説明

発泡ゴム成形体及びその製造方法

【課題】ゴム弾性の低下、及び圧縮永久歪みの発生を抑制することのできる発泡ゴム成形体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】自動車ドアの周縁に取着される発泡ゴム成形体としてのドアウエザストリップは、EPDMを主成分とし、発泡剤としてマイクロカプセルを使用した発泡形態のスポンジゴムにより形成されている。スポンジゴムの内部にはマイクロカプセルの膨張により気泡空間50が多数形成される。また、各気泡空間50の内部には、発泡剤として用いられたマイクロカプセルの殻52が球体形状を維持しないで残存している。殻52はその全体が気泡空間50の内面50aとは完全に密着せずに、気泡空間50の剛性を低下させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡ゴム成形体及びその製造方法に関するものである。発泡ゴム成形体としては、自動車等の車両のドア開口周縁やドアの周縁部に用いられるウエザストリップが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
ウエザストリップは、一般に、自動車等の車両のドアの周縁部又はドア開口周縁に設けられる。例えば、ドア周縁に取付けられるドアウエザストリップは、ドア周縁に設けられたサッシュ等に取付けられる取付基部と、当該取付基部に一体形成された中空状のシール部とを備えている。そして、ドア閉時には、シール部が自動車ボディのドア開口周縁に圧接し、ドアと自動車ボディとの間がシールされる。
【0003】
ウエザストリップは、耐候性に優れた合成ゴム、例えばEPDM(エチレン・プロピレン・ジエン共重合体)ゴム等によって成形され、可撓性の確保や軽量化等の観点から、その一部又は全体が、発泡成形されたEPDMスポンジゴム等により成形されたものもある。なお、ウエザストリップは、直線状に押出成形されて形成される押出成形部と、この押出成形部の端部を連結する型成形によって形成される型成形部とからなり、環状に形成されている。
【0004】
また、従来、この種の発泡ゴム成形体に用いられる発泡剤としての化学発泡剤は、アンモニア等を含む分解ガスを発生させるため、発泡残渣成分の影響により、発泡ゴム成形体がウエザストリップの場合、接触する自動車ボディ等の塗膜を変色させるおそれがあった。
【0005】
近年では、このような問題に対処するため、化学発泡剤に代えて、熱膨張性マイクロカプセル(以下、単に「マイクロカプセル」とする。)を用いて発泡成形されたウエザストリップ等も見受けられる(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
マイクロカプセルとは、加熱により膨張する性質を有するカプセルであって、例えば液状の炭化水素など加熱により体積膨張する物質を、加熱により軟化する熱可塑性高分子(熱可塑性樹脂)からなる殻の内部に封じ込めたものである。
【0007】
そして、ウエザストリップの成形に際し、ゴム材料に配合されたマイクロカプセルは、ゴム材料の加硫時の熱によりその外側の殻が軟化するとともに、内部の炭化水素等が気化(ガス化)することにより、その内圧で殻が膨張する。これに伴い、未加硫のゴム材料も殻のまわりで膨張させられて、気泡空間を形成する。この状態でゴム材料の加硫が完了することにより、内部に多数の気泡空間を有する発泡形態のウエザストリップが得られる。なお、マイクロカプセルの殻が膨張するより前に、殻のまわりの未加硫ゴムの加硫が進行した場合、マイクロカプセルは膨張できなくなり、所定の発泡形態のウエザストリップは得られなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−186559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、マイクロカプセルの殻は、例えば、ニトリル系重合体などガスバリヤ性の高い熱可塑性高分子で形成されており、それ自身は弾性に乏しい。また、マイクロカプセルを単体で見た場合、一旦内部の炭化水素等のガス化によって膨張し、その後、熱をかけ続けると、最大膨張に達し、内部のガスがマイクロカプセルの殻を透過し、マイクロカプセルの収縮がおこる。ところが、マイクロカプセルをゴム材料に配合し、殻のまわりに加硫されつつあるゴム材料が存在すると、殻が膨張する余力を残して膨張が止まったり、内部のガスの殻の透過ができず収縮しないで気泡空間の内面に貼り付いた状態となる。従って、発泡剤としてマイクロカプセルを用いた場合、シール部が当接するボディの塗膜の変色等の問題は生じないが、図9に示すように、その殻71が膨張した状態のままで固化(結晶化)し、殻71が気泡空間72の内面に密着した状態でゴム材料の基材73の内部に残っていると、殻71により基材73本来の弾性が低下し、図10(a)に示すように、ウエザストリップ75のシール部の圧縮時などの弾性変形時に、その変形を阻害するおそれがある。
【0010】
さらには、図10(b)に示すように、圧縮時の変形によりマイクロカプセルの殻71が塑性変形すると、それに追従して気泡空間72も潰れた状態に維持されるため、基材73本来の復元力が低下し、ウエザストリップ75の復元を阻害するおそれがある。ひいては、圧縮永久歪み、いわゆるヘタリの原因となるおそれがある。
【0011】
なお、何度もくり返して圧縮荷重等を加えることにより塑性変形が進行して殻71を破壊することも考えられるが、この場合、外力によってシール部全体の殻71を全て破壊するのは難しい。
【0012】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、ゴム弾性の低下、及び圧縮永久歪みの発生を抑制することのできる発泡ゴム成形体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、上記問題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0014】
手段1.熱膨張性マイクロカプセルを配合した未加硫のゴム材料を加硫して、内部に気泡空間を形成することにより得られる発泡ゴム成形体であって、
ゴム材料の内部に形成される前記気泡空間内において、前記熱膨張性マイクロカプセルの殻に内部のガスが透過する孔を生じさせ、当該気泡空間の内面と、前記熱膨張性マイクロカプセルの殻との間の少なくとも一部に隙間が形成されていることを特徴とする発泡ゴム成形体。
【0015】
上記手段1によれば、発泡ゴムの内部に形成される気泡空間内において残存するマイクロカプセルの殻に内部のガスが透過する孔を生じさせて、気泡空間の内面の一部との間に隙間が形成されている。これにより、マイクロカプセルの殻が球体形状を維持して気泡空間の内面に密着して残存することに起因したゴム弾性の低下を抑制することができる。結果として、発泡ゴム成形体の弾性変形時及びその復元時において、その変形が阻害されるおそれを低減することができる。ひいては、圧縮永久歪み、いわゆるヘタリの発生を抑制することができる。
【0016】
なお、本手段では、ゴム材料の加硫及び、マイクロカプセルの発泡時にマイクロカプセルの殻にガスが透過する孔を生じさせるとともに、ゴム基材の内部の気泡空間の内面の一部との間に隙間を形成する構成となっている。このため、成形後の発泡ゴム成形体(ウエザストリップ)に従来のスポンジゴムの剛性を下げるために考えられる外部から負荷をかけて、気泡空間の内面に密着した球体形状のマイクロカプセルの殻と気泡空間との間に隙間を形成して、気泡空間の剛性を下げることを適用する等といった工程を行う必要がない。結果として、製造ライン及び製造時間の短縮化や生産性の向上などを図ることができる。
【0017】
また、一般にウエザストリップは、複雑な外部形状を有するため、すべての領域にこの外部から均一に負荷をかけることを適用するのは難しい。この点、本手段によれば、外部からの圧力によらず、マイクロカプセルの物性を利用して、より均一に殻と気泡空間の一部の内面との間に隙間を形成し、気泡空間の剛性を下げることができる。これにより、ゴム弾性の低下抑制効果をより確実に得るとともに、部位によるシール荷重のバラツキ等の不具合の発生も抑制することができる。
【0018】
なお、一般に、マイクロカプセルは、その単体では加熱によって、熱可塑性を有する殻が軟化する(融点に達する)とともに、その殻の中に内包されている炭化水素等の内部物質が気化(ガス化)して膨張し、その後、さらに加熱を続けると内部のガスが殻を透過して内部の圧力と外気圧のバランスがとれるまで収縮するものである。この時、殻としては、ニトリル系成分を85質量%以上含有し、ガスバリヤ性に優れるものが使用される。
【0019】
従って、このマイクロカプセルをゴム材料に配合し、加熱して加硫する時に、仮にゴム材料の加硫の進行が速く、マイクロカプセルの殻が所定の大きさに膨張する前に、ゴム材料の加硫が完了してしまうと、所定の大きさの気泡空間が形成されず、意図した比重の発泡ゴムを得ることができない。また、その時には、マイクロカプセルの殻は、膨張の余力を残しており、気泡空間の内面に強固に密着した状態となり、この殻によって気泡空間の剛性が高められてしまう。一方、加硫の進行が遅く、単体でのマイクロカプセルの殻の収縮が始まる温度の段階において、ゴム材料が未だ気泡空間の形状を未確定の状態にあると、カプセル内のガスが殻を透過して、その周囲のゴム材料内に流出し、さらには、ゴム材料から外方へ抜けていた。そのため、カプセルは加硫されつつあるゴム材料からの外圧により若干押し潰された状態の大きさとなってしまい、意図した比重の発泡ゴムを得ることができない。この時、殻としてはニトリル系成分の含有率が60質量%以下である場合が多い。
【0020】
この場合にもマイクロカプセルの殻は、気泡空間の内面に密着した状態となり、さらに、ガスが透過した微細で多数の孔はこの収縮に伴って塞がれた形となるため、マイクロカプセルは剛性を有した球体形状を維持して、気泡空間の剛性が高められた状態となっている。
【0021】
このため、所定の大きさの気泡空間を確保して、マイクロカプセルの殻が気泡空間の内面と完全に密着しておらず、その殻自体の剛性を下げるためには、本手段のように、マイクロカプセルの殻に内部のガスが透過する微細で多数の孔を生じさせ、その微細で多数の孔をマイクロカプセルの殻の固化時にも維持させ、さらに、当該殻と前記気泡空間の内面との間の少なくとも一部に隙間を形成させるように構成することである。この結果、所定の大きさの気泡空間を確保し、マイクロカプセルの殻自体、及び気泡空間の剛性を下げ、発泡ゴム成形体に荷重が作用した場合において、発泡ゴム成形体の復元力が低下することを防止できる。
【0022】
手段2.前記熱膨張性マイクロカプセルは、ニトリル系成分を60質量%超85質量%未満含有する熱可塑性高分子からなる殻の内部に、イソペンタン/イソオクタン又はノルマルペンタン/イソオクタンの炭化水素の混合物を内包し、膨張開始温度が150℃〜240℃の範囲内で、膨張開始温度と最大膨張温度の差が9℃以下である手段1に記載の発泡ゴム成形体。
【0023】
一般に、マイクロカプセルの殻の膨張は、殻を構成している熱可塑性高分子材料が変形可能な状態でかつ内部の炭化水素が気化した時に膨張が開始され、殻の肉厚が薄くなり、内部の気体が殻から透過する状態まで膨らみ、その後は、内部の気体が抜け出た分、収縮し、内圧と外圧のバランスが取れたところで収縮が収まるものである。
【0024】
本件でのマイクロカプセルは、膨張開始温度が150℃〜240℃の範囲内で、膨張開始温度と最大膨張温度の差が9℃以下である。そのため、マイクロカプセル単体においては、膨張開始とほぼ同時に最大膨張に到達し、ガスが殻を透過してしまい、単体ではほとんど膨張しない状態となる。なお、膨張開始温度は165℃〜190℃の範囲内の方が好ましい。165℃より低い温度だと回りのゴムが半加硫状態よりも未加硫ゴム状態に近く、ガスが抜け易くなり、結果として所定の膨張ができ難くなる。また、190℃を越えて設定されると、回りのゴムの加硫が進行し、結果、所定の膨張ができ難くなるためである。
【0025】
ところが、このマイクロカプセルをゴム材料に配合し、ゴムを加硫するために加熱した場合、イソペンタン/イソオクタン又はノルマルペンタン/イソオクタンの炭化水素の混合物がガス化する時の温度が比較的高く、マイクロカプセルの周りのゴム材料が半分加硫した状態となっているため、マイクロカプセルの殻に生じるガスが透過する微細で多数の孔は、この半加硫状態のゴム材料によって遮られて塞がれる形となり、マイクロカプセルが膨張する形となる。そのため、殻は上記微細で多数の孔の分、及び内部から抜け出したガスでゴム材料内へ流入しない分だけ、気泡空間の内面に完全に密着しておらず、また、殻に設けられたガスが透過する微細で多数の孔も、膨張開始温度と最大膨張温度の差が9℃以下と小さいため、塞がれることなく、殻自体の剛性が下げられることになる。結果として、上記手段1の作用効果がより確実に奏される。
【0026】
なお、本件でのマイクロカプセルの殻を構成している熱可塑性高分子材料の膨張開始温度は約169℃(又は168℃)であり、最大膨張温度は約170℃(又は171℃)と、両者の温度差は9℃以下に設定されている。この温度差は、5℃以下の方がより好ましい。最大膨張温度は、比較的高い温度である150℃〜240℃の範囲内、好ましくは、165℃〜190℃の範囲内で任意に設定することができる。この150℃〜240℃は、ゴムの加硫温度に対応して設定される。
【0027】
ちなみに、一般的なウエザストリップの型成形部におけるゴムの加硫は、150℃〜240℃×1.5〜5分の間で任意に設定された加硫環境下において行われる。
【0028】
なお、膨張開始温度が190℃を超え、最大膨張温度も比較的高いもの(例えば、191℃と200℃)では、ゴム発泡体のヘタリの悪化や、発泡不良が発生するおそれがある。
【0029】
また、発泡ゴムのヘタリを改善する上で、マイクロカプセルの殻の耐熱性、ガスバリヤ性を考慮して、殻の熱可塑性高分子材料は、従来のニトリル系成分の含有率が85質量%以上のものに対して、本件では60質量%超85質量%未満となっている。ニトリル系成分の含有率が60質量%以下であると、所望の比重のゴム発泡体が得られないおそれがある。
【0030】
手段3.所定の金型装置によって成形される型成形部の少なくとも一部が前記発泡ゴムにより形成されていることを特徴とする手段1又は2に記載の発泡ゴム成形体。
【0031】
手段3の発泡ゴム成形体では、型成形部の一部が前記発泡ゴムにより形成されているので、上記手段1の作用効果と同様の作用効果がより確実に奏される。
【0032】
特に、型成形部では、押出成形部に比べて形状が複雑であるため、成形後に外部から負荷をかけて、加硫後の発泡ゴム成形体の気泡空間の剛性を全体的に下げることは難しく、本手段3の構成のものが気泡空間の内面と殻との間に部分的に隙間を形成することにより、気泡空間の剛性低下に有効に作用して、発泡ゴム成形体(ウエザストリップ)の圧縮永久歪みを低減することができる。
【0033】
また、型成形部での発泡は、金型のキャビティに対して、何割か減らして材料を充填し、マイクロカプセルを発泡させることにより、キャビティに対して100%充足させて形成するものである。そして、マイクロカプセルの殻を構成している熱可塑性高分子材料をニトリル系成分の含有率が60質量%超85質量%未満として、イソペンタン/イソオクタン又はノルマルペンタン/イソオクタンの炭化水素混合物を内包することで、膨張開始温度が150℃〜240℃の範囲内で、膨張開始温度と最大膨張温度の差が9℃以下のものに設定した場合には、膨張開始は遅く、回りの未加硫ゴムが半加硫状態となって初めて膨張を開始する。なお、ゴムが完全に加硫される前に膨張させないと、キャビティへの100%充足ができなくなるため、膨張開始をそれ程遅くできない。
【0034】
これに対して、本手段3のものでは、マイクロカプセルの殻を構成している熱可塑性高分子材料をニトリル系成分の含有率が60質量%超85質量%未満として、イソペンタン/イソオクタン又はノルマルペンタン/イソオクタンの炭化水素混合物を内包することで、膨張開始温度が150℃〜240℃の範囲内で、膨張開始温度と最大膨張温度の差が9℃以下とすることにより、殻が膨張を開始する時期を実質的に遅くし、かつ、膨張開始から最大膨張になる時期を短くして、所定の気泡空間と剛性の低いマイクロカプセルの殻を得て、さらに、殻と気泡空間の内面との間の一部に隙間を生じさせている。なお、膨張開始温度は165℃〜190℃がより好ましい。
【0035】
手段4.手段1乃至3のいずれか一つに記載の発泡ゴム成形体であって、当該発泡ゴム成形体はウエザストリップであり、
該ウエザストリップは、
車両のドアの周縁部又はドア開口周縁に取付けられる取付基部と、
当該取付基部から突出するように設けられ、ドア閉時にドア開口周縁又はドアの周縁に圧接されるシール部とを有してなり、
前記シール部の少なくとも一部が前記発泡ゴムにより形成されていることを特徴とする。
【0036】
手段4の発泡ゴム成形体(ウエザストリップ)では、そのシール部の少なくとも一部が前記発泡ゴムにより形成されているので、上記手段1の作用効果と同様の作用効果がより確実に奏される。
【0037】
特に、シール部では、シールのためにフレキシビィティを要求されているので、加硫後の発泡ゴム成形体の気泡空間の剛性を全体的に下げたものを得ることができる。その結果、発泡ゴム成形体(ウエザストリップ)永久歪みを低減することができる。
【0038】
なお、シール部としては、例えば中空状の中空シール部や、リップ状のシールリップ等を一例に挙げることができる。また、取付基部としては、例えばドアの外周部に取付られる平板状のものや、ドア開口周縁に沿って取付けられる断面略U字状のトリム部等を一例に挙げることができる。
【0039】
手段5.発泡ゴム成形体の製造方法であって、
手段2に記載の熱膨張性マイクロカプセルを配合した未加硫のゴム材料を所定形状に射出成形又は押出成形する射出又は押出成形工程と、
前記射出又は押出成形工程で成形された未加硫のゴム材料を加硫発泡させて所定の発泡ゴムを形成する加硫発泡工程とを備え、
前記加硫発泡工程では、
前記ゴム材料の加硫時の温度が165℃〜240℃の範囲内で設定され、当該ゴム材料が前記気泡空間を保持可能な温度に達した段階の加硫途中において、前記熱膨張性マイクロカプセルの殻に内部のガスが透過する孔を生じさせながら膨張させる膨張工程とを備えたことを特徴とする発泡ゴム成形体の製造方法。
【0040】
手段5の発泡ゴム成形体の製造方法では、マイクロカプセルの殻を構成している熱可塑性高分子材料をニトリル系成分の含有率が60質量%超85質量%未満として、イソペンタン/イソオクタン又はノルマルペンタン/イソオクタンの炭化水素混合物を内包することで、膨張開始温度が150℃〜240℃の範囲内で、膨張開始温度と最大膨張温度の差が9℃以下とすることにより、殻が膨張を開始する時期を実質的に遅くし、かつ、膨張開始から最大膨張になる時期を短くして、マイクロカプセルの回りの半加硫状態のゴムを膨張させる時期と内外圧のバランスを取って、発泡ゴム成形体の気泡空間の内面に完全に密着していないマイクロカプセルの殻を全体的に得ることができ、気泡空間の剛性低下を容易に行え、かつ、ゴム内に所定の比重に対応する気泡空間が確立されるようにしたものである。
【0041】
すなわち、射出又は押出成形工程では、上記のマイクロカプセルを未加硫ゴムに配合して加硫も発泡も生じない100℃以下の温度でこのゴム材料を射出又は押出成形し、加硫発泡工程では、この未加硫ゴムに対して150℃〜240℃の温度(より好ましくは165℃〜190℃)で加硫発泡させて所定の発泡ゴムを形成する。この時、マイクロカプセルの殻は、その一部が気泡空間の内面とは完全に密着しておらず、内部のガスが抜け出た微細で多数の孔を有した状態のまま最終的に結晶化する。そのため、殻の剛性及び気泡空間の剛性を低くした所定の外形形状と見かけ比重を備えた発泡ゴム成形体を容易に製造することができる。結果として、上記手段1の作用効果と同様の作用効果を奏する発泡ゴム成形体の製造方法を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】フロントドアが開状態にある自動車の斜視図である。
【図2】発泡ゴム成形体としてのドアウエザストリップを示す正面図である。
【図3】ドアウエザストリップを示す図2のJ−J線断面図である。
【図4】ドアウエザストリップの押出成形体の製造ラインの一部を示す模式図である。
【図5】加硫前の状態の押出成形体を示す模式的な部分拡大断面図である。
【図6】マイクロカプセルが最大に膨張した加硫途中の状態の押出成形体を示す模式的な部分拡大断面図である。
【図7】マイクロカプセルの殻と気泡空間の内面との間の少なくとも一部に隙間を生じさせた加硫完了時の状態の押出成形体を示す模式的な部分拡大断面図である。
【図8】(a)は、本願のドアウエザストリップ(発泡ゴム成形体)の弾性変形時の状態を示す模式的な部分拡大断面図であり、(b)は、その復元時の状態を示す模式的な部分拡大断面図である。
【図9】従来のマイクロカプセルを用いて成形されたウエザストリップ(発泡ゴム成形体)を示す部分拡大断面図である。
【図10】(a)は、従来のウエザストリップ(発泡ゴム成形体)の弾性変形時の状態を示す模式図及びその部分拡大断面図であり、(b)は、その復元時の状態を示す模式図及びその部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、車両としての自動車1には、自動車ドア(図ではフロントドア:以下、単に「ドア2」という)が開閉可能に設けられており、ドア2には、その外周に沿ってドアウエザストリップ3が取着されている。また、ドア2に対応する自動車ボディ(車両本体)のドア開口周縁には、オープニングトリム4が取着されている。本実施形態では発泡ゴム成形体としてドアウエザストリップ3を例に取り説明するが、これに限定される事なく、他のウエザストリップやゴムローラー、ゴムパッキン等の他のゴム製品に適用しても良い。
【0044】
図2に示すように、ドアウエザストリップ3は、ドア2の縦辺部及び横辺部に配設される押出成形部6,7と、ドア2のコーナー部に配設される型成形部(同図散点模様を付した部分)8,9とを備えている。押出成形部6,7は、押出成形機により長尺状に形成される。また、型成形部8,9は、隣接する押出成形部6,7の端部を連結するようにして所定の金型装置によって形成されている。
【0045】
本実施形態のドアウエザストリップ3は、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン共重合体)を主成分とした発泡形態のスポンジゴム(発泡ゴム)により形成されている。本実施形態のスポンジゴムは、比重が0.5〜0.6となるものであり、その内部には直径50〜300μmの気泡空間50が多数形成されている(図7参照)。
【0046】
各気泡空間50の内部には、発泡剤として用いられたマイクロカプセル51の殻52が残存している。但し、殻52はその膨張時において全体が気泡空間50の内面50aには密着せず、当該気泡空間50の内面50aとマイクロカプセル51の殻52との間の少なくとも一部には隙間が存在している。なお、各気泡空間50の内部には、殻52に内包されていた炭化水素53(図5参照)が気化又は一部液化した状態で残存している。この炭化水素53は、イソペンタン(iC5)/イソオクタン(iC8)又はノルマルペンタン(nC5)/イソオクタン(iC8)の混合物である。
【0047】
図3に示すように、押出成形部6は、ドア2の外周に沿って設けられた取付部としてのサッシュ部DSの外周(リテーナ部)に嵌合される平板状の取付基部11と、当該取付基部11から延出し、内部に中空部12aを有してなるシール部12と、当該中空状のシール部12の車外側の付根部付近から延出するシールリップ13とを備えている。そして、ドア2が閉じられたときに、シール部12及びシールリップ13が自動車ボディのドア開口周縁に当接又は圧接して変形し、これにより自動車ボディ及びドア2間がシールされるようになっている。
【0048】
尚、押出成形部7及び型成形部8,9についても、押出成形部6とほぼ同様に取付基部11、中空状のシール部12等を備えている。但し、押出成形部7にはシールリップ13は設けられていない。また、型成形部9については、平面視で略L字形に屈曲形成されており、押出成形部7に比べて形状が若干複雑になっている。
【0049】
次にドアウエザストリップ3の製造方法について説明する。先ず各押出成形部6,7となる押出成形体の製造過程について説明する。図4は押出成形体40の製造ラインの一部を示す模式図であり、押出成形体40はこの図中において左側から右側に進みながら製造される。
【0050】
まず、押出工程(成形工程)においては、押出成形機31に対し未加硫未発泡のEPDMゴム材料が連続的に供給される。そして、押出成形機31のダイスから所定の断面形状を有する押出成形体40が押出される。尚、未加硫未発泡のEPDMゴム材料には、加硫剤として硫黄化合物等が配合されるとともに、発泡剤としてマイクロカプセル51が配合されている。また、押出時のEPDMゴム材料の温度は100℃以下であり、未加硫、未発泡の状態で押出されるものである。
【0051】
図5に示すように、マイクロカプセル51は、熱可塑性を有するアクリロニトリル共重合体等のニトリル系共重合体から構成された殻52の内部に上記したイソペンタン(iC5)/イソオクタン(iC8)又はノルマルペンタン(nC5)/イソオクタン(iC8)の混合物である液状の炭化水素53を内包したものである。このマイクロカプセル51は、膨張前の殻52の直径W1が10〜40μmである。
【0052】
また、上記の殻52は、ニトリル系成分含有率が60質量%超85質量%未満(例えば、従来のニトリル系成分含有率が85質量%以上)、膨張開始温度(Ts:169℃又は168℃)と最大膨張温度(Tmax:170℃又は171℃)の差が9℃以下である。なお、膨張開始温度Tsと最大膨張温度Tmaxは、それぞれ150℃〜240℃の範囲内で設定され、より好ましくは165℃〜190℃の範囲内での設定である。そのため、マイクロカプセル51単体においては、膨張開始とほぼ同時に最大膨張に到達し、ガス化した炭化水素がガスバリヤ性の低い殻52から抜け出してしまい、単体ではほとんど膨張しない状態となる。
【0053】
ところが、このマイクロカプセル51をEPDMゴム材料に配合し、ゴムを加硫するために加熱した場合、イソペンタン/イソオクタン又はノルマルペンタン/イソオクタンの炭化水素の混合物がガス化する時の温度が比較的高く(約169℃又は168℃)、マイクロカプセル51の周りのゴム材料が半加硫状態となっているため、マイクロカプセル51の殻52に生じるガスが透過する微細で多数の孔54は、この半加硫状態のゴム材料によって遮られて塞がれる形となり、マイクロカプセル51は膨張することができる。
【0054】
尚、膨張開始温度Ts及び最大膨張温度Tmaxは所定の熱分析機器でカプセル単体を測定したデータである。測定装置としては、DMA(DMA Q800型、TA instruments社製)を使用している。また、膨張開始温度Ts及び最大膨張温度Tmaxの測定は以下のように行っている。
【0055】
マイクロカプセル0.5mgを直径6.0mm(内径5.65mm)、深さ4.8mmのアルミカップに入れ、マイクロカプセル層の上部にアルミ蓋(直径5.6mm、厚み0.1mm)をのせて試料を準備し、その試料に上から加圧子により0.01Nの力を加えた状態でサンプル高さを測定した。加圧子により0.01Nの力を加えた状態で、20℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱し、加圧子の垂直方向における変位量を測定した。正方向への変位開始温度を膨張開始温度(Ts)とし、最大変位量(μm)を示したときの温度を最大膨張温度(Tmax)とした。
【0056】
押出工程に続く加硫発泡工程では、押出成形された押出成形体40が高周波加硫槽(UHF)33及び熱風加硫槽(HAV)34に案内されて、加硫が行われる。なお、加硫槽内の温度は150℃〜240℃の範囲内の所定温度に設定されている。ここで、押出成形体40の内部のマイクロカプセル51が加熱されると、当該マイクロカプセル51は、先にその殻52が軟化(半溶融)するとともに、その後に、内包される炭化水素53が気化する時に上記のようにして膨張する(図6参照)。これにより、まだ半加硫状態にある押出成形体40の内部に炭化水素53の気化による気泡空間50が形成され、発泡ゴムからなる押出成形体40が得られることとなる。なお、マイクロカプセル51の膨張時、気泡空間50の直径(殻52の直径)W2は50〜250μmとなる。すなわち、本実施形態での気泡空間50は炭化水素53の気化によって実質的に形成され、殻52は球体形状を維持していないものである。
【0057】
その後、押出成形体40の加硫が進行され、加硫が完了した時点では、上記の気泡空間50は、その直径を維持したままであり、殻52は多数の孔54及び気泡空間50の内面50aと密着されておらず、その剛性を下げられて、気泡空間50内に残存している。そして、押出成形体40は、カッター35で所定の寸法に裁断され、押出成形部6,7に対応したものとなる。
【0058】
その後、型成形工程(成形工程)において、各押出成形部6,7に対応する押出成形体40をそれぞれ図示しない所定の金型装置にセットし、型成形部8,9を接続成形する。より詳しくは、金型装置を型締めした状態からキャビティ内に、マイクロカプセル51を配合した未加硫未発泡のEPDMゴムを注入し、充填させる。続いて、金型部材の熱によって加硫発泡工程を行った後、金型装置を型開きし、上記ドアウエザストリップ3を得る。なお、未加硫未発泡のEPDMゴムのキャビティへの充填量は、発泡により膨らませる量だけ少なく充填される。また、発泡形態については上記の押出成形の場合と同様である。
【0059】
次に、上記のマイクロカプセル51を配合したEPDMゴム材料の温度変化とその発泡状況との関係について、2分間、200℃の加硫環境下で加硫を行った場合を例に図5〜図7を参照して説明する。図5は、加硫前の状態の押出成形体40を示す模式的な部分拡大断面図であり、図6は、マイクロカプセル51が最大に膨張した加硫途中の状態の押出成形体40を示す模式的な部分拡大断面図であり、図7は、マイクロカプセル51の殻52が気泡空間50の内面50aの一部から剥離して気泡空間50の剛性が下げられた加硫完了時の状態の押出成形体40を示す模式的な部分拡大断面図である。
【0060】
押出成形機31のダイスから押出された時点における押出成形体40(発泡ゴム)の温度は80℃と、マイクロカプセル51の膨張開始温度Ts:約169℃(又は168℃)よりも低いため、マイクロカプセル51は膨張を開始しておらず、その大きさは元の状態のままである(図5参照)。
【0061】
高周波加硫槽33及び熱風加硫槽34を通過することで、押出成形体40の温度は内部発熱によって上昇するとともに、EPDMゴム材料の加硫が始まる。そして、約108℃に達すると、まず先にマイクロカプセル51の殻52が軟化し始める。ただし、この時にはマイクロカプセル51は膨張しない。さらに回りのゴムが半加硫状態となる約165℃を越え、膨張開始温度Ts:約169℃(又は168℃)に達すると、上記したように液状の炭化水素53が気化し始め、マイクロカプセル51の膨張が開始する。これにより、押出成形体40の内部に気泡空間50が形成されていく。
【0062】
その後、押出成形体40が気泡空間50の形状を保持可能な温度であり、マイクロカプセル51の最大膨張温度であるTmax:約170℃(又は171℃)に達すると、マイクロカプセル51はその大きさが最大の80〜220μmまで膨張した状態となる(図6参照)。つまり、加硫発泡工程のうち当該過程が本実施形態における膨張工程に相当する。
【0063】
なお、当該膨張工程においては、上記したように、マイクロカプセル51の周りのゴム材料が半加硫状態となっており、マイクロカプセル51の殻52に生じるガスが透過する微細で多数の孔54が、この半加硫状態のゴム材料によって遮られて塞がれる形となってマイクロカプセル51は膨張することができる。そのため、マイクロカプセル51の殻52と気泡空間50の内面50aとの間の少なくとも一部には、隙間が形成されることとなる(図7参照)。
【0064】
その結果、所定の大きさで剛性の低い(殻52が完全にその内面50aに密着していない)気泡空間50を確保し、マイクロカプセル51の殻52自体の剛性を下げ、ドアウエザストリップ3に負荷が作用した場合において、発泡ゴム成形体の復元力が低下することを防止できる。なお、負荷が作用した場合においては、殻52は破壊されても良い。
【0065】
尚、型成形工程(射出成形工程)におけるEPDMゴム材料の温度変化とその発泡状況との関係についての詳細な説明は省略するが、加硫時の金型の設定温度や時間等を除き、基本的には上記押出成形体40の場合と同様に加硫発泡工程が進行し、型成形部8,9においても押出成形部6,7と同様の発泡形態が得られる。
【0066】
以上詳述したように、本実施形態では、図8(a),(b)に示すように、ドアウエザストリップ3の内部に形成される気泡空間50と、当該気泡空間50内に残存するマイクロカプセル51の殻52との間に隙間が形成されている。これにより、マイクロカプセル51の殻52の残存に起因した気泡空間の剛性を低下させることができる。結果として、ドアウエザストリップ3の弾性変形時〔図8(a)参照〕及びその復元時〔図8(b)参照〕において、その変形が阻害されるおそれを低減することができる。ひいては、圧縮永久歪み、いわゆるヘタリの発生を抑制することができる。
【0067】
さらに、本実施形態では、EPDMゴム材料の加硫時の膨張工程により、マイクロカプセル51の殻52の剛性を下げつつ、気泡空間50の内面50aとの間に隙間を形成させる構成となっている。このため、上記したように成形後のドアウエザストリップ3に外部から負荷をかけて、気泡空間50の内面50aに密着している球体形状のマイクロカプセル51の殻52との間に隙間を設け、気泡空間50の剛性を下げる、又は殻52を破壊する等といった工程を行う必要がない。結果として、製造ライン及び製造時間の短縮化や生産性の向上などを図ることができる。
【0068】
また、マイクロカプセル51の物性を利用することにより、ドアウエザストリップ3の全領域において、より均一に気泡空間50の内面50aとマイクロカプセル51の殻52とを離間させることができる。これにより、マイクロカプセル51の殻52を破壊し易くすることができ、ゴム弾性の低下抑制効果をより確実に得るとともに、部位によるシール荷重のバラツキ等の不具合の発生も抑制することができる。特に、型成形部8,9に関しては、湾曲又は屈曲している等、押出成形部6,7よりも形状が複雑であることから、成形後にローラを押し当ててマイクロカプセル51の殻52を気泡空間50の内面50aから離間させたり、破壊させたりすることが難しい。そのため、上記作用効果がより奏効する。
【0069】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0070】
(a)上記実施形態では、フロントドア2の周縁部に設けられるドアウエザストリップ3に具体化しているが、これに限らず、例えばリヤドア、バックドア、ラッゲージドア、ルーフドア等の他のドアの周縁部、又は、オープニングトリム4など、それらのドアに対向するボディ側のドア開口周縁に設けられるウエザストリップについて適用することも可能である。また、ゴムローラー、ゴムパッキン等他のゴム製品に適用することも可能である。
【0071】
(b)上記実施形態では、ドアウエザストリップ3の全体が同じ材料により形成されていたが、これに限らず、その一部のみを上記マイクロカプセルを含有するEPDMスポンジゴム材料により形成した構成としてもよい。例えば、取付基部11をソリッドゴム(非発泡ゴム)により形成し、シール部12をスポンジゴム(発泡ゴム)により形成した構成としてもよい。また、取付基部11等にインサートが埋設された構成としてもよい。インサートが埋設された構成では、成形後に外部から負荷をかけて気泡空間50の剛性を低下させることが難しいため、上記作用効果がより奏効することとなる。
【0072】
(c)上記実施形態では、ドアウエザストリップ3を構成するゴム素材としてEPDMを例示しているが、IR(イソプレンゴム)、CR(クロロプレンゴム)等の他のゴム材料を用いてもよい。また、その物性も上記実施形態に限定されるものではなく、例えば比重が0.85〜1.0となる微発泡形態ゴムにより一部が形成された構成としてもよい。
【0073】
(d)製造方法に関しても上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、型成形部8,9のみをマイクロカプセル51を用いた上記実施形態の製造方法により形成しても良い。
【0074】
(e)上記実施形態では、マイクロカプセル51の殻52が、ニトリル系共重合体により構成され、内包する炭化水素がiC5/iC8又はnC5/iC8のものを示している。これに限らず、例えば、Tmax−Ts≦9℃(ただし、165℃≦Ts≦190℃)の式を満足する材料であればよい。
【符号の説明】
【0075】
1…自動車、2…ドア、3…ドアウエザストリップ、4…オープニングトリム、6,7…押出成形部、8,9…型成形部、11…取付基部、12…シール部、13…シールリップ、40…押出成形体、50…気泡空間、50a…内面、51…熱膨張性マイクロカプセル、52…殻、53…炭化水素、W1…膨張前の殻の直径、W2…気泡空間の直径。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱膨張性マイクロカプセルを配合した未加硫のゴム材料を加硫して、内部に気泡空間を形成することにより得られる発泡ゴム成形体であって、
ゴム材料の内部に形成される前記気泡空間内において、前記熱膨張性マイクロカプセルの殻に内部のガスが透過する孔を生じさせ、当該気泡空間の内面と、前記熱膨張性マイクロカプセルの殻との間の少なくとも一部に隙間が形成されていることを特徴とする発泡ゴム成形体。
【請求項2】
前記熱膨張性マイクロカプセルは、ニトリル系成分を60質量%超85質量%未満含有する熱可塑性高分子からなる殻の内部に、イソペンタンとイソオクタン又はノルマルペンタンとイソオクタンの炭化水素の混合物を内包し、膨張開始温度が150℃〜240℃の範囲内で、膨張開始温度と最大膨張温度の差が9℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の発泡ゴム成形体。
【請求項3】
所定の金型装置によって成形される型成形部の少なくとも一部が前記発泡ゴムにより形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡ゴム成形体。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発泡ゴム成形体であって、当該発泡ゴム成形体はウエザストリップであり、
該ウエザストリップは、
車両のドアの周縁部又はドア開口周縁に取付けられる取付基部と、
当該取付基部から突出するように設けられ、ドア閉時にドア開口周縁又はドアの周縁に圧接されるシール部とを有してなり、
前記シール部の少なくとも一部が前記発泡ゴムにより形成されていることを特徴とする。
【請求項5】
発泡ゴム成形体の製造方法であって、
請求項2に記載の熱膨張性マイクロカプセルを配合した未加硫のゴム材料を所定形状に射出成形又は押出成形する射出又は押出成形工程と、
前記射出又は押出成形工程で成形された未加硫のゴム材料を加硫発泡させて所定の発泡ゴムを形成する加硫発泡工程とを備え、
前記加硫発泡工程では、
前記ゴム材料の加硫時の温度が165℃〜240℃の範囲内で設定され、当該ゴム材料が前記気泡空間を保持可能な温度に達した段階の加硫途中において、前記熱膨張性マイクロカプセルの殻に内部のガスが透過する孔を生じさせながら膨張させる膨張工程とを備えたことを特徴とする発泡ゴム成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−256223(P2011−256223A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129503(P2010−129503)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(000188951)松本油脂製薬株式会社 (137)
【Fターム(参考)】