説明

現在位置算出装置

【課題】車両の位置を正確に算出できる現在位置算出装置を提供する。
【解決手段】たとえば、車両が所定角度旋回したという条件や、GPSセンサ11cでGPS信号を受信できないという条件を満たすと、ジャイロセンサ11aの出力を補正することで車両10の水平方向の旋回角加速度azcを算出するように構成した。これにより、螺旋状のスロープを有する駐車場などに進入した際に、ジャイロセンサ11aの検出信号の出力値を補正できるので、車両の位置や向き(進行方位)を正確に算出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現在位置を算出する現在位置算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載され、車両の現在位置を算出して周辺地図とともに表示するカーナビゲーション装置が知られている。このカーナビゲーション装置では、自走式立体駐車場を走行して旋回を繰り返したために生じる方位データの累積誤差を、自走式立体駐車場から出場する際に修正している(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−14479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のカーナビゲーション装置では、自走式立体駐車場内を走行している間は、方位データの修正(補正)が行われないため、駐車場内では車両の進行方位を正しく算出できない恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による現在位置算出装置は、車両の旋回状態を検出する旋回状態検出手段と、旋回状態検出手段の出力に基づいて、車両の旋回角度を算出する旋回角度算出手段と、車両の外部から送信される送信波を受信する受信手段とを備え、旋回角度算出手段は、算出した車両の旋回角度が所定の角度以上であり、かつ、受信手段で送信波を受信できない場合、旋回状態検出手段の出力を補正して車両の旋回角度を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車両の位置を正確に算出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1〜5を参照して、本発明による現在位置算出装置をカーナビゲーション装置に適用した一実施の形態を説明する。図1は、本実施の形態のカーナビゲーション装置の全体構成を示す図である。カーナビゲーション装置1は、車両位置周辺の道路地図を表示する機能、出発地から目的地までの推奨経路を演算する機能、演算された推奨経路に基づいて経路誘導を行う機能など、車両の走行に関する情報を提示する機能を兼ね備えている。カーナビゲーション装置1は、いわゆるナビゲーションあるいは道路案内などを行う装置である。
【0008】
図1において、11は車両の現在地(現在位置)を検出する現在地検出装置であり、たとえば車両の進行方位の変化(旋回状態)を検出するためのジャイロセンサ11a、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号を検出するGPSセンサ11c、車速を検出する車速センサ11d等から成る。12は車両のイグニッションスイッチである。
【0009】
100は制御装置であり、CPU101およびその周辺回路から成る。CPU101およびその周辺回路は互いにバスで接続されている。周辺回路は、メモリ102、パラレルI/O103、A/D変換器104、シリアルI/O105、カウンタ106、グラフィックコントローラ107、画像メモリ108、地図記憶装置109、インターフェース(I/F)110等から成る。14は車室内の乗員が視認可能な位置に配設されて、地図や各種情報を表示する表示モニタである。15は乗員が車両の目的地等の入力など、各種操作入力を行うためのスイッチである。スイッチ15は、表示モニタ14の画面上に設けられたタッチパネルスイッチや、カーソルの移動や画面のスクロールを指示するジョイスティックなどを含む。スイッチ15は、リモコンスイッチであってもよく、表示画面周辺に設けられたスイッチであってもよい。
【0010】
制御装置100のメモリ102は、制御プログラムを格納するROMおよび作業エリアのRAM、および、各種設定値などを記憶する不揮発メモリを含むメモリである。CPU101は、メモリ102にアクセスして制御プログラムを実行し、各種の制御を行う。パラレルI/O103は、スイッチ15を構成する個別のスイッチ等が接続されるパラレルI/Oポートである。A/D変換器104は、ジャイロセンサ11aのアナログ信号をA/D変換する変換器である。シリアルI/O105は、GPSセンサ11cからのシリアル信号を受信するシリアルI/Oポートである。カウンタ106は、たとえば車軸の回転に伴って車速センサ11dから出力されるパルス信号をカウントするカウンタである。
【0011】
グラフィックコントローラ107は、CPU101から出力される表示データを、画像データとして画像メモリ(ビデオRAM)であるメモリ108に格納し、メモリ108に格納された画像データを表示モニタ14に表示するための制御を行う。CPU101から出力される表示データは、各種の文字データや道路地図などの各種の図形データなどから成る。制御装置100は、表示モニタ14の表示制御装置として機能する。
【0012】
地図記憶装置109は、ナビゲーション処理に使用する道路地図データやPOI情報(Point of Interest 観光地や各種施設の情報)など各種の情報を格納する地図記憶装置であり、ハードディスク装置が用いられている。なお、地図記憶装置109は、ハードディスク装置以外にも、道路地図データが格納されたCD−ROMやDVD、その他の記録媒体、および、その読み出し装置であってもよい。I/F110は、車両のイグニッションスイッチ12のオンオフ状態を表す信号を受信するインターフェースである。
【0013】
−−−データ構成−−−
道路地図データは、地図に関する情報であり、地図表示用データ、経路探索用データ、誘導データ(交差点名称・道路名称・方面名称・方向ガイド・施設情報など)などから成る。地図表示用データは道路や道路地図の背景を表示するためのデータである。経路探索用データは、道路形状とは直接関係しない分岐情報などから成るデータであり、主に推奨経路を演算(経路探索)する際に用いられる。誘導データは、交差点の名称などから成るデータであり、演算された推奨経路に基づき運転者等に推奨経路を誘導する際に用いられる。
【0014】
このように構成されるカーナビゲーション装置1は、現在地検出装置11により取得した情報および地図記憶装置109に格納されている道路地図データに基づいて、車両の現在位置を算出するとともに各種のナビゲーションを行う。たとえば、制御装置100のCPU101は、車両の現在位置近辺の道路地図および車両の現在位置を表示モニタ14に表示し、経路探索によって得られた経路(推奨経路)に沿ってドライバーを誘導するように各部を制御する。CPU101は、現在位置の算出処理を所定周期毎に繰り返して実行し、前回の演算時から今回の演算時までの車両10の移動量を算出し、前回の演算時に算出した現在位置から今回算出した移動量だけ移動させた後の位置を、車両10の現在位置として算出する。なお、CPU101は、公知のマップマッチング処理も行っている。
【0015】
−−−自走式立体駐車場走行時のジャイロセンサ11aの誤差について−−−
たとえば、自走式の地下駐車場や自走式立体駐車場などでは、駐車場入口が設けられた階層(通常1階)から駐車スペースが設けられた他の階層(駐車フロア)に到達するまで、スロープを走行して移動する必要がある。自走式の地下駐車場は、たとえばフランスのパリのように街の景観を重視する都市や、地上に新たな駐車場を設置することが困難な都市などに多く見られる。車両10がスロープを走行する際、車両10がスロープの傾斜角度と略同じ角度に前後方向に傾斜するため、車両10に搭載されたジャイロセンサ11aも車両10とともに傾斜する。一般的に、ジャイロセンサ11aは、設置角度が水平に保たれていないと出力値の誤差が大きくなるため、たとえば、図2に示すような螺旋状に設けられたスロープを走行する場合のように、車両10が傾斜した状態で旋回すると、算出される車両10の旋回角度の誤差も大きくなってしまう。また、図2に示すように地下の駐車場へ向かうためのスロープでは、GPS衛星からのGPS信号が遮られてしまってGPSセンサ11cで受信できないため、GPS信号に基づいて車両10の正確な位置、進行方位を検出できない。
【0016】
たとえば、車両10の前後方向の傾斜角度を検出する加速度センサなどをカーナビゲーション装置1に設け、この加速度センサで検出した車両10の前後方向の傾斜角度に基づいて、ジャイロセンサ11aの検出信号の出力値を補正することで、車両10の旋回角度を正しく算出することができる。しかし、加速度センサの設置により、カーナビゲーション装置1の製造コストが高くなってしまう。
【0017】
そこで、本実施の形態のカーナビゲーション装置1では、たとえば、螺旋状のスロープを地下に向かって走行していると推定される場合には、次のようにして車両の進行方位を補正する。
【0018】
なお、以下の説明では、図2に示すような螺旋状のスロープが設けられた地下駐車場に進入する場合を例として説明する。CPU101は、算出した自車位置と、道路地図データに含まれる駐車場の設置位置と、ジャイロセンサ11aからの出力に基づいて、車両10が道路から外れたか否かを判断する。たとえば、CPU101は、道路地図データに含まれる道路に関する情報やジャイロセンサ11aからの出力などに基づいて、車両10が道路の延在方向とは異なる方向を向いたことを検出する(この条件を条件(a)とする)と、さらに、たとえば以下の条件(b)〜(d)を満足するか否かを判断する。
(b) 車速が所定の速度(たとえば30km/hr)以下である
(c) 車両が所定の角度(たとえば360度)以上旋回した
(d) GPSセンサ11cでGPS信号を受信できない
【0019】
すなわち、上述した各条件(a)〜(d)を満たすことで、車両10が螺旋状のスロープが設けられた地下駐車場に進入するものと推定する。一般的に、地下駐車場のスロープの傾斜角度はたとえば5度程度とされていることが多い。そこで、本実施の形態のカーナビゲーション装置1では、上述した各条件を満たすことで、車両10が車両10の前側が下になるように所定角度θ1(たとえば5度)だけ傾斜したものとして、すなわち、ジャイロセンサ11aが車両10の前側が下になるように所定角度θ1だけ傾斜したものとして、ジャイロセンサ11aの出力を補正(下り勾配補正)する。
【0020】
ジャイロセンサ11aからは、ジャイロセンサ11aに与えられた角加速度の大きさに応じた電圧が出力される。たとえば、ジャイロセンサ11aが図3に示すようにZ軸を回転中心とする角加速度を検出するセンサであるものとする。ここで、ジャイロセンサ11aの傾きが0度、すなわち、ジャイロセンサ11aの図3におけるZ軸が鉛直方向上側を向いている場合に、ジャイロセンサ11aから出力される電圧の大きさで表される角加速度(ジャイロ出力角加速度)をazjする。また、図4(a)に示すように、カーナビゲーション装置1が車両10に搭載された状態で、車両10が水平な路面に置かれているときのジャイロセンサ11aのZ軸と鉛直方向との角度差、すなわち、車両10に対するジャイロセンサ11aの取付角度をθoffとする。図4(b)に示すように、車両10の進行方向に対して道路が水平面から傾斜する角度をθrとすると、車両10の水平方向の旋回角加速度azcは、次の(1)式で表される。
azc = azj×(cos(θr+θoff)) ・・・(1)
ここで、θrおよびθoffについては、図4における図示反時計方向に(車両10の前側が下になるように)傾斜したときに正の値となるものとする。
【0021】
すなわち、本実施の形態のカーナビゲーション装置1では、CPU101は、上述した各条件(a)〜(d)を満たすと、(1)式におけるθrを所定角度θ1として(θoffにθ1を加算して)、ジャイロセンサ11aの出力を下り勾配補正することで車両10の水平方向の旋回角加速度azcを算出する。そして、算出した旋回角加速度azcを時間積分することで、前回の演算時から今回の演算時までの間の車両10の水平方向の旋回角度θcを算出する。そして、CPU101は、このように算出した車両10の水平方向の旋回角度θcや、車速センサ11dの出力に基づいて算出される車両10の走行距離、前回の演算時における車両10の現在位置および車両10の向きなどから、今回の演算時における車両10の現在位置および車両10の向きを算出する。CPU101は、車両10の現在の位置および車両10の向きを算出すると、車両10の現在位置を示すマーク(カーマーク)を道路地図とともに表示モニタ14に表示する。
【0022】
なお、CPU101は、イグニッションスイッチ12がオンされた後に、上述した各条件(a)〜(d)を初めて満たしたときには、車両10が旋回を開始したと判断される時点に遡ってジャイロセンサ11aの出力を下り勾配補正したものとして車両10の水平方向の旋回角度θcを算出する。そして、フラグ(下り勾配フラグ)に1をセットする。下り勾配フラグは、前回の演算時に車両10の旋回開始時点まで遡った下り勾配補正がすでに行われているか否かを表すフラグである。
【0023】
車両10が旋回を中止したと判断される場合には、CPU101は、上述した下り勾配補正を中止する。すなわち、(1)式におけるθrを0度として、車両10の水平方向の旋回角加速度azc、および車両10の水平方向の旋回角度θcを算出する。また、車両10が旋回を中止したと判断される場合には、CPU101は、下り勾配フラグに0をセットする。
【0024】
車両10が地下駐車場から地上の道路に戻る際には、逆に螺旋状のスロープを上っていかなければならないが、この場合にも、ジャイロセンサ11aの出力を補正する必要がある。そこで本実施の形態のカーナビゲーション装置1では、たとえば以下の条件(e)〜(g)を満足すると、上述の場合とは逆に、車両10が螺旋状のスロープが設けられた地下駐車場から出場しようとしているものと推定する。そして、ジャイロセンサ11aが車両10の前側が上になるように所定角度θ1だけ傾斜したものとして、ジャイロセンサ11aの出力を補正(上り勾配補正)する。
(e) 車両10のイグニッションスイッチ12がオンされた
(f) その後、上述した条件(b)〜(d)を満たした
(g) 前回イグニッションスイッチ12がオンされていたときに(イグニッションスイッチ12がオフされる前に)、下り勾配補正を行っており、その後、車両10が直進していた
【0025】
すなわち、上述した各条件(e)〜(g)を満たす場合、CPU101は、(1)式におけるθoffからθ1を減算して、ジャイロセンサ11aの出力を上り勾配補正することで車両10の水平方向の旋回角加速度azcを算出する。そして、算出した旋回角加速度azcを時間積分することで、車両10の水平方向の旋回角度θcを算出する。そして、CPU101は、このように算出した車両10の水平方向の旋回角度θcや、車速センサ11dの出力に基づいて算出される車両10の走行距離、前回の演算時における車両10の現在位置および車両10の向きなどから、今回の演算時における車両10の現在の位置および車両10の向きを算出する。CPU101は、車両10の現在の位置および車両10の向きを算出すると、車両10の現在位置を示すマーク(カーマーク)を道路地図とともに表示モニタ14に表示する。
【0026】
なお、CPU101は、イグニッションスイッチ12がオンされた後に、上述した各条件(e)〜(g)を初めて満たしたときには、車両10が旋回を開始したと判断される時点に遡ってジャイロセンサ11aの出力を上り勾配補正したものとして車両10の水平方向の旋回角度θcを算出する。そして、フラグ(上り勾配フラグ)に1をセットする。上り勾配フラグは、前回の演算時に車両10の旋回開始時点まで遡った上り勾配補正がすでに行われているか否かを表すフラグである。
【0027】
車両10が旋回を中止したと判断される場合には、CPU101は、上述した上り勾配補正を中止する。すなわち、(1)式におけるθrを0度として、車両10の水平方向の旋回角加速度azc、および車両10の水平方向の旋回角度θcを算出する。また、車両10が旋回を中止したと判断される場合には、CPU101は、上り勾配フラグに0をセットする。なお、GPSセンサ11cでGPS信号を受信できたと判断される場合には、車両10が地上に出場したものとして、CPU101が上述した上り勾配補正を中止するようにしてもよい。
【0028】
−−−フローチャート−−−
図5は、車両10の現在位置を算出して表示モニタ14上に表示する処理の動作を示したフローチャートである。車両の不図示のイグニッションキーにより不図示のアクセサリスイッチがオン(ACC ON)されると、カーナビゲーション装置1の電源がオンされて、図5に示す処理を行うプログラムが起動されてCPU101で実行される。ステップS1において、下り勾配フラグおよび上り勾配フラグに0をセットしてステップS2へ進む。ステップS2において、現在地検出装置11からの各情報や、道路地図データなどを読み込んでステップS3へ進む。ステップS3において、下り勾配フラグに1がセットされているか否かを判断する。なお、アクセサリスイッチがオンされた後の初回の演算時には、下り勾配フラグに0がセットされているので、ステップS3は否定判断される。
【0029】
ステップS3が否定判断されるとステップS5へ進み、上り勾配フラグに1がセットされているか否かを判断する。なお、アクセサリスイッチがオンされた後の初回の演算時には、上り勾配フラグに0がセットされているので、ステップS5は否定判断される。ステップS5が否定判断されるとステップS7へ進み、ステップS2で読み込んだ現在地検出装置11からの各情報に基づいて車両10の現在位置を算出する。なお、ステップS7における車両10の現在位置算出処理は、従来の現在位置算出処理と同様であり公知であるため、説明を省略する。
【0030】
ステップS9において、上り勾配補正が必要か否かを判断する。すなわち、ステップS9において、上述した各条件(e)〜(g)を満たすか否かを判断する。ステップS9が否定判断されるとステップS11へ進み、下り勾配補正が必要か否かを判断する。すなわち、ステップS11において、上述した各条件(a)〜(d)を満たすか否かを判断する。ステップS11が否定判断されるとステップS13へ進み、算出された車両10の現在位置に基づいて、表示モニタ14に表示された地図上に車両10の現在位置を示すカーマークを重畳表示するよう各部を制御してステップS15へ進む。ステップS15において、イグニッションスイッチ12がオフされたか否かを判断する。ステップS15が肯定判断されると、本プログラムを終了する。ステップS15が否定判断されると、ステップS2へ戻る。
【0031】
ステップS11が肯定判断されると、ステップS21へ進み、車両10が旋回を開始したと判断される時点に遡ってジャイロセンサ11aの出力を下り勾配補正したものとして車両10の水平方向の旋回角度θcを算出してステップS23へ進む。ステップS23において、下り勾配フラグに1をセットしてステップS25へ進む。ステップS25において、補正後の旋回角度θcを用いて車両10の現在位置を算出してステップS13へ進む。
【0032】
ステップS9が肯定判断されると、ステップS41へ進み、車両10が旋回を開始したと判断される時点に遡ってジャイロセンサ11aの出力を上り勾配補正したものとして車両10の水平方向の旋回角度θcを算出してステップS43へ進む。ステップS43において、上り勾配フラグに1をセットしてステップS25へ進む。
【0033】
ステップS5が肯定判断されると、ステップS51へ進み、上り勾配補正の継続が必要であるか否かを判断する。ステップS51では、車両10が旋回を中止したと判断される場合には上り勾配補正の継続が必要でないと判断され、車両10が旋回を継続していると判断される場合には上り勾配補正の継続が必要であると判断される。ステップS51が肯定判断されるとステップS53へ進み、前回の演算時から今回の演算時までの間の旋回角度θcの算出に関して上り勾配補正を行ってステップS39へ進む。ステップS39において、算出された旋回角度θcを用いて車両10の現在位置を算出してステップS13へ進む。
【0034】
ステップS51が否定判断されるとステップS55へ進み、上り勾配補正を行わずに前回の演算時から今回の演算時までの間の旋回角度θcを算出してステップS57へ進む。ステップS57において、上り勾配フラグに0をセットして、ステップS39へ進む。
【0035】
ステップS3が肯定判断されると、ステップS31へ進み、下り勾配補正の継続が必要であるか否かを判断する。ステップS31では、車両10が旋回を中止したと判断される場合には下り勾配補正の継続が必要でないと判断され、車両10が旋回を継続していると判断される場合には下り勾配補正の継続が必要であると判断される。ステップS31が肯定判断されるとステップS33へ進み、前回の演算時から今回の演算時までの間の旋回角度θcの算出に関して下り勾配補正を行ってステップS39へ進む。
【0036】
ステップS31が否定判断されるとステップS35へ進み、下り勾配補正を行わずに前回の演算時から今回の演算時までの間の旋回角度θcを算出してステップS37へ進む。ステップS37において、下り勾配フラグに0をセットして、ステップS39へ進む。
【0037】
上述したカーナビゲーション装置1では次の作用効果を奏する。
(1) 上述した各条件を満たすと、ジャイロセンサ11aの出力を補正するように構成した。これにより、螺旋状のスロープを有する駐車場などに進入した際に、ジャイロセンサ11aの出力を補正できるので、車両の位置や向き(進行方位)を正確に算出できる。また、車両10の前後方向の傾斜角度を検出する加速度センサなどをカーナビゲーション装置1に設けなくてもよいので、カーナビゲーション装置1の製造コストを低減できる。さらに、駐車場を出場(出庫)する際の車両10の現在位置、進行方位が正しく算出されることで、出庫後の経路誘導を的確に実施できる。
【0038】
(2) 上述した各条件(a)〜(d)を満たすことで、車両10が螺旋状のスロープが設けられた地下駐車場に進入するものと推定し、ジャイロセンサ11aが車両10の前側が下になるように所定角度θ1だけ傾斜したものとして、ジャイロセンサ11aの出力を補正するように構成した。これにより、車両10の前後方向の傾斜角度を検出する加速度センサなどをカーナビゲーション装置1に設けなくても、螺旋状のスロープを有する地下駐車場に進入した際の車両の位置や進行方位を正確に算出できる。したがって、特に、螺旋状のスロープを有する地下駐車場が多く設けられている地域で用いられるカーナビゲーション装置1で上述した効果が高い。
【0039】
(3) 上述した各条件(a)〜(d)を満たすことで、車両10が旋回を開始したと判断される時点に遡ってジャイロセンサ11aの出力を下り勾配補正したものとして車両10の水平方向の旋回角度θcを算出するように構成した。これにより、螺旋状のスロープを有する地下駐車場に進入した際の車両の位置や進行方位の算出精度をより一層向上できる。
【0040】
(4) 上述した各条件(e)〜(g)を満たすことで、車両10が螺旋状のスロープが設けられた地下駐車場から出場しようとしているものと推定して、ジャイロセンサ11aが車両10の前側が上になるように所定角度θ1だけ傾斜したものとして、ジャイロセンサ11aの出力を補正するように構成した。これにより、螺旋状のスロープを有する地下駐車場から出庫する際にも車両の位置や進行方位を正確に算出できる。
【0041】
(5) 上述した各条件(e)〜(g)を満たすことで、車両10が旋回を開始したと判断される時点に遡ってジャイロセンサ11aの出力を上り勾配補正したものとして車両10の水平方向の旋回角度θcを算出するように構成した。これにより、螺旋状のスロープを有する地下駐車場から出庫する際の車両の位置や進行方位の算出精度をより一層向上できる。
【0042】
−−−変形例−−−
(1) 上述の説明では、条件(a)〜(d)を満たしたときに下り勾配補正を行い、条件(e)〜(g)を満たしたときに上り勾配補正を行うように構成したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、上述した条件(a)〜(d)のうち、少なくとも条件(c),(d)が満たされれば、下り勾配補正をするように構成してもよい。また、上述した条件(e)〜(g)のうち、少なくとも条件(e),(g)および条件(c)が満たされれば、上り勾配補正をするように構成してもよい。
【0043】
(2) 上述の説明では、車両10が地下の駐車場を利用する際のカーナビゲーション装置1の動作について説明したが、地上に設けられた上層階へ向かう螺旋状のスロープに進入する場合であっても、本発明を適用できる。また、上述の説明では、図2におけるスロープが、平面図で表すと略円形となるようなスロープであったが、本発明はこれに限定されない。たとえば、平面図で表すと略方形となるようなスロープであってもよく、運動場のトラックのように半円と直線とを組み合わせた形状となるようなスロープなどであってもよい。
【0044】
(3) 上述の説明では、条件(a)〜(d)を満たしたときに下り勾配補正を行い、条件(e)〜(g)を満たしたときに上り勾配補正を行うように構成したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、道路地図データに駐車場が地下に設けられた立体駐車場であるのか、地上に設けられた立体駐車場であるのかを示す情報があるのであれば、この情報を利用して、駐車場へ入場または出場する際に下り勾配補正を行うのか上り勾配補正を行うのかを決定するようにしてもよい。
【0045】
(4) 上述の説明では、螺旋状のスロープが設けられた駐車場へ入場または出場する場合について説明したが、本発明は、これに限定されない。たとえば、駐車場のスロープ以外にも、ループ状の通路を走行する場合にも本発明を適用できる。なお、ループ状の通路であれば、一般道路や高速道路などの道路であってもよく、建物や施設内の通路であってもよい。また、車両10を上方から見たときに車両10が略同一の軌跡を描くような螺旋状のスロープ、道路に限らず、つづら折りの傾斜路(山岳路)を走行する場合であっても本発明を適用できる。この場合には、たとえば、傾斜路に対する車両の進行方向から下り勾配補正を行うのか上り勾配補正を行うのかを決定してもよい。また、道路地図データに当該傾斜路の標高の情報があれば、その標高のデータから傾斜路の傾斜角度を算出し、上述した(1)式におけるθrを標高のデータから算出した傾斜角度として、ジャイロセンサ11aの出力を補正するようにしてもよい。
【0046】
(5) 上述の説明では、各条件(e)〜(g)を満たすとジャイロセンサ11aの出力を上り勾配補正するように構成したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、車両10の走行中にGPSセンサ11cでGPS信号を受信したら、車両が地上に向かっているものとして、上述した上り勾配補正を行うように構成してもよい。このとき、車両10の旋回開始時点に遡って補正を行えば、車両10が地上に出てきたときには車両10の現在位置、進行方位が正しく算出されることになるので、出庫後の経路誘導を的確に実施できる。
【0047】
(6) 上述の説明では、ジャイロセンサ11aの出力を補正するか否かを決定するための条件の1つとして、GPSセンサ11cによるGPS信号の受信の有無を挙げているが、本発明はこれに限定されない。車両10が、GPS信号を受信できないような場所(たとえば地下)に進入したか否かを検出できるのであれば、GPS信号の受信の有無の代わりに、または、GPS信号の受信の有無とともに、たとえば、テレビやラジオなどの放送波のような、車両10の外部から送信される送信波の受信の有無をジャイロセンサ11aの出力を補正するか否かを決定するための条件としてもよい。
(7) 上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0048】
なお、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、車両の旋回状態を検出する旋回状態検出手段と、旋回状態検出手段の出力に基づいて、車両の旋回角度を算出する旋回角度算出手段と、車両の外部から送信される送信波を受信する受信手段とを備え、旋回角度算出手段は、算出した車両の旋回角度が所定の角度以上であり、かつ、受信手段で送信波を受信できない場合、旋回状態検出手段の出力を補正して車両の旋回角度を算出することを特徴とする各種構造の現在位置算出装置を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】カーナビゲーション装置1の全体構成を示す図である。
【図2】地下駐車場に至る螺旋状のスロープの一例を模式的に示す図である。
【図3】ジャイロセンサ11aで検出する角加速度について説明する図である。
【図4】ジャイロセンサ11aの車両10への搭載状態を説明する図である。
【図5】車両10の現在位置を算出して表示モニタ14上に表示する処理の動作を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
1 カーナビゲーション装置 10 車両
11 現在地検出装置 11a ジャイロセンサ
11c GPSセンサ 11d 車速センサ
12 イグニッションスイッチ 14 表示モニタ
100 制御装置 101 CPU
102 メモリ 109 地図記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の旋回状態を検出する旋回状態検出手段と、
前記旋回状態検出手段の出力に基づいて、前記車両の旋回角度を算出する旋回角度算出手段と、
前記車両の外部から送信される送信波を受信する受信手段とを備え、
前記旋回角度算出手段は、算出した前記車両の旋回角度が所定の角度以上であり、かつ、前記受信手段で前記送信波を受信できない場合、前記旋回状態検出手段の出力を補正して前記車両の旋回角度を算出することを特徴とする現在位置算出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の現在位置算出装置において、
前記旋回角度算出手段は、算出した前記車両の旋回角度が所定の角度以上であり、かつ、前記受信手段で前記送信波を受信できない場合、前記車両が前記所定の傾斜角度の道路を下っているものとして、前記旋回状態検出手段の出力を補正して前記車両の旋回角度を算出することを特徴とする現在位置算出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の現在位置算出装置において、
前記旋回角度算出手段は、算出した前記車両の旋回角度が所定の角度以上であり、かつ、前記受信手段で前記送信波を受信できない場合、前記車両が前記所定の傾斜角度の道路を下っているものとして、前記車両の旋回開始の時点に遡って前記旋回状態検出手段の出力を補正して前記車両の旋回角度を算出することを特徴とする現在位置算出装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3のいずれか一項に記載の現在位置算出装置において、
前記車両のイグニッションスイッチのオンオフ状態を検出するイグニッションスイッチオンオフ状態検出手段をさらに備え、
前記旋回角度算出手段は、前記車両が前記所定の傾斜角度の道路を下っているものとして前記旋回状態検出手段の出力を補正して前記車両の旋回角度を算出した場合、その後、前記旋回状態検出手段の出力に基づいて前記車両が直進したと判断し、その後、前記イグニッションスイッチオンオフ状態検出手段で前記イグニッションスイッチがオフされてさらにオンされたことを検出し、その後に算出した前記車両の旋回角度が所定の角度以上であれば、前記旋回状態検出手段の出力を補正して前記車両の旋回角度を算出することを特徴とする現在位置算出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の現在位置算出装置において、
前記旋回角度算出手段は、前記車両が前記所定の傾斜角度の道路を下っているものとして前記旋回状態検出手段の出力を補正して前記車両の旋回角度を算出した場合、その後、前記旋回状態検出手段の出力に基づいて前記車両が直進したと判断し、その後、前記イグニッションスイッチオンオフ状態検出手段で前記イグニッションスイッチがオフされてさらにオンされたことを検出し、その後に算出した前記車両の旋回角度が所定の角度以上であれば、前記車両が前記所定の傾斜角度の道路を上っているものとして、前記旋回状態検出手段の出力を補正して前記車両の旋回角度を算出することを特徴とする現在位置算出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の現在位置算出装置において、
前記旋回角度算出手段は、前記車両が前記所定の傾斜角度の道路を下っているものとして前記旋回状態検出手段の出力を補正して前記車両の旋回角度を算出した場合、その後、前記旋回状態検出手段の出力に基づいて前記車両が直進したと判断し、その後、前記イグニッションスイッチオンオフ状態検出手段で前記イグニッションスイッチがオフされてさらにオンされたことを検出し、その後に算出した前記車両の旋回角度が所定の角度以上であれば、前記イグニッションスイッチがオフされてさらにオンされた後の前記車両の旋回開始時点に遡って前記車両が前記所定の傾斜角度の道路を上っているものとして、前記旋回状態検出手段の出力を補正して前記車両の旋回角度を算出することを特徴とする現在位置算出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−38889(P2010−38889A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205859(P2008−205859)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】