説明

画像測定機、およびデータ作成装置

【課題】画像測定機において、被検物の輪郭形状を測定する場合の測定時間を短縮させる。
【解決手段】画像測定機にステージ5上に載置された被検物6を撮像して撮像した画像を出力する撮像部4と、ステージ5上に載置された被検物6を撮像部4が撮像する撮像位置に対して相対移動させる移動装置と、制御ユニット2とを設け、制御ユニット2に、移動装置を制御して、予め設定された被検物の測定点の位置を撮像部4に相対移動させ、かつ撮像部4に撮像位置における被検物6の画像を撮像させて出力させる撮像制御部と、撮像部4が出力する画像内の複数の測定点の座標値を求める画像処理部と、被検物6の測定点の位置を撮像位置に移動させる際の複数の候補位置を求めて、複数の候補位置のうち、測定点が最も多く含まれる候補位置を次に移動する位置に決定する位置決定部とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検物の輪郭形状の測定を行なう画像測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
画像測定機には、被検物の輪郭を一画面だけで撮像できない場合に、被検物を載置するステージを移動させながら、画面から外れる被検物の測定目標点を順次撮像していき、被検物の全輪郭形状を自動測定するものが知られている(例えば特許文献1)。特許文献1の画像測定機では、撮像した一画面に入る被検物の輪郭部分に対しては同じ画像を使用してエッジ検出を行う。この画像測定機では、測定目標点が一画面から外れる場合、次の測定目標点がCCDカメラの撮像する画面の中心にくるようにステージを移動させた上で、新たに被検物を撮像し、その撮像した画像から被検物のエッジ検出を行う。上記の画像測定機は、被検物の全輪郭形状が測定されるまで、上述の処理を繰り返す。
【0003】
【特許文献1】特開平9−189512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被検物には、種々の形状のものがある。そして、特許文献1に記載の画像測定機により、例えば、歯車形状のような入り組んだ形状を有する被検物を撮像する場合に以下の問題が生じることがある。
【0005】
具体的には、特許文献1の画像測定機では、測定目標点が一画面から外れる場合、被検物の形状に関係なく、次の測定目標点がCCDカメラの撮像する画面の中心にくるようにステージを移動させている。したがって、特許文献1に記載の画像測定機では、被検物が入り組んだ形状を有する場合に、次の測定目標点が画面の中心に入るようにステージを移動させて被検物を撮像しても、すぐにその画面からその後に続く測定目標点が画面から外れる場合がある。すなわち、特許文献1では、被検物が入り組んだ形状を有する場合にステージを頻繁に移動させる必要が生じることがある。このステージを移動する処理は、撮像した画像から複数のエッジを検出する処理に比べて長時間を費やす。そのため、特許文献1により被検物の輪郭形状を測定する場合、被検物の形状によっては、ステージの移動回数が多くなることがあり、結果的に測定処理に長時間を費やしてしまうことがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、画像測定機において、被検物の輪郭形状を測定する測定時間を短縮させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明の画像測定機は、被検物の一部分を撮像して該撮像した画像を出力する撮像装置と、前記被検物を前記撮像装置による撮像位置に対して相対移動させる移動装置と、前記移動装置を制御して、予め設定された前記被検物の測定点の位置を前記撮像位置に相対移動させ、かつ前記撮像装置に前記撮像位置における被検物の画像を出力させる撮像制御部と、前記撮像装置が出力する前記画像内の複数の測定点の座標値を求める画像処理部と、前記撮像位置を、前記被検物に対して予め設定された複数の前記測定点の位置と、前記撮像装置の撮像範囲とに基づいて決定する位置決定部とを有し、前記位置決定部は、前記被検物の前記測定点の位置を前記撮像位置に相対移動させる際の複数の候補位置を求めて、該複数の候補位置のうち、前記測定点が最も多く含まれる候補位置を次に相対移動させる位置に決定することを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の画像測定機であって、前記画像処理部は、前記画像内の測定点の座標値を測定点の隣接する順番に求め、該隣接する測定点を該画像内から測定できない場合、前記撮像制御部に前記被検物の測定点の位置を前記撮像位置に相対移動させ、前記複数の候補位置は、前記撮像装置の前記撮像範囲の上下左右各辺の近傍に設定した複数個の位置のいずれかに前記測定できない隣接する測定点が入るように設定されたものであることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、撮像部が撮像した被検物の画像データを用いて被検物を測定する画像測定機を制御するデータを作成するデータ作成装置であって、前記被検物の輪郭点を示す輪郭点情報を取得する輪郭点情報取得部と、前記撮像部の撮像範囲が含まれる測定条件を取得する測定条件取得部と、前記輪郭点情報および前記測定条件を用いて前記撮像装置に撮像させる前記被検物の位置を決定して、前記撮像部に該決定した被検物の位置を撮像させる制御データを作成する測定手順データ作成部と、を備え、前記測定手順データ作成部は、前記撮像装置に撮像させる前記被検物の位置を決定する際、複数の候補位置を求めて、該複数の候補位置のうち、前記輪郭点が最も多く含まれる候補位置を前記撮像装置に撮像させる前記被検物の位置に決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように本発明によれば、被検物の輪郭形状の測定時間の短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0012】
最初に、本発明の実施形態が適用された画像測定機の概略について説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態が適用された画像測定機の概略を示す図である。図示するように、本実施形態の画像測定機は、測定装置1と、制御ユニット2とを有する。
【0014】
まず、測定装置1について説明する。測定装置1は、支持体3と、支持体3のベース部3aの上に設けられた被検物6(例えば図4のような被検物)を載置するためのXYステージ5と、支持体3の支持部3bに支持されている撮像部4と、を有する。
【0015】
XYステージ5は、制御ユニット2から出力される移動指令情報を受け付け、その受け付けた移動指令情報にしたがいXYステージ5を水平2軸方向に駆動させるXYステージ駆動部15(図2参照)と、XYステージ5の座標位置を検出し、その検出したステージの座標位置を示すデータを制御ユニット2に出力するステージ位置検出部14(図2参照)と、を有する。なお、XYステージ駆動部15は、例えば、XYステージ5をX軸及びY軸方向にそれぞれ駆動するX軸用モータ及びY軸用モータを有する駆動装置により実現される。また、ステージ位置検出部14は、例えば、XYステージ5のX軸及びY軸方向の位置をそれぞれ検出するX軸用エンコーダ及びY軸用エンコーダにより実現される。
【0016】
ベース部3aには透過照明光学系7が、撮像部4には落射照明光学系9が、それぞれ設けられている。XYステージ5上に、二次元的な輪郭形状を有し、かつ僅かな厚みを有する被検物6が載置され、ベース部3aに設けられた透過照明光学系7又は、撮像部4に設けられた落射照明光学系9により照明される。
【0017】
撮像部4は、上述の落射照明光学系9と、被検物6の像を結像させる光学倍率が可変の結像光学系10と、結像された画像を撮影するCCDカメラ8とを有する。撮像部4は、撮像した被検物6の画像を制御ユニット2に出力する。
【0018】
続いて、制御ユニット2の概略を説明する。制御ユニット2は、モ二タ11、制御装置12、および入力装置13を有する。
【0019】
制御装置12は、測定装置1を制御すると共に、測定装置1が撮像した被検物6の画像データを利用して被検物6の輪郭形状を測定する。具体的には、制御装置12は、測定装置1にXYステージ5の移動を指示する移動指令情報を出力してXYステージ5を移動させる。制御装置12は、撮像部4にXYステージ5に載置された被検物6を撮像させ、その撮像した画像を取得する。そして、制御装置12は、取得した画像を用いて被検物6の輪郭形状を測定する。ここで、制御装置12が取得した画像を用いて被検物6の輪郭形状を測定する処理を、図3を用いて簡単に説明する。
【0020】
図3は、本実施形態の画像測定機が行う被検物6の輪郭形状を測定する処理を説明するための図である。ここで、制御装置12は、予め被検物6の複数の測定目標点を保持している。制御装置12は、測定装置1から被検物6の画像を取得する。制御装置12は、取得した被検物6の画像上の測定目標点にキャリパ(指標)27を移動させ、キャリパ27内の画像を用いて被検物6のエッジの検出を行う。制御装置12は、1つの測定目標点のエッジの検出をした後は、次の測定目標点にキャリパ(指標)27を移動させてエッジの検出を行う。図示する例は、「エッジ29x」を検出した後に、キャリパ27を移動させて「エッジ29y」が検出されたことを示している。制御装置12は、その後、キャリパ27を「エッジ29y」に隣接する次の測定目標の「測定目標点28」に移動させ、次のエッジを検出する処理を行う。なお、取得した画像の測定目標点にキャリパを移動させて順次エッジを検出させる処理は従来技術により実現される。
【0021】
図1に戻り説明を続ける。制御装置12は、取得した一画面の画像内に次の測定目標点が無い場合、次の測定目標点が撮像できる位置にXYステージ5を移動させた(被検物6の次の測定目標点を撮像部4の撮像位置に相対移動させた)上で、撮像部4に被検物6を撮像させる。さらに、本実施形態の制御装置12は、XYステージ5を移動させる場合の移動回数を減少させることを考慮して、撮像部4で1回の撮像で撮像させる被検物6の範囲の測定対象範囲全体の中での位置(以下「画面位置」という)を決定する処理を行う。なお、本実施形態では、制御装置12に、CPU(Central Processing Unit)120と、CPU120が実行するプログラムやデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等の主記憶装置121と、データや各種プログラムを記憶するハードディスク等の補助記憶装置122と、外部装置との間でデータを授受するIOI/F123とを有するコンピュータを用いる場合を例にするが、特にこれに限定するものではない。
【0022】
入力装置13は、画像測定機の各種機能選択、各種設定等のユーザからの指示やデータを受け付けるユニットで、キーボード、スクロールキー、ハードスイッチ、モニタ11の表示画面上に貼られたタッチパネルなどで構成される。モニタ11は、測定装置1で撮像した画像を表示するユニットで、液晶表示装置、CRTなどで構成される。
【0023】
続いて、本実施形態の画像測定機の機能構成について説明する。
【0024】
図2は、本実施形態の画像測定機の機能構成を説明するための図である。
【0025】
図示するように、測定装置1は、XYステージ駆動部15、ステージ位置検出部14、および撮像部4を有する。なお、XYステージ駆動部15、ステージ位置検出部14、および撮像部4の機能は上述したので説明を省略する。
【0026】
制御装置12は、輪郭点抽出部20、輪郭形状測定手順作成部21、測定実行部22、ステージ制御部23、画像取得部24、およびキャリパ制御部25を有する。また、制御装置12は、輪郭点データテーブル30、測定手順データテーブル31、測定条件テーブル32、および測定データテーブル33を保持する。
【0027】
なお、制御装置12の補助記憶装置122には、上記各部(輪郭点抽出部20、輪郭形状測定手順作成部21、測定実行部22、ステージ制御部23、画像取得部24、およびキャリパ制御部25)の機能を実現するためのプログラム(輪郭点抽出プログラム、輪郭形状測定手順作成プログラム、測定実行プログラム、ステージ制御プログラム、画像取得プログラム、およびキャリパ制御プログラム)が格納されているものとする。そして、上記各部の機能は、CPU120が補助記憶装置122に格納されている上記のプログラムを主記憶装置121にロードして実行することにより実現される。また、輪郭点データテーブル30、測定手順データテーブル31、測定条件テーブル32、および輪郭形状測定データテーブル33は、補助記憶装置122および主記憶装置121に記憶されているものとする。
【0028】
輪郭点抽出部20は、被検物6の輪郭点を示すデータ(輪郭点情報)を生成する。具体的には、輪郭点抽出部20は、外部装置(図示しない)から被検物6のCADデータを取得し、取得したCADデータの図形線をピッチ分割することで輪郭点情報を作成する。輪郭点抽出部20は、作成した輪郭点情報を輪郭点データテーブル30に格納する。この輪郭点情報が、画像測定機が被検物6の輪郭形状を測定する際の測定目標点となる。なお、上述したCADデータの図形線をピッチ分割による輪郭点情報を作成する処理は、従来技術により実現されるものとする。
【0029】
なお、本実施形態では、被検物6の輪郭点情報を生成する際にCADデータの図形線をピッチ分割する場合を例にしたが特にこれに限定するものではない。被検物6のCADデータを利用する代わりに、画像測定機が被検物6の輪郭形状を実際に測定するようにしてもよい。例えば、特許文献1に記載の画像測定装置の自動追尾機能により、被検物6の輪郭点を実際に測定しておく。そして、輪郭点抽出部20は、実測した輪郭点を輪郭点情報として輪郭点データテーブル30に格納するようにしてもよい。また、輪郭形状抽出部20は、他の装置で作成された被検物6の輪郭点、或いは、他の装置で測定された被検物6の輪郭点を取得して、その取得した輪郭点を輪郭点情報として輪郭点データテーブル30に格納するようにしてもよい。
【0030】
ここで、本実施形態の画像測定機が測定する被検物6および輪郭点を、図4を用いて説明する。
【0031】
図4は、本実施形態の画像測定機が測定する被検物の一例を示した図である。図示する被検物6は、歯車形状を有している。図示する各点は、輪郭点抽出部20により生成された輪郭点を示している。そして、後述する測定実行部22は、輪郭点(測定目標点)を隣接する順に順次測定して測定結果を測定データテーブル33に格納していく。
【0032】
図2に戻り説明を続ける。測定条件テーブル32には、利用者が入力装置13を介して入力した画像測定機が行う輪郭形状の各種測定条件が格納されている。この各種測定条件には、撮像部4が撮像する画面条件(一画面で撮像できる範囲、解像度等)、測定開始位置(第1輪郭点)、測定方向(右周りで測定する等の情報)、キャリパ条件(キャリパ27の範囲、形状等)、および撮像部4のズーム倍率等が含まれている。
【0033】
輪郭形状測定手順作成部21は、被検物6の輪郭形状の測定を開始する前段階において、被検物6を測定するための測定手順データを作成する。輪郭形状測定手順作成部21は、作成した測定手順データを測定手順データテーブル31に格納する。具体的には、輪郭形状測定手順作成部12は、被検物6の最適な画面位置(撮像部4で1回の撮像で撮像される被検物6の範囲の測定対象範囲全体の中での位置)を算出する撮像位置決定機能と、求めた被検物6の画面位置を撮像した画像に含まれる測定目標点に対するキャリパ情報(キャリパの位置、角度、大きさ)を算出する測定手順自動作成機能とを有する。なお、輪郭形状測定手順作成部21が行う測定手順データを作成する処理については、後述する図5において詳細に説明する。
【0034】
測定実行部22は、ステージ制御部23、画像取得部24、およびキャリパ制御部25を制御して、被検物6の輪郭形状を測定して、その測定結果を輪郭形状測定データテーブル33に格納する。具体的には、測定実行部22は、測定条件テーブル32および測定手順データテーブル31に格納されたデータを利用して、ステージ制御部23を介して、測定装置1のXYステージ5を移動させる。また、測定実行部22は、ステージ制御部23を介して、XYステージ5の座標位置を取得する。また、測定実行部22は、画像取得部24に撮像部4が撮像した被検物6の画像データを取得させる。測定実行部22は、取得した画像データおよび測定手順データに含まれるキャリパ情報を用いて被検物6のエッジの座標を検出する。測定実行部22は、検出したエッジの座標および取得したXYステージ5の座標位置を用いて各測定点の座標位置を算出する。なお、本実施形態の測定実行部22が行う取得した被検物6の画像を用いたエッジ検出処理および各測定点の座標位置を算出する処理は、例えば、特許文献1と同様の処理によりエッジ検出および各測定点の座標位置を算出すればよい。
【0035】
続いて、本実施形態の輪郭形状測定手順作成部21が行う測定手順データを作成する処理について図5〜7を用いて詳細に説明する。
【0036】
図5は、本実施形態の画像測定機が行う測定手順データの作成処理のフローを説明するための図である。以下で説明する測定手順データの作成処理では、被検物6の輪郭形状を実際に測定する前段階において、保持している輪郭点および測定条件を利用して、被検物6を撮像する処理のシミュレーションを行う。そして、測定手順データの作成処理では、シミュレーション結果を用いて、撮像部4に撮像させる被検物6の画面位置(撮像部4で1回の撮像で撮像される被検物6の範囲の測定対象範囲全体の中での位置)を求める。さらに、輪郭形状測定手順作成部21は、被検物6の画面位置における輪郭形状を測定するためのキャリパ情報(キャリパ27の位置、角度、大きさ)を作成する。
【0037】
さて、最初に、輪郭形状測定手順作成部21は、測定条件テーブル32から測定条件を取得し、輪郭点データテーブル30から被検物6の輪郭点を取得する(S100)。取得する測定条件には、画面条件、キャリパ条件、測定開始位置(第1輪郭点)、測定する輪郭点の方向が含まれている。
【0038】
続いて、輪郭形状測定手順作成部21は、S100で取得したデータを用いて、最初の測定目標点(第1輪郭点)が含まれる被検物6の画面位置を決定する(S101)。輪郭形状測定手順作成部21は、決定した画面位置を被検物6の最初の画面位置として測定手順データテーブル31に格納する。また、輪郭形状測定手順作成部21は、第1輪郭点を測定目標点に特定してS103の処理に進む(S102)。
【0039】
S103では、輪郭形状測定手順作成部21は、S100で取得したキャリパ条件にしたがい、撮像部4が上記の決定した画面位置を撮像した場合を想定して、上記の特定した測定目標点の測定に用いるためのキャリパ27のキャリパ情報(キャリパ27の位置、角度、大きさ)を作成する。
【0040】
続いて、輪郭形状測定手順作成部21は、上記の画面位置を撮像した場合に、撮像した画像の画面内にS103でその測定目標点の測定のために作成したキャリパ27が入るか否か(すなわちその画面内でその測定目標点の測定が可能か否か)を判断する。輪郭形状測定手順作成部21は、作成したキャリパ27が上記の画面内に入ると判断した場合にS109の処理に進む。一方、輪郭形状測定手順作成部21は、作成したキャリパ27が上記の画面内に入らないと判断した場合にS105の処理に進む(S104)。
【0041】
S109では、輪郭形状測定手順作成部21は、作成したキャリパ27のキャリパ情報を測定手順データテーブル31に格納する。具体的には、輪郭形状測定手順作成部21は、特定した測定目標点に、作成したキャリパ情報およびその測定目標点が含まれる画面位置を示す情報を対応づけて測定手順データテーブル31に格納する。
【0042】
続いて、輪郭形状測定手順作成部21は、S100で取得した測定条件(測定方向)および輪郭点を用いて、取得した被検物の輪郭点の中から次の輪郭点(前に測定目標点として特定した輪郭点に隣接する輪郭点)を選択して、選択した輪郭点を測定目標点に特定する(S110)。
【0043】
輪郭形状測定手順作成部21は、S100で取得した全ての輪郭点に対してキャリパ27が作成されているか否かを判定する。具体的には、輪郭形状測定手順作成部21は、S100で取得した輪郭点と測定手順データテーブル31に格納された測定目標点に対応付けたキャリパ情報を照合することで、全ての輪郭点に対してキャリパ27が作成されているか否かを判定する。そして、輪郭形状測定手順作成部21は、全ての輪郭点に対してキャリパ27が作成されていると判定した場合には処理を終了する。一方、輪郭形状測定手順作成部21は、全ての輪郭点に対してキャリパ27が作成されていない場合には、S103の処理に戻りS103以降の処理を繰り返す(S111)。
【0044】
続いて、S104において、決定した画面位置を撮像した画面内にS103で作成したキャリパ27が入らないと判断した場合に進むS105の処理について説明する。S105に進む場合とは、被検物6を撮像した一画面の中に測定目標点を測定するためのキャリパ27が入らないと判断した場合(すなわち、その画面内での測定目標点の測定が不可能な場合)である。ここで、S105に進む場合について図6を用いて説明する。
【0045】
図6は、被検物6を撮像した一画面の画像を例示したものである。図示する例は、一画面内に測定目標点61a〜61eを測定するためのキャリパ27が入ることを示している。また、図示する例は、測定目標点61eに隣接する次の測定目標点70を測定するためのキャリパ27が画面60内に入らない場合を示している。このような場合に、輪郭形状測定手順作成部21は、S105以降の処理に進み、次の測定目標点70を撮像できる画面位置を求めるためのシミュレーションを行う。
【0046】
具体的には、S105〜S108では、輪郭形状測定手順作成部21は、現在の画面位置の次の画面位置を求めるためのシミュレーションを行い、効率よく測定目標点の測定が行える画面位置を選択する。なお、図6においては、測定目標点70は、画面60内にないためキャリパ27も画面60内に入らないわけであるが、測定目標点が画面60内にある場合でも、その位置によっては(画面内の端の場合など)キャリパ27が画面60内に入らないことがある。
【0047】
S105では、輪郭形状測定手順作成部21は、現在の画面位置の次の画面位置を求めるためにN個の画面位置候補の設定を行う。ここでは、現在の画面位置に対して8個の画面位置候補を設定し、設定した8個の画面位置候補の中から最適な画面位置を選択する場合を例にする。
【0048】
図7は、本実施形態の画像測定機が設定する画面位置候補を説明するための図である。図7では、(a)図に8個の画面位置候補を示し、(b)図に8個の画面位置候補を設定する基準を説明するための図を示している。
【0049】
(a)図に示す例では、現在の画面位置に入らない測定目標点70が含まれるように設定した8通りの画面位置候補71a〜hが示されている。8通りの画面位置候補71a〜hは、撮像部4が撮像する画面の上下左右各辺の近傍に設定した8個の位置80a〜h(図7(b)参照)のいずれかに測定目標点70が入るように設定されたものである。例えば、図7(a)の画面位置候補71aは、測定目標点70が画面の上辺付近の位置80aにくるように設定されたものである。
【0050】
図5に戻り説明を続ける。輪郭形状測定手順作成部21は、S105で設定した画面位置候補71a〜h毎に、それぞれ、測定目標点70以降に連続して画面位置候補71a〜hの中に含まれる輪郭点を算出する。輪郭形状測定手順作成部21は、S105で設定した画面位置候補71a〜hの中から、最も多くの輪郭点数を含んでいる画面位置候補を選択する。例えば、図示する例では、画面位置候補71hに最も多くの輪郭点が含まれている。そのため、輪郭形状測定手順作成部21は、画面位置候補71a〜hの中から画面位置候補71hを選択する。そして、輪郭形状測定手順作成部21は、選択した画面位置候補を次の画面位置に決定して、決定した画面位置を測定手順データテーブル31に格納する。なお、測定手順データテーブル31には、画面位置を示すデータが撮像する順番に対応付けられて格納されるものとする。その後、輪郭形状測定手順作成部21は、S103の処理に戻る(S106〜108)。
【0051】
S103の処理に戻った輪郭形状手順作成部21は、上記同様の処理を行い、S108で決定した画面位置を撮像した画面内に入る測定目標点の測定に用いるキャリパ27を順次作成し、測定目標点に対応付けて作成したキャリパ情報を測定手順データテーブル31に格納していく。
【0052】
続いて、本実施形態の測定実行部22が行う被検物6の測定処理について図8〜9を用いて説明する。
【0053】
図8および図9は、本実施形態の画像処理機が行う被検物の測定処理のフローを説明するための図である。図8には、測定処理のうちで測定装置1のXYステージ5を制御して被検物6を撮像する処理のフローを示している。図9には、測定処理のうちで撮像した被検物6の画像に対するエッジ検出を行い、被検物6の測定点を算出する処理を示している。
【0054】
最初に図8を用いて、測定装置1のXYステージ5を制御して被検物6を撮像する処理を説明する。なお、図示する処理ステップは、上述した図5の処理が行われた後で実行される処理である。
【0055】
さて、測定実行部22は、測定手順データテーブル31に格納されている被検物6の画面位置を示すデータを取得する。測定実行部22は、取得した画面位置を示すデータを用いて、最初の画面位置を特定する(S200)。なお、以下では、被検物6の輪郭形状が一画面内では撮像できない場合を例にする。そのため、測定手順データテーブル31に格納されている画面位置を示すデータは複数あるものとする。また、画面位置は、撮像する順番に対応付けられているものとする。
【0056】
測定実行部22は、被検物6の特定した画面位置を撮像できる位置にステージ制御部23を制御して、XYステージ5を移動させる(S201)。具体的には、測定実行部22の指示を受けたステージ制御部23は、被検物6の特定した画面位置を撮像できる位置にXYステージを移動させるための制御データである移動指令情報を作成する。ステージ制御部23は、XYステージ駆動部15に作成した移動指令情報を出力する。XYステージ駆動部15は、移動指令情報を受けて、受け付けた移動指令情報にしたがいXYステージ5を移動させる。
【0057】
続いて、測定実行部22は、画像取得部24を制御して、撮像部4に被検物6を撮像させて、その撮像した被検物6の画像を取得する。また、測定実行部22は、ステージ制御部23を制御して、測定装置1のステージ位置検出部14からXYステージ5の座標位置を取得する(S202)。この取得した被検物6の画像およびXYステージ5の座標位置は、後述する図9の処理に利用される。
【0058】
その後、測定実行部22は、S200で取得した画面位置を示すデータの全ての画面位置での画像が取得できたか否かを判定する。測定処理部22は、判定の結果、被検物6の全ての画面位置での画像を取得できたと判定した場合、画像取得処理を終了する。一方、測定処理部22は、判定の結果、全ての画面位置での画像を取得できていないと判定した場合、S200で取得した画面位置を示すデータを用いて次ぎの画面位置を特定して、S201の処理に戻る(S204)。
【0059】
次に、撮像した被検物6の画像を用いて行う被検物6の測定点を算出する処理を、図9を用いて説明する。
【0060】
図9の処理は、上述した図8のS202により被検物6の画像データおよびXYステージ5の座標位置を取得した後に行われる処理である。そして、図8のS202において、各位置で被検物6の画像データを取得するごとに図9の処理が行なわれる。すなわち、図8のS202において画像を取得した後、測定手順テーブル31からその画像に対応する情報を取得することによってその画像内での測定を行なうこととなる。また、以下では、被検物6の輪郭を一画面では撮像できない場合を例にする。そのため、画像取得部24は、被検物6を複数の画面位置に分けて撮像した画像データを取得する。なお、取得する画像データには、撮像した画像の画面位置を示す情報が含まれているものとする。
【0061】
さて、測定実行部22は、測定手順データテーブル31から、被検物6の測定目標点毎に対応付けられているキャリパ情報および画面位置を示す情報を取得する(S301)。
【0062】
続いて、測定実行部22は、取得した全ての測定目標点に対する測定処理が終了しているか否かを判定する(S302)。測定実行部22は、全ての測定目標点に対する測定処理が終了していると判定した場合には処理を終了し、全ての測定目標点に対する測定処理が終了していないと判定した場合にはS303の処理に進む。
【0063】
S303では、測定実行部22は、S301で取得した情報を用いて、取得した画像データが撮像された画面位置に対応付けられている測定目標点を特定する。例えば、本ステップが被検物6の1番目の画面位置を撮像した画像データを取得してから最初に行う処理の場合、S301で取得した測定目標点の中から1番目の画面位置に対応付けられている測定目標点を選択して、その中の1番目の測定目標点を特定する。同様に、本ステップが被検物6の1番目の画面位置を撮像した画像データを取得してから2回目に繰り返される処理の場合、1番目の画面位置に対応付けられている測定目標点を選択して、その中の2番目の測定目標点を特定する。2番目以降の画面位置の画像データに対しても同様の処理を行なう。また、各画像データの3番目以降の測定目標点に対しても同様の処理を行なう。測定実行部22は、取得した画像および特定した測定目標点に対応付けられているキャリパ情報(キャリパ位置、角度、大きさ)を用いて、画像上の測定目標点上にキャリパ27を移動させる。
【0064】
続いて、測定実行部22は、キャリパ27内の輪郭形状のエッジを検出して(図4参照)、エッジ座標を算出する。測定実行部22は、算出したエッジ座標と、上記で取得したXYステージ5の座標位置とから測定点を算出する(S304〜305)。なお、測定点の算出方法は、上述の通りで従来技術による。
【0065】
測定実行部22は、S305で算出した測定点を測定データテーブル33に格納して(S306)、S302の処理に戻る。
【0066】
このように、本実施形態では、被検物6の輪郭が一画面で撮像できない場合、一画面から外れる被検物6の次の目標点を含む画面位置の候補を複数通り設定するようにしている。本実施形態では、設定した画面位置の候補に被検物6の輪郭点がいくつ含まれるかをシミュレーションするようにしている。そして、シミュレーションの結果、輪郭点を最も多く含む画面位置の候補を次ぎの画面位置に決定するようにしている。すなわち、本実施形態では、被検物を実測する前段階において、効率よく被検物の輪郭形状を測定できる位置を求めるようにしている。
【0067】
そして、本実施形態では、シミュレーションで求めた輪郭点を最も多く含む画面位置が撮像できる位置にXYステージ5を移動させ、被検物の画像を取得するようにしている。
【0068】
そのため、本実施形態では、被検物6を測定する際、XYステージの移動回数を減少させることができ、被検物の輪郭形状の測定時間の短縮させることができる。
【0069】
また、本実施形態では、被検物6を測定するための最適な位置を被検物の実測前に求めているため、被検物毎に撮像部4に撮像させる被検物6の範囲を設定することができる。すなわち、本実施形態では、被検物の形状に関わらず、XYステージの移動回数を減少させることができる。
【0070】
なお、本発明は以上で説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、本実施形態では、一画面から外れる被検物6の次の測定目標点を含む撮像位置の候補を複数通り設定する場合に、撮像部4が撮像する画面の上下左右各辺の近傍に設定した8個の位置80a〜hのいずれかに測定目標点70が入る場合を説明しているが特にこれに限定するものではない(図7参照)。例えば、8個より多くの撮像位置候補を設けるようにしてもよいし、また、8個より少ない数の撮像位置候補を設けるようにしてもよい。
【0071】
また、本実施形態では、測定装置と制御ユニットが接続されている画像測定機の構成を説明したが、図5に示した処理ステップの機能を別の装置により実現するようにしてもよい。例えば、輪郭形状測定手順作成部21、輪郭点データテーブル30、測定条件テーブル32、および測定手順データ31を有する計算機装置の構成にしても、上記同様の作成手順データを作成することができる。そして、その作成手順データを利用して被検物の輪郭形状を測定するようにすれば、上記実施形態と同様に、被検物の輪郭形状測定処理の効率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施形態が適用された画像測定機の概略を示す図である。
【図2】本発明の実施形態の画像測定機の機能構成を説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態の画像測定機が行う被検物6の輪郭形状を測定する処理を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態の画像測定機が測定する被検物の一例を示した図である。
【図5】本発明の実施形態の画像測定機が行う測定手順データの作成処理のフローを説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態の画像測定機が測定する被検物の画面例を示した図である。
【図7】本発明の実施形態の画像測定機が設定する撮像位置候補を説明するための図である。
【図8】本発明の実施形態の画像処理機が行う被検物の測定処理のフローを説明するための図である。
【図9】本発明の実施形態の画像処理機が行う被検物の測定処理のフローを説明するための図である。
【符号の説明】
【0073】
1…測定装置、2…制御ユニット、3…支持体、3a…支持体3のベース部、3b…支持体3の支持部、4…撮像部、5…XYステージ、6…被検物、7…透過照明光学系、8…CCDカメラ、9…落射照明光学系、10…結像光学系、11…モニタ、12…制御装置、13…入力装置、14…ステージ位置検出部、15…XYステージ駆動部、20…輪郭点抽出部、21…輪郭形状測定手順作成部、22…測定実行部、23…ステージ制御部、24…画像取得部、25…キャリパ制御部、27…キャリパ、30…輪郭点データテーブル、31…測定手順データ、32…測定条件テーブル、33…測定データテーブル、120…CPU、121…主記憶装置、122…補助記憶装置、123…IOI/F

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物の一部分を撮像して該撮像した画像を出力する撮像装置と、
前記被検物を前記撮像装置による撮像位置に対して相対移動させる移動装置と、
前記移動装置を制御して、予め設定された前記被検物の測定点の位置を前記撮像位置に相対移動させ、かつ前記撮像装置に前記撮像位置における被検物の画像を出力させる撮像制御部と、
前記撮像装置が出力する前記画像内の複数の測定点の座標値を求める画像処理部と、
前記撮像位置を、前記被検物に対して予め設定された複数の前記測定点の位置と、前記撮像装置の撮像範囲とに基づいて決定する位置決定部とを有し、
前記位置決定部は、前記被検物の前記測定点の位置を前記撮像位置に相対移動させる際の複数の候補位置を求めて、該複数の候補位置のうち、前記測定点が最も多く含まれる候補位置を次に相対移動させる位置に決定すること
を特徴とする画像測定機。
【請求項2】
請求項1に記載の画像測定機であって、
前記画像処理部は、
前記画像内の測定点の座標値を測定点の隣接する順番に求め、該隣接する測定点を該画像内から測定できない場合、前記撮像制御部に前記被検物の測定点の位置を前記撮像位置に相対移動させ、
前記複数の候補位置は、前記撮像装置の前記撮像範囲の上下左右各辺の近傍に設定した複数個の位置のいずれかに前記測定できない隣接する測定点が入るように設定されたものであること
を特徴とする画像測定機。
【請求項3】
撮像部が撮像した被検物の画像データを用いて被検物を測定する画像測定機を制御するデータを作成するデータ作成装置であって、
前記被検物の輪郭点を示す輪郭点情報を取得する輪郭点情報取得部と、
前記撮像部の撮像範囲が含まれる測定条件を取得する測定条件取得部と、
前記輪郭点情報および前記測定条件を用いて前記撮像装置に撮像させる前記被検物の位置を決定して、前記撮像部に該決定した被検物の位置を撮像させる制御データを作成する測定手順データ作成部と、を備え、
前記測定手順データ作成部は、
前記撮像装置に撮像させる前記被検物の位置を決定する際、複数の候補位置を求めて、該複数の候補位置のうち、前記輪郭点が最も多く含まれる候補位置を前記撮像装置に撮像させる前記被検物の位置に決定すること
を特徴とするデータ作成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−64415(P2006−64415A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244311(P2004−244311)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】