説明

画像形成装置、画像劣化防止補正方法及び画像劣化防止補正制御プログラム

【課題】補正画素データ数を減らすことなく、色合わせ精度を維持した上で画像劣化を防止する。
【解決手段】ベルト状搬送体上に色合わせパターンを形成し、形成された色合わせパターンを読み取って各色の主走査方向の色ずれ量を検出する色ずれ量検出手段と、前記色ずれ量検出手段によって検出された色ずれ量に基づいて色合わせ補正を行う色合わせ補正手段と、前記色合わせ補正手段による色合わせ補正における干渉によって発生する画像劣化を防ぐ画像劣化防止補正手段と、を有し、画像劣化防止補正手段は、所定の条件の有無(S1ないしS4)に応じて、入力画像データ、ディザリング仕様及び光学部品特性を含む入力画像特性に基づいて補正画素数を算出し(S6)、算出された補正画素数から補正画素の発生周期を算出し(S7)、算出された発生周期が予め設定された周期より短いときに、補正画素の階調を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像劣化防止補正方法及び画像劣化防止補正制御に係り、特に、複数の画像形成部を並置して、各画像形成部で形成された画像を直接的又は間接的に記録用紙に重ねて転写し、カラー画像を形成する画像形成装置、当該画像形成装置で実行される画像劣化防止補正方法及び画像劣化防止補正制御、及びこの制御方法をコンピュータで実行するための画像劣化防止補正制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の画像形成部を並置して、各画像形成部で形成された画像を直接的又は間接的に記録用紙に重ねて転写し、カラー画像を形成する画像形成装置としてタンデム型画像形成装置が良く知られている。このうち、直接転写方式の画像形成装置では、搬送ベルト上に吸着されて搬送される記録用紙に各画像形成部で形成された画像を順に転写し、最終的に4色の画像が重畳されたフルカラーの画像を得るようになっている。また、間接転写方式のものでは、中間転写ベルト上に各画像形成部で形成された画像を順に転写し、最終的に中間転写ベルト上に4色の画像が重畳されたフルカラーの画像を形成し、その後、このフルカラーの画像を記録用紙に一括して転写し、記録用紙上にフルカラーの画像を得るようになっている。
【0003】
いずれにしても、この種の技術では4色の画像形成部を並置して各画像形成部で形成された画像を順に重畳してフルカラーの画像を形成することから、各画像形成部における転写位置がずれると画像のずれとして顕れる。そのため、このずれを補正する技術が、例えば特許文献1及び2を含め、多く提案されている。
【0004】
このうち、特許文献1(特開2007−203739号公報)には、主走査ドット位置ずれを高精度に補正でき、かつ、画素クロックの位相補正による縦筋画像の発生を抑制して高品質の画像を得るため、複数の連続した画素クロックから構成されるデータ領域の特定の画素クロックのみに対し、画素クロックの位相の補正を、高周波クロック生成手段からのクロック信号のタイミングにより行い、かつ、その補正開始タイミングを時系列の異なる上記データ領域毎に異ならせるようにした発明が開示されている。
【0005】
また、特許文献2(特開2000−141750号公報)には、副走査方向のレジストレーションずれを高精度に補正することができるカラー画像形成装置を提供するため、複数のレーザ走査ユニットを備えるカラー画像形成装置であって、各レーザ走査ユニットに備えた回転多面鏡で偏向されたレーザビームを受光して発生する各ビーム検出信号の位相差を測定する位相差測定回路と、回転多面鏡を回転させる回転多面鏡駆動モータの回転制御を行うPLL制御回路と、画素データ処理を行う際の基本クロックとなるドットクロックを分周してPLL制御回路への基準クロックを生成する分周回路と、分周回路の動作を一時的に停止させるパルスを発生するパルス発生回路と、PLL制御回路への基準クロックの位相を位相差測定回路により測定したビーム検出信号の位相差に応じて独立に制御する制御部とを有する発明が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1及び2記載のカラー画像形成装置では、主走査における補正画素データ発生周期は常に一定で制御されている。しかし、色合わせ制御時に多数の補正画素データが発生した場合、入力画像データ、ディザリング仕様、光学部品特性等の入力画像特性によっては補正制御による干渉によって画像劣化が発生することがある。特に入力画像に応じたディザリング仕様との干渉が画像劣化に大きく影響するので、コントローラ又はドライバでの画像処理仕様を変えることができない場合にはエンジン部で対応する必要がある。
【0007】
単純に画像劣化を防ぐには補正画素データ数を減らすことで回避可能であるが、補正画素データ数を減らすことは色合わせ精度を下げることにつながるため補正画素データ数を減らすことはできない。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、補正画素データ数を減らすことなく、色合わせ精度を維持した上で画像劣化を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、第1の手段は、複数の画像形成部を並置して各画像形成部の像担持体上に形成された画像を、ベルト状搬送体を介して直接的又は間接的にシート状記録媒体上に転写し、複数色が重畳されたカラー画像を形成する画像形成手段と、前記ベルト状搬送体上に色合わせパターンを形成し、形成された色合わせパターンを読み取って各色の主走査方向の色ずれ量を検出する色ずれ量検出手段と、前記色ずれ量検出手段によって検出された色ずれ量に基づいて色合わせ補正を行う色合わせ補正手段と、前記色合わせ補正手段による色合わせ補正における干渉によって発生する画像劣化を防ぐ画像劣化防止補正手段と、を有する画像形成装置であって、前記画像劣化防止補正手段は、入力画像データ、ディザリング仕様及び光学部品特性を含む入力画像特性に基づいて補正画素数を算出する補正画素数算出手段と、算出された補正画素数から補正画素の発生周期を算出する補正画素発生周期算出手段と、前記補正画素発生周期算出手段によって算出された発生周期が予め設定された周期より短いときに、補正画素の階調を制御する階調制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
第2の手段は、第1の手段において、前記補正画素発生周期算出手段は、各色毎に主走査1ラインを複数の可変エリアに分割し、各エリア毎の補正画素発生数を算出することを特徴とする。
【0011】
第3の手段は、第1又は第2の手段において、前記階調制御手段は、前記算出された発生周期にある補正画素の階調を制御することを特徴とする。
【0012】
第4の手段は、第3の手段は、前記階調制御手段は、前記算出された発生周期にある補正画素の階調を、当該補正画素の周辺画素の濃度データを参照して設定することを特徴とする。
【0013】
第5の手段は、第4の手段において、前記階調制御手段は、参照する前記補正画素の周辺画素の範囲を前記算出された発生周期と前記入力画像特性に応じて設定することを特徴とする。
【0014】
第6の手段は、第5の手段において、前記階調制御手段は、前記算出された発生周期にある補正画素の階調を、前記設定された周辺画素の範囲内の画素の濃度の平均値に設定することを特徴とする。
【0015】
第7の手段は、第6の手段において、前記階調制御手段は、前記設定された周辺画素の範囲内の画素の濃度の平均値と隣接する画素の濃度差が大きい場合には、濃度差が小さくなるように補正することを特徴とする。
【0016】
第8の手段は、第1ないし第7のいずれかの手段において、前記補正画素発生周期算出手段は、前記算出された発生周期と周辺画素データに応じて補正画素データ発生周期を再算出することを特徴とする。
【0017】
第9の手段は、第1ないし第8のいずれかの手段において、前記ベルト状搬送体の回転数を記憶する記憶手段を備え、前記補正画素発生周期算出手段は、一定回転数に達する毎に補正画素データの発生数を算出することを特徴とする。
【0018】
第10の手段は、第1ないし第9のいずれかの手段において、前記各画像形成部のトナー使用量を記憶する記憶手段を備え、前記補正画素発生周期算出手段は、前記各画像形成部のトナー使用量が一定の使用量に達する毎に補正画素データの発生数を算出することを特徴とする。
【0019】
第11の手段は、第1ないし第10のいずれかの手段において、前記ベルト状搬送体又は前記画像形成装置の脱着を判別する判別手段を備え、前記補正画素発生周期算出手段は、前記判別手段で脱着を判別する毎に補正画素データの発生数を算出することを特徴とする。
【0020】
第12の手段は、第1ないし第11のいずれかの手段において、前回補正画素データの発生数を算出したときの機内温度を記憶する記憶手段と、機内温度を監視する監視手段と、を備え、前記補正画素発生周期算出手段は、前記監視手段が現在の機内温度と前回の機内温度との間に予め設定された温度以上の差が生じたことを検知したときには、補正画素データの発生数を算出することを特徴とする。
【0021】
第13の手段は、複数の画像形成部を並置して各画像形成部の像担持体上に形成された画像を、ベルト状搬送体を介して直接的又は間接的にシート状記録媒体上に転写し、複数色が重畳されたカラー画像を形成する画像形成手段と、前記ベルト状搬送体上に色合わせパターンを形成し、形成された色合わせパターンを読み取って各色の主走査方向の色ずれ量を検出する色ずれ量検出手段と、前記色ずれ量検出手段によって検出された色ずれ量に基づいて色合わせ補正を行う色合わせ補正手段と、を有する画像形成装置の前記色合わせ補正手段による色合わせ補正における干渉によって発生する画像劣化を防ぐ画像劣化防止補正方法であって、入力画像データ、ディザリング仕様及び光学部品特性を含む入力画像特性に基づいて補正画素数を算出し、算出された補正画素数から補正画素の発生周期を算出し、算出された発生周期が予め設定された周期より短いときに、補正画素の階調を制御することを特徴とする。
【0022】
第14の手段は、複数の画像形成部を並置して各画像形成部の像担持体上に形成された画像を、ベルト状搬送体を介して直接的又は間接的にシート状記録媒体上に転写し、複数色が重畳されたカラー画像を形成する画像形成手段と、前記ベルト状搬送体上に色合わせパターンを形成し、形成された色合わせパターンを読み取って各色の主走査方向の色ずれ量を検出する色ずれ量検出手段と、前記色ずれ量検出手段によって検出された色ずれ量に基づいて色合わせ補正を行う色合わせ補正手段と、を有する画像形成装置の前記色合わせ補正手段による色合わせ補正における干渉によって発生する画像劣化の防止補正を、コンピュータに実行させる画像劣化防止補正プログラムあって、入力画像データ、ディザリング仕様及び光学部品特性を含む入力画像特性に基づいて補正画素数を算出する第1の手順と、算出された補正画素数から補正画素の発生周期を算出する第2の手順と、算出された発生周期が予め設定された周期より短いときに、補正画素の階調を制御する第3の手順と、を備えていることを特徴とする。
【0023】
なお、後述の実施形態では、複数の画像形成部はBk,Y,M,C各色の画像形成部111,112,113,114に、ベルト状搬送体は転写ベルト131に、画像形成手段は作像部110に、色ずれ量検出手段は光センサ150及び制御部140に、色合わせ補正手段、画像劣化防止補正手段、補正画素数算出手段、補正画素発生周期算出手段、階調制御手段及び判別手段は制御部140に、記憶手段は記憶部141に、監視手段は図示しない温度センサ及び制御部140に、画像形成装置はレーザプリンタ100に、それぞれ対応する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、入力画像特性に基づいて補正画素数を算出し、算出された補正画素数から補正画素の発生周期を算出し、算出された発生周期が予め設定された周期より短いときに、補正画素の階調を制御するので、補正画素データ数を減らすことなく、色合わせ精度を維持した上で画像劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置としての間接転写方式のタンデム型レーザプリンタの概略構成を示す図である。
【図2】主走査方向を等分割したエリア内において、一定周期で補正画素を発生させた例を示す説明図である。
【図3】補正画素と周辺画素の階調が等しい場合の補正方法を示す説明図である。
【図4】補正画素と周辺画素の階調が等しくない場合の補正方法を示す説明図である。
【図5】ディザパターンのマトリクスサイズと補正画素の発生周期が一致する場合の補正方法を示す説明図である。
【図6】補正画素を再配置する場合の例を示す説明図である。
【図7】補正画素の補正周期を更新する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、補正画素データ数を減らすことなく補正画素発生周期と階調を入力画像特性に合わせて制御し、これにより色合わせ精度を維持しつつ、画像劣化を防止することを意図したものである。すなわち、入力画像特性と干渉し画像劣化が起こる場合は、補正画素データ発生周期を一定ではなく、入力画像特性に応じて変更することにより画像劣化を防ぎ、補正画素データ発生周期の変更だけでは干渉を抑えられない場合には、補正画素データの階調を周辺画素データに合わせて制御し、あるいは、補正画素データ位置を再配置する。これにより、入力画像特性と干渉して画像劣化が生じることを抑えることができる。
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施形態に係る画像形成装置としての間接転写方式のタンデム型レーザプリンタの概略構成を示す図である。同図において、本実施形態に係るレーザプリンタ100は、作像部110、書き込み部120、転写部130、制御部140から基本的に構成されている。作像部110はBk,Y,M,C各色の画像形成部111,112,113,114と、転写ベルト131と、図示しない2次転写部とを含む。前記Bk,Y,M,C各色の画像形成部111,112,113,114は、この転写順で転写部130の転写ベルト131に沿って並置されている。なお、転写部130は1次転写部と2次転写部を含む。
【0028】
各色の画像形成部111,112,113,114には、それぞれ感光体ドラム111a,112a,113a,114aの外周に沿って図示しない高圧チャージャを含む複数のプロセス要素を一体に着脱可能なユニットとして構成されたプロセスカートリッジが装着され、帯電、現像、クリーニング、除電がそれぞれ実行される。また、プロセスカートリッジには現像剤カートリッジが一体化され、現像時にはこの現像剤カートリッジから供給されるトナーが使用される。
【0029】
書き込み部120は、書き込み部120内部においてLD(Laser Diode)から射出されたレーザ光が回転多面鏡(以下、「ポリゴンミラー」と称す)によって偏向走査された後、fθレンズによって感光体ドラム111a,112a,113a,114aの帯電した表面に画像を形成する。この際、レーザ光は画像信号に基づいて変調され点灯、消灯を繰り返し、ポリゴンミラーの回転に従って主走査方向に反復して走査されると同時に、感光体ドラム111a,112a,113a,114aが回転して副走査を行うことによって各感光体ドラム111a,112a,113a,114a上に各色毎の静電潜像を形成する。
【0030】
各感光体ドラム111a,112a,113a,114a上に形成された静電潜像は帯電した現像剤(トナー)によって現像され、1次転写部で現像剤とは反対の電荷を与えられた転写ベルト131が感光体ドラム111a,112a,113a,114aに密着することにより、感光体ドラム111a,112a,113a,114aのトナー像がBk,Y,M,Cの順で転写ベルト131上に転写される。その際、この順で各トナー像が重畳され、4色からなるフルカラーのトナー像が転写ベルト131上に形成される。
【0031】
フルカラーのトナー像が形成された転写ベルト131が感光体ドラム111a,112a,113a,114aから分離した後、さらに図示しない2次転写部で転写紙(記録用紙)が転写ベルト131に密着し、転写ベルト131とは反対の電化を与えることによりトナー像が転写紙側に転写される。2次転写部は例えば転写ベルト131上の残存トナーをクリーニングするクリーナ135上流側直近の駆動ローラ132に対向して配置された2次転写ローラによって構成される。従って、この実施形態における転写ベルトは中間転写ベルトとして機能する。なお、転写ベルト131は前記駆動ローラ132とこの駆動ローラ132と対となる従動ローラ131との間に掛け渡される。
【0032】
2次転写部で画像転写が行われた転写紙は、転写ベルト131から離れた後、図示しない定着装置で加熱及び加圧によりトナー像が転写紙上に融着し、定着が行われる。なお、転写ローラ111b,112b,113b,114bは各色の画像形成部111,112,113,114の感光体ドラム111a,112a,113a,114aと転写ベルト131を介して対向する位置に設けられ、転写ベルト131側に画像を1次転写させる際には、それぞれの転写ローラ111b,112b,113b,114bが上昇動作することにより、転写ベルト131の感光体ドラム111a,112a,113a,114aへの密着と前記電荷の付与が可能となり、転写ベルト131にトナー像が1次転写される。1次転写され、フルカラー画像が形成された後、転写ローラ111b,112b,113b,114bが下降動作することにより、転写ベルト131は感光体ドラム111a,112a,113a,114aから分離する。従って、本実施形態では、転写ローラ111b,112b,113b,114bが感光体ドラム111a,112a,113a,114aから転写ベルト131に画像を1次転写させる1次転写部として機能する。
【0033】
このようなタンデム型レーザプリンタ100では各色毎にレーザ光の光学経路が違うことから色ずれが発生する。この色ずれを補正するために制御部140では、転写ベルト131上に形成した例えば4色の平行パターンと斜めパターンからなる色合わせパターンを光センサ150で検出して色合わせパターン信号151を取得し、この色合わせパターン信号に基づいて、書き込み部120の各色の書き込みタイミングを制御し、色ずれを補正する。なお、制御部140は図示した記憶部141の他に、図示しないCPU、ROM及びRAMを含み、CPUはROMに格納されたプログラムコードを読み出してRAMに展開し、当該RAMに前記プログラムコードを展開し、当該RAMをワークエリア及びデータバッファとして使用しながら前記プログラムコードで定義されたプログラムを実行し、各種の制御を行う。記憶部141には、色ずれ補正制御、画像処理制御等を含む各種制御を実行するためのデータが記憶される。なお、記憶部141を前記RAMとして使用することもできる。
【0034】
図1の例では、間接転写方式のタンデム型レーザプリンタを例示しているが、転写ベルト(中間転写ベルト)131に代えて搬送ベルトとし、搬送ベルト上に静電吸着された用紙に直接画像を形成する直接転写方式のタンデム型レーザプリンタでも同様である。直接転写方式のタンデム型レーザプリンタでは、画像は用紙に直接形成されるが、前述の4色の平行パターンと斜めパターンからなる色合わせパターンは搬送ベルト上に転写ベルト131上に形成する場合と同様に形成される。
【0035】
この色ずれ補正は通常色毎に行われるが、入力画像特性(入力画像データ、ディザリング仕様、光学部品特性等)によっては補正制御による干渉で画像劣化が発生することがある。特に入力画像のディザリング仕様に対しては補正画素周期が一定であると干渉しやすい。
【0036】
図2は主走査方向を等分割したエリア内において、一定周期で補正画素を発生させた例を示す説明図である。補正画素数は主走査方向の色ずれ量から算出され、この算出された補正画素数から補正画素周期を算出する。
【0037】
補正画素数の算出は、例えば、解像度600dpi画像において、色ずれ量が423μmとした場合、1ドットあたりの色ずれ補正量幅が4.23μmとすると、423μmを補正するのに100ドット必要となる。これが補正画素数となる。
【0038】
図2では、主走査幅200に対してn(nは1以上の整数)個のエリア201の1つ1つのエリア幅210がm(mは1以上の整数)個の画素列220からなる例を示している。また、図では、網点で示した補正画素230の周期は3画素である。補正画素発生周期Tは、
T(補正画素発生周期)=エリア画素数/補正画素数 ・・・(1)
で表され、補正画素230がエリア幅210に対して少ない場合においては、補正画素発生周期は長くなるが、補正画素230がエリア幅210に対して多い場合には、補正画素発生周期は短くなり、補正画素のデータ発生周期も短く、発生頻度も多くなる。
【0039】
補正画素発生周期Tが一定周期かつ短くなると画像劣化が発生する可能性が高まることが確認されており、補正画素発生周期Tが短くなった場合には補正画素データの階調を制御する。
【0040】
1.補正画素と周辺画素の階調が等しい場合
図3は補正画素と周辺画素の階調が等しい場合の補正方法を示す説明図である。図3(a)に示す補正前の補正画素301の階調と、図3(b)に示す補正画素301の周辺1画素(周辺画素)302の階調を比較し、周辺画素302の階調が補正画素301と同じ階調であれば補正画素301の階調は変えずに補正を行う。
【0041】
2.補正画素と周辺画素の階調が等しくない場合
図4は補正画素と周辺画素の階調が等しくない場合の補正方法を示す説明図である。図4(a)に示す補正前の補正画素301の階調を図4(b)に示す補正後の補正画素301の階調にするが、その際、この補正画素301の階調と周辺画素311〜318の階調が同じでない場合には、補正画素310の階調は、
補正画素階調=Σ(周辺画素階調×d)/周辺画素数・・・(2)
ただし、d:階調算出係数
というよう式(2)から算出した階調を用いる。
【0042】
ここでは、式(2)に示すように補正画素310の階調は、周辺画素311〜318の階調の総和を周辺画素数で除算し、周辺1画素の平均の階調をとって比較する。さらに、周辺画素の階調を算出する場合には、この例では、階調算出係数dを積算して階調を調整する。この階調算出係数dは、例えば図4において、1画素が4ビット濃度とした場合、黒塗りの画素が4′hf(4′d15)であれば、式(2)から、補正画素の階調を、
補正画素階調=15×6/9=10
というようにして算出すると、注目画素である補正画素の濃度は4′ha(4′10)となる。しかし、このようにして単純に計算してしまうと、注目画素の濃度変化が目立ってしまうことがあるので、階調算出係数を濃度変化に対応して予め設定しておき、前記式(2)に従って算出する。例えば階調算出係数dを1.1とすると、
補正画素階調=15×1.1×6/9=11
となり、濃度は4′hb(4′d11)となる。これにより注目画素(補正画素)の濃度変化を周辺画素の濃度に対して目立たないようにすることができる。
【0043】
3.ディザパターンのマトリクスサイズと補正画素の発生周期が一致する場合
図5はディザパターンのマトリクスサイズと補正画素の発生周期が一致する場合の補正方法を示す説明図である。入力画像特性、例えばディザパターン330のマトリクスサイズ(図5では4×4)と補正画素310の発生周期(4画素毎)が一致した場合は干渉による画像劣化が発生する可能性が高くなる。その場合には、参照する周辺画素範囲を発生周期と合わせて4×4画素とし、ディザパターン330に応じて式(2)に基づいて補正画素の階調を算出する。これにより注目画素(補正画素)の濃度変化を周辺画素の濃度に対して目立たないようにすることができる。
【0044】
4.補正画素を再配置する場合、
図6は補正画素を再配置する場合の例を示す説明図である。前記2及び3で補正画素(注目画素)310の濃度を補正しても画像劣化が発生する場合には、補正画素310の位置を再配置する。すなわち、補正前の状態では図6(a)に示すように4×4のディザパターン330の上から2番目、左から2番目の画素を補正画素(注目画素)310としたときに、図5にようにして当該補正画素310の濃度を前記式(2)に沿って濃度補正しても画像劣化の発生を抑えることができない場合には、図6(b)に示すように補正画素(注目画素)340をディザパターン330の上から2番目、左から3番目の画素に設定する。すなわち、補正画素位置310を色画素位置(補正(注目)画素340)に再配置する。
【0045】
そして、次のパターンで補正する場合に、色画素位置の補正画素340を注目画素として式(2)に従って計算し、補正画素340の濃度を求める。これにより、図6(b)から分かるようにディザパターン330内の画素の配置自体は変化しないことから、注目画素(補正画素)の濃度変化を周辺画素の濃度に対して目立たないようにすることができる。
【0046】
5.補正処理手順
図7は、前記1ないし4で実行される補正画素の補正周期を更新する処理手順を示すフローチャートである。この処理は制御部140の図示しないCPUによって実行される。
【0047】
この処理手順ではまず、転写ベルト131の回転数が一定回転数に達したか否かをチェックする(ステップS1)。この実施形態では、一定回転数は例えば500回転に設定され、転写ベルト131が500回転する度に色合わせパターンが作像される(ステップS5)。回転数は記憶部141に格納され、ステップS1のチェックでは、記憶部141に格納された回転数と比較する。
【0048】
ステップS1で転写ベルト131の回転数が前回の色合わせパターンの作像から500回に達していない場合には、トナー消費量が一定量に達したか否かをチェックする(ステップS2)。トナーの消費量が予め設定された一定量に達する度に色合わせパターンが作像される(ステップS5)。各色のトナー消費量は経時的に記憶部に格納され、ステップS2のチェックでは、記憶部141に格納されたトナー消費量と比較する。
【0049】
トナー消費量が一定量に達していなければ、転写ベルト131あるいは各色の画像形成部を構成するプロセスカートリッジの脱着があったかどうかをチェックする(ステップS3)。転写ベルト131あるいはプロセスカートリッジの脱着は、印刷枚数に基づいて実行される。そのため、記憶部141には、前回の転写ベルト131あるいはプロセスカートリッジの交換時からの印刷枚数を記憶しておき、現在の印刷枚数と比較する。なお、転写ベルト131の寿命による交換は、例えば9万ページ印刷する度に行われる。また、プロセスカートリッジの交換は、トナーがなくなったとき、あるいは、感光体ドラム111a,112a,113a,114aの感光体が寿命に達したときに行われる。これらの管理は制御部140のCPUが記憶部141に記憶されたトナー情報及び印刷枚数情報に基づいて行われる。
【0050】
ステップS4のチェックで転写ベルト131の交換、あるいはプロセスカートリッジの脱着があれば、ステップS5に移行して色合わせパターンの作像を開始する。一方、転写ベルト131の交換、あるいはプロセスカートリッジの脱着もなければ、画像形成装置の機内温度をチェックする。機内温度は図示しない温度センサによって常時監視され、温度センサと制御部140によって監視手段が構成される。記憶部141には基準電圧更新時の温度が格納され、制御部140は、記憶部141に格納された機内温度と現在の機内温度とを比較し、その差が予め設定された指定値以下の場合には、色合わせパターン作像を開始することなく処理を終え、次の補正周期更新処理の開始を待つ。一方、機内温度との前記差が指定値より多ければ、すなわち、例えば5℃以上の温度差を検出した場合には、ステップS5で色合わせパターンの作像を開始する。
【0051】
色合わせパターンの作像開始後は、光センサ150によって転写ベルト131上に形成された色合わせパターンを光センサ150によって読み取り、読み取られた色合わせパターン信号151に基づいて制御部140は色合わせ補正処理を実行する。
【0052】
その際、色合わせ補正処理による干渉で発生する画像劣化を防ぐため、前述のようにして主走査色ずれ量から補正画素数を算出し(ステップS6)、算出した補正画素数から前記式(1)によって補正画素発生周期を算出する(ステップS7)。
【0053】
そして、前述のようにこの算出された補正画素発生周期Tが短くなった場合には補正画素データの階調を制御することになる。
【0054】
このように本実施形態では、CPUは画像形成装置期間における転写ベルト131の回転数を格納し、500回転毎にステップS5以降の処理を実行することによって画像劣化度合い、色合わせ精度を最適に維持することができる。また、印刷枚数をカウントして格納することにより、転写ベルト131の寿命(例えば9万ページ印刷)に達して転写ベルト131を交換した場合にもステップS5以降の処理を実行することによって画像劣化度合い、色合わせ精度を最適に維持することができる。
【0055】
さらに、機内温度を格納する記憶部141に基準電圧更新時の温度を格納し、格納された機内温度から5℃以上の温度差を検出した場合にステップS5以降の処理を実行することにより、画像劣化度合い、色合わせ精度を最適に維持することができる。
【0056】
以上のように、本実施形態によれば、補正画素の階調を制御することにより、入力画像特性との干渉が起きた場合でも画像品質の劣化を低減することが可能である。本実施形態にように制御しない場合は、入力画像特性によっては色合わせ精度と画像品質はトレードオフの関係にあり、両者を共に満足することはできない。
【0057】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な実施形態を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲により規定される範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
100 レーザプリンタ
110 作像部
111,112,113,114 画像形成部
131 転写ベルト
140 制御部
141 記憶部
150 光センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【特許文献1】特開2007−203739号公報
【特許文献2】特開2000−141750号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画像形成部を並置して各画像形成部の像担持体上に形成された画像を、ベルト状搬送体を介して直接的又は間接的にシート状記録媒体上に転写し、複数色が重畳されたカラー画像を形成する画像形成手段と、
前記ベルト状搬送体上に色合わせパターンを形成し、形成された色合わせパターンを読み取って各色の主走査方向の色ずれ量を検出する色ずれ量検出手段と、
前記色ずれ量検出手段によって検出された色ずれ量に基づいて色合わせ補正を行う色合わせ補正手段と、
前記色合わせ補正手段による色合わせ補正における干渉によって発生する画像劣化を防ぐ画像劣化防止補正手段と、
を有する画像形成装置であって、
前記画像劣化防止補正手段は、
入力画像データ、ディザリング仕様及び光学部品特性を含む入力画像特性に基づいて補正画素数を算出する補正画素数算出手段と、
算出された補正画素数から補正画素の発生周期を算出する補正画素発生周期算出手段と、
前記補正画素発生周期算出手段によって算出された発生周期が予め設定された周期より短いときに、補正画素の階調を制御する階調制御手段と、
を備えていること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置であって、
前記補正画素発生周期算出手段は、各色毎に主走査1ラインを複数の可変エリアに分割し、各エリア毎の補正画素発生数を算出すること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の画像形成装置であって、
前記階調制御手段は、前記算出された発生周期にある補正画素の階調を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像形成装置であって、
前記階調制御手段は、前記算出された発生周期にある補正画素の階調を、当該補正画素の周辺画素の濃度データを参照して決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4記載の画像形成装置であって、
前記階調制御手段は、参照する前記補正画素の周辺画素の範囲を前記算出された発生周期と前記入力画像特性に応じて設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5記載の画像形成装置であって、
前記階調制御手段は、前記算出された発生周期にある補正画素の階調を、前記設定された周辺画素の範囲内の画素の濃度の平均値に設定することを特徴とする。
【請求項7】
請求項6記載の画像形成装置であって、
前記階調制御手段は、前記設定された周辺画素の範囲内の画素の濃度の平均値と隣接する画素の濃度差が大きい場合には、濃度差が小さくなるように補正することを特徴とする。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、
前記補正画素発生周期算出手段は、前記算出された発生周期と周辺画素データに応じて補正画素データ発生周期を再算出することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、
前記ベルト状搬送体の回転数を記憶する記憶手段を備え、
前記補正画素発生周期算出手段は、一定回転数に達する毎に補正画素データの発生数を算出すること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、
前記各画像形成部のトナー使用量を記憶する記憶手段を備え、
前記補正画素発生周期算出手段は、前記各画像形成部のトナー使用量が一定の使用量に達する毎に補正画素データの発生数を算出すること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、
前記ベルト状搬送体又は前記画像形成装置の脱着を判別する判別手段を備え、
前記補正画素発生周期算出手段は、前記判別手段で脱着を判別する毎に補正画素データの発生数を算出すること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、
前回補正画素データの発生数を算出したときの機内温度を記憶する記憶手段と、
機内温度を監視する監視手段と、
を備え、
前記補正画素発生周期算出手段は、前記監視手段が現在の機内温度と前回の機内温度との間に予め設定された温度以上の差が生じたことを検知したときには、補正画素データの発生数を算出すること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
複数の画像形成部を並置して各画像形成部の像担持体上に形成された画像を、ベルト状搬送体を介して直接的又は間接的にシート状記録媒体上に転写し、複数色が重畳されたカラー画像を形成する画像形成手段と、
前記ベルト状搬送体上に色合わせパターンを形成し、形成された色合わせパターンを読み取って各色の主走査方向の色ずれ量を検出する色ずれ量検出手段と、
前記色ずれ量検出手段によって検出された色ずれ量に基づいて色合わせ補正を行う色合わせ補正手段と、
を有する画像形成装置の前記色合わせ補正手段による色合わせ補正における干渉によって発生する画像劣化を防ぐ画像劣化防止補正方法であって、
入力画像データ、ディザリング仕様及び光学部品特性を含む入力画像特性に基づいて補正画素数を算出し、
算出された補正画素数から補正画素の発生周期を算出し、
算出された発生周期が予め設定された周期より短いときに、補正画素の階調を制御すること
を特徴とする画像劣化防止方法。
【請求項14】
複数の画像形成部を並置して各画像形成部の像担持体上に形成された画像を、ベルト状搬送体を介して直接的又は間接的にシート状記録媒体上に転写し、複数色が重畳されたカラー画像を形成する画像形成手段と、
前記ベルト状搬送体上に色合わせパターンを形成し、形成された色合わせパターンを読み取って各色の主走査方向の色ずれ量を検出する色ずれ量検出手段と、
前記色ずれ量検出手段によって検出された色ずれ量に基づいて色合わせ補正を行う色合わせ補正手段と、
を有する画像形成装置の前記色合わせ補正手段による色合わせ補正における干渉によって発生する画像劣化の防止補正を、コンピュータに実行させる画像劣化防止補正プログラムあって、
入力画像データ、ディザリング仕様及び光学部品特性を含む入力画像特性に基づいて補正画素数を算出する第1の手順と、
算出された補正画素数から補正画素の発生周期を算出する第2の手順と、
算出された発生周期が予め設定された周期より短いときに、補正画素の階調を制御する第3の手順と、
を備えていることを特徴とする画像劣化防止補正プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−98670(P2012−98670A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248606(P2010−248606)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】