説明

産業車両の走行制御装置

【課題】走行状態中に運転者が離席した場合であっても、走行安定性の低下を抑制しつつ、回生制動によって停止距離の低減を図ること。
【解決手段】走行状態中に運転者の離席を検出した場合は回生制動を掛け、その際には車両の状態に応じて回生制動の強さを変更するように制御する。この制御は、回生制動の強さに対し、荷重の条件と、揚高の条件と、ティルト角の条件を予め対応付けておく。具体的に言えば、揚高については低揚高よりも高揚高の方が回生制動の強さを弱くし、ティルト角については後傾側よりも水平・前傾側の方が回生制動の強さを弱くする。これにより、回生制動は、車両の状態に応じた強さで掛けられ、車両の走行安定性の低下が抑制される。また、回生制動により、車両の停止距離の低減が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフトなどの産業車両の走行を制御する走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工場構内で荷役作業(荷取り作業及び荷置き作業)を行う産業車両としてフォークリフトが広く利用されている。この種のフォークリフトでは、車両の運転操作に限らず荷役作業を伴うことから、運転者がアイドリング状態で離席する回数が多い。このため、近時においては、運転者の離席を検出し、離席中は走行の状態をニュートラル走行の状態(アクセル操作がなされても駆動力が駆動輪に伝達されない状態)にすることで自走を防止する機能を搭載したフォークリフトの実用化が進められており、例えば特許文献1で提案されている。特許文献1のフォークリフトでは、運転シートに運転者着席の有無を検出するシートスイッチを設け、運転者の離席を検出した場合にはエンジンに連結された変速機(クラッチ機構)への作動油の流れを切り替えるソレノイドバルブへの通電を遮断させている。
【0003】
特許文献1は、エンジン式のフォークリフトを開示するものであるが、バッテリを搭載し、走行モータの動力によって車両を走行させるバッテリ車においても、モータ制御によって特許文献1と同様の機能を採用することは可能である。そして、バッテリ車においては、例えば特許文献2に記載されるように、状況に応じて回生制動を前記制御に取り入れることもできる。
【特許文献1】実開平2−51934号公報
【特許文献2】特開2003−235114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のフォークリフトに搭載される機能は、車両が停止状態であることを前提としている。このため、停止状態から離席した場合には、その離席状態から誤ってディレクションレバー(前進走行又は後進走行を運転者の意思で指示するためのもの)を操作しても、制御的にはニュートラル走行の状態であることから車両の自走が防止され得る。しかしながら、運転者が走行状態で離席した場合には、離席を検出したことによりニュートラル走行の状態に切り替わり、その状態で車両が走行することになる。この状態において車両は、自然減速となることから停止距離が長くなる。そこで、バッテリ車の場合には、特許文献2で開示される回生制動を取り入れることにより、走行状態から離席した場合であっても、回生制動によって停止距離を短くできると考えられる。
【0005】
しかし、フォークリフトは、その用途の特徴からも解るとおり、荷役状態によって車両の走行安定性に大きな違いが生じる。例えば、荷を搭載した状態と荷を搭載していない状態では、車両の重心位置が変化し、走行安定性に違いが生じる。また、荷を搭載した状態においては、積荷の重さ(荷重)、フォークの揚高、及びフォークの傾角(ティルト角)などによっても走行安定性に違いが生じる。このため、回生制動を取り入れた場合、例えば高揚高で荷を積載している時に運転者が離席すると、その離席に伴って回生制動が掛かることにより、車両の走行安定性が低下する虞がある。
【0006】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、走行状態中に運転者が離席した場合であっても、走行安定性の低下を抑制しつつ、制動によって停止距離の低減を図ることができる産業車両の走行制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、搭載した荷を昇降動作させて荷役作業を行う荷役手段と、駆動力を発生する走行駆動手段を備えた産業車両の走行制御装置において、車両が走行状態にあるか否かを検出する走行状態検出手段と、運転者が運転席から離席したか否かを検出する離席検出手段と、前記荷役手段の揚高を検出する揚高検出手段と、前記荷役手段に搭載した荷の重さを検出する荷重検出手段と、車両の走行を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記走行状態検出手段が走行状態を検出している場合に前記離席検出手段が運転者の離席を検出すると、前記走行駆動手段が発生する駆動力を制動し、その制動の強さを前記揚高と前記荷の重さに応じて変更することを要旨とする。
【0008】
これによれば、走行状態中に運転者が離席した場合には、車両の走行時の状態に応じた強さの制動が掛けられる。すなわち、荷役作業を行う車両は、荷役手段の揚高や荷役手段に搭載した荷重に応じて走行時の安定性に違いが生じる。このため、荷の揚高や荷重を考慮せずに一義的に定めた強さの制動を掛けると、走行安定性を低下させる虞がある。したがって、本発明では、揚高や荷重を考慮して制動の強さを変更するので、走行安定性の低下を抑制しつつ、制動を掛けることができる。そして、車両は、制動が掛けられることにより、走行状態中に離席を検出した場合に車両をニュートラル走行させる場合に比して、停止距離の低減を図ることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の産業車両の走行制御装置において、前記制御手段は、前記揚高検出手段により検出された前記揚高が高揚高の場合、前記揚高が低揚高の場合よりも前記制動の強さを弱めることを要旨とする。
【0010】
車両は、高揚高の場合、低揚高の場合よりも走行安定性が低下し易い。このため、高揚高が検出されている場合に制動を掛けるときには、制動の強さを弱めることにより、走行安定性の低下を抑制しつつ、停止距離の低減を図ることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1及び請求項2に記載の産業車両の走行制御装置において、前記制御手段は、前記荷重検出手段により検出された前記荷の重さが重荷重であるほど、制動の強さを弱めることを要旨とする。
【0012】
車両は、重荷重の場合、軽荷重の場合よりも走行安定性が低下し易い。このため、重荷重が検出されている場合に制動を掛けるときには、制動の強さを弱めることにより、走行安定性の低下を抑制しつつ、停止距離の低減を図ることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の産業車両の走行制御装置において、前記荷役手段は車体に対して傾動動作可能な構成とされ、前記荷役手段の傾動角度を検出する傾動角度検出手段を備え、前記制御手段は前記傾動角度に応じて前記制動の強さを変更し、前記傾動角度検出手段により検出された前記傾動角度が前記荷役手段の水平及び前傾を示す場合、前記傾動角度が前記荷役手段の後傾を示す場合よりも前記制動の強さを弱めることを要旨とする。
【0014】
車両は、荷役手段の傾動角度が水平及び前傾を示す場合、傾動角度が後傾を示す場合よりも走行安定性が低下し易い。このため、傾動角度が水平及び前傾を示す場合に制動を掛けるときには、制動の強さを弱めることにより、走行安定性の低下を抑制しつつ、停止距離の低減を図ることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の産業車両の走行制御装置において、前記制御手段は、前記傾動角度検出手段により検出された傾動角度が前記荷役手段の前傾を示す場合、前記車両の走行をニュートラル走行の状態に変更することを要旨とする。
【0016】
車両は、荷役手段の傾動角度が前傾、水平及び後傾を示す場合のうち、前傾の場合の走行安定性が最も低下し易い。したがって、傾動角度が前傾を示す場合には、ニュートラル走行の状態に変更し、制動を掛けることなく車両を自然減速させることで、走行安定性の低下を抑制できる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載の産業車両の走行制御装置において、前記車両の進行方向を検出する進行方向検出手段を備え、前記制御手段は、前記車両の進行方向に応じて前記制動の制御態様を異ならせることを要旨とする。
【0018】
これによれば、車両の進行方向である前進方向と後進方向において制動の制御態様を異ならせることで、制動を掛ける時の進行方向に応じた車両特性を加味して制動を掛けることができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載の産業車両の走行制御装置において、前記制御手段は、前記荷重検出手段により検出された荷の重さに応じて前記制動の強さを連続的に変更することを要旨とする。
【0020】
これによれば、制動の強さのレベルを、荷重に追従させて変更することができ、走行状態中の振動などによる荷重変化が生じても、制動の強さの急激なレベル変化を抑制することができる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のうちいずれか一項に記載の産業車両の走行制御装置において、前記制御手段は、前記走行状態検出手段が停止状態を検出している場合に前記離席検出手段が運転者の離席を検出すると、前記車両の走行をニュートラル走行の状態に変更することを要旨とする。
【0022】
これによれば、停止状態で運転者の離席を検出した場合には車両の走行をニュートラル走行に変更して車両の自走を抑制する一方で、走行状態で運転者の離席を検出した場合には走行の状態(揚高や荷重)に応じて制動の強さを制御することで走行安定性の低下を抑制しつつ、停止距離の低減を図ることができる。
【0023】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜請求項8のうちいずれか一項に記載の産業車両の走行制御装置において、前記走行駆動手段は、車体に搭載されるバッテリを駆動源として駆動力を発生する走行モータであり、前記制御手段は、前記走行状態検出手段が走行状態を検出している場合に前記離席検出手段が運転者の離席を検出すると、前記走行モータの出力を制御して回生制動を生じさせ、その回生制動の強さを前記揚高と前記荷の重さに応じて変更することを要旨とする。
【0024】
これによれば、走行モータを駆動源として走行する車両において、揚高や荷重を考慮して回生制動の強さを変更するので、走行安定性の低下を抑制しつつ、回生制動を掛けることができる。そして、車両は、回生制動が掛けられることにより、走行状態中に離席を検出した場合に車両をニュートラル走行させる場合に比して、停止距離の低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、走行状態中に運転者が離席した場合であっても、走行安定性の低下を抑制しつつ、制動によって停止距離の低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図5にしたがって説明する。以下の説明において「前」「後」「左」「右」「上」「下」は、フォークリフトの運転者がフォークリフトの前方(前進方向)を向いた状態を基準とした場合の「前」「後」「左」「右」「上」「下」を示すものとする。
【0027】
図1に示すように、産業車両としてのフォークリフト10には、車体11の前部に荷役手段としての荷役装置12が設けられている。車体11の中央には、運転席13が設けられている。車体11の後方には、バッテリ14を収容するバッテリフード15が設けられている。車体11の前下部には駆動輪(前輪)16が設けられているとともに、車体11の後下部には操舵輪(後輪)17が設けられている。駆動輪16には、車体11に収容された走行駆動手段としての走行モータ18が連結されている。本実施形態のフォークリフト10は、車体11に搭載されたバッテリ14を駆動源として作動する走行モータ18の駆動力により駆動輪16が回転駆動されて走行するバッテリ式とされている。
【0028】
荷役装置12について説明する。車体11の前部にはマスト19が立設されており、当該マスト19は、左右一対のアウタマスト20とインナマスト21からなる多段式(本実施形態では2段式)とされている。アウタマスト20には、油圧式のティルトシリンダ22が連結されており、該ティルトシリンダ22の作動により車体11に対して前後に傾動可能とされている。インナマスト21には、油圧式のリフトシリンダ23が連結されており、該リフトシリンダ23の作動によりアウタマスト20内をスライドし、昇降可能とされている。また、マスト19には、左右一対のフォーク(荷役具)24がリフトブラケット25を介して設けられている。リフトブラケット25は、インナマスト21に昇降可能に設けられている。荷役作業(荷取り作業及び荷置き作業)は、荷が搭載された荷搭載用のパレット(図示しない)をフォーク24で掬い上げることによって行われる。そして、フォーク24は、リフトシリンダ23の駆動によってインナマスト21がアウタマスト20に沿って昇降動作することにより、リフトブラケット25とともに昇降される。また、フォーク24は、ティルトシリンダ22の駆動によってマスト19とともに傾動(前傾及び後傾)するようになっている。
【0029】
運転席13には、運転者が着座可能な運転シート26が設けられている。運転シート26は、バッテリフード15上に配置されている。そして、本実施形態のフォークリフト10では、運転者が運転シート26に着座することにより運転姿勢をとって運転席13に着いたことになる。運転者が運転席13に着いた状態が着席状態であり、運転者が運転席13に着いていない状態が非着席状態となる。また、運転席13において、運転シート26の前方には、ハンドルコラム27が設けられている。ハンドルコラム27には、操舵輪17の舵角を変更するための操舵ハンドル28が装着されている。
【0030】
ハンドルコラム27の左方には、車両の走行方向(進行方向)を指示する前後進レバー(ディレクションレバー)29が設けられている。本実施形態では、前後進レバー29によって車両の走行方向として「前進」又は「後進」を選択指示し得るようになっている。そして、本実施形態において前後進レバー29は、中立位置(ニュートラルの位置)から前方に傾動操作させることにより「前進」を選択指示し、中立位置から後方に傾動操作させることにより「後進」を選択指示し得るように構成されている。前後進レバー29において、「前進」を選択指示する操作位置が前進位置となり、「後進」を選択指示する操作位置が後進位置となる。
【0031】
また、ハンドルコラム27の右方には、フォーク24を昇降させるときに操作するリフトレバー及びマスト19を傾動させるときに操作するティルトレバーなどの各種の操作レバー30が設けられている。リフトシリンダ23は、リフト操作を指示する操作レバー(リフトレバー)30の操作によって油圧回路(図示しない)を介して作動油が送り込まれて作動し、その作動によりフォーク24が昇降する。また、ティルトシリンダ22は、ティルト操作を指示する操作レバー(ティルトレバー)30の操作によって油圧回路(図示しない)を介して作動油が送り込まれて作動し、その作動によりマスト19が傾動する。
【0032】
また、運転席13の下方(フロア)には、アクセルペダル31が設けられている。アクセルペダル31は、フォークリフト10の加速(走行)を指示するとともに車速を調整するためのものである。フォークリフト10は、運転者によるアクセルペダル31の踏み込み操作量に応じて走行モータ18が出力トルクを発生し、その動力が駆動輪16に伝達されて走行する。そして、フォークリフト10は、前後進レバー29が「前進位置」に操作されている場合には前進走行すべく走行モータ18が制御され、前後進レバー29が「後進位置」に操作されている場合には後進走行すべく走行モータ18が制御される。なお、フォークリフト10は、前後進レバー29が「中立位置」に操作されている場合、アクセルペダル31の踏み込み操作を行っても、走行モータ18からの動力が駆動輪16に伝達されない。
【0033】
また、車体11には、フォークリフト10の走行制御を含む各種制御を行う車両制御装置32と、走行モータ18を制御するモータコントローラ33が設けられている。車両制御装置32とモータコントローラ33は、双方向に信号を送受信可能に電気的に接続されている。なお、車両制御装置32とモータコントローラ33は、有線接続又は無線接続の何れでも良い。本実施形態では、車両制御装置32とモータコントローラ33により、制御手段が構成されている。
【0034】
次に、本実施形態のフォークリフト10の電気的構成を図2にしたがって説明する。
車両制御装置32には、制御動作を所定の手順で実行することができるCPU(中央処理装置)32aと、必要なデータの読出し及び書換え可能なメモリ32bが設けられている。メモリ32bには、フォークリフト10の走行や荷役を制御するための制御プログラムや、当該制御に用いるマップデータが記憶されている。本実施形態のフォークリフト10は、走行状態時に運転者の離席を検出すると、回生制動を掛けて車両を停止させるように構成されている。このため、本実施形態においてメモリ32bには、回生制動の制御に使用するマップデータが記憶されている。また、車両制御装置32には、ディレクションスイッチ34と、シートスイッチ(離席検出手段)35と、揚高スイッチ(揚高検出手段)36と、荷重センサ(荷重検出手段)37と、ティルト角センサ(傾動角度検出手段)38が電気的に接続されている。
【0035】
ディレクションスイッチ34は、ハンドルコラム27に配設されており(図1参照)、前後進レバー29の操作位置(前進位置又は後進位置)を検出する。ディレクションスイッチ34は、前後進レバー29の操作位置に応じた検出信号を車両制御装置32に出力する。本実施形態においてディレクションスイッチ34は、前後進レバー29の操作位置が前進位置の場合には前進位置を検出する検出信号を出力するとともに、前後進レバー29の操作位置が後進位置の場合には後進位置を検出する検出信号を出力し、前後進レバー29が中立位置の場合には検出信号を出力しない。したがって、車両制御装置32のCPU32aは、ディレクションスイッチ34からの検出信号を入力することにより前後進レバー29の操作位置が前進位置又は後進位置であることを認識し、検出信号を入力しないことにより前後進レバー29の操作位置が中立位置であることを認識する。
【0036】
シートスイッチ35は、運転シート26に配設されている(図1参照)。シートスイッチ35は、運転者が運転姿勢をとって運転席13に着いたか否か(着席したか否か)を検出し、その検出結果を検出信号として車両制御装置32に出力する。そして、車両制御装置32のCPU32aは、シートスイッチ35からの検出信号を入力することにより運転者が運転席13に着いていることを認識し、検出信号を入力しないことにより運転者が運転席13に着いていないことを認識する。
【0037】
揚高スイッチ36は、マスト19に配設されている(図1参照)。揚高スイッチ36は、フォーク24の揚高(高さ位置)を検出し、フォーク24が予め定めた揚高(例えば、2200mm)に達すると検出信号を出力する。揚高スイッチ36は、例えばリミットスイッチからなる。本実施形態では、マスト19に1つの揚高スイッチ36が設けられており、揚高スイッチ36によって検出される揚高以上(例えば、2200mm以上)の領域が高揚高領域とされ、揚高スイッチ36によって検出される揚高未満(例えば、2200mm未満)の領域が低揚高領域とされている。すなわち、本実施形態において揚高スイッチ36は、フォーク24の揚高が高揚高か又は低揚高かの2値を検出する。そして、車両制御装置32のCPU32aは、揚高スイッチ36からの検出信号を入力することによりフォーク24の揚高が高揚高領域であることを認識し、検出信号を入力しないことによりフォーク24の揚高が低揚高領域であることを認識する。
【0038】
荷重センサ37は、リフトシリンダ23の下部付近の油圧回路内に配設されている(図1参照)。荷重センサ37は、フォーク24の積載荷重(負荷荷重)を検出する。荷重センサ37は、リフトシリンダ23の内部の油圧を検出し、フォーク24の積載荷重に応じた検出信号を出力する。荷重センサ37は、例えば圧力センサからなる。そして、車両制御装置32のCPU32aは、荷重センサ37からの検出信号を入力することによりフォーク24の積載荷重を認識する。
【0039】
ティルト角センサ38は、ティルトシリンダ22の付近に配設されている(図1参照)。ティルト角センサ38は、ティルト角を検出する。ティルト角センサ38は、フォーク24が水平姿勢にあるときの角度(水平角)を基準とした傾斜角を検出し、傾斜角に応じた検出信号を出力する。ティルト角センサ38は、例えばポテンショメータからなる。そして、車両制御装置32のCPU32aは、ティルト角センサ38からの検出信号を入力することによりフォーク24のティルト角を認識する。
【0040】
モータコントローラ33には、走行モータ18と、モータ回転数センサ(走行状態検出手段、及び進行方向検出手段)39,40が電気的に接続されている。モータコントローラ33は、車両制御装置32が出力する制御指令を入力し、その制御指令に応じた回転速度で走行モータ18を回転させるように制御する。また、モータコントローラ33は、モータ回転数センサ39,40からの検出信号を入力することにより、走行モータ18の回転速度とモータ回転方向を認識する。
【0041】
本実施形態では、車両制御装置32(CPU32a、メモリ32b)と、車両制御装置32に接続されるシートスイッチ35、揚高スイッチ36、荷重センサ37、ティルト角センサ38、モータ回転数センサ39,40により、フォークリフト10の走行制御装置が構成される。
【0042】
以下、車両制御装置32のメモリ32bに記憶されている回生制動の制御用のマップデータについて図3及び図4にしたがって詳しく説明する。本実施形態のフォークリフト10では、前進走行時と後進走行時において異なるマップデータを使用し、回生制動を制御するようになっている。このため、車両制御装置32のメモリ32bには、前進走行時に運転者の離席を検出した場合に使用するマップデータと、後進走行時に運転者の離席を検出した場合に使用するマップデータが記憶されている。なお、本明細書においてフォークリフト10の「停止状態」とは、車速が「ほぼ0(零)km/h」の場合(例えば、0〜2km/hの範囲の場合)であり、フォークリフト10が「停止状態」でない場合にフォークリフト10は「走行状態」となる。
【0043】
図3は、前進走行時における回生制動の強さを示した図であり、当該図に示す関係をもとに前進走行時の回生制動の制御に使用するマップデータが構築されている。また、図4は、後進走行時における回生制動の強さを示した図であり、当該図に示す関係をもとに後進走行時の回生制動の制御に使用するマップデータが構築されている。これらの図3及び図4は、縦軸に「回生制動の強さ」を示すとともに横軸に「荷重」を示している。そして、回生制動は、その値が強くなるほど制動力(ブレーキ力)が大きくなり、図3及び図4では紙面上、縦軸の上側に向かうほど回生制動の強さが強くなり、縦軸の下側に向かうほど回生制動の強さが弱くなる。また、荷重は、荷重センサ37により検出されるフォーク24の「積載荷重」であり、図3及び図4では紙面上、横軸の右側に向かうほど荷重が重く、横軸の左側に向かうほど荷重が軽くなる。
【0044】
図3では、荷重と、揚高と、ティルト角の3つのパラメータをもとに前進走行時における回生制動の強さを定めている。そして、図3には、揚高が低揚高か又は高揚高かの条件と、ティルト角が後傾側か又は水平・前傾側かの条件と、荷重の条件に対して回生制動の強さを対応付けている。具体的に言えば、図3には、揚高「低」、ティルト角「後傾側」及び荷重の条件に対して回生制動の強さを対応付けたデータと、揚高「低」、ティルト角「水平・前傾側」及び荷重の条件に対して回生制動の強さを対応付けたデータを示している。また、図3には、揚高「高」、ティルト角「後傾側」及び荷重の条件に対して回生制動の強さを対応付けたデータと、揚高「高」、ティルト角「水平・前傾側」及び荷重の条件に対して回生制動の強さを対応付けたデータを示している。
【0045】
そして、本実施形態における前進走行時の回生制動の制御では、図3に示すように、荷重値Aを超えない範囲において揚高やティルト角の条件に関係なく回生制動の強さを一定としている。また、本実施形態における前進走行時の回生制動の制御では、図3に示すように、荷重値Aから荷重値B(>荷重値A)の範囲において揚高やティルト角の条件に応じて回生制動の強さを荷重の増加に合わせて連続的に減少させるようになっている。このため、荷重値Aから荷重値Bの範囲では、同一荷重であっても、揚高の条件とティルト角の条件に応じて回生制動の強さが変化する。また、本実施形態における前進走行時の回生制動の制御では、図3に示すように、荷重値Bを超える範囲において該荷重値Bの時の回生制動の強さを維持し、一定としている。なお、荷重値Bを超える範囲における回生制動の強さは、荷重値Aを超えない範囲及び荷重値Aから荷重値Bの範囲における回生制動の強さよりも弱くなっている。
【0046】
図3に示す各条件と回生制動の強さの関係では、揚高については低揚高よりも高揚高の方が回生制動の強さが弱くなり、ティルト角については後傾側よりも水平・前傾側の方が回生制動の強さが弱くなっている。このため、前進走行時の回生制動の制御では、同一荷重において、低揚高でかつ後傾側の場合の回生制動の強さが最も強く、以下、低揚高でかつ水平・前傾側の場合、高揚高でかつ後傾側の場合、高揚高でかつ水平・前傾側の場合の順に回生制動の強さが弱くなる。そして、前進走行時の回生制動の制御によれば、揚高が高揚高の場合やティルト角が水平・前傾側の場合に回生制動を掛けたときに、低揚高や後傾側の場合よりも走行安定性が低下し易くなる点に着目して制御が行われることになる。なお、図3に示す各条件と回生制動の強さの関係は、前進走行中に回生制動を掛けた時に車両が安定する回生制動の強さをシミュレーションで求め、そのシミュレーションの結果から作成されている。なお、ティルト角の水平には、許容値を含み、その許容値は前傾側及び後傾側にそれぞれ1度程度とされ、当該範囲内を水平とする。このため、ティルト角の前傾側は、前記許容値を超え、最大前傾角度迄の範囲を示し、ティルト角の後傾側は、前記許容値を超え、最大後傾角度迄の範囲を示す。
【0047】
図4では、荷重と揚高の2つのパラメータをもとに後進走行時における回生制動の強さを定めている。そして、図4には、揚高が低揚高か又は高揚高かの条件と荷重の条件に対して回生制動の強さを対応付けている。具体的に言えば、図4には、揚高「低」と荷重の条件に対して回生制動の強さを対応付けたデータと、揚高「高」と荷重の条件に対して回生制動の強さを対応付けたデータを示している。
【0048】
そして、本実施形態における後進走行時の回生制動の制御では、図4に示すように、荷重値Aを超えない範囲において揚高の条件に関係なく回生制動の強さを一定としている。また、本実施形態における後進走行時の回生制動の制御では、図4に示すように、荷重値Aから荷重値B(>荷重値A)の範囲において揚高の条件に応じて回生制動の強さを荷重の増加に合わせて連続的に減少させるようになっている。このため、荷重値Aから荷重値Bの範囲では、同一荷重であっても、揚高の条件に応じて回生制動の強さが変化する。また、本実施形態における後進走行時の回生制動の制御では、図4に示すように、荷重値Bを超える範囲において該荷重値Bの時の回生制動の強さを維持し、一定としている。なお、荷重値Bを超える範囲における回生制動の強さは、荷重値Aを超えない範囲及び荷重値Aから荷重値Bの範囲における回生制動の強さよりも弱くなっている。
【0049】
図4に示す各条件と回生制動の強さの関係では、揚高については低揚高よりも高揚高の方が回生制動の強さが弱くなっている。このため、後進走行時の回生制動の制御では、同一荷重において、低揚高の場合の回生制動の強さが最も強く、高揚高の場合の回生制動の強さが弱くなる。そして、後進走行時の回生制動の制御によれば、揚高が高揚高の場合に回生制動を掛けたときに、低揚高の場合よりも走行安定性が低下し易くなる点に着目して制御が行われることになる。なお、図4に示す各条件と回生制動の強さの関係は、後進走行中に回生制動を掛けた時に車両が安定する回生制動の強さをシミュレーションで求め、そのシミュレーションの結果から作成されている。
【0050】
図5(a),(b)は、前進走行時及び後進走行時に制動を掛けた場合の車両(フォークリフト10)の状態を示す。前進走行時に制動を掛けた場合には、図5(a)に示すように、車体には制動力により矢視X方向(車体後方へ向かう方向)への力が作用する一方で、搭載されている荷Wには慣性力により矢視Y方向(車体前方へ向かう方向)への力が作用する。このため、前進走行時には、制動力と慣性力により作用する力の方向が相反する方向となり、車両の安定性は低下し易い状態であると言える。このため、前進走行時には、高揚高の場合や前傾の場合、さらに車両の安定性は低下し易い。
【0051】
これに対し、後進走行時に制動を掛けた場合には、図5(b)に示すように、車体には制動力により矢視X方向(車体前方へ向かう方向)への力が作用する一方で、搭載されている荷Wには慣性力により矢視Y方向(車体後方へ向かう方向)への力が作用する。このため、後進走行時には、制動力と慣性力により作用する力の方向が互いに打ち消しあう方向となり、車両の安定性は前進走行時に制動を掛ける場合よりも低下し難い状態であると言える。このため、後進走行時には、高揚高の場合や前傾の場合であっても、前進走行時に比して車両の安定性は低下し難い。
【0052】
このような点を考慮し、本実施形態の回生制動の制御では、前進走行時において回生制動の強さを算出する条件の中にティルト角を加え、後進走行時よりも制御を細分化している。そして、後進走行時の回生制動の制御では、回生制動を掛けた時に車両の安定性に影響を及ぼす度合が特に高い荷重と揚高の条件から回生制動の強さを算出するようになっている。
【0053】
以下、本実施形態のフォークリフト10の作用(車両制御装置32の制御内容)を説明する。
フォークリフト10の始動後、車両制御装置32のCPU32aは、シートスイッチ35の検出信号から運転者が運転席13に着座しているか否かを認識する。また、CPU32aは、モータコントローラ33を介して入力されるモータ回転数センサ39,40の検出信号から走行モータ18の回転速度とモータ回転方向を認識する。この回転速度とモータ回転方向からCPU32aは、フォークリフト10が走行状態であるか又は停止状態であるかを認識するとともに、走行状態である場合には前進走行であるか又は後進走行であるかを認識する。また、CPU32aは、ディレクションスイッチ34の検出信号から前後進レバー29の操作位置、すなわち運転者が前進走行を指示したか、後進走行を指示したか、又は前進走行及び後進走行の何れも指示していないかを認識する。
【0054】
そして、CPU32aは、運転者が着座し、かつ前後進レバー29の操作により前進走行又は後進走行の何れかが指示された状態においてアクセルペダル31の操作が行われると、その操作量(踏み込み量)に応じた出力トルクを走行モータ18に発生させるようモータコントローラ33に制御指令を出力する。モータコントローラ33は、制御指令を入力すると、その入力した制御指令に応じた車速でフォークリフト10を走行させるよう走行モータ18の回転を制御する。この制御により、フォークリフト10は、運転者が前後進レバー29の操作によって指示した走行方向(前進方向又は後進方向)に、アクセルペダル31の踏み込み量に応じた車速で走行する。
【0055】
そして、CPU32aは、フォークリフト10の走行状態中に運転者の離席を検出すると、回生制動を掛ける。このとき、CPU32aは、運転者の離席を検出した時の車両の状態(走行方向、荷重、揚高、ティルト角)に応じた強さで回生制動を掛けるように制御する。具体的に言えば、CPU32aは、前進走行時において運転者の離席を検出した場合、荷重センサ37で検出される荷重と、揚高スイッチ36で検出される揚高と、ティルト角センサ38で検出されるティルト角をもとに、図3に示すマップデータにしたがって回生制動の強さを制御する。このとき、CPU32aは、荷重、揚高及びティルト角の各条件に適合する回生制動の強さを図3に示すマップデータから算出し、その算出した強さの回生制動を発生させるようにモータコントローラ33に対して走行モータ18の制御指令を出力する。
【0056】
一方、CPU32aは、後進走行時において運転者の離席を検出した場合、荷重センサ37で検出される荷重と、揚高スイッチ36で検出される揚高をもとに、図4に示すマップデータにしたがって回生制動の強さを制御する。このとき、CPU32aは、荷重及び揚高の各条件に適合する回生制動の強さを図4に示すマップデータから算出し、その算出した強さの回生制動を発生させるようにモータコントローラ33に対して走行モータ18の制御指令を出力する。
【0057】
この制御により、走行状態のフォークリフト10には、車両の状態に応じた強さの回生制動が掛けられる。すなわち、フォークリフト10は、走行安定性が低下し難い状態で走行している場合には車両に掛けられる回生制動の強さが強められ、走行安定性が低下し易い状態で走行している場合には車両に掛けられる回生制動の強さが弱められる。したがって、本実施形態のフォークリフト10では、走行状態時に運転者が離席した場合において回生制動を制御に取り込むことで停止距離を短くするとともに、回生制動によって車両の走行安定性が損なわれることを抑制している。
【0058】
また、CPU32aは、停止状態中に運転者の離席を検出した場合、フォークリフト10の走行をニュートラル走行に切り替える。このため、フォークリフト10は、前後進レバー29の操作位置が前進位置又は後進位置に操作されている場合であっても、走行モータ18からの出力トルクが発生せず、走行しない。なお、ニュートラル走行は、運転者が運転席13に着座すること、前後進レバー29が一旦[中立位置]に操作され、その後に[前進位置]又は[後進位置]に操作されることを条件として解除される。
【0059】
したがって、本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)前進走行時に運転者の離席が検出された場合には、荷重、揚高及びティルト角の条件に対して対応付けた回生制動の強さで回生制動を掛けるように制御する。このため、前進走行から回生制動を掛けた場合におけるフォークリフト10の走行安定性の低下を抑制しつつ、フォークリフト10を停止させることができる。また、回生制動を掛けることにより、フォークリフト10を自然減速させる場合に比して、前進走行するフォークリフト10の停止距離の低減を図ることができる。
【0060】
(2)後進走行時に運転者の離席が検出された場合には、荷重及び揚高の条件に対して対応付けた回生制動の強さで回生制動を掛けるように制御する。このため、後進走行から回生制動を掛けた場合におけるフォークリフト10の走行安定性の低下を抑制しつつ、フォークリフト10を停止させることができる。また、回生制動を掛けることにより、フォークリフト10を自然減速させる場合に比して、後進走行するフォークリフト10の停止距離の低減を図ることができる。
【0061】
(3)前進走行時と後進走行時において回生制動の強さに対応付ける条件を異ならせた。このため、フォークリフト10の走行方向による車両の特性に応じた回生制動の制御を実現できる。そして、後進走行時は、前進走行時よりも走行安定性が低下し難いので、後進走行時における回生制動の制御を簡素化でき、車両制御装置32の負荷を軽減できる。
【0062】
(4)また、車両制御装置32のメモリ32bに前進走行時の回生制動の制御に用いるマップデータと、後進走行時の回生制動の制御に用いるマップデータとを記憶し、回生制動の制御にはマップデータを用いる。このため、車両制御装置32の負荷を軽減できる。
【0063】
(5)荷重に応じて回生制動の強さが連続的に変更されるようにマップデータを作成することにより、回生制動の強さのレベルを荷重に追従させて変更することができる。このため、走行状態中の振動などによる荷重変化が生じても、回生制動の強さの急激なレベル変化を抑制することができる。
【0064】
(6)停止状態で運転者の離席を検出した場合には車両の走行をニュートラル走行の状態に変更する。このため、停止状態からの運転者の離席時には、車両の自走を抑制できる。
【0065】
(7)また、停止状態での運転席の離席によってニュートラル走行の状態に変更した場合、その解除条件を、運転者が着席することと、前後進レバー29を一旦中立位置に戻してから前後進レバー29を前進位置又は後進位置に操作することとした。このため、運転者が走行の意思(前後進レバー29を前進位置又は後進位置に操作する)を示さない限り、ニュートラル走行の状態が解除されない。したがって、例えばシートスイッチ35による運転者の着席検出やディレクションスイッチ34による中立位置の検出など、これらのスイッチの検出結果のみで復帰させる場合よりも、運転者の前後進レバー29の操作による意思を反映させることで、走行の復帰に係る信頼性を向上させることができる。
【0066】
なお、上記実施形態は、以下のように変更しても良い。
○ 実施形態において、車両制御装置32のメモリ32bには回生制動の制御に係るマップデータとして図3のマップデータのみを記憶し、該マップデータにしたがって回生制動の強さを制御しても良い。この構成によれば、車両制御装置32のCPU32aは、フォークリフト10の走行状態中に運転者の離席を検出した場合、車両の走行方向が前進走行及び後進走行の何れであっても、荷重、揚高及びティルト角をもとにマップデータにしたがって回生制動の強さを制御する。
【0067】
○ 実施形態において、車両制御装置32のメモリ32bには回生制動の制御に係るマップデータとして図4のマップデータのみを記憶し、該マップデータにしたがって回生制動の強さを制御しても良い。この構成によれば、車両制御装置32のCPU32aは、フォークリフト10の走行状態中に運転者の離席を検出した場合、車両の走行方向が前進走行及び後進走行の何れであっても、荷重と揚高をもとにマップデータにしたがって回生制動の強さを制御する。
【0068】
○ 実施形態において、図6に示すように、ティルト角が水平の場合とティルト角が前傾側の場合とに細分化して回生制動の強さを対応付けても良い。
○ 実施形態において、図7に示すように、高揚高で、かつティルト角が水平・前傾側の場合の回生制動の強さを「0(零)」にしても良い。このようにマップデータを作成した場合、高揚高で、かつティルト角が水平・前傾側のときに運転者の離席を検出すると、フォークリフト10はニュートラル走行し、自然減速によって停止する。
【0069】
○ 実施形態において、図3及び図4に示す荷重値Aから荷重値Bの範囲における回生制動の強さを、荷重の増加とともに段階的に減少させるようにしても良い。このように構成すれば、フォークリフト10の走行時に発生する振動などによって負荷変動が発生しても、その負荷変動のよる回生制動の強さのレベルの変化を抑えることができる。なお、本別例における「段階的に減少させる制御」とは、荷重値を複数領域に区分し、その領域内において荷重値が変動しても回生制動の強さを一定に保ち、荷重値の区分が代わった場合に回生制動の強さを変更する制御である。これに対し、実施形態で説明した「連続的に減少させる制御」とは、荷重値が変化すれば、その変化に合わせて回生制動の強さも変更する制御である。
【0070】
○ 実施形態は、走行用の駆動力として走行モータを搭載する産業車両に具体化することができる。例えば、エンジンと走行モータを搭載し、その両方を走行用の駆動力とするフォークリフト(ハイブリッドフォークリフト)に適用することもできる。また、立席タイプの運転席を有するフォークリフトに具体化しても良い。
【0071】
○ 実施形態では、揚高を高揚高領域と低揚高領域の2つの領域に分割したが、例えばリールセンサなどを用いて揚高を連続的に検出する構成を採用することにより揚高の領域をさらに細分化し、回生制動の強さを制御しても良い。なお、揚高の区分(実施形態では高揚高領域と低揚高領域)は車両の走行安定性をシミュレーションし、その結果から決定する。そして、実施形態の場合には、揚高の区分を検出し得る位置に揚高スイッチ36を配設する。
【0072】
○ 実施形態において、ティルト角の区分について後傾側の角度や前傾側の角度を複数の領域に分割し、回生制動の強さを制御しても良い。
○ 実施形態では、回生制動の強さを制御したが、制動装置による制動の強さを制御しても良い。例えば、制動装置として油圧式のドラムブレーキを採用する場合は、油圧の液圧値を調整することにより制動の強さを制御する。この構成によれば、実施形態のような走行モータ18により駆動される産業車両(フォークリフト10)に限らず、例えばエンジンにより駆動される産業車両においても実施することが可能となる。
【0073】
○ 実施形態では、モータ回転数センサ39,40を進行方向検出手段として用いたが、ディレクションスイッチ34を進行方向検出手段としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】フォークリフトを示す側面図。
【図2】電気的構成を示すブロック図。
【図3】前進走行時の回生制動の強さと、荷重、揚高及びティルト角の関係を説明する説明図。
【図4】後進走行時の回生制動の強さと、荷重及び揚高の関係を説明する説明図。
【図5】(a)は前進走行時に制動を掛けた場合の車両の状態を説明する説明図、(b)は後進走行時に制動を掛けた場合の車両の状態を説明する説明図。
【図6】別例における回生制動の強さと、荷重、揚高及びティルト角の関係を説明する説明図。
【図7】別例における回生制動の強さと、荷重、揚高及びティルト角の関係を説明する説明図。
【符号の説明】
【0075】
W…荷、11…車体、12…荷役装置、13…運転席、14…バッテリ、18…走行モータ、32…車両制御装置、32a…CPU、34…ディレクションスイッチ、35…シートスイッチ、36…揚高スイッチ、37…荷重センサ、38…ティルト角センサ、39,40…モータ回転数センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭載した荷を昇降動作させて荷役作業を行う荷役手段と、駆動力を発生する走行駆動手段を備えた産業車両の走行制御装置において、
車両が走行状態にあるか否かを検出する走行状態検出手段と、
運転者が運転席から離席したか否かを検出する離席検出手段と、
前記荷役手段の揚高を検出する揚高検出手段と、
前記荷役手段に搭載した荷の重さを検出する荷重検出手段と、
車両の走行を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記走行状態検出手段が走行状態を検出している場合に前記離席検出手段が運転者の離席を検出すると、前記走行駆動手段が発生する駆動力を制動し、その制動の強さを前記揚高と前記荷の重さに応じて変更することを特徴とする産業車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記揚高検出手段により検出された前記揚高が高揚高の場合、前記揚高が低揚高の場合よりも前記制動の強さを弱めることを特徴とする請求項1に記載の産業車両の走行制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記荷重検出手段により検出された前記荷の重さが重荷重であるほど、前記制動の強さを弱めることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の産業車両の走行制御装置。
【請求項4】
前記荷役手段は車体に対して傾動動作可能な構成とされ、
前記荷役手段の傾動角度を検出する傾動角度検出手段を備え、
前記制御手段は前記傾動角度に応じて前記制動の強さを変更し、前記傾動角度検出手段により検出された前記傾動角度が前記荷役手段の水平及び前傾を示す場合、前記傾動角度が前記荷役手段の後傾を示す場合よりも前記制動の強さを弱めることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の産業車両の走行制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記傾動角度検出手段により検出された傾動角度が前記荷役手段の前傾を示す場合、前記車両の走行をニュートラル走行の状態に変更することを特徴とする請求項4に記載の産業車両の走行制御装置。
【請求項6】
前記車両の進行方向を検出する進行方向検出手段を備え、
前記制御手段は、前記車両の進行方向に応じて前記制動の制御態様を異ならせることを特徴とする請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載の産業車両の走行制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記荷重検出手段により検出された荷の重さに応じて前記制動の強さを連続的に変更することを特徴とする請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載の産業車両の走行制御装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記走行状態検出手段が停止状態を検出している場合に前記離席検出手段が運転者の離席を検出すると、前記車両の走行をニュートラル走行の状態に変更することを特徴とする請求項1〜請求項7のうちいずれか一項に記載の産業車両の走行制御装置。
【請求項9】
前記走行駆動手段は、車体に搭載されるバッテリを駆動源として駆動力を発生する走行モータであり、
前記制御手段は、前記走行状態検出手段が走行状態を検出している場合に前記離席検出手段が運転者の離席を検出すると、前記走行モータの出力を制御して回生制動を生じさせ、その回生制動の強さを前記揚高と前記荷の重さに応じて変更することを特徴とする請求項1〜請求項8のうちいずれか一項に記載の産業車両の走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−179465(P2008−179465A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15870(P2007−15870)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】