説明

異種SOG材料装填時におけるノズル先端の結晶化防止方法

【課題】 異種SOG材料を搭載するSOGコート装置において、ノズルからの不所望なSOGの滴下を防止し、かつ、結晶化または固化したパーティクルの塗布を防止する。
【解決手段】 SOGの供給方法は、ロットに対して第1のノズルから第1のスピンオンガラスを供給する処理を実行するとき、当該ロットへの処理の開始時または終了時に、第2のノズルから第2のスピンオンガラスを一定量だけ吐出するステップを含む。さらにSOGの供給方法は、ロットに含まれる基板の処理開始時に第2のノズルを洗浄するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種SOG(スピンオングラス)材料装填時におけるノズル先端の結晶化防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板上には多数の集積回路が形成され、それらの集積回路の電気的な接続や電気的な絶縁を行うために多層配線構造が用いられている。多層配線構造は、例えば、金属配線層、層間絶縁膜、コンタクトホール、ヴィアホール等を含んでいる。このような多層配線構造は、アスペクト比の高いコンタクトホール等による段差を含むため、これを平坦化するためにSOG膜を用いている。SOGは、基板上に液状で塗布され、基板表面に形成された段差を埋め、その後、SOGをベーキングすることで溶剤をとばし、段差を覆うSOG膜が形成される。SOGを塗布する方法は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
SOGには、種々の材料がある。例えば、リンをドープしたシリケートガラス系の無機SOG、メチルシロキサン系の有機SOG、ハイメチルシロサン系の有機SOG、流動性ポリマー等である。これらのSOG材料は、耐熱性、収縮性、平坦化性が異なるため、多層配線構造の段差形状や製造プロセスに適したSOG材料が選択される。
【0004】
特許文献2は、半導体基板上にSOGを塗布する枚葉式のSOGコート装置を開示している。この装置は、図9に示すように、基板14をスピン回転させるスピンチャック16と、内部導管を有する給配ノズル18と、SOGを給配するためにスピンチャック16上で給配ノズル18の選択的な位置決めするノズル位置決めシステム62と、SOGを供給するための供給配管60と、乾燥したSOGを除去するために使用される洗浄液を供給するための洗浄液供給配管22とを有している。
【0005】
【特許文献1】特開2000−77396
【特許文献2】特開平10−209136号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体製造工程では、ロット毎に、製造される半導体デバイスやその製造プロセスを異にし、これに応じてSOG材料が選択される。例えば特許文献2に示すようなSOGコート装置は、単一の給配ノズルしか搭載していないため、1種類のSOGしか供給することができない。従って、複数のSOG材料を給配する場合には、その数に応じたSOGコート装置を用意しなければならず、非常にコスト高となる。そこで、2つの給配ノズルを搭載し、それぞれの給配ノズルから、各ロットの製造プロセスに応じて異なるSOG材料を供給できるようにしたSOGコート装置が実用化されている。
【0007】
しかし、複数の給配ノズルを搭載したSOGコート装置には次のような課題がある。一方のノズルからSOG材料を供給している間、他方のノズルからSOG材料の供給が停止される。供給が停止されたとき、SOG材料は、ノズル先端から幾分だけ内部に引き込まれる、いわゆるサックバックが生じ、ノズルからSOG材料が滴下しないようになっている。しかし、ノズルの未使用期間が長くなると、SOG材料が徐々にノズル先端にまで下降し、最終的にノズル先端からSOG材料が雫状にポタリと落ち、これが基板上に滴下されてしまうことがある。
【0008】
図10は、SOG材料がポタ落ちする状態を説明するものである。基板W上に、使用側ノズルAと未使用側ノズルBが配置され、使用側ノズルAからはSOG材料1が基板Wの表面に実吐出され、未使用側ノズルBから一定の時間経過後に不所望の雫状のSOG材料2が滴下されてしまう。異種のSOG材料が基板上に滴下されてしまうと、それが集積回路の故障の原因になってしまう。
【0009】
さらに、SOGコート装置は、SOG材料を供給する貯蔵タンクや、SOG材料の廃液を貯蔵する廃液タンクを備えている。貯蔵タンクが空になったとき、あるいは、廃液タンクがオーバーフローするとき等は、SOGコート装置が完全に停止し、ノズルからSOG材料が全く吐出されない期間が長くなることがある。SOG材料は、溶剤を含む速乾性であるため、長時間の未吐出状態は、SOG材料を結晶化または固化させ、未使用後にSOG材料を吐出させた場合、SOG液の吐出と同時に結晶化したSOG材料がパーティクルとなってウエハー上に滴下されてしまうことがある。このパーティクルは、集積回路の故障の原因であり、製造歩留まりを悪化させる。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、異種SOG材料を搭載するSOGコート装置において、ノズルからの不所望なSOGの滴下を防止し、かつ、結晶化または固化したパーティクルの塗布を防止するSOGの供給方法およびSOGコート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るスピンオンガラスの供給方法は、第1のノズルから第1のスピンオンガラスを供給可能であり、第2のノズルから第2のスピンオンガラスを供給可能であり、基板上に、第1または第2のノズルから第1または第2のスピンオンガラスを供給するものであって、複数の基板を含むロットを複数用意し、第1のロットに対して第1のノズルから第1のスピンオンガラスを供給する処理を実行するとき、第1のロットへの処理の開始時または終了時に、第2のノズルから第2のスピンオンガラスを一定量だけ吐出するステップを含む。
【0012】
好ましくは前記吐出するステップは、複数のロットに対して第1のノズルから第1のスピンオンガラスを供給する処理を連続的に実行するとき、各ロットの開始時または終了時に第2のノズルから第2のスピンオンガラスを一定量だけ吐出する。供給方法はさらに、前記第2のノズルから第2のスピンオンガラスを一定量だけ吐出するとき、これと同時に第1のノズルから第1のスピンオンガラスを一定量だけ吐出することができる。好ましくは、前記第2のノズルから第2のスピンオンガラスを一定量だけ吐出するとき、前記第2のノズルは、基板から離れた退避位置にある。
【0013】
さらに本発明に係るスピンオンガラスの供給方法は、第1のノズルから第1のスピンオンガラスを供給可能であり、第2のノズルから第2のスピンオンガラスを供給可能であり、基板上に、第1または第2のノズルから第1または第2のスピンオンガラスを供給するものであって、複数の基板を含むロットを複数用意し、第1のロットに対して第1のノズルから第1のスピンオンガラスを供給する処理を実行するとき、第1のロットに含まれる基板への処理開始時に第2のノズルを洗浄するステップを含む。
【0014】
供給方法はさらに、第2のノズルの洗浄後に第2のノズルから第2のスピンオンガラスを一定量だけ吐出するステップを含むことができる。好ましくは、前記洗浄するステップおよび前記吐出するステップは、第1のロットの各々の基板の処理開始時に実行される。好ましくは、前記洗浄するステップは、第1のノズルの洗浄を含み、前記吐出するステップは、第1のノズルから第1のスピンオンガラスを一定量だけ吐出することを含む。
【0015】
本発明に係るスピンコート装置は、第1のスピンオンガラスを供給可能な第1のノズルと、第2のスピンオンガラスを供給可能な第2のノズルと、基板を回転可能に支持する支持部と、第1および第2のノズルの各々を退避位置から供給位置へ移動可能な移動手段と、複数の基板を含むロットについてのスピンオンガラスおよび洗浄液の処理シーケンスを実行する制御手段とを有し、前記制御手段は、第1のロットに対して第1のノズルから第1のスピンオンガラスを供給する処理を実行するとき、第1のロットへの処理の開始時または終了時に、第2のノズルから第2のスピンオンガラスを一定量だけ吐出させる。
【0016】
好ましくは前記制御手段は、第2のノズルから第2のスピンオンガラスを一定量だけ吐出するとき、これと同時に、第1のノズルから第1のスピンオンガラスを一定量だけ吐出させる。
【0017】
さらに本発明に係るスピンコート装置は、第1のスピンオンガラスを供給可能な第1のノズルと、第2のスピンオンガラスを供給可能な第2のノズルと、基板を回転可能に支持する支持部と、洗浄液を供給する洗浄用ノズルと、第1および第2のノズルの各々を退避位置から供給位置へ移動可能な移動手段と、複数の基板を含むロットについてのスピンオンガラスおよび洗浄液の処理シーケンスを実行する制御手段とを有し、前記制御手段は、第1のロットに対して第1のノズルから第1のスピンオンガラスを供給する処理を実行するとき、第1のロットに含まれる基板の処理開始時に第2のノズルに洗浄用ノズルから洗浄液を吐出させる。
【0018】
好ましくは、前記制御手段は、第2のノズルの洗浄後に第2のノズルから第2のスピンオンガラスを一定量だけ吐出させる。好ましくは、前記制御手段は、第1のノズルが退避位置から離れているとき、第1のノズルの退避位置周辺を洗浄用ノズルから吐出された洗浄液で洗浄する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ロットの開始時または終了時に、未使用側のノズルからスピンオンガラスを吐出させるようにしたので、未使用側のノズルから不所望なスピンオンガラスの滴下を抑制することができる。さらに本発明によれば、ロット内の基板の処理開始時に、未使用側のノズルを洗浄するようにしたので、未使用側のノズルにスピンオンガラスが結晶化されることを抑制し、仮に結晶化されても、これを適切に除去し、基板へのパーティクルの付着を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の最良の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。ここでは、枚葉式のスピンコート装置を例に用いる。
【実施例】
【0021】
図1は、スピンコート装置の概略構成を示す図である。同図に示すように、スピンコート装置10は、第1のスピンオンガラスを吐出する第1のノズル20と、第2のスピンオンガラスを吐出する第2のノズル30と、第1および第2のノズルを支持するポット部40と、ポット部40に取付けられ第1のノズルを洗浄可能な第1の洗浄ノズル50と、ポット部40に取り付けられ第2のノズルを洗浄可能な第2の洗浄ノズル60と、空間72を形成しポット部40を搭載する基部70と、基板を回転可能に支持するチャック80と、基部70に形成された排出口74、76に接続された廃液ホース90、92と、廃液ホース90、92を介して廃液を貯蔵する廃液タンク100とを備えている。
【0022】
第1および第2のノズル20、30は、図示しない給配管および給配バルブ等を介してSOG貯蔵タンクにそれぞれ接続される。また、第1および第2のノズル20、30は、図示しない移動機構により、それぞれ同時に、あるいはそれぞれ個別に、退避位置からSOGを供給する供給位置へ、その反対に供給位置から退避位置へ移動可能である。図1は、第1および第2のノズル20、30が退避位置にあることを示しており、このとき、第1および第2のノズル20、30は、ポット部40の開口42、44内に配置され、かつ第1および第2のノズル20、30は、排出口74、76にほぼ整合した位置にある。
【0023】
図2は、ノズルが供給位置にある状態を示している。同図に示すように、第1および第2のノズル20、30は、移動ホルダ110によって退避位置から供給位置へ一緒に移動される。この際、実際にSOGを吐出する側のノズルが基板Wのセンター上に位置決めされる。ここでは、第2のノズル30が基板Wのほぼ中心上に位置している。基板Wは、例えばシリコンウエハであり、これはチャック80上に固定されている。第2のノズル30から基板W上に液状の第2のSOGが供給され、基板を一定速度にて回転させることで、SOGが基板Wの表面に形成された段差を覆う。このとき、未使用側の第1のノズル20は、基板Wの中心から離れた所に位置している。但し、未使用側の第1のノズル20は、図1に示すポット部40の開口42内の退避位置にあってもよい。
【0024】
上記とは反対に、第1のノズル20が第1のSOGを吐出する場合には、第1のノズル20が基板Wのセンター上に配置され、未使用側の第2のノズル30は、そこからオフセットされた位置、あるいは退避位置に配置される。
【0025】
第1の洗浄用ノズル50は、第1のノズル20がポット部40の開口42内の退避位置にあるとき、リンス液を第1のノズル20に吐出し、第1のノズル20の外側を洗浄する。また、第1のノズル20が供給位置へ移動しているとき、第1の洗浄リンス50は、ポット部40の開口42を含む周辺をリンス液で洗浄する。
【0026】
同様に、第2の洗浄用ノズル60は、第2のノズル30がポット部40の開口44内の退避位置にあるとき、リンス液を第2のノズル30に吐出し、第2のノズル30の外側を洗浄する。また、第2のノズル30が供給位置へ移動しているとき、第2の洗浄リンス60は、ポット部40の開口44の周辺をリンス液で洗浄する。
【0027】
図3は、スピンコート装置の電気的な構成を示すブロック図である。スピンコート装置は、薬液供給部200、リンス供給部210、ノズル移動部220、チャック回転部230、メモリ240および制御部250とを含んでいる。
【0028】
薬液供給部200は、第1および第2のノズル20、30からそれぞれ吐出されるSOGの吐出量およびそのタイミングを制御部250により制御される。例えば、薬液供給部200は、第1および第2のノズル20、30に接続された開閉バルブを含み、その開閉を行う。リンス供給部210は、第1および第2の洗浄用ノズル50、60からそれぞれ吐出されるリンス液すなわち洗浄液の吐出量およびそのタイミングを制御部250により制御される。リンス供給部210は、第1および第2の洗浄用ノズル50、60に接続された開閉バルブを含み、その開閉を行う。
【0029】
ノズル移動部220は、制御部250の制御により、第1および第2のノズル20、30を退避位置または供給位置のいずれかに移動させることができる。チャック回転部230は、チャック80上に搭載された基板Wを支持し、かつ回転させる。メモリ240は、スピンコート装置によるSOGの処理工程を規定する処理シーケンスまたは処理レシピを記憶し、制御部250は、この処理シーケンスに従い各部を制御する。
【0030】
次に、スピンコート装置の処理動作について説明する。スピンコート装置は、枚葉式であり、基板毎に異なるSOGを塗布することが可能であるが、それを実行するとスループットが大幅に低下する。そこで、複数の基板を1つのロットとし、ロット単位で同一のSOGの塗布を実行する。1つのロットは、例えば25枚程度の基板を含む。
【0031】
図4に第1の実施例に係るSOG供給フローを示す。先ず、複数のロットを用意する(ステップS101)。各ロットは、複数の基板を収容するカセットにより管理することができる。ロットがスピンコート装置に投入され、処理の準備が整うと、制御部250は、メモリ240からSOGの処理シーケンスを読み出し(ステップS102)、当該処理シーケンスに基づき、投入されたロットに対して第1のノズル20または第2のノズル30のいずれが使用されるかを判定する(ステップS103)。制御部250は、判定結果に基づき、ノズル移動部220を介して使用するノズルを供給位置へ移動させる(ステップS104)。
【0032】
ノズルの移動が完了すると、制御部250は、薬液供給部200を介して第1および第2のノズル20、30から第1および第2のSOGをそれぞれ一定量だけ同時に吐出させる(ステップS105)。この吐出は、各ロットの開始時に行われる。すなわち、ロットの開始時において、使用側のノズルにおいて実施されるプリディスペンスを、未使用側のノズルにおいても同時に実施する。第1および第2のSOGのプリディスペンスが完了すると、制御部250は、処理シーケンスに含まれるシーケンスに従い、SOGの実吐出を基板上へ行う(ステップS106)。
【0033】
ロットに含まれるすべての基板へのSOGの塗布が終了すると(ステップS107)、次のロットへの処理が開始され(ステップS108)、再びステップS103からの処理が繰り返され、次のロットの開始時に第1および第2のノズル20、30からそれぞれ第1および第2のSOGが一定量だけ吐出される。
【0034】
図5(a)は、従来のSOG供給フローの一例であり、図5(b)は、本実施例のSOG供給フローの一例を示す図である。図5(a)において、SOGの吐出直後、未使用側のノズル22のSOG24は、サックバック現象によりノズル先端から一定の量Sだけ内部へ持ち上げられている。この状態から時間t1が経過すると、SOG24は、重力によりノズル先端近傍にまで降下し、さらに時間t2が経過すると、ノズル先端からSOGの球状の雫26が形成され、この雫26がポタ落ちとして滴下される。その後、未使用ノズル22には、サックバックは生じず、球状の雫が形成され易い状態となる。
【0035】
これに対し、本実施例では、時間t2が経過したとき、未使用ノズル22からSOG28を強制的にダミー吐出する。これにより、未使用ノズル22の先端からSOG24が内部に持ち上がるサックバックが生じ、SOGのポタ落ちが抑制される。
【0036】
図6は、スピンコート装置における複数のロットの処理の一例である。ロット1は、第1のノズル20が使用され、ロット2〜ロット5は、第2のノズル30が使用されるとする。ロット2〜ロット5までの期間、第1のノズル20は、実質的に未使用となる。本実施例では、上記したように、ロット1の開始時#1に、第1のノズル20から第1のSOGをプリディスペンスするときに未使用側の第2のノズル30から第2のSOGが同時にプリディスペンスされる。同様に、ロット2〜ロット5の開始時#2〜#5において、第2のノズルから第2のSOGがプリディスペンスされるとき、未使用側の第1のノズル20から第1のSOGが同時にプリディスペンスされる。
【0037】
このように、ロットの開始時あるいはロット間において、未使用側のノズルからダミーのSOGを吐出させることで、ノズルの未使用期間が継続しても、未使用側のノズルからSOGがポタ落ちするのを抑制することができる。なお、上記実施例では、使用するノズルを供給位置へ移動した後に、ダミー吐出をするようにしたが、このダミー吐出は、第1および第2のノズルが退避位置にあるときに行うようにしてもよい。
【0038】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第1の実施例で説明したように、ロット開始時に未使用側のノズルからSOGのダミー吐出を実施したが、SOGの吐出が頻繁になると、廃液を回収する側のSOGの濃度が高くなり、廃液ホース90、92と廃液タンク100との接続部94(図1を参照)において廃液が詰まってしまうことがある。この結果、スピンコート装置のメインテナンスの回数が増加したり、あるいは装置を停止させる必要が生じる。また、ロットの開始時に未使用ノズルからSOGを吐出することで、速乾性の高いSOGの結晶化をある程度は抑制することができるが、ロットの作業中に、廃液タンクがオーバーフローしたり、SOGの貯蔵タンクが空になったり、あるいは上記したような廃液詰まりが生じると、スピンコート装置の停止を余儀なくされ、これにより未使用側ノズルのSOGの結晶化が生じてしまう。第2の実施例では、このような未使用側のノズル先端のSOGの結晶化を抑止し、かつノズル先端に形成された結晶化したSOGを除去する処理シーケンスを提供する。
【0039】
図7は、第2の実施例のフローを示す図である。先ず、制御部250は、メモリ240から処理シーケンスを読み出し(ステップS201)、チャックには、ロットに含まれる最初の基板Wが搭載される(ステップS202)。制御部250は、基板Wの開始時に、リンス供給部210を介して第1および第2の洗浄用ノズル50、60から一定量のリンス液を一定時間吐出させ、第1および第2のノズル20、30の先端を外側から洗浄する(ステップS203)。このとき、第1および第2のノズル20、30は、ポット部40内の退避位置にあり、第1および第2の洗浄用ノズル50、60からのリンス液は、直接的に第1および第2のノズル先端に向けて吐出され、ノズル先端の外側に形成された結晶化されたSOGを溶融しまたは除去する。リンス液は、好ましくはSOGを溶解するような液体、または純水が用いられる。
【0040】
次に、制御部250は、薬液供給部200を介して第1および第2のノズル20、30から一定量の第1および第2のSOGを吐出させる。このSOGの吐出は、洗浄によりノズル先端に付着したリンス液を除去するとともに、第1および第2のノズル内部に結晶化して残存する外部へ排出させる(ステップS204)。これにより、SOGの結晶化を抑制し、および結晶化したSOGをほぼ完全に除去することができる。
【0041】
次に、制御部250は、ノズル移動部220を介して第1および第2のノズル20、30を退避位置から供給位置へ移動する(ステップS205)。そして、処理シーケンスに従い、使用側のノズルからSOGが基板上へ実吐出される(ステップS206)。
【0042】
実吐出後、第1および第2のノズル20、30が退避位置に戻る前に、制御部250は、ノズルポットを洗浄する(ステップS207)。制御部250の制御によりリンス供給部210は、第1および第2の洗浄用ノズル50、60からリンス液を一定量吐出する。図8は、ノズルポットの洗浄を説明する図である。同図に示すように、第1および第2のノズル20、30は、ポット部40の開口42、44から移動している。ノズルポット40の開口42、44の側壁およびポット部40の表面には、第1および第2のノズルが退避位置にあるときに吐出したSOGが付着し、それらが乾燥し、結晶化したSOG300が付着している。結晶化したSOG300は、基板上へのパーティクルとして落下することがあり、集積回路の故障の原因となり、好ましい存在ではない。第1および第2の洗浄用ノズル50、60からリンス液を吐出することで、リンス液は、結晶化したSOG300を洗い流し、除去する。
【0043】
ノズルポットの洗浄を終了すると、ロット内の次の基板の処理が開始される。次の基板がチャックに搭載され(ステップS202)、上記と同様の処理が繰り返される。ロット内のすべての基板の処理が完了すると、次のロットの処理に移行する。
【0044】
このように本実施例では、ロット内の基板の処理開始時に、第1および第2のノズルを洗浄し、かつ第1のおよび第2のノズルからSOGをプリディスペンスすることで、未使用ノズルに形成された結晶化したSOGを除去することができる。基板単位で結晶化を防止し、かつ結晶化したSOGを除去するようにすることで、ロット作業中に止むを得ない状況によりスピンコート装置が長期間停止した場合でも、再投入時に未処理の基板からのSOGの塗布を再開することができる。さらに、ノズルポットの洗浄を行うことで、よりパーティクルの発生および付着を防止することができる。さらに、一定のタイミングでリンス液を排出ことで、SOG廃液の濃度が高くなることを防止し、廃液詰まりを抑制することができる。
【0045】
上記実施例では、ノズル先端を洗浄してからSOGをプリディスペンスする例を示したが、この順序を反対にすることも可能である。つまり、SOGをプリディスペンスして内部の結晶化したSOGを排出した後に、洗浄用ノズルによりノズルの外側の結晶化したSOGを除去してもよい。この場合、吐出されるリンス液とSOGの関係は、SOG>洗浄液が好ましい。これは、サックバック時にノズル先端に空洞を作り、ノズル洗浄液を吐出しても、洗浄液とSOGが混合し難くなるためである。
【0046】
さらに、本発明のSOGの供給方法は、上記第1の実施例と第2の実施例を組み合わせることも可能である。すなわち、ロットの開始時または終了時に、未使用側ノズルからSOGを一定量だけ吐出する工程を含み、さらに、ロットに各基板の開始時に未使用側ノズルの結晶化されたSOGを除去(ノズルの洗浄とSOGの吐出)する工程を含むようにしてもよい。
【0047】
さらに上記実施例では、ロットに含まれるすべての基板の処理開始時にノズルの洗浄等を行う例を示したが、必ずしもこれに限定されず、1つロット内で所定の回数、例えば1ロットにつきN回(Nは、基板の枚数よりも小さい)のノズルの洗浄等を行うようにしてもよい。あるいは、1つのロット内の偶数または奇数の処理基板について、ノズルの洗浄等を行うようにしてもよい。
【0048】
本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明に係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】スピンコート装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】供給位置にあるノズルと基板の位置関係を示す図である。
【図3】本実施例におけるスピンコート装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図4】スピンコート装置における第1のSOG供給方法を示すフローである。
【図5】図5(a)は従来のフローによるポタ落ちの状況を説明する図であり、図5(b)は本実施例のフローによるポタ落ちの抑制を説明する図である。
【図6】スピンコート装置において複数のロットを処理するときの例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施例に係るSOGの供給フローを示す図である。
【図8】洗浄ポットの洗浄例を説明する図である。
【図9】従来のスピンコート装置の一例を示す図である。
【図10】従来の異種SOG材の供給を可能にするスピンコート装置の課題を説明する図である。
【符号の説明】
【0050】
10:スピンコート装置
20:第1のノズル
22:未使用側ノズル
24:未使用側SOG
30:第2のノズル
40:ポット部
42、44:開口
50:第1の洗浄用ノズル
60:第2の洗浄用ノズル
70:支持部
72:チャンバー
74、76:排出口
80:チャック
90、92:ホース
100:廃液タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のノズルから第1のスピンオンガラスを供給可能であり、第2のノズルから第2のスピンオンガラスを供給可能であり、基板上に、第1または第2のノズルから第1または第2のスピンオンガラスを供給するスピンオンガラスの供給方法であって、
複数の基板を含むロットを複数用意し、
第1のロットに対して第1のノズルから第1のスピンオンガラスを供給する処理を実行するとき、第1のロットへの処理の開始時または終了時に、第2のノズルから第2のスピンオンガラスを一定量だけ吐出するステップを含む、
供給方法。
【請求項2】
前記吐出するステップは、複数のロットに対して第1のノズルから第1のスピンオンガラスを供給する処理を連続的に実行するとき、各ロットの開始時または終了時に第2のノズルから第2のスピンオンガラスを一定量だけ吐出する、請求項1に記載の供給方法。
【請求項3】
供給方法はさらに、前記第2のノズルから第2のスピンオンガラスを一定量だけ吐出するとき、これと同時に第1のノズルから第1のスピンオンガラスを一定量だけ吐出する、請求項1または2に記載の供給方法。
【請求項4】
前記第2のノズルから第2のスピンオンガラスを一定量だけ吐出するとき、前記第2のノズルは、基板から離れた退避位置にある、請求項1ないし3いずれか1つに記載の供給方法。
【請求項5】
第1のノズルから第1のスピンオンガラスを供給可能であり、第2のノズルから第2のスピンオンガラスを供給可能であり、基板上に、第1または第2のノズルから第1または第2のスピンオンガラスを供給するスピンオンガラスの供給方法であって、
複数の基板を含むロットを複数用意し、
第1のロットに対して第1のノズルから第1のスピンオンガラスを供給する処理を実行するとき、第1のロットに含まれる基板への処理開始時に第2のノズルを洗浄するステップを含む、
供給方法。
【請求項6】
供給方法はさらに、第2のノズルの洗浄後に第2のノズルから第2のスピンオンガラスを一定量だけ吐出するステップを含む、請求項5に記載の供給方法。
【請求項7】
前記洗浄するステップおよび前記吐出するステップは、第1のロットの各々の基板の処理開始時に実行される、請求項5または6に記載の供給方法。
【請求項8】
前記洗浄するステップは、第1のノズルの洗浄を含み、前記吐出するステップは、第1のノズルから第1のスピンオンガラスを一定量だけ吐出することを含む、請求項5ないし7いずれか1つに記載の供給方法。
【請求項9】
第1のスピンオンガラスを供給可能な第1のノズルと、
第2のスピンオンガラスを供給可能な第2のノズルと、
基板を回転可能に支持する支持部と、
第1および第2のノズルの各々を退避位置から供給位置へ移動可能な移動手段と、
複数の基板を含むロットについてのスピンオンガラスおよび洗浄液の処理シーケンスを実行する制御手段とを有し、
前記制御手段は、第1のロットに対して第1のノズルから第1のスピンオンガラスを供給する処理を実行するとき、第1のロットへの処理の開始時または終了時に、第2のノズルから第2のスピンオンガラスを一定量だけ吐出させる、枚葉式スピンコート装置。
【請求項10】
前記制御手段は、第2のノズルから第2のスピンオンガラスを一定量だけ吐出するとき、これと同時に、第1のノズルから第1のスピンオンガラスを一定量だけ吐出させる、請求項9に記載の枚葉式スピンコート装置。
【請求項11】
第1のスピンオンガラスを供給可能な第1のノズルと、
第2のスピンオンガラスを供給可能な第2のノズルと、
基板を回転可能に支持する支持部と、
洗浄液を供給する洗浄用ノズルと、
第1および第2のノズルの各々を退避位置から供給位置へ移動可能な移動手段と、
複数の基板を含むロットについてのスピンオンガラスおよび洗浄液の処理シーケンスを実行する制御手段とを有し、
前記制御手段は、第1のロットに対して第1のノズルから第1のスピンオンガラスを供給する処理を実行するとき、第1のロットに含まれる基板の処理開始時に第2のノズルに洗浄用ノズルから洗浄液を吐出させる、枚葉式スピンコート装置。
【請求項12】
前記制御手段は、第2のノズルの洗浄後に第2のノズルから第2のスピンオンガラスを一定量だけ吐出させる、請求項11に記載の枚葉式スピンコート装置。
【請求項13】
前記制御手段は、第1のノズルが退避位置から離れているとき、第1のノズルの退避位置周辺を洗浄用ノズルから吐出された洗浄液で洗浄する、請求項11に記載の枚葉式スピンコート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−158884(P2009−158884A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338708(P2007−338708)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(390020248)日本テキサス・インスツルメンツ株式会社 (219)
【Fターム(参考)】