制するように車輪の制動力を制御するアンチロックブレーキシステム(ABS)で用いられる加速度センサであることを特徴とする現在位置算出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の現在位置算出装置において、
前記傾斜角度補正手段は、前記車両の各車輪の近傍にそれぞれ設けられた前記加速度センサから得られる信号の平均値により、前記傾斜角度検出手段で検出される前記車両の前後方向の傾斜角度を補正することを特徴とする現在位置算出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の現在位置算出装置において、
GPS衛星からのGPS信号を受信するGPS信号受信手段をさらに備え、
前記現在位置算出手段は、前記受信手段で受信した前記車両の走行距離に関する信号と、前記旋回角度検出手段で検出した前記車両の左右方向の旋回角度と、前記傾斜角度検出手段で検出した前記車両の前後方向の傾斜角度とに基づいて自律航法によって前記車両の現在位置を算出し、および/または、前記GPS信号受信手段で受信した前記GPS信号に基づいて前記車両の現在位置を算出し、
前記傾斜角度補正手段は、前記現在位置算出手段が前記GPS信号に基づいて前記車両の現在位置を算出できない場合に前記車両の車輪近傍に設けられた加速度センサから得られる信号に基づいて、前記傾斜角度検出手段で検出される前記車両の前後方向の傾斜角度を補正することを特徴とする現在位置算出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の現在位置算出装置と、
車輪近傍に設けられた加速度センサとを備えることを特徴とする車両。
【請求項6】
請求項5に記載の車両において、
前記加速度センサは、車輪のスリップ状態に応じて車輪のロックを抑制するように車輪の制動力を制御するアンチロックブレーキシステム(ABS)で用いられる加速度センサであることを特徴とする車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−53153(P2009−53153A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−222424(P2007−222424)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】