説明

画像形成装置及び画像形成装置の制御方法

【課題】現像剤の流動性を確保し、常に安定した印刷画質を維持できる画像形成装置及び画像形成装置の制御方法を提供する。
【解決手段】2成分現像剤AGを収容する現像装置2と、現像装置2へトナーを補給するトナー補給装置26と、現像装置2内の2成分現像剤中のトナー濃度を検知するトナー濃度センサ24と、トナー濃度センサ24の出力に基づきトナー補給装置26から現像装置2へのトナー補給動作を制御する機能を備えた制御部30とを備えて、トナー濃度を制御して画像出力を行う画像形成装置Aにおいて、制御部30として、トナー濃度センサ24の出力値が予め設定された所定の範囲から外れた値になった時に、現像装置2からトナーを排出し、その排出されたトナーの量に相当する量のトナーを現像装置2へ補給するようにトナー補給装置26の動作を制御する機能を備えることを特徴とするものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ等の電子写真方式を用いた画像形成装置及び画像形成装置の制御方法に係り、特に、トナー濃度を制御して画像出力を行う画像形成装置及び画像形成装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真方式を用いた画像形成装置には、トナー像を形成するために現像装置が搭載されている。この現像装置は、1成分トナーを用いる1成分現像方式を用いるものと、非磁性トナーと磁性を有するキャリアとを含む2成分現像剤を用いる2成分現像方式を用いるものとに大別される。
【0003】
1成分現像方式による現像装置は、コンパクト化に適しているものの高速現像には適さないため、高速・長寿命の画像形成装置においては、2成分現像方式の現像装置がほとんど採用されている。
【0004】
この2成分現像剤を用いるタイプの現像装置では、2成分現像剤中のキャリア自体は消費されず、装置内部に残るため減少しないが、トナーは現像により消費されて減少していく。そこで、画質を安定化させるために、トナー濃度制御により2成分現像剤のトナー濃度を一定に維持するようにトナーが適宜補給されている。
【0005】
トナー濃度制御は、各種方法を用いて制御することができるが、一般的にはトナー濃度センサを使用し、所定幅を超えたときにトナー補給を行うようにしている。トナー濃度センサとしては、例えば、2成分現像剤の透磁率がそのトナー濃度に応じて変化することを利用した透磁率センサが用いられる。
【0006】
従来技術では、より正確なトナー濃度検知方法として、トナー濃度センサ出力の読み取り周期は、1周期が現像剤搬送スクリューの回転周期の半分の周期と等しくなるようにすることで、簡単な構成でメモリの消費を抑えることが開示されている(特許文献1を参照)。
【0007】
また、トナー濃度センサに加え、他のセンサなどによりトナー濃度を検知するシステムが考えられている。例えば、トナー濃度センサは、回転立ち上がり時は不安定であり、更に現像剤の循環に時間を要することもあり、瞬時のトナー濃度を検出することはできない。そこで、検出が安定するまでの間(例えば、A4サイズで数十枚程度)は、原稿の印字率(もしくはドットカウント数)による値をもとにトナー補給を行うことで、より精度の高いトナー濃度の補正を図る画像形成装置が開示されている(特許文献2を参照)。
【特許文献1】特開2003−57938号公報
【特許文献2】特開平11−202605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、トナー濃度センサとして一般的に透磁率センサを用いる従来のトナー濃度制御では、全ての状況下できれいな画質を得ることができないという問題があった。
【0009】
近年、画像形成装置においては、省エネに対する市場要望も強いため、2成分現像剤用トナーとして、少しの熱量で定着できる低融点トナーも用いられている。この低融点トナーを採用すると、トナーが熱に対して弱くなるため、従来の2成分現像剤のように、さらさら状態を維持し難いため流動性の低下を起し易くなる。その結果、現像装置の中の搬送スクリュー軸などにトナーもしくは現像剤が固着したり融着したりする場合がある。
【0010】
そのため、搬送スクリューの1回転当たりに搬送できる現像剤量(トナー量)が低下してしまい、搬送スクリューの近傍に設置することでトナー濃度を測定するトナー濃度センサの出力値が変化することが起こる。すなわち、現像装置において、現像剤のトナー濃度としては平均値なものであっても、現像剤の中で局所的にばらつく現象を引き起こし、その結果、現像剤の流動性低下やトナーの攪拌不良に起因するガサツキが印刷画像に現われてしまうという問題が生じる。
【0011】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたものであって、現像剤の流動性を確保し、常に安定した印刷画質を維持できる画像形成装置及び画像形成装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するための本発明に係る画像形成装置及び画像形成装置の制御方法は、次の通りである。
本発明は、像担持体に形成された静電潜像を現像するためのトナー及びキャリアを含む2成分現像剤を収容する現像装置と、前記現像装置へトナーを補給するトナー補給装置と、前記現像装置内の2成分現像剤中のトナー濃度を検知するトナー濃度センサと、前記トナー濃度センサの出力に基づき前記トナー補給装置から前記現像装置へのトナー補給動作を制御する機能を備えた制御手段とを備えて、トナー濃度を制御して画像出力を行う画像形成装置において、前記制御手段として、前記トナー濃度センサの出力値が予め設定された所定の範囲から外れた値になった時、すなわち、前記トナー濃度センサの出力値が予め設定された最大値から最小値までの範囲(予め設定された出力値の振幅)から外れた値になった時に、前記現像装置からトナーを排出し、その排出されたトナーの量に相当する量のトナーを前記現像装置へ補給するように前記トナー補給装置の動作を制御する機能を備えることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明は、前記制御手段として、前記現像装置の使用時間に応じて、前記トナー濃度センサの出力値の予め設定された所定の範囲、すなわち予め設定された出力値の振幅を変更する機能を備えることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、前記制御手段として、前記現像装置内の現像剤の温度に応じて、前記トナー濃度センサの出力値の予め設定された所定の範囲、すなわち予め設定された出力値の振幅を変更する機能を備えることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、前記画像形成装置において、印刷画質を安定化させるために行う画質制御プロセスを備え、前記制御手段として、前記画質制御プロセスの制御結果に基づき前記トナー補給装置の動作を制御する機能、すなわち、前記画質制御プロセスの制御結果に基づき現像装置へのトナー補給を制御する機能を備えることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、前記制御手段により、前記画質制御プロセスの制御結果得られる現像バイアスの値に基づき前記トナー補給装置の動作を制御すること、すなわち、前記画質制御プロセスの制御結果得られる現像バイアスの値に基づき現像装置へのトナー補給を制御することが好ましい。
【0017】
また、本発明は、前記制御手段により、前記現像バイアスの値に基づき前記現像装置からのトナーの排出量を調整するように制御することが好ましい。
【0018】
また、本発明は、像担持体に形成された静電潜像を現像するためのトナー及びキャリアを含む2成分現像剤を収容する現像装置と、前記現像装置へトナーを補給するトナー補給装置と、前記現像装置内の2成分現像剤中のトナー濃度を検知するトナー濃度センサと、前記トナー濃度センサの出力に基づき前記トナー補給装置から前記現像装置へのトナー補給動作を制御する機能を備えた制御手段とを備えて、トナー濃度を制御して画像出力を行う画像形成装置の制御方法において、前記トナー濃度センサの出力値が予め設定された所定の範囲から外れた値になった時、すなわち、前記トナー濃度センサの出力値が予め設定された最大値から最小値までの範囲(予め設定された出力値の振幅)から外れた値になった時に、前記現像装置からトナーを排出し、その排出されたトナーの量に相当する量のトナーを前記現像装置へ補給する工程を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、像担持体に形成された静電潜像を現像するためのトナー及びキャリアを含む2成分現像剤を収容する現像装置と、前記現像装置へトナーを補給するトナー補給装置と、前記現像装置内の2成分現像剤中のトナー濃度を検知するトナー濃度センサと、前記トナー濃度センサの出力に基づき前記トナー補給装置から前記現像装置へのトナー補給動作を制御する機能を備えた制御手段とを備えて、トナー濃度を制御して画像出力を行う画像形成装置において、前記制御手段として、前記トナー濃度センサの出力値が予め設定された所定の範囲から外れた値になった時、すなわち、前記トナー濃度センサの出力値が予め設定された最大値から最小値までの範囲(予め設定された出力値の振幅)から外れた値になった時に、前記現像装置からトナーを排出し、その排出されたトナーの量に相当する量のトナーを前記現像装置へ補給するように前記トナー補給装置の動作を制御する機能を備えることで、前記トナー濃度センサの出力値より現像剤の流動性を検知して、前記現像装置から排出されるトナーの量に相当する量のトナーを補給することで、劣化したトナーや固着、融着が生じたトナーを排除し、トナーを正常な状態にして現像剤の流動性を確保することができるので、前記現像装置内のトナー濃度を最適な状態にして安定した印刷画質を維持することができる。特に、低印字率の原稿を連続印刷した場合においては、現像装置から印刷に使用されるトナーが少なくなるため、トナー自身の劣化や現像剤との結合などが起こりやすいことから、本発明に係る特徴的なトナー補給の制御により効果を奏し得る。
【0020】
また、本発明によれば、前記制御手段として、前記現像装置の使用時間に応じて、前記トナー濃度センサの出力値の予め設定された所定の範囲、すなわち予め設定された出力値の振幅を変更する機能を備えることで、現像装置内のトナーの状態に応じて、前記現像装置からトナーを排出し、その排出されたトナーの量に相当する量のトナーを前記現像装置へ補給することで、前記現像装置内のトナー濃度を最適な状態にすることができる。
【0021】
また、本発明によれば、前記制御手段として、前記現像装置内の現像剤の温度に応じて、前記トナー濃度センサの出力値の予め設定された所定の範囲、すなわち予め設定された出力値の振幅を変更する機能を備えることで、現像装置内のトナーの状態に応じて、前記現像装置からトナーを排出し、その排出されたトナーの量に相当する量のトナーを前記現像装置へ補給することで、前記現像装置内のトナー濃度を最適な状態にすることができる。
【0022】
また、本発明によれば、前記画像形成装置において、印刷画質を安定化させるために行う画質制御プロセスを備え、前記制御手段として、前記画質制御プロセスの制御結果に基づき前記トナー補給装置の動作を制御する機能、すなわち、前記画質制御プロセスの制御結果に基づき現像装置へのトナー補給を制御する機能を備えることで、画質制御プロセスに応じた安定した印刷画質を維持することができる。
【0023】
また、本発明によれば、前記制御手段により、前記画質制御プロセスの制御結果得られる現像バイアスの値に基づき前記トナー補給装置の動作を制御すること、すなわち、前記画質制御プロセスの制御結果得られる現像バイアスの値に基づき現像装置へのトナー補給を制御することで、劣化したトナーや固着、融着が生じたトナーを排除し、トナーを正常な状態にして現像剤の流動性を確保することができる。
【0024】
また、本発明によれば、前記制御手段により、前記現像バイアスの値に基づき前記現像装置からのトナーの排出量を調整するように制御することで、例えば、現像バイアスの値が前回プロコン時の値から大きく変化しているようであれば、トナー排出を増加させることで、現像剤の流動性低下をより一層抑えることができる。
【0025】
また、本発明によれば、像担持体に形成された静電潜像を現像するためのトナー及びキャリアを含む2成分現像剤を収容する現像装置と、前記現像装置へトナーを補給するトナー補給装置と、前記現像装置内の2成分現像剤中のトナー濃度を検知するトナー濃度センサと、前記トナー濃度センサの出力に基づき前記トナー補給装置から前記現像装置へのトナー補給動作を制御する機能を備えた制御手段とを備えて、トナー濃度を制御して画像出力を行う画像形成装置の制御方法において、前記トナー濃度センサの出力値が予め設定された所定の範囲から外れた値になった時、すなわち、前記トナー濃度センサの出力値が予め設定された最大値から最小値までの範囲(予め設定された出力値の振幅)から外れた値になった時に、前記現像装置からトナーを排出し、その排出されたトナーの量に相当する量のトナーを前記現像装置へ補給する工程を有することで、劣化したトナーや固着、融着が生じたトナーを排除し、トナーを正常な状態にして現像剤の流動性を確保することができるので、前記現像装置内のトナー濃度を最適な状態にして安定した印刷画質を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、この発明の最良の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体の構成を示す説明図、図2は前記画像形成装置におけるトナー補給制御を行う電気的構成の一例を示すブロック図、図3は前記画像形成装置を構成する現像装置の構成を示す説明図である。
【0027】
本実施形態に係る画像形成装置Aは、図1〜図3に示すように、感光体ドラム3に形成された静電潜像を現像するためのトナー及びキャリアを含む2成分現像剤AGを収容する現像装置2と、現像装置2へトナーを補給するトナー補給装置26と、現像装置2内の2成分現像剤中のトナー濃度を検知するトナー濃度センサ24と、トナー濃度センサ24の出力に基づきトナー補給装置26から現像装置2へのトナー補給動作を制御する機能を備えた制御部30とを備えて、トナー濃度を制御して画像出力を行う画像形成装置Aにおいて、制御部30として、トナー濃度センサの出力値が予め設定された所定の範囲から外れた値になった時に、現像装置2からトナーを排出しその排出されたトナー量に相当する量のトナーを新たに現像装置2へ補給するようにトナー補給装置26の動作を制御する機能を備えることを特徴とするものである。
【0028】
まず、画像形成装置Aの全体構成について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置Aは、読み取った原稿の画像データやネットワーク等を介して外部から伝達された画像データに基づいてシート状の用紙(記録媒体)に対して多色および単色の画像を形成するものである。
【0029】
画像形成装置Aは、図1に示すように、露光ユニット1、現像装置2(2a〜2d)、感光体ドラム3(3a〜3d)、クリーニングユニット4(4a〜4d)、帯電器5(5a〜5d)、中間転写ベルト60、中間転写ローラ64(64a〜64d)、転写ローラ8、定着ユニット9、用紙搬送路S、給紙カセット10、手差しトレイ16及び排紙トレイ13等を備えている。
【0030】
画像形成装置Aは、ブラック(K)及びカラー画像を色分解して得られる減法混色の3原色であるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色の各色相に対応した画像データを用いて画像形成部40において画像形成を行う。
尚、本実施形態では、画像形成装置Aは、4色を用いてカラー画像形成を行っているが、例えば、6色を用いるなど複数のカラー画像形成が可能なものであってもよく、また、モノクロの画像形成装置でもよい。
【0031】
露光ユニット1は、図示しない半導体レーザ、ポリゴンミラー1a及び第1反射ミラー1b及び第2反射ミラー1c等を備えたレーザスキャニングユニット(LSU)を用いて、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相の画像データによって変調されたレーザビーム等の光ビームのそれぞれを感光体ドラム3a〜3dのそれぞれに照射する。感光体ドラム3a〜3dのそれぞれには、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相の画像データによる静電潜像が形成される。
【0032】
尚、露光ユニット1の構成は、上述したレーザスキャニングユニットを用いる手法の他に、発光素子をアレイ状に並べた、例えばEL(Electro Luminescence)やLED(Light Emitting Diode)を用いた書込みヘッドを用いる手法もある。
【0033】
露光ユニット1への画像情報の入力は、画像形成装置Aに外部接続されたコンピュータやファクシミリ回線などから行ってもよく、また、画像形成装置Aに原稿読取部が具備される場合には、その原稿読取部で原稿を光学的に読み取ることでも得られる。さらに、画像情報の入力がアナログ信号の場合にはデジタル信号へ変換を行えばよい。
【0034】
現像装置2は、静電潜像が形成された感光体ドラム3の表面にトナーを供給し、静電潜像をトナー像に現像する。現像装置2a〜2dのそれぞれは、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相のトナーを収納しており、感光体ドラム3a〜3dのそれぞれに形成された各色相の静電潜像をブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相のトナー像に顕像化する。
【0035】
感光体ドラム3は、画像形成装置Aの上部に配置(装着)されている。
クリーニングユニット4は、感光体ドラム3の外周面に摺接配置され、現像・画像転写後における感光体ドラム3上の表面に残留したトナーを除去・回収する。
帯電器5は、感光体ドラム3の表面を所定の電位に均一に帯電させるための帯電手段であり、図1に示すように接触型のローラ型やブラシ型の帯電器のほかチャージャー型の帯電器を用いてもよい。
【0036】
中間転写ベルトユニット6は、感光体ドラム3の上方に配置され、中間転写ベルト60、中間転写ベルト駆動ローラ61、中間転写ベルト従動ローラ62、中間転写ベルトテンション機構63、中間転写ローラ64(64a、64b、64c、64d)、及び中間転写ベルトクリーニングユニット65を備えている。
【0037】
中間転写ベルト駆動ローラ61、中間転写ベルト従動ローラ62、中間転写ベルトテンション機構63、中間転写ローラ64等は、中間転写ベルト60を張架して矢印B方向に回転駆動させるものである。
【0038】
中間転写ベルト60は、中間転写ベルト駆動ローラ61と中間転写ベルト従動ローラ62との間に張架されてループ状の移動経路を形成して、それぞれの感光体ドラム3に接触するように設けられている。中間転写ベルト60の外周面は、感光体ドラム3d、感光体ドラム3c、感光体ドラム3b及び感光体ドラム3aにこの順に対向する。この中間転写ベルト60を挟んで各感光体ドラム3a〜3dに対向する位置に、中間転写ローラ64a〜64dが配置されている。そして、中間転写ベルト60の感光体ドラム3a〜3dに対向する位置で感光体ドラム3a〜3d上に形成されたトナー像が転写されるようになっている。
また、中間転写ベルト60は、厚さ100〜150μm程度のフィルムで形成されている。
【0039】
中間転写ローラ64a〜64dには、感光体ドラム3a〜3dの表面に担持されたトナー像を中間転写ベルト60上に転写するために、トナーの帯電極性と逆極性の転写バイアスが定電圧制御によって印加される。これによって、感光体ドラム3(3a〜3d)に形成された各色相のトナー像は中間転写ベルト60の外周面に順次重ねて転写され、中間転写ベルト60の外周面にフルカラーのトナー像が形成される。
【0040】
また、中間転写ローラ64a〜64dは、直径8〜10mmの金属(例えばステンレス)を素材とする軸の表面を導電性の弾性材(例えばEPDM,発泡ウレタン等)により被覆して構成されており、導電性の弾性材によって中間転写ベルト60に対して均一に高電圧を印加するようになっている。
尚、本実施形態では、転写電極としてローラ形状の中間転写ローラ64a〜64dを使用しているが、それ以外にブラシなども用いることができる。
【0041】
上述したように、各感光体ドラム3a〜3d上で各色相に応じた顕像化された静電像は、中間転写ベルト60上に積層され、画像形成装置Aに入力された画像情報が示す画像(トナー像)として形成される。積層された画像情報(トナー像)は、中間転写ベルト60の回転によって、搬送されてきた用紙と中間転写ベルト60との接触位置に配置される転写ローラ8によって用紙上に転写される。
【0042】
この時、中間転写ベルト60と転写ローラ8は所定ニップで圧接されると共に、転写ローラ8にはトナーを用紙に転写させるための電圧が印加される(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)。
【0043】
尚、中間転写ベルト60と転写ローラ8とが上記ニップを定常的に得るために、転写ローラ8もしくは中間転写ベルト駆動ローラ61の何れか一方を硬質材料(金属等)とし、他方を弾性ローラ等の軟質材料(弾性ゴムローラ又は発泡性樹脂ローラ等々)としたものが用いられる。
【0044】
また、感光体ドラム3との接触により中間転写ベルト60に付着したトナー、もしくは、転写ローラ8によって用紙上に転写が行われず中間転写ベルト60上に残存したトナーは、次工程でトナーの混色を発生させる原因となるために、中間転写ベルトクリーニングユニット65によって除去・回収されるように設定されている。
【0045】
中間転写ベルトクリーニングユニット65は、中間転写ベルト60に接触してトナー等を除去するためのクリーニング部材としてクリーニングブレードを備えている。このクリーニングブレードが接触する部分の中間転写ベルト60は、裏側から中間転写ベルト従動ローラ62で支持されている。
【0046】
給紙カセット10は、画像形成に使用する用紙を蓄積しておくためのトレイであり、画像形成装置Aの画像形成部及び露光ユニット1の下側に設けられている。また、画像形成装置Aの上部に設けられている排紙トレイ13は、印字済みの用紙をフェイスダウンで載置するためのトレイである。
【0047】
また、画像形成装置Aには、給紙カセット10の用紙を転写ローラ8や定着ユニット9を経由させて排紙トレイ13に送るための略垂直形状の用紙搬送路Sが設けられている。さらに、給紙カセット10から排紙トレイ13に到る用紙搬送路Sの近傍には、ピックアップローラ11(11−1,11−2)、レジストローラ7、転写ローラ8、定着ユニット9のヒートローラ9a及び加圧ローラ9b、用紙を搬送する搬送ローラ12(12−1〜12−8)等が配されている。換言すると、用紙搬送路Sは、これらローラ群により形成されている。
【0048】
搬送ローラ12は、用紙の搬送を促進・補助するための小型のローラであり、用紙搬送路Sに沿って複数箇所に設けられている。
ピックアップローラ11−1は、給紙カセット10の端部に備えられ、給紙カセット10から、用紙を1枚毎に用紙搬送路Sに供給する呼び込みローラである。
【0049】
レジストローラ7は、用紙搬送路Sを搬送されている用紙をいったん保持するローラである。そして、レジストローラ7は、感光体ドラム3上のトナー像の先端と用紙の先端を合わせるタイミングで転写ローラ8を具備する転写部8Aに用紙を搬送する機能を有している。
【0050】
定着ユニット9は、ヒートローラ9a及び加圧ローラ9b等を備えており、ヒートローラ9a及び加圧ローラ9bは、用紙を挟んで回転するようになっている。また、ヒートローラ9aは、図示しない温度検出器からの信号に基づいて制御部によって所定の定着温度となるように設定されており、加圧ローラ9bと共に用紙を熱圧着することにより、用紙に転写された多色トナー像を溶融・混合・圧接し、用紙に対して熱定着させる機能を有している。
【0051】
なお、トナー像(積層された多色トナー像)の定着後の用紙は、搬送ローラ12−2,12−3によって用紙搬送路Sの反転排紙経路に搬送され、反転された状態で(トナー像側を下側に向けて)排紙トレイ13上に排出されるようになっている。
【0052】
次に、画像形成装置Aにおける用紙搬送経路について図面を参照して詳細に説明する。
画像形成装置Aには、図1に示すように、予め用紙を収納する給紙カセット10が配置されると共に、ユーザが少数枚の印字を行う時に給紙カセット10の開閉動作を行わなくても良いように手差しトレイ16が配置されている。
給紙カセット10及び手差しトレイ16の用紙搬送方向下流側にはピックアップローラ11−1,11−2が配置されている。このように、給紙カセット10または手差しトレイ16を用いた給紙方法によれば、ピックアップローラ11−1,11−2により用紙を1枚ずつ用紙搬送路Sに導くようになっている。
【0053】
(片面印字要求時)
まず、給紙カセット10を用いて給紙する場合について説明する。
給紙カセット10の用紙は、ピックアップローラ11−1により1枚ずつ取り出され、用紙搬送路S中の搬送ローラ12−1によってレジストローラ7まで搬送される。そして、レジストローラ7によって用紙の先端と中間転写ベルト60上の画像情報の先端を整合するタイミングで転写ローラ8に搬送され、用紙上に画像情報が転写される。その後、用紙は、定着ユニット9に搬送され、定着ユニット9を通過することによって用紙上に転写された未定着トナーが熱で溶融・固着され、搬送ローラ12−2を経て搬送ローラ(排紙ローラ)12−3から排紙トレイ13上に排出される。
【0054】
次に、手差しトレイ16を用いて給紙する場合について説明する。
手差しトレイ16に積載された用紙は、ピックアップローラ11−2によって装置内に1枚ずつ給紙され、用紙搬送路S中の複数の搬送ローラ12−6,12−5,12−4を経てレジストローラ7に搬送される。それ以降の用紙搬送工程は、給紙カセット10から給紙される用紙と同様の経過を経て排紙トレイ13に排出される。
【0055】
(両面印字要求時)
印字要求内容が両面印字要求の時は、上述のように定着ユニット9を通過して片面印字が終了した用紙は、そのまま排紙トレイ13に排出されることなく、用紙の後端が排紙ローラ12−3で保持された状態で、排紙ローラ12−3が逆回転することによって、搬送ローラ12−7,12−8に導かれた後、再びレジストローラ7に搬送される。
【0056】
そして、レジストローラ7により、用紙の先端と中間転写ベルト60上の画像情報の先端を整合するタイミングで再び転写ローラ8に搬送され、用紙の裏面に画像情報が転写される。その後、再び定着ユニット9に搬送され、定着ユニット9を通過することによって用紙の裏面に転写された未定着トナーが熱で溶融・固着された後に搬送ローラ12−2、排紙ローラ12−3を経て排紙トレイ13に排出される。
【0057】
次に、本実施形態に係る現像装置2について図面を参照して詳細に説明する。
現像装置2は、図3に示すように、像担持体の一例である感光体ドラム3に形成された静電潜像を、トナー像に現像するために設けられている。現像装置2は、トナー及びキャリアを含む2成分現像剤(以下、単に「現像剤」と称する。)AGを収容する現像容器20と、現像容器20内にある現像剤AGを感光体ドラム3に供給するために感光体ドラム3に対向して接近して配置された現像ローラ21と、現像容器20内の現像剤AGを攪拌しながら現像ローラ21へ向けて搬送する2本の搬送スクリュー22a,22bと、現像ローラ21への現像剤量を規制するドクターブレード23と、トナー濃度センサ24とを有している。
【0058】
トナー濃度センサ24は、現像容器20内の現像剤AGの透磁率を検出することにより、現像装置2内の現像剤AG中のトナー濃度を検知するものであり、透磁率センサとも言う。
【0059】
現像容器20の上部には、その内部へトナーを補給するための開口25が形成され、その開口25上部には、トナー補給装置26が配備されている。トナー補給装置26は、トナーTを収容するトナー容器26aと、トナー容器26a内に収容されたトナーTを攪拌するトナー攪拌部材26bと、トナー容器26a内のトナーTを攪拌しながら供給するトナー補給ローラ26cとを有しており、開口25を通じて現像装置2へトナーTを補給する。
【0060】
ここで、トナー濃度センサ24のセンサ出力について説明する。
図4は本実施形態に係るトナー濃度センサの出力プロファイルの一例を示す説明図である。
【0061】
現像装置2の搬送スクリュー22aの近傍に配置されているトナー濃度センサ24は、10mmsec毎のサンプリングタイミングで現像剤の透磁率を測定する。図4に示すように、トナー濃度センサ24による現像剤の透磁率の値を経過時間に対してプロットしていくと、現像剤AGの流動性が正常な場合には、図中の破線で示すように、ほぼ搬送スクリュー22aの1周期でトナー濃度センサ24の出力値の1周期と一致した形となる。従って、搬送スクリュー22aの現像剤の送り量に対応して、見掛け上サインカーブのような周期的な出力プロファイルを示す。
【0062】
しかしながら、現像剤AGの流動性が低下してくると、上述したように搬送スクリュー22aにキャリアやトナーが固着するため、現像剤AGの搬送量が低下する。その結果トナー濃度センサ24で測定されるセンサ出力の絶対値も低下気味となる。また、現像剤AGがスムーズに流れなくなるため、現像剤AGの送り量が均等でなくなり、不規則でばらつくようになる。
従って、現像剤AGの流動性は、図4の実線で示すトナー濃度センサ24の出力プロファイルを確認することである程度想定することができる。
【0063】
次に、本実施形態の画像形成装置Aの特徴的な電気的構成についてブロック図を参照して詳細に説明する。
【0064】
画像形成装置Aに具備される制御部(制御手段)30は、トナー濃度の制御(トナー補給制御)を行うことで形成される画像を安定化させる機能を備えている。
すなわち、制御部30は、トナー濃度が低くなればそれに相当するトナー量を補給する従来のトナー補給制御を行う機能を備えるとともに、トナー濃度センサ24の出力値が予め設定された所定の範囲から外れた値になった時に、現像装置2からトナーを排出し、その排出されたトナー量に相当対応する量のトナーを現像装置2へ補給するようにトナー補給装置26の動作を制御する機能を備えている。
【0065】
制御部30は、図2に示すように、トナー濃度センサ24、現像容器20にトナーを補給するトナー補給装置26、トナー補給時間カウンタ32が接続されている。さらに、制御部30は、画像形成装置Aのうち主に現像装置2以外の画像形成に関わる画像形成部40に対する制御も行うように構成されている。
【0066】
画像形成部40は、上述した露光ユニット1、感光体ドラム3、クリーニングユニット4、帯電器5、中間転写ベルトユニット6、レジストローラ7、転写ローラ8、定着ユニット9、給紙カセット10、ピックアップローラ11、搬送ローラ12等により構成され、制御部30により、入力された原稿の画像情報から最終的に画像を用紙上に印字するように制御される。また、画像形成部40は、画像形成装置Aに設けられた画質調整手段50における画質制御プロセスにより実行される制御結果に基づき印刷画質を安定化させるようになっている。
【0067】
従って、制御部30は、画像形成装置Aの全体を制御する制御部の一部として構成したものであってもよい。
【0068】
具体的に説明すると、制御部30は、図2に示すように、例えばCPU(Central Processing Unit)301と、本発明に係るトナーの補給・排出制御を含む各種制御を実行するための制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)302等のプログラム格納メモリと、CPUの作業領域となってその制御プログラムの読み出し、処理中のデータの一時的な格納などを行うRAM(Random Access Memory)303等の作業メモリとを備えるとともに、さらに、トナー濃度センサ24の出力値が予め設定された所定の範囲(所定の出力値の振幅)から外れた値か否かを判定する所定値比較手段304と、画質制御プロセスで設定された現像バイアスの値が予め設定された所定の範囲から外れた値か否かを判定する現像バイアス比較手段305とを備えている。
【0069】
トナー補給時間カウンタ32は、トナー補給装置26にあるトナー補給ローラ26cの回転時間をカウントするもので、印字ジョブ開始のタイミングを計数の起点とし、画像形成に対応したトナー補給ローラ26cの回転時間を計数し、制御部30にその計数値を出力する。
【0070】
トナー濃度センサ24は、透磁率センサを用いているため、その出力は現像剤AG中のキャリア濃度に比例して変化する。従って、トナー濃度センサ24の出力は、現像剤AG中のトナー濃度の上昇に伴って低下する。
【0071】
以上のように構成された制御部30は、トナー補給時間カウンタ32及びトナー濃度センサ24により検知された値や、画像形成部40における画質を画質調整手段50により実行される画質制御プロセスの制御結果(例えば、現像バイアスの値)に基づき、現像剤AGの流動性をチェックしてトナー補給装置26によるトナー補給を制御する。
【0072】
尚、ここで例示する制御部30が適用可能な画像形成装置は、上述した構成による画像形成装置Aに限定されるものではない。
【0073】
次に、本実施形態に係る制御部30による特徴的なトナー補給制御についてフローチャートに沿って説明する。
図5は本実施形態に係る画像形成装置におけるトナー補給制御の一例を示すフローチャートである。
【0074】
画像形成装置Aの運転が開始されると、制御部30は、図5に示すように、印字ジョブ命令を受け付けると(ステップS1)、画像形成動作に入り現像装置2の2本の搬送スクリュー22a,22bを回転させ(ステップS2)、トナー濃度センサ24による現像剤AGのトナー濃度の測定を開始する(ステップS3)。そして、所定値比較手段304によりトナー濃度センサ24の出力値の振幅が所定幅を超えているか否かの判断を行う(ステップS4)。
【0075】
ステップS4において、トナー濃度センサ24の出力値の振幅が所定幅を超えていないと判断された場合は印刷を開始する(ステップS8)。一方、トナー濃度センサ24の出力値の振幅が所定幅を超えていると判断された場合は「ベタ印刷」を行う(ステップS5)。この「ベタ印刷」を行うことにより、現像装置2内のトナーが強制的に排出される。そして、「ベタ印刷」によって排出されたトナーの量に相当する量の新しいトナーをトナー補給装置26から現像装置2に補給する(ステップS6)。
【0076】
その後、現像装置2の搬送スクリュー22a,22bを回転させてトナーと現像剤との混合攪拌を行い(ステップS7)、その後印刷を開始して(ステップS8)、印刷工程が完了する(ステップS9)。このようにして、現像装置2への新たなトナーの補給が終了する。
【0077】
本実施形態では、「ベタ印刷」を実施することにより現像装置2内のトナーを感光体ドラム3側から強制的に排出するようにしている。
【0078】
次に、画像形成装置Aにおけるその他の制御例についてフローチャートに沿って説明図する。
図6は本実施形態に係る画像形成装置におけるトナー補給制御のその他の例を示すフローチャートである。
【0079】
画像形成装置Aにおけるトナー補給制御のその他の例として、制御部30において、上述した所定値比較手段304によるトナー濃度センサ24の出力値の振幅が所定幅を超えているか否かの判断に加えて、さらに、画像形成部40において実行される画質調整手段50における画質制御プロセスで設定された現像バイアスの値を判断に加えるものである。
【0080】
具体的には、画像形成装置Aの運転が開始されると、制御部30は、図6に示すように、印字ジョブ命令を受け付けると(ステップS101)、画像形成動作に入り現像装置2の2本の搬送スクリュー22a,22bを回転させ(ステップS102)、トナー濃度センサ24による現像剤AGのトナー濃度の測定を開始する(ステップS103)。そして、所定値比較手段304によりトナー濃度センサ24の出力値の振幅が所定幅を超えているか否かの判断を行う(ステップS104)。
【0081】
ステップS104において、トナー濃度センサ24の出力値の振幅が所定幅を超えていないと判断された場合は印刷を開始する(ステップS110)。一方、トナー濃度センサ24の出力値の振幅が所定幅を超えていると判断された場合は「ベタ印刷」を行う(ステップS105)。この「ベタ印刷」を行うことにより、現像装置2内のトナーが強制的に排出される。そして、「ベタ印刷」によって排出されたトナーの量に相当する量の新しいトナーをトナー補給装置26から現像装置2に補給する(ステップS106)。
【0082】
その後、現像装置2の搬送スクリュー22a,22bを回転させてトナーと現像剤との混合攪拌を行い(ステップS107)、そして、画像形成部40における画質調整を行う画質調整手段50によりプロセスコントロールが実施されて現像バイアスの値が設定される(ステップS108)。そして、ステップS108における画質制御プロセスで設定された現像バイアスの値が予め設定された現像バイアスの値の範囲(所定幅)を超えているか否かの判断を行う(ステップS109)。
【0083】
ステップS109において、現像バイアスの値が予め設定された現像バイアスの値の範囲を超えていないと判断された場合は印刷を開始する(ステップS110)。一方、現像バイアスの値が所定幅を超えていると判断された場合は「ベタ印刷」を行う(ステップS105)。そして、「ベタ印刷」によって排出されたトナーの量に相当する量の新しいトナーをトナー補給装置26から現像装置2に補給する(ステップS106)。
【0084】
そして、画質調整手段50によりプロセスコントロールが実行されて現像バイアスの値が設定される(ステップS108)。そして、ステップS109において、画質制御プロセスで設定された現像バイアスの値が所定幅を超えているか否かの判断が繰り返して行われる。
【0085】
ステップS109において、現像バイアスの値が所定幅を超えていないと判断された場合は印刷を開始し(ステップS110)、印刷工程が完了する(ステップS111)。このようにして、現像装置2への新たなトナーの補給が終了する。
【0086】
次に、上述したように構成された画像形成装置の実機により確認テストを行った結果について説明する。
【0087】
図7は本実施形態の画像形成装置における印刷枚数に応じたトナー濃度センサの出力の振幅(トナー濃度)の推移を示すグラフ、図8は前記画像形成装置における印刷枚数に応じたトナー濃度センサの出力の中心値(トナー濃度)の推移を示すグラフである。
【0088】
確認テストは、画像形成装置として複合機(商品名:MX−2300、シャープ株式会社製)を使用し、トナー補給制御として本実施形態と同様に現像装置のトナー濃度センサの出力に基づくトナー補給制御を行い、印字条件として、現像剤はA4サイズで20,000枚連続実写エージングを行った現像剤を使用し、黒ベタ印字率10%の原稿を用いて、1,000枚までのセンサ出力の振幅および中心値の推移を確認した。
また、各チェックポイント(図中矢印部)では、全面ハーフトーンの印刷を行い画質確認を行った。
【0089】
トナー濃度の測定は、50枚ごとに現像剤を約1グラム取り出し、溶剤によるトナー成分の溶解量を求めて重量比率より算出した。尚、比較用として従来のトナー濃度センサを用いてトナー補給制御を行う画像形成装置により同様な印字条件で確認テストを実施した。
【0090】
以下に、確認テストの結果を示す。
センサ出力の振幅は、図7に示すように、0〜0.15Vを所定幅に設定した時、本発明による制御方法、すなわち、上述した実施形態で説明したようにトナー濃度センサの出力値(振幅)に基づき強制的にトナー排出・補給を行う制御によれば、センサ出力の振幅が一部で0.15Vを僅かに超えた程度で全体的にほぼ0.15V以下で所定幅内に収まっている。一方、従来のトナー補給を行う制御によれば、印刷枚数が多くなるとセンサ出力の振幅が0.15Vを超えはじめ、さらに印刷枚数が多くなるに連れてセンサ出力の振幅が0.15Vを超えてさらに大きくなる傾向にある。
【0091】
また、センサ出力の中心値は、図8に示すように、本発明による制御方法によれば、2.45Vから2.35Vの範囲内でほぼ2.4V付近で安定して推移し、その結果、きれいな画質をキープすることができる。一方、従来のトナー補給を行う制御によれば、印刷枚数が多くなるとセンサ出力の中心値が2.45Vから下がり始め、印刷枚数が多くなるに連れてさらに下がる傾向にあり、800枚から1,000枚では2.3V以下になり、トナー濃度の変動が大きいままで、印刷画質に不均一なムラが見られた。
【0092】
以上により、本実施形態の画像形成装置Aによれば、制御部30に、トナー濃度センサ24の出力値が予め設定された所定の範囲から外れた値か否かを判定する所定値比較手段304を備え、トナー濃度センサ24の出力値が予め設定された所定の範囲から外れた値になった時に、現像装置2からトナーを排出し、その排出されたトナーの量に相当する量のトナーを現像装置2へ補給するようにしたことで、劣化したトナーや固着、融着が生じたトナーを排除し、トナーを正常な状態にして現像剤の流動性を確保することができる。これにより、現像装置2内のトナー濃度を最適な状態にして安定した印刷画質を維持することができる。
【0093】
また、本実施形態によれば、画像形成装置Aにおいて、画質を一定レベル以上に確保するため、画質調整手段50により定期的に画質調整制御(プロセスコントロール、プロコンとも呼ばれる。)を行うようにされている場合に、画質調整制御時に設定される現像バイアスの値は、画像形成装置Aの最適なプロセス設定条件であるため、制御部30に、現像バイアス比較手段305を備えて、画質制御プロセスで設定された現像バイアスの値が予め設定された所定の範囲から外れた値か否かを判定することで、直前の使用状況を踏まえた補正を行うことができる。
【0094】
尚、本発明は、トナー濃度センサ24の出力値を現像剤の流動性の判断に用いるものであるが、印刷工程における前回の印刷までの印刷要因、例えば、過度の低印字率原稿の連続印字などにより、トナー濃度以外にプロコン設定値が大きく変動している場合がある。特に、プロコン設定値のうちで現像バイアスは一定の表面電位を確保した状態で決定されるため、画像濃度に大きな影響を与える。従って、画像形成装置Aのトナー補給の制御において、上述したように画質調整制御で行われる各制御値を利用することで、より精度よく現像剤の流動性を一定レベル以上に維持することができる。
【0095】
具体的には、現像バイアスの値が前回プロコン時の値から大きく変化しているようであれば、現像バイアスの変化幅に応じて「ベタ印刷」の回数を変化させてトナーの排出量を制御するようにしてもよい。
【0096】
例えば、図9に示すように、現像バイアスの変化幅が±30Vの時は「ベタ印刷」の回数を3回とし、以下、±80Vの時は5回、±100V以上の時は10回、というように、ベタ印刷回数を増加させることで現像装置2内のトナーの排出量を増加して、新しいトナーの補給量を多くすることで現像剤の流動性低下をより一層抑えることができる。
【0097】
また、本実施形態の変形例として、現像剤AGの劣化度合いに応じて、設定するトナー濃度センサ24の出力値および所定幅を変更するようにしてもよい。その理由は、現像剤AGの劣化が進むにつれて、トナーや紙粉などが現像剤(キャリア)との表面に固着したりめり込んだりするため、キャリアの抵抗が高くなる。その結果、トナー濃度センサの出力値としては絶対値が小さくなり、振幅も小さくなるからである。
【0098】
例えば、図10に示すように、A4サイズ20,000枚相当分の現像装置2の累積回転時間に対して、トナー濃度センサ24の出力値の中心値を2.5V、振幅を0.2Vとし、20,000枚を超えて40,000枚までのトナー濃度センサ24の出力値の中心値を2.45V、振幅を0.18Vとし、40,000枚を超えるトナー濃度センサ24の出力値の中心値を2.43V、振幅を0.15Vと小さくするようにすれば、更に詳細にトナー濃度を一定に維持することができる。
【0099】
また、本実施形態の変形例として、現像剤AGの温度に応じて、トナー濃度センサ24の出力値および所定幅を変更するようにしてもよい。その理由は、トナー濃度センサ自体に温度依存性(高温になるにつれて、センサ出力値が小さくなる傾向)があるからである。その出力値を補正するため、係数による補正を行うようにすればよい。
【0100】
例えば、図11に示すように、現像剤の温度に対応するトナー濃度センサ出力値係数を設け、現像剤の温度を、35℃未満、35〜45℃未満、45℃以上と大きく3段階に設定し、その設定された温度に対応するトナー濃度センサ出力値係数を1.00,1.03,1.05として、高温になるほど大きな係数を補正するようにする。尚、現像剤の温度を検出する温度センサの設置位置を限定するものではないが、一番シェアがかかりやすく高温になりやすい現像ローラ近傍が好ましい。
【0101】
また、本実施形態では、図2に示すように、画像形成装置Aの電気的構成をブロック図で説明しているが、画像形成装置Aに含まれる各ブロックは、ハードウェアロジックによって構成してもよく、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0102】
すなわち、画像形成装置Aは、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(Central Processing Unit)、上記プログラムを格納したROM(Read Only Memory)、前記制御プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)、前記制御プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。
【0103】
また、上述した機能を実現するソフトウェアである画像形成装置Aの制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、画像形成装置Aに供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、本発明の目的を達成することは可能である。
【0104】
前記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0105】
また、画像形成装置Aを通信ネットワークと接続可能に構成し、通信ネットワークを介して画像形成装置Aに前記プログラムコードを供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(Virtual Private Network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。
【0106】
また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。尚、本発明は、前記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0107】
さらに、本発明は、画像形成を行う際に画質調整を行う機能を備える画像形成装置であれば、上述したような構成の画像形成装置や複写機に限定されるものではなく、その他の画像形成装置等に展開が可能である。
【0108】
以上のように、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体の構成を示す説明図である。
【図2】前記画像形成装置におけるトナー補給制御を行う電気的構成の一例を示すブロック図である。
【図3】前記画像形成装置を構成する現像装置の構成を示す説明図である。
【図4】本実施形態に係るトナー濃度センサの出力プロファイルの一例を示す説明図である。
【図5】前記画像形成装置におけるトナー補給制御の一例を示すフローチャートである。
【図6】前記画像形成装置におけるトナー補給制御のその他の例を示すフローチャートである。
【図7】前記画像形成装置における印刷枚数に応じたトナー濃度センサの出力の振幅(トナー濃度)の推移を示すグラフである。
【図8】前記画像形成装置における印刷枚数に応じたトナー濃度センサの出力の中心値(トナー濃度)の推移を示すグラフである。
【図9】前記画像形成装置における現像バイアスとベタ印刷回数との関係を示すテーブルである。
【図10】前記画像形成装置における現像装置の累積回転時間とトナー濃度センサの設定値との関係を示すテーブルである。
【図11】前記画像形成装置における現像剤の温度とトナー濃度センサの出力値への補正係数との関係を示すテーブルである。
【符号の説明】
【0110】
A 画像形成装置
2 現像装置
3 感光体ドラム(像担持体)
21 現像ローラ
22a,22b 搬送スクリュー
24 トナー濃度センサ
26 トナー補給装置
26b トナー攪拌部材
26c トナー補給ローラ
30 制御部
32 トナー補給時間カウンタ
40 画像形成部
50 画質調整手段
301 CPU
302 ROM
303 RAM
304 所定値比較手段
305 現像バイアス比較手段
AG 現像剤
T トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に形成された静電潜像を現像するためのトナー及びキャリアを含む2成分現像剤を収容する現像装置と、前記現像装置へトナーを補給するトナー補給装置と、前記現像装置内の2成分現像剤中のトナー濃度を検知するトナー濃度センサと、前記トナー濃度センサの出力に基づき前記トナー補給装置から前記現像装置へのトナー補給動作を制御する機能を備えた制御手段とを備えて、トナー濃度を制御して画像出力を行う画像形成装置において、
前記制御手段は、前記トナー濃度センサの出力値が予め設定された所定の範囲から外れた値になった時に、前記現像装置からトナーを排出し、その排出されたトナーの量に相当する量のトナーを前記現像装置へ補給するように前記トナー補給装置の動作を制御する機能を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記現像装置の使用時間に応じて、前記トナー濃度センサの出力値の予め設定された所定の範囲を変更する機能を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記現像装置内の現像剤の温度に応じて、前記トナー濃度センサの出力値の予め設定された所定の範囲を変更する機能を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成装置は、印刷画質を安定化させるために行う画質制御プロセスを備え、
前記制御手段は、前記画質制御プロセスの制御結果に基づき前記トナー補給装置の動作を制御する機能を備えることを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記画質制御プロセスの制御結果得られる現像バイアスの値に基づき前記トナー補給装置の動作を制御することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記現像バイアスの値に基づき前記現像装置からのトナーの排出量を調整するように制御することを特徴とする請求項4または5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
像担持体に形成された静電潜像を現像するためのトナー及びキャリアを含む2成分現像剤を収容する現像装置と、前記現像装置へトナーを補給するトナー補給装置と、前記現像装置内の2成分現像剤中のトナー濃度を検知するトナー濃度センサと、前記トナー濃度センサの出力に基づき前記トナー補給装置から前記現像装置へのトナー補給動作を制御する機能を備えた制御手段とを備えて、トナー濃度を制御して画像出力を行う画像形成装置の制御方法において、
前記トナー濃度センサの出力値が予め設定された所定の範囲から外れた値になった時に、前記現像装置からトナーを排出し、その排出されたトナーの量に相当する量のトナーを前記現像装置へ補給する工程を有することを特徴とする画像形成装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−282229(P2009−282229A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133259(P2008−133259)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】