説明

生体情報計測装置、生体情報計測方法および生体情報計測プログラム

【課題】簡便な処理で副交感神経指標を計測することのできる生体情報計測装置を提供する。
【解決手段】被験者の脈拍間隔を検出する脈拍間隔検出手段130と、脈拍間隔検出手段130が検出した脈拍間隔のうち処理対象となる対象脈拍間隔を基準として定まる計測期間であって、予め設定された計測期間内の脈拍間隔である複数の隣接脈拍間隔の平均を算出する平均算出手段132と、平均算出手段132により算出された平均と対象脈拍間隔との差分に基づいて、副交感神経指標を算出する副交感指標算出手段134とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報を計測する生体情報計測装置、生体情報計測方法および生体情報計測プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自律神経の活性状態の計測には、さまざまな手法が存在する。その中でも心拍の拍動間隔の揺らぎから、交感神経および副交感神経の活性度合いを取得する手法として、心拍の間隔変動の周波数解析に基づく手法が近年よく使用されている。
【0003】
心拍の取得には、心電図、光電式または圧力式の脈波を用い、得られた波形のピーク間隔の時間を読み取るのが一般的である。心拍の一拍ごとの間隔データを複数取得し、この間隔について周波数スペクトルに変換し、その中の低周波領域(LF:0.05〜0.15Hz)と高周波領域(HF:0.15〜0.4Hz)それぞれのパワーを特定するものである。これら低周波領域および高周波領域が自律神経それぞれの活性度と関連があることに基づく手法である。
【0004】
また、周波数解析が手軽に実施できる計算機環境が整備されない場合には、もっと簡便な指標として、RR50やMSSDという指標が用いられる場合もある。RR50を得るためには、隣り合った二つの心拍間隔データの差分を演算し、50msecを超えるものをカウントアップする。所定時間(たとえば1分間)におけるカウント数がRR50である。また、MSSDとは、the mean of the sum of the squared differences in successive R-R intervalsの略であり、隣り合った二つの心拍間隔データの差分の二乗を演算し、所定時間内の平均を求めたものである。これらはいずれも自律神経による揺らぎの度合いに基づく活性度計測法である。
【0005】
そのほかの自律神経計測手法として、心電と呼吸を利用してリアルタイムに副交感神経活動を評価するものや(例えば、「特許文献1」参照)、脈拍間隔の過去3点の大小関係から副交感神経活動を評価するもの(例えば、「特許文献2」参照)などがあげられる。
【0006】
自律神経活動を計測することで、ユーザのストレス、リラックスなど情動の変化が計測できるほか、眠気との関係から居眠り防止への利用や、自律神経活性度の変化のパターンから睡眠の状態を判定するなどの応用が考えられている。特許文献3では、心拍数のばらつきで自律神経機能を評価し、血圧計測などのカフで圧迫する前後の変化をモニタするものに利用する技術が開示されている。このように医療用途にも使われている。
【0007】
【特許文献1】特開2005−319256号公報
【特許文献2】特開平08−117198号公報
【特許文献3】特許第3643564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来から行われている周波数解析による手法は演算量が多いため、携帯機器などに組み込み可能な、処理能力の低い安価な演算器においては、処理を遂行することが困難であった。処理能力の高い演算器を搭載すると、機器のコストが高価になる、消費電力が増えるために電池での連続動作時間が短くなるなどの問題があった。
【0009】
またRR50、MSSDなど簡便な処理方法では、ゆらぎ成分に含まれる低周波成分(上記LFに相当)と高周波成分(上記HFに相当)の両方が演算結果に含まれており、交感神経および副交感神経の活性度の分離が困難であるという問題があった。特許文献1の手法では、心電と呼吸の両方の信号を用いる必要があり、装置が煩雑になるという問題があった。また特許文献2では、簡便に副交感神経活動に関連する指標がとりだせるが、大→小→大、小→大→小のパターンを数えるだけであるので、活性度合いの定量性にかけるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡便な処理で副交感神経指標を計測することのできる生体情報計測装置、生体情報計測方法および生体情報計測プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、生体情報計測装置であって、被験者の脈拍間隔を検出する脈拍間隔検出手段と、前記脈拍間隔検出手段が検出した前記脈拍間隔のうち処理対象となる対象脈拍間隔を基準として定まる計測期間であって、予め設定された前記計測期間内の脈拍間隔である複数の隣接脈拍間隔の平均を算出する平均算出手段と、前記平均算出手段により算出された前記平均と前記対象脈拍間隔との差分に基づいて、副交感神経指標を算出する副交感指標算出手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の他の形態は、生体情報計測装置であって、被験者の脈拍間隔を検出する脈拍間隔検出手段と、前記脈拍間隔検出手段が検出した前記脈拍間隔のうち処理対象となる対象脈拍間隔を基準として定まる計測期間であって、予め設定された前記計測期間内の脈拍間隔である複数の隣接脈拍間隔の平均を算出する平均算出手段と、前記平均算出手段により算出された前記平均の予め定められた規定期間におけるばらつきの程度を交感神経指標として算出する交感神経指標算出手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の他の形態は、生体情報計測装置であって、被験者の脈拍振幅を計測する脈拍振幅計測手段と、前記脈拍振幅計測手段により計測された前記脈拍振幅に基づいて、交感神経指標を算出する交感神経指標算出手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の他の形態は、生体情報計測方法であって、被験者の脈拍間隔を検出する脈拍間隔検出ステップと、前記脈拍間隔検出ステップにおいて検出した前記脈拍間隔のうち処理対象となる対象脈拍間隔を基準として定まる計測期間であって、予め設定された前記計測期間内の脈拍間隔である複数の隣接脈拍間隔の平均を算出する平均算出ステップと、前記平均算出ステップにおいて算出された前記平均と前記対象脈拍間隔との差分に基づいて、副交感神経指標を算出する副交感指標算出ステップとを有することを特徴とする。 また、本発明の他の形態は、生体情報計測方法であって、被験者の脈拍間隔を検出する脈拍間隔検出ステップと、前記脈拍間隔検出ステップにおいて検出した前記脈拍間隔のうち処理対象となる対象脈拍間隔を基準として定まる計測期間であって、予め設定された前記計測期間内の脈拍間隔である複数の隣接脈拍間隔の平均を算出する平均算出ステップと、前記平均算出ステップにおいて算出された前記平均の予め定められた規定期間におけるばらつきの程度を交感神経指標として算出する交感神経指標算出ステップとを有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の他の形態は、生体情報計測方法であって、被験者の脈拍振幅を計測する脈拍振幅計測ステップと、前記脈拍振幅計測ステップにおいて計測された前記脈拍振幅に基づいて、交感神経指標を算出する交感神経指標算出ステップとを有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の他の形態は、生体情報計測処理をコンピュータに実行させる生体情報計測プログラムであって、被験者の脈拍間隔を検出する脈拍間隔検出ステップと、前記脈拍間隔検出ステップにおいて検出した前記脈拍間隔のうち処理対象となる対象脈拍間隔を基準として定まる計測期間であって、予め設定された前記計測期間内の脈拍間隔である複数の隣接脈拍間隔の平均を算出する平均算出ステップと、前記平均算出ステップにおいて算出された前記平均と前記対象脈拍間隔との差分に基づいて、副交感神経指標を算出する副交感指標算出ステップとを有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の他の形態は、生体情報計測処理をコンピュータに実行させる生体情報計測プログラムであって、被験者の脈拍間隔を検出する脈拍間隔検出ステップと、前記脈拍間隔検出ステップにおいて検出した前記脈拍間隔のうち処理対象となる対象脈拍間隔を基準として定まる計測期間であって、予め設定された前記計測期間内の脈拍間隔である複数の隣接脈拍間隔の平均を算出する平均算出ステップと、前記平均算出ステップにおいて算出された前記平均の予め定められた規定期間におけるばらつきの程度を交感神経指標として算出する交感神経指標算出ステップとを有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の他の形態は、生体情報計測処理をコンピュータに実行させる生体情報計測プログラムであって、被験者の脈拍振幅を計測する脈拍振幅計測ステップと、前記脈拍振幅計測ステップにおいて計測された前記脈拍振幅に基づいて、交感神経指標を算出する交感神経指標算出ステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる生体情報計測装置によれば、脈拍間隔検出手段が、被験者の脈拍間隔を検出し、平均算出手段が、脈拍間隔検出手段が検出した脈拍間隔のうち処理対象となる対象脈拍間隔を基準として定まる計測期間であって、予め設定された計測期間内の脈拍間隔である複数の隣接脈拍間隔の平均を算出し、副交感指標算出手段が、平均算出手段により算出された平均と対象脈拍間隔との差分に基づいて、副交感神経指標を算出するので、簡便な処理により精度よく副交感神経指標を算出することができるという効果を奏する。
【0020】
また、本発明の他の形態にかかる生体情報計測装置によれば、脈拍間隔検出手段が、被験者の脈拍間隔を検出し、平均算出手段が、脈拍間隔検出手段が検出した脈拍間隔のうち処理対象となる対象脈拍間隔を基準として定まる計測期間であって、予め設定された計測期間内の脈拍間隔である複数の隣接脈拍間隔の平均を算出し、交感神経指標算出手段が、平均算出手段により算出された平均の予め定められた規定期間におけるばらつきの程度を交感神経指標として算出するので、簡便な処理により精度よく交感神経指標を算出することができるという効果を奏する。
【0021】
また、本発明の他の形態にかかる生体情報計測装置によれば、脈拍振幅計測手段が、被験者の脈拍振幅を計測し、交感神経指標算出手段が、脈拍振幅計測手段により計測された脈拍振幅に基づいて、交感神経指標を算出するので、簡便な処理により精度よく交感神経指標を算出することができるという効果を奏する。
【0022】
また、本発明の他の形態にかかる生体情報計測方法によれば、脈拍間隔検出ステップにおいて、被験者の脈拍間隔を検出し、平均算出ステップにおいて、脈拍間隔検出ステップにおいて検出した脈拍間隔のうち処理対象となる対象脈拍間隔を基準として定まる計測期間であって、予め設定された計測期間内の脈拍間隔である複数の隣接脈拍間隔の平均を算出し、副交感指標算出ステップにおいて、平均算出ステップにおいて算出された平均と対象脈拍間隔との差分に基づいて、副交感神経指標を算出するので、簡便な処理により精度よく副交感神経指標を算出することができるという効果を奏する。
【0023】
また、本発明の他の形態にかかる生体情報計測方法によれば、脈拍間隔検出ステップにおいて、被験者の脈拍間隔を検出し、平均算出ステップにおいて、脈拍間隔検出ステップにおいて検出した脈拍間隔のうち処理対象となる対象脈拍間隔を基準として定まる計測期間であって、予め設定された計測期間内の脈拍間隔である複数の隣接脈拍間隔の平均を算出し、交感神経指標算出ステップにおいて、平均算出ステップにおいて算出された平均の予め定められた規定期間におけるばらつきの程度を交感神経指標として算出するので、簡便な処理により精度よく交感神経指標を算出することができるという効果を奏する。
【0024】
また、本発明の他の形態にかかる生体情報計測方法によれば、脈拍振幅計測ステップにおいて、被験者の脈拍振幅を計測し、交感神経指標算出ステップにおいて、脈拍振幅計測ステップにおいて計測された脈拍振幅に基づいて、交感神経指標を算出するので、簡便な処理により精度よく交感神経指標を算出することができるという効果を奏する。
【0025】
また、本発明の他の形態にかかる生体情報計測プログラムによれば、脈拍間隔検出ステップにおいて、被験者の脈拍間隔を検出し、平均算出ステップにおいて、脈拍間隔検出ステップにおいて検出した脈拍間隔のうち処理対象となる対象脈拍間隔を基準として定まる計測期間であって、予め設定された計測期間内の脈拍間隔である複数の隣接脈拍間隔の平均を算出し、副交感指標算出ステップにおいて、平均算出ステップにおいて算出された平均と対象脈拍間隔との差分に基づいて、副交感神経指標を算出するので、簡便な処理により精度よく副交感神経指標を算出することができるという効果を奏する。
【0026】
また、本発明の他の形態にかかる生体情報計測プログラムによれば、脈拍間隔検出ステップにおいて、被験者の脈拍間隔を検出し、平均算出ステップにおいて、脈拍間隔検出ステップにおいて検出した脈拍間隔のうち処理対象となる対象脈拍間隔を基準として定まる計測期間であって、予め設定された計測期間内の脈拍間隔である複数の隣接脈拍間隔の平均を算出し、交感神経指標算出ステップにおいて、平均算出ステップにおいて算出された平均の予め定められた規定期間におけるばらつきの程度を交感神経指標として算出するので、簡便な処理により精度よく交感神経指標を算出することができるという効果を奏する。
【0027】
また、本発明の他の形態にかかる生体情報計測プログラムによれば、脈拍振幅計測ステップにおいて、被験者の脈拍振幅を計測し、交感神経指標算出ステップにおいて、脈拍振幅計測ステップにおいて計測された脈拍振幅に基づいて、交感神経指標を算出するので、簡便な処理により精度よく交感神経指標を算出することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明にかかる生体情報計測装置、生体情報計測方法および生体情報計測プログラムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1にかかる生体情報計測システム1の全体構成を示すブロック図である。生体情報計測システム1は、生体情報計測装置10と、センサヘッド20とを備えている。センサヘッド20は、腕装着型のセンサモジュールである。センサヘッド20は、被験者の脈波を検出する脈波センサ200を有している。
【0030】
生体情報計測装置10は、センサヘッド20から得られた脈波等に基づいて、生体情報を計測する。ここで、生体情報とは、副交感神経や交感神経の指標など自律神経の指標などである。生体情報計測装置10は、入力部100と、表示部102と、記憶部104と、データ通信部106と、時刻計測部107と、電力供給部110と、加速度センサ112と、体動計測部114と、脈波計測部116と、体動サンプリングデータ処理部120と、覚醒/睡眠判定部122と、脈波サンプリングデータ処理部130と、脈波間隔平均データ算出部132と、自律神経指標演算部134と、睡眠時リラックス度算出部136と、制御部140とを有している。
【0031】
ここで、図1に示す生体情報計測装置10の装着の例について説明する。図2は、図1に示す生体情報計測システム1の装着の一例を示す図である。脈波センサ200を含むセンサヘッド20は指に、生体情報計測装置10本体は腕時計のように手首に装着される。なお、センサヘッド20は、手のひらにバンソウ膏で装着してもよい。
【0032】
図1の説明に戻ると、入力部100は、ユーザが電源をON/OFFする、または表示を切り替える要求や指示を行うスイッチである。また、表示部102は、生体情報計測結果を表示する表示装置であり、具体的には、LCDなどである。記憶部104は、脈波データ、体動データなどの計測データ、脈拍間隔データなど処理後のデータ、睡眠状態を判定する閾値などのデータを記憶する記憶部であり、具体的には、フラッシュメモリなどである。
【0033】
データ通信部106は、パソコンやPDA端末、携帯電話などとデータ通信を行う通信部であり、具体的には、Bluetoothなどである。時刻計測部107は、時刻を計測する装置であり、具体的には、リアルタイムクロックなどである。電力供給部110は、睡眠計測装置10の電力を供給する電源であり、具体的には、バッテリである。
【0034】
加速度センサ112は、被験者の体動を示す体動データとして加速度データを計測する。加速度センサ112は、3軸方向の−2g〜2gの加速度を計測する加速度計であり、生体情報計測装置10内に搭載されている。体動計測部114は、加速度センサ112により得られたアナログデータのゲイン、オフセットを調整回路で調整した後、10ビットA/D変換器でデジタル量に変換し、これを加速度データとして制御部140に入力する。
【0035】
体動サンプリングデータ処理部120は、体動計測部114により得られた加速度データに対して、時間微分を行い、3軸方向それぞれの加速度の微係数を算出する。この3軸方向の加速度の微係数の2乗和の平方根を算出し、これを体動データの変動量とする。さらに、体動データの変動量から脈拍間隔内の体動データの変動量の平均を算出する。これを体動量とする。体動データの変動量および体動量は、体動判定のためのデータとして体動判定部124に提供される。
【0036】
なお、本実施の形態の体動データの変動量は、例えば体動計測部114で計測される50ms毎のユーザの体動の変動量である。また、体動量は、例えば取得した体動データの変動量の1分間の平均値である。
【0037】
図3−1は、体動計測部114により計測された3軸方向それぞれの加速度データの一例を示す図である。図3−2は、図3−1に示す3軸方向の加速度の微係数の1分間の変移を示す図である。図3−3は、図3−2に示す加速度の微係数から得られた体動データの変動量の1分間の変移を示す図である。体動サンプリングデータ処理部120は、このように、加速度データから体動データの変動量を算出し、さらに体動データの変動量の平均を体動量として得る。
【0038】
覚醒/睡眠判定部122は、被験者の体動データに基づいて被験者が覚醒しているか否かを判定する。覚醒/睡眠判定部122は、体動判定部124と覚醒判定部126を有する。体動判定部124は、体動データの変動量が予め定められた体動閾値より大きい場合に体動と判定する。例えば、体動閾値として体動計に使用されている微小な体動の最小値である0.01Gを用いる。
【0039】
また、覚醒判定部126は、体動判定部124によって判定された体動の発生頻度が頻度閾値以上である場合に覚醒中の体動と判定し、体動の発生頻度が頻度閾値未満である場合は睡眠中の体動と判定する。また、体動の発生頻度が頻度閾値以上であり、かつ、脈拍間隔データが過去の睡眠中の脈拍間隔データの平均値より短い場合は、覚醒中の体動と判定する。頻度閾値は、例えば、過去の覚醒時における体動頻度を参考に設定してもよい。例えば、20回/分と設定する。
【0040】
図4は、体動判定部124と覚醒判定部126の処理を説明するための図である。図4に示す例においては、体動閾値が0.01G、体動頻度が5回/分と設定されている。この場合、体動判定部124は、0.01以上の体動データを体動と判定する。覚醒判定部126は、体動頻度が2回/分および3回/分では覚醒と判定し、7回/分、6回/分では睡眠と判定する。
【0041】
脈波センサ200は、青色LEDとフォトダイオードからなり、指の皮膚表面に光を照射し、毛細血管内の血流変化により変化する反射光の変動をフォトダイオードで捉えることで脈波を計測する。脈波計測部116は、脈波センサ200のフォトダイオードからの出力電流を電流電圧変換器で電圧に変換し、増幅器で電圧を増幅して、ハイパスフィルタ(カットオフ周波数:0.1Hz)とローパスフィルタ(カットオフ周波数:50Hz)を施した後、10ビットA/D変換器でデジタル量に変換して制御部140に入力する。
【0042】
脈波サンプリングデータ処理部130は、被験者の脈波から脈波データをサンプリングして脈拍間隔データを得る。具体的には、図5に示すように、脈波データをサンプリングし、サンプリングした一連の脈波データの処理ポイントを中心とした前後約1秒の脈波データの最大値と最小値を得る。最大値と最小値との間の所定の値を基準値とする。基準値としては、最大値と最小値との差を振幅とした場合に、最小値から振幅の9割の値を用いるのが好ましい。
【0043】
さらに、直流変動成分を除去された一連の脈波データのうち、例えばピークの右側において基準値に一致する値が現れた時刻を算出する。ピークの右側にかえて左側でもよい。算出された時刻の間隔から脈拍間隔データを得る。脈拍間隔データは、記憶部104に記憶される。なお、体動判定部124が体動有りと判定した計測タイミングと同一のタイミングに得られた脈拍間隔データは破棄する
【0044】
図6は、脈波間隔平均データ算出部132および自律神経指標演算部134の処理を説明するための図である。横軸および縦軸は、それぞれ時間および脈拍間隔である。図6に示すように脈拍間隔データは、高周波の揺らぎ成分(HF)と低周波の揺らぎ成分(LF)とを含んでいる。脈波間隔平均データ算出部132および自律神経指標演算部134は、この脈拍間隔データに基づいて、自律神経指標を算出する。具体的には、高周波の揺らぎ成分(HF)と低周波の揺らぎ成分(LF)を分離し、高周波の揺らぎ成分および低周波の揺らぎ成分をそれぞれ副交感神経指標および交感神経指標として得る。
【0045】
脈波間隔平均データ算出部132は、所定範囲内の脈波間隔データの平均値、すなわち脈波間隔平均データを算出する。自律神経指標演算部134は、脈波間隔平均データに基づいて、自律神経指標を算出する。
【0046】
脈波間隔平均データ算出部132は、新しい脈拍間隔データが得られるたびに、得られた脈拍間隔データを含まない過去所定個数の脈拍間隔データを記憶部104より読み込む。ここでは、脈拍間隔データRR5が得られた時点で、RR5よりも過去に得られた脈拍間隔データRR1〜RR4を読み込む場合について説明する。この場合、RR1〜RR4の間の期間が計測期間に相当する。
【0047】
(式1)により過去4点の脈拍間隔データの平均値、すなわち脈拍間隔平均データを算出する。(式1)において、iは、過去に得られた脈拍間隔データの数である。
【数1】

【0048】
自律神経指標演算部134は、(式2)により脈拍間隔平均データと、最新の脈拍間隔データ(R5)との差分の二乗を計算し、これを記憶部104に記憶する。
【数2】

【0049】
さらに(式3)により、例えば1分など所定間隔ごとに、その間に発生した脈拍間隔データについて、その都度演算した差分の二乗の値の平均を演算し、これをaMSSD(averaged MSSD)と定義し、これを副交感神経指標として記憶部104に記憶する。なお、(式3)におけるNは、1分間に得られる脈拍間隔データのデータ数である。(式3)において、iは、過去に得られた脈拍間隔データの数に1加算した値であり、RRiは、直前に得られた脈波間隔データである。
【数3】

【0050】
このように、簡便な処理により副交感神経指標であるaMSSDを精度よく算出することができる。さらに、処理量が少ないので、この処理によれば、腕時計などの安価な携帯機器においても、精度よく副交感神経指標を算出することができる。
【0051】
なお、本実施の形態においては、過去所定個数は、予め4個に設定されていたが、他の例としては、呼吸周期と心拍周期に基づいて、過去所定個数を決定することとしてもよい。高周波成分の周期は、生理的に呼吸周期と同期していることが知られている。呼吸周期と心拍周期は、それぞれ15−20bpm、60bpm前後であるため、この比率から、過去所定個数に含める点の数、すなわち移動平均の点数を決定することができる。呼吸周期に基づいた場合、3点から5点程度の点数が算出される。なお、点数は個人により異なる場合もある。そこで、あらかじめ呼吸周期と心拍の比率を被験者ごとに計測し設定しておくこととしてもよい。
【0052】
また、呼吸周期のみが予めわかっている場合には、脈拍間隔の点数を呼吸周期から決定してもよい。すなわち、移動平均の範囲をこの呼吸周期にあわせて動的に変更してもよい。その場合、想定される点数の範囲(たとえば3点〜5点)における脈拍間隔の合計を算出する。そして、この合計値のうち、所定の呼吸周期に最も近い点数を採用する。
【0053】
また、上記(式1)から(式3)は、過去所定個数が4点である場合の計算式であるが、これ以外の個数でもよく、過去所定個数がnの場合には、(式4)によりaMSSDを算出する。
【数4】

【0054】
図7は、脈波間隔データに含まれる低周波成分と高周波成分とを説明するための図である。このように、FFT(Fast Fourier Transform)法などの解析法により脈波間隔データの周波数スペクトルを得ると、低周波領域(0.05〜0.15Hz付近)の指標LFと、高周波領域(0.15〜0.4Hz付近)の指標HFという2つの自律神経指標が得られる。低周波領域の指標は、交感神経指標を示している。また、高周波領域の指標は、副交感神経指標を示している。
【0055】
従来のMSSDは、この高周波領域の指標である副交感神経指標を算出するものであるが、低周波および高周波の両方の揺らぎ成分を含んでしまうため、高周波の揺らぎ成分のみを分離するのが困難であった。
【0056】
これに対し、本実施の形態にかかるaMSSDは、図7に示すような高周波成分と低周波成分とが混在した成分から高周波成分のみを選択的に抽出することができる。したがって、より正確な副交感神経指標を算出することができる。
【0057】
図8は、周波数解析により得られた副交感神経指標HFおよび従来のMSSDおよび本実施の形態にかかるaMSSDの計測結果の一例を示す図である。このように、従来のMSSDによる計測結果は、HFから大きくずれるのに対し、本実施の形態にかかるaMSSDによる計測結果はHFとほぼ一致した。相関係数では10データ平均で、0.38から0.67へ向上した。
【0058】
再び説明を図1に戻す。睡眠時リラックス度算出部136は、記憶部104に記憶されている自律神経指標値、すなわちaMSSDの睡眠中の積算値、または平均値を算出し、これを睡眠時リラックス度として記憶部104に蓄積するとともに、表示部102に表示する。
【0059】
制御部140は、生体情報計測装置10全体を制御する制御部であり、被験者の要求および指示を受け付けて各処理部に対する処理要求およびデータの流れを制御する。具体的には、被験者の要求を受け付けて電源のON/OFF、睡眠時リラックス度の算出、表示などを制御する。
【0060】
図9は、生体情報計測装置10による処理を示すフローチャートである。被験者は、睡眠前に本生体情報計測装置10を装着し、入力部100から電源および計測機能を起動すると(ステップS100)、生体情報計測装置10は、加速度センサおよび脈波センサによって加速度データと脈波データの測定を開始する(ステップS102、ステップS120)。
【0061】
体動サンプリングデータ処理部120は、体動計測部114から取得した3軸方向の加速度データを時間微分して3軸方向の加速度の微係数を求め(ステップS104)、3軸方向の加速度のそれぞれの微係数の二乗和の平方根を求める(ステップS106)。そして、体動判定部124は、体動サンプリングデータ処理部120によって求められた3軸方向の加速度の微係数の二乗和の平方根を受け取って、体動が現れるまで待つ(ステップS108)。3軸方向の加速度の微係数の二乗和の平方根である体動データの変動量が体動閾値より大きい場合に体動と判定される。
【0062】
そして、体動判定部124が体動を検出すると(ステップS108、Yes)、覚醒判定部126は、設定区間の体動発生頻度を算出し(ステップ110)、覚醒か否かを判定する(ステップS112)。覚醒状態と判定された場合は(ステップS112、Yes)、覚醒判定部126は、記憶部104に入眠時刻、覚醒時刻、中途覚醒回数を保持させる(ステップS114)。さらに覚醒判定部126は、記憶部104に睡眠中の体動量を保持させる。体動計測が終了すると(ステップS116,Yes)、ステップS138へ進む。
【0063】
これに対して、脈波サンプリングデータ処理部130は、脈波データをサンプリングし、サンプリングした一連の脈波データの所定の時間間隔内の脈波データの最大値と最小値を取得し、最大値と最小値との間の所定の値を基準値として決定する(ステップS122)。さらに、一連の脈波データから基準値に一致する一連の脈波データの値が現れた時刻を算出し、算出された時刻の間隔から脈拍間隔データを算出する(ステップS124)。このタイミングにおける体動判定部124による判定結果を照合し、体動が発生していなければこれを脈拍間隔データとして正式に採用する(ステップS126)。
【0064】
さらに、脈拍間隔平均データ算出部132は、過去所定点数の脈拍間隔データを記憶部104から取得し、その平均値を算出する(ステップS128)。次に、自律神経指標演算部134は、最新の脈拍間隔データと脈拍間隔平均データの差分の二乗を算出する(ステップS130)。次に、得られたデータの所定時間(たとえば1分間)の平均値を算出し(ステップS132)、これをaMSSDとして記憶部104に記憶する(ステップS134)。
【0065】
一連の脈波データ計測が終了処理されると(ステップS136,Yes)、それまでの睡眠時のaMSSDデータを再度記憶部104から読み込み、この積算値、あるいは平均値を算出し(ステップS138)、睡眠時リラックス度として表示部に12表示し、記憶部104に書き込む(ステップS140)。
【0066】
上述してきたように、本実施の形態1では、簡便な構成の生体情報計測装置10により、睡眠時の副交感神経の活性指標を算出、表示することで睡眠の状態を手軽にチェックすることができる。
【0067】
図10は、実施の形態1にかかる生体情報計測装置10のハードウェア構成を示す図である。生体情報計測装置10は、ハードウェア構成として、本実施の形態にかかる生体情報計測装置10における体動サンプリングデータ処理部120、覚醒/睡眠判定部122、脈波サンプリングデータ処理部130、脈波間隔平均データ算出部132、自律神経指標演算部134、および睡眠時リラックス度算出部136による処理を実現する生体情報計測処理を実行する生体情報計測プログラムなどが格納されているROM52と、ROM52内のプログラムに従って生体情報計測装置10の各部を制御するCPU51と、q010の制御に必要な種々のデータを記憶するRAM53と、ネットワークに接続して通信を行う通信I/F57と、各部を接続するバス62とを備えている。
【0068】
先に述べた生体情報計測装置10における生体情報計測プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フロッピー(登録商標)ディスク(FD)、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0069】
この場合には、生体情報計測プログラムは、生体情報計測装置10において上記記録媒体から読み出して実行することにより主記憶装置上にロードされ、上記ソフトウェア構成で説明した各部が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0070】
また、本実施の形態の生体情報計測プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。
【0071】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができる。
【0072】
そうした第1の変更例としては、実施の形態1にかかる生体情報計測システム1においては、脈波を用いて心拍変動より自律神経指標を取得したが、これにかえて心電図を用いてもよい。この場合にも実施の形態にかかる生体情報計測システム1と同様の計測を行うことができる。この場合、脈波センサ200にかえて心電センサを用いる。心電センサにより心電位信号を取得し、一拍ごとの脈拍を算出する。これ以外の構成および処理は、実施の形態1にかかる生体情報計測システム1の構成および処理と同様である。
【0073】
また、第2の変更例としては、実施の形態1にかかる生体情報計測システム1においては、aMSSDを算出する際に、対象とする対象脈波間隔データを基準とし、このデータの直前に得られた4つの脈波間隔データの平均値を算出したが、対象脈波間隔データに隣接する複数の脈波間隔データであればよく、例えば、対象脈波間隔データの直前に得られた2つの脈波間隔データと、直後に得られる2つの脈間隔データの計4つの脈波間隔データであってもよい。また例えば、対象脈波間隔データの次に連続して計測される4つの脈波間隔データであってもよい。
この場合には、(式4)によりaMSSDは、(式5)により算出される。
【数5】

【0074】
また、第3の変更例としては、実施の形態1にかかる生体情報計測システム1においては、脈波間隔平均データと脈波間隔データRR5との差分の二乗に基づいて、aMSSDを算出したが、これにかえて、脈波間隔平均データと脈波間隔データRR5の差分の絶対値に基づいて、aMSSDを算出してもよい。
【0075】
(実施の形態2)
図11は、実施の形態2にかかる生体情報計測システム1の全体構成を示すブロック図である。実施の形態2にかかる生体情報計測システム1は、実施の形態1にかかるセンサヘッド20にかえてマットセンサ30を備えている。マットセンサ30は、圧力センサ300を有している。また、生体情報計測装置10は、実施の形態1にかかる生体情報計測装置10の加速度センサ112と、脈波計測部116とにかえて、心拍計測部150を有している。
【0076】
図12は、マットセンサ30の配置例を示す図である。マットセンサ30は、ベッド31のマットレス32の表面に配置されている。そして、マットセンサ30は、被験者の不在、在床、および体動を検出する。マットセンサ30は、被験者の胸部または腹部に対応する位置に配置され、被験者の動きによる振動を圧力センサ300にて計測する。この計測結果により心拍と体動を検出することができる。
【0077】
マットセンサ30は、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子圧電材料で形成されている。薄膜状に成形された高分子圧電材料の両面に可とう性の電極膜が付着され、テープ状に形成された圧電素子である。
【0078】
再び説明を図11に戻す。実施の形態2にかかる体動計測部114は、マットセンサ30の出力信号をフィルタ、増幅器を介してA/D変換器でデジタル量に変換する。フィルタには、体動計測の帯域に適したものが利用される。同様に、心拍計測部150は、マットセンサ30の出力信号をフィルタ、増幅器を介してA/D変換器でデジタル量に変換する。フィルタには、心拍計測の帯域に適したものが利用される。
【0079】
このように、実施の形態2にかかる生体情報計測システム1においては、実施の形態1にかかる脈波計測にかえて心拍計測を行い、この結果に対して実施の形態1における脈波計測結果に対する処理を行う。なお、心拍計測の結果と脈波計測の結果とは、自律神経指標を得るためのデータとしては実質的に同等である。
【0080】
なお、実施の形態2にかかる生体情報計測システム1のこれ以外の構成および処理は、実施の形態1にかかる生体情報計測システム1の構成および処理と同様である。
【0081】
(実施の形態3)
図13は、実施の形態3にかかる生体情報計測システム1の全体構成を示すブロック図である。実施の形態3にかかる生体情報計測システム1は、実施の形態1にかかるセンサヘッド20にかえてカメラ40を備えている。また、生体情報計測装置10は、実施の形態1にかかる生体情報計測装置10の加速度センサ112と、脈波計測部116とにかえて、画像差分演算部142と、心拍計測部150を有している。
【0082】
カメラ40は、布団上の画像を撮影する。そして、生体情報計測装置10の画像差分演算部142は、カメラ40により撮影された画像の時間差分画像を得る。布団は、被験者の呼吸や心拍に同期して微妙に変位する。したがって、時間方向でフレームごとの差分をとり、画素ごとの合計を計算すると、変位量に応じた値を得ることができる。また同様に体動が起きればそれに対応した変化が得られる。なお、差分画像は、これら呼吸や体動などが重畳したものである。そこで、体動計測部114は、体動計測に適した帯域のフィルタにより体動データを分離抽出する。同様に、心拍計測部150は、心拍計測に適した帯域のフィルタにより心拍データを分離抽出する。
【0083】
実施の形態3にかかる生体情報計測装置10は、実施の形態2にかかる生体情報計測装置10と同様、脈波データにかえて心拍データに対し、自律神経指標演算等の処理を行う。
【0084】
なお、実施の形態3にかかる生体情報計測システム1の構成および処理は、他の実施の形態にかかる生体情報計測システム1の構成および処理と同様である。
【0085】
(実施の形態4)
図14は、実施の形態4にかかる生体情報計測システム1の全体構成を示すブロック図である。実施の形態4にかかる生体情報計測システム1は、実施の形態1にかかる睡眠時リラックス度算出部136にかえて、睡眠状態判定部144を有している。
【0086】
実施の形態4にかかる自律神経指標演算部134は、aMSSDに加えて、脈拍間隔データの平均値のばらつきを算出する。この値を感神経指標として記憶部104に記録する。具体的には、各脈拍検出時に、その都度算出していた脈拍間隔平均の値を記憶部104に蓄積する。そして、所定時間(たとえば1分)内の脈拍間隔平均の値の標準偏差を算出し、これを脈拍間隔平均のばらつきとする。なお、脈波間隔平均のばらつきを、交感神経指標とする。
【0087】
睡眠状態判定部144は、自律神経指標演算部134により算出された一晩分の交感神経指標および副交感神経指標を元に睡眠の状態(レム睡眠、ノンレム睡眠の浅い睡眠、ノンレム睡眠の深い睡眠)を判定する。
【0088】
図15は、実施の形態4にかかる生体情報計測装置10による処理を示すフローチャートである。実施の形態4にかかる生体情報計測装置10は、体動計測が終了すると(ステップS116,Yes)、各時刻における覚醒睡眠判定の結果を示す睡眠覚醒データを記憶部104に記憶する(ステップS118)。
【0089】
また、脈波データ計測処理においては、aMSSDを算出した後(ステップS150)、さらに脈波間隔平均ばらつきを算出する(ステップS152)。なお、aMSSD算出と脈波間隔平均ばらつき算出の処理順番は特に限定されるものではない。
【0090】
次に、脈波間隔平均ばらつきを交感神経指標として記憶部104に蓄積し、さらに、aMSSDを副交感神経指標として記憶部104に蓄積する(ステップS152)。脈波計測が終了すると(ステップS154)、次に、睡眠状態判定部144は、交感神経指標および副交感神経指標に基づいて、睡眠状態を判定する(ステップS160)。次に、睡眠状態判定の結果を表示部102に表示する(ステップS162)。次に、睡眠指標を算出する(ステップS164)。次に、睡眠指標を表示部102に表示する(ステップS166)。以上で、実施の形態4にかかる生体情報計測装置10の処理が完了する。
【0091】
図16は、図15を参照しつつ説明した睡眠状態判定処理(ステップS160)における睡眠状態判定部144の詳細な処理を示すフローチャートである。睡眠状態判定部144は、まず交感神経指標および副交感神経指標の標準偏差を算出する。さらに交感神経指標に10点ごとの移動平均を乗ずる。この値を以下、交感神経指標とする。同様に、副交感神経指標に10点ごとの移動平均を乗じる。この値を以下副交感神経指標とする(ステップ200)。
【0092】
交感神経指標が第1の判定閾値よりも小さく(ステップS202,Yes)、副交感神経指標が、第2の判定閾値以上であって(ステップS204,No)、副交感神経指標が、第4の判定閾値よりも小さく(ステップS206,Yes)、交感神経指標の標準偏差および副交感神経指標の標準偏差の合計が第5の判定閾値よりも大きい場合に(ステップS210,Yes)、レム睡眠と判定する(ステップS212)。
【0093】
また、ステップS206において、副交感神経指標が第2の判定閾値よりも小さい場合には(ステップS206,Yes)、深睡眠と判定する(ステップS214)。また、ステップS202において、交感神経指標が第1の判定閾値以上であって(ステップS202,No)、交感神経指標が第3の判定閾値以上である場合には(ステップS204,No)、浅睡眠と判定する(ステップS216)。ステップS204において、交感神経指標が第3の判定閾値よりも小さい場合には(ステップS206,Yes)、ステップS206へ進む。
【0094】
ステップS208において、副交感神経指標が第4の判定閾値以上である場合(ステップS208,No)、ステップS210において、交感神経指標の標準偏差および副交感神経指標の標準偏差の合計が第5の判定閾値以下である場合には(ステップS210,No)、浅睡眠と判定する(ステップS216)。
【0095】
なお、第1の判定閾値から第5の判定閾値は、例えば、被験者毎に一晩計測した交感神経指標、副交感神経指標、交感神経指標の標準偏差と副交感神経指標の標準偏差の合計、それぞれの分布の密度の高い点を2点選び、交感神経指標の2点の中点を第1の判定閾値=第3の判定閾値、副交感神経指標の2点の中点を第2の判定閾値=第4の判定閾値、交感神経指標の標準偏差と副交感神経指標の標準偏差の合計の2点の中点を第5の判定閾値として設定することができる。
【0096】
図17は、図15を参照しつつ説明した睡眠状態判定結果表示処理(ステップS162)において表示部102に表示される表示画面を示す図である。図17に示すように、各時間の睡眠状態の変化をグラフ表示する。
【0097】
実施の形態4にかかる生体情報計測システム1のこれ以外の構成および処理は、他の実施の形態にかかる生体情報計測システム1の構成および処理と同様である。
【0098】
図18は、実施の形態4の第1の変更例にかかる睡眠状態判定結果の表示画面を示す図である。このように、時間変化をグラフ表示するのにかえて、睡眠時間、各睡眠状態の比率、体動量などの指標を表示してもよい。
【0099】
図19は、実施の形態4の第2の変更例にかかる処理を示すフローチャートである。実施の形態においては、脈波間隔平均ばらつきを交感神経指標として算出したが、これにかえて脈波振幅ばらつきを交感神経指標として算出してもよい。
【0100】
この場合、脈波データを計測した後(ステップS120)、脈波波形振幅を算出する(ステップS170)。また、脈波間隔平均ばらつきを算出するのにかえて、脈波振幅ばらつきを算出する(ステップS172)。具体的には、例えば1分など所定時間における脈波振幅の標準偏差を脈波振幅ばらつきとして算出する。次に、脈波振幅ばらつきを交感神経として記憶部104に蓄積し、aMSSDを副交感神経指標として記憶部104に記憶する(ステップS174)。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】実施の形態1にかかる生体情報計測システム1の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す生体情報計測システム1の装着の一例を示す図である。
【図3−1】体動計測部114により計測された3軸方向それぞれの加速度データの一例を示す図である。
【図3−2】図3−1に示す3軸方向の加速度の微係数の1分間の変移を示す図である。
【図3−3】図3−2に示す加速度の微係数から得られた体動データの変動量の1分間の変移を示す図である。
【図4】体動判定部124と覚醒判定部126の処理を説明するための図である。
【図5】脈拍間隔データを算出する処理を説明するための図である。
【図6】脈波間隔平均データ算出部132および自律神経指標演算部134の処理を説明するための図である。
【図7】脈波間隔データに含まれる低周波成分と高周波成分とを説明するための図である。
【図8】周波数解析により得られた副交感神経指標HFおよび従来のMSSDおよび本実施の形態にかかるaMSSDの計測結果の一例を示す図である。
【図9】生体情報計測装置10による処理を示すフローチャートである。
【図10】実施の形態1にかかる生体情報計測装置10のハードウェア構成を示す図である。
【図11】実施の形態2にかかる生体情報計測システム1の全体構成を示すブロック図である。
【図12】マットセンサ30の配置例を示す図である。
【図13】実施の形態3にかかる生体情報計測システム1の全体構成を示すブロック図である。
【図14】実施の形態4にかかる生体情報計測システム1の全体構成を示すブロック図である。
【図15】実施の形態4にかかる生体情報計測装置10による処理を示すフローチャートである。
【図16】図15を参照しつつ説明した睡眠状態判定処理(ステップS160)における睡眠状態判定部144の詳細な処理を示すフローチャートである。
【図17】図15を参照しつつ説明した睡眠状態判定結果表示処理(ステップS162)において表示部102に表示される表示画面を示す図である。
【図18】実施の形態4の第1の変更例にかかる睡眠状態判定結果の表示画面を示す図である。
【図19】実施の形態4の第2の変更例にかかる処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0102】
1 生体情報計測システム
10 生体情報計測装置
20 センサヘッド
30 マットセンサ
31 ベッド
32 マットレス
40 カメラ
51 CPU
52 ROM
53 RAM
57 通信I/F
62 バス
100 入力部
102 表示部
104 記憶部
106 データ通信部
107 時刻計測部
110 電力供給部
112 加速度センサ
114 体動計測部
116 脈波計測部
120 体動サンプリングデータ処理部
122 覚醒/睡眠判定部
124 体動判定部
126 覚醒判定部
130 脈波サンプリングデータ処理部
132 脈波間隔平均データ算出部
134 自律神経指標演算部
136 睡眠時リラックス度算出部
140 制御部
142 画像差分演算部
144 睡眠状態判定部
150 心拍計測部
200 脈波センサ
300 圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の脈拍間隔を検出する脈拍間隔検出手段と、
前記脈拍間隔検出手段が検出した前記脈拍間隔のうち処理対象となる対象脈拍間隔を基準として定まる計測期間であって、予め設定された前記計測期間内の脈拍間隔である複数の隣接脈拍間隔の平均を算出する平均算出手段と、
前記平均算出手段により算出された前記平均と前記対象脈拍間隔との差分に基づいて、副交感神経指標を算出する副交感指標算出手段と
を備えたことを特徴とする生体情報計測装置。
【請求項2】
前記副交感神経指標算出手段は、前記平均と前記対象脈拍間隔との差分の二乗または前記差分の絶対値の、予め定められた規定期間における平均を前記副交感神経指標として算出することを特徴とする請求項1に記載の生体情報計測装置。
【請求項3】
前記平均算出手段は、前記対象脈波間隔が計測された計測タイミングの直前の前記計測期間に計測された複数の前記隣接脈波間隔の平均を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の生体情報計測装置。
【請求項4】
前記平均算出手段は、前記対象脈波間隔が計測された計測タイミングの直後の前記計測期間に計測された複数の前記隣接脈波間隔の平均を算出することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【請求項5】
前記計測期間は、前記被験者の呼吸周期であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【請求項6】
前記被験者の呼吸周期を前記計測期間として設定する計測期間設定手段をさらに備え、 前記平均算出手段は、前記計測期間設定手段により設定された前記計測期間内に計測された複数の前記脈拍間隔の平均を算出することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【請求項7】
前記平均算出手段により算出された前記平均の予め定められた規定期間におけるばらつきの程度を交感神経指標として算出する交感神経指標算出手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【請求項8】
前記交感神経指標算出手段は、前記ばらつきの程度として前記規定期間における前記平均の標準偏差を算出することを特徴とする請求項7に記載の生体情報計測装置。
【請求項9】
前記脈拍間隔検出手段が前記脈拍間隔を検出している間の脈拍振幅を計測する脈拍振幅計測手段と、
前記脈拍振幅計測手段により計測された前記脈拍振幅に基づいて、交感神経指標を算出する交感神経指標算出手段と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【請求項10】
前記交感神経指標算出手段は、前記脈波振幅の予め定められた規定期間におけるばらつきの程度を前記交感神経指標として算出することを特徴とする請求項9に記載の生体情報計測装置。
【請求項11】
前記交感神経指標算出手段は、前記ばらつきの程度として前記規定期間における前記脈拍振幅の標準偏差を算出することを特徴とする請求項10に記載の生体情報計測装置。
【請求項12】
前記副交感神経指標に基づいて、前記被験者の睡眠状態の時間変化を判定することを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【請求項13】
前記交感神経指標に基づいて、前記被験者の睡眠状態の時間変化を判定することを特徴とする請求項7から11のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【請求項14】
前記被験者の抹消神経の変化を計測する脈波計測手段をさらに備え、
前記脈波間隔検出手段は、前記脈波計測手段による計測結果に基づいて、前記脈波間隔を検出することを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【請求項15】
前記被験者の心電位を計測する心電位計測手段をさらに備え、
前記脈波間隔検出手段は、前記心電位計測手段による計測結果に基づいて、前記脈波間隔を検出することを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【請求項16】
前記被験者の体圧を計測する圧力変動計測手段をさらに備え、
前記脈波間隔検出手段は、前記圧力変動計測手段による計測結果に基づいて、前記脈波間隔を検出することを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【請求項17】
前記被験者の画像を撮像する撮像手段をさらに備え、
前記脈波間隔検出手段は、前記撮像手段による撮像画像の時間変化に基づいて、前記脈波間隔を検出することを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【請求項18】
被験者の脈拍間隔を検出する脈拍間隔検出手段と、
前記脈拍間隔検出手段が検出した前記脈拍間隔のうち処理対象となる対象脈拍間隔を基準として定まる計測期間であって、予め設定された前記計測期間内の脈拍間隔である複数の隣接脈拍間隔の平均を算出する平均算出手段と、
前記平均算出手段により算出された前記平均の予め定められた規定期間におけるばらつきの程度を交感神経指標として算出する交感神経指標算出手段と
を備えたことを特徴とする生体情報計測装置。
【請求項19】
被験者の脈拍振幅を計測する脈拍振幅計測手段と、
前記脈拍振幅計測手段により計測された前記脈拍振幅に基づいて、交感神経指標を算出する交感神経指標算出手段と
を備えたことを特徴とする生体情報計測装置。
【請求項20】
被験者の脈拍間隔を検出する脈拍間隔検出ステップと、
前記脈拍間隔検出ステップにおいて検出した前記脈拍間隔のうち処理対象となる対象脈拍間隔を基準として定まる計測期間であって、予め設定された前記計測期間内の脈拍間隔である複数の隣接脈拍間隔の平均を算出する平均算出ステップと、
前記平均算出ステップにおいて算出された前記平均と前記対象脈拍間隔との差分に基づいて、副交感神経指標を算出する副交感指標算出ステップと
を有することを特徴とする生体情報計測方法。
【請求項21】
被験者の脈拍間隔を検出する脈拍間隔検出ステップと、
前記脈拍間隔検出ステップにおいて検出した前記脈拍間隔のうち処理対象となる対象脈拍間隔を基準として定まる計測期間であって、予め設定された前記計測期間内の脈拍間隔である複数の隣接脈拍間隔の平均を算出する平均算出ステップと、
前記平均算出ステップにおいて算出された前記平均の予め定められた規定期間におけるばらつきの程度を交感神経指標として算出する交感神経指標算出ステップと
を有することを特徴とする生体情報計測方法。
【請求項22】
被験者の脈拍振幅を計測する脈拍振幅計測ステップと、
前記脈拍振幅計測ステップにおいて計測された前記脈拍振幅に基づいて、交感神経指標を算出する交感神経指標算出ステップと
を有することを特徴とする生体情報計測方法。
【請求項23】
生体情報計測処理をコンピュータに実行させる生体情報計測プログラムであって、
被験者の脈拍間隔を検出する脈拍間隔検出ステップと、
前記脈拍間隔検出ステップにおいて検出した前記脈拍間隔のうち処理対象となる対象脈拍間隔を基準として定まる計測期間であって、予め設定された前記計測期間内の脈拍間隔である複数の隣接脈拍間隔の平均を算出する平均算出ステップと、
前記平均算出ステップにおいて算出された前記平均と前記対象脈拍間隔との差分に基づいて、副交感神経指標を算出する副交感指標算出ステップと
を有することを特徴とする生体情報計測プログラム。
【請求項24】
生体情報計測処理をコンピュータに実行させる生体情報計測プログラムであって、
被験者の脈拍間隔を検出する脈拍間隔検出ステップと、
前記脈拍間隔検出ステップにおいて検出した前記脈拍間隔のうち処理対象となる対象脈拍間隔を基準として定まる計測期間であって、予め設定された前記計測期間内の脈拍間隔である複数の隣接脈拍間隔の平均を算出する平均算出ステップと、
前記平均算出ステップにおいて算出された前記平均の予め定められた規定期間におけるばらつきの程度を交感神経指標として算出する交感神経指標算出ステップと
を有することを特徴とする生体情報計測プログラム。
【請求項25】
生体情報計測処理をコンピュータに実行させる生体情報計測プログラムであって、
被験者の脈拍振幅を計測する脈拍振幅計測ステップと、
前記脈拍振幅計測ステップにおいて計測された前記脈拍振幅に基づいて、交感神経指標を算出する交感神経指標算出ステップと
を有することを特徴とする生体情報計測プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−6005(P2008−6005A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178644(P2006−178644)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】