説明

画像形成装置

【課題】中間転写ベルトを感光体ドラムの回転によって駆動する画像形成装置において、ベルト状部材の滑りによる画像障害の発生を防止し、高品質な画像を安定して形成することができる画像形成装置を簡易な構成で安価に提供する。
【解決手段】ドラム状の像担持体11と、この像担持体と面接触している領域Wにて該像担持体11上に形成された各色画像が転写されるベルト状部材15とを備え、ベルト状部材15は、像担持体11の回転により駆動されると共に所定の非画像形成領域T0を有し、ベルト状部材15の非画像形成領域T0が、面接触している領域Wに配される滑り防止位置にベルト状部材15を移動停止させる滑り防止モードが設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に関し、特に、ベルト状の転写部材をドラム状の像担持体により駆動する画像形成装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平11−212426号公報
【0003】
従来、画像形成装置においては、その構成部品としてベルト状部材を用いたものが知られている。この種の画像形成装置では、例えば、回転駆動されるドラム状の像担持体である感光体ドラムと、この感光体ドラムの回りに配置された帯電手段、書き込み手段、現像手段、一次転写手段、クリーニング手段等を有し、感光体ドラムに接触した状態で対向配置され該感光体ドラムと同じ周速度で回転されるベルト状部材である中間転写ベルトを備えたものがある。このような画像形成装置においては、中間転写ベルトは、所定の方向に回転駆動され、中間転写ベルトに設けられた、例えば、光反射部材からなる位置合せ用マーカの通過領域に、該位置合せ用マーカを光学的に検出する位置検出センサを備えている。
【0004】
上記画像形成装置によって画像形成する場合には、感光体ドラム及び中間転写ベルトの回転中に、位置検出センサによる位置合せ用マーカの検出から一定のタイミングで画像形成動作を開始すると共に、画像形成動作が終了すると、中間転写ベルトを回転駆動する駆動用モータが停止して中間転写ベルトも停止する。このとき、次画像の形成指示を受け付けてから、その出力を完了するまでの、いわゆるファーストプリントアウトタイム(以下、FPOTとも称する)を一定にするために、位置合せ用マーカを位置検出センサが検出してから、予め設定された所定時間経過後に上記駆動用モータを停止し、中間転写ベルトを常に同じ位置で停止させるようになっている。
【0005】
ところが、上記中間転写ベルトは複数の保持ロールに張架されているので、上述したように中間転写ベルトが常に同じ位置で停止すると、保持ロールに掛け回されている部分に経時で保持ロールの巻き癖が生じ、白帯等の画像不良が発生する虞が生じる。
【0006】
このような問題に対処するために、中間転写ベルトの巻き癖を矯正する画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
ここで、特許文献1には、像担持体上に形成したトナー像を転写して一次的にトナー像を保持する中間転写ベルトと、中間転写ベルト上の予め定められた位置に設けられた位置合せ用マーカと、該位置合せ用マーカの通過に伴って検出信号を発生する位置検出センサとを備え、画像形成のジョブ開始前又は画像形成のジョブ終了後の位置合せ用マーカと位置検出センサとの間の停止距離を種々異なるようにした画像形成装置が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の特許文献に開示された先行技術は、ベルト状部材である中間転写ベルトの停止位置を種々異ならせるため、ファーストプリントアウトタイム(FPOT)が変化してユーザーの利便性を損なうといった問題が生じていた。
【0009】
また、近年の低コスト化、小型化といった要請に基づき、電子写真方式の画像形成装置では、中間転写ベルトを感光体ドラムの回転により駆動するものが知られているが、このような構成の画像形成装置においては、中間転写ベルトを複数のロール部で張架すると共に、その外周の一部を感光体ドラムの周面を覆うように面接触させ、この面接触部分の接触摩擦力により感光体ドラムの回転力を中間転写ベルトの駆動力として用いている。そして、かかる画像形成装置では、ドラム状の感光体の表面の一部を覆うように中間転写ベルトが面接触しているので、中間転写ベルトに凹状の巻き癖が形成されてしまい、この凹状の巻き癖部分は、当該部分が循環移動して感光体ドラムの表面(周面)と再び接触する際に、その表面から離隔するように作用するため、先行技術のように中間転写ベルトの停止位置を種々異ならせるのみでは、中間転写ベルトと感光体ドラムの表面との間で滑りが生じ易く色ずれ等の画像障害が顕著な問題となっていた。
【0010】
そこで、本発明は、上述のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、中間転写ベルトを感光体ドラムの回転によって駆動する画像形成装置において、ベルト状部材の滑りによる画像障害の発生を防止し、高品質な画像を安定して形成することができる画像形成装置を簡易な構成で安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、その表面に各色の画像が形成され回転自在に配設されたドラム状の像担持体と、その内側が複数のロール部に張架され回転自在に形成されていると共に、その外側が前記像担持体の周面の一部と面接触し、この像担持体と面接触している領域にて該像担持体上に形成された各色画像が転写されるベルト状部材とを備え、前記ベルト状部材は、前記像担持体の回転により駆動されると共に所定の非画像形成領域を有し、前記ベルト状部材の前記非画像形成領域が、前記面接触している領域に配される滑り防止位置に前記ベルト状部材を移動停止させる滑り防止モードが設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
ここで、非画像形成領域とは、記録媒体へ転写される画像の形成が予定されていないベルト状部材上の領域をいうものとする。
【0013】
一般に、感光体ドラム等の像担持体と面接触して、その接触摩擦力により回転駆動されるベルト状部材においては、長時間停止状態が継続すると、像担持体の周面に倣った凹状の巻き癖がついてしまう。
【0014】
そして、このような凹状の巻き癖部分に画像を形成すると、介在するトナーが潤滑粉として作用し、像担持体との間に滑りを生じさせ、像担持体の回転駆動力が安定してベルト状部材に伝達されずに画像障害が発生する虞が生じる。特に、カラー画像を形成する場合には、各色のトナーが当該巻き癖部分に積層されるため、ベルト状部材がより滑り易くなり、色ずれ等の画像障害が顕著な問題となってしまう。
【0015】
そこで、このように構成した場合には、像担持体と、ベルト状部材とを備え、ベルト状部材は、像担持体の回転により駆動されると共に少なくともカラー画像形成時には画像形成予定のない非画像形成領域を有し、ベルト状部材の非画像形成領域が、像担持体と面接触している領域に配される滑り防止位置にベルト状部材を移動停止させる滑り防止モードが設けられているので、所定の場合に滑り防止モードを実行することにより巻き癖部分への画像形成を未然に防止し、これにより、ベルト状部材の滑りによる画像障害の発生を防止して高品質な画像を安定して形成することができる画像形成装置を簡易な構成で安価に実現することができる。
【0016】
また、前記ベルト状部材に配置された位置合せ用マーカと、この位置合せ用マーカの位置を検出する位置検出センサとを有し、前記位置合せ用マーカと前記位置検出センサとが、FPOTを滑り防止位置よりも短くするような所定の距離となる待機位置に前記ベルト状部材を移動停止させる待機停止モードをさらに備え、画像形成待機時には、前記待機停止モードが実行されると共に、画像形成待機時から所定の期間経過した場合には、前記滑り防止モードが実行されてもよい。
【0017】
ここで、画像形成待機時とは、例えば、定着ロールが所定の温度に到達するまでの待機動作時や制御プログラムの初期確認動作時等の、電源投入後の画像形成装置の定格動作を可能とする所定の待機動作時をいうものとし、電源投入直後の画像形成待機時のみならず、滑り防止モードが実行された後、再び、画像形成を行う際の画像形成待機時をも含むものとする。
【0018】
このように構成した場合には、画像形成待機時には、待機停止モードにより、FPOTが短く且つ一定の値となる待機位置にベルト状部材が停止されるので、ユーザーの利便性を損なうことなく画像形成を行うことができると共に、画像形成待機時から所定の時間が経過し、巻き癖の形成が予想される長期間の停止の場合には、滑り停止モードによりベルト状部材が滑り防止位置に移動停止されるので、ベルト状部材のラップ領域における凹状の巻き癖による画像障害の発生を未然に防止することができる。
【0019】
さらに、装置電源オフ時には、前記滑り防止モードが実行されると共に、装置電源オン時には、前記待機停止モードが実行されてもよい。
【0020】
このように構成した場合には、電源投入後の停止状態のみならず、巻き癖の形成が予想される装置電源オフ時には、ベルト状部材が滑り防止位置に移動停止され、仮に、巻き癖が形成されたとしても当該領域は少なくともカラー画像形成時には非画像形成領域となるので、ベルト状部材の滑りによる画像障害の発生を未然に防止すると共に、装置電源オン時及び画像形成待機時には、待機位置に移動停止されるので、ファーストプリントアウトタイム(FPOT)を一定に維持して、ユーザーの利便性の向上を図ることができる。
【0021】
また、前記ベルト状部材は、出荷時には、前記滑り防止位置に設定配置されていてもよい。
【0022】
このように構成した場合には、ベルト状部材が、出荷時には、滑り防止位置に設定配置されているので、出荷後の輸送、設置等のプロセスにおいて、ベルト状部材に巻き癖が形成されても、その後の画像形成の際、ベルト状部材の滑りによる画像障害の発生を未然に確実に防止することができる。
【0023】
また、前記像担持体及びベルト状部材は、一体にユニット化されており、出荷時には、該ユニット内の前記ベルト状部材は、前記滑り防止位置に設定配置されていてもよい。
【0024】
このように構成した場合には、像担持体及びベルト状部材が、一体にユニット化されており、出荷時には、該ユニット内のベルト状部材は、滑り防止位置に設定配置されているので、ユニット交換後の画像形成においても、ベルト状部材の滑りによる画像障害の発生を未然に確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、中間転写ベルトを感光体ドラムの回転によって駆動する画像形成装置において、ベルト状部材の滑りによる画像障害の発生を防止し、高品質な画像を安定して形成することができる画像形成装置を簡易な構成で安価に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面を参照して説明する。
【0027】
まず、本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の概略構成について、図1を参照して説明する。
【0028】
本実施の形態に係る画像形成装置は、例えば、いわゆる回転式(ロータリー)現像装置を用いたデジタルカラープリンタであり、図1に示されるように、画像形成装置本体1に、静電潜像を形成してトナー像を担持させる像担持体である感光体ドラム11、帯電ロール等を用いて感光体ドラム11に電荷を与えて帯電させる帯電器12、図示しない画像処理装置(IPS)からの画像信号に基づいて、帯電された感光体ドラム11を露光部にて、例えばROS(Raster Output Scanner)を用いて露光する露光装置13、露光装置13によって感光体ドラム11上に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置14等を備えている。
【0029】
本実施の形態における現像装置14は、回転式(ロータリー)現像装置であり、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナー像を形成するために、回転軸14oを中心に回転自在に形成されたロータリー内に各色のトナーを含んだ4つの現像ユニット14Y,14M,14C,14Kを備えている。この現像ユニット14Y〜14Kは、二成分現像剤を担持する現像剤担持体である現像ロール14Ya〜14Ka、現像ロール14Ya〜14Kaと感光体ドラム11との距離を一定に保つための位置決め部材であるトラッキングロール、現像ロール14Ya〜14Kaに供給される現像剤を撹拌するサプライオーガ及びアドミックスオーガ等を各々備えている。また、各現像ロール14Ya〜14Kaは、現像装置14の周上に設けられていると共に、内部に配設されたマグネットロールによって、現像剤中に含まれるキャリアを磁力で吸着し、この現像ロール14Ya〜14Kaの表面に現像剤の磁気ブラシを形成して、キャリアに吸着したトナーを感光体ドラム11の現像領域へと搬送するようになっている。
【0030】
そして、このように構成した現像装置14においては、回転軸14oを中心として、ロータリーを90度ずつ回動させることで所望の現像ユニット14Y〜14Kが備える現像ロール14Ya〜14Kaを感光体ドラム11に対向させるようになっている。すなわち、1つのプリント画像を出力する際には、例えば、Y,M,C,Kの現像ユニット14Y〜14Kを、この順に感光体ドラム11に対峙させ、フルカラーのプリント画像を形成するようになっている。また、各々の現像ユニット14Y〜14Kは、中心軸14o近傍に配置された不図示のコイルスプリングによって法線上に押圧され、位置決めのためのトラッキングロールが感光体ドラム11に確実に当接できるように構成されている。さらに、感光体ドラム11は、図の矢印方向(本例では、時計回り方向)に回動する金属製ドラムの表面に有機感光材料、アモルファスセレン系感光材料、アモルファスシリコン系感光材料等からなる感光体層が形成されたものであり、現像装置14は、感光体ドラム11の回動(時計回り方向)とは接線方向の動きが同じになるように、反時計回り方向に回動するようになっている。
【0031】
また、感光体ドラム11上における現像装置14の下流側には、現像ユニット14Y〜14Kによって現像されて感光体ドラム11上に形成されたトナー像を一旦保持する無端ベルト状の中間転写体である中間転写ベルト15、中間転写ベルト15上に重畳されて形成されたトナー像を記録媒体に転写する二次転写部材である二次転写ロール16、記録媒体上に形成されたトナー像を加熱および押圧して定着する定着装置17等が配設されている。さらに、感光体ドラム11の周りには、中間転写ベルト15への一次転写の後に感光体ドラム11上に残ったトナー(残留トナー)を掻き取る感光体クリーニングブレード18、この感光体クリーニングブレード18より掻き取られたトナーを蓄積して回収する廃トナーボックス19が設けられている。なお、現像装置14と中間転写ベルト15との間には、現像ユニット14Y〜14Kによって供給されたトナーの濃度を測定するための反射型センサである不図示の濃度センサが設けられている。
【0032】
本実施の形態において、中間転写ベルト15は、複数のロール間に張架され扁平な略方形の軌道を描くように形成されており、さらに、感光体ドラム11に対して所定範囲だけ巻きつくように、感光体ドラム11の一部表面とラップ状に接触(当接)し、いわゆるラップ転写が可能な構成となっている。具体的には、感光体ドラム11近傍の中間転写ベルト15の内側に、感光体ドラム11に形成されたトナー像を所定の電界により中間転写ベルト15上に転写させる一次転写ロール22、この一次転写ロール22の上流側にて中間転写ベルト15のラップ位置を特定するラップインロール21及び下流側にて中間転写ベルト15のラップ位置を特定するラップアウトロール23が配設されている。そして、このラップインロール21及びラップアウトロール23により、中間転写ベルト15を所定のラップ範囲で感光体ドラム11を覆うように接触させると共に、感光体ドラム11のふらつき等による中間転写ベルト15の挟み込みを防止して中間転写ベルト15に対するダメージを抑制している。
【0033】
また、本実施の形態に係る画像形成装置1においては、中間転写ベルト15自身に駆動源を設けず、中間転写ベルト15の循環移動は、感光体ドラム11の回転により駆動されるようになっている。具体的には、本実施の形態に係る中間転写ベルト15は、感光体ドラム11とのラップ状の接触を利用して感光体ドラム11の回転に従動するようになっており、接触部分の回転方向が同じとなるように反時計方向に回動(進行)するように構成されている。
【0034】
さらに、本実施の形態に係る中間転写ベルト15は、耐油性および耐候性に優れているクロロプレンや、耐候性に優れているEPDM等の弾性部材により形成することができ、二次転写部にて記録用紙への転写が予定される画像が形成される所定の画像形成領域と、少なくともカラー画像形成時には記録用紙へ転写される画像の形成が予定されていない非画像形成領域とが画成されている。
【0035】
また、中間転写ベルト15の進行方向に沿って、感光体ドラム11の下流側には、中間転写ベルト15の扁平な略方形の軌道の側端(本例では、図中、右側端)近傍に、中間転写ベルト15と接離可能に形成され、所定の電界により記録媒体への二次転写を行う二次転写ロール16及び、この二次転写ロール16と中間転写ベルト15を介して対向配置されたバックアップロール24が配設されている。
【0036】
さらに、二次転写ロール16とバックアップロール24とで形成される二次転写部の下流側には、二次転写後に中間転写ベルト15上の残留トナーを取り除く中間転写体清掃手段としての中間転写体クリーニングユニット30が設けられている。この中間転写体クリーニングユニット30は、二次転写の後に残ったトナーを掻き取るスクレーパ25、スクレーパ25によるクリーニングにて残ったトナーをさらに掻き取るためのブラシロール26、スクレーパ25及びブラシロール26により掻き取られたトナーを回収する第2トナー回収ボトル29を備えている。そして、中間転写ベルト15の内側には、このスクレーパ25によるクリーニング作業を助けるクリーニングバックアップロール27、ブラシロール26によるクリーニング作業を助けるクリーニングバックアップロール28が配設されている。
【0037】
記録媒体搬送系としては、記録用紙やOHPシートなどの各種記録媒体を収容する給紙カセット31、この給紙カセット31から記録用紙を繰り出して給紙するフィードロール32、給紙される記録用紙を1枚ずつ捌くリタードロール33、給紙カセット31からフィードロール32等を介して搬送された記録用紙に対して転写のためのタイミングをとる(位置合わせをする)レジロール34等が配設されている。
【0038】
また、定着装置17は、例えば、ヒートロール方式であり、記録用紙上に形成されたトナー像を熱するヒートロール35、ヒートロール35に対向して設けられ加熱に際して記録用紙を押圧するプレッシャロール36、定着された後に記録用紙を機外に排出する一対の排出ロール37、排出ロール37により排出された記録用紙を収容する排出トレイ38等を備えている。
【0039】
このように構成した本実施の形態に係る画像形成装置においては、縦方向の記録用紙搬送パスで二次転写を可能としており、また、記録用紙搬送のパスを非常に短くすることによって、部品点数を少なくすることによるコストダウンを可能とし、併せて記録用紙搬送に対する信頼性の向上を実現している。
【0040】
また、本実施の形態が適用される画像形成装置は、構成部材の動作を制御する制御部40、中間転写ベルト15に隣接して設けられ中間転写ベルト15上に形成された位置合せ用マーカPを検出する、例えば反射型フォトセンサである位置検出センサSを備えており、この位置検出センサSにより中間転写ベルト15の長手方向に形成された位置合せ用マーカPを読み取ることで、中間転写ベルト15の回転方向における位置を検出することが可能となっている。すなわち、位置検出センサSによって位置合せ用マーカPが検出されたところから所定のタイミングで露光することで、Y,M,C,Kの各色の位置合わせが可能となるように構成されている。なお、この位置検出センサSの出力に基づいて、中間転写ベルト15上に形成されたトナーの濃度検出を行い、この検出結果から制御部40による濃度制御を行ってもよい。
【0041】
次に、図1に示す画像形成装置を用いた画像形成プロセスの概要について説明する。本画像形成装置では、例えば、外部接続されたPC(パーソナルコンピュータ)や画像読取装置等からの出力要求を受け画像形成プロセスが開始される。フルカラーのプリント画像を出力する場合には、現像装置14は、まず、イエロー(Y)の現像ユニット14Yを感光体ドラム11に対峙させるように回動する。最初に、イエローのトナー像を形成する際、時計方向に回動する感光体ドラム11は、帯電器12による電荷形成プロセスである帯電部にて帯電された後、露光装置13からの例えばレーザ光によって、露光部にてイエローに対応する画像情報に基づく露光が行なわれ、静電潜像が形成される。その後、現像ロール14Yaによって現像が実行された後、ラップ状の接触範囲(以下、ラップ領域とも称する)に配置された一次転写ロール22にて中間転写ベルト15上の所定の画像形成領域にイエローのトナー像が転写される。このとき、二次転写ロール16、スクレーパ25およびブラシロール26は中間転写ベルト15から離間しており、これらによって中間転写ベルト15上のトナー像が掻き取られないようになっている。
【0042】
一次転写を終えた感光体ドラム11の表面は、感光体クリーニングブレード18によって残トナーが掻き取られ、次のトナー像形成のために帯電器12による帯電部へ移動する。また、所定の現像タイミングに基づき、現像装置14が回動してマゼンタの現像ユニット14Mが感光体ドラム11に対峙する。露光装置13によってマゼンタの画像情報に基づく露光が行なわれた潜像から、順に、マゼンタのトナー像が形成されて中間転写ベルト15上に重畳される。同様にして、シアン、ブラックのトナー像が、順次、中間転写ベルト15上の所定の画像形成領域に重畳されて一次転写が終了する。
【0043】
一方、給紙カセット31からは、所定のタイミングでフィードロール32が駆動され、順次、記録用紙が取り出されると共に、リタードロール33により1枚ずつに捌かれ、レジロール34へ到達する。レジロール34は、二次転写部における二次転写のタイミングに合わせて回転し、所定のタイミングで記録用紙を二次転写部へ送り出すようになっている。
【0044】
一次転写により各色のトナーが中間転写ベルト15上に重畳して形成されたカラー画像は、二次転写部にて記録用紙に二次転写され、その後、定着装置17にて定着処理が施されると共に、中間転写ベルト15上の残トナーは、クリーニングユニット30により除去されることとなる。以上のようにして、一枚のカラープリント画像を出力する際の画像形成プロセスが終了する。
【0045】
ところで、このように構成した画像形成装置1において、長時間停止状態が継続した場合には、中間転写ベルト15と感光体ドラム11との接触部分(ラップ領域)にて、凹状の巻き癖が形成されてしまう。
【0046】
そして、このように感光体ドラム11の回転によって中間転写ベルト15を駆動する構成の画像形成装置では、凹状の巻き癖部分は、中間転写ベルト15の回転に沿って、再び、感光体ドラム11のラップ領域に循環移動し、このような凹状の巻き癖部分に画像が形成される場合には、トナーが潤滑剤として作用すると共に、当該巻き癖部分が、感光体ドラム11の周面と離隔する方向に作用し、感光体ドラム11の表面との間でスリップが生じ易くなる。特に、当該部分にカラー画像を形成する場合には、各色のトナーが積層されてより滑りが生じ易くなり、感光体ドラム11の駆動力が中間転写ベルト15に安定して伝達されず、画像ずれ等の画像乱れがより顕著な問題となってしまう。なお、位置ずれ補正や濃度補正の際に、非画像形成領域に形成されるパッチ等のマーク像は、一般に画像密度が小さいため滑りが問題となることはない。また、白黒画像形成時に形成される画像は、カラー画像形成時に比べトナー量が少ないため、たとえ巻き癖部に画像が形成されても滑りが問題となることはない。
【0047】
そこで、本実施の形態に係る画像形成装置においては、中間転写ベルト15の非画像形成領域が感光体ドラム11のラップ領域に配される滑り防止位置に中間転写ベルト15を移動停止させる滑り防止モードと、位置合せ用マーカPと位置検出センサSとの距離が略一定となる待機位置に中間転写ベルト15を移動停止させる待機停止モードとを設け、場合に応じて両制御モードを実行することにより、FPOTを一定に維持してユーザーの利便性の向上を図ると共に、凹状の巻き癖による滑りを未然に防止して画像欠陥の発生を防止するようになっている。
【0048】
次に、本実施の形態に係る滑り防止モード及び待機停止モードの具体的内容について、図2及び図3を参照して説明する。ここで、図2は、本発明に係る滑り防止位置を示す図であり、図3は、本発明に係る待機位置を示す図である。
【0049】
まず、本実施の形態において、中間転写ベルト15上には、所定の非画像形成領域における進行方向上流側の端部近傍に位置合せ用マーカPが配設されており、この位置合せ用マーカPを検出する位置検出センサSは、一次転写領域である感光体ドラム11と中間転写ベルト15とのラップ領域Wの上流側近傍に配設されている。
【0050】
そして、滑り防止位置は、図2に示されるように、中間転写ベルト15上の所定の非画像形成領域T0が感光体ドラム11とのラップ領域Wに位置するように中間転写ベルト15を移動停止させた位置であり、待機位置は、図3に示されるように、位置検出センサSと、その上流側に位置する中間転写ベルト15上の位置合せ用マーカPとの距離が所定の値となるように中間転写ベルト15を移動停止させた位置である。
【0051】
具体的な制御モードの実施内容としては、例えば、電源投入後の画像形成待機時においては、待機停止モードを実行し、画像形成装置の定格動作が可能となるまでの所定の待機期間(例えば、定着装置17の立ち上がり期間)中において、中間転写ベルト15を図3に示される待機位置に移動停止させる。
【0052】
これにより、待機状態完了後に画像形成の指示があった場合には、余分な待機時間を付加することなく、常にFPOTを一定に維持して画像形成を行うことができる。
【0053】
一方、中間転写ベルト15が待機位置に停止した状態が継続し、所定の期間(例えば、電源投入後、15分程度)が経過した場合には、引き続き滑り防止モードを実行し、中間転写ベルト15を図2に示される滑り防止位置に移動停止させる。
【0054】
このように巻き癖の形成が予想されるような期間、中間転写ベルト15の停止状態が継続した場合には、滑り防止モードを実行して中間転写ベルト15を滑り防止位置に移動停止させることにより、その後の画像形成において、ラップ領域Wにて形成された凹状の巻き癖部分が非画像形成領域T0となるので、画像形成の際に当該巻き癖部分に少なくともカラー画像形成時に画像トナーが付着することがなく、中間転写ベルト15のトナーの介在による滑りを未然に防止することができ、安定した回転力の伝達により画像障害の発生を効果的に防止することができる。
【0055】
なお、滑り防止位置に移動停止した後に、画像形成の指示があった場合には、再度、待機停止モードを実行し、所定の待機期間(例えば、定着装置17の立ち上がり期間)中において、再び、中間転写ベルト15を滑り防止位置から待機位置へと移動停止させて、その後の画像形成に備える。
【0056】
このように構成した本発明の画像形成装置によれば、画像形成を行う際には、所定の待機期間中に待機停止モードを実行し、中間転写ベルト15を所定の待機位置へ移動停止させることにより、所定の待機期間経過後に不要な待ち時間を追加することがなく、ユーザーの操作性や動作時間等の装置性能に影響を与えずに、常に、FPOTの値を短く一定に維持することが可能となる。また、このように画像形成の際の所定の待機期間中に、位置合せ用マーカPを常に位置検出センサSと所定の距離となるような待機位置に停止させることにより、単一の位置合せ用マーカPにて位置検出を行うことができ、位置合せ用マーカPの配置数削減によるコストダウンに寄与することができる。
【0057】
一方、ラップ領域Wにて凹状の巻き癖の形成が予想されるような長期間、停止状態が継続した場合には、滑り防止モードを実行し、中間転写ベルト15を滑り防止位置に移動停止させることにより、その後の画像形成の際の当該部分におけるトナーの介在による滑りを未然に防止し、中間転写ベルト15の滑りに伴う画像欠陥の発生を簡易な構成で確実に防止することができる。
【0058】
なお、本実施の形態においては、電源投入(装置電源オン)後の制御モード(待機停止モード及び滑り防止モード)について説明してきたが、本発明は、このような電源投入後の制御モードに限定されるものではなく、長期間の停止が予想される装置電源オフ時においても適用可能である。
【0059】
例えば、装置電源オフ時には、長期間の停止の可能性に伴う巻き癖の発生による滑りを防止するという観点から、滑り防止モードを実行して中間転写ベルト15を滑り防止位置に移動させてから、装置電源をシャットダウンするように構成してもよい。
【0060】
また、出荷時に、中間転写ベルト15の非画像形成領域T0が、ラップ領域Wとなるように、中間転写ベルト15を設定配置してもよい。
【0061】
出荷時に、中間転写ベルト15をこのように設定配置した場合には、出荷後の搬送や設置等のプロセスにおいて凹状の巻き癖が形成された場合でも、装置設置後の画像形成の際に、当該巻き癖部分に画像が形成されることがないので、中間転写ベルト15の滑りを未然に防止して、高品質な画像を安定して形成することが可能となる。
【0062】
同様に、保守性の向上等により、感光体ドラム11と中間転写ベルト15とが一体となった交換ユニットにおいても、出荷時に、交換ユニット内の中間転写ベルト15の非画像形成領域T0がラップ領域Wとなるような滑り防止位置に中間転写ベルト15を設定配置しておくことにより、ユニット交換後の画像形成の際、中間転写ベルト15の滑りを防止して、安定した画像形成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施の形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る滑り防止位置を説明するための模式図である。
【図3】本発明に係る待機位置を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0064】
1:画像形成装置、11:感光体ドラム、12:帯電器、13:露光装置、14Y-14K:現像ユニット、15:中間転写ベルト、16:二次転写ロール、17:定着装置、18:感光体クリーニングブレード、21:ラップインロール、22:一次転写ロール、23:ラップアウトロール、24:バックアップロール、30:ベルトクリーニングユニット、31:給紙カセット、40:制御部、P:位置合せ用マーカ、S:位置検出センサ、T0:非画像形成領域、W:ラップ領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その表面に各色の画像が形成され回転自在に配設されたドラム状の像担持体と、
その内側が複数のロール部に張架され回転自在に形成されていると共に、その外側が前記像担持体の周面の一部と面接触し、この像担持体と面接触している領域にて該像担持体上に形成された各色画像が転写されるベルト状部材と
を備え、
前記ベルト状部材は、前記像担持体の回転により駆動されると共に所定の非画像形成領域を有し、前記ベルト状部材の前記非画像形成領域が、前記面接触している領域に配される滑り防止位置に前記ベルト状部材を移動停止させる滑り防止モードが設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ベルト状部材に配置された位置合せ用マーカと、この位置合せ用マーカの位置を検出する位置検出センサとを有し、
前記位置合せ用マーカと前記位置検出センサとが所定の距離となる待機位置に前記ベルト状部材を移動停止させる待機停止モードをさらに備え、
画像形成待機時には、前記待機停止モードが実行されると共に、画像形成待機時から所定の期間経過した場合には、前記滑り防止モードが実行されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
装置電源オフ時には、前記滑り防止モードが実行されると共に、装置電源オン時には、前記待機停止モードが実行されることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ベルト状部材は、出荷時には、前記滑り防止位置に設定配置されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記像担持体及びベルト状部材は、一体にユニット化されており、出荷時には、該ユニット内の前記ベルト状部材は、前記滑り防止位置に設定配置されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−199131(P2007−199131A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14551(P2006−14551)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】