説明

現在位置算出装置

【課題】駐車場内の車両の位置を正確に算出できる現在位置算出装置を提供する。
【解決手段】駐車場入口に進入後、車両10の高さ方向の移動量が駐車場の1階層分の高さと等しくなったと判断され、かつ、そのときの車両10の進行方位と、駐車場入口進入時の車両10の進行方位との差が所定の角度θ1以内である場合には、駐車場入口進入時の車両10の進行方位と一致するように、算出された車両の進行方位を補正するように構成した。これにより、駐車場で車両10が旋回を繰り返しても、ジャイロセンサ11aの誤差による車両10の進行方位のずれが補正されるので、駐車場内の車両10の位置を正確に算出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現在位置を算出する現在位置算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載され、車両の現在位置を算出して周辺地図とともに表示するカーナビゲーション装置が知られている。このカーナビゲーション装置では、自走式立体駐車場を走行して旋回を繰り返したために生じる方位データの累積誤差を、自走式立体駐車場から出場する際に修正している(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−14479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のカーナビゲーション装置では、自走式立体駐車場内を走行している間は、方位データの修正(補正)が行われないため、駐車場内では車両の進行方位を正しく算出できない恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 請求項1の発明による現在位置算出装置は、車両の進行方位の変化を検出する進行方位変化検出手段と、車両の走行距離を検出する走行距離検出手段と、進行方位変化検出手段で検出した車両の進行方位の変化と、走行距離検出手段で検出した車両の走行距離とに基づいて、車両の位置および進行方位を算出する算出手段と、車両の高さ方向の移動距離を検出する高さ方向移動量検出手段と、入口の階層とは異なる階層に駐車スペースが設けられた駐車場の入口に進入したことを検出する駐車場進入検出手段と、駐車場の各階層の高さに関するデータを取得する駐車場高さデータ取得手段と、入口に進入したときの車両の進行方位を記憶する方位記憶手段と、車両が前記入口に進入したことを駐車場進入検出手段で検出した後、高さ方向移動量検出手段で検出した車両の高さ方向の移動量が、駐車場高さデータ取得手段で取得した高さに関するデータに基づいて得られる駐車場の1階層分の高さと等しくなったと判断し、かつ、当該判断がなされたときの進行方位変化検出手段で検出した車両の進行方位と、方位記憶手段で記憶している入口に進入したときの車両の進行方位との差が所定の角度以内である場合には、方位記憶手段で記憶している入口に進入したときの車両の進行方位と一致するように、算出手段で算出された車両の進行方位を補正する進行方位補正手段とを備えることを特徴とする。
(2) 請求項2の発明は、請求項1に記載の現在位置算出装置において、入口に進入したときの車両を上方から見たときの平面上の位置を記憶する位置記憶手段と、進行方位補正手段が算出手段で算出された車両の進行方位を補正する際に、位置記憶手段で記憶している平面上の位置と一致するように、算出手段で算出された車両の位置を補正する位置補正手段とをさらに備えることを特徴とする。
(3) 請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の現在位置算出装置において、所定の角度は、進行方位検出手段が検出する車両の進行方位の変化の誤差を考慮して設定された角度であることを特徴とする。
(4) 請求項4の発明による現在位置算出装置は、車両の方位を検出する方位検出手段と、車両の登坂、降坂時の高さ変化を検出する高さ変化検出手段と、自走式立体駐車場に入場する際の車両の方位(入場方位)を記憶する記憶手段と、高さ変化検出手段の検出結果に基づいて算出される自走式立体駐車場に入場した車両の高さ変位が自走式立体駐車場の少なくとも1階分の高さに相当し、かつ、方位検出手段で検出した車両の方位と記憶した入場方位との差が所定の角度以内である場合に、方位検出手段で検出されている方位を、記憶した入場方位で補正する方位補正手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、駐車場内の車両の位置を正確に算出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
−−−第1の実施の形態−−−
図1〜5を参照して、本発明による現在位置算出装置をカーナビゲーション装置に適用した第1の実施の形態を説明する。図1は、本実施の形態のカーナビゲーション装置の全体構成を示す図である。カーナビゲーション装置1は、車両位置周辺の道路地図を表示する機能、出発地から目的地までの推奨経路を演算する機能、演算された推奨経路に基づいて経路誘導を行う機能など、車両の走行に関する情報を提示する機能を兼ね備えている。カーナビゲーション装置1は、いわゆるナビゲーションあるいは道路案内などを行う装置である。
【0008】
図1において、11は車両の現在地を検出する現在地検出装置であり、たとえば車両の進行方位の変化量を検出するためのジャイロセンサ11a、車両の上下方向の移動量を検出するための加速度センサ11b、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号を検出するGPSセンサ11c、車速を検出する車速センサ11d等から成る。
【0009】
100は制御装置であり、CPU101およびその周辺回路から成る。CPU101およびその周辺回路は互いにバスで接続されている。周辺回路は、メモリ102、パラレルI/O103、A/D変換器104a,104b、シリアルI/O105、カウンタ106、グラフィックコントローラ107、画像メモリ108、地図記憶装置109等から成る。14は車室内の乗員が視認可能な位置に配設されて、地図や各種情報を表示する表示モニタである。15は乗員が車両の目的地等の入力など、各種操作入力を行うためのスイッチである。スイッチ15は、表示モニタ14の画面上に設けられたタッチパネルスイッチや、カーソルの移動や画面のスクロールを指示するジョイスティックなどを含む。スイッチ15は、リモコンスイッチであってもよく、表示画面周辺に設けられたスイッチであってもよい。
【0010】
制御装置100のメモリ102は、制御プログラムを格納するROMおよび作業エリアのRAM、および、各種設定値などを記憶する不揮発メモリを含むメモリである。CPU101は、メモリ102にアクセスして制御プログラムを実行し、各種の制御を行う。パラレルI/O103は、スイッチ15を構成する個別のスイッチ等が接続されるパラレルI/Oポートである。A/D変換器104a,104bは、それぞれジャイロセンサ11aおよび加速度センサ11bのアナログ信号をA/D変換する変換器である。シリアルI/O105は、GPSセンサ11cからのシリアル信号を受信するシリアルI/Oポートである。カウンタ106は、たとえば車軸の回転に伴って車速センサ11dから出力されるパルス信号をカウントするカウンタである。
【0011】
グラフィックコントローラ107は、CPU101から出力される表示データを、画像データとして画像メモリ(ビデオRAM)であるメモリ108に格納し、メモリ108に格納された画像データを表示モニタ14に表示するための制御を行う。CPU101から出力される表示データは、各種の文字データや道路地図などの各種の図形データなどから成る。制御装置100は、表示モニタ14の表示制御装置として機能する。
【0012】
地図記憶装置109は、ナビゲーション処理に使用する道路地図データやPOI情報(Point of Interest 観光地や各種施設の情報)など各種の情報を格納する地図記憶装置であり、ハードディスク装置が用いられている。なお、地図記憶装置109は、ハードディスク装置以外にも、道路地図データが格納されたCD−ROMやDVD、その他の記録媒体、および、その読み出し装置であってもよい。
【0013】
−−−データ構成−−−
道路地図データは、地図に関する情報であり、地図表示用データ、経路探索用データ、誘導データ(交差点名称・道路名称・方面名称・方向ガイド・施設情報など)などから成る。地図表示用データは道路や道路地図の背景を表示するためのデータである。経路探索用データは、道路形状とは直接関係しない分岐情報などから成るデータであり、主に推奨経路を演算(経路探索)する際に用いられる。誘導データは、交差点の名称などから成るデータであり、演算された推奨経路に基づき運転者等に推奨経路を誘導する際に用いられる。
【0014】
道路地図データには、駐車場の出入口の位置を含む駐車場の位置を示すデータが含まれている。駐車場には、たとえば地上5階から地上7階まで駐車スペースがある自走式立体駐車場や、地下1階から地下3階にまで設けられた自走式立体駐車場(地下駐車場)など、複数の階層のそれぞれに駐車スペースが設けられている自走式立体駐車場がある。道路地図データには、これらの自走式立体駐車場の各階層の高さのデータも含まれている。
【0015】
このように構成されるカーナビゲーション装置1は、現在地検出装置11により取得した情報および地図記憶装置109に格納されている道路地図データに基づき各種のナビゲーションを行う。たとえば、制御装置100のCPU101は、車両の現在位置近辺の道路地図および車両の現在位置を表示モニタ14に表示し、経路探索によって得られた経路(推奨経路)に沿ってドライバーを誘導するように各部を制御する。
【0016】
−−−自走式立体駐車場走行時のジャイロセンサ11aの誤差について−−−
自走式立体駐車場では、駐車場入口のある階層(通常1階)から駐車スペースが設けられた他の階層(駐車フロア)に到達するまで、スロープを走行して移動する。スロープを走行する際、車両がスロープの傾斜角度と略同じ角度に前後方向に傾斜するため、車両に搭載されたジャイロセンサ11aも同様に傾斜する。一般的に、ジャイロセンサ11aは、設置角度が水平に保たれていないと出力値の誤差が大きくなるため、たとえば、図2に示すような螺旋状に設けられたスロープを走行する場合のように、車両が傾斜した状態で旋回すると、算出される車両の旋回角度の誤差も大きくなってしまう。
【0017】
そこで、本実施の形態のカーナビゲーション装置1では、各階の駐車フロアに移動するために図2のような螺旋状のスロープが設けられた駐車場に進入する場合には、駐車フロア1階分の高さだけ車両(車両10)が高さ方向に移動したときに、車両10が入口進入時からおおよそ360度旋回していることを検出すると、車両10が360度旋回したものとして車両の進行方位を駐車場入口進入時の方位に一致するように補正する。
【0018】
たとえば、図2,3に示すような螺旋状のスロープが設けられた駐車場に進入する場合について説明する。CPU101は、算出した自車位置と、道路地図データに含まれる駐車場の設置位置と、ジャイロセンサ11aからの出力に基づいて、車両10が道路から駐車場入口へ進入したか否かを判断する。たとえば、CPU101は、算出した自車位置が、道路地図データに含まれる駐車場の入口位置近傍に位置すると判断し、かつ、ジャイロセンサ11aからの出力に基づいて車両10が駐車場入口に向かって旋回したことを検出すると、車両10が駐車場入口に進入したと判断する。また、たとえば、旋回することなく道路から駐車場入口へ進入できるような場合には、CPU101は算出した自車位置が駐車場入口に位置しているか否かによって、駐車場入口へ進入したか否かを判断する。CPU101は、車両10が駐車場入口に進入したと判断すると、そのときの車両10の位置および進行方位をメモリ102に記憶させるとともに、そのときの車両10の高さ位置を基準の高さ位置に設定してメモリ102に記憶させる。
【0019】
図4(a)〜(d)は、車両の位置および進行方向(進行方位)と、駐車場のスロープとの位置関係を平面的に示す模式図である。141は車両10の位置および進行方位を示すカーマークであり、表示モニタ14の画面に表示される。すなわち図4(a)〜(d)は、表示モニタ14の画面に表示される表示内容でもある。142は、駐車場入口への進入時の車両10の位置および進行方位を示すマークである。図4(a)〜(d)に示すカーマーク141の位置および向きは、CPU101による自車位置の算出結果を反映している。なお、図4(a)〜(d)では、説明の便宜上、カーマーク141の向きを示す矢印をカーマーク141とは別に付して説明する。
【0020】
図4(a)は、図2に示すように車両10が駐車場入口に進入したときのカーマーク141と、駐車場のスロープとの位置関係を平面的に示した図である。カーマーク141は、駐車場入口に位置し、その向きがスロープに向かっている。CPU101は駐車場入口における車両10の位置および進行方位をメモリ102に記憶させる。
【0021】
車両10がスロープを登り始め、約半周したとき、カーマーク141は、図4(b)に示すように、螺旋状のスロープの中心位置を挟んで駐車場入口とは反対側に位置し、カーマーク141の向きは、駐車場入口への進入時とは略180度反対を向いている。車両10がさらに半周して(すなわち360度旋回して)、図3に示すように車両10が駐車場入口の真上に来ても、上述したジャイロセンサ11aの誤差により、カーマーク141に向きは、入口進入時の向きからずれることがある(図4(c))。
【0022】
このずれを補正するため、CPU101は以下の処理を行う。CPU101は、車両10が駐車場入口に進入したと判断した後、地図記憶装置109に記録されている道路地図データから、当該駐車場の各階層の高さのデータを読み込む。そして、CPU101は、先にメモリ102に記憶させた駐車場入口における車両10の高さを基準として、車両10の高さ位置の変化量を算出する。CPU101は、算出した車両10の高さ位置の変化量が、駐車場の各階層の高さのデータから算出される当該駐車場の1階層分の高さと略等しくなったか否かを判断する。なお、車両10の高さ位置の変化量は、加速度センサ11bからの出力信号に基づいて算出される。たとえば図3の場合では、CPU101は、駐車場入口における車両10の高さを基準として車両10の高さ位置の変化量を算出し、算出した車両10の高さ位置の変化量が当該駐車場の1階部分(入口部分)と2階部分との高さの差と略等しくなったか否かを判断する。
【0023】
CPU101は、算出した車両10の高さ位置の変化量が当該駐車場の1階層分の高さと略等しくなったと判断すると、そのときの車両10の進行方位と、駐車場入口進入時の進行方位との差△θの絶対値|△θ|が所定の角度θ1以下であるか否かを判断する。なお、角度θ1は、ジャイロセンサ11aの誤差を考慮してあらかじめ定められる値であり、たとえば数度程度の値である。
【0024】
CPU101は、絶対値|△θ|が角度θ1以下であると判断すると、車両10の進行方位をメモリ102に記憶している駐車場入口進入時の進行方位と一致するように補正する。また、CPU101は、車両10の進行方位を補正した時点の車両の高さ位置を基準の高さ位置に再設定してメモリ102に記憶させる。その結果、図4(d)に示すように、カーマーク141の向きが、駐車場入口進入時の車両10の向きと一致するように補正される。
【0025】
以降、車両10がスロープを走行してさらに上層階へ移動したときも上述した処理と同様の処理が行われる。たとえば、車両10がスロープの2階部分から3階部分へ向かって移動すると、CPU101は、進行方位の補正が行われた時点である2階部分における車両10の高さを基準として車両10の高さ位置の変化量を算出する。そしてCPU101は、算出した車両10の高さ位置の変化量が当該駐車場の2階部分と3階部分との高さの差と略等しくなったか否かを判断する。なお、このとき、駐車場入口における車両10の高さを基準として車両10の高さ位置の変化量を算出し、その変化量が当該駐車場の入口部分と3階部分との高さの差と略等しくなったか否かを判断するようにしてもよい。
【0026】
CPU101は、算出した車両10の高さ位置の変化量が当該駐車場の2階部分と3階部分との高さの差と略等しくなったと判断すると、そのときの車両10の進行方位と、駐車場入口に進入したときの進行方位との差の絶対値|△θ|が所定の角度θ1以下であるか否かを判断する。CPU101は、車両10の進行方位と駐車場入口に進入したときの進行方位との差の絶対値|△θ|が所定の角度θ1以下であると判断すると、車両10の進行方位をメモリ102に記憶している駐車場入口進入時の進行方位と一致するように補正する。
【0027】
−−−フローチャート−−−
図5は、上述した進行方位補正処理の動作を示したフローチャートである。車両の不図示のイグニッションキーによりアクセサリスイッチがオン(ACC ON)されると、図5に示す処理を行うプログラムが起動されてCPU101で実行される。ステップS1において、算出した自車位置と、道路地図データに含まれる駐車場の設置位置に関するデータと、ジャイロセンサ11aからの出力に基づいて、車両10が道路から駐車場入口へ進入したか否かを判断して、車両10が駐車場に進入したと判断されるまで待機する。ステップS1が肯定判断されるとステップS3へ進み、地図記憶装置109に記録されている道路地図データから、当該駐車場の各階層の高さのデータを読み込んでステップS5へ進む。
【0028】
ステップS5において、車両10の位置および進行方位をメモリ102に記憶させるとともに、車両10の高さ位置を基準の高さ位置に設定してメモリ102に記憶させてステップS7へ進む。ステップS7において、メモリ102に記憶している基準の高さからの車両10の高さ位置の変化量を算出してステップS9へ進む。ステップS9において、車両の不図示のイグニッションキーによりアクセサリスイッチがオフ(ACC OFF)されたか否かを判断する。ステップS9が肯定判断されると本プログラムを終了する。ステップS9が否定判断されるとステップS11へ進み、ステップS7で算出した車両10の高さ位置の変化量が、ステップS3で読み込んだ駐車場の各階層の高さのデータから算出される駐車場の1階層分の高さと略等しくなったか否かを判断する。
【0029】
ステップS11が肯定判断されるとステップS13へ進み、車両10の進行方位を算出してステップS15へ進む。ステップS15において、ステップS5でメモリ102に記憶した駐車場入口進入時の進行方位と、ステップS13で算出した車両10の進行方位との差△θの絶対値|△θ|が所定の角度θ1以下であるか否かを判断する。ステップS15が肯定判断されるとステップS17へ進み、車両10の進行方位をステップS5でメモリ102に記憶した駐車場入口進入時の進行方位と一致するように補正してステップS19へ進む。
【0030】
ステップS19において、車両の高さ位置を算出して、算出した車両の高さ位置を基準の高さ位置に再設定し、メモリ102に記憶させてステップS7へ戻る。ステップS11が否定判断されるかステップS15が否定判断されるとステップS7へ戻る。
【0031】
上述したカーナビゲーション装置1では次の作用効果を奏する。
(1) 駐車場入口に進入後、車両10の高さ方向の移動量が駐車場の1階層分の高さと等しくなったと判断され、かつ、そのときの車両10の進行方位と、駐車場入口進入時の車両10の進行方位との差が所定の角度θ1以内である場合には、駐車場入口進入時の車両10の進行方位と一致するように、算出された車両の進行方位を補正するように構成した。これにより、駐車場で車両10が旋回を繰り返しても、ジャイロセンサ11aの誤差による車両10の進行方位のずれが補正されるので、駐車場内の車両10の位置を正確に算出できる。
【0032】
(2) 車両10が駐車場の1階層分の高さだけ高さ方向に移動する度に、ジャイロセンサ11aの誤差による車両10の進行方位のずれを補正するように構成した。これにより、車両10の進行方位のずれがこまめに補正されるため、表示モニタ14に表示されるカーマーク141の向きが実際の車両10の進行方位と大きくずれることがない。したがって、表示モニタ14に表示されるカーマーク141の向きの誤差を小さくできる。
【0033】
(3) 駐車場の螺旋状のスロープを走行中に車両10の進行方位を補正するようにしたので、車両が螺旋状のスロープから駐車スペースが設けられている駐車フロアに進入する際、算出される車両10の進行方位の誤差を極力小さくできる。これにより、駐車場の各フロアを走行する際の車両10の位置を正確に算出できるようになる。
【0034】
(4) たとえば、上述した角度θ1の値を不当に大きな値としてしまうと、スロープが実際には螺旋状ではない場合のように、車両10の高さ位置が1階層分上昇したときの実際の車両10の進行方位が駐車場入口進入時の方位と異なるような駐車場でも、駐車場入口進入時の方位と一致するように、車両10の進行方位が誤って算出されてしまう。また、角度θ1の値をあまりに小さな値としてしまうと、スロープが螺旋状であるにもかかわらず、車両10の進行方位の補正が行われなくなる場合が生じる。これに対して、本実施の形態のカーナビゲーション装置1では、あらかじめ設定される角度θ1の値を、ジャイロセンサ11aの誤差を考慮して設定するようにしたので、車両10の進行方位の補正を行うか否かの判断の精度を向上でき、カーナビゲーション装置1の位置表示精度を向上できる。
【0035】
−−−第2の実施の形態−−−
図6,7を参照して、本発明による現在位置算出装置をカーナビゲーション装置に適用した第2の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同様の構成要素には対応する符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同様である。本実施の形態のカーナビゲーション装置1では、第1の実施の形態における車両10の進行方位の補正に加え、以下に詳述するように、算出される車両10の位置も補正する。
【0036】
図6は、車両の位置および進行方位と、駐車場のスロープとの関係を平面的に示す模式図である。図6(a)に示すように、車両10が駐車場の1階の入口から、螺旋状のスロープを走行して2階部分の高さ位置まで移動すると、第1の実施の形態で説明したように、カーマーク141の向きが駐車場入口進入時の向きと一致するように補正される。図6(a)において、141aは方位補正前のカーマークを示し、141bは方位補正後のカーマークを示している。
【0037】
図6(a)に示すように、車両10が螺旋状のスロープを走行して2階部分の高さ位置まで移動すると、車両10が実際には駐車場入口の直上に位置したとしても、算出される車両10の現在位置が実際の車両10の位置からずれることがある。そのため、本来であれば駐車場入口へ進入したときのカーマーク142の位置と同じ位置にカーマーク141が表示されなければないところ、図6(a)に示すように、駐車場入口へ進入したときのカーマーク142の位置から少し離れた位置にカーマーク141(カーマーク141b)が表示されてしまう。車両10がさらに3階部分の高さ位置まで移動すると、図6(b)に示したカーマーク141dのように、カーマーク141の表示位置はさらにずれてしまう。なお、図6(c)は、図6(b)のカーマーク141,142の表示部分を拡大した図である。このように、車両10が螺旋状のスロープを移動するにつれて、実際の車両10の位置と、算出される車両の位置との乖離が大きくなる。
【0038】
そこで、本実施の形態のカーナビゲーション装置1では、次のように、算出される車両10の位置を補正する。CPU101は駐車場進入後、最初に進行方位が補正された時点で算出される車両10の位置(以下、初回方位補正時位置P1と呼ぶ)と、2回目に進行方位が補正された時点で算出される車両10の位置(以下、第2回方位補正時位置P2と呼ぶ)とをメモリ102に記憶させる。そして、CPU101は、駐車場入口に進入した際にメモリ102に記憶させた車両10の位置(以下、進入時車両位置P0と呼ぶ)と、初回方位補正時位置P1とのずれの方向(初回乖離方向v1)および距離(初回乖離距離x1)を算出する。次いで、CPU101は、初回方位補正時位置P1と第2回方位補正時位置P2とのずれの方向(第2回乖離方向v2)および距離(第2回乖離距離x2)を算出する。
【0039】
その後、CPU101は、初回乖離方向v1と第2回乖離方向v2との方位差の絶対値が所定角度θ2以下であり、かつ、初回乖離距離x1と第2回乖離距離x2との距離差の絶対値が所定距離L2以下であると判断すると、当該駐車場のスロープが螺旋状のスロープであると判断して、進入時車両位置P0と一致するように第2回方位補正時位置P2の位置を補正する。なお、所定角度θ2および所定距離L2は、カーナビゲーション装置1の設計段階で適宜設定される。その結果、図6(d)に示したカーマーク141eのように、カーマーク141が正しい位置に表示される。
【0040】
さらに車両10がスロープを走行する場合、CPU101は、3回目に進行方位が補正された時点(車両が4階部分の高さ位置まで移動した時点)で算出される車両10の位置(以下、第3回方位補正時位置P3と呼ぶ)をメモリ102に記憶させるとともに、第2回方位補正時位置P2と第3回方位補正時位置P3とのずれの方向(第3回乖離方向v3)および距離(第3回乖離距離x3)を算出する。
【0041】
そしてCPU101は、初回乖離方向v1と第3回乖離方向v3との方位差の絶対値が所定角度θ2以下であり、かつ、初回乖離距離x1と第3回乖離距離x3との距離差の絶対値が所定距離L2以下であると判断すると、進入時車両位置P0と一致するように第3回方位補正時位置P3の位置を補正する。なお、CPU101は4回目以降(n回目)に進行方位を補正する際には、第3回方位補正時位置P3を補正するときと同様に、算出される車両10の現在位置(第n回方位補正時位置Pn)を補正する。
【0042】
−−−フローチャート−−−
図7は、上述した進行方位および位置の補正処理の動作を示したフローチャートである。車両の不図示のイグニッションキーによりアクセサリスイッチがオン(ACC ON)されると、図7に示す処理を行うプログラムが起動されてCPU101で実行される。ステップS1からステップS5まで、および、ステップS7からステップS19までは、第1の実施の形態と同内容であるので説明を省略する。
【0043】
ステップS5が実行されるとステップS6へ進み、駐車場へ進入後の進行方位の補正回数をカウントするカウンタの値nを0としてステップS7へ進む。
【0044】
ステップS19が実行されるとステップS21へ進み、カウンタの値nを1つ増やしてステップS23へ進む。ステップS23において、ステップS17で行われた直近の進行方位の補正が駐車場へ進入後の初回であったか否か、すなわちカウンタの値nが1であるか否かを判断する。ステップS23が肯定判断されるとステップS25へ進み、初回方位補正時位置P1をメモリ102に記憶させるとともに、初回乖離方向v1および初回乖離距離x1を算出してメモリ102に記憶させてステップS7へ戻る。
【0045】
ステップS23が否定判断されるとステップS31へ進み、カウンタの値nに対応する第n回方位補正時位置Pnをメモリ102に記憶させるとともに、第(n−1)回方位補正時位置と第n回方位補正時位置とのずれの方向(第n回乖離方向vn)および距離(第n回乖離距離xn)を算出してステップS33へ進む。ステップS33において、初回乖離方向v1と第n回乖離方向vnとの方位差の絶対値が所定角度θ2以下であり、かつ、初回乖離距離x1と第n回乖離距離xnとの距離差の絶対値が所定距離L2以下であるか否か判断する。
【0046】
ステップS33が肯定判断されるとステップS35へ進み、進入時車両位置P0と一致するように第n回方位補正時位置Pnの位置を補正してステップS7へ戻る。ステップS33が否定判断されるとステップS7へ戻る。
【0047】
第2の実施の形態のカーナビゲーション装置1では、第1の実施の形態の作用効果に加えて次の作用効果を奏する。
(1) 進行方位の補正に加えて、算出される車両10の現在位置も補正するように構成したので、駐車場内の車両10の位置をさらに正確に算出できる。
【0048】
(2) 初回乖離方向v1と第2回乖離方向v2との方位差の絶対値が所定角度θ2の範囲内であり、かつ、初回乖離距離x1と第2回乖離距離x2との距離差の絶対値が所定距離L2内であると判断すると、当該駐車場のスロープが螺旋状のスロープであると判断して、進入時車両位置P0と一致するように第2回方位補正時位置P2の位置を補正するように構成した。これにより、車両10が走行するスロープが螺旋状であるか否かを正確に判断できるため、スロープの形状により上述した位置の補正を行うことが不適当である駐車場で誤って位置を補正してしまうことを防止でき、カーナビゲーション装置1の位置表示精度を向上できる。
【0049】
−−−変形例−−−
(1) 上述の説明では、地図記憶装置109に格納された道路地図データには、自走式立体駐車場の各階層の高さのデータも含まれているものとして説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、道路地図データに立体駐車場の各階層の高さのデータが含まれていなくても、駐車場の総高さおよび階層数(階数)のデータが含まれていれば、総高さおよび階層数から1階層分の高さを算出するようにしてもよい。すなわち、駐車場の各階層の高さに関する何らかのデータから1階層分の高さを算出するようにしてもよい。
【0050】
(2) 上述の説明では、立体駐車場を上層階に向かって走行する場合について説明したが、たとえば地上または地下の入口から進入して、地下駐車場を下層階に向かって走行する場合も同様である。
【0051】
(3) 上述の説明では、駐車場のスロープが図2に示すように駐車フロアの外部に設けられているものとして説明しているが、本発明はこれに限定されず、駐車場のスロープが駐車フロアの中に設けられていてもよい。少なくとも、他の階層に移動する際には360度旋回する走行通路を走行する必要がある立体駐車場であればよい。
【0052】
(4) 上述の説明では、道路地図データには駐車場のスロープの一周当たりの走行距離が分かるようなリンクデータが含まれてはいないものとして説明しているが本発明はこれに限定されない。たとえば、駐車場のスロープの一周当たりの走行距離が分かるようなリンクデータが道路地図データに含まれている場合には、車速センサ11dのパルス信号に基づいて車両10の走行距離を算出し、車両10がスロープを一周したと判断されたときに、算出される車両10の進行方位や位置を補正するようにしてもよい。また、駐車場のスロープの一周当たりの走行距離が分かるようなリンクデータが道路地図データに含まれている場合には、車速センサ11dのパルス信号に基づいて車両10の走行距離を算出し、車両10がスロープを一周する前と後での車両10の高さ位置の変化量を駐車場の1階層当たりの高さとして算出てもよい。そして、算出した駐車場の1階層当たりの高さに基づいて、上述したように、算出される車両10の進行方位や位置を補正するようにしてもよい。
【0053】
(5) 上述の説明では、カーナビゲーション装置1は、出発地から目的地までの推奨経路を演算する機能や、演算された推奨経路に基づいて経路誘導を行う機能を備えているが、このような経路誘導機能は必須ではない。
【0054】
(6) 上述の説明では、立体駐車場のスロープを走行する際に、車両10の進行方位、または、車両10の進行方向および車両10の位置を補正しているが、車両10の位置のみを補正するようにしてもよい。
【0055】
(7) 上述した第1の実施の形態では、車両10が駐車場入口に進入したと判断されると、そのときの車両10の位置および進行方位、そのときの車両10の高さ位置をメモリ102に記憶させるように構成しているが、車両10の位置の記憶は必須ではない。
(8) 上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0056】
以上の実施の形態およびその変形例において、たとえば、進行方位変化検出手段および方位検出手段はジャイロセンサ11aに、駐車場高さデータ取得手段は地図記憶装置109に、方位記憶手段、位置記憶手段および記憶手段はメモリ102にそれぞれ対応する。算出手段、駐車場進入検出手段、進行方位補正手段、位置補正手段および方位補正手段は、CPU101およびCPU101で実行されるメモリ102に格納された制御プログラムによって実現される。走行距離検出手段は、車速センサ11dとカウンタ106とCPU101とによって実現される。高さ方向移動量検出手段および高さ変化検出手段は、加速度センサ11bとA/D変換器104bとCPU101とによって実現される。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する際、上記の実施形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係になんら限定も拘束もされない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】カーナビゲーション装置1の全体構成を示す図である。
【図2】螺旋状のスロープが設けられた自走式立体駐車場の一例を模式的に示す図である。
【図3】図2の駐車場の2階部分のスロープを車両10が走行している状態を示す図である。
【図4】車両の位置および進行方向(進行方位)と、駐車場のスロープとの位置関係を平面的に示す模式図である。
【図5】進行方位補正処理の動作を示したフローチャートである。
【図6】車両の位置および進行方位と、駐車場のスロープとの関係を平面的に示す模式図である。
【図7】進行方位および位置の補正処理の動作を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
1 カーナビゲーション装置 11a ジャイロセンサ
11b 加速度センサ 11d 車速センサ
14 表示モニタ 100 制御装置
101 CPU 102 メモリ
104a,104b A/D変換器 106 カウンタ
109 地図記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進行方位の変化を検出する進行方位変化検出手段と、
前記車両の走行距離を検出する走行距離検出手段と、
前記進行方位変化検出手段で検出した前記車両の進行方位の変化と、前記走行距離検出手段で検出した前記車両の走行距離とに基づいて、前記車両の位置および進行方位を算出する算出手段と、
前記車両の高さ方向の移動距離を検出する高さ方向移動量検出手段と、
入口の階層とは異なる階層に駐車スペースが設けられた駐車場の前記入口に進入したことを検出する駐車場進入検出手段と、
前記駐車場の各階層の高さに関するデータを取得する駐車場高さデータ取得手段と、
前記入口に進入したときの前記車両の進行方位を記憶する方位記憶手段と、
前記車両が前記入口に進入したことを前記駐車場進入検出手段で検出した後、前記高さ方向移動量検出手段で検出した前記車両の高さ方向の移動量が、駐車場高さデータ取得手段で取得した前記高さに関するデータに基づいて得られる前記駐車場の1階層分の高さと等しくなったと判断し、かつ、前記判断がなされたときの前記進行方位変化検出手段で検出した前記車両の進行方位と、前記方位記憶手段で記憶している前記入口に進入したときの前記車両の進行方位との差が所定の角度以内である場合には、前記方位記憶手段で記憶している前記入口に進入したときの前記車両の進行方位と一致するように、前記算出手段で算出された前記車両の進行方位を補正する進行方位補正手段とを備えることを特徴とする現在位置算出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の現在位置算出装置において、
前記入口に進入したときの前記車両を上方から見たときの平面上の位置を記憶する位置記憶手段と、
前記進行方位補正手段が前記算出手段で算出された前記車両の進行方位を補正する際に、前記位置記憶手段で記憶している前記平面上の位置と一致するように、前記算出手段で算出された前記車両の位置を補正する位置補正手段とをさらに備えることを特徴とする現在位置算出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の現在位置算出装置において、
前記所定の角度は、前記進行方位検出手段が検出する前記車両の進行方位の変化の誤差を考慮して設定された角度であることを特徴とする現在位置算出装置。
【請求項4】
車両の方位を検出する方位検出手段と、
前記車両の登坂、降坂時の高さ変化を検出する高さ変化検出手段と、
自走式立体駐車場に入場する際の前記車両の方位(入場方位)を記憶する記憶手段と、
前記高さ変化検出手段の検出結果に基づいて算出される前記自走式立体駐車場に入場した前記車両の高さ変位が前記自走式立体駐車場の少なくとも1階分の高さに相当し、かつ、前記方位検出手段で検出した前記車両の方位と前記記憶した入場方位との差が所定の角度以内である場合に、前記方位検出手段で検出されている方位を、前記記憶した入場方位で補正する方位補正手段とを備えることを特徴とする現在位置算出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−197137(P2008−197137A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29177(P2007−29177)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】