説明

環境音圧記録装置、環境音圧記録方法及び環境音圧記録プログラム

【課題】地域や道路における環境音の音圧を記録することが可能な環境音圧記録装置を提供する。
【解決手段】環境音圧記録装置は、環境音の音圧を記録するための装置であり、音圧取得手段と、位置取得手段と、記録手段と、より構成される。音圧取得手段は、移動体の外部の環境音の音圧を取得する。位置取得手段は、音圧取得手段により環境音が取得されたときの移動体の位置を取得する。記録手段は、音圧取得手段により取得された環境音の音圧を、位置取得手段により取得された移動体の位置と関連付けて記録する。音圧取得手段、位置取得手段、記録手段は、システムコントローラによって実現される。このようにすることで、走行軌跡の点列として環境音の音圧を記録することができるので、正確な騒音地図を作成するのに必要な数の環境音の音圧を収集することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境音の音圧を記録するための環境音圧記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば住宅街などの地域では、夜間などにおける高騒音走行を規制する傾向がある。例えば、以下の特許文献1には、車両が時速60km以下で走行すれば騒音量が80ホーン以下となる場合において、当該車両が騒音規制区域(騒音規制80ホーン)に進入した場合には、その旨が運転者に知らされると共に車速が60km以下に制御されるハイブリッドカーの制御装置が記載されている。
【0003】
このような騒音規制を行う前提として、道路や地域における実際の環境音の音圧を示した騒音地図が必要となる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−311769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、騒音地図の作成では、幾つかの特定の測定点において測定された環境音の音圧に基づいて作成されるため、正確性に欠ける可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、正確な騒音地図を作成するのに必要な数の環境音の音圧を収集することが可能な環境音圧記録装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、環境音記録装置であって、移動体の外部の環境音の音圧を取得する音圧取得手段と、前記音圧取得手段により前記環境音が取得されたときの前記移動体の位置を取得する位置取得手段と、前記音圧取得手段により取得された前記環境音の音圧を、前記位置取得手段により取得された前記移動体の位置と関連付けて記録する記録手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項5に記載の発明は、環境音記録方法であって、移動体の外部の環境音の音圧を取得する音圧取得工程と、前記音圧取得手段により前記環境音が取得されたときの前記移動体の位置を取得する位置取得工程と、前記音圧取得手段により取得された前記環境音の音圧を、前記位置取得手段により取得された前記移動体の位置と関連付けて記録する記録工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項6に記載の発明は、コンピュータによって実行される環境音圧記録プログラムであって、移動体の外部の環境音の音圧を取得する音圧取得手段、前記音圧取得手段により前記環境音が取得されたときの前記移動体の位置を取得する位置取得手段、前記音圧取得手段により取得された前記環境音の音圧を、前記位置取得手段により取得された前記移動体の位置と関連付けて記録する記録手段、として前記コンピュータを機能させることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の1つの観点では、環境音圧記録装置は、移動体の外部の環境音の音圧を取得する音圧取得手段と、前記音圧取得手段により前記環境音が取得されたときの前記移動体の位置を取得する位置取得手段と、前記音圧取得手段により取得された前記環境音の音圧を、前記位置取得手段により取得された前記移動体の位置と関連付けて記録する記録手段と、を備える。
【0011】
上記の環境音圧記録装置は、環境音の音圧を記録するための装置であり、音圧取得手段と、位置取得手段と、記録手段と、より構成される。音圧取得手段は、移動体の外部の環境音の音圧を取得する。位置取得手段は、音圧取得手段により環境音が取得されたときの移動体の位置を取得する。記録手段は、音圧取得手段により取得された環境音の音圧を、位置取得手段により取得された移動体の位置と関連付けて記録する。音圧取得手段、位置取得手段、記録手段は、システムコントローラによって実現される。このようにすることで、走行軌跡の点列として環境音の音圧を記録することができるので、実際の道路上の騒音や環境音が得られると共に、大型の駐車場や山の中等、地図情報が整備されていない場合にも環境音の音圧を記録することが可能となる。これにより、正確な騒音地図を作成するのに必要な数の環境音の音圧を収集することができる。
【0012】
上記の環境音圧記録装置の他の一態様は、前記移動体が移動した複数の位置において前記音圧取得手段により取得された複数の環境音の音圧に基づいて、前記移動体の複数の位置を結ぶルートにおける環境音の音圧を求めるルート音圧算出手段を備え、前記記録手段は、前記ルート音圧算出手段により求められた前記ルートにおける環境音の音圧を前記ルートの識別情報と関連付けて記録する。これにより、取得された環境音の音圧を、実際に走行したルート上の線情報として確認することが可能となる。
【0013】
上記の環境音圧記録装置の他の一態様は、エリアを囲む複数のルートの夫々における環境音の音圧を前記ルート音圧算出手段により求め、求められた前記複数のルートの夫々における環境音の音圧に基づいて、前記エリアにおける環境音の音圧を求めるエリア音圧算出手段を備え、前記記録手段は、前記エリア音圧算出手段により求められた前記エリアにおける環境音の音圧を前記エリアの識別情報と関連付けて記録する。これにより、取得された環境音の音圧を、エリア情報として確認することが可能となる。
【0014】
上記の環境音圧記録装置の他の一態様は、前記エリア音圧算出手段は、前記エリアにおける環境音の音圧の時間に対する変化量を算出し、前記記録手段は、前記変化量を前記エリアの識別情報と関連付けて記録する。このようにすることで、徐々に騒音が悪化している(又は改善している)傾向にあるエリアを特定することができる。また、騒音対策が実施されたエリアについては、騒音対策実施後の効果を計ることができる。
【0015】
本発明の他の観点では、環境音圧記録方法は、移動体の外部の環境音の音圧を取得する音圧取得工程と、前記音圧取得手段により前記環境音が取得されたときの前記移動体の位置を取得する位置取得工程と、前記音圧取得手段により取得された前記環境音の音圧を、前記位置取得手段により取得された前記移動体の位置と関連付けて記録する記録工程と、を備える。この方法によっても、走行軌跡の点列として環境音の音圧を記録することができるので、実際の道路上の騒音や環境音が得られると共に、大型の駐車場や山の中等、地図情報が整備されていない場合にも環境音の音圧を記録することが可能となる。
【0016】
本発明の更なる他の観点では、コンピュータによって実行される環境音圧記録プログラムは、移動体の外部の環境音の音圧を取得する音圧取得手段、前記音圧取得手段により前記環境音が取得されたときの前記移動体の位置を取得する位置取得手段、前記音圧取得手段により取得された前記環境音の音圧を、前記位置取得手段により取得された前記移動体の位置と関連付けて記録する記録手段、として前記コンピュータを機能させる。この環境音圧記録プログラムをコンピュータに実行させることにより、上記の環境音圧記録装置を実現することができる。
【実施例】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0018】
(環境音圧記録装置)
図1に、環境音圧記録装置100の構成を示す。図2に、環境音圧記録装置100を搭載した車両70の模式図を示す。図1及び図2に示すように、環境音圧記録装置100は、車両70に搭載される装置であり、自立測位装置10、GPS受信機18、システムコントローラ20、データ記憶ユニット36、表示ユニット40、環境音検出装置50、入力装置60を備える。
【0019】
自立測位装置10は、加速度センサ11、角速度センサ12及び距離センサ13を備える。加速度センサ11は、例えば圧電素子からなり、車両70の加速度を検出し、加速度データを出力する。角速度センサ12は、例えば振動ジャイロからなり、車両70の方向変換時における車両70の角速度を検出し、角速度データ及び相対方位データを出力する。距離センサ13は、車両70の車輪の回転に伴って発生されているパルス信号からなる車速パルスを計測する。
【0020】
GPS受信機18は、複数のGPS衛星から、測位用データを含む下り回線データを搬送する電波19を受信する。測位用データは、緯度及び経度情報等から車両70の絶対的な位置を検出するために用いられる。
【0021】
システムコントローラ20は、インタフェース21、CPU(Central Processing Unit)22、ROM(Read Only Memory)23及びRAM(Random Access Memory)24を含んでおり、環境音圧記録装置100全体の制御を行う。
【0022】
インタフェース21は、加速度センサ11、角速度センサ12及び距離センサ13並びにGPS受信機18とのインタフェース動作を行う。そして、これらから、車速パルス、加速度データ、相対方位データ、角速度データ、GPS測位データ、絶対方位データ等をシステムコントローラ20に入力する。CPU22は、システムコントローラ20全体を制御する。ROM23は、システムコントローラ20を制御する制御プログラム等が格納された図示しない不揮発性メモリ等を有する。RAM24は、入力装置60を介して使用者により予め設定された経路データ等の各種データを読み出し可能に格納したり、CPU22に対してワーキングエリアを提供したりする。本発明の環境音圧記録装置は、CPU22が、予めROM23などに記録されたプログラムを実行することにより実現される。
【0023】
システムコントローラ20、データ記憶ユニット36、表示ユニット40、カメラ50、入力装置60は、バスライン30を介して相互に接続されている。
【0024】
データ記憶ユニット36は、例えば、HDDやDVDなどであり、地図データベース(以下、「地図DB」と称す)を保持している。当該地図DBでは、例えば、地図情報が、複数のノードと、当該ノード間を結ぶリンク(道路リンク)から構成されるベクタデータの形式で表現されている。また、ノード、リンク、リンクで囲まれたエリアについて夫々、識別情報であるノードID、リンクID、エリアIDが割り振られている。なお、データ記憶ユニット36は、環境音圧記録装置100と通信する通信サーバ上の記録部に設けられるとしても良い。
【0025】
環境音検出装置50は、図2に示すように、車両70の外部の音、即ち、環境音を検出すると共に、環境音の音圧を計測する。ここでいう「環境音」とは、車両70の車外の音、即ち、車両70の周辺の音であり、車両70のエンジンやカーステレオの音といった車両70自体に由来する音を含まない。環境音検出装置50は、集音装置51、音圧計測装置52を含んで構成されている。集音装置51は、例えば全指向性のマイクであり、環境音を検出する。集音装置51は、路面及びエンジンから離れた位置で、且つ、車両走行中の風圧を受けない位置に設置されている。音圧計測装置52は、集音装置51により検出された環境音の音圧を計測するものである。音圧計測装置52は、計測された環境音の音圧に対応する信号を、バスライン30を介してシステムコントローラ20に入力する。
【0026】
システムコントローラ20は、後に詳しく述べるが、本実施例に係る環境音圧記録処理を行う。具体的には、システムコントローラ20は、音圧計測装置52からの信号に基づいて、環境音の音圧を取得すると共に、自立測位装置10及びGPS受信機18からの信号に基づいて、環境音の音圧を取得したときの車両70の位置を取得する。従って、システムコントローラ20は、本発明における音圧取得手段、及び、位置取得手段として機能する。システムコントローラ20は、取得した環境音の音圧を車両70の位置と関連付けてデータ記憶ユニット36などに記録する。従って、システムコントローラ20は、本発明における記録手段として機能する。
【0027】
表示ユニット40は、システムコントローラ20の制御の下、各種表示データをディスプレイなどの表示装置に表示する。具体的には、システムコントローラ20は、データ記憶ユニット36の地図DBから地図情報を読み出す。表示ユニット40は、システムコントローラ20によって読み出された地図情報を、ディスプレイなどの表示画面上に表示する。また、表示ユニット40は、システムコントローラ20による操作内容や、検出された環境音の音圧の状況などを画面表示する。表示ユニット40は、バスライン30を介してCPU22から送られる制御データに基づいて表示ユニット40全体の制御を行うグラフィックコントローラ41と、VRAM(Video RAM)等のメモリからなり即時表示可能な画像情報を一時的に記録するバッファメモリ42と、グラフィックコントローラ41から出力される画像データに基づいて、液晶、CRT(Cathode Ray Tube)等のディスプレイ44を表示制御する表示制御部43と、ディスプレイ44とを備える。
【0028】
入力装置60は、各種コマンドやデータを入力するための、キー、スイッチ、ボタン、リモコン等から構成されている。また、ディスプレイ44がタッチパネル方式である場合には、ディスプレイ44の表示画面上に設けられたタッチパネルも入力装置60として機能する。ユーザは、入力装置60を用いることにより、環境音の音圧の記録開始及び記録終了の操作を行う。
【0029】
(環境音圧記録方法)
本実施例に係る環境音圧記録方法について図3を用いて具体的に述べる。図3は、本実施例に係る環境音圧記録方法を示す模式図である。
【0030】
先にも述べたように、本実施例に係る環境音圧記録装置100では、システムコントローラ20は、車両70の外部の環境音の音圧を取得すると共に、当該環境音が取得されたときの車両70の位置を取得し、取得された環境音の音圧を、車両70の位置と関連付けて記録する。
【0031】
まず、システムコントローラ20は、車両70の外部の環境音の音圧を取得する。具体的には、システムコントローラ20は、車両70が走行している間に、車両70の外部の環境音の音圧を取得する。つまり、車両70の外部の環境音の音圧の取得は、走行調査により行われる。図3(a)は、車両70が地点Aから地点Dに移動するときに環境音の音圧を取得する様子を示す模式図である。ここで、環境音の音圧を取得するタイミングとしては、任意のタイミングで良いが、以下では、説明のため、システムコントローラ20は、一定距離進む毎に、環境音検出装置50からの信号に基づいて、車両70の外部の環境音の音圧を取得するものとする。即ち、システムコントローラ20は、地点A、B、C、Dの各地点において(地点A、B、C、Dの夫々の間は一定距離となっている)、環境音検出装置50からの信号に基づいて、車両70の外部の環境音の音圧を取得するものとする。システムコントローラ20によって取得された各地点における環境音の音圧は、地点Aでは50dBであり、地点Bでは55dBであり、地点Cでは60dBであり、地点Dでは55dBである。
【0032】
また、システムコントローラ20は、自立測位装置10及びGPS受信機18からの信号に基づいて、環境音が取得されたときの車両70の位置情報、即ち、地点A、B、C、Dの各地点の緯度経度情報を取得する。従って、以下の説明では、地点の位置を(緯度、経度)で示すこととする。図3(a)において、システムコントローラ20によって取得された各地点の位置情報は、地点Aでは(X1、Y1)であり、地点Bでは(X2、Y2)であり、地点Cでは(X3、Y3)であり、地点Dでは(X4、Y4)である。
【0033】
システムコントローラ20は、取得された環境音の音圧を車両70の位置情報と関連付けて記録する。図4(a)は、走行ログを示すテーブルである。図4(a)に示すように、システムコントローラ20は、取得された環境音の音圧を、走行ログにおける位置情報と関連付けて記録する。システムコントローラ20は、取得された環境音の音圧と車両70の位置情報との関係を走行ログのテーブルとして記録した後、データ記憶ユニット36の地図DBへ登録する。
【0034】
このようにすることで、本実施例に係る環境音圧記録装置100では、走行軌跡の点列として環境音の音圧を記録することができるので、実際の道路上の騒音や環境音が得られると共に、大型の駐車場や山の中等、地図情報が整備されていない場合にも環境音の音圧を記録することが可能となる。これにより、正確な騒音地図を作成するのに必要な数の環境音の音圧を収集することができる。
【0035】
(ルートにおける環境音の音圧)
次に、地点間を結ぶルートにおける環境音の音圧を求める方法について述べる。
【0036】
この場合、システムコントローラ20は、車両70の複数の位置において取得された複数の環境音の音圧に基づいて、車両70の複数の位置を結ぶルートにおける環境音の音圧を求める。従って、システムコントローラ20は、本発明におけるルート音圧算出手段として機能する。
【0037】
例えば、図3(b)に示すように、地点Aと地点Dとを結ぶルートL11における環境音の音圧を求める場合には、システムコントローラ20は、地点A、B、C、Dの各地点において取得された環境音の音圧に基づいて、ルートL11における環境音の音圧を求める。具体的には、システムコントローラ20は、地点A、B、C、Dの各地点において取得された環境音の音圧の平均値を、ルートL11における環境音の音圧として求める。従って、ルートL11における環境音の音圧は、地点A、B、C、Dの各地点において取得された環境音の音圧50dB、55dB、60dB、55dBの平均値、即ち、55dBとなる。
【0038】
システムコントローラ20は、ルートにおける環境音の音圧を当該ルートの識別情報と関連付けて記録する。具体的には、システムコントローラ20は、ルートにおける環境音の音圧を、当該ルートに対応する道路リンクのリンクIDと関連付けて記録する。図3(b)に示す例では、システムコントローラ20は、地点Aから地点Dへ向かう走行軌跡をマップマッチング処理によって地図情報の道路リンク上へプロットすることにより、ルートL11に対応する道路リンクを求め、ルートL11における環境音の音圧を、ルートL11に対応する道路リンクと関連付けて記録する。例えば、図4(b)に示すテーブル(以下、「リンクテーブル」と称す)では、ルートL11における環境音の音圧は、ルート11に対応する道路リンクのリンクIDであるL11に関連付けられている。システムコントローラ20は、ルートにおける環境音の音圧とリンクIDとの関係を、図4(b)に示すようなリンクテーブルとして記録した後、データ記憶ユニット36の地図DBへ登録する。これにより、取得された環境音の音圧を、実際に走行した道路上の線情報として確認することが可能となる。
【0039】
(エリアにおける環境音の音圧)
次に、複数のルートによって囲まれるエリア(地域)における環境音の音圧を求める方法について述べる。
【0040】
この場合、システムコントローラ20は、エリアを囲む複数のルートの夫々について環境音を求め、求められた当該複数のルートの夫々における環境音に基づいて、当該エリアにおける環境音の音圧を求める。従って、システムコントローラ20は、本発明におけるエリア音圧算出手段として機能する。
【0041】
例えば、図3(c)に示すように、ルートL11(地点Aと地点Dとを結ぶ)、L12(地点Dと地点Eとを結ぶ)、L13(地点Eと地点Fとを結ぶ)、L14(地点Fと地点Aとを結ぶ)で囲まれたエリアA1における環境音の音圧を求める場合には、システムコントローラ20は、ルートL11、L12、L13、L14の夫々についての環境音の音圧を求め、ルートL11、L12、L13、L14の各環境音の音圧に基づいて、エリアA1における環境音の音圧を求める。具体的には、システムコントローラ20は、ルートL11、L12、L13、L14の各環境音の音圧の平均値を、エリアA1における環境音の音圧として求める。例えば、ルートL11、L12、L13、L14についての環境音の音圧が夫々、55dB、70dB、65dB、50dBと求められているとすると、エリアA1における環境音の音圧は、ルートL11、L12、L13、L14の各環境音の音圧55dB、70dB、65dB、50dBの平均値、即ち、60dBとなる。
【0042】
システムコントローラ20は、エリアにおける環境音の音圧を当該エリアの識別情報と関連付けて記録する。具体的には、システムコントローラ20は、エリアにおける環境音の音圧を、当該エリアに対応するエリアIDと関連付けて記録する。例えば、図4(c)に示すテーブル(以下、「エリアテーブル」と称す)では、エリアA1における環境音の音圧は、エリアA1に対応するエリアIDであるA1に関連付けられている。システムコントローラ20は、エリアにおける環境音の音圧とエリアIDとの関係を、図4(c)に示すようなエリアテーブルとして記録した後、データ記憶ユニット36の地図DBへ登録する。これにより、エリアA1における環境音の音圧を、エリア(地域)情報として確認することが可能となる。
【0043】
なお、ここで、システムコントローラ20は、道路リンクで囲まれている各エリアを、各エリアにおける環境音の音圧の大きさによって分類するとしても良い。例えば、図4(d)に示すエリアテーブルでは、エリアA1、A2、A3における環境音の音圧を、環境音の音圧の大きさに応じて、AA(50dB以下)、B(55dB以下)、C(60dB以下)の3段階に分類している。システムコントローラ20は、地図情報をディスプレイ44に表示する際に、図4(d)に示すエリアテーブルを用いることにより、例えば、環境音の音圧の大きさに応じて色分けして各エリアを表示した騒音地図を表示することができる。これにより、ユーザは、ディスプレイ44に表示された各エリアについて、騒音が大きい地域か、又は、静かな地域か、といったことを認識することが可能となる。
【0044】
例えば、不動産屋などでは、この騒音地図を用いることにより、静かな地域内の不動産物件については、静かな地域に住むことを希望する人に紹介することができ、騒音が大きい地域における不動産物件については、家賃価格を低く設定することができる。
【0045】
(環境音圧記録処理)
次に、本実施例に係る環境音圧記録処理について、図5に示すフローチャートを用いて説明する。図5は本実施例に係る環境音圧記録処理を示すフローチャートである。この処理は、システムコントローラ20が、予め用意されたプログラムを実行することにより実現される。
【0046】
まず、ステップS101において、システムコントローラ20は、走行中の車両70の外部の環境音を取得する。具体的には、システムコントローラ20は、環境音検出装置50からの信号に基づいて、車両70の外部の環境音の音圧を取得する。続くステップS102において、システムコントローラ20は、環境音が取得されたときの車両70の位置情報を取得する。具体的には、システムコントローラ20は、自立測位装置10及びGPS受信機18からの信号に基づいて、環境音が取得されたときの車両70の位置情報を取得する。このようにすることで、システムコントローラ20は、車両70の外部の環境音と、当該環境音が取得されたときの車両70の位置情報を取得することができる。
【0047】
次に、ステップS103において、システムコントローラ20は、取得した環境音の音圧、及び、環境音の音圧が取得されたときの位置情報に基づいて、環境音の音圧を地図DBに登録する。具体的には、システムコントローラ20は、取得された環境音の音圧と車両70の位置情報との関係を、走行ログのテーブルとしてデータ記憶ユニット36に記録した後、地図DBへ登録する。このようにすることで、システムコントローラ20は、走行軌跡の点列として環境音の音圧を記録することができる。システムコントローラ20は、走行ログのテーブルに基づいて、ルート及びエリアにおける環境音の音圧を求める。なお、地図DBへの登録は、走行調査を終えた後に行うこととしても良い。
【0048】
次に、ステップS104において、システムコントローラ20は、走行調査が終了したか否かを判定する。システムコントローラ20は、例えば、入力装置60からの信号に基づいて、走行調査が終了したか否かを判定することができる。システムコントローラ20は、走行調査が終了していないと判定した場合には(ステップS104:No)、ステップS101の処理へ戻り、環境音の音圧の取得、位置情報の取得、及び、地図DBへの登録を続ける。一方で、システムコントローラ20は、環境音の検出が終了したと判定した場合には(ステップS104:Yes)、本処理を終了する。
【0049】
以上に述べたように、本実施例に係る環境音圧記録装置では、移動体の外部の環境音の音圧を取得する音圧取得手段と、前記音圧取得手段により前記環境音が取得されたときの前記移動体の位置を取得する位置取得手段と、前記音圧取得手段により取得された前記環境音の音圧を、前記位置取得手段により取得された前記移動体の位置と関連付けて記録する記録手段と、を備える。このようにすることで、走行軌跡の点列として環境音の音圧を記録することができるので、実際の道路上の騒音や環境音が得られると共に、大型の駐車場や山の中等、地図情報が整備されていない場合にも環境音の音圧を記録することが可能となる。これにより、正確な騒音地図を作成するのに必要な数の環境音の音圧を収集することができる。
【0050】
(変形例)
次に、本発明の環境音圧記録装置の変形例について述べる。上述の実施例では、走行調査を一回行い、システムコントローラ20は、そのときに取得された環境音の音圧を、当該環境音の音圧が取得されたときの車両70の位置情報と関連付けて記録するとしている。しかしながら、1つのルートについて、一回の走行調査だけでは、そのルートについての環境音の音圧を正確に求めることは難しい。そこで、変形例では、走行調査を複数回行い、システムコントローラ20は、走行調査の夫々の回毎に取得された環境音の音圧を、当該環境音の音圧が取得されたときの車両70の位置情報と関連付けて記録し、走行調査の夫々の回毎に求められたルートにおける環境音の音圧を平均した値を、当該ルートにおける環境音の音圧として求めるとする。例えば、図6(a)に示すリンクテーブルでは、ルートL11(リンクID:L11)について、走行調査の回毎に求められた環境音の音圧が記録されている。具体的には、ルートL11における環境音の音圧は、1回目の走行調査では55dBと求められ、2回目の走行調査では57dBと求められ、3回目の走行調査では59dBと求められている。システムコントローラは、ルートL11における環境音の音圧を、これらの平均値である57dBとして求める。このようにすることで、ルートや、ルートに囲まれるエリアにおける環境音の音圧の精度を向上させることができ、環境音の発生状況が何であるかの特定についての信頼性を高めることができる。
【0051】
また、システムコントローラ20は、図6(b)のエリアテーブルに示すように、走行調査の夫々の回毎に取得されたエリアにおける環境音の音圧を、当該環境音の音圧が取得されたときの時刻と関連付けて記録するとしてもよい。このようにすることで、時間帯の変化によるルートやエリアにおける環境音の音圧の変化を認識することができる。例えば、あるエリアについて、昼は賑やかなエリアであり、夜は静かなエリアであるといったことを認識することができる。
【0052】
さらに、システムコントローラ20は、走行調査の夫々の回毎に取得された環境音の音圧に基づいて、エリアにおける環境音の音圧の時間に対する変化量を求め、求められた変化量を当該エリアの識別情報と関連付けて記録するとしてもよい。具体的には、継続的(例えば、毎月又は毎年)に走行調査を行い、走行調査を行う毎に、システムコントローラ20は、エリアにおける環境音の音圧を求め、求められた環境音の音圧に基づいて、エリアにおける環境音の音圧の経年変化値を求めて記録する。例えば、図6(c)に示すエリアテーブルでは、エリアA1における環境音の音圧は、1年目は55dBと求められ、2年目は57dBと求められ、3年目は62dBと求められている。従って、1年目から2年目にかけての経年変化値は+2dBとして求められ、2年目から3年目にかけての経年変化値は+5dBとして求められる。これにより、エリアA1では、徐々に騒音が悪化していることが分かる。このことから分かるように、各エリアにおける環境音の音圧の経年変化を求めて記録することにより、徐々に騒音が悪化している(又は改善している)傾向にあるエリアを特定することができる。また、騒音対策が実施されたエリアについては、騒音対策実施後の効果を計ることができる。
【0053】
なお、上述の実施例では、環境音圧記録装置100は、車両70が走行している状態で、環境音の音圧を取得するとしているが、これに限られるものではなく、代わりに、車両70が停止している状態で、環境音の音圧を取得するとしても良いのは言うまでもない。例えば、車両70が停止している状態で、所定時間毎に、環境音の音圧を取得して平均値を求めることにより、当該環境音が取得された地点における環境音の音圧の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施例による環境音圧記録装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本実施例による環境音圧記録装置を搭載した車両の模式図を示す。
【図3】本実施例に係る環境音圧記録方法を示す模式図である。
【図4】地点、リンク、エリアにおける環境音の音圧を示す図表である。
【図5】本実施例による環境音圧記録処理を示すフローチャートである。
【図6】リンク、エリアにおける環境音の音圧を示す図表である。
【符号の説明】
【0055】
10・・・自立測位装置
20・・・システムコントローラ
36・・・データ記憶ユニット
40・・・表示ユニット
50・・・環境音検出装置
100・・・環境音圧記録装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の外部の環境音の音圧を取得する音圧取得手段と、
前記音圧取得手段により前記環境音が取得されたときの前記移動体の位置を取得する位置取得手段と、
前記音圧取得手段により取得された前記環境音の音圧を、前記位置取得手段により取得された前記移動体の位置と関連付けて記録する記録手段と、を備えることを特徴とする環境音圧記録装置。
【請求項2】
前記移動体の複数の位置において前記音圧取得手段により取得された複数の環境音の音圧に基づいて、前記複数の位置を結ぶルートにおける環境音の音圧を求めるルート音圧算出手段を備え、
前記記録手段は、前記ルート音圧算出手段により求められた前記ルートにおける環境音の音圧を前記ルートの識別情報と関連付けて記録することを特徴とする請求項1に記載の環境音圧記録装置。
【請求項3】
エリアを囲む複数のルートの夫々における環境音の音圧を前記ルート音圧算出手段により求め、求められた前記複数のルートの夫々における環境音の音圧に基づいて、前記エリアにおける環境音の音圧を求めるエリア音圧算出手段を備え、
前記記録手段は、前記エリア音圧算出手段により求められた前記エリアにおける環境音の音圧を前記エリアの識別情報と関連付けて記録することを特徴とする請求項2に記載の環境音圧記録装置。
【請求項4】
前記エリア音圧算出手段は、前記エリアにおける環境音の音圧の時間に対する変化量を算出し、
前記記録手段は、前記変化量を前記エリアの識別情報と関連付けて記録することを特徴とする請求項3に記載の環境音圧記録装置。
【請求項5】
移動体の外部の環境音の音圧を取得する音圧取得工程と、
前記音圧取得手段により前記環境音が取得されたときの前記移動体の位置を取得する位置取得工程と、
前記音圧取得手段により取得された前記環境音の音圧を、前記位置取得手段により取得された前記移動体の位置と関連付けて記録する記録工程と、を備えることを特徴とする環境音圧記録方法。
【請求項6】
コンピュータによって実行される環境音圧記録プログラムであって、
移動体の外部の環境音の音圧を取得する音圧取得手段、
前記音圧取得手段により前記環境音が取得されたときの前記移動体の位置を取得する位置取得手段、
前記音圧取得手段により取得された前記環境音の音圧を、前記位置取得手段により取得された前記移動体の位置と関連付けて記録する記録手段、として前記コンピュータを機能させることを特徴とする環境音圧記録プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−68890(P2009−68890A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235219(P2007−235219)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(595105515)インクリメント・ピー株式会社 (197)
【Fターム(参考)】