説明

発光装置およびプロジェクター

【課題】良好な断面形状を有する光を得ることができる発光装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る発光装置100は、第3上面102cは、第1上面102aに対して傾いた面であって、かつ第1上面と段差側面103を介して第1上面よりも上方に位置し、活性層106は、平面的に見て、第1上面側の第1側面105と、第1側面と平行な第2上面102b側の第2側面107と、を有し、第1側面は、第2側面より上方に位置し、活性層の少なくとも一部は、利得領域140を構成し、利得領域は、第1側面側の端面150と、第2側面側の端面と、を有し、利得領域に生じる光の波長帯において、第2側面の反射率は、第1側面の反射率よりも高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
端面発光型の半導体発光デバイスにおいて、出射面の形成は、一般的に劈開によって行われる。劈開は、例えば、スクライブ装置、ブレーキング装置等を用いて行われることができる。しかしながら、デバイスによっては、劈開では、出射面の位置精度が十分ではない場合がある。
【0003】
これに対し、出射面の位置精度を向上させるために、出射面をエッチングにより形成する技術がある。しかしながら、エッチングでは、エッチング可能な深さが限られるため、出射面から出射される光が上下方向に拡がることで、光の一部がエッチングされた領域の底面部で反射される場合がある。これにより、光の断面形状がいびつになってしまい、良好な断面形状を有する光を得ることができないという問題がある。
【0004】
例えば、特許文献1では、エッチングされた領域の底面部をテーパー形状にすることで出射光がエッチングされた領域の底面部で反射されることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−318183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、良好な断面形状を有する光を得ることができる発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る発光装置は、
第1上面と、第2上面と、平面的に見て前記第1上面および前記第2上面との間に位置する第3上面と、を有する基板と、
前記第3上面の上方に形成された第1クラッド層と、
前記第1クラッド層の上方に形成された活性層と、
前記活性層の上方に形成された第2クラッド層と、
を含み、
前記第3上面は、前記第1上面に対して傾いた面であって、かつ前記第1上面と段差側面を介して前記第1上面よりも上方に位置し、
前記活性層は、平面的に見て、前記第1上面側の第1側面と、前記第1側面と平行な前記第2上面側の第2側面と、を有し、
前記第1側面は、前記第2側面より上方に位置し、
前記活性層の少なくとも一部は、利得領域を構成し、
前記利得領域は、前記第1側面側の端面と、前記第2側面側の端面と、を有し、
前記利得領域に生じる光の波長帯において、前記第2側面の反射率は、前記第1側面の反射率よりも高い。
【0008】
このような発光装置によれば、出射光は、前記第1上面に対して斜め上方に向かって進むことができる。これにより、出射光が、前記第1上面で反射され、光の断面形状がいびつになることを抑制または防止することができる。したがって、良好な断面形状を有する光を得ることができる。
【0009】
なお、本発明に係る記載では、「上方」という文言を、例えば、「特定のもの(以下「A」という)の「上方」に他の特定のもの(以下「B」という)を形成する」などと用いている。本発明に係る記載では、この例のような場合に、A上に直接Bを形成するような場合と、A上に他のものを介してBを形成するような場合とが含まれるものとして、「上方」という文言を用いている。同様に、「下方」という文言は、A下に直接Bを形成するような場合と、A下に他のものを介してBを形成するような場合とが含まれるものとする。
【0010】
本発明に係る発光装置において、
前記活性層の上面は、前記第1側面の垂線に対して所定の傾き角で傾いていることができる。
【0011】
このような発光装置によれば、出射光は、前記第1側面の垂線に対して斜め上方に進むことができる。すなわち、出射光は、前記第1上面に対して斜め上方に向かって進むことができる。これにより、出射光が、前記第1上面で反射され、光の断面形状がいびつになることをより確実に抑制または防止することができる。
【0012】
本発明に係る発光装置において、
前記傾き角は、前記利得領域に生じる光の前記第1側面側の端面における全反射の臨界角よりも小さい角度であることができる。
【0013】
このような発光装置によれば、前記利得領域に生じる光を、前記第1側面側の端面で全反射させないことができる。これにより、前記利得領域に生じる光を前記第1側面側の端面から出射させることができる。
【0014】
本発明に係る発光装置において、
前記活性層の上面は、前記第1側面の垂線と平行であることができる。
【0015】
このような発光装置によれば、出射光は、前記第1側面の垂線に対して平行な方向に進むことができる。すなわち、出射光は、前記第1上面に対して斜め上方に向かって進むことができる。これにより、出射光が、前記第1上面で反射され、光の断面形状がいびつになることを抑制または防止することができる。
【0016】
本発明に係る発光装置において、
前記利得領域は、前記第3上面側から平面的に見て、前記第1側面の垂線に対して傾いた方向に向かって設けられていることができる。
【0017】
このような発光装置によれば、前記利得領域に生じる光のレーザー発振を抑制または防止することができる。したがって、スペックルノイズを低減させることができる。
【0018】
本発明に係る発光装置において、
前記利得領域は、複数配列されていることができる。
【0019】
このような発光装置によれば、発光の高出力化を図ることができる。
【0020】
本発明に係る発光装置において、
前記第1クラッド層と電気的に接続された第1電極と、
前記第2クラッド層と電気的に接続された第2電極と、
を、さらに含み、
前記第1電極は、オーミックコンタクトする第1層と接しており、
前記第2電極は、オーミックコンタクトする第2層と接しており、
前記第1電極と前記第1層との接触面、および前記第2電極と前記第2層との接触面の
少なくとも一方は、前記利得領域と同じ平面形状を有することができる。
【0021】
このような発光装置によれば、前記第1層および前記第2層によって、前記第1電極および前記第2電極の接触抵抗を低減することができる。
【0022】
なお、本発明に係る記載では、「電気的に接続」という文言を、例えば、「特定の部材(以下「C部材」という)に「電気的に接続」された他の特定の部材(以下「D部材」という)」などと用いている。本発明に係る記載では、この例のような場合に、C部材とD部材とが、直接接して電気的に接続されているような場合と、C部材とD部材とが、他の部材を介して電気的に接続されているような場合とが含まれるものとして、「電気的に接続」という文言を用いている。
【0023】
本発明に係るプロジェクターは、
本発明に係る発光装置と、
前記光源装置から出射された光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調素子によって形成された画像を投射する投射装置と、
を含む。
【0024】
このようなプロジェクターによれば、良好な断面形状を有する光を得ることができる前記発光装置を用いているため、鮮明な画像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態に係る発光装置を模式的に示す平面図。
【図2】本実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【図3】本実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【図4】本実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
【図5】本実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
【図6】本実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
【図7】本実施形態の第1の変形例に係る発光装置を模式的に示す平面図。
【図8】本実施形態の第2の変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【図9】本実施形態の第3の変形例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【図10】本実施形態の第4の変形例に係る発光装置を模式的に示す平面図。
【図11】本実施形態に係るプロジェクターを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
1. 発光装置
まず、本実施形態に係る発光装置100について説明する。図1は、発光装置100を模式的に示す平面図である。図2は、発光装置100を模式的に示す断面図であり、図1のII−II線断面図である。図3は、発光装置100を模式的に示す断面図であり、図1のIII−III線断面図である。なお、図1では、便宜上、第2電極114の図示を省略している。また、ここでは、発光装置100がInGaAlP系(赤色)の半導体発光装置である場合について説明する。
【0028】
発光装置100は、図1〜図3に示すように、基板102と、第1クラッド層104と、活性層106と、第2クラッド層108と、を含む。発光装置100は、さらに、コンタクト層110と、第1電極112と、第2電極114と、絶縁部116と、を含むことができる。
【0029】
基板102としては、例えば、第1導電型(例えばn型)のGaAs基板などを用いることができる。基板102は、図2に示すように、第1上面102aと、第2上面102bと、第3上面102cと、を有する。第3上面102cは、平面的に見て第1上面102aと第2上面102bの間に位置している。図示の例では、基板102は、段差を有している。該段差によって、第3上面102cは、第1上面102a及び第2上面102bよりも上方に位置している。言い換えると、第3上面102cは、段差側面103を介して第1上面102aよりも上方に位置している。図示の例では、第3上面102cは、第2上面102bに対しても段差側面を介して上方に位置している。図2に示すように、第3上面102cは、第1上面102aに対して傾いた面であることができる。したがって、第3上面102c上にエピタキシャル成長された各層104,106,108,110の上面は、第1上面102aに対して傾いた面であることができる。第3上面102cは、例えば、第1上面102a側から第2上面102b側に向かって傾いている。後述するように、発光装置100では、第3上面102cの傾きを調整することによって、出射光20の進む方向を制御することができる。
【0030】
第1クラッド層104は、第3上面102c上に形成されている。第1クラッド層104としては、例えば、n型のAlGaP層などを用いることができる。なお、図示はしないが、第3上面102cと第1クラッド層104との間に、バッファー層が形成されていてもよい。バッファー層としては、例えば、n型のGaAs層、InGaP層などを用いることができる。
【0031】
活性層106は、第1クラッド層104上に形成されている。活性層106は、例えば、InGaPウェル層とInGaAlPバリア層とから構成される量子井戸構造を3つ重ねた多重量子井戸(MQW)構造を有する。活性層106は、第1上面102a側の第1側面105と第2上面102b側の第2側面107とを有する。第1側面105と第2側面107とは、例えば、平行である。
【0032】
活性層106の一部は、利得領域140を構成している。利得領域140は、図1および図2に示すように、第1側面105に設けられた第1端面150と、第2側面107に設けられた第2端面152と、を有する。利得領域140の平面形状は、例えば図1に示すような平行四辺形などである。利得領域140は、第3上面102c側から平面的に見て(図1参照)、第1端面150から第2端面152まで、直線状に第1側面105の垂線Pに対して傾いた方向に向かって設けられている。これにより、利得領域140に生じる光のレーザー発振を、抑制または防止することができる。また、断面視において(図2参照)、活性層106の上面106aは、第1側面105の垂線Pに対して傾いている。これによっても、利得領域140に生じる光のレーザー発振を、抑制または防止することができる。活性層106を第1側面105側から平面的に見た場合、利得領域140では、第1端面150と第2端面152とは、例えば、重なっていないことができる。これにより、利得領域140に生じる光を第1端面150と第2端面152との間で、直接的に多重反射させないことができる。その結果、直接的な共振器を構成させないことができるため、利得領域140に生じる光のレーザー発振を、より確実に抑制または防止することができる。したがって、発光装置100は、レーザー光ではない光を発することができる。
【0033】
なお、図示はしないが、利得領域140は、第1端面150から第2端面152まで、直線状に、第1側面105の垂線Pと平行となる方向に向かって設けられていてもよい。また、例えば、活性層106を第1側面105側から平面的にみたときに、第1端面150の一部と第2端面152の一部とは、重なっていてもよい。この場合には、共振器が構成され、発光装置100は、レーザー光を発することができる。
【0034】
利得領域140に生じる光の波長帯において、第2側面107の反射率は、第1側面105の反射率よりも高い。例えば、第2側面107を反射膜(図示しない)によって覆うことにより、高い反射率を得ることができる。反射膜は、例えば、第2側面107の側方に形成されている。反射膜は、例えば誘電体ミラー、金属ミラーなどの高反射構造を有する。具体的には、反射膜としては、例えば、第2側面107側からSiON層、SiN層の順序で4ペア積層したミラーなどを用いることができる。第2側面107の反射率は、100%、あるいはそれに近いことが望ましい。これに対し、第1側面105の反射率は、0%、あるいはそれに近いことが望ましい。例えば、第1側面105を反射防止膜(図示しない)によって覆うことにより、低い反射率を得ることができる。反射防止膜としては、例えばAl単層などを用いることができる。すなわち、発光装置100では、第1端面150は出射面となり、第2端面152は反射面となる。なお、反射膜及び反射防止膜としては、上述した例に限定されるわけではなく、例えば、例えば、SiO層、SiN層、SiON層、Ta層、TiO層、TiN層や、これらの多層膜などを用いることができる。
【0035】
第2クラッド層108は、図2および図3に示すように、活性層106上に形成されている。第2クラッド層108としては、例えば、第2導電型(例えばp型)のAlGaAs層などを用いることができる。
【0036】
例えば、p型の第2クラッド層108、不純物がドーピングされていない活性層106、およびn型の第1クラッド層104により、pinダイオードが構成される。第1クラッド層104および第2クラッド層108の各々は、活性層106よりも禁制帯幅が大きく、屈折率が小さい層である。活性層106は、光を増幅する機能を有する。第1クラッド層104および第2クラッド層108は、活性層106を挟んで、注入キャリア(電子および正孔)並びに光を閉じ込める機能を有する。
【0037】
発光装置100は、第1電極112と第2電極114との間に、pinダイオードの順バイアス電圧を印加すると、活性層106の利得領域140において電子と正孔との再結合が起こる。この再結合により発光が生じる。この生じた光を起点として、連鎖的に誘導放出が起こり、利得領域140内で光の強度が増幅される。例えば、図1および図2に示すように、利得領域140に生じる光のうち、第1端面150に向かう光10は、利得領域140内で増幅された後、第1端面150から出射光20として出射される。
【0038】
発光装置100では、第3上面102cが第1上面102aに対して傾いているため、活性層106の上面106aは、第1側面105が第2側面107よりも上方に位置するように第1上面102aに対して傾いた面であることができる。また、図2に示すように、活性層106の上面106aは、第1側面105の垂線Pに対して、傾き角αで傾いていることができる。ここで、利得領域140内に生じる光は、利得領域140内を活性層106の上面106aに沿って進行する。したがって、第1端面150に向かう光10は、断面視において第1端面150に対して傾き角αで入射するため、出射光20は、光の屈折により、第1側面105の垂線Pに対して斜め上方に進むことができる。これにより、出射光20は、第1上面102aに対して斜め上方に向かって進むことができる。すなわち、発光装置100では、出射光20を、第1上面102aに向かって進ませないことができる。なお、出射光20の進む方向と第1側面105の垂線Pの成す角度βは、光の屈折により、傾き角αよりも大きな角度となる。傾き角αは、第3上面102cの傾きによって制御することができるため、出射光20の進む方向を容易に制御することができる。
【0039】
第1端面150に向かう光10は、第1端面150で全反射しないことが望ましい。すなわち、傾き角αは、全反射の臨界角よりも小さいことが望ましい。例えば、利得領域140に生じる光の波長を850nm、活性層106の有効屈折率を3.2とした場合、傾き角αは、全反射の臨界角である17.6度より小さいことが望ましい。これにより、第1端面150に向かう光10を、第1端面150から出射することができる。
【0040】
コンタクト層110は、図2および図3に示すように、第2クラッド層108上に形成されている。コンタクト層110としては、第2電極114とオーミックコンタクトする層を用いることができる。コンタクト層110としては、例えば、p型のGaAs層などを用いることができる。
【0041】
コンタクト層110と、第2クラッド層108の一部とは、柱状部111を形成することができる。柱状部111の平面形状は、例えば図1に示すように、利得領域140の平面形状と同じである。すなわち、例えば、柱状部111の平面形状によって、電極112,114間の電流経路が決定され、その結果、利得領域140の平面形状が決定される。なお、図示はしないが、柱状部111は、例えば、コンタクト層110、第2クラッド層108の一部、活性層106の一部、および第1クラッド層104の一部からなることもできる。なお、図示はしないが、柱状部111の側面は、傾斜していてもよい。
【0042】
絶縁部116は、図3に示すように、第2クラッド層108上であって、柱状部111の側方に設けられていることができる。絶縁部116は、柱状部111の側面に接している。絶縁部116の上面は、例えば、コンタクト層110の上面と連続していることができる。絶縁部116としては、例えば、SiN層、SiO層、ポリイミド層などを用いることができる。絶縁部116としてこれらの材料を用いた場合、電極112,114間の電流は、絶縁部116を避けて、該絶縁部116に挟まれた柱状部111を流れることができる。絶縁部116は、活性層106の屈折率よりも小さい屈折率を有することができる。この場合、絶縁部116を形成した部分の垂直断面の有効屈折率は、絶縁部116を形成しない部分、すなわち柱状部111が形成された部分の垂直断面の有効屈折率よりも小さくなる。これにより、平面方向について、利得領域140内に効率良く光を閉じ込めることができる。
【0043】
第1電極112は、基板102の下の全面に形成されている。第1電極112は、該第1電極112とオーミックコンタクトする層(図示の例では基板102)と接していることができる。これにより、第1電極112の接触抵抗を低減することができる。第1電極112は、基板102を介して、第1クラッド層104と電気的に接続されている。第1電極112は、発光装置100を駆動するための一方の電極である。第1電極112としては、例えば、基板102側からCr層、AuGe層、Ni層、Au層の順序で積層したものなどを用いることができる。なお、第1クラッド層104と基板102との間に、第2コンタクト層(図示せず)を設け、ドライエッチングなどにより該第2コンタクト層を露出させ、第1電極112を第2コンタクト層上に設けることもできる。これにより、片面電極構造を得ることができる。この形態は、基板102が絶縁性である場合に特に有効である。
【0044】
第2電極114は、コンタクト層110(柱状部111)及び絶縁部116の上の全面に形成されていることができる。第2電極114は、コンタクト層110を介して、第2クラッド層108と電気的に接続されている。第2電極114は、発光装置100を駆動するための他方の電極である。第2電極114としては、例えば、コンタクト層110側からCr層、AuZn層、Au層の順序で積層したものなどを用いることができる。第2電極114とコンタクト層110との接触面は、図3に示すように、利得領域140と同様の平面形状を有している。
【0045】
本実施形態に係る発光装置100は、例えば、プロジェクター、ディスプレイ、照明装置、計測装置などの光源に適用されることができる。このことは、後述する実施形態についても同様である。
【0046】
発光装置100の例では、InGaAlP系の場合について説明したが、本発明では、発光利得領域が形成可能なあらゆる材料系を用いることができる。半導体材料であれば、例えば、AlGaN系、InGaN系、GaAs系、InGaAs系、GaInNAs系、ZnCdSe系などの半導体材料も用いることができる。基板102としては、例えばGaN基板なども用いることができる。また、例えば有機材料などを用いることもできる。このことは、後述の変形例および実施形態についても同様である。
【0047】
発光装置100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0048】
発光装置100によれば、出射光20は、第1側面105の垂線Pに対して斜め上方に進むことができる。すなわち、出射光20は、第1上面102aに対して斜め上方に向かって進むことができる。これにより、出射光20が、第1上面102aで反射され、光の断面形状がいびつになることを抑制または防止することができる。したがって、発光装置100では、良好な断面形状を有する光を得ることができる。
【0049】
発光装置100によれば、活性層106の上面106aの垂線Pに対する傾き角αを、第3上面102cの傾きによって制御することができる。したがって、出射光20の進む方向を容易に制御することができる。
【0050】
発光装置100によれば、上述したとおり、利得領域140に生じる光のレーザー発振を抑制または防止することができる。したがって、スペックルノイズを低減させることができる。さらに、発光装置100では、利得領域140に生じる光は、利得領域140内において利得を受けながら進行して、外部に出射されることができる。したがって、従来の一般的なLED(Light Emitting Diode)よりも高い出力を得ることができる。以上のように、発光装置100では、スペックルノイズを低減でき、かつ高出力化を図ることができる。
【0051】
2. 発光装置の製造方法
次に、本実施形態に係る発光装置の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図4〜図7は、本実施形態に係る発光装置100の製造工程を模式的に示す断面図であり、図2に対応している。
【0052】
図4に示すように、基板102をパターニングして第1上面102a、第2上面102b、および第3上面102cを形成する。第3上面102cは、例えば、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いることで傾斜面とすることができる。
【0053】
図5に示すように、基板102上に、第1クラッド層104、活性層106、第2クラッド層108、およびコンタクト層110を、この順でエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法などを用いることができる。
【0054】
図6に示すように、第1クラッド層104、活性層106、第2クラッド層108、およびコンタクト層110を、パターニングして、活性層106の第1側面105および第2側面107を露出させる。パターニングは、例えば、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術などを用いることができる。第1上面102a上および第2上面102b上の各層104,106,108,110は、エッチバックにより除去してもよい。
【0055】
次に、コンタクト層110および第2クラッド層108をパターニングする。パターニングは、例えば、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術などを用いて行われる。本工程により、柱状部111を形成することができる。
【0056】
図3に示すように、柱状部111の側面を覆うように絶縁部116を形成する。具体的には、まず、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、塗布法などにより、第2クラッド層108の上方(コンタクト層110上を含む)に絶縁層(図示せず)を成膜する。次に、例えば、エッチング技術などを用いて、コンタクト層110の上面を露出させる。以上の工程により、絶縁部116を形成することができる。
【0057】
次に、図示はしないが、第1側面105の側方に反射防止膜を形成し、第2側面107の側方に反射膜を形成する。反射膜および反射防止膜は、例えば、CVD法、スパッタ法、イオンアシスト蒸着(Ion Assisted Deposition)法などにより形成されることができる。
【0058】
次に、コンタクト層110および絶縁部116の上に第2電極114を形成する。第2電極114は、例えば、真空蒸着法により形成される。次に、基板102の下面下に第1電極112を形成する。第1電極112の製法は、例えば、上述した第2電極114の製法の例示と同じである。なお、第1電極112および第2電極114の形成順序は、特に限定されない。
【0059】
以上の工程により、発光装置100を製造することができる。
【0060】
発光装置100の製造方法によれば、エッチングによって、第1側面105および第2側面107を形成することができる。すなわち、エッチングによって、出射面となる利得領域140の端面150と、反射面となる利得領域140の端面152を形成することができる。したがって、例えば、へき開によって出射面を形成する場合と比較して、出射面の位置精度の向上を図ることができる。また、反射防止膜および反射膜の形成を容易に行うことができる。
【0061】
3. 発光装置の変形例
次に、本実施形態に係る発光装置の変形例について説明する。なお、上述した図1〜図3に示す発光装置100の例と異なる点について説明し、同様の点については同一の符号を付し説明を省略する。
【0062】
(1) 第1の変形例
まず、第1の変形例に係る発光装置200について説明する。図7は、発光装置200を模式的に示す平面図である。なお、図7では、便宜上、第2電極114の図示を省略している。
【0063】
発光装置200では、図7に示すように、複数の利得領域140が配列されている。図示はしないが、隣り合う利得領域140の間には、分離溝が形成されていてもよい。分離溝の底面は、例えば、活性層106の下面より下方に位置している。分離溝は、隣り合う利得領域140を電気的に分離することができる。これにより、各利得領域140を個別に駆動させることができる。
【0064】
発光装置200では、発光装置100の例に比べ、発光装置全体の高出力化を図ることができる。
【0065】
(2) 第2の変形例
次に、第2の変形例に係る発光装置300について説明する。図8は、発光装置300を模式的に示す断面図である。
【0066】
発光装置100の例では、活性層106の上面106aが、第1側面105の垂線Pに対して所定の傾き角αで傾いている場合について説明した。これに対し、本変形例では、活性層106の上面106aが、第1側面105の垂線Pと平行であることができる。これにより、第1端面150に向かう光10は、断面視において第1端面150に対して直交する方向に入射するため、出射光20は、第1側面105の垂線Pに対して平行な方向に進むことができる。すなわち、出射光20は、第1上面102aに対して斜め上方に向かって進むことができる。
【0067】
発光装置300では、例えば、利得領域140が、第1端面150から第2端面152まで、直線状に、第1側面105の垂線Pと平行となる方向に向かって設けられていてもよい。すなわち、活性層106を第1側面105側から平面的にみたときに、第1端面150と第2端面152とは、完全に重なっていてもよい。この場合には、共振器が構成され、発光装置300は、レーザー光を発することができる。
【0068】
発光装置300によれば、出射光20は、第1側面105の垂線Pと平行となる方向に進むことができる。すなわち、出射光20は、第1上面102aに対して斜め上方に向かって進むことができる。これにより、発光装置100の例と同様に、出射光20が、第1上面102aで反射され、光の断面形状がいびつになることを抑制または防止することができる。したがって、発光装置300では、良好な断面形状を有する光を得ることができる。
【0069】
(3) 第3の変形例
次に、第3の変形例に係る発光装置400について説明する。図9は、発光装置400を模式的に示す断面図である。
【0070】
発光装置100の例では、絶縁部116と、絶縁部116とが形成されていない領域、すなわち柱状部111を形成している領域に屈折率差を設けて、光を閉じ込める屈折率導波型について説明した。これに対し、発光装置400は、柱状部111を形成することによって屈折率差を設けず、利得領域140がそのまま導波領域となる、利得導波型であることができる。
【0071】
すなわち、発光装置400では、図9に示すように、コンタクト層110および第2クラッド層108は、柱状部を構成せず、その側方に絶縁部116は形成されない。絶縁部116は、利得領域140の上方以外のコンタクト層110上に形成されている。つまり、絶縁部116は利得領域140の上方に開口を有し、該開口ではコンタクト層110の上面が露出している。第2電極114は、その露出しているコンタクト層110上および絶縁部116上に形成されている。第2電極114とコンタクト層110との接触面は、利得領域140と同じ平面形状を有している。図示の例では、第2電極114とコンタクト層110との接触面の平面形状によって、電極112,114間の電流経路が決定され、その結果、利得領域140の平面形状が決定されることができる。なお図示はしないが、第2電極114は、接縁部116上には形成されず、利得領域140の上方のコンタクト層110上にのみ形成されていてもよい。
【0072】
(4) 第4の変形例
次に、第4の変形例に係る発光装置500について説明する。図10は、発光装置500を模式的に示す平面図である。
【0073】
発光装置500では、複数の利得領域140(第1利得領域140aおよび第2利得領域140b)を有し、これらが利得領域対540を構成している。第1利得領域140aは、第1側面105に設けられた第1端面150aと、第2側面107に設けられた第2端面152aと、を有する。第2利得領域140bは、第1側面105に設けられた第1端面150bと、第2側面107に設けられた第2端面152bと、を有する。第1利得領域140aと第2利得領域140bとは、異なる方向に向かって設けられている。図示の例では、第1利得領域140aは、第1側面105の垂線Pに対して一方の側に傾いており、角度θの傾きを有する一の方向に向かって設けられている。また、第2利得領域140bは、垂線Pに対して他方の側(上記一方の側の反対側)に傾いており、角度θの傾きを有する他の方向に向かって設けられている。図示の例では、第1利得領域140aの第2端面152aと、第2利得領域140bの第2端面152bとは、重なり面550において完全に重なっている。第1利得領域140aと第2利得領域140bとは、例えば図10に示すように平面視において、重なり面550の中心を通る垂線Pに対して、線対称の関係にある。
【0074】
図10に示すように、例えば、第1利得領域140aに生じる光の一部12は、第1利得領域140a内で増幅された後、重なり面550において反射して、第2利得領域140bの第1端面150bから出射光20として出射されるが、反射後の第2利得領域140b内においても光強度が増幅される。同様に、第2利得領域140bに生じる光の一部は、第2利得領域140b内で増幅された後、重なり面550において反射して、第1利得領域140aの第1端面150aから出射光20として出射されるが、反射後の第1利得領域140a内においても光強度が増幅される。なお、第1利得領域140aに生じる光には、直接、第1利得領域140aの第1端面150aから出射光20として出射されるものもある。同様に、第2利得領域140bに生じる光には、直接、第2利得領域140bの第1端面150bから出射光20として出射されるものもある。これらの光も同様に各利得領域140a,140b内において増幅される。
【0075】
発光装置500によれば、上述のとおり、第1利得領域140aに生じる光の一部12は、重なり面550において反射して、第2利得領域140b内においても、利得を受けながら進行することができる。また、第2利得領域140bに生じる光の一部に関しても同様である。したがって、発光装置500では、例えば、重なり面550において積極的に反射させないような場合に比べ、光強度の増幅距離が長くなるため、高い光出力を得ることができる。
【0076】
4. プロジェクター
次に、本実施形態に係るプロジェクター600について説明する。図11は、プロジェクター600を模式的に示す図である。なお、図11では、便宜上、プロジェクター600を構成する筐体は省略している。プロジェクター600は、本発明に係る発光装置を有する。以下では、本発明に係る発光装置として、発光装置100を用いた例について説明する。
【0077】
プロジェクター600において、赤色光、緑色光、青色光を出射する赤色光源(発光装置)100R,緑色光源(発光装置)100G、青色光源(発光装置)100Bは、上述した発光装置100である。
【0078】
プロジェクター600は、光源100R,100G,100Bから出射された光をそれぞれ画像情報に応じて変調する透過型の液晶ライトバルブ(光変調装置)604R,604G,604Bと、液晶ライトバルブ604R,604G,604Bによって形成された像を拡大してスクリーン(表示面)610に投射する投射レンズ(投射装置)608と、を備えている。また、プロジェクター600は、液晶ライトバルブ604R,604G,604Bから出射された光を合成して投写レンズ608に導くクロスダイクロイックプリズム(色光合成手段)606を備えていることができる。
【0079】
さらに、プロジェクター600は、光源100R,100G,100Bから出射された光の照度分布を均一化させるため、各光源100R,100G,100Bよりも光路下流側に、均一化光学系602R,602G,602Bを設けており、これらによって照度分布が均一化された光によって、液晶ライトバルブ604R,604G,604Bを照明している。均一化光学系602R,602G、602Bは、例えば、ホログラム602aおよびフィールドレンズ602bによって構成される。
【0080】
各液晶ライトバルブ604R,604G,604Bによって変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム606に入射する。このプリズムは4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に配置されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成され、カラー画像を表す光が形成される。そして、合成された光は投写光学系である投射レンズ606によりスクリーン610上に投写され、拡大された画像が表示される。
【0081】
なお、上述の例では、光変調装置として透過型の液晶ライトバルブを用いたが、液晶以外のライトバルブを用いてもよいし、反射型のライトバルブを用いてもよい。このようなライトバルブとしては、例えば、反射型の液晶ライトバルブや、デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micromirror Device)が挙げられる。また、投射光学系の構成は、使用されるライトバルブの種類によって適宜変更される。
【0082】
また、発光装置100を、発光装置100からの光をスクリーン上で走査させることにより、表示面に所望の大きさの画像を表示させる画像形成装置である走査手段を有するような走査型の画像表示装置(プロジェクター)の光源装置にも適用することが可能である。
【0083】
プロジェクター600によれば、赤色光源600R,緑色光源600G,青色光源600Bとして、発光装置100を用いることができる。発光装置100では、上述のとおり、良好な断面形状を有する光を得ることができる。したがって、鮮明な画像を表示することが可能なプロジェクター600を得ることができる。
【0084】
なお、上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0085】
上記のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0086】
100 発光装置、102 基板、102a 第1上面、102b 第2上面、102c 第3上面、103 段差側面、104 第1クラッド層、105 第1側面、106 活性層、106a 上面、107 第2側面、108 第2クラッド層、110 コンタクト層、111 柱状部、112 第1電極、114 第2電極、116 絶縁部、140 利得領域、150 第1端面、152 第2端面、200,300,400,500 発光装置、540 利得領域対、550 重なり面、600 プロジェクター、602 均一化光学系、602a ホログラム、602b フィールドレンズ、604 液晶ライトバルブ、606 クロスダイクロイックプリズム、608 投写レンズ、610 スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1上面と、第2上面と、平面的に見て前記第1上面および前記第2上面との間に位置する第3上面と、を有する基板と、
前記第3上面の上方に形成された第1クラッド層と、
前記第1クラッド層の上方に形成された活性層と、
前記活性層の上方に形成された第2クラッド層と、
を含み、
前記第3上面は、前記第1上面に対して傾いた面であって、かつ前記第1上面と段差側面を介して前記第1上面よりも上方に位置し、
前記活性層は、平面的に見て、前記第1上面側の第1側面と、前記第1側面と平行な前記第2上面側の第2側面と、を有し、
前記第1側面は、前記第2側面より上方に位置し、
前記活性層の少なくとも一部は、利得領域を構成し、
前記利得領域は、前記第1側面側の端面と、前記第2側面側の端面と、を有し、
前記利得領域に生じる光の波長帯において、前記第2側面の反射率は、前記第1側面の反射率よりも高い、発光装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記活性層の上面は、前記第1側面の垂線に対して所定の傾き角で傾いている、発光装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記傾き角は、前記利得領域に生じる光の前記第1側面側の端面における全反射の臨界角よりも小さい角度である、発光装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記活性層の上面は、前記第1側面の垂線と平行である、発光装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項において、
前記利得領域は、前記第3上面側から平面的に見て、前記第1側面の垂線に対して傾いた方向に向かって設けられている、発光装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、
前記利得領域は、複数配列されている、発光装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、
前記第1クラッド層と電気的に接続された第1電極と、
前記第2クラッド層と電気的に接続された第2電極と、
を、さらに含み、
前記第1電極は、オーミックコンタクトする第1層と接しており、
前記第2電極は、オーミックコンタクトする第2層と接しており、
前記第1電極と前記第1層との接触面、および前記第2電極と前記第2層との接触面の
少なくとも一方は、前記利得領域と同じ平面形状を有する、発光装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発光装置と、
前記光源装置から出射された光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調素子によって形成された画像を投射する投射装置と、
を含むプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−14819(P2011−14819A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159551(P2009−159551)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】