説明

異方導電性接着フィルム及び絶縁被覆導電粒子

【課題】カチオン硬化型の絶縁性接着剤層を有する異方導電性接着フィルムを用いた回路接続において、非加圧方向の高い絶縁特性を維持しつつ、接続抵抗値の上昇を抑制する異方導電性接着フィルムを提供する。
【解決手段】絶縁性接着剤層7と、絶縁性接着剤層7中に分散している、導電性の金属表面を有する導電粒子3及び導電粒子3を被覆する絶縁性微粒子1を有する絶縁被覆導電粒子5と、を備える異方導電性接着フィルム10。絶縁性接着剤層7が、エポキシ樹脂及びカチオン系硬化剤を含有する。異方導電性接着フィルム10の示差走査熱量測定により求められるDSC曲線において、ピーク温度が100℃〜150℃の範囲にある発熱ピークの発熱量をαとし、ピーク温度が200℃〜250℃の範囲にある発熱ピークの発熱量をβとしたときに、α及びβが式:{α/(α+β)}×100≧60を満たす、異方導電性接着フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方導電性接着フィルム及び絶縁被覆導電粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示用ガラスパネルに液晶駆動用ICを実装する方式は、COG(Chip−on−Glass)実装とCOF(Chip−on−Flex)の2種類に大別することができる。COG実装では、導電粒子を含む異方導電性接着フィルムを用いて液晶用ICを直接ガラスパネルに接合する。一方、COF実装では、金属配線を有するフレキシブルテープに液晶駆動用ICを接合し、導電粒子を含む異方導電性接着フィルムを用いてそれらをガラスパネルに接合する。「異方導電性」とは、加圧方向の接続端子間を電気的に接続しつつ、非加圧方向には絶縁性を保つことを意味する。
【0003】
近年、液晶表示の高精細化に伴って、液晶駆動用ICの回路電極である金バンプには、狭ピッチ化、狭面積化が要求されている状況にある。かかる状況において、異方導電性接着フィルムの導電粒子が隣接する回路電極間に流出してショートを発生させることが問題となっている。また、隣接する回路電極間に導電粒子が流出することにより、金バンプとガラスパネルとの間に捕捉される異方導電性接着フィルム中の導電粒子数が減少して、対向する回路電極間の接続抵抗が上昇し、接続不良が発生することも問題となっている。
【0004】
そこで、これらの問題を解決する方法として、導電粒子の全表面を絶縁性の被膜で被覆する方法(特許文献1参照)、および絶縁性微粒子によって導電粒子を被覆する方法(特許文献2〜5参照)が提案されている。
【0005】
異方導電性接着フィルム中での導電粒子の分散性は、絶縁特性を向上させるために非常に重要である。良好な分散性を維持するために、導電粒子を配合する際に樹脂にせん断力を与える混錬方法や、超音波照射にて分散性を向上させる方法が採用されている。そのため、絶縁性微粒子を被覆させた導電粒子は、外部からの衝撃に対して脱落しない高い吸着強度で絶縁性微粒子が導電粒子に吸着していることが望ましい。高い吸着強度を得るために、絶縁性微粒子の表面にアンモニウム基、スルホニウム基等の反応性の官能基を導入して導電粒子の表面と反応させる方法が提案されている(特許文献4、5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2794009号公報
【特許文献2】特許第2748705号公報
【特許文献3】特開2009−259804号公報
【特許文献4】国際公開第2003/025955号
【特許文献5】特開2005−171096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年の液晶パネルの薄型化にともなって、実装時の基板反りを低減するために実装条件が低圧、低温へと変化している。低温の実装に用いられる異方導電性フィルムを構成する絶縁性接着剤として、カチオン硬化型の絶縁性接着剤の採用が有効である。例えば、エポキシ樹脂の低温硬化系の硬化剤として、カチオン系重合開始剤が用いられている。
【0008】
しかしながら、カチオン硬化型の絶縁性接着剤を用いた従来の異方導電性フィルムによる回路接続において、十分に低い接続抵抗値を維持することが困難であるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、カチオン硬化型の絶縁性接着剤層を有する異方導電性接着フィルムを用いた回路接続において、非加圧方向の高い絶縁特性を維持しつつ、接続抵抗値の上昇を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、絶縁性接着剤層と、該絶縁性接着剤層中に分散している、導電性の金属表面を有する導電粒子及び導電粒子を被覆する絶縁性微粒子を有する絶縁被覆導電粒子と、を備える異方導電性接着フィルムに関する。絶縁性接着剤層は、エポキシ樹脂及びカチオン系硬化剤を含有する。本発明に係る異方導電性接着フィルムの示差走査熱量測定により求められるDSC曲線において、ピーク温度が100℃〜150℃の範囲にある発熱ピークの発熱量をαとし、ピーク温度が200℃〜250℃の範囲にある発熱ピークの発熱量をβとしたときに、α及びβは式:{α/(α+β)}×100≧60を満たす。
【0011】
上記本発明に係る異方導電性フィルムによれば、カチオン硬化型の絶縁性接着剤層を有する異方導電性接着フィルムを用いた回路接続において、非加圧方向の高い絶縁特性を維持しつつ、接続抵抗値の上昇を抑制することができる。{α/(α+β)}×100の値が大きいことは、より低温でカチオン系の硬化反応が速やかに進行することに対応する。エポキシ樹脂の硬化反応が十分に進行しないと、高温高湿環境下での接着剤層の熱膨張が大きくなって、導電粒子の偏平を維持することができなくなり、接続抵抗の上昇を招く場合があると考えられる。液晶パネル等の回路部材の薄型化に伴って、基板の反りを抑制するためにカチオン系硬化剤の量を低減させる傾向があり、そうすると硬化反応が更に進行し難くなる。しかし、{α/(α+β)}×100の値が大きいことにより、硬化反応が十分に進行して、接続抵抗の上昇が十分に抑制されると考えられる。
【0012】
絶縁性接着剤層単独での示差走査熱量測定により求められる発熱量に対するαの割合は、68%以上であることが好ましい。これにより、特に接続信頼性の点でより優れた効果が得られる。
【0013】
別の側面において、本発明は、導電性の金属表面を有する導電粒子及び導電粒子を被覆する絶縁性微粒子を有する絶縁被覆導電粒子に関する。本発明に係る絶縁被覆導電粒子0.5gを、溶出液としての100℃の純水25g中に10時間置いたときに、溶出液のアンモニウムイオン濃度は100ppm未満である。
【0014】
上記本発明に係る絶縁被覆導電性粒子は、上述の本発明に係る異方導電性フィルムを構成するために好適に用いることができる。アンモニウムイオンの溶出が少ないことにより、カチオン硬化型の異方導電性接着フィルムにおいて、{α/(α+β)}×100の値を大きくすることができる。
【0015】
本発明に係る絶縁被覆導電粒子は、金属表面に吸着している、分子量100以上の塩基性化合物を更に有することが好ましい。この塩基性化合物はアミノ基を有することが好ましい。塩基性化合物が金属表面に吸着していることにより、絶縁性微粒子と導電粒子との吸着強度が高くなる。ところが、塩基性化合物が存在すると、接着剤中に染み出した塩基性化合物によりカチオン種がトラップされて、カチオン系の硬化反応が阻害される可能性がある。しかし、本発明者らの知見によれば、塩基性化合物の分子量が100以上であることにより、そのような塩基性化合物(例えばアンモニウムイオン)の染み出しが抑制される。その結果、カチオン系の硬化反応を十分に進行させることができる。そして、係る絶縁被覆導電粒子を用いた異方導電性フィルムによれば、{α/(α+β)}×100≧60を容易に満たすことができる。
【0016】
上記導電粒子は、金属表面を形成するニッケル層を有しており、金属表面が突起を形成しており、導電粒子の粒子径が2.0〜4.0μmであることが好ましい。
【0017】
上記絶縁性微粒子は、ケイ素原子を含有する共重合体から構成される有機無機ハイブリッド粒子と、該有機無機ハイブリッド粒子の表面に吸着しておりエポキシ基を有するシランカップリング剤と、を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る異方導電性フィルムによれば、カチオン硬化型の絶縁性接着剤層を有する異方導電性接着フィルムを用いた回路接続において、非加圧方向の高い絶縁特性を維持しつつ、接続抵抗値の上昇を抑制することができる。また、低温でもカチオン系の硬化反応が十分に進行することから、高温高湿環境下でも導電粒子の周囲の樹脂の吸湿し難い。そのため、絶縁抵抗値の低下も抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】異方導電性接着フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【図2】異方性導電接着剤による回路接続方法の一実施形態を示す断面図である。
【図3】回路接続構造体の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
図1は、異方導電性接着フィルムの一実施形態を示す断面図である。図1に示す異方導電性接着フィルム10は、フィルム状の絶縁性接着剤層7と、絶縁性接着剤層7内に分散した複数の絶縁被覆導電粒子5とを含有する。
【0022】
本発明に係る異方導電性接着フィルムの示差走査熱量測定により求められるDSC曲線において、ピーク温度が100℃〜150℃の範囲にある発熱ピークの発熱量(第1の発熱量)をαとし、ピーク温度が200℃〜250℃の範囲にある発熱ピークの発熱量(第2の発熱量)をβとしたときに、α及びβは式:{α/(α+β)}×100≧60を満たす。
【0023】
第1の発熱量α及び第2の発熱量βを求めるための示差走査熱量測定は、例えば、10℃/分の昇温速度で40℃から250℃の範囲で行われる。示差走査熱量測定により、熱流と温度との関係を示すDSC曲線が得られる。異方導電性接着フィルムから切り取られた10mg程度の測定試料について測定が行われる。
【0024】
絶縁性接着剤層7単独での示差走査熱量測定により求められる発熱量γに対する第1の発熱量αの割合は、好ましくは68%以上である。絶縁性接着剤層7単独のDSC曲線のいては、通常、単一の発熱ピークが観測される。2以上の発熱ピークが観測される場合、発熱量γはそれらの合計の発熱量である。
【0025】
絶縁性接着剤層7は、カチオン硬化型の熱硬化性樹脂組成物からなる。好ましくは、絶縁性接着剤層7は、エポキシ樹脂と、カチオン系硬化剤とを含有する。
【0026】
絶縁性接着剤層7は、エポキシ樹脂100質量部に対して3〜15質量部のカチオン性硬化剤を含有することが好ましい。カチオン硬化系硬化剤は、好ましくは潜在性硬化剤である。カチオン系硬化剤は、例えば、三フッ化ホウ素−アミン錯体及びスルホニウム塩から選ばれる。
【0027】
絶縁性接着剤層7は、絶縁性接着剤層100質量部に対して20〜30質量部のエポキシ樹脂を含有することが好ましい。エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロルヒドリンとビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD等とから誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラック又はクレゾールノボラックとから誘導されるエポキシノボラック樹脂、ナフタレン環を含んだ骨格を有するナフタレン系エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエーテル、ビフェニル、脂環式等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物などが挙げられる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。これらのエポキシ樹脂は、エレクトロマイグレーション防止の観点から、不純物イオン(Na、Cl等)や、加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品であることが好ましい。
【0028】
絶縁性接着剤層7は、接着後の応力を低減するため、又は接着性を向上するために、上述の成分に加えてブタジエンゴム、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴム等のゴム成分を含有することもできる。また、絶縁性接着剤層7は、充填材、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤、フェノール樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート類等を含有することもできる。
【0029】
フィルム形成性の観点から、絶縁性接着剤層7は、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂(フィルム形成性高分子)を含有することが好ましい。これらのフィルム形成性高分子を配合することは、反応性樹脂の硬化時の応力を緩和できる観点からも好ましい。
【0030】
絶縁被覆導電粒子5は、導電性の金属表面を有する導電粒子3と、導電粒子3を被覆する絶縁性微粒子1とを有する。
【0031】
0.5gの絶縁被覆導電粒子5を、溶出液としての100℃の純水25g中に加圧下で10時間置いたときに、溶出液のアンモニウムイオン濃度は、好ましくは100ppm未満である。
【0032】
絶縁性微粒子1は、ケイ素原子を含有する共重合体から構成される有機無機ハイブリッド粒子と、該有機無機ハイブリッド粒子の表面に吸着しておりエポキシ基を有するシランカップリング剤と、を含むことが好ましい。このような構成を有する絶縁性微粒子1は、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等の有機溶剤に容易に溶融しない。したがって、絶縁被覆導電粒子を接着剤成分と混合する際に、有機溶剤中での超音波照射を行い樹脂に配合することにより、異方導電性フィルム内における絶縁被覆導電粒子の分散性を向上させることができる。
【0033】
有機無機ハイブリッド粒子を構成する、ケイ素原子を有する共重合体は、例えば、(メタ)アクリル基を有するアクリルモノマーと、加水分解性シリル基(例えばアルコキシシリル基)及びラジカル重合性不飽和基を有するシリル化合物との共重合体である。アクリルモノマーは、好ましくは、メタクリル酸及びアクリル酸アルキルエステルを含む。有機無機ハイブリッド粒子に、エポキシ基及び加水分解性シリル基を有するシランカップリング剤を吸着させることにより、絶縁性微粒子1の表面にエポキシ基が導入される。
【0034】
上記共重合体から構成される有機無機ハイブリッド粒子は、加水分解性シリル基を含有するため、酸又はアルカリの作用により加水分解性シリル基が加水分解して、シラノール基が生成する。更に、シラノール基が相互に反応して、架橋構造を形成する。この加水分解のために用いられる酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、蟻酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸、トリクロロ酢酸等の有機酸がある。アルカリとしては水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア、アミン等がある。架橋を進行させるための硬化触媒としては、マレイン酸ジ−n−ブチル錫、ラウリン酸−n−ジブチル錫等の錫系触媒がある。硬化触媒は架橋後、遠心分離による洗浄により除去されることが好ましい。硬化触媒の添加は、粒子合成後でもよいし、遠心分離後であってもよい。望ましくは遠心分離後に硬化触媒が添加される。
【0035】
絶縁被覆導電粒子5が上記のような構成を有していることにより、絶縁被覆導電粒子同士の凝集が防がれる。さらに、絶縁性微粒子1が加熱加圧時に偏平する。その結果、回路接続時に隣り合う回路電極間の絶縁性及び対向する回路電極間の導通性の点で特に優れた効果が奏される。更に、絶縁性微粒子1による被覆の欠陥が少なく、被覆ばらつきが少ないという点でも有利である。
【0036】
導電粒子3は金属のみから構成される金属粒子であってもよいし、有機又は無機の核体粒子と、核体粒子を被覆する金属層とを有する複合粒子であってもよい。これらのなかでも、有機核体粒子及びこれを被覆する金属層を有する複合粒子が好ましい。導電粒子3の粒子径は2.0〜4.0μmであることが好ましい。
【0037】
金属層は、例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、パラジウム、ニッケル、錫、クロム、チタン、アルミニウム、コバルト、ゲルマニウム及びカドミウムから選ばれる少なくとも1種の金属、又はITO及びはんだのような金属化合物を含むことができる。特に、耐腐食性の観点からは、金属層はニッケル、パラジウム及び金から選ばれる少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。金属層の最外層がニッケル層、特にニッケルめっき層であり、導電粒子3の金属表面がニッケルから構成されることが特に好ましい。
【0038】
導電粒子3の金属表面は、突起を形成していることが好ましい。
【0039】
核体粒子の表面上に金属層を形成する方法としては、無電解めっきの他、置換めっき、電気めっき、スパッタリング等がある。
【0040】
有機核体粒子は特に限定されないが、例えば、ポリメチルメタクリレート及びポリメチルアクリレートのようなアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン及びポリブタジエンのようなポリオレフィン樹脂、並びに、ジビニルベンゼンとアクリル酸の共重合体の粒子が有機核体粒子として用いられ得る。
【0041】
導電粒子3は、水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基及びアルコキシカルボニル基からなる群より選択される少なくとも一つの表面官能基を有することが好ましい。これら表面官能基は、例えば、導電粒子の金属表面にカルボキシベンゾトリアゾールを吸着させ、次いで、ベンゾトリアゾールが吸着した導電粒子に、メルカプト基、スルフィド基及びジスルフィド基からなる群より選択される少なくとも一つの基を有する化合物を接触させる方法により容易に導入することができる。
【0042】
導電粒子3の金属表面に、分子量100以上の塩基性化合物が吸着していることが好ましい。この場合、絶縁性微粒子1は、この塩基性化合物を介して導電粒子3に吸着することができる。
【0043】
この塩基性化合物は、アミノ基を有することが好ましく、2つ以上のアミノ基を有することがより好ましい。アミノ基が多いほど、絶縁性微粒子と導電粒子との吸着強度が高くなる。
【0044】
導電粒子から脱落し難く、絶縁性接着剤層中に溶出し難い点から、塩基性化合物の分子量は好ましくは100以上、より好ましくは1000以上、更に好ましくは10000以上、より一層好ましくは50000以上である。塩基性化合物の分子量が大きくなると、絶縁性微粒子の脱落及び塩基性化合物自体の脱落がより効果的に防止される。塩基性化合物の分子量は、通常、200000以下である。
【0045】
アミノ基は、導電粒子の金属表面に結合しやすいだけではなく、カルボキシル基等の導電粒子の表面官能基との高い反応性を有する。また、導電粒子の表面官能基と絶縁性微粒子表面のエポキシ基との間に化学結合が形成されて、導電粒子と絶縁性微粒子との結合が強固になる。その結果、絶縁性微粒子による被覆が均一となるとともに、導電粒子に絶縁性微粒子が強固に保持される。このことが、絶縁性微粒子の脱落が防止される要因として考えられる。
【0046】
アミノ基を有する塩基性化合物は、例えば、ポリエチレンイミン、ペンタエチレンヘキサミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン及び1,5−ジアミノペンタンから選ばれるポリアミンである。これらの中でも、ポリエチレンイミンが好ましい。ポリエチレンイミンは、ポリアミンの中でも最も電荷密度が高いため、表面官能基を有する導電粒子と強固に結合することができる。したがって、表面官能基を有する導電粒子と導電粒子を被覆する絶縁性微粒子との結合を、より一層強固にすることができると考えられる。
【0047】
表面官能基を有する導電粒子、及び水酸基等を表面に有する絶縁性微粒子の表面電位(ゼータ電位)は、pHが中性領域であれば通常双方とも負電荷である。導電粒子の表面に表面電位が正電荷のアミノ基を有する塩基性化合物が吸着されていると、アミノ基が絶縁性微粒子のエポキシ基と化学結合し、絶縁性微粒子の剥離がより一層起こりにくい。
【0048】
絶縁被覆導電粒子は、例えば、導電粒子(好ましくは表面官能基を有する導電粒子)の金属表面に塩基性化合物を付着させる工程と、金属表面に塩基性化合物が付着している導電粒子に絶縁性微粒子を接触させる工程と、を含む方法により得ることができる。このような方法により、被覆の欠陥が一層少なく、絶縁性微粒子が容易に脱離しない絶縁被覆導電粒子を製造することができる。
【0049】
異方導電性接着フィルム10は、例えば、絶縁性接着剤と、絶縁被覆導電粒子と、これらを溶解又は分散する有機溶剤とを含有する液状組成物を剥離性基材に塗布する工程と、塗布された液状組成物から硬化剤の活性温度以下の温度で有機溶剤を除去する工程とを含む方法により得ることができる。
【0050】
別の実施形態として、絶縁性接着剤及び絶縁被覆導電粒子5を含有するペースト状の異方性導電接着剤も、回路接続のために好適に用いることができる。
【0051】
図2は、異方導電性接着フィルムによる回路接続方法の一実施形態を示す断面図である。図2に示されるように、基板21及び該基板上に設けられた電極22を有する第一の回路部材20と、基板31及び基板31上に設けられた電極32を有する第二の回路部材30とを、電極22及び電極32が向き合うように対向配置し、第一の回路部材20と第二の回路部材30との間に異方性導電接着フィルム10を配置する。この状態で全体を加熱及び加圧することにより、図3の断面図に示されるように、第一の回路部材20と第二の回路部材30とが回路接続された接続構造体100が得られる。
【0052】
これら回路部材としては、ガラス基板やポリイミド等のテープ基板、ドライバーIC等のベアチップ、リジット型のパッケージ基板等が挙げられる。
【0053】
得られた接続構造体100において、絶縁被覆導電粒子5の電極との接触部分では絶縁性微粒子1が剥離して、対向する電極同士は導通する。一方、同一基板上で隣り合う電極間は絶縁性微粒子1が介在することで絶縁性が維持される。
【実施例】
【0054】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳しく説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0055】
(実施例1、絶縁被覆導電粒子1)
1.導電粒子
(核体粒子)
架橋度を調整したジビニルベンゼンとアクリル酸との共重合体からなる平均粒径2.6μmのプラスチック核体粒子10gを準備した。このプラスチック核体粒子はその表面にカルボキシル基を有する。プラスチック核体粒子の硬さ(200℃において粒子直径が20%変位したときの圧縮弾性率、20%K値)は280kgf/mmであった。
【0056】
(突起を有するニッケルめっき層の形成)
分子量70000のポリエチレンイミンを含む30質量%ポリエチレンイミン水溶液(和光純薬社製)を、超純水で0.3質量%まで希釈した。この0.3質量%ポリエチレン水溶液300mLに上記プラスチック核体粒子10gを加え、室温で15分攪拌した。φ3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)を用いた濾過によりプラスチック核体粒子を取り出し、取り出されたプラスチック核体粒子を超純水300gに入れて室温で5分攪拌した。次いでφ3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)を用いた濾過によりプラスチック核体粒子を取り出し、メンブレンフィルタ上のプラスチック核体粒子を200gの超純水で2回洗浄し、吸着していないポリエチレンイミンを除去して、ポリエチレンイミンが吸着したプラスチック核体粒子を得た。
【0057】
平均粒子径100nmのコロイダルシリカ分散液を超純水で希釈して、0.33質量%シリカ粒子分散液(シリカ総量:1g)を得た。そこに、ポリエチレンイミンが吸着した上記プラスチック核体粒子を入れ、室温で15分攪拌した。その後φ3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)を用いた濾過によりプラスチック核体粒子を取り出した。濾液からシリカは抽出されなかったことから、実質的に全てのシリカ粒子がプラスチック核体粒子に吸着したことが確認された。シリカ粒子が吸着したプラスチック核体粒子を超純水200gに入れて室温で5分攪拌した。その後、φ3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)を用いた濾過によりプラスチック核体粒子を取り出し、メンブレンフィルタ上のプラスチック核体粒子を200gの超純水で2回洗浄した。洗浄後のプラスチック核体粒子を80℃で30分、120℃で1時間の順に加熱することにより乾燥して、プラスチック核体粒子及びその表面に吸着したシリカ粒子から構成される複合粒子を得た。
【0058】
上記複合粒子を1g分取し、共振周波数28kHz、出力100Wの超音波を15分間照射した後、パラジウム触媒であるアトテックネネオガント834(アトテックジャパン株式会社製)を8質量%含有するパラジウム触媒化液100mLに添加して、超音波を照射しながら30℃で30分攪拌した。その後、φ3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)を用いた濾過により複合粒子を取出し、取り出された複合粒子を水洗した。水洗後の複合粒子を、pH6.0に調整された0.5質量%ジメチルアミンボラン液に添加し、表面が活性化された複合粒子を得た。
【0059】
表面が活性化された複合粒子を蒸留水に浸漬し、超音波分散して、懸濁液を得た。この懸濁液を50℃で攪拌しながら、硫酸ニッケル6水和物50g/L、次亜リン酸ナトリウム一水和物20g/L、ジメチルアミンボラン2.5g/L及びクエン酸50g/Lを混合しpHを7.5に調整した無電解めっき液Aを徐々に添加し、複合粒子上に無電解ニッケルめっき層を形成させた。ニッケルめっき層中の含リン率は約7%であった。サンプリングと原子吸光によって、ニッケルの膜厚を調整し、ニッケルめっき層の膜厚が750Åになった時点で無電解めっき液Aの添加を中止した。濾過後、100mLの純水を用いた洗浄を60秒行い、表面に突起を有するニッケルめっき層を有する導電粒子1を得た。ニッケルめっき層の突起の高さをSEMで観測したところ、プラスチック核体粒子に吸着したシリカ粒子の粒径とほぼ同じ100nmであった。突起による被覆率をSEM像の画像解析により測定した結果、約40%であった。また、理研電子製BHV−525と比重系を用いて単位体積あたりの飽和磁化を測定したところ、0.5emu/cmであった。
【0060】
2.絶縁性微粒子
500mL三ツ口フラスコに、ラジカル重合性不飽和基及びアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業(株)製:KBM−5103)7.5gと、メタクリル酸(和光純薬工業(株)製)6.9gと、アクリル酸メチル(和光純薬工業(株)製)4.1とg、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.36gと、アセトニトリル350gとを入れてこれらを混合した。窒素(100mL/分)により1時間かけて溶存酸素を置換した後、80℃に加熱しながら6時間重合反応を進行させて、一次粒子径300nmの有機無機ハイブリッド粒子を得た。この有機無機ハイブリッド粒子を含む分散液を20mLの容器に入れ、3000r.p.m.で30分間の遠心分離(株式会社コクサン製:H−103N)により、未反応のモノマーを除去した。更にメタノールを20mL追加し、超音波分散させ再度遠心分離を行った。そこに、硬化触媒として、カルボキシル基の量に対して等モルのアンモニアを含むアンモニア水溶液(28質量%)を入れ、メタノールを追加して超音波分散させて、架橋反応を進行させた。再度の遠心分離後、アンモニア水溶液を除去し、有機無機ハイブリッド粒子をメタノール30gに分散させた。そこにグリシジル基を有するシランカップリング剤を5g添加し、微粒子の表面に吸着させ、表面にグリシジル基を有する絶縁性微粒子を得た。
【0061】
3.絶縁被覆導電粒子
<表面官能基を形成する工程>
カルボキシベンゾトリアゾールのメタノール溶液(濃度2質量%)300gに、上述の通り作製した導電粒子を10g加え、超音波照射下で、スリーワンモーター(新東科学株式会社製、商品名:BL3000)を用いて室温(25℃)で攪拌(600r.p.m)を1時間行った。メルカプト酢酸7.5gを攪拌容器内に添加し、さらに1時間攪拌し、φ3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製 :コーテッドタイプメンブレンフィルター)で濾過して、表面官能基としてカルボキシル基を有する導電粒子10gを得た。
【0062】
<塩基性化合物を導電粒子に吸着させる工程>
次に、重量平均分子量70000のポリエチレンイミンを含む30質量%ポリエチレンイミン水溶液(和光純薬工業株式会社製、商品名:30%ポリエチレンイミン P−70溶液)を超純水で希釈して0.3質量%ポリエチレンイミン水溶液を得た。この0.3質量%ポリエチレンイミン水溶液に上記の官能基含有導電粒子10gを加えて室温(25℃)で15分間攪拌し、φ3μmのメンブレンフィルタで濾過して、ポリエチレンイミンが表面に吸着した導電粒子を得た。この導電粒子を、超純水200gに混合して室温(25℃)で5分攪拌し、濾過を行った。濾過して得られた粒子を該メンブレンフィルタ上で200gの超純水で2回洗浄して、粒子に吸着していないポリエチレンイミンを除去した。
【0063】
<絶縁性微粒子によって導電粒子を被覆する工程>
高分子電解質が吸着した導電粒子10gに対して、絶縁性微粒子を2−プロパノール(和光純薬工業(株)製)で希釈して得られた2質量%の絶縁性微粒子分散液50gを滴下しながら、室温(25℃)で30分間攪拌して、導電粒子を絶縁性微粒子によって被覆した。絶縁性微粒子によって被覆された導電粒子(絶縁被覆導電粒子)を濾過により取り出した。取り出された絶縁被覆導電粒子を、エポキシ基を有する重量平均分子量1000のシリコーンオリゴマ(日立化成コーテッドサンド株式会社製:SC−6000)50gとメタノール150gの混合液に入れ、室温(25℃)で1時間攪拌し、濾過により絶縁被覆導電粒子を取り出した。最後に、絶縁被覆導電粒子をトルエン(和光純薬工業(株)製)中で3分攪拌し、濾過を行った。
【0064】
<分級工程>
得られた絶縁被覆導電粒子を150℃、1時間の条件で真空乾燥した。その後、旋回気流式ふるい分け分級機(株式会社セイシン企業)により凝集物を取り除いた。
【0065】
(実施例2、絶縁被覆導電粒子2)
塩基性化合物を導電粒子に吸着させる工程において、重量平均分子量70000のポリエチレンイミンを含む30質量%ポリエチレンイミン水溶液に代えて、重量平均分子量10000のポリエチレンイミンを含む30質量%ポリエチレンイミン水溶液(和光純薬工業株式会社製、商品名:30%ポリエチレンイミン P−70溶液)を用いたこと以外は、絶縁被覆導電粒子1と同様にして、絶縁被覆導電粒子2を作製した。
【0066】
(実施例3、絶縁被覆導電粒子3)
塩基性化合物を導電粒子に吸着させる工程において、重量平均分子量70000のポリエチレンイミンを含む30質量%ポリエチレンイミン水溶液に代えて、重量平均分子量600のポリエチレンイミンを含む30質量%ポリエチレンイミン水溶液(和光純薬工業株式会社製)を用いたこと以外は、絶縁被覆導電粒子1と同様にして、絶縁被覆導電粒子3を作製した。
【0067】
(実施例4、絶縁被覆導電粒子4)
塩基性化合物を導電粒子に吸着させる工程において、重量平均分子量70000のポリエチレンイミンを含む30質量%ポリエチレンイミンに代えて、多官能アジリジンであるケミタイト(2,2−Bishydroxymethylbutanol−tris[3−(1−aziridinyl)proplonate]、日本触媒株式会社製、商品名:PZ−33、分子量:425)を用いたこと以外は、絶縁被覆導電粒子1と同様にして、絶縁被覆導電粒子4を作製した。
【0068】
(実施例5、絶縁被覆導電粒子5)
塩基性化合物を導電粒子に吸着させる工程において、重量平均分子量70000のポリエチレンイミンを含む30質量%ポリエチレンイミン水溶液に代えて、ペンタエチレンヘキサミン(関東化学株式会社製)を用いたこと以外は、絶縁被覆導電粒子1と同様にして、絶縁被覆導電粒子5を作製した。
【0069】
(実施例6、絶縁被覆導電粒子6)
塩基性化合物を導電粒子に吸着させる工程において、重量平均分子量70000のポリエチレンイミンを含む30質量%ポリエチレンイミン水溶液に代えて、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン(関東化学株式会社製)を用いたこと以外は、絶縁被覆導電粒子1と同様にして、絶縁被覆導電粒子6を作製した。
【0070】
(実施例7、絶縁被覆導電粒子7)
塩基性化合物を導電粒子に吸着させる工程において、重量平均分子量70000のポリエチレンイミンを含む30質量%ポリエチレンイミン水溶液に代えて、テトラエチレンペンタミン(関東化学株式会社製)を用いたこと以外は、絶縁被覆導電粒子1と同様にして、絶縁被覆導電粒子7を作製した。
【0071】
(実施例8、絶縁被覆導電粒子8)
塩基性化合物を導電粒子に吸着させる工程において、重量平均分子量70000のポリエチレンイミンを含む30質量%ポリエチレンイミン水溶液に代えて、ヘキサメチレンジアミン(和光純薬株式会社製)を用いたこと以外は、絶縁被覆導電粒子1と同様にして、絶縁被覆導電粒子8を作製した。
【0072】
(実施例9、絶縁被覆導電粒子9)
塩基性化合物を導電粒子に吸着させる工程において、重量平均分子量70000のポリエチレンイミンを含む30質量%ポリエチレンイミン水溶液に代えて、1,5−ジアミノペンタン(関東化学株式会社製)を用いたこと以外は、絶縁被覆導電粒子1と同様にして、絶縁被覆導電粒子9を作製した。
【0073】
(比較例1、絶縁被覆導電粒子10)
塩基性化合物を導電粒子に吸着させる工程において、重量平均分子量70000のポリエチレンイミンを含む30質量%ポリエチレンイミン水溶液に代えて、エチレンジアミン(和光純薬株式会社製)を用いたこと以外は、絶縁被覆導電粒子1と同様にして、絶縁被覆導電粒子10を作製した。
【0074】
(異方導電性接着フィルム)
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製:PKHC)5質量部、アクリルゴム(ブチルアクリレート40質量部、エチルアクリレート30質量部、アクリロニトリル30質量部、及びグリシジルメタクリレート3質量部の共重合体、重量平均分子量:85万)18質量部、及び、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製:YL−983U)15質量部を酢酸エチル10質量部に溶解して、フェノキシ樹脂、アクリルゴム及びエポキシ樹脂の合計の濃度が30質量%の溶液を得た。
【0075】
この溶液に、カチオン系硬化剤(スルホニウム塩、三新化学工業株式会社製:SI−60)2質量部を添加し、接着剤溶液を作製した。この接着剤溶液にシリカフィラー(日本アエロジル社製:Aerosil R805)の酢酸エチル分散液(10質量%)を30質量部添加し攪拌した。更に、絶縁被覆導電粒子20質量部を接着剤溶液と混合して、超音波分散を行った。この分散液を、シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフイルムであるセパレータ(厚み40μm)にロールコータで塗布し、80℃で5分間乾燥して、厚み23μmの異方導電性接着フィルムを形成させた。
【0076】
作製した異方導電性接着フィルムを用いて、金バンプ(面積:30μm×90μm、スペース10μm、高さ:15μm、バンプ数:362)付きチップ(1.7mm×17mm、厚み:0.5mm)とITO回路付きガラス基板(ジオマテック製、厚み:0.7mm)との接続を、以下の通り行った。
【0077】
異方導電性接着フィルムを、所定のサイズ(2mm×19mm)に切り出し、そのセパレータとは反対側の面をITO回路付きガラス基板に向け、ITO回路付きガラス基板のITO回路が形成された面に対して、80℃に加熱しながら0.98MPa(10kgf/cm)で加圧することにより貼り付けた。貼り付けられた異方導電性接着フィルムからセパレータを剥離した。その後、チップの金バンプが設けられた面を異方導電性接着フィルムのITO回路付きガラス基板が貼り付けられた面とは反対側の面に向け、その状態でチップの金バンプとITO回路付きガラス基板との位置合わせを行った。次いで、170℃、70MPa、5秒間の条件で加熱及び加圧を行って本接続を行い、実装サンプルを得た。
【0078】
(発熱量の測定)
異方導電性接着フィルムから切り取った10mgのサンプルをアルミ製のセルにいれ、加圧密封した。その後、DSC(TA Instruments製:Q1000)を用いて、10℃/minの昇温速度で40℃〜250℃の範囲で示差走査熱量測定を行った。得られたDSC曲線から、100℃〜150℃の範囲にピークを有する発熱ピークの発熱量(第1発熱量)αと、200℃〜250℃の範囲にピークを有する発熱ピークの発熱量(第2発熱量)βを求めた。得られたα及びβから、{α/(α+β)}×100の値を算出した。
【0079】
更に、絶縁被覆導電粒子を含まないこと以外は異方導電性接着フィルムと同様の組成を有する絶縁性接着フィルムを作製し、これのDSC曲線も上記と同様の条件で得た。得られたDSC曲線においては1個の発熱ピークが観測され、その発熱量γを求めたところ、98J/gであった。
【0080】
(イオン濃度の測定)
絶縁被覆導電粒子0.5gと、溶出液としての純水25gとを耐圧ポットに入れて蓋をし、100℃の恒温槽に10時間投入した。その後、溶出液をφ0.08μmのフィルターに通して、固形物を除去した。イオンクロマトグラフィー(DIONEX−LC25 Ion Chromatograph)により陽イオン及び陰イオンの濃度を測定した。測定結果から、アンモニウムイオン(NH)の濃度を求めた。
【0081】
(導通特性評価)
実装サンプルの接続抵抗値を4端子法により測定した。定電流電源装置((株)アドバンテスト製R−6145)を用いて一定電流(1mA)をチップ電極−基板電極間に印加し、そのときの接続部分の電位差を、(株)アドバンテスト製デジタルマルチメーター(R−6557)を用いて測定し、抵抗値に換算した。さらに、実装サンプルを85℃、85RH%の高温高湿槽に投入し、500時間経過後に取り出して、上記と同様の方法により信頼性試験後の接続抵抗値を測定した。
【0082】
(絶縁特性評価)
実装サンプルの回路の接続部に、直流(DC)50Vの電圧を1分間印加し、印加後の絶縁抵抗を、2端子測定法を用いマルチメータで測定した。ここで、絶縁抵抗とは隣り合う回路電極間の抵抗を意味する。
【0083】
(脱落試験)
絶縁被覆導電粒子0.5gを酢酸エチル中5gに分散させた分散液が入ったガラス瓶を、超音波槽内に30分間浸漬させた。超音波処理前の絶縁被覆導電粒子、又は、超音波処理後の分散液から取り出した絶縁被覆導電粒子をSEM試料台に乗せ、25枚撮像を行った。粒子の中心から投影面積の60%までの同心円内に存在する絶縁性微粒子による被覆面積を測定した。超音波処理前後での被覆面積の変化を以下のように評価した。結果を表2に示した。
A:0〜10%
B:10〜30%
C:30〜50%
D:50%超
【0084】
(外観)
実装サンプル中の異方導電性接着フィルムを、ガラス基板側から光学顕微鏡(KEYENCE)を用いて2500倍で観察し、導電粒子周囲に浮きが発生しているかどうか観察を行った。
A:浮きなし
B:浮きあり
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
評価結果を表1及び表2に示す。これら評価結果から、第1の発熱量α及び第2の発熱量βがα/(α+β)×100≧60を満たす実施例の異方導電性接着フィルムによれば、比較例1の異方導電性接着フィルムと比較して、特に信頼性試験後の絶縁特性の点において顕著な改善が確認された。
【符号の説明】
【0088】
1…絶縁性微粒子、3…導電粒子、5…絶縁被覆導電粒子、7…絶縁性接着剤層、10…異方導電性接着フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性接着剤層と、該絶縁性接着剤層中に分散している、導電性の金属表面を有する導電粒子及び前記導電粒子を被覆する絶縁性微粒子を有する絶縁被覆導電粒子と、を備える異方導電性接着フィルムであって、
前記絶縁性接着剤層が、エポキシ樹脂及びカチオン系硬化剤を含有し、
当該異方導電性接着フィルムの示差走査熱量測定により求められるDSC曲線において、ピーク温度が100℃〜150℃の範囲にある発熱ピークの発熱量をαとし、ピーク温度が200℃〜250℃の範囲にある発熱ピークの発熱量をβとしたときに、α及びβが式:{α/(α+β)}×100≧60を満たす、異方導電性接着フィルム。
【請求項2】
前記絶縁性接着剤層単独での示差走査熱量測定により求められる発熱量に対するαの割合が68%以上である、請求項1に記載の異方導電性接着フィルム。
【請求項3】
導電性の金属表面を有する導電粒子及び前記導電粒子を被覆する絶縁性微粒子を有する絶縁被覆導電粒子であって、
当該絶縁被覆導電粒子0.5gを、溶出液としての100℃の純水25g中に10時間置いたときに、前記溶出液のアンモニウムイオン濃度が100ppm未満である、絶縁被覆導電粒子。
【請求項4】
前記金属表面に吸着している、分子量100以上の塩基性化合物を更に有する、請求項3に記載の絶縁被覆導電粒子。
【請求項5】
前記塩基性化合物がアミノ基を有する、請求項4に記載の絶縁被覆導電粒子。
【請求項6】
前記導電粒子が、前記金属表面を形成するニッケル層を有しており、前記金属表面が突起を形成しており、前記導電粒子の粒子径が2.0〜4.0μmである、請求項3〜5のいずれか一項に記載の絶縁被覆導電粒子。
【請求項7】
前記絶縁性微粒子が、ケイ素原子を含有する共重合体から構成される有機無機ハイブリッド粒子と、該有機無機ハイブリッド粒子の表面に吸着しておりエポキシ基を有するシランカップリング剤と、を含む、請求項3〜6のいずれか一項に記載の絶縁被覆導電粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−14692(P2013−14692A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148486(P2011−148486)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】