説明

画像投射装置

【課題】 投射レンズの光束の吸収及びレンズ鏡筒の壁面で遮光される光束を少なくし、投射レンズの光学性能の変動が少なく、良好なる画質の投射画像が得られる画像投射装置を得ること。
【解決手段】 画像表示素子と、光源手段から出射した光束で前記画像表示素子を照明する照明光学系と、ズーム機能を有し、前記画像表示素子からの光束を被投射面に投射する投射光学系と、該投射光学系を保持するレンズ鏡筒と、該投射光学系のズーム位置に基づいて、該投射光学系及び該レンズ鏡筒の少なくとも一方の温度を制御する温度制御手段と、を有すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像投射装置に関し、例えば液晶パネル(画像表示素子)に基づく投射像原画(画像表示素子)をスクリーン面上に拡大投影するプロジェクタに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶パネル等の画像表示素子に基づく投影像原画をスクリーン面上に拡大投影するようにした画像投射装置(プロジェクター)が種々と提案されている。これらのプロジェクタでは、大画面の映像(投射画像)を得るために、ライトバルブ(画像表示素子)に映像信号に応じた光学像を形成し、その光学像に光を照射し、投射レンズ(投射光学系)によりスクリーン上に拡大投射している。
【0003】
一般に投射レンズに入射した光束の一部のうち、スクリーンに到達しない不要光はレンズ鏡筒内の壁面に入射し、壁面で遮光される。このためレンズ鏡筒は光束を吸収して温度が上昇してくる。レンズ鏡筒の温度が上昇すると、それに保持されている投射レンズの温度も上昇して光学性能が変化し、例えばピント変動(フォーカス変動)が生じてくる。又、投射レンズ自身もスクリーンに投射される光束を吸収し、温度が上昇して光学性能が変化してくる。従来より温度変化によって生ずる投射レンズのピント変動を補正する機能を有したプロジェクタが提案されている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1のプロジェクタでは温度変化に対する投射レンズ自身のフォーカス位置の変動がレンズ鏡筒の補正筒の温度変化による光軸方向の寸法変動によって補正されるように各要素を設定している。例えばレンズの線膨張係数、材料の屈折率の温度依存性、補正筒の熱膨張による全長の伸び等を設定している。これにより、投射レンズを保持したレンズ鏡筒(カム環)が光軸方向であって、投射レンズの温度上昇によって生ずるフォーカス位置のズレ方向と逆方向に移動するようにしてフォーカス位置の変動を補正(キャンセル)している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−264570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多くのプロジェクタでは、照明光学系から一定のFナンバー(明るさ)の照明光束で画像表示素子が照明され、画像表示素子からは一定のFナンバーの光束が投射レンズに入射してくる。このとき投射レンズがズームレンズにより成り、ズーミングによってFナンバーが変化すると投射レンズには一定のFナンバーの光束が入射するので、ズーム位置によってレンズ鏡筒内で遮光される光束の光量が異なってくる。例えば広角端から望遠端へのズーミング際してFナンバーが暗くなる投射レンズでは、照明光学系からの光束のうち、Fナンバーの明るい照明光束が投射レンズを保持するレンズ鏡筒の壁面で遮光されてしまう。この結果、投射レンズのズーミングに応じて、レンズ鏡筒、或いは投射レンズの温度が変化するため、結果としてズーミングに応じてピント位置が変動してしまう。
【0007】
本発明は、投射レンズの焦点距離を変化させても(ズーミングを行っても)、投射レンズの光学性能の変動が少なく、良好なる画質の投射画像が得られる画像投射装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像投射装置は、画像表示素子と、光源手段から出射した光束で前記画像表示素子を照明する照明光学系と、ズーム機能を有し、前記画像表示素子からの光束を被投射面に投射する投射光学系と、該投射光学系を保持するレンズ鏡筒と、該投射光学系のズーム位置に基づいて、該投射光学系及び該レンズ鏡筒の少なくとも一方の温度を制御する温度制御手段と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、投射レンズの光学性能の変動が少なく、良好なる画質の投射画像が得られる画像投射装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1の要部概略図
【図2】図1の投射レンズのWIDE端ポジションのレンズ断面図
【図3】図1の投射レンズのTELE端ポジションのレンズ断面図
【図4】図1の偏光変換素子上の有効光束の説明図
【図5】(A)〜(E)アパチャ形状を示す説明図
【図6】投射レンズのMIDDLE1ポジションのレンズ断面図
【図7】投射レンズのMIDDLE2ポジションのレンズ断面図
【図8】(A)〜(C)アパチャの開閉状態を説明する図
【図9】本発明の実施例3の要部概略図
【図10】本発明の実施例4の要部概略図
【図11】本発明に係る投射光学系の数値実施例1のレンズ断面図
【図12】本発明に係る投射光学系の数値実施例1の収差図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、以下に図面を用いて具体的に述べる。本発明の画像投射装置は、光源手段から出射した光束で照明光学系によって被照射面の画像表示素子を照明する。そして、被照射面に設けた画像表示素子からの光束をズーム機構を有する投射光学系(投射レンズ)で被照射面に投射する。ここで投射光学系は広角端から望遠端へのズーミングによってFナンバーが大きくなるレンズ系である。例えば絞りの開口径の大きさが小さくなる。投射光学系のズーム位置を検出するズーム位置検出手段からの信号に基づいて、投射光学系及びレンズ鏡筒の少なくとも一方の温度を制御する温度制御手段と、を有している。温度制御手段は、光源手段からの光束のうち投射光学系に入射する光束を制御する1以上の絞り又は冷却ファンのうち少なくとも1つである。ここで、この絞りを照明光学系内(或いは光源から投射レンズに至る光束の光路中)に設けた場合は、投射レンズの光束の吸収及びレンズ鏡筒の壁面で遮光される光束を少なくすることができる。この結果、投射レンズの光学性能の変動が少なく、良好なる画質の投射画像が得られる画像投射装置が得られる。
【0012】
本発明の照明装置は、光源手段から出射した光束で照明光学系によって被照射面を照明する。光源手段と被照射面との間に開口径可変の絞りより成る温度制御手段を有する。被照射面に設けた画像表示素子を被投射面に投射するズーム機構を有し、ズーミングによってFナンバーが変化する投射光学系からのズーム位置信号に基づいて、絞りの開口形状(開口部の大きさ、開口径)を制御手段で制御する。これによって投射光学系に入射する光束を制限する。
【0013】
[実施例1]
図1は本発明の実施例1の要部概略図である。図1において1は光源手段であり、高圧水銀ランプ(メタルハライドランプ等でも構わない)の白色光を放射する光源である。2はリフレクタであり、光源手段1からの光束を効率良く反射する回転楕円鏡(凹面鏡)から成っている。3はインテグレータレンズ(第1フライアイレンズ)であり、リフレクタ2からの光束を複数の光束に分割している。4は第2のインテグレータレンズ(第2フライアイレンズ)であり、第1のインテグレータレンズ3に対応して配置されている。5は偏光変換素子(偏光ビームスプリッター)であり、偏光分離面を有し、それによって所定の偏光状態の光を反射し、それと直交する偏光状態の光を透過させている。9は開口径可変(開口部の大きさが可変、開口部の面積が可変)のアパチャ(開口絞り)(温度制御手段)である。6はコンデンサレンズである。7は被照射物体(画像表示素子)としての透過型の画像表示素子(ライトバルブ、以下「パネル」とも言う)である。8はズーム機能を有する投射光学系(投射レンズ)であり、パネル7に基づく画像情報をスクリーン(所定面上)Sに投射している。101はズーム位置検出手段であり、投射光学系8のズーム位置を検出している。102は制御手段であり、ズーム位置検出手段101からの信号に基づいてアパチャ9の開口径又は開口形状を変化させている。ここで、ズーム位置検出手段は、投射光学系(投射レンズ)の変倍群の位置を検出しても構わないし、投射光学系へのズーミング(変倍)の信号(入力信号、指令信号)を検出しても構わない。
【0014】
本発明の光学作用について説明する。光源手段1から発光した白色光は、リフレクタ2で反射される。その反射光は第1のインテグレータレンズ3で複数の光束に分割され、第2のインテグレータレンズ4を介し偏光変換素子5の入射面又はその近傍に複数の第2の光源像を作る。複数の第2の光源像に集光された光線は偏光変換素子5を透過して所定の偏光方向に偏光が揃えられたのち、アパチャ9、コンデンサレンズ6、を介して画像表示素子7に重層され、その面に均一な照明分布を形成する。その後、画像表示素子で画像変換された光束は投射レンズ8で拡大されスクリーンS上に投影(投射)される。投射レンズ8の構成について説明する。図2、図3は本実施例で用いている投射レンズ8のレンズ断面図である。投射レンズ8は図2、図3に示すようにズーミングによりFナンバーFnoが変化するレンズ構成よりなっている。図2はWIDE端(広角端)のポジションを示しFナンバーFno=1.5である。図3はTele端(望遠端)のポジションを示しFナンバーFno=2.5である。投射レンズのFナンバーFnoは図2、図3中の角度θがθ=ATAN(1/Fno)であることに相当する。
【0015】
以後出てくる図6、図7でも同様に表せる。また本実施例の照明光学系のFナンバーFnoは1.5である。照明光学系のFナンバーFnoとは、図4に示す偏光変換素子5上を透過する有効光束径a(図中矢印)とし、コンデンサレンズ6の焦点距離をbとするとFno=b/aで表せる。但し、偏光変換素子5を透過するがスクリーンSに到達しない成分は有効光束としない。アパチャ9の開口形状は図5(A)〜(E)に示すように円形9a、矩形9b、ひし形9c、凧形9dなど投射レンズ8のズーミング(ズーム位置)に連動して通過光をカットするものなら形状はどのようなものでも問わない。制御手段102は投射レンズ8が図3のTele端のポジションではFナンバーFnoが2.5である。図5(A)の円形のアパチャ9aは照明光学系のFナンバーFnoが1.5のときである。このためアパチャ9aとしてFナンバーFnoが2.5になるように絞った図5(E)に示すような開口9aaとしている。アパチャ9の開口によって変動する照明光学系のFナンバーFnoと投射レンズ8のズーミングによって変動するFナンバーFnoが必ず一致しなくてはならないわけではない。例えば、制御手段102はズーム位置検出手段101からの信号に基づいて投射レンズ8のズーミングによって変化するFナンバーの幅がFno1.5〜2.5の間で照明光学系のFナンバーFnoが1.5から暗くなる方向に連続的に又は段階的に変動すれば良い。アパチャ9の開口の可変は絞り羽根を用いる他、液晶を利用しても良い。例えば投射レンズ8のズーミング間(ここではFナンバーFno1.5〜2.5)において、照明光学系のFナンバーFnoが少しでも暗くなる方向に変われば良い。
【0016】
本実施例では投射レンズ8のズーミングに連動してアパチャ9の開口(絞り径)を可動とすることで、これまでレンズ鏡筒でカット(遮光)されていた光をアパチャ9でカットしている。そうする事で、レンズ鏡筒内の光束の遮光による温度上昇が起きず、投射レンズ8の温度変化によるピントずれが軽減される。又、レンズ鏡筒の耐久性が向上する。更に、ゴースト等の迷光の発生が少なくなる。本実施例ではアパチャ9の光軸方向の位置を偏光変換素子5の後ろ(光出射側)に配置しているが、リフレクタ2と画像表示素子7の間であればどこでも構わない。好ましくは照明光学系の瞳位置に配置するのが良い。本実施例のアパチャとして、例えば特開2002−214697号公報に示すような、映像信号に併せて可動する機能を持たせても良い。
【0017】
本実施例では投射レンズとして交換レンズであっても良い。交換レンズを用いた場合、交換した投射レンズの持つレンズ情報を基にアパチャを可動すれば良い。例えば交換した投射レンズのFナンバーFnoが2.0から2.5のズームレンズであったとする。この場合、WIDE端であるFナンバーFnoのアパチャの状態は交換前のWIDE端である図2では無く照明光学系のFナンバーFnoが2.0になるようにアパチャ9は絞られている。本実施例では画像表示素子が1枚の画像投射装置に限らず、複数枚有するカラー画像投射装置にも同様に適用することができる。本実施例は透過型の液晶プロジェクタ、反射型の液晶プロジェクタ、DLPに関係なく全てのズーム機能を有する画像投影装置で用いる事ができる。
【0018】
[実施例2]
実施例2は実施例1に比べて投射レンズ(ズームレンズ)の複数(3以上)のズーム位置に対応してアパチャ9の開口径を段階的に変化させている点が異なっている。画像投射装置の基本構成は図1と同じである。本実施例の投射レンズ(ズームレンズ)は実施例1と同じである。図6、図7は本実施例の投射レンズの中間のズーム位置(MIDDLE1)、中間のズーム位置(MIDDLE2)のレンズ断面図である。本実施例の投射レンズの広角端と望遠端のレンズ断面図は図2、図3と同じである。本実施例の投射レンズはWIDE端でFナンバーFnoが1.5、TELE端でFナンバーFnoが2.5である。
【0019】
本実施例では投射レンズ8のズーミング位置により段階的にアパチャ9の開口径が可動する。具体的例を挙げる。本実施例で使用するアパチャ9の開口径は図5(B)の矩形形である。投射レンズ8のズーミング位置が図2のWIDE端から図6のMIDDLE1の間ではアパチャ9の開口9bは図7のように全開放である。投射レンズ8のズーミング位置が図6のMIDDLE1から図7のMIDDLE2の間ではアパチャ9の開口9b1は図8(B)のように図8(A)に対して閉じている。そして、投射レンズ8のズーミング位置が図7のMIDDLE2から図3のTELE端の間ではアパチャ9の開口9b2は図8(C)のように図8(B)より更に閉じている。本実施例ではアパチャ9の開口径の開閉を段階的に行う為にアパチャ9の開閉精度も必要なく簡易に実施例1と同様の効果を得ることが出来る。本実施例ではズーミング位置により3段階でアパチャを可動させているが、アパチャの可動段階の数はこれ以上これ以下でも構わない。本実施例ではアパチャ9の光軸上の位置を偏光変換素子5の後ろに配置しているが、リフレクタ2と画像表示素子7の間であればどこでも構わない。
【0020】
[実施例3]
図9は本発明の実施例3の要部断面図である。実施例3の照明光学系は、互いに直交する平面内において屈折力が異なっている。又、実施例3は温度制御手段として複数の絞り(アパチャ)を有している点が実施例1、2と異なっている。図中の符番1〜8で示す部材は図1で示した部材と同じである。9は第1のアパチャ、10は第2のアパチャである。ここで、第1、第2のアパチャ9、10は温度制御手段を構成している。複数の絞りのうち1つの絞り9は、一方の平面内の瞳位置に配置されており、他の1つの絞り10は、他方の平面内の瞳位置に配置されている。2つの絞り9、10の開口形状は、ズーム位置検出手段101からの信号に基づいて、制御手段102で時系列的に又は同時に変化している。光学的作用は実施例1と同様である。投射レンズ8は実施例1と同じである。図2、図3、図6に本実施例の投射レンズのあるズーミング位置を示す。図2がWIDE端、図6がMIDDLE1、図3がTELE端である。この投射レンズはWIDE端のFナンバーFnoが1.5である。TELE端のFナンバーFnoが2.5である。投射レンズのズーミング位置が図2のWIDE端から図6のMIDDLEまでの間は第1のアパチャ9の開口が投射レンズ8のズーミングに応じて可変となる。投射レンズ8のズーミング位置が図6のMIDDLEから図3のTELE端までの間では第2のアパチャ10の開口が投射レンズ8のズーミングに応じて可変となる。
【0021】
本実施例では複数箇所にアパチャを設置しているため1箇所のアパチャに対して温度上昇部を分散することが出来るため耐久性能の低下を抑えることが出来る。当然実施例1,2と同様の効果も得られる。本実施例ではWIDE端からTELE端に向けてズーミングする場合、最初に第1のアパチャ9の開口が可動し、次に第2のアパチャ10の開口が可動する例を挙げているが逆の順番でも問題ない。本実施例では投射レンズのズーミングに応じて2つのアパチャ9、10が順番に可動しているが、ランダムに可動しても良い。本実施例では2つのアパチャを用いているがアパチャの数は3つ以上あっても構わない。本実施例ではアパチャの位置を第2のインテグレータ4の前(光入射側)と偏光変換素子5の後ろ(光出射側)に配置しているが、リフレクタ2と画像表示素子7の間であればどこでも構わない。
【0022】
[実施例4]
図10は本発明の実施例4の要部概略図である。図中の符番1〜8で示す部材は図1で示した部材と同じである。図10において、11は温度制御手段としての冷却ファンである。光学的作用は実施例1と同様である。本実施例の投射レンズ8は図2に示すWIDE端から図3に示すTELE端の間でズーミングをする。この投射レンズ8はWIDE端でFナンバーFnoが1.5、TELE端でFナンバーFnoが2.5である。図10中の冷却ファン11はズーム位置検出手段101からの投射レンズ8のズーミングに従い制御手段102で駆動電圧を変えて冷却を行う。例を挙げると図2のWIDE端では冷却ファンは駆動せず、図3のTELE端では温度変化によるピント変動が大きくなるため制御手段102で駆動電圧10Vで冷却する。WIDE端とTELE端の間は投射レンズ8のズーミングに応じて制御手段102で駆動電圧が変化し、冷却効果を変化させている。
【0023】
本実施例ではズーム位置検出手段101からの投射レンズのズーミング位置により冷却ファンが駆動することで投射レンズ8内又はレンズ鏡筒の温度上昇を抑えることが出来る。このため、投射レンズ8のズーミングによる温度変化によるピントズレを抑えることができる。本実施例では投射レンズとして交換レンズであっても良い。交換レンズを用いた場合、レンズ情報を基に冷却ファンの駆動電圧を変える事が出来る。例を挙げると交換レンズのFナンバーFnoが2.0から2.5のズームレンズを用いた場合、WIDE端では交換レンズ前は冷却ファンは駆動していなかったが冷却ファンは所定の電圧で駆動する。
【0024】
図11(A)、(B)は本発明の画像投射装置に用いる投射光学系(ズームレンズ)の数値実施例1の広角端と望遠端におけるレンズ断面図である。図12(A)、(B)は数値実施例1においてスクリーンまでの距離2100mmのときの広角端と望遠端における収差図である。本実施例における画像投射装置では、液晶パネルLCDに表示される原画(被投影画像)をズームレンズ(投影レンズ、投写レンズ)PLを用いてスクリーン面S上に拡大投影している状態を示している。Sはスクリーン面(投影面)、LCDは液晶パネル(液晶表示素子)であり、ズームレンズPLの像面に位置している。STOは開口絞りである。GBは赤色光、緑色光、青色光に色分解し、又色分解した各色光を合成する色分離合成系や偏光フィルター、そしてカラーフィルター等に対応して光学設計上設けられたガラスブロックである。ズームレンズPLは、接続部材(不図示)を介して液晶ビデオプロジェクター本体(不図示)に装着されている。ガラスブロックGB以降の液晶表示素子LCD(表示ユニット)側はプロジェクタ本体に含まれている。iを拡大側から縮小側へのレンズ群の順序としたとき、Liは第iレンズ群を示している。矢印は、広角端から望遠端における各レンズ群の移動軌跡を示している。
【0025】
液晶パネルLCDは、縮小側に設けた照明光学系(不図示)からの光で照明されている。ズームレンズPLは、照明光学系との良好な瞳整合性を確保するため、液晶パネルLCD側(縮小側)の瞳が遠方にある、テレセントリック性を有している。ガラスブロックGBでは、R,G,Bそれぞれの液晶パネルの画像を合成する手段、特定の偏光方向のみを選択する手段、偏光の位相を変える手段等を含んでいる。ズームレンズPLは全体として6つのレンズ群L1〜L6より構成している。広角端から望遠端へのズーミングに際して、矢印のように第2レンズ群L2、第3レンズ群L3、第4レンズ群L4、そして第5レンズ群L5を拡大側であるスクリーンS側へ独立に移動させている。尚、第1レンズ群L1、第6レンズ群L6はズーミングのためには移動しない。即ち不動である。
【0026】
本実施例では、第1レンズ群L1を光軸上移動させてフォーカスを行っている。本実施例のズームレンズは広角端から望遠端へのズーミングに際してFナンバーが1.95〜2.54と変化している。収差図においてGは波長550nm、Rは波長620nm、Bは波長470nmでの収差を示し、S(サジタル像面の倒れ)、M(メリジオナル像面の倒れ)はどちらも波長550nmでの収差を示す。FnoはFナンバーである。ωは半画角である。Yは像高である。
【0027】
次に数値実施例を示す。数値実施例においてiは拡大側(前方側)からの光学面の順序を示し、riは第i番目の光学面(第i面)の曲率半径、diは第i面と第i+1面との間の間隔である。ri,diの単位はmmである。niとνiはそれぞれd線を基準とした第i番目の光学部材の屈折率、アッベ数を示す。fw,ftは広角端と望遠端の焦点距離である。FnoはFナンバーである。またkを円錐定数、A、B、C、D、Eを非球面係数、光軸からの高さhの位置での光軸方向の変位を面頂点を基準にしてxとするとき、非球面形状は、
x=(h/r)/[1+[1−(1+k)(h/R)1/2
+Ah+Bh+Ch+Dh10+Eh12
で表示される。但しrは近軸曲率半径である。なお、例えば「e−Z」の表示は「10−Z」を意味する。
【0028】
【数1】

【0029】
以上のように各実施例では投射レンズを保持するレンズ鏡筒内においてズーミングを行ったときに、投射レンズにおいて不要となる光束を温度制御手段として照明光学系に設けたアパチャの開口径を変えて遮光している。これによってレンズ鏡筒内の温度が上昇するのを軽減し、温度変化によるピント変動を軽減している。また、投射レンズのズーミングによってレンズ鏡筒内でケラレる光を照明光学系で大部分カットしている。ズーミング位置によるピントずれの問題、また高輝度モデルにおける鏡筒の耐久性問題も回避することができる。また投射レンズ内で光がケラレる事が無いのでゴースト等の迷光による問題の発生も回避することが出来る。この他温度制御手段として冷却ファンを用いることによってレンズ鏡筒の温度上昇を効果的に抑えることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 光源手段、2 リフレクタ、3 第1のインテグレータ、4 第2のインテグレータ、5 偏光変換素子、6 コンデンサレンズ、7 画像表示素子、8 投射レンズ、9 アパチャ(温度制御手段)、101 ズーム位置検出手段、102 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示素子と、光源手段から出射した光束で前記画像表示素子を照明する照明光学系と、ズーム機能を有し、前記画像表示素子からの光束を被投射面に投射する投射光学系と、該投射光学系を保持するレンズ鏡筒と、該投射光学系のズーム位置に基づいて、該投射光学系及び該レンズ鏡筒の少なくとも一方の温度を制御する温度制御手段と、を有することを特徴とする画像投射装置。
【請求項2】
前記温度制御手段が、前記光源手段から前記投射光学系に至る光路中に配置された絞りを有していることを特徴とする請求項1記載の画像投射装置。
【請求項3】
前記絞りが、前記ズーム位置の変化に基づいて、開口部の大きさを変化させることを特徴とする請求項2記載の画像投射装置。
【請求項4】
前記投射光学系の広角端から望遠端へのズーミングに伴って、前記絞りの開口部の大きさを小さくすることを特徴とする請求項2又は3記載の画像投射装置。
【請求項5】
前記投射光学系のズーム位置を検出するズーム位置検出手段を備え、
前記温度制御手段が、該ズーム位置検出手段からの信号に基づいて該投射光学系及び該レンズ鏡筒の少なくとも一方の温度を制御することを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載の画像投射装置。
【請求項6】
前記投射光学系は、広角端から望遠端へのズーミングによってFナンバーが大きくなるレンズ系であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像投射装置。
【請求項7】
前記照明光学系は、互いに直交する平面内において屈折力が異なっており、前記温度制御手段は、前記光源手段からの光束のうち前記投射光学系に入射する光束を制御する複数の絞りを有し、複数の絞りのうち1つの絞りは、一方の平面内の瞳位置に配置されており、他の1つの絞りは、他方の平面内の瞳位置に配置されており、該複数の絞りの開口形状は、前記ズーム位置検出手段からの信号に基づいて、時系列的に又は同時に変化することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像投射装置。
【請求項8】
前記温度制御手段は冷却ファンを有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像投射装置。
【請求項9】
前記照明光学系からの光束を赤色光、緑色光、青色光に色分離し、色分離した色光で各色光に対応した被照射面を照射し、照射した各色光を合成する色分離合成系と、を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項の画像投射装置。
【請求項10】
光源手段から出射した光束で照明光学系によって被照射面を照明する照明装置において、該照明装置は該光源手段と該被照射面との間に配置された開口径可変の絞りと、該被照射面に設けた画像表示素子を被投射面に投射するズーム機構を有し、ズーミングによってFナンバーが変化する投射光学系からのズーム位置信号に基づいて、該絞りの開口形状を制御し、該投射光学系に入射する光束を制限する制御手段を有することを特徴とする照明装置。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−39210(P2011−39210A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185380(P2009−185380)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】