説明

画像形成装置

【課題】レーザ光源の立ち上がりおよび立ち下がりの遅れに起因する画質の劣化を未然に防止することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】スイッチング素子106がオン動作すると、時定数回路105の放電回路を介した放電により、発光部107には、目標電流に対してオーバーシュートした後に時定数Aで目標電流に収束する駆動電流Idが供給される。スイッチング素子106がオフ動作すると、時定数回路105の充電回路を介した充電により、発光部107には、消灯電流(零電流)に対してアンダーシュートした後に時定数Bで消灯電流(零電流)に収束する駆動電流Idが供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ走査光学装置を露光装置として用いる画像形成装置に対しては、生産性の向上または解像度の向上を図るために、露光装置のレーザ光源として、面発光型半導体レーザ素子を使用することが検討されている。この面発光型半導体レーザ素子は、ウエハの表面からレーザ光を出射するものである。
【0003】
面発光型半導体レーザ素子は、ウエハの端面からレーザ光を出射する端面発光型半導体レーザ素子と比して、2次元的に発光点を配置することが可能であり、ビーム数の増加に容易に対応することができるという利点がある。この利点により、面発光型半導体レーザ素子は、露光装置のレーザ光源として有望視されている。反面、面発光型半導体レーザ素子は、端面発光型半導体レーザ素子と比較して、立ち上がりおよび立ち下がりが遅れるという特性を有する。
【0004】
また、レーザ光源の1画素当たりのスイッチング周波数が、プロセススピード、および解像度の二乗に比例するので、生産性の向上または解像度の向上を図るためには、レーザ光源のスイッチング周波数をさらに高周波化することが必要である。例えば、従来の端面発光型半導体レーザ素子のスイッチング周波数が数十MHzである状況下において、面発光型半導体レーザ素子のスイッチング周波数として、数百MHzなどの高い周波数が想定される。
【0005】
ここで、レーザ光源のスイッチング時の立ち上がりおよび立ち下がりの遅れは、画素の潜像形成に影響を与える。例えば、立ち上がり時間が長くなると、潜像の細りが生じ、立ち下がり時間が長くなると、潜像の太りが発生する。この潜像の細りおよび太りがそのまま現像されると、画質が損なわれるなど、画質の劣化を招くことになる。また、この立ち上がり時間および立ち下がり時間は、レーザ光源が発光するレーザ光の光量、レーザ光源の周囲温度などにより、大きく変わる。
【0006】
レーザ光源の立ち上がり時間および立ち下がり時間は、レーザ光源のスイッチング周波数の高周波化に対して、より重要な要素になる。即ち、電子写真方式の画像形成装置において、高解像度化、高速化に対応するために、レーザ光源に対しては、高速な応答特性が求められ、立ち上がり時間および立ち下がり時間の短縮化が必要である。
【0007】
そこで、面発光型半導体レーザ素子の立ち上がり時間および立ち下がり時間を短縮化するための駆動方法として、以下のような駆動方法が提案されている(特許文献1参照)。この駆動方法は、面発光型半導体レーザ素子の立ち上がり時に当該半導体レーザ素子の駆動を電圧駆動により行い、時間により電流駆動に切り替えて立ち上がり時間の補正を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許4123791号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した面発光型半導体レーザ素子に対する駆動方法は、n秒オーダの非常に早い速度での電圧駆動と電流駆動の切り替えを必要とする。よって、特に、画素毎のPWM制御において、上記駆動方法を実現することは、非常に難しい。
【0010】
本発明の目的は、レーザ光源の立ち上がりおよび立ち下がりの遅れに起因する画質の劣化を未然に防止することができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するため、電子写真方式の画像形成装置であって、像坦持体を露光走査するためのレーザ光を発光するレーザ光源と、ビデオ信号に応答して前記レーザ光源を駆動すべく、前記レーザ光源に電流を供給する駆動手段とを備え、前記駆動手段は、前記ビデオ信号に応答する動作の時定数として、前記レーザ光源の出力特性に応じて前記レーザ光源の立ち上がりおよび立ち下がりの遅れ量が小さくなるように決定された第1の時定数および第2の時定数を有し、前記駆動手段は、前記ビデオ信号に応答して前記レーザ光源を点灯させる際には、目標電流に対してオーバーシュートした後に前記第1の時定数で前記目標電流に収束する電流を、前記レーザ光源に供給し、前記ビデオ信号に応答して前記レーザ光源を消灯させる際には、消灯電流に対してアンダーシュートした後に前記第2の時定数で前記消灯電流に収束する電流を、前記レーザ光源に供給することを特徴とする画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、レーザ光源の立ち上がりおよび立ち下がりの遅れに起因する画質の劣化を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の構成を示す縦断面図である。
【図2】図1の露光ユニット26m〜26kの主要部構成を示す模式図である。
【図3】図2のレーザドライバ209の構成を示す回路図である。
【図4】(a)は従来の定電流制御で発光部107を駆動した場合の駆動電流Id’、発光部の光出力のそれぞれの立ち上がり波形を示す図である。(b)は図3の駆動回路209iにより発光部107を駆動した場合の駆動電流Id、発光部の光出力のそれぞれの立ち上がり波形を示す図である。
【図5】目標電流と電圧源101に設定する電圧V1を算出する処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】電圧設定信号S5により電圧源101に設定する電圧V1を変更する際のビデオ信号Vo、駆動電流Id、目標電流信号S4、電圧源101の出力電圧V1、発光部107への印加電圧Vd、応答制御信号S8、光出力のそれぞれの波形を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置に搭載されているレーザドライバの構成を示す回路図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る画像形成装置に搭載されているレーザドライバの構成を示す回路図である。
【図9】図8の補正回路124で生成される補正電流Ic、補正前の駆動電流Ir、補正電流Icにより補正された駆動電流Id、補正前および補正後の光出力のそれぞれの波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の構成を示す縦断面図である。ここでは、少なくともカラーコピー機能を提供する画像形成装置を説明する。
【0016】
画像形成装置は、図1に示すように、カラー画像を読み取り可能なリーダ10およびカラー画像形成可能なプリンタ20を備える。リーダ10は、原稿を1枚ずつ給送する自動原稿給送装置11および自動原稿給送装置11により給送された原稿上の画像をフルカラーで読み取ることが可能なスキャナ12を有する。スキャナ12は、原稿から読み取った画像データ(R,G,Bの各色の画像データ)を、画像処理部(図示せず)に出力する。上記画像処理部は、スキャナ12から出力された画像データに対して所定の画像処理を施し、画像処理された画像データをM(マゼンタ),C(シアン),Y(イエロー),K(ブラック)の各色の画像データに変換してプリンタ20に出力する。
【0017】
プリンタ20は、電子写真方式により、上記画像処理部から出力された各色(M,C,Y,K)の画像データに基づいて、カラー画像または白黒画像を用紙上に形成する。プリンタ20は、詳細には、複数の露光ユニット26m,26c,26y,26kおよび複数の画像形成ユニット21m,21c,21y,21kを有する。
【0018】
各露光ユニット26m〜26kは、対応する色(M,C,Y,K)の画像データに基づいてレーザ光を変調し、このレーザ光により、対応する画像形成ユニット21m〜21kの感光ドラム22(像坦持体)が、露光走査される。
【0019】
各画像形成ユニット21m〜21kは、感光ドラム22、帯電器23、現像器24およびクリーナ25を有する。各画像形成ユニット21m〜21kの構成は同じであるので、ここでは、画像形成ユニット21mの構成要素のみに符号を付し、他の画像形成ユニット21c〜21kの構成要素に対する符号を、省略する。
【0020】
感光ドラム22の表面は、帯電器23により、所定の電位に帯電させられた後に、対応する露光ユニット26m,26c,26y,26のレーザ光により露光走査される。これにより、感光ドラム22の表面には、画像データに対応する色の静電潜像が形成される。感光ドラム22上に形成された静電潜像は、現像器24により、トナー像に現像され、当該トナー像は感光ドラム22に坦持される。クリーナ25は、一次転写後の感光ドラム22の表面に残留するトナーを掻き落とし、回収する。
【0021】
各画像形成ユニット21m〜21kの感光ドラム22にそれぞれ坦持された各色のトナー像は、対応する一次転写器28m〜28kにより、中間転写ベルト29上に重ね合わされて転写される(一次転写)。これにより、中間転写ベルト29上には、フルカラーのトナー像が形成される。
【0022】
中間転写ベルト29に転写されたトナー像は、給紙カセット30または手指しトレイ31からレジストレーションローラ32を経て二次転写位置Tに給紙された用紙に転写される(二次転写)。トナー像が転写された用紙は、定着器33に導かれ、定着器33は、用紙上のトナー像を用紙に定着させる。トナー像が定着された用紙は、排紙トレイ34上に排紙される。
【0023】
次に、各露光ユニット26m〜26kについて図2を参照しながら詳細に説明する。図2は図1の露光ユニット26m〜26kの主要部構成を示す模式図である。ここでは、各露光ユニット26m〜26kの構成は同じあるので、露光ユニット26mの構成を説明する。
【0024】
露光ユニット26mは、図2に示すように、レーザ光源200、コリメータレンズ201、ポリゴンミラー202、f−θレンズ204、ビームデテクトセンサ(以下、BDセンサという)205、濃度センサ206およびレーザドライバ209を有する。
【0025】
レーザ光源200は、複数の発光部を有する面発光型半導体レーザ素子からなる。このレーザ光源200は、例えば、従来の端面発光型半導体レーザ素子のスイッチング周波数が数十MHzである状況下において、数百MHzなどの高いスイッチング周波数で駆動される。
【0026】
レーザ光源200が発光した複数本のレーザ光(各発光部がそれぞれ発光した複数本のレーザ光)は、コリメータレンズ201を介して平行なレーザ光に変換された後に、回転中のポリゴンミラー202に入射する。ここで、ポリゴンミラー202は、スキャナモータ203により、所定の等角速度で、回転駆動される。
【0027】
ポリゴンミラー202に入射したレーザ光は、ポリゴンミラー202により反射されて、f−θレンズ204へ至る。レーザ光は、f−θレンズ204を通過して、感光ドラム22上において主走査方向に等速で結合走査される。このレーザ光の走査(即ちスキャン動作)により、感光ドラム22の表面には、潜像が形成される。
【0028】
BDセンサ205は、レーザ光源200を強制的に点灯する強制点灯期間にポリゴンミラー202により反射されて入力されたレーザ光を検出すると、ビームデテクト信号(以下、BD信号という)S1をコントローラ210に出力する。このBD信号S1は、主走査毎の画像形成書き出しタイミングの基準信号となる信号である。
【0029】
濃度センサ(濃度検出手段)206は、感光ドラム22の表面に形成された濃度検出用パターン画像の濃度を検出し、当該検出結果(検出した濃度)を示す濃度信号S2をコントローラ210に出力する。
【0030】
コントローラ210は、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェース(図示せず)などから構成され、装置全体の制御を行うとともに、後述する処理を含む各種処理を実行する。
【0031】
コントローラ210は、BD信号S1に基づいて、書き出しシーケンスを実行する。この書き出しシーケンスの実行に伴い、ビデオ信号Voがレーザドライバ209に入力される。
【0032】
また、コントローラ210は、濃度センサ206からの濃度信号S2(濃度検出用パターン画像の濃度)に基づいて目標光量を算出する目標光量算出処理と、上記算出された目標光量を得るための目標電流を算出する目標電流算出処理を行う。そして、コントローラ210は、上記算出された目標電流を示す目標電流信号S4をレーザドライバ209に出力する。
【0033】
また、コントローラ210は、温度センサ(温度検出手段)207から出力される温度信号S6に基づいて、レーザドライバ209の各電圧源101(図3)に設定する電圧を算出する電圧算出処理を行う。そして、コントローラ210は、上記算出された電圧を電圧源101に設定するための電圧設定信号S5をレーザドライバ209に出力する。ここで、温度センサ207は、レーザ光源200の周囲温度を検出するように配置されており、温度信号S6は、検出結果(検出したレーザ光源200の周囲温度)を示す信号である。
【0034】
また、コントローラ210は、スキャナモータ203を駆動するための駆動制御信号S7を生成して出力する。
【0035】
レーザドライバ209は、後述するように、上記目標電流信号S4および電圧設定信号S5に基づいて、レーザ光源200の発光部毎に駆動電流Idを生成して供給する。
【0036】
次に、レーザドライバ209の構成について図3を参照しながら説明する。図3は図2のレーザドライバ209の構成を示す回路図である。
【0037】
レーザドライバ209には、図3に示すように、レーザ光源200の発光部107毎に駆動回路209i(i=1〜n)が設けられている。レーザ光源200の各発光部107は、それぞれ対応する主走査方向ラインを同時に露光走査するように、副走査方向に間隔を置いて配列されている。
【0038】
各駆動回路209iは、それぞれ、入力されたビデオ信号Voに応答して発光部107を駆動すべく、発光部107に対応する駆動電流Idを供給する。ここで、各駆動回路209iの構成は同じであるので、図3には、1つの発光部107に対する1つの駆動回路209iが図示されている。
【0039】
駆動回路209iは、電圧源101、電流検出回路102、電流制御回路103、エラーアンプ104、時定数回路105、スイッチング素子106およびインバータ113を有する。
【0040】
電圧源101は、上記電圧設定信号S5により設定された電圧V1を電流制御回路103に出力する可変電圧源である。電圧V1は、電流制御回路103において、目標電流に対してオーバーシュートした電流を生じさせる電圧である。
【0041】
電流検出回路102は、電圧源101からスイッチング素子106を介して発光部107に至る電流路に流れる電流を検出し、当該検出した電流を示す電流検出信号S9を出力する。
【0042】
電流制御回路103は、後述するエラーアンプ104からの応答制御信号S8に基づいて、電圧源101から出力された電圧に応じて生じた電流(目標電流に対してオーバーシュートした電流)を制御する。例えば、電流制御回路103は、電圧源101から出力された電圧に応じて生じた電流を目標電流信号S4が示す目標電流に向けて収束させるように制御する。この応答制御信号S8に基づく電流制御回路103の制御の詳細については、後述する。
【0043】
エラーアンプ104は、電流検出回路102からの電流検出信号S9と目標電流信号S4の差分を検出する。そして、この差分を示す信号が、電流制御回路103を制御するための応答制御信号S8として電流制御回路103に出力される。
【0044】
時定数回路105は、ビデオ信号Voに応答する駆動回路209iの動作の時定数として、時定数A(第1の時定数)および時定数B(第2の時定数)を決定するための回路である。時定数Aおよび時定数Bは、それぞれ、発光部107(レーザ光源200)の出力特性に応じて、ビデオ信号Voに対応する所望の波形(光出力の波形)が得られるように、決定されたものである。即ち、上記時定数Aおよび時定数Bは、発光部107(レーザ光源200)の出力特性に応じて、ビデオ信号Voに対するレーザ光源200の立ち上がりおよび立ち下がりの遅れ量が小さくなるように、決定されたものである。ここで、発光部107(レーザ光源200)の出力特性とは、使用環境に応じた立ち上がり、立ち下がり特性などである。
【0045】
詳細には、時定数回路105は、コンデンサCと、ダイオードD1および抵抗R1からなる充電回路と、抵抗R2およびダイオードD2からなる放電回路を有する。ここで、コンデンサCの容量と抵抗R2の抵抗値は、それぞれ、時定数Aが得られるように設定された値である。また、コンデンサCの容量と抵抗R1の抵抗値は、それぞれ、時定数Bが得られるように設定された値である。
【0046】
上記充電回路は、エラーアンプ104の出力から電荷を引き抜いてコンデンサCに蓄積させる、即ちコンデンサCの充電を行う回路である。この充電回路を介した充電は、発光部107の消灯開始に応答して即ちスイッチング素子106のオフ動作に応答して開始され、時定数Bが規定する時間で完了する。上記放電回路は、コンデンサCに蓄積された電荷をエラーアンプ104の出力に放電させる回路である。この放電回路を介した放電は、発光部107の点灯開始に応答して即ちスイッチング素子106のオン動作に応答して開始され、上記時定数Aが規定する時間で完了する。
【0047】
発光部107(レーザ光源200の各発光部107)を立ち上げる際および立ち下げる際の時定数回路105の作用の詳細については、後述する。
【0048】
スイッチング素子106は、ビデオ信号Voが入力されたインバータ113の出力に基づいて、スイッチング動作(オン、オフ動作)を行う。このスイッチング動作により、発光部107への駆動電流Idの供給および遮断が行われる。インバータ113に入力されるビデオ信号Voは、発光部107に対応する主走査方向ラインのビデオ信号である。
【0049】
次に、発光部107(面発光型半導体レーザ素子)の駆動について図4を参照しながら説明する。図4(a)は従来の定電流制御で発光部107を駆動した場合の駆動電流Id’、発光部107の光出力のそれぞれの立ち上がり波形を示す図である。図4(b)は図3の駆動回路209iにより発光部107を駆動した場合の駆動電流Id、発光部107の光出力のそれぞれの立ち上がり波形を示す図である。
【0050】
発光部107に対しては、駆動電流Idに応答して短時間に、光出力を目標光量まで立ち上げることが要求される。しかし、発光部107は、立ち上がり時(点灯時)において、発光部107の光出力が目標光量に達するまでに遅れが生じるという特性を有する。そして、その遅れ量(遅れ時間)は、発光部107の光量、周囲温度(または発光部107の温度)などにより大きく変動する。
【0051】
従来、例えば図4(a)に示すように、ビデオ信号Voの入力に対して、駆動電流Id’の供給が開始される。この駆動電流Id’の供給開始により、発光部107の光出力(レーザ光の波形)は、ある光量までは即座に立ち上がるが、その後から目標光量に達するまでの期間に関しては、電流制御回路が有する時定数で、徐々に立ち上がる。ここで、駆動電流Id’の立ち上がりに対する光出力の立ち上がりの遅れは、温度(発光部107の温度またはその周囲温度)により影響されるものであり、低温時は遅れ量が大きく(実線)、高温時は遅れ量が小さくなる(点線)。
【0052】
また、発光部107を消灯させる際には、駆動電流Id’の供給が遮断されるが、発光部107の光出力(レーザ光の波形)の立ち下がりに遅れが生じ、発光部107は、即座には消灯しない。
【0053】
このようなレーザ光源における光出力の立ち上がりおよび立ち下がりの遅れは、上述したように、画素の潜像形成に影響を与える。例えば、光出力の立ち上がり時間が長くなると、潜像の細りが生じ、光出力の立ち下がり時間が長くなると、潜像の太りが発生するなど、画質の劣化を招くことになる。
【0054】
そこで、本実施の形態は、図4(b)に示すように、ビデオ信号Voに応答して発光部107を点灯させる際には、目標電流に対してオーバーシュートした後に時定数Aで目標電流に収束する駆動電流Idを発光部107に供給する。ビデオ信号Voに応答して発光部107を消灯させる際には、消灯電流(=零電流)に対してアンダーシュートした後に時定数Bで消灯電流に収束する駆動電流Idが発光部107に供給される。
【0055】
これにより、発光部107の立ち上がりが加速されて立ち上がりの遅れ量が小さくなるように補正され、発光部107の光出力は、目標光量に即座に達する。また、発光部107の立ち下がりが加速されて立ち下がりの遅れ量が小さくなるように補正され、発光部107の光出力が即座に零に達する。よって、矩形波形のビデオ信号Voに対して、略矩形の波形を有する光出力が得られ、立ち上がりおよび立ち下がりの遅れに起因する潜像の細りおよび太りの発生を未然に防止することができる。
【0056】
具体的には、上記駆動回路209iにおいて、L(Low)レベルのビデオ信号Voがインバータ113に入力されると、インバータ113は、H(High)レベルの信号を出力する。このインバータ113からのHレベルの信号により、スイッチング素子106は、オフ動作する。
【0057】
電圧源101は電圧設定信号S5により設定された電圧V1を出力するが、スイッチング素子106はオフ動作しているので、電流検出回路102は、電流を検出しない。これにより、エラーアンプ104から出力される応答制御信号S8は、電流制御回路103に対して、電圧源101の電圧V1に応じて生じた最大の電流(目標電流に対してオーバーシュートした電流)を駆動電流Idとして出力させる信号となる。また、スイッチング素子106のオフ動作状態においては、時定数回路105のコンデンサCは、電荷が蓄積されている状態(充電状態)にある。
【0058】
次にHレベルのビデオ信号Voがインバータ113に入力されると、インバータ113からは、Lレベルの信号が出力され、スイッチング素子106は、オン動作する。これにより、電流制御回路103は、発光部107に対して、電圧源101から出力された電圧V1に応じた最大の電流、即ち目標電流に対してオーバーシュートした電流を、駆動電流Idとして供給する。電流検出回路102は、電圧源101からスイッチング素子106を経て発光部107に供給された駆動電流Idを検出し、電流検出信号S9をエラーアンプ104に出力する。このとき、電流検出回路102が検出した駆動電流Id(電流検出信号S9)は、目標電流(目標電流信号S4)を超えたものとなる。即ち、電流検出回路102が検出した駆動電流Idの立ち上がりは、目標電流を超えた状態になる。
【0059】
ここで、スイッチング素子106がオン動作すると、時定数回路105のコンデンサCに蓄積されている電荷の放電が上記放電回路(ダイオードD2および抵抗R2)を介して開始される。これにより、エラーアンプ104が出力する応答制御信号S8には、コンデンサCから放電された電荷が重畳され、当該応答制御信号S8が示す値(電流検出回路102が検出した電流と目標電流の差分)は、大きくなる。そして、コンデンサCからの放電は、上記時定数Aが規定する時間で完了し、応答制御信号S8が示す値は、次第に小さくなる。
【0060】
即ち、時定数回路105により決定された時定数Aが規定する時間の経過に伴い、電流検出回路102が検出した駆動電流Idと目標電流の差分(エラーアンプ104が出力する応答制御信号S8が示す値)は、次第に小さくなる。その結果、電流制御回路103から出力された駆動電流Idは、目標電流に対してオーバーシュートした電流から次第に目標電流に向けて収束する。
【0061】
このような動作により、発光部107を点灯させる際には、目標電流に対してオーバーシュートした駆動電流Idが発光部107に供給されるので、光出力が目標光量に即座に達するように発光部107を立ち上げる(点灯させる)ことができる。この後、目標電流に対してオーバーシュートした駆動電流Idは、目標電流に向けて収束し、発光部107の光出力は目標光量に収束する。
【0062】
また、電圧設定信号S5が設定する電圧即ち電圧源101が出力する電圧V1は、発光部107(レーザ光源200)の周囲温度(温度センサ207の温度信号S6)および目標光量に基づいて決定された電圧である。よって、この電圧設定信号S5により設定された電圧V1により、発光部107の立ち上げ時においては、発光部107(レーザ光源200)の周囲温度に影響されることなく、遅れ量が小さい安定した波形の光出力を得ることができる。
【0063】
ここで、例えばレーザ光源200の周囲温度(温度センサ207の温度信号S6)が第1の温度(低温時)の場合と、当該第1の温度より高い第2の温度(高温時)の場合を想定する。
【0064】
第1の温度の場合、第2の温度の場合に比して、電圧設定信号S5により、電圧源101が出力する電圧V1は、大きくされる。これにより、第1の温度の場合に電流制御回路103が供給する最大の電流は、第2の温度の場合に比して、大きくなる。即ち、図4(b)に示すように、低温時には、高温時に比して、駆動電流Idの立ち上がり波形が高くなるように、高い電圧V1が設定される。これにより、光出力の立ち上がりにおける、高温時の遅れ量(図4(a)の実線)より大きい低温時の遅れ量(図4(a)の点線)を小さくすることができる。よって、低温時の立ち上がり時において、遅れ量が非常に小さい安定した波形の光出力を得ることができる。
【0065】
これに対し、第2の温度の場合、第1の温度の場合に比して、電圧設定信号S5により電圧源101が出力する電圧V1は、小さく設定される。即ち、図4(b)に示すように、高温時には、低温時の場合の駆動電流Idの立ち上がり波形に比して、駆動電流Idの立ち上がり波形が低くなるように、低い電圧V1が設定される。
【0066】
次にビデオ信号VoがLレベルになると、インバータ113からは、Hレベルの信号が出力され、スイッチング素子106は、オフ動作する。これにより、発光部107に対して、駆動電流Idの供給が遮断される。このスイッチング素子106のオフ動作に応答して、時定数回路105の上記充電回路を介して、空のコンデンサCの充電が開始される。即ち、エラーアンプ104の出力から電荷が引き抜かれてコンデンサCに蓄積される。そして、コンデンサCへの充電は、時定数Bが規定する時間で、完了する。
【0067】
このコンデンサCへの充電により、電流制御回路103は、零電流(消灯電流)に対してアンダーシュートした駆動電流Idを出力した後に、当該駆動電流Idを上記時定数Bが規定する時間で、零電流に収束させる。即ち、スイッチング素子106のオフ動作後、見掛け上、発光部107には、目標電流に対してアンダーシュートした後に上記時定数Bで零電流に収束する駆動電流Idが供給されることになる。これにより、ビデオ信号Voに応答して、上記時定数Bが規定する時間で、発光部107を消灯させることができる。
【0068】
ここで、上述したように、上記時定数Aおよび時定数Bは、発光部107(レーザ光源200)の出力特性に応じて、ビデオ信号Voに対応する所望の波形(光出力の波形)が得られるように、決定されたものである。
【0069】
また、時定数Bに関しては、それが長い時間を規定する時定数に決定された場合、発光部107が消灯するまでの時間が長くなり、上述したような潜像の太りが発生する。これに対し、発光部107の消灯に要する時間を短時間にすること(消灯を速くすること)による弊害は生じないので、時定数Bは、短い時間を規定するように決定される。
【0070】
また、時定数Bは、時定数Aとは関係なく決定することが可能である。即ち、時定数Bは、時定数Aに対し、B<Aの関係式を満足するように、または、B≧Aの関係式を満足するように決定される場合もある。例えば、A>Bの関係式を満足するように時定数Aと時定数Bが決定される場合、抵抗R1,R2の抵抗値は、R1<R2の関係式を満足するように選択される。
【0071】
次に、目標電流と電圧源101に設定する電圧V1を算出する処理について図5を参照しながら説明する。図5は目標電流と電圧源101に設定する電圧V1を算出する処理の手順を示すフローチャートである。図5のフローチャートに示す手順は、例えば電源投入時などの予め決められたタイミングにおいて、コントローラ210により実行されるものである。
【0072】
コントローラ210は、図5に示すように、まず、予め決められている濃度検出用パターン画像(トナー像)を、感光ドラム22上に形成する(ステップS500)。そして、コントローラ210は、濃度センサ206からの濃度信号S2に基づいて、感光ドラム22に形成された濃度検出用パターン画像の濃度を検出する(ステップS501)。
【0073】
次いで、コントローラ210は、検出した濃度に基づいて、目標光量を算出する(ステップS502)。そして、コントローラ210は、上記算出した目標光量を得るための目標電流および目標電圧を算出する(ステップS503)。
【0074】
次いで、コントローラ210は、温度センサ207からの温度信号S6に基づいて、レーザ光源200(発光部107)の周囲温度を検出する(ステップS504)。そして、コントローラ210は、表1に示すテーブルを参照し、上記算出した目標光量(光出力)と上記検出した周囲温度に基づいて、上記目標電圧を補正するための補正係数を算出する(ステップS505)。
【0075】
次いで、コントローラ210は、上記算出した補正係数を用いて上記目標電圧を補正し、当該補正した電圧を、電圧源101に設定する電圧V1として算出し(ステップS506)、本処理を終了する。
【0076】
このようにして目標電流および電圧源101に設定する電圧V1が算出されると、上記目標電流を示す目標電流信号S4が電流制御回路103に、上記電圧V1を設定するための電圧設定信号S5が電圧源101にそれぞれ出力される。
【0077】
【表1】

ここで、表1に示すテーブルは、目標電圧を補正するめの補正係数α(%)を示すものである。目標電圧をVrefとすると、電圧源101に設定する電圧V1は、(1+α/100)Vrefとなる。例えば光出力が0.2(mW)の場合において、補正係数αは、16(%)であるので、電圧源101に設定する電圧V1は、1.16Vrefとなる。
【0078】
発光部107は点灯、消灯を繰り返すことにより、発光部107の周囲温度は、変動する。これに伴い、発光部107の立ち上がりの遅れ量が変化する。よって、本実施の形態は、発光部107の周囲温度の変動による発光部107の立ち上がりの遅れ量の変化に対応するために、電圧設定信号S5により電圧源101に設定する電圧V1を変更する。
【0079】
この電圧設定信号S5により電圧源101に設定する電圧V1を変更する場合について図6を参照しながら説明する。図6は電圧設定信号S5により電圧源101に設定する電圧V1を変更する際のビデオ信号Vo、駆動電流Id、目標電流信号S4、電圧源101の出力電圧V1、発光部107への印加電圧Vd、応答制御信号S8、光出力のそれぞれの波形を示す図である。
【0080】
図6に示すように、スイッチング素子106がオフ動作している初期状態においては、発光部107には駆動電流Idが流れておらず、また、電流検出回路102は、電流を検出していない。このとき、電圧源101は、電圧設定信号S5により設定された電圧V1を出力しており、電流制御回路103は、エラーアンプ104からの応答制御信号S8により、最大の電流を供給する動作状態にある。また、時定数回路105のコンデンサCは、満充電された状態にある。
【0081】
ここで、タイミングT1において、インバータ113にHレベルのビデオ信号Voが入力されると、スイッチング素子106は、オン動作する。このスイッチング素子106のオン動作に応答して、電流制御回路103からは、電圧源101が出力する電圧V1に応じた最大の電流(目標電流を超えた電流)が駆動電流Idとして、発光部107に供給される。また、同時に、時定数回路105のコンデンサCに蓄積された電荷の放電が開始される。この放電は、時定数Aが規定する時間で、完了する。上記放電開始後、応答制御信号S8が示す差分(電流検出信号S9と目標電流信号S4の差分)は次第に小さくなるように変化する。この応答制御信号S8により、電流制御回路103は、時定数Aが規定する時間で、目標電流に対してオーバーシュートした駆動電流Idを、目標電流に収束させる。これに合わせて、発光部107に印加される電圧Vdが、次第に低下する。
【0082】
タイミングT2において、ビデオ信号VoがLレベルになると、スイッチング素子106は、オフ動作する。このスイッチング素子106のオフ動作により、電流制御回路103から上記電流路を介して発光部107に供給される駆動電流Idが遮断される。また、同時に、上記電流路から電荷が引き抜かれて上記充電回路を介して時定数回路105のコンデンサCの充電が開始され、この充電は、時定数Bが規定する時間で完了する。この充電により、見掛け上、発光部107には、消灯電流(零電流)に対してアンダーシュートした後に時定数Bが規定する時間で、消灯電流(零電流)に収束する駆動電流Idが供給されることになる。よって、発光部107の光出力は、遅れ量が非常に小さい状態で、立ち下がることになる。
【0083】
なお、図6において、各波形を簡素化して図示するために、駆動電流Idのアンダーシュート部分およびこれに応じて補正される光出力の立ち下がりの波形は、単純化(省略)している。実際には、駆動電流Id、光出力などに関しては、図4(b)に示すような立ち下がりの波形が得られることになる。
【0084】
タイミングT3〜T4の間の期間において、インバータ113にタイミングT1〜T2の間の期間のビデオ信号Voよりデューティが低いビデオ信号Voが入力されると、当該ビデオ信号Voに基づいてスイッチング素子106は、オン、オフ動作する。タイミングT2〜T3の間の期間は、時定数回路105が十分に飽和する期間であり、タイミングT1と同様に、電圧源101からは電圧V1が出力される。そして、スイッチング素子106のオン、オフ動作に合わせて、時定数回路105のコンデンサCからの放電および充電が行われる。
【0085】
また、発光部107(レーザ光源200)の温度またはその周囲温度は、発光部107の点灯、消灯の繰り返しに応じて、上昇、低下を繰り返すように変化する。これにより、発光部107の立ち上がりの遅れ量は、変動する。
【0086】
ここでは、発光部107の点灯時間が消灯時間より短いので、発光部107の温度またはその周囲温度の変化は小さく、発光部107の立ち上がりの遅れ量の変動は小さい。よって、電圧設定信号S5により電圧源101に設定する電圧V1を変更する必要はなく、電圧設定信号S5により設定された電圧V1は、そのまま保持される。
【0087】
タイミングT4において、ビデオ信号VoがLレベルになると、スイッチング素子106はオフ動作する。このスイッチング素子106のオフ動作に応答して、上記電流路から電荷が引き抜かれて上記コンデンサCに蓄積される。これにより、発光部107には、見掛け上、アンダーシュートが生じた電流が駆動電流Idとして供給されることになる。
【0088】
タイミングT5〜T6の間の期間において、ビデオ信号Voとして、デューティが高いビデオ信号Voが入力されると、当該ビデオ信号Voに基づいてスイッチング素子106は、オン、オフ動作する。タイミングT4〜T5の間の期間は、時定数回路105のコンデンサCが十分に飽和する期間であり、タイミングT1と同様に、電圧源101からは電圧V1が出力される。
【0089】
ここで、タイミングT5〜T6の間の期間においては、発光部107の点灯時間が消灯時間より長いので、応答制御信号S8は、スイッチング素子106のオン、オフ動作に合わせて、僅かな増減を繰り返しながら次第に減少する。これにより、駆動電流Idの立ち上がり波形は、次の立ち上がりの波形に対して、低くなり、発光部107の立ち上がりの遅れ量を小さくすることができない。また、発光部107の温度またはその周囲温度は上昇し、発光部107の立ち上がりの遅れ量は、小さくなる方向に変動する。
【0090】
よって、駆動電流Idの立ち上がり波形が低くなっても、高温時における発光部107の立ち上がりの遅れ量は小さいので、実質的に、小さくなるように、補正されたことになる。即ち、電圧設定信号S5により電圧源101に設定する電圧V1を変更することなく、発光部107の出力波形を、遅れ量が小さい安定した波形とすることができる。
【0091】
タイミングT7において、例えば温度センサ207により検出された発光部107の周囲温度(温度信号S6)の低下により、発光部107の立ち上がりの遅れ量が大きくなったとする。これは、コントローラ210により、温度信号S6に基づいて判断される。この場合、コントローラ210は、電圧源101に設定する電圧V1を高くし、この電圧V1を設定するための電圧設定信号S5を電圧源101に出力する。これにより、電圧源101は、タイミングT7以前の電圧V1より高い電圧V1を出力する。
【0092】
タイミングT8〜T9の間の期間において、Hレベルのビデオ信号Voが入力されると、電流制御回路103から発光部107に、駆動電流Idが供給される。この駆動電流Idの立ち上がりは、タイミングT1時の駆動電流Idの立ち上がりより高くなる。これにより、発光部107の周囲温度の低下により大きくなった発光部107の立ち上がりの遅れ量が小さくなり、発光部107の立ち上がり時において目標光量に即座に到達するような光出力を得ることができる。
【0093】
ここで、電圧源101に設定する電圧V1を変更する場合、表1に示すテーブルが参照され、現在の光出力と周囲温度に基づいて補正係数が決定される。そして、現在設定されている電圧V1に対して補正係数分の電圧が加算されたものが、電圧源101に設定する電圧V1として決定される。
【0094】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について図7を参照しながら説明する。図7は本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置に搭載されているレーザドライバの構成を示す回路図である。ここで、上記第1の実施の形態と同じ要素または部材には同じ符号し、同じ要素または部材の説明は省略または簡略化する。
【0095】
本実施の形態は、図7に示すように、レーザ光源200の発光部107毎に設けられている駆動回路209i(i=1〜n)が光量制御回路114(目標電流決定手段)を有する点で、上記第1の実施の形態と異なる。
【0096】
光量制御回路114は、発光部107が発光したレーザ光の光量を検出し、当該検出した光量を示す光量検出信号を出力するフォトダイオード(光量検出手段;以下、FDという)108を有する。FD108から出力された光量検出信号は、アンプ109で増幅された後、エラーアンプ111に入力される。また、エラーアンプ111には、コントローラ210から出力された目標光量信号S10が入力される。ここで、目標光量信号S10は、目標光量を示す信号である。エラーアンプ111は、FD108からアンプ109を介して入力された光量検出信号(検出した光量)と目標光量信号S10(目標光量)との差分を示す差分信号を、出力する。
【0097】
エラーアンプ111から出力された差分信号は、サンプルホールド回路112に入力される。サンプル/ホールド回路112は、コントローラ210からのサンプル/ホールド信号S11に基づいて、エラーアンプ111から出力された差分信号を抽出し、保持される。サンプルホールド回路112に保持されている差分信号は、エラーアンプ104に入力される。
【0098】
APC(自動光量制御)時には、コントローラ210から、サンプル/ホールド信号S11および目標光量信号S10が出力され、発光部107が発光するレーザ光の光量が目標光量に一致させるための光量制御が行われる。即ち、発光部107が発光するレーザ光の光量と目標光量が一致するように、駆動電流Idが制御される。
【0099】
画像形成時には、コントローラ210から、サンプル/ホールド信号S11がサンプル/ホールド回路112に出力される。そして、サンプル/ホールド回路112に保持されている、APCにより得られた目標電流(発光部107が発光するレーザ光の光量と目標光量が一致した際の駆動電流Id)が、目標電流信号S4として、エラーアンプ104に出力される。
【0100】
これにより、第1の実施の形態と同様に、発光部107を点灯させる(立ち上げる)際には、目標電流に対してオーバーシュートした後に時定数Aで収束する駆動電流Idが、発光部107に供給される。また、発光部107を消灯させる(立ち下げる)際には、消灯電流に対してアンダーシュートした後に時定数Bで消灯電流(零電流)に収束する駆動電流Idが、発光部107に供給される。
【0101】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について図8および図9を参照しながら説明する。図8は本発明の第3の実施の形態に係る画像形成装置に搭載されているレーザドライバの構成を示す回路図である。図9は図8の補正回路124で生成される補正電流Ic、補正前の駆動電流Ir、補正電流Icにより補正された駆動電流Id、補正前および補正後の光出力のそれぞれの波形を示す図である。ここで、上記第1の実施の形態と同じ要素または部材には同じ符号し、同じ要素または部材の説明は省略または簡略化する。
【0102】
本実施の形態の駆動回路209i(i=1〜n)は、図8に示すように、定電流回路120、電圧源123、補正回路124、2つのスイッチング素子106,122および2つのインバータ113,121を有する。
【0103】
ここで、定電流回路120、電圧源123、スイッチング素子106よびインバータ113は、互いに共働して、ビデオ信号Voに応答して目標電流および消灯電流(零電流)の一方を出力する電流出力手段を構成する。補正回路124、スイッチング素子122およびインバータ121は、ビデオ信号Voに応答して、定電流回路120からスッチング素子106を介して出力された電流を補正する補正手段を構成する。
【0104】
定電流回路120は、定電圧源Vccと接続され、目標電流信号S4が示す目標電流に一致する駆動電流Irを出力する。電圧源123は、電圧設定信号S5により設定された電圧V1を出力する。
【0105】
スイッチング素子106は、インバータ113を介したビデオ信号Voの入力に基づいて、定電流回路120からの駆動電流Irを発光部107に供給し、またその供給を遮断するように、オン、オフ動作する。また、スイッチング素子122は、インバータ121を介したビデオ信号Voの入力に基づいて、電圧源123が出力する電圧V1を補正回路124に印加し、また遮断するように、オン、オフ動作する。各スイッチング素子106,122のオン、オフ動作は、ビデオ信号Voに同期して行われる。
【0106】
補正回路124は、コンデンサC2と、ダイオードD3および抵抗R3からなる充電回路と、抵抗R4およびダイオードD4からなる放電回路を有する。補正回路124は、スイッチング素子122のオン、オフ動作に応じて、定電流回路120からの駆動電流Irに補正電流Icを重畳するように、上記放電回路を介した放電、上記充電回路を介した充電を行う。
【0107】
ここで、ビデオ信号Voに応答して各スイッチング素子106,122がオン動作する(同時にオン動作する)と、補正回路124の充電されたコンデンサC2から抵抗R4およびダイオードD4を介して放電が行われる。これにより、定電流回路120から出力されている駆動電流Irに対して補正電流Icが加算されることになる。そのときの補正電流Icは、図9に示すように、急激に目標電流を超えて立ち上がり(目標電流に対してオーバーシュートし)、その後、コンデンサC2の容量と抵抗R4の抵抗値により決まる時定数Aで、収束する電流となる。
【0108】
また、ビデオ信号Voに応答して各スイッチング素子106,122がオフ動作する(同時にオフ動作する)と、補正回路124のコンデンサC2が、ダイオードD3および抵抗R3を介して、充電される。これにより、定電流回路120から発光部107に至る電流路には駆動電流Irが流れていなので、この状態から補正電流Icが減算されることになる。そのときの補正電流Icは、図9に示すように、急激に消灯電流(零電流)を超えて立ち下がり(消灯電流に対してアンダーシュートし)、その後、コンデンサC2の容量と抵抗R3の抵抗値により決まる時定数Bで、収束する電流になる。
【0109】
このように、ビデオ信号Voに応答して各スイッチング素子106,122がオン、オフ動作すると、駆動電流Irは、補正電流Icにより補正され、駆動電流Irと補正電流Icを合成した電流が、駆動電流Idとして得られる。即ち、各スイッチング素子106,122のオン、オフ動作に合わせて、目標電流に対してオーバーシュートまたは消灯電流に対してアンダーシュートした駆動電流Idが、発光部107に供給される。その結果、図9に示すように、駆動電流Irで発光部107を駆動した場合の光出力(補正前)に対して、駆動電流Idで発光部107を駆動した場合、立ち上がりおよび立ち下がりの遅れが非常に小さい、安定した光出力(補正後)を得ることができる。
【符号の説明】
【0110】
22 感光ドラム
101,123 電圧源
102 電流制御回路
105 時定数回路
106,122 スイッチング素子
107 発光部
108 フォトダイオード
114 光量制御回路
120 定電流回路
124 補正回路
200 レーザ光源
206 濃度センサ
207 温度センサ
210 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真方式の画像形成装置であって、
像坦持体を露光走査するためのレーザ光を発光するレーザ光源と、
ビデオ信号に応答して前記レーザ光源を駆動すべく、前記レーザ光源に電流を供給する駆動手段とを備え、
前記駆動手段は、前記ビデオ信号に応答する動作の時定数として、前記レーザ光源の出力特性に応じて前記レーザ光源の立ち上がりおよび立ち下がりの遅れ量が小さくなるように決定された第1の時定数および第2の時定数を有し、
前記駆動手段は、前記ビデオ信号に応答して前記レーザ光源を点灯させる際には、目標電流に対してオーバーシュートした後に前記第1の時定数で前記目標電流に収束する電流を、前記レーザ光源に供給し、
前記ビデオ信号に応答して前記レーザ光源を消灯させる際には、消灯電流に対してアンダーシュートした後に前記第2の時定数で前記消灯電流に収束する電流を、前記レーザ光源に供給することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記目標電流に対してオーバーシュートした電流を生じさせる電圧を出力する電圧源と、前記電圧源が出力する電圧に応じて生じた電流を前記目標電流に収束させる電流制御手段と、前記ビデオ信号に応答して、前記電流制御手段から出力された電流を前記レーザ光源へ供給するオン動作および該電流を遮断するオフ動作をするスイッチング手段とを有し、
前記ビデオ信号に応答して前記レーザ光源を点灯させる際には、前記スッチング手段がオン動作をし、前記電流制御手段は、前記電圧源が出力した電圧に応じて生じた前記目標電流に対してオーバーシュートした電流を出力した後に、前記目標電流に対してオーバーシュートした電流を前記第1の時定数で前記目標電流に収束させ、
前記ビデオ信号に応答して前記レーザ光源を消灯させる際には、前記スッチング手段がオフ動作をし、前記電流制御手段は、前記消灯電流に対してアンダーシュートした電流を出力した後に、前記消灯電流に対してアンダーシュートした電流を前記第2の時定数で前記消灯電流に収束させることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記第1の時定数および前記第2の時定数を決定する時定数回路を有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記時定数回路は、コンデンサと、前記目標電流に対してオーバーシュートした電流を前記目標電流に収束させる際の前記第1の時定数を決定するように、前記コンデンサに蓄積された電荷を放電させる放電回路と、前記消灯電流に対してアンダーシュートした電流を前記消灯電流に収束させる際の前記第2の時定数を決定するように、電荷を前記コンデンサに蓄積させる充電回路とを有することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記レーザ光源の温度および該レーザ光源の周囲温度の少なくとも一方を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段の検出結果に基づいて、前記電圧源が出力する電圧を算出する電圧算出手段とを備え、
前記電圧源は、前記算出された電圧を出力することを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記駆動手段は、前記ビデオ信号に応答して、前記目標電流および前記消灯電流のうちの一方を出力する電流出力手段と、前記電流出力手段から出力された電流を補正し、該補正された電流を前記レーザ光源に供給する補正手段とを有し、
前記補正手段は、前記電流出力手段が前記ビデオ信号に応答して前記目標電流を出力した際には、前記電流出力手段から出力された前記目標電流を、前記目標電流に対してオーバーシュートした後に前記第1の時定数で前記目標電流に収束する電流に補正し、
前記電流出力手段が前記ビデオ信号に応答して前記消灯電流を出力した際には、前記電流出力手段から出力された前記消灯電流を、前記消灯電流に対してアンダーシュートした後に前記第2の時定数で前記消灯電流に収束する電流に補正することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記補正手段は、前記レーザ光源に電流を供給するための電流路と、コンデンサと、前記コンデンサに蓄積された電荷を前記電流路に放電させる放電回路と、前記電流路から電荷を引き抜いて前記コンデンサに蓄積させる充電回路とを有し、
前記放電回路を介した放電は、前記ビデオ信号に応答して開始され、前記電流出力手段から出力された前記目標電流を補正するための補正電流を生成し、
前記充電回路を介した充電は、前記ビデオ信号に応答して開始され、前記電流出力手段から出力された前記消灯電流を補正するための補正電流を生成することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記レーザ光源が発光するレーザ光の露光走査により前記像坦持体上に形成された画像の濃度を検出する濃度検出手段と、
前記濃度検出手段の検出結果に基づいて、前記レーザ光源が発光するレーザ光の目標光量を算出する目標光量算出手段と、
前記目標光量算出手段により算出された目標光量を得るための電流を、前記目標電流として算出する目標電流算出手段と
を備えることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記レーザ光源が発光するレーザ光の光量を検出する光量検出手段と、
前記レーザ光源が発光するレーザ光の目標光量を算出する目標光量算出手段と、
前記光量検出手段により検出された前記レーザ光の光量が前記目標光量算出手段により算出された前記レーザ光の目標光量に一致したときの電流を、前記目標電流として決定する目標電流決定手段と
を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−148508(P2012−148508A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9697(P2011−9697)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】